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67 B 会場(白鳥) 11:10~11:35 紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 広島大学 ナノデバイス・バイオ融合科学研究所 教授 三宅 亮 ● プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース としたマイクロ分析チップの開発を行っています。今回は紙の上にマイクロ流路やバ ルブなどを構成するための作成技術について紹介します。 ● 従来技術・競合技術との比較 半導体微細加工技術を応用して作成されるマイクロ分析チップは,現状では,その基 材として Si やガラス,プラスチックなどが用いられており,まるごと使い捨てにし た場合に,コスト,廃棄の面で課題があります。基材として紙を利用することで,低 コスト化が容易に,廃棄性も著しく向上します。 ● プレゼン技術の特徴 ・血液検査における課題 ・紙ベースのマイクロ分析チップ及び検査システムの概要 ・紙上へのマイクロ流路作成技術と色素を使った流動の評価 ● 想定される用途 ・血液検査など医療診断 ・オンサイトでの環境分析 ・プラント現場での品質管理

紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 · プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース

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Page 1: 紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 · プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース

67

B会場(白鳥)

11:10~11:35

紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発

広島大学

ナノデバイス・バイオ融合科学研究所

教授 三宅 亮

● プレゼン技術の概要血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベースとしたマイクロ分析チップの開発を行っています。今回は紙の上にマイクロ流路やバルブなどを構成するための作成技術について紹介します。

● 従来技術・競合技術との比較半導体微細加工技術を応用して作成されるマイクロ分析チップは,現状では,その基材として Si やガラス,プラスチックなどが用いられており,まるごと使い捨てにした場合に,コスト,廃棄の面で課題があります。基材として紙を利用することで,低コスト化が容易に,廃棄性も著しく向上します。

● プレゼン技術の特徴・血液検査における課題・紙ベースのマイクロ分析チップ及び検査システムの概要・紙上へのマイクロ流路作成技術と色素を使った流動の評価

● 想定される用途・血液検査など医療診断・オンサイトでの環境分析・プラント現場での品質管理

Page 2: 紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 · プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース

紙ベースのマイクロ分析チップ紙ベースのマイクロ分析チップ紙ベ スのマイクロ分析チップ作成技術の開発紙ベ スのマイクロ分析チップ作成技術の開発

広島大学

ナ デバイ バイオ融合科学 究所

広島大学

ナ デバイ バイオ融合科学 究所ナノデバイス・バイオ融合科学研究所

教授 三宅 亮

M2 岡部修吾

ナノデバイス・バイオ融合科学研究所

教授 三宅 亮

M2 岡部修吾岡部修吾岡部修吾

Page 3: 紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 · プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース

研究の背景及び目的研究の背景及び目的

背景血液検査の現状

目的

大・中病院・・・ 大型自動血液分析装置

⇒安定した分析精度を有するが高価

液検

高い経済性安定した分析精度優れた廃棄性

診療所・災害現場・・・ 検査センターに依頼

⇒検査結果を得るまで1~2日

優れた廃棄性を有する分析チップとその場分析装置

紙を基材とした使い捨て分析チップ(ペーパーマイクロ分析チップ)

材料・製造コストの低廉化

利点・・経済性、廃棄性

大型装置同等の液状試薬利用

課題・・分析精度

材料 製造コストの低廉化

(ex. Roll to Rollによる大量生産)

軽量→流通コスト低減,保管性向上

廃棄性良好

大型装置同等の液状試薬利用

→耐液性・耐圧性の付与

微量化対応→マイクロ流路形成法

分析再現性廃棄性良好 分析再現性

→送液制御機能(ポンプ,バルブ)

Page 4: 紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 · プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース

ペーパーマイクロ分析チップのコンセプトペーパーマイクロ分析チップのコンセプト

Ink-Jet式駆動液・試薬

カートリッジ試料滴下用ディスペンサー

能動バルブキャピラリーポンプ

試料

試薬滴下口 光計測部

サンプリングチャネル滴下口

ペーパー分析チップシート

小型・安価Ink-Jet Printer型分析装置

Page 5: 紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 · プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース

紙素材と加工方法の選定紙素材と加工方法の選定

・液状試薬対応→耐液性

・マイクロ流路(微細立体構造)の形成

要件要件

イク 流路(微細 体構造) 形成

樹脂コート紙*紙

紙層(~300μm)樹脂(~20μm)

樹脂(~20μm)

深堀エッチングによる深堀エッチングによる

高精度Si型を用いた

インプリント加工イン リン 加

*協力:(株)日本製紙パピリア

Page 6: 紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 · プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース

インプリント加工によるマイクロ流路の形成インプリント加工によるマイクロ流路の形成(1) 紙基材作製と防水フィルム形成

防水フィルム(ポリプロピレン) ①加熱温度

加工条件

厚さ : 20 μm

(2) 平坦化処理

(ポリプロピレン)

機能性紙素材

②加熱・加圧時間

③加圧条件

加圧プレ ト(2) 平坦化処理

加圧プレート

加圧プレート(ヒータ内臓)

(3) 加熱・加圧成型加工

転写用Si型

(深堀エッチングで作製)

支持プ ト

(4) カバーフィルム形成カバーフィルム

加熱 加圧装置

支持プレート(SUS平板+弾性層)

2011/10/31 5

(ポリウレタン)

厚さ: 25 μm

加熱・加圧装置

Page 7: 紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 · プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース

加工用Si型と加工のポイント加工用Si型と加工のポイント

着目箇所(最微細部分)

加工用Si型

樹脂層

40 μm着目箇所(最微細部分)

300 μm20 μm

樹脂層

~40 μm

転写不十分 転写良好

溶解変形

a’

溶解変形

150μm 50μm 凸8個

a - a’

平面方向および深さ方向転写性が共に良好

角落ち平面化不良 角平坦μ μ

40μm

凸8個

となる加工条件(温度・時間・圧力他)を検討

Page 8: 紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 · プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース

インプリント加工例インプリント加工例

成形後のチップ全体写真

流路幅: ~50 μm

平坦部 流路幅:100μm⇒角落ち見られず

流路部拡大写真(流路をフィルムで封止後,着色液注入)

Page 9: 紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 · プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース

試薬・試料の定量吸引機構試薬・試料の定量吸引機構

・試料の物性(濡れ性、粘性、比重等)によらない一定量吸引要件要件

ポンプ+駆動液+分節空気 能動バルブ+キャピラリーポンプ+分節空気

自動分析装置の吸引機構 ペーパー分析チップの吸引機構

液物性一定の駆動液をポートに滴下

ポート駆動液

駆動液

駆動液 分節 気 能動 ルブ キャ ラリ ポンプ 分節空気

ポ トに滴下駆動液

能動バルブによりポートの注入口が閉

駆動液が分節空気を介してサンプルを吸引

試料 試料

ペーパー分析チップ上への能動バルブ機能の構築ペーパー分析チップ上への能動バルブ機能の構築

Page 10: 紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 · プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース

能動バルブのための機能性紙素材能動バルブのための機能性紙素材(1) 紙基材作製と防水フィルム形成

防水フィルム(ポリプロピレン)

紙抄きにより作製

オリジナル湿潤紙

厚さ : 20 μm

(2) 平坦化処理

(ポリプロピレン)

機能性紙素材

高吸水性ポリマー(SAP)(2) 平坦化処理

加圧プレート 自重の約100~300倍の水を吸収膨張

(3) 加熱・加圧成型加工

転写用Si型

(深堀エッチングで作製)

水(~10μl)

(4) カバーフィルム形成カバーフィルム

5mm

水(~10μl)

2011/10/31

(ポリウレタン)

厚さ: 25 μm

Page 11: 紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 · プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース

定量吸引機構の動作定量吸引機構の動作

分析空気を介した駆動液による試料の吸引

駆動液滴下駆動液滴下ポート開

キ ピ リ ポ プ

試料滴下済

ポート開→閉キャピラリーポンプ ポート開→閉

a’

試料吸引開始

150μm 50μm

0μm

凸8個a - a’

40

Page 12: 紙ベースのマイクロ分析チップ作成技術の開発 · プレゼン技術の概要 血液検査など医療診断などでの利用を目的に,まるごと使い捨て可能な,紙をベース

想定される利用形態と実用化に向けた課題想定される利用形態と実用化に向けた課題

想定される新たな利用形態想定される新たな利用形態

紙の特性を利用した新たなサービス紙の特性を利用した新たなサ ビス検査結果を紙表面に印刷、検査済試料と共にエビデンスとして保管する使い方

チップを本の形態で商品化チップを本の形態で商品化該当する疾患の情報や取扱い説明などと共にチップを供給、情報開示性、流通コスト低減、保管容易性など卓越した実用メリットが得られる。

内 容

①試料 試薬 反応を検出するため 光計測系( セ 検出光学系)

実用化に向けた課題実用化に向けた課題

チップ

①試料・試薬の反応を検出するための光計測系(フローセル、検出光学系)

②ペーパー分析チップ要素の最適構成・配置等の設計技術

③免疫分析系、フローサイトメトリー、電解質センサの紙面上への実装

④特殊紙の量産技術

⑤ペーパー分析チップのロール・ツー・ロール加工法による大量生産技術

装置①試薬・駆動液の安定滴下技術・機構

②Ink‐Jetプリンタ型の診断装置の構成技術

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連携について連携について問診現場や往診先、災害時の緊急検査などへの利用が想定され、今までの

検査形態やビジネスを大きく変える可能性を秘めていますが、紙材料からチップ 装置 流通も含めて バリュ チェ ンを新たに構築する必要がありますプ、装置、流通も含めて、バリューチェーンを新たに構築する必要があります。先鞭をつけることに意欲的な企業・機関からのご相談をお待ちしています。

要素開発プロトタイプ

試作実試料評価 実用開発 臨床評価素材情報 要素開発

プロトタイプ試作

実試料評価 実用開発 臨床評価素材情報

広島大学ナノデバイス バイオ

医療機関(広島大学)

医療診断機器

メーカー 医療機関

製紙メーカー 広島大学

ナノデバイス バイオ

医療機関(広島大学)

医療診断機器

メーカー 医療機関

製紙メーカー

ナノデバイス・バイオ融合科学研究所

製紙メーカー(素材

量産)

試薬メーカー

ナノデバイス・バイオ融合科学研究所

製紙メーカー(素材

量産)

試薬メーカー 量産)

印刷メーカ (チップ

メ カ 量産)

印刷メーカ (チップ

メ カ

カー(チッフ量産)

カー(チッフ量産)

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知的財産権及びお問い合わせ先知的財産権及びお問い合わせ先

知的財産権知的財産権

発明の名称:検査用シ ト 化学分析装置及び検査用シ トの製造方法発明の名称:検査用シート、化学分析装置及び検査用シートの製造方法出願番号:特願2010-190124出願人:国立大学法人広島大学発明者:三宅亮 岡部修吾 坂本憲児 石川智弘

お問い合わせ先お問い合わせ先

発明者:三宅亮、岡部修吾、坂本憲児、石川智弘

広島大学産学・地域連携センター国際・産学連携部門TEL 082-421-3631TEL 082-421-3631FAX 082-421-3639E-mail: [email protected]

広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所分子生命情報科学部門 三宅 亮TEL 082-424-4372FAX 082-424-3499E-mail: [email protected]