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学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ 3つのポイント 2020 年9月 株式会社マイナビ 社長室HRリサーチ部×立教大学 経営学部准教授 舘野泰一 <調査目的> 就職活動において選考受験に実際に繋がったインターンシップの特徴および社会人から振り返って職業観涵養に繋がったといえる インターンシップの特徴を整理する。 <調査地域> 全国 <調査方法> インターネット調査 <対象者> 4年制大学卒者もしくは大学院卒者のうち、社会人歴が3年以内の正社員 <回答数> 1,557 <実施期間> 2020312日(木)~2020326日(木) <実施機関> 株式会社マクロミル ※調査結果は、端数四捨五入の関係で合計が100%にならない場合があります。 ■本資料に掲載のデータ、図版等の無断転載を禁じます。資料のご利用やご質問等に関しては下記までご連絡ください。 株式会社マイナビ 社長室 HRリサーチ部 Email:myrmmynavi.jp 1

学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ 3つのポ …...6 1-3. インターンシップを実施した企業ほど採用充足率は高くなる インターンシップを実施した企業ほど採用充足率は高くなる

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学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ 3つのポイント

2020年9月 株式会社マイナビ 社長室HRリサーチ部×立教大学経営学部准教授 舘野泰一

<調査目的> 就職活動において選考受験に実際に繋がったインターンシップの特徴および社会人から振り返って職業観涵養に繋がったといえる

インターンシップの特徴を整理する。

<調査地域> 全国

<調査方法> インターネット調査

<対象者> 4年制大学卒者もしくは大学院卒者のうち、社会人歴が3年以内の正社員

<回答数> 1,557

<実施期間> 2020年3月12日(木)~2020年3月26日(木)

<実施機関> 株式会社マクロミル

※調査結果は、端数四捨五入の関係で合計が100%にならない場合があります。

■本資料に掲載のデータ、図版等の無断転載を禁じます。資料のご利用やご質問等に関しては下記までご連絡ください。

株式会社マイナビ 社長室 HRリサーチ部

Email:myrm@mynavi.jp

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INDEX

2-1. 学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ<概要>

2-2.学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ<詳細>

2-3. 開催形式別事例(対面形式・オンライン形式)

1.はじめに

2.サマリー

3.データ編

1-1. インターンシップは一般的になっている

1-2. 2021年卒の採用充足率は特に中小企業で厳しい傾向

1-3. インターンシップを実施した企業ほど採用充足率は高くなる

1-4. 学生は採用広報解禁前にエントリー先の半数を決めている

1-5. インターンシップに参加する目的

1-6. コロナ禍により、オンラインのインターンシップが拡大

1-7. 学生はインターンシップで“体験”を求めている

1-8. オンラインインターンシップと対面式インターンシップの差

1-9. インターンシップにおける課題と調査目的

3-1. 調査仕様

3-2. 検証プロセス

3-3. 選考受験につながるインターンシップとは

3-4. 入社意思につながるインターンシップとは

3-5. 満足度につながるインターンシップとは

3-6. 職業意識醸成の実感につながるインターンシップとは

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1. はじめに

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1-1. インターンシップは一般的になっている

インターンシップは一般的になっている

インターンシップは近年企業・学生間で浸透してきている(図1、図2)。企業の実施率はおよそ6割、学生の参加率はおよそ9割に迫る勢いである。

※1「企業 インターンシップ実施率」出所:マイナビ2021年卒企業採用活動調査(6月実施)※2「学生 インターンシップ参加率」出所:マイナビ2021年卒大学生広報活動開始前の活動調査

30.2% 32.6%38.1%

48.6%55.2% 56.9%

21.8% 23.6%28.1%

38.5%

47.0% 46.7%39…

42.7%50.5%

63.3%

68.6% 73.8%

54.2%59.9%

72.1%76.9%

85.0%81.3%

0%

25%

50%

75%

100%

16年卒 17年卒 18年卒 19年卒 20年卒 21年卒

全体 300人未満 300~1000人未満 1,000人以上

企業 インターンシップ実施率

2.6 2.72.9

4.0 3.6

4.9

58.2%62.1%

65.2%

78.7% 79.9%85.3%

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

0%

20%

40%

60%

80%

100%

16年卒 17年卒 18年卒 19年卒 20年卒 21年卒

平均参加社数 インターンシップ参加率

学生 インターンシップ参加率

(社)

4

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1-2. 2021年卒の採用充足率は特に中小企業で厳しい傾向

2021年卒の採用充足率は特に中小企業で厳しい傾向

2021年卒の採用充足率(採用予定数に対して現在採用が確定している割合)を聞いたところ、「0割(採用が確定している人はいない)」との回答が全体で36.6%となり、特に従業員規模300人未満の中小企業でその割合は高く43.3%にもなる。

36.6%

27.5%

19.6%

38.1%

43.3%

29.3%

16.0%

5.3%

5.3%

3.8%

5.4%

5.1%

5.5%

5.7%

6.4%

8.9%

10.2%

6.1%

5.2%

7.5%

10.8%

6.9%

8.3%

6.9%

6.9%

6.8%

7.4%

6.7%

3.8%

5.9%

1.6%

4.0%

3.8%

4.4%

3.1%

9.8%

11.4%

7.2%

10.0%

10.0%

7.9%

12.4%

4.6%

3.9%

5.1%

4.6%

3.5%

5.4%

9.4%

4.2%

5.4%

6.8%

4.0%

3.3%

5.1%

7.3%

5.5%

5.6%

11.4%

5.0%

3.9%

9.0%

7.1%

3.4%

3.5%

9.2%

2.8%

2.4%

4.8%

5.7%

9.9%

11.5%

13.6%

9.6%

9.9%

9.8%

10.2%

3.5%

2.…

4.5%

3.4%

2.9%

4.0%

5.6%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

21年卒全体

20年卒全体

上場

非上場

300人未満

301~999人

1,000人以上

0割* 1割 2割 3割 4割 5割 6割 7割 8割 9割 10割(ちょうど採用予定人数程度) 採用予定数以上

2021年卒 採用充足率(採用予定数に対して現在採用が確定している割合)

従業員規模

「21年卒 採用充足率」出所:マイナビ2021年卒企業採用活動状況調査(6月実施)*採用が確定している人はいない

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1-3. インターンシップを実施した企業ほど採用充足率は高くなる

インターンシップを実施した企業ほど採用充足率は高くなる

21年卒の6月時点採用充足率を見ると、全体で36.6%が「0割(採用が確定している人はいない)」と回答しており、 企業側にとっ

ては前年よりも厳しい状況になっていることがわかる。

特に、インターンシップを実施していない場合は「0割」が55.4%(対前年12.0pt増)と極めて厳しい状況だ。

一方で、インターンシップを実施していた企業では、充足率は全体的に高い傾向にある。

27.5%36.6%

15.6%23.7%

43.4%

55.4%5.3%

5.3%

6.4%

5.2%

3.7%

5.4%

8.9%

6.4%

9.6%

7.3%

7.9%

5.1%

8.3%

6.9%

9.2%7.4%

7.1%

6.3%

5.9%3.8%

6.9% 4.4%

4.6%

3.0%

11.4%9.8%

11.4% 11.8%

11.4%

6.9%

3.9% 4.6%

4.6% 6.3%

3.0%

2.2%5.4% 4.2%

6.2% 5.1%

4.2%2.9%

5.6% 5.5%

7.1% 7.5%

3.6% 2.7%3.5% 3.4%

4.7% 4.3%

2.0%2.0%14.4% 13.4%

18.3% 17.1%9.1% 8.0%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

20年卒 21年卒 20年卒 21年卒 20年卒 21年卒

全体 インターンシップ実施 インターンシップなし

0割 * 1割 2割 3割 4割 5割 6割 7割 8割 9割 10割以上

「インターンシップ実施有無別 採用予定充足率比較」出所:マイナビ2021年卒企業採用活動状況調査(2020年卒分より 毎年6月実施)

インターンシップ実施有無別 採用予定充足率(採用予定数を10割として採用が確定している割合)比較[6月時点]

*採用が確定している人はいない

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1-4. 学生は採用広報解禁前にエントリー先の半数を決めている

14.1%

13.0%

10.2%

12.0%

10.3%

8.4%

10.8%

10.3%

9.2%

10.9%

11.2%

11.0%

6.8%

6.4%

7.1%

11.6%

12.0%

13.1%

6.3%

6.6%

7.4%

8.1%

8.8%

9.3%

9.8%

9.7%

10.6%

5.4%

5.8%

5.5%

4.2%

6.0%

8.3%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

19年卒

(6/15時点)

20年卒

(6/15時点)

21年卒

(6/1時点)

0割 1割 2割 3割 4割 5割 6割 7割 8割 9割 10割

これまでのエントリー総数を10割としたとき、2月末までにエントリーすると決めていた企業は何割くらいありましたか(6月時点)

45.4%

48.9%

54.2%

学生は採用広報解禁前にエントリー先の半数を決めている

採用広報解禁前である2月末までに、エントリー先の半数を決めている割合は2人に1人となっている。就職先選定をインターンシップ期間のうち(2月末まで)に行う傾向が見られる。

「エントリー総数を10割とした時、2月末までにエントリーすると決めていた企業の割合」出所:マイナビ2021年卒大学生活動実態調査(6月実施)

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1-5. インターンシップに参加する目的

インターンシップの参加目的は「どの業界を志望するか明確にするため」と回答する割合が約7割

回答結果より、学生は将来の職業選択にあたり、自分がどのような仕事に就きたいかを考える機会としてインターンシップを活用しようと考えていることがわかる。

0.6%

1.7%

8.7%

12.5%

15.6%

19.3%

33.9%

39.9%

43.2%

48.2%

54.5%

61.8%

64.2%

72.3%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%

その他

単位を取得するため(必修の授業だから、も含む)

人脈を広げるため

自己PRのために企業に話せるネタを作りたいから

自分の専攻が社会で役に立つか知るため

自分の力を試すため

志望企業や志望業界で働くことを経験するため

就職活動に有利だと考えたため

仕事に対する自分の適性を知るため

特定の企業のことをよく知るため

自分が何をやりたいのかを見つけるため

どの職種を志望するか明確にするため

視野を広げるため

どの業界を志望するか明確にするため

8月(n=5,973)インターンシップの参加目的(複数回答)

「インターンシップの参加目的(複数回答)」出所:マイナビ2022年卒大学生 インターンシップ・就職活動準備実態調査(8月実施)

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1-6. コロナ禍によりオンラインのインターンシップが拡大

2022年卒学生のインターンシップ参加者のうち、約7割はオンラインのインターンシップを経験している

新型コロナウイルス感染拡大を契機に、今年はオンラインのインターンシップが広がりを見せている。

「(インターンシップ参加者)参加したインターンシップの開催形式(複数回答)」出所:マイナビ2022年卒大学生 インターンシップ・就職活動準備実態調査(8月実施)

【インターンシップ参加者】参加したインターンシップの開催形式(複数回答)

73.9%

7.3%

18.8%

70.2%

17.4%

29.2%

0%

30%

60%

90%

WEBのみ

(対面なし)

対面とWEB 対面のみ

(WEBなし)

7月(n=1,117) 8月(n=3,229)

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7.0%

25.6%

26.5%

38.1%

38.9%

39.8%

43.7%

53.1%

56.6%

69.6%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%

参加者同士がアイデアや結果を競う「ビジネスコンテスト型」

若手社員に限定して話せる「若手社員インタビュー型」

社会人の基本や将来に役立つ内容のセミナーがメインの「就活準備講座型」

働いている社員と話せる「社員インタビュー型」

架空の課題や問題解決に挑む「グループディスカッション・グループワーク型」

実際の業務と同等の課題やタスクに取り組む「シミュレーション型」

企業や業界について知識を深める「座学講座型」

業務を疑似的に体験する「ロールプレイング型」

現場を社員の説明で見学する「職場見学型」

現場の社員に交じって業務を体験する「同行体験型」

8月(n=6,128)参加したいインターンシップの内容(複数回答)

1-7. 学生はインターンシップで“体験”を求めている

学生が参加したいインターンシップ内容は「同行体験型」、「職場見学型」などの“実体験”型

2022年卒学生に、参加したいインターンシップの内容を聞いたところ、「現場の社員に交じって業務を体験する『同行体験型』」が69.6%と最も多くなり、「現場を社員の説明で見学する『職場見学型』」が56.6%で続いた。

「参加したいインターンシップの内容(複数回答)」出所:マイナビ2022年卒大学生 インターンシップ・就職活動準備実態調査(8月実施)

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1-8. オンラインのインターンシップと対面形式のインターンシップの差

オンラインインターンシップは“体験”の面で課題あり

インターンシップの内容について、開催形式によらず「グループディスカッション・グループワーク型」や「座学講座型」は多いものの、“体験”型の内容については、オンライン形式では対面形式ほど実施されていないことがわかる。学生が求める内容とのギャップが生じている。

「(最もよい印象を持ったインターンシップの本プログラムについて)開催形式別 本プログラム(就業体験)の内容(複数回答)」出所:マイナビ2022年卒大学生 インターンシップ・就職活動準備実態調査(8月実施)

2.2%

7.1%

11.3%

20.1%

24.2%

30.3%

20.7%

26.2%

35.2%

40.9%

1.9%

9.5%

11.9%

16.4%

19.8%

24.9%

25.8%

35.3%

35.3%

43.7%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

参加者同士がアイデアや結果を競う「ビジネスコンテスト型」

社会人の基本や将来に役立つ内容のセミナーがメインの「就活準備講座型」

若手社員に限定して話せる「若手社員インタビュー型」

現場の社員に交じって業務を体験する「同行体験型」

現場を社員の説明で見学する「職場見学型」

業務を疑似的に体験する「ロールプレイング型」

働いている社員と話せる「社員インタビュー型」

実際の業務と同等の課題やタスクに取り組む「シミュレーション型」

企業や業界について知識を深める「座学講座型」

架空の課題や問題解決に挑む「グループディスカッション・グループワーク型」

8月WEB(n=450) 8月対面(n=287)

【最もよい印象を持ったインターンシップの本プログラムについて】開催形式別本プログラム(就業体験)の内容(複数回答)

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1-9. インターンシップの課題と調査目的

インターンシップの現状(1-1~1-8)より、インターンシップが企業・学生の間に広く浸透しており、入社先選定および企業における採用充足率に寄与していることは明らかである。

量的拡大が確認されている一方で、学生・企業双方にとっての「インターンシップの質の向上」が課題になっている。

背景として、採用スケジュールの短期化により、企業が採用広報解禁前の企業認知にのみ重きを置くような「学生の職業観涵養につながらないインターンシップ」が問題視されていることが挙げられる※1。

また、新型コロナウイルス感染拡大を背景に広がっているオンライン形式のインターンシップについても、上記懸念は変わらない。学生の求めるものとの乖離を埋めるためにも、開催形式に関わらず、学生にとって有益なインターンシップを実施することが求められる。

新常態においても通用するような、学生にとっての職業意識の醸成と、企業認知を通して自社を入社先候補として考えてもらうことを両立させられるインターンシップを実施するには、どのようなポイントを押さえればよいのだろうか。

本調査では、『どのようなインターンシップであれば、実際に学生の入社意思を高め、かつ、学生の職業観を醸成できるのか』について、新卒入社後3年以内の社会人に対して調査をすることで明らかにすることを目的とした。

加えて、調査から見えた「学生・企業双方にメリットのあるインターンシップの特徴」を含む事例を紹介することで、今後社会的意義のあるインターンシップが広がることを狙いとする。

インターンシップの課題と調査目的

※1 出所: 三省合意文書(文部科学省、厚生労働省、経済産業省 「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」

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2. サマリー

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2-1.学生・企業の双方にメリットのあるインターンシップ<概要>

就職活動でその企業の選考を受験した

そのインターンシップ先に入社したい

インターンシップ経験に満足している

職業意識が醸成されたと実感している

インターンシップから見える仕事の重要度を認識している

問題の解決に必要なアドバイスや情報を与えてもらった

自分の長所・短所や適性、能力について振り返る機会があった

就業体験内容についてのフィードバックをもらえた

具体的な仕事内容の説明があった

話を聞いてもらったり、相談にのってもらったりした

サポート

仕事の具体的な理解

振り返り機会

学生・企業の双方にメリットのあるインターンシップとは、「サポート」、「仕事の具体的な理解」、「振り返りの機会」の3ポイントが押さえられたインターンシップである。

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(a)インターンシップから見える仕事の重要度を認識してもらうこと(b)問題の解決に必要なアドバイスや情報を与えること(c)何か問題に当たった際に、話を聞いたり、相談にのること(d)具体的な仕事内容の説明をすること

⇒学生がインターンシップ経験に満足するには、インターンシップから見える仕事の重要度も含めた「仕事の具体的な理解」とインターンシップで関わる人からの情報面・情緒面での「サポート」が必要である。

(a)インターンシップから見える仕事の重要度を認識してもらうこと(b)問題の解決に必要なアドバイスや情報を与えること(e)就業体験内容についてのフィードバックをすること(f)学生が自身の長所・短所や適性、能力について振り返ることができる機会を作ること

⇒学生が職業観の醸成を実感するには、インターンシップから見える仕事の重要度も含めた「仕事の具体的な理解」と、インターンシップで関わる人からの特に情報面での「サポート」、学生自身の能力や特性を客観的に把握することのできる「振り返り機会」が必要である。

学生自身がインターンシップ経験に満足ができる、または職業観の醸成を実感できるインターンシップである。

15

2-2.学生・企業の双方にメリットのあるインターンシップ<詳細>

①インターンシップの満足度を高めるインターンシッププログラムのポイント

②職業観が醸成されたことを実感できるインターンシッププログラムのポイント

就職活動において選考受験および入社したいという意思につながるインターンシップ

就職活動において就職先候補となるには、インターンシップにおいて「仕事の具体的な理解」、「サポート」、「振り返り機会」の3点を押さえて、学生の満足度を高めること・将来の働き方への考えを深めるきっかけを与えることが必要である。

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2-2.開催形式別事例(対面形式)

第3回「学生が選ぶインターンシップアワード」大賞プログラムの事例

出所1:第3回「学生が選ぶインターンシップアワード」生和コーポレーション株式会社 大賞受賞企業インタビュー(インターンシップアワード 公式HP)

出所2:「学生が選ぶインターンシップアワード」大賞企業に聞く!プログラム設計のポイント【限定公開】(新卒採用サポネット)

▼出所1 ▼出所2

【仕事の具体的理解】プログラム事例

■職場体験を通した実践的な設計手法の習得機会の提供

■モデルルームや工事現場等リアルな職場見学

■実際のクライアントからの課題に対して、現地調査、コンセプト立案、資料作成、コンペ形式のプレゼンテーションを行う

⇒授業では体験できない実地での学びやクライアント・現場社員の声を聞くことで仕事への理解が一層深まる

【サポート】プログラム事例

・目標管理シートを導入し、学生毎に毎日の目的・目標の確認とメンターと振り返り

・留学や進学など、学生の目的毎のキャリア教育学生毎の支援

・希望職種のメンターからの取り組みに対するサポートやフォロー

⇒学生毎の目的達成のためのテクニカル・メンタル両面のサポートが肝要

職業意識の醸成実感

インターンシップ経験満足度

仕事の具体的理解

振返り機会サポート

生和コーポレーション株式会社「100年先のまちづくり」(10日間)

【振り返り機会】プログラム事例

■「グループに対する口頭でのフィードバック」「個人に対する口頭と書面の両方のフィードバック」と丁寧なフィードバック

■インターンシップ後のフォローアップとして、社員・参加学生からのフィードバックを振り返る機会・学びを言語化する機会

⇒インターンシップを通した自身の変化・成長に気付くことで、今後の学習や進路選択への学びにつながる

⇒個別フィードバックが肝要

10日間でリアルなまちづくりの模型の提案までを行うプログラムであった。仕事の具体的理解、サポート、振返り機会すべての要素が含まれている。学生個々人の目標設定・丁寧なフィードバックを行う仕組みが特に秀でていた。

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2-2.開催形式別事例(オンライン形式)

出所1:WEB開催のインターンシップに最もよい印象を持った理由(自由記述):「マイナビ2022年卒大学生 インターンシップ・就職活動準備実態調査KH Coder を用いて多次元尺度構成法で分析(n=201)

WEB形式のインターンシップに最もよい印象を持った理由(自由記述)

振返り機会

仕事の具体的理解

サポート

実際の業務課題を改善する企画を考える際に、グループの作業が滞ってしまった。その時に、メンターの方が考えるヒントを与えてくださり、質問をしながらワークをうまく進めることができたから。(文系男子、1日、現場での仕事体験・仕事のシミュレーション体験、薬品・化粧品業界)

実際に用いている教育設備で発電所の機器等の説明があった。また、シミュレーターを用いた訓練の様子なども拝見できた。ワークショップでは、災害復旧計画の立案や報告書の作成を行い、社員の方に採点していただきフィードバックをもらったことで、その会社の理念や熱意など文面だけではわからないことが感じ取れた。質問する機会をたくさん設けてもらい、抱いていた疑問点も解消できたから。(理系男子、1週間、職場見学・業務の趣味レーション体験・グループワーク、電力・ガス・エネルギー業界)

オンライン形式のインターンシップで学生がよい印象を抱くもののポイントは、①対面と変わらずサポートやフォローがあり、質疑応答など双方向のコミュニケーションがあるもの、②WEBでも実際の仕事体験ができ、社員の雰囲気が感じられるもの、③丁寧なフィードバックがあるもの、であった。

画面越しでも社員の関係、雰囲気が良いことがわかった。グループワーク・プレゼン後のフィードバックを一人一人にしっかり頂くことができ、企画立案の難しさをしっかり感じられた。(文系女子、半日、実際の仕事のシミュレーション体験、介護・福祉サービス業界)

以下、自由記述より抜粋

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3. データ編

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調査手法インターネット調査(本調査)

標本抽出(対象者条件) ・対象:4年制大学卒もしくは大学院卒者のうち、社会人歴が3年以内の正社員

エリア 全国

回収数

設問ボリューム 本調査:61問

n 1年目 2年目 3年目

全体 1562 493 514 555

北海道 114 34 33 47

東北 147 45 51 51

関東 324 104 109 111

甲信越 95 21 36 38

北陸 76 19 23 34

東海 172 60 56 56

関西 255 97 80 78

中国 130 35 46 49

四国 90 28 25 37

九州 159 50 55 54

(サンプル)

3-1.調査仕様

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インターンシップ経験に満足している

そのインターンシップ先に入社したい

就職活動でその企業の選考を受験した

職業観が醸成されたと実感している

以下、将来を考える上で最も影響を受けたインターンシップについて

(1)「就職活動でそのインターンシップを実施した企業の選考を受験(選考受験)」することと「その企業へ入社したいと思う(入社意思)」ことの関係を単回帰分析で確認した。

(2)「入社意思」と「インターンシップの満足度」、「職業観の醸成実感」の関係を重回帰分析で確認した。

(3)「インターンシップの満足度」、「職業観の醸成実感」それぞれについて、インターンシップ要素との関係を重回帰分析で確認した。

「就職活動でその企業の選考を受験した」:将来を考える上で最も影響を受けたインターンシップに参加して、その企業の選考を受けたかどうかを聴取。「そのインターンシップ先に入社したい」:将来を考える上で最も影響を受けたインターンシップに参加して、その企業に入社したいと思ったかどうかを聴取。「インターンシップ経験に満足している」:将来を考える上で最も影響を受けたインターンシップに参加して、インターンシップ経験に満足しているかどうかを聴取。「職業観が醸成されたと実感している」:将来を考える上で最も影響を受けたインターンシップに参加して、インターンシップ経験を経て自身に生じた以下の変化を聴取し、主成分分析ののち第一因子のみを分析対象とした。・自分に合う仕事・合わない仕事など、職業適性が分かった・その仕事で必要とされるスキルや知識が分かった・ 「仕事・働くこと」に対する意欲が高まった・自分の長所・短所が理解できた・やりたい仕事や業界・企業のイメージが明確になった・興味のある仕事や業界・企業の幅が増えた・ひろがった・就職活動をする上で、周りの人に相談をしたり援助を求めていこうと思った「インターンシップ要素」:関わる人(10項目)、プログラム自由度(6項目)、スキル多様性(6項目)、仕事の重要度理解(1項目)、サポート(4項目)、フィードバック(3項目)、事前説明(15項目)、振り返り機会(1項目)を聴取。

3-2.検証プロセス

インターンシップ要素

(1)

(2) (3)

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そのインターンシップ先に入社したい

就職活動でその企業の選考を受験した

.34**

「選考受験」と「入社意思」の関係

「そのインターンシップを実施した企業の選考を受験する」ことに対して、「その企業へ入社したいと思う(入社意思)」は有意に影響していた。

3-3.選考受験につながるインターンシップとは

■単回帰分析・目的変数|選考受験・説明変数|入社意思・表中の数値:標準偏回帰係数(0.1以上を抜粋)※小数点以下第三位を四捨五入・調整済みR2値=.11・* :5%水準で有意・**:1%水準で有意・n=705

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3-4.入社意思につながるインターンシップとは

職業観が醸成されたと実感している

そのインターンシップ先に入社したい

インターンシップ経験に満足している

.22**

.31**

「入社意思」と「インターンシップの満足度」、「職業観の醸成実感」の関係

「入社意思」に対して、「インターンシップ経験への満足度」および「職業観の醸成実感」は有意に影響していた。また、満足度と職業観の醸成実感は相関関係にあった。

.54**

■重回帰分析・目的変数|入社意思・説明変数|満足度、職業観の醸成実感・表中の数値:標準偏回帰係数(0.1以上を抜粋)※小数点以下第三位を四捨五入・調整済みR2値=.22・* :5%水準で有意・**:1%水準で有意・n=711■相関分析・説明変数|職業観の醸成実感、満足度・n=711

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インターンシップ経験に満足している

インターンシップから見える仕事の重要度を認識している

問題の解決に必要なアドバイスや情報を与えてもらった

.16**

.14**

.16**

具体的な仕事内容の説明があった

話を聞いてもらったり、相談にのってもらったりした

.11**

■重回帰分析・目的変数|満足度・説明変数|インターンシップ要素・表中の数値:標準偏回帰係数(0.1以上を抜粋)※小数点以下第三位を四捨五入・調整済みR2値=.38・* :5%水準で有意・**:1%水準で有意・n=711

3-5.満足度につながるインターンシップとは

満足度には、「仕事の重要度を認識していること」、「問題の解決に必要なアドバイスや情報を与えてもらうこと」が特に有意に影響している。次いで、「話を聞いてもらったり、相談にのってもらうこと」、「具体的な仕事内容の説明があること」も有意に影響している。インターンシップから見える仕事の重要度も含めた『仕事の具体的な理解』と情報面と情緒面での『サポート』が、インターンシップ経験の満足度に影響しているといえる。

「満足度」と「インターンシップ要素」の関係

サポート仕事の具体的な理解振り返り

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職業観が醸成されたと実感している

インターンシップから見える仕事の重要度を認識している

問題の解決に必要なアドバイスや情報を与えてもらった

.17**

.17**

.17**

自分の長所・短所や適性、能力について振り返る機会があった

就業体験内容についてのフィードバックをもらえた

.16**

■重回帰分析・目的変数|職業観の醸成実感・説明変数|インターンシップ要素・表中の数値:標準偏回帰係数(0.1以上を抜粋)※小数点以下第三位を四捨五入・調整済みR2値=.38・* :5%水準で有意・**:1%水準で有意・n=711

3-6.職業観の醸成実感につながるインターンシップとは

職業観の醸成実感には、「仕事の重要度を認識していること」、「問題の解決に必要なアドバイスや情報を与えてもらうこと」、「業務内容についてのフィードバックがあること」、「自己特性について振り返る機会があること」が有意に影響している。学生が職業観の醸成を実感するには、インターンシップから見える仕事の重要度も含めた『仕事の具体的な理解』と、インターンシップで関わる人からの特に情報面での『サポート』、学生自身の能力や特性を客観的に把握することのできる『振り返り機会』が必要である。

「職業観の醸成実感」と「インターンシップ要素」の関係

サポート仕事の具体的な理解振り返り