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2007年3月20日に最初の症例が報告されたシャンティ・ウイルスは、恐るべきスピードで広まっていった。世界人口93%が犠牲となり、生き残った一握りの人間たちは隔離施設に身を潜めていた。
ウイルスによって荒廃してしまった未来の世界。国土安全保障省の高官ハワード・ルメイは、その現実の中の一人だった。
隔離CHAPTER 58
ウイルスは、急速に広まっていた。…パラノイア、不条理、恐怖と一緒に。
これ以上市内にとどまっていられない。
アメリカの巨大都市で、発展途上国の伝染病と同じようにウイルスが蔓延した。恐ろしいことだ…
ウイルスを止めようとしてから、1ヶ月。…地域ごと隔離するのもこれで3度目だ。
だが、これが最後になるはずだ。もうすでに大半は重症で、死んだか、死にかけている…。自分たちが生きていること自体、奇跡なのだ。
ウイルスの拡散をくい止めるため自分はCDC(疾病予防管理センター)のピッツバーグ事務局に出向していた。…そのとき、非常事態宣言が発令された。
国土安全保障省
ルメイ
ハワード
CDCは、各地に隔離施設を開設していったが、ウイルスはそれを次 と々侵していった。
聞いた話では、デトロイト郊外にある施設は、まだ未感染だという…私たちは今そこに向かっている。
もうすぐ着くよ。二人ともずい分よく眠っていたから。
ここはどこ?
おなか痛い…
大丈夫、お腹がすいているだけよ。
施設に着くまで止まるべきじゃないんだが、ガソリンを入れないと。
良かった。ついでに食べ物も調達しよう。
ここにいるんだ。中に入って、ポンプのスイッチを入れてくるよ…
食べ物もね!
気をつけて!
感染してないのか?
なにを…
国土安全保障省?ここで何してるんだ?
空気感染するウイルスが全土に流行している。
隔離されていない街は全て、避難済みか、破壊されたかだ。
…だが、一ヶ所だけ…
私は感染していない…私の名前はハワード・ルメイ。国土安全保障省の者だ。
答えろ、さもなければ、殺す。
どこに行くんだ? デトロイト郊外にある高校、隔離施設だ。
そうか。俺はディランだ。
乗せてもらおう。
そうさ。俺もここから出たいんだ。
選択の余地などないのだろうが…町で最初の症例が報告されたのが1ヶ月前…俺は感染が広がる前に町を離れた。生き残ったのは俺だけだ。
君こそどうなんだ?感染してないのか?
ここ10日間、誰にも会っていない…隔離されていたのも同然さ。
それでも検査を受ける必要がある。
どこでできる?
乗る?
国土安全保障省のハワード・ルメイだ。大丈夫か?
妻と息子だ。心配ない。こちらは知り合ったばかりだが…。
はい。同志に会えて感激です。ところで、ご同行の方は?
何か申告することはありますか?
了解しました。
ないよ。全員大丈夫だ。彼は私がすでに調べてある…
それでは、どうぞこちらへ。 ここが目的地のはずだった…
それなのに、この間違った感じは何だろう?
講堂に入ったら、まず検査を受けて下さい。その後、寝具、食料、衣料が支給されます。
先にいってくれ…私はアトランタへ連絡を入れてくる。
これは、救済地じゃない…死刑囚の監房だ…この中に、ウイルスが潜伏している人間がいたら…
無線機はあの角を曲がった所にあります…発電機の隣です。
あなた、早くね。
アトランタと無線が繋がるまでに2時間も要した。大流行が始まって以来、アトランタにはひっきりなしに連絡が入っていた…ウイルスは拡散している…
どうした…?!
助けて!助けて!助けて!
マスクをつけろ!全員!落ち着いて、マスクをつけるんだ!
ハワード?!ハワード!!!助けて…!
助けてちょうだい!助けてちょうだい!
隔離施設が感染…
置いていかないで…ウイルスよ…ここから出してちょうだい!
…お願いよ!
…できない…君は感染している。 でも…まだ感染
していないかもしれないわ!
だが、可能性が…
私は死にたくない…
私はあなたの妻なのよ!!!私はあなたの妻なのよ!!!私はあなたの妻なのよ!!!
ウイルスは触れたもの全てを破壊する。
まるで死の毛布のように覆いかぶさってくる。
長い潜伏期間を経てディランは発病した。誰が感染していても不思議じゃない…
私だって…