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倫理・法令遵守の研修
2017年6月22日介護事業所センター長研修 資料
倫理観(モラル)に関する知識と理解
2青見 健志
第1部
1.はじめに
倫理と法令遵守(コンプライアンス)の研修を実施する意味を考えましょう。
3青見 健志
理由:ルールが守れない
原因:倫理観(モラル)が低下している
要因として、集団行動と全体責任という昔の考え方が、現代では個人主義と個人責任に変化しました。日常的に注意される事が減り、わざわざ注意することに対して損をするような意識が生まれています。結果、個々の倫理観に沿って行動するようになり、考え方の違いから様々なトラブルが発生しているという状況です。
2.倫理を簡単に表現すると
日本人として、法律を守り社会人として、規則を守り人間関係において、嘘をつかず決まり事や約束を守り世のため、人のため、日々努力することです。
善の心と正しい行い4青見 健志
3.倫理観の考え方の違いを理解する
・生まれた場所や育った環境がみんな違う・性格や価値観がみんな違う・得意不得意、それぞれの違いがはっきりしている・同じ内容の説明でも、人により受け取り方が違う・親のしつけに統一したルールがない・自分の置かれている状況や気分によって変化する(魔が差す)
など様々な理由があります。
しかし、「善の心と正しい行い」その考え方は、個人によってバラバラです。私が考える「当たり前!」という常識の範囲は、他人に当てはまりません。なぜ、常識の範囲がバラバラなのでしょうか?
《理由》
5青見 健志
4.考え方が違うから決まりが作られる
①国家単位では・・・・・・・・・・・・・・・国が定める法律違反すると→犯罪・逮捕・裁判・刑罰
②県や市町村では・・・・・・・・・・・・・行政が定める政令違反すると→行政指導・是正勧告・許可取消・裁判・返還命令
③すんでいる地域では・・・・・・・・・・町内会や隣近所組合守らないと→注意・指導・住民トラブル・人間関係の悪化
④学校では・・・・・・・・・・・・・・・・・・・校則校則違反→注意・指導・家族呼び出し・停学・退学
⑤会社や施設では・・・・・・・・・・・・・各会社にある就業規則規則違反→注意・指導・懲戒処分(減給・停職・解雇)
⑥家庭では・・・・・・・・・・・・・・・・・・・親や家庭内ルール守らないと→しつけ・罰・家族会議
考え方がバラバラだから、統一したルールを定める必要があります。ルールとは守られなければ成り立ちません。だから、守らないことに対して罰則(ペナルティ)を設ける必要があります。また、国家憲法や行政という大きなルールから、地域コミュニティ・学校・会社の規則など集団のルールがあり、最後は家庭のルールに分類されます。
6青見 健志
5.倫理観の低下とはどういう状態か
みんな悪いことをしてはいけないということは理解している《真実》
《現実》 実際の世の中は、小さな嘘から大きな犯罪まで、日常的に約束やルールが破られ、社会問題になっている
《対応》 新たにルールを定め、周知活動や取締強化を行う
どんなにルールを定めても、取締をしても、なぜか悪いことがなくならない。そして悪いことをしたときに、みんなそのことを隠すために嘘をついたり、証拠を隠滅したり、そして、その取り締まりから逃げ回ったりする。これを倫理観(モラル)の低下と考える。
《実際》
それぞれの倫理観が向上していれば、悪いことをしてはいけないという認識から、嘘はつかない、犯罪は犯さない、世のため人のために助け合います。
7青見 健志
6.(その1)赤信号の横断歩道であなたはどうする?
8青見 健志
6.(その1)赤信号の横断歩道であなたはどうする?
9青見 健志
交通ルールでは、赤は交差点に進入禁止です。歩行者は信号が青に変わるまで歩道で待ち、青に変わったら交差点内の安全を確認し横断歩道を渡ります。
ところで、こんな状況だったらどうします?
私は会社員です。交差点の先に勤め先の会社があります。普段からこの道路の交通量は少なく、周囲を見渡す限り車がいません。今、私はとても急いでいます。
その理由は
・遅刻しそうだから・トイレに行きたいから・上司が早く帰ってこいと言っているから・勤務時間が終了しており、早く帰りたいから・お昼休みになり、おなかがすいたから・クレームの連絡を受けているから・家族が病院に運ばれたと連絡が入ったから・その他
でした。
6.(その1)赤信号の横断歩道であなたはどうする?
10青見 健志
あなたは横断歩道を 渡る or 渡らない どっち?
7.(その2)黄信号の交差点であなたはどうする?
11青見 健志
7.(その2)黄信号の交差点であなたはどうする?
12青見 健志
交通ルールでは、黄は交差点に進入禁止です。安全に停止線前で止まれない、又は停止線を越えている車はすみやかに交差点を通過する。
ところで、こんな状況だったらどうします?
私は会社員です。交差点の信号が黄色点滅に変わりました。ブレーキを踏めばギリギリ停止線の前で止まれそうです。しかし、私はとても急いでいます。
その理由は
・営業先の約束の時間ギリギリだったから・トイレに行きたいから・子供を迎えに行く時間を過ぎているから・勤務時間が終了しており、早く帰りたいから・クレームで緊急の呼び出しを受けたから・会社に遅刻しそうだから・家族が病院に運ばれたと連絡が入ったから・その他
でした。
7.(その2)黄信号の交差点であなたはどうする?
13青見 健志
あなたは アクセル or ブレーキ どっちを踏む?
8.倫理観の低下に対する現実的な取組とは
しかし、残念ですが、取組として教育と研修だけで、現実的にすべて良くはなりません。悪い事をした人が、得をしない。悪い事をすれば、必ず損をするという社会構造を作り出す必要があります。
《損の例》
① 発覚した時に必ず注意を受ける。② 反省文や始末書など行為に対する反省を書面で誓わせる。③ 罰金など不利になるペナルティーを受ける。
④ 退場、退学、除名、懲戒解雇、実刑、懲役など学校や会社、そして立場や社会から退けられる。
それぞれの倫理観が向上すれば、悪いことをしてはいけないという認識から、ルールは守り、嘘はつかない、犯罪は犯さない、世のため人のために助け合います。
《理想の社会をめざして倫理教育や研修を繰り返し行う》
14青見 健志
9.(その3)赤信号の横断歩道であなたはどうする?
15青見 健志
あなたは横断歩道を 渡る or 渡らない どっち?
10.(その4)黄信号の交差点であなたはどうする?
16青見 健志
あなたは アクセル or ブレーキ どっちを踏む?
11.(その5)黄信号の交差点であなたはどうする?
17青見 健志
あなたは アクセル or ブレーキ どっちを踏む?
12.日常的に悪いことを注意できるのか?
ルールや規則に則り相手の悪いことを指摘して、注意したら、なぜか正しい自分が嫌な思い(損)をする現実がある。
《有るべき姿》
日頃からみんながコミュニケーションを取りあい、お互いの行いに気を付け、協力しながら社会秩序を守ります。悪いことが発覚したときに必ず注意を受け、その行為をすぐに改めさせることができる。
《現実の世界》
① 無視される。② 理由を付けてごねられる③ 後で仕返しに悪い噂を流される。④ 逆ギレされ理不尽に怒鳴り返される。⑤ 逆上され暴力を振るわれる。⑥ その他
悪いことを注意したら
18青見 健志
13.信号無視ですが注意できますか?
19青見 健志
14.信号無視ですが注意しますか?
20青見 健志
15.悪いことをしても誰からも注意されない場合
・ルール無視があたりまえになる
悪いことをしても誰からも注意されないと、別に悪い事じゃなくなる危険性があります。
・みんながルールを守らないとどうなるか想像してください。
① 自分の住んでいる国の国民② 自分の住んでいる県の県民③ 自分の住んでいる市町村の住民④ 自分の住んでいる団地の住人⑤ 同じアパートに住む同居人⑥ 保育園・幼稚園の保育士や保護者⑦ 小中高校の教師・生徒と保護者⑧ 自分の勤める会社の上司や同僚⑨ 家庭に住む家族⑩ その他
法律規則ルール約束決まり事取り決め
を一切守らない
21青見 健志
16.秩序が乱れた状態のイメージ図
22青見 健志
17.秩序が乱れてからではもう遅い
23青見 健志
18.乱れた秩序を正すのは大変な作業
24青見 健志
19.まとめ
倫理観(モラル)の低下を防ぐには!
①年1回必ず倫理研修を実施する②ルールやマニュアルを徹底させる③日常的にルールを運用し管理監督を行う④違反行為に対する適切な対処をする⑤主任や管理者などトップがルールを守る
組織の中で、啓発活動→周知活動→ルールの運用→管理監督→違反の取締
を繰り返し行います。会社や法人の出来るだけ多くの社員を集め、倫理研修を実施し、意識を統一させることで、ルールを破りにくい雰囲気(相互監視)が生まれます。知らない、聞いていない、自分は悪くないという自分勝手な言い訳が出来ないように、しっかりと日々取り組むことが大切です。
25青見 健志
法令遵守(コンプライアンス)の基礎研修
第2部
26青見 健志
1.法令遵守(コンプライアンス)とは?
・法令遵守(コンプライアンス)
法令:法律に定められる命令・条例・規則・おきて・きまり・定めなど
遵守:規則(ルール)や法律に従い、それを守ること
法律を守り、従うこと
実際の意味は上記の通りですが、世の中で使われる「コンプライアンスが○○」という表現には、様々な意味が含まれています。
27青見 健志
法律条例規則命令きまり定め
をに
守り従い知り理解し周知し
公正適切公明まとも健全
行動業務作業
活動経営運営
取り組む実施する徹底する守っていく広めていく管理する監督する
、なに
をに
2.企業の法令遵守(コンプライアンス)とは?
私、あなた、同僚、部下、上司、管理者、チーム、会社、企業、経営者、業界
が
上記の言葉を組み合わせ、完成する意味すべてを表していると理解してください。28青見 健志
3.法令遵守(コンプライアンス)の研修をする理由は?
法律条例規則命令きまり定め
をに
守り従い知り理解し周知し
公正適切公明まとも健全
行動業務作業
活動経営運営
取り組む実施する徹底する守っていく広めていく管理する監督する
、なに
をに
私、あなた、同僚、部下、上司、管理者、チーム、会社、企業、経営者、業界
が
しない・できない・やぶる・守らない・無視する・知らないふりをすると
自分・会社都合で
トラブル、事件、事故、不正・不法・違法行為など、様々な社会問題が発生するため29青見 健志
4.法律やルールについて考える
法律やルールは、【①守る】【②守らない】
の2つの選択しかない。
【①守る】という行為は、書面に記載されてある手順に沿って行動することである。
手順に沿って行動してもその通りにはならない場合や、問題が発生することがある。その時は一旦作業を中止し、良識的な判断が出来る上司や専門家に意見を仰ぎ、話し合いを行う事で適切な解決方法を選択できる。
ただし、問題の大きさによっては、解決に多大な時間を費やすこともある。
30青見 健志
4.法律やルールについて考える
【①守る】【②守らない】
【②守らない】という行為には沢山のパターンが存在している。
・その法律やルールの事を知らなかったので守れなかった。・別にバレなきゃ何をやっても大丈夫、バレてしまったら謝ればいい。・黙っていれば見つからない。わからない。・これぐらいの事なら、別に誰の迷惑にもならない。・面倒くさいし、特に影響も出ないだろうから、それくらいやってかまわない。・いちいち決まりを守っていたら無駄な時間が多くなる。・あそこの会社はそれくらいのことなら無視してやっているから、こちらもそうしよう。・今まで何もトラブルは発生していないので無視して大丈夫。・法律の方がおかしい、自分の言っていることや行動の方が正しい。・法律を守らない自分をかっこいいと思っている。・その他
上記以外にも、まだまだ沢山のパターンが想像できる。31青見 健志
法律やルールは、 の2つの選択しかない。
5.法律やルールを守れないのはなぜ?
私、あなた、同僚、部下、上司、管理者、チーム、会社、企業、経営者、業界
の
誰かが【②守らない】から
理由は倫理・道徳観、意識やモラルの低下から
32青見 健志
5.法律やルールを守れないのはなぜ?
日常で【②守らない】という行動をしても、何も影響が出ない事が多いから
【例1】 あなたがポケットに入れていた10円を落としました。
後から来た人が落ちている10円を見つけました。たかが10円だからと思い、そのまま拾って、財布にしまい自分の物にしました。
その後、特に何も起こりませんでした。
そもそも価値が認められる落とし物は、所有者が不明の場合、警察に届け出なければならないという決まりがある。所有者が定められた期間に現れなければ、拾った人が所有する権利を手に入れることができる。
しかし、それが1円や10円など少額であれば、その価値の低さ、警察へ届ける手間と時間を考えると、【②守らない】という選択肢を選ぶことが多い。
33青見 健志
5.法律やルールを守れないのはなぜ?
金額を変えてみると、【②守らない】を選択すると話が変わってくる。
あなたがポケットに入れていた30万円が入った封筒を落としました。
後から来た人がその30万円の封筒を拾いました。中にお金が沢山入っていたためラッキーだと思い、自分の財布にしまい自分のものにしました。
30万円を落としたあなたは困り、警察に落とし物の届けを出しました。警察のアドバイスもあり、心当たりのある場所に設置してある監視カメラを確認すると、あなたが落とした封筒を拾い財布に入れる人を見つけました。
【例2】
後日、30万円を拾って自分の物にした人は、拾得物横領の容疑で検挙されました。
これは誰もが当たり前の話だと考えます。34青見 健志
5.法律やルールを守れないのはなぜ?
35青見 健志
拾ったお金を届け出ず自分の物にする行為により、法律に違反している。
落とし物(遺失物)を自分の物にする(横領)、法律に違反しているという点ではどちらも同じである。しかし、10円と30万円という金額を比べると、物事の大小により「たかが10円程度。届ける必要はない。」、「30万円も拾って届けないのは酷い!」という結末になる。
・【例1】と【例2】の共通点
【例1】は10円、【例2】は30万円を拾い自分の物にした。
・【例1】と【例2】の相違点
【例1】の行為は罰せられることはなく、なぜか【例2】の行為のみ罰せられる。
【例1】で10円を落とした持ち主は気にもしなかった。【例2】で30万を落とした持ち主はすぐに警察に届けを出し、自分でいろいろと情報を集めた。
5.法律やルールを守れないのはなぜ?
36青見 健志
先ほどから何を言いたいのか・・・・
たとえ法律やルールを守らなくても、その違反行為に対するペナルティが発生しない場合
個人の倫理・道徳にゆだねるしかない
10円を落とした人の為に落とし物を探すのに、10円を拾って自分の物にした人を裁くのに、 時間を浪費するのは無駄である。
【結論】
30万円を落とした人の為に落とし物を探すのに、30万円を拾って自分の物にした人を裁くのに、 時間を費やす必要がある。
・横領の再発防止、落とし主の哀れみ(損失額)の観点から
・横領の再発防止、落とし主の哀れみ(損失額)の観点から
6.個人の倫理・道徳観について
37青見 健志
①10円ガム1個の万引き②10円ガム5個の万引き③100円のお菓子、150円のジュースの万引き④合計1000円の野菜・肉など食材の万引き⑤3000円の衣類の窃盗⑥10000円のブーツの窃盗⑦30000円の家電製品の窃盗⑧100000円のブランド品の窃盗⑨300000円の宝石の窃盗⑩1000000円の高級ブランド時計の窃盗
下記の犯罪行為を、あなたはどう考えますか?
すべて万引き・窃盗
①~⑩までの犯罪行為に関して、どこまで許せますか?
「たかが10円ガムくらい許してやれよ!」と思う人もいれば、「10円ガムでも泥棒には変わりない!」と考える人もいます。
6.個人の倫理・道徳観について
38青見 健志
たかが10円かもしれませんが、エピソードを変えてみましょう。
おばあちゃんが運営する昔ながらの小さな駄菓子屋さんがありました。
駄菓子屋さんには、10円のガムから、高くて500円くらいのおもちゃが売られていました。
2年前から、10円のガムや30円のアメの万引きが増えてきました。最初は週に1~2個、50円程度なら、目くじらを立てても仕方がないと考え諦めていました。1年前から、 10円のガムや30円のアメの万引きが毎日のように増えてきました。
1日にすると150円、月に換算すると4500円程度になり、おばあちゃんは困り果てていました。周囲に相談したところ、「10円ぐらいの物だから自分でしっかりと店番したり、注意を払わないとダメだよ。」と言われました。しかし、家事もあり、朝から夕方まで店番をする訳にはいきません。近頃は目も悪く耳も遠くなり、腰痛もあります。いろいろ考えましたが、仕方がないと目をつぶることにしました。
それからさらに万引きが悪化し、100円のお菓子も盗まれるようになり、到底店を続けることが出来なくなりました。昔から続いていたおばあちゃんの駄菓子屋さんは、ついに店をたたむことになりました。
6.個人の倫理・道徳観について
39青見 健志
たかが10円でも、それが積み重なればだんだん目をつぶれなくなる。
・おばあちゃんの駄菓子屋さんが店をたたんだ問題点は?
おばあちゃんの防犯対策に問題がある。 ×たかが10円くらいと考え、万引きするモラルの低さに問題がある。 ○
個人の倫理・道徳にゆだねるしかない
【結論】結局のところ・・・・
7.法令遵守(コンプライアンス)のポイント
40青見 健志
法令遵守(コンプライアンス)の研修をしたところで・・・・社内規定でコンプライアンスを強化したところで・・・・コンプライアンスに関する内部監査体制を構築したところで・・・・
最も重要なことは、どれだけ
例を挙げるなら、100人の社員のうち99人がコンプライアンスを守り規則正しく行動しても、たった1人の社員の意識が低く、コンプライアンス違反を犯すことで、いとも簡単に会社イメージやブランドを崩壊させてしまいます。それは、その会社に勤める残り99人に多大な迷惑をかけてしまうということを理解しておきましょう。
個人の守ろうという意識が低ければ、一瞬で破られてしまう。
介護保険と法令遵守(コンプライアンス)
第3部
41青見 健志
1.介護保険制度とは?
介護保険制度とは、介護保険法に基づき運営される社会保障制度です。
介護施設の業務はすべて法律で定められている。
各施設ごとの介護サービスの内容・業務・記録・報酬体系・施設基準などはすべて、介護保険法に記載されている内容をもとに実施されている。
介護保険法に基づき、介護事業者が要介護利用者へ提供した介護サービスの対価として、定められた介護報酬が支払われる。
42青見 健志
【簡単にいうと】
2.介護保険法と法令遵守(コンプライアンス)
・なぜ法令遵守(コンプライアンス)の研修が必要なのか?
法律違反が発生するから
43青見 健志
【介護保険法に関する介護業務で法律違反が発生する原因】
① 施設で提供している介護サービスに関する介護保険法の知識を持たない職員が多く働いている。
② 介護報酬に目がくらみ、不正な手段を用いたり、必要のないサービスを過剰に提供したりすることで、報酬を得ようする輩がいる。
③ 日常業務に追われ管理・監査体制がおろそかになり、本来は請求できない報酬を過誤に請求し報酬が支払われる。
④ 業務に追われ、書類作成や日常記録業務を後回しにする。その必要記録がないまま月末を迎え、とりあえず介護報酬の請求を行う。監査や指導が入る前に必死で書類整理を行う。
⑤ その他
3.介護保険法と法令遵守(コンプライアンス)
44青見 健志
①施設で提供している介護サービスに関する介護保険法の知識を持たない職員が多く働いている。
サービス利用開始に必要な介護計画、入浴の実施記録などサービス提供に関わる様々な書類の必要性が理解できず、後回しにしたり、ほったらかしにしたり、後日まとめて作成することが日常化していませんか?
必要性がわからないので、様々な取り組み意識が低下します。
事故・ヒヤリハット報告など、安全に関わる報告義務を、勝手に処罰されると勘違いして、責任を恐れ書類報告を隠す傾向にありませんか?
ケアプランを基に作成されたサービスの実施計画にないことを、ケアマネジャーに相談せず、その場の判断で勝手にサービスを増やしたり減らしたりしていませんか?
職員意識が低く、「書類はあればいい、やっておけばいいんでしょ、する意味がわからない、聞いていない、知らない、関係ない」など、必要業務に対して理解を求めても消極的、反抗的な態度になっていませんか?
4.介護保険法と法令遵守(コンプライアンス)
45青見 健志
②介護報酬に目がくらみ、不正な手段を用いたり、必要のないサービスを過剰に提供したりすることで、報酬を得ようする輩がいる。
介護サービスを運営している施設経営者のモラルが低く、請求担当者や部下に書類の改竄を指示・強要したり、バレないよう不正に介護報酬を水増しする。組織的犯罪は非常にたちが悪く、発覚後に社会問題や大事件に発展する。
やっていることは詐欺・横領、ただの犯罪行為です。
会社方針で、利用者に必要のない過剰な介護サービス計画をケアマネージャーに作成させ、介護サービスを利用させる。限度額一杯まで介護報酬を請求することで利益を上げようとする。
法律で定められた利用者負担(1~2割)を請求せず不正な割引を行ったり、介護サービスと関係ない娯楽型のサービスを併用させたりすることで、利用者を集客・依存させ、本来の目的とは違ったサービスを提供し、その利用実績により介護報酬を請求する。
その他、悪質でグレーな行為による介護報酬の請求など
5.介護保険法と法令遵守(コンプライアンス)
46青見 健志
③日常業務に追われ管理・監査体制がおろそかになり、本来は請求できない報酬を過誤に請求し報酬が支払われる。
請求管理のチェック、施設基準や人員基準など監査体制が機能していない。
どの施設も日常的に様々な加算を算定し、介護報酬を請求していますが、人員基準や算定要件はしっかりとクリアしているか確認していますか?職員の入退職、勤務シフトの配置ミスにより、知らないうちに算定基準を満たしていない状況になっていませんか?また、法律解釈を間違え、実際は算定できないのに報酬請求をしているかもしれません。日常的にチェック(監査)する体制がないと、知らないうちに違法請求を続けているかもしれません。
介護報酬の請求は、介護保険法をもとに行われています。知らないうちに違法請求を続け、後で法律を知らなかった・理解できなかった・気がつかなかったは、言い訳として一切通用しません。
その日は入浴していないのに、間違えて入浴した事になり報酬を請求しているかもしれません。1回の過誤は気を付けましょうと許されます。100回の過誤は違
法請求事件に発展します。ミスは必ず発生するので、管理監査体制は絶対に必要です。
6.介護保険法と法令遵守(コンプライアンス)
47青見 健志
④業務に追われ、書類作成や日常記録業務を後回しにする。その必要記録がないまま月末を迎え、とりあえず介護報酬の請求を行う。監査や指導が入る前に必死で書類整理を行う。
記録のあとまわし、チェック漏れによる誤った請求を過誤請求と言います。
ケアマネージャーが立てたケアプランをもとに介護サービス計画を立て、利用者へ介護サービスを提供します。その実施と内容を記録に残し、初めて介護報酬を請求することができます。計画の立案、実績記録が残されていない状況で介護報酬の請求を行う行為はできません。
日々の記録、定期的な監査、責任者が管理監督をしっかりやっていくことが大事!
書類業務が後回しになったり、後日うろ覚えの記憶で報酬を算定する行為は過誤請求を引き起こす原因となります。また、記録をどんどん後回しにして、長期間記録業務を放棄しているにもかかわらず報酬算定を行えば、それは介護報酬の不正請求です。
指導監査、情報公表前に手元にない記録書類を一生懸命作成する行為は、ただの違法行為から逃れようとする犯罪行為です。
7.不正請求の責任の重さを理解する
介護報酬は
介護報酬はどこから支払われるのか?
48青見 健志
利用者負担(1~2割) + 介護保険(8~9割) = 介護報酬
利用者負担:利用者から直接利用料の支払いを求める。
介護保険:介護保険の財源は、公費(税金)50%+保険料50%・公費内訳:国(20~25%)+都道府県(12.5~17.5%)+市町村(12.5%)・保険料とは、給与所得より引かれる介護保険料などの社会保障費一定の年齢に到達すると支払いの義務が発生する2016年現在の介護保険徴収:第1号被保険者:65歳以上 第2号被保険者:40~64歳
【まとめ】
利用者の負担で支払われる国民全体の負担で支払われる。
8.不正請求の責任の重さを理解する
介護保険制度はとても素晴らしい制度です。
49青見 健志
介護を必要とする日本中の高齢者が、今日までに構築された介護サービスを利用できなくなったら、沢山の高齢者が介護難民となり、多くの人が介護離職に追い込まれ、世の中大変なことになってしまいます。
あなたが働いている施設の介護サービスを利用している要介護高齢者が、一切サービスを受けられなくなったらどうなるか想像してみてください。
介護保険制度は日本を支える必要な制度です。
今日の世界に誇れる日本を作り支えたのは、自分より年上の世代の人たちです。本来、お年寄りは敬うものでしたが、長寿社会となり価値観が変わってきました。今の日本を支えている自分たちも、将来は年を取り介護を必要とします。
自分が高齢者になった時に、高齢者が社会保障費を食いつぶす悪の根源のような酷い扱いをされたら、どんな気持ちになりますか?
9.不正請求の責任の重さを理解する
介護報酬を不正に請求するということは!
50青見 健志
国民全員へ詐欺を働く行為である
ごく一部の悪質な事業者による不正受給により発生した事件が原因となり、必要とされる介護保険制度が、お金の無駄遣い、お金儲けの手段という間違ったイメージを生んでしまっています。
この状態で膨れ上がる社会保障費の財源を確保しようとしても、他の産業より反対や削減を言われ、立場が悪くマイナス方向へことが運んでしまい、介護保険制度が厳しくなり、介護職員の給与や社会的地位を下げる一方です。介護の現場で働く人にも自分の生活があり、しっかりとした給与が必要です。
しかし、必要のない介護サービスを提供したり、介護報酬を不正に請求し、誤った行為で収入を得ようとしたりすることが、どれだけ多くの人に迷惑をかけるのか考える必要があります。
10.介護施設の法令遵守(コンプライアンス)まとめ
大切なことは介護に関わる人すべてが、しっかりとした知識と認識を持ち、お互いにコミュニケーションを取りながら、健全な姿を考えていくこと。
51青見 健志
健全な介護
業界経営認識施設運営業務管理組織体制サービス提供職員育成書類管理職員
をめざして
11.その他の法令遵守(コンプライアンス)
52青見 健志
【介護保険法意外で介護業務に必要な法律知識】
【労働基準法】就業規則・雇用契約書類・労働時間・労働安全衛生・賃金などの違反
【道路交通法】スピードの違反、交通違反、車両安全管理義務の放棄など
【消防法】消防訓練の未実施、防火管理者の未設置、防火点検の未実施など
【高齢者虐待防止・権利擁護】不必要の身体拘束、暴力、暴言、金銭の着服、介護放棄、性的虐待など
【その他】薬剤の取扱、提供する食事に関わる食品衛生、個人情報の保護など
介護保険制度に記載されている介護業務の抜粋
第4部
53青見 健志
1.業務に関する法令基礎
・介護保険制度の概要と義務
①指定事業者は、要介護者(又は要支援者)の人格を尊重しなければならない。
②指定事業者は、介護保険法又は同法に基づく命令(政令及び省令)を遵守しなければならない。
③指定事業者は、要介護者(又は要支援者)のため忠実にその職務を遂行しなければならない。
④指定事業者は、上記に規定する義務の履行が確保されるよう、業務管理体制を整備しなければならない。
54青見 健志
・業務運営に関する法令等
①人員基準
施設やサービスごとに人員基準が定められている。その基準内容が記載された運営規程が、必ず施設に掲示されている。
②サービス提供の拒否の禁止
正当な理由無くサービスの提供を拒んではならない。
③サービス困難時の対応
適切なサービスが困難であると認められる場合は、当該利用申込者に関わる居宅介護支援事業者への連絡、適切な他の指定事業者への紹介、その他必要な措置をすみやかに講じなければならない。
55青見 健志
2.業務に関する法令基礎
④居宅サービス計画に沿ったサービス提供
居宅サービス計画(ケアプラン)が作成されている場合は、当該計画に沿ったサービス提供をしなければならない。
⑤身分を証明する書類の携行
訪問を行う際は身分を証明する書類を携行させ、利用者又はその家族から求められたときはこれを掲示させなければならない。
56青見 健志
3.業務に関する法令基礎
⑥サービス提供の記録
サービスを提供した際には、提供日及び具体的な内容、利用者の心身の状況、その他必要な事項を記録しなければならない。
また、利用者から申出があった場合には、文章の交付又は利用者の用意する手帳等に記載するなどの方法により、提供したサービスの具体的な内容を利用者に対して提供しなければならない。
⑦提供サービスの基本的取扱方針
利用者の要介護・要支援状態の軽減又は悪化の防止に資するよう、その目標を設定し、計画的に行なわなければならない。
自らその提供するサービスの質の評価を行い、常にその改善を図らなければならない。
⑧提供サービスの具体的取扱方針
居宅サービス事業者は、基準に定められた具体的取扱方針に基づき、適切なサービス提供又は支援を行わなければならない。
57青見 健志
4.業務に関する法令基礎
⑨介護サービス計画書の作成
利用者の日常全般の状況及び希望を踏まえて、サービスの目標、目標を達成するための具体的な内容等を記載した介護サービス計画書を作成しなければならない。
介護サービス計画書はケアプランの内容に沿って作成されなければならない。
介護サービス計画書の作成にあたっては、その内容について利用者その家族に説明・同意を得なければならない。
介護サービス計画書を作成・変更した際には、利用者に交付しなければならない。
58青見 健志
5.業務に関する法令基礎
⑩同居家族へのサービス提供の禁止
訪問看護・介護事業者は、その利用者と同居している家族に対して、サービスを提供してはならない。
⑪勤務態勢の確保
利用者に対し適切なサービス提供ができるよう、事業所ごとに介護従事者等の勤務の体制を定めておかなければならない。
介護従事者等の資質の向上のために、その研修機会を確保しなければならない。
59青見 健志
6.業務に関する法令基礎
⑫秘密保持
正当な理由無く、業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしてはいけない。
事業所の従業者であった者が、正当な理由なく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じなければならない。
サービス担当者会議等において利用者の個人情報を用いる場合は利用者の同意を、利用者の家族の個人情報を用いる場合はその家族の同意を、あらかじめ文書により得ておかなければならない。
⑬事故発生時の対応
利用者に対するサービス提供により事故が発生した場合は、市町村、利用者の家族、担当するケアマネージャーに連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。
事故の状況及び事故に際して講じた処置について記録しなければならない。
利用者に対するサービス提供により損害すべき賠償が発生した場合は、損害賠償をすみやかに行わなければならない。
60青見 健志
7.業務に関する法令基礎
⑭苦情解決
提供したサービスにかかる利用者及びその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応しなければならない。苦情を受けた場合には、その内容等を記録しなければならない。
⑮その他
8.まとめ
家族対応が大変だけど・・・
書類が大変だけど・・・ 報告書が大変だけど・・・
記録が大変だけど・・・
法律で決まっているので、放棄したら違法行為になります。
61青見 健志
法律が難しいけど・・・ 人手が足りないけど・・・
誰かがやる、自分には関係ないなど人任せにせず、仕事にかかわる職員が協力し、知恵を出し、力を合わせ、一つ一つ解決していきましょう。