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平成28年3月 不動産ストックの再生・活用やその資金調達に取り組むための事例集 不動産ストックビジネスの 発展と拡大に向けて ~今後の方向性と先進的な取組事例について~ 国土交通省 土地・建設産業局不動産市場整備課

不動産ストックビジネスの 発展と拡大に向けて地域ビジネス・活動を支える融資制度など、地域密着型金融の取組が 進みつつあることも踏まえ、地域活性化に貢献する小規模な不動産再

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Page 1: 不動産ストックビジネスの 発展と拡大に向けて地域ビジネス・活動を支える融資制度など、地域密着型金融の取組が 進みつつあることも踏まえ、地域活性化に貢献する小規模な不動産再

平成28年3月

不動産ストックの再生・活用やその資金調達に取り組むための事例集

不動産ストックビジネスの

発展と拡大に向けて ~今後の方向性と先進的な取組事例について~ 国土交通省 土地・建設産業局不動産市場整備課

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― 目次 ―

I 求められる不動産ストックビジネスの発展・拡大 ......................................................................................... 1

1. 本冊子の目的と考え方 ....................................................................................................................................... 1

2. 不動産ストックビジネスの取組のポイント ................................................................................................... 4

(1) 需要の掘り起こし .................................................................................................................................. 4

(2) 人材ネットワークの構築 .................................................................................................................... 5

(3) 資金調達手法の工夫 ......................................................................................................................... 6

3. 不動産ストックビジネスの発展・拡大に向けた今後の方向性 ........................................................... 7

II 取組事例 .................................................................................................................................................................... 8

事例1 丸順不動産㈱ ...................................................................................................................................... 9

事例2 三好不動産㈱ .................................................................................................................................... 11

事例3 ㈱メゾン青樹 ...................................................................................................................................... 13

事例4 吉原住宅㈲/㈱スペース R デザイン .................................................................................... 15

事例5 ㈱ブルースタジオ ............................................................................................................................. 17

事例6 ㈱リビタ ................................................................................................................................................. 19

事例7 京町家等継承ネット ........................................................................................................................ 21

事例8 世田谷トラストまちづくり ............................................................................................................... 23

事例9 アーツ千代田 3331 ......................................................................................................................... 25

事例 10 米子信用金庫 .................................................................................................................................... 27

事例 11 ミュージックセキュリティーズ㈱ .................................................................................................. 29

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I 求められる不動産ストックビジネスの発展・拡大

1. 本冊子の目的と考え方

全国各地域で、空き家や空き店舗、老朽建物が増加しています。まちなかに広がるこ

うした老朽・低未利用の不動産ストックを、貴重な地域資源としてとらえ、いかに再生・

活用していくかは、人口減少・高齢化が進む地域の活性化を図る上での大きな課題です。

不動産ストックの再生・活用を進めるためには、不動産業者やリノベーション事業者、

賃貸住宅関連業者など、不動産に関わる民間事業者の方々の役割が非常に重要です。

その取組を進める際には、単に一つ一つの不動産の活用方策を考えるだけではなく、

より広い視野から、地域の実情に応じ、どのような社会経済のニーズに対応していくこ

とが求められるか、将来どのようなまちづくりを目指すのか、といったまちづくりの視

点、生活する場からの発想が重要です。いわば、単体の不動産を扱う「箱の産業」とし

て不動産の管理・仲介を担うのみならず、地域の中に埋もれている不動産ストックの再

生・活用を通じ、地域活性化に貢献する「場の産業」としての取組が求められています。

◯ 本格的な人口減少・超高齢社会が到来する中、不動産に関わる産業も、「箱の産

業」として不動産の管理・仲介を担うのみならず、いわば「場の産業」として、

まちづくりとの連携を深め、地域の新たな需要に対応した不動産ストックの再

生・活用に貢献していくことが求められています。(「箱の産業」から「場の産業」

へ)

◯ このため、不動産ストックを核として、まちづくりの視点を重視した新たなサ

ービス・付加価値を提供する「不動産ストックビジネス」を広げていく必要があ

り、これを担う地域の不動産業者、リノベーション事業者、賃貸住宅関連業者等

の関係事業者の更なる活躍が期待されます。(不動産ストックビジネスとしての

地域サービス拡大)

◯ 本冊子では、不動産ストックの再生・活用やそのための資金調達に取り組む関

係事業者の方々が、どのような課題に直面し、どのような工夫で乗り越えていけ

るか、具体的な取組事例から学び、実践に活かしていただくことをねらいとして

います。(具体事例から学び実践)

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具体的には、

高齢化の進展に対応した高齢者の見守りサービス 子育て世代が暮らしやすいまちづくりのための子育て支援サービス

健康増進のまちづくりのための居住・生活空間の形成

観光交流を活発化する地域ビジネスの活動拠点づくり

シェアハウスなどの新しいライフスタイルの提供

など、地域を取り巻く社会経済の状況変化に応じた新たなサービス・付加価値の創造が

不動産の再生・活用を通じて広がっていくことが考えられます。

こうした新しい発想に立ち、不動産ストックを核として、将来のまちづくりに役立つ

新たなサービス・付加価値を提供する「不動産ストックビジネス」の発展・拡大が求め

られます。

地域活性化に貢献する「不動産ストックビジネス」の発展・拡大は、これを担う地域

の不動産事業者、リノベーション事業者、賃貸住宅関連事業者等の不動産に関わる多様

な事業者の方々の更なる活躍の場の提供につながることが期待されます。

地域の関係事業者の多くの方々が、今後、「不動産ストックビジネス」に取り組むに

当たって、地域の新たな需要にどのように応えていくか、まちづくり関係者や地域金融

機関、地方公共団体等とどのように連携を図っていくか、事業に必要な資金調達をどの

ように工夫できるか、様々な課題があります。こうした課題にどのように対応したらよ

いか、その一助となるよう、本冊子では、先進的な取組事例から学ぶノウハウを紹介し

ます。

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<全国の空き家数の推移>

【出典】住宅・土地統計調査(総務省)

<1 商店街当たりの空き店舗数及び空き店舗率の推移>

【出典】平成 24 年度中小企業庁委託事業「平成 24 年度商店街実態調査報告書(平成 25 年 3 月)」

<中心市街地における空地の分布状況(鹿児島市)>

【出典】H25 年度鹿児島市都市計画基礎調査

3.9 3.9 5.3 5.6 6.0

8.537.31

8.9810.82

14.62

0246810121416

02468

10121416

H12年度 H15年度 H18年度 H21年度 H24年度

【1商店街あたりの空き店舗数及び空き店舗率の推移】

空き店舗数(店) 空き店舗率(%)

(%)

全国で増加する空き家・空き店舗等

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2. 不動産ストックビジネスの取組のポイント 不動産ストックビジネスの実践に当たって、以下の取組ポイントが重要になります。

(1)地域の新たな需要の掘り起こし

(2)人材ネットワークの構築

(3)資金調達手法の工夫

(1) 需要の掘り起こし

<先進的な取組事例>

◯ 地域活性化に資する不動産ストックの再生・活用のためには、まちづ

くりのビジョンとの整合性を取りつつ、地域の社会経済状況に的確に対

応した需要を掘り起こし、潜在的な利用者を引きつける利用価値の向上

を図ることが重要です。

◯ 先進的な取組事例においては、不動産ストックをまちの財産としてと

らえ、まち全体の再生というストーリーやコンセプトの構築・発信に成

功した例や、地域に密着したサービスの提供を通じて、地域の住環境の

質の向上に貢献した例が見られます。

(P9参照)

(P11 参照)

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(2) 人材ネットワークの構築

<先進的な取組事例>

◯ 不動産業者、リノベーション事業者、賃貸住宅管理業者等の不動産ス

トックビジネスを担う関係者や、マーケティング専門家、不動産を活用

して事業を行いたい者等、幅広い分野の関係者が連携し、物件の発掘か

ら再生、管理・運営までを一連のストーリーとして取り組むことが重要

です。

◯ 先進的な取組事例においては、不動産業者、地域の工務店、地方公共

団体、市民団体、不動産オーナーなど、多様なステークホルダーがネッ

トワークを構築して、不動産ストックの再生に成功している例が見られ

ます。

(P21参照)

(P13参照)

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(3) 資金調達手法の工夫

<先進的な取組事例>

◯ 空き家等を再生・活用するための資金調達に当たっては、事業の意義

やその収益性に着目したファイナンス手法や地域活性化のための志ある

投資など、多様な資金調達手法の活用を図ることが重要です。また、民

間都市開発推進機構や日本政策金融公庫等、公的な金融支援の活用も考

えられます。

◯ 先進的な取組事例においては、小口投資によって不動産ストックの再

生に成功した例や、これまでローン付けが難しかった不動産ストック再

生に、地域金融機関の独自ローンや市民の志ある投資を活用した例が見

られます。

(P29 参照)

(P27 参照)

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3. 不動産ストックビジネスの発展・拡大に向けた今後の

方向性

不動産ストックビジネスを広げていくためには、次の2点に取り組む必要があります。

<不動産ストックビジネスの担い手育成・関連事業者等の連携強化>

<小規模な不動産ストックの再生・活用事業の促進>

◯ 不動産ストックビジネスの担い手を増やすため、成功事例を広く共有

すること等により、地域に求められる不動産に関わる新たなサービス展

開や、地域全体の魅力向上という視点をもって不動産ストックの再生・

活用事業に取り組む人材育成を広げていくことが必要不可欠です。

◯ 人材育成に当たっては、不動産ストックビジネスに関わる地域の関連

事業者間や地域金融機関、地方公共団体等、様々な主体との連携が図ら

れるよう取り組むことが求められます。

◯ 地域ビジネス・活動を支える融資制度など、地域密着型金融の取組が

進みつつあることも踏まえ、地域活性化に貢献する小規模な不動産再

生・活用事業においても活用されるよう、地域金融機関との連携を深め

ることが欠かせません。

◯ また、小規模な不動産ストックを活かした地域活性化事業を支えるク

ラウドファンディング等の資金調達手法の活用を広げていくことが求め

られます。

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II 取組事例

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丸順不動産㈱ 長屋・古家のプロデュース事業 (大阪府)

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事例1

宅地建物取引業者による取組事例

取組に至る背景

(1)背景

取組に至る背景には、「二つの危機」がありまし

た。一つは、地元阿倍野での賃貸仲介や管理業

における大手不動産流通会社の台頭です。これら

大手不動産流通会社が、大手ならではの資本力

とブランド力でシェアを拡大していたことへの危機

感があったといいます。二つ目は阿倍野エリア自

体の衰退です。JR天王寺駅一帯が大手中心の再

開発で活気づく一方、同社の主要営業エリアにお

いては、空き家が増えていました。

地域に根ざして商売を営む同社にとって、この

危機感が事業を進めるモチベーションになりまし

た。

(2)関係者

●地元物件オーナー

●借主(阿倍野内外のテナント含む)

取組概要

(1)需要の掘り起こし

古い「長屋」を“まちの財産”として再生・活用で

きないかを考え、タウンマネジメントの視点を導入。

「家賃は安くても良い人に貸したい」というニーズを

持つオーナーを対象に、人をひきつける魅力のあ

る「人」、情報発信力のある「人」、質の高い仕事

や商売をしている「人」などをテナントとして誘致し、

彼らに物件を再生してもらうことで、大正後期から

昭和初期にかけて大量に供給された、阿倍野の

長屋の空き家問題解決の糸口を求めました。

テナントの質を重視した誘致を図ることで、「や

る気はあるが事業資金が潤沢でないテナント」の

需要と、空き家問題を抱えた阿倍野の長屋を結び

つけています。

【出典】公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会・全国宅地建

物取引業保証協会 災害時等における地域貢献活動や地域

社会の活性化に係る取組等に関する調査研究 報告書

テナントの知恵も借りながら、一緒に阿倍野とい

うまちを蘇らせていくことを目的に、自ら魅力的な

テナントを厳選して誘致しています。

再生を考えている物件は、SNSで幅広く情報を

発信し、感度が高く、個性的なテナントを誘致して

います。また、入居前にテナントとまちを一緒に歩

き、まちの歴史や地域について伝え、まちの人達

を紹介するなど、まちに対する思いを共有してい

ます。

・魅力的なテナントを丸順不動産自ら厳選・SNSを駆使して情報発信し、感度の高

いテナントを誘致

丸順不動産㈱の活動内容①

需要の掘り起こし

人材ネットワークの構築

長屋・古屋をまちの財産として再生し新たな価値を付与 物件+エリアの価値向上に寄与

不動産会社がオーナーとテナントのニーズをマッチング

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宅地建物取引業者による取組事例

長屋の新しい住み方・使い方を提案するため、

家賃は安くてもいいから良い人に入ってほしいと

いうオーナーをターゲットにアプローチしていま

す。

また、オーナーに対しても自分の不動産がまち

にどういう影響を与えるか考えてもらうよう促して

います。

高齢のオーナーと若いテナントの間に丸順不動

産㈱が立つことで、対等な関係を構築していま

す。

資金力のないテナントに対しても、オーナーに

改修費用を負担してもらう代わりに、費用回収期

間として15年の定期借家契約締結をアレンジす

るなど、ニーズをマッチングしています。

(2)人材ネットワークの構築

建築士、都市計画コンサルタントなどとともに

「Be Local Partners」を結成。それぞれが持つ知見

を活かしながら、地域における事業内容の検討を

行い、事業の実現を図っています。

まとめ

●阿倍野特有の長屋・古家を”まちの財産”と認識

し、タウンマネジメントビジネスを展開していま

す。

●長屋・古家に新たな価値を付与し、積極的に発

信することで、物件の意味づけを明確化してい

ます。

●エリア価値向上のため、オーナーやテナントと

地域の歴史や思いを共有し、その結果長期の

入居を実現しています。

●それぞれが持つ知見を活かしながら、異業種間

での連携を図ることで、エリア価値向上に資す

る事業の実現を目指しています。

<参考:丸順不動産㈱が目指す不動産屋さん像>

【出典】丸順不動産㈱ ウェブサイトを参考に作成

<参考文献>

災害時等における地域貢献活動や地域社会の活

性化に係る取組等に関する調査研究 報告書

(公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会、

公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会)

https://www.zentaku.or.jp/public/researchreport/p

df/h26_saigai-houkoku.pdf

丸順不動産㈱の活動内容②

・オーナーの理解と協力を得る

丸順不動産㈱の活動内容③

・テナント・オーナーの通訳者としてアドバイス

丸順不動産㈱の活動内容④

・異業種間の連携のもと事業内容を検討

まちの価値重視

地域密着

多店舗全国展開

個別不動産の価値重視

デベロッパー

仲介業者従来のまちの不動産屋さん

丸順不動産

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三好不動産㈱ 地元密着型の多角的コンサルティング (福岡県)

11

事例 2

宅地建物取引業者による取組事例

取組に至る背景

(1)背景

三好不動産㈱は、福岡市唐人町の漁師が経営

するアパートの有償管理を発端とし、昭和20年代

から不動産管理業を実施している地元密着型の

不動産会社です。

長年の地元へのコミットメントから、「不動産会

社」を超えた信頼を地域から獲得しており、現在の

オーナーだけでなく、次世代までの総合的な資産

管理を手がけることを意識し、「超・不動産宣言」を

掲げ、地元密着型で幅広い不動産コンサルティン

グを展開しています。

(2)関係者

●地元物件オーナー

●借主

●自治体

取組概要

(1)需要の掘り起こし

地元住民との信頼関係を構築し、密にコミュニ

ケーションをとることで、地域の問題・困りごとを細

やかに把握。こうした活動から新たなニーズをあ

ぶり出し、従来の「不動産業」の枠である「管理」、

「仲介」だけにとらわれず、住環境の質の向上を

目指し、様々なサービスを展開しています。

入院中の高齢者が抱える懸念事項のヒアリン

グから、入院により空き家となる物件の管理の必

要性を認識。空き家オーナーとの間で管理委託契

約を締結し、空き家サポートサービスを提供してい

ます。

また、転勤や相続などで空き家となった物件の

サポートも実施しています。

<空き家サポートの概要>

言葉の壁や生活習慣の違いを抱える外国人留

学生のため、外国人スタッフを採用し、入居前の

契約から入居後の生活に至るまでの支援体制を

構築しています。

【出典】三好不動産㈱ ウェブサイト

・高齢者等への空き家サポートサービス

三好不動産㈱の活動内容①

①問合せ

②資料請求

③申込み

④現地確認

⑤重要事項確

認契約、入金

⑥鍵預かり

⑦業務開始

⑧定期報告

三好不動産㈱の活動内容②

・外国人留学生への賃貸斡旋の仕組み作り

需要の掘り起こし

人材ネットワークの構築

地元住民の信頼と密なコミュニケーションにより従来の「不動産業」を超える「不動産+α」のサービス展開

・不動産会社がオーナーとテナントのニーズをマッチング ・自治体との連携による支援体制の構築

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宅地建物取引業者による取組事例

(2)人材ネットワークの構築

保証人や身体の状況から、民間賃貸住宅への

入居が困難な高齢者と、空室を抱えているオーナ

ーの間に立って、両者の調整をしています。

当該NPOが入居する高齢者の生活をサポート

することを条件にオーナーより賃貸住宅を借上げ、

入居希望者に賃貸。定期的な入居者訪問、週2回

の安否確認や行政機関等への各種申請を支援し

ています。

また、福岡市と連携し、当該 NPO センターで緊

急に保護が必要なホームレスの救護を目的に、一

時保護施設を開設。福岡市が年間の生活費や家

賃の75%を負担するという仕組みを作りました。

【出典】三好不動産㈱ ウェブサイト

まとめ

●地元密着型の不動産業者として、不動産業を

超えた地域への視点から、総合的なコンサルテ

ィングを実施しています。

●外部からの関与や刺激はなくとも、長年にわた

り構築した地元住民との信頼関係と、パートナ

ーであるオーナーの利益を最優先するという視

点から、幅広くアイディアに溢れたサービスを提

供しています。

<参考:ビジョン「超・不動産宣言」>

新たな三好不動産に向けて、金融サービス業へ

の挑戦

私たちは、不動産を「資産」のひとつと捉えていま

す。 資産の運用やそれを守ることが難しい時代だ

からこそ、ファイナンシャルプランナー的考え方が、

不動産に求められています。

そんな時代の潮流の中で、福岡の住環境の質が

どうすれば向上するのか?

私たちはこの命題を多面的に考えるため、視野を

広げる企業努力を大切にしています。

そこから見えてくる「住環境への期待」。新入学生

や転勤、社宅の居住斡旋、高齢者の居住支援から、

相続対策、土地活用に至るまで、不動産業をさらに

進化させた「資産のコンサルティング」こそ、「超・不

動産宣言」なのです。 【出典】三好不動産㈱ ウェブサイト

<参考文献>

高齢者に安心して民間賃貸住宅で生活していた

だくためのガイドブック 取組事例集

(公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合

会)

http://www.chintai.or.jp/korei/zirei.pdf

災害時等における地域貢献活動や地域社会の活

性化に係る取組等に関する調査研究 報告書

(公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会、

公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会)

https://www.zentaku.or.jp/public/researchrepo

rt/pdf/h26_saigai-houkoku.pdf

三好不動産㈱ウェブサイトプレスリリース

http://www.miyoshi.co.jp/news/20041013.html

・「介護賃貸住宅NPOセンター」を通じた活動

三好不動産㈱の活動内容③

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㈱メゾン青樹 ネットワークで作る住まいの場 (東京都)

13

事例3

不動産オーナーによる取組事例

取組に至る背景

(1)背景

所有していた賃貸住宅「ロイヤルアネックス」の

空室率が25%に達したことに危機感を感じ、他の

賃貸住宅との差別化を決断しました。

ロイヤルアネックスでの経験を活かし、ただ時

間を消費するだけの従来の賃貸住宅ではなく、時

間の蓄積が価値に変わる“育つ賃貸住宅”という

コンセプトのもと、賃貸住宅「青豆ハウス」を建設し

ました。

(2)関係者

●入居者

●不動産会社 など

取組概要

(1)需要の掘り起こし

住居の壁紙などのカスタマイズが可能なカスタ

マイズ賃貸サービスに始まり、間取りなどのプラン

ニングが可能なオーダーメイド賃貸サービスにも

着手。不動産オーナーとして、住み続けたい住居

を求める人々の需要にこたえるようなバラエティに

溢れる提案を行っています。

<カスタマイズ賃貸の例・SoraniwA°>

<青豆ハウス>

【出典】経済産業省 平成26 年度先進的なリフォーム事業者表彰 ベ

ストプラクティス集

公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会・全国宅地建

物取引業保証協会

災害時等における地域貢献活動や地域社会の活性化に係る

取組等に関する調査研究 報告書

(2)人材ネットワークの構築

ロイヤルアネックスでは、住民からの参加を募り、

2階の空いていたオフィスを「コワーキングスペー

ス」に変更。また、住民の発案により、屋上もパー

テ ィ や イ ベ ン ト 等 が で き る ル ー フ ガ ー デ ン

「SoraniwA°」に変更しました。

青豆ハウスでは、劇作家と連携して「どのような

生活ができるか」というストーリーを構築し、「そら

㈱メゾン青樹の活動内容①

・実際の入居者が改修にコミット・物件のファンを増やすための種まき

需要の掘り起こし

人材ネットワークの構築

枠にとらわれない発想と行動力で住まいをデザインしたい人へ場づくりを提供

・入居者を物件ファンとしコミットメントを引き出す ・自治体・入居者・地域とのつながりを構築し場を生成

資金調達手法の工夫 まちとの接点作りを目的に、クラウドファンディングを活用することで、ファン作りに成功

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不動産オーナーによる取組事例

と豆」というブログで情報を発信。上棟式や完成内

覧会の際に“おひろめマルシェ”を開催し、地域住

民とのつながりを構築しました。

有志の仲間と民間まちづくり会社㈱都電家守舎

を設立。転貸ビジネスなどを展開しています。

<㈱都電家守舎の転貸ビジネススキーム>

【出典】公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会・全国宅地建

物取引業保証協会 災害時等における地域貢献活動や地域

社会の活性化に係る取組等に関する調査研究 報告書を参

考に作成

豊島区内の空間資源、人的資源、文化資源、

歴史資源などを探し、考えることを目的とした、豊

島区主催の「まちのトレジャーハンティング」という

イベント運営に協力しました。また、遊休不動産を

活用した都市再生手法を実践形式で学ぶ、豊島

区主催の「リノベーションスクール@豊島区」の運

営にも協力しました。

(3)資金調達手法の工夫

㈱都電家守舎が手がけた「都電テーブル」のプ

レオープンに当たっては、周知とファン作りを目的

に、取組①~③についてクラウドファンディングを

活用。プロジェクト期限にはコレクターは203人に

のぼり、目標金額も達成しました。

<取組の一覧>

・取組①外看板を作る:120万円

・取組②ウェブサイトの作成:50万円

・取組③店内にコミュニケーション棚を設置:30万円

まとめ

●既存の入居者と新しい入居者を結びつけるだけ

ではなく、賃貸事業にオーナーと入居者が「共

同事業者になる」という視点を発信し、入居者と

知恵を出し合いながら、様々な場作りを展開し

ています。

●オーナーという枠を超えて、不動産を介したコミ

ュニティ生成を実現しています。

<参考:都電テーブル>

「まちにもう一つの食卓を」がテーマのまちに開

かれた飲食店。都電荒川線・向原駅沿いにあり、

次の思いから生まれました。

・「まちに家族で過ごせる場所を作りたい」

・「まちにお母さんたちの仕事をつくりたい」

・「おいしくて元気になるご飯を食べたい」

全国のこだわりぬいた食材を生産者の声ととも

に届けることで、まちも地方も豊かになっていけた

らという思いで展開しています。

【出典】Motion Gallery クラウドファンディングプラットフォーム

<参考文献>

災害時等における地域貢献活動や地域社会の活

性化に係る取組等に関する調査研究 報告書

(公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会、

公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会)

https://www.zentaku.or.jp/public/researchrepo

rt/pdf/h26_saigai-houkoku.pdf

Motion Gallery プロジェクトプラットフォーム

https://motion-gallery.net/projects/toden-table

㈱メゾン青樹の活動内容②

・有志の仲間と「家守舎」を展開

オーナー 家守舎 入居者

収入 354万

収支 179万

収入 366万

収支 176万

175万2年半で回収

190万2年半で回収

50万2年で回収

改修費 415万 4年の定借で三者契約家賃

当初2年:14万後半2年:16万

賃貸

家賃

転貸

家賃

当初3年:6万4年目:11.5万

当初2年:8万3年目:10万4年目:4.5万

㈱メゾン青樹の活動内容③

・自治体とのさまざまな協働

Page 18: 不動産ストックビジネスの 発展と拡大に向けて地域ビジネス・活動を支える融資制度など、地域密着型金融の取組が 進みつつあることも踏まえ、地域活性化に貢献する小規模な不動産再

吉原住宅㈲/㈱スペース R デザイン 総合不動産コンサル (福岡県)

15

事例4

不動産オーナーによる取組事例

取組に至る背景

(1)背景

保有する賃貸ビルやマンションに空室が多く発

生していることに危機感を感じ、築34年の「山王

マンション」のリノベーションを実施。その後、築古

建物の再生を手がけるようになりました。

また、オーナーから他のビル再生を請け負う機

会が増えたことから、リノベーションに特化した不

動産コンサルティング会社「㈱スペースRデザイン」

を設立しました。

(2)関係者

●物件オーナー

●入居者

●NPO 法人の会員

●施工会社 など

取組概要

(1)需要の掘り起こし

㈱スペース R デザインの設立により、それまで

細分化されていた①経営コンサル、②マーケティ

ング企画、③設計デザイン、④工事監理、⑤プロ

モーション、⑥ブランディング・仲介、⑦コミュニティ

型ビル管理、⑧ビンテージビル文化啓発を、ワン

ストップで総合的に提供。各ステップでそれぞれの

担当企業を探さなければいけなかったオーナーの

悩みを解決しています。

また、自社ビルの再ブランディング化や再生をさ

せた経験をもとに、まちづくりの視点をベースにし

た手法を県外等においても展開。事業を展開する

に当たり、再生するビルだけではなく、ビル周辺の

まちを活性化させることを重視しています。

○事例1:山王マンションのリノベーション

リノベーションした物件について、仲介会社に賃

料設定を依頼したところ、リノベーション部分の価

値を認めてもらえなかったことから、自ら営業活動

を実施。美容室にチラシを置くなどターゲットを定

めた上で入居者を募集しました。

<山王マンションの概観・リノベーション住戸>

○事例2:冷泉荘のDIYプロジェクト

改修前の住戸をそのまま借りたいというニーズ

もあったことから、所有する賃貸住宅「冷泉荘」に

おいてDIYプロジェクトを開始。改装した住戸につ

いて原状回復は求めず、退去後はそのままの状

態で入居者を募集しました。

<冷泉荘のリノベーション住戸・冷泉荘の概観>

【出典】公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会・全国宅地建

物取引業保証協会 災害時等における地域貢献活動や地域社会の活性化に係る

取組等に関する調査研究 報告書

需要の掘り起こし

人材ネットワークの構築

自社ビル再生の経験からワンストップでオーナーの悩みを解決する不動産総合コンサルティングを開始

社会課題解決型ビジネスとしてまちづくり手法を他県・他地域へ展開

Page 19: 不動産ストックビジネスの 発展と拡大に向けて地域ビジネス・活動を支える融資制度など、地域密着型金融の取組が 進みつつあることも踏まえ、地域活性化に貢献する小規模な不動産再

16

不動産オーナーによる取組事例

(2)人材ネットワークの構築

リノベーション住戸を展示会のように見せるイベ

ント、「福岡リノベーションミュージアム」を開催。入

居希望者だけではなく多くの人を呼び込む仕掛け

を実施しています。

また、サテライトプログラムとして、近隣で空室

に悩むビルをビンテージビルとして再ブランド化し

入居希望者を誘導。こうした物件を増加させること

により、地域の活性化を図っています。さらに、大

牟田市のシャッター商店街を再生するために、地

元の若いオーナーとともにまちづくり会社を立ち上

げ、「大牟田ビンテージビルプロジェクト」を展開。

SNSを通じて情報発信することで、若者を中心に

入居者を募っています。

「オーナー井戸端ミーティング」を発足し、経営

に悩むオーナーのコンサルティングを行うだけで

はなく、リノベーションの実施を希望するオーナー

をサポートしています。

代表取締役である吉原氏が理事長となって、

様々な分野の関係者からなるNPO法人福岡ビル

ストック研究会を立ち上げ、以下の事業を実施し

ています。

①ストックに関する情報の共有化・提供及び相談事業

②ストックに関する調査・研究事業

③ストックに関する機関・団体との連絡・協調及び交流促進

を図る事業

④ストックに関する建築的・管理的の技術の検討事業

⑤ストックに関する普及・啓発及び広報事業

⑥ストックに関するセミナー・講演会等の開催事業

⑦ストックに関する出版及び物品の販売事業

⑧ストック活用建築の情報提供場の運営事業

⑨その他、第3条の目的を達成するために必要な事業

⑩上記①~⑨が「環境」、「文化」、「まちづくり」に及ぼす効果

の検証事業

【出典】NPO 法人福岡ビルストック研究会 ウェブサイト

また、福岡県内にあるリノベーション物件を一斉

公開し、活用法を提案することで築古物件の価値

を再認識することを目的としたツーリズム型イベン

トである、「福岡 DIY リノベ WEEK」を毎年実施して

います。

まとめ

●自社ビル再生の成功体験から、不動産総合コ

ンサルを開始。その後、その体験を更に業種や

地域の枠を超えて展開し、社会課題解決型ビ

ジネスを実践しています。

●NPO法人を立ち上げることで、不動産を介した

まちづくりネットワーク構築を拡充させ、さらに

関係者が自発的にコミットすることで、そのネッ

トワークを循環・拡大させることに成功していま

す。

<参考文献>

災害時等における地域貢献活動や地域社会の活

性化に係る取組等に関する調査研究 報告書

(公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会、

公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会)

https://www.zentaku.or.jp/public/researchreport/p

df/h26_saigai-houkoku.pdf

・リノベーション住戸を展示会として

㈱スペースRデザインの活動内容①

・オーナーへのノウハウ伝授

㈱スペースRデザインの活動内容②

・NPO法人福岡ビルストック研究会によるDIYリノベのネットワーク構築

㈱スペースRデザインの活動内容③

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㈱ブルースタジオ 「バリューコンサルティング」 (東京都)

17

事例5

建築・リノベーション事業者による取組事例

取組に至る背景

(1)背景

1998年に広告会社としてスタートした㈱ブルー

スタジオは2000年の建築士事務所登録以来、多

くの中古物件の再生を手がけてきました。1960

年代から1970年代にかけて多く建てられた賃貸

住宅の老朽化・空き家化がオーナーたちの懸念事

項となっている中、2000年以降不動産証券化が

活発になることによって不動産金融系の事業者か

ら不良債権再生の手法としてリノベーションの相

談を多く受けるようになりました。

2009年以降には、長期運用前提のオーナー

や企業のCRE対策としてリノベーションの相談が

増えました。

現在は、建築設計、不動産仲介だけではなく、

リサーチ、プロモーション関連事業も手がけ、物

(建築)、事(マーケティング)、時間(不動産)の3

つのデザインを提供しています。

(2)関係者

●物件オーナー

●借主(居住者 など)

●民間企業(鉄道会社)

●自治体 など

取組概要

(1)需要の掘り起こし

リノベーションは、どのような顧客がどのような

価値を求めているかを見極め、その顧客に合った

付加価値を提供しなければならないという考えか

ら、「バリューコンサルティング」をベースとした提

案を行います。

【出典】 Blue Studio Magazine “The Tales” No.07

例えば、団地再生では団地だけでなく周辺エリ

アのブランディングを同時に行う事により、敷地建

物価値以上の長期的なエリア価値向上を図って

います。

需要の掘り起こし

人材ネットワークの構築

バリューコンサルティングをベースに建築から客付けまで提案。詳細なマーケティングにより需要を明確化

民間・自治体との連携により、不動産を通してコミュニティを形成

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建築・リノベーション事業者による取組事例

(2)人材ネットワークの構築

あえて「そのエリアに暮らしたい」という人をター

ゲットにせず、ほかの地域にないコンセプトを打ち

出し、それに共感してくれる人を集めることを提案

しています。

また、リノベーションに当たり、自治体などとの

連携も図っています。

○事例:座間市・ホシノタニ団地

築50年の鉄道会社の社宅をリノベーションした

事例です。

自治体が一部を借り上げ、市営住宅(建替工事

の一時移転先)や子育て支援施設として活用され

ています。

【出典】 ㈱ブルースタジオウェブサイト

まとめ

●単に経年劣化に対応するのではなく、その物件

やエリアでどのようなライフスタイルを構築でき

るかを考え、最良の提案を模索しています。

●建築事務所・不動産会社として、従来の業務で

ある原状回復を行うだけに留まらず、マーケテ

ィング、各種調査など総合的な不動産コンサル

ティングを用いて、バラエティ溢れる提案を実施

しています。また、物件だけではなく、エリアに

も意味づけを行うことで、コミュニティ生成に成

功しています。

<参考文献>

㈱ブルースタジオウェブサイト

新・公民連携最前線 PPP まちづくりウェブサイト

http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/tk/PPP/120200018

/121000001/

・民間・自治体と連携したリノベーション・エリアニーズからコンセプトニーズへ

㈱ブルースタジオの活動内容

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㈱リビタ 新たな日常の場作りとしてのリノベ (東京都)

19

事例6

建築・リノベーション事業者による取組事例

取組に至る背景

(1)背景

2005年、㈱都市デザインシステム(現 UDS)と

東京電力㈱のジョイントベンチャーにより、リノベー

ション事業を主軸とする㈱リビタが設立、2012年

より京王グループに入りました。一棟丸ごとリノベ

ーションの分譲マンションや、団地や老朽化した独

身寮を再生したシェア型賃貸住宅「シェアプレイス」

を展開、また、地域の老朽ビルを再生した宿泊複

合施設等、地域活性化の取組も開始しました。

「不動産」という枠組みを超え、「新たな日常や

文化を紡ぎ出す心地のよい場づくり」に、企画から

運営にわたり幅広く挑戦しています。

(2)関係者

●物件オーナー

●借主(居住者 など)

取組概要

(1)需要の掘り起こし

廃止された社員寮の活用に悩む企業と、従来

型のコミュニティ形成が難しい都市部に住む20代

~30代の社会人等を、「新たな日常や文化を紡

ぎ出す心地のよい場づくり」をベースにしたリノベ

ーション・運営・管理で結び付けています。

「シェアプレイス」では、リノベーション用に借上

げた物件の賃貸可能スペースを増やすために、食

堂等をあえて専用部とせず、コミュニティの核とな

る共用部の確保や充実(物件によっては、大型キ

ッチン付きラウンジ、シアタールーム、ライブラリー

等を配備)を重視しています。

借上げではなく、コンサルティングのみの形で

関与する場合も、オーナーに対して内装・デザイン

に加え、家具・家電等も含め提案。同社の積上げ

た実績の中でシェアハウスに適したアイテムをリス

ト化し、よりコストパフォーマンスの高いものを提案

しています。

○事例1:桜アパートメント

築18年の旧社宅を一棟リノベーションし、12世

帯すべてが自分らしい住まいを実現しています。

【出典】㈱リビタ ウェブサイト

○事例2:りえんと多摩平

独立行政法人都市再生機構(UR 都市機構)の

団地住棟をシェア型賃貸住宅として再生。企画・

設計から運営・管理まで手がけ、入居者と地域・

他世代との交流も促進しています。

【出典】UR都市機構ウェブサイト

○事例3:シェア型複合ホテルプロジェクト

全国各地の老朽化した遊休不動産を、用途変

更を伴うリノベーションを施し、宿泊施設、飲食店、

需要の掘り起こし

人材ネットワークの構築

・社員寮、独身寮を新たな日常の場としてリノベーション ・コミュニティを提供

イベント・情報発信で入居者や周辺地域とつながる

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建築・リノベーション事業者による取組事例

シェアスペース、店舗等で構成する「シェア型複合

ホテル」へと再生する事業を手がけています。「日

本の未来が宿る場。をつくる」をコンセプトとして、

まずは金沢でプロジェクトを開始しました。

【出典】㈱リビタ ウェブサイト

(2)人材ネットワークの構築

ウェブサイト、メールマガジンなどによる情報発

信に加え、シェアプレイスでの生活の様子やイベ

ント状況などをブログで公開し、シェアハウスでの

暮らしの実態を積極的に発信しています。

入居時のルール説明だけではなく、共用部分の

運営・管理に入居者のコミットメントを組み込み、

様々な問題に対して、入居者同士がコミュニケー

ションして問題を解決する仕組みを導入。これによ

り、同社の管理スタッフだけではなく、入居者も含

む自発的・総合的な管理を実現しています。その

結果、退去率も下がり、安定した稼働率を実現し

ています。

長年のシェアハウス運営実績から入居者のニ

ーズを検証するとともに、入居者が皆楽しみなが

ら暮らすことができるよう、シェアハウス間の移動

や交流が容易になるような物件横断型のイベント

を開催したり、共用部のインテリアや家具の配置

を工夫しています。

また、団地再生の一環で作られたシェアプレイ

スでは、物件側主催イベントに近隣住民を招待す

るなど、周辺地域との交流も実施しています。

<参考:㈱リビタが分類する入居者像>

①ビバーク型

地方からの上京、海外からの転勤など一時利用を目的にし

ている

②トラベラー型

サービス業や医療関係といった職場に勤め、友人と休日が

合わない、同世代が職場にいないといった理由で、交流を求

めている

③ピボット型

大手企業に勤めるハードワーカーが多い。自らの可能性を

高めるために異なる環境に自らの身を置き、多様な価値観・

情報をシェアして自己成長につなげたい

【出典】公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会・全国宅地建物取引業保証協会 災害時等における地域貢献活動や地域

社会の活性化に係る取組等に関する調査研究 報告書

まとめ

●従来のリノベーション業に留まらず、コミュニティ

作りを念頭に、物件の再生に併せて、「場づくり」

をプロデュース・提案しています。

●「場作り」の積極的な情報発信により、入居者の

確保・退去率の減少に貢献しています。

<参考文献>

災害時等における地域貢献活動や地域社会の活

性化に係る取組等に関する調査研究 報告書

(公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会、

公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会)

https://www.zentaku.or.jp/public/researchreport/p

df/h26_saigai-houkoku.pdf

・ウェブサイト等を使用した積極的な情報発信

㈱リビタの活動内容①

・入居者を巻き込んだ管理・運営

㈱リビタの活動内容②

・物件内外にわたる交流の促進

㈱リビタの活動内容③

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京町家等継承ネット及びその会員 京町家保全・活用の取組 (京都府)

21

事例 7

自治体・まちづくり団体による取組事例

取組に至る背景

(1)背景

「京都市空き家の活用、適正管理に関する条例」

施行を契機に、京町家等の適切な継承を促進す

るため、これまでの協働のネットワークを拡充し、

27の団体が集まり、2014年11月に「京町家等

継承ネット」を設立しました。

会員が京町家所有者及び居住者とともに京町

家継承のために活動しています。

【出典】京町家等継承ネットパンフレット

(2)関係者

●経済界

●不動産業者

●建築業者

●金融機関

●建築士、弁護士、司法書士等の専門家

●市民団体

●大学教授

●京都市 など

取組概要

(1)需要の掘り起こし

年々減少している京町家を保全・継承したい所

有者・住民を、自治体を含む様々な専門家からな

る会員のネットワークで、支援しています。京町家

等継承ネットでは以下の活動を行っています。

京町家等を次世代に継承していくため、普及

啓蒙活動

京町家・空き家相談会を開催し、所有者・居

住者の悩みに対応

「DIYプロジェクト」や「大型町家継承モデルプ

ロジェクト」など、支援システムの研究・開発

京町家等の適切な継承のため、会員及び専

門家を対象とした研修を実施

また、京町家の保全や活用の意識、課題、ニー

ズ等を把握するため、京都市、(公財)京都市景

観・まちづくりセンター及び立命館大学が主体とな

り、2008年度及び2009年度に行われた「京町

家まちづくり調査」の一環として、京町家所有者に

対してアンケートを実施しました。

(2)人材ネットワークの構築

京町家所有者の相続、修繕、活用の悩みを京

町家等継承ネット会員である様々な専門家(法律

専門家、地元の建築等の専門家、大工、不動産

業者、地元金融機関、市民団体等)が総合的に対

応しています。

人材ネットワークの構築 自治体・民間・学識関係者が枠を超えてネットワークを構築することで、京町家の継承に関する悩み解消を促進

資金調達手法の工夫 会員の金融機関が京町家保全のため商品を提供。事務局ではクラウドファンディングによる改修の支援を開始

需要の掘り起こし 京町家の認識を深め、適切に継承されることを目的に、会員それぞれが活動を工夫

Page 25: 不動産ストックビジネスの 発展と拡大に向けて地域ビジネス・活動を支える融資制度など、地域密着型金融の取組が 進みつつあることも踏まえ、地域活性化に貢献する小規模な不動産再

22

自治体・まちづくり団体による取組事例

また、貸したいけど不安があるという所有者に

対して、会員である不動産業者や大工が契約形

態、確認すべきポイント、借主負担型DIYの提案

など、バラエティ溢れるサポートを提供しています。

(3)資金調達手法の工夫

京町家等継承ネットの事務局である(公財)京

都市景観・まちづくりセンターは、市民・企業から

の寄附金のほか、京都市からの資金拠出、国から

の資金助成によって構成される「京町家まちづくり

ファンド」を設立。京町家の外観の修繕に対する改

修助成を行っています。

クラウドファンディングによる改修に対する支援

も2015年度から開始しています。

【出典】京都市景観・まちづくりセンター

<京町家カルテ>

●京町家の所有者が、その認識を深め、京町家

が適切に維持・管理されていくことを目的に、一

定の要件を満たす京町家に対して作成するも

の。(公財)京都市景観・まちづくりセンターが発

行しています。

<京町家カルテパンフレット>

【出典】京都市景観・まちづくりセンター

京町家等継承ネット会員である地元3つの金融

機関(以下参照)において、それぞれ京町家再生

等のための商品を提供しています。

銀行名 開始時期 商品名

京都信用金庫

2011 年~ のこそう京町家(住宅ローン)

活かそう京町家(事業用ロー

ン)

京都銀行 2015 年 11 月~

住宅ローン 京町家プラン

京都中央信用金庫

2015 年 12 月~

京町家レジデンスローン

京町家ビジネスローン

【出典】各金融機関ウェブサイト

まとめ

●市民団体や様々な専門家が加わり、それぞれ

の職能等を生かして、積極的に支援を行ってい

ます。

●空き家活用だけではなく、京町家ブランドの更な

る強化にもネットワーク一体となって貢献してい

ます。

<参考文献>

京町家等継承ネットウェブサイト

各種金融機関ウェブサイト

・京町家カルテ発行

(公財)京都市景観・まちづくりセンター ・京町家まちづくりファンドによる助成等

会員による活動内容② 地元金融機関

・京町家カルテを用いた低金利融資の提供

会員による活動内容①

【出典】京町家等継承ネットパンフレット

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世田谷トラストまちづくり 活用支援PFデザイン (東京都)

23

事例 8

自治体・まちづくり団体による取組事例

取組に至る背景

(1)背景

一般財団法人世田谷トラストまちづくりは、財団

法人せたがやトラスト協会と財団法人世田谷区都

市整備公社のそれぞれが有していたみどりや住ま

い等のまちづくりの専門性を統合し、今までに蓄

積されたトラスト活動や住民ネットワークを継承発

展させ、区民主体による良好な環境の形成及び

参加・連携・協働のまちづくりを推進し支援するた

めに設立されました。

また、「地域共生のいえ支援事業」、「空き家等

地域貢献活用相談窓口」(世田谷区事業。窓口業

務を受託)など、地域の空き家、空き部屋、空き室

の活用を目的として、地域交流、子育て支援、高

齢者支援等のために、豊富にある人材資源と空

間資源のマッチング等の相談を行っています。

(2)関係者

●空き家オーナー

●世田谷区住民

●NPO法人 など

取組概要

(1)需要の掘り起こし

地域共生のいえづくり支援事業は、子どもから

高齢者まで誰もが孤立せず活き活きと安心して住

み続けられる地域づくりを目指す取組として、200

5年にスタートしました。

世田谷区内の家屋等のオーナーによる、自己

所有の建物の一部あるいは全部を活用したまち

づくりの場づくりを支援することで、地域共生のま

ちづくりを推進し、世田谷区民の暮らしやすい環境

と、地域の絆を生み出し育んでいくことを目的とし

た事業です。

「地域共生のいえ」とは、オーナー自らの意思に

より、営利を目的としない地域の公益的なまちづく

り活動の場として、地域の絆を育み開放性のある

活用がなされている私有の建物のことを指しま

す。

「地域共生のいえ」の公益的活動のイメージとし

ては以下のようなものがあります。

・子どもたちの地域の居場所

・子育てを支援する場

・高齢者や障がい者の暮らしを支える場

・地域まちづくりを啓発・支援する場

・地域の人々の交流を広げる場 など

【出典】不動産ストック再生・利用推進検討会 第2回資料

・地域共生のいえづくり支援事業

世田谷まちづくりトラストの活動内容①

人材ネットワークの構築 専門機関・専門家と協定を結ぶことで包括的な空き家など地域貢献活用の推進をサポート。まちづくりに貢献

需要の掘り起こし 空間を持つオーナーの思いと多様な人材を掛け合わせニーズをマッチング。空き家などの地域貢献活用を推進

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自治体・まちづくり団体による取組事例

<自宅をまちにひらく:3段階の支援ステップ>

第1段階:構想支援

・オーナーの想いや考えをヒアリング

・空き家や空室等の活かし方を一緒に考える

第2段階:試行支援

・活用アイディアを実施し試行

・実地に即した運営方法や課題解決を考える

第3段階:開設支援

・開設イベントの実施

・憲章・プレートの設置

空き家等地域貢献活用相談窓口とは、世田谷

区が2013年7月より開設した、空き家を資源と捉

え、地域貢献団体とのマッチングを図ることによっ

て、福祉的活用や地域交流の場を創出しようとい

う取組です。

世田谷トラストまちづくりは、相談窓口業務を担

い、オーナーの掘り起こし(オーナーへの情報提

供、物件募集)、活用希望団体とのマッチング(市

民活動団体等とのマッチング、活用事例のある庁

内所管とのマッチング)を行うことで、空き家活用

支援プラットフォームのデザインを行っています。

空き家活用促進に向けた社会環境整備として、

空き家オーナーに連絡を取りたい人のために空き

家情報を公開しています。

<相談窓口のイメージ>

(2)人材ネットワークの構築

地域共生のいえづくり支援事業及び空き家等

地域貢献活用相談窓口の取組を進めるにあたり、

オーナー相互及び地元の様々な団体とのネットワ

ークを築き、情報交換や専門的なアドバイスを可

能としています。

(例)

・オーナー同士のネットワーク構築のため交流会

を開催

・地元の金融機関と協定を結び、事業計画・資金

計画の相談を依頼

・建築事務所協会と協定を結び、改修のアドバイ

スや工務店との連携を可能に

・不動産事務所協会と協定を結び、不動産情報の

共有等が可能に

また、空き家活用コーディネートをしたい人に対

する職能育成の取組も今後実施予定です。

<今後の世田谷トラストまちづくりによる取組>

【出典】不動産ストック再生・利用推進検討会 第2回資料

まとめ

●丁寧なオーナーへのヒアリング・地域関連団体

とのマッチングにより、より良いまちづくり、場づ

くりを促す物件活用に成功しています。

<参考文献>

不動産ストック再生・利用推進検討会第二回 資料3 一般財団法人世田谷トラストまちづくり ウェブサイト

http://www.setagayatm.or.jp/

・空き家活用など地域貢献活用相談窓口としての取組

世田谷まちづくりトラストの活動内容②

【出典】不動産ストック再生・利用推進検討会 第2回資料

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アーツ千代田 3331 旧校舎を新しいアートの拠点に (東京都)

25

事例 9 自治体・まちづくり団体による取組事例

取組に至る背景

(1)背景

閉校となった旧練成中学校を活用した「ちよだ

アートスクエア」が、「千代田区文化芸術プラン」の

重点プロジェクトとして位置づけられたことがきっ

かけです。

改修・設計から管理までの一切を民間の選定

事業者「合同会社コマンドA」が受託し、旧校舎を

新たなアートの拠点に作り上げました。

(2)関係者

●千代田区

●まちづくり会社

●アーティスト(入居者)

●住民 等

取組概要

(1)需要の掘り起こし

旧校舎の活用に当たって、ただそのまま貸すの

ではなく、受託者が「場を貸される」立場から「場を

作る」主体として、「場」に常駐しながら、アートの

新しい拠点を形成しています。

運営団体である合同会社コマンドAは、改修・設

計にも関わり、場のアイデンティティーを形成する

ための取組を行っています。

元の教室空間を改修し、アトリエ・会議室として

利用、校庭を再整備した公園に面してコミュニテ

ィ・スペースを設置。ギャラリースペースでは展示

会を行ったり、レンタルスペースとしても活用して

います。カフェなども設置されており、芸術に関心

のあるさまざまな人々の交流の場となっていま

す。

入居者・利用者の募集等は受託者であるコマン

ドAが実施し、テーマに合った利用者を選ぶことで、

場のデザインを行っています。

また、様々な活動・情報発信を通じて、東京の

みならず、日本全国や東アジアをはじめとする世

界中をつなぐ「新しいアートの拠点」を目指してい

ます。

【出典】不動産ストック再生・利用推進検討会 第1回資料

(2)人材ネットワークの構築

AIR(Artist in Residence)プログラムでは、国内

外の文化機関と協力し、国内外のアーティストに

よる滞在制作を実施。滞在期間中、地域コミュニ

ティと連携した様々なアートイベントを行い、アート

・新しいアートの拠点のための設計

アーツ千代田 3331の活動内容①

・AIR3331プログラムによりアーティストと地域社会をつなぐ

アーツ千代田 3331の活動内容②

人材ネットワークの構築 アーツ千代田 3331 をアートだけでない、新たなまちづくりの「場」として展開

需要の掘り起こし 文化芸術活動に焦点をあて、旧校舎を利用したアートに係わるイベントやスペースを設置

Page 29: 不動産ストックビジネスの 発展と拡大に向けて地域ビジネス・活動を支える融資制度など、地域密着型金融の取組が 進みつつあることも踏まえ、地域活性化に貢献する小規模な不動産再

26

自治体・まちづくり団体による取組事例

を核とした地域活性化を実現しています。

㈱リノベリングが開催運営するリノベーションス

クールのプロフェッショナルコースがアーツ千代田

3331において開校。遊休不動産の再生を通じて

地域活性化を図るための、新しい都市計画の方

法論を体系的に学べる機会を提供しています。

まとめ

●コーディネーターが場に常駐し、「場」をデザイン

することで、アートという軸のもとコミュニティを

形成しています。

●デザインされた場は、内外からの活発な交流の

場として活用されています。

<アーツ千代田 3331>

【出典】不動産ストック再生・利用推進検討会 第1回資料

<参考文献>

不動産ストック再生・利用推進検討会 第1回 資料

6-1

公開論文:「アート創造拠点としての廃校施設コンバ

ージョンに関する考察-東京都区部における事例をも

とに-」

http://www3.grips.ac.jp/~culturalpolicy/pdf/nunome.p

df

アーツ千代田 3331ウェブサイト

http://www.3331.jp/

・リノベーションスクールへの場の提供・新たな場作りの拠点に

アーツ千代田 3331の活動内容③

Page 30: 不動産ストックビジネスの 発展と拡大に向けて地域ビジネス・活動を支える融資制度など、地域密着型金融の取組が 進みつつあることも踏まえ、地域活性化に貢献する小規模な不動産再

米子信用金庫 イニシアチブによるサ高住整備 (鳥取県)

27

事例 10

その他の取組事例

取組に至る背景

(1)背景

信用金庫は、地域における中小企業や個人の

ための地域密着型金融機関であり、また地域資

産の劣化が信用金庫の経営にも大きな影響を与

えることから、地域需要の把握が重要でした。

米子市においても少子高齢化が問題となる中で、

米子信用金庫によるサービス付き高齢者向け住

宅(以下「サ高住」)の整備事業は、地域活性化プ

ロジェクトの一環でした。

事業を実施するにあたり、米子信用金庫による

丁寧な地域の現状把握を基に、米子市の都市計

画マスタープランに基づき「中心市街地の居住を

促進する地域」に、高齢者向け賃貸住宅としてサ

高住を2棟整備しました。

<「サ高住整備事業」全体図及び建物外観図>

【出典】環境不動産普及促進機構ウェブサイト 不動産証券化事例の紹介

「地方圏における中心市街地活性化への取組みと課題」

(2)関係者

●米子信用金庫

●地権者

●その他地元金融機関(第弐号案件から)

●民間会社(第弐号案件から)

●地元医療機関 等

取組概要

(1)需要の掘り起こし

米子信用金庫による人口動態調査、仮説検証

及び地域へのアンケート等から、現状を定性的・

定量的に把握することで、高齢者の街なかにおけ

る住まいの需要を見出し、その需要の受け皿とし

て、サ高住を整備しました。

(2)資金調達手法の工夫

第一号案件、第弐号案件とも公益社団法人 全

国市街地再開発協会が提供している、「街なか居

住再生ファンド」を利用しています。

当該ファンドのエクイティ出資の条件のうち、倒

産隔離の適格要件の充足のため、第一号案件で

は普通株式による「専ら会社」(株式会社)を設立

し、第弐号案件では、特定目的会社(TMK)を組

成しました。

米子信用金庫が、エクイティを含め一つ一つ細

かく全体のスキームを設計・アレンジしています。

第一号案件では、金融機関であるレンダーとし

ての立場も考慮しつつ、以下のようなリスクヘッジ

を行いながら、リスク負担・ノンリコースローンの提

供を行いました。

・サブリース会社を利用した家賃保証制度の採用

・地元医療法人が実質のマスターレッシーとなり入

・エクイティ含め全体スキームをアレンジ

米子信用金庫の活動内容①

・レンダーとして地域振興を意識

米子信用金庫の活動内容②

需要の掘り起こし 米子信用金庫の「エリアマーケティング」による丁寧な現状把握⇒地域需要を踏まえた必要な機能を提供

資金調達手法の工夫 不動産証券化を米子信用金庫がイニシアチブを持ってアレンジ。第弐号案件ではさらにスキームを発展

Page 31: 不動産ストックビジネスの 発展と拡大に向けて地域ビジネス・活動を支える融資制度など、地域密着型金融の取組が 進みつつあることも踏まえ、地域活性化に貢献する小規模な不動産再

28

その他の取組事例

居者へ転貸

・建物が罹災するなど復旧までの間、一時的に資

金に支障を来すような場合に備えて、地元出資

者をスポンサーとしてサポート契約を締結

また、地域振興に資する点を評価して、25年程

度の均等弁済に応じています。

第弐号案件では、特定社債の私募引受けをア

レンジしました。

第一号案件で、専ら会社の株式会社としたこと

で、「倒産隔離」の適格要件は満たせたものの、資

産流動化に関する法律によるペイスルー課税の

適用を受けるまでは至らずに、法人税を支払った

上で配当しなければなりませんでした。

第弐号案件では、当該法律に基づく特定目的

会社(TMK)方式を採用することで、二重課税の

問題の回避を図っています。

<サービス付き高齢者向け住宅の証券化スキーム(第弐号案件)>

【出典】環境不動産普及促進機構ウェブサイト 不動産証券化事例の紹介 「地方圏における中心市街地活性化への取組みと課題」

まとめ

●地域の金融機関が「地域活性化」の視点に立ち、

イニシアチブを持ってスキームをアレンジしてい

ます。

●地域の金融機関が専門的な知見をもって具体

的かつ個別に問題に対応し、解決しています。

<参考文献>

環境不動産普及促進機構ウェブサイト 不動産証券化事例の紹介 「地方圏における中心市街地活性化への取組みと課題」

・第弐号案件のブラッシュアップを先導

米子信用金庫の活動内容③

Page 32: 不動産ストックビジネスの 発展と拡大に向けて地域ビジネス・活動を支える融資制度など、地域密着型金融の取組が 進みつつあることも踏まえ、地域活性化に貢献する小規模な不動産再

ミュージックセキュリティーズ㈱ あまみ温泉 南天苑ファンド (大阪府)

29

事例 11

その他の取組事例

取組に至る背景

(1)背景

旅館・南天苑は、辰野金吾による歴史的な価値

のある建物であり、周りには豊かな自然が溢れた

旅館です。一方で、露天風呂がなかったことから、

集客機会を逃していました。

【出典】不動産ストック再生・利用推進検討会 第1回資料

(2)関係者

●旅館

●民間(ミュージックセキュリティーズ㈱)

●投資家

取組概要

(1)資金調達手法の工夫

現在はほぼ稼動していない離れを露天風呂付

き客室に改装する費用を、ミュージックセキュリテ

ィーズ㈱のクラウドファンディングのプラットフォー

ムにて募集。これは、宣伝効果だけではなく、旅館

を「応援したい」気持ちがあり、ふるさと投資に興

味のある投資家へ訴求できる機会となりました。

「夢をかなえる」/「夢を応援したい」という相互的

な趣旨を含むクラウドファンディングを利用するこ

とで、ローンや従来の不動産証券化のスキームと

は異なる投資家を呼び込むことが可能になり、小

規模な営業者でも既存のプラットフォーム(ミュー

ジックセキュリティーズ㈱)を利用することで、ファ

ンドの組成・証券化による資金調達に成功してい

ます。

<参考:スキーム>

【出典】ミュージックセキュリティーズ㈱・セキュリテ プロジェクト仕組み

<参考:投資家特典>

1.本館・素泊まり宿泊無料サービス(1組2名分、

14,000 円相当)

2.会席料理宿泊プラン(通常 15,000 円)を但馬牛

つき特別献立宿泊プラン(通常 20,000 円)にグ

レードアップ(1組2名分)

3.改装後の露天風呂付き客室の宿泊割引サー

ビス(1部屋につき 10,000 円引き)

4.「日帰りコース」(お食事・温泉付き、お部屋3時

間利用可能、1名 5,000 円〜15,000 円)を20%

引き など

【出典】ミュージックセキュリティーズ㈱・セキュリテ プロジェクト概要

<参考文献>

不動産ストック再生・利用推進検討会 第1回 資

料 6-3

ミュージックセキュリティーズ㈱・セキュリテ

http://www.musicsecurities.com/communityfund

/details.php?st=a&fid=

委託手数料

分配金

資金フロー契約関係・情報・生産関係フロー

匿名組合員

取扱者

ミュージックセキュリティーズ㈱

お客様(個人・法人)

営業者

㈱南天苑匿名組合契約「あまみ温泉

南天苑ファンド」

業者

出資金

代金

代金

匿名組合契約

委託(組成・販売・運営・監査)

宿泊サービス

改装工事

資金調達手法の工夫 改修費にクラウドファンディングを利用。宣伝効果と「応援したい」投資家へ訴求し、潜在顧客の開拓に利用