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水理学テキスト
Hydraulics
広島大学工学研究科 海岸工学研究室Graduate School of Engineering, Hiroshima University
River & Coastal Engineering Laboratory
川西 澄Kiyoshi Kawanishi
Office: A2-423
E-mail: [email protected]
http://home.hiroshima-u.ac.jp/kiyosi
Tel & Fax: 082-424-7817
目 次
第6章 開水路急変部の流れ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1
6.1 比エネルギ-と限界水深 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1
6.2 常流と射流 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3
6.3 水路床高および水路幅の変化にともなう水深変化 . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
6.4 比力と物体に作用する抗力 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6
6.5 跳水現象 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7
6.6 比力差とゲートにかかる圧力 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9
第7章 開水路の等流 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
7.1 断面平均流速公式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
7.2 等流水深と限界水深 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13
第8章 開水路の漸変流. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14
8.1 開水路の漸変定常流の基礎方程式. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14
8.2 開水路の漸変定常流の水面形 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
— i —
第6章 開水路急変部の流れ
この章では,考えている流れ方向の区間が短く,壁面摩擦によるエネルギー損失や壁
面せん断力が無視できる流れを対象にしている.
6.1 比エネルギ-と限界水深
(a) 比エネルギ-
圧力分布が静水圧分布と見なせる場合,開水路流の全水頭は
H =v2
2g+ h+ z (6.1)
である.ここで, v は断面平均流速, h は水深, z は基準面から水路床までの高さ
である.水路床高 z を除いた水頭(水路床から測ったその断面での単位体積重量あた
りのエネルギー)
E = H − z = v2
2g+ h (6.2)
を比エネルギー呼ぶ.
(b) 比エネルギ-図
幅の広い長方形断面の単位幅あたりの流量を q とすると,流速 v は v = q/h であ
るから,比エネルギーは
E =q2
2g
1
h2+ h (6.3)
— 1 —
と表される.単位幅あたりの流量 q を一定として,水深 h と比エネルギー E の関
係を示した図を比エネルギ-図という.式 (6.3)から,比エネルギ-は
E ⇒ h (h→∞) (6.4)
E ⇒ q2
2g
1
h2(h→ 0) (6.5)
の性質があり,ある水深 hc で比エネルギーは最小値 Ec をとる.この水深 hc を限
界水深と呼ぶ. ∂E/∂h = 0 から
hc =
µq2
g
¶1/3=2
3Ec (6.6)
Ec =3
2hc (6.7)
となり,限界状態では比エネルギーは水深の 3/2に等しい.
(c) 流量図
比エネルギ- E を一定として,水深 h と単位幅あたりの流量 q の関係を示した
図を流量図という.式 (6.3)から
q2 = 2g(E − h)h2 (6.8)
上式から,比エネルギー E を一定値に保った時の q と h の関係を知ることができ
る.横軸を水深 q ,縦軸を h として描いた q と h の関係を流量図と呼ぶ.
q ⇒ 0 (h→ E or h→ 0) (6.9)
v ⇒ 0 (h→ E) (6.10)
v ⇒p2gE (h→ 0) (6.11)
— 2 —
単位幅あたりの流量 q が最大となる水深を求めると,
hc =2
3E (6.12)
となり,式 (6.7)と同様な関係が得られる.ただし,比エネルギーは与えられた一定値
であることに注意すること.したがって,比エネルギ- E が一定の場合,限界水深で
単位幅流量は最大となる.その時の単位幅流量は
qc(E) = g1/2µ2
3E
¶3/2= g1/2h3/2c (6.13)
これを変形すると,式 (6.6)と同様な関係が得られる.
ある比エネルギ- E と単位幅あたりの流量 q に対して,限界水深の状態を除いて,
開水路流れは常に2つの水深 h1 , h2 をとることが可能である. h1 と h2 の組を交
代水深(対応水深)という.
(d) 無次元化した比エネルギー図・流量図
式 (6.3)を限界水深 hc で割って比エネルギーを無次元化すると
E
hc=1
2
µhch
¶2+h
hc(6.14)
E =1
2h2 + h (6.15)
式 (6.8)を qc2 = g hc
3 で割ると
q2
qc2= 2
µE
hc− h
hc
¶µh
hc
¶2(6.16)
q2 = 2
µ3
2− h
¶h2
(6.17)
となる.
6.2 常流と射流
式 (6.13)からわかるように,限界状態(水深は限界水深 hc )では断面平均流速 vc
は長波の波速と同じ√ghc となり,フルード数は 1となる.連続条件より, vh = vchc
だから
Fr =v√gh=
vc√ghc
µhch
¶3/2=
µhch
¶3/2(6.18)
・水深が限界水深より大きな流れを常流と呼ぶ.常流では Fr < 1 である.
・水深が限界水深より小さな流れを射流と呼ぶ.射流では Fr > 1 である.
常流では流れに与えられた変化が上流に伝わるので,その水面形は下流側の条件(水
位)により決定される.
一方,射流では流れに与えられた変化は,上流に伝わらないことから,その水面形は
上流の水位で決定される.
— 3 —
6.3 水路床高および水路幅の変化にともなう水深変化
(a) 水路床高の変化による水深と水位の変化
比エネルギー E は全エネルギー H から水路床高 z を引いたものである.
E = H − z (6.19)
したがって,全エネルギー H が一定なら,水路床高 z が大きくなると比エネルギー
E は減少する.微分方程式で表すと
dE
dx= −dz
dx(6.20)
となる.左辺に式 (6.3)を代入すると
dE
dx= (1− Fr2)dh
dx(6.21)
従って,水深変化はdh
dx=
1
Fr2 − 1dz
dx(6.22)
水位変化はd(h+ z)
dx=
Fr2
Fr2 − 1dz
dx(6.23)
となる.
・常流( Fr < 1)なら,水路床高が増えると水深と水位は低下する.
・射流( Fr > 1)なら,水路床高が増えると水深と水位は上昇する.
— 4 —
(b) 支配断面
・流速と水深が1対1に対応する断面(水深から流速・流量が決まる): vc =√ghc
qc =√ghc hc .
・限界流が生じる断面: Fr = 1.
・常流から射流への遷移部で現れる.
(c) 水路幅の変化による水深と水位の変化
水路床が水平でエネルギー損失がなければ,比エネルギーは一定である.
H = h+v2
2g= h+
q2
2gh2=一定 (6.24)
x で微分すると
dE
dx= (1− Fr2)dh
dx+ Fr
2h
q
dq
dx= 0 (6.25)
だから,
dh
dx=
Fr2
Fr2 − 1h
q
dq
dx(6.26)
となる.流量を Q,水路幅を B(x) とすると
dq
dx=d(Q/B)
dx= − Q
B2dB
dx(6.27)
だから,水深変化は
dh
dx= − Fr
2
Fr2 − 1h
B
dB
dx(6.28)
で計算される.
・常流( Fr < 1)なら,水路幅が拡大すると水深と水位は増加する.
・射流( Fr > 1)なら,水路幅が拡大すると水深と水位は減少する.
— 5 —
6.4 比力と物体に作用する抗力
(a) 開水路の運動量保存則と比力
流れに対する摩擦力などの抵抗を無視すると,開水路の上流側断面1と下流側断面
2の間で運動量保存式を立てると
[Mx]2 − [Mx]1 = [P ]1 − [P ]2 (6.29)
となる.ここで,Mx は x 方向(流れ方向)の運動量フラックス, P は x 方向の全
圧力である.単位幅あたりの運動量フラックスは
Mx = ρqv =ρq2
h(6.30)
である.また,単位幅あたりの全圧力は,水圧が静水圧分布を持てば
P =
Z h
0
ρgz dz =ρgh2
2(6.31)
である.これらを式 (6.24)に代入すると
ρq2
h2− ρq2
h1=ρgh1
2
2− ρgh2
2
2(6.32)
単位体積重量 ρg で割って変形すると
h12
2+q2
gh1=h22
2+q2
gh2=一定 (6.33)
Fx =h2
2+q2
gh
を比力(単位体積重量あたりの,運動量フラックス+静水圧)と呼ぶ.
①開水路における運動量保存則は,比力=一定と表される.
②適用条件:
・静水圧分布の仮定が成立している.
・検査面に働く力が既知 or 無視できる.
・エネルギー損失の有無は関係しない.
(b) 開水路床上の物体に働く抗力
単位幅あたりの抗力 D を考慮した運動量保存則は
[Mx]2 − [Mx]1 = [P ]1 − [P ]2 −D (6.34)
ρg[Fx]2 − ρg[Fx]1 = −D (6.35)
したがって,開水路床上の2次元物体に働く抗力 DB は
DB = ρg([Fx]1 − [Fx]2)B (6.36)
から求められる.
— 6 —
6.5 跳水現象
(a) 比力図
比力は
F =h2
2+q2
gh(6.37)
からわかるように,水深と単位幅流量の関数である.一定の q の下で水深と比力の関
係を描いたものを比力図という. F が最小となる水深は,
∂F
∂h= h− q2
gh2= 0
から
hc =
µq2
g
¶1/3となり,限界水深に等しい.比力の最小値は
Fc(q) =1
2
µq2
g
¶2/3+q2
g
µg
q2
¶1/3=3
2
µq2
g
¶2/3=3
2hc2 (6.38)
となる.
(b) 無次元化した比力図
比力を限界水深の2乗で割って無次元化すると
F
hc2=1
2
µh
hc
¶2+
q2
ghc3
µh
hc
¶hc3 = q2/g = 1 だから
F =1
2h2+1
h(6.39)
ここに, h = h/hc, F = F/hc2 である.無次元化したエネルギー式 (6.15)と比較する
と, h を 1
hに置き換えたものになっている.
— 7 —
(c) 共役水深
射流から常流に急激に変化する現象を跳水という.跳水前後の比力について次の関係
が成立する.(射流から常流へ短い区間で遷移するので,底面せん断力は無視できる)
F =h12
2+q2
gh1=h22
2+q2
gh2
これを変形すると
h12 − h22 + 2q
2
g
µh2 − h1h1h2
¶= 0
h1 + h2 =2q2
gh1h2
h22 + h1h2 − 2q
2
gh1= 0 (6.40)
h2 について解くと
h2 = −h12+
sh12
4+2q2
gh1
= −h12+h12
p1 + 8Fr12 (6.41)
h2h1=1
2
np1 + 8Fr12 − 1
o(6.42)
同様に, h1 について解くと
h1h2=1
2
np1 + 8Fr22 − 1
o(6.43)
跳水前後の水深 h1, h2 は式 (6.42)あるいは式 (6.43)の関係を満たす必要がある.こ
の1組の水深を共役水深という.
(d) 跳水によるエネルギー損失
跳水前後の比エネルギーは
E1 = h1 +q2
2gh12, E2 = h2 +
q2
2gh22
— 8 —
∆E = E1 − E2 = (h1 − h2) + q2
2g
¡h22 − h12
¢= (h1 − h2)
µ1− q
2
2g
h1 + h2h12h22
¶(6.44)
式 (6.40)から2q2
g= h1(h2
2 + h1h2)
これを式 (6.44)に代入して整理すると
∆E =(h2 − h1)34h1h2
(6.45)
h2 > h1 だから, ∆E > 0 となる.すなわち,跳水前の水深 h1 が跳水後の共役水深
h2 より小さければ,比エネルギーは跳水により減少することになり,エネルギー的に
矛盾はない.
6.6 比力差とゲートにかかる圧力
スルースゲートの下部から水が流出している.考えている区間が短いことからエネ
ルギー損失を無視すると,ゲートの上,下流で比エネルギーは一定だから
E = h1 +v12
2g= h1 +
v22
2g(6.46)
v2 = q/h2 を代入すると
q = h2p2g(E − h2) (トリチェリーの定理) (6.47)
が得られる.
ゲートにかかる単位は場あたりの総圧力 PG は,上下流の比力差から求まる.
PG = ρG
∙µh12
2+q2
gh1
¶−µh22
2+q2
gh2
¶¸(6.48)
式 (6.46)の関係を使って q を消去すると
PG =ρg
2
(h1 − h2)3(h1 + h2)
; h1 > h2 ⇒ PG > 0 (6.49)
となる.
— 9 —
— 10 —
第7章 開水路の等流
7.1 断面平均流速公式
断面平均流速 v は
v =Q
A(7.1)
ここで, Q は流量, A は流水の横断面積(流積)である.開水路流断面の代表長さ
としては,水深ではなく,次の径深 R が用いられる.
R =A
S(7.2)
ここで, S は流水と接する辺の長さで,潤辺と呼ばれる.流水抵抗は壁面との摩擦に
よって発生するから,潤辺の影響が入った径深が代表長さとして用いられるのである.
矩形断面の場合,水路幅を B ,水深を h とすると
R =hB
B + 2h=
h
1 + 2(h/B)(7.3)
となる.水路幅が水深に対して十分広い広幅断面水路 (h/B → 0) では R ∼= h とな
ることがわかる.直径 d の円管の場合,
R =d
4(7.4)
である.
断面平均流速 v は,エネルギー勾配 I ,径深 R,水路壁面の粗さ n で決まる.す
なわち,
v = fn(I, R, n) (7.5)
エネルギー勾配 I は
I =dh`dx
= − ddx
µz + h+
v2
2g
¶= i0 − d
dx
µh+
v2
2g
¶(7.6)
ここに, h` は摩擦損失水頭, i0 は水路勾配である.
(a) Darcy-Weisbachの式
管路流に対する Darcy-Weisbachの式は
I =f
d
v2
2g(7.7)
である.ここに, f は摩擦損失係数で,レイノルズ数 Re = vd/ν や相対粗度 ks/h
に関係する.開水路では管径の代わりに径深を用いる. R = d/4 であるから
I =f
4R
v2
2g=f 0
R
v2
2g(7.8)
と表される.ここで, f 0 = f/4 であるので,開水路流の摩擦損失係数 f 0 は管路流の
1/4の大きさである.
(b) Chezyの断面平均流速公式
— 11 —
v = C√RI (7.9)
ここに, C はChezyの定数と呼ばれる(以下に示すように,実際には定数ではない).
式 (7.57)を変形すると
v =
r2g
f 0√RI (7.10)
だから,
C =
r2g
f 0(7.11)
の関係があることがわかる.
(c) Manningの断面平均流速公式
v =1
nR2/3I1/2 =
R1/6
n
√RI (7.12)
ここで, n はManningの粗度係数と呼ばれる.Chezyの定数との関係は
C =R1/6
n(7.13)
となる.摩擦損失係数 f 0 との関係は
R1/6
n=
r2g
f 0
n = R1/6
sf 0
2g(7.14)
Manningの粗度係数を用いて Darcy-Waisbach式を表すと
I =2gn2
R4/3v2
2g(7.15)
となる.
(i) Manningの粗度係数の次元と単位系
Manningの粗度係数は無次元ではなく,次の単位を持つ.
[n] = [R]2/3[I]1/2[V ]−1 = [TL−1/3]
そのため, v と R をm-s単位系で表す時の値に統一している.
(d) Manning公式の理論的裏付け
二次元水路の流速分布は次の対数則で表される.
u(z)
u∗=1
κlnu∗zν+As (滑面) (7.16)
u(z)
u∗=1
κlnz
ks+Ar (粗面) (7.17)
水深平均流速 v = 1h
R h0u(z) dz を求めると
v =
µAs − 1
κ+1
κlnu∗hν
¶u∗ (滑面) (7.18)
— 12 —
v =
µAr − 1
κ+1
κlnh
ks
¶u∗ (粗面) (7.19)
となる.ここで, u∗ は摩擦速度で,以下のように,水路勾配(エネルギー勾配)と水
深(径深)から決まる.
等流状態では,流れに働く流下方向の重力の分力と水路壁面に働くせん断力が釣り
合っている.すなわち
τ0Sδx = ρgAδx cos θ sin θ (7.20)
の関係が成立している.したがって,
τ0 = ρgR cos θ sin θ = ρgRi0 cos θ (7.21)
である.ただし,通常の水路勾配 (i0 < 1/50) では, i0 = tan θ ≈ sin θ, cos θ ≈ 1 と考
えて良いから,
τ0 = ρgRi0 = ρgRI (7.22)
摩擦速度は
u∗ =pτ0/ρ =
pgRI (7.23)
となる.幅の十分広い水路( h¿ B ,二次元水路)では
u∗ =pghI (7.24)
式 (7.66)と (7.67)はそれぞれ
v =
µAs − 1
κ+1
κlnu∗hν
¶√g√hI (滑面) (7.25)
v =
µAr − 1
κ+1
κlnh
ks
¶√g√hI (粗面) (7.26)
となる.粗面の場合を考えると
C =h1/6
n=
µAr − 1
κ+1
κlnh
ks
¶√g (7.27)
1
n=
√g
k1/6s
µksh
¶1/6µAr − 1
κ+1
κlnh
ks
¶| {z }
fn(ks/h)≈7.66
(7.28)
したがって
n ∼= 1
7.66√gk1/6s = 0.0417k1/6s (7.29)
となる.このように,Manningの粗度係数 n は水路材料の粗さ ks のみに関係し,他の
水理量には関係しないことになり,大変便利であることがわかる.このことが,Man-
ning公式が最もよく使われる理由である.
Manning公式は粗面開水路に適用される平均流速公式であることに注意.
(e) 摩擦損失係数 f 0 の理論式
Darcy-Waisbach式 (7.57)から,2次元水路では
√hI =
pf 0v2g (7.30)
— 13 —
となる.この式と式 (7.74),(7.75)から開水路の摩擦損失係数 f 0 の理論式が以下のよ
うに導かれる.
滑面1√f 0=
1√2
µAs − 1
κ(1 + ln
√2) +
1
κlnvh
ν
pf 0¶
(7.31)
粗面1√f 0=
1√2
µAr − 1
κ+1
κlnh
ks
¶(7.32)
一般的には,管路流と同様,水路の摩擦損失係数は,Reynolds数 Re = vh/ν や相対
粗度 ks/h に関係する.粗面水路では,摩擦損失係数は Reynolds数には無関係で相対
粗度 ks/h にのみに関係する.このような領域がManning公式が適用し得る範囲であ
る. fn(ks/h) ≈ 7.66 の関係を考慮すれば
f 0 ∼= 0.0341
µksh
¶1/3(7.33)
7.2 等流水深と限界水深
(a) 等流水深
勾配と断面が一様な水路において,流下距離が十分長くなると,水深が一定(水面と
水路床が平行)な状態にある.これは流水に働く重力の流れ方向分力と水路壁面に働く
せん断力が釣り合った状態になるためである.このような状態を等流状態と呼び,この
流れを等流という.
このような平衡状態に達した水深を等流水深と呼ぶ.等流水深はManning公式を満
足する水深である.Manning 公式は非線形であるので,等流水深を様な形に変形する
こと(水深について解くこと)は出来ないが,広幅水路(2次元水路 R ≈ h)なら,
h0 =
µn2q2
i0
¶3/10(7.34)
となる.したがって,単位幅流量 q が一定なら,水路勾配が急になるにつれて,等流
水深は減少する.
(b) 限界水深・限界勾配
前述したように,限界状態では Froude数が 1で,平均流速は v =√ghc となる.し
たがって,平均流速は水路勾配には関係しない.
単位幅流量は, q = vhc =√ghc
3/2 であるから,限界水深は
hc =
µq2
g
¶1/3(7.35)
となる.したがって,限界水深も水路勾配には関係しない.
限界水深が等流水深に等しくなる (h0 = hc) ためには,式 (7.83), (7.84)からµn2q2
i0
¶3/10=
µq2
g
¶1/3を満足する必要がある.このときの水路勾配 i0 を限界勾配 ic という.
ic =g10/9n2
q2/9=
gn2
hc1/3(7.36)
— 14 —
第8章 開水路の漸変流
8.1 開水路の漸変定常流の基礎方程式
水深・流速が流下方向に変化する不等流のうち,水深や流速が穏やかに変化する流れ
を漸変流という.「穏やかに変化する」とは以下の仮定が成り立つ状態である.
1)各断面内の流速分布は相似形で,エネルギー補正係数 α は一定で1としてよい.
2) 流線の曲がりが少なく,静水圧分布が仮定できる.3) 壁面での摩擦損失は,等流の
場合の式を適用できる.エネルギー勾配(摩擦損失勾配)は,式 (7.6)で示したように
If =dh`dx
= − ddx
µz + h+
v2
2g
¶= i0 − d
dx
µh+
v2
2g
¶(8.1)
一方,Darcy-Waisbach式から
dh`dx
= f 01
h
v2
2g=2gn2
h4/3v2
2g(8.2)
と表される.式 (8.2)を (8.1)に代入すると
−i0 + d
dx
µh+
v2
2g
¶+2gn2
h4/3v2
2g= 0 (8.3)
−i0 + dhdx| {z }
Is
+1
2g
d
dx
³ qh
´2| {z }
Iv
+n2q2
h10/3| {z }If
= 0 (8.4)
ここに, Is は水面勾配で管水路流の動水勾配に相当する. Iv は速度水頭勾配, If
はエネルギー勾配である.
広幅矩形断面水路で水路幅が一定( q = 一定 )の場合に,上式を dh/dx について
整理すればdh
dx=i0 − If1− Fr2 (8.5)
となる.
断面積 A(x) の一般的な場合,漸変流の基礎方程式は
−i0 + dhdx+
α
2g
d
dx
µQ
A
¶2+
n2
R4/3
µQ
A
¶2= 0 (8.6)
ここで,左辺第3項の摩擦損失項は,式 (7.15)で示したManningのものである.
水深変化はdh
dx=
i0 − If1− αQ2
gA3B
= i01− (Q/Q0)21− (Q/Qc)2 (8.7)
となる.ここに, Qc =pgA3/αB =
√ghA/α は水深が限界水深となる流量, Q0 =
AnR
2/3If1/2 は水深が等流水深となる流量である.
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8.2 開水路の漸変定常流の水面形
ここでは開水路流に現れる水面形の基本的特性を理解することを目的に,一定勾配
で一様な広幅矩形断面の開水路流のみを考える.
Chezyの断面平均流速公式を用いると, q = Ch3/2If1/2 , q = Ch0
3/2I01/2 と表さ
れる.したがって,
If = i0(h0/h)3 (8.8)
の関係が得られる.一方,αQ2
gA3B = α
q2
g
1
h3
hc = (q2/g)1/3 だから
αQ2
gA3B = α(hc/h)
3 (8.9)
式 (8.8),(8.9)を式 (8.7)に代入すると
dh
dx= i0
1− (h0/h)31− (hc/h)3 = i0
1− (h0/h)31− (h0/h)3(hc/h0)3 (8.10)
が得られる(広幅矩形断面,Chezy公式).上式から, h0 と h の大小関係, h0 と
hc の大小関係によって,水深の流下方向変化の仕方が異なることがわかる.
h0 と hc の比はµh0hc
¶3=
µn2q2
i0
¶9/10µg
αq2
¶=
½1
i0
³ gα
´10/9 n2
q2/9
¾9/10=
µici0
¶9/10(8.11)
したがって,等流水深 h0 が限界水深 hc は水路勾配 i0 が流量 q に対する限界勾配
ic より大きいか小さいかによって決まる.
i0 < ic(緩勾配), h0 > hc(常流)
i0 > ic(急勾配), h0 < hc(射流)
8.2.1 種々の水面形の基本形
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