13
17 学生のソーシャルワーク専門職性到達度と その関連要因の分析 彩子 ・武 田加代子 〔要 旨〕 専門職性の高いソーシャルワーカーを養成するためには,養成教育の段階か らソーシャルワーク専門職性 を意識 した教育を行なっていることが前提であるとの認識 か ら,教育の場で用いることの出来る "ソーシャルワーク専 門職性到達度 自己評価尺 度:学生版 (SocialWorkProf iciencylnventoI・yforStudents)"を作成 し,構成概念 妥当性の検証 とソーシャルワーク専門職性 に影響 を及ぼす と考えられる要因を明 らかに し,学年差の見 られた使命感項 目について考察 した。確証的因子分析の結莱,適合度は 高 く本尺度の構成概念安当性は支持 された。またソーシャルワーク専門職性 に影響 を与 えている一番の要因は主観的学習量であった。分散分析 ・多重比較の結果,使命感と学 年 との間には有意な差が見 られ,2 年生において有意に低 くなるという結果であった。 この原因について考察するとともに,今後の教育上に役立てる方策を提示 した。 〔キーワー ド〕 ソーシャルワーク,専門職性, 自己評価,評価尺度,使命感 現代社会においては様々な社会生活上の困難を抱える人々が増え,ソーシャルワーカーへの 相談内容 も多様化 ・複雑化 しつつあ り,資格取得志向の大学教育に偏 っていては現場 に出て真 に専 門職性 の高 い ソーシ ャル ワーカー としての役割 を発揮 しが たい もの と思 われ る。真 に専 門 職性の高いソーシャルワーカーとは,社会福祉士あるいは精神保健福祉士 といった国家資格 を 取得 していることも必要であるが,人間と社会に関する幅広い知識 と知識 を実際に運用 しうる 専 門的技 能 と人権意識 を始 め とす る倫 理性 や専 門職業人 としての使命感 を もち,専 門職 と して 自律性が発揮出来ること,専門職団体に所属 し教育 ・研鎖 を積み重ねていること等が必要であ る こ とを, これ までの調査研 究 に よって明 らか に して きた (南他1997 , 両2000 ,両 ・武田2000 , 両200 1,武田 ・南200 1,南 ・武田 ・森野201 ,南・武田・森野2002 ,武田 ・南2002 ,南 ・武田200 3, 武田 ・南200 4,両 ・武田2004)O そ して,2002 年度から 2004 年度にかけて日本学術振興会より科学研究補助金を得て南 ・武田 の共同研究により "ソーシャルワーク専門職性 自己評価尺度 : SocialWork Pro丘ciency Inventory"を開発 し,現場のソーシャルワーカーが42 項 目の質 問 に答 えなが ら硯 時点 にお け る 自分 自身の ソー シ ャル ワー カー と しての専 門職性 を測定 で きるイ ンベ ン トリー (カーボ ン仕 樵) を作成 し,その手引書 ・解説書 (南 .武 田 『ソーシャル ワーク専門職性 自己評価』相川書 ,2004)を刊行 した。その尺度の妥当性の検証 については,武田によって全国のソーシャル ワーカーを対象 として現在継続研究がなされているところである。 さて,次の段階として専門職性の高いソーシャルワーカーを養成するためには,養成教育の 段 階か らソーシ ャル ワー ク専 門職性 を意識 した教 育 を行 な ってい るこ とが前提 であ る と考 えた。

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17

学生のソーシャルワーク専門職性到達度と

その関連要因の分析

南 彩子 ・武田加代子

〔要 旨〕 専門職性の高いソーシャルワーカーを養成するためには,養成教育の段階か

らソーシャルワーク専門職性を意識した教育を行なっていることが前提であるとの認識

から,教育の場で用いることの出来る "ソーシャルワーク専門職性到達度自己評価尺

度 :学生版 (SocialWorkProficiencylnventoI・yforStudents)"を作成し,構成概念

妥当性の検証とソーシャルワーク専門職性に影響を及ぼすと考えられる要因を明らかに

し,学年差の見られた使命感項目について考察した。確証的因子分析の結莱,適合度は

高く本尺度の構成概念安当性は支持された。またソーシャルワーク専門職性に影響を与

えている一番の要因は主観的学習量であった。分散分析 ・多重比較の結果,使命感と学

年との間には有意な差が見られ,2年生において有意に低くなるという結果であった。

この原因について考察するとともに,今後の教育上に役立てる方策を提示した。

〔キーワード〕 ソーシャルワーク,専門職性,自己評価,評価尺度,使命感

は じ め に

現代社会においては様々な社会生活上の困難を抱える人々が増え,ソーシャルワーカーへの

相談内容も多様化 ・複雑化しつつあり,資格取得志向の大学教育に偏っていては現場に出て真

に専門職性の高いソーシャルワーカーとしての役割を発揮 しがたいものと思われる。真に専門

職性の高いソーシャルワーカーとは,社会福祉士あるいは精神保健福祉士といった国家資格を

取得 していることも必要であるが,人間と社会に関する幅広い知識と知識を実際に運用 しうる

専門的技能と人権意識を始めとする倫理性や専門職業人としての使命感をもち,専門職として

自律性が発揮出来ること,専門職団体に所属 し教育 ・研鎖を積み重ねていること等が必要であ

ることを,これまでの調査研究によって明らかにしてきた (南他1997,両2000,両 ・武田2000,

両2001,武田 ・南2001,南 ・武田 ・森野2001,南 ・武田 ・森野2002,武田 ・南2002,南 ・武田2003,

武田 ・南2004,両 ・武田2004)O

そして,2002年度から2004年度にかけて日本学術振興会より科学研究補助金を得て南 ・武田

の共同研究により "ソーシャルワーク専門職性 自己評価尺度 :SocialWork Pro丘ciency

Inventory"を開発 し,現場のソーシャルワーカーが42項目の質問に答えながら硯時点におけ

る自分自身のソーシャルワーカーとしての専門職性を測定できるインベントリー (カーボン仕

樵)を作成 し,その手引書 ・解説書 (南 .武田 『ソーシャルワーク専門職性自己評価』相川書

戻,2004)を刊行 した。その尺度の妥当性の検証については,武田によって全国のソーシャル

ワーカーを対象として現在継続研究がなされているところである。

さて,次の段階として専門職性の高いソーシャルワーカーを養成するためには,養成教育の

段階からソーシャルワーク専門職性を意識した教育を行なっていることが前提であると考えた。

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18 天 理 大 学 学 報

そうした認識から,教育の場で用いることの出来る "ソーシャルワーク専門職性到達度自己評

価尺度 :学生版 (SocialWorkPro丘ciencylnventoryfわrStudents)"を作成し,構成概念妥

当性の検証を行なうことが本研究の第 1の目的である。さらに,ソーシャルワーク専門職性到

達度に影響を及ぼすと考えられる要因を明らかにすることが第2の目的である。最後に,学年

差の見られた項目についてその原因として考えられる事柄について考察し,今後の教育に役立

てていくことを第3の目的とする。

Ⅰ,ソーシャルワークにおける2つの専門職性研究

1,専門性と専門職性

「専門性」あるいは 「専門職性」という言葉は,論者によってさまざまに使い分けられてお

り,しばしば混同されて用いられているが,「専門性」とはある領域の職業に特異的な専門的

特性のことであり,「専門職性」とは当該専門職が有する専門職としての成熟性であると考え

る。そして本論文では,個人の専門職性に焦点を当てる。

「ソーシャルワークの専門性」という場合には,「生活の全体性」「総合性」「統合性」「複合(l)性」に特徴をもち,全人格性からくる本質的な 「ジェネリック性」に主眼点が置かれる。すな

わちソーシャルワークが対象とする人間のとらえ方が 「包括的 ・マクロ的 ・全体的」であり,

「人と状況の全体関連性」を視野に入れた上で,社会関係を通して多様な役割を果たしていく

ところにその特質がある。「人と状況の全体関連性」は,クライエントの個別の事情に対応し

て常に流動的なものであるため,ソーシャルワーカーの援助はその場限りのものではなく,治

療の場においても生活の場においても継続し,常に地域での生活を視野に入れた援助を計画す

る。医師の治療のように即効性はないかもしれないが,時間をかけて,クライエントの話を聴

きつつ生活上の問題やニーズを明らかにし,クライエントの自己決定を最大限に尊重してく。

そのためには,相手が自己決定しやすいような条件を整えることや,一人一人のクライエント

に合った社会資源に関する情報を提供することや,相手が気持ちを伝えたり整理したりしやす

いような面接技法を駆使する。そうしたことがソーシャルワークという職業の一つの特性と言

える。

そして,「ソーシャルワークの専門職性」という場合には,ソーシャルワーカーがこうした

専門職としていかに成熟しているかをあらわす到達度として考えることができる。

2,専門職性の属性モデル研究

専門職性の研究には大きく2つに分かれていて,一つは属性モデル研究であり,今一つはプ

ロセスモデル研究である。まず属性モデル研究とは,職業が専門職として成立するために必要

な要素を明らかにしようとするものである。

属性モデル研究の代表者は,フレックスナ- (Flexner.A.1915)で,「フレックスナ-報

告」のなかで,専門職の基準として①個人的責任を伴う知的作業であること,②科学と学問に

由来すること,③実用的かつ明確な目的達成を目指すこと,④教育の場で伝達されうる技術を

もっこと,⑤自主的に組織結成をすること,⑥利他的な動機に基づくことの6つをあげた。フ

レックスナ-はこれらの専門職の特徴を医師との対比によって比較した場合に,全体としてソ

ーシャルワークは専門職には該当しないと結論づけた。特に,①知的職業ではあるが,個人的

責任を伴うというより媒介者的であること②職務範囲を限定することが困難な職業であり,従

って明確な目的をもつことが難しいこと,③目的を明確化しにくいことと関連して,専門的敦

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学生のソーシャルワーク専門職性到達度とその関連要因の分析 19

育方法が未成熟であること。これらの点で,ソーシャルワークには専門職たる資格がないとし

たうえで,専門職にとって最も大切な要素は専門的な精神であり,利他的な献身であるが,こ

の点に関してはソーシャルワークにはそれが存在していると述べている。

このフレックスナ-報告は,全米のソーシャルワーカーに大きな警鐘を鳴らすこととなり,

これによって発奮させられた者たちはこの報告を覆そうという動機のもとで,その後のソーシ

ャルワーカーの実践とソーシャルワーク研究者の理論構築が始まったといっても過言ではない。

その 1人が,リッチモンド (Richmond,班.E.)である。フレックスナ-報告から2年後の

1917年,リッチモンドは "SocialDiagnosis"を著し,数多 くのソーシャル ・ケースワーク事

例の集積からソーシャル ・ケースワークの定義とプロセスを一般化し,社会科学に裏づけられ

た社会調査 (socialstudy)に基づいた資料をもとに社会診断 (socialdiagnosis)を行って社

会的処遇 (socialtreatment)を行うに至る技術を伝達可能なものとして記述した。これは米

国において専門職業化運動の旗印となった。

3,専門職性のプロセスモデル研究

一方,専門職のプロセスモデル研究は,理念型としての完全専門職を最初に描き,その対極

は不完全専門職を配置し,それぞれの専門職の位置する段階と発展のプロセスを明らかにしよ

うとする.カーサウンダースとウイルソン (Carr-Saunders,A.M.&Wilson,P.A.1931)

は,職業というものは未熟な段階から成熟 した段階に至るまでプロセスを経て発展 していくと

考えた。また,ウイレンスキー (WilenSky, H.L.1964)は,18の職業を①確立された

(established)専門的職業,②その途上ないしは境界上にあるもの,③新しいもの (new),

④疑わしいもの (doubtful)に4分し,ソーシャルワーカーを②のその途上ないしは境界上に

ある職種として位置づけた。エツイオ一二 (Etzioni,A.1969)は,半専門職の概念を提唱し,

教師,看護師,ソーシャルワーカーをその代表として掲げた。エツイオ一二によれば半専門職

とは 「完全専門職の地位への要求が十分に確立されず,またそれが十分に期待されていない一

群の新専門職」であり,理念型としての完全専門職と非専門職との中間に位置づけた。またム

ーア (Moore,W.E.1970)は,非専門職が完全専門職に近づいていくためには,①フルタイ

ムの職業となること,②社会のより多 くの人々に不可欠のサービス供給を目的とする継続的活

動として確立すること,③国家資格を与えて,無資格者を排除し,サービスの維持 .改善に責

任をもつ職能団体を形成すること,④制度化された高等教育機関による専門的 「知識」を修得

することと専門的な訓練を確立させること,⑤成文化された倫理綱領が制定されること,⑥職

務活動上の自律性が確保されること,という6つのステップを踏んでいくと述べている。

4,ソーシャルワーカーの専門職性

ソーシャルワーカーという職種に関して,これまで述べたような研究者の判断に照らして考

えたとき,ウイレンスキーは発展途上の職業であると言い,エツイオ一二は半専門職であると

捉えたが,ムーアの所説に従えばわが国のソーシャルワーカーは,無資格者を排除するところ

まではいっておらず (名称独占の資格で業務独占ではない),特に2次的機関において職務活

動上の自律性が十分確保されているといは言い難い面があり,専門職性への到達過程にある職

種であると考えて良いであろう。

そして,早急に専門職性を向上させるためには,まず夫々のソーシャルワーカーが自分白身

の位置を確かめることが大事であり,そのためには客観的に評価 しうる指標が必要であるとの

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20 天 理 大 学 学 報

認識から,SocialWorkProficiencyInventory(ソーシャルワーカーによる専門職性自己評価

尺度)を2004年に作成した (南 ・武田2004)。今回使用する尺度はソーシャルワーカー用の尺

度を改善して学生用として利用できうる形に作りなおしたものであるO なお,従来の研究にお

いて学生に対して行った同様の先行研究は見当たらない。

Ⅰ,研 究 方 法

1,対象と調査時期

2004年12月に天理大学社会福祉専攻の全学年の学生に対して,授業時間の一部を使って質問

紙を配布し,欠席者を除いて全員に回答してもらい,用紙を剛 叉した。

2,手続き

ソーシャルワーク専門職性到達度を示すと考えられる5領域30項目から成る尺度 (表2)杏

用意し,学生のソーシャルワーク専門職性到達度を評価するための自己記入式質問紙を作成し

た。各項目は5段階評価され,領域別得点と総得点でソーシャルワーク専門職性到達度を測っ

た。なお,調査の意図を十分に説明し,無記名とし,研究以外では決して用いないことを話し

た。有効回答数は105であり,回収した調査票を量的に分析 した。分析には,統計解析ソフト

SPSS Ver12.0,およびAmos5.0を用いた。尺度の構成概念妥当性の検証には確証的因子分析

を,ソーシャルワーク専門職性到達度-の影響要因の分析には重回帰分析を,学年差の見られ

た項目の有意差検定には分散分析と多重比較を実行した。

Ⅱ,結 果

1,対象者の特徴

ソーシャルワーク専門職性到達度評価以外に尋ねた項目は,性別 ・学年 ・実習経験の有無と

実習先種別 ・自分自身の学習量の程度 ・将来の進路希望である。

対象者の基本的属性は,表 1に示す通りである。男女比はちょうど2対3であり,1年生 ・

2年生と3年生 ・4年生との間で人数が異なるのは入学定員を20名から30名に変更したからで

ある。実習経験に関しては,2年生で社会福祉援助技術現場実習 1 (施設実習),3年生で社

会福祉援助技術現場実習2 (主として機関実習),4年生で精神保健福祉援助実習 (精神保健

福祉関連施設実習)が配当されているため,2年生以上の者が実習を経験していることになる

が,実習経験有 りの者が71名 (67,6%),実習経験無しの者が34名 (32.4%)であり,これは

末だ実習が開講されていない1年生32名と2年生で実習必要科目が履修されなかったため実習

に行っていない2名を除く全員が実習を経験していることになる。

実習先種別に関しては,2年生で社会福祉援助技術現場実習 1(施設実習),3年生で社会

福祉援助技術現場実習2 (主として機関実習),4年生で精神保健福祉援助実習 (精神保健福

祉関連施設実習)を履修した者が行った実習先を全てカウントしているため,計120箇所とな

っている。高齢者関連施設を経験した者が26名で最も多く,精神保健福祉関連施設を経験した

者が4年生8名となっている。

今現在の自分自身の学習量の程度に対する回答は,かなりしている0名,普通程度にしてい

る18名 (170/.),わからない13名 (12.40/.),あまりしていない68名 (64,80/.),全 くしていな

い8名 (17%)であり,しているという者が17%,していないという者は72.4%と7割を超え

る数である。

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学生のソーシャルワーク専門職性到達度とその関連要因の分析 21

将来 の進路 希望 に関 して は,ソー シャル ワー カー57名 (51.3%),ケ ア ワー カー14名

(13.3%),その他19名 (18.1%),未定15名 (14.3%)であ り,ソーシャルワーカーと答 えた

者が54.3%と半数を超えている.

表 1 対象者の基本的属性

項目 カテゴリ- N

性別 男性 42

女性 630

0

0

0

4

6

学年 1年生

2年生

3年生

4年生

実習経験の有無 有り

無し

N-105

5

6

9

0

0

7

1

0

3

2

2

2

2

9

3

1

3

2

2

2

2,学生によるソーシャルワーク専門職性到達度自己評価結果

今回作成 した "SocialWorkProficiencyInventoryforStudents"(ソーシャルワーク専門

職性到達度 自己評価尺度 :学生版)の30の尺度項 目と,そのそれぞれについて 5段階評定を行

い 「かな りあてはまる」 という回答に5点,「ややあてはまる」 という回答に4点,「どちらと

もいえない」 という回答に3点,「あまりあてはまらない」 という回答に2点,「あてはまらな

い」 という回答に 1点を与えて得点化 し,平均値および標準偏差を算出 した記述統計 を,表 2

において示す。

表2 学生による5段階評定結果 (平均値および標準偏差,N-105)

使命感 1.福祉の仕事を努力して続けることにより自己実現をはかれると思う 3.840.982

(平均3.77) 6.弱い立場,権利が侵害されている人の力になる仕事だと思う 3.891.227

11.福祉の仕事は,他者に献身するという側面をもっていると思う 3.951.032

16.福祉の仕事に対して一種の使命感をもっている 3.461.193

21.ソーシャルワークの価値を実現するための仕事だと認識している 3.231.103

26.福祉の仕事は,公共の福祉に貢献するものであると思う 4.031.014

倫理性 2.ソーシャルワーカーの倫理綱領をよく理解している 2.690.974

(平均3.92) 7.何故倫理が問われるのか,その理由を理解している 3.921.044

12,判断に迷うとき,倫理綱領を参照しようと思う 3.761,(泌1

17.所属機関や同僚の非倫理的行動を見過ごすことはしないと思う 3.770.923

22.いかなる状況にあろうと人としての尊厳を守ることを念頭におきたい 4.7 0.57

27.クライエントには,中立 ・公正な態度で接したいと思う 4.520.761

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22 天 理 大 学 学 報

自律性 3.他職種と協働するときに場合によっては裁量権を発揮 したいと思う

(平均3.30) 8.援助の進め方を,自分自身の判断で決定することができる

13.他者の指示によらず仕事を進めていくことをめざしている

18.必要に応じて援助チームのなかで主導権を握れる

23.責任を伴った判断をしなければならない場合には,すると思う

28.開業することもできる仕事であると思う

3.24 1.114

2 .4 1.006

2.65 1.293

3.19 1.169

4.1 0.919

3.61 1.297

知識 ・理論 4.社会福祉に関する幅広い知識を系統立てて学んでいる

(平均2.80) 9.援助の対象となる領域に関する幅広い知識を身につけている

14.クライエントを理解するための諸理論を学んでいる

19.幅広 く,かつ最新の社会資源の情報を有している

3.06 1.1 3 4

2.5 0.9

2.91 1.249

2.35 1.074

24.人とそれを取り巻く状況を理解する幅広い知識および洞察力を有す 2.87 1.02

29.複数のソーシャルワークの援助理論を学んでいる

専門的技能 5.クライエントとの間で適切な人間関係が築ける

(平均3.54)10.状況や問題に対 してアセスメントを行い,援助計画を立案できる

15.問題解決の方法について,創造的 ・効果的に工夫できる

20.クライエント自身の力を引き出すよう心がけたい

25.他職種や同僚とうまく連携 し,適切な人間関係を築けると思う

30.必要に応じて社会に向かって行動や発言をすることができると思う

2.7 1.218

3.62 1.032

2.32 0.995

2.92 1.133

4.69 0.64

3.89 1.031

3.28 1.148

(全体平均値 3.54)

学生のソーシャ)Vワーク専門職性到達度 自己評価結果を示す表 2において,使命感を表す項

目に関して,全学生の平均点は3.77点であった。倫理性に関 しては3.92点,自律性に関 しては

3.3点,知識 ・理論に関 しては2.8点,専門的技能に関 しては3.54.卓であった。図 1に明らかな

ように,使命感や倫理性はやや高いものの,知識 ・理論に関しては低 く評価 してお り,学習量

の低 さが伺える。

使命感

倫理性

自律性

知識 ・理論

専門的技能

0 1 2 3 4 5

図 1 学生によるソーシャルワーク専門職性自己評価結果 (5領域別平均値)

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学生のソーシャルワーク専門職性到達度とその関連要因の分析 23

3,変数間の相関関係

各変数間の相関関係 (Pearsonの相関係数)は,表3の通 りである。ソーシャルワーク専門

職性 と高い相関関係にあるのは現在の主観的学習量 (p<0.01)である。あとは,実習回数 ・

ソーシャルワーカー-の志向性との間で僅かではあるが正の相関が見られる。

この結果より,ソーシャルワーク専門職性を規定する要因を,実習回数 (実習量).ソーシ

ャルワーカーへの志向性,主観的学習量と考え,それらを説明変数とし,ソーシャルワーク専(2)

門職性を従属変数として,重回帰分析を実施 した。

表3 変数間の相関関係 (Pearsonの相関係数)

(丑 ② (彰 ④ ⑤ ⑥

(丑性別 1.000

②学年 0.039 1.000

(釘実習回数 0.118 0,915** 1.000(むsw専門職性 0.093 0.111 0.102 1.000

(9主観的学習量 0.005 -0.088 -0.061 0.341串串 1.000

(むswrへの志向性 -0.008 -0.068 0.004 0.119 0.198* 1.000

**p<0.01 *p<0.05

4,ソーシャルワーク専門職性を規定する要因の重回帰分析および確証的因子分析

ソーシャルワーク専門職性に関連する要因を,実普回数 (実習量),ソーシャルワーカーへ

の志向性,主観的学習量と考えてそれらを説明変数とし,ソーシャルワーク専門職性を従属変

数として,重回帰分析を実行 し,同時にソーシャルワーク専門職性到達度評価尺度の構成概念

妥当性の検討をするための確証的因子分析をAmos.5を用いて,実行 した。

結果は図2のとおりである。なお各パスに付 した数字は標準化因果係数であり,表4に示す

とおりである。

表4 重回帰分析 ・確証的因子分析結果の各パスの棲準化因果係数

SW専門職性

SW専門職性

SW専門職性

使命感

倫理性

知識 ・理論

自律性

専門的技能

<一一一 実習回数

<一一一 主観的学習量

<一一一 SWrへの志向性

<一一一 SW専門職性

<一一一 SW専門職性

<--- SW専門職性

<一一一 SW専門職性

<--- SW専門職性

1

8

3

RU7

9

3

4

2

2

9

0

7

(×)0

3

1

4

0

4

5

4

5

6

0

0

0

0

0

0

0

0

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24 天 理 大 学 学 報

x2-34.59 df-20 x〟df-1.73IFI-0.836 TLl=0.748 CFI-0.82RMSEA-0.084

図2 ソーシャルワーク専門職性関連要因の重回帰分析 ・確証的因子分析結果

図2の右側の確証的因子分析の結果は,標準化因果係数 (因子付加量)がいずれも0.4を上

回る値であり,尺度の構成概念妥当性は支持された。

図2の左側の重回帰分析結果に関しては,主観的学習量からソーシャルワーク専門職性に付

したパスの標準化因果係数が0.43であり,1%水準の確率で有意であった。実習回数とソーシ

ャルワーカーへの志向性からソーシャルワーク専門職性に付 したパスの標準化因果係数は低い

ちのの,ソーシャルワーク専門職性の決定係数 (重相関係数の平方 :R2) は,0.207であり,

これら3要因によってソーシャルワーク専門職性規定要因の約21%が説明された。また図の右

側の確証的因子分析結果はいずれも5%以下の確率において有意であった。モデル全体の適合

度の検討であるが,xZ値に関 しては34.59(自由度-20,x2/DF-1.73,p-0.022)という値

であ り,これは参考指標程度 にとどめる。しか しなが ら基準化適合度指標であるIFI

(Bollen's Incremental Fit Index)が0,836,TLI(Tucker-Lewis Index)が0.748,CFI

(ComparativeFitIndex)が0.82という値であり,AIC (Aknike'sInformationCriterion)

が82,59であった。これらの結果から,モデルのデータ-のフイットは悪 くない。また,

RMSEA (RootMeanSquareErrorofApproximation)も0.084(LO90-0.032,HI90-0.13,(3)PCLOSE-0.119)であり,評価は悪 くない。

表 5 重回帰分析結果

要因 β †

実習回数 0.121 0.102

主観的学習量 0.428** 0.341**

SWrへの志向性 0.093 0.119H z 0.207

注 1:**P<0.01

注2:従属変数 :ソーシャルワーク専門職性

注3:RZ :重相関係数の平方 (決定係数)

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学生のソーシャルワーク専門職性到達度とその関連要因の分析 25

図2および表 5から,ソーシャルワーク専門職性を規定する要因としては,実習回数 (実習

量)やソーシャルワーカーへの志向性よりも,主観的学習量が最も影響を与えていることがわ

かった。すなわち 「主体的学習の時間をとっていると自分自身で感 じている」学生ほど,ソー

シャルワーク専門職性自己評価が高いという結果であった。

なお,ソーシャルワーク専門職性の決定係数 (重相関係数の平方)は,0.207であ り,これ

ら3要因によってソーシャルワーク専門職性規定要因の約21%が説明された。すなわち今回の

分析では学生のソーシャルワーク専門職性到達度に関連する要因の一部 しか扱いえていないこ

とになるOよって,今回の調査によってまだ明らかにされていない要因があるとすれば,それ

に関して探索 していくことが今後の課題である。

5,ソーシャルワーク専門職性領域別の学年への影響 :「使命感」を中,むに

これまでのところでは,主観的学習量がソーシャルワーク専門職性に与える影響が有意に大

きいことを示 してきたが,ソーシャルワーク専門職性 5領域に分けて部分評価を行うことにし

た。なかでも,「使命感」と 「倫理性」に注目したい。「自律性」「知識 ・理論」「専門的技能」

に関しては,対象が学生であるので低 くならざるを得ないと考えられるからであ り,「使命

感」と 「倫理性」に関しては4年間のソーシャルワーク教育のなかで身につけさせ,学年が上

がるごとに得点が上昇 してもよいところであるので,特にこの2領域について学年との関連性

をみていく。次に示すのは,領域別の学年との分散分析結果である。

表6 ソーシャルワーク専門戦性5領域×学年の分散分析結果

平方和 自由度 平均平方 F

9

3

5

7

2

0

cc0

2

0

4

2

1

7

0

1

0

0

0

2

3

3

3

3

3

6

8

4

0

6

22

31

18

00

4

0

0

2

6

×

×

×

×

×

・的

便

3.716*

0.877

0.282

1.344

4.591*

*p<0.05

ここで,使命感 と学年という群間に差があるということがわかったが,使命感と学年4水準

についての多重比較を行い (表 7),どこに差があるのかを確認 してい く。また使命感得点の

4学年の比較を図3において示す。

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26 天 理 大 学 学 報

表7 【使命感×学年】のbonferroniによる多重比較結果

(Ⅰ)学年 (∫)学年 平均値の差 標準誤差 有意確率 95% 信頼区間

(Ⅰ-㌔) (下限) (上限)

1 2 0.458* 0.158 0.027 0.033 0.883

3 -0.007 0.168 1.(伽 -0.460 0.446

4 0.049 0.173 1.(伽 -0.416 0.514

2 1 -0.458* 0.158 0.027 -0.883 -0.033

3 -0.465* 0.172 0.048 -0.927 -0.002

4 -0.409 0.176 0.135 -0.884 0.066

3 1 0.007 0.168 1.(伽 -0.446 0.460

2 0.465* 0.172 0.048 0.002 0.927

4 0.056 0.186 1.000 -0.444 0.556

4 1 -0.049 0.173 1.000 -0.514 0.416

2 0.409 0.176 0.135 -0.066 0.884

3 -0.056 0.186 1.(伽 -0.556 0.444

*p<0.05

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1年

n=32

2年n=29

3年n=23

4年∩=21

AI Ej2 田3 国 4 Eヨ5図3 使命感得点の4学年の比較

使命感得点の学年別の平均値は,1年3.91,2年3.45,3年3.91,4年3.86であった。多重

比較結果でも明らかなように,1年生と2年生の間,2年生と3年生の間に有意差が見られ,

特に2年生での落ち込みが顕著である。使命感を構成する6つの質問項目の全てにおいて 「か

なりあてはまる-5点」「ややあてはまる-4点」とする者の割合が2年生で減少し,「あまり

あてはまらない-2点」「あてはまらない-1点」とする者の割合が2年生で増加している。

学年別の属性は全 く同質ではないにせよ,男女比その他のバックグラウンドがよく似ており,

同じような背景をもち,同じカリキュラムによる学習や体験を行っている者たちであるの

で,2004年12月の時点における4学年の対象者群を比較することは,ある程度妥当な結果が得

られることになろうと予測される。学年が上がるにしたがって専門科目も多 く履修 し,知識量

が増えると考えれば,2年生で有意に低くなっているのは問題である。今回調査 した他の項目

と使命感得点との間で有意差検定を行ったところ,実習回数との間で有意差が見られた。すな

わち実習回数が 1回の者に使命感得点が有意に低い (p<0.01)。

このことは,2年生になって初めての実習を終えて,その年の終わりに本調査を実施したの

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学生のソーシャルワーク専門職性到達度とその関連要因の分析 27

であるから,やはり実習経験が大きな影響を及ぼしていると考えられる。

Ⅴ,考 察

今回の調査に用いた尺度に関しては,確証的因子分析の結果,適合度は高く本尺度の構成概

念安当性は支持された。また,ソーシャルワーク専門職性に影響を与えている一番の要因は主

観的学習量であり,「主体的学習05時間をとっていると自分自身で感じている」学生ほど,ソ

ーシャルワーク専門職性自己評価が高いという結果であった。

ただし本尺度を用いての学生のソーシャルワーク専門職性到達度評価は全体に低い結果であ

った。このことは,ソーシャルワーク教育に警鐘を鳴らすものであると教員として真肇に受け

とめなければならない。しかしながら,今回の調査で評価尺度とした5つの構成概念の内,自

律性と専門的技能は学生の立場ではまだまだ訓練途上であり低く評価するのは当然であるかも

しれない。知識 ・理論に関しても同様である。したがって教育効果が反映すると考えられる使

命感や倫理性の部分において学年差が見られるかどうかを明らかにしようとした。紙幅の都合

上使命感についてのみ分析した結果,使命感と学年との間には有意な差が見られ,2年生にお

いて有意に低 くなるという結果であった。そして3年生 ・4年生になると再び上昇していく。

これは倫理性においても同様であった。

2年生で 「使命感」が有意に低くなることは,素朴ではあるが社会福祉の援助者としての使

命感や熱意や善意をもって入学した学生が,入学後ほぼ1年経って初めて経験する社会福祉現

場での実習内容およびその後の実習指導内容と密接に関わっている。社会福祉士の業務は相談

援助であるとされているにもかかわらず,実習現場では相談援助業務の専門家以外の職種が指

導にあたる場合が少なからずある。高齢者施設や障害者施設における実習指導者の職種は介護

の専門家であったり,児童の施設における実習指導者は保育士であったりする。そうした実習

では当然学生はロールモデルを見出すことができず,職種固有の価値を見失い,使命感が低下

する結果となる。このことは,今後の実習施設と現場における実習指導の在 り方の問題と・して

考えていかなければならない課題である。また,現時点ではこのような状況にあることを考え

ると学校における実習前指導と実習後指導,とりわけ実習後指導の果たす役割は重要なもので

ある。すなわち,実習を通して個々の学生の内面に何が生じたかを言語化する作業なくして当

該専門職に対する一定の使命感とモティベーションを維持することは困難である。

もしも実習での諸経験のなかで,それまでに思い続けてきた使命感や倫理性にまで変更を及

ぼすような何かがあったのなら,それをはっきりさせて,教師との間でふりかえりの時間を十

分にもちながら軌道修正を図ることも必要であろう。実習指導に限らず,教員はあらゆる機会

をとらえてこのようなことを念頭に置きつつ,学生に対する実践的教育を行わなければならな

いということを肝に銘じる必要があるO より専門職性の高いソーシャルワーカーを養成し地域

社会に送り出すためにも,硯在のソーシャルワーク教育システムを見直す必要性も感じられる。

さらに学生によるソーシャルワーク専門職性評価尺度に関しては,改良を加える必要がある。

現実に行動しているか否かを問う項目と理念として頭の中で思っている項目とが交錯している

ためもう少し表硯を検討する必要がある。またソーシャルワーク専門職性に影響を与えている

一番の要因は主観的学習量であったことから,できるだけ主体的学習の時間を多くとらせるよ

うな課題を出す,またそれに対するフィードバックの時間をとるなど一方向的な授業に陥らな

いような工夫も望まれる。

なお,学生に対してこのような評価尺度を用いて調査を行った同様の先行研究が見当たらな

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28 天 理 大 学 学 報

いことか ら比較検討はで きないが,今回の調査 において明らかになった知見の意味するところ

は大 きい と言えようo尺度の改良のうえ,ソーシャルワーク教育の質の向上に資する尺度の開

発 を継続 して行 ってい く必要性 を感 じているo さらにソーシャルワーク専門職性到達 に影響 を

及ぼす と考えられる他の変数の可能性や変数間の関係性 について追及 してい く必要がある。ま

た,調査対象者の同質性 を確保する上で,入学時点から同 じ学生 を卒業後 まで追跡調査するの

が最 も妥当な方法であったが,今回は2004年12月の時点において一斉に,各学年の学生を対象

として調査 を行 ったOつ まり一地点調査であるという点は,本調査研究の一つの限界であるこ

とを認めなければならない。今後縦断的調査設計 によるデータを用いたり他大学の学生サ ンプ

ルによるデータを用いることによって,追跡調査研究を行 う必要があ り,それ らは今後の研究

上の課題である。

(1) 京極高宣 (1987)「ソーシャルワーカーの職務の専門性とは何か」F社会福祉研究』41,p.29

及び京極高宣 (1992)『改訂日本の福祉士制度 :日本ソーシャルワーク史序説』中央法規,p.

142を参照。

(2) 重回帰分析を行う際に 「学年」を変数から削除したのは以下の理由による。図2の [MIMIC

MODEL]を作成するに当たっては,モデルとデータの適合性から,観測変数を探索的に投入

あるいは削除して最もあてはまりのよいモデルを採択 したが,「学年」を観測変数として投入 し

た場合,ソーシャルワーク専門職性全体の説明力 (R2) は確かに今以上に上がるが,学年が他

の変数に与える影響により (Pearsonの相関係数によると学年と主観的学習量,学年とSWrへの志向性との間で負の相関が見られるため),全体の適合度指標が極端に悪 くなってしまう。例

えばIF1-.232,TLI-I.053,CFI-.210,RMSEA-.302,AlC-337.854となるo最終的に

AIC(赤池情報基準量)が最 も小 さい値をとり,適合度指標が基準を満たすモデルが妥当であ

ると考えて 「学年」をはず した。このことは,学年が上がることによって学習量や知識量が増

加 したとしてもソーシャルワーカーとして求められている専門職性にそれ程影響を与えず,学

年に関わりなくいかに主体的に学んだかといった学びの質的側面こそが大事であるということ

を意味しているものと考えられる。

(3) 適合度指標については,山本嘉一郎 ・小野寺孝義編 (1999)『Amosによる共分散構造分析 と

解析事例』ナカニシャ出版,p.36-42を参照 した。

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