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1.環境教育の役割 2.原子力教育の問題点 3.環境教育の諸課題 環境教育の役割と実践 環境計画論 第6Dec.21, 2011 福島大学共生システム理工学類 後藤

環境教育の役割と実践 - 福島大学a067/EnvPlanLecture/EleEnvPlan07_2011.pdf目的:「持続的な人間社会の基礎となる教育を促進し、esdの 革新的な政策、プログラム、実践の発展に向けた国際的な協力

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1.環境教育の役割

2.原子力教育の問題点

3.環境教育の諸課題

環境教育の役割と実践

環境計画論 第6講 Dec.21, 2011

福島大学共生システム理工学類 後藤 忍

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1. 環境教育の役割

2.原子力教育の問題点

3.環境教育の諸課題

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環境教育の役割

「なぜ」環境教育が求められているのか

「現象」としての環境問題と、それを引き起こした「要因」としての人間のあり方、この両者に関連する問題に気づき、関心をもつとともに、問題の解決と新たな問題発生の未然防止のための能力をもった人材を育成すること、が求められている。

環境教育の登場

1948年に国際自然保護連合(IUCN)の設立総会の場で、Thomas PrichardによってEnvironmental Education(環境教育)の言葉が使われたのが 初とされる。

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環境教育の定義 1970年アメリカ「環境教育法」

「環境教育とは、人間を取り巻く自然及び人為的環境と、人間との関係を取り上げ、その中で人口、汚染、資源の配分と枯渇、自然保護、技術、都市や地方の開発計画などが、人間環境に対して、どのような関わりあいを持つかを理解させるプロセスである。(中略) そして市民の中に、我々の生存を確かなものにし、生活の質を向上させるには、環境の重要さを認識し、責任ある行動をする必要があるという考えを広めていくことを目指す教育である。」

1975年に採択されたベオグラード憲章での記述:

「環境教育の目標は、環境とそれに関わる問題に気づき、関心をもつとともに、当面する問題や新しい問題の発生の未然防止のために、個人および集団として効果を発揮するような知識、技能、意欲、実行力を身につけた世界の人々を育成すること」

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ベオグラード憲章とは

ベオグラード憲章(The Belgrade Charter)について

UNESCOによって、1975年10月13~22日に旧ユーゴスラ

ビアの首都ベオグラードで開催された、環境教育に関する国際ワークショップの成果としてとりまとめられたもの。

60ヶ国から96名の環境教育専門家が集まって会合を行い、6構成(環境の状況、環境の目標、環境教育の目標、環境

教育の目的、対象、環境教育プログラムの指針となる原則 )からなる枠組み(A Global Framework for Environmental Education)として作成された。

このワークショップは、後の環境教育政府間会議(トビリシ会議)の準備会合という性格を持っていた。

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認知

Awareness個人と社会的なグループに対し、全体の環境問題とそれに関連する問題に関心をもたせ、敏感に反応するように援助すること。

知識

Knowledge個人と社会的なグループに対し、環境問題の全体について基本的な理解を得ることについて援助すること。そして、全体的な環境問題だけでなく、それに関連する問題、また、人間存在の重大な責任およびその役割についての理解が得られるように援助すること。

態度

Attitude個人と社会的なグループに対し、環境についての社会的な価値を実感し、それに対して強い感情を抱いて、その保全と改善のために積極的に参加する気持ちを起こさせるよう援助すること。

技能

Skills個人と社会的なグループに対し、環境問題を解決する技術が得られるよう援助すること。

評価能力

Evaluationability

個人と社会的なグループに対し、環境の程度を正しく評価し、また環境教育のプログラムについて、生態学的、政治学的、経済学的、美的、そして教育的な意味で、正しい判断ができるように援助すること。

参加

Participation個人と社会的なグループに対し、責任の感覚を発展させ、環境問題の緊急性を理解し、これらの問題を解決する適切な行動をとることのできるように援助すること。

ベオグラード憲章における環境教育の目的

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トビリシ宣言・勧告とは トビリシ勧告・宣言について

UNESCOが主催し、1977年10月に66ヶ国の代表が参加し

て、旧ソ連のグルジア共和国の首都トビリシで開催された環境教育に関する政府間会議で出された宣言(declaration)および勧告(recommendation)。

勧告2では、環境教育の目標を「a)都市と農山漁村の経済的、

社会的、政治的、生態学的相互依存について、明確な関心と認識を育てること。b)環境の保護と改善に必要な知識、価

値観、態度、関与、技術を獲得する機会をあらゆる人々に与えること。c)環境のために、個人、集団および社会が全体として、新しい行動パターンを創りだすこと」としている。

また、同様に勧告2において、環境教育の目的カテゴリーをベオグラード憲章の6項目から5項目(認知Awareness、知識Knowledge、態度Attitudes、技能Skills、参加Participation)に整理し直している。

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認知

Awareness社会的なグループと個人に対し、全体の環境問題とそれに関連する問題に関心をもたせ、敏感に反応するように援助すること。

知識

Knowledge社会的なグループと個人に対し、環境とそれに関連する問題について様々な経験や基礎的な理解を得ることができるように援助すること。

態度

Attitudes個人と社会的なグループに対し、環境についての価値と感情を共に抱いて、環境保全と改善に積極的に参加する気持ちを起こさせるよう援助すること。

技能

Skills個人または社会的なグループに対し、環境問題を特定し、解決する技術が得られるよう援助すること。

参加

Participation個人または社会的なグループに対し、環境問題の解決に向けての行動において、すべてのレベルで積極的に関わることができるような機会を提供すること。

トビリシ勧告における環境教育の目的

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環境教育の対象

ベオグラード憲章における記述:環境教育の主たる対象は、社会全体である。この包括的な枠組みの中で、さらに大きく分けると次のようになる。 1.学校教育課程:この中には、就学前、小学校、中学校、高等教育を含む。同時に教師および環境問題専門家の訓練と再訓練を含む。

2.学校外の教育課程:青年および成人教育、すべての市民の中における個人および集団、たとえば、家族、労働者、管理職、政策決定者などである。この場合は環境問題に関係のある人もない人も含める。

トビリシ宣言における記述 「環境教育は、正規の教育・校外教育を含めてすべての年齢に応じ、すべての階層に向けて行われなければならない。」

「環境教育は、正しい理解の上に立った、包括的な生涯教育でなければならない」

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1990年代以降の環境教育の位置づけ 1992年地球サミットにおけるAgenda21

第36章「教育、意識啓発、訓練の推進」で、教育の重要性を指摘。

「基礎となる原則はトビリシ宣言において提示されている」との記述。

1997年のテサロニキ宣言 1997年12月ギリシアのテサロニキで、84カ国から1,200人の専門家が集まって開催されたUNESCOとギリシア政府主催の国際会議でまとめられたもの。

環境教育を「環境と持続可能性のための教育」と呼ぶこともできると表現。

「適切な教育と意識啓発は、規制、経済、技術とともに、持続可能性の一つの柱として認識されなければならない。 」

2002年のヨハネスブルクサミット 2005年からの10年を持続可能な発展のための教育の10年とする。

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持続可能な発展のための教育(ESD)

Education for Sustainable Development(ESD)とは

人間及び経済的な福祉と、地球の自然資源への文化的な伝統及び敬意とのバランスをとろうとする教育の考え方のこと。

「すべての年齢の人々に、持続可能な未来を創造し、楽しむ責任を引き受けるよう求めていく、新しい考え方の教育を含むダイナミックな概念である。」(UNESCO,2002)

「ESDの目標は、すべての人が質の高い教育の恩恵を享受し、

また、持続可能な開発のために求められる原則、価値観及び行動が、あらゆる教育や学びの場に取り込まれ、環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現できるような行動の変革をもたらすことです。」(「国連持続可能な開発のための教育の10年」関係省庁連絡会議,2006)

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ESDに関連する分野

出典:http://www.esd-j.org/whatsesd/

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ESDの展開 ESDの10年(Decade of ESD: DESD)

持続可能な社会を実現するために必要な教育を積極的に行い、またそのための国際協力を推進するように各国政府に働きかける国連のキャンペーン。

目的:「持続的な人間社会の基礎となる教育を促進し、ESDの革新的な政策、プログラム、実践の発展に向けた国際的な協力を強化する。」

日本のNGOが発案し、日本政府がヨハネスブルグ・サミット(2002年8月26日~9月4日)で実施文書に盛り込むよう提案して採択されたもの。採択された各国の行動指針である、「持続可能な開発に関する世界首脳会議実施計画」の第124項に、教育の活用における4つの緊急行動の一つとして盛り込まれた。

2002年11月、第57回国連総会で「ESD の10年」に関する決議案を国連総会事務局に提出した。この提案は、日本の働きかけにより、先進国と途上国双方を含む46カ国が共同提案国となって行われ、12月の本会議において満場一致で採択された。

DESDの期間は2005~2014年。

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「ESDの10年」実施計画 日本における実施計画

2005年に「国連持続可能な開発のための教育の10年」関係省庁連絡会議を設置。

国内及び世界の取り組みをリードしていくため、指針や施策に関する実施計画を2006年3月30日に策定。

実施計画の内容

あらゆる主体があらゆる場で実施するための内容を記述。

各教科、総合的な学習の時間など教育活動全体を通じて学習。

「育みたい力」として、問題や現象の背景の理解、多面的かつ総合的なものの見方を重視し、体系的な思考力(systems thinking)、批判力と代替案の思考力(critical thinking)、デー

タ・情報の分析能力、コミュニケーション能力を重視するとともに、持続可能な開発に関する価値観を培うことも重要とする。

2010年に見直しを行い、2014年末に10年全体の評価を行う。

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ESDと環境教育(EE)の関係 ESDとEEの関係についての主な考え方

ESD ESDEE

ESDEE

EEはESDの一部である ESDはEEの一部である

ESDはEEと部分的に重なる

ESD

EE

ESDはEEが進化した段階である

EE

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環境教育およびESDで育みたい力「ESDの10年」実施計画(2006年)

【育みたい力】

問題や現象の背景の理解、多面的かつ総合的なものの見方を重視して体系的な思考力(システムズ シンキング(systems thinking))を育むこと

批判力を重視して代替案の思考力(クリティカル シンキング(critical thinking))を育むこと

データや情報を分析する能力、コミュニケーション能力を向上させること

人間の尊重、多様性の尊重、非排他性、機会均等、環境の尊重といった持続可能な開発に関する価値観を培うこと

環境教育指導資料[小学校編] (2007年)

【小学校における環境教育のねらい】① 環境に対する豊かな感受性の育成② 環境に関する見方や考え方の育成③ 環境に働きかける実践力の育成

【環境教育で重視する能力と態度(例)】課題を発見する力

計画を立てる力

推論する力

情報を活用する力

合意を形成しようとする態度

公正に判断しようとする態度

主体的に参加し,自ら実践しようとする態度

【環境を捉える視点(例)】循環,多様性,生態系,共生,

有限性,保全

→計画を立てる力,体系的な思考力など重要な視点が提示されている。→これらを育むことを明示的に意図した教育方法や教材が必要。

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従来の環境教育とESDの特徴従来の環境教育 ESD

対象 個人の態度の変容認識知識理解技能

社会経済構造とライフスタイルの転換倫理観未来型思考参画批判的な振り返り行動する力

方法 トップダウン結果重視量的価値教え込み管理

ボトムアッププロセス重視質的価値学び育成

出典:阿部(2004)、IUCN(2000)に基づく

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環境教育に関する練習問題「ESDの10年」実施計画において、「育みたい力」と位置づけられ

ている体系的な思考力(システム思考)について、Bさんが考えた。

「環境問題の本質的な解決方法を考える上では、確かにシステム思考は重要ね。環境計画論の講義でも取り上げていたように、例えば、廃棄物のリサイクルを行うときは、新たに必要となる資源のことも考えなければならないし、生物の生息空間を保全するときも、まわりの他の生息空間との関係を考える必要があるわ。部分的な問題の解決が全体では必ずしも解決にならないという“合成の誤謬”を犯すことがあるので、部分と全体の両方の視点で捉えることが必要ね。」

さて、Bさんのこのような捉え方を参考にして、「日本に

おける食品廃棄物への対応」を考えるとき、全体的視点で捉える場合の着眼点としてどんなものがあると思いますか。部分的な視点との違いを考えながら,あなたの捉え方を述べて下さい。

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練習問題について

部分的な視点で捉える場合の例

排出される廃棄物を少なくする方法を考える。

→食べ残し、売れ残り、加工ロスなどが出ないようにする。

→学校、家庭などで食育を実践する。

→排出されたものを回収し、飼料や肥料、燃料などに再生利用する。

全体的な視点で捉える場合の着眼点の例

トレード・オフの視点:植物資源である食品廃棄物の回収や再生利用において、非再生資源である化石燃料を使っていないか?

量的バランスの視点:海外から60%ほども食料を輸入している状態で再生利用した場合、栄養素の供給超過にならないか?

生態学的な視点:再生利用の方法が生態学的にも理にかなったものであるか?(cf.肉骨粉利用によるBSE発症の問題)

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1. 環境教育の役割

2.原子力教育の問題点

3.環境教育の諸課題

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問題の背景 原子力教育および広報における不公平性

2011年に起きた東京電力福島第一原子力発電所の極めて

深刻な事故を受けて,これまで行われてきた原子力に関する教育や広報のあり方が改めて問われている。

国策として進められてきた原子力教育や教材の内容,普及啓発の方法には,原子力発電のプラス面が過度に強調されるといった不公平性が指摘されている。

偏重した教育・広報により,原子力発電の環境リスクに関する国民の理性的な判断が妨げられてきた様は,「減思力」教育・広報であったとも揶揄されている。

偏重した教育の証拠となるような情報が,原発事故後にウェブサイトから次々と削除された。今回の原発事故の深刻さを真摯に受け止め、教訓とし、歴史的に検証していくためにも不公平性を調査・分析し、記録しておくことが重要と考える。

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原子力に関する教育方法 文部科学省の原子力教育への支援事業(2010年度)

出典:文部科学省(2010)「原子力・エネルギーに関する教育の取組への支援事業案内」(平成22年8月)

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日本の原子力副教材について

文部科学省および経済産業省資源エネルギー庁が作成した副教材

東京電力福島第一原発の事故前(2010年)に作成された副教材

①「わくわく原子力ランド」(小学生用)

②「チャレンジ!原子力ワールド」(中学生用)※事故後にウェブサイト等から削除される

原発事故後(2011年10月)に作成された副教材

③「放射線について考えてみよう」(小学生用)

④「知ることから始めよう 放射線のいろいろ」

(中学生用)

⑤「知っておきたい放射線のこと」(高校生用)

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副教材の分析の枠組み

副教材における不適切な表現について,以下の分類で整理

分類 内容

虚偽 事実と異なることが表現されている

誇張 実際よりも大げさに表現されている

欺瞞 意図的にあざむくように表現されている

不公平 バランスを欠いて表現されている

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副教材の内容の分析例 例:「わくわく原子力ランド」(小学生対象,41ページ)

41ページ中,少なくとも約半分の20ページに問題のある表現が確認された。

も多かったのは「不公平」である。

ページ 内容 分類

7~8長所と短所の数について,火力発電が1:3なのに対し,原子力発電は3:3となっている。

不公平

7~8原子力発電の長所に「電気をつくるときに二酸化炭素を出しません」と書かれているが,火力発電の長所には「電気をつくるときに放射性廃棄物を出しません」とは書かれていない。

不公平

7~8原子力発電の長所に「使った燃料をリサイクル(再利用)できます」と書かれているが,火力発電の長所には「二酸化炭素はリサイクルできます」とは書かれていない。

不公平

7~8廃棄物として,火力発電から出る二酸化炭素は図に描かれているが,原子力発電から出る放射性廃棄物は描かれていない

不公平

8核燃料サイクルは国内で完全稼働していないにもかかわらず,「使った燃料をリサイクル(再利用)できます」と表現している。

誇張

13ウランは100%輸入であるにもかかわらず,「国産と考えた場合」を計上している。

欺瞞

17廃棄物として,火力発電から出る二酸化炭素は図に描かれているが,原子力発電から出る放射性廃棄物は描かれていない

不公平

17原子力発電は「発電時に二酸化炭素が出ない」と書かれているが,火力発電には「発電時に放射性廃棄物が出ない」とは書かれていない。

不公平

17原子力発電の使用済み燃料は「リサイクルできます」と書かれているが,火力発電の二酸化炭素は「リサイクルできます」とは書かれていない。

不公平

17核燃料サイクルは国内で完全稼働していないにもかかわらず,「使った燃料をリサイクル(再利用)できます」と表現している。

誇張

17 火力発電は原子力発電と異なり,極悪面で描かれている 欺瞞18 脱原発の方針を採っていたドイツなどについては掲載していない。 欺瞞

19~20原発が海の近くに立地している理由は書かれているが,原発が大都市に立地せず,地方から電気が送られている理由は書かれていない。

不公平

23~24「原子力発電所では,放射性物質が外にもれないよう,五重のかべでしっかりととじこめています」などと書かれている。

虚偽

25~26原子力は,施設事故をふせぐしくみや,いざいという場合にも周囲への影響をふせぐしくみで安全が守られている」などと書かれている。

虚偽

28 高速増殖炉に も多くのスペースを割いている。 不公平

29「わたしたちの取り組み例」を紹介したサイトとして,原子力推進のコンテンツで構成された文部科学省の「あとみん」のみが紹介されている。

不公平

31原子力発電のことを学習してわかったことや感じたことの例として,原子力の肯定的表現のみがあげられている。

不公平

34エネルギーの重量による比較について,ウラン燃料は,ウラン鉱石の状態ではなく,精錬・濃縮・加工して軽くなった後のペレットの状態で比較している。

不公平

37~38核燃料サイクルは国内で完全稼働していないにもかかわらず,実現しているように表現している。

誇張

38(低レベル放射性廃棄物には触れず)高レベル放射性廃棄物という,重量は少なくても質的に危険な物質について,「重量単位」のクイズを出題している。

欺瞞

39~40身のまわりの放射線については図を用いて多く紹介されているが,放射線による健康被害については図などもなく,詳しく説明されていない。

不公平

41「原子力ポスターコンクール」や「あとみん」など,原子力推進側のコンテンツや機関が多く紹介されている。

不公平

虚偽

9%誇張

13%

欺瞞

17%不公平

61%

14

2

3

4

全体23箇所

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日本の副教材における問題点の例(1) 発電方法の長所と短所について

(出典:「チャレンジ!原子力ワールド」ワークシート教師用)

「燃料に限りがある」点は言及されていない

• 原子力のみ,長所の数が短所の数の2倍を超えて多く書かれている。

• 燃料の輸送や保管は果たして容易か?• 燃料のリサイクルはまだ実現していない。

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日本の副教材における問題点の例(2) 火力と原子力の比較について

(出典:「わくわく原子力ランド」,p.17)

火力は原子力に比べ,極悪面で描かれている。また,二酸化炭素は透明であるにも関わらず,黒い煙とともに書かれている。

原子力は「発電時に二酸化炭素が出ない」と書かれているが,火力には「発電時に放射性廃棄物が出ない」とは書かれていない。

原子力の使用済み燃料は「リサイクルできます」と書かれているが,火力の二酸化炭素は「リサイクルできます」とは書かれていない。

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日本の副教材における問題点の例(3) エネルギー資源の輸入について

(出典:「わくわく原子力ランド」,p.13)

ウランは100%輸入であるにもかかわらず,国産と考えた場合を計上している

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日本の副教材における問題点の例(4) 原子力発電所の立地について

(出典:「わくわく原子力ランド」,p.20)

原発が火力発電と同じように海の近くに立地している理由は書かれているが,原発が火力発電と違って大都市に立地せず,地方から電気が送られている理由は書かれていない。

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日本の副教材における問題点の例(5) 原発に関する世界の動向につ

いて

(出典:「チャレンジ!原子力ワールド」,p.38)

当時,脱原発を決めていたドイツについては掲載しておらず,脱原発を否決したスイスについては掲載している。

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日本の副教材における問題点の例(6) 五重の壁について

(出典:「チャレンジ!原子力ワールド」,p.29 )

「万一,事故発生という事態になっても周辺環境への放射性物質の放出を防止できる」と記載されている。

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日本の副教材における問題点の例(7) 地震・津波対策について

(出典:「チャレンジ!原子力ワールド」,p.30 )

大きな地震や津波にも耐えられると記載されている。

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日本の副教材における問題点の例(8) 事故時の対応について

(出典:「チャレンジ!原子力ワールド」,p.32)

「万一,事故が起きた場合は,国,自治体,事業者などが連携し,周辺住民の安全を守る」と書かれている。

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日本の副教材における問題点の例(9) 核燃料サイクルについて

(出典:「チャレンジ!原子力ワールド」,p.33)

核燃料サイクルは,日本での施設が本格稼働していないにもかかわらず,あたかも実現しているように描かれている。

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日本の副教材における問題点の例(10) ディベートについて

「日本は原子力発電を廃止すべし,是か非か」をテーマとするディベートを紹介していること自体には,公平性への配慮が見られる。

しかし,実践内容は神戸大学附属明石中学校の事例紹介であり,著者(文科省・経産省資源エネルギー庁)が賛否両論をオーソライズしたものとはなっていない。

そもそも,原発は賛否両論があるテーマと認めておきながら,副読本の内容は推進側に偏っているということに矛盾がある。

廃止肯定派の「廃炉の問題」や「廃棄物処理のコスト」については,副読本に全く記述がない。一方,廃止否定派の論点は,すべて何らかの形で参考となる記述がある。 (出典:「チャレンジ!原子力ワールド」,p.42)

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新副教材における問題点の例(1) 全体の構成について

(出典:「知ることから始めよう 放射線のいろいろ」,p.1~2)

東京電力福島第一原発の事故の話が出てくるのは,全体で「はじめに」の8行のみ。

爆発で壊れた原発や除染の様子の写真,原発事故を苦にして自殺した人のことなどは一切触れられていない。

放射線がいかに身近であるかを説明する内容で,紙幅の多くが割かれている。

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新副教材における問題点の例(2) 全体の構成について

(出典:「放射線について考えてみよう」,p.10)

現在, も問題となっているセシウム137のように,半減期が数十年(子ど

もが大人になる頃まで)に及ぶものが対象とされていない。

「考えて見よう」では,半減期の問題を算数の問題として扱っている。

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新副教材における問題点の例(3) 放射線の影響に

ついて

(出典:「知ることから始めよう 放射線のいろいろ」,p.15)

• 確定的影響について,JCO臨界事故で亡く

なった方の被曝レベルが書かれていない

• 放射線管理区域のレベル(5mSv/年)が書かれていない。

※白血病の労災認定基準である

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新副教材における問題点の例(4) 放射線の影響について

(出典:「知ることから始めよう 放射線のいろいろ」,p.16)

自然放射線よりも人工放射線の方が影響が大きいと考える研究者もいる中で,「人体への影響の度合いは同じです」と断定している。

5人増加する死者は,本来死ななくてすんでいたはずの人であるが,その命を軽視し,「5人はがん死することを容認せよ」という表現となっている。

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新副教材における問題点の例(5) 事故の対応について

(出典:「放射線について考えてみよう」,p.16)

放射性物質が付着した土やがれきの処理が問題になっているように,仮に事故が収束したとしても,放出された放射性物質への対策が必要であるが,それをとらなくてもよいかのように書いている。

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新副教材における問題点の例(6) 被曝による健康影響について

(出典:「知っておきたい放射線のこと」(高校生用,教師用資料),p.15~16)

リスクが軽く見えるようにグラフや表をつくっている

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新副教材における問題点の例(7) リスクについて

(出典:「知っておきたい放射線のこと」,p.20)

明言されてはいないが,明らかに原発事故を示唆している。

「利用しようとする限り,幾らかのリスクは避けられず,それを完全に無くすことは決してできません」と強調して書かれているが,「利用しようと」しない場合,すなわち「脱原発」をすれば,原発による健康・環境リスクはゼロにできる。

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原子力教育における問題点 これまでの原子力教育の不公平性

原子力教育の一環として,国による副教材の提供やポスターコンクール,小論文コンクールなどの手段が実施され,それらでは偏った内容が扱われてきた。

今回の原発事故の深刻さを真摯に受け止め、教訓とし、歴史的に検証していくためにも,不公平性を調査・分析し、記録しておくことが重要と考える。

⇒「副教材」の分析

「原子力ポスターコンクール」の分析

「原子力小論文・作文コンクール」の分析

「原子力セミナー感想文」の分析 ...etc日本の副教材では,「虚偽」,「誇張」,「欺瞞」,「不公平」などの意味で問題がある記述が多く見られた。事故前では「不公平」な記述が,事故後では「欺瞞」な記述が多かった。

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ドイツの原子力副教材について

ドイツの原子力副教材の例 ドイツ環境省(2008)

「Einfach abschalten?」(簡単にスイッチは切れるか?)

Ravensburger Buchverlag Otto Maier有限会社(2003)Die Wolke(邦題:見えない雲)に関する「Materialien zur Unterrichtspraxis」(教育指導のための材料)

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「Einfach abschalten?」について ドイツの環境省が2007年に作成し,

2008年に出版した,原子力に関する環境教育教材。対象は8〜10学年(13〜16歳)。

「作業ペーパー」、「助言集」、「教師用の情報集」の3部構成となっており,約50ページの内容。

原子力利用(事故、リスク、影響、環境影響、放射性物質等)に関する専門知識と課題を学ぶことができ、さらに、これらのテーマについて相対する意見も学ぶことが出来るように書かれている。

UNESCOにより「国連持続可能な開発のための教育の10年」事業として認定されている。

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ドイツ環境省の副教材の内容(1) 電力供給について

(出典:「Einfach abschalten? 」作業用ペーパー,p.5)

反対/賛成の代表的な見解がそれぞれ書かれ,様式上も公平になるように構成されている。

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ドイツ副教材の内容(2) 地球温暖化について

(出典:「Einfach abschalten? 」作業用ペーパー,p.6)

日本の副教材ではまったく触れられていなかった「原発では温暖化問題の解決にはならない」という考え方が書かれている。

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ドイツ副教材の内容(3) 資源の枯渇性について

(出典:「Einfach abschalten? 」作業用ペーパー,p.7)

ウランの利用可能年数については,専門家によって意見が異なることを述べた上で,「?」と表記されている。

日本の副教材に書かれていたような,「ウランは準国産エネルギー」といった表現は書かれていない。

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ドイツ副教材の内容(4) 日常生活のリスクについて

日常の生活における他のリスク要因も取り上げられているが,原発のリスクが相対的に低いと見せるような内容(cf.ラスムッセン報告)にはなっていない。

(出典:「Einfach abschalten? 」作業用ペーパー,p.10)

リスク要因 問い(はい/いいえ,で回答)

自動車 あなたは,車を毎日運転するのに,不安がありますか?

タバコ あなたは受動喫煙が心配ですか?

飛行機 あなたは飛行機で飛ぶのが怖いですか?

遺伝子組換え食品

あなたは遺伝子組換え食品を買いますか?

日光浴 あなたは日光浴をするとき,皮膚がんを心配しますか?

原子力発電

あなたは原子力発電所の近くに引っ越したいと思いますか?

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ドイツ副教材の内容(5)

作業内容1. 問題に答えてください。 どのように、あなたは提示されたリス

クを評価しますか? 1番目( 大のリスク)から6番目( も低いリスク)までリストします。

2. 重要なものの様に、それはあなたのためにありますǁどうかあなたで自発的にす危険。仕方なしに入ります?

3. あなたとして、あなたが仕方なしに危険を冒さなければならないならば、反応します?

4. クラス内であなたの結果を比較します。 どこに、違い(そこで相互関係)がありますか?

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ドイツ副教材の内容(5) 原発に関する世界の動向について

(出典:「Einfach abschalten? 」作業用ペーパー,p.13)

フランスのような原発推進国を載せる一方で,中国やインドなどの新興国,トルコのように現時点で原発のない国,そして,脱原発の方向性を打ち出していたイタリアも併せて載せている。

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研究の目的と方法 研究の目的

日本の原子力教育および広報における不公平性について,具体事例を対象にできるだけ客観的に分析し、特徴を捉える。

研究の方法

原子力教育の具体事例として、今回は「原子力ポスターコンクール」を取り上げる。これは、課題を通じた応募者の思考の枠組みの形成・普及啓発と、作品を使った大衆への広報という、メディア(ポスター)の送り手と受け手の双方をターゲットとした取り組みと位置付けられる。

不公平性の特徴をできるだけ客観的に捉えるため、「省エネルギーポスターコンクール」との比較を行う。

分析の対象とした年度:項目により異なるが、主として2006~2010年度の5年間

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比較対照の位置づけ 省エネルギーポスターコンクールの選定理由

① テーマとして「エネルギー」に関するポスターコンクールという点が共通している

② コンクールの対象者が主に小中学生である点が共通しており、学校教育との関連性が高い

③ 「省エネルギー」は、循環型社会の概念における「天然資源の消費の抑制」という意味で、より優先されるべき取り組みであり、エネルギー利用の一形態である原子力利用と比べることに意義がある

比較の意義環境教育において、省エネルギーに関する教育を推進することは、原子力に関する教育を推進することよりも、広く合意が得られるはずである。

原子力と省エネルギーの二つのポスターコンクールにおける重点の置かれ具合について比較することで、特徴が浮き彫りになると考えられる。

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比較に用いた項目

分類 項目

コンクールの実施体制

主催者、開催年度、予算、運営主体、対象・部門、応募作品数、賞・賞品の設定

応募要項 キャッチコピーの情報、アンケート項目

入札仕様書 広報に関する特徴的な要件

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原子力ポスターコンクール 原子力ポスターコンクールについて

募集案内によれば「ポスターという親しみやすい媒体を通じて、原子力や放射線についての理解と認識を深めていただくことを目的とし、文部科学省と経済産業省資源エネルギー庁との共催により」実施されるコンクールである。

実際の業務は,財団法人原子力文化振興財団が受託して実施している。2010年度が第17回であった。

対象は主として全国の小中学生で,例年6月に応募要項が発表され,夏休みの間に取り組んでもらい,10月26日の原子力の日にあわせて,10月に受賞者が発表される。

部門は子供部門(小学生)と一般部門(中学生以上)がある。

原発事故後,原子力文化振興財団のウェブサイトなどに掲載されていた表彰作品などのコンテンツがすべて削除された。

偏った内容のポスターコンクールの実施に対し,永久中止を求める署名活動も行われており,2011年度の開催は中止が決定された。

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原子力ポスターコンクールの位置付け 文部科学省の原子力教育への支援事業(2010年度)

出典:文部科学省(2010)「原子力・エネルギーに関する教育の取組への支援事業案内」(平成22年8月)

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原子力ポスターコンクールの実施状況

(出典:文部科学省ウェブサイト)

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2009年度(第16回)の主な受賞作品

文部科学大臣賞(10歳 富山県)

経済産業大臣賞(13歳 埼玉県)

優秀賞 子ども部門(9歳 茨城県)

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2009年度(第16回)の主な受賞作品

優秀賞 一般部門(18歳 香川県)

入選 子ども部門(11歳 福島県)

入選 子ども部門(8歳 東京都)

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2008年度(第15回)の主な受賞作品

文部科学大臣賞(12歳 静岡県)

経済産業大臣賞(14歳 宮城県)

優秀賞 子ども部門(7歳 福島県)

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2008年度(第15回)の主な受賞作品

優秀賞 子ども部門(12歳 宮城県)

優秀賞 一般部門(18歳 愛知県)

優秀賞 一般部門(58歳 愛知県)

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省エネルギーポスターコンクール 省エネルギーポスターコンクールについて

作品集によれば,『「作品を通して、省エネルギーの意識と関心を持ってもらい、省エネルギー実践のきっかけとなってほしい」との願いをこめて、全国の小中学生に向けて「省エネルギー」をテーマに』実施される,経済産業省資源エネルギー庁主催のポスターコンクールである。

実際の業務は,財団法人 省エネルギーセンターが受託して実施している。2009年度が 新開催年度であった。

部門は小学生部門と中学生部門がある。

2009年度は約2,173万円の予算で実施され,小学生部門2,235点,中学生部門2,207点の計4,442点の応募があった。

2010年度は開催されなかった。2009年度の審査委員長を務

めた佐藤弘道氏によれば、事業仕分けの影響で開催されなくなったとのことである。「原子力PC」は継続され,「省エネPC」は廃止されたことが,「不公平性」を物語っていると言える。

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2009年度の主な受賞作品

優秀賞 小学生部門(岩手県 小4)

優秀賞 中学生部門(長野県 中2)

優秀賞 小学生部門(広島県 小4)

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2009年度の主な受賞作品

優秀賞 小学生部門(福島県 小5)

優秀賞 中学生部門(福岡県 中1)

優秀賞 中学生部門(愛知県 中2)

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原子力ポスターコンクール 省エネルギーポスターコンクール

主催 文部科学省,経済産業省資源エネルギー庁

経済産業省資源エネルギー庁

開催年度

新開催年度: 2010年度(第17回) 新開催年度: 2009年度(第31回?)

予算 【2010年度】 39,186,000円 【2009年度】 21,734,625円

運営 財団法人 原子力文化振興財団 財団法人 省エネルギーセンター

対象・部門

子供部門(小学生),一般部門(中学生以上)

小学校部門,中学校部門

応募作品数

【2010年度】子供部門3,694点,一般部門3,197点,計6,891点

【2009年度】小学生部門2,235点,中学生部門2,207点, 計4,442点

賞・賞品

文部科学大臣賞,経済産業大臣賞,優秀賞,入選,佳作, 優秀学校賞,優秀学校賞,学校奨励賞※2008年度までは応募者全員に参加賞

優秀賞,優秀賞,佳作,地区賞(優秀賞,優秀賞,佳作)

ポスターコンクールの比較(1)~概要~

原子力ポスターコンクールでは,主催者として文部科学省が関わり,学校単位での賞や応募者全員の参加賞を設けるなどして,積極的な取り組みが推進された。

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原子力ポスターコンクール 省エネルギーポスターコンクール

応募要項におけるキャッチコピーの情報

2008年度の第15回からキャッチコピーを作品中に入れるように指示。

2008年度はキャッチコピー8つ(すべて原発のプラス面)を例示。

2009,2010年度は,考えるヒント(すべてプラス面の情報)を掲載。

2006年~2009年度のすべてで,

省エネルギー標語(創作自由)を入れるように指示(ただし小学校3年生までは入れなくても可)。

例示はなし。

ポスターコンクールの比較(2)~応募要項におけるキャッチコピー~

2008年度の応募要項におけるキャッチコピーの例示

cf. 2009年度は、予算が前年度比約4割にまで削

減されており、より効率的な普及啓発を行うことを迫られたと考えられる。

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応募要項(原子力)における不公平性 応募要項での情報提供

2010年の第17回コンクールの応募要項では,9つのヒントを掲載。

ヒントの内容① 大切な電気をつくる原子力発電

② 小さな原子から出るエネルギー

③ ウラン燃料は小さくても力持ち

④ 地球にやさしい原子力発電

⑤ 地球ができたときからある放射線

⑥ 5重の壁で安全を守る発電所

⑦ さまざまな分野で役立つ放射線

⑧ リサイクルできるウラン燃料

⑨ 電気のごみは地下深くへきちんと

処分⇒マイナス面のヒントは一切与え

られていない。

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2010年度(第17回)の主な受賞作品

文部科学大臣賞(12歳滋賀県)

経済産業大臣賞(16歳茨城県)

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原子力ポスターコンクール 省エネルギーポスターコンクール

応募要項におけるアンケート

【2008年度】Q1.ポスターコンクールについてお答えく

ださいQ2.どこで「原子力の日ポスターコンクー

ル」を知りましたか。Q3.10月26日が「原子力の日」であること

を知っていましたか。Q4.原子力発電が日本の電力の約1/3を

作っていることを知っていましたか。Q5.原子力発電は,発電の際にCO2を出さ

ないことを知っていましたか。Q6.放射線は「医療や工業でも利用されて

いる」ことを知っていましたか。Q7.来年もまたポスターコンクールに応募

しようと思いますか。

【2009年度】Q1.省エネルギーコンクールをどのよう

に知りましたか?Q2.省エネルギーポスターコンクールの

ご案内の時期はいつごろがよろしいですか?

Q3.省エネルギーポスターコンクールに

ついて,ご意見,ご感想をお書きください。

ポスターコンクールの比較(3)~応募要項におけるアンケート~

→省エネルギーポスターコンクールでは,コンクールの実施そのものに関する質問だけであり,省エネルギーに関する特定内容の普及啓発を意図した質問は見られない。→原子力ポスターコンクールでは,日本の電力の1/3が原子力(しかも,これは運用の結果の数字)など,特定内容の普及啓発を意図した質問が含められている。

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応募要項を用いた普及啓発 アンケートの項目

原子力ポスターコン

クールでは,2008年の第15回まで,応募

要項の中で具体的な

ヒントを出す代わりに,

特定内容の普及啓

発を意図する質問が

含められていた。

省エネルギーポス

ターコンクールの応

募要項では,少なくと

も2006~2009年度

の間で,特定内容の

普及啓発を意図する

質問は見られない。

2008年度の応募要項(原子力)におけるアンケート

2009年度の応募要項(省エネ)におけるアンケート

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原子力ポスターコンクール 省エネルギーポスターコンクール

入札仕様書における広報に関する特徴的な要件

【事後の周知活動】

受賞作品決定後,受賞作品を活用したポスターを必要部数作成し,応募があった小学校,中学校,高等学校及び教育委員会,原子力関係機関に配布することを必須とし,その他,受賞者の思いや考えを発信するような広報を盛り込むなど,効果的な事後広報を提案すること。【事後評価】

応募者に対し,原子力や放射線に対する意識の喚起及び理解の促進を図ることができたかを分析する。また,応募のなかった学校等に対しても応募に至らなかった理由等を調査・分析し,次年度に向けた事業改善策をとりまとめること。

【広報素材の作成・広報】入賞作品は,作品集(A4サイズ,

20頁程度,カラー,10,000部)として,

応募校等に配布するとともに,資源エネルギー庁のホームページに掲載できるWeb用のページも併せて作成すること。

また,省エネルギーポスターコンクールを広く紹介し,国民の省エネルギー問題に対する関心を喚起するため,入賞作品を各種の展示会や表彰式等において展示できるパネル(B2版33枚程度)を作成すること。

また,入賞作品や表彰式の模様をWebサイト等を利用し,国民に対し広報を実施すること。

ポスターコンクールの比較(4)~入札仕様書~

→原子力ポスターコンクールでは,応募のなかった学校に対して,その理由を調査・分析するなど,より強力な要件が課せられている。

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原子力小論文コンクール

原子力小論文コンクールとは

日本原子力文化振興財団が実施する小論文コンクール。2010年度で中学生が第35回,高校生が第42回

受賞作品は,財団の広報誌「原子力文化」に掲載される。

2010年度の状況

応募数:中学生の部 4388編,高校生の部 896編中学生の部の課題

「地球環境から考える原子力の役割」

「限りある資源と私たちの未来」

「私たちのくらしと放射線」

高校生の部の課題 「エネルギー・原子力から地球環境を考える」

「世界のエネルギー事情と原子力の役割」

「放射線の可能性と私たちの未来」

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原子力小論文コンクール

平成18~22年度の実施状況

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原子力教育の見直し

これまでの原子力教育と今後の見直し

原子力教育の一環として,国による副教材の提供やポスターコンクール,小論文コンクールなどの手段が実施され,それらでは偏った内容が扱われてきた。

原子力ポスターコンクールでは,応募要領を使って原発のプラス面に関する普及啓発が行われており,学校単位での取組も重視して賞の設定や広報効果の分析が行われていた。

入賞作品の内容は,原発事故後の今となって見るとあまりにも痛々しい。もちろん,入賞した子ども達自身には何の非もなく,いかに原子力教育が強力であったかの証左である。

国民全体で,今後の日本のエネルギー政策について真剣に議論していくためにも,正しい情報が公平に与えられる教育・広報を実現していかなくてはならない。

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1. 環境教育の役割

2.原子力教育の問題点

3.環境教育の諸課題

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環境教育の諸課題(1) 「教育」としての認識

教育という営みは価値の問題を含んでおり、完全に中立という立場はあり得ない。倫理観に基づいて行うものである。

(cf.環境倫理、環境思想、情報操作性)

問題を起こした世代が後の世代を教えることの認識。

環境教育の内容について

発達段階に応じた教育内容が必要。

個別の問題だけでなく、総合的内容が求められている

→ESD、システム思考、批判力、代替案思考力、etc.環境問題の特性

(不可逆性、複雑性、不確実性、公平性、タイムラグ、トレード・オフ、情報操作性など)

人間社会のあり方を見直すための行動の考え方・実践

(予防原則、消費行動、計画、評価、参加など)

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環境教育の諸課題(2) 環境教育の方法に関して

「現場体験型」と「教授-学習型」の組み合わせ

「環境教育」と「環境学習」

「北風アプローチ」と「太陽アプローチ」参考:藤岡による環境教育に関する4つの命題

①「環境問題は環境教育に先立つ」

②「環境問題の発生と解決に学ぶことが環境教育の核心である」

③「科学と実生活の関係を問う教育実践が環境教育である」

→現場体験学習が学習方法の基本となる

④「環境教育は環境問題史探究の性質をもつ」

プログラムや教材の開発

環境教育はマニュアル化されうるか?

環境教育の対象に関して

大人、社会人への環境教育

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主な参考資料 参考文献

福島要一編、『環境教育の理論と実践』、あゆみ出版、1985 西田史朗 研究代表、『新しい環境教育の展開』、文部省特定研究、

1991 佐藤群己・中山和彦 編、『世界の環境教育』、国土社、1993 大田堯 編、『学校と環境教育』、東海大学出版会、1993 今井清一、『日本の環境問題と環境教育』、晃洋書房、1996 『大学環境教育と持続可能な社会への展望』,月刊むすぶ、第32巻6号、

ロシナンテ社、2001 『若者に環境問題をわかってもらうために』,月刊むすぶ、第31巻4号、ロ

シナンテ社、2000 朝岡幸彦編著、『新しい環境教育の実践』、高文堂出版社、2005

参考Webサイト http://www.eic.or.jp/ecolife/old/g001.html http://www.ocec.ne.jp/shidoubu/highschool/kankyo/4-2-69.htm http://www.erc.pref.fukui.jp/nenpyo/histedu.html http://www.ai-gakkai.or.jp/jsoee/frame-kyouiku_siryou.htm http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokuren/index.html http://www.ads.fukushima-u.ac.jp/~nght/eco-intro/index.html