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タイの環境に対する市民意識と環境関連政策 日本貿易振興機構 海外調査部

タイの環境に対する市民意識と環境関連政策 - JETRO...タイの環境に対する市民意識と環境関連政策 日本貿易振興機構 海外調査部 Copyright

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  • タイの環境に対する市民意識と環境関連政策

    日本貿易振興機構

    海外調査部

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    1

    地球温暖化問題への関心を受け、各国では環境関連政策の整備が進み、政府の啓発活動に

    伴い市民の環境に対する意識が高まりつつある。

    環境意識の高まりは地球温暖化問題だけに向けられているものではなく、健康、安心・安

    全、居心地の快適さ、バリアフリーなどへの関心と相まっており、意識の高まりに伴い、市

    場が大きく変化する兆しを見せている。こうした動きは先進国だけでなく新興国でも見られ、

    特に台湾や ASEAN ではビジネス環境の急転が見込まれている。サッカー・ワールド・カッ

    プとオリンピックを控えているブラジルでも、政府や自治体は市民に対する環境教育にいっ

    そう力を入れるようになった。

    こうした世界的なトレンドを受け、ジェトロでは、主要 30 カ国・地域を選び、市民の環境

    への意識および環境関連政策について、概要を取りまとめることとした。

    環境関連政策としては、(1)電力・エネルギー、(2)廃棄物処理、(3)交通、(4)住宅・建築をと

    りあげた。また、ビジネスの参考として、環境関連の経済指標および当該国・地域の気候関

    連情報についても盛り込むこととした。

    本レポートは、この一連の調査のタイ版である。

    なお本レポートは、 環境政策関連のデータベースを運用する民間のシンクタンク、Enhesa,

    Inc.1に委託した調査の報告書「Environmental Policy Research 2010 」を基に、ジェトロが

    編集・改訂を行ったものである。

    2011 年 2 月

    海外調査部

    1 www.enhesa.com

    http://www.enhesa.com/

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    2

    「環境に対する市民意識と環境関連政策」レポート掲載国・地域一覧

    EU、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スウェーデン、ハンガリー、ポーラ

    ンド、デンマーク、チェコ、サウジアラビア、UAE、インド、シンガポール、マレーシア、

    インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、カンボジア、台湾、中国、韓国、オーストラ

    リア、カナダ、米国、メキシコ、ブラジル、チリ。

    1. 位置・気候

    タイは、東南アジア大陸部の中央からマレー半島の付け根部に位置し、北から南にかけて

    の距離 1,620km、東から西にかけての距離 775km の国土を持つ。面積は 51 万 3,115km2で

    ある。

    国土は北緯 6°から 20°の間に位置し、南端部は赤道性気候であり、中央部と北部は熱帯

    モンスーン気候である。

    チャオプラタヤ川流域およびメコン川の市流域は平野が広がるが、タイ北部の多くは山々

    に覆われ、山間部がラオス、ミャンマー国境からクラ地峡を通りマレー半島へと続く。中央

    部のペプチャン山脈、東部カンボジアとの国境のドンラク山脈などの高地もみられる。

    3 月と 4 月に気温は最も高くなり、平均気温は最低気温 28℃から最高気温 38℃に達し、平

    均湿度は 73%から 82.2%に達する2。

    森林地帯の面積は 1,680 万ヘクタール(国土の 32.7%)と見積もられている3。

    2. 環境に対する市民意識

    市民の環境に対する意識はタイの工業化が進むに連れて高まってきた。1971 年に国家経済

    社会発展計画(NESDP)に着手して以降、経済は急速な発展を遂げた。第 6 次 NESDP

    (1987 年~1991 年)における年間の経済成長率は 10.9%に到達した。しかし第 6 次

    NESDP が完了するまでに多くの地域で著しく開発が進み、大量の森林が伐採された。

    タイの森林資源を管理する政府機関、王室森林局(Royal Forest Department)は、国王在位

    50 周年の 1993 年に、80 万ヘクタールの永久林を創るプロジェクトに着手したが、このプロ

    ジェクトには多くの民間部門が関わっている。08 年までに 16 万ヘクタールの植林を行って

    いる。同局では植林だけでなく、森林の効率的な利用や周辺環境の整備などを含め教育・啓

    蒙面でも多角的な取り組みを行っている。

    近年、工業地帯または工業団地4の付近では、環境汚染による深刻な影響を受けているとい

    う自覚を持つ市民が増えている。

    2 https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/geos/th.html

    http://www.mfa.go.th/web/2634.php

    http://www.bbc.co.uk/weather/world/country_guides/results.shtml?tt=TT002890 3 The Thailand Forestry Outlook Study under the Asia-Pacific Forestry Sector Outlook Study II (Working Paper No. APFSOS

    II/WP/2009/22) of the Food and Agriculture Organization of the United Nations Regional Office for Asia and the Pacific,

    2009.

    http://www.fao.org/world/regional/rap/natural-resources-and-environment/links/asia-pacific-forestry-sector-outlook-

    study/en/ 4 Industrial Estates are developed and managed by the Industrial Estate Authority of Thailand (IEAT). They resemble

    industrial towns or industrial cities providing complete infrastructure necessary for industrial operations, such as ample

    electricity, water supply, flood protection, waste water treatment, solid waste disposal, etc. It is accessible to seaports,

    (footnote continued)

    https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/geos/th.htmlhttp://www.mfa.go.th/web/2634.phphttp://www.bbc.co.uk/weather/world/country_guides/results.shtml?tt=TT002890

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    ラヨーン県の Map Ta Phut 工業団地の周辺住民が、化学工場から排出される揮発性有機化

    合物(VOC)により甚大な健康被害を受けていると主張したことに対して政府は 09 年 5 月 1

    日、地元コミュニティが大気汚染の緩和と根絶に関する行動計画に着手できるように、国家

    環境会議(NEB)を通して Map Ta Phut 工業団地とその近隣地域を大気汚染管理区域に指

    定した5。

    しかし、地元コミュニティと「ストップ地球温暖化協会」のメンバーは 09 年 6 月 19 日、

    5 つの省、NEB、および天然資源環境政策・計画局の事務局を、07 年憲法の第 67 節第 2 項

    を順守しなかったとして、行政裁判所に訴訟を起こした6。

    07 年憲法は、従来の環境への影響の評価に加え、健康への影響の評価を求めているが、後

    者については行政手続きを定める法律が未整備となっている。一方で、憲法第 67 節第 2 項は、

    ①環境への影響に関する評価(EIA)と健康への影響に関する評価(HIA)が実施されていな

    いとき、②公聴会が行われていないとき、③独立した諮問機関が計画に関して意見を表明し

    ていないとき、甚大な環境被害を与える可能性があるプロジェクトを開始することを禁じて

    いる。

    この裁判は、環境問題と憲法で保障された市民の権利を取り扱うものとして市民から注目

    されただけでなく、工場の設立手続きと絡んで産業界からも注目された。

    07年の憲法は、EIAとHIAの必要条件に関する規定以外にも、自然の保全と管理に政府ま

    たは地元のコミュニティと共に参加することに対する市民の権利を拡大させた点で、重要な

    役割を持っている7。

    09 年 9 月 29 日、中央行政裁判所は第 67 節第 2 項に基づく必要条件に照らし行政手続きに

    瑕疵があったとする判断を下し、Map Ta Phut 工業団地で進行していた 76 のプロジェクト

    に対する許可を一時停止させた8。上告審で最高行政裁判所も同年 12 月 2 日、同様の理由で

    行政手続きの瑕疵を認める判決を下したが、76 のプロジェクト中、11 のプロジェクト(のち

    に 1 つ追加し計 12 のプロジェクト)は除外した9。タイ政府は現在、健康面への影響の評価に

    対する行政手続きの立法化に向けて努力をしている。

    観光立国としての伝統があるタイでは、観光資源保全の観点からも環境問題と向き合って

    いる。タイに設立されているグリーン・リーフ財団は、タイ観光庁等と提携し、ホテル部門

    の環境への取り組みを支援している。ホテルでは、廃棄物管理、節水・節電、海岸など周辺

    環境の清掃、禁煙化など様々な環境への取り組みを行っている。環境に配慮する優良な取り

    組みを行っている事業主には、タイ観光庁から「Thailand Tourism Awards」が授与される。

    airports and other transportation centers. As of October 2010, there are 42 industrial estates located in 15 provinces

    nationwide.

    http://www.boi.go.th/english/how/industrial_estates.asp 5 The Notification of the National Environment Board No.32 of 2009.

    http://www.onep.go.th/neb/6.%20Laws/data/annoucement_neb/neb_annoucement32.pdf 6 Section 60 of the Constitution endorses the citizen’s right to sue the government to be liable for an act or omission done by

    its government official, officer or employee. 7 The 2007 Constitution

    http://english.constitutionalcourt.or.th/dmdocuments/Constitution2007byIFES.pdf 8 http://www.bangkokbiznews.com/home/media/2009/12/02/attachfile/news_attach_89316_2.pdf 9 A complete Supreme Administrative Court ruling on Map Ta Phut case (Ruling no. 586/2552)

    http://www.bangkokbiznews.com/home/media/2009/12/02/attachfile/news_attach_89316_3.pdf

    http://www.boi.go.th/english/how/industrial_estates.asphttp://www.onep.go.th/neb/6.%20Laws/data/annoucement_neb/neb_annoucement32.pdfhttp://english.constitutionalcourt.or.th/dmdocuments/Constitution2007byIFES.pdfhttp://www.bangkokbiznews.com/home/media/2009/12/02/attachfile/news_attach_89316_2.pdfhttp://www.bangkokbiznews.com/home/media/2009/12/02/attachfile/news_attach_89316_3.pdf

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    1995 年にモルジブで設立され、現在はバンコクに本拠を置く Six Senses Resorts & Spa

    は、基本コンセプトにサスティナビリティを組み込み、立地条件によってはクリーニングサ

    ービスでドライクリーニングを行わないなど、環境に配慮したサービスを提供している。同

    社はタイ国内に 7 つのホテルを展開している他、ベトナム、モルジブ、オマーン、ヨルダン

    にもホテルを所有し、スペイン進出も準備している。ホテル・リゾート分野における環境配

    慮型のビジネス・モデルのひとつとして注目されている。

    3. 環境関連政策

    タイの環境政策は憲法に深く根ざしている。1974 年の憲法は環境の保護に関する規定を最

    初に定めた憲法で、第 77 節において、環境と自然の保全と保護という政府の義務を規定して

    いる。

    また、1997 年の憲法は、環境に悪影響を及ぼす結果を招くこととなった行政の義務の不履

    行を理由に、政府に対し訴訟を起こす国民の権利を初めて認めた。1997 年の憲法はまた、持

    続可能な方法で自然の保全、管理のプロセスに政府と共に地域コミュニティが参加する権利

    も認めている。以前は、政府が全面的に、自然の保全、管理のプロセスに主体的に関わって

    いた10。

    現在施行されている 07 年憲法の環境保護の規定は 1997 年憲法に類似しているが、07 年の

    憲法は、環境と自然の保護に関する政府と国民の権利・義務を次のように明記している。

    1. 環境に対して深刻な影響を与える可能性がある計画に対し、EIA と HIA を遂行する義務

    (第 67 節第 2 項)。

    2.環境、健康、および衛生上の条件に影響を与える可能性のある計画または活動を遂行する

    許可が与えられる前に、情報提供、説明、理由を政府から市民が受ける権利(第 57 節)。

    1975 年に Enhancement and Conservation of National Environmental Quality Act

    (NEQA)が施行されて以来、環境に関するタイの法律規定は徐々に整備されてきた。同法

    もまた 1992 年に修正が加えられた。

    NEQA は環境の保護と管理に具体的に対応する最初の基本法である。それ以前は、環境の

    保護に関する規定は Factory Act、Public Health Act、Mining Act、Public Cleansing、

    Orderliness Act など個別の法律に分けて規定されていた。

    1992 年改正の NEQA には、国内で行われる効率的な環境管理のための基本が規定されて

    いる。さらに、NEQA は環境保護に関する法律規定の順守を促すインセンティブに関する規

    定も定めている。これらの規定には、事業により生じる環境汚染を管理するため用いる装置

    の輸入者に対して、資金の提供と税額控除を適用する制度が含まれる。

    複数の中欧政府機関と地方の管轄下にある環境保護の体制を調整する目的で、NEQA に基

    づき国家環境会議(NEB)が設置された。NEB では首相が議長を務め、首相によって副首

    相が副議長に、天然資源環境大臣が第二副議長に、天然資源環境省の事務次官が委員兼書記

    にそれぞれ任命され、運輸・情報通信大臣、内務大臣、教育大臣、公共衛生大臣、産業大臣、

    10 Sueb Nakhasathien Foundation ( ) http://www.seub.or.th/index.php?option=com_content&view=article&id=185:2009-11-19-09-37-31&catid=50:2009-11-03-

    07-41-46&Itemid=73

    http://www.seub.or.th/index.php?option=com_content&view=article&id=185:2009-11-19-09-37-31&catid=50:2009-11-03-07-41-46&Itemid=73http://www.seub.or.th/index.php?option=com_content&view=article&id=185:2009-11-19-09-37-31&catid=50:2009-11-03-07-41-46&Itemid=73

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    投資会議の書記長、予算事務局長が委員を務める。また、職務上の委員および環境問題に関

    する委員として最大 8 人が加わる(うち半数以上は民間部門の代表者でなければならない)。

    NEB の主な任務の一つに、環境の質に関する基準、排出と流出に関する基準の策定、およ

    び大気汚染管理区域や保全または環境保護の区域といった環境を保護する上で重要な区域の

    指定がある。

    環境の保護と保全に関する課題は、益々重要視されている。第 7 次 NESDP(1992 年~

    1996 年)から第 10 次 NESDP(07 年~11 年)に至るまで、多くの課題が NESDP に組み込

    まれた。先ず、水と大気の質に関する基準を定める数々の規定が導入されている。Factory

    Act には環境保護に関する様々な条項が含まれ、この法律に基づき様々な規定が導入されてい

    る。これらには、工場の運営者が環境の質を保護する義務を遂行するように求める産業省に

    よる数多くの通達が含まれる。

    (1)電力・エネルギー政策

    政府は、再生可能エネルギー政策を含むエネルギー政策全般を司る最高意思決定機関とし

    て、首相府直轄のエネルギー規制委員会(ERC)と国家エネルギー政策委員会(NEPC)を

    設置している。ERC はエネルギー事業の規制、運用規則の制定を所轄し、NEPC は国家的な

    エネルギー政策を推進する組織として位置づけられている。エネルギー省(M O E)はこれ

    ら機関への政策立案及び政策実施官庁としての役割を担っている。

    電力開発プラン(PDP)は、電力政策の根幹を成すもので、MOE が 3 年おきに改訂している。

    「グリーン P D P」とも呼ばれる現行の「PDP201011」は、3 0 年までの長期ビジョ

    ンを示すもので、 10 年 3 月 12 日に NEPC において承認された。

    主な計画は次の通り。

    1)計画対象期間:2010~2030(21 年間)

    2)電力需要予測:年平均 4.3%増

    3)設備開発計画:

    ①電力輸入量:全容量の 25%以下

    ②輸入プロジェクト:2017 年までに特定

    ③石炭火力開発:2019 年以降(IPP を除く)

    ④小規模発電事業者(10 を超え~90MW の Small Power Producer :SPP)開発量:

    2021 年までに 3,919MW

    ⑤極小規模発電事業者(10MW 以下の Very Small Power Producer:VSPP)開発量:

    2021 年までに 2,470MW

    ⑥再生可能エネルギー:

    2021 年までに 3,957MW

    4)温室効果ガス削減:

    2020 年時点で kWh あたり二酸化炭素排出量を改定 PDP2007 の数値以下とする。

    PDP 2010 は、30 年までに総電力量の 5%に相当する 5,347.5 MW の電力を再生可能エネ

    ルギー源から発電するという目標を設定し、中期目標として 08 年から 22 年までの代替エネ

    ルギー開発計画(AEDP)を組み込んでいる。

    11 A summary of PDP 2010

    http://www.egat.co.th/thai/files/Report%20PDP2010-Apr2010_English.pdf

    http://www.egat.co.th/thai/files/Report%20PDP2010-Apr2010_English.pdf

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    AEDP は、22 年までに再生可能エネルギーによる電力が占める割合を最終エネルギー消費

    量の 20.3%にまで高めることを目指している。MOE の直属機関、代替エネルギー開発・効

    率化庁(DEDE)が、AEDP を管轄する。

    なお、PDP の再生エネルギーの定義はバイオマス、バイオガス、ゴミ、太陽光、風力、小

    規模水力となっており、大規模水力は含まれていない。開発は、特にバイオマス、風力、太

    陽光を促進する計画である。

    AEDP は短期的戦略(08 年~11 年)、中期的戦略(12 年~16 年)、および長期的戦略

    (17 年~22 年)に分けられる。22 年までに目標を達成するために代替エネルギーの開発に

    関する次の分野の電力シェアの目標を定めている。

    ①小規模な電力生成者(SPP)と零細な電力生成者(VSPP)が再生可能エネルギー源から

    生成する電力のシェアの 2.4%への拡大。

    ②再生可能エネルギー源から生成される電力のシェアの 7.6%への拡大。

    電力の買電は、政府系機関による単一買電を基本としている。電力発電局(EGAT12)など

    が、国営および民間の発電事業体(IPP)から電気を購入して個別に流通を行う事業体に販売し、

    これらの企業が最終消費者に向け小売りを行う。政府による IPP(SPP、および VSPP を含

    む)への支援措置を踏まえて、発電事業への民間の参入が増えている13。

    DEDE は各タイプの再生可能エネルギー源の現時点における能力についてまとめ、22 年ま

    でに実現を目指すべき能力を以下のように設定している。

    単位:MW

    現在値 目標値(2017年~2022年)

    太陽光 32 56

    風力 1 89

    水力 56 85

    バイオマス 1,610 1,933

    バイオガス 46 54

    都市で発生する固形廃棄物 5 72

    水素 0 1

    MOE が直轄する国家エネルギー政策計画委員会は、数多くの大規模な再生可能エネルギー

    政策を承認するための決議を採択している14。この採択には、発電を目的とした再生可能エネ

    ルギーの利用を促進するための固定価格買取り制度(Feed in Tariff)の承認が含まれる。FIT 価

    格は使用される再生可能エネルギー源により異なる。この FIT は、06 年から施行されている

    「加算価格制度(adder tariff scheme)」(EGAT が電力を販売する際の通常価格に、エネル

    ギー購入価格が加算される現行の制度)に置き換えられる。

    12 EGAT is the state enterprise under the Ministry of Energy. Currently EGAT builds, owns and operates several types and

    sizes of power plants across the country with a combined installed capacity of 13,617.10 MW accounting for about 47.8 % of

    the country’s 28,479 MW generating capacity. EGAT also purchases electric power from private power companies and

    neighboring countries. 13 See the Worldbank’s Thailand Infrastructure Annual Report 2008

    http://www.worldbank.or.th/WBSITE/EXTERNAL/COUNTRIES/EASTASIAPACIFICEXT/THAILANDEXTN/0,,content

    MDK:22040516~pagePK:1497618~piPK:217854~theSitePK:333296,00.html 14 The resolution of the Committee of 28 June 2010 is available in Thai online at

    http://www.pea.co.th/vspp/etc/kpc2-2553.pdf

    http://www.pea.co.th/vspp/etc/kpc2-2553.pdf

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    小型の発電事業者には、電力の買い取り保証制度がある。これは、発電事業者が、再生可

    能エネルギーによる発電を EGAT に売却する際、一部を固定プレミア価格を上乗せした価格

    で買い取る制度である。発電容量に応じての SPP と、更に小規模な VSPP に区分されている。

    PDP2010 では極小型の再生可能エネルギー開発を重視し、VSPP の再生可能エネルギー比率を

    5%以上とする目標を定めている。

    PDP 2007に基づき、原子力発電所を建設する計画が承認された。NEPCは、原子力発電イ

    ンフラ設置計画(NPIEP)として報告された原子力計画のための準備作業を遂行する目的で、

    原子力発電インフラ準備委員会(NPIPC)とその小委員会を設置している。07年10月には、

    MOEの下に原子力計画開発局(NPPDO)が設置された。

    PDP 2010によれば、20年から28年までの間に、1,000 MW規模の原子力発電所5基が稼動

    することになる。政府が原子力発電所の建設を決断すれば、最初の2基は20年と21年に完成

    する。しかし現在のところ、政府はタイ国内で原子力発電計画を遂行するか否かについて最

    終的な決断を下していない。この計画を開始するには、公の協議を踏まえて、内閣が最終的

    な承認をしなければならない。EPPOの理事長によれば、政府が原子力発電所の稼動を決断し

    なければ、タイでは天然ガスを利用した電力発電が主流であり続けるという。タイは天然ガ

    スの70%を電力発電のために利用しているが、シャム湾に眠る天然ガスの量は著しく減尐し

    ている。このため、今後は液化天然ガス(LNG)をより大量に輸入する必要性に迫られる可

    能性が高く、結果的に電気料金が高騰し、消費者の負担が増えるという議論もある。

    タイ・ビジネス評議会は1993年、グリーン・ラベルを制度化した。この制度は、1994年8

    月にタイ環境協会(TEI)が産業省の協力を得て実際に導入した。

    タイ・グリーン・ラベル

    グリーン・ラベルは、同じ機能を持つ他の製品と比較して環境に対する悪影響が最小限に

    抑えられていることが証明された特定の製品に対して与えられる環境性能に関する証明書で

    ある。タイ・グリーン・ラベル制度は、食品、飲料、および医薬品を除く製品とサービスに

    適用される。タイ・グリーン・ラベルの基準を満たす製品やサービスには、タイ・グリー

    ン・ラベルを貼付することができる。この制度への参加は任意である15。グリーン・ラベルが

    与えられた製品と基準の一覧は、TEIのウェブサイトで閲覧することができる16。一覧に示さ

    れた製品には、リサイクルされたプラスチックを使用して製造された製品、蛍光灯、冷蔵庫、

    塗料、コンピュータなどがある。

    タイ温室効果ガス管理機関(TGO)は、09年12月25日にカーボン・フットプリント・ラベ

    リングに関する試験計画17に着手した。炭素排出量ラベリングは、ある製品の製品寿命の間に

    15 More information on the Green Label Scheme is available at the website of the Thailand Environment Institute at http://www.tei.or.th/greenlabel/about.html

    16 http://www.tei.or.th/greenlabel/categories.html

    17 TGO is the newly established autonomous governmental organization with the specific purpose to act as an implementing

    agency of greenhouse gas (GHG) emission reduction in Thailand, promoting: low carbon activities; investment and

    (footnote continued)

    http://www.tei.or.th/greenlabel/about.htmlhttp://www.tei.or.th/greenlabel/categories.html

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    排出する炭素排出量を証明するもので、この計画は、生産される製品が製品寿命の間に引き

    起こす環境への影響に対する製造者の意識を向上させ、消費者が気候変動の影響の緩和に直

    接貢献できるように環境に配慮した製品を購入することを奨励することを目的としている。

    試験計画の最終的な目標は、温室効果ガスの排出量の削減において製造者と消費者にそれぞ

    れの役割を促すことである。

    (2)廃棄物処理政策

    09 年の環境報告書 ( .ศ. 2552) によれば、タイ国内で発生する固形廃

    棄物の量は年々増加している。08 年に全国で発生した固形廃棄物の総量は前年比 2%増加し、

    約 1,500 万トンに達した。

    固形廃棄物が増加している主な理由は、人口の増加と消費行動の変化である。しかし、08

    年に発生した固形廃棄物のうち、適切な技術基準に従って処理されたのは全体の 37%、1 万

    5,234 トンに過ぎない。こうした傾向は、予算の不足が原因となっている。

    様々な種類の廃棄物に、それぞれ廃棄物の管理に関して複数の法律が適用されている。一

    般的に、地域で発生する固形廃棄物とし尿18は、1992 年 3 月 29 日の Public Health Act

    ( .ศ. 2535) に基づく。「し尿」とは、異臭を放つ汚染された物体を含む人間

    の排泄物を指す。廃棄物の管理は、各地域の当局が責任を持って行うこととなっており、当

    局は代理の業者にこの作業を委託することができる。

    Public Health Act が定義する「固形廃棄物」には、衣料、食品、日用品、ビニール袋、食

    品の容器、灰、動物の遺骸、および道路や市場で収集されたその他の物が含まれる。Public

    Health Act の第 19 条には、固形廃棄物の収集、輸送、または処理を行う事業体は、当該の

    事業体が設立されている、または業務を行っている県または地域の当局者より許可を得なけ

    ればならないと定められている。

    廃棄物処理に関する規定の基本は、05 年の産業省による通達19である。原料、および有害

    物質を含む廃水をはじめとする産業活動によって生じるあらゆる種類の廃棄物は、当該通達

    に示される必要条件を満たさなければならない。廃棄物を発生させる者は、当該通達に従っ

    て廃棄物を確実に分別しなければならない。当該通達に従い分別する廃棄物の例を次に示す。

    1)無機化学薬品の処理によって生じる廃棄物。

    2)コーティング(塗料、ニス、およびガラス状エナメル)、接着剤、シーラント、および

    印刷用インクの製造、処方、供給、および使用によって発生する廃棄物。

    3)廃油、液化燃料(食用油を除く)の廃棄物。

    4)建設作業および解体作業で生じる廃棄物(汚染された現場を掘削した際の土壌を含む)。

    marketing of GHG emission reductions; establishing a GHG information centre; reviewing clean development mechanism

    (CDM) projects for approval; providing capacity development and outreach for CDM stakeholders and promotion of low

    carbon activities, and particularly performing its role as the Designated National Authority for the CDM (DNA-CDM) office

    in Thailand. nformation on the carbon footprint labeling project is available at

    http://www.tgo.or.th/english/index.php?option=com_content&task=view&id=28&Itemid=35 18 Local authority includes the Governor of Bangkok ( ), Municipal Mayor ( ศ ศ ),

    Chief Executive of the Sub-District Administrative Organization ( ), and Mayor of Pattaya City ( ).

    19 The Notification of the Ministry of Industry of 2005 Concerning Waste Disposals is available (in Thai) at

    http://www.industry.go.th/ops/pio/chiangrai/Lists/command1/Attachments/15/ %202.pdf

    http://www.tgo.or.th/english/index.php?option=com_content&task=view&id=28&Itemid=35http://www.industry.go.th/ops/pio/chiangrai/Lists/command1/Attachments/15/ประกาศกระทรวงอุตสาหกรรม%202.pdf

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    9

    公害管理局(PCD)は、バッテリーと梱包物を含む使用済み携帯電話の回収計画に着手し

    た。この計画では、顧客は使用済み携帯電話をアクセサリーと共に製造者やネットワーク提

    供者が用意した回収場所に戻すことが奨励される。この計画への参加は任意である20。

    環境クオリティー管理計画 ( 2550-2554) 21 に従って、政府は固形廃棄

    部の管理を目的とした計画を導入するという目標を設定した。この計画は、廃棄物の管理に

    政府、民間企業、および公的機関の参加を促すことを目指している。これに関連し、製造者

    と流通者は製品に使用する梱包物の量を削減し、リサイクル可能な材料を含む製品を販売す

    るように促される。

    バンコク都市行政機関(Bangkok Metropolitan Administration)はバンコクで発生するすべて

    の固形廃棄物を収集し、それらの廃棄物を処理する民間業者を入札プロセスを通して選定し

    ている。08 年現在、収集された固形廃棄物のうち約 12%が肥料として利用され約 26%が埋

    め立て処理されている。バンコクを除くほとんどの地方自治体は効率的な廃棄物管理システ

    ムを保有していない。そうした地域では、廃棄物が野焼きされたり、集積場に捨てられたり

    している22。

    (3)交通政策

    運輸省(MOT)の運輸・交通政策計画局(OTP)は基本計画、および輸送システム全体、す

    なわち陸上、水上、および航空輸送のシステムへの投資計画の調査と分析、ならびに遂行に

    ついて責任を担う主要な機関である。OTP は環境の保護と持続可能な発展を考慮しながら効

    率性、経済性、および輸送の安全性を高めることを主な目標としている。

    幹線道路庁(DOH)も、基幹道路の開発計画を策定および提案し、基幹道路の建設に関す

    る基準を設定する主要な政府機関である。一方で道路は、農村地帯道路庁、地域行政庁を含

    む様々な機関によって管理されている。しかし、総合的な統計データは今のところ集められ

    ていない。幹線道路の全長は 09 年の時点で 6 万 5,630kmに達しており、そのうち 99.59%は

    舗装されている23。バンコクでは、道路が主要な輸送手段となっている。

    タイの主要幹線鉄道は、国鉄が管理している。バンコク駅(Hua Lamphong)からは北、北

    東、東、および南に向う 4 つの主要な路線が延びている。鉄道の多くは単線で、タイ国鉄が

    30 年かけて推し進めている発展計画には、軌道の複線化を含む輸送力整備が主要な目標とし

    て掲げられている。バンコク市内では、地下鉄とスカイトレインという 2 種類の都市鉄道が

    存在する。地下鉄はタイ高速交通機関局(MRTA)により、スカイトレインは民間のバンコ

    ク・マス・トランジット・システム社により管理されている。 また、タイは古くから河川や水路が重要な輸送手段として使われてきた。バンコク首都圏

    では、チャオプラタヤ川とセンセープ運河(Klong Saen Saeb)が水上輸送のための主要な経路

    として利用されており、特急、急行などと呼称される高速ボートによる定期船もある24。

    20 Project on Recycling Mobile Phone Battery in Thailand

    http://www.pcd.go.th/info_serv/en_haz_battery_pcd.htm 21 The plan can be downloaded at

    http://www.onep.go.th/index.php?option=com_content&task=view&id=78&Itemid=63 22 State of Thailand Pollution Report 2008, Pollution Control Department, available (in Thai) at

    http://infofile.pcd.go.th/mgt/Report51.pdf?CFID=3163964&CFTOKEN=52947431 23 Transport Statistic (2009 edition), Office of the Permanent Secretary, Ministry of Transport

    http://www.news.mot.go.th/motc/portal/graph/transtat09.pdf 24 Summarized from

    http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/COUNTRIES/EASTASIAPACIFICEXT/EXTEAPREGTOPTRANSPOR

    T/0,,contentMDK:20767673~menuPK:2069358~pagePK:34004173~piPK:34003707~theSitePK:574066,00.html

    http://www.pcd.go.th/info_serv/en_haz_battery_pcd.htmhttp://www.onep.go.th/index.php?option=com_content&task=view&id=78&Itemid=63http://infofile.pcd.go.th/mgt/Report51.pdf?CFID=3163964&CFTOKEN=52947431http://www.news.mot.go.th/motc/portal/graph/transtat09.pdfhttp://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/COUNTRIES/EASTASIAPACIFICEXT/EXTEAPREGTOPTRANSPORT/0,,contentMDK:20767673~menuPK:2069358~pagePK:34004173~piPK:34003707~theSitePK:574066,00.htmlhttp://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/COUNTRIES/EASTASIAPACIFICEXT/EXTEAPREGTOPTRANSPORT/0,,contentMDK:20767673~menuPK:2069358~pagePK:34004173~piPK:34003707~theSitePK:574066,00.html

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    07 年、MOT は「タイの持続可能な発展に向けた輸送活動25」に関する白書を発行した。こ

    の白書は、将来的なタイの多様な交通システムの発展に向けた基盤を整備すること、すなわ

    ち道路、鉄道、および水上輸送の各システムを高い次元で統合することを主な目標として掲

    げている。この白書では、国の持続可能な発展に向けて多様な輸送手段を整備することで、

    民間部門による輸送システムの発展への関与の機会がより多くもたらされると指摘している。

    また、既存の輸送網が、より環境にやさしい方法でより効率的に機能するとも指摘している。

    この白書はまた、エネルギー節約と環境保護を目的とした輸送活動に関する原則と理論的裏

    付け、ならびに実施に関するガイドラインを示している。

    ガイドラインには例として以下の内容が含まれる。

    1)民間および公共の輸送機関に CBG を燃料とする車両やトラックの導入を奨励するなど、

    節約的で清浄なエネルギーの使用を促進する。

    2)大気汚染と燃料の消費を削減するため、鉄道の電化を推し進める。

    3)地球温暖化の問題の軽減に貢献することを目指し、輸送システムから排出される二酸

    化炭素の量を削減するための目標値を設定する。

    ガソリン車とオートバイの車両の排気について、天然資源・環境省は排出基準を定める通

    達を出している。07 年以降に登録する自動車については、

    (1)一酸化炭素が 0.5%を超えてはならない。

    (2)炭化水素(HC)が 100 PPM を超えてはならない。

    09 年以降に登録するオートバイについては、

    (1)一酸化炭素が 2.5%を超えてはならない。

    (2)炭化水素(HC)が 1,000 PPM を超えてはならない。

    としている。また、定められた基準への適合性の確認のため、すべての車両を定期的に点検

    しなければならないとし、基準に準拠していない車両の使用は永続的に、または必要条件を

    満たすよう改良されるまで、禁止される。

    陸上輸送庁の輸送工学部門は車両の点検と汚染管理に関する措置、手順、基準を決め、保

    有する車両点検用装置の点検、修理、および保全を、責任を持って行うこととなっている。

    また関係機関に対し、車両点検用装置の使用と保全について助言を与え、教育訓練を実施す

    る。

    政府ではまた、

    1)陸上輸送部門に対するエタノール、バイオディーゼル、および水素を含むバイオ燃料の

    利用の促進(車両燃料に占めるシェアの 4.1%への拡大)。

    2)車両用天然ガス(NGV)の利用の促進(車両燃料に占めるシェアの 6.2%への拡大)。

    を目標に掲げている。

    運輸部門におけるクリーン開発メカニズム

    09 年、運輸・交通政策計画局(OTP)は、バンコクの運輸部門から排出される温室効果ガ

    スの量を削減することを目的としたクリーン開発メカニズム(CDM)を採用する可能性に関

    する調査の第 2 段階を完了した。MRTA のブルー・ライン(Bangsue – Ta Phra and Hua

    25 “Transport for Thailand’s Sustainable Development” is available online at

    http://portal.mot.go.th/images/White%20Paper%20En.pdf

    http://portal.mot.go.th/images/White%20Paper%20En.pdf

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    Lamphong – Bang Kae)が調査の対象26。この調査に基づき、特定の交通機関に関する計画

    設計書(PDD)が作成された。同計画書は、気候変動に関する国連枠組み条約(UNFCCC)

    委員会に提出される予定である。

    (4)住宅・建築政策

    Energy Conservation Promotion Act B.E. 2550(07 年) ( 2

    .ศ. 2550) は、住宅部門におけるエネルギー効率の促進に向けた主要な政策の枠組みを定めて

    いる。この法律には、工場や大きな建物におけるエネルギー保全を求める規定が含まれてい

    る。指定された工場と建物の所有者は保全に関する目標を設定し、保全計画を政府に提出し

    なければならない。工場はエネルギー消費の監視を行い、政府に報告書を提出し、エネルギ

    ーに関する監査を実施し、政府の認定を受けたエネルギー管理者を任命し、エネルギーの生

    成、消費、および保全に関する詳細な記録を保存しなければならない。エネルギーの消費、

    エネルギーの消費と保全のレベルに影響を与える機械類や装置の設置・改変に関する情報を

    月毎に収集し、毎年 7 月と 1 月にエネルギー開発推進庁(DEDP)に提出しなければならな

    い。

    指定された建物とは、①総計 1,000 kW または 1,175 kVA を超える電気メーターまたは変

    圧器を使用する建物、②前年の 1 月 1 日から 12 月 31 日までのエネルギー消費量が電気エネ

    ルギー2,000 万メガジュール相当以上となる建物を指す。指定された工場とは、①同 10,000

    kW または 11,750 kVA または変圧器を使用する建物、②同 2 億メガジュール相当以上となる

    建物を指す。

    07 年、DEDE は「建物用エネルギー節約ラベル」の導入計画に着手した27。この計画は、

    既存の建物および計画中の建物の所有予定者が、エネルギー節約ラベルの発行申請を行うこ

    としている。この計画に参加できる建物は、住居用建物、ホテル、事務所、および商業用建

    物である。この計画に参加するための申請書は DEDE に提出することとされている。

    計画段階の場合は、DEDE の技術者チームが建物の設計を検証する。技術者チームは①所

    在地、②空調設備、③照明設備、④エネルギー管理設備、⑤衛生設備、⑥建材、⑦建物のエ

    ネルギー節約戦略、を検証の対象とする。建物は、エネルギー節約に関して「良い」、「と

    ても良い」、「極めて優れている」という 3 段階で評価される。申請者はエネルギー節約ラ

    ベルの取得資格を得るために建設計画の見直しを求められる場合がある。

    申請者が既存の建物の所有者である場合、技術者チームは建物の構造全体について検証を

    行い、全体の評価を下す。

    09 年 11 月、DEDE は「エネルギー効率の高い建物の設計を推進するための計画」(通称

    2E-building)と呼ばれるプロジェクトに着手した28。新設する 2E-building Center により、

    Energy Conservation Promotion Act B.E. 2550 の対象建物の設計等への助言を行うもの。09 年の

    26 More information about the project is available at

    http://www.otp.go.th/th/index.php/project/26-2551/1855-itsi.html 27 More information about the project is available at

    http://58.181.129.200/logosav/content.php?id=3 28 More information about the project and service provided by the 2E-building Center are available at

    http://www.2e-building.com/detail.php?id=2

    http://www.otp.go.th/th/index.php/project/26-2551/1855-itsi.htmlhttp://58.181.129.200/logosav/content.php?id=3http://www.2e-building.com/detail.php?id=2

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    規程に基づき定められた規範、基準、および手順に合致させるためのもので、次の内容が含

    まれている29。

    1)燃焼機関の燃焼効率の改善。

    2)エネルギー損失の防止。

    3)エネルギー廃棄物のリサイクル推進。

    4)効率がよい種類のエネルギー・システムへの代替推進。

    5)力率30の向上、電気システムのピーク需要時における最大電力需要の低減、適切な装置の

    使用を通した電気のより効率的な利用、またはエネルギー効率の高い機械類または装置

    の使用、およびエネルギー保全に役立つ作動制御システムまたは材料の使用といったそ

    の他のアプローチによる電気のより効率的な利用。

    (5)公的機関によるグリーン調達

    タイは、07 年から 11 年までの第 10 次国家経済社会開発計画(NESDP)と 07 年から 11

    年までの環境管理計画( .ศ. 2550-2554)に公的機関によるグリーン調達の計画を盛

    り込んだ。08 年 1 月、内閣は公的機関によるグリーン調達を推進するための計画を承認し、

    07 年から 11 年までの公的機関によるグリーン調達政策を発表した31。この政策はすべての政

    府機関に対し、環境に配慮した製品とサービスの購入を率先して行うことを勧めている。こ

    の計画は、11 年までに政府機関が購入するあらゆる製品とサービスのうち 60%が環境に配慮

    した製品とサービスによって占められるようにするという目標を設定している。現在、次に

    示す 14 種類の製品と 3 種類のサービスに適用されている。

    製品:

    1)OA 印刷用紙とカラー用紙

    2)トイレットペーパー

    3)書類箱

    4)コピー機

    5)タイプライター

    6)銀製食器

    7)一般製品

    8)プリンター用インクカートリッジ

    9)一次電池

    10)ホワイトボード用ペン

    11)拭き取り用具

    12) フォルダー

    13) 建物用塗料

    14) 蛍光灯ランプ

    29 The Ministerial Regulation of 2009 is available online (in Thai) at

    http://www.ratchakitcha.soc.go.th/DATA/PDF/2552/A/047/7.PDF 30力率(りきりつ、Power factor)。交流電力の効率を示す値。 31 The Pollution Control Department (PCD) published the manual on green public procurement (in Thai) at

    http://www.pcd.go.th/public/Publications/print_pol.cfm?task=bids

    More information including the list of green products and services is available at

    http://ptech.pcd.go.th/gp/main/index.php

    http://www.ratchakitcha.soc.go.th/DATA/PDF/2552/A/047/7.PDFhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%8A%9Bhttp://www.pcd.go.th/public/Publications/print_pol.cfm?task=bidshttp://ptech.pcd.go.th/gp/main/index.php

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    サービス:

    1)クリーニング

    2)ホテル

    3)コピー機のレンタル

    4. 主要経済指標

    タイ①鉄道総延長 4,071 km (2008年)

    ②鉄道旅客輸送キロ 8.6 百万人・km (2009年)

    ③鉄道貨物輸送キロ 11.1 千トン・km (2009年)

    ④高速道路・アウトバーン総延長 144 km (2008年)

    ⑤国道総延長 65,630 km (2008年)

    ⑥水路総延長 4,000 km (2008年)

    ⑦住宅戸数 N/A

    ⑧住宅建築着工許可件数 N/A

    ⑨非住宅建築着工許可件数 N/A

    ⑩乗用車登録台数 9,160,000 台 (2009年)

    ⑪商用車登録台数 N/A 台

    ⑫乗用車普及率(1,000人あたり) 413 台 (2000年)

    ⑬商用車普及率(1,000人あたり) N/A 台

    ⑭廃棄物量 13,972 千トン (2000年)

    ⑮廃棄物埋め立て処理率 N/A

    ⑯廃棄物焼却処理率 0.8 (2000年)

    ⑰水資源使用量(地表水)    82.75 k㎥ (2000年)

    ⑱一人当たり水使用量 1,288 ㎥ (2000年)⑲CO2排出量    229.5 百万トン (2008年)

    ⑳CO2一人当たり排出量 3.41 トン (2008年) 出所:①CIA、②~⑤タイ交通省、⑥CIA、⑩⑫タイ交通省、⑭⑯UN SD、⑰⑱WWO、⑲⑳IEA

    以上

    添付資料:タイの気象データ

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    気象データ

    表 1 2009 年のタイにおける月間と年間の平均気温(℃)

    Part Jan. Feb. Mar. Apr. May June Jul. Aug. Sep. Oct. Nov. Dec. Annual

    North 21.0 25.6 27.3 29.1 28.4 27.5 27.4 27.7 27.6 27.2 24.8 22.9 26.4

    Northeast 21.4 27.3 28.1 29.3 28.2 28.6 28.0 28.2 27.7 27.6 25.1 24.3 27.0

    Central 23.9 28.5 29.3 30.1 28.9 28.8 28.3 29.0 28.4 28.1 26.8 26.3 28.0

    East 24.9 28.0 28.6 29.4 28.7 28.9 28.4 28.8 28.1 27.6 27.2 27.0 28.0

    South

    (East

    coast)

    25.1 27.1 27.9 28.6 28.2 28.7 28.0 28.3 27.9 27.5 26.9 26.8 27.6

    South

    (West

    coast)

    26.8 27.9 27.8 28.2 27.9 28.7 28.0 27.9 27.5 27.2 27.3 27.7 27.7

    Over

    country

    23.2 27.1 28.0 29.1 28.4 28.4 27.9 28.2 27.8 27.5 26.0 25.2 27.2

    出所:タイ気象局32

    表 2 2009 年のタイにおける月間と年間の降水量(mn.) Part Jan. Feb. Mar. Apr. May June Jul. Aug. Sep. Oct. Nov. Dec. Annual

    North 0.0 1.1 45.3 70.6 186.7 186.4 170.5 195.2 192.6 138.0 2.7 1.2 1,190.3

    Northeast 0.1 8.7 81.7 107.0 246.2 158.4 266.4 229.9 275.3 63.1 8.1 2.1 1,447.4

    Central 0.1 4.6 68.9 128.0 262.4 155.1 157.2 243.8 236.0 203.9 14.4 1.0 1,475.7

    East 0.1 19.2 95.3 203.0 265.0 180.9 346.8 173.9 459.8 219.3 20.5 13.8 1,998.5

    South (East

    coast)

    124.2 11.0 107.3 141.0 151.0 72.6 128.6 96.2 121.7 136.9 391.6 99.0 1,581.5

    South (West

    coast)

    16.4 6.8 225.4 250.0 328.2 241.1 368.6 431.7 409.6 327.3 182.4 34.2 2,822.5

    Over

    country

    20.6 7.7 89.9 132.0 227.5 163.9 227.7 213.2 263.2 158.2 84.6 21.3 1,609.8

    出所:表 1 に同じ

    32 Thai Meteorological Department ( ) http://www.tmd.go.th/programs%5Cuploads%5CyearlySummary%5CAnnual2009_sum.pdf

    http://www.tmd.go.th/programs%5Cuploads%5CyearlySummary%5CAnnual2009_sum.pdf

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