53
226 ●全期間成果 ・広い濃度範囲(100ppm~10%)に検知能力を有するPtゲートSi-MOSFET型水素センサを開発した。 ・寿命加速試験を行い、3年以上のセンサ寿命見通しを得た。10個のセンサノードからなるセンサネットの原理実験に成功した。 ・2個のFET、 ダイオード温度計、ヒータを集積化した小型チップ( 2mm×2mm )で低消費電力(100mW)の水素センサを実現した 半導体水素センサと検知システムの研究開発 委託先 (株)日立製作所 ●背景/研究内容・目的 ●全期間実施内容/研究成果 ●研究成果まとめ ●今後の課題 口答発表 論文発表 特許出願 新聞発表 メタン、エタン201以上 選択性20:1 システム応答:5秒以内(60%応答) システム 半年以上・Vthバラツキ300mV以内 水素濃度範囲:100ppm10% 目標 検出感度 寿命・信頼性 実施項目 ●研究目標 ●実施体制及び分担等 NEDO 日立 研究開発本部 基礎研(デバイス開発) 中研(システム開発) 日研(ゲート材料) 岡山大(デバイス評 価と感応膜評価) 21 5 9 2 ・センサの劣化機構の解明。 ・多くの干渉ガスに対する特性評価。 ・センサの更なる低消費電力化。 CMOS製造ラインにより、小型水素センサチップ(図1)を試作し、100ppmから10%まで の広い濃度範囲で良好な水素応答特性を得た。試作FETは閾値電圧Vthのウェーハ内 バラツキは3σ=178mVと極めて小さく、信頼性の高い水素センサFETを試作できた。 試作センサチップと実装チップ(図2)を水素ステーション内に設置しフィールド試験を行 い、半年以上のセンサ寿命があることがわかった(図3)。寿命加速試験により3年以上 の寿命見通しを得た。開発センサのデモ機としてフィールド試験機を10個試作した(図 4)。試作センサは、低消費電力(100mW), 温度、湿度の環境変動にも強く、0.1‐1.0% メタン、0.1%エタンに応答せず、HMDS被毒性がないなどの特長がある。 環境に優しい水素社会の実現には、『マルチレ ベル安全機構』が求められている。安全、安心 の要として、広い検知濃度領域(100ppm-10%)有する信頼性の高い高速応答水素センサ開発 への期待は大きい。開発目標は以下の通り。 Si-MOSFETセンサの寿命・信頼性評価。 ・広い濃度領域で、信頼性の高いSi-MOSFET水素センサの開発。 ・高速応答する検知システムの実証。 ・フィールドテスト機の開発。 システム応答:5秒以内 メタン、エタン20:1以上 3年以上・178mV 100ppm10% 自己評価 成果内容 実施項目 システム応答:5秒以内 システム メタン、エタン20:1以上 選択性20:1 3年以上・178mV 寿命・信頼性 100ppm10% 検出感度 自己評価 成果内容 実施項目 センサ センサ ノード センサ センサ ノード FET 参照 FET ヒータ 温度計 2 mm FET 参照 FET ヒータ 温度計 2 mm ± 9 経過日数 規格化水素応答出力ΔVg 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 50 100 150 ± 9 経過日数 規格化水素応答出力ΔVg ΔVg 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 50 100 150 実装チップ ベアチップ 図1 水素センサチップ写真 図2 水素センサ実装写真 図3 JHFC大黒水素ステーションフィールド試験 図4 フィールド試験機写真 8.4mm 15mm 8.4mm 15mm (C-14)

半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

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Page 1: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

226

●全

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-14)

Page 2: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

227

半導体水素センサと検知システムの研究開発

実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸 再委託先:国立大学法人 岡山大学

1.事業概要

日立製作所では、多数のセンサをネットワーク化することにより、漏洩した水素ガスの濃度分

布をリアルタイムで計測できる水素ガス漏洩検知システムの開発を NEDO より委託された。プロジ

ェクト前半 2年間(2003 年 5 月~2005 年 3 月)の要素技術開発では、

1. 感度 100ppm、応答速度(90%応答時間)1秒以内の水素センサ開発

2. 水素を多点検知し、そのデータをワイヤレスで収録できる検知システムの開発

を目標として検討を進め、Si-MOSFET 型水素ガスセンサを開発した。また 10 個のセンサノード(セ

ンサと無線通信機、マイコンの複合ユニット)からなる無線プロトタイプシステムを開発した。

後半 3年間(2005 年 4 月~2008 年 3 月)は実用化技術開発の位置づけである。前半終了後、中間

評価において、後半プロジェクトでは FET 型センサの開発に注力すべきとのご指導があり、最終

年度は、目標寿命を半年とする寿命加速試験や信頼性評価に注力し、開発計画の一部を変更した。

このためフィールド試験機は単一センサノードの水素センサプロト機の開発に目標を変更した。

更に耐被毒性試験、センサチップのポーラスキャップ実装、耐塩害性、及び防爆性を検討項目に

追加した。 プロジェクト前半はマルチレベル安全機構に必要とされる100ppmから4-10%の広い濃度範囲

をカバーするセンサを開発するため、ゲート材料の探索を行ったが、信頼性とシリコンプロセス

への適合性からゲート電極候補は Pd と Pt に絞られた。両者を検討した結果、低濃度での高速応

答性や感度の面では Pd が優れているが、高濃度領域で応答速度が Pt に比べて極端に遅くなり、

逆に Pt は 1 秒程度の高速応答を示すことが分かってきた。また高濃度水素照射により Pd 膜の剥

れが発生する現象が見つかり、主流ゲート金属 Pd を止め Pt を選択した。プロジェクト最終年度

は、実用化も視野に入れ、Pt 電極プロセスが可能な 5 インチ CMOS 製造ラインで、Pt ゲート

Si-MOSFET 型センサを開発した。開発水素センサは、センサチップが 2.0mm×2.0mmと小型で、

トランジスタが動作するしきい値電圧 Vth のバラツキが極めて小さく、100ppm から 4-10%の広

い水素濃度範囲を検出できる。また寿命加速試験により 3 年以上の寿命見通しを得た。現在主流

のセラミックセンサと比べて低温(100℃)動作が可能である。このため、消費電力を低くおさえる

ことができ(100mW)、防爆構造も簡素化できるなど、センサ全体の小型化も可能になる。また、

濃度 1000ppm 以上の水素を約 1 秒で検知可能で、熱や湿度にも強いという特長がある。

2.事業目標

水素社会実現のため、高度な安全性確保という狙いから、水素センサに対する要求として、マル

チレベル安全機構を掲げ、低濃度(~100ppm)から高濃度(4-10%)まで検出可能な水素センサの

開発をNEDOから委託されている。マルチレベル安全機構では、検出水素濃度を500ppm以下の水素漏

れ警告、1000ppm以下の正常使用の上限、5000ppm以下のシステムへの警告、1%以上のステーショ

ン停止レヴェル(1%以下のSystem Power Off、5%以下のStation Power Off)に分けて細やかな

対応が出来る安全システムを想定している。表1にNEDO委託事業での水素センサの開発目標と結果

(目標達成度)を示す。

Page 3: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

228

表 1 NEDO 委託事業での水素センサの開発目標と結果のまとめ

Si-MOSFET 型水素センサは、1975 年に誕生以来、幾多の研究がなされ、Pd ゲート構造によ

り低濃度(~10 ppm)の水素ガスリーク検出器として製品化されているが、高濃度での応答特性

については飽和の問題が指摘されていた。マルチレベル安全機構の実現には、100ppm から 10%の

濃度範囲での検出が必要になるが、高濃度領域での水素ガス検知能力は未解決の課題であった。

ガス選択性も重要な項目であるが、センサの基本特性評価の項目が多岐に渡ることを考慮し、

成果目標は最も基本的なメタンガスとエタンガスにとどめた。

寿命加速試験としては最も基本的な温度劣化と湿度劣化を取り上げ検討した。更にフィールド

試験の位置づけとして、日立製作所中央研究所構内の水素ガス取り扱い場所傍と関東近郊で海岸

近くに設置された(株)コスモ石油の大黒水素ステーションにセンサチップとポーラスキャップ

実装のセンサを設置して、水素応答特性ΔVg と FET 特性の変動の経時変化を定期的に測定した。

金属ゲート Si-MOSFET の開発に当っては、センサとマイコン制御系を結ぶセンサ読み出し回路動

作を考慮すると、しきい値電圧 Vth の面内分布とロット間の再現性が問題になる。センサ FET は、

Si-LSI(大規模集積回路)で通常使用されるポリシリコンではなく、Pt などの金属によりゲート電

極が形成されるので、Vth の制御性については未解決の課題であり、回路動作上最低限必要と考

えられる 300mV(動作温度 100℃)以下の均一性・再現性を目標とした。

実際の水素センサ設置状況では、温度と湿度が大きく変動する。環境影響基準としては、水素

センサの環境規格を参考に目標を設定した。建屋の建材や燃料電池などから発生するシリコーン

(シリコンとケトンからなる有機物質)ガスによる劣化(被毒)が実際の環境下では大きな障害

になっている。水素センサの耐被毒性評価の基準として HMDS(ヘキサメチルジシロキサン)ガス

による被毒試験があり、本研究ではヨーロッパ規格(EN50291)に沿った実験を行なった。水素セ

ンサチップの実装については水素ガス導入窓を持つポーラスキャップ構造を検討した。水素ステ

項目 NEDO 成果目標 結果(目標達成度)

1 検出感度 100ppm(ケーシング後) ◎ 100ppm~10%

2 選択性 メタンガス、エタンガス;20:1 〇 CH4,C2H6,C8H18,CO;20:1 以上

3 寿命試験 水素応答劣化と FET 特性劣化の分離

現状プロセスでの寿命評価

目標寿命;6ヶ月以上

◎ 寿命加速試験により

寿命 3年以上

4 FET 特性

信頼性

均一性・再現性:300mV 以下

(ウェーハ内、動作温度 100℃)

◎ 178mV

5 環境影響 ・環境温度-20℃、20℃、50℃

・環境湿度 20%、50%、80%@40℃±2℃

において基準値の±30%以内

〇 環境温度±9%

環境湿度±6%

6 耐被毒性 HMDS(ヘキサメチルジシロキサン)ガス

被毒性評価

〇 10ppm HMDS 40 分照射

被毒なし

7 実装 ポーラスキャップ実装 ◎ 低消費電力 100mW

8 耐塩害性

防爆性

耐塩害性・防爆性の検討

〇JIS 規格(C 60068-2-52)塩害試験

実施・防爆性実証

9 応答速度 システム応答:5秒以内(60%応答) 〇 5秒以内

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229

ーションの設置では様々な環境影響が予想され、今回常時海岸に設置するか、常時海上で使用す

る機器に対する最も厳しい JIS 規格(C 60068-2-52) 耐塩害試験を行った。防爆性の検討について

は、最終的にどんな防爆構造にすべきかを判定する目的で、防爆構造の初歩的な水素爆発実験を

行なった。水素センサの応答速度は、デバイスレベルでは、水素濃度 1000ppm 以上で、1 秒程度

の応答速度実証を目指して、システムの応答速度の暫定仕様を決めた。

3.事業成果

表 1 に示す達成目標の結果(達成度)について以下に順次報告する。 3.1 検出感度

Pt ゲート方式は、まず Ta2O5/Si3N4/SiO2からなる絶縁ゲート上に Pt を 15nm 積層した水素

センサを作成して応答評価を行った(図1 岡山大学再委託)。水素ガス濃度として 1ppm か

ら高濃度の 10%のガスを用いた。10ppm から 1%の間では,良好な直線応答を示し感度とし

て-23mV/decade が得られた。一方、CMOS 製造ラインで試作した実際のセンサ実装やデモ機に

用いた Pt ゲート Si-MOSFET 型センサの水素濃度の応答特性を図 2に示す。

図 1 水素応答特性(Pt ゲート/岡山大学) 図 2 水素応答特性(Pt ゲート/CMOS ライン)

3.2 選択性

0.1%、1.0%メタン及び 0.1%エタンに対するガス選択性について、Pd ゲート、Pt ゲート FET

について調べたが、ほとんど応答せず、1/20 以上のガス選択性が確かめられた。ガス選択性は実

用上極めて重要な項目であるので、将来のセンサ規格に入る可能性のある 0.1%イソオクタンと

0.1%CO ガスに対する選択性実験を Pt ゲート FET について追加実施した。結果はイソオクタン

にも CO ガスにもほとんど応答せず、1/20 以上のガス選択性が確かめられた。 3.3 寿命試験

現状のセンサ寿命を評価することを目的に、温度劣化と高温高湿劣化の寿命加速試験を行った。

温度劣化では 300℃から 475℃までの温度を 5 種類と-20℃に固定し経時変化を調べた。高温高湿

劣化試験では 85℃95%湿度を保持した恒温恒湿槽を用いて経時変化を調べた。温度劣化が最初に

現れるのは、ソースドレイン電流のリークであり、425℃を超えると顕著になり始め、475℃では、

大電流漏れになる(図 3)。この原因はソースドレイン電極のアルミニウムが N+コンタクト層を

つきぬけ P 型ウェル層に達し基板側を電流が流れることが原因である。寿命加速試験から、本

Si-MOSFET は高温加熱、高温高湿環境下での耐性が強いことが分かってきた。これらの結果をア

レニウス型の物理モデルを導入して 3年以上の寿命を見積もることが出来た。

規格

化水

素応

答出

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Vg

0

0.1

0.2

0.3

0.4

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水素濃度(ppm)

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0

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0.2

0.3

0.4

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0.6

0.7

0.8

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1

1 10 100 1000 10000

水素濃度(ppm)

#2#3#8#23#24

#2#3#8#23#24

規格

化水

素応

答出

力Δ

Vg

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

1 10 100 1000 10000

水素濃度(ppm)

#2#3#8#23#24

0

0.1

0.2

0.3

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0.7

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1

1 10 100 1000 10000

水素濃度(ppm)

#2#3#8#23#24

#2#3#8#23#24

Page 5: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

230

次に中央研究所構内とコスモ石油大黒

水素ステーションにて行ったフィールド

試験を行った。中央研究所構内では、7

月 13 日から 210 日間、センサチップの評

価を行った。フィールド試験としては、

水素応答特性ΔVgの変動は少なく半年の

寿命は達成できた。大黒水素ステーショ

ンの設置場は、海岸そばで、高速道路の

直下という事もあり、ベアチップでは、

ゲート電極表面が急速に汚れ、20μm程

度の排気ガス微粒子が、センサ FET のゲ

ートに被着し、FET が動作しなくなると 図 3 寿命加速試験(Ids の高温・高湿劣化)

いうアクシデントが発生した。特にしきい

値電圧 Vth の変動は 400mV と大きいチップも存在した(図 4 a,b)。このようにセンサチップを

直接大気に晒したケースではゲート部分に汚れが目立ち Vth やΔVg 変動の要因と考えられる。一

方実装センサでは、浮遊微粒子の影響が取り除け、Vth とΔVg の変動は減少していることが分か

る。研究所構内で行った同様な実験では、排気ガス微粒子(PM)の影響は見られなかったが、

ベアチップと実装チップには有意な差が見出され、チップ表面保護の重要性が示唆されている。

図 4(a) 水素応答強度の経時変化 図 4(b) しきい値電圧 Vth の経時変化

3.4 FET特性/信頼性

Vth の5φウェーハ内均一性は3σ=178mV 程度であり、ウェーハ間の Vth 再現性(1.08V)は

きわめて優れている(図 5(a))。水素応答電圧ΔVGのウェーハ面内均一性も優れている(図 5(b))。

図 5(a) Vth のウェーハ内均一性と再現性 図 5(b) 水素応答強度のウェーハ内分布

規格

化水

素応

答出

力Δ

Vg

00.10.20.30.40.50.60.70.80.91

00.10.20.30.40.50.60.70.80.91

拡大

0 50 100 150

②③④⑤⑥

±9%

bare chips

packaging

経過日数

規格

化水

素応

答出

力Δ

Vg

00.10.20.30.40.50.60.70.80.91

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②③④⑤⑥

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経過日数

0.0

0.5

1.0

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0 50 100 150

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(V)

air polluted dusts

±9%

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Vth

(V)

air polluted dusts

±9%

Vth

(V)

経過日数

1.E-07

1.E-06

1.E-05

1.E-04

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1.E-02

0 500 1000

経過時間(h)

Ids(

A)

85℃95% 425℃450℃475℃

高温高湿

475℃

425℃

450℃

1.E-07

1.E-06

1.E-05

1.E-04

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経過時間(h)

Ids(

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85℃95% 425℃425℃450℃450℃475℃475℃

高温高湿

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450℃

0

0.2

0.4

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0.8

1

1.2

1.4

0 5 10 15 20

0

0.2

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0.6

0.8

1

1.2

1.4

0 5 10 15 20

#2

ウェハ面内位置

#3

Vth:3σ=178mV

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0

0.2

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0.8

1

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0 5 10 15 20

0

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1

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#2

ウェハ面内位置

#3

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上 中 下 左 右

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化水

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答出

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1.0

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答出

Page 6: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

231

3.5 環境影響

恒温恒湿器を用いて、水素応答特性を調べた。実際の実験では、1000ppm 濃度に空気希釈し

た水素ガスを純水中でバブリングし、恒温恒湿器中で設定温度と湿度になるように実験系を構築

した。湿度変化と温度変化に対しての応答特性を調べた結果を図 6 に示す。ポーラスキャップ実

装を用いて湿度は制御せずに恒温槽の温度を-20℃、20℃、50℃に変えた時の実験結果を図 6(a)に、恒温槽の温度を 40℃に固定し、湿度を変えた時の実験結果を図 6(b)に示す。温度、湿度と

もに目標値(±30%:表 1)内での変動幅±9%、±6%にとどまり目標を達成した。湿度変化の実

験で、立ち上がり時間にバラツキがあるのは、水素ガスの噴き付けを手動で行ったためである。 図 6(a) 水素応答強度環境温度依存性 図 6(b) 水素応答強度の環境湿度依存性

3.6 耐被毒性

10ppmHMDS ガスを 40 分間照射し、水素センサの 1000ppm 水素ガスに対する HMDS 照射

前後での応答特性を比較した。3 個のセンサに対して実験を行ない、変化がないことを確認した。

HMDS の熱分解温度は 250℃なので、これより 150℃も低い Si-MOSFET 型水素センサでは影響

が出なかったことは良く理解できる。 3.7 実装/耐塩害性/防爆性

水素センサチップの実装は、市販のTO5ステムと2mm角センサチップの間に断熱材を挿入し、

ポーラスキャップにより蓋を形成した。消費電力の目標値は研究計画では取り上げていなかった

が、チップ温度 100℃を実現するヒータ消費電力は 100mW程度であった。水素応答特性は、本

実装構造で影響は受けなかった。この消費電力は、既存の接触燃焼式や金属酸化物方式センサと

比べれば最も低い値に属する。JIS 規格(C 60068-2-52)に従って、実装センサの塩害試験を行っ

た。キャップ表面の幾つかの領域で赤錆びが発生し、実用上対策必要である事がわかった。防爆

性については、火炎が外部に遺漏せず、センサ外部の水素が引火爆発しないことを確かめた。

3.8 応答速度

本プロジェクトの目的を実現するには、センサ素子レベルでの応答速度は、1000ppm の水素

濃度で、約 1 秒の応答時間を達成してる。本センサをシステムに組み込み 5 秒以内の応答時間を

達成している。 3.9 成果の意義

今回開発した Pt ゲート Si-MOSFET 型水素センサの意義は、従来の常識を覆し、Si-MOSFET

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0 200 400 600 800 1000

時間(sec)Δ

Vg(

V) 20%

50%

80%

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Bタイプキャップ

0.0

0.1

0.2

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0.4

0.5

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0 200 400 600 800 1000

時間(sec)Δ

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V) 20%

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0%#080201(#A-2)

Bタイプキャップ

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00.050.10.150.20.250.30.350.40.45

0 200 400 600 800 1000Time (sec)

ΔV

g(V

)

50℃

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-20℃

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Time (sec)

ΔV

g(V

)

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0.2

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0.2

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0.6

0.80.9

0.3

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0.7

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0.1

0.2

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0 200 400 600 800 1000

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0.2

0.4

0.6

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0.3

0.5

0.7

0.10.0

Page 7: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

232

型水素センサの分野で (1) 広い検出範囲(100ppm-10%) (2) 3 年以上の素子寿命 をはじめて実証した点にある。これは水素センサ研究開発における重要な学術的成果でもある。 3.10 特許、論文、講演、報道等の件数一覧

( )は国際出願件数を表す。

4.まとめ及び課題

4.1 成果のまとめ

今回、Pti ゲート Si-MOSFET 型水素センサとしては始めて、100ppm から 10%の広い濃度範

囲で水素ガスを検知できることが実証され、実用化の大きなネックと考えられてきたセンサ寿命

が、寿命加速試験により寿命 3 年以上の見通しが得られ、実用化への大きな壁がなくなった。信

頼性という観点からは、センサ周辺回路を設計するためのしきい値電圧 Vth の制御性(Si ウェー

ハ内面内均一性、ロット間再現性)が極めて良いことも実証でき、実用化への道筋が見え始めた。 4.2 情勢変化への対応

当初の計画では、水素センサをセンサネットに載せることを主たる目標にして進めてきたが、

プロジェクト中間評価において、水素センサ素子開発に注力すべしというご指導があり、最終年

度では、寿命と信頼性評価に注力した。Si-MOSFET 型水素センサにおける寿命は、評価文献も

少なく、実用化に当っての最大の懸念事項であった。幸い予想外の良い結果が得られ、実用化に

繋がるものと期待できる。 4.3 残された課題

実用化に向けて更に系統的で詳細な実験データをとり、他のガスとの選択性や妨害性について

は、本開発センサの適用性を見定めるためにも実験する必要がある。最終目標としてきた水素セ

ンサネットシステムの実用化はNEDOプロジェクト終了後のステップとして残っているが、今回高

い信頼性と長寿命を有するPtゲートSi-MOS FET型センサを開発できたので、更なる低消費電力

化など、着実な開発を続ければ、実現できると考えている。

5.実用化・事業化見通し

今回のPtゲートSi-MOSFETの研究開発で、広い検出濃度範囲と高い検出感度、高濃度領域での高

速応答(約1秒)、低温度(~100℃)低消費電力(100mW)動作を活かした簡易防爆実装、3年以

上の素子寿命などを実証できたので、実用化の主たる技術的障壁はなくなったと考えている。今

回の水素センサの開発を通じて、Si-MOSFETによる水素センサが低消費電力、低価格の特徴を生か

して、水素ステーションや半導体製造工場などの定置型工業用途から始まり、将来の水素社会で

は家庭用燃料電池、水素自動車、燃料電池自動車などへの適用範囲が広がることが期待できる。

特許 論文

出願 登録 実施 査読有 査読無

口答

発表

その他

(総説、解説等)

報道発表等

(新聞発表)

9(4) 2(1) 0 5 0 21 2 2

Page 8: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

233

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成果

サマリ

近い

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造・貯

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論文

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特許

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9

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規発

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Page 9: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

234

革新的技術の研究

実施者:財団法人 エネルギー総合工学研究所

1.事業概要

本研究開発は、「水素に関する共通基盤技術開発」を対象として、「革新的技術の研究」を行う

こととし、以下の研究開発項目を実施する。

①革新的技術の基礎研究

②革新的技術の調査研究

①では、革新的技術について探索・評価を行い、その中から有望技術を選定し、フィージビリ

ティー調査・研究および基礎的研究を行い、研究結果をもとに実用化の見通しを明らかにする。

②では、国内外の革新的技術に関する調査研究を行う。事業略称は、「水素革新」。

2.事業目標(設定の理由も含め)

WE-NET 第Ⅱ期の平成 14 年度末における終了に伴い、平成 15 年度から「水素安全利用等基盤技

術開発」が開始された。この事業を推進してゆく上で、水素エネルギーの社会への導入・普及を

図るには、将来的には有望であるものの当面はその技術的展開の可能性が不明確なシーズ段階に

ある革新的・先導的技術が発展する可能性や、技術改良等により有望となる在来技術の出現の可

能性を考慮すると、水素安全利用等基盤技術開発プロジェクトで対象とする技術の一部として、

このようなイノベーションの種となるアイデア・技術を数多く取り揃え、有望な技術の発掘・育

成を行うことが必要となってくる。

「水素革新技術の研究」は、このような水素製造、水素輸送・貯蔵、水素利用・安全に係る革

新的・先導的技術および飛躍的改良の可能性のある在来型技術について調査・検討・評価を行い、

必要に応じて研究を実施することにより、水素安全利用等基盤技術開発の方向性に有益な示唆・

提案を行い、水素安全利用等基盤技術開発事業における研究開発に資することを目的とする。

3.事業成果

3.1 実施体制及び実施フロー等

本研究開発は、独立行政法人(平成 15 年 9 月末までは特殊法人)新エネルギー・産業技術総合

開発機構(以下 NEDO 技術開発機構と記す)燃料電池・水素技術開発部から(財)エネルギー総合

工学研究所(以下エネ総工研)への委託により実施した。それを受けてエネ総工研では、水素製

造、水素輸送・貯蔵、水素利用・安全に係る革新的・先導的技術および飛躍的改良の可能性のあ

る在来型技術についての研究テーマの調査および公募の実施、採択研究テーマの決定、研究実施

機関との共同実施での研究を行い、年度末に研究成果の評価を行った。

研究テーマの公募は、H16 年度からは、NEDO 技術開発機構およびエネ総工研のホームページや

学協会誌においてアイデア募集等により実施した。また、上記の業務、募集テーマの評価、各研

究テーマの進捗評価および 終評価を実施するために、エネ総工研に外部有識者からなる「革新

的技術に関する研究委員会(水素革新委員会)及び WG」を設置した。応募テーマの評価は、水素

安全利用等基盤技術開発事業との整合性や独創性・新規性とともに、実用化への道筋の明確性に

基づき実施した。年度末の評価では、効率向上等コストパフォーマンスの大幅改善やコスト低下

Page 10: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

235

等実用化段階への展開の可能性があるか否かによって行い、科学的な取り扱いが高度であるか否

かでは行わなかった。年度末の評価の結果、研究成果が有望と認められる研究テーマについては、

研究の継続又は他プロジェクト・企業との共同研究へのステップアップ等を促した。また、H16

年度と H17 年度実施分については成果報告会を開催して成果の公知化を図った(H18 年度と H19

年度分は NEDO 技術開発機構開催の研究成果報告シンポジウムにてその成果を公表した)。

また、革新的技術のテーマ選定や基礎研究の推進に役立てるため、公開資料(学術誌、国際学

会議事録、DOE レポート等)、国内外調査およびプライベートコミュニケーション等により国内外

の革新的技術に関する調査研究を行った。その一部を活用して、H16 年度の国際共同研究プロジ

ェクトに7研究テーマを応募し、2 研究テーマが採択された。また、調査研究の結果も、成果発

表会にて発表した。

以下に、実施フローと、応募と共同実施を行った研究テーマ数の推移を示す。

3.2 共同実施の結果

共同実施で基礎研究を行ったテーマとその結果・成果は下記の通りである

[輸送・貯蔵]水素を液化するための磁気冷凍用材料の開発 東北大(H16~H19)

水素液化用磁気冷凍材料として、La(FexSi1-x)13 系金属磁性体の組成制御により、20~50K の温

度領域においてメタ磁性転移による巨大磁気熱量効果(磁気冷凍効果)が大きいままで、ほぼヒ

革新的技術・調査のアイデア募集→提案受領

技術・調査の評価:アイデアを検証する必要性

研究結果・調査結果の評価:

実用化段階への展開の見通し他事業への提案の可能性

採択。研究・調査の実施

・ 他のNEDOプロジェクト等への提案

・ 企業との提携を推奨・ 継続提案

(委員会の指導・年度目標に応じた提案であることが必要)

有無

不採択。実施せず

研究終了

無 有

エネ総工研

・指導、助言、方向付け

・研究進捗管理

・技術調査のフィードバック

エネ総工研・水素革新委員会

科学的に優れた結果であっても、実用化への見通しが無ければ終了

革新的技術・調査のアイデア募集→提案受領

技術・調査の評価:アイデアを検証する必要性

研究結果・調査結果の評価:

実用化段階への展開の見通し他事業への提案の可能性

採択。研究・調査の実施

・ 他のNEDOプロジェクト等への提案

・ 企業との提携を推奨・ 継続提案

(委員会の指導・年度目標に応じた提案であることが必要)

有無

不採択。実施せず

研究終了

無 有

エネ総工研

・指導、助言、方向付け

・研究進捗管理

・技術調査のフィードバック

エネ総工研・水素革新委員会

科学的に優れた結果であっても、実用化への見通しが無ければ終了

成果発表会

年度 応募提案数 採択テーマ数

2003(H15) 11 11

2004(H16) 35 14

2005(H17) 24 7

2006(H18) 22 8

2007(H19)年度は、 終年度のため、新規のテーマ募集は行わず、H18年採択テーマから、5件のみ継続実施。

Page 11: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

236

ステリシス損失が無い材料を得ることができた。この組成を試料全体で均一に維持しつつ、高周

波溶解法により kg オーダーの製造が可能なことを示し、水素液化磁気冷凍システムへの有望な低

温動作磁気冷凍材料への適用の可能性を示せた。

[輸送・貯蔵]高効率(磁気冷凍)水素液化システムの研究開発

物質・材料研究機構、金沢大(H17~H19)

磁気冷凍による水素ガスの液化を実証し、高効率の液化機としての可能性を示した。また、水

素液化温度までの予冷に使われる蓄冷型(AMR 型)磁気冷凍サイクル試験機を試作し、球状加工

Dy-Gd-Al ガーネット磁性体を用いて、磁性体の断熱消磁温度幅を上回る温度勾配が磁性体ホルダ

中に自律形成され、AMR サイクルを実現できることを確認した。これら、実験データに基づく磁

気冷凍サイクルシミュレーションにより、水素液化のエネルギー効率として、0.83(LHV)(液化効

率 50%に相当)達成の可能性を示した。

[輸送・貯蔵]高効率水素液化技術と液体水素長期安定貯蔵技術に関する調査研究

千葉大学 (H16)

水素液化技術と液体水素貯蔵技術に関する調査は出来たが、目標とする高効率水素液化技術な

らびに液体水素長期安定貯蔵技術に向けた要素機器である圧縮機・熱交換器等の調査が十分では

なく、またペルチェ素子などへの言及も欲しい。

[製造]通電過熱アルマイト触媒を用いたバイオエタノールからの水素製造技術の研究開発

(バイオエタノール水素製造) 東京農工大(H17~H19)

CO シフトコンバータがなくコンパクトで、バイオエタノール水溶液から高効率に水素を製造す

る反応器-モノリシックシステムの中に複数の機能(触媒、CO2 分離回収、熱伝達等)を具備-

の要素の製造技術を確立し、反応器として操作・性能評価試験を実施できた。

[利用・安全]光ファイバを用いた分布型水素センサの開発 横浜国大・東大(H18~H19)

本質安全な新方式水素センサとしての基本的機能、長尺の一本の光ファイバを用いたセンサデ

バイスで、光伝播損失が十分小さく、面での水素漏洩検知が可能であることを実証できた。感度

面で課題はあるものの実用化が期待できる。このセンサシステムの用途について検討を進める必

要がある。

[利用・安全]音波を利用した水素センサの研究 九州大(H16~H17)

超音波の伝播挙動(時間波形・周波数特性)が媒体ガス組成により変化することを利用して、

広い閉空間の特定ガス成分の濃度を少ないセンサ数で効率よく検知しようという新しい方式は興

味深い。ただ、水素特有の応答が判明できず、水素センサとしての実用化には課題を残した。

[製造]太陽光駆動型多糖類バイオマス-水素変換システムの開発 大分大(H18~H19)

廃棄物系新聞紙由来のセルロースの糖化を、室温・中性領域で行ない、このセルロース糖化液

から、(広い波長範囲の可視光)によって、光化学的に水素を実際に得ることができた。ただ、

多量の副生成物の処理に、実用化への課題が残る。

Page 12: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

237

[製造]発酵菌による高生産性水素製造の研究(発酵水素製造) 横浜国大(H16~H17)

非常に高速で、嫌気性で水素生産を行う高温細菌を発見し、水素生産のための良好な菌がある

という方向性を示すことができた。ただ、副生成物の処理に実用化への課題が残っており視点を

変える必要もある。

[製造]工業排熱を利用する安価な大規模水素製造の成立性評価研究 九州大 (H16)

転炉等の廃熱回収による安価な水素製造の調査研究を行い、コスト試算等も明示されているが、

プロセスイメージが欲しい。水素革新の域は終了したと考えられるため、今後は産業間連携プロ

ジェクト等と情報交換し、実用化に向けた詳細検討を期待する。

[製造]ゼオライトの形状選択性を利用した水素製造技術の研究開発

岐阜大、北陸先端科学技術大学院大学 (H15-H16)

ゼオライトの形状選択性を利用した水素分離技術の検討は重要であるが、薄膜の作製に苦慮し

ており、定量的な成果の明示に至らなかった。

[製造]CO2 回収型昇圧純水素製造システムの研究 電力中央研究所、京都大 (H16)

CO2 回収型昇圧純水素製造システムの研究コンセプトは面白いが、CO2 分離膜の機能性評価に至

らず、定量的な成果の明示に至らなかった。

[製造]水素透過膜型非平衡反応を利用する低温作動型純水素製造プロセスの研究

石油資源開発、九州大(H16)

300℃~400℃という低温域でも反応の進行は認められている。水素革新での域は終了したと考

えられるため燃料電池等の実用化に向けた次世代技術開発プロジェクト等への参画が可能。

[製造・利用]燃料電池および水素製造用の白金族代替触媒の開発

千葉大学、京都大学、東京工業大学、横浜国立大学、工学院大学、三菱重工業 (H15-H16)

白金族代替触媒の研究は基礎研究として重要である。有望な代替触媒の研究成果も出てきてお

り論文発表等も多いため、燃料電池等への実用化に向けた次世代技術の開発プロジェクト等への

参画が可能と考える。

[貯蔵] 水素系混合ハイドレートを利用する水素貯蔵技術の開発 大阪大(H17-18)・産総研(H17)

ヘルプ分子として THF(テトラヒドロフラン)を使っての水素吸蔵量測定については正確なデ

ータが得られたことは成果である。但し、この系は水素貯蔵量(質量密度)が低く、車載用途で

の実用化については現段階では困難と思われる。

[貯蔵] 炭素担持体を用いた水素ハイドレートによる水素吸蔵の研究 筑波大(H18)

当初の予測とは異なり、ヘルプ分子と炭素材料の両方が必要であることを解明し、また、正確

な実験により、水素ハイドレートの実力を実験的に確かめることが出来たが、水素貯蔵量として

は少なく、車載用途での水素貯蔵の実用材料とするのは困難。

Page 13: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

238

[貯蔵]水素吸蔵中心とこれを保持する場からなる高性能水素貯蔵材料の研究開発

豊橋技術科学大(H18)

新規概念についての有効性を提示したが、新しい材料としての製造可能性を示唆する具体的デ

ータは得られなかった。

[貯蔵]溶射技術による水素吸蔵合金の熱交換特性改良の研究 物質・材料研究機構 (H15)

本目的(熱交換特性改良)に対する溶射技術の効果に疑問が残った。

[貯蔵]水素遮断性ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜の研究 高知工科大 (H15~H16)

DLC 膜の水素遮断性に対する定量的な成果報告に欠け、アルミとの比較に至っていない。DLC

の特性を考慮し、水素圧縮等における潤滑技術への適用も検討の余地あり。

[利用]中温作動一体型マイクロ燃料電池の開発 東工大(H16)

100℃~300℃の中温度領域で運転する高効率な一体型マイクロ燃料電池を開発することを目的

とする。要素技術に革新性は少ないが、マトリックスの利用など組み合わせのコンセプトは面白

い。技術の狙いを明確にして、実用化に向けた検証が今後は必要である。

[利用]水素予混合気組成制御による燃焼性促進技術の基礎研究 九州大 (H16)

水素予混合気組成制御による燃焼の基礎研究は、燃焼促進・抑制技術の可能性を明らかにし、

水素社会に向けた基礎物性の取得として重要である。水素社会構築共通基盤整備事業等へ参画す

る方法もある。

[利用]超低 Nox 水素エンジンの研究開発 マツダ (H16)

目標に向け順調に研究成果が出ている。高効率なコジェネ水素エンジンに向けた更なる検討に

期待する。

3.3 成果の意義

本プロジェクトにおいて共同実施した多くの研究テーマに関して、実用化段階での展開を見通

せるレベルに到達させ、あるいは、別のプロジェクトへのステップアップを図ることができた。

「燃料電池および水素製造用の白金族代替触媒の開発」においては、「白金族代替触媒研究会」

の組織など、技術分野を超えたシナジーを創生する研究管理を考案し、これにより光触媒である

タンタルオキシナイトライドの燃料電池カソード触媒としての可能性が見出されるのに貢献し、

燃料電池の白金族代替触媒研究にステップアップを行った。

「発酵菌による高生産性水素製造の研究(発酵水素製造)」では、ベンチャー企業立ち上げの別

のプロジェクトでの研究に発展している。

「超低 Nox 水素エンジンの研究開発」成果の一部は、実用化段階水素エンジンに取込まれた。

「磁気冷凍技術」に関しても、国内3研究機関に分散していた材料開発機能とシステム設計機

能を統合して、磁気冷凍での水素液化を実証するなど、欧米に先行されている水素液化分野で、

従来とは異なる高効率の新規水素液化技術での「世界一」の研究開発体制の構築に寄与した。

Page 14: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

239

3.4 特許、論文、講演、報道等の件数一覧

口答 その他

出願 登録 実施 査読有 査読無 発表 (総説、解説等)

15( 0) 0(0 ) 0(0 ) 79 5 167 7 9

報道発表等特許 論文

( )は国際出願件数を表す。

4.まとめ及び課題

本研究事業では、水素製造、水素輸送・貯蔵、水素利用・安全に係る多くの革新的・先導的技

術について、共同実施の研究等を通して、所期の目的である技術の将来性・実用化段階での技術

的展開の可能性を明確にすることができ、水素安全利用等基盤技術開発の方向性に有益な示唆・

提案を行い、研究開発に資することができた。平成 20 年度以降の水素関連技術の開発プロジェク

トにおいてもその成果が活かされるものと考える。

今後の課題の一つとして、例えば、車載水素貯蔵技術のように、目標とその達成の困難さが明

確になりつつある水素技術については、現象解明の基礎研究とともに、新規な発想によるブレー

クスルーを図れるよう、本研究事業のような、「水素革新技術の研究」事業を継続・発展させるこ

とである。このような新規発想により技術ブレークスルーを図ろうとする場合の事業運営・研究

管理には、注力方策が判明している技術開発とは異なる手法が必要と思われる。

また、輸入石油の 近の高騰から、再生可能エネルギー資源からの水電解等による水素の製造

コストが、水力や風力に恵まれた海外や洋上の特定地域では、熱量ベースでも輸入石油価格に十

分競合しうる可能性が出てきている。地球温暖化抑制の点からも、化石燃料の使用を大幅に抑制

することが求められている。このようなエネルギーの獲得・利用面のパラダイムシフトが起こり

つつある状況下では、例えば、水素(液化水素や水素キャリア)の製造や長距離の輸送・貯蔵の

ために、小規模でも高効率な磁気冷凍技術等がわが国の戦略技術として必須となる可能性がある。

もう一つの課題としては、このような戦略技術テーマについては、研究成果を大規模研究に連結

する仕組みが求められる。

5.実用化・事業化見通し

「水素革新技術の研究」は、革新的・先導的技術および飛躍的改良の可能性のある在来型技術

についての調査・検討・評価を行い、水素安全利用等基盤技術開発の方向性に有益な示唆・提案

を行い、水素安全利用等基盤技術開発事業における研究開発に資することを目的とするため、直

近の実用化および事業化に直結することはない事業である。しかしながら、「磁気冷凍技術」「バ

イオエタノールからの水素製造」「光ファイバを用いた分布型水素センサ」「白金族代替触媒」

「発酵水素製造」等では、実用化段階での展開を見通せるレベルに到達している。

Page 15: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

240

●全

期間

成果

サマリ

・外

国法

人の

研究

者と

の国

際共

同研

究に

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研究

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共同

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託先

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究内

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研究

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統合

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革新

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料電

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成立

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目標

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電池

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価に

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戒防

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質触

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改質

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流動

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、有

機性

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造技

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範な

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技術

開発

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水素

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が期

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技術

開発

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水素

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技術

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質膜

:加

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000円

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金属

, 貴

金属

量低

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・計

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部の

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電池

に関

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革新

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・水素

製造

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係る

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開発

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供給

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貯蔵

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以下

,

耐久

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発表

論文

発表

特許

出願

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3)6C

l 2とア

ンモ

ニア

分解

生成

/水

素放

出物

質(L

iH)を

組み

合わ

せた

複合

化物

質は

、3.

5~5.

0質量

%の

多量

の水

素を

125℃

以下

の温

で放

出さ

せる

こと

がで

きた

・爆

轟遷

移を

考慮

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コン

パク

ト水

素ス

テー

ショ

ン安

全設

計技

術開

発に

つい

ては

水素

ステ

ーシ

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内に

おけ

る爆

轟遷

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DT)

現象

を数

値解

モデ

ルで

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うに

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。こ

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より

水素

濃度

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火エ

ネル

ギー

障害

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列等

から

DD

T発生

を予

測で

きる

発生

判断

基準

を作

成し

た。

図1

試料の昇

温脱

離ガス質

量数

分析結果

(C

-16)

Page 16: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

241

国際共同研究

実施者:日本法人・団体等 再委託先:海外法人・団体等

1.事業概要

水素エネルギー分野において燃料電池の実用化のためにブレークスルーが必要な水素の製

造、貯蔵、輸送、安全性確保等に関する技術課題に対して、いままでに類似の研究発表実績の

ない革新的な研究開発を本邦法人の研究者と外国法人の研究者との国際共同研究による英知の

融合により実施することにより、我が国水素利用技術の飛躍的な発展を図ることを目的として

本事業を実施する。本事業によりわが国発の革新的な次世代技術開発による水素エネルギー分

野におけるブレークスルーに寄与できる。

2.事業目標(設定の理由も含め、例えば平成 19 年度事業) 海外の先進的な技術が国内技術と融合できるように、またわが国発の革新的次世代技術開

発による水素エネルギー分野におけるブレークスルーに寄与できるように、国際共同研究にお

いては以下の取組みを新たに実施する。 ① 本邦法人の研究者と先進的な技術を有する外国法人の研究者との英知の融合がはかれるよ

うに国際共同研究事業を実施する。 ② 我が国水素利用技術の飛躍的な発展に寄与できるよう国際的な学会での発表及び学術誌へ

の公表を義務づけるとともに、研究間期間終了後に 1 年以上関連研究テーマで研究を継続す

ることや研究テーマに関連する技術アドバイザリー活動を 1 年以上実施する。 事業目標については、例えば平成 19 年度事業の目標は下記の通りである。この目標は 2006

年度の NEDO 燃料電池・水素技術開発ロードマップの目標値である。

(1)革新的な水素貯蔵技術の開発 ① 有効水素貯蔵量 6mass%以上、水素放出温度 100℃以下, 耐久性 1,000 回以上を目標とす

る貯蔵材料の開発 ② 燃料電池自動車に搭載して 1 充填 500km 以上走行可能とする貯蔵技術の開発

(2)革新的な水素製造・供給技術の開発 ① 水素製造・供給に係るコストを現行の半分以下にする要素技術 ② 温暖化ガスフリーかつ低コストな水素製造技術の開発

再生可能エネルギー利用、バイオ水素生産、CO2 回収技術併用型水素製造等 ③ 水素スタンドコンパクト化のための安全性確保技術の開発

(3)固体高分子形燃料電池に関する革新的技術開発 ① 自動車向け固体高分子形燃料電池用(注)として、高温(100-120℃程度)、加湿器レス、膜

コスト 3,000 円/m2以下、プロトン伝導率 0.1S/cm 以上を目標とする高温電解質膜の開発 ② 自動車向け固体高分子形燃料電池(注)の触媒コスト 1,000~2,000 円/kW 以下を目標とす

る脱貴金属・貴金属使用量低減触媒の開発 ③ 固体高分子形燃料電池内部での現象・メカニズム解明のための評価解析・計測技術の開発

Page 17: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

242

(注)燃料電池スタックの性能レベルは、5,000 時間-起動停止 6 万回の耐久性及び 64%LHV 以上の発電効率が見込めるものとします。

3.事業成果

本事業では、平成 16-17 年度、平成 17-18 年度および平成 18-19 年度の 3 回にわたり、公募

を実施しそれぞれ 12 ケ月から 14 ケ月間技術開発を実施した。各年度における実施テーマ数を、

表 1 に示した。テーマ総数は 32 件であり、複数年度にわたり採択され実施したものもそれぞ

れの年度に含まれている。 表1 年度別実施テーマ数

平成 16-17 年度 平成 17-18 年度 平成 18-19 年度 合計 採択テーマ数 件 11 9 12 32

3回にわたる技術開発の中での主要な事業成果は、2(1)の目標別に挙げれば、以下に記

載する内容である。 (1)革新的な水素貯蔵技術の開発 ① ナノオーダー構造組織制御による高級増量水素貯蔵材料の研究開発

ナノメートルオーダーの構造、組織をもつ従来には無い特有の機能を有する新しい材料の

合成により、目標を達成する材料開発を目的としている。 これまでの成果は以下のとおりであり、材料合成手法に関する知見を得ている。 Mg-Ti 系合金につき組成および合成条件を変化することにより、面心立法(FCC)、体心

立方(BCC)構造等の結晶構造の制御を可能にしており、水素高吸蔵量化にあたり合金構造

制御が可能であることが分かった。また、海外大学との共同研究により、水素吸蔵放出速度

の促進のために合金表面に Ni 等の金属を微細担持するナノプロット法が可能となった。 ② アンモニアを活用した高容量水素貯蔵複合化物質の創製技術の構築

合金系、錯体系等水素貯蔵材料の構造 と水素貯蔵能との関係につき知見を得た。 水素吸蔵量 6 mass%を満足し、同時に

100℃以下での吸蔵・放出する材料開発

を目的に、アンモニア吸放出物質

(Mg(NH3)6Cl2)とアンモニア分解生成/

水素放出物質(LiH)を組み合わせた複合

化物質は、3.5~5.0 質量%の多量の水素

を 125℃以下の温度で放出させることに

成功した(図1)。今後は、目標達成にむ

けて、水素吸蔵放出の反応機構の解明に

より水素放出特性向上により 100℃以下 図1 Mg(NH3)6Cl2 の上に活性化した LiH を での吸蔵放出を目指すとともに、水素吸 置いた試料の昇温脱離ガス質量数分析結果 蔵量増加に向けて、性能改良と新規複合 化物質開発を継続する。

H2

NH3

/ 温度 ℃

150℃以下で水素放出を確認

0 100 200 300 400 500

ガス

放出

量/

a.u.

Page 18: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

243

③ 遷移金属ホウ素系水素貯蔵材料の研究 遷移金属-ホウ素系水素貯蔵材料 M(BH4)nは、水素貯蔵密度が高い(図2)。水素放出温度

の低温下の可能性につき物性との相関につき理論計算及び実験結果から水素貯蔵材としての

特性評価を実施した。その結果、遷移金属の電気陰性度(χp)と生成熱の間に相関があり、

電気陰性度が大きいほど熱力学的安定性が悪く、水素放出温度が低くできる可能性のあるこ

とが分かった(図3)。

図2 遷移金属-ホウ素系材料の水素貯蔵密度 図3 M(BH4)nの生成熱ΔHと電気陰性度

χpの相関 (2)革新的な水素製造・供給技術の開発

① 爆轟遷移を考慮したコンパクト水素ステーション安全設計技術開発 水素ステーションをコンパクト化するための

安全性を確保できる安全設計のために、水素ス

テーション内における爆轟遷移(DDT)現象を

数値解析等により調べ、以下を解明した。 水素濃度と着火エネルギーが火炎伝播速度と

DDT 発生距離に影響することを明らかにした。

また、障害物配列を想定すれば判断できる DDT発生判断基準を作成した(図4)。さらに、DDTを抑制するには換気や火炎伝播を考慮して設計

することが必要であることが分かった。 図4 DDT 発生判断基準の例

② 水素ガスパイプライン高速破壊防止技術

水素ガスパイプラインの信頼性設計指針を得ることを最終目標として、パイプの高速き

裂伝搬挙動に関する実験と解析を世界で初めて実施した。この結果、水素ガスパイプライ

ン実大高速き裂伝搬実験に世界で初めて成功した。また、メタンガスと比較して水素ガス

の方が早期にき裂が停止することを確認した(図5)。 ガス減圧挙動と高速き列伝搬挙動を連成した計算モデルを開発し、メタンガスよりも水

素ガスの方の減圧が速く、早期にき裂駆動力が低下してき裂が停止することを定量的に評

ΔH = 253.6χP - 398.0abs.mean error 9.6 kJ/mol BH4

0

40

80

120

160

200

0 5 10 15 20mass%H2

kgH

2/m

3

NaBH4LiHMgH2MgCaH3.7

Mg2FeH6(Ti,Cr,V)H1.9

Mg2NiH4

Zr(CrFe)2H3.4

TiFeH1.7(Ti,Cr,V)H1.1

LaNi5H6

Hydrogen storage alloys

NaAlH4

Mg(NH2)2+4LiH2003-NEDO project of “Development for Safe Utilization and Infrastructure of Hydrogen”

LiNH2

LiAlH4

Target: 5.5 mass %, < 150℃ (2010), 9 mass % < 150 ℃ (2020)

Zr(BH4)4

Hf(BH4)4

M(BH4)n

LiBH4

DDT 発生

Page 19: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

244

価できた(図6)。き裂が非伝搬でリークにとどめるのに必要なパイプ材の必要靭靭性値を

試算し、メタンガス用パイプと同等の靭性であればき裂停止可能であることが分かった。 図4 水素ガスパイプラインの実大高速き裂伝搬実験

図5 計算モデルによるき裂伝搬挙動の評価 (3)固体高分子形燃料電池に関する革新的技術開発

① マイクロチャンネル水素製造装置と中温作動燃料電池を統合した新規水素エネルギー利用

システムの要素技術確立 最適動作温度が 250ºC 前後である MEOH 原料小型水素製造装置と中温作動燃料電池を統

合した、燃料改質プロセスの簡略化と電極の CO 被毒軽減を同時に達成する新規システム(革

新的なコンパクト電源)の可能性を実証できた(図6)。 小型水素製造装置の性能が後段の電池性能へ大きく影響するため、更なる高性能化・最適

化が必要である(図 7)。供給燃料種に応じた、ガス流路(チャンネルパターン)の設計およ

び触媒固定化方法の検討が必要であることを明らかにした。

人工的に300mmのき裂を導入

水素ガス/メタンガス : 圧力 12MPa

外径:267mm、肉厚: 6mm 高速き裂伝播

最大34.5m

き裂は約200m/sの速度で伝播後、停止。

き裂駆動力 ガス散逸 き裂伝播抵抗力

圧力 減圧波

計算で得られたパイプの

動的破壊形状の例 ガス減圧とき裂伝播を連成した計算モデル(模式図)

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245

燃料電池用燃料極(Pt 触媒)の CO 被毒耐性の向上には、前段へのシフト反応触媒層の設

置が有効であることを示した。

図6.マイクロチャンネル水素製造装置と中温作動燃料電池の統合システム 3.2 成果の意義

外国法人と日本法人の間で実施した革新的な研究開発の成果は、実用化・技術開発のた

めに多くのブレークスルーの必要な水素・燃料電池の技術開発分野において、今後要素技

術開発や実用化技術開発にむけて発展展開できる成果である点が非常に意義深い。 例えば、水素インフラ関連の安全性に関しては、「水素ガスパイプライン高速破戒防止技

術の研究開発」におけるパイプラインの亀裂進展の予測シミュレーション技術の開発、あ

るいは「爆轟遷移を考慮したコンパクト水素ステーション安全設計技術開発」における障

害物構造と燃焼伝播、爆轟遷移の有無を判定できるシミュレーション技術等は、設計者へ

の設計指針の提供につながることが考えられるため、実用化に向けた展開が期待できる。

3.3 特許、論文、講演、報道等の件数一覧(H17)

( )は国際出願件数を表す。

特許 論文

出願 登録 実施 査読有 査読無

口答

発表

その他

(受賞総説、解

説等)

報道発表等

(新聞発表)

(1) ( ) ( ) 60 4 160 4 6

H2-rich reformed gasCH3OH + H2O

0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.100.4

0.5

0.6

0.7

0.9

1.0

Current density / A cm

2 2Reactor temp. 174℃ Reactor temp. 184℃ Reactor temp. 203℃ Reactor temp. 212℃Reactor temp. 235℃ Reactor temp. 271℃

70% H2, ~30%H2O

0.8

0.12

Term

inal

vol

tage

/ V

図7.200ºCにおけるI-V曲線(メタノールの水蒸気改質後ガスを供給)

Page 21: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

246

4.まとめ及び課題 我が国水素利用技術の飛躍的な発展を図ることを目的として、また、水素エネルギー分野に

おいて燃料電池の実用化のためにブレークスルーを図るために、いままでに類似の研究発表実

績のない革新的な研究開発を本邦法人の研究者と外国法人の研究者との国際共同研究による英

知の融合による共同研究事業を 3 ケ年度実施し、32 件の革新的なテーマを実施した。

この結果外国法人の分析・解析技術や合成技術等を国内法人の技術と融合することで、水素

インフラにおける解析・シミュレーション技術やブレークスルーのための材料開発指針等に大

きな成果が得られた。

今後は、これらの成果を水素インフラの設計や新規の高性能貯蔵材料開発等の具体的な形、

物につなげるための要素技術開発、実用化研究につなげる必要があると考えられる。 5.実用化・事業化見通し

国際共同研究事業はブレークスルーのための革新的技術の開発であり、基盤研究的位置づけ

であるが、本事業の成果を要素技術開発、実用化研究につなげていけば、最終的に実用化は可

能であると考えている。 水素・燃料電池の技術開発分野は、ブレークスルーの必要な技術開発分野であるが、より早

く技術開発を達成するために、国際共同研究のような基礎研究から要素技術開発や実用化研究

まで、連携を図りながら開発スピードをもって早期に実用化を目指したい。

Page 22: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

247

●全

期間

成果

サマリ

水素

経済

社会

移行

シナ

リオ

等研

究委

託先

:株

式会

社三

菱総

合研

究所

●背

景/研

究内

容・目

的●

全期

間実

施内

容/

研究

成果

ほぼ

達成

△分

析モ

デル

を構

築C

ほぼ

達成

△感

度分

析を

実施

し、

課題

を明

確化

D

△○

水素

供給

の経

済性

に関

する

デー

タを

整理

し、

コス

ト低

減の

可能

性を

検討

個人

用、

業務

用の

車両

の利

用実

態を

把握

成果

内容

ほぼ

達成

達成

自己

評価

A B実施

項目

ほぼ

達成

△分

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業務

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車両

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内容

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評価

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項目

●研

究成

果ま

とめ

●今

後の

課題

口答

発表

論文

発表

特許

出願

受賞

・報

道口

答発

表論

文発

表特

許出

願受

賞・報

水素

ステ

ーシ

ョン

整備

のあ

り方

につ

いて

の検

討実

施項

目C

水素

ステ

ーシ

ョン

の普

及シ

ナリ

オの

検討

実施

項目

D

水素

供給

につ

いて

の検

燃料

電池

自動

車の

導入

対象

の詳

細分

目標

実施

項目

A

実施

項目

B

実施

項目

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目標

実施

項目

A

実施

項目

B

実施

項目

●研

究目

●実

施体

制及

び分

担等

NEDO

三菱

総合

研究所

検討委員会

(有識者で

構成)

燃料

電池

の有

望な

市場

であ

る自

動車

市場

にお

いて

、水

素燃

料電

池自

動車

(FC

V)を

普及

させ

るた

めに

は水

素イ

ンフ

ラの

整備

が不

可欠

あり

、市

場導

入に

合わ

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整備

が重

要で

ある

。本

シナ

リオ

検討

では

、水

素イ

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つい

て、

複数

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設定

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み合

わせ

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用意

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水素

イン

フラ

整備

にか

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社会

負担

コス

トに

つい

て感

度解

析を

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ら検

討評

価し

た。

本研

究開

発は

、「水

素安

全利

用等

基盤

技術

開発

水素

に関

する

共通

基盤

技術

開発

」の

一環

とし

て、

水素

経済

社会

への

移行

シナ

リオ

を分

析す

ると

共に

、運

輸部

門の

CO

2排出

抑制

効果

的と

期待

され

てい

る燃

料電

池自

動車

の普

及や

、そ

れを

支え

る水

素供

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ンフ

ラの

展開

に関

する

技術

的課

題等

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、今

後の

関連

技術

開発

に貢

献す

るこ

とを

目的

とし

てい

る。

50

00

個人

の車

の利

用実

態、

水素

ステー

ション

整備

に対

する

要望

等を

踏ま

えて

、地

域の

自動

車保

有密

度を

考慮

した

水素

ステー

ション

整備

の分

析モ

デル

を構

社会

負担

コス

トを小

化す

る水

素ス

テー

ション

の規

模と

配置

を分

⇒大

都市

から

ステ

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ョン

を整

備し

たほ

うが

有利

(地

域の

FC

Vの

導入

比率

が等

しい

場合

水素

ステー

ション

の事

業性

を分

⇒初

期に

設備

費が

補助

され

れば

、そ

の後

は採

算が

取れ

る場

合も

ある

が、

水素

供給

価格

を低

く設

定す

ると

、現

在の

技術

を前

提と

した

経済

性で

は、

ステー

ション

更新

後に

民間

が自

立的

に経

営で

きな

い(解

決の

めに

は技

術開

発等

で設

備費

の低

減が

必要

)。

FC

Vの

販売

台数

が増

加し

ても

、導

入地

域が

拡散

して

しま

うと

、社

会資

本整

備に

必要

とな

る投

資が

増大

地域

のFC

Vの

代替

率の

上昇

が望

まし

く、

その

ため

に、

個人

ユー

ザを

対象

とし

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Vの

優遇

措置

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)】

*10年

間で

10万

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額の

概算

(F

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の車

両費

は除

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注)建

設費

は50

Nm

3 /h:1

.37億

円、

100N

m3 /

h:1

.64億

円、

300N

m3 /

h:2.8

3億

円、

500N

m3 /

h:4

.24億

円と

想定

。土

地面

積は

、50

~300N

m3/h

は263m

2 、50

0N

m3/h

、443

m2 と

想定

。土

地価

格は

、東

京都

準工

業地

域を

想定

して

80

万円

/m

2と

した

・FC

V普

及初

期に

おけ

るFC

V及び

水素

供給

ンフ

ラの

採算

性を

向上

させ

るた

めの

更な

る方

策の

検討

・FC

Vの

車両

価格

と水

素コ

スト

を考

慮し

た分

0

1,0

00

2,0

00

3,0

00

4,0

00

5,0

00

6,0

00

050

100

150

200

販売

台数

(台

/エ

リア

)

総額 (億円)

50N

m3/h

50N

m3/h

300

Nm

3/h

300N

m3/h

500N

m3/h

500N

m3/h

水素

ステー

ション

規模

100

Nm

3/h

100N

m3/h

(C

-17)

Page 23: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

248

水素経済社会移行シナリオ等研究

実施者:株式会社 三菱総合研究所

1.事業概要

本研究開発は、「水素安全利用等基盤技術開発 水素に関する共通基盤技術開発」の一環として、

水素経済社会への移行シナリオを分析すると共に、運輸部門の CO2 排出抑制に効果的と期待さ

れている燃料電池自動車の普及や、それを支える水素供給インフラの展開に関する技術的課題等

を抽出し、今後の関連技術開発に貢献することを目的としている。 燃料電池の有望な市場である自動車市場において、水素燃料電池自動車を普及させるためには

水素インフラの整備が不可欠であり、市場導入に合わせた整備が重要である。 本シナリオ検討では、水素インフラ整備のあり方について、複数のケース設定を組み合わせた

シナリオを用意し、水素インフラ整備にかかる社会負担コストについて感度解析を行いながら検

討評価した。またその際、社会負担コストを 小化するために、どのような技術進展・規制緩和が

必要となるかという視点からの分析も併せて行った。検討に際しては、有識者で構成される委員

会での審議を行った。 2.事業目標

燃料電池自動車向けの水素インフラ整備のあり方について、複数のケース設定を組み合わせた

シナリオを用意し、水素インフラ整備にかかる社会負担コストについて感度解析を行いながら検

討評価することを目標とした。 なお、シナリオの時間軸の区分は燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)に準拠し、これに基づ

き、本研究では定量的な分析を実施した。 対象とする普及時期は、水素燃料電池自動車の大量普及に向けた移行初期(年間普及台数:数

千~数万台)に関して関東圏を題材として分析評価した。 特に、燃料電池自動車は個人市場への普及が期待されるため、個人向けの自動車市場も含めて、

水素ステーションの整備のあり方を検討し、普及の条件と課題を分析した。 事業目標の詳細は以下のとおりである。

(1)燃料電池自動車(FCV)の導入対象の詳細分析 自動車の走行実態、給油実態をアンケート調査等により明らかにする。 (2)水素供給についての検討 水素供給のあり方を分析するために必要となる水素供給の経済性に関するデータを分析し、供

給コスト低減の可能性を示す。 (3)水素ステーション整備のあり方についての検討 費用が 小となるような水素ステーションのあり方について分析モデルを構築する。 (4)水素ステーションの普及シナリオの分析 モデルを用いた感度分析により、普及に向けた課題となりうる点を明らかにする。

Page 24: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

249

3.事業成果

3―1 自動車市場形成シナリオの分析 (1)燃料電池自動車の導入対象の詳細分析 燃料電池自動車(FCV)の導入対象として、個人ならびに業務で利用する車両を対象として分

析した。既存の統計資料からは把握できない点については、個人の自動車ユーザへのアンケート

を実施した。 その結果、個人ユーザは、遠出する場合のための水素ステーションが遠隔地になくても 85%以

上の人が FCV を購入することが明らかになった。また、自宅等の拠点の周辺に水素ステーショ

ンがあれば、52%の人が FCV を購入することが明らかになった。これらから、まずは、自宅等

の拠点近くへの水素ステーションの整備するシナリオを検討することにした。 (2)水素供給についての検討 水素供給コストについての過去の研究事例をレビューするとともに、新たな水素供給方法の研

究開発の現状について調査し、今後の水素ステーション関連のコスト低減の可能性を検討した。

水素コスト (円/Nm3)

4.8

6.8

13.4

0.07

11.04

19.9

27.3

41.4

110.4

5.6

8.0

15.8

0.09

12.96

23.3

32.1

48.6

129.6

310 320 330 340 350

改質器コスト

昇圧器コスト

土木基礎工事コスト

原燃料費

ディスペンサー

諸経費率(対設備コスト)

現地・据付コスト

電気代

土地代

水素コスト (円/Nm3)

110.4

19.9

41.4

27.3

6.8

11.04

0.07

4.8

13.4

129.6

23.3

48.6

32.1

8.0

12.96

0.09

5.6

15.8

126 128 130 132 134 136

改質器コスト

原燃料費

昇圧器コスト

土木基礎工事コスト

電気代

ディスペンサー

諸経費率(対設備コスト)

土地代

現地・据付コスト

[300Nm3/h・稼働率 15%] [300Nm3/h・稼働率 50%]

(注) 水素ステーションコスト: 300Nm3/h:2.83 億円 、設備費は学習効果を 考慮せず。 ディスペンサーは、2基設置、併設型ステーションの土地面積: 50~300Nm3/h:263m2、500Nm3/h:443m2

土地価格: 東京都準工業地域を想定して 80 万円/m2とした。原燃料は都市ガスを想定 図1 水素供給コストの支配要因(分析例)

(3)燃料電池自動車の普及シナリオの検討

FCV の普及時期と台数については、FCCJ が検討しているシナリオに準拠させて設定した。水

素ステーションの配置については、個人の自動車の利用実態を踏まえて分析した。 分析では、①導入対象地域、②FCV の代替率、③水素ステーションまでの許容時間を決定する

必要があることを明らかにし、これらをまとめて、対象とするエリアで何台の FCV が販売され

Page 25: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

250

るか(エリア内販売台数)を変数にして、シナリオを検討した。 その結果、投資額を 小化するように水素ステーションを整備するには、自動車の保有・利用

形態などを考慮しても、大都市から整備したほうが有利なことが明らかになった。また、今回の

分析から、FCV が年産1万台のときに、例えば FCV の代替率を 5%とすると、東京、神奈川に

7.5 分(2.5km)間隔で 145 ヵ所に配置すればよいことになる一方、FCV の代替率を 1%とする

と、関東全域に 1.5 分間隔に配置しても 1 万台の FCV を販売できない。したがって、水素ステ

ーション整備に必要となる費用を小さくするには、FCV の魅力を高め、FCV の代替率を高める

ことが重要なことも明らかになった。なお、投資額を 小化するような 適な水素ステーション

の規模の組み合わせでの水素ステーションの事業性を分析したところ、現状の水素ステーション

の経済性の前提では、水素ステーションの規模と配置を 適化しても、民間だけでの運営は困難

であることが明らかになった。燃料電池自動車の普及のためには、水素供給コストの支配要因の

大の要因である設備費のコストを低減するための技術開発等が必要である。

東京都の乗用車保有台数約300万台

東京都での年間乗用車販売台数約25万台

潜在FCV導入台数(5%のときで約1.25万台)

代替率(FCVの潜在市場

比率)

1~10%と想定

東京都内のFCV販売台数

(52%*のとき6,000台)

FCV選択率*

東京都内のFCV販売台数(15分間隔で約80%*となり約5,000台となる。

水素ステーション選択率*

(近くに水素ステーションがある場合にFCVを購入する比率:52%)

* アンケート結果より

①導入地域: 東京都②FCVの代替率: 5%③水素ステーションまでの許容時間:15分間隔 (7.5分半径)

①導入地域:東京

②FCVの代替率③水素ステーション

までの許容時間

・水素ステーションの配置密度により異なる比率・密度が高いと比率が上昇

図2 都市部の整備の考え方(例)

1.5分 4.5分 7.5分 12分 17分 1.5分 4.5分 7.5分 12分 17分

1エリアあたり〔台〕 0.7 6.2 14.8 30.7 15.8 3.6 31.2 74.2 153.5 79.1

全体〔台〕 1,281 1,233 1,056 853 219 6,404 6,167 5,279 4,265 1,095

1エリアあたり〔台〕 0.6 5.4 12.9 26.7 13.8 3.1 27.2 64.6 133.6 68.9

全体〔台〕 1,166 1,123 961 777 200 5,832 5,616 4,807 3,883 998

1エリアあたり〔台〕 0.3 2.3 5.4 11.1 5.7 1.3 11.3 26.9 55.6 28.7

全体〔台〕 2,012 1,938 1,658 1,340 344 10,060 9,688 8,292 6,699 1,721

1エリアあたり〔台〕 0.3 2.4 5.8 12.0 6.2 1.4 12.2 29.1 60.2 31.0

全体〔台〕 1,626 1,566 1,340 1,083 278 8,129 7,828 6,700 5,413 1,391

関東合計 〔台〕 6,085 5,860 5,015 4,052 1,041 30,425 29,299 25,077 20,260 5,204

FCVの代替率

千葉県+埼玉県

茨城県+栃木県+群馬県+山梨県

東京都

神奈川県

導入対象地域

1% 5%

水素ステーションまでの許容時間水素ステーションまでの許容時間

図3 ステーション整備の考え方 (例)

② ③

エリア半径を広げれば(ステーションを疎に整備すれば)、面積

の増加に伴い1エリアあたり台数は増加するが、利便性低下

により平均選択率は低下するため、総販売台数は低下する。

Page 26: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

251

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

0 50 100 150 200 250販売台数(台/エリア)

総額

(億円

0

200

400

600

800

1,000

水素

平均

単価

(円

/N

m3)

50Nm3/h50Nm3/h

100Nm3/h100Nm3/h

300Nm3/h300Nm3/h

500Nm3/h500Nm3/h

注)建設費は 50Nm3/h:1.37 億円、100Nm3/h:1.64 億円、300Nm3/h:2.83 億円、500Nm3/h:4.24億円と想定。土地面積は、50~300Nm3/h は 263m2、500Nm3/h は 443m2,土地価格は、東京都準工業

地域を想定して 80 万円/m2とした。 *10 年間で 10 万台の燃料電池自動車を普及させる場合に必要な総額の概算(FCV の車両費は除く)

図4 分析結果の例

注)建設費は 50Nm3/h:1.37 億円、100Nm3/h:1.64 億円、300Nm3/h:2.83 億円、500Nm3/h:4.24億円と想定、土地面積は、50~300Nm3/h は 263m2、500Nm3/h は 443m2、土地価格は、東京都準工

業地域を想定して 80 万円/m2とした。 *10 年間で 10 万台の燃料電池自動車を普及させる場合に必要な総額の概算(FCV の車両費は除く)

図5 ステーション整備への設備費の影響の大きさ

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

0 50 100 150 200 250

販売台数(台/エリア)

総額

(億円

設備費2倍

基準

設備費0.7倍

設備費の大きな影響

燃料電池自動車の販売

台数と必要となる総額の

関係

(複数の組み合わせのう

ち、費用が 小となる場

合を探索した結果)

Page 27: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

252

3―2 成果の意義 FCV の販売台数が増加しても、導入地域が拡散してしまうと、社会資本整備に必要となる投資

が増大する。 も望ましいのは、地域の FCV の代替率が上昇することである。立ち上げ 10 年間

で数十万台以上の導入を目指さないと、将来の水素ステーションの自立的な普及の可能性は厳し

いことが明らかになった。さらに FCV の代替率を向上するためには、水素ステーション整備に

よる利便性の向上以外に、個人のユーザを対象とした FCV の優遇措置についての分析も必要な

ことが指摘された。 3―3 特許、論文、講演、報道等の件数一覧

<発表>

・ D. Miura, Y. Shimura “Consideration on Hydrogen Production from Electricity”, Alternative Transport Energies Conference (2006)

・ Y. Shimura, “Transition scenario for building hydrogen infrastructure for fuel cell vehicles in Japan“, IEA/IPHE Workshop Building the Hydrogen Economy,July,11, 2007

・ M. Nakamura, H. Tanaka, Y. Shimura,, “Scenario Analysis of Paths to Penetrate Fuel Cell Vehicles (FCVs) in Japan”, Fuel Cell Seminar ’07, Oct. 18, 2007

・ 志村雄一郎、“水素社会実現のシナリオ”、福岡水素エネルギー社会近未来展 セミナー, Oct. 17, 2007

・ 田中 宏、“海外における水素技術開発の動向と燃料電池自動車の初期導入時に想定され

る水素関連インフラストラクチャー整備シナリオ ”NEDO「水素技術開発」シンポジウ

ム、2008 年 6 月 13 日 4.まとめ及び課題

本研究のまとめと、今後の課題を次に示す。

特許 論文

出願 登録 実施 査読有 査読無

口答

発表

その他

(総説、解説等)

報道発表等

(新聞発表)

0 0 0 0 0 5 0 0

Page 28: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

253

5.実用化・事業化見通し

本研究はシナリオ分析が主であり、そのものが製品として実用化、ならびに事業化されるも

のではないが、この分析を用いることにより、水素・燃料電池関連の技術の実用化が早まる

ものと考えられる。 以上

個人の自動車ユーザへのアンケートを実施

遠出する場合のための水素ステーションが、

遠隔地になくても85%以上の人がFCVを購入

する意向

自宅等の拠点の周辺に水素ステーションがあ

れば、52%の人がFCVを購入する意向

⇒都市部の拠点近くにどう配置するかの検討が

重要

❒ FCVの導入対象の詳細分析

コストの 大の支配要因は設備費

水素製造のエネルギー種、設置場所の土地代は、

設備コストに比べると影響は小

設備費の影響は、設備稼働率に影響

⇒設備費のコスト低減に向けた技術開発等が必要

⇒ 適な規模の水素ステーションを配置するのが重要

❒水素供給についての検討

個人の車の利用実態、水素ステーション整備に対する要望等を踏まえ

て、地域の自動車保有密度を考慮した水素ステーション整備の分析モデ

ルを構築

社会負担コストを 小化する水素ステーションの規模と配置を分析

⇒大都市からステーションを整備したほうが有利

( FCVの導入比率が等しい場合)

水素ステーションの事業性を分析

⇒ 初期に設備費が補助されれば、その後は採算が取れる場合もあ

る。ただし水素供給価格を低く設定すると、現在の技術では、ステーショ

ン設備の更新後に民間では自立的に経営できなくなる。

(解決のためには技術開発で設備費の低減が必要)

FCVの販売台数が増加しても、導入地域が拡散してしまうと、社会資

本整備に必要となる投資が増大

地域のFCVの代替率の上昇が望ましく、そのために、個人ユーザを対

象としたFCVの優遇措置についての分析も必要

❒ 水素ステーションの普及シナリオ分析

FCV 普 及 初 期 に お け る

FCV及び水素供給インフラ

の採算性を向上させるた

めの更なる方策の検討

(水素供給方法、水素供給

設備の仕様等の 適化)

FCVの車両価格と水素コ

ストを考慮した分析

❒今後の課題

Page 29: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

254

●全期間成果サマリ

・FC

Vの

導入

普及

による環

境改善

便益

を評

価した結

果、水

素の

供給

目標

価格

と同

程度

の有

意な便

益が

存在

し、総

便益

が総

費用

を上回

る場

合もあることを明らかにした。

・FC

Vの導入

は、大

きな経済

波及効果

を有

する事

業であることを明らかにした。

・水素導入

シナリオ分析

モデルを開発し、これによる分析

評価

を通じて、技術

競合の

下で

FCVの

加速

的導入

が実現

される条件を明らかにした。

水素

エネル

ギーの

導入

に伴

う社会

的便

益等

に関

する研

究委

託先:産業

技術

総合

研究

●背景

/研究内容・目

的●全期間実施内

容/研究成果

実施項目

成果

内容

自己

評価

水素の導入に係る社会的便益

に関する研

FCVの導

入による社会的便益は水素

供給価格目標と比較して有

意な値となり、経済的波及

効果も大きく、政府による研究開発投資

及び補

助施策の合理的根拠となる大きさであることを明確化

○達成

水素導入モデルによるシナリオ

分析評価

世界モデルと日本

モデルをリンクしたモデルと日

本の運輸部門

モデ

ルを開発

し、便益評価

結果を反

映した分析により

FCVの導入加速

施策を明確

○達成

実施項目

成果

内容

自己

評価

水素の導入に係る社会的便益

に関する研

FCVの導

入による社会的便益は水素

供給価格目標と比較して有

意な値となり、経済的波及

効果も大きく、政府による研究開発投資

及び補

助施策の合理的根拠となる大きさであることを明確化

○達成

水素導入モデルによるシナリオ

分析評価

世界モデルと日本

モデルをリンクしたモデルと日

本の運輸部門

モデ

ルを開発

し、便益評価

結果を反

映した分析により

FCVの導入加速

施策を明確

○達成

●研究成果まとめ

●今後の課題

口答

発表

論文

発表

特許

出願

受賞

・報道

口答

発表

論文

発表

特許

出願

受賞

・報道

実施項目

目標

•水素の導入に係る

社会的便益に関す

る研究(H17-18)

•水素燃料電池自動

車の普及初期に係

る社会的

便益に関

する研

究(H19)

既存の市場で経済価値として評価されてい

ない、水

素FC

V特有

の便益を経済価値とし

て評価

すると共に、導入普及による経済的

波及効果を評価する。なお、

H17

-18年

は、燃料電池実用化

戦略研究会のシナリ

オ及び幾つかの代替シナリオを想

定し、

H19

年度は

、FC

Vの普及初期を想定。

•水素導入モデルに

よるシナリオ分析評

価(H17-19)

上の評価結果を反映しつつ、既

存及び将

来のエネルギー源や競合

技術を背景として、

種々の水素源及び水素利用技術を想定し

たFCVの導入

シナリオ分析を行

実施項目

目標

•水素の導入に係る

社会的便益に関す

る研究(H17-18)

•水素燃料電池自動

車の普及初期に係

る社会的

便益に関

する研

究(H19)

既存の市場で経済価値として評価されてい

ない、水

素FC

V特有

の便益を経済価値とし

て評価

すると共に、導入普及による経済的

波及効果を評価する。なお、

H17

-18年

は、燃料電池実用化

戦略研究会のシナリ

オ及び幾つかの代替シナリオを想

定し、

H19

年度は

、FC

Vの普及初期を想定。

•水素導入モデルに

よるシナリオ分析評

価(H17-19)

上の評価結果を反映しつつ、既

存及び将

来のエネルギー源や競合

技術を背景として、

種々の水素源及び水素利用技術を想定し

たFCVの導入

シナリオ分析を行

●研究

目標

●実施

体制及び分

担等

NEDO

(独

)産業

技術総

合研究

背景 FC

Vは

、走

行時

に大

気汚

染物

質や

GH

Gなどを排

出しない

車として、政

府による技

術開

発が

促進

され

ている。市

場メカ

ニズ

ムの

活用

が重

視され

る資

本主

義の

社会

の中

で、政

府が

このような技術

開発に関

与する理由は

基本

的に外部経

済の

存在

に求

められ

る。即

ち、従

来自

動車

の外部

費用の削

減(→

外部

便益

)が

期待

できるということが

施策

実施

の根

拠に

なる。

研究

内容・目

的FC

V導

入による社

会的

便益

を評

価すると共

に、これ

を反

映した導

入シナリオモデルによる分析

を通じて、

FCV普

及促

進の意義を明らか

にし、施策

に対

する示唆を得る。

水素の導

入に係る社

会的便益

に関する研

究•

これまでに蓄

積した研究成

果(平成

15~

16年

度の

「水

素安

全利

用等

基盤技

術開発

-水

素に関

する共

通基

盤技

術開

発-

水素

シナリオの

研究」を含

む)を統

合して外

部便

益評

価手

法を確

立した。

大気

排出

物による健

康被害

の評

価を精

緻化

するための

オゾン生

成モデル、自

動車

騒音

改善

便益

を評価する手法

等を開発。

•FC

Vの導

入普及

による環境

改善便益

が、水

素の供

給目

標価格

と同程

度の値となることを明らか

にした。

燃料電池

実用化

戦略

研究

会シナリオに対

する費用便

益分析の

結果

、–

現行排出

規制

が続

いた場

合には

、20

30年までには総便

益が総費

用を上回る

–排出規制

強化

ケースでは総

費用が大

きく上

回る。

導入

初期

シナリオにおいては

、総

便益

が総

費用

を上

回ることは

ないが

、便

益は

水素

供給

目標

価格

の半分程

度と有意

な値となる。

•FC

Vの導

入は

、大

きな経済

波及

効果

を有

する事

業であることを明

らか

にした。

水素導入

モデル

によるシナリオ分

析評

価•

世界モデルと日本モデルを統

合したモデル、我

が国の

運輸部門

モデルを開

発し、技術

競合

の中で

のFC

V導入シナリオを分析

評価し、社会的

便益

の評価

結果に基

づいた補助

金の導

入により

FCV

の導入が

加速され

ることを明

らか

にした。

•外部

便益

評価の

不確実

性の

低減

•様々

な水素

供給

インフラに対

する外部

便益

の評価

•便益

評価システムの

構築

•ケーススタディを通じた運輸

部門

モデル

のブラッシュアップと、様々なケースのシナリオ分

14

(C-18)

Page 30: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

255

水素エネルギーの導入に伴う社会的便益等に関する研究

実施者:独立行政法人 産業技術総合研究所 1.事業概要 本研究開発は、特に、水素エネルギーシステム技術の導入と社会との関わりの側面から研究を

実施し、本プロジェクトが目標とする、燃料電池/水素エネルギーの実用化による新しいエネル

ギーシステムの構築を支援することを目的とするものである。 プロジェクトの基本計画にも記載されている通り、燃料電池を核とした水素エネルギーシステ

ムの構築は、長期的には我が国のエネルギー供給の安定化・効率化、地球温暖化問題(CO2)や

地域環境問題(NOx、PM 等)の解決、新規産業・雇用の創出に寄与するものと期待される。 本研究は、このような基本的認識に基づいて、単なる一時的なブームに終らない堅実な形での

水素エネルギーシステムの社会導入を図るため、①水素燃料電池自動車及び上記システムの導入

に伴う社会的・経済的便益の評価、②エネルギー経済モデルを用いた、時系列的な一次エネルギー

供給構造や競合技術との関係を考慮した導入シナリオの検討といった様々な観点からの分析評価

を通じて、有効な施策を提言するものである。 2.事業目標(設定の理由も含め) 本事業は、燃料電池/水素エネルギー利用分野における我が国の産業競争力強化、中長期的な

エネルギー基盤技術の確立、エネルギー安定供給確保等に資すると共に、エネルギーの使用に由

来する温室効果ガス排出削減や PM や NOx 等の有害排出物の抑制など環境問題の解決に資する

ため、水素に係わる「車両関連機器に関する研究開発」「水素インフラに関する研究開発」「水素

に関する共通基盤技術開発」の3つの研究項目に対して、「実用化技術」の分野について開発する。 本研究開発は、これらのうち、「水素に関する共通基盤技術開発」を対象として、「水素エネル

ギーの導入に伴う社会的便益等に関する研究」を行うこととし、以下の様な目標を設定して研究

実施した。 2-1 水素の導入に係る社会的便益に関する研究

終目標 既存の市場で経済価値として評価されていない水素エネルギーシステム特有の便益及び

コストに係る要素を摘出し、それらを経済価値として定量的に評価し、水素エネルギーシス

テムの外部性として評価することを 終目標とする。また、技術確立に伴う産業経済面での

波及効果分析を実施する。 設定理由 FCV は、走行時に大気汚染物質や温室効果ガスなどを排出しない車として、政府による技

術開発が促進されている。市場メカニズムの活用が重視される資本主義の社会の中で、政府

がこのような技術開発に関与する理由は基本的に外部経済の存在に求められる。すなわち、

従来自動車の外部費用の削減(�外部便益)が期待できるということが施策実施の根拠にな

る。一方、経済的影響(波及効果)は内部的影響の連鎖を通じてもたらされるため、一般的

な外部性(技術的外部性)ではないが、経済面では重要な意味を持ち、経済的外部性と呼ば

Page 31: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

256

れることもある。これらの分析評価を通じて、FCV の導入意義を明らかにするのみならず、

政府による研究開発施策の有効性・合理的根拠を示すことは施策の評価といった面でも極め

て重要である。

2-2 水素導入モデルによるシナリオ分析評価 終目標 既水素・FCV の導入シナリオを分析するためのモデルを開発し、これを用いたシナリオ分

析を行い、プロジェクトが目標としている燃料電池を核としたシステムなどの技術開発戦略

の検討に資することを 終目標とする。 設定理由 ○ 【根拠/理由:①、②を踏まえた将来的な水素エネルギーシステムの導入方策並びに時

期プロジェクトの方針を検討するため。】 新技術は、性能及びコストなどの面で、既存あるいは将来の種々のエネルギー源や技術と

の競合の下に導入に対する意志決定がなされるものであるため、水素・FCV の導入シナリオ

の検討には、これらを考慮した、いわゆるエネルギー経済モデルによるシナリオ分析手法を

用いることが有効かつ重要である。 3.事業成果 3.1 水素の導入に係る社会的便益に関する研究 水素エネルギーシステムの導入による、局所・地域・地域環境の改善などの外部便益を構成す

る要因を摘出し、大気排出物による環境や人体への影響を定量化するための暴露反応関数や、こ

れらを経済価値に換算するための係数など、便益を定量的に評価するために必要なデータを収

集・整備し、燃料電池自動車(FCV)の便益評価項目について検討した。 FCV 導入による外部便益は、FCV がガソリンや軽油を使用する従来自動車を代替することに

よる、従来自動車のもたらす外部費用の削減分と考えることができる。主な外部便益の項目とし

ては、①大気汚染物質(NOx、SOx、SPM 等)の排出削減、②温室効果ガス(CO2)排出削減、

③石油資源消費削減、④エネルギーセキュリティ向上、⑤騒音減少が挙げられる。①~④は化石燃

料消費に係るものである。これら化石燃料消費に係る影響の経済価値評価の試みは、主として欧

米で行われてきたが、この内貨幣評価の手法がある程度確立しているのは①②である。⑤に関し

てはいくつかの経済価値評価の事例が見られるが、便益移転に困難な面があると考えられる。本研

究では、①②について、中でもさらに主要な健康影響を主な対象とし外部費用削減について評価

を行った。 大気汚染物質の削減による外

部便益の評価手順を図1に示す。 まず、FCV 導入による大気汚

染物質及び温室効果ガスの排出

削減量(インベントリデータ)

を推定した。走行時に関しては、

FCV は当該物質の排出はゼロ

なので、代替される従来車の走

FCVの導入によって回避された、従来車の

影響(外部コスト)の推定

インベントリデータの作成

曝露評価(濃度上昇削減量の算出)

曝露影響量評価(健康影響削減量の算出)

影響量の貨幣価値評価(外部コストの算定)

FCVの外部便益

図1 外部便益算定手順(大気排出物による健康被害削減)

Page 32: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

257

行時の当該物質排出量を算出しそのまま削減量とした。インベントリに計上された大気汚染物質

による影響に関しては被害経路評価アプローチを採用した。すなわち、産総研において別途開発

した拡散シミュレーションモデルや、本研究で新たに開発したオゾン生成評価モデル等を用いて

大気汚染物質の濃度上昇の評価を行い、既存文献からの暴露反応係数を用いて、健康リスク削減

量評価を行った。健康リスク削減量は、産業技術総合研究所における過去の研究成果などに基づ

いた統計的生命価値等を用いて経済的便益に換算した。また、自動車騒音は現在でも深刻な環境

問題となっており、自動車騒音常時監視の対象となる地域では、夜間に 2 割程度の住居が環境基

準を超過していること、及び、道路の延長、自動車の増加によって、対象地域は増加すると予測

されていることから、現状の被害量と車種別の騒音データをもとに、FCV の導入による自動車騒

音改善便益をも評価した。CO2については、ダメージコストに関する既存研究およびコントロー

ルコストのデータから、CO2の 1kg 削減あたりのシャドープライスを想定し、それに総排出量を

乗じて、温室効果ガスの排出削減便益とした。また、主なパラメータとして、インベントリデー

タ、PM 濃度上昇係数、暴露反応係数、CO2 シャドープライスを選び、それぞれに確率密度分布

を設定し、不確実性分析を行った。 平成 17~18 年度には、これらの手法を用いて、燃料電池実用化戦略研究会報告(2001 年 1 月

22 日)に基づいて既存のガソリン車・ディーゼル車が FCV に代替されるとのシナリオ(~2030年)の下に、FCV の導入による SPM、SOx、NOx、CO2の排出削減に伴う人体への健康影響リ

スクの回避、および騒音の低減に係る便益を分析した。ここでは、大気排出物による健康被害の

評価を精緻化するため、オゾン生成モデルを開発し、別途開発した新たな排出物の移動・拡散モ

デルと併せて適用し、健康影響の評価を行った。 これらの結果を水素 1Nm3消費当りの便益

として表したのが図2であるが、FCV の導入

により国民の健康被害の回避としてもたらさ

れる社会的便益は、水素燃料の供給目標価格

(40 円/Nm3)に比べて顕著な値となること

が判る。図3は、これらの便益を FCV の導

入費用と比較したものであるが、累積外部便

益は、2027 年頃には FCV と従来自動車の車

両価格差の累積額を上回り、2030 年には約 5兆円となることが示された。 また、技術的困難さやインフラ整備の遅れ

などに起因して燃料電池実用化戦略研究会報

告の普及目標が達成されなかった場合のシナ

リオ、或いは FCV への代替による便益が大

きくなると想定される車種別普及シナリオ、

或いは将来の環境規制を考慮したシナリオな

どの代替シナリオを設定した上での便益評価

も実施した。特に、車に対する将来の排出規

制が強化された場合には、大気汚染物質の排

出量の点で、在来型車に対する FCV の優位

0

10

20

30

40

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2005 2010 2015 2020 2025 2030

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2005 2010 2015 2020 2025 2030

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騒音騒音CO2CO2CBCB死亡死亡

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図2 水素 1Nm3あたりの外部便益

(CB:呼吸器系疾患)

0

1000

2000

3000

4000

5000

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2005 2010 2015 2020 2025 2030

車両価格差

車両価格差累計

外部便益

外部便益累計

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10億

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2005 2010 2015 2020 2025 2030

車両価格差

車両価格差累計

外部便益

外部便益累計

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と便

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10億

円)

図3 FCV 導入費用と外部便益

Page 33: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

258

性が下がるため、当然、計算される外部便益は小さくなり、便益がコストを上回るのは、2030年以降となった。しかし、産総研で別途評価を行った FCV の環境便益に対する支払い意思額

(WTP)の調査結果を施策費用の分析に用いることにより、実際の施策コストは FCV と現行自

動車の車両コストの差を補助金として合計した額よりも大幅に低下し、便益を下回る可能性も示

された。 一方、経済的影響(波及効果)は内部的影響の連鎖を通じてもたらされるため、一般的な外部

性(技術的外部性)ではないが、経済面では重要な意味を持ち、経済的外部性と呼ばれることも

ある。本研究では、我が国の産業連関表を用いて水素技術開発の経済的波及効果について、生産

誘発および雇用誘発の観点から分析を行い、水素ステーション整備まで含めた FCV 普及事業は

経済波及効果誘発比率が 2.5~2.6 と、消費財の普及を対象とした事業である「デジタル家電の普

及」による誘発効果比率と同程度で、また GDP 押し上げ効果も年平均で 0.05~0.06%となる大

きな事業であることを明らかにした(表1参照)。

表1 経済的波及効果のまとめ (2005~2020 年合計) 単位 100%CH 導入 100%RCH 導入

累積投資額(需要増:直接効果) 百万円 4,997,477 4,562,093

経済波及効果(直接+1 次+2次) 百万円 13,091,564 11,229,493

誘発効果 比率 2.6 2.5

GDP 押上効果(年平均) % 0.057 0.050

雇用創出効果 人 511,290 436,488

投資額当たり雇用創出数 人/百万円 0.102 0.096

CH: オフサイト水素供給システム; RCH: 天然ガス改質オンサイト水素供給システム

平成 19 年度には、導入初期のモデルケースとして、車両密度の高い東京都 23 区に、市場規模

の大きい自家用業務用乗用車、自家用小型貨物車が導入されると想定し、少量生産(年産 100~1,000 台)開始後、3 年後に 1 万台生産体制が確立し、1 万 3,000 台がすでに普及しており、生産

台数が 1 万台/年であるといった市場イメージに沿って上記の一連の分析を行った。 FCV の導入初期の環境改善便益は、累積台数が少ないため、導入に係る投資を上回ることはな

いが、水素 1Nm3あたりの便益は導入 1 年目から 5 年目に亘って約 20 円程度となり、想定され

る水素供給目標価格に対して有意な値となることが判った。 一方、経済的波及効果の分析において

は、東京都総務局統計部が作成している

東京都産業連関表を利用したが、普及初

期の評価であるため、導入台数あたりの

投資額が大きく、これまでの導入普及が

進んだケースの分析結果に匹敵する、経

済波及効果(誘発効果:2.43)や GDP押し上げ効果(0.0081%)があることを

明らかにした。

0

5

10

15

20

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1年 2年 3年 4年 5年

騒音

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図4 FCV 導入初期の外部便益

Page 34: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

259

3-2 水素導入モデルによるシナリオ分析評価 平成 18 年度までに、2000 年~2100 年を分析期

間とし、世界 適化モデルと日本 適化モデルをリ

ンクさせることにより、世界規模での資源制約の下

での日本の 適解を分析可能なユニークなモデルを

開発し、資源エネルギー庁の「超長期エネルギー技

術ビジョン」の需要シナリオをベースとして、「新・

国家エネルギー戦略」の数値目標との整合性を

チェックしつつ、水素導入シナリオを検討した。ま

た、上記で算出した環境便益の値に基づいて設定し

た水素導入補助金の効果についても分析した。 分析の結果、BAU においても、概ね 2040~50 年の間に、原油価格の高騰による一次エネルギー

の消費節減の動きが見られ、運輸部門において非化石化の動きが加速することが明らかとなった。

CO2排出制約下では、さらにこの傾向が前倒しとなる。水素供給源は、時系列的にほぼ「オンサ

イト天然ガス改質→オフサイト副生水素→石炭水素(CO2 制約下では CO2 回収処分を伴う)」と

いった推移を見せることが明らかとなった。 平成 19 年度には、FCV 導入初期

のシナリオ分析を可能とするため、

様々な次世代型自動車を組み込んだ

運輸部門モデルを開発した(図6)。

この運輸部門モデルは、分析期間を

30 年とし、様々な制約の下で、1 年

刻みで既存車種が新しい車種に代替

していくシナリオを分析できる。 様々なケーススタディを通じて、

種々の制約条件下で、FCV 導入を可

能とする条件を明らかにした。例え

ば、外部便益の評価結果に基づいて水素への補助金レベルを設定した上での FCV 導入可能性分

析を行った結果、2025 年頃から、オンサイト都市ガス改質水素を燃料とする FCV の導入が加速

され、2030 年の運輸部門の石油依存率は新・国家エネルギー戦略の政策目標を達成するとともに、

燃料からの CO2排出は現行の約半分となるシナリオを提示し得ることを明らかにした。 3-3 成果の意義 FCV の導入による社会的便益を評価した結果、得られる環境改善便益は水素供給価格目標と同

レベルの値となり、長期的には総便益がコストを上回る可能性も示唆された。また経済的波及効

果も大きく、本プロジェクトのような政府による研究開発投資の意義を示す基礎資料を提示でき

た。また、本結果は、今後の FCV 導入に係る補助施策を検討する際の合理的根拠となる情報を

提供するものである。一方、世界モデルと日本モデルをリンクしたモデル、及び日本の運輸部門

モデルを開発し、便益評価結果を反映した分析など、様々なシナリオ分析を行うことにより FCVの導入加速施策を明確化した。

ATOM-G(世界モデル)

ATOM-J(日本モデル)

ATOM-T(運輸部門モデル)

日本の結果

結果出力世界 適解

結果出力日本 適解

ATOM-G入力データ

ATOM-J入力データ

ATOM-T入力データ

日本モデルの結果を世界モデルにフィードバック

図5 水素導入シナリオ分析モデルの構造

従来型ガソリン乗用車

CNG軽自動車

従来型軽油乗用車

LPG車

従来型ガソリンバス・トラック

従来型軽油バス・トラック

バイブリッド車

プラグインハイブリッド車

従来型ガソリン軽自動車

燃料電池車

電気軽自動車

CNGバス・トラック

クリーンディーゼル乗用車

クリーンディーゼルバス・トラック

ガソリン乗用車部門

軽自動車部門

軽油乗用車部門

LPG車部門

ガソリンバス・トラック部門

ガソリン

クリーンディーゼル

バイオガソリン

副生水素

石炭由来の水素

天然ガス由来の水素

夜間電力

昼間電力

CNG

軽油

バイオディーゼル

LPG

その他運輸需要(外生)

昼間電力水素

夜間電力水素

軽油バス・トラック部門

図6 運輸部門モデルの概要

Page 35: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

260

3-4 特許、論文、講演、報道等の件数一覧

( )は国際出願件数を表す。

註: ここで開発したエネルギーモデルをベースに改造したモデルを、経済産業省の「超長期エネルギー

技術ビジョン」、「Cool Earth-エネルギー革新技術計画」の検討などに利用し、またこれらにつ

いての多数の講演などに結果を利用したが、これについては、上記の件数に含めていない。 4.まとめ及び課題 4-1 成果のまとめ 研究に必要な方法論やモデルを開発し、分析評価を行った結果、以下のような成果を得た:

• FCV の導入普及による環境改善便益を評価した結果、水素の供給目標価格と同程度の有意

な便益が存在し、総便益が総費用を上回る場合もあることを明らかにした。 • FCV の導入は、大きな経済波及効果を有する事業であることを明らかにした。 • 水素導入シナリオ分析モデルを開発し、これによる分析評価を通じて、技術競合の下で FCV

の加速的導入が実現される条件を明らかにした。 4-2 情勢変化への対応(計画実施時の周辺状況変化等を記載。予算や計画の変更等も含む) 本研究は、当初、平成 15-19 年度の 5 年計画で「水素安全利用等基盤技術開発-水素に関する

共通基盤技術開発-水素シナリオの研究」として、分析評価手法の設計・検討、必要なデータの

収集・整備、試算を通じた手法やデータの改善、分析評価、といったステップで実施する予定で

あったが、初年度から分析評価結果の提示を要請されたため、暫定結果を提示してきた。また、

平成 17 年度の委託契約手続きに入ってから、研究テーマの再公募という決定がなされ、「水素エ

ネルギーの導入に伴う社会的便益等に関する研究」(平成 17-18 年度)として、再スタートし、

さらに、平成 19 年度には導入初期を対象とした評価を要請されて継続実施した。このような、

政策的判断に係る状況変化にも適切に対応しつつ、所定の成果を挙げることができた。 4-3 残された課題 本研究成果を発展させる方向性としては、①外部便益評価の不確実性の低減、②様々な水素供

給インフラに対する外部便益の評価、③便益評価システム(ソフト)の構築、④ケーススタディ

を通じた運輸部門モデルの改良と様々なケースのシナリオ分析、などが挙げられる。 5.実用化・事業化見通し 本研究は特定の技術(ハードウェア)開発を目指すものではなく、水素/燃料電池導入・普及

シナリオの策定に関わる研究を通じて、水素エネルギー技術の開発計画立案と普及実現に貢献す

ることを目的としているため、研究内容がそのまま実用化や事業化に結びつく性格のものではな

い。ただし、ここで開発した外部便益の評価手法や、評価用データ、及びユニークな構造のシナ

リオ分析モデル等は、先例のないものが多く、今後の同様な研究に大きく寄与するものと考える。

特許 論文

出願 登録 実施 査読有 査読無

口答

発表

その他

(総説、解説等)

報道発表等

(新聞発表)

( ) ( ) ( ) 1 4

Page 36: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

261

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262

水素エネルギー導入・燃料電池普及に関する国際動向の調査研究

実施者:株式会社テクノバ

1.事業概要

IPHE は、米国のイニシアティブによる水素及び燃料電池の技術開発に関する研究・開発・実

証、商業利用に関する国際的な協力の枠組みであり、水素エネルギー社会の構築に向けて国際的

活動を積極的に推進することを目的に 2003 年にスタートした。これまで IPHE の枠組みで、水

素燃料電池の共同研究、安全・基準標準の研究、国際的な政策連携が実施されている(図1)。 わが国の燃料電池技術開発・導入普及、水素インフラ整備等の促進に資するために、IPHE を

中心に、水素エネルギー導入や燃料電池普及に関する国際的な動向・シナリオ策定の動きを把握・

分析するための調査研究を実施した。

図 1.IPHE の概要とメンバー

2.事業目標

2-1 IPHE における主要委員会活動についての水素・燃料電池関連施策の調査研究

IPHE の各委員会活動内容を調査対象とし、各国の政策担当者・関係者へのインタビュー、各

国の水素エネルギー導入や燃料電池普及に関連する動向報告等の聴取、資料等情報収集等により、

水素シナリオ・インフラ整備・政策に関する議論と方向性を調査・分析・報告した。

2-2 IPHE における国際的な水素シナリオの調査研究

IPHE におけるシナリオ策定や共通シナリオに向けた議論を調査対象とし、タスクフォースへ

の参加、各国の政策担当者・関係者へのインタビュー、資料等情報収集等により、世界の主要国

の水素社会への移行・水素エネルギー利用に関するシナリオを把握するとともに、IPHE におけ

る世界共通シナリオ検討の議論の動向を把握し、我が国の水素シナリオ作成に資する水素シナリ

オに関する国際動向を調査・分析・報告した。 2-3 IPHE の活動に関するレビュー

IPHEの概要とメンバー

注:IEAとは違い、IPHEにはファンド拠出がない

オーストラリアフランス

アイスランド日本

ノルウェー英国

欧州委員会

カナダドイツ

イタリア韓国

ロシア米国

ブラジル中国

インド

IPHEIEA

ベルギーデンマークフィンランドリトアニアオランダ

シンガポールスペイン

スウェーデンスイス

水素経済のための国際パートナーシップ2003年11月に設立

米国エネルギー省が提唱。水素・燃料電池に係る情報交換等を促進するための国際協力組織。

IPHEの概要とメンバー

注:IEAとは違い、IPHEにはファンド拠出がない

オーストラリアフランス

アイスランド日本

ノルウェー英国

欧州委員会

カナダドイツ

イタリア韓国

ロシア米国

ブラジル中国

インド

IPHEIEA

ベルギーデンマークフィンランドリトアニアオランダ

シンガポールスペイン

スウェーデンスイス

水素経済のための国際パートナーシップ2003年11月に設立

米国エネルギー省が提唱。水素・燃料電池に係る情報交換等を促進するための国際協力組織。

オーストラリアフランス

アイスランド日本

ノルウェー英国

欧州委員会

カナダドイツ

イタリア韓国

ロシア米国

ブラジル中国

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IPHEIEA

ベルギーデンマークフィンランドリトアニアオランダ

シンガポールスペイン

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オーストラリアフランス

アイスランド日本

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カナダドイツ

イタリア韓国

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IPHEIEA

ベルギーデンマークフィンランドリトアニアオランダ

シンガポールスペイン

スウェーデンスイス

水素経済のための国際パートナーシップ2003年11月に設立

米国エネルギー省が提唱。水素・燃料電池に係る情報交換等を促進するための国際協力組織。

Page 38: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

263

IPHE 活動全般に関する情報を整理し、我が国燃料電池・水素分野の関係者に提供するととも

に、必要に応じ、IPHE 各委員会・タスクフォースの出席者・関係者との情報交換、各種連絡調

整等を行い、我が国の燃料電池・水素分野における技術開発等の政策の推進に必要な IPHE 関連

の情報のレビューを実施した。 2-4 IPHE 以外における水素・燃料電池関連施策動向の調査研究

IPHE の他に、政策分野の関係者が参集し、重要な発表が行われる会議が毎年開催されている。

そこで IPHE以外の国際会議に出席し、各国の政策面や最先端技術動向等に関する情報を収集し、

報告した。 特に最近では、IPHE と IEA(および IEA 水素実施協定)がコラボレーション活動を行うこと

が多く、IPHE=IEA コラボレーションは調査の主たる対象である。 2-5 水素・燃料電池にかかる研究の実施体制・研究機関・研究者等の調査

IPHE 参加国を中心に水素・燃料電池にかかる研究の実施体制・研究機関・研究者等の調査を

行い、研究機関・組織、研究員のディレクトリの作成を実施した。

3.事業成果

3-1 事業で得られた調査結果

(1)IPHE における主要委員会活動についての水素・燃料電池関連施策の調査研究

①IPHE の組織

IPHE は、全体的な方向性を議論する運営委員会(Steering Committee:SC)と、SC の議論

を受けて実際の国際協力・コラボレーションを進める実行連絡委員会(Implementation-Liaison Committee:ILC)、さらに事務局から組織されている(図1)。

運営委員会の議長国が IPHE を代表する国であり、同時に事務局の担当国となる。運営委員会

議長は、IPHE 設立以来2期4年にわたり米国であるが、3期目にあたる 2007 年 10 月にカナダ

にバトンタッチし、現在は議長と事務局をカナダが担当している。

図1.IPHE の構造

IPHEの組織

運営委員会議長国:

11月のSCにて米国からカナダへ引継ぎ

副議長国:

伊、中、米、韓

実行連絡委員会共同議長:

1月のILCにて引継ぎ- ドイツ (Prof. Neef )- アイスランド(Prof. Sigfusson)

から

- フランス(Lucchese)- 英国(Loughhead)

IPHEの議長・副議長

実行連絡委員会Implementation Liaison Committee: ILC)

運営委員会(Steering Committee: SC)

事務局

(Secretariat)

WG WG WG WG

WG WG WG

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タスクフォース 評価チーム

シェアホルダーアソシエーション・リエゾングループLiaison Group of Stakeholder Associations (LGSA)

IPHEの組織

運営委員会議長国:

11月のSCにて米国からカナダへ引継ぎ

副議長国:

伊、中、米、韓

実行連絡委員会共同議長:

1月のILCにて引継ぎ- ドイツ (Prof. Neef )- アイスランド(Prof. Sigfusson)

から

- フランス(Lucchese)- 英国(Loughhead)

IPHEの議長・副議長

実行連絡委員会Implementation Liaison Committee: ILC)

運営委員会(Steering Committee: SC)

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タスクフォース 評価チーム

シェアホルダーアソシエーション・リエゾングループLiaison Group of Stakeholder Associations (LGSA)

Page 39: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

264

なお IPHE 実行連絡委員会には、テーマごとにワークグループが設置されており、実際の国際

連携活動を行っている。7つのワークグループが設置されているが、現在この中で活発に国際連

携活動を行っているのは「Education(教育)」、「Regulations, Codes and Standards(規制・基

準・標準)」、「Demonstration and Infrastructure(デモンストレーション)」の3つだけである。

表1.IPHE ワークグループ

②IPHE の日本への影響

日本は IPHE のコア的なメンバーであり、第一期目・第二期目は運営委員会の副議長国であっ

た。特に多くの NEDO の R&D プロジェクトや実証研究(JHFC、大規模実証など)を進めてい

る日本はレスペクトを集めるメンバーのひとつである。 IPHE では、会議の各国参加者(デレゲーション)の代表者は、政策担当者であることが定め

られており、米国からはエネルギー省や欧州委員会からは毎回、水素・燃料電池担当部局の長が

参加している。その意味でも、政策交流を超えて、各国の情報収集や本音が直接交わされる場所

となっている。 各メンバーは、独自に国家戦略・産業政策の点で水素・燃料電池政策を進めており、その意味

では各メンバーは「競合相手」であるが、同時に水素社会の実現のために国際的に水素・燃料電

池の PR を進めておこうという「協力相手」でもある。 わが国としては、現在の IPHE での地位も利用し、関係各国の情報を収集するとともに、「競

合」と「協力」のバランスを取りつつ、国際的な影響力の強化を図ることが求められる。またわ

が国の R&D に影響があるような IPHE の決定・政策については適切に対応していくことが求め

られる。

(2)IPHE における国際的な水素シナリオの調査研究

①IPHE における国際的な水素シナリオ策定の現状 本来 IPHE は、国際的な水素経済への移行を達成するために、世界共通、あるいは世界で連携

した水素経済への移行シナリオを描こうとしていた。しかし、各国のエネルギー状況の違い、研

究開発段階やその優先度の違い、また各国の政策の違いを受けて、この試みは 2005 年ごろに頓

挫した。

【リード】米国(Sigmund Gronich)中国、ドイツ、イタリア、日本、韓国、英国、欧州委員会

Demonstration and Infrastructure

【リード】欧州委員会(Marc Steen)オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、アイスランド、インド、イタリア、日本、韓国、ノルウェー、ロシア、英国、米国、欧州委員会

Regulations,Codes and Standards

【リード】フランス(Francois Moisan)オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、アイスランド、インド、イタリア、日本、韓国、ノルウェー、ロシア、英国、米国、欧州委員会

Socio-Economics

【リード】ロシア(Stanislav Malyshenko)オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、アイスランド、インド、イタリア、日本、韓国、ノルウェー、ロシア、英国、米国、欧州委員会

Hydrogen Storage

【リード】米国(Valri Lightner)オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、アイスランド、インド、イタリア、日本、韓国、ノルウェー、ロシア、英国、米国、欧州委員会

Fuel Cells

【リード】フランス(Paul Lucchese)オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、アイスランド、インド、イタリア、日本、韓国、ノルウェー、ロシア、英国、米国、欧州委員会

Hydrogen Production

【リード】アイスランド(Thorsteinn Sigfusson)ブラジル、フランス、アイスランド、ドイツ、日本、米国

Education

【リード】米国(Sigmund Gronich)中国、ドイツ、イタリア、日本、韓国、英国、欧州委員会

Demonstration and Infrastructure

【リード】欧州委員会(Marc Steen)オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、アイスランド、インド、イタリア、日本、韓国、ノルウェー、ロシア、英国、米国、欧州委員会

Regulations,Codes and Standards

【リード】フランス(Francois Moisan)オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、アイスランド、インド、イタリア、日本、韓国、ノルウェー、ロシア、英国、米国、欧州委員会

Socio-Economics

【リード】ロシア(Stanislav Malyshenko)オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、アイスランド、インド、イタリア、日本、韓国、ノルウェー、ロシア、英国、米国、欧州委員会

Hydrogen Storage

【リード】米国(Valri Lightner)オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、アイスランド、インド、イタリア、日本、韓国、ノルウェー、ロシア、英国、米国、欧州委員会

Fuel Cells

【リード】フランス(Paul Lucchese)オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、アイスランド、インド、イタリア、日本、韓国、ノルウェー、ロシア、英国、米国、欧州委員会

Hydrogen Production

【リード】アイスランド(Thorsteinn Sigfusson)ブラジル、フランス、アイスランド、ドイツ、日本、米国

Education

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265

②「プライオリティ・スコアカード」(国際共通 R&D 優先度)とその日本への影響

その後 IPHE 事務局である米国エネルギー省が提案したのが「プライオリティ・スコアカード」

である。これは水素・燃料電池の R&D について国際的な共通優先順位を決定する試みで、2006年(平成 18 年度)に策定された(表2)。 しかしメンバー国の投票によって決定したランキングや内容に矛盾がある(例.ランク1とラ

ンク9が矛盾する、水素コスト目標であるランク3とランク6に一貫性がない)ことが IPHE 内

で指摘され、積極的には公表されていない。 本プライオリティ・スコアカードが、わが国の水素・燃料電池 R&D に対する影響はほとんど

ないと判断される。

表2.プライオリティ・スコアカード(2006 年策定) ③「IPHE ストラテジック・プライオリティ(IPHE 戦略的方向性)」とその日本への影響

その後 IPHE は「プライオリティ・スコアカード」の精査を進めたが、「国際的に共通な R&D優先度」という本来の目的の点で有益な知見を抽出することができなかった。

2007 年(平成 19 年)秋に IPHE 運営委員会議長国と事務局が米国からカナダに移行し、カナ

ダの主導で決定したのが、IPHE としてのゆるやかな共通目標である「IPHE ストラテジック・

プライオリティ(IPHE 戦略的方向性)」である(表3)。 R&D などの点での日本への影響はないが、より国際コラボレーションや政策連携を強調する

内容となっており、R&D を含む政策面での対応も必要になってくると思われる。

表3.IPHE ストラテジック・プライオリティ(2006 年策定) ・ 水素・燃料電池技術および支援インフラの、市場導入と初期市場開拓の加速 ・ 広範囲な導入展開を支援するための政策と規制 ・ 政策立案者、一般における認識の向上~教育活動(ILC)とアウトリーチ活動(SC)

の継続 ・ 水素・燃料電池およびその補完的技術の開発に関するモニタリング

2020年までに定置用FCのコスト(含.改質器)を、産業用で$1200~1800/kWに、家庭用で2400ドル/kWにする。

2050年までに、水素(エネルギーキャリア)の全量をカーボンニュートラルな水素源から製造する。

2030年までに、IPHE加盟国におけるLight Duty Vehicleの15%を賄うのに十分な水素を生産する。

2015~2020年までに、自動車用FCの寿命5,000~8,000時間を達成する。

2020~2030年までに、集中製造した水素の輸送コストを$1.20/kg以下にする。

2020年までに、定置用FCの寿命40,000~80,000時間を達成する。同時に、家庭用低温形FCでは4000回の起動・停止を、産業用FCと家庭用SOFC(連続運転)では、100回の起動・停止を達成する。

2015~2020年までに、自動車関連の水素・FCの安全基準を、少なくとも既存の内燃機関自動車に要求されるのと同じレベルになるように、基準・標準・規制を世界規模で確立する。

2020~2025年までに、カーボンニュートラルな原料から製造された水素の供給コストを$3~5/mile・kWhにする。

2015~2020年において、車両用FCシステム(含.貯蔵、スタック、BOP)のコストの将来見込み(量産時)を$25~45/kW(現在のコストの1/4~1/5)にする。

2050年までに、水素(エネルギーキャリア)の70%をカーボンニュートラルな水素源から製造する。

1 0

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7

6

5

4

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2

1

重要項目のトップ10

2020年までに定置用FCのコスト(含.改質器)を、産業用で$1200~1800/kWに、家庭用で2400ドル/kWにする。

2050年までに、水素(エネルギーキャリア)の全量をカーボンニュートラルな水素源から製造する。

2030年までに、IPHE加盟国におけるLight Duty Vehicleの15%を賄うのに十分な水素を生産する。

2015~2020年までに、自動車用FCの寿命5,000~8,000時間を達成する。

2020~2030年までに、集中製造した水素の輸送コストを$1.20/kg以下にする。

2020年までに、定置用FCの寿命40,000~80,000時間を達成する。同時に、家庭用低温形FCでは4000回の起動・停止を、産業用FCと家庭用SOFC(連続運転)では、100回の起動・停止を達成する。

2015~2020年までに、自動車関連の水素・FCの安全基準を、少なくとも既存の内燃機関自動車に要求されるのと同じレベルになるように、基準・標準・規制を世界規模で確立する。

2020~2025年までに、カーボンニュートラルな原料から製造された水素の供給コストを$3~5/mile・kWhにする。

2015~2020年において、車両用FCシステム(含.貯蔵、スタック、BOP)のコストの将来見込み(量産時)を$25~45/kW(現在のコストの1/4~1/5)にする。

2050年までに、水素(エネルギーキャリア)の70%をカーボンニュートラルな水素源から製造する。

1 0

9

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重要項目のトップ10

Page 41: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

266

(3)IPHE の活動に関するレビュー

①「IPHE アワード」とわが国への影響

IPHE では 2006 年以来、水素経済の発展に寄与した人物やプロジェクトに対して IPHE アワ

ードを授与している。これまでに 2 回のアワードが決まったが、いずれも日本が推薦したプロジ

ェクトと日本人研究者が技術アワードを受賞している。 どちらも、国際的な水素・エネルギー関連の会議での授賞式であり、わが国の国際的な R&D

のレベルの高さを PR したものとなった。

表4.日本からの IPHE アワード受賞者 年度 受賞者 授賞式 2006 年度 JHFC プロジェクト

(技術アワード受賞) 2006 年 6 月、WHEC16 にて

2007 年度 山梨大学 渡辺政廣教授 (技術アワード受賞)

2007年 10 月、WEC(World Energy Congress)にて

②ニューズレターなどの IPHE の広報活動、とわが国への影響

IPHE は専用のホームページを有しており(www.iphe.org)、世界各国の政策関係やデモンス

トレーションの情報が掲載されている。わが国も、情報を定期的に提供している。 平成 19 年以来、議長国であるカナダは内容を見直しており、今後は IPHE 会議でのプレゼン

テーション資料(各国が政策・R&D の現状を報告する「メンバーステイトメント」など)も速

やかに掲載される予定である。 また、教育関連マテリアルのリストなども掲載されており、各国が他国のベストプラアクティ

スの情報を得ることができるようになっている。 今後も、わが国は政策や技術開発の情報を発信し、水素社会への構築が着実に進んでいること、

そのなかでわが国が主導的な位置を占めている意思があることを PR する場として、IPHE を利

用していくことが望まれる。 (4)IPHE 以外における水素・燃料電池関連施策動向の調査研究

①IPHE と IEA 水素実施協定との連携と、わが国への影響

2007 年以来、IPHE は IEA の水素実施協定とのコラボレーションを進めている。すでに IPHEと IEA 水素実施協定は 2007 年 10 月に MoU を締結、現在、いくつかのタスクで、コラボレーシ

ョン(共同での会議開催)が行われている(表5)。 なおわが国は、NEDOを中心に IEA水素実施協定には継続的に参加しているので、IPHE=IEA

のコラボレーションの動きには、引き続き注意を払っておく必要がある。

表5.IEA 水素実施協定(HIA)と IPHE のコラボレーション Task 22(水素貯蔵) コラボレーション実施中 Task 18(水素統合システムの評価) コラボレーションの実施が確定 Task 19(水素安全に関する国際協力) コラボレーション実施中

Page 42: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

267

②IPHE・IEA 共催「水素インフラに係るワークショップ」と、わが国への影響 2007 年(平成 19 年)には、IPHE と IEA の共催で、「水素インフラに係るワークショップ」

が開催された。これは世界3極における、水素・FC 関係者によるワークショップ(北米、欧州、

アジア太平洋の地域ごとに開催)で、特に水素インフラ整備に関する議論を通じて、水素経済達

成におけるバリアを明らかにしようとする試みであった(表6)。 わが国も国内の関係者の調整のもと、水素ステーションのシナリオやデモンストレーション

(JHFC)の情報を提供し、IEA での議論に貢献した。

(5)水素・燃料電池にかかる研究の実施体制・研究機関・研究者等の調査 IPHE 参加メンバーに関して、その主たる政策決定機関や研究組織、さらに主要な研究者に関

するディレクトリを作成、関係者に提供した。

3-2 特許、論文、講演、報道等 本事業は調査研究であるため、特に特許、論文、講演、報道等は行っていない。

特許、論文、講演、報道等の件数一覧

( )は国際出願件数を表す。

3-3 情報提供・公開

情報提供の一環として、NEDO 燃料電池・水素技術開発部のホームページで「水素・燃料電池

にかかわる国際動向調査/水素経済のための国際パートナーシップ(IPHE)の動向」(PDF 形式、

147 ページ)を公開した。 http://www.nedo.go.jp/nenryo/kokusai/index.html 4.まとめ及び課題

IPHE は水素経済に関する国際組織だが、IEA とは異なる「政治的な」性格を有する組織であ

り、わが国の水素燃料電池政策への影響を見極めるために、今後も注意が必要と考えられる。ま

た、世界の主導的な政策機関やその関係者が集まることから、情報収集の場としても有益である。 また IPHE の場を適切に利用することで、わが国から情報を世界に発信し、また世界の水素経

済への動きを支援するために活用することが引き続き求められる。

5.実用化・事業化見通し

本事業は調査研究であるため、実用化・事業化は想定していない。

特許 論文

出願 登録 実施 査読有 査読無

口答

発表

その他

(総説、解説等)

報道発表等

(新聞発表)

0(0) 0 (0) 0 (0) 0 0 0 0 0

Page 43: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

268

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際標

準規

格に

積極

的に

反映

させ

た。

ISO

/TC

197(水

素技

術)に

関す

る国

際標

準の

研究 委

託先

:(財

)エ

ンジ

ニア

リン

グ振

興協

●背

景/研

究内

容・目

的●

全期

間実

施内

容/

研究

成果

達成

○JA

RI/

JEM

Aと

連携

を図

った

C

達成

○IP

HEと

の協

同D

○◎

国内

WG

会議

を頻

繁に

実施

WG

12+1

3を日

本よ

り提

成果

内容

達成

目標

以上

自己

評価

A B

項目

達成

○JA

RI/

JEM

Aと

連携

を図

った

C

達成

○IP

HEと

の協

同D

○◎

国内

WG

会議

を頻

繁に

実施

WG

12+1

3を日

本よ

り提

成果

内容

達成

目標

以上

自己

評価

A B

項目

●研

究成

果ま

とめ

●今

後の

課題

国際

標準

化関

連審

議団

体と

の連

携実

施項

目C

国際

標準

に関

する

国際

活動

の情

報交

換実

施項

目D

国際

標準

化活

動の

支援

国際

標準

化提

案活

動の

推進

目標

実施

項目

A

実施

項目

B

実施

項目

国際

標準

化関

連審

議団

体と

の連

携実

施項

目C

国際

標準

に関

する

国際

活動

の情

報交

換実

施項

目D

国際

標準

化活

動の

支援

国際

標準

化提

案活

動の

推進

目標

実施

項目

A

実施

項目

B

実施

項目

●研

究目

●実

施体

制及

び分

担等

NEDO

(財

)エンジニアリング振

興協

会(実

施A,B,C,D)

ISO/TC19

7水素

技術

標準

化委

員会

ISO/TC19

7国内WG委

員(約100名)

(WG5,6,8

,9,

10,11,12,13)

1.

エネ

ルキ

゙ー及

び環

境問

題を

同時

に緩

和・解

消し

得る

手段

とし

ての

水素

エネ

ルキ

゙ーの

導入

・実

用化

に向

けた

技術

開発

が進

めら

れて

いる

。2

.技

術開

発段

階か

ら「共

通言

語」と

なる

国際

的規

格・標

準の

整備

の必

要あ

り。

3.

ISO

/TC

197

(国際

標準

化機

構/技

術委

員会

197水

素技

術)に

おけ

る国

際標

準化

活動

の実

施、

及び

我が

国(正

規会

員国

)と

して

積極

的な

活動

の参

加を

行な

って

いる

。4

.主

目的

は『エネ

ルキ

゙ー利

用を

目的

とし

た水

素の

製造

・貯

蔵・測

定及

び利

用に

関す

るシス

テム

・装

置に

関す

る標

準化

を推

進す

るこ

と』。

●20

06年

6月IS

化な

るも

70M

Paの

内容

のて

改訂

版原

案作

成中

。C

D(委

会ド

ラフ

ト)20

08年

8月頃

予定

。日

本は

米国

(SA

E)と

協同

歩調

●20

06年

11月

DIS

投票

、2n

dDIS

否決

。(日

本は

米・英

等と

共に

反対

投票

3rdD

ISが

2008

.3月

に投

票に

回付

され

、投

票締

切り

08.8

.26

日本

は米

・英

など

と協

同歩

調に

て反

対方

向。

(S

AE

のテ

スト

評価

でる

のが

2009

年の

為)

●P

art 1

(工

業用

)FD

IS20

08年

8月予

定。

Part

2(家

庭用

)D

IS:20

08年

8月予

定。

日本

はD

ISド

ラフ

トへ

コメ

ント

(約

50件

)提

出し

、約

1/3が

採用

され

た。

●P

art 1

(安

全性

)16

110-

1は20

07年

3月IS

発行

。Pa

rt 2(

効率

・性能

DIS

1611

0-2が

2008

年10

月予

定。

日本

の「効

率計

算式

」が

採用

され

た。

●製

品が

流通

され

てい

るた

め、

TS(技

術仕

様書

)化

、そ

の後

IS化

を目

指す

2007

.10月

TS承

認。

DIS

1611

1が20

07.1

1月採

択。

ISは

2008

.10月

予定

●20

06.5

月P

DTS

回付

。20

07.1

0月投

票結

果、

採択

。TS発

行20

08.5

IS化

に向

けて

CD

は20

08.1

0月、

ISは

2011

年目

●03.1

1月

TS化

を目

指し

て採

択さ

れ、

06.1

2月

DTSの

投票

の結

果、

大多

賛成

にて

承認

。TSは

2008

.3発

行。

IS化

に向

けて

2008.1

0月

にC

D予

定。

●05.1

1月

NW

IP採

択さ

れW

G発

足。

3回

の国

際会

議を

経て

06.1

2月

CD

を回

付。

DIS

08.7

6月

予定

●W

G3(水

素仕

様)の

見直

し結

果、

「改

訂」を

日本

リー

ダに

て提

案予

定。

水素

供給

用コ

ネク

(ISO

-172

68)

車載

用高

圧水

素容

(ISO

-158

69)

水電

解水

素製

造装

(ISO

-227

34)

改質

器(IS

O-1

6110

)

水素

吸蔵

合金

容器

(ISO

-161

11)

水素

ステ

ーシ

ョン

(ISO

/TS2

0100

)FC

V用

水素

仕様

(議

長:日

本)(T

S14

687-

2)水

素検

知器

(議

長:日

本)(IS

O-2

6142

)

5 6 8 9 10

11

12

13

審議

状況

概要

(2

00

8年

7月

現在

)標

準化

対象

項目

WG

●20

06年

6月IS

化な

るも

70M

Paの

内容

のて

改訂

版原

案作

成中

。C

D(委

会ド

ラフ

ト)20

08年

8月頃

予定

。日

本は

米国

(SA

E)と

協同

歩調

●20

06年

11月

DIS

投票

、2n

dDIS

否決

。(日

本は

米・英

等と

共に

反対

投票

3rdD

ISが

2008

.3月

に投

票に

回付

され

、投

票締

切り

08.8

.26

日本

は米

・英

など

と協

同歩

調に

て反

対方

向。

(S

AE

のテ

スト

評価

でる

のが

2009

年の

為)

●P

art 1

(工

業用

)FD

IS20

08年

8月予

定。

Part

2(家

庭用

)D

IS:20

08年

8月予

定。

日本

はD

ISド

ラフ

トへ

コメ

ント

(約

50件

)提

出し

、約

1/3が

採用

され

た。

●P

art 1

(安

全性

)16

110-

1は20

07年

3月IS

発行

。Pa

rt 2(

効率

・性能

DIS

1611

0-2が

2008

年10

月予

定。

日本

の「効

率計

算式

」が

採用

され

た。

●製

品が

流通

され

てい

るた

め、

TS(技

術仕

様書

)化

、そ

の後

IS化

を目

指す

2007

.10月

TS承

認。

DIS

1611

1が20

07.1

1月採

択。

ISは

2008

.10月

予定

●20

06.5

月P

DTS

回付

。20

07.1

0月投

票結

果、

採択

。TS発

行20

08.5

IS化

に向

けて

CD

は20

08.1

0月、

ISは

2011

年目

●03.1

1月

TS化

を目

指し

て採

択さ

れ、

06.1

2月

DTSの

投票

の結

果、

大多

賛成

にて

承認

。TSは

2008

.3発

行。

IS化

に向

けて

2008.1

0月

にC

D予

定。

●05.1

1月

NW

IP採

択さ

れW

G発

足。

3回

の国

際会

議を

経て

06.1

2月

CD

を回

付。

DIS

08.7

6月

予定

●W

G3(水

素仕

様)の

見直

し結

果、

「改

訂」を

日本

リー

ダに

て提

案予

定。

水素

供給

用コ

ネク

(ISO

-172

68)

車載

用高

圧水

素容

(ISO

-158

69)

水電

解水

素製

造装

(ISO

-227

34)

改質

器(IS

O-1

6110

)

水素

吸蔵

合金

容器

(ISO

-161

11)

水素

ステ

ーシ

ョン

(ISO

/TS2

0100

)FC

V用

水素

仕様

(議

長:日

本)(T

S14

687-

2)水

素検

知器

(議

長:日

本)(IS

O-2

6142

)

5 6 8 9 10

11

12

13

審議

状況

概要

(2

00

8年

7月

現在

)標

準化

対象

項目

WG

0件

受賞

報道

0件

3件5件

特許

出願

論文

発表

口頭

発表

0件

受賞

報道

0件

3件5件

特許

出願

論文

発表

口頭

発表

1.

国際

標準

と日

本の

関連

基準

・規

格と

の整

合と

比較

⇒TB

T(国

際貿

易非

関税

障壁

)協

定に

絡ん

で国

際標

準と

関連

する

日本

の基

準・規

格と

の整

合を

図る

必要

2.

我が

国よ

りの

積極

的な

新規

標準

化項

目の

提案

及び

コメ

ント

・意

見の

積極

的反

映⇒

日本

の国

際競

争力

の強

(C

-20)

Page 44: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

269

●成

果概

要:

水素

経済

社会

の実

現に

向け

て国

際協

同研

究開

発を

目的

とす

るIE

A/H

IA(国

際エネ

ルキ

゙ー機

関/水

素実

施協

定)に

積極

的に

参加

した

。又

各A

nnex

(作業

部会

)に

参加

し、

日本

の専

門家

によ

る海

外研

究者

との

ネッ

トワ

ーク

作り

及び

迅速

な情

報収

集が

達成

でき

た。

IEA

/H

IA(国

際エネ

ルキ

゙ー機

関/水

素実

施協

定に

おけ

る国

際協

力の

研究

委託

先:(財

)エ

ンジ

ニア

リン

グ振

興協

●背

景/研

究内

容・目

的●

全期

間実

施内

容/

研究

成果

達成

○IE

A/H

IA200

6報告

書(翻

訳版

)展

開C

○○

Annex

18に

て評

各作

業部

会に

て実

成果

内容

達成

達成

自己

評価

A B

項目

達成

○IE

A/H

IA200

6報告

書(翻

訳版

)展

開C

○○

Annex

18に

て評

各作

業部

会に

て実

成果

内容

達成

達成

自己

評価

A B

項目

●研

究成

果ま

とめ

●今

後の

課題

技術

開発

情報

の普

及と

共有

化C

分析

活動

(各

国の

実証

事業

の成

果と

学習

分析

研究

開発

動向

の調

査・検

討(水

素製

造・貯

蔵・統

合シス

テム

等)

目標

A B

実施

項目

技術

開発

情報

の普

及と

共有

化C

分析

活動

(各

国の

実証

事業

の成

果と

学習

分析

研究

開発

動向

の調

査・検

討(水

素製

造・貯

蔵・統

合シス

テム

等)

目標

A B

実施

項目

●研

究目

●実

施体

制及

び分

担等

NEDO

(財

)エンジニアリング振興協

会(実

施A,B,

C)

IEA水

素実施

協定対

応委員会

各Annex(作

業部

会)専

門家

(Annex18,19,20,21,22

, 23, 24)

1.

OEC

D(経

済開

発機

構)の

傘下

に代

替エ

ネル

ギー

源の

開発

を目

的に

IEA

(国際

エネ

ルキ

゙ー機

関)が

設立

され

、IE

Aの

中に

水素

に関

する

協同

研究

開発

を目

的に

HIA

(水

素実

施協

定)が

1977

年に

設立

され

た。

2.

IEA

/HIA

(国際

エネ

ルキ

゙ー機

関/水

素実

施協

定)の

目的

意義

は次

の3

つに

集約

され

る。

①水

素経

済社

会の

実現

に向

けて

国際

的協

同研

究開

発の

動向

を調

査・検

討す

る。

②安

全・環

境を

配慮

した

世界

共通

の水

素技

術関

連情

報の

共有

。③

総合

的な

水素

研究

開発

と分

析活

動の

支援

0件

受賞

報道

0件

1件3件

特許

出願

論文

発表

口頭

発表

0件

受賞

報道

0件

1件3件

特許

出願

論文

発表

口頭

発表

1.

水素

経済

社会

の実

現に

向け

た国

際協

同研

究開

発の

積極

的参

加2

.IE

A/H

IA国

際会

議に

おけ

る海

外研

究者

のネ

ット

ワー

ク作

りと

情報

の迅

速な

収集

①IE

A/H

IA参

加日

本代

表専

門家

によ

る海

外研

究者

との

ネッ

トワ

ーク

作り

及び

専門

家に

よる

情報

の迅

速な

収集

②公

開さ

れた

研究

開発

情報

のデー

タヘ

゙ース

(Webs

ite)か

らの

収集

と国

内水

素関

連会

議に

おけ

る情

報の

紹介

●サ

ブタ

スクB

「実

証プロ

ジェ

クトの

評価

」は

参加

国の

水素

実証

プロ

ジェ

クト

から

候補

を募

り、

既存

の評

価ソフトを

利用

して

エネ

ルキ

゙ー効

率、

経済

等シス

テム

評価

を行

う。

日本

の産

総研

-高

砂熱

学協

同研

究の

「建

用水

素統

合シス

テム

」が

評価

対象

の一

つ。

●サ

ブタ

スクA

リス

ク管

理手

法、

B水

素安

全に

関す

るテス

ト。水

素安

全に

関す

る各

国の

安全

実験

が紹

介・テ

゙ータヘ

゙ース

化。

2007

年2月

のつ

くば

会議

にて

日本

のH

Y-S

EFを

紹介

●太

陽光

を利

用し

て水

から

直接

水素

を製

造す

る研

究開

●200

5年

トルコで

のキ

ックオ

フ会

議か

ら日

本議

長(産

総研

)に

て5回

国際

会議

実施

。ア

ジア

にお

ける

本分

野で

の研

究開

発が

期待

され

る。

●A

nnex

17よ

り継

続さ

れ、

キックオ

フ会

議が

200

7.1

月米

国に

て開

催。

IPH

E(水

素経

済の

国際

パー

トナー

シップ)と

の協

同が

承認

され

、2008

2月

カナ

ダに

てIP

HEと

の協

同開

催。

●A

nnex

16か

ら継

続さ

れ、

2006

.6月

のキ

ックオ

フ会

議に

てサ

ブタ

スク

3(市

場研

究)の

リー

ダー

は日

本(東

京ガ

ス)に

選ば

れた

●200

7年

6月

のEx-

Co執

行委

員会

にて

発足

が承

認さ

れ、

第1回

国際

会議

が200

7年

6月

にス

ペイ

ン、

第2回

会議

がス

ペイ

ン・カ

ナリ

ー島

にて

開催

され

た。

日本

から

横浜

国大

/太

田先

生が

参加

水素

統合

シス

テム

の評

(期間

: 2004

.1-20

09.1

)

水素

安全

(200

4.1

0-

201

0.1

0)

水の

光分

解水

素製

(200

4.1

0-20

10.1

0)

バイ

オ水

素製

造(議

長日

本)

(200

5.1

0-20

08.1

0)

水素

貯蔵

材料

(200

6.1

2-20

09.1

2)

定置

式小

型改

質器

(200

6.1

2-20

9.1

2)

風力

発電

-水

素製

(200

6.1

2-20

09.1

2)

18

19

20

21

22

23

24

目標

及び

内容

(2

00

8年

3月

)研

究開

発項

目A

nnex

●サ

ブタ

スクB

「実

証プロ

ジェ

クトの

評価

」は

参加

国の

水素

実証

プロ

ジェ

クト

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Page 45: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

270

国際標準・国際協力の研究

実施者:財団法人 エンジニアリング振興協会

I 国際標準の研究

1.「国際標準の研究」事業概要

水素エネルギー技術の開発を効果的に推進し、水素の導入・実用化時期におけるスムーズな

普及促進を図るためには、技術開発の段階から「共通言語」となる規格・標準を整備していく

ことが必要である。国際的にもアメリカ、カナダ、ドイツ、フランス等の水素エネルギー技術

の開発をリードする国々を中心に、ISO/TC197(国際標準化機構/専門委員会 197 水素技術)に

おいて国際標準の規格化作業を進めてきたが、我が国においても WE-NET プロジェクトや「水素

に関する基盤技術開発」での研究開発の成果や種々の実証試験を通じて、標準化・規格化に向

けたデータ等の蓄積もあることから ISO/TC197 水素技術の正規会員国である我が国から積極的

な国際標準化活動に参画している。尚、当エンジニアリング振興協会は ISO/TC197 の審議団体

を務めている。

2.「国際標準の研究」事業目標

2-1 国際標準化提案活動の推進 国際的な市場を睨んで早期に国際標準の構築を行うため、本事業の成果を盛り込み、国際標

準の提案、国内組織の構築を行う。具体的には; (1)国際的な市場を睨んで早期に国際標準の構築を行なうため、本プロジェクトの成果を盛

り込み、国際標準の提案、国内組織の構築を行なう。具体的には水素社会構築共通基盤

整備事業のメーンテーマである水素の安全利用と水素インフラに関する研究の中で創出

される安全指針、技術指針などをベースに新規国際標準規格に向けての課題抽出を行な

い、日本からの国際標準提案を積極的に行え得る体制を整備する。また、そのため、水

素エネルギー技術標準化委員会やテーマ毎の委員会の組織化・会議の設定を行い、TC197国内委員会活動の充実を図る。

(2)我が国からISOの国際標準提案を行って採択されたWG12 (燃料電池自動車用水素燃料仕

様)及びWG13(水素検知器)についてはコンビナ(議長=日本)への円滑な事務業務の推

進を行うための支援管理業務(外注による秘書業務など)を行う。又、新規項目につい

ても積極的に提案活動を行なう。

2-2 国際標準化活動の支援 各 WG(ワーキンググループ)国際会議へ専門家(エキスパ-ト)を派遣し、我国の意見・主

張のドラフトへの反映・取り込みを図る。具体的には ISO/TC197 の各 WG(ワーキンググルー

プ)の内、投票段階あるいは審議段階にある WG については、国内 WG 委員会を必要に応じて

実施し、我が国意見・主張をコメント表(英文)に落とし込み、ドラフトへの反映・取り込

みを図り、我が国の技術競争力強化を目論んでいる。

Page 46: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

271

2-3 国際標準化関連審議団体との連携

国内関連審議団体(日本自動車研究所、日本電気工業会、高圧ガス保安協会など)と連携し、

ISO 国内体制の構築を推進する。

2-4 国際標準に関する国際的技術情報交換などの実施 経済産業省・資源エネルギー庁が参加するIPHE(水素エコノミーに関する国際パートナー

シップ)の中の「Code & Standard」分科会に専門家を派遣し情報を収集する。又、米国、

カナダ、欧州などにおける水素エネルギー開発戦略、水素エネルギ-技術動向、(安全技

術、実用化技術)および標準化、法制化の動向に関する情報収集・調査を行い、その情

報を本事業の進め方に反映させる。 3 「国際標準の研究」成果概要

3-1国際標準化提案活動の推進成果:

① WG3水素燃料仕様IS14687から燃料電池車用水素燃料仕様(14687-2)として独立して我国か

ら提案された本 WG12(コンビナー:日本/武蔵工大)については、2004.6 月に我国で第 1

回の国際会議を開催したのを始め、その後 3回開催され、我国(日本自動車研究所を中心に)

主導にて標準化を進めている。2006 年 12 月に DT14687-2 の投票が行われ反対ゼロで採択

された。今後 2011 年までの IS 化に向けて、各国の協力を進めていく計画である。

② 2005 年 9 月に我国の(独)産業技術総合研究所(産総研)がコンビナー(議長)として国際

標準化新規提案し、採択された WG13(水素検知器)はその後我国主導で活動推進し、2006

年 1 月に東京、6月フランス・リヨン、11 月バンクーバの国際会議と 5回の国内会議を経て 2006 年 11

月に CD(委員会ドラフト)を発行し、その後 2007 年 6 月ソウル会議及び 11 月のイタリア会議

にてCDのコメントを審議して2008年7月にDIS(国際標準ドラフト)を発行の予定である。

③ WG3 (FCV 以外の水素燃料仕様)ISO14687-1:1999 として既に IS 発行されているが、定期見

直しの投票の結果(日本からは「改訂」の投票を 2007 年 2 月に行った)、大多数投票で「改

訂」することに決定され、TC197 の議長より日本のリーダの下に改訂作業を行えるかの打

診を受け、日本コンビナの下で ISO14687-1 の「改訂」及び 14687Part3「定置式燃料電池

用水素燃料仕様」として NWIP「新規提案」を行う(2008 年 8 月)方向で検討中である。

3-2 国際標準化活動の支援成果:

表1 国際標準化活動の進捗状況 (H20 年 3 月末現在)

WG 日本語名 活 動 状 況

WG1 液体水素-陸上車

両充填接合部 ・ISO13984;1999 にて IS(国際標準)発行済み。

WG1

液体水素-車載用

液体水素タンク

ISO 13985

・WG1「液体水素-車両用液体水素充填接合部」から分割・独立。ISO13985;2006

にて発行済み。

Page 47: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

272

WG2 液体水素コンテナ

ISO 13986 ISO/TC220(極低温容器)に移管(我が国審議団体はKHK)

WG3 水素燃料製品仕様

ISO 14687

ISO14687;1999 にて IS 発行。2007.3.1 見直し投票結果、「改訂」となった。日

本がリーダーとなり、新規 WG 立上げを検討中。

WG4

空港における水素

燃料供給設備

PAS 15594

PAS15594 として発行済み(2004.10)。

WG5 水素充填コネクタ

ISO 17268

・ 35MPa 仕様までのコネクタ標準に係る ISO17268 が発行済み(2006.4)

・ 70MPa の内容を挿入して改訂版 CD(委員会ドラフト)発行予定(2008.08)

・ 70MPa 仕様のコネクタ標準は米国自動車団体(SAE)と JARI 高圧水素標準化 WG との

会議で審議が進み、改訂版 CD(委員会ドラフト)には日本提案(ノズル側シール構造)

と米国提案(レセプタクル側シール構造)を併記して 2009 年に日米評価結果を比較し、

IS(国際標準)化を図る予定。DIS:2009.2 月. IS:2010.2 月を目指す。

WG6

車載用ガス水素容

ISO 15689-2

・ 2ndDIS15869.2 に対して米国自動車団体(SAE)及び国内自動車メーカより IS(国

際標準)ではなく、TS(技術仕様書)とするように要望を提出すると共に日本は

反対投票を行なった。

・ 投票結果は投票国(17 カ国)の内、反対国 5ヶ国(日・米・英・独・ノルウェー)

で採択条件=反対国 1/4 以下を満たされず「否決」となった。

・ 2008.3.26 に 3rdDIS15869.3 が回付され(投票締切り 08.08.26)、投票対応

検討中なるも日・米・英・独は前回同様 SAE による評価が出る 2009 年までは

国際標準化は難という観点から反対投票予定。

WG7 水素システムの安全に

関する基礎的考察 TR15916 として発行済み(2004.2)

WG8 水電解装置 工業用(Part1)と家庭用(Part2)で分割。

Part1 産業・商用

ISO 22734-1 工業用は DIS 投票結果「採択」。次は FDIS

Part2 家庭用

ISO 22734-2

・家庭用は 2006 年 2 月 CD22734-2 が回付され、2008 年 3 月国内 WG 委員より CD コ

メントを集約し、6月の WG8 ブリスベン会議に提出予定。2008 年 11 月 DIS 予定。

WG9 改質器 安全(Part1)と性能・効率(Part2)に分割

Part1 安全性

ISO 16110-1 「安全」はFDIS投票結果、「採択」され、ISO 16110-1:2007としてIS発行(2007.03)。

Part2 性能・効率

ISO 16110-2

・「性能・効率」は 2006 年 6 月パリ会議及び 2007 年 2 月東京会議にて審議された

結果、日本側の提案である効率の定義・計算式が認められ、CD16110-2 が 2008

年 4 月に投票頃回付された。(投票締め切り 2008.9 月)FDIS:2009.4 月

WG10 水素吸蔵合金容器

ISO 16111

・ 製品が流通されており、IEC/ UN に引用されていることから先に TS(技術仕様

書)する事で合意。TS16111 は 06 年 10 月発行。

・ その後IS化を目指して2007年 2月東京会議にてTS投票時のコメントを織り込ん

で DIS16111 の作成の審議を行った。2007 年 4 月バンクーバ会議にて 終 DIS が

完成され、2008 年 1 月 DIS 投票(日本は賛成投票)、2008 年 5 月に FDIS、12

月に IS 化を目指す。

WG11 水素ステーション

TS 20012

・ 2004 年に採択された本 WG11 は項目を 4 つのタスクグループに分け、TS(技術仕様

書)を目指してドラフト作成を進め、我国 WG 委員会もこれに対応した。

・ 2006 年 8 月パリ会議では各 TG で作成されたドラフトを一体化した PDTS20012 に

基づき各国のコメントに対する審議を行った。

・ 2007 年 9 月に DTS20012 が投票され、賛成多数(3分の 2以上)で採択された。

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273

(日本、米国、英国、ドイツは反対投票)TS:技術仕様書として発行(2008.04)

・ IS に向けて CD20100(文書番号変更)が 2008.12 月を目指す。DTS 投票時にコメン

トが多かったため、CD はスコープを広げて IS 化(2011.6 月)を目指す。

WG12

燃料電池車用水素

燃料仕様

TS 14687-2

・ WG3 水素燃料仕様 IS14687 から燃料電池車用水素燃料仕様(14687-2)として独

立して我国から提案された本 WG12(コンビナー:日本/武蔵工大/高木氏)につい

ては、2004.6 月に我国で第 1回の国際会議を開催したのを始め、その後 3回

開催され、我国(日本自動車研究所を中心に)主導で標準化を進めている。

・ 米国から今後 2-3 年間かけて燃料仕様のデータ収集を行う為、当面、TS として

の文書化を図りたいとの提案があり 2006.12 月に DT14687-2 の投票が行われ

(日本賛成)反対ゼロで採択された。TS14687-2 は 2008.4 月に発行予定。

・ 今後の IS 化を向けて、各国の研究協力を進めていく計画である。CD:2008.10

月、DIS:2009.10 月、IS:2011.4 月を目指す。

WG13 水素検知器

ISO 26142

・ 2005 年日本より新規提案され、9 月に採択、WG13 として発足。(コンビナー:日

本/産総研/松原氏)2006.1 月東京にて第 1回キックオフ国際会議を開催。WD(ワーキ

ングドラフト)の審議と修正が行われ、2006.6 月に第 2回のパリ会議及び 2006.11

月に第 3回バンクーバ会議を実施し WD に対するコメントを審議し、CD への移行を決

定した。

・ 2007 年 2 月 TC197 事務局より CD26142 が回付された。その後 2007.6 月ソウ

ル会議、11 月のイタリア会議にて CD に対するコメントを審議して、DIS26142 が 2008.

7月に投票用に回付予定。DIS:2008.07, FDIS:2009.07, IS:2010.04

Ad Hoc

(水素部品)

・ 2004.11 月に水素部品の標準化を検討するために Ad Hoc 国際委員会が設置さ

れた。事務局(米国)では水素部品(Dispenser, Hose, Valve, Gauge, etc)

について既存の国際規格がそのまま使えるか、修正が必要かをマトリックスにまと

めて調査し、2006 年 12 月に第 1回会議を開催。マトリックスが完成され、4つに分

類された。

・ aa 既存規格を使えるもの、bb 多少の修正加える、cc 多くの変更が必要、dd

新規の規格が必要。これらの中から抽出して標準化活動を行う。各国からの

エキスパートの募集中で日本からのエキスパートを 2009 年度内に決定予定。

3-3 国際標準化関連審議団体との連携:

ISO/TC197 国内 WG 会議を通じて JARI(電気自動車/ISO-TC22)(WG5, 6, 12)、日本電機工業会(燃

料電池/IEC-TC105)(WG9, 13)、KHK(高圧ガス保安協会/ISO-TC58)(WG6, 10)、 PEC(石油活性化セ

ンター)(WG5, 11)、などとの関係審議団体との情報交換を行い、積極的に連携を図った。その他、

委員会へ相互に登録し連携を図っている。

3-4 国際標準に関する国際活動の支援:

IPHE-ILC(実行連絡委員会)に専門家を派遣(2006 年 6 月&2007 年 1 月及び 9月)、情報交換を行

った。2007 年 1 月の英国会議では「Regulation, Code & Standard」の分化会(RCSWG)が実施さ

れ、FCDIC/小関事務局長が参加。IPHE/RCSWG 事務局からは「RCSWG は基準標準のドラフト作業

に直接関わるのではなく、促進される触媒又は関係者へのフォーラム機能を果たすものである」

との認識を示された。

Page 49: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

274

3-5 成果の意義

水素エネルギー技術の開発を効果的に推進し、水素の導入・実用化時期におけるスムーズな

普及促進を図るために必要な、技術開発の段階からの「共通言語」となる規格・標準が着々と

整備されており、我が国も積極的に参加して推進している。 又、我が国はコンビナ(議長)を 2 つ(WG12, WG13)取っており、さらにあと一つ取る予定

であり、我が国の国際標準化活動を通して競争力の強化も図られており、今後も引き続き積極

的な国際標準化活動への参画が必要である。 3-6 特許、論文、講演、報道等の件数一覧 研究発表・講演、文献、特許など特記事項

(1) 研究発表・講演

①2006 年 8 月 FCCJ(燃料電池実用化推進協議会)主催第 2回標準化・規制見直し動向説明会

にて「ISO/TC197 国際標準/水素技術の国際標準化の動向」を発表。

②2007 年 8 月 同上

③2007 年 6 月論文「水素利用技術集成」Vol.3 に「水素技術国際標準化(ISO/TC197)」を寄稿。

(2) 特許などその他: なし 4.まとめ及び課題

TBT(国際貿易非関税障壁)協定を締結した日本は、国内規則(基準)と国際標準との整合を図

らなければならないという原則であるが、今後の国際標準化活動においてこの原則を踏まえて

取り組む必要あると思われる。平成 20 年度以降の国際標準化活動は国際標準と国内規則(基

準)との整合・比較が課題となる。 5.実用化・事業化見通し

ISO/TC197(水素技術)は今後も引き続き国際標準化活動が行われ、今後の課題である国際標準

と我が国の国内規則との整合・比較作業と同時に、更に水素に関連する JIS 規格化への作業が

必要である。

II 国際協力の研究

1. 国際協力の研究の概要

水素経済社会の実現に向けて国際的協同研究開発の推進と安全・環境を配慮した世界共通の

水素関連情報の共有を目的とする IEA/HIA(国際エネルギー機関/水素実施協定)に我が国から

積極的に参加して総合的な水素研究開発と分析活動を行い、水素関連の情報を共有する。又、

各作業部会に日本の専門家を派遣して水素に関する技術開発動向を調査・検討する。

2. 国際協力の研究の目標 2-1 IEA/HIA 各 Annex (作業部会)会議へ日本から専門家を派遣し、総合的な水素研究開発

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275

動向を調査・検討を行い、情報を共有する。又、入手した水素関連情報を展開し、NEDO の推

進する水素関連事業などに資する。

Annex(作業部会) 内容 参加国 OA(幹事)国

Annex 18 水素統合システムの評価 14 カ国 米国

Annex 19 水素安全 9 カ国 米国

Annex 20 水の光分解による水素製造 8 カ国 スイス

Annex 21 バイオ水素製造 13 ヶ国 日本

Annex 22 基礎的・工学的水素貯蔵材料開発 13 ヶ国 ノルウェー

Annex 23 水素供給用の小規模改質器 8 カ国 ノルウェー

Annex 24 風力エネルギーと水素の統合 10 カ国 スペイン

2-2 IEA/HIA Ex-Co(Executive Committee)執行委員本会議へ出席し、参加国の水素関連情

報収集・交換を行う。 2-3 米国、カナダ、欧州などにおける水素エネルギー開発戦略、水素エネルギー技術動向、水素インフラ

に関する技術動向(安全技術、実用化技術)に関する情報収集・調査を行い、その情報を日本

の水素関連分野に展開する。

2-4 Annex 21(バイオ水素製造)で我が国が OA(Operating Agent=作業部会幹事)を務めて

いることに関し、その支援の為、OA 支援事務管理業務(外注)を行なう。

3.国際協力の研究の成果概要

3-1 各作業部会(Annex)の成果

表 2 各作業部会の進捗状況 (H20 年 3 月末現在)

Annex 項 目 成 果

18 水素統合システ

ムの評価

http://www.port

-h2.com/IEA-Ann

ex-18/

・ 本 Annex は「水素システム社会への融合に関する情報を提供する」という全体目標の

元に二つの Subtask より構成され 2004.1 月に発足し、2006.11 月に 3 年間の延

長が承認され、2007.1 月より 2nd Phase に入る(2009.12 月まで)。

・2nd Phase では元の 2つのサブタスクに加え、下記三つのサブタスクとなる。

A)「情報データベースの構築」⇒水素システムに関連する各国の組織、文書に関する情報を

収集し、データベースを構築する。

B)「実証プロジェクトの評価」⇒参加国で実施されている実証プロジェクトから候補を絞り

既存の評価ソフトを活用してエネルギー効率、経済性などのシステム評価を行う。

C)「統合と研修」⇒社会的・経済的側面を考慮に入れて水素システム導入の障壁となっ

ている原因を抽出し、その対策を検討す

19 水素安全

http://www.ieah

ydrogensafety.c

om/

・以下三つのサブタスクに分けて検討・議論されている。

A) Risk Management (危機管理):既存のリスクアセスメント手法の調査など

B) Safety Testing (安全試験):既存の実験データの調査など

C) Information Dissemination (ステークホルダー向けの情報整理とその提供)

Page 51: 半導体水素センサと検知システムの研究開発227 半導体水素センサと検知システムの研究開発 実施者:(株)日立製作所 基礎研究所 宇佐川利幸

276

・2006.9 月バンクーバ及び 2007.2 月東京(つくば)にて国際会議を実施。サブタスク A で

は日本が規制見直しに実施したリスク評価も含めて評価事例の調査結果を整理。又水

素安全に関するデータや評価技術レベルの認識、今後取得していくデータなどについて整

理を実施。

・サブタスク B では参加国が実施中の水素関連実験の進捗を紹介し、併せて既存の実験

データも含めてこれらをデータベース化するためのフレームワーク作りを検討。

・サブタスク C では収集データの公開範囲とその方法を検討。

全体として検討を加速するためにウェブサイト環境の整備も進めている。

20 水の光分解によ

る水素製造

http:www.pecnet

.org

・ 99 年から 03 年までのタスク 14(光電気化学的水素製造)を発展的に継承して 04~

06 年のタスクとして Annex 20 が発足。

・ 事業目的は太陽光を利用して効率的に水から直接水素を製造する研究・開発を情

報交換という観点から国際的に推進すると共に、各国の研究者グループのネットワーク

を通じて相互交流を図ることを目的としている。

・ 具体的には光触媒的水素製造、電気化学的水素製造プロセスの研究開発、その研究

成果の情報交換や人的交流を意図するものである。

21 バイオ水素製造

http://www.ieah

ia.org/private/

・ 産業技術総合研究所(産総研)/三宅氏が OA(幹事)となり 2005.5 の IEA/HIA 水

素実施協定 Ex-Co 総会にて承認された本 Annex 21 は 2005.7 月に第 1 回キックオフ国際

会議がトルコ・イスタンブール、2006.2 月にバンコクにて第 2 回国際会議、2006.6 月に仏・リヨン

にて第 3 回国際会議、2006.11 月に台湾にて第 4 回、2007.8 月に米国デンバにて第

5回国際会議が実施された。

・本 Annex 21 は下記四つのサブタスクに分けられる。

A) 光合成微生物(藻類や光合成細菌)や嫌気性細菌を用いたバイロマス水素製造

B) 光合成微生物と光エネルギー利用の水やバイロマスからの水素製造システムの高効率化技術

C)微生物が有する酵素やタンパク質を利活用した生体模倣技術・分子ハンドリング技術によ

る光水素生産デバイス・燃料電池システムの構築

D)当該技術のフィージビリティースタディなどの可能性評価、社会生活・社会システムへの影響評

価、生活の質の確保に関する評価など。

22 基礎的・工学的水

素貯蔵材料開発

http://www.hydr

ogenstorage.org

2007 年 1 月より Annex 22:

・ 2006 年 6 月 Ex-Co 総会にて Annex 17 から Annex 22 へ継続されることで承認され、

2007 年 1 月米国モンテレーにてキックオフ会議が開催された。(日本から 2名出席)

・ Annex 22 で設定されている目標は以下の通り。

A) 国際的な水素貯蔵目標に合致する可逆的又は再生可能な水素貯蔵媒体を開発。

B)目標 Aに合致する可能性がある水素吸蔵媒体の基礎的及び工学的理解を深める。

C) 定置用用途向けの水素貯蔵材料及び貯蔵システムを開発する

【IEA/HIA/Annex22 と IPHE の水素貯蔵関係部分との連携】

・第3回ワークショップは、2008.3.1-5 にモントリオール(カナダ)近郊の Sacacomie で開催され、

参加者 49 名の内、非 IEA の IPHE 関係国ではロシアとブラジルから各 1名の参加であった。

ボロハイドライドの不安定化・安定性の計算・構造・ダイナミクス、Mg 系材料、高表面積

材料等が報告された。全体的に、欧州では構造解析等の基礎研究が活発に進められ、

米国は材料開発を主眼において研究が進められている。

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277

23 水素供給用の小

規模改質器

https://project

.sintef.no/eRoo

m

2006.6 月より Annex 23 (小規模改質器)は Annex 16 サブタスク C から継続した。

・2006 年 6 月 Annex 23 キックオフ会議(ブラッセル)サブタスク1/標準化とモジュール化、サブタ

スク2/持続可能性と再生可能資源、サブタスク 3/市場調査から構成、活動する事で合意。

日本はサブタスク 3/市場調査のタスクリーダとなる。

・日本のサブタスク 3 の目標は今後の水素の動向を踏まえ、国別・地域別にトレーラー運搬水

素、水電解水素等と比較したオンサイト水素の競合分析、CO2 の排出量を纏める

・市場性に関する検討を行う対象地域として、日本、北米(カリフォルニア)と欧州(ドイツ)

の 3 ケースを選定し、合意された。

・各地域で既存の中長期シナリオ研究結果に基づき、以下の情報を収集・比較することに

より、市場性に対する影響因子を抽出する作業を進行中。

・設備費、量産効果、原燃料価格、原燃料・ユーティリティ消費原単位、消耗品コスト、ユーティリ

ティコスト、エネルギー効率、CO2 排出量、高圧・液体水素輸送コスト、年経費率、為替レート、

CO2 価格など

24 風力エネルギー

と水素の統合

http://80.38.15

3.85.4000/

・サブタスクは A) State of Art (現状の機器設備-風車、水電解装置、中間機器のレビ

ューと水素製造能力・市場研究など)、B) Needed improvement & system integration

C) Business concept development の三つに分けられる。

・第 1回のキックオフミーティンク (゙2007 年4月スペイン)にてスイスより1社(IHT 社)参加された。

第 2 回国際会議は 2007 年 10 月にスペイン・カナリー島にて開催された(横浜国大/太田氏

が参加)

・直流の水電解を想定した風車の発電機、入力変動が激しい水電解槽はいずれも今後

詳しい検討が必要。特に水電解技術に関しては、従来からは入力一定での運転を常

としており、風車と繋げたとき、風力エネルギーの変動による変換効率、耐久性への影

響が技術的には大きな課題となる。スイスのIHT社はドイツのルルギ社の高圧水電解技

術を継承する会社であるが、今後にどのような展開を見せるか、注目すべき。

3-2 IEA ExCo 総会への出席:(IEA/HIA ウェブサイト:http://www.ieahia.org)

① 第 52 回/2005.6 月にノルウェー・ウチラ、第 53 回/2005.10 月にシンガポール、第 54 回/2006.6 月にフラン

ス・リヨン、第55回/2006.11月にオランダ・ペッテン、第56回/2007.5月にスイス・ラッペスビル、第57回/2007.11

月にイタリア・モンテカチーニにて Ex-Co 総会が実施され、各国及び各作業部会の各半期毎の報告があっ

た。(NEDO/ENAA 参加)

② 日本からは我国の燃料電池、水素技術取組みの現状等、JHFC 水素ステーション状況を報告した。

又 ExCo 総会出席の機会に、各国メンバーとの情報交換を行い水素エネルギー利用に関する各国の研

究開発動向の把握に努めた。各個別 Annex の報告と共に下記の新規提案があった。

-フランスより「高温プロセスからの水素製造=原子力水素製造」に関する提案があり、推進す

ることで了解された(日本は不参加を表明)。(Annex 25 として 2007 年 11 月発足)

-オランダより「大容量の水素貯蔵タンク」の提案が有り、引続きプラン策定中である。

③ 第 57 回(2007 年 11 月)会議にてドイツ、トルコ、ギリシャの正式加盟が認められ、加盟国は 22

カ国となった。(日、米、英、豪、加、仏、伊、デンマーク、EC、リトアニア、蘭、ノルウェー、スペイン、

スエーデン、スイス、フィンランド、アイスランド、韓国、ニュージーランド)

④ IPHE (International Pertnership for Hydrogen Economy)との協同は MOU (Memo of

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Understanding)を締結することにより、協同のワークショップを実施することが可能となった。

Annex 22 貯蔵材料開発と IPHE 水素貯蔵がテスト的に MOU が締結され、18 か月の試行期間を

もって、Non-IEA メンバー国(中国、ブラジル、ロシア、インド)が IEA/HIA に加盟するかを決定する。

(加盟が決定されれば、IEA への分担金の支払い義務が発生する。)

3-3 国際会議出席による情報収集・交換などの実施

【WHEC 16(第 16 回世界水素エネルギー会議)】 (2006 年 6 月フランス・リヨン)

・約 1000 名参加。各国から水素技術開発に関する発表があった(口頭発表 311 件、ポスター発

表 2980 件)。4 つのセッションに分かれて発表及び質疑応答があった。各国の報告の項目概

要を以下に示した。

・米国:水素社会への政策、水素貯蔵技術、自動車用燃料電池システム等

・EU:課題はエネルギーセキュリティ、大気汚染、温室ガス低減、産業競争力の確保であり、

水素・燃料電池が課題解決に資すると判断。

・日本:水素ステーション、燃料電池、技術開発ロードマップ

【ICHS 国際水素安全会議】(2007 年 9 月スペイン・サンセバスチャン)

・約 250 名参加(日本から 3名)IEA/HIA Annex 19 (水素安全)と併催された。

・日本から石油活性化センタ(PEC)、エネ総工研、エンジニアリング振興協会が発表した。

3-4 成果の意義

水素経済社会の実現に向けて国際的協同研究開発の推進と安全・環境を配慮した世界共通の水

素関連情報の共有を目的とする IEA/HIA(国際エネルギー機関/水素実施協定)に我が国から積

極的に参加して外国研究者とネットワーク作りにより、外国情報を迅速に入手可能にした。

3-5 研究発表・講演、文献、特許など特記事項

(1) 研究発表・文献

① ENAA 研究活動報告 (2005.7 月、2006.7 月、2007.7 月)

② 2006 年 IEA/HIA 年次報告書の邦文版作成・回付(2008. 2 月)

(2) 特許などその他: なし 4.まとめ及び課題

IEA/HIA(国際エネルギー機関/水素実施協定)の各作業部会及び Ex-Co 会議へ積極的に参加し、

外国の研究者とのネットワーク作りにより、外国の情報を速やかに入手できるようにする。 5.実用化・事業化見通し 今後も引続き世界の総合的な水素研究開発動向の調査・検討のためにネットワーク作りにより、

迅速な情報収集に努める。また、水素関連の公開情報を共有・展開する。