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1 各種材料のストレス分布を検出 できるメカノクロミック材料 九州大学 先導物質化学研究所 准教授 大塚 英幸

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各種材料のストレス分布を検出できるメカノクロミック材料

九州大学 先導物質化学研究所

准教授 大塚 英幸

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技術背景(クロミズム)

物質の光物性(色や蛍光)が外部からの刺激によって可逆的に変化する現象は「クロミズム」と呼ばれる

サーモクロミズム………温度変化による変色

エレクトロクロミズム…電気的に引き起こされる 酸化還元による変色

フォトクロミズム………光照射による変色 メカノクロミズム………力学的なストレスによる

変色

<代表的なクロミズム>

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特徴: 材料が受ける力学的刺激(力学的ストレス)の度合いを、色調変化により視覚的に示すことで、力学的刺激の程度や損傷位置を可視化できる。

技術背景(メカノクロミック材料)

力学的刺激を受けて、可逆的に色調変化を起こす性質(メカノクロミズム特性)を示す材料は、メカノクロミック材料と呼ばれる。

Force

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オリゴビニルフェニレン構造を含む高分子材料は、オリゴビニルフェニレンの凝集状態が変化することで発光挙動が変化する。

従来技術の例(力学応答性材料)

C. Weder et al.,

Adv. Mater., 22, 14 (2002).

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スピロピラン構造を主鎖中に有するポリマーは、力学的刺激に応じてスピロピランの分子構造変化(異性化反応)が起こり、色調が変化する。

従来技術の例(力学応答性材料)

D. A. Davis et al., Nature, 459, 68 (2009).

P. V. Braun et al., J. Am. Chem. Soc., 132, 16107 (2010).

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従来技術の問題点

・スピロピラン構造やオリゴビニルフェニレン構造を有するような従来のメカノクロミック材料では、発色または色調変化前の状態に戻すためには、外部から何らかの刺激(熱や光など)を加える必要がある。

・力学的刺激を可視化できるが、そのまま繰り返し使用することはできない。

・色素入りのマイクロカプセル崩壊を利用した圧力測定シート等では繰り返し使用は実現が難しい。

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新技術の特徴・従来技術との比較

• 特殊な分子構造を有する化合物を用いることにより、メカノクロミズムと自発的復元の両方を達成できることを見出した。

• 本技術に従うメカノクロミック材料は、従来技術とは異なり、分子の断片化あるいは高分子における分子鎖の切断を視覚的に検出することに基づくものであり、自発的な再結合に伴い復元する。

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• 本技術は、ジアリールビベンゾフラノン(DABBF)構造を有する化合物を用いたメカノクロミック材料に関する。

新技術のキーポイント

芳香環共鳴安定化効果、立体電子効果などにより DABBFの中心炭素-炭素結合は切断しやすい。

DABBF アリールベンゾフラノン (ABF)ラジカル

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• DABBF構造を有する化合物は、熱による変色(サーモクロミズム)を示すことが従来より知られていた。

ジアリールビベンゾフラノン(DABBF)

400 500 600 700

A

bso

rban

ce /

a. u.

Wavelength / nm

after heated room temp

J. C. Scaiano et al, J. Am. Chem. Soc., 128, 16432 (2006).

DABBF誘導体のトルエン

溶液の加熱による着色

Δ

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O

O

O

O

O

O3

3

HO

OH

OH

OH OH

OH

DABBFのメカノクロミズム

• DABBFが力学的な刺激により着色し、数時間後には自発的に退色する、従来とは異なるメカノクロミック材料として機能することを見出した。

DABBF

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O

O

O

O

O

O3

3

HO

OH

OH OH

OH

OH

電子スピン共鳴(ESR)測定

-before grinding

g 値= 2.003(典型的な炭素ラジカルの値)

青色変色に伴い、ラジカルシグナルが急激に増大

-after grinding

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DABBF含有ポリマーの合成例

DABBF-diol

TDI-PPG-TDI

HDI

(Mn = 2400)

polyaddition

DMF, cat.

N2 , 48 h

(② : ③ = 2 : 3)

DABBF-PU

Tg = -10.8℃

• 二つの水酸基を有するDABBF誘導体とジイソシアナート誘導体との重付加反応により、DABBFを主鎖構造に有するポリウレタンを合成した。

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DABBF含有ポリマーのメカノクロミズム

• DABBF骨格を主鎖に有する高分子(例えばポリウレタン)も力学的な刺激により着色し、自発的に退色するメカノクロミック材料であることを見出した。

DABBF骨格を主鎖中に有する ポリウレタンのメカノクロミズム

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DABBF含有ポリマーのフィルム作製

• DABBF骨格を主鎖に有する高分子(例えばポリウレタン)を有機溶媒に溶解し、溶媒蒸発法により簡便にポリマーフィルムを作製できる。

DABBFポリウレタン溶液(CHCl3)

solvent

evaporation

DABBF含有ポリウレタンフィルム

型抜き

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DABBF含有ポリマーのフィルムの

メカノクロミズム(例)

elongation

メカノクロミズムが繰り返し発現されることも確認された。

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ESR測定 + 引張試験機によるその場解析

ESR検出器

サンプル

・電子スピン共鳴測定装置…磁場を掃引し、電子(ラジカル)数を

測定する装置

引張り試験と組み合わせ、伸張に伴うラジカルの変化量を測定

引張り試験機

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ESR測定 + 引張試験機によるその場解析

332.5 334.9 337.3 339.6 342

Field / mT

Inte

nsit

y /

a. u

.

伸張前 × 50

引張り試験時のESRスペクトル

伸張

伸張によってラジカル量は 数百倍に増大

O

O

OO

O

O

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新技術のまとめ

O

O

OO

O

OO

O

OO

O

O

力学的刺激による分子鎖の切断で着色し、時間の経過に伴い復元するメカノクロミック材料を開発した。

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想定される用途

• このような新材料の開発は、ダメージを可視化できるセンサー素材としてだけでなく、安心・安全な社会の実現に向けて、高分子材料の寿命予測や危険予知にも繋がると期待できる。

• 具体的には、コーティング、ダメージセンサー、圧力センサー、スポーツ用素材などの分野や用途に展開することも可能と思われる。

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実用化に向けた課題

• 様々なDABBF誘導体の合成が可能で、磨り潰しによるメカノクロミズムを発現することを確認しているが、引張によるメカノクロミズムの発現条件は材料により異なる。

• 今後、適用できる高分子の種類と詳細条件に関して実験データを取得していく。

• 実用化に向けて、DABBF骨格の適用範囲を拡大できるように、メカノクロミズムのメカニズムの詳細を解析する必要がある。

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企業への期待

• メカノクロミズムの発現条件(例えば、どの程度の力学的刺激によってメカノクロミズムが発現するのか)については、DABBF以外の分子骨格も含めた材料全体の最適化により克服できると考えている。

• 化学分野、特に高分子・フィルム等に関する技術を持つ企業との共同研究を希望。

• その他にも、材料ストレスの可逆的な可視化に興味を有する企業にも、本技術の導入が有効と思われる。

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :メカノクロミック材料

• 出願番号 :特願2012-203406

• 出願人 :九州大学

• 発明者 :大塚英幸、高原 淳、

金原武志、今任景一

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お問い合わせ先

九州大学知的財産本部

技術移転グループ

TEL 092-642 -4361

FAX 092-642 -4365

e-mail [email protected]