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植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the Fukushima Agricultural Technology Centre ISSN ISSN 18825613 著者 著者 二瓶, 直登 巻/号 巻/号 2号 掲載ページ 掲載ページ p. 21-97 発行年月 発行年月 2010年3月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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Page 1: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究

誌名誌名福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the Fukushima AgriculturalTechnology Centre

ISSNISSN 18825613

著者著者 二瓶, 直登

巻/号巻/号 2号

掲載ページ掲載ページ p. 21-97

発行年月発行年月 2010年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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福島農総セ研報2: 21-97 (2010)

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究*

二瓶直登**

A Study of Amino Acids Absorption and Metabolism by Some Plants*

Naoto NIHEI料

アミノ酸の吸収・蓄積部位…………… 31

リアルタイムオートラジオグラフィシス

テムを用いたアミノ酸の阪収解析…・・… 33

第五節 アミノ酸の吸収速度…………………… 38

第六節 窒素環境の違いがアミノ酸吸収に及ぼす影響… 40

第七節 まとめ…ー……・………-…一…..… 42

第五章 直接吸収したアミノ酸の代謝とイネ幼植物

体内の蓄積分布…………………………… 43

第一節はじめに一-…..…-…......…・…….. 43

第二節 異なるアミノ酸ごとの吸収………….. 43

第三節 直接吸収したアミノ酸の構成窒素および炭素

の地下部から地上部への移行およびアミノ酸

から得られるエネルギーについて・…・….... 47

第四節 異なる種類のアミノ酸ごとの代謝経路の違い 56

第五節 まとめ・………………………………… 65

第六章総合考察……一…………………………… 67

第七章摘要…・・………………・…・・……… 71謝辞・…..................................................... 72

引用文献...................................................... 72

Summary .…・・ …・・…・… ・・…・… ・… J… …........ 77

第三節

第四節

緒言....

有機質肥料の植物別施用効果および、有機

態窒素の生育に対する影響の解析………

第一節 はじめに…・

第二節 有機質肥料に対する各植物の反応・

第三節 有機質肥料の種類による施肥効果の相違…

第四節 有機質肥料の根系発達への影響

第五節 まとめ…………………………………… 14

第三章 アミノ酸を単一窒素源とした栽培における

アミノ酸の種類が生育に与える影響の解析 14

第一節 はじめに・…・・…・・ー・…・…・・……・・…..... 14

第二節 異なるアミノ酸の濃度がイネ幼植物の

生育に及ぼす影響……………………… 15

異なるアミノ酸が植物の初期生育に及ぼす影響 18

異なるアミノ酸が無窒素栽培後のイネ

幼植物の生育に及ぼす影響…………… 25

第五節 まとめ・………………………………… 25

第四章 イネ幼植物のアミノ酸吸収の解析

第一節 はじめに・…・・…・…・…・…・・…・…・…・…・ 26

第二節 アミノ酸の直接吸収の証明…………… 27

26

4

5

10

4

5

1 立早童目

一一一第

第三節

第四節

Key word : amino acid, glutamine, adosorption, metabolism, organic nitrogen

キーワード:アミノ酸、グルタミン、吸収、代謝、有機態窒素

のあいまいさから、国内の有機農業生産は停滞しており、

有機農産物の需要拡大分は輸入有機農産物によってま

かなわれているのが現状である。

このような中で、農林水産省は 1992年に「新しい食料・

農業・農村政策の方向」の中で、環境への負荷に配慮

した持続的な農業の確立の必要性を初めて指摘した。

その実現に向けて 1999年に「持続性の高い農業生産方

式の導入の促進に関する法律(持続農業法)Jを公布し、

緒言

1 有機農業を取り巻く環境

農業による環境負荷への懸念と、将来にわたる持続

的な食糧生産を実現するために、農業が本来有する物

質循環機能を活かした有機農業への取り組みが全国的

に見直されている。有機農業に対する期待は確実に高

まっているが、従来の農法に対しての減収や、その効果

第一章

受理日平成21年11月16日

*本論文は、東京大学大学院農学生命科学研究科審査学位論文を基に編集・加筆したものである。

**福島県農業総合センタ一作物園芸部

1

j

Page 3: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

22 福島県農業総合センター研究報告 第2号

化学肥料や農薬などの投入を低く抑えた場合でも、有機

質肥料等の施用により高品質な安定生産ができる技術

の開発を急務としている。そして、 2005年に閣議決定さ

れた「食料・農業・農村基本計画」では、環境保全を

重視した施策の展開が基本方針に盛り込まれ、農産物

残j査、未利用バイオマスの活用の促進が進められている。

また、 2006年には「有機農業の推進に関する法律J(推

進法)が施行され、それに基づき農林水産省が公表し

た「有機農業の推進に係る基本的な方針Jでは有機農

業の科学的解明や技術開発に対する試験研究機関の関

与が強く求められている。

福島県でも、県の豊かな自然環境の保全と消費者が

安心して購入できる農産物の生産をめざし、県をあげて

安全で環境と共生する農業生産方式への転換を進めて

いる。県では有機農業を普及・拡大させるため、 2006

年 4月に福島県農業総合センター内に有機農業推進室

を設置し、県内各方部に有機栽培の技術実証圃場 (2008

年度、 21カ所)を設けている。さらに、福島県は 2006

年9月に ]AS法に基づく有機農産物の生産工程を認定

できる登録認定機関として国の登録を受け、認定業務を

開始し、有機農産物の生産・販売を行う上で、ののパック

アッフ。体制も整えてきている。その一環として土作りと化

学肥料・農薬の低減に一体的に取り組むエコファーマー

の育成に努め、これまでに全国 l位の 18000名以上の

エコファーマーが誕生している。県内の有機栽培面積は、

]AS有機認定面積で 215ha、同等の有機栽培面積が

80ha、合計 295ha(平成 19年)である。栽培面積のう

ち約 8割が水稲で占められており、残り約 2割が野菜で

ある。

また福島県農業総合センターでは、全国の公立農業試

験研究機関に先駆け平成 17年から有機栽培研究に取り

組み、 ]AS有機規格に適合した有機栽培圃場(有機栽

培2年経過圃場)を有している。センターで得られた成

果は地方別に、技術移転セミナーを開催して農家や関係

者に技術の移転を行っており、また年に数回、専門家を

招聴し、有機農業セミナーも開催することで県内の有機

農業の普及を推進している。

2 有機農業の種類

一般に有機農業といっても、化学的な肥料や農薬を

使用しない栽培や、環境保全型の持続的農業などその

概念は様々である。法律に基づく主な農産物や農業者の

定義は以下の通りである。

・有機農産物-化学的に合成された肥料および、農薬の使

用を避けることを基本として播種または植え付け前2

年以上(多年生産物の場合は、最初の収穫前3年以上)

の問、堆肥等による土作りを行った圃場において生産

2

された農産物。 1999年7月、「農林物資の規格化お

よび品質表示の適正化に関する法律(JAS法)Jの一

部が改正され、 200l年4月から、農産物や農産物加

工品に「有機」と表示するには「有機 ]ASマーク」を

貼ることが義務付けられた。この「有機 ]ASマーク」

がない農産物と農産物加工食品に、「有機」、「オーガ

ニック」などの名称の表示や、これと紛らわしい表示

を付すことは法律で禁止されている。都道府県で認定

機関となっているのは、福島県と岐阜県と石川県であ

る(平成 20年度)。

・特別栽培農産物その農産物が生産された地域の慣

行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象

農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対

象農薬成分の使用回数が 50%以下、化学肥料の窒

素成分量が 50%以下で栽培された農産物。 2007年

3月の「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」に

よる。登録認証機関の認証を受けると、「県の認証票」

を付して販売ができる0

・ェコファーマー「持続性の高い農業生産方式の導入

に関する計画」を都道府県知事に提出して、当該導入

計画が適当である旨の認定を受けた農業者(認定農業

者)の愛称名。 1999年7月に制定された「持続性の

高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(持続

農業法)J に基づく。エコファーマーが導入計画に基

づき生産した農産物を「エコ農産物Jと呼ぴ全国環境

保全型農業推進会議(事務局 ;]A全中)が作成した

「エコファーマーマーク」を付して販売できる。福島県

はエコファーマー認定農業者が全国 l位。

3 有機農業の普及上の問題点

有機農業における最も大きな技術的課題は施肥、そし

て病害虫と雑草の問題である。特に、化学肥料を使用

できない有機農業では、有機質肥料の施用が作物の収

量や品質に大きな影響を与える。有機質肥料は、地域

で生産された有機物の利用を基本とし、堆厩肥や稲わ

ら、魚、かすや菜種かすなどその種類は多岐にわたる。福

島県内の調査結果においても、有機質肥料の施用効果

は、作物や年次、地域によって評価が異なり、統一的な

見解が得られていなしミ。有機農業はこのように地域の生

態系の多様な要素の複雑な関係の上に成立していること

から、実践農業者の技術が経験則として語られることが

多く、これまで科学的分析に基づいて技術が汎用化され

ることが少ないという特徴がある。しかし、安全、安心

な農作物の供給や、持続的な農業として期待される有機

農業を普及・拡大するためには、農業技術として科学根

拠に基づいた有機質肥料の施用効果を提示し、農業者

が有機農業に取組み易くする必要があると考えられる。

F

Page 4: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究23

4 窒素施肥の重要性

植物が生長するためには 17の必須元素が必要で、あり、

そのうち三大元素と呼ばれる窒素、リン酸、カリウムを

中心に施肥が行われている。特に、窒素は植物の体を

つくるタンパク質、体内での様々な反応に寄与する酵素タ

ンパク質、光合成の場となる葉緑体タンパク質の構成成

分として、植物の生命維持に重要な役割をはたしている。

このため、窒素は植物生長に最も重要な養分であり、植

物の要求量が多く、土壌中で不足しがちで、植物生長の

制限要因になりやすい元素である。

1843年にリーピッヒが「植物はその生長に際し、無機

化合物のみ養分として与えればよい」とする無機栄養説

を提唱し、化学合成による肥料が生産されるようになる

と、それまで使用されていた有機質肥料から化学肥料

へ転換が急激に進んだ。化学肥料は有機質肥料に比べ

て省力的であり、施用効果も速やかに発現することから、

作物の養分要求に応じて分施するなど適切な施肥管理を

行うことが可能となり、食料生産が増大した。化学肥料

による生産性の向上が、 19世紀以降の爆発的な人口増

加に対する食糧増産を支えた要因のひとつであることに

疑う余地はない。しかし、化学肥料はその効果が速効

的であるがゆえに作物による利用率は半分以下であり、

過剰な肥料が地下水や河川水に移行し、地下水汚染を

31き起こす等の環境問題も指摘されている。

5 有機質肥料から供給される窒素形態

有機質肥料の養分供給に関するこれまでの研究でも、

無機栄養説に基づき有機質肥料から分解する無機化量

(可給態窒素量)を予測する試みが行われている(山室

1988、上野ら 1990)。しかし、無機化量だけでは生育

の説明が付かない事例も多々報告されている (MaUingly

1973、Matsumotoet al. 1999)。これは、土壌中の窒素は、

無機態で存在するのはわずか 1%にすぎず、ほとんどが

有機態で存在する (Nemethet al. 1988) ことに起因す

ると考えられる。土壌に添加された有機物は、微生物に

よる分解を受けタンパク質、ペプチド、アミノ酸を経て最

終的に無機態窒素になる。つまり、土壌中では、様々な

大きさ、形態の窒素が存在しており、有機農業では有機

物や有機態窒素を積極的に施用するため、無機態窒素

を施用する近代農業より有機態窒素の土壌中の存在量

が多くなると推察される。そのため、有機農業での栽培

では、特に、無機態窒素だけではなく有機態窒素の存

在も考慮すべきで、あり、有機態窒素の吸収や無機態窒

素との利用の違いを検討する必要があると考えられる。

6 有機態窒素に関する研究

有機態窒素の研究は古く、アミノ酸やペプチド、タン

:44t沿引剥司副馴劃姻

パク質などについての植物生育に関する報告がいくつか

寄せられている。 Virtanenら(1946) は、根粒菌を摂

取しでいないマメ科植物は、アスパラギ、ン酸、グルタミン

酸をよく利用している可能性について報告した。 Ghoshら

(1950) は、クローノてーではアスパラギ、ン、アラニン、ヒ

スチジン、フェニルアラニンが無機態窒素源より多く利用

されたが、タバコではどのアミノ酸も利用されなかったと

報告している。槙ら (1966)は、水稲で、はy-アミノ酪酸、

グルタミン酸、グリシンによって無機態窒素と同等の生

育を示し、フェニルアラニンでは 80%程度の生育しかな

らないという報告や、有菌状態のオオムギにおいて、ア

ルギニンやグルタミンなどで、生育が旺盛になった報告(森

1979)もある。また、核酸の生育促進効果が、タバコ(藤

原ら 1961)、裸麦(森 1986)、水稲(三井ら 1962、

輪田 1959)で報告されている。また、山鯨ら(1997)は、

C/N比を変えた米ぬかを施用した結果から、低分子有

機態窒素に対するイネ(陸稲)の吸収能力はトウモロコシ、

テンサイより高いことを示している。 Matsumoto(1999)

は、有機物施用によって分子量 8000程度のタンパク様

窒素が増加し、ニンジン、チンゲンサイ、陸稲、ソルガ

ムはこの分画の窒素を吸収すると報告している。

さらに近年、野外で生育した植物が有機物を吸収・利

用していることが証明されている。アラスカのツンドラの

湿地では、低温と冠水による酸素不足のため、土壌微

生物活性が抑制され、土壌の有機物分解が不十分とな

り、無機態窒素より多くのアミノ酸態窒素が存在してい

る。こうした条件に生育しているスゲ属の植物は、アミ

ノ酸を窒素源にしたときに最も良く生育することが報告

されている (Chapinet al. 1993, Kielland 1994, Lipson

1998、Nasholmet al. 1998, Nordin 2001)。さらに同様

な条件で生育する高山植物(Raab1999)、牧草(Nasholm

et al. 2000、Weigeltet al. 2005) についてアミノ酸の

積極的な利用が報告されている。

また、高分子吸収のメカニズムとして、西j畢ら (1980)

は、根からヘモグロビンが、細胞膜のくびれこみ構造に

より吸収されることを証明している。また、アミノ酸が植

物細胞を通り抜けることに関与するトランスポーター遺伝

子が根表面でも発現している可能性についての報告があ

る(Hirneret al. 2006、Leeet al. 2007)。このような研究事例の蓄積から、植物は無機態窒素だ

けでなく、有機態窒素も吸収、利用していることはある

程度実証されていると言えよう。しかし、無機態窒素の

吸収や利用に関する研究に比べて、有機態窒素に関する

研究は未だ少なく、有機農業で栽培されている作物での

有機態窒素の直接吸収、有機態窒素利用能の作物間差、

有機態窒素と無機態窒素の利用上の違い等大きな研究

課題が残されている。

3

Page 5: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

24 福島県農業総合センター研究報告 第2号

7 本研究の位置づけ

本研究では有機態窒素としてアミノ酸を研究対象とし

た。アミノ酸は有機態窒素の最小単位でタンパク質を構

築するものであり、アミノ酸の吸収特性を詳細に検討す

ることが、有機態窒素研究、有機質肥料の施用効果の

解明に繋がると考えたためである。これまで、アミノ酸

が生育に与える影響に関して検討した事例はあるが、実

際のアミノ酸の吸収部位、環境が吸収に及ぼす影響、

吸収されたアミノ酸の代謝および、窒素と炭素の利用につ

いて検討している事例は少なく、本研究ではこのアミノ

酸の吸収代謝などを中心に実験を行った。

第二章において、まず有機質肥料の効果を検討し、

有機質肥料の効果が、施用する作物によって異なるかを

明らかにしようと試みた。また、土壌中の無機態窒素量

と作物の窒素吸収量の比較も行った。無機態窒素以外

の窒素、すなわち有機態窒素のアミノ酸が植物に与える

影響を、第三章以降で検討した。

第三章では、タンパク質を構成するアミノ酸 20種類を

窒素源として、作物5種類の生育に与える影響を検討した。

第四章では、有機栽培で最も栽培面積が多いイネを

用いて、その幼植物におけるアミノ酸吸収について、アミ

ノ酸の直接吸収、吸収部位、吸収速度、生育時の窒素

条件が吸収に及ぼす影響などを検討した。

第五章では、吸収したアミノ酸の代謝やアミノ酸由来

の窒素や炭素の地上部/地下部の分配割合、アミノ酸

から得られるエネルギーについて検討した。

最後に第六章において、アミノ酸の窒素源としての植

物の生育促進効果、有機農業におけるその意味、今後

の有機農業の展開において何が重要となるかを本研究か

ら得られた知見として総合考察を行った。

第二章 有機質肥料の植物別施用効果およ

び有機態窒素の生育に対する影響

の解析

第一節 はじめに

地球温暖化に代表される地球規模の環境破壊に加え、

近年の食の安全安心、高品質、健康志向から、持続的

で地域資源の循環を基本とする有機農業が注目を集めて

いる。化学肥料を使用しない有機農業では、養分供給や

土壌物理性の改善を目的として有機質肥料を施用する。

有機質肥料は米糠、菜種粕、くず大豆などの植物性

のものや、魚、粕、鶏糞など動物性のもの、緑肥や堆肥、

下水汚泥なと手その種類は様々で、あり、効果的な利用に当

たっては個々の有機質肥料の肥効特性を理解することが

重要である。有機質肥料は土壌に施用された後、微生

4

物による分解過程を経て肥効が発現する。よって、有機

質肥料の肥効の指標として、一定の水分含量で保温静

置する室内インキュベーション法により無機化してくる窒

素成分を測定する方法が主に行われている。この方法が

用いられるのは、植物が吸収する窒素は、リーピッヒの

無機栄養説以来、 NH4+もしくは N03ーといった無機態

窒素であると考えられてきたためである。よって、植物の

窒素吸収量は、土壌中の無機態窒素量に比例すると一

般的に予想される。

しかし、有機質肥料施用時に植物聞に窒素吸収量の

違いが認められるという報告もある。ローザムステッド

で行われた試験報告では、緑肥の施用による窒素吸収

量の増加割合が、パレイショ、テンサイで大きいのに対し、

コムギ、で、は小さく、オオムギではほとんど見られないなど、

植物聞により有機質肥料の効果が異なるという結果が示

されている (Mattingly1973) 0 また、有機質肥料として

米糠入り稲わらの施用と化学肥料を比較した試験では、

トウモロコシでは化学肥料区の窒素吸収量が多かったの

に対し、イネでは米糠入り稲わら施用区の窒素吸収量が

多い結果となった(山鯨ら 1996)0 さらに、菜種粕と硫

酸アンモニウムを比較した試験では、菜種粕を施用した

区ではニンジン、チンゲンサイ、ホウレンソウの生育が促

進し、レタス、ピーマンは抑制されるという結果も得られ

ている (Mastsumoto2000)。これらの報告にある植物

の生育期間中の土壌中無機態窒素量は、米糠入り稲わ

ら施用、菜種粕施用のいずれも、化学肥料施用土壌に

比べて少なく保たれていた。以上の報告事例より、植物

の窒素吸収特性は植物聞で異なっており、土壌中の無

機態窒素量が少ない場合でも窒素吸収量が多い事例も

見られることから、植物によっては無機態窒素のみに窒

素成分の吸収を依存していないことが示唆される。

土壌に施用された有機質肥料中の窒素成分は、微生

物による分解により、一部は高度に重合された腐植物質

となり長く土壌に留まるが、大部分は有機態窒素(タンパ

ク質、ペプチド、アミノ酸)などを経て最終的に無機態窒

素になる。つまり、土壌中には様々な形態の窒素が存在し

ていることになり、植物が無機態窒素以外の形態の窒素

を利用している可能性を考慮する必要があると思われる。

植物が自然界で有機態窒素を利用している事例も、い

くつか報告されている。アラスカのツンドラの湿地では、

低温と冠水により土壌中の酸素が不足するため、土壌

微生物活性が抑制され、土壌の有機物分解が緩やか

にしか進まないため、無機態窒素に比べ多くのアミノ酸

態窒素が存在している。こうした条件で生育しているス

ゲ属の植物は、アミノ酸を窒素源にしたときに最も良く

生育することが明らかにされている (Chapinet al 1993,

Kielland 1994, Lipson et al. 2001、Nasholm et al.

Page 6: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究25

1998, Nordin 2001)。また、松本ら (2003)は、易分解

性の有機態窒素の評価として用いられる中性リン酸緩衝

液抽出法で得られる分子量 8,000のタンパク質様窒素

が植物に直接吸収される可能性を指摘している。さらに

山牒ら (1997) は、 C/N比を変えた米ぬかを施用した

結果から、低分子有機態窒素に対するイネ(陸稲)の吸

収能力はトウモロコシより高い可能性を示している。

しかし、これまでの報告では植物の種類や有機質肥

料は限定されたものであり、異なる有機質肥料の植物へ

の効果を、無機態窒素、有機態窒素別で検討した事例

は少ない。環境を保全しつつ、高い生産性を維持できる

施肥管理技術を確立するためには、有機物施用時の個々

の植物の窒素吸収特性を明らかにすることが望ましい。

そのためには、有機物の無機化量を把握するだけではな

く、有機態窒素が植物へ与える影響の把握が必要であ

る。本章では、これまで報告されたデータを元に、福島

県で実際に有機栽培されている植物と今後有機栽培で

の普及が期待できる植物について、市販や試作の有機質

肥料を用いて植物の反応を調べた。さらに、有機質肥

料の効果が異なる植物を用いて、土壌中の形態別の窒

素量と生育についての検討を行った。また、有機質肥料

の効果として、地上部の生育だけでなく根系の発達につ

いても検討した。

第二節 有機質肥料に対する各植物の反応

(1) 目的

有機質肥料に対する植物別の反応を検討するために、

13種類の植物に 2種類の有機質肥料を与え生育試験を

行った。

(2) 試験方法

供試植物は、

イネ科イネ (Oryzasativa 1. 日本晴)

コムギ (Tritucumaestivum 1. ゆきちから)

マメ科ダイズ (Glycinemax 1. ふくいぶき)

タデ科ソパ (Fagopyrumesculentum 会津在来)

シソ科エゴマ(Perill.αfrutescensvar. frutescens福島在来)

ウリ科キュウリ (Cucumissativus 1. 金星 117)

カボ、チャ (Cucurbitamoschαta)

ナス科トマト (8品o/,μα仰仰m仰zlωum

ナス (Solanummηlelong,ε叩)

ピーマン (Capsicumannum 1.)

アブラナ科チンゲンサイ (Brassicarapa var chinensis)

アカザ、科ホウレンソウ (Spinaciaoleracea 1.)

キク科レタス (Lactucαsativa)

を用いた。供試肥料は、福島県農業総合センターで米

糠とくず大豆を発酵させて調整した試作有機質肥料(以

5

下有機1)と、フェザーミール、パーム灰、菜種粕、米

糠、魚粕を原料とした有機]AS認定市販有機質肥料(商

品名:ともだち 朝日工業、以下有機 2) を用いた。供

試肥料とその主成分を表 2-2-1に示す。対照として硫酸

アンモニア(以下硫安)を用いた。施肥量は、窒素成分

で 500mg/kgとなるように肥料を添加し、リン酸、カリ

ウムがそれぞれ 500mg/kgとなるようにリン酸二水素カ

リウムと塩化カリウムで不足分を補正した。供試肥料を

土壌(パーミキュライトと焼土を 4:1で混合)に混和し、

最大容水量の 70%に水分含量を調製し、 1週間室温で

混和したものを 500rnQホoットに詰め供試植物を播種し

た。発芽後、毎日潅水を行い、ガラスハウス内で 28日間

(2007 年 10 月 9 日 ~11 月 6 日)栽培した。収穫後の処

理として植物は地上部と地下部に分け、 800

Cで一晩乾燥

させ実験サンブワレとした。

(3) 試験結果と考察

図2-2-1に地上部の乾燥重量を示す。有機質肥料に

対する生育は植物の種類によって大きく異なった。米糠

とくず大豆を原料とした有機 1を施用した区では、イネ、

チンゲンサイが硫安を施用した区以上の生育を示し、ダ

イズ、ソノT、エゴマ、キュウリ、 トマト、ピーマン、 レタ

スは硫安区の生育の 60%以下となった。

市販有機質肥料の有機 2を施用した区では、イネ、

コムギ、チンゲンサイ、ホウレンソウが硫安区と同等以上

の生育を示し、キュウリ、 トマト、ピーマン、ナス、レタ

スは硫安区の生育の 60%以下となった。

有機質肥料聞の比較では、ナスとチンゲンサイを除き、

市販有機質肥料の有機2が米糠とくず大豆を原料とした

有機 lより生育が良くなった。

Matsumotoら(1999) によると、陸稲、チンゲンサイ、

ソルガム、ニンジンは有機質肥料施用の効果が高いとし

ており、本試験に用いた有機質肥料でも、イネ、チンゲ

ンサイはその施用効果が高い結果となった。

第三節 有機質肥料の種類による施肥効果の相違 e

(1) 目的

有機質肥料の種類別の効果を検討した。供試植物は、

第 l節の結果から、有機質肥料の施用効果が硫安より

高かったイネとチンゲンサイ、有機質肥料施用の効果が

低;かったキュウリとした。

(2) 試験方法

供試植物は、

イネ (Oryzasativa 1. 日本晴)

チンゲンサイ (Brassicarapa var chinensis)

キュウリ (Cucumissativus 1. 金星 117)

Page 7: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

F

第2号福島県農業総合センター研究報告26

供試肥料の原材料と成分

栽培前土壌発

pH EC (mS/m)

0.88 0.85 1.09

5.48 5.72 5.44

仁a(% )

供試肥料の成分

C/N N P K Mg (%) (%) (%) (%)

21.0

6.0 6.0

表 2-2-1

原材料

硫酸アンモニウム米糠 (50%)+くず大豆 (50%)

市販有機質肥料(商品名:ともだち)

試験区名

硫安有機 1**

有機20.4 2.6

0.5 1.0

3.4 4.6

2.9 8.2

6.8 6.5

普土壌と供試肥料を混和 7日後

制福島県農業総合センターで一週間に一度ずつ切り返しながら約1ヶ月インキュベーション後、乾燥した

物1一

岡田

一清「日

140

120

.. 100

ト。いよJg

w 凶Hl¥ 援

封刷詰斗幸司

80

60

40

20

ιl

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え,~ 耳ぞ

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内(ト>5< γ ~

役人

図2・2・1 植物別の有機質肥料の種類に対する地上部重比有機 1:米ぬかと大亘かすを混和・インキュベーションして調整、有機 2:有機 JAS認定市販有機質肥料(商品名:ともだち)

無機窒素区の地上部重を 100として示す エラーハーは標準偏差 (n=3)

iliti--;jil--

年 10 月 9 日 ~ll 月 6 日)栽培した。

植物を植えないポットを同様に設置し、播種後7、14、

28日目に土壌分析用にサンプリングした。交換性無機態

窒素量として、水抽出(1: 5) した硝酸態窒素と、 1M

KClより抽出 (1: 10) したアンモニア態窒素量をオートア

ナライザー(ピーエルテック社)により比色定量した。また、

全窒素量として、 1115M中性リン酸緩衝液抽出液にベル

オキソ二硫酸カリウムを添加し高圧蒸気滅菌器を用いて酸

化分解(120OCで15分間処理)した後、比色定量した。

収穫した植物は地上部と地下部に分け、 800Cで一晩乾

燥させた。地上部の乾燥重量を測定後、小型粉砕器で

粉砕し、元素分析機 (SUMIGRAPHNC-220F)で窒素

含有量を測定した。試験は 3反復で、行った。

(3) 試験結果

A 植物の生育量に対する有機質肥料の施用効果

図2-3-1に地上部の乾燥重量を示した。植物別の生育

パ/

/

6

を用いた。 供試肥料とその主な成分を表2-3-1に示した。

有機l(牛糞を堆肥化)、有機 2(鶏糞を堆肥化)、福島

県農業総合センターで作成した有機 3(米糠とくず大豆を

混和、発酵)、有機 4(米糠と魚粕を混和、発酵)、有

機 5(米糠と菜種粕を混和、発酵)、有機 ]AS認定の市

販有機質肥料として有機 6(商品名 ともだち、朝日工

業)、有機 7(商品名:有機アグレット、朝日工業)とし

た。対照として無窒素および、硫酸アンモニア(以下硫安)

施用区を設定した。施肥量は、窒素成分で 500mg/kg

となるように肥料を添加し、リン酸、カリウムがそれぞ

れ 500mg/kgとなるようにリン酸二水素カリウムと塩化

カリウムで、不足分を補正した。供試肥料を土頃パーミキュ

ライトと焼士を 4:1で混合)に混和し、最大容水量の 70

%に水分含量を調製し、水分条件が一定になるよう密封

して、 1週間室温で静置した。このようにして作成した肥

料入り土壌を 500meポットに詰め、供試植物を播種した。

発芽後、毎日潅水を行い、ガラスハウス内で、 28日間(2007

Page 8: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

27 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究

供試肥料の原材料と成分表 2-3・1

栽培前土壌発供試肥料の成分

原材料試験区名 EC

(mS/m) pH K Mg Ca

(%) (%) (%)

P

(%)

N

(%)

仁/N

1.17 0.88 0.51 0.44 0.85 1.45 0.96 1.09 1.32

5.02 5.48 5.88 6.05 5.72 5.50 5.59 5.44 5.60

1.4 6.6 0.4 3.3 0.8 2.6 2.6

0.8 1.3 0.5 1.0 0.7 1.0 1.0

0245164

••.••.. n『

ro、コ吋正、L

n『

EJ

3.8 10.8 2.9 10.4 3.5 8.2 5.8

nu

、Lnヲ

nun斗

nununU

-

-

-

-

-

-

-

-

n1266666

15.5 6.0 6.8 5.5 6.2 6.5 6.8

硫酸アンモニウム.牛ふん堆肥鶏ふん堆肥

米糠 (50%)+くず大豆 (50%)米糠 (50%)+魚粕 (50%)

米糠 (50%)+菜種粕 (50%)市販有機質肥料(商品名:ともだち)市販有機質肥料(商品名:有機アグレツ卜)

無 N硫安有機 1有機 2有機 3**有機4**有機5栄養

有機6有機7

勢土壌と供試肥料を混和 7日後

H 福島県農業総合センターで一過聞に一度づっ切り返しながら約 1ヶ月インキュベーション後、乾燥した

イネ0.18

0.15

0.12 3

酬 0.09

蝶針。06

0.03

0.00

有機7

c

有機6

a

有機5有機4有機3

a

有機2有機1硫安

チンゲンサイ

c

無N

1.2

1.0

n

6

n

O

4

n

u

n

u

n

u

(国)制強斜

0.2

。。有機7有機6有機5有機4有機3有機2有機1硫安無N

a

キュウリ1.8

4

n

u

n

o

t

a

n

u

n

υ

(

)

0.3

1.5

。。無N 硫安 有機1 有機2 有機3

図 2-3-1 有機質肥料の種類に対するイネ、チンゲンサイ、キュウリの地上部乾燥重

硫安:硫酸アンモニウム、有機 1:牛糞、有機 2:鶏糞、有機 3:米糠+くず大豆、有機 4:米糠+魚粕、

有機 5:米糠+菜種粕有機 6:市販有機質肥料(商品名ともだち)、有機 7:市販有機質肥料(商品名有機アグレツト)

同一のアルファベット聞には Tukey検定で 5%水準で有意な差がないことを示す

7

有機7有機6有機5有機4

puhwf孟

ac--12刻剖劃劃ZZ

Page 9: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

第2号福島県農業総合センター研究報告28

た。有機 3(米糠とくず大豆を発酵)を施用した区では、

硫安区と同様に播種後から減少する傾向にあった。有

機 4(米糠と魚粕を発酵)、有機 5(米糠と菜種を発酵)

を施用した区では、播種後7、28日では硫安区とほぼ同

じで、あったO 市販有機質肥料の有機 6、7では生育期間

中、硫安区より常に多かった。

C 土壌中の窒素の形態と植物の生育との関係

図2-3-3に、播種後 14日目の交換性無機態窒素量と

地上部窒素含有量を示した。イネ、チンゲンサイは無機

態窒素量と地上部窒素含有量に相関は低いが、キュウリ

では高い相聞が見られた。このことからキュウリは主に

無機態窒素を吸収して生育していると考えられる。イネ

では、有機 2(鶏糞堆肥)、有機 3(米糠とくず大豆を発

酵)、有機 4(米糠と魚粕を発酵)、有機 5(米糠と菜種

かすを発酵)を施用した区では無機態窒素量が硫安区

より少ないにも関わらず、窒素吸収量が同量以上だ、ったO

特に、有機 2(鶏糞堆肥)では、無機態窒素量が硫安

区の 115程度しかないにも関わらず、窒素吸収はほぼ同

じであった。

では、イネの地上部重は有機 1(牛糞堆肥)を施用した

以外では、硫安区と同等以上の生育を示した。チンゲンサ

イは有機 3(米糠と大豆を発酵)と、有機 6(市販有機質

肥料ともだち)で栽培した区で硫安区より生育が良かっ

たが、有機 1(牛糞堆肥)、有機 4(米糠と魚、粕を発酵)、

有機7(市販有機質肥料有機アグリ)で栽培した区では

生育が劣った。キュウリで、は有機 4(米糠と魚、粕を発酵)、

有機 5(米糠と菜種粕を発酵)、有機 7(市販有機質肥料

有機アグレット)で栽培した区が硫安区と同等の生育と

なったO

有機質肥料ごとの施用効果としては、有機l(牛糞堆肥)

を施用した区は、とミの植物も生育が劣った。有機 2(鶏糞

堆肥)を施用した区はイネでは硫安区と同等、チンゲンサイ、

キュウリでは硫安区より生育が劣ったO 有機 3(米糠とく

ず大豆を発酵)と有機 6(市販有機質肥料ともだち)を

施用した区は、イネ、チンゲンサイでは硫安区と同等以上

となり、キュウリで、は生育が劣ったO 有機 4(米糠と魚、粕

を発酵)と有機 5(米糠と菜種粕を発酵)と有機 7(市販

有機質肥料有機アグレツト)を施用した区では、イネ、キュ

ウリは硫安と同等の生育となったが、チンゲンサイでは生

育は劣ったO

jlili--4

(4) 考察

松本 (2003)や山鯨 (1997)によれば、イネやチンゲ

ンサイは有機質肥料効果の高い植物とされているが、本

試験の結果、チンゲ、ンサイで、も有機質肥料の種類によっ

ては生育が阻害されるものもあることが分かった。図

2-3-2より、リン酸緩衝液抽出窒素は、午糞施用区を除き、

有機質肥料の施用区では硫安区と同等以上に存在して

いる。リン酸緩衝液抽出窒素は、重合度の低い易分解

性の有機態窒素であり、その主なものは微生物菌体に由

来するタンパク質様物質であると考えられている(樋口

1981、松本 2002)。丸本ら (1974)によって、微生物菌

体の細胞壁部分と易分解性有機態窒素のアミノ酸組成

が一致することから、土壌から植物に供給される有機態

窒素については菌体の細胞壁の寄与が大きいということ

が示唆されている。土壌中の無機態窒素量が硫安区よ

り少ないにも関わらず、有機質肥料を施用したイネの地

上部窒素含有量は硫安区と同量以上となることから、リ

ン酸緩衝液抽出窒素、つまり易分解性の有機態窒素も

利用していると考えられる。山牒ら (1997) も、イネは

有機態窒素を直接吸収する能力が高いことを指摘してお

り、有機質肥料の施用で増加した易分解性の有機態窒

素を吸収、利用できるために、無機態窒素量が少ない

区でも植物体内窒素含有量が高い可能性があると思わ

れる。一方、チンゲンサイは、有機質肥料で、生育が良い

ものもあれば悪いものもあったO この要因については判

然としないが、魚、粕には分解の際に発生する有機酸が

8

有機質肥料を施用した土壌の無機態窒素量と

リン酸緩衝液抽出窒素量

生育期間中の土壌の無機態窒素量とを図 2-3-2に示

した。硫安区の無機態窒素量は播種後 7日では最も多

かったが、生育期間中に減少した。有機 1(牛糞堆肥)、

有機 2(鶏糞堆肥)を施用した区の無機態窒素量は生

育期間中硫安区より常に少なかったが、有機 2(鶏糞堆

肥)を施用した区では播種後 28日で増加した。その他

の有機質肥料の有機 3、4、5、6、7施用区では硫安区

並みの無機態窒素量であった。硫安区では生育期間中

に無機態窒素が減少したが、これは潅水により土壌の

硝酸態窒素が溶脱したためと考えられる。センターで作

成した有機質肥料や市販有機質肥料は、作成の過程で

発酵されることで一部は無機化が進んでおり、無機態

窒素量が多くなったと思われる。これに対し、牛糞と鶏

糞を施用した土壌では、有機物の分解が進んでおらず、

無機態窒素量が少なくなったと考えられる。一般に鶏糞

は午糞より無機化が早いとされており、実際に播種後 28

日では無機態窒素量が増加していた。

生育期間中のリン酸緩衝液抽出窒素量(図 2-3-2)は、

硫安区では播種後7日が最も多くその後減少した。他の

有機質肥料のリン酸緩衝液抽出窒素量を硫安区と比較

すると、有機 1(牛糞堆肥)を施用した区で、は常に少なかっ

た。有機 2(鶏糞堆肥)を施用した区では播種後7日で

は硫安区より少ないが、その後は硫安区とほぼ同じで喝っ

B

Page 10: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

29 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究

35 交換性無機態窒素量

30

25

20

官 5

10

3DDF¥九回

E)刷機酬強制帯感起凶器似 5

ヂ置孝重告書量28日亨番手重を委主14日亨番不重委後7 日

リン酸緩衝液抽出窒素量

35

0

5

0

5

0

3

2

2

1

2

38-、品E)

酬酬明酬坦謀媛胆縫鐙入「一

5

o ヂ置孝重毛筆ξ7目 指薯孝重毛筆色14日 事置孝重を免28日

図 2-3-2 栽培期間中の交換性無機態窒素量(上段)とリン酸緩衝液抽出窒素量(下段)硫安:硫酸アンモニウム、有機 1:牛糞、有機 2:鶏糞、有機3:米糠+くず大豆、有機4:米糠+魚粕、有機 5:米糠+菜種粕

有機 6:市販有機質肥料(商品名ともだち)、有機 7:市販有機質肥料(商品名有機アク.レット)

O 無N

A 磁安

圃有種1

. 有機E

. 宥 縄3

A 有機4

E 有機S

,有機B

A 有機75

1

N叩du

m

,t、

A

量素窒態

5山内性換交

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5

0

5

0

5

0

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向。quqGqG-i

40unu

(岡田)醐佃燃側己申什「翌

y= O.l1x+ 1.22

R' = 0.45

• . ..,・ιJ

占P

イネ

45 r チンゲンサイ

'biJ 40 ト A

S 35ト・咽 30 卜相 25 ト y三2.57x+ 0.67 繰りn L .,' 制出 R白=0.47 巳 15 ト

当10 卜ー,翌 5 ト O

o '--". o 10 15

交換性無機態窒素量(mgl100g)

.. ..

60

3印

刷 40

謀ω側 m

瞳 ~V

.J.j .n

主雪 山

交換性無機態窒素量(mgl1∞d図 2-3-3 播種後 14日目の交換性無機態窒素量と地上部窒素含量

硫安:硫酸アンモニウム、有機 1:牛糞、有機 2:鶏糞、有機 3:米糠+くず大豆、有機4:米糠+魚粕、有機 5:米糠+菜種粕、

有機 6:市販有機質肥料(商品名ともだち)、有機7:市販有機質肥料(商品名有機アク‘レット)

H 、*はそれぞれ1%、5%水準で有意差あり

キュウリ

A A

-a

.')0. .

y= 4.25x -2.35 。 1・a

• R'=O.84 £

9

-5342344P3AURamthtf弘和船劉劃加劃劃働組劉劃竃鋤

Page 11: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

30 福島県農業総合センター研究報告 第2号

初期成育を害する場合もあるとする報告(山根 2007)や、

次章で検討する魚粕由来のある種のアミノ酸がチンゲン

サイの生育を阻害した可能性も考えられた。また、チン

ゲンサイは根からクエン酸やシュウ酸を放出して土壌に

吸着している有機態窒素を吸収すると考えられている(松

本 2002)が、有機質肥料の種類によっては土壌に供給

される有機態窒素の形態が異なり、チンゲンサイが放出

する有機酸では解離できず利用できなかった可能性が示

唆された。

本試験の結果、植物の種類によっては同一肥料で、も生

育に差がみられ、それは植物が備えている養分利用機

構が異なるためと言える。そのため、特に各種の原料の

肥料を扱う有機農業などでは、それぞれの植物の養分

利用機構を把握して、適切な施肥管理に努めることが必

要と考えられる。

第四節有機質肥料の根系発達への影響

(1) 目的

第二、三節では、植物と有機質肥料の種類別の効果

について地上部生育を中心に検討したが、有機質肥料

の施用が根系を発達させることは現場レベルではしばし

ば指摘されていることである(野村 1937、新日 1986)0

有機質肥料の施用が根系発達を促す一因には、団粒構

造の発達による物理性改善や養分供給特性の違いなど

が考えられる。

本節では有機質肥料の養分供給が根系発達に与える

影響を検討する目的で、土壌物理性が良好な黒ボク土を

供試土壌として用いて、有機質肥料の種類が根系発達

に及ぼす影響を検討した。

(2) 試験方法

供試植物は、

イネ (Oryzasativa L. 日本晴)

コムギ (Tritucumaestivum L. ゆきちから)

ダイズ (Glycinemax L ふくいぶき)

チンゲンサイ (Brassicarapa var chinensis)

キュウリ (Cucumissativus L 金星 117)

を用いた。供試肥料とその主な成分を表 2-4-1に示した。

有機l(鶏糞を堆肥化)、福島県農業総合センターで作成

した有機 2(米糠とくず大豆を混和、発酵)、有機 3(米

糠と魚、粕を混和、発酵)、有機 4(米糠と菜種粕を混和、

発酵)とした。対照として無窒素区および、硫酸アンモニア

(以下硫安)施用区を設定した。施肥量は、窒素成分で

0.75 g/kgとなるように肥料を添加し、リン酸、カリがそ

れぞれ 2.9g/kg、1.6g/kgとなるように有機 ]AS認定

有機質肥料(商品名・めぐみ P205 27 %、 K2016 %

エム・エー工業)と塩化カリウムで不足分を補正した。

10

供試肥料をふるい (3mmX 3 mm)で粒度を調整した土壌

(黒ボク土)に混和し、最大容水量の 70%に水分含量を

調整製し、水分条件が一定になるように密封して、 1週

間室温で静置した。

作成した肥料入り土壌1.5kgを1/10000aホワイトポッ

ト(底穴無し)に詰め、供試植物を播種した。発芽後、

毎日潅水を行い、ガラスハウス内で 28日間 (2008年7

月 9 日~8 月 5 日)栽培した。

収穫した植物は地上部と地下部に分け、地下部は土

壌から根を洗い出し写真撮影後、 800Cで一晩乾燥させ

た。試験は 3反復で、行った。

(3) 試験結果と考察

有機質肥料別の地上部と地下部の乾燥重を図 2-4-1、

各植物の生育と地下部の様子を図 2-4-2~ 6に示した。

各植物の生育は、第二、三節より旺盛だった。本実験

の栽培期間が 7月(第二、三節は 10月)で平均気温が

高かったこと、ホ。ツトの容量を大きくしたことで養分が十

分に供給されたことが要因と思われる。有機質肥料別の

地上部の効果として第三節とほぼ同等の傾向になった。

第三節で、供試しなかったコムギとダイズの有機質肥料に

対する生育は、コムギはどの有機質肥料でも硫安区とほ

ぼ同じ生育となった。ダイズでは、鶏糞施用の有機 2、

米糠+菜種粕施用の有機4で、は生育が劣ったO

有機質肥料の根系発達に与える影響は、地上部同様、

植物や有機質肥料の種類で、異なった。植物別でみると、

イネやコムギは、硫安区より有機質肥料施用区で根系が

発達した。ダイズでは、他の植物と異なり無窒素区の根

系発達が最もよく、その他の根系はほぼ同じであった。

チンゲンサイは全体的に根系発達が小さいが、地上部の

生育と同様に米糠+大豆、米糠+菜種の有機 2、有機

5で発達した。キュウリは地上部の生育が不良な鶏糞施

用の有機 2では根系が発達したが、その他の有機質肥

料区では硫安区より劣った。

有機質肥料で根系発達の促進がみられなかったダイ

ズ以外の植物で有機質肥料別の効果をみると、鶏糞は

供試した有機質肥料の中では最も根系発達を促進した。

米糠+大豆もキュウリを除き根系発達を促進した。米糠

+魚、粕はやや根系発達を阻害した。米糠+菜種粕も、

根系発達を発達させる効果がみられた。

本試験の結果、有機質肥料の一部は根系発達を促す

効果があることが明らかとなったO 本試験では、物理性

が良好な黒ボク土を供試土壌としており、また試験期間

が肥料混和後約 1ヶ月であることから、有機質肥料ごと

の土壌物理性の差はなく、有機質肥料の化学性が根系

発達に影響を与えたものと考えられる。有機質肥料が根

系発達に与える要因としては、肥料から供給される腐植

F

Page 12: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代Mtに関する研究

表 2-4-1 供試肥料の原材料と成分

供試肥料の成分

試験区名 原材料 ζ/N N P K Mg

(% ) (% ) (% ) (% )

無 N硫安 硫畿アンモニウム 21.0 有機 1 鶏ふん堆肥 6 2.9 10.8 6.2 1.3 有機2料 米糠 (50%)+くず大豆 (50%) 6.8 6.0 2.9 3.4 0.5 有機 3梢 米糠 (50%)+魚組 (50%) 5.5 6.4 10.4 2.5 1.0 有機4梢 米糠 (50%)+薬種粕 (50%) 6.2 6.0 3.5 2.1 0.7

普土壌と{共試肥料をj毘和 7白後

制福島療援業総合センターで一週間に一度づっ切り返しながら約 1ヶ月インキュベーション後、乾燥した

3.5

'b:o 2.5

騎司 2.0

雲翠者卓宥在日ム4裂を O

3 0 忽

ij倒

翠 0.3

者主

毎 0.4

0.5 i

栽培前土壊発

Ca pH EC (% ) (mS/m)

ス44 0.30 7.37 0.39

6.6 7.35 0.24 0.4 7.42 0.23 3.3 7.33 0.29 0.8 7.29 0.20

図 2-4ぺ 有機質把料の種類に対する各捕物の地上部・地下部乾物霊硫安・硫酸アンモニウム、有機 1:幾紫、有機2:米糠+くず大豆、脊後3:米糠÷魚粕、有機4:米糠+菜穣粕、エラーバーは標準備羨 (n=3)

無窒素 硫安 有機 1 有機 2 有機 3

国 2・4・2 異なる有機質杷料で栽培したイネの地上部、地下部の生育(播種後 28自問)

硫安:硫酸アンモニウム、有機 1:鶏紫、有機 2:米糠+大豆粕、有機3:米糠+魚粕、有機4:米糠+菜種粉

11

有機 4

31

Page 13: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

32

無窒素

無窒素

福島県農業総合センター研究報告 第2

硫安 有機 1 有機 2 有機 3

図2・4・3 異なる有機質肥料で栽培したコムギの地上部、地下部の生育(播種後 28日間)

硫安:硫酸アンモニウム、有機 1:鶏禁、有機 2:米糠+大豆粕、有機3米糠÷魚粕、有機4・米糠+菜種粕

硫安 有機 1 有機 2 有機 3

図 2聞ふ4 異なる有機質肥料で栽培したダイスεの地上部、地下部の生育(播種後 28日間)

硫安:硫酸アンモニウム、有機1:鶏禁、有機 2:米糠+大豆粕、有機 3:米糠+魚粕、有機4:米糠+菜種粕

12

有機4

有機 4

Page 14: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究33

無窒素 硫安 有機 1 有機 2 有機 3 有機 4

図 2-4・5 異なる有機費肥料で栽培したチンゲンサイの地上部、地下部の生育(播麓後 28自開)

硫安:硫酸アンモニウム、有機 1:鶏義、有機2:米糠÷大豆粕、有機3:米糠+魚粕、有機4:米糠+菜穂粕

無意葉 硫安 有機 1 有機 2 有機 3 有機 4

図 2-4-6 巽なる有機質肥料で、栽培したキュウリの地上部、地下部の生脊(播麓後 28日間)

硫安:硫重量アンモニウム、有機1:鶏義、有機 2:米糠+大豆粕、有機3:米糠+魚粕、有機4:米糠+菜種粕

13

Page 15: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

34 福島県農業総合センター研究報告 第2号

酸(明石ら 1975)や微生物相(新田 1986)の他、次章

で検討するアミノ酸の一部にも根系発達を促進するもの

があり、要因を特定することができない。第二節で有機

態窒素の吸収が示唆されたイネでは有機質肥料施用に

よる根系発達が顕著にみられたことから、有機質肥料

から供給される有機態窒素の吸収が根系発達の要因に

なったことが示唆された。

第五節まとめ

本章では、有機質肥料に対する植物間差や、有機質

肥料別の植物への効果を地上部および地下部の発達か

らf食言すした。

植物別の有機質肥料の効果では、同じ有機質肥料を

施用しても植物の種類によってその効果は異なった。イ

ネ、コムギ、チンゲンサイは有機質肥料の施用で硫安と

同等以上の生育を示し、形態的な特徴として、有機質肥

料施用区では根系の発達がみられた。キュウ l人 トマト、

ピーマンで、は有機質肥料を施用した区で生育が劣り、有

機質肥料の施用効果が硫安より不良であることが示され

た。

次に、有機質肥料の種類を変えて試験を行った結果、

有機質肥料の種類により植物生育への影響は異なったO

土壌中の無機態窒素量と植物の窒素含有量を比較する

と、キュウリでは無機態窒素量と窒素含有量で高い相聞

がみられたが、イネ、チンゲンサイで、は相関は低かった。

特にイネでは、生育期間中の無機態窒素量が硫安区より

低かったにもかかわらず、牛糞堆肥施用区以外の有機質

肥料施用区で硫安区より窒素吸収量が多かったO

また、有機質肥料の根系発達に与える影響は、地上

部同様、植物や有機質肥料の種類で異なっていたが、

イネやコムギは有機質肥料施用区で根系が発達してい

た。ダイズは施肥をすると根系が抑制された。有機質肥

料の種類では、鶏糞や米糠+菜種粕で根系の発達がみ

られた。

この結果から、次章では有機態、窒素に対する植物間

差をさらに検討した。有機態窒素として本研究では、タ

ンパク質の構成成分で、あり、有機物の無機化過程で必

ず代謝、生成されるアミノ酸に着目することとした。

14

第三章 アミノ酸を単一窒素源とした栽培におけるアミノ酸の種類が生育に与える影響の解析

第一節はじめに

第二章において、異なる有機質肥料を施用した場合、

植物の種類によっては土壌中に有機質肥料から供給され

る無機態窒素量が少ないにもかかわらず窒素吸収量が

多く生育がよい植物(イネなど)があり、これらは有機

質肥料から供給される有機態窒素を吸収している可能性

が考えられた。本研究は、有機農業の有効性を実証す

るため、その科学的根拠を捉えることを大きな目標とし

ている。本章では有機質肥料の分解によって植物に供

給されると考えられる有機態窒素の吸収・利用について、

これまで多くの研究がなされている無機態窒素と比較を

行う。これには有機態窒素が植物に直接吸収されること

の実証が前提になるため、無菌的な条件下で単一の窒

素源として有機態窒素を与え、植物の栽培実験を行った。

有機態窒素には様々な種類がある。本研究では、タンパ

ク質の構成成分であり、有機物の無機化過程で必ず代

謝、生成されるアミノ酸に着目した。

植物によるアミノ酸の直接利用について植物の吸収特

性を無機態窒素と比較した報告はこれまでも行われてい

る。無菌条件下での試験では、 Virtanenら(1946) は、

根粒菌を摂取していない豆は、アスパラギン酸、グルタ

ミン酸をよく利用し、 Ghoshら(1950) は、クローパーに

はアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、 トマトには

アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、

グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、プロ

リンが無機態窒素源よりもよく利用され、タバコではど

のアミノ酸も利用されなかったと報告している。 Spoerlら

(1948) は、ユリの生育ステージ別の検討を行い、幼植

物ではアルギニン、成熟期ではアスパラギン酸が良好な

生育を示すとしている。槙ら (1966) はイネについて試

験を行い、無機態窒素(硫酸アンモニウム)より生育が

優るアミノ酸はないが、 y -アミノ酪酸、グルタミン酸、

グリシンでは無機態窒素と同等の生育を示すと報告して

いる。また、無菌条件下での試験ではないが、森ら(1979)

は、無機態窒素より生育が優ったアミノ酸として、ハダカ

ムギではアルギニン、グルタミン、アスパラギン、リジン、

セリン、グリシン、アラニン、シトルリン、オルニチンで、

イネではグルタミン、アスパラギン、グリシン、アラニン、

アルギニン、リジン、シトルリンと報告している。

以上のように、これまでにアミノ酸の植物生育への相

関に関する報告はあるが、その検討は数種類のアミノ酸

と無機態窒素との比較 (Virtanen1946、槙 1966)や、

非滅菌条件下(森 1979)、食用植物以外 (Spoerl1948)

Page 16: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

35 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究

はスキャナー (EPSONEXPRESSION 10000XL)上に

重ならないように展開し、十根長解析ソフト (WinRHIZO)

で解析した。

(mM)

0.09 0.27 0.37 0.55 0.01

(mg/L)

13.0 25.4 20.5 22.1 2.5

成分

nM舟品川ω伺nm

p-K仁

M

H

表 3-2-1 培地組成

・イネ用(改変木村氏 B液)

用いた塩類 (mg/L)

24.8 15.9 13.6 47.0 135.3 26.。

KH2P04

K2S04

KCI 仁a仁12・2H20MgS04・7H20Fe-EDTA

での検討である。本研究では有機農業の栽培植物を対

象とするため、有機栽培面積の最も大きいイネや、土地

利用型で今後の有機農業の普及が期待されるコムギやダ

イズ、有機態窒素の効果が高いとされるチンゲンサイお

よび、反対に効果が低いキュウリを用いることとした。ま

た、対象アミノ酸は、第二節の濃度に関する試験では光

学異性体も含めた 5種類とし、第三節の植物種類ごとの

アミノ酸の影響を検討する試験ではタンパク質を構成す

る20種類全てについて同条件で行った。さらにアミノ

酸の生育への影響を検討するため、無菌栽培とした。

1111%211i¥

(3) 試験結果と考察

異なる濃度のアミノ酸を窒素成分として与えて生育させ

たイネ幼植物の地上部と地下部の新鮮重を図 3-2-1、窒

素含有率と窒素吸収量を図 3-2-2、根系の総根長を図

3-2-3、直径別の根長を図 3-2-4、窒素濃度 1mMで生

育させた根系の様子を図 3-2-5に示した。ますミ窒素の

形態の差異が生育に与えた影響について結果を述べる。

硫酸アンモニアで生育:地上部重と窒素吸収量は、 0.5

~5mM までほぼ同程度で、 8mM でやや低下した。全

窒素%)は窒素濃度の増加に伴い5%程度まで増加した。

地下部重、総根長は窒素濃度の増加に伴い低下した。

グルタミンで生育:濃度の上昇に伴い、地上部重、全

窒素(%)、窒素吸収量は増加した。特に全窒素は、試

験した中で最も高い 8mMで6%まで増加した。地下部

重と総根長は、 1~2mM で、生育が旺盛となった。また

根系に与える影響についてはグルタミンで生育すると、特

に直径0.1~ 0.2mmの細い側根の発生が促進されていた。

アラニンで生育:地上部重は 1mM以上でほぼ同等と

なったが、全窒素(%)、窒素吸収量は濃度の上昇に伴

い増加傾向となった。地下部重、総根長は濃度に関わら

ず、ほぼ同等で、あった。

セリン、パリン、 D-アラニンで生育:最も低い濃度の

O.1mMから生育阻害がみられ、地上部重、地下部重、

総根長とも無窒素区より低下した。

窒素の形態が生育に与える影響の比較では、地上部

重は、同じ濃度ではグルタミン区>硫酸アンモニア区>

アラニン区>>セリン区>パリン、D-アラニン区となった。

全窒素(%)、窒素吸収量も地上部重と同様な順で、あっ

た。硫酸アンモニア区では 8mMで窒素吸収量の低下も

みられたが、グルタミン区では逆に窒素吸収量は増加し

た。また、地下部重、総根長はグルタミン区>アラニン

区>硫酸アンモニア区>セリン区となり、特に、グルタ

ミン区では直径 0.2mm以下の細い側根の発生が促進され

ていた。

異なるアミノ酸濃度がイネ幼植物の生育に及

ぼす影響

(1) 目的

アミノ酸を単一窒素源として、光学異性体も含めた異

なるアミノ酸5種類の窒素濃度がイネ幼植物に対する影

響の検討を行った。

第二節

15

(2) 試験方法

供試植物はイネ (Oryzasativa L. 日本晴)を用いた。

種子サンプルは籾殻を外し、玄米を 5%次亜塩素酸ナ

トリウムと 1% tritonXの混合液で 15分振とうし、新し

い溶液と交換する操作を 3回繰り返し行った。この滅菌

操作後、滅菌水で、完全に溶液が置換で、きるまで洗浄し

て寒天に播種し、 280Cで3日間保温して発芽させた。

窒素成分を抜いた改変木村氏 B液(表 3-2心を、

121 OC、20分のオートクレーブ処理により滅菌したもの

を基本の水耕液として用いた。l 窒素源として、アミノ酸

溶液(しグルタミン、 L-アラニン、 D-アラニン、 L-セリン、

L-パリン)と硫酸アンモニウム溶液をフィルター滅菌(ザ

ルトリウス社 0.22μmシリンジフィルター)を行い、窒

素濃度 O、0.1、 0.5、l、2、3、5、8mMとなるように添

加し、 25meの水耕液を 50meのポリプロピレン製遠沈管

(コーニング社)に作成した。この遠沈管の水面にポリ

プロピレン製ネットを浮かせて発芽種子を l個体ずつ移

植した。この遠沈管を4本、組織培養用プラントボック

ス(60mmX 60 mmX 100 mm)に入れ、同型のプラントボッ

クスを上からかぶせて無菌条件を維持できるように密封

し生育させた。播種、移植作業はすべてクリーンベンチ

内で行い無菌条件を維持した。通気性維持のため、上

部に直径約 8mmの穴にミリシールを貼った。試験連数は

各 4連とした。人工気象器にて、温度 280

C、明 16/暗

8時間で移植後7日間無菌栽培した。収穫後、地上部

と地下部に分け、新鮮重を測定した。また、硫酸アンモ

ニア、グルタミン、アラニン、セリンで栽培した植物体は、

地上部の乾燥重量を測定後、全窒素(%)を N/Cアナ

ライザー (SUMIGRAPHNC-220F)で測定した。根長

Page 17: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

第2号福島県農業総合センター研究報告36

土也J二音巨重量

0.00

0.04

τ"'

担。 06叩

lム要

0.08

0.10

τ"' 盟。 06叩

ム4主宰

0.04

0.12

0.02

地下部重

アミノ酸の種類と窒素濃度を変えて栽培したイネ幼植物の地上部童、地下部重エラーパーは標準誤差 (n=4)

0.10

図 3-2・1

5.0

2き)

4卦 4.0

4牢

諜 3.0

ま剛

2.0

0.0

2.5

窒素吸収量

τ" ..s 1.5

'1同塁手

議 1.0

S剛

{ ノ

/

アミノ酸の種類と窒素濃度を変えて栽培したイネ幼植物の窒素含有率と窒素吸収量エラーバーは標準誤差 (n=4)

図 3-2之

100

80

60

40

20

図3-2・3 アミノ酸の種類と窒素濃度を変えて栽培したイネ幼植物の総根長エラーバーは標準誤差 (n=4)

16

o

Page 18: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

37 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究

口<0.1mm

因く0.2mm

固く0.3mm

圃くO.4mm

口く0.5mm

固く0.6mm

圏 0.6mmく

O.1mM

30

20

10

(EO)

附騨

o

20

10

30

(EO)

哨騨

o

30

10

20

10

20 (EU)

雌曜

40

30 (EU)

雌聴

。30

10

20 (E口)岨騨

O

5mM

30

10

20 (EO)

岨騨

o

30

10

20 (EU)

岨聴

L-Ser

窒素濃度と窒素種類別のイネ幼植物根直径ごとの根長エラーバーは標準偏差 (n=4)

17

L-Ala L-Gln

図 3・2開 4

NH4+

o

、うよ

ts~TtRBEらぬよ§専設官室勺事録達苦手主官、必

Page 19: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

38 福島県農業総合センター研究報告 第2号

、,ググ/

N狂4十

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Gln

11いv

Ala Ser

菌3・2帽 5 アミノ酸の麓類を変えて栽培したイネ幼植物の根系(窒素i農産 1mM)播種後7民自のイネ幼緩物の地下部を綴影

第三簡で植物とアミノ酸と植物の種類を変えてさらに

検討するが、本節の結果から濃度によらず窒素環境別の

生育反応、が見られることから、次節では栽培時の窒素

濃度を生育期間中の総窒素吸11又量に相当する 5mMとし

て試験を行った。

第三節 異なるアミノ設が植物の初期生育に及ぼす影響

(1) 目的

アミノi撃を単一室素源とした場合の植物生育への影響

をさらに詳細に検討するために、タンパク質を構成する

20種類のアミノ酸を吊いて、第二章で有機質肥料に対

する反応が異なった植物 5種類に対する生育を検討し

た。

(2) 試験方法

供試植物はイネ (Orvzasativa L 日本晴)、コムギ

(7子ItUClItnaestivlltn L. ゆきちから)、ダイズ (Glycine

max しふくいぶき)、キュウリ (Cucumissativus L.

117)、チンゲンサイ (Brassicar,叩 avar chinensis サカタ

のタネ)を用いた。

イネは籾殻を外し、玄米を 5%次亜塩素酸ナトリウ

ムと 1% tritonXの混合液で 15分援とうし、新しい溶

液と交換する操作を 3閤繰り返し行ったO この減菌操作

後、滅菌水で完全に溶液が置換できるまで洗浄して寒天

に播種し、 28tで3臼間保温して発芽させた。ダイズは

80 %エタ〆ールで 30秒振とう後、 1%次亜堪素酸ナト

リウムで30秒振とうした。、コムギ、チンゲンサイ、キュ

ウリは 80%エタノールで 30秒振とう後、 1%次亜塩素

酸ナトリウムで 20分振とうした。 ii成薗水で、洗i争後、寒

天に播種し、 28tで3日間培養して発芽させた。なお、

ダイズは移植E霊前に表皮を剥いて使用した。

培地として、イネは窒素抜き改変木村氏 Bi夜、イネ

以外は窒素抜き改変l/2Hoagland液を使用した(表

3-3-1) 0 これらの土音地にイネは 5%アガロース、イネ以

外は 0.3%ゲランガムを溶解し、 121t、20分のオート

クレーブ処理後、組織培養用プラントボックス (60mm X

60 mm X 100 mm) に分注した。培地が凝固する詰にフィ

ルター減麗した 5mMの各窒素源を添加した。窒素i原と

して、タンパク質を構成する 20種類のアミノ酸(アラニン、

アルギニン、アスパラギン、アスパラギン畿、システイン、

グルタミン庫支、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソ

ロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニ

ン、プロリン、セリン、スレオニン、 トリプトファン、チロ

シン、パ1)ン、全て L型)と、硫酸アンモニウム、硝酸

ナトリウム、無窒素!Rを設けた。 添加する窒素源は HCl

もしくは NaOHでpHを5.5に端正した。

プラントボックス内に、発芽種子をイネ、コムギは 5

個体、チンゲンサイ、キュウリは 3i国体、ダイズは l備

18

Page 20: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

羽gB肴写植RA信事1夫元

E3iJ々35Lbf

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究39

体移植した。イネ、コムギは同型のプラントボックス、そ

の他の植物は密閉用の蓋をかぶせた。播種、移植作業

はクリーンベンチ内で行った。通気性保持のため、上部

に直径約8mmの穴を開けてミリシールで、シールして無菌状

態を維持した。試験は各3連で、行った。人工気象器にて、

温度 280

C、明期 16/暗期 8時間の周期で移植後7日間

無菌条件下で、栽培試験を行った。収穫後、地上部と地

下部に分け、新鮮重を測定した。 800

Cで一晩乾燥させ

地上部の乾燥重量を測定後、元素分析機(SUMIGRAPH

NC-220F)で窒素吸収率と、ルートスキャナーで地下部

の直径別根長を測定した。

表 3-3-1 培地溶液組成

-イネ用(改変木村氏 B液)

用いた塩類 (mg/L) 成分 (mg/L) (mM)

KH2P04 24.8 P20S 13.0 0.09 K2S04 15.9 K20 25.4 0.27 KCI 13.6 仁aO 20.5 0.37 仁a仁12・2H20 47.0 MgO 22.1 0.55 MgS04・7H20 135.3 Fe203 2.5 0.01 Fe-EDTA 26.0

-イネ以外(改変 Hoagland溶液)

用いた塩類 (mg/L) 成分 (mg/L) (mM)

KH2P04 136 P20S 71 0.50 KCI 298 K20 235.5 2.50 仁aCI2・2H20 735 CaO 280.5 5.00 MgS04・7H20 493 MgO 80.6 2.00 H3B03 1.43 Na2-EDTA 1.67 FeS04・7H20 1.25 仁uS04・5H20 0.04 Mn仁12・4H20 0.57

(3) 試験結果

植物別の窒素吸収量を図 3-3-1、根長を図 3-3-2、地

上部と地下部重の関係を図 3-3-3に示した。植物別の

供試したアミノ酸の影響として、窒素吸収量が無機態窒

素(イネは硫酸アンモニウム、イネ以外は硝酸ナトリウム)

区に対して 120以上となるアミノ酸を生育促進するものと

した。無窒素区以下の生育となるアミノ酸を生育阻害す

るものとした。さらに根系発達に及ぼすアミノ酸の影響

も主食言すした。

3刊を

V-1-ljE

A 植物別の反応

イネの生育:生育を促進したアミノ酸は、アスパラギン

(無機態窒素区に対するアミノ酸区の窒素吸収量比 187

以下同)、グルタミン (169)、アラニン (149)、グリシン (112)

であった。生育を阻害したアミノ酸は、フェニルアラニン

(12)、チロシン (12)、スレオニン (8)、イソロイシン (5)、

ロイシン (5)、パリン(4)、メチオニン (3)で、あった。根i

系発達については、グルタミン、アスパラギンでは種子根

も側根も生長は旺盛で、あった。アラニン、アルギニン、グ

ルタミン酸では種子根は生長したが、側根の生長は抑制

されていた。グリシン、アスパラギ、ン酸、プロリン、イソ

ロイシンでは種子根の生長がやや抑制され、その他では

アミノ酸では生長そのものが阻害された。特に、トリプト

ファンは根表面が褐色化し、側根が全く発生しなかった。

チンゲンサイの生育:生育を促進したアミノ酸は、グル

タミン (122)、プロリン (118)、アスパラギン (112) で

あった。生育を阻害したアミノ酸は、ロイシン(7)、パノ

リン(7)、チロシン(5)、メチオニン(2)、トリプトファ

ン(1)、フェニルアラニン (0)、システイン (0)で、あった。

根系発達に対する効果も、地上部の生育と同様に、グル

タミン、アスパラギンが旺盛で、アラニン、アスパラギン

酸、グルタミン酸、プロリンはやや発達していた。他のア

ミノ酸ではほとんど発達が見られなかった。

コムギの生育:生育を促進したアミノ酸はグルタミン

(151)、ヒスチジン (138)、アスパラギン (135)、アスパ

ラギン酸 (130)、アラニン (120)、プロリン (125)、グル

タミン酸 (123)で、あった。生育を阻害したアミノ酸はパ

リン (56)、チロシン (46)、システイン (37)、ロイシン (36)、

トリプトファン (36)で、あった。根系発達については、イ

ネと同様な傾向であったが、コムギではヒスチジンで根

系の発達がみられた。

キュウリの生育:生育を良好にしたアミノ酸は、グルタ

ミン (122) のみであった。生育を阻害したアミノ酸は、

トリプトファン (26)で、あった。根系は、グルタミンで最

も発達し、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、

グルタミン酸でやや発達した。 トリプトファンで、は種子根

の生長はみられ求根系はカルス状の塊となったO

ダイズの生育:ダイズの窒素吸収量は、ロイシン、 ト

リプトファンは明らかにダイズの生育を抑制したが、他の

アミノ酸は無機態窒素施用区とほぼ同程度に生育した。

無窒素区の生育も、無機態窒素(硝酸ナトリウム)と同

程度で、あった。一方、アミノ酸の根系発達への影響は窒

素吸収量とは異なり大きな差がみられた。リジン、グル

タミンの根長発達が旺盛となった。根系発達が阻害され

たのはシステイン、メチオニンであり、種子根の生長のみ

であった。

B 植物閏およびアミノ酸聞の差異

植物間および、アミノ酸聞の影響を検討するために、無

機態窒素(イネでは硫酸アンモニア、その他は硝酸ナトリ

ウム区)を 100としてアミノ酸別の窒素吸収量をまとめた

ものを図 3-3-4、また無機態窒素区に対する吸収が高い

アミノ酸順に並べたものを図 3-3-5に示した。

19

Page 21: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

第2号福島県農業総合センター研究報告40

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異なるアミノ酸を窒素源として生育した植物の窒素吸収量

エラーバーは標準偏差 (n=3)

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司、之、仇

~'Q ~'Ço-匂

J o o

V .",o 4♂ じ渋&~ 、~。ら

d '1"" ,?-0~ ,?-0'<

図3・3・1

、?うヤ

Ala;アラニン、Arg;アルギニン、Asn;アスパラギン、Asp;アスパラギン酸、Cys;システイン、Gln;グルタミン、Glu;グルタミン酸、Gly;クリシン、His;ヒスチジン、

lIe;イソ口イシン、 Leu;口イシン、 Lys;リジン、 Phe;フェニJレアラニン、 Pro;プ口リン、 Ser;セリン、 Thr;スレオニン、 Tyr;チロシン、 Val;バリン

20

Page 22: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

41

準唱窓辺争電車率吃嶋

4守

1β治生活一seEZh-一ご、

イネ

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究

100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 O

F ザダ・0 ‘t、やや

(M村¥EO)略剛容

ペタメr...~ ~

チンゲンサイ

、~ yflJV \夕、~~ <(,<:,flJ <(,0 e:,rz) ボポザ、,s-o 。ρ~'1> ~90 '?-"'~ ,?-4~ 04,'"

200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 。様子ダ♂

やや

(M宵¥EO)

哨聴

ぺ~flJ \y-V ...j.'" ~0"- <(,<:,flJ ポザペポポ-<..~ ~~ &4, ~'" 、,s-o 。ρ~'1> ~90 '?-"'~ ,?-",c 04,'"

コムギ

120

100

80

40

20

60

(M肯¥EO)

雌聴

O

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キュウリ

、~ yflJv ...j.'"ぷ Qザポザペポポポ:が~'"~'1> ~90 '?-"'~ ,?-",c 04,'"

350

300

250

200

150

100

50

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500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 O

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ペポヘ〈も~~、~ yflJv ...j.'" 、~èトザ~ <(♂そがペポ: .. t;:, 、々、do 、Po 。ρ中ぬ~ ~",ç r,!>.'" ~- ~ v '?-"" '?-"''' 04,

異なるアミノ酸を窒素源として生育した植物の総根長図3圃 3-2

エラーバーは標準偏差 (n=3)

Ala;アラニン、Arg;アルギニン、Asn;アスパラギン、Asp;アスパラギン酸、Cys;システイン、Gln;グルタミン、Glu;グルタミン酸、Gly;グリシン、His;ヒスチジン、

Ile;イソロイシン、 Leu;ロイシン、 Lys;リジン、 Phe;フ工ニルアラニン、 Pro;プロリン、 Ser;セリン、 Thr;スレオニン、 Tyr;チ口シン、 Val;バリン

21

:zhide--1diEIthUV4F苦手

C232:82海agh

Page 23: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

第2号福島県農業総合センター研究報告42

無差素

N03-

NH4+

アラニン

アスパラギン

ク、Jレタミン

ーグリシン

ヒスチジン

プロリン

その他アミノ酸

チンゲンサイ

90 イネ30.0

-・A'Xム

O

O

• o¥.)K n

υ

n

u

a

u

q

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(M肯¥回

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O

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O

• 立20.0

E

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-'-1 10.0 震 x

+

O

O

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og--一一一

地下部重 (mg/本)

O

6.0 4.0

(mg/:本)

2.0

地下部霊

0.0

0.0

。o o

l--10111lL

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E)

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E)剛目指斗裂

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コムギ40.0

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O

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O

O 80.0 20.0 40.0 60.0

地下部重 (mg/本)

• 0 • O

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300

ま200

E

細H話

-'-1 100 碧

50 100

地下部重 (mg/:本)

異なるアミノ酸を窒素源として生育した場合の植物別地上部重と地下部重の相関

150

0

0

た。植物の種類により、アミノ酸の生育への影響が異な

ることはこれまでにも報告されている (Ghosh1950)。し

かし、今回 20種類のアミノ酸それぞれを単一窒素源と

した試験により、各アミノ酸の生育促進、阻害を特に窒

素利用率、根系の発達を中心に明確にすることができた。

この要因に関しては今後の課題であるが、植物は窒素成

分の利用に関して好アンモニア植物、好硝酸植物に分類

されることも知られており、アミノ酸の利用に関しても植

物間差が存在すると考えられる。

アミノ酸間の比較をすると、全ての植物で無機態窒素

より窒素含有量が増加したのはグルタミンで、あった。次

いで、イネ、コムギ、チンゲンサイの三植物で窒素含有

量が増加したのはアスパラギン、アラニンであり、その

他二植物以上で無機態窒素より生育がよくなったのはア

22

図3・3-3

植物聞の比較をすると、アミノ酸に対して良好、不良

の明確な差が見られたのは、イネ、チンゲンサイであり、

それとは逆にアミノ酸聞の差が判然としなかったのはダ、

イズで、コムギ、とキュウリはその中間であった。ダイズの

種子は他の植物に比べて大きく(ダイズ約 30mg、イネ・

コムギ約 2mg、チンゲンサイ O.1mg、キュウリ 0.5mg)、

種子栄養が多いため、発芽後の初期成育において外部

から吸収する窒素栄養の影響差が小さいことが原因であ

ると考えられた。そこで、発芽後の培地への移植時に子

葉をはずして、他植物で、生育が良好であったグ、ルタミン、

アラニン、グリシンを窒素源として追試験を行った(図

3-3-6)。その結果、子葉を外すと生育は種子有ダイズの

1/5となった。しかし、窒素形態環境別の生育は種子の

有無に関わらず、アミノ酸では生育の促進はみられなかっ

Page 24: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究43

図3・3-4 各植物のアミノ酸別窒素含有量比

無機態窒霊長(イネでは硫酸アンモニ7てその他は磁霊長ナトリウム区)を100として表示

図3-3・5 各植物の謹葉含有量に及ぼすアミノ酸の影響

イネ

チンゲ

ンサイ

コムギ

キュウリ

Gln I

Asn I Ala

N03

i Hi5lA|alNH4+ N03" Ser

Asn I Pro Arg

Asp I Glu

Gln

Gly Met Thr

Lys lIe 無N

Phe Val

His

I Asn I |陥[:;;Thr

Asp

Leu トiis i祭N I lIe

Val

Met

Gly Thr lIe Leu τrp

His Val Phe

Arg 無N

Ser Try

Lys Met

ζ.ys

τro

Leu

Try

Leu Lys

Pro M';t I ~er ~Iy 'ii;i I 5!.S, I Trp

τiirey Phe 無N

Gln I I lIe NH/ I Try Pro叩etI Glu Thr I Ser Cys I Asn Trp Val N03" I Ala Ar宮 LysダイスA

Gly Phe

His 無N

スパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリンで、あっ

た。一方、無機皇室素[Rより生育が阻害したのは、ダイズ

を除く閤横物でト 1)プトファン、ロイシン、三植物でパリ

ン、チロシン、メチオニンとなり、システイン、イソロイシ

ン、リジン、フェニルアラニンで生育の阻害がみられた。

植物別で特徴的なものとして、コムギではヒスチジンで

の生育が他の植物とは異なり生育が良好で、あったO

無機慾窒雪量(イネでは硫重量アンモニ7てその他は硝霊堂ナトリウム区)を100として表示

23

(4) 考察

本試験と同様に、タンパク震を講成するアミノ酸に

自し、生育に与える影響を検討した試験として White

(1937)、Steinberg(1947)、Ghosh(1950)、森(1979)

らの研究がある(表 3-3-2)。このうち森 (1979) は有菌

状態ではあるがイネを用いて成熟期まで栽培している。

本試験のイネの結果と比較すると、生育促進あるいは生

育阻害するアミノ酸はほぼ同様な結果であったが、 1)ジ

ンは本試験結果と著しい違いがみられ、本試験では著

しい根系の生育臨害がみられたが、森らの試験では生

Page 25: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

第2号福島県農業総合センター研究報告44

E

E

3.5

3.0

ーさ 2.5

3き 2.0

脚"積 1.5-y 要 1.0

0.5

Gly Gln

|口種子有国種子無|

Ala N03-無をN

。.0

150

50

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主4100

区l制悔酬騎E

。N 03- Ala Gln Gly

異なるアミノ酸を培地にしたダイスε地上部重における種子の影響 エラーバーは標準偏差 (n=3)

1979

イネ

有菌

水耕

窒素

最終的に10ppm

アミノ酸各種の生育に及ぼす影響についてのこれまでの報告

5teinberg Ghosh Ghosh Ghosh 森

1947 1950 1950 1950 1979

タバコ 赤クロー1¥ー トマト タバコ ハダカムギ無菌 無菌 無菌 u 無菌 有菌

寒天 水耕 水耕 水耕 水耕

アミノ酸 窒素 窒素 窒素 窒素

各200ppm 3 mM 2 mM 3 mM 最終的に10ppm

仁ooL X X X

表 3・3・2

White

1937

トマト根

m-t

dJnv-nH

p-h

5・〈

図 3-3同 6

対照植物

試験状態

培地濃度

無N

ConL ムA ど1N03-

NH:

Ala

仁ont.仁onL仁ont.Cont.

O

×

ムO O

どLム

×

ど1ム

×

×

Arg

Asn O ム

×

ムO

×

×

ムム

×

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l

A

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×

× × ×

× × ×

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O

×

×

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×

ムムO Gly

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×

/':-, ム

×

ム × × ×

A

X

ムlIe × × × ×

×

×

× ど1Leu ×

O

× × ×

ムO Lys

Met

× × × ×

ム × × × ×

A

X

ムPhe × × × ×

×

Pro × × × × ×

ム5er × × × ×

×

Thr × × × × ×

n

v

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mH

× × × × × ×

ム× × × × O

×

0;標準区より生育促進 (Cont.より30%以上生育促進)

ム;標準区と生育同等(Cont.の生育と:t30%以内)

X;標準区より生育抑制 CCont.の生育より30%以上生育阻害)

ー;供試なしそれぞれの文献から作成

× × ×

24

ム× ×

Page 26: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

45 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究

(3) 試験結果と考察

入れ替え後7日間各アミノ酸で生育した地上部と地下

部の新鮮重を、溶液を入れ替えるときの地上部と地下部

の新鮮重を 100として図 3-4-1に示した。

地上部、地下部とも同様な傾向を示した。塩化アン

モニウムでは、濃度が高くなるほど生育は旺盛となった。

グルタミン、アラニンも濃度が高くなるほど生育は旺盛と

なり、窒素濃度 1000μMでは塩化アンモニウムより、生

育が優った。パリンでは、濃度が高くなるほとや生育が劣っ

た。特に地下部の生育が劣った。

発芽後6日間生育したイネ幼植物へのアミノ酸の影響

は、発芽から 28日間無菌栽培した第三節の結果と同様

な結果であった。

アミノ酸の種類別による生育や根系発達へ与える影響

の違いについては、吸収や代謝の面から予想されている

(槙 1966)が、明確な結論にはいたっていない。そこで、

次章以降では、アミノ酸の生育に対する影響の違いを、

促進するアミノ酸(グルタミン、アラニン)と阻害するアミ

ノ酸(パリン、セリン)の同位体を用いて吸収や代謝に

ついて検討する。

第五節まとめ

第三章では、アミノ酸が植物により窒素源として利用

されるか、および生育を促進するかについて、 5種類の

アミノ酸の影響を検討し、窒素濃度に関わらず、アミノ

酸について植物生育に対する差が大きくみられることを

明らかにした。次に、タンパク質を構成するアミノ酸 20

種類を窒素源として、植物5種類で検討した。その結果、

アミノ酸の種類によって生育に与える影響は異なり、アミ

ノ酸のみで、あっても無機態窒素を窒素源とした区と同等

の生育を示すものもあった。植物の種類聞でもアミノ酸

に対する反応は異なり、イネ、チンゲンサイではアミノ酸

聞で反応の違いが大きく、ダイズでは生育の違いが明確

に見られなかった。植物間で共通して無機態窒素と同等.

以上の生育を示したアミノ酸はグルタミンで、無窒素区

主同等の生育がアラニン、アルギニン、アスパラギン酸、

アスパラギン、グルタミン酸、グリシン、プロリンで、あっ

た。逆に生育阻害を示したのはトリプトファン、ロイシン、

ノTリン、チロシン、メチオニン、システイン、イソロイシン、

リジン、フェニルアラニンで、あった。

アミノ酸の種類により生育の反応が大きく異なり、ま

た有機農業の栽培面積が最も大きいイネについて、生育

が無機態窒素より促進したグルタミン、無機態窒素並で

あったアラニン、生育阻害したセリン、バリンを用いて、

アミノ酸の吸収、アミノ酸別の生育への影響等を今後検

討することにした。

育促進を示している。この違いが、培地もしくは微生物

の有無によるものか、窒素濃度によるものか、生育期間

の違いによるものかは特定できない。 Spoel(1948)は、

生育ステージにより生育効果のあるアミノ酸の種類が異

なることも報告しており、生育期間の違いが最も大きな

要因と考えられた。

根系発達もアミノ酸の種類で影響が見られた。これ

までの根系発達に関する窒素成分の報告は、窒素施肥

量が多いと根群は小型化し、少ないと大型化する(jll田

1982)ことや、硝酸は側根の発達を促進すること (Zhang

et al 1998)、アンモニアは抑制する(三井ら 1964) な

どがあげられる。本試験でも、無窒素区、硝酸区では

根系が発達し、アンモニア区では抑制された。アミノ

酸を供試した中では、グルタミン、アスパラギンは根系

¥ の発達が促進され、アラニン、アルギニン、グルタミン

酸では種子根は生長したが側根の生長は抑制されたo

Arabidopsis thalianaを用いた試験では、グルタミン酸は

低濃度 (0.05-0.5mM)でも根の生長を抑制するという

報告 (Filleuret a1. 2005) もある。また、システイン、

メチオニン、スレオニン、チロシン、バリンでは生育が阻

害されていた。特にトリプトファンは根表面の褐色化やカ

ルス状の発達がみられたが、これはトリプトファンがイン

ドール酢酸の前駆体である (Mullerat a1. 1998) ことが

関係していると考えられた。

翠場議謹書磁器管毒毎場

25zer壬五1FJzj

異なるアミノ酸が無窒素栽培後のイネ幼植物

の生育に及ぼす影響

(1) 目的

前節では、発芽直後からアミノ酸を含んだ培地で生育

させて、各アミノ酸が植物生育へ与える影響を検討した。

発芽直後は、植物生育にとって重要な期間で、あり、生育

環境の影響を受けやすく、アミノ酸の生育へ与える影響

が大きく現れたことが懸念される。そこで、本節では、

発芽後無窒素条件で 6日間生育したイネ幼植物に対する

アミノ酸の影響を検討する。

第四節

25

(2) 試験方法

供試植物はイネ (Or戸asativa L. 日本晴)を用いた。

第一節と同様に種子滅菌し、発芽したイネを窒素成分を

抜いた改変木村氏B液で 6日間無菌栽培した。 6日後、

窒素濃度0、25、100、1000μMのアミノ酸溶液(グルタ

ミン、アラニン、パリン)および、塩化アンモニウム溶液に

入れ替えた。試験連数は4連とした。人工気象器にて、

温度 280

C、明 16時間/暗8時間で移植後7日間無菌

栽培した。収穫後、地上部と地下部に分け、新鮮重を

測定した。

vqC《

Zν,yhtpnZL34ヰ93是主主的gd裂集積書笠

Page 27: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

第2号福島県農業総合センター研究報告46

地上部

250

n

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n

u

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u

n

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d

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u

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G世宏監幅削括

50

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地下部250

るR

4日 200

"'" +>-友 1印

刷l議

き100

堂課盤

整50

で最も重要な課題であるといえる。そこで本章では、植

物の有機態窒素利用形態解明の第一歩として、アミノ酸

の吸収様式について検討を行った。従来無機態窒素の

吸収に関しては多くの研究が報告されているが、アミノ

酸の吸収様式に関する報告は極めて少なしミ。

第二節では、水耕液中のアミノ酸がアミノ酸として直

接根から吸収される可能性について検討を行った。植物

のアミノ酸利用が、植物体の外、すなわち水耕液もしく

は土壌溶液中での形態変化(無機化)を伴うかどうかを

まず明らかにすることを試みた。

第三節では、アミノ酸の吸収・蓄積部位の検討を行うた

めに、 イネ土力+直ヰ知に 14C-アミノ直変(グルタミン、 アラニ

ン、パリン)を吸収させたオートラジオグラフイ像の解析

を行った。

第四節では、近年開発されたリアルタイムオートラジオ

グラフィシステム (RaIet al. 2008) を用いて、溶液から

根へのグルタミンの移行動態をリアルタイムで画像化し、

吸収・集積部位の検討を行ったO

第五節では、アミノ酸の吸収速度について検討を行っ

た。本節では供試植物のイネにおいて根のアミノ酸吸収

26

イネ幼植物のアミノ酸吸収の解析

第一節 はじめに

第三章で、行った実験の結果、窒素源として与えたアミ

ノ酸の種類により植物の生育量には差が生じ、いくつか

の種類のアミノ酸では無機態の窒素と同様に窒素源とし

て生育することが十分可能であると考えられた。通常植

物は、硝酸やアンモニアなど無機態窒素を吸収し、光合

成の同化産物から、アミノ酸を合成する。しかし、これ

まで考えられている無機態窒素以外の吸収も行われるの

であれば、これまで、の無機態窒素と異なる利用・代謝経

路も考えられる。この植物による無機態窒素と有機態窒

素の利用形態の相違は、有機農業における植物の養分

吸収の特徴にもつながることが考えられる。

植物は水および、窒素など必要な養分を、すべて土壌溶

液中から植物体内に吸収する。その役割を担うのが根で

あり、根は土壌中の有限でかつ生育の律速となるあらゆ

る養分の存在を探知し、吸収する。この仕組みはきわめ

て巧妙であることが明らかにされつつあり、その吸収の

制御機構を解明することは植物の生長生理を把握する上

第四章

Page 28: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

市守台官

3建23日そ24ん勺色、

νkrL

47 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究

(2) 試験方法

供試作物はイネ (Oryzasativa L. 日本晴)を用いた。

種子サンプルは籾殻を外し、玄米を 5%次亜塩素酸ナ

トリウムと 1% tritonXの混合液で 15分振とうし、新し

い溶液と交換する操作を 3回繰り返し行った。この滅菌

操作後、滅菌水で、完全に溶液が置換で、きるまで洗浄して

寒天に播種し、 28tで3日間保温して発芽させたa 窒

素成分抜き改変木村氏 B液を 121oC、20分のオートク

レーブ処理を行い、室温まで放冷後、 50mQホ。リフ。ロピレ

ン製遠沈管(コーニング社)に 25mQずつ分注した。遠

沈管の水面にポリフ。ロピレン製ネットを浮かせて、正常に

発芽した種子を 1個体ずつ移植した。この遠沈管4本を

組織培養用プラントボ、ツクス (60mm x 60 mm X 100 mm)

に入れ、同型のプラントボックスを上からかぶせて無菌

条件を維持できるように密封し生育させた。播種、移植

作業はすべてクリーンベンチ内で行い無菌条件を維持し

た。通気性維持のため、上部に直径約8mmの穴にミリシー

ルを貼った。人工気象器にて、温度 280

C、明期 18時

間/暗期 6時間で移植後 6日間栽培した。

生育の揃ったイネ幼植物を供試溶液に交換し、生育時

と同じ人工気象器内にて1時間明条件の吸収試験を行っ

た。供試溶液は、窒素成分抜き改変木村氏 B液に (u-)15N,13C_グルタミン((l3CO(l5NH2y3CH213CH213CH(l5NH2)

13COOH) ,15N・13C98 atom% ,昭光通商,図 4-2-1)を

窒素成分で 1mM(25μmol/25 mQ)となるように添加し

て作成した。 1時間後、氷冷した冷水で 30秒間ずつ 3

回根を洗浄した後、地上部と地下部に分離しそれぞれの

新鮮重を測定した。その後、液体窒素で瞬間的に植物

体を凍結して、 0.5mmシリカ約 1g、および5mmビーズ、3

個が入った 2mQスクリューキャップ付きチューブに入れ、

80 %エタノールを1mQ添加した。ビーズ式細胞破砕装置

(トミー精工 MS-100)で破砕(5000rpm、1分x3回)し、

振とうしながら 600

Cで遊離アミノ酸を抽出し、遠心分離

(12000 g、10分)により、上澄み液を抽出アミノ酸溶

存液とした。

抽出液のアミノ酸分析は、 6-aminoquinolyl

同N-hydroxysuccinimidylcarbamate (AQC、ウォーター

ズ社)を用い、 Orteet.al. (2003)による蛍光誘導体化

を一部改変して行った(図 4-2-2)。

の特性評価として、 Km,Vmaxの測定を試みた。

第六節では、前処理条件が異なるイネ幼植物によるア

ミノ酸の吸収を検討した。植物の生育条件、特にその植

物がおかれた窒素環境がアミノ酸吸収にどのような影響

を与えるかを解析することにより、植物の土壌溶液中の

有機態窒素(アミノ酸)の探知や積極的な吸収機構の

有無を解析した。

27

第二節 アミノ酸の直接吸収の証明

(1) 目的

植物は通常硝酸やアンモニアなど無機態窒素を吸収

し、光合成の同化産物を使用してアミノ酸を合成し、こ

れを材料として数多くのタンパク質をつくり生長する。し

かし、植物がアミノ酸を直接吸収するのであれば、光合

成でつくられた同化産物を必要としない異なる代謝経路

が存在している可能性があると考えられた。そこで、まず、

植物がアミノ酸をアミノ酸として直接吸収できるかを検討

した。

アミノ酸の直接吸収に関する研究は、 15N、13Cで二

重標識したアミノ酸を供試し、植物が吸収した 15N,13C

化合物を安定同位体比質量分析計 (IsotopeRation

Mass;IR-MS)で分析した結果、 15Nと13Cの両方が植物

体内で検出されればアミノ酸が直接吸収したとされてき

た (Nasholmet al. 2000)。この方法により、生態系で

は森林 (Nasholmet al. 1998、Ohlundet al. 2001)や

草地 (Nasholmet al. 2000, Weigelt et al. 2005)、作物

では茶(森田ら 2004)、コムギ (Nasholmet al. 2001)、

イネ(山室 1999)について同様の検討が行われてきた。

しかし、アミノ酸が植物根外で分解され、 15N,13C化合物

をそれぞれ吸収する可能性も考えられるため、 15Nと13C

の双方の検出だけでは供試したアミノ酸が植物体内に

存在するかは不明で、あり、アミノ酸が直接吸収されたこ

とを証明するには不十分であると考えられた。近年、ガ

スクロマトグラフ (GC)やi夜体クロマトグラフ (LC) を

質量分析計 (Massspectrometry, MS) に組み合わせ

た分析が発達しており、供試した同位体標識のアミノ酸

弘通常植物が作成するアミノ酸と分別して測定するこ

とが可能である (Nasholmet al. 2001)が、アミノ酸の

直接吸収に用いた報告はいまだ少ない (Perssonet al.

2001)。

本節では有機態窒素の吸収・利用を検討する第一歩と

して、イネ幼植物のグルタミンの直接吸収を、高速液体

クロマトグラフイーおよび、イオントラップ型質量分析計を

用いて才食言すを行った。

5P7JF53SZ3rEJJ4hJGIBq一zayA章吾是認草ι守主君主念議

Page 29: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

第2号福島県農業総合センター研究報告48

H215N-13CH-13COOH

13CH2

13CH2

13C015N2H

具体的には、 10μl抽出液の上澄み液、 10μlノルロ

イシン(内部標準)、 70μ10.2Mほう酸ナトリウム緩衝

液 (pH=8.8、5mm . 2Na-EDTA含む)を混合し、 AQC

10μlを添加し、 10秒間振とう後、 550

Cで 10分間保持し

て、誘導体化を行った。

分析は、LC/MS(表4-2-1)を用いた。移動層 Aは0.1

%ギ酸、移動層 Bは0.1% Iアセトニトリルとし、グラジェ

ントは表4-2-2に示した。移動相の流速は 0.1mQ Imin、

カラム CInertsilODS-3 GL Science, 3μm,1.5 x 250 mm)

のオーブン温度は 400

Cの条件で 5mQをインジェクション

し分析を行った。イオン化法は ESIとした。 (u-) 15N, 13Cーグルタミン図4・2・1

LC/MSの装置構成

使用機種

表 4・2・1

装置

HPLC移動相のク‘ラジ、工ント条件表 4・2・2メーカー

L仁ポンプ 資生堂テ、ユアルポンプ

3201ナノスペースB

(%)

IRJRJnunU咽

l句

l

宅『.、

3吋

3

円ヲ

RJRJnununyny

nynynxU守

J

マfnyQJ

0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1

A (%)

Flow Rate (ml/min)

Time (min)

nuqdqdnurコ

F

コF

円机

13314

1

3

資生堂HT5オートサンプラー

5ト2 3133ナノスペース

オートサンプラ

資生堂

GL 5cience

51-1

InertsilOD5-3 3μm, 1.5X250mM

ナノスペースカラムオーブン

分析カラム

検出器 nH

、州日町

UJnH

nH

F』

rnu

、,m

M

m

p

lnH

、G

TIEEEJ

Finnigan LTQ

イオントラップ型質量分析装置

C刀工、R2

t'~HRl R2 AmlnoAcld CD rlrif〕 • 11/2<< 15

De~va甘zed AfT'lno Acld

+

O

HO、/」〈N¥

。ヂ--、J

AGC R回 g凹『

¥

H20¥

11/2 << 155¥

4・ NHyd問y5L1Cclnl刑de

CO2 +

O

HO j〈N¥

0-1¥J +

/円、/へ、.t-.lH.,

h!λ/ 1..... 、v'

卜J村ydr四 y匂cclnlmlde6-A刑 noqulr叫l間

AQCによるアミノ酸誘導体化 (waters社 HPより)

28

図4之-2

Page 30: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

hzv担金百毛主NumqarsヌhJrJCL5

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究49

FミT: 0.00 -45.00 S臥必寸 3<ヨ

100 10.2司

← Gln

5

6

5

3

4

・4

4

4E

4

山叩唱

30

90

80

7 0

60.

50

40

30

20

10

o 20.23 22.62 24.27

20 25 -n町、e(打、in}

200707271 9 #5648-5907 Fヨ仁r:10.00-10.35 P.、、〆 78 NL: 2.06E5 T: ITMS +p ESIZ円、s[314.60-326.60)

10

9

3

2

324.15

323.24

325

15N,13C (U) -Gln (153) +AQC (171)→

324.96

315.15 3旬 5.87 322.24 [ザ

322 323

317.15 318.24 319.51 320.05 320.96

315 318 319 316 317 320 321 324 ~/z

図 4同2-3 水耕液 (1mM・(U)_15N,13C_Gln)のトータルイオンクロマトグラム(上段)と

グルタミンのズームスキャンマススベクトル(下段)

RT: 0.00 -45.00 3M: 13Cヨ

100

← Gln

5

10.03 11 10.52 13.82

旬O 唱冶 35 40

90

80

60

50

40

3 0

20

1 0

。 20.49 22.18 24.80

2'0 2'5 -n町、e(打、in)

30

20080720 281 #5648-5907 Fミ.T: 10.00一旬 0.32 メ、、ノ 75 NL: 3.52ES T: ITMS -+-P ESI Z rns [314.60-326.60]

100

Z34znp豆2-54主主宏、止命誕

90

80

70

60

50

40

3 0

20

司o

324.15

323.24 324.96

15N,13C (U) -Gln (153) +AQC (171)→

3句5.33 316.05 3句6.78 318.15 同..,.守寸〒押守『

318 323

320.60 321.42 322.24 319.24

3τr τ 320 315 317 321 322 324 325 316

m 担

図 4・2・4 1時間吸収試験後の水耕液 (1mM・(U)_15N,13C_Gln)のク口マトグラム(上段)と

グルタミンのマススペクトル(下段)

29

NL 1.14E6 π'/2戸316.00 328.00 F: 臥Aεs2007072γ1 9

45

326

NL: 1.65E6 円 、 / =316.00 328.00 F れ̂ S20080γ20 281

326

Page 31: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

50 福島県農業総合センター研究報告 第2号

20080720 2 5 0 #5648-5907 FミT: 10_0寸→句 0.37 メ入、ノ ア2 NL: 2.60E3 τITMS -+-P ESIZ町、s[314.60-326.60]

100 317.15

二b也 l二 B=IS「

90-

ア0

3寸 5.24-315

八 N.'JC引凶ω……(ωω川Uω山)川Gf¥J戸竺叱一三Fタ竺竺り1旦アてアそて亡イL三竺

31 9 322 324 325

~/z

325.60 -326

20080720 269 # 5 64-8-5907 FミT: 10.0寸 10.41 /-、、〆 76 NL: 3.34-巨2T: IγMS -+-P ESIZ 町、s[314.60-326.60] 1也 l、膏日

100

8 0

5 0

2 0

ヨ 3寸 5.05

315 318 319

15N,13C (U) -Gln (153) +AQC (171)→

320.15

321.15

320 322 323 324

324.96

325

一_____325.96 -図4・2・5 無窒素で 6日間生育後、 (U)_15N,13C_Glnを1時間吸収させたイネ幼植物抽出液の

クゾレタミンのマススペク卜Jレ(上段;地上部、下段;地下部)

20080720 261 #5648-5907 RT: 10.01-10.4-0 メヨ、、/: 75 NL: 1.27E3 T: ITMS -+-P ESI Z rTIS 【314.60-326.60]

寸00317.24

<_14N,12C_Gln (146) +AQC (171)

8 0

6 0

5 0

3 0

2 0

o 31 9

20080ア2 0 280 #5648-5907 FミT: 10.01 寸 0.41 メ、、/:76 NL: a.ZOE2 T: IT恥118 -+-P ESIZ町、s【314.60-326.60】

100 317.15

320.15 320.69 321.33 322.24 一 一320

9 0 <_14N,12C司 Gln(146) +AQC (171)

70

6 0

5 0

40

20

323.24

323

324.15 324.69

325

上也」二昔日

326.42 -326

H!:lT 音[>

314.96

一一一315

319.05 320.15 。「勺 24-ーーよー-ー一三主主ニ1豆一主主主~.7a 324.69 325.60 326.15

317 T

318

rn/:之322 323

図 4-2・6 無窒素で 6日間生育したイネ幼植物抽出液のグルタミンの

マススペクトル(上段;地上部、下段;地下部)

30

325 326

Page 32: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

zw経EO記事ffiq号?♂令

51 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究

第三節 アミノ酸の吸収・蓄積部位

(1) 目的

植物根における養水分の吸収部位に関する研究はこ

れまでにも報告がある。オオムギ根において、水やカ

ルシウム、鉄の吸収は根端から数cm基部よりの部分で

認められるのに対し、リン、カリ、アンモニウムは、水

のような明瞭な変異を示さず、根全体から吸収を行う

(Clarkson 1978) とされている。一般的に、根表面に

存在する水やイオンが、茎葉部へ転流するために木部

導管まで移動する経路は、大別して原形質連絡を通じ

て細胞膜で連絡しているシンプラスト、細胞壁や細胞

間隙を連絡しているアポプラストの二種類に分けられる

(巽 1998)。根端から数cm基部寄りの部位では、これ

ら両者のルートを介した水の移動が最も容易であるため

に、活発な水の吸収が見られる。一方、基部寄りの部

位においては、内皮細胞の細胞壁が肥厚して、水を通

し難いスペリンなどの物質が蓄積する。このような部分

では、皮層から中心柱へ向かうアポプラスと経由の水

の移動が妨げられる。水は内皮細胞で、いったんシンプ

ラストを通過してから木部導管へ移動することになり、

吸収活性が低下すると考えられている。しかし、 トウモ

ロコシやイネにおいて、アンモニウムの吸収は伸長域よ

り根端で速い (Colmeret al. 1998) とされ、 トウモロ

コシにおけるカリ (Sharpet al. 1990)や硝酸塩(Taylor

et al. 1998)は伸長域において最大速度を示すとして

いる。一方、リンは齢の進行によって吸収部位が変わる

(吉田ら 1968) との報告もある。このような報告から、

養水分の吸収部位は、植物種や調べた養分に依存して

変わる。

しかし、これまでアミノ酸の吸収部位や根の蓄積部位

に関する検討はない。吸収・蓄積部位を特定することは、

取り込みに関するタンパク質の発現が予測され、分子生

物的解析にも有用な情報となる。そこで本節では、アミ

ノ酸の吸収・蓄積部位の検討を行うために、イネ幼植物

に14C_アミノ酸(グルタミン、アラニン、パリン)を吸収

させたオートラジオグラフィ像の解析を行った。

(2) 試験方法

供試作物はイネ (Oryzasativa L. 日本晴)を用いた。

第二節と同様に、種子滅菌後、発芽した種子を無窒素

条件で 6日間無菌水耕生育させた。 7日目に、無窒素改

変木村氏B液に、

14C_Lグルタミン 2.5kBq/rr&

(l4co (NH2) 14CH214CH/4CH (NH2) 14COOH)

14C_L_アラニン 2.5 kBq/me

(l4CH314CH (NH2) 14COOH)

31

(3) 試験結果と考察

栽培前の溶液をサンプリングし、 AQCでアミノ酸を誘

導体化して、 LC/MSにより分析した。 トータルイオンク

ロマトグラム (TIC) とグルタミンのズームスキヤンマスス

ペクトルを図 4-2-3、1時間吸収後の溶液についてのトー

タルイオンクロマトグラムとグルタミンのズームスキヤンマ

ススペクトルを図 4-2-4に示した。栽培前の溶液を分析

した結果、グルタミンの保持時間は 10.2分、マススペク

トルは二重標識したグルタミン(分子量 153)をAQC(分

子量 171)で誘導体化するため m/z(m:分子量、 z:電

荷)は 324で、あった。栽培後の溶液にはグルタミン以外

のアミノ酸は検出されなかった。また、 AQCによる分

析では、分解によるアンモニアイオンも検出される可能性

もあるが、吸収試験後の溶液からはアンモニアイオンも

f食出されなかった。グルタミンのズームスキヤンマススベ

クトルも同様に m/zが 324を中心とした分布を示してい

た。従って、試験期間内において微生物や根からの分

泌物等によるグルタミンの分解はおこっていないと考えら

れた。なお、栽培前後の溶液を比較すると、 1時間に約

8 % (2μmo])減少していた。

無窒素で生育させたイネ幼植物と、そのイネ幼植物に

1mM . (U-) 15N,13Cーグルタミン溶液を 1時間吸収させた

地上部と地下部のグルタミンのズームスキャンマススベク

トルを図4-2-5に示した。無窒素で生育したイネ幼植版図

4-2-6)では、地上部、地下部にグルタミン分子の 317が

みられた。これは種子内に貯蔵されていて窒素から合成

されたグルタミン(分子量 146)のピーク (317=グルタミ

ン分子量 146+AQC分子量 171)である。これに対し、

(U-) 15N,13C_グルタミン溶液を吸収させたイネ幼植物に

おいて、地上部および地下部で、無窒素で生育したイネ

幼植物ではみられなかった 324にピークがあり、グルタ

ミン分子の質量シフトがみられた。

地下部だけの結果では、抽出前に丹念に洗浄していると

はいえ、根表面へのイオンおよび、アポプラスト内へ侵入した

二重標識グ、ルタミンの存在が懸念される。しかし、地上部で

も二重標識グルタミンが確認されたことから、溶液中のグルタ

ミンは分解されずに直接根に吸収され、そのままの形態で地

上部へ輸送されたグルタミンも存在することが示唆された。

なお、地上部の二重標識グルタミンの割合が低いのは、

第五章でより詳細に解析するが、地下部で吸収後、代謝

されることで、二重標識したグルタミンの 15Nや13Cが他

のアミノ酸や有機酸に移行し地上部へ移動したためと考

えられた。同様に、地下部のグルタミンマススベクトル

で318や319のピークが見られるのは、恐らく二重標識

グルタミンの与ち 15Nの一部が体内の14Nと同様に代謝さ

れ、他のアミノ酸にアミノ基転移により変化し、代謝さ

れたものと考えられる。

Page 33: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

52 福島県農業総合センター研究報告 第2

14C_しノ'¥1)ン 2.5kBq/me

(llCH (l4CH3) /lCH (N狂2)11COOH)

を含んだ窒素濃定 100l-lMの各アミノ酸溶液に入れ替え

た。人工気象室にて 28oC、明条件で試験した。吸収

時間は 1時間と 3時i習とした。また、比較として、 45Ca

と:l2pも問燥に試験した。さらに、根への吸着を検討す

るために、同じ人工気象室内で、 40

Cに氷冷した溶液の

アミノ酸を同様に 3時間吸収させた。サンプリングした

イネ幼植物の地下部を l剖CaCl2i夜で 30秒ずつ 3回洗

浄した後、イメージングプレート(富士写真フィルム、以

下 IP)に添付した。 作業は 40Cの部屡で、行った。 3日間

C2pは3時間)冷凍庫内で保管後、スキャナベFLA也5000.

イルム)で醗{象を読み込んだ。

(3) 試験結果と考察

14C_アミノ酸および、 45Caと32pをl、3時間吸収した

イネ幼植物根のオートラジオグラフィ像を悶 4-3-1~こ示し

た。放射-性同位体の蓄積最が多いほど黒くなるo45Caを

40C、3時期吸収 28

0C、l跨間吸収

Gln

Ala

Val

吸収したイネ幼植物根は根端が黒くなったo32pは、根端

も黒くなるが、 45Caより全体的に暁るかったO また、氷冷

した溶液からのアミノ酸吸収は、 280

C条件で、行った試

験に比べて明るい部分は少なく、根全体が薄く写し出さ

れた。これは、溶液を氷冷したため、イネ幼植物の生

理活性が低下し、アミノ酸の吸収が少なく、主に根表面

に吸着した像となったと思われる。

280

Cの1時開吸収では、アラニン、グルタミン、パリ

ンとも種子根の根端が黒く写し出されていた。 3時間吸

収では、 1持需吸収の根より根端から基部側へ明るい範

囲が広がり、その範閤は特にパリンで、大きかったO 吸収

時間が長くなり、吸収量および根内での移行が見られた

ためと思われる O また、カルシウムとアミノ援の根端を

よヒ較すると、アミノ酸を吸収した根端は、カルシウムより

広い範囲で明るかった。

次節では、アミノ酸の吸収の過程をより詳細に検討す

るため、リアルタイムオートラジオグラフイシステムを用い

た解析を行った。

280C、3時間吸収 28

0C、3B寺間吸収

Ca

P

図4-3-1 14C情アミノ酸および45Ca_カルシウム、 32p_リンの吸収初期(吸収後 1、3時間)

イネ幼植物根のオートラジ、オクラフィの

32

Page 34: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究53

第四節 リアルタイムオートラジオク、ラフィシステムを用

いたアミノ酸の吸収解析

(1) 臣的

能節では、アミノ酸の吸収・蓄積が、主に根端でみら

れることを明らかにした。しかし、これはイネ幼植物を

1Pに貼り付けカセッテ内に長時間コンタクトした結果であ

り、問ーの個体を用いて経時的な変化を解析したもので

誌ない。植物体内の物質動態や生理応答はかなり早い

ものであり刻一刻と変化する。例えば無機態窒素を用い

た試験では、根に与えた窒素(l3N)がわずか数分後に

地上部で検出 (Nakanishiet al. 1999) されている。位

分子であるアミノ酸の動態や吸収特性を検討するために

は、アミノ酸の物性を変化させることなく標識し、植物

の生理状態を維持したまま根からの吸収動態をリアルタ

イムで解析できるシステムが必要である。これまでにも、

植物体内の物質動態を生きたままの状態で解析する方

j去として、 PET1S(Positron Emitting Tracer 1maging

Systemが報告されているが、この方法で使用するポジ

トロン核種の調整には大規模な施設を要すること、ポジ

トロン放出核種は一般に半減期が短く使用時聞が限られ

ていること、そしてy線を主に検出するため解像度の限

界があること、ポジトロンの抜けという現象のため画像に

定量性がないことなどの問題点がある。

近年 Raiet al. (2008) は、 F崩壊核種のラジオアイ

フォトンカウンテイングカメラ

ソトープ 14C、45Ca、32pなどを用いて、植物体中の物

動態を非破壊かっリアルタイムで画像化するシステムを

開発した。このリアルタイムオートラジオグラフイシステ

ム(以下リアルタイムシステム)は、放射性向位体トレー

サーが崩壊して生じるF線を、 Cs1シンチレータによって

可視光へと変換し、その可視光をフォトンカウンテイング

に吊いられる GaAsPイメージングインテンシファイアで

増結し CCDカメラ(浜松ホトニクス)で十食出するもので

ある(鴎 4-4-1)0 Cs1シンチレータによって変換される光

はきわめて微弱で、ありこの光をインテンシファイア光竜面

において電子に変換し、変換された電子を向じくインテ

ンシファイアに内蔵されたマイクロチャネルプレートにお

いて増幅している。増幅した電子は蛍光部で再び蛍光

像に変換され CCDカメラで閥像化され、ソフトウエアの

AQUACOSMOS(浜松ホトニクス)を使用して商{象構築

および、解析が行われる。これまでは、 32pやおCaを根か

ら吸収させて、葉や爽など池上部に移行してくる植物体

地上部を対象とする解析が主に行われている。

本研究では、このリアルタイムシステムを用いて、イネ

幼植物根がグルタミンを吸収する過程を撮影した。本冊

究では、従来とは掲影対象が異なり、溶液から根への

グルタミンの吸収過程を検討課題としたため、一部リア

ルタイムシステムを改良して試験を行ったO

計調,IJ原理

1.植物サンプルにRI標識化合物を与える2.植物!こ吸収された標識化合物からS線が放出される

3.放出されたS線をシンチレータで可視光に変換する

4.可視光をフォトンカウンテイングカメラで癌DarlくRoom 11 像として検出する

RI穣識化合物幡多戸線闘参シンチレータ=二〉微弱光=二:>2Dでリアルタイム検出

国4・4-1 リアルタイムオートラジオグラフィシステム (Raiet al. 2008 より一部改変)

33

Page 35: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

54 福島県農業総合センター研究報告 第2号

(2) 試験方法

供試作物はイネ (Oryzasativa L 日本晴)を用いた。

第一節と同様に、種子滅菌を行った後、発芽した種子を

無窒素条件で 2日間無菌的に水耕栽培を行った。測定

は、 リアルタイムシステムを用いたが、溶液中のアミノ酸

を根が吸収する様子を撮影するために、イネ幼植物(地

上部・地下部全体)を、ポリスチレン (4μm)薄膜を介

して、CsIシンチレーター上に固定し、ポリエチレンメッシユ

(20μm)シートで、覆ったスポンジで根を抑え、 CsIシン

チレーターに密着させた。上部を一部空けたプラスチツ

クシャーレをスポンジの上から覆い、溶液が漏れないよ

うに周囲をシリコングリースで止め、 14C_アラニン、 14C_グ

ルタミン溶液 (18.5kB/mQ、窒素濃度 250μM、約 20mQ)

を添加し吸収実験を行った(図 4-4-2)0 アラニンは 5分

積算した画像を lコマとし 500枚 (41時間)、グルタミ

ンは 10分積算した画像を lコマとして 258枚 (43時間)

撮影した。グルタミン撮影時には、吸収部位を明らかに

するために、イネ幼植物の葉にワセリンを塗布し、蒸散

を抑えて導管の蒸散流を止めたサンプルも撮影した。

(3) 試験結果と考察

A アミノ酸吸収のリアルタイム解析

リアルタイムシステムを用いてイネ土力中直物カ対良から 14C_

グルタミンを吸収する過程の、試験開始後 3~6 時間に

おける 10分ごとの吸収動態を図 4-4-3に示した。パック

グラウンドとして撮影される水溶液から根が 14C_グルタミ

ンを吸収・蓄積して、 14C グルタミン濃度が濃くなり根が

画像として浮かびあがってくる様子が観察された。吸収

初期では、根全体で吸収が見られた。

試験開始 7~43 時間の 2 時間毎のイネ幼植物の吸

収動態を図 4-4-4、ワセリン塗布を行ったイネ幼植物の

吸収動態を図 4-4-5、それぞれの輝度値の上昇から根端

と根中央部におけるグルタミンの濃度変化を数値化し図

4-4-6に示した。ワセリン塗布無しイネでは、吸収された

14C_グルタミンは根端に蓄積がみられた。なお、 12時間

後には輝度値の低下がみられるが、これは溶液中の 14Cー

グルタミンが吸収されてなくなり、吸収された 14Cグル

タミンが地上部へ移行したものと考えられる。一方、ワ

セリン塗布のイネでも、根端への蓄積が見られるが、全

体的な吸収はワセリン無塗布と比べると低く、時聞が経

過しても根の 14C グルタミン濃度の低下はなかった。導

管での水輸送の原動力となるのは気孔の蒸散であり、根

から吸収された養水分は、水ポテンシャルの勾配にした

がって地上部へ輸送されるO したがって、葉へのワセリ

ン塗布により蒸散が抑制されたため、地上部への移行

が低下したためと考えられる。

図 4-4-7 に試験開始 7~43 時間の 2 時間毎の 14C_ ア

ラニンの吸収過程を示した。グルタミンと同様、アラニン

吸収も根端で高いことが観察された。

ラジオアイソトープスポンジ 標識水耕液を注入

遮根シート

密着

↑ Cslシンチレーター

スポンジで根を押してCsIシンチ

レーターに密着させつつ、標識化

合物を吸収させる。

スポンジ表面にはシートを張り、

スポンジ内に根を進入させない。

プラスチックシャーレ

図4-4・2 溶液から根へ 14C司アミノ酸吸収を撮影するためのリアルタイムオートラジ、オク‘ラフィシステム

34

Page 36: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・ 代謝に関する研究55

図4-4-3 吸収後 3~6 時間のイネ幼植物(ワセリン塗布無)の 14C_ グルタミンのリアルタイム画保10 分ごとの画像を掲載)

図4・4・4 吸収後7~43時間のイネ幼植物(ワセリン塗布無)の 14C_グルタミンのリアルタイム画傑2時間ごとの画像を掲載)

35

Page 37: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

56 福島県農業総合センター研究報告 第2号

図4・4・5 吸収後7~43時間のイネ幼植物(ワセリン塗布有)の 14Cーグルタミンのリアルタイム面倒2時間ごとの画像を掲載)

図4-4-7 吸収後 7~43 時間のイネ幼植物の 14C・アラニンのリアルタイム画像 (2 時間ごとの画像を掲載)

36

Page 38: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究57

<l c 国

(/) )

“ 口

6∞

500

E (4∞ E >> ω.当。 ~3∞ロzr. cコ

il 2∞ 3

O

u てが日

伺ロ国

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100

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5_4∞ E-'; <c ;:

。 ~3∞胃ぷ【ロ

."l 200 2

O

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l∞ 。

ワセリン塗布無・イネ幼植物根

。5

。5

/、何時、

10

10

15 20 25 30

吸収後時間 h

35 40

…・3(犠端)

45

o4(根中央)

15 20 25 30 35

吸収後時間 h

ワセリン塗布無

40 45

。。ロ国

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6∞ 500

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5∞ 5_4∞ 巨 よ同居

。 ~ 3∞ C:~ 己ロ

i'i 2∞ ロc)

u ザ【

l∞

ワセリン塗布有・イネ幼植物根

5 10

5 10

-・5(根端)

15 20 25 30

吸収後時間 h

15 20 25 30

吸収後時間 h

ワセリン塗布有

o6(根中央)

35 40 45

.7(根端)

o8(根中央)

35 40 45

図4・4・6 14C_グルタミンを吸収させたワセリン塗布有無イネ幼植物の根端と根中央部の輝度値

(1,3 ;ワセリン無・根端、 2,4;ワセリン無・根中央、 5,7;ワセリン有・根端、 6,8;ワセリン有・根中央)

B 考察

根端には、根冠に守られた根端分裂組織があり、細

胞分裂と細胞伸長が繰り返されて根は伸長する。根の伸

長にあたっては葉で同化された炭水化物が飾管を通して

供給されている。また、 Oaks(1966)は、 トウモロコシ

の根端部ではある種のアミノ酸の生合成がほとんど行わ

れておらず、タンパク質合成に必要なアミノ酸は根の他の

部分から輸送されることを指摘している。また、アンモ

ニア態窒素を 15Nで標識した実験で吸収されたアンモニ

ア態窒素の根端への移動があることも報告 (Yoneyama

et al. 1977) されている。

本試験および、前節の結果、イネ幼植物の根では、 14C_

アミノ酸の吸収・蓄積は特に根端で多くみられた。 Oaks

37

(1966)らの報告より、根内でアミノ酸が移行することも

考えられるため、根端の吸収量が多いのか、根端以外

から吸収したアミノ酸の蓄積が多いのか、判然としない。

リアルタイムシステムを用いた映像では、最初に根全体が

浮き上がる画像がみられたが、これは根全体で吸収が

同一速度で行われているのではなく、前節でも指摘した

ように、アミノ酸が根表面へ吸着したことが要因である

と推測している。

根端部でアミノ酸の吸収量が多いのか、蓄積が多い

のかはについては、今後、根の部位別の吸収量や、根

端以外の部分で吸収したアミノ酸の根端への移行量、ま

たパルス的に 14C-アミノ酸を与えた植物根をリアルタイム

システムで解析するなどの検討が必要である。

Page 39: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

58 福島県農業総合センター研究報告 第2号

第五節 アミノ酸の吸収速度

(1) 目的

植物の生育に必要な必須元素は 17種類であるが、炭

素と酸素を除きそのほとんどが根から吸収される。窒素

は植物が根から吸収する養分の中でも最も重要な栄養

素の一つであり、これまでに、硝酸やアンモニアの吸収

に関しては数多くの研究がなされてきた。その結果、硝

酸イオンとアンモニアイオンには、低濃度な環境からでも

積極的に吸収できるそれぞれ独立したトランスポーター

が存在していることが明らかとなっている (Crawfordet

al. 1998, von Wiren et al. 2000)。硝酸トランスポーター

(NRT) には、低濃度 (<0.5mM) の硝酸イオンを取り

込む高親和性輸送系と、高濃度 (>0.5mM)の取り込み

に働く低親和性輸送系が存在している(池田ら 2000)。

アンモニウムイオンの吸収も硝酸イオンと同じようにアン

モニウムトランスポーターの存在が知られている(斎木

2002)。アンモニウムイオンの培地濃度が 1mM以下で

は高親和性輸送系に基づいたミカエリス・メンテン型の

吸収曲線を示し、 1mM以上では、濃度に依存して直線

的に吸収量が上昇する(末吉 2003) ことが明らかにされ

ている。

また、アミノ酸については、根や葉で合成されたアミ

ノ酸が維管束を通して輸送され、窒素同化を行わない

他の器官はアミノ酸を積極的に取り込むことが明らかに

されている。それぞれの器官、組織にはアミノ酸の運搬

に関わるトランスポーターが存在し、基質特異性や組織

分布が明らかとなっている (Fischer1998,柿沼 2003)。

近年、 Arabidopsisの根において溶液からのアミノ酸

吸収に関っていると思われるトランスポーター (Lysine

Histidine Transporter : LHTl)についての報告もあっ

た (Hirneret al. 2006, Svennerstam et al. 2007)。アミノ酸吸収にトランスポーターが関与していることを

示す重要な証拠の一つが基質のアミノ酸濃度と吸収速度

との関係がミカエリス・メンテン式の酵素反応式で示さ

れることである。同式の定数 Km(ミカエリス定数)およ

び Vmax(最大吸収速度)は植物根の細胞膜の最適濃

度および、最大吸収速度というアミノ酸吸収能を表現して

おり、これらをパラメーターとして植物のアミノ酸吸収能

を評価することができる。これまでに、アミノ酸吸収に

関する Km値は、牧草 (Kielland1994)、オオムギ (Soldal

1978, Jamtgard et al. 2008)で測定が行われている。

イネ幼植物根のアミノ酸吸収もトランスポーターを含め

た吸収システムが介していると考えられ、本節にはイネ幼

植物のアミノ酸吸収特性としてグルタミンのKm、Vmaxの

測定を試みた。

38

(2) 試験方法

供試作物はイネ (Oryzasativa L. 日本晴)を用いた。

第一節と同様に、種子滅菌後、発芽した種子を無窒素

条件で 6日間無菌的に水耕栽培した。

7日目に、無窒素改変木村氏 B25 meにU}4C_グルタ

ミン (2.5kBq/ me , 14CO (NH2) 14CH214CH214CH (NH2)

14COOH)で標識した窒素濃度 0.15、10、25、50、

100、250、500μM(アミノ酸濃度 0.075、5、12.5、25、

50、125、250μM)のグルタミン溶液に入れ替えた。数

時間(試験開始初期は 30分)毎に 24時間後まで溶液

を50μl採取し、シンチレーションカクテjレ(MicroScint

40™,パーキンエルマー)を 150μl 添加後よく撹拝し

て、マイクロプレートシンチレーションカウンタ ( 1450

MicroBeta Trilux,パーキンエルマー)で溶液中の 14C

を測定した。実験は 4連で測定は 2連で行った。試験

期間中の蒸散による溶液減少に伴う濃縮を計算により補

正し、溶液中のグルタミンの正確な減少量を算出した。

吸収試験終了 (24時間)後、イネ幼植物を洗浄して新

鮮重を測定し、植物当たりの吸収量 (μmol/g) を算出

した。吸収時間と吸収量の関係から吸収速嵐μmol/g/h)

を求め、それと初期溶液濃度との関係をミカエリス・メ

ンアン式、

v/Vmax= CsJ / (CSJ +Km)

により解析するため、 Hanes-Woolf式、

〔日 /v=csJ /Vmax十Km/Vmax

を用いて、 KmとVmaxを算出した。なお、 vは吸収速

度 (μmol/g/h、CSJ は初期溶液濃度 (μM)、Vmaxは

最大吸収速度(I-lmol/g/h、Kmはミカエリス定数 (μM、

Vmαx) に達する半分の濃度)である。

(3) 試験結果と考察

A Km、Vmax{i直

溶液中の 14Cを測定してグルタミンの減少率を図 4-5-1

に示した。 14C_グルタミンの量は濃度によらず一定とした

ため、窒素濃度が薄いほど 14C_グルタミンの減少率は早

かった。

減少した 14C_グルタミン量を植物の吸収量とし、吸収

時間と植物個体当たりの吸収量を図 4-5-2に示した。吸

収時間の経過に伴い直線的に吸収量は増加し等速と

なった。直線の傾きから吸収速度を求めた。

図4-5-3に溶液濃度と吸収速度の関係を示した。溶

液濃度が高くなると吸収速度は直線的には増加せ坑

飽和傾向がみられた。溶液濃度と吸収速度から Hanes-

Woolf式を用いて、 KmとVmaxを算出した。その結果、

グルタミンのKmは200μM、Vmaxは2.9μmol/g/hであっ

た。

Page 40: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝lニ関する研究59

グルタミンと同様に、アラニンの KmとVmaxを求めた

(図 4-5-4)。その結果、Kmは54.0μM、Vmaxは1.2μmol/

g/hでAあった。

120 00 μM

010μM

企 25μM100 58ロロ号回目 d50μM ., 弘司

回 。100μM8552;2 <> 250μM 時 80歪

回白白 500μM守、

曙品 60 5 -々'、

やにコ 40 E 盃

20 Gln

。15 20 25 o 10

時間 (h)

図4・5・1 イネ幼植物の濃度別グルタミン溶液の14C_グルタミン減少率(試験開始時を 100とする)

5

さEき4

) 三三

1

。o

20

達τE通 15

) ミミ

理吉堂、EP w 5

o o

50

広主主

45

きoE 40

一=三 35

25

20

15

10

5

o o

しJ

y =: O.1978x + 0.0647 R2 = 0.9921

Gln 25μM

5 10 15

E寺再司 (h)

20

ν= O.6776x + 0.0996 R2 = 0.9887

Gln 100μM

5 10 15

時間 (h)

20

y = 1.7679x - 3.5366 R2 = 0.9686

Gln 500 μ M

5 10 15

時間 (h)

20

25

25

5

1

5

1

0

宮、¥一

E3制明星臣λ川町唱え

huz

100 200 300

溶液農産 (μM)

400 500

図4-5・3イネ幼植物のグルタミン溶液濃度と吸収速度

2.0

~ Z言1.5E ミえ

量1.0

育Ir、205

0.0 ・一一一一一一一一一一」一一100 200 300

溶渡温度 〈μM)

400 500

図4・5-4 イネ幼植物のアラニン溶液濃度と吸収速度

10

8

6

4

2

百¥一

oEE)酬与四百九川阜、『』l口=

y :::: O.3739x + 0.0536 R2 = 0.9965

Gln 50μM

25 o 5 10 15

康年晶司 (h)

20 25

30

5

0

5

0

2

2

1

1

2¥百三)酬ぎ臣、パ川登『

.hlp

y = 1.1x -0.1283 R2:::: 0.9834

Gln 250/.L仇局

5 1-

o o 5 10 15

時間 (h)

20 25

図4・5-2 イネ幼植物のグルタミン溶液濃度別の吸収量

39

Page 41: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

60 福島県農業総合センター研究報告 第2号

B 考察

通常、土壌中の全アミノ酸濃度は、数十 μM(Kielland

1994. Jamtgard et al. 2008であり、有機質肥料を施用

した場合にはさらにアミノ酸濃度が上がるものと考えら

れる。堆肥や稲わら連用圃場では、化学肥料のみの圃

場より1.3~ 1.6倍多くの遊離アミノ酸が存在するとする

報告(佐藤 1985) もある。本試験で、 10μM以下の濃

度においてもグルタミンを吸収していることから、実際に

土壌中のアミノ酸も吸収していることが推察される。

イネのアンモニウムイオン吸収に関するこれまでの報告

では、本試験と同様な条件ではないが、窒素条件を変え

て3週間生育した場合、Kmは32~ 188μM、Vmaxは3.4

~12.8μmol/g/h (Wang et al. 1993)であり、窒素濃度

200uMで4週間生育した Km=75μM、わnax=216μmol/

g root /h (Youngdahl et al. 1982) などカfある。また、

アミノ酸吸収に関しては、生きた植物のインタクトな根で

は、 1mmの窒素条件で、 20日間生育したオオムギKmが

33μM、Vmaxが 10.2μmol/groot /h (Jamtgard et al.

2008)であることを報告している。酵母での試験では、

プロリンの Kmが 10μM、グルタミン酸は 13μM、ヒスチ

ジンは 362μMである (Hirneret al. 2006) 0 今回の試験

とこれまで、の報告から、生育条件によって吸収特性は変

わるものと考えられるが、イネ根のグルタミンの吸収はア

ンモニアイオンやアラニンより Kmがやや高め、 Vmaxがや

や低めであることが予想された。

第六節 窒素環境の遣いがアミノ酸吸収に及ぼす影響

(1) 目的

植物は養分を獲得するために様々な機構を働かせてい

る。生育環境の違いで、 トランスポーターの発現を変え

ることも、植物の重要な生き残りの戦略である。硝酸の

高親和性輸送系は、植物根の初期吸収速度はミカエリ

ス・メンテン型の曲線を示す。その中でも、恒常的に発

現しているか、もしくは硝酸イオンの濃度によって発現が

誘導されるかなど、さらにいくつかのタイプに分類され、

それぞれの発現が環境条件に合わせて制御されている

(末吉 2003)0 一般に同じ高親和型でも、誘導的に発現

するものの方が、硝酸イオンの輸送速度が速く(榊原ら

2002)、イネのアンモニウムトランスポーターと考えられる

OsAMTJ;2は、硫酸アンモニウム添加後 30分後に発現

し始め、 60分から 120分後でさらに発現量の増加が認

められたとの報告(斎木ら 2002) もある。

アミノ酸吸収に関しでも、生育させる環境条件の違い

がアミノ酸の吸収機構の発現に影響を及ぼすことが考え

られる。本節では、生育条件として、窒素形態(アンモ

ニアとグルタミンと無窒素)を変えて生育したイネ幼植物

の、グルタミン吸収能力の違いについて実験を行ったO

(2) 試験方法

供試作物はイネ (Or戸 αsativaL 日本晴)を用いた。

第一節と同様に、種子滅菌後、発芽した種子を異なる

窒素環境で生育して、グルタミン吸収試験に用いた(表

4-6-1)。具体的には、窒素濃度 100μMのアンモニアと

グルタミン、および対照区として、無窒素条件で 6日間

無菌水耕生育した。 7日目に、無窒素改変木村氏 B

液 25mQにU-14C-グルタミン (2.5kBq/mQ .

14CO (NH) 1~CHtCH214CH (NH2) 14COOH) を含んだ

窒素濃度 0.15、25、50、100、250μM(アミノ酸濃度 0.075、

12.5、25、50、125μM) のグルタミン各溶液への交換

を行った。無窒素で生育したイネに関しては 25、100μM

のみの試験とした。数時間(試験開始初期は 30分)毎

に16時間後まで溶液を 50μl採取し、シンチレーション

カクテル (MicroScint-40 TM.パーキンエルマー)を 150μl

添加後、マイクロプレートシンチレーションカウンタ (

1450 MicroBeta Trilux.パーキンエルマー)で溶液中の

14Cを測定してアミノ酸の減少率を算出した。なお、試

験期間中の蒸散による溶液減少に伴う濃縮は計算により

補正した。吸収試験終了 (24時間)後、イネ幼植物の

根を水で、洗浄して、地上部と地下部の新鮮重を測定した。

14Cの減少量から植物当たりの吸収量を算出した。

表 4-6-1 第四節の試験区設定

生育時窒素環境

窒素形態窒素濃度 (μM)

Gln 100

吸収試験

窒素形態窒素濃度 (μM)

Gln 0.15

25

50

100

250

0.15

25

NH/ 100 Gln

無 N

、,nunu一-》

nu

-HnURJ一日'一

nu

t-

l

4一,

a

l

Gln

40

Page 42: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

61 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究

境の違いによる差は見られなかった。よって、本試験で

供試した濃度でグルタミン吸収を行っている吸収システム

は、窒素欠乏あるいはグルタミン存在下で発現するタイ

プではなく、常時発現していることが推察された。

(3) 試験結果と考察

溶液中の 14Cを測定してグルタミンの減少率を図 4-6-1

に示した。また、減少した 14C_グルタミン量を植物の

吸収量とし、吸収時間と植物個体当たりの吸収量を図

4-6-2に示した。減少率、吸収量とも、生育時の窒素環

120 120

直面

Gln 25μM

100

80

60

(訳)時へ市環E

zs:

Gln 0.15μM

穴YU

汽益

100

80

60

(ぷ)時令撰

40 主40

25 20 15 10 5

20

O

O 25 20 10 15

吸収時間

5

20

O

O

、、』,,』H,,‘、吸収時間、BJ』H,,‘、

ロT人

Y傘

E 円呂

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Gln 100μM 120

100

80

60

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M

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h 歪E

120

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60

(訳)時へ市撰

'40 40

20 20

25 20 10 15

吸収時間

5 O o 25 20 15 10

吸収時間

5

O O

、,J』H,,‘、(h)

豆合

芸豆a 。a

E

Gln 250μM 120

100

80

60

(渓)時令撰

40

20

10 15

吸収時間 (h)

異なる窒素環境で生育したイネ幼植物の濃度別グルタミン溶液の 14C_クルタミン減少率

(試験開始時を 100とする)

41

25 20 5

O o

図4-6・1

Page 43: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

第2号福島県農業総合センター研究報告62

いけ

5一

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吸収時間 (h)

5

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Gln50μM 12

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5

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25

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4

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oεミ)酬与蛍入川町宝「huloz

Gln250μM

10 15

吸収時間 (h)

濃度別グルタミン溶液の異なる窒素環境で生育したイネ幼植物の 14C同グルタミン吸収量

25 20

第五節では、グルタミンの吸収速度について検討した。

溶液濃度を変えて、吸収速度を測定したところ、ミカエ

リス・メンテン式に従う曲線となり、グルタミンの Kmは

200μM、Vmaxは2.9μmol/g/hと算出され、能動輸送で

あることが示唆された。

第六節では、前処理条件を異なるグルタミンの吸収を

検討した。異なる窒素環境で生育したイネのグルタミン

吸収には差は見られなかった。このことから、グルタミ

ン吸収に関与する吸収システムは、窒素欠乏時に発現す

るタイプではなく、常時発現しているものと推察された。

42

図 4-6-2

第七節 まとめ

第二節では、グルタミンの直接吸収について、二重標

識グルタミンを吸収させて、 LC/MSにより地下部と地上

部の遊離アミノ酸を分析した。その結果、根および地上

音問、ら抽出した遊離アミノ酸の中に、投与した二重標識

グルタミンが検出され、直接吸収が確認された。

第三、四節では、グルタミンの吸収過程をリアルタイム

オートラジオグラフィシステムを用いて解析した。 溶液か

ら根へのグルタミンの移行動態をリアルタイムで画像化す

ることに成功し、根端部分で吸収・集積が高いことを解

明した。

Page 44: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究63

第五章 直接吸収したアミノ酸の代謝と植物体内の蓄積分布

第一節はじめに

窒素は植物の生育に必須の栄養素であり、これまで主

に無機態窒素である硝酸イオンやアンモニアイオンの取り

込みと、その後のアミノ酸への同化について多くの研究

が行われてきた。硝酸イオンやアンモニアイオンは、細胞

膜にあるトランスポーターで積極的に細胞内に取り込ま

れる。細胞内で硝酸イオンは、硝酸還元酵素(NR)によっ

て亜硝酸イオンに還元され、さらに亜硝酸還元酵素(NiR)

によってアンモニアイオンに還元される。アンモニアイオ

ンは、グルタミン合成酵素 (GS) により、グルタミン酸に

アミド基として付加されグルタミンが合成され、グルタミ

ンに取り込まれたアンモニアイオン由来のアミド基が、グ

ルタミン酸合成酵素 (GOGAT) により 2-オキソグルタ

ル酸に転移し2分子のグルタミン酸が生成される(山谷

2001)。このようにしてグルタミンから合成されるグルタミ

ン酸のアミノ基がさらに転移することで他のアミノ酸が合

成され、核酸など、ほとんど全ての有機窒素化合物の生

合成に利用される(彦坂 1999)ことが明らかになってい

る。

土壌中のアミノ酸が、植物生育の養分となるためには、

無機態窒素のように細胞膜を通して植物体内に取り込ま

れ、代謝される必要がある。第三章の結果、アミノ酸は

その種類により植物生育に対する影響は異なり、無機態

窒素以上の生育を示すアミノ酸や生育を阻害するアミノ

酸があることが明らかとなった。この要因として、アミノ

酸の種類により吸収量が異なることや、吸収後の代謝過

程の相違が考えられるが、アミノ酸ごとの吸収量や代謝

に関する報告はほとんどない。 Moriら(1979)は、ハダ

カムギを供試作物とし、生育を良くするアミノ酸としてア

ルギニン、阻害するアミノ酸としてヒスチジンを取り上げ、

吸収後の代謝過程の違いを検討しているが、本研究で

用いたイネ幼植物では、アルギニンは無機態窒素より窒

素吸収量が劣っており、ハダカムギと吸収や代謝に違い

があると考えられる。

また、第四章よりアミノ酸は直接吸収されることが明

らかになっているが、吸収されたアミノ酸態窒素の植物

体内でどのように分布し、利用されていくのかはアミノ酸

を窒素源として考えたときには興味深い課題である。硝

酸イオンやアンモニアイオンなど無機態の窒素形態でも体

内分布の相異が報告(米山ら 1972)されており、アミノ

酸態窒素の分布も無機態窒素と比べて異なることが予想

される。

さらに、アミノ酸は、通常無機態窒素がエネルギーを

使って光合成同化産物と同化した分子で、あり、吸収され

43

たアミノ酸の代謝が植物体内ですすめば、窒素成分だ

けでなく、アミノ酸の分解から生じるエネルギーも獲得

することが期待できる。窒素源としてのアミノ酸とアンモ

ニアイオンのこれらの比較は、今後、有機質肥料と化学

肥料の違いや、有機質肥料の特徴につながると考えられ

る。

以上のように本章では、異なるアミノ酸ごとの吸収速

度の違いを検討し、吸収されたアミノ酸の代謝や窒素、

炭素の蓄積分布について、安定同位体標識アミノ酸を用

いた実験を行い、さらに、吸収されたアミノ酸態炭素の

分解より得られるエネルギーについても検討した。供試

したアミノ酸は、主に、生育が良かったグ、ルタミン、アラ

ニン、および、生育を阻害したパリンを用いた。特にグルタ

ミンは、第三章において供試した全ての植物(イネ、コ

ムギ、ダイズ、チンゲンサイ、キュウリ)で無機態窒素よ

り生育がよく、吸収されたグルタミンが植物の体内でどの

ように代謝され、窒素源として利用されているかを解析

することで、アミノ酸の生育促進効果の要因の解明につ

ながると考えられる。

第二節 異なる種類のアミノ酸ごとの吸収

(1) 目的

前章までの実験により、与えたアミノ酸の種類によっ

て、イネ幼植物の生育には大きな差が生じることが明ら

かとなった。根から取り入れられたアミノ酸が、植物生

育の養分となるためには、無機態窒素のように細胞膜を

通して植物体内に取り込まれ、代謝される必要がある。

本節では、異なる種類のアミノ酸を 3段階の濃度で吸収

させたときの溶液の減少量や吸収量について検討を行う

こととした。供試するアミノ酸は、第三章より、無機態

窒素より生育が促進されたグルタミン、アラニン、生育を

阻害したセリン、パリン、およびアラニンの光学異性体

のD-アラニンを用いた。

(2) 試験方法

供試作物はイネ (Oryzasativa L. 日本晴)を用いた。

種子サンプルは籾殻を外した玄米を5%次亜塩素酸ナト

リウムと 1% tritonXの混合液で 15分振とうし、新しい

溶液と交換する操作を 3回繰り返し行った。この滅菌操

作後、滅菌水で完全に溶液が置換できるまで洗浄したも

のを寒天に播種し、 280

Cで3日間保温して発芽させた。

121 OC、20分の熱加圧処理した窒素成分抜き改変木村

氏 B液 25rneを50rne遠沈管に分注し、発芽種子を 1個

体移植した。この遠沈管4本を組織培養用プラントボッ

クス (60mm x 60 mm X 100 mm) に入れ、同型のプラン

トボ、ックスを上からかぶせて密封し、無菌栽培した。人

Page 45: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

第2号福島県農業総合センター研究報告64

(FLA-5000,富士写真フィルム)で画像の読み出しを行っ

た。得られた画像を、画像解析ソフト(ImageGauge,

富士写真フィルム)により、植物体の各部位における輝

度値を測定し、 14Cの地上部および地下部における分布

量を算出した。

工気象器にて、温度 280

C、明期 18/暗期 6時間で移

植後 6日間栽培した。 7日目に、窒素成分抜き改変木村

氏 B25 rnQに14C放射性同位体元素(全て 2.5kBq/rnQ)

で標識した下記の各アミノ酸を用いて、窒素濃度が 25、

100、1000μMとなる溶液に交換し、吸収試験とした。

試験結果と考察

A アミノ酸の種類による吸収量について

溶液中の 14Cアミノ酸の減少量を図 5-2-1に、植物価

体当たりの吸収量を図 5-2-2に示した。

水耕液のアミノ酸濃度はいずれの種類のアミノ酸でも減

少しており、また 14Cアミノ酸の添加量は濃度によらず

一定としたため、窒素濃度が薄いほど 14C_アミノ酸の減

少率は多かった。

24時間後の吸収量は、窒素濃度によらず、 L-グルタ

ミン、L-アラニン、Lーセリン >>L-ノfリン、D-アラニンで、あっ

た。第三章の結果から、生育良好なアミノ酸としてグルタ

ミン、 Lアラニン、生育を阻害するアミノ酸としてセリン、

パリン、 D-アラニンを供試したが、セリンを除くと、生

育が良好で、あったアミノ酸(グルタミン、 L-アラニン)の

吸収量が、生育を阻害するアミノ酸(パリン、 D-アラニン)

よりも多い結果が得られた。

(3) 14C_Lーグルタミン 14CO(NH2) 14CH214CH214CH (NH2) llCOOH

l'IC_L_アラニン 14CHtCH (NH2) 14COOH

14C_Lセリン 14CH20H14CH (NH2) 14COOH

14C_Lーパリン 14CH e,ICH3) tCH (NH2) 14COOH

14C_D_アラニン 14CHtCH (NH2) 14COOH

経時的(試験開始初期は 30分)に 24時間後まで

溶液を 50μl採取し、液体シンチレーションカクテル

(MicroScint -40 TM,パーキンエルマー)を 150μl添加後

よく撹j宇して、マイクロプレートシンチレーションカウンタ

( 1450 MicroBeta Trilux,パーキンエルマー)で溶液

中の 14Cを測定して、水耕液からのアミノ酸の減少率を

算出した。なお、試験期間中の蒸散による溶液減少に

伴う濃縮は、水耕液の重量測定後の計算により補正し

た。また、 3、12、24時間目にイネ幼植物を採取し、地

下部を 1M CaC12液で 30秒ずつ 3回洗浄した後、イ

メージングプレート(富士写真フィルム以下 IP)にコンタ

クトした。 3日間冷凍庫内でヨンタクトした後、スキャナー

率存残の

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1.0

Page 46: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究65

B オートラジオグラフィー像

3、12、24時間吸収後のイネ幼植物のオートラジオグ

ラフィー像と、 24時間吸収後のオートラジオグラフィー像

から求めた地上部と地下部の輝度値を図 5-2-3(窒素濃

度 25μM)、図 5-2-4(窒素濃度 100~M) 、図 5-2-5 (窒

素濃度 1000μM)に示した。 24時間後の輝度値は、窒

素濃度 25μMでは、セリン、パリン>>D-アラニン、 L-

アラニン、グルタミンとなり、 100μMでは D アラニン、

パリン>>セリン>しアラニン、グルタミン、 1000μMで

はノ〈リン>セリン >D-アラニン>グルタミン、 L-アラニ

ンとなった。濃度が低いと地下部の割合が高く、濃度が

高くなる程、地下部の割合が低下し、吸収したアミノ酸

を地上部への移行量が多くなっていた。

C 考察

図5-2-3~ 5のオートラジオグラフィー像は、 14C で標

識したアミノ酸の吸収実験後のイネ幼植物体内 14C の分

布図である。水耕液中の 14C減少量と植物体内に取り込

んだ 14Cとは当然相関があると考えられたが、オートラ

ジオグラフイー像から求めた輝度値と減少量を比較する

と、減少量と輝度値が比例しておらずLグルタミンやし

アラニンなどの吸収量が多いアミノ酸の輝度値が低いと

いう結果が得られた。これは、吸収されたアミノ酸が代

謝され、早期に分解されて、 14Cが植物体外へ放出され

ていることが要因と推測された。吸収したアミノ酸が速

やかに代謝されれば、アミノ酸として吸収した窒素や炭

素は他のアミノ酸やタンパク質、有機酸などに変換され、

炭素の一部は呼吸により体外へ放出される。つまり、グ

ルタミン、 L-アラニンの吸収量は多いが、植物体内で円

滑に代謝されるため、代謝および呼吸により二酸化炭素

として体外に放出される 14Cも多くなり、オートラジオグ

ラフイー像では輝度値が低くなったのではないかと考えら

れた。 一方、パリン、 D-アラニンは植物体内に吸収は

されるが、代謝されにくいため、 14Cは体内に蓄積する理

由で、吸収量が少ないにも関わらず輝度値が高い結果と

なったと推測された。

そこで、 15N、13C_二重標識アミノ酸を用いて、第三節

では吸収したアミノ酸態窒素と炭素の植物体地下部と地

上部への分配、利用について、第四節ではアミノ酸吸収

後の植物体内の遊離アミノ酸の組成と代謝について、さ

らに詳細に検討することとした。

2.0E+06 r 24時間-地上

・地下

1.6E+06

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ω仏)坦幽援

O.OE+OO

D-Ala L-Ala L-Gln L-Val L・Ser

図5・2-3 25μMアミノ酸を吸収させたイネ幼植物のオートラジオグラフィー像 (3,12,24時間後)および地上・地下部の輝度値 (24時間後)

45

Page 47: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

66 福島県農業総合センター研究報告 第2号

8.0E+05

1.0E+06 I 24時間

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(匂凶・」

ω仏)煙組慰

O.OE+OO

D-Ala L-Ala L-Gln L・Val L-Ser

図5・2・4 100μMアミノ酸を吸収させたイネ幼植物のオートラジオグラフィー像 (3,12,24時間後)および地上・地下部の輝度値 (24時間後)

9.0E+04 124時間-地上

・地下

O.OE+OO

D-Ala L-Ala L-Gln L-Val L-Ser

図5・2・5 1000μMアミノ酸を吸収させたイネ幼植物のオートラジオグラフィー像 (3,12,24時間後)

および地上・地下部の輝度値 (24時間後)

46

Page 48: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究67

第三節 直接吸収したアミノ酸の構成窒素および炭素

の地下部から地上部への移行およびアミノ酸

から得られるエネルギーについて

(1) 目的

前節では 14C_アミノ酸を用いて、アミノ酸の吸収量お

よび吸収したアミノ酸の植物体内分布を検討した。その

結果、吸収量(溶液の減少量)と、オートラジオグラフィー

像の輝度値による吸収実験後の植物体内の存在量が一

致しないことから、炭素 e4C)成分が植物体から放出し

ていることが示唆された。放出された炭素を植物体内で

の呼吸による二酸化炭素の放出と考えれば、呼吸により

植物はエネルギーを獲得していると考えられる。したがっ

て、吸収されたアミノ酸の炭素の減少量からエネルギー

の獲得量を算出できれば、アミノ酸の直接吸収の意義が

高まる。

また、吸収されたアミノ酸態窒素の植物体内での分布

についても、アミノ酸を窒素源として考えたときには大変

興味深い課題である。無機態窒素形態でも体内分布の

相異があり、アミノ酸態窒素の分布も無機態窒素と比べ

て異なることが予想される。

そこで、異なる窒素形態(グルタミン、アラニン、パリン、

塩化アンモニウム)の窒素を安定同位体二重標識アミノ

酸として与えた後の植物体地上部と地下部の標識窒素お

よび

(2) 試験方法

供試作物はイネ (Oryzasativa L.日本晴)を用いた。

第一節と同様な種子滅菌を行った後、発芽した種子を無

窒素の改変木村氏B液で6日間無菌的に水耕栽培した。

7日目に、生育の揃ったイネ幼植物を供試溶液に移植し、

生育時と同じ人工気象器内にて 24時間明条件での吸収

実験を行った。供試溶液は、窒素成分抜き改変木村氏

B 液 25mQに、以下の 15N,13C_二重標識安定同位体アミ

ノ酸e5N,13C98 atom%、昭光通商)と 15N_安定同位

体塩化アンモニウム e5N98 atom%、昭光通商)を、窒

素成分で 25μM、100μM、1000μMとなるように添加し

た。

(u-) 15N,13C_Lーグルタミン

13CO e5NH2) 13CH213CH213CH e5NH

2) 13COOH

(u-) 15N,13C_L_アラニン

13CH313CH e5NH2) 13COOH

(u-) }5N,13C_L_バリン

13CH e3CH3) 213CH e5NH2) 13COOH

15N_塩化アンモニウム 15NH4Cl

吸収実験後、植物体を回収し、氷冷水で、30秒ずつ3

47

回根を洗い、地上部と地下部に分離し 800Cで一昼夜乾

燥させ乾燥重を測定した。試料を 2mQエッベンチューブゃ

に入れ、液体窒素で凍結しながら、ベッセルにて微粉砕

した。安定同位体比の測定は、粉砕サンプルを約 3mg

ずつスズカプセルに包み、同位体比質量分析装置 (Delta

V, Thermo Fisher Scientific K.K.)にて、 atom%15N

(l5N/ (l4N+15N))、atom%13C (l3C/ e2C+13C))を測定

した。同位体標識アミノ酸(グルタミン、アラニン、パリ

ン)および、同位体標識塩化アンモニウムを吸収した試料

のatom%15N (または atom%13C)から、通常のアミノ

酸および塩化アンモニウムを吸収した試料の atom%15N

(または atom%13C) を引き、 atom% 15N excess (また

はatom%13C excess) とした(以後 atom%15Neまたは

atom% 13Ceと表記)。植物中の全窒素(または全炭素)

量と atom%15Ne (または atom%13Ce)から、吸収した

窒素(またば炭素)量 (μmol)を算出し、地上部/地

下部比、 13Cei5Ne比を求めた。

また、より長期間アミノ酸を吸収させた時の代謝の追

跡を行うため、イネを発芽後、窒素濃度 1000μMの安

定同位体標識アミノ酸及び塩化アンモニウムを用いた水

耕液で 6日間無菌的に水耕栽培した。長期的な吸収で

栽培後イネ幼植物の atom%15N (または atom%13C)が

高くなり、同位体比質量分析装置の測定範囲を超えるこ

とが予想されたため、安定同位体アミノ酸は1/10とし、

残りは通常のアミノ酸を用い溶液を作成した。抽出、測

定は上記と同様に行った。

さらに、 6日間生育したイネ幼植物の結果から、吸収

したアミノ酸から得るエネルギーについて、次の二式を

用いて評価した。一つ目は、植物の生育量は光合成量と

呼吸量のバランスで決まるとする (Tanakaet al. 1968)

次式で示される成長効率 (GrowthE伍ciency,GE) を

用いた。

GE= Ll W/ (Ll W+R)

Ll W:一定期間内における乾物増加量 (mg)

R:呼吸量 (mgC02)をグルコース量に換算

(CH20/C02の比 0.68を乗じる、 mgCH20)

なお、作物め生育期における生長効率は 60~ 65%と

されている (Yamaguchi 1978)。本節では GEを0.6と

し、栽培後の乾物重から得られる呼吸量(成長に必要

な呼吸量)に対し、アミノ酸の分解(植物体内からの炭

素の減少量)で生じる呼吸量を評価した。

二つ目は、植物体を構成する各種成分を、グルコース

より生合成する効率について、生化学的な代謝系に基づ

いて試算された生産効率 (productionvalue , PV)を用

いた (Penninget al. 1974) 0 PVはグルコース 19からの

合成量とされ、タンパク質、脂肪、炭水化物で、それぞ、れ

0.40g、0.33g、0.83gである。この考えに基づき Sinclair

Page 49: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

68 福島県農業総合センター研究報告 第2号

et al. (1975)は、 19のグルコースから、イネでは 0.75g

の収穫部位が合成されるとしている。この PV値を用い

て、栽培後の乾物重をグルコース量に変換し、グルコー

スの合成に必要なエネルギーと、アミノ酸の分解から得

られる ATP量をエネルギーに換算して比較した。

なお、グルコースの合成には 12NADPHと18ATPを

必要とし、 NADPHの酸化と ATPの加水分解による自

由エネルギーがそれぞれ 220k]/mol、30.5k]/molから、

グルコース合成に必要なエネルギーは 3189kJlmolとし

た。また、グルタミン態の炭素はその炭素骨格から 2オ

キソグルタル酸 (C=5)、アラニンはピルビン酸 (C=3) と

して TCA回路に取り込まれるとした。 TCA回路 lサイ

クルで2分子の CO2と30分子のATPを生産するため、

炭素数5の2-オキソグルタル酸の分解は 2.5サイクjレ(70

ATPの生産)と仮定した。ピルビン酸の分解は、 TCA

回路に入る前に 3ATPが生産されるため TCA回路を含

めlサイクルで2分子の CO2と33分子のATPを生産し、

炭素数3のピルビン酸の分解は1.5サイクル (49.5ATP

の生産)と仮定した。パリンの TCA回路内での分解は

明確ではなかったため、炭素数から 2ーオキソグルタル

酸としてグルタミンと同様に計算した。

(3) 試験結果と考察

A 溶液の減少量とイネ幼植物の吸収量

表 5-3-1と図 5-3-1に水耕液からの 15Nと13Cの減少

量と植物の地上部と地下部の存在量を示した。 24時間

後の吸収量は、塩化アンモニウムで最も多く、パリンが

最も少なかったO 溶液の 15N減少量に対する植物の 15Ne

吸収量は、 85%以上でほぼ同じとなったが、 13Cの減少

量に対する植物の 13Ce存在量は、グルタミン、アラニン

では 38~ 47%、パリンでは 62~ 70%であり、窒素に

対してかなり低いものもあり、前節で示唆された植物体

から気体となり体外へ放出されていることが確認された。

B 植物体内 15Ne存在量から算出した 13Cの減少率

表 5-3-2に、植物体地上部と地下部の 15Ne存在量か

ら算出した 13Cの減少率を示した。 24時間吸収後のグル

タミンでは、水耕i夜濃度が低いと地下部の 13C減少率が

高く、吸収されたグルタミンの分解が主に地下部で行われ、

地上部への移行は少ないと推測された。 濃度が高くなる

と地上部、地下部とも 13C減少率が同様となったO アラニ

ンは、地上部での 13C分解が多かったO パリンは、地上

部に比べて地下部での減少率が高いが、グルタミン、アラ

ニンに比べると 13C減少率は低かったo 6日間生育したイ

ネ幼植物体でも、 24時間吸収後とほぼ同様な値となったO

C 植物体内の 15Ne,13Ce存在量と全窒素(炭素)

に対する 15NeC3Ce)比率 (Atom%)について

表 5-3-3に全窒素(炭素)に対する 15Nee3Ce) の比

率 (Atom%)を示し、図 5-3-2、図 5-3-3に地上部およ

び地下部の全窒素(あるいは炭素)量と 15Ne(あるいは

13Ce)量を示したO 植物体内の15Ne存在量は、各濃度とも、

塩化アンモニウム>>グルタミン>アラニン>パリンとなり、

13Ceの存在量は、パリン>>グルタミン、アラニンで、あった。

24時間吸収試験を実施したイネ幼植物の植物体全体

の全窒素に占める 15Neの割合 (Neatom%)は、塩化ア

ンモニウムの吸収区が高く、溶液濃度が 1000μMでは、

グルタミンカl16.1%、アラニンカl15.7%、パ、リンカl8.1

%に対して、塩化アンモニウムが 54.0%であった。発芽

から 6日間吸収試験を実施したイネ幼植物の植物体全体

の全窒素に対する 15Neの割合は、塩化アンモニウムが

71.9%、グルタミンカ王 61.2%、アラニンカl48.2%、ノてリ

ンが 27.0%であった。地上部と地下部の比較をすると、

25μMでは各条件とも、地下部が地上部より高かったが、

1000μMでは塩化ア.ンモニウムで、地上部が高くなり、各

アミノ酸ではほぼ同じ割合で、あったO

全炭素に対する 13Ceの割合 (Ceatom%)は、パリン

表 5・3-1 異なる濃度の 15N,13C_アミノ酸および15N・塩化アンモニウム溶液の 24時間後の

減少量とイネ幼植物体中の 15N,13C存在量

• 15N

分子中

の窒素数

NH;

Gln 2

Ala

Val

• 13c

分子中

の炭素数

NH;

Gln 5

Ala 3

Val 5

溶液 (25ml)中の15N量 15N_減少率 15N 減少量 15叫存在量 15N存在量/15N_減少量

25ml 100μM 1000μM 25!lM lOO!lM lOOO!lM 25μM lOO!lM 1000μM 25μM lOO!lM lOOO!lM 25!lM lOO!lM 1000μM

(μmol) (μmol) (μmol) (%) (%) (%) (μmol) (μmol) (!lmol) (!lmol) (!lmol) (!lmol) (%) (%) (%)

0.6 2.5 25.0 97 96 68 0.6 2.4 16.9 0.6 2.3 16.5 98 97 98

0.6 2.5 25.0 83 50 11 0.5 1.2 2.8 0.5 1.1 2.5 92 91 91

0.6 2.5 25.0 70 29 10 0.4 0.7 2.4 0.4 0.6 2.0 87 91 85

0.6 2.5 25.0 66 31 5 0.4 0.8 1.2 0.4 0.7 1.1 96 94 94

溶液 (25μmol)中の13c量 13仁田減少率 13仁一減少量 13仁ー存在量 13c一存在量/13仁ー減少量

25μM lOO!lM 1000μM 25μM lOO!lM lOOO!lM 25ドM lOO!lM lOOO!lM 25!lM lOO!lM lOOO!lM 25μM 100μM 1000μM

l!lmol) (!lmol) (μmol) (%) (%) (%) (!lmol) (μmol) (!lmol)μmol) (μmol) (μmol) (%) (%)怖)

1.6 6.3 62.5 83 50

1.9 7.5 75.0 70 29

3.1 12.5 125.0 66 31

11 1.3 3.1

10 1.3 2.1

5 2.1 3.8

QJ1tQU

6

7

i

0.6 1.4

0.5 1.0

1.3 2.7

EJ7'nU

4

4

7

00nU

「コ

バ守

A守

ζu

rO守

fro

••• 、,&「Jι

、コ

0000

「ぷ

、3

、3ro

48

Page 50: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究69

) 揖 100見

4日動 80弘e

15N 酬柑J牢 60% K t< t@ 40% tz, z

" 20%

官酬令草

日目Q z

.. 100唱

4n 圃h 80首Q

13C

4除4 時

60% 主主士重t@ 40% 4寂F

E舎園、 20%

策e 日目o

伺ヂー

25μM

図5・3-1 異なる濃度の 15N,13C_アミノ酸および 15N・塩化アンモニウム溶液の 24時間後の減少量に

対するイネ幼植物体中の 15N,13C存在量割合 (24時間後の減少量を 100とする)

表 5・3・2 異なる濃度の 15N,13C_アミノ酸および 15N・塩化アンモニウムを 24時間または 6日間吸収させた

イネ幼植物体内の 15N存在量から算出した 13Cの減少率

.24時間

15Ne 13Ce 13Cの減少率

窒素濃度 地上 地下 全体 地上 地下 全体 地上 地下 全体

(IJmol) (IJmol) (IJmol) (IJmol) {ぃmol) (IJmol) (%) (%) (%)

25μM NH: 0.36 0.23 0.59

Gln 0.18 0.30 0.48 0.29 0.32 0.61 36 56 49

Ala 0.12 0.26 0.38 0.15 0.37 0.52 57 53 54

Val 0.19 0.20 0.40 0.88 0.46 1.34 10 54 33

100μM NH: 1.59 0.74 2.33

Gln 0.59 0.54 1.13 0.79 0.59 1.38 46 57 51

Ala 0.30 0.35 0.65 0.34 0.66 1.01 62 36 48

Val 0.35 0.37 0.72 1.54 1.14 2.68 13 38 26

1000μM NH: 13.29 3.23 16.52

Gln 1.72 0.79 2.51 1.73 0.88 2.61 60 55 58

Ala 1.14 0.89 2.03 1.36 1.33 2.69 60 50 56

Val 0.41 0.69 1.09 1.48 2.16 3.64 27 37 34

.6日間

15Ne 13Ce 13仁の減少率

窒素濃度 地上 地下 全体 地上 地下 全体 地上 地下 全体

(μmol) (ドmol) (μmol) (IJmol) {ドmol) (IJmol) (%) (%) (%)

1000μM NH: 22.39 1.35 23.74

Gln 19.02 5.28 24.30 20.83 6.74 27.57 56 49 55

Ala 5.86 2.47 8.33 6.95 4.79 11.74 61 35 53

Val 1.42 0.30 1.72 5.08 0.91 5.99 28 40 30

49

Page 51: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

第2号福島県農業総合センター研究報告70

15N,13C_アミノ酸および 15N_塩化アンモニウムを 24時間または 6日間吸収させたイネ幼植物の

地上部と地下部の 15N,13Cの存在量表 5・3・3

1'CC/N 13Ce/15Ne

地よ地下全体地上/地下 地上地下全体地上地下全体地上地下全体

相mol) (~mol) (~mol) 同om則担tom同)(atom制

21.1 26.3 22.7

0.1 21.0 26.0 22.6

0.1 21.4 32.6 24.8

0.3 20.2 31.423.7

20.0 28.7 22.5

0.2 20.8 28.5 23.0

0.2 20.7 31.1 23.6

0.5 20.7 28.8 23.0

11.8 19.3 14.3

0.7 21.1 29.623.8

0.8 24.2 30.8 26.2

1.0 24.9 28.5 26.1

1.6 0.8 1.3

1.3 1.5 1.4

4.5 2.3 3.4

べ,色、3FLコ

nununu

tanURS

oon仏

9

4

9

••• AUnU

噌』

0.29 0.32 0.61

0.15 0.37 0.52

0.88 0.46 1.34

1.4 1.1 1.2

1.1 2.0 1.6

4.3 3.3 3.7

n“TRJno

nU

U

A

U

、441

l

A

μ

1.3

0.5

1.4

0.79 0.59 1.38

0.34 0.66 1.01

1.54 1.14 2.68

1.0 1.1 1.0

1.2 1.5 1.3

3.6 3.1 3.3

。。ミJnnu

nut-

l

0.7

0.5

0.6

QJnU7'

••• 咽

E

司』

nu

1.73 0.88 2.61

1.36 1.33 2.69

1.48 2.16 3.64

地上地下全体

何tom附加tomq首相tom帖)

1.7 3.0 4.3 3.4

0.7 1.4 4.8 2.5

0.5 1.0 6.1 2.5

1.0 1.7 4.5 2.6

2.3 11.9 14.8 12.7

1.1 4.0 10目8 6.0

0.9 2.3 9.0 4.2

1.1 2.5 8.0 4.1

4.2 57.9 46.2 54.0

2.1 14.0 20.7 16.1

1.3 10.9 27.0 15.7

0.6 4.0 16.6 8.1

15Ne

地上 地下全体地土地下

l~mol)加mol) (~mol)

0.36 0.23 0.59

0.18 0.30 0.48

0.12 0.26 0.38

0.19 0.20 0.40

1.59 0.74 2.33

0.59 0.54 1.13

0.30 0.35 0.65

0.35 0.37 0.72

13.29 3.23 16.52

1.72 0.79 2.51

1.14 0.89 2.03

0.41 0.69 1.09

乾物霊

地上地下全体

(mg) 川副 (mg)

NH: 8.7 3.7 12.4

Gln 9.4 4.5 13.8

Ala 8.9 3.9' 12.8

Val 8.2 3.8 12目。

NH: 9.3 3.8 13.1

Gln 10.1 4.2 14.3

Ala 9.1 3.5 12.6

Val 9.5 3.8 13.3

1000μM NH: 9.5 4.8 14.3

Gln 8.9 4.1 12.9

Ala 9目o 3.8 12.9

Val 9.2 4.4 13.7

.24時間

窒素濃度

25~M

100μM

13仁 C/N 13Ce/15Ne

地上地下全体地土地下 地上地下全体地上地下全体地土地下全体

(~mol) (~mol) 相mol) (atom帖)(atom%) (atom%)

11.8 16.8 12.3

6.2 10.7 16.9 12.5

3.4 18.3 25.8 21.0

6.8 13.9 23.7 16.3

15Ne

地上地下全体地上l地下 地上地下全体

(~mol)加mol) (~mol) (a旬m%)(atom帖)(atom帖)

22.39 1.35 23.74 17.7 74.9 48.3 71.8

19.02 5.2824.30 4.5 62.7 61.0 61.2

5.86 2.47 8.33 2.7 48.0 48.7 48.2

1.42 0.30 1.72 4.8 28.3 23.1 27。

乾物重

地上地下全体

(mg) (mg) (mg)

12.0 1.6 13五

11.1 4.7 15.8

8.1 4.6 12.7

2.4 0.8 3.2

.6日間

窒素濃度

1.1 1.3 1.1

1目2 1目9 1.4

3.6 3.1 3.5

4.8

3.6

3.0

。。、,ι

t白

6

1

a

7'守

'au

--・

3

3

τ

l

p

、J

20.83 6.74 27.57

6.95 4.79 11.74

5.08 0.91 5.99

1000~M NH:

Gln

Ala

Val

口14N

• '5N

35 6日間

O

NH4+

O 25 E

品20

刑事3出 15Q 積 104 幸司 5

35 124日寺間

ち 25 トE 1 M岡山脈 1

3区15Q 話 104 2雪 5

地上部

口14N

• '5N 1

6日間

2lM

一DEュ酬機酬Q横い雲

9 : 24日寺間

地下部

異なる濃度の 15N,13C_アミノ酸および 15N・塩化アンモニウムを 24時間または

6日間吸収させたイネ幼植物の地上部、地下部の窒素量

50

図ふ3-2

Page 52: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究71

初of24時間350

300 「ー

地上部

o I一ε250 f I一三

県200

ぎ叩雪100

2聖 50

「ーー

「ー 「ーー「ーー

400 口12N

• 13N 6日間

350

300 「一一

r- ,.., ハ

U

n

u

n

υ

U

U

5

0

5

0

5

η

4

n

d

L

4

1

1

1

l

一OE』ユ刷機おQ措吋望

[ 「一ー

o 附 +|GLIAla|vallN叫 toolJIvall 。

NH4+

180

160 24時間

地下部

ち 40 f,-E 晶20

1勝。。思80

世60

2号40

20

「ー

戸ー-, rーー r-「ーー

「ー一「ーー

180

160

ち140E

〔品120

1牒100

g80

世60

震 40

口12N

• 13N 6日間

「ーー

「ー

20

0

附 |GILlJla|va1|附 IG山aI Val同lTLolJ|vall

図 5-3・3 異なる濃度の 15N,13C_アミノ酸および 15N・塩化アンモニウムを 24時間または 6日間吸収させた

イネ幼植物の地上部、地下部の炭素量

を吸収したイネ幼植物で高く、溶液濃度が 1000μMの

全体では、グルタミンが0.7%、アラニンが 0.8%、パリ

ンが1.0%であった。発芽から 6日間吸収試験を行った

イネ幼植物では、グルタミンが6.2%、アラニンが 3.4%、

ノfリンカ宝6.8%で、あった。

D 植物体内の 15Ne,13Ce存在量と全窒素(炭素)

に対する 15NeC3Ce) 比率 (Atom%)について

表 5-3-3に全窒素(炭素)に対する 15Nee3Ce) の比

率 (Atom%)を示し、図 5-3-2、図 5-3-3に地上部およ

び地下部の全窒素(あるいは炭素)量と 15Ne(あるいは

13Ce)量を示した。植物体内の 15Ne存在量は、各濃度とも、

塩イ七アンモニウム>>グルタミン>アラニン>パリンとなり、

13Ceの存在量は、パリン>>グルタミン、アラニンで、あった。

24時間吸収試験を実施したイネ幼植物の植物体全体

の全窒素に占める 15Neの割合 (Neatom%)は、塩化ア

ンモニウムの吸収区が高く、溶液濃度が 1000μMでは、

グルタミンが 16.1%、アラニンが 15.7%、パリンが8.1

,%に対して、塩化アンモニウムが54.0%であった。発芽

から 6日間吸収試験を実施したイネ幼植物の植物体全体

の全窒素に対する 15Neの割合は、塩化アンモニウムが

71.9%、グルタミンカ宝61.2%、アラニンカ'48.2%、ノtリ

ンが27.0%で、あった。地上部と地下部の比較をすると、

25μMでは各条件とも、地下部が地上部より高かったが、

1000μMでは塩化アンモニウムで、地上部が高くなり、各

アミノ酸ではほぼ同じ割合で、あった。

全炭素に対する 13Ceの割合 (Ceatom%)は、パリン

を吸収したイネ幼植物で高く、溶液濃度が 1000j.lMの

全体では、グルタミンが0.7%、アラニンが0.8%、パリ

ンが1.0%で、あった。発芽から 6日間吸収試験を行った

イネ幼植物では、グルタミンが6.2%、アラニンが3.4%、

パリンが6.8%で、あった。

E 15Ne、13Ceの地上部/地下部比について

表 5-3-3、図 5-3-4、図 5-3-5にイネ幼植物体内の

15Ne、13Ceの吸収量と地上部と地下部の分布を示した。

また、図 5-3-6に15Ne,13Ceの地上部/地下部比を示した。

15Nの地上部/地下部比を塩化アンモニウムとグルタミ

ンを吸収したイネ幼植物で比較すると、溶液濃度が高く

なるに伴い地上部/地下部比は高くなり、十分量の窒素

を根に吸収すると積極的に地上部へ輸送していることが

わかる。同濃度の溶液で比べると、塩化アンモニウムの

地上部/地下部比がグルタミンより高かった。このことか

ら、植物根へアンモユムイオンとして吸収した窒素は、地

下部で蓄積せず、積極的に地上部へ送られていることが

わかる。植物体全体の吋¥Je存在量が同程度 (25μMの

塩化アンモニウムと 100j.lMのグルタミン、 100μMの塩

化アンモニウムと 1000μMのグルタミン)で比較しても、

塩化アンモニウムの地上部/地下部比がグルタミンより高

かった。発芽から 6日間長期的な吸収試験を行ったイネ

51

Page 53: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

第2号福島県農業総合センター研究報告72

口地上部

圃士也下部

100出

80~色

60%

40%

20%

zmp

口 I也よ昔日

園 地 下 部

14000

12000

10000

8000

6000

4000

2000

一OECUZm-

Var 0%

Ala

窒素濃度 1000μMの15N,13C_アミノ酸および 15N_塩化アンモニウムを 24時間吸収させた

イネ幼植物における全 15Neの地上部と地下部の分布

Ala GI円NH4 Var Gln NH4+

図 5・3・4

2000

-4000

100%

80%

60%

40%

20%

202

U 地上部

圃 1也下昔.~

3000

2000

1000

-1000

-2000

-oECO門戸

Var

0%

Ala Var

窒素濃度 1000μMの15N,13C_アミノ酸および 15N_塩化アンモニウムを 24時間吸収させた

イネ幼植物における全 13Ceの地上部と地下部の分布

Ala Gln NH4 Gln NH4

-3000

図 5・3・4

6日間16

14

4

12

10 z 乙 8匡

ゐ 6

園 Val-:Ala .Gln 口NH4+24時間5

4

q

J

u

n

ζ

(ZE)匡

¥ω

15N

2

。O

1000 μM 1000μM 100μM 25μM

6日間6

4

。dn

,ι

(O門戸

)

¥ω

5

圏 ValヨAla圃 Gln己NH4+i 24日寺聞3

2

(OE)匡

¥ω

13C

1000μM

。25μM 100μM

異なる濃度の 15N,13C_アミノ酸および 15N・塩化アンモニウムを 24時間または 6日間吸収した

イネ幼植物の 15N、13C存在量の地上部/地下部比

52

1000 μM

O

図 5-3・6

Page 54: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究73

幼植物では、塩化アンモニウムの地上部/地下部比が

17.7、グルタミンでは 4.5で、あった。

アミノ酸間の 15Neの地上部/地下部比を比較すると、

グルタミンとアラニンは溶液の濃度が高くなるに伴い地上

部/地下部比は高くなるが、パリンは低下した。同濃度

の溶液では、 100μMまでは地上部/地下部比は同程度

であるが、 1000μMではグルタミン、アラニンは高く、パ

リンは低くなった。良好な生育を示すグルタミン、アラニ

ンの窒素は、地上部へ盛んに輸送され、積極的に窒素

源として利用されていることが示唆されるのに対し、生

育が悪いパリンは地下部で蓄積することが示された。発

芽から 6日間吸収試験を行ったイネ幼植物で、は、ほぼ同

等で、あった。

13Ceの地上部/地下部比については、 24時間吸収試験

ではグルタミン、アラニンで、は溶液の濃度が高くなるに伴い地

上部/地下部比は高くなり、パリンでは低下した。発芽から

6日間吸収試t験を行ったイネ幼植物で、は、パリンが高かった。

窒素と炭素の地上部/地下部比を比較すると、グルタ

ミンとアラニンは同等の値であるが、パリンは炭素の地

上部/地下部比が窒素より高かったO

以上のことから、グルタミンやアラニンでは、アミノ酸

を吸収した後、その炭素部分は、前節で 14Cを付加した

実験結果が示すように、一部は地下部で呼吸で消費し、

一部はアミノ酸などの形態で地上部へ輸送していること

がわかる。パリンは代謝が進んで、いないと推測された。

F C/N比および13Cei5Ne比

表 5-3-3と図 5-3-7、図 5-3-8にC/N比および 13Ce/

15Neを示した。 24時間吸収試験の C/N比は、地上部、

地下部とも 1000μMのアンモニアで低下した。

13Ce;I5Ne比は、溶液濃度にかかわりなく、グルタミン、

アラニンで 0.8~2.0 と低く、パリンでは 2.3~4.5 と高かっ

た。これは、各アミノ酸の C/N比(グルタミン :2.5、アラ

ニン :5、パリン :5)に対する植物中の13Ce/15Ne比が、グ

ルタミンが40~ 52%、アラニンが26~32%、パリンが

66 ~ 74%と、パリンがアミノ酸の C/N比に近く、代謝が

ほとんどすすんでいないことが示唆された。また、地上部

と地下部を比べると、グルタミンは 100μMまでは地上部、

アラニンは地下部、パリンは地上部が高かった。

G 生長効率 (GE)より呼吸量の算出

表 5-3-4と図 5-3-9に吸収されたアミノ酸から得るエネ

ルギーが生育に必要な全エネルギーに対しどの程度のもの

になるかを算出するため、 GEを用いて呼吸量からの試算

を行ったo6日間グルタミンを与えて生育したイネ幼植物の

乾物重の増加量は 15.8mgで、 GE値を 0.6とすると、呼

吸量 (R) は15.5mgC02となる。一方、吸収されたグル

タミンの代謝により放出された 13C量は 33μmolで、これ

は1.5mg CO2に相当する。したがって、吸収されたグル

タミンから得た呼吸量は、生育に必要な呼吸量の 9.4%に

相当している。また、グルタミンから得られた呼吸量を引

いた呼吸量(13.9mg CO2) は、アンモニアでL生成したイ

ネ幼植物の呼吸量は 13.3mg CO2とほぼ同等となった。

同様に吸収されたアラニンとバリンから得た呼吸量は

生育に必要な呼吸量の 4.7%、3.7%に相当した。

30 24時間

口 NH4+ ・Gln 口 Ala 圃 Val30 16日間

25 25 z z

地 020

E吋

上 G

昔日 指震4 1 5 15

10 10

5 5

o o 25μM 100μM 1000 μM 1000μM

ロNH4+ ・Gln 口 Ala 圃 Val 35 16日間

30 30

2、tJ

Z、25 225

地、g、20

下 G20

吉E 話宮}ι聖4山E 績雲lι 15

10 10

5

口 o 25μM 100μM 1000 μM 1000 μM

図 5-3・7 異なる濃度の 15N,13C_アミノ酸および15N・塩化アンモニウムを 24時間または 6日間吸収させた

イネ幼植物の地上部と地下部の C/N比

53

Page 55: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

第2号福島県農業総合センター研究報告74

6日間

主4

、、33 G 罰百 2

ベ幸司

国 Val口Ala圃 Gln口 NH4+

24時間

A斗

q

u

q

'

ι

ZE¥由02Q指叶智

地上部

o 1000μM 1000 μM 100μM 25μM

6日間

3

2

1

ωZ笠通PFQ信件費

函 Val口Ala圃 GlnロNH4+

24日寺間4

q

J

u

q

4

咽目

Z凶戸

¥ωOEQ蹟υ「却材

地下部

o 25μM 100μM 1000μM

異なる濃度の 15N,13C_アミノ酸および 15N-塩化アンモニウムを 24時間または

6日間吸収させたイネ幼植物の地上部と地下部の 13Cei5Ne比

1000 μM o

図5・3・8

量ギ

口刷町一る

門lU帥

間一ら

lllU帥酌ノ

I1111UMm

m

m

m

o

(づ)酬採訪剛安川一田川明

kc又吸のhm可

門Uw樹幼

[I111U帥件た

問111ι仙問彊

円Ill-UM閑

8

6

4

2

0

8

6

4

2

0

向。

E)

酬ND口昌剛安川一抑制

圃吸収されたアミノ酷から得られる熱量I光合成から得られる烈量 l 500

図5-3-9

を用いて二酸化炭素量として算出)吸収されたアミノ酸から得られるエネルギーの試算(生長効率 (GE)

血豆0,)

13.3

15.5

12.5

3.1

呼吸量.

-生育に必要な呼吸量の算出

乾物重窒素源

(mg) (mgCH,O) NH; 13A 9~ Gln 15.8 10.5

Ala 12.7 8.5

Val 3.2 2.1

誕生長効率 GE=W/(W+R)、GE=0.6(Yamaguchi 1978)

表 5-3-4

仁0,放出量

(mg)

1.5

0.6

0.1

-吸収されたアミノ酸の分解から放出される二酸化炭素量

植物体内存在量 炭素の1SN 13C 減少量神

(iJmol) (iJmol) (iJmol)

Gln 24.3 27.6 33

Ala 8.3 11.7 13

Val 1.7 6.0 3

植物体存在窒素量よりアミノ酸の仁川比 (Gln;2.5、Ala;3、Val;5lから算出

窒素i原

吸収されたアミノ酸

から得る呼吸の割合

(%)

54

nι寸

J

-

-

-

nツn斗

(mgCO,)

13.3

14.0

11.9

3.0

-吸収されたアミノ酸の分解で生じる呼吸量の生育に対する割合

生育に必要な 吸収されたアミノ酸の

呼吸量 分解で生じた呼吸量

(mgCO,) (mg仁0,)

13.3

15.5

12.5

3.1

rコrO咽

1

•• τlnunu

窒素源

+

A匂

nH

dEHH

G州

Page 56: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究75

H 生産効率 (PV)よりエネルギー量の算出

表5-3-5と図 5ふ9に吸収されたアミノ酸から得るエネ

ルギーが生育に必要な全エネルギーに対しどの程度のもの

になるかを算出するため、 PV値からも試算を行った。 6日

間グルタミンで生成したイネ幼植物の乾物重増加量は 15.8

mgであり、これは PV値を 0.75とすると、 117μmolのグルー

コースがこの生育には必要となる。

グルコース l分子の生合成には、下記のように 18分

子の ATPと12分子の NADPHが必要である。

6C02 + 12H20 + 18ATP + 12NADPH

→ C6H1206 + 6H20

ATPの加水分解と NADPHの酸化による自由エネ

ルギーがそれぞれ 30.5可Imol、220kJlmolから、グ

ルコース合成に必要なエネルギーは 3189kJ/molとなり、

117μmolのグルコースを生合成するためには熱量として

373Jのエネルギーが必要である。

一方、炭素の減少量から吸収されたグルタミンの 55%が

分解されていることから、グルタミンの炭素骨格 (2-オキソ

グルタル酸、 C=5)の分解が全て TCA回路内と仮定する

と、 TCA回路1サイクルで 2分子の CO2と30のATPが

放出され、 2.5サイクルを要し、 498μmolのATPが生産さ

れたことになる。 ATPの加水分解による自由エネルギーが

30.5kJ/molから、熱量として 15Jとなる。したがって、熱

量(J)換算で乾物量増加に必要なグルコースを生産するた

めに必要なエネルギーを算出すると、吸収したグルタミンの

炭素部分から供給されるエネルギーの寄与率は4.1%であ

る。また ATP換算で算出するため、呼吸鎖の計算を適用

し、 NADPH1分子がATP3分子に相当すると仮定すると

グルタミン供給のエネルギーの寄与率は7.9%で、あったO

いずれもGEよりは低い値となったが、このPV値の計

算から新たに見えてきたこととして、グルコースをはじめ

とする同化産物の生合成には膨大なエネルギーが必要

であり、グルコースの合成(l8ATP+ 12NADPH)には

100のエネルギー (3189kJ/mol)の投入が必要だとする

と、できたグルコースの完全分解(グルコース l分子か

ら36分子の ATPを生産)ではわずか 30のエネルギー

(1098kJ/mol) しか取り出せないということである。地上

部で生産される同化産物はこの計算からわかるとおり非

常に貴重であり、地上部から送られてくる同化産物をアミ

ノ酸合成時に必要としないアミノ酸を直接吸収する経路

は植物にとってきわめて有益なものであるといえよう。吸

収したアミノ酸の代謝から得られるエネルギーに加え、

本来無機態窒素の固定に使用するはずの同化産物のエ

ネルギーを節約できることが植物の生育促進、特に根系

の発達を促進させて要因であると考えられる。

表 5・3・5 吸収されたアミノ酸から得られるエネルギーの試算(生産効率 (PV) を用いてエネルギーとして算出)

・生育に必要なエネルギーの算出 ・

グルコース グルコース生産に必要な乾物重

窒素源 換算. エネルギー ATP'-

{:mg) (Ilmol)υ(Ilmol)

NH: 13.6 101 321 5440

Gln 15.8 117 374 6324

Ala 12.7 94 301 5096

V'al 3.2 24 75 1276

.イネの附値沼.75(Sinclair et al. 1975)

**6CO,+12NADP判+18ATP→C,H120,+12NADP'+18ADP+18PiATPの加水分解に伴うエネルギー 30.5kJ/mol NADPHの酸化に伴うエネルギー 220kJ/mol

グルコース生産に必要なエネルギー 3189kJ/mol "・NADPHより3分子の凶TPが生産すると仮定

-吸収されたアミノ酸の分解から得るエネルギーの算出

植物体内存在量 炭素の

15N 13( 減少量‘ 減少割合

(μmol) μmol ) ドmol) (%)

Gln 24.3 27.・6 33 55

Ala 8.3 11.7 13 53

V~ u ~ 3 M

.植物体存在窒素量よりアミノ酸の仁IN比(GI町2.5,Ala;3、Val;5)から算出

"吸収されたアミノ酸がTCA回路で分解すると仮定 ATPの加水分解t<::伴うエネルギ:- 30.5kJ/mol

.吸収されたアミノ酸から得られるATPの生育に対する割合

生育に必要な吸収されたアミノ酸 些 吸収されたアミノ酸から得る

窒素源 エネルギー古ら得られたエネルギー z 熱量の割合 ATPの割合

υ)υ)υ(%) (%)

321 321

374 15 358

301 3 298

75 75

窒素源

分解された

アミノ酸

(Ilmol)

6.6

2.2

0.3

+4nnuiM

G

M杭

,J

,J00

4

1

a

アミノ酸の分解"に関する条件

TCA回路1サイウルで 分解1<:要する 1サイクルで

放出するC02 TCA回路のサイウI~数 生産されるATP

2.0 2.5 30.0

2.0 1.5 33.0

2.0 2.5 30.0

分解で生産

されたATP

(μmol)

498

109

19

ATPから得られる

エネルギー

(J)

15

3

。J

唱・H

R

J

7h

、4唱し

55

Page 57: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

76 福島県農業総合センター研究報告 第2号

l 考察

室素の吸収量は塩化アンモニウムがアミノ酸より多

かった。第四章第三節で求めたグルタミンの最大吸収速

度 (Vmax) は2.9μmol/g/h、アラニンは1.2μmol/g/h

に対して、アンモニウムの Vmaxが 3.4~ 12.8μmol/g/h

(Wang et al. 1993)や 216μmol/groot /h (Youngdahl

et al. 1982) と報告されており、アンモニウムの吸収速度

がアミノ酸より速く、窒素の吸収量も多いと考えられた。

アミノ酸聞の比較をすると、第二節と同様、吸収量はグ

ルタミン、アラニンで多く、パリンで、少なかったO

アミノ酸の吸収と代謝で特に重要であると考えられる

のは、7](耕液からの減少量と植物中の存在量は、 15Ne

ではほぼ同じ量になったが、 13Ceでは植物の存在量は減

少量より少なかったことである。これは、アミノ酸が吸

収された後の代謝により、窒素は植物体内で利用される

が、炭素の一部が呼吸経路を経て二酸化炭素として植

物外へ放出するため減少すると推察される。特に、グル

タミンやアラニンはパリンより減少量が多く、これはグル

タミンやアラニンでは代謝が円滑に行われ、二酸化炭素

としての放出量が多かったものと考えられる。つまり、ア

ミノ酸の炭素部分も呼吸の基質として利用され、アミノ

酸は植物に窒素源としての役割のみならず、エネルギー

源としても機能していることが示唆された。

そこで、、吸収されたアミノ酸から得られるエネルギー

を呼吸量やATPとして試算した。吸収されたアミノ酸が

グルタミンでは、グルタミンから得られるエネルギーは生

長に必要なエネルギーの 4.1~ 9.4 %に相当した。生育

に必要な全エネルギーからグルタミンの分解で得たエネ

ルギーを差しヲ|いた量は、アンモニアで生育したイネ幼

植物と同等になるため、グルタミンの代謝にはアンモニア

代謝に加えて余分なエネルギー消費がなく、グルタミンか

ら得られるエネルギーが、そのまま生育にプラスされた

と考えられる O

アラニンから得られるエネルギーはグルタミンより低く、

生長に必要なエネルギーの 3.2~4.7%に相当した。また、

生育に必要な全エネルギーからアラニンの分解で得たエ

ネルギーを差し百|いた量は、アンモニアで生育したイネ

幼植物よりわず、かに低かった。次節で詳しく検討するが、

アラニンは一度グルタミンへ代謝されてから分解されると

考えられ、そのためにエネルギーを若干消費したものと

考えられる。

一方、パリンは生育を阻害するアミノ酸であったが、

本節の結果からも、グルタミン、アラニンと比較すると炭

素の残存量が1.5倍以上であり、パリンを吸収してもイ

ネ幼植物は代謝しにくく、利用しにくいと考えられる。こ

れは、各アミノ酸の C/N比(グルタミン 2.5、アラニン :5、

パリン :5) に対する植物中の 13Ce/15Ne比が、グルタミ

56

ンが 40~ 52%、アラニンが 26~ 32%、バリンが 66

~74%と、パリンがアミノ酸の C/N 比に近く、代謝がほ

とんどすすんでいないことからも明らかである。また、第

二節で、グルタミンやアラニンの吸収量がパリンより多い

にも関わらず、オートラジオグラフィー像の輝度値はパリ

ンが高くなっており、このこともパリンの代謝されにくさ

が裏付けられる。したがって、植物はいずれの種類のア

ミノ酸でも吸収するが、吸収後の代謝過程の難易により、

窒素源として植物生育によい影響を与えるかどうかが決

まると考えられた。

グルタミンやアラニンとして供給した窒素の植物体内

の分布は、溶液濃度が同濃度および吸収量が同程度で

比較しても、塩化アンモニウムの窒素より地上への移行

割合が低かった。つまり、アミノ酸として吸収した窒素

は、塩化アンモニウムとして吸収した窒素より地下部に蓄

積する割合が高かったO アミノ酸はわずかであるが、炭

素も植物に供給している。 14C アミノ酸を用いて、第四章

第四節でリアルタイムオートイメージングや、第五章第二

節のオートラジオグラフイー像から、アミノ酸からf共給し

た炭素は特に根端に蓄積するが確認されている。窒素や

炭素の地下部での利用が、第二章で確認しているグルタ

ミンやアラニンで生育したイネ幼植物の旺盛な根系発達

につながったものと考えられる。グルタミンとアラニンの

13Ce/5Ne比を比較すると、 100j.1M まではグルタミンは

地上部が高く、アラニンは地下部が高い。 100μMまで

のグルタミンは、地下部で代謝されるものもあるが、一

部はグルタミンの形で地上へ移行していると考えられる。

アラニンは、アラニンのまま地上部へ移行する割合が少

なく、他のアミノ酸や有機酸へ代謝後移行されるため、

地上部の 13Ce/15Ne比が低くなるのではないかと考えら

れる。

第四節 異なる種類のアミノ酸ごとの代謝経路の遣い

(1) 目的

異なる種類のアミノ酸が植物生育に与える影響の違い

を検討するため、 15N,13C一安定同位体二重標識アミノ酸を

用いて、 24時間吸収後の植物体内遊離アミノ酸を定量

することでアミノ酸の代謝経路の推定を行った。供試し

たアミノ酸は、第三章で、イネ幼植物の生育が良好で、あっ

たグルタミン、アラニン、生育を阻害したパリン、および

対照として無搾態窒素(塩化アンモニウム)を用いた。

(2) 試験方法

供試作物はイネ (Oryzasativa L.日本晴)を用いた。

第五章第一節と同様に、種子滅菌を行った後、発芽した

種子を無窒素の改変木村氏 B液で 6日間無菌的に水耕

栽培した。 7日目に、生育の揃ったイネ幼植物を供試溶

Page 58: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

イ植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究

77

液に取換え¥生育時と同じ人工気象器内にて 24時間明

条件で吸収させた。供試溶液は、窒素成分抜き改変木

村氏B液 25mQに以下の15N,13C_安定同位体二重標識ア

ミノ酸 15N. 13C 98 atom%、昭光通商)と 15N_安定同位

体塩化アンモニウム(l5N98 atom%、昭光通商)を、窒

素成分で 25μM、100J-lM、1000J-lM となるように溶解し

た。

(u-) 15N,13C_L_グルタミン

13CO (l5NHz) 13CHz13CHz13CH (l5NHz) 13COOH

(u-) 15N,13C_Lアラニン

13CH313CH (l5NHz) 13COOH

(u-) _15N,13C_L_パリン

13CH (l3CH3) /3CH (l5NHz) 13COOH

15N_塩化アンモニウム 15NH4Cl

24時間後の吸収実験後、氷冷水で、 30秒ずつ 3回根

を洗い地上部と地下部に分離し、新鮮重を測定後、液

体窒素で凍結して 0.5mと5mm径ビーズの入ったエッペン

チューブ内に入れ、 80%エタノールを1mQ添加した。ビー

ズピーダーで破砕 (5000rpm、l分x3回)後、 600

C

にて 30分振とうを行い遊離アミノ酸を抽出した。遠心

(11500 rpm、10分)後、上澄みを遊離アミノ酸抽出液

として回収した。

第四章第二節と同様に、抽出液の誘導体化を行い、

液体クロマトグラム・イオントラッフ。型質量分析計(Finigan

LTQ, Thermo Fisher Scientific K.K.)でアミノ酸量と

拍出アミノ酸の質量分析を行った。

また、より長期的な吸収、代謝を追跡するため、イネ

を発芽後、改変木村氏 B~夜に塩化アンモニウム、グルタ

ミン、アラニン(窒素濃度 1000μM)を窒素源して、 6日

間イネ幼植物を無菌栽培し、-上記と同様に遊離アミノ酸

量を測定した。

(3) 試験結果と考察

A 遊離アミノ酸量とアミノ酸組成

表 5-4-1、図 5-4-1に、 15N一塩化アンモニア(窒素濃

度 1000μM)を24時間吸収したイネ幼植物の地上部と

地下部の遊離アミノ酸量とその組成を示した。遊離アミ

ノ酸量は、地上部、地下部とも吸収時間とともに増加し、

24時間後には実験開始時のアミノ酸量に比べて、地下

部で 16倍、地上部で 28倍となった。地下部では、遊

離アミノ酸の組成は吸収後3時間ではアンモニアイオン

カ宝増力日したカ宮、そのf麦、 グルタミン、アスノTラギン、 ア

ラニンが増加し、 24時間後では、グルタミンの割合が最

も高くなった。地上部では、グルタミン酸、アラニン、セ

リンが吸収後3時間から'増加し、 24時間後では、グル

タミンの割合が高くなった。

表 5-4-2、図 5-4-2に、 15N.13C_安定同位体二重標識

57

グルタミン(窒素濃度 25,100, 1000μM) を24時間吸

収したイネ幼植物の地上部と地下部の遊離アミノ酸量と

その組成を示した。窒素濃度が 25μMゃ100J-lMの遊

離アミノ酸量は、地上部、地下部とも、吸収後3時間後

には 0・時間後のアミノ酸量と比較してほぼ同じで、あった。

窒素濃度 1000μMでは、吸収後 3時間までは地下部で

遊離アミノ酸量が減少したが、吸収後 24時間には地下

部で約 2倍、地上部で約 6.5倍に増加した。遊離アミ

ノ酸の組成は、窒素濃度が 25μMゃ100J-lMでは、地

上部、地下部とも、 O時間と同じで、あった。窒素濃度が

1000μMの地下部では、アンモニアイオン、アスパラギン、

グルタミンが増加し、地上部では、グルタミン、グルタミ

ン酸、グリシンが増加した。

表 5-4目3、図 5-4-3に、 15N.13C_安定同位体二重標識

アラニン(窒素濃度 25,100, 1000μM) を24時間吸収

した地上部と地下部の遊離アミノ酸量とその組成を示し

た。窒素濃度が 25μMゃ100J-lMの遊離アミノ酸量は、

地上部、地下部とも O時間のアミノ酸量とほぼ同等で、あっ

た。窒素濃度 1000J-lMでは、吸収後 1時間までは地下

部で遊離アミノ酸量が減少したが、吸収後 24時間で地

下部で約 2倍、地上部で約 5倍となった。遊離アミノ酸

の組成は、窒素濃度が25μMや 100μMでは、地上部、

地下部とも O時間と同じだ、った。窒素濃度が 1000μM

の地下部では、アンモニアイオン、グルタミン、グルタミ

ン酸、アラニン、セリンが増加し、地上部ではグルタミン、

アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、セリンが増加

した。

表 5-4-4、図 5-4-4に、 15N.13C_安定同位体二重標識

パリン(窒素濃度 25,100, 1000μM) を24時間吸収し

た地上部と地下部の遊離アミノ酸量とその組成を示し

た。窒素濃度が25μMゃ100J-lMの遊離アミノ酸量は

地上部内地下部とも、0時間のアミノ酸量とほぼ同じで、あっ

た。窒素濃度 1000μMでは、吸収後3時間までは地下

部で遊離アミノ酸量が減少したが、吸収後 24時間には

地下部で約 2倍、地上部で約 4.5倍となったO 遊離アミ

ノ酸の組成は、窒素濃度が 25μMや 100μMでは、吸

収後24時間で地上部、地下部ともてロイシンが増加した。

窒素濃度が 1000μMの地下部では、アスパラギン、セ

リン、パリン、ロイシンが増加し、地上部では、グルタミン、

アスパラギ、ン酸、グルタミン酸、パリン、ロイシンが増加

した。

表 5-4田5、図 5-4-5 に、 15N一安定同位体塩化アンモ

ニア、 15N,13C_安定同位体二重標識グルタミン、アラニン、

パリン(窒素濃度 1000μM)で6日間生育した地上部と

地下部の遊離アミノ酸量とその組成を示した。遊離アミ

ノ酸量は、塩化アンモニウムを吸収させた地下部で約 6.4

倍、グルタミンで約 3.4倍、アラニンで約 2.4倍となり、

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第2号福島県農業総合センター研究報告78

他のアミノ酸への 15N,13Cの取り込みの質量分析

図 5-4-6に、 15N 塩化アンモニア(窒素濃度

1000μM) を24時間吸収した地上部と地下部の主な遊

離アミノ酸についてその質量分布を示したo15Nを窒素源

B 地上部では塩化アンモニウムで生育させたイネで約13倍、

グルタミンで約、 7.61音、アラニンで約 5.5倍;となった。

遊離アミノ酸の組成は、ほほ同じで、あったO

一計一一%州問問

mm州一U川町側到剛一附州一

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9h

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9h

1000μM NH/ 地下

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1000μM・塩化アンモニウムを 24時間吸収させたイネ幼植物地上部、地下部の遊離アミノ酸量

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58

表 5・4・2

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地上 Gln 25μM 3h

24h

24h

24h

24h

24h

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100μM

1000~M

100μM

図 5-4-1

Gln 地下

Page 60: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究79

700 I Glno地上部 140 r Gln-地下部

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120 600

500

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図5-4・2 異なる濃度のグルタミンを 24時間吸収させたイネ幼植物地上部、地下部の遊離アミノ酸量

表 5-4・3 異なる濃度の 15N,13Cーアラニンを 24時間吸収させたイネ幼植物の地上部、

地下部の遊離アミノ酸量およびアンモニアイオン量 (nmoll個体)部位 N源 濃度 時間 NH: Asn Gln Asp Glu Ala Ser @y Val Leu Thr Pro ~ ~ Tyr Met lIe ~ 言十

地上 Ala 25μM 3h 22 23 14 5 8 4 6 4 1 。 。 。 。。。。91

(25) (26) (16) (6) (9) (4) (7) (4) (1) 。(2) (0) (1) (0) (1) (0) (0) (0) (0) (100) 24h 25 19 13 3 3 2 3 3 。。 。。。。。。。。73

(34) (27) (18) (4) (5) (3) (4) (4) (0) (0) (1) 。(1) 仰) (0) (0) (0) (0) (0) (100)

lOOIlM 3h 22 21 19 8 13 5 7 3 1 。2 。 。。。 102

(22) (20) (18) (8) (13) (5) (7) (3) (1) (0) (2) (1) (1) (0) (1) (0) (0) (0) (1) (100) 24h 26 20 14 4 6 2 3 3 。。 。。。。。。。。80

(32) (24) (18) (5) (7) (3) (4) (4) (1) (0) (1) (0) (1) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (100)

1000llM 1h 13 49 2 2 14 。5 。。。。。。。。。。。87

(15) (56) (2) (2) (16) (0) (6) (2) (0) (0) (0) 。(1) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (100)

3h 72 20 4 27 102 28 58 9 。。。。2 。。。。。 322 (22) (6) (1) (8) (32) (9) (18) (3) (0) (0) (0) (0) (1) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (100)

9h 31 17 27 16 97 80 68 。。。。2 。 。。。 341 (9) (5) (8) (5) (29) (23) (20) (0) (0) (0) (0) (0) (1) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (100)

24h 58 14 89 46 122 63 81 10 2 2 。2 。 。2 492

(12) (3) (18) (9) (25) (13) (16) (2) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (100)

地下 Ala 25μM 3h 23 23 4 2 3 。。。。。。。。。。。59

(40) (39) (8) (1) (1) (2) (3) (5) (0) 。(0) 。(1) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (100) 24h 20 15' 14 3 4 2 3 3 。。 。。。。。。。。66

(31) (23) (21) (5) (5) (3) (5) (4) (1) (0) (1) (0) (1) (0) (1) (0) (0) (0) (0) (100)

100llM 3h 26 18 14 6 9 5 6 3 1 。 。 。。。。。 91

(28) (20) (16) (6) (10) (6) (7) (3) (1) (0) (1) (0) (1) (0) (0) (0) (0) (0) (1) (100) 24h 14 17 14 3 2 3 3 。。 。。。。。。。。59

(24) (29) (24) (5) (2) (4) (5) (5) (1) (0) (1) 。(0) (0) (1) (0) (0) (0) (0) (100)

1000μM 1h 3 13 。 。 。。。。。。。。。。。。20

(17) (66) (5) (1) (3) (0) (4) (2) (0) (町 (0) (0) (1) (0) 。(0) (0) (0) (0) (100)

3h 31 15 2 。2 4 6 2 。。。。 。。。。。。64 (48) (23) (3) (1) (4) (6) (10) (2) (0) (0) (0) (0) (2) (0) (1) (0) (0) (0) . (0) (100)

9h 32 18 。 。3 。。。。。 。。。。。。56 (58) (32) (2) (1) (1) 仰) (5) (0) 仰) (町 (0) (0) (1) 仰) (0) (0) (0) (0) (0) (100)

24h 40 22 23 4 8 13 10 4 。 。 。 132

(30) (16) (17) (3) (6) (10) (8) (3) (1) (1) (1) (1) (1) (0) (1) (0) (0) (0) (0) (100)

( )内は、遊離アミノ酸とアンモ二ウム量の合計に対する割合 %

140 r AIa'地下部700 r 刈a・地上部

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図5-4・3 異なる濃度のアラニンを 24時間吸収させたイネ幼植物地上部、地下部の遊離アミノ酸量

59

Page 61: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

80 福島県農業総合センター研究報告 第2号

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図 5-4-4 異なる濃度のバリンを 24時間吸収させたイネ幼植物地上部、地下部の遊離アミノ酸

回Ala

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表 5・4・5 異なる種類のアミノ酸で 6日間生育させたイネ幼植物の地上部、

地下部の遊離アミノ酸量およびアンモニアイオン量 (nmol/個体)部位 N源 濃度 時間~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 地上 NH: 1000llM 6d 155 292 175 117 289 93 89 23 20 7 39 18 12 2

(12) ロ2) (13)θ) (22) (7)σ(2) (2) (1) (3) (1) リ (0) (0) 仰)

Gln 122 13 46 132 201 95 87 8 11 12 9 6 4

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Ala 111 9 30 85 156 48 52 5 9 2 9 8

(20) (2) (6) (16) (29)θ) (10) (1) (2) (0) (2) (2) (1) 仰 (1) (1)

地下 NH: lOOOIlM 6d 121 134 151 30 70 33 35 6 10 4 9 10 8 2

(19) (21) (24) (5) (11)問 (6) 司 (2) (1) (1) (2) (1) (0) (0) (0)

Gln 100 32 61 23 31 33 25 0 6 4 2 2

(29) (10) (18) (7) (9) (10) (7) (2) (0) (0) 羽(刀 (1) (1) (1) (1)

Ala 102 6 27 16 25 17 14 0 4 2 2 2

(43) (3) (11)σ) (10)σ~ ru ru ~ o o ru ru ru ru ( )内は、遊離アミノ酸とアンモニウム量の合計に対する割合 %

lIe Arg Phe 計

-0 0 1341

(0) 仰 (0) (100)

o 760 (0) (1) (0) (100)

2 0 545

(0) (1) (0) れ00)

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2 8 0 239

(1) (3) (0) (100)

60

Page 62: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究81

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図 5-4・5 異なる種類のアミノ酸で 6日間生育させたイネ幼植物の地上部、

地下部の遊離アミノ酸量およびアンモニアイオン量 (nmol/個体)

として利用してアミノ酸を合成した場合、質量分布が各ア

ミノ酸のアミノ基数により、 +1もしくは +2高い質量側へ

シフトする。質量の増加する順は、地下部では、アンモニ

アイオン、グルタミン>アラニン、アスパラギ、ン酸、グルタミン

酸>アスパラギン、セリン>パリン、ロイシンで、あった。地上

部では、グルタミン、グルタミン酸>アスパラギン酸、アンモ

ニアイオン、アラニン、セリン>アスパラギン>パリン、ロイシン、

グリシンで、あった。

図5-4-7に、,15NI3C_安定同位体二重標識グルタミン(窒

素濃度 1000μM)を24時間吸収させたイネ幼植物の地

上部と地下部の主な遊離アミノ酸の質量分布を示した。

質量の増加する}I慎は、地下部では、グルタミン>グルタ

ミン酸、アスパラギン酸>セリン、アラニンであった。

地上部では、グルタミン>グルタミン酸、アスパラギン

画変>セリン>グリシンで、あった。グルタミン、グルタミン

酸の増加は、窒素数(グルタミン 2、グルタミン酸1)以

上の増加を示しており、炭素も含む代謝の結果と考えら

れた。

図5-4-8に、 15N13C_安定同位体二重標識アラニン(窒素

濃度 1000μM)を24時間吸収した地上部と地下部の主な

遊離アミノ酸ごとの質量分布を示した。質量の増加する順

は、地上部、地下部とも、グルタミン、アスパラギン酸、グ

ルタミン酸>アラニン>セリンであった。

図5-4-9に、 15N13C_安定同位体二重標識バリン(窒素

濃度 1000μM)を24時間吸収した地上部と地下部の主な

遊離アミノ酸ごとの質量比を示した。質量の増加する順は、

地上部、地下部とも、パリン>ロイシンで、あった。

C 質量シフトを示した遊離アミノ酸とそれから

推測される吸収アミノ酸の代謝経路

表5-4-6に窒素濃度 1000μMの15N.13C_アミノ酸を24時

間吸収させたイネ幼植物中の遊離アミノ酸に対する質量シフト

した遊離アミノ酸割合とアミノ酸量を示し、図 5-4-10に質量シ

フトした遊離アミノ酸の経時変化を示した。

61

15N一安定同位体塩化アンモニアを吸収したイネ幼植物

の質量シフトを示した遊離アミノ酸で増加したものは、地

下部では、グルタミン、アスパラギン、アラニン、グルタミ

ン酸、アスパラギ、ン酸、セリンで、地上部では地下部で

増加したアミノ酸とグリシンで、あった。

15Nl3C安定同位体二重標識グルタミンを吸収したイネ

幼植物では、地下部でグルタミン、アスパラギン、セリン、

地上部では地下部で増加したアミノ酸に加えグルタミン

酸、アスパラギン酸、アラニンで、あった。

15Nl3C一安定同位体二重標識アラニンを吸収したイネ幼

植物では、地下部でグルタミン、アスパラギン、アラニン、

地上部では地下部で増加したアミノ酸に加えグルタミン

酸、アスパラギ、ン酸、セリンで、あった。

15Nl3C安定同位体二重標識パリンを吸収したイネ幼

植物では、地下部では、パリンとロイシンのみで、地上

部では、地下部で増加したアミノ酸に加えグルタミン酸、

グルタミンで、あった。

D 考察

窒素濃度 1000μMめ塩化アンモニアを吸収したイネ幼

植物では、同濃度のアミノ酸を吸収したイネ幼植物より

遊離アミノ酸量の増加量は多かった。第 l節から塩化ア

ンモニアはアミノ酸に比べて吸収が早く、吸収量が多い

(Vmax 3.4 ~ 12.8μmol/g/h Wang et al. 1993)こと

から、遊離アミノ酸量の増加量も多かったと考えられる。

また、本節の実験は、はじめの 6日間を無窒素条件で

生育させたため、吸収実験開始時に十分量の同化産物

が地上部、地下部に集積していたことが予想された。ア

ンモニア同化時は、地上部でつくられた同化産物と合成

するが、今回の実験条件では、この同化産物の量は制

限要因とならないことが考えられた。

これまでの研究から、アンモニアはグルタミン合成酵素

(GS) ,を触媒としてグルタミンのアミド基に同化し、生成

したグルタミンはグルタミン酸合成酵素 (GOGAT) を触

Page 63: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

82 福島県農業総合センター研究報告 第2号

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図5-4-6 1000μM・15N_アンモニアを 24時間吸収させたイネ幼植物の地上部と地下部の遊離アミノ酸の質量分布

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図 5・4-7 1000μM・15N,13C_グルタミンを 24時間吸収させたイネ幼植物の地上部・地下部の遊離アミノ酸の質量分布

62

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植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究83

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Page 65: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

84 福島県農業総合センター研究報告 第2号

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図 5-4閉 10 窒素濃度 1000μMの 15N,13C_アミノ酸を 24時間吸収させたイネ幼植物中の

質量シフトを示した遊離アミノ酸の経時変化

表 5-4-6 窒素濃度 1000μMの 15N,13C_アミノ酸を 24時間吸収させたイネ幼植物中の遊離アミノ酸に対する

質量シフトを示した遊離アミノ酸割合(%)と量 (nmol/個体)

遊離アミノ酸に対する質量シフトを示したアミノ酸割合(%) 質量シフトを示した遊離アミノ酸量(nmol)

-地上部

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媒として 2分子のグルタミン酸を生成することが明らかに

されている(山谷 2001)。このグルタミン酸から、アスパ

ラギン酸、アラニン、アスパラギンがすぐに合成される(平

井 2001)。アスパラギン酸から、リジン、スレオニン、メ

チオニンが合成される。本試験の結果でも、遊離アミノ

酸量の増加、および、アミノ酸の質量数の増加から、グルタ

ミン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、アラ

ニンなどへのアミノ基が転移していることが確認された。

グルタミンを吸収した場合、窒素濃度が 100μMまで

は遊離アミノ酸量や組成には大きな影響はなかったO 第

四章より、グルタミンの Vmaxは25μMで0.3μmol/g/h、

100[lMで0.5μmol/g/hで、植物個体重約 0.1gをかけ

て計算すると、個体あたりではそれぞれ 30nmol/h、50

nmol/hとなる。この数値から計算すると 1時間アミノ酸

を吸収すると、 O時間の地下部の全遊離アミノ酸量 (67

nmol/個体)より少し少ない程度のアミノ酸が体内へ吸

64

Page 66: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究85

収されるはずであるが、吸収されたグルタミンは、タンパ

ク質や有機酸への代謝が円滑に進み、遊離アミノ酸量

はほとんど増加しなかったと考えられる。一方、窒素濃

度が 1000μMになると、吸収速度が増加し、グルタミン

の吸収量が多くなっていたが、その場合もグルタミンが

イネ幼植物の生育を阻害するなと守の現象は見られなかっ

た。試験開始時のイネ幼植物は、発芽から 6日間、無

窒素環境で生育したものであり、窒素欠乏に近い状態で

あると考えられる。したがって、遊離アミノ酸量も少ない

と考えられ、・多量のグルタミンが吸収され、遊離アミノ

酸量も増加したと推察される。

また、質量数の増加は、標識グルタミン由来の 15N、

13Cがそれぞれ転移したことでおこる。質量数が lまた

は2の増加は、グルタミンのアミノ基転移による窒素の

転移が要因と考えられるが、遊離グルタミン、グルタミン

酸の質量数の増加は、窒素数(グルタミン 2、グルタミン

酸1)以上の増加を示しており、アミノ基転移のみでなく、

吸収されたグルタミンの炭素骨格もグルタミン酸へ代謝さ

れていることが考えられる。これは、吸収されたグルタ

ミンは、アンモニアの同化でこれまで研究されているのと

同様に、グルタミン→グルタミン酸への合成が進んでい

ることを示している。地下部では、質量数が増加したグ

ルタミン酸量は増加していないため、グルタミン酸からア

スパラギン酸、アスパラギンへのアミノ基転移が即座に

おこっているものと考えられる。グルタミンはアミノ酸合

成の起点であり、グルタミンを吸収した場合でも容易に

代謝されるため、植物は積極的に窒素源として利用して、

生育が促進されると推測される。

アラニンでも、窒素濃度が 100l-lMまでは遊離アミノ

酸量や組成には大きな影響はなかった。グルタミンと同

様で、窒素濃度が 100μMまでは吸収速度が遅いため、

吸収量が少なく、遊離アミノ酸量はほとんど増加しない

と考えられた。窒素濃度が 1000μMでは、吸収量が大

きく増加し、遊離アミノ酸量が大きく増加している。

質量数の増加から、アラニン由来の窒素は、地下部で

グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン酸への転移が考

えられる。アラニンの炭素部分がグ、ルタミンに導入されて

いることが早くからみられることから、アラニンから有機

酸を経由して、アラニン由来の炭素骨格がグルタミンに取

り入れられ、グルタミン酸、アスパラギン酸へ代謝して

いく可能性が示唆された。また、地上部で観察されるア

ラニンは、質量数の増加が 1程度であるため、外部から

吸収されたものがそのまま地上部へ移行するので、はなく、

アミノ基部分が基転移によりオキサロ酢酸へ移り、代謝

して合成されたものと考えられる。アラニンは、グルタミ

ンのようにアミノ酸合成の起点ではないが、代謝され窒

素源として利用して植物は生育していると考えられる。し

65

かし、アラニンを一度グルタミンに代謝して利用している

ため、生育がグルタミンより劣ることのではないかと推察

される。

パリンでは、ロイシン以外、他のアミノ酸への転移が

なく、パリンとロイシンが蓄積していた。パリンは、アミ

ノ酸合成の末端であり、ロイシン以外の他のアミノ酸へ

代謝することができない。そのため組織内に蓄積してし

まい、生育が阻害されたと推察される。

以上より、植物はいずれの種類のアミノ酸も吸収する

が、吸収後の代謝過程により、植物生育によい影響を与

えるかどうかが決まると考えられた。

第五節まとめ

イネ幼植物の生育が良好で、あったグ、ルタミン、アラニン、

阻害したパリンについて、吸収されたアミノ酸の地下部、

地上部における代謝経路を解明するため、安定同位体

二重標識アミノ酸を与えるトレーサー実験を行った。

植物は、吸収量に差はあるがいずれの種類のアミノ酸

も吸収しており、グルタミンを吸収したイネ幼植物の遊

!離アミノ酸は、地下部では、グルタミン、アスパラギン、

地上部では、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸、

アスパラギン酸、セリシが増加した。吸収されたグルタ

ミンは、アンモニアイオンの窒素同化とほぼ同様に GS-GOGAT経路に取り込まれ、グルタミン酸、アスパラギ

ン酸へアミノ基が転移し、他のアミノ酸合成の窒素源と

して使用されたと考えられた。第三節と第四節から、吸

収された全 15Nのうち、遊離アミノ酸の質量シフトが 15N_

アミノ基転移により起こったとして、遊離アミノ酸画分に

存在する 15Nとそれ以外(タンパク質や核酸に取り込まれ

たと想定)の商分に存在する 15Nを計算した(表 5-5-1、

図5-5-1)。グルタミン態の窒素はアンモニアイオンと比較

すると、特に地下部において 90%近くがタンパク質合成

に利用されており、遊離アミノ酸画分に存在する割合は

低かった。グルタミン態として吸収された窒素は、窒素

同化の最初の段階において地上部からの光合成産物を

必要とせず、地上部からの同化産物の供給に制限される

ことなくタンパク質や核酸なと守に比較的早く変換できるこ

とが示唆された。

一方、グルタミン態で吸収した炭素は、 24時間後に

は地下部では 55%、地上部では 60%近くが消失してお

り、窒素をアミノ基転移により利用した後は、 TCAサイ

クルの有機酸などに組み込まれ呼吸により二酸化炭素と

して放出されることが示唆された。そこで、吸収された

アミノ酸から得られるエネルギーを呼吸量やATPとして

試算した。吸収されたアミノ酸がグルタミンでは、グルタ

ミンから得られるエネルギーは生長に必要なエネルギー

の4.1~ 9.4%に相当した。生育に必要な全エネルギーか

Page 67: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

86 福島県農業総合センター研究報告 第2号

らグルタミンの分解で得たエネルギーを差しヲ|いた量は、

アンモニアで生育したイネ幼植物と同等になったO 窒素

源としてのグルタミンはアンモニアイオンをグルタミンにす

るために通常使われているグルタミン酸、 ATPを必要と

せず、地上部からの同化産物の消費、エネルギーの使

用がない。さらにグルタミンの代謝から得られるエネル

ギーが、そのまま生育にプラスされることにより、主に根

系の発達が旺盛になった理由で、あると考えられる。

アラニンを吸収したイネ幼植物では、吸収されたアラ

ニンはグルタミンにアミノ基を転移させ、その後はグルタ

ミンと同様な代謝経路となっていると考えられた。アラニ

ンを吸収させたイネ幼植物の生育は、塩化アンモニウム

より優るが、グルタミンで生育したイネ幼植物に比べて生

育は劣る。生育に必要な全エネルギーからアラニンの分

解で得たエネルギーを差しヲ|いた量は、アンモニアで生

育したイネ幼植物よりわず、かに低かったO これは、アラ

ニンが植物体内で利用されるためには、グルタミンへ一

度代謝しなければならず、そのための代謝の基質とエネ

ルギーの消費となるためであると考えられる。

吸収されたパリンは、代謝して生成されるアミノ酸がロ

イシンのみであり、他のアミノ酸等へは代謝が進まない

ため体内で蓄積してしまい、生育を阻害したものと推測

された。

以上の結果から、グルタミンは地上部からの同化産物

を使用せずに速やかに窒素をタンパク質合成へ使用する

ことが可能であり、呼吸により炭素部分も使用すること

で、特に地下部において取り込んだ窒素を根系発達に効

率よく利用することが、無機態窒素との異なる点と考えら

れた。

表 5・5・ 15N標識アミノ酸を吸収させたイネ幼植物中の 24時間後の 15Nの形態

供試

形態

NH/

Gln

Ala

Val

部位

地上部

地下部

地上部

地下部

地上部

地下部

言十

地上部

地下部

言十

持第五章第三節より

H 第五章第四節より

吸収された 遊離アミノ酸 遊離アミノ酸 全 15Nに対する全 15N持 画分の 15N** 画分以外の 15N 遊離アミノ酸

画分の 15N率

(A) (B) (A-B) (B/A) nmol nmol nmol %

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1718 549 1169 32

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1137 282 855 25

889 69 821 8

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689 41 648 6

1095 204 891 19

66

Page 68: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究87

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Gln Ala

日|口アミノ酸以外の面分の15N

E遊離アミノ酸画分の15N

Val

Val

ロアミノ酸以外の画分の15N

・遊離アミノ酸画分の15N

図 5・5-1 15N標識アミノ酸を吸収させたイネ幼植物中の 24時間後の 15Nの形態

第六章 総合考察

1 研究の発端

化学肥料の多投や農薬の使用による環境負荷が懸念

される中、将来に渡る持続的な食糧生産を維持するた

め、環境にやさしい有機農業が見直されつつある。有機

農業では、有機質肥料の肥効発現が作物の収量や品質

に大きな影響を与えるが、その効果は、個々の経験によ

る部分が大きく、安定した肥効が得られないことも多い。

有機農業による農産物生産を普及・拡大するためには、

科学的根拠に基づいた施肥技術を提示し、肥料の効果

を効率的にヲ|き出すことにより、農業者が有機農業に取

り組みやすくする必要があると考えられる。

作物栽培において生育を最も大きく左右する養分は

窒素であるが、従来、有機質肥料の窒素肥効を予測す

る試みは、リーピッヒの無機栄養説に基づき、土壌微

生物の分解により完全に無機化した NH4+、N03ーを測

定することが行われている。その一方で、、土壌で生成

した無機態窒素量と作物の生育が比例していない事例

(Matsumoto 1999)や、ツンドラ地帯の森林や牧草が

アミノ酸を積極的に吸収・利用している報告 (Chapinet

al. 1993, Nasholm et al. 1998) もあり、無機化された

窒素のみを評価する従来の方法で有機質肥料を施用し

た土壌をはたして適切に評価できているのかについて疑

問をもった。

有機質肥料は土壌に施用された後、微生物の分解に

よりタンパク質、ペプチド、アミノ酸を経て最終的に無機

67

態窒素となる。したがって、有機質肥料を使用する有機

栽培圃場では、化学肥料を施用する慣行栽培より、そ

の分解過程で生成する低分子の有機態窒素が多く存在

している。しかし、実際の有機栽培作物や今後普及が

期待できる作物について、有機態窒素の生育への影響、

吸収特性、吸収後の代謝に関する研究はこれまでほとん

ど行われていなかった。

そこで本研究では、植物別の有機質肥料の効果解明

に向け、タンパク質の構築単位であり有機態窒素の無機

化過程で必、ず生成されるアミノ酸の植物による直接利用

について解析を行い、植物へのアミノ酸直接吸収と、吸

収したアミノ酸の植物体内での利用の経路を特定し、ま

た無機態窒素を吸収した場合との相違点などについて検

討した。

2 植物生育に対する有機態窒素の影響

有機栽培がよく行われる植物について、数種類の有

機質肥料を施用した栽培試験を行った結果、有機質肥

料の効果は植物の種類により大きく異なり、イネ、コム

ギ、チンゲンサイは有機質肥料の施用効果が高く、キュ

ウリ、 トマト、ピーマンでは低いという結果が得られた。

Matsumotoら(1999) によると、陸稲、チンゲンサイ、

ソルガム、ニンジンは有機質肥料施用の効果が高いとし

ており、本試験に用いた有機質肥料でも、イネ、チンゲ

ンサイはその施用効果が高い結果となった。

地上部同様、特に根系の発達について、植物や有機

質肥料の種類で大きく異なり、特にイネとコムギでは有

Page 69: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

88 福島県農業総合センター研究報告 第2号

機質肥料を施用すると根系も非常によく発達するという

結果が得られた。本試.15fr~'土、ポット試験で、あったが、実

際の有機実践農家の経験や、福島県農業総合センター

で実誤に有機栽培したイネの根(凶 6-1)の生育がよかっ

た事例とも合致しており、有機物や有機宜肥料を施用す

ると根系が旺盛に発達することが実証できた。

この試験において、土壌の無機態窒素量と植物の窒

素吸収量を比較した結果、キュウリでは無機態窒素量と

議素吸収量に高い相関がみられたが、イネ、チンゲンサ

イでは相関はなく、特に、存機質肥料施用区では無機

窒素施用区より生育JtJl聞を通しての土壌の無機態窒素量

が少ないにもかかわらず、イネの窒素含有量は多く、イ

ネは無機態窒素のみではなく、有機態窒素もl吸収して生

育していることが示唆された。

次に有機態窒素の19~機化過程で必ず生成されるアミノ

酸を単一室素源として無菌栽培を行ったO その結果、ア

ミノ酸の種類によってはアミノ酸単独であっても作物は

生育可能であり、アミノ酸の種類によっては向き態の窒

素と同等もしくはそれ以上の生育を示すことが明らかに

なった。特にイネ、チンゲンサイではアミノ酸の種類で

生育に対して正負の大きな影響が見られ、また、グルタ

ミンやアスパラギンで、は特に穂子根や側根の生長促進が

見られ、細胞分裂が活発な恨端において主に吸収、蓄

右iしていることカf明らかになったO

酸素の供給が制浪される還元状態や低温では、微生

物活性が下がり、有機物の完全分解が起こらず、アミノ

駿や有機酸といった低分子の有機物が害損しやすいこ

とが従来指摘されている。イネは還元状態で生育してき

た植物であり、チンゲンサイやコムギは冬作物であるこ

とから、そのような環境に適応していく過程において有

機態窒素をより有効に利用する形質を獲得してきたであ

ろうことが示唆される。

3 植物生曹に対するアミノ酸種類の影響

アミノ酸の生育への影響は種類によって一様で、はな

かったO 一部のアミノ酸が無機態窒素と間等の生育を示

す一方で、アミノ酸によっては強い生育阻害を引き起こ

すなど、生育に対して正負の大きな影響が見られた。無

機態窒素以上の生育を示したのはグルタミンで、無機態

とほぼ陪等の生育がアラニン、アルギニン、アスパ

ラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グリシン、プロ

リンで得tられた。逆に強しミ生育阻害はトリブトファン、ロ

イシン、パリン、チロシン、メチオニン、システイン、イソ

ロイシン、リジン、フェニルアラニンで、あったO

生育が良好であったグルタミン、アラニン、阻害したパ

リンについて、吸収や代詩l実験を行った結果、アミノ酸

を吸収した後の代謝の概要は図 6-2のように考えられたO

68

1 吸収されたグルタミンは、アンモニアイオンの窒素向化と

ほぼ同様に GS-GOGAT経路に訳り込まれ、グルタミン

酸、アスパラギン酸へアミノ基が転移し、地のアミノ酸

合成の窒素源として使用されたと考えられ、アラニンを

吸収したイネ幼植物では、吸収されたアラニンはグルタミ

ンにアミノ基を転移させ、その後はグルタミンと同様な代

謝経路となっていると考えられた。一方、パリンは、代

謝して生成される遊離アミノ酸がロイシンのみであり、他

のアミノ酸等へは代謝が進まないため体内で蓄積してし

まい、生育を阻害したものと誰j期された。

以上の結果から、植物はいずれの種類のアミノ酸も吸

収するが、吸収後の代謝過程により、植物生育によい影

響を与えるかどうかカf決まるとJ住察される。

慣行栽培 有機栽培

図 6ぺ 諸島県農業総合センターで栽培された

横行栽培と有機栽培のイネの根

Page 70: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究89

〔光合成産物〕

15N-NH/ 15N町NH4+ ι15ト 附

15Nータンパク質、核酸等

一一ー

/

_15N-Asn

明ーGlu→ 15N-Asp川15N-Ser

"15N四 Ala

15N,!3C・Gln

15N聞 Asn

15N, !3C-Gln二孝川!3C-Glu→ 15N-Aspミ15N-Ser

品 二グι一一こご? ‘15N-Ala

15N,13C_タンパク質、核酸等 13C-C02

15N,BC-Ala _15N-Asn

15N,BC-Alaヰ 15N,13C-Glnヰ 15N,13C-Glu→15N-Asp斗15N-Ser

い bp U ー が 一 一 ¥¥ 吋 -AlaATP

15N,13Cータンパク質、核酸等

15N,13C-Val =**川町-Val二本 15N,BC-Leu

U U 15N,BC-タンパク質、核酸等

(細胞外) 11 (細胞内)

+申申

ATP

→ 15Nの動き

→ 13Cの動き

→炉 ATPの動き

13C-C02

(細胞外)

図 6-2 15N標識アミノ酸を吸収させたイネ幼植物中の 24時間後の 15Nの形態

4 有機態窒素の特徴

植物にとっての有機態窒素を利用するとなぜ生育が無

機態窒素よりも促進されたりするのか?特に根系の発達

は明らかに促進されている。その要因を明らかにするた

め、安定同位体標識のアミノ酸によるトレーサー実験を

行った。グルタミン態窒素はアンモニアイオンと比較する

と、地下部での存在率が高く、 90%近くが遊離アミノ酸

として存在せ示タンパク質合成等に利用されていたと

思われる。グルタミン態窒素は、窒素同化の最初の段階

において地上部からの光合成産物を必要とせず、地上部

からの同化産物の供給に制限されることなくタンパク質

や核酸などに比較的早く変換できることが示唆された。

また、グルタミン態炭素は、 24時間後には半分以上が

植物体から失われており、窒素をアミノ基転移により利用

した後は、 TCAサイクル等を経由し、二酸化炭素として

放出されることが示唆された。

吸収したアミノ酸の炭素部分の呼吸により得られるエ

ネルギーは、試算の結果、植物全体の生長に必要なエ

ネルギーの 4.1~ 9.4%に相当することが明らかになった。

無機態窒素は吸収後、グルタミンに変換されるのに、以

下のように

グルタミン酸+NH4+ + ATP

69

→ グルタミン+ADP + Pi

グルタミン +2ーオキソグルタル酸+NADH + H+

→ 2グルタミン酸 +NAD

地上部の同化産物 (TCA回路)からの 2-オキソグル

タル酸やATPおよび、 NADH(もしくはFdred)が必要

である。それに対し、アミノ酸を吸収した場合これらの

同化産物及びエネルギーを必要とせずLさらには炭素部

分の呼吸によりエネルギーが供給される。

同化産物などの節約のみならず、エネルギー源として

も使われることは植物の生育促進において非常に大きし

このような効果により地下部の生育が促進されたと考え

られる。

以上のように、グルタミンは地上部からの同化産物を

使用せずに速やかに窒素をタンパク質合成へ使用するこ

とが可能で、あり、さらに、炭素部分の呼吸によりエネル

ギーを得ることができるため、特に地下部において、取

り込んだ窒素を根系発達に効率よく利用することができ

ていると結論づけられた。

有機農業で栽培した植物は根系の発達がよいことや、

冷害時でも安定して収量が得られることが経験則的に

知られている。この要因として、これまで、有機質肥料

による土壌物理性の改良や、微生物相の多様化による

Page 71: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

90 福島県農業総合センター研究報告 第2号

生物性の改善(新田 1986)、有機酸の溶出(麻生

1971)などが指摘されているが、それに加え本研究の結

果により、有機質肥料から分解されるアミノ酸が、窒素

源としてのみならず、光合成産物(炭素源)の一部を代

替することにより植物栄養面から根系発達を促している

可能性を示すことができた。現場レベルでの吸収実験が

必要で、あるが、有機質肥料の効果の解明につながる成

果であると考えられる。

5 有機農業におけるアミノ酸の寄与について

本結果より、植物によってはいくつかのアミノ酸を窒素

源としての生育が可能であり、無機態窒素以上の生育も

可能で、あることが示された。本試験の結果から、有機

態窒素の価値、および有機質肥料の効果的な利用に対。

する課題を考える。

水田土壌での遊離アミノ酸態窒素はアンモニア態窒素

に対しておおよそ 1/5から 11100であるが、土壌 100g

当たり窒素として 0.1~ 1 mg (70μmol ~ 700μmol/ k g

soiI)で存在している。土壌中では多くの種類のアミノ酸

が低濃度で混在しており、主要なアミノ酸は、アラニン、

グリシン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、 y -

アミノ酪酸が多いことが示されている(加藤 1970、佐

藤 1984)。

しかし、アミノ酸を土壌に施肥し、その施用効率の

低さから植物のアミノ酸吸収に関して否定的な報告もあ

る(D.L. Jones et al. 2005、山室ら 1999)0 これらの報

告は、アミノ酸をそのまま施用したという実験であり、ア

ミノ酸を直接一度に施用しでも微生物の分解を受けて無

機化してしまうことで、投入量に対し、施用効率は当然

低くなる。

その一方で、アンモニア態窒素が著しく低下する時期

でも土壌中のアミノ酸量は、低濃度であるが一定のレ

ベル (70~ 140μmol/ k g soiI)を保っている報告(高

橋 1979) や、堆肥の施用で土壌中のアミノ酸含量

が、化学肥料区の1.2~ 1.6倍に増加する報告(佐藤

1984) もある。また、加藤 (1970) は、水田土壌の透

水液中の遊離アミノ酸濃度は 56μMであり、圃場でのア

ミノ態窒素の値をもとに含水比 70%として換算すると 70

~ 600μMとなると報告している。したがって、水田土

壌中の標準的な各アミノ酸濃度は 1~50μM と考えられ、

4章で、行った放射性同位体アミノ酸を用いたトレーサー

実験の結果から、植物はアミノ酸を吸収していることが

予想される O

また、土壌微生物のアミノ酸に対する Km値 7.2~

233μM (D. Lipson et al. 2001) と比較しても、本研究

で得られたイネの Km値は 54~ 200μMであり、土壌

微生物を競合しながらも吸収できることが可能であると

70

みなされた。

有機質肥料を積極的に施用する有機農業では、土壌

中のアミノ酸量も有意に増加し、従来の研究からはその

濃度も持続的に維持されると考えられ、窒素の供給源の

一翼を担っていることが強く示唆される。

本研究により、土壌のアミノ酸濃度を高める堆肥や有

機質肥料を施用する有機農業の施肥管理技術の確立に

は、窒素の無機化量だけでなく、分解過程で生成する

アミノ酸がより一層重要な要因になることが明らかとなっ

た。

今後、有機質肥料の施用においては、

(1) 無機態窒素に加え、アミノ態窒素のモニタリング

(2) 有機質肥料の分解により供給される有効アミノ酸

率や阻害アミノ酸率などの指標の導入

(3) 有機質肥料に効果のある作物の体系的な分類が

重要であることが示され、これらをより詳細に検討

することで効率的な有機質肥料の種類やその施用

法を示していくことにより、確実に効果のある有機

農業の実践が可能になると考えられる。

Page 72: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

宝章

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究91

第 七章摘要

有機質肥料の効果解明への第一歩として、有機態窒素

の無機化過程で必ず生成されるアミノ酸の植物による直

接利用について、植物へのアミノ酸直接吸収と、吸収した

アミノ酸の植物体内で、の利用経路について検討した。

1.有機質肥料の植物別施用効果および有機態窒素の

生育に対する影響の解析

(1) 有機栽培がよく行われる植物について、数種類の

有機質肥料の効果を調べるために栽培試験を行った。

栽培試験の結果、有機質肥料の効果は植物の種類

により大きく異なり、イネ、コムギ、チンゲンサイは有

機質肥料の施用効果が高く、キュウリ、 トマト、ピー

マンでは低かった。また根系の発達も、地上部同様、

植物や有機質肥料の種類で大きく異なり、特にイネと

コムギでは有機質肥料を施用すると根系も非常によく

発達した。

(2) 土壌の無機態窒素量と植物の窒素吸収量を比較す

ると、キュウリでは無機態窒素量と窒素吸収量に高い

相関がみられたが、イネ、チンゲンサイでは相関はな

かった。特に、有機質肥料施用区では無機窒素施用

区より生育期間を通しての土壌の無機態窒素量が少な

いにもかかわらず、イネの窒素含有量が多いという結

果が得られ、イネが無機態窒素のみではなく、有機態

窒素をも吸収して生育していることが示唆された。

2. アミノ酸を単一窒素源とした栽培におけるアミノ酸

の種類が生育に与える影響の解析

(1) タンパク質を構成するアミノ酸 20種類を窒素源とし

て、 5種類の植物(イネ、コムギ、チンゲンサイ、ダイ

ズ、キュウリ)を無菌的に栽培した。その結果、ダイ

ズはアミノ酸の種類により、生育に大きな差は見られ

なかったが、イネ、チンゲンサイ、コムギ、キュウリで

は一部のアミノ酸が無機態窒素と同等の生育を示す一

方で、アミノ酸によっては強い生育阻害を引き起こす

など、生育に対Lて正負の大きな影響が見られた。イ

ネ幼植物で無機態窒素以上の生育を示したのはグルタ

ミンで、無機態窒素とほぼ同等の生育がアラニン、ア

ルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン

酸、グリシン、プロリンで得られた。逆にトリプトファン、

ロイシン、ノτリン、チロシン、メチオニン、システイン、

イソロイシン、リジン、フェニルアラニンでは強い生育

阻害が見られた。

(2) 根系発達に関しでもアミノ酸の影響が強く見られた。

イネでは、グルタミン、アスパラギンの施用で種子根

や側根の生長が旺盛になった。本結果より、植物によっ

71

てはアミノ酸を窒素源としての生育が可能であり、無

機態窒素以上の生育も可能であることが示された。ま

た生育がよかったアミノ酸はいずれも植物体内に比較

的多く含まれるアミノ酸であることから、植物がアミノ

酸を直接吸収し、速やかに代謝、利用していることが

予測された。

3. アミノ酸の直接吸収の証明、吸収過程のリアルタイ

ムイメージングおよび吸収速度、特性の解析

(1) イネ幼植物を用い、アミノ酸の直接吸収の証明を試

みた。地下部に加え、地上部でも二重標識グルタミン

の存在が確認されたこと、栽培後の溶液中には無機

態窒素や他のアミノ酸なとぞが検出されなかったことか

ら、溶液中のグルタミンは根から直接吸収されること

を明らかにすることができた。

(2) アミノ酸の吸収過程や吸収部位を検討するため、植

物体中の物質動態を非破壊的にリアルタイムで画像化

するリアルタイムオートラジオグラフィシステムを用い、

連続的なアミノ酸吸収のイメージ、ングをおこなった。イ

ネの根が溶液中のグルタミンやアラニンを吸収する過

程を撮影し、画像解析から、アミノ酸の吸収及び利

用活性が主に根端部分において高いことが示された。

(3) アミノ酸の吸収は膜輸送を介していると考えられる

ことから、グルタミンとアラニンの溶液濃度を変えた吸

収実験を千子った。吸収速度はミカエリス・メンテン式

にあてはまり、グルタミンの Km値は 199.7μM、Vmax

値は 2.9μmol/g/h、アラニンの Km値は 54.0μM、

Vmax値は1.2μmol/g/hで、あった。

(4) アミノ酸は、 10μM以下という低濃度でも積極的な

吸収を示したことから、土壌中のアミノ酸が微量な場

合でも吸収できる可能性が示された。

(5) 植物がどのような条件でこのアミノ酸吸収機構を発

現しているかを検討するため、異なる窒素環境(グル

タミン、 NH/、無窒素)で生育したイネ幼植物のグル

タミン吸収を測定した。その結果、いずれの処理にお

いても減少率、吸収量に差はみられ求グルタミン吸

収に関与する能動輸送のシステムは、窒素欠乏や根圏

のグルタミンに応答して発現するのではなく、常時発

現しているものと推察された。

4. 吸収したアミノ酸の代謝と植物体内の蓄積分布の解析

(1) イネ幼植物は、吸収量に差はあるがいずれの種類

のアミノ酸も吸収した。

(2) 吸収されたグルタミンは、グルタミン酸、アスパラギ

ン酸へアミド基が転移し、他のアミノ酸合成の窒素源

として使用されたと考えられた。また、吸収されたアラ

ニンはグルタミンにアミノ基を転移させ、その後はグル

Page 73: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

92 福島県農業総合センター研究報告 第2号

タミンと同様な代謝経路となっていると考えられた。

(3) グルタミンとして吸収された窒素は、窒素同化の最

初の段階において地上部からの光合成産物を必要し

ないことから、地上音防、らの同化産物の供給に制限さ

れることなく生育に貢献できることが考えられる。

(4) グルタミンで吸収した炭素は、 24時間後には約半

分が植物体から消失しており、窒素をアミノ基転移に

より利用した後は、呼吸により二酸化炭素として放出

されることが示唆された。

(5) 吸収されたグルタミンから得られるエネルギーは生

長に必要なエネルギーの 4.1~ 9.4%に相当した。生育

に必要な全エネルギーからグルタミンの分解で得たエ

ネルギーを差しヲ|いた量は、アンモニアで生育したイ

ネ幼植物と同等になるため、グルタミンの吸収及び代

謝にはエネルギー消費が少なく、グルタミンから得ら

れるエネルギーが、そのまま生育にプラスされたと考

えられる O

(6) グルタミンは地上部からの同化産物を使用せずに速

やかに窒素をタンパク質合成へ使用することが可能で、

あり、呼吸により炭素部分も使用することで、特に地

下部において取り込んだ窒素を根系発達に効率よく利

用することが、無機態窒素との異なる点と考えられた。

(7) 吸収されたバリンは、代謝して生成されるアミノ酸

がロイシンのみであり、他のアミノ酸等へは代謝が進

まないため体内で蓄積してしまい、生育を阻害したも

のと推測された。

(8) 本研究により、土壌のアミノ酸濃度を高める堆肥や

有機質肥料を施用する有機農業の施肥管理技術の確

立には、窒素の無機化量だけでなく、分解過程で生

成するアミノ酸の植物生育への影響がより一層重要な

要素になることを明らかにした。

謝辞

本研究の過程において、終始的確で示唆に富んだご

指導と格別のご鞭撞を賜った東京大学大学院中西友子

教授に、深甚なる感謝を捧げます。

秋田県立大学頼泰樹助教には、研究の取り組みから

論文作成まで、長期間にわたりひとかたならぬご指導と、

親身なご助言、力強い励ましを賜りました。心から感謝

申し上げます。

菅家文左衛門博士には、本研究に取り込むきっかけを

作って頂き、研究を進める上では具体的な示唆とご指導

を多く頂きました。謹んで謝意を表します。東京大学大

学院田野井慶太朗助教には、本研究における議論・検

討に当たって、ご教示ならびに丁寧なご指導を終始しミた

だきました。厚く御礼申し上げます。

72

本研究を進めるについては、多くの方々のお世話にな

りました。実験でひとかたならぬご協力をいただいた東

京大学大学院増田さやか氏、野田章彦氏、放射線植物

生理学研究室の皆様には、深く感謝申し上げます。

本研究は福島県職員として働きながらまとめたもので

す。松川裕福島県農林水産部次長には、本研究を進め

る上で、多大なる励ましとご配慮をいただきました。酒

井孝雄農林水産部研究開発室長、園田高広博士には、

有機農業における現場での問題点、実験上のアドバイス

を頂きました。大和田正幸部長には、論文をまとめるに

あたり貴重なご意見を賜りました。岡徳三所長、荒川市

郎部長、瓜田章二博士、遠藤あかり氏、大橋一博氏、

渡遺かよ子氏、鈴木健一氏、佐藤麗華氏、佐野智子氏、

作物園芸部畑作科の皆様をはじめ福島県農業総合セン

ターの方々には業務のかたわら、本論文をまとめるにあ

たり、暖かい励ましとご協力を頂きました。厚く御礼申し

上げます。

そして何より、本研究は、家族の理解と支えのおかげ

で遂行できたものです。社会人としての研究生活を誰よ

りも励まし、丈夫な体を授けてくれた母と、研究過程で

病に倒れてしまいましたが、研究を続ける勇気を与えてく

れた父に感謝しミたします。

最後に、研究の全期聞を通じ、苦労をかけた妻すみ

子に心からの感謝をいたします。

引用文献

第一章

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128、305目316

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M. and Hogberg P. 1998 Boreal forest plants take

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Nordin A., Hogberg P, Nasholm T., 2001 Soil nitrogen

form and plant nitrogen uptake along a boreal

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125-1332

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Rai H., Kanno S, Hayashi Y, Ohya T., Nihei N.,

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autoradiography system to analyze the movement

of the compounds labeled by s -ray emitting

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第二章

(第一節)

Mattingly,G.E.G 1973 The Woburn organic manuring

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Lipson D., Nasholm T., 2001 The unexpected

versatility of plants: organic nitrogen use and

availability in terrestrial ecosystems, Oecologia、

128、305-316

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M. and Hogberg P. 1998、Borealforest plants take

up organic nitrogen, Nature, 392, 914-916

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form and plant nitrogen uptake along a boreal

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94 福島県農業総合センター研究報告 第2号

forest productivity gradient. Oecologia. 129.

125-1332

松本真悟 2003土壌の可給態窒素の実態と植物による

その特異的吸収島根県農業試験場研究報告 341-46

山鯨真人・中川建也・阿江教冶 1997 15N利用による

米ぬか窒素吸収の植物間比較 日本土壌肥料学会誌

第 68号第3号 291-294

(第二節)

Matsumoto S.. Ae N.. Yamagata M.. 1999 Nitrogen

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matrials. Soil Sci. Plant Nutr.. 45 269-278

(第三節)

松本真悟 2003土壌の可給態窒素の実態と植物による

その特異的吸収島根県農業試験場研究報告 341-46

山牒真人・中川建也・阿江教冶 1997 15N利用による

米ぬか窒素吸収の植物間比較 日本土壌肥料学会誌

第 68号第3号 291-294

樋口太重 1981緩衝液による有機化窒素および土壌有

機態窒素の抽出特性 日本土壌肥料学会誌 第 52

号 481-489

松本真悟・阿江教冶 2002有機態窒素は本当に吸収さ

れない? 化学と生物 40710-712

丸本卓哉・古川謙介・吉田尭・原田登五郎 1974土壌の

易分解性有機物に対する微生物体およびその細胞壁

の寄与について 日本土壌肥料学会誌 第 45号

23-28

山根忠昭 2007農業技術体系肥料編土壌施肥編

257-263 農文協

(第四節)

野村満義 1937 種々の肥料がトマトの根群に及ぼす

影響園芸学学会誌 8(1) 178-185

新田恒雄 1986 有機物施用による根圏微生物の制御

有機物研究の新しい展望博友社 43-84

明石和夫・長谷川功・小嶋博文・矢崎仁也 1975 植

物根の生理活性物質に関する研究(第 2報)水稲幼

植物根の生理活性におよぼすニトロフミン酸の影響に

ついて 日本土壌肥料学会誌第 46号 175-179

第三章

(第一節)

Virtanen A. 1.. Linkol H. 1946 Organic Nitrogen

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74

Ghosh B.P.. Burris R.H. 1950 Utilzation of

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187目203

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for Orchid Embryos. American J ournal of Botany 3588-95

槙 鋪吉・山口益郎・奥田東 1966無菌液耕培養下で

の水稲幼植物の生育に及ぼすアミノ酸の影響.高等植

物の生育に及ぼす有機物の影響(第 2報) 土壌肥料

学会誌第 37号 311-314

森敏 1979植物の無機栄養説批判 東京大学博士論文

(第三節)

White P.R.. 1937 Amino Acid in the Nutrition of

Excised Tomato Roots. Plant Physiology 12.

793-802

Steinberg R. 1947 Growth Responses to Organic

Compounds by Tobacco Seedlings in Aseptic

Culture. J Agricultural Research 75 81-92 Ghosh B.P.. Burris R.H. 1950 Utilzation of

Nitrogenous Compounds by Plants. Soil Science 70.

187-203

森敏 1979植物の無機栄養説批判 東京大学博士論文

Spoerl E.. 1948 Amino Acids As Sources of Nitrogen

for Orchid Embryos. American J ournal of Botany 3588-95

川田信一郎 1982写真図説イネの根 農村漁村文化協

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Zhang HM.. Forde BG. 1998 An Arabidopsis MADS

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三井進午・熊沢喜久雄 1964 水稲根の生長に及ぼ

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Filleur S.. Walch-Liu P.. Gan Y目. Forde BG 2005

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Muller A.. Hillenbrand H.. Weiler EW.. 1998 lndole-

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roots of Arabidopsis thaliana. Planta 206 362-369

(第四節)

槙 鋪吉・山口益郎・奥田東 1966無菌液耕培養下で

の水稲幼植物の生育に及ぼすアミノ酸の影響高等植

物の生育に及ぼす有機物の影響(第 2報) 土壌肥料

学会誌第 37号 311-314

Page 76: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究95

第四章

(第一節)

Nasholm T., KH.Danell, P.Hogberg 2000 Uptake of

organic nitrogen in the field by four agriculturally

important plant species, Ecology 2000, 81 (4) ,

1155-1161

Weigelt A., Bol R., R.D.Bardgett 2005 Preferential

uptake of soil nitrogen forms by grassland plant

species, Oecologia 142 627-635

Nasholm T., ]. Persson 2001 Plant acquisition of

organic nitrogen on boreal forests, Physiolgia

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Persson ]., T.\~asholm 2001 A GC-MS method for

determination of amino acid uptake by plants 113,

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Nasholm T., K.H.Danell, P.Hogberg 2001 Uptake of

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59-63

Nasholm T., A. Ekblad, A. Nordin, R Giesler, M.

Hogberg, P. Horgberg 1998 Boreal forest plants

take up organic nitrogen, Nature 392, 914-916

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山室成一、上野秀人、高橋茂 1999水田および畑土壌

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29-35

(第二節)

Clarkson, D. T. and Sanderson, J 1978 Plant Physiol., 61, 731-736

Colmer T. D. and Bloom A. J 1998 A comparison of

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Taylor, A. R. and Bloom, A. ]. 1998 A mm onium,

75

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Plant Cell Environ. 21, 1255-1263

吉田武彦、中村正治 1968水稲根の各部位における

86Rb及び 32P吸収能の差異について,土肥誌 39

253-257

巽二郎 1998根の事典, 345-347

(第三節)

Rai H., Kanno S, Hayashi Y, Ohya T., Nihei N.,

Nakanishi T., 2008 Development of real-time

autoradiography system to analyze the movement

of the compounds labeled by s -ray emitting

nuclide in a living plant. Raclioisotope in press.

Nakanishi N, Bughio. N, Matsuhashi S, 1shioka N,

Uchida H, Tsuji A, Osa A, Kume T, Mori S, 1999 J

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Yoneyama T,. Y. Akiyama, K. Kumazawa, 1977

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Oaks A., 1966 Transport of amino acids to the maize

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(第四節)

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末吉邦 2003無機窒素トランスポーター,植物の膜輸送

システム,秀潤社, 48-56

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斎木里文・園田裕・池田亮・山口淳二 2002植物の根に

関する諸問題(102)根のアンモニウムイオン取り込む

に関与する遺伝子群,農業および園芸,77, 39-47

Fischer W.N., B. Andre, D. Rentsch, S. Krolkiewicz, M.

Tegeder, K. Breitkreuz, W. Fromm er, 1998, Trend in

Plant Science, 3 (5) ,188-195

柿沼喜己 2003アミノ酸トランスポーター,植物の膜輸送

システム,秀潤社, 48-56

Hirner A., F. Ladwing, H. Strnsky, S. Okumto, M.

Keinath, A. Harms, W. B. Fromm er, W. Koch, 2006,

Arabidopsis LHT1 1s a High-Affinity Transporter

for Cellular Amino Acid Uptake in Both Root

Epidermis and Leaf Mesophyll, The Plant Cell, 18,

1931-1946

Svennerstam H., U. Ganeteg, C. Bellini, T. Nasholm,

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96 福島県農業総合センター研究報告 第2号

2007 Comprehensive Screening of Arabidopsis

Mutants Suggests the Lysine Histidine Transporter

1 to Be Involved in Plant Uptake of Amino Acids,

Plant Physiology, 143, 1853-1860

池田亮・園田裕・山口淳二 2000植物の根に関する諸問

題 [79J根の側根形成と窒素の取り込みに関する遺伝

子群,農業および閏芸, 75, 301-308

Kielland K., 1994 Amino Acid Absorption by Arctic

Plants: Implication for Plant Nutrition and Nitrogen

Cycling, Ecology, 75 (8) ,2373-2383

Soldal T., P. Nissen, 1978 Multiphasic Uptake of

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Jamtgard S., T. Nasholm, 2008 Characteristics of

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Wang M.Y., Y. Siddiqi, T. J Ruth, A. D. M. Glass, 1993

A mm onium Uptake by Rice Roots, Plant Physiol.,

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Youngdahl L.]., R. Pacheco, J J Street, P.L.G. Vlek,

1982 The kinetics of amm onium and nitrate uptake

by young rice plants, Plant and Soil, 69, 225-232

佐藤紀男・菅野善忠 1985水田における有機物と土壌改

良資材の施用効果に関する研究,福島県農業試験場

報告, 24,1-15

(第五節)

末吉邦 2003無機窒素トランスポーター,植物の膜輸送

システム,秀潤社, 48目 56

榊原均・山谷知行 2002窒素代謝,植物代謝工学ハンド

ブック, 366-379

斎木里文・園田裕・池田亮・山口淳二 2002植物の根に

関する諸問題[102J根のアンモニウムイオン取り込む

に関与する遺伝子群,農業および園芸,77, 39-47

第五章

(第一節)

山谷知行 2001代謝, 朝倉書居, 53-58

彦坂幸毅 1999植物の環境応答, 秀潤杜, 160-170

Mori, S. and N. Nishizawa 1979 Nitrogen Absorption

by plant root from the culture medium where

organic and inorganic nitrogen coexist. Soil Sci

Plant Nutri. 25, 51-58

米山忠克、熊沢喜久雄 1972水稲幼植物に吸収された

15N03-N、15NH4-Nの体内分布における相異について,

土肥誌, 43,329 ~ 332

76

(第三節)

Tanaka A. and J Yamaguchi 1986, The growth

efficiency in relation to the growth of the rice

plant., Soil Sci. Plant Nutr., 14, 110-116

Yamaguchi J 1978, Respiration and the growth

efficiency in relation to crop productivity. J Fac.

Agric. Hokkaido Univ., 59, 59-129

Penning de Vries, A. H. M. Brunsting and H. H. van

Laar, 1974, Products, Requirements and Efficiency

of Biosynthesis: A quantitative approach., J Theor Biol., 45, 339-377

Sinclair, T. R. and De Wit, C. T. Science, 189, 565-567,

1975

三崎旭、山田靖宙、角田万里子 1993,生化学,培風館,

108-110

Youngdahl L.]., R. Pacheco, J J Street, P.L.G. Vlek,

1982 The kinetics of amm onium and nitrate uptake

by young rice plants, Plant and Soil, 69, 225-232

第六章

高橋英一 1979 植物の栄養と環境 [21],農業および、

園芸, 54,96 ~ 102

新田恒雄 1986 有機物施用による根圏微生物の制御

有機物研究の新しい展望博友社 43-84

麻生末雄、山口武則 1971 フミン酸の肥効発現に関

する研究(第 7報)作物根の伸長と活力におよぼすニ

ドロフミン酸の影響,土肥誌, 42, 291 ~ 294

加藤忠司 1970 水田土壌の水溶性有機物に関する研

究(学位論文)京都大学

佐藤紀男、菅野義忠 1984 水田における有機物と士

壌改良資材の施用効果に関する研究, 福島県農業

試験場研究報告, 24.1 ~ 15

D. L. Jones, J R. Healey, V. B. Willett, J F. Farrar, A

Hodge, 2005, Dissolved organic nitrogen uptake

by plants-an important N uptake pathway?, Soil

Biology Biochemistry, 37, 413 ~ 423

山室成一、上野秀人、高橋茂 1999水田および畑土壌

における遊離アミノ酸の 13C.15Nとレーサー法による動

態解析,土肥誌, 70, 739 ~ 746.

D. Lipson, T. Nasholm, 2001. The unexpected

versatility of plants; organic nitrogen use and

availability in terrestrial ecosystems, 128, 305 ~

316

Page 78: 植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究 誌名 福島県農業総合センター研究報告 = Bulletin of the

植物のアミノ酸吸収・代謝に関する研究97

A Study of Amino Acids Absorption and Metabolism by Some Plants

Naoto NIHEI

We present absorption and metabolism of glutamine by some plants. Rice, wheat, soybean, qing-geng-cai,

and cucumber were grown in a culture solution, each containing different kind of 20 amino acids as nitrogen

sources under sterile condition. There was a large difference in growing and root development according to the

kind of amino acids supplied. Growing was well when glutamine, asparagine or alanine was supplied to the root

Especially, in the case of glutamine, the seminal roots and lateral roots were developed well. On the other hand,

inhibition of the growing and root development were shown when cysteine, histidine, isoleucine, leucine, lysine,

methionine, phenylalanine, serine, threonine, tyrosine and valine were supplied.

Then the glutamine absorption manner was analyzed applying 14C-labeled glutamine, using the real-time

imaging system we developed. The uptake amount of glutamine was steadily increased at the root tip. However,

in the middle of the root, glutamine uptake curve reached plateau after 10 hours, suggesting that the glutamine

uptake and accumulation were active at root tip, while the glutamine was only passing through the middle part

of the root.

To analyze metabolism of glutamine in the plant, doubly labeled glutamine with stable isotopes were used. It

was found that the amount of nitrogen derived from glutamine was higher than that of NH4 + in roots. In the

case of glutamine uptake, the profile of amino acids in root was rather constant compared to those when the

other kind of amino acids were supplied, which suggested the smooth assimilation of absorbed glutamine. Since

the absorbed glutamine was estimated to be the starting material for the amino acid synthesis, the utilization of

nitrogen from glutamine was supposed to induce good morphological development of roots.

77