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focused on process simulation 1 / 13 ページ CHEMCAD は製品の切り替え時間を短縮します はじめに 1 つの生産設備で多様な製品を製造することをオペレーターが利点と感じるのは、何も 原料の転換や代替エネルギーに注目が集まるようになってからのことではありません。フ レキシブルな生産は事業にとって大切な要素です。設備のライフサイクルは 20 40 で変わりがないのに、製品のライフサイクルは短くなっています。それだけでなく、生産 に必要なリソースの種類、品質、価格、入手の可否はグローバル化された世界で次々と変 化していきます。そのため、生産がそのような変化に柔軟に対応できれば、経済的に有利 となります。 コンピュータを用いた生産プロセスの厳密なシミュレーションは、様々な原料生産のシ ナリオを短時間で解析し評価するのに役立ちます。その場合、熱力学的な制約や技術的な 制約が一貫して考慮されます。こうしたシミュレーションがなければ、莫大な費用と時間 のかかる生産設備による試験を新しいシナリオの分だけ評価する必要があるでしょう。通 常、試験をしている間は、設備を生産のために使うこともできません。 個々のシナリオについて、理想的に最適化された多様な生産設備の運転パラメータが既 知である場合、生産量の損失は、原料-製品の組み合わせが他のものに切り替わる場合のみ に起こります。この記事では、プロセスシミュレータ「CHEMCAD」による製品の切り替え 時間に起因する生産量損失の最小化を取り扱います。 油脂化学の具体的な事例を基に、最適な定常運転点の決定、未知の設備パラメータの推 定、製品濃度のような関連する状態量の追跡、などを CHEMCAD でどのように計算、解析、 最適化するか説明します。 油脂化学における事例 油脂化学産業は天然物やリサイクル材料を処理するものとして、古くからプロセスの原 料成分の変動に直面してきました。下流側プロセスのための安定したフィード条件を実現 するには、上流に蒸留設備を設置して、原料油成分の大きな変動を所定の範囲に制限でき ることが重要になります。 このような蒸留設備が本研究の対象となります。表 1 に様々な原料油の成分を示します。 純粋な原料油でも広い成分組成を示すことがわかります。混合油やリサイクル油を用いる と、組み合わせの可能性がさらに広がります。

CHEMCAD は製品の切り替え時間を短縮します on process simulation 1 / 13 ページ CHEMCAD は製品の切り替え時間を短縮します はじめに 1 つの生産設備で多様な製品を製造することをオペレーターが利点と感じるのは、何も

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focused on process simulation

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CHEMCAD は製品の切り替え時間を短縮します

はじめに

1 つの生産設備で多様な製品を製造することをオペレーターが利点と感じるのは、何も

原料の転換や代替エネルギーに注目が集まるようになってからのことではありません。フ

レキシブルな生産は事業にとって大切な要素です。設備のライフサイクルは 20 年 ~ 40 年

で変わりがないのに、製品のライフサイクルは短くなっています。それだけでなく、生産

に必要なリソースの種類、品質、価格、入手の可否はグローバル化された世界で次々と変

化していきます。そのため、生産がそのような変化に柔軟に対応できれば、経済的に有利

となります。

コンピュータを用いた生産プロセスの厳密なシミュレーションは、様々な原料生産のシ

ナリオを短時間で解析し評価するのに役立ちます。その場合、熱力学的な制約や技術的な

制約が一貫して考慮されます。こうしたシミュレーションがなければ、莫大な費用と時間

のかかる生産設備による試験を新しいシナリオの分だけ評価する必要があるでしょう。通

常、試験をしている間は、設備を生産のために使うこともできません。

個々のシナリオについて、理想的に最適化された多様な生産設備の運転パラメータが既

知である場合、生産量の損失は、原料-製品の組み合わせが他のものに切り替わる場合のみ

に起こります。この記事では、プロセスシミュレータ「CHEMCAD」による製品の切り替え

時間に起因する生産量損失の最小化を取り扱います。

油脂化学の具体的な事例を基に、最適な定常運転点の決定、未知の設備パラメータの推

定、製品濃度のような関連する状態量の追跡、などを CHEMCAD でどのように計算、解析、

最適化するか説明します。

油脂化学における事例

油脂化学産業は天然物やリサイクル材料を処理するものとして、古くからプロセスの原

料成分の変動に直面してきました。下流側プロセスのための安定したフィード条件を実現

するには、上流に蒸留設備を設置して、原料油成分の大きな変動を所定の範囲に制限でき

ることが重要になります。

このような蒸留設備が本研究の対象となります。表 1 に様々な原料油の成分を示します。

純粋な原料油でも広い成分組成を示すことがわかります。混合油やリサイクル油を用いる

と、組み合わせの可能性がさらに広がります。

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表 1: 再生可能な原料からなる様々な油脂の組成

不飽和脂肪酸 単純飽和 多重飽和

慣用名 カプリル酸 カプリン酸 ラウリン酸 ミリスチン酸 パルミチン

酸 ステアリン酸 アラキン酸 オレイン酸 リノール酸 リノレン酸

CAS 番号 124-07-2 334-48-5 134-07-7 544-63-8 57-10-3 57-11-4 506-30-9 112-80-1 60-33-3 463-40-1

CHEMCAD

ID 540 545 890 902 912 550 1534 549 548 1529

オイルタイプ C8:0 C10:0 C12:0 C14:0 C16:0 C18:0 C20:0 C18:1 C18:2 C18:3

アーモンド油 7,0% 2,0% 69,0% 17,0%

ココナッツ油 8,3% 6,0% 46,7% 18,3% 9,2% 2,9% 6,9% 1,7%

ココナッツバター 25,0% 38,0% 32,0% 3,0%

オリーブ油 11,0% 3,6% 75,3% 9,5% 0,6%

パーム油 0,1% 0,1% 0,9% 1,3% 43,9% 4,9% 39,0% 9,5% 0,3%

紅花油 0,3% 5,5% 1,8% 0,2% 79,4% 12,9%

しかし 2 つの連続蒸留塔を用いると、それぞれの脂肪酸の組成分布を絞りこむことがで

きます。このプロセスでは、第 1 の蒸留塔では不要な低沸成分が、第 2 の蒸留塔では不要

な高沸成分が分離されます。

図 1 は、このような 2 段式蒸留システムのフローチャートを示しています。

図 1: フィード油処理の 2 段式蒸留システムのフローチャート

focused on process simulation

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2 つの異なる組成の原料油から、蒸留によってそれぞれのプロダクト組成を得ることを

目的とします。フィードストックからの重油とその制限が表 2 にまとめられ、軽油の場合

に対応するデータが表 3 にまとめられています。

表 2: 第 1 の原料生産シナリオ(重油)のフィード組成およびプロダクト仕様

フィード プロダクト

量 10 m³/h 下限 上限

C8 0.01%以下 - 0.1%

C10 0.01%以下 - 0.1%

C12 1.6% - 0.5%

C14 0.9% - 0.5%

C16 10.3% - 60.0%

C18 75.7% 96.0% -

C20 11.5% - 30.0%

値は質量パーセント

表 3: 第 2 の原料生産シナリオ(軽油)のフィード組成およびプロダクト仕様

フィード プロダクト

量 10 m³/h 下限 上限

C8 5.0% - 0.1%

C10 10.0% - 2.0%

C12 40.0% 50.0% -

C14 20.0% 15.0% 28.0%

C16 13.0% 6.0% 14.0%

C18 12.0% 4.0% 14.0%

C20 0.01%以下 - 0.1%

値は質量パーセント

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運転条件の最適化

蒸留塔の圧力を一定にすると、塔ごとに独立変数が 2 つ残ります。この例では、還流比

とリボイラー熱負荷を設計変数としています。これらの変数に対する技術的な限界は、コ

ンデンサーとリボイラーの伝熱面積に起因します。ここでは標準的なケースを仮定してい

ます。熱交換器の容量が蒸留塔の負荷容量に対して大きな制限となっており、最適化を実

現するためにリボイラー負荷とコンデンサーの冷却能力の限界について考慮する必要があ

ります。これらの限界と制約条件を表 4 にまとめています。また、システムの条件につい

ては表 5 を参照してください。

表 4: 最適化に関するシナリオの定義

限界と制約条件

設計変数 下限 上限

還流比

塔 1 (R/D 1) 0.1 20

リボイラー熱負荷

塔 1 (QR 1) 0.3 MW 3 MW

還流比

塔 2 (R/D 2) 0.01 20

リボイラー熱負荷

塔 2 (QR 2) 50 kW 500 kW

制約条件

塔 1 のコンデンサーの

冷却能力 QC1 ≤ 3 MW

塔 2 のコンデンサーの

冷却能力 QC2 ≤ 500 kW

ここでは最適化する運転条件として、プロダクトフローが最大になる運転点を取上げて

います。従って、フィード費用に対する設備費用は無視されます。

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表 5: 図 1 の 2 段式蒸留システムの特性

特徴 蒸留塔 1 蒸留塔 2

単位操作 ID 4 5

フィード ID 3 5

塔頂留出 ID 4 7

塔底缶出 ID 5 6

圧力 35 mbar (a) 10 mbar (a)

段数 18 6

フィード 段 12 6

塔モデル 厳密 (SCDS)

トレイモデル 平衡段 (EQ)

EQ-熱力学(K 値) UNIFAC

H-熱力学 潜熱

最適化のために、CHEMCAD に統合された「プロセスオプティマイザー」が用いられます。

これは最大 120 の独立変数と 120 の制約条件を考慮することができます。CHEMCAD は逐次

2 次計画法(SQP 法)、同時 SQP 法、「簡約勾配(GRG)」法による最小化を提供しています。

「同時(simaltaneous)」とは、フローシートが同時に(つまり等しい方向に)解かれ、反復

しないことを意味しています。課題であるフローシートはリサイクルフローを含んでいな

いため、SQP 法と同時 SQP 法は同じ結果となります。ここで記載している最適シナリオは

SQP 法によって導出されたものです。

最適化計算の結果は図 2 および図 3 に記載されています。原料が重油の場合、フィード

質量の 38 %、製品質量の 48 %の C18 脂肪酸をそれぞれ含みます。原料が軽油の場合、フィ

ード質量の 48 %、製品の 63 %が C12 脂肪酸となります。最適な運転パラメータを表 6 に

示します。

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図 2: 最適化されたシナリオ「原料・重油」プロセスにおける原料組成の変化

図 3: 最適化されたシナリオ「原料・軽油」プロセスにおける原料組成の変化

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

10000

Feed SumpfKolonne 1

KopfKolonne 2

質量流量

kg/h

C20 C18 C16 C14 C12 C10 C8

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

10000

Feed SumpfKolonne 1

KopfKolonne 2

質量流量

kg/h

C20 C18 C16 C14 C12 C10 C8

フィード 塔底製品

蒸留塔 1

フィード

塔頂製品

蒸留塔 2

フィード

塔頂製品

蒸留塔 2

フィード

塔底製品

蒸留塔 1

フィード

フィード

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表 6: 最適条件における運転シナリオの設計変数値と制約条件の状態

シナリオ

設計変数 原料・重油 原料・軽油

還流比

塔 1 (R/D 1) 10.8 2.6

リボイラー熱負荷

塔 1 (QR 1) 3 MW 2.03 MW

還流比

塔 2 (R/D 2) 0.65 0.01

リボイラー熱負荷

塔 2 (QR 2) 286 kW 364 kW

制約条件

塔 1 のコンデンサーの

冷却能力 QC1 1.6 MW 0.99 MW

塔 2 のコンデンサーの

冷却能力 QC2 500 kW 500 kW

第 2 蒸留塔の塔頂コンデンサーの冷却能力に制限がなければ、両方のシナリオでより高

い生産量を達成することができると考えられます。このように最適化の計算はボトルネッ

ク箇所に具体的な示唆、つまりどのように設備を修正すれば生産の改善に繋がるかを与え

てくれます。この場合、第 2 蒸留塔のコンデンサーの最大冷却能力を高めること、例えば

冷却水の供給温度を下げる、熱交換器を加えるなどです。

原料・製品の切り替え

軽油製品から重油製品への切り替えをシミュレーションするには、(質量およびエネル

ギーの)保持時間を考慮する必要があります。配管部の体積は各蒸留塔段と熱交換器(塔

頂コンデンサーとリボイラー)の体積に対して非常に小さく無視できるとすると、定常と

して考察したフローシートを変更せずに、ダイナミックなフローシートに変換することが

できます。しかし蒸留塔の保持性能を正確に再現するには、さらに仮定とデータを追加す

る必要があります。塔頂コンデンサーおよび塔底リボイラーについて、安定した液位制御

focused on process simulation

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があるとすれば、液量を定常として扱えます。蒸留塔の直径は、CHEMCAD に統合されたサ

イジングツールを用いると、フラッディング点の計算に基づいて算出できます。各トレイ

の液位を計算するには、さらに幾何学的なデータが必要です。その場合も、CHEMCAD のサ

イジングツールがパラメータの決定に役立ちます。ダイナミックシミュレーションに関連

する 2 つの蒸留塔の幾何学的パラメータは表 7 にまとめてあります。

表 7: ダイナミックシミュレーションのための幾何学的パラメータ

特徴 蒸留塔 1 蒸留塔 2

単位操作 ID 4 5

直径 3.96 m 2.44 m

塔底距離 0.61 m 0.61 m

コンデンサー・還流タンクの液量 1.0 m³ 0.5 m³

コンデンサー・底の液量 2.0 m³ 1.0 m³

塔底ドレーンの幅 0.22 m 0.22 m

堰の高さ 0.05 m 0.05 m

生産切り替えの最も簡単な保存的戦略は、新たなフィードが安定する状態まで待ち、運

転パラメータを新しい原料・製品シナリオの最適なパラメータに切り替えるというもので

す。フィードの切り替えは 6 分後に始まり、10 分かかります。その切り替えの間のフィー

ド組成変化を図 4 に表示します。単純な保存的戦略に従った場合の製品組成の時間的推移

は、図 5 に示します。システムは約 250 分後に定常となります。

運転パラメータの切り替えは、パラメータを急激に変化させることなく、またオペレー

ターに介入の可能性を残すために、30 分かけてランプコントローラー(RAMP)を用いて

行われます。この戦略により、軽油の製品仕様は 318 分後に達成されます。

focused on process simulation

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図 4: 原料油が変化した場合のフィード組成の時間的推移

図 5: 単純な保存的対策を適用した場合のプロダクト組成の時間的推移

ランプコントローラーの起動が、フィード切り替え開始時点で為されたとすれば、製品

仕様の達成までの時間を 213 分に短縮することができます。このような戦略は、計画的な

製品切り替えにおいて特別なことではありません。製品中の各成分の質量分率の推移を図

6 に示します。

0,0

0,1

0,2

0,3

0,4

0,5

0,6

0,7

0,8

0,9

1,0

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

フィードの質量分率組成

時間(分)

C8 C10 C12 C14 C16 C18 C20

0,0

0,1

0,2

0,3

0,4

0,5

0,6

0,7

0,8

0,9

1,0

0 50 100 150 200 250 300 350 400

プロダクトの質量分率組成

時間(分)

C8 C10 C12 C14 C16 C18 C20

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図 6: 単純な戦略を適用した場合のプロダクト組成の時間的推移

ダイナミックな最適化

CHEMCAD のプロセスオプティマイザーはダイナミックプロセスの最適化にも用いること

ができます。この例題では、プロダクト仕様を達成するまでの時間を最小にします。基準

としてランプコントローラーの設定値を選びます。よって、運転パラメータは上述の戦略

に従えば 1 度だけ変更することになります。

しかしこの制約を設けるだけでも、製品の切り替え時間は半分以上に短縮でき、93 分に

なります。プロダクト仕様が達成されると、システムは最適な運転パラメータに切り替わ

ります。

運転パラメータの推移を図 7 に、製品組成の推移を図 8 に示します。

CHEMCAD のエクセルインターフェイスを用いると、プロダクト仕様が満たされているか

モニタリング情報を表示できます。図 9 には、いつどの仕様が達成されたか、設計変数の

最適化過程全体で幾つの制約が破られたかを示します。

0,0

0,1

0,2

0,3

0,4

0,5

0,6

0,7

0,8

0,9

1,0

0 50 100 150 200 250 300

プロダクトの質量分率

時間(分)

C8 C10 C12 C14 C16 C18 C20

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図 7: 製品の切り替え時間を最小にした後の設計変数の時間的推移

図 8: 製品の切り替え時間を最小にした後の製品組成の時間的推移

図 9: 製品仕様の違約; 0: 仕様に準ずる濃度 1: 仕様に外れる濃度; All: 全成分の和

0

2

4

6

8

10

12

14

16

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

設計変数の値

時間(分)

R/D 1

QR 1 [MW]

R/D 2

QR 2 x 10 [MW]

0,0

0,1

0,2

0,3

0,4

0,5

0,6

0,7

0,8

0,9

1,0

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

製品中の質量分率

時間(分)

C8 C10 C12 C14 C16 C18 C20

0

1

2

3

4

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

アクティブな制約

時間(分)

C8 C10 C12 C14

C16 C18 C20 Alle

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図 9 から分かるように、最適パラメータに切り替わる際、3 分間はプロダクト仕様が達

成されません。この間、C18 脂肪酸の濃度は下限値の 4% を下回ります。このような影響を

避けるには、例えば、最適化の問題を別の方法で定式化します。このような短い時間の制

約違反が妥当か、それを考慮すべきかをケース毎に判断する必要があります。

また、製品切り替え時間を最小にするためのシナリオは、常にグローバルな最適化問題

とはなりません。設計変数についての目的関数(= 製品切り替え時間)の勾配を計算する

場合、その数値計算は差分商により行われます(差分方程式)。従って、差分商を作成す

る際のステップ幅の選択が、SQP 法によるローカルな最小値の決定において大きく影響し

ます。しかしながら、目的関数の数値的に正しい最小値を与えることが常に重大なわけで

はありません。製品の切り替え時間を削減することができれば、運転にとっては十分です。

グローバルな最適化と Process Simulation Cup

設計変数を追加して最適化を行うと製品の切り替え時間をさらに短縮することができま

すが、最適化問題はより複雑になります。OTS(Operator Training System)モードを用いれ

ばランプコントローラーを完全に省くことができ、その代わりに還流コントロールバルブ

(R/D 1、R/D 2)とスチームの供給(QR 1 、QR 2)を時間的に自由に調整できます。

製品の切り替え時間はさらにどれだけ短縮できるでしょうか?設計変数を 1 つ以上とば

すことができれば、どれだけのポテンシャルを示すでしょうか?これらの問題に答えるの

が「Process Simulation Cup 2015」です。ここでの目的は、所定のプロセスに対する製品切

り替え時間のグローバルな最小値を見つけることです。以下のウェブサイトでとばした設

計変数の解を提出すると、すぐに計算された製品切り替え時間を得られます。

http://www.process-simulation-cup.com/

実際の事業を成功させるために

製品の切り替え時間を削減できるポテンシャルは、それぞれのシステムとそれぞれの原

料生産シナリオで異なります。また、例えば参照する形状データなど、ダイナミックなプ

ロセスモデルをどれほど詳細にするか考える必要があります。さらに、シミュレーション

結果と実際のシステムのデータを比較して、プロセスモデルを検証することを推奨します。

実際には、ダイナミックな最適化によって得た時間スケールを単純に置き換えることは通

常ありません。むしろ、特定の塔底温度のような切り替えの基準の実装に CC-DYNAMICS は

用いられます。このような新たな切り替えの基準に基づいて、オペレーターにとって最適

な運転スキームを見出します。

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これまで説明したような事業のために、Infraserv GmbH & Co. Knapsack KG と Chemstations

は協力し、適切なサービスを提供します。例えば、油脂化学分野の顧客企業のために、12

の原料生産シナリオについて製品切り替え時間を最小化し、投入される原料およびエネル

ギーを削減しました。

結論

CHEMCAD は、定常状態のシミュレーション、ダイナミックシミュレーション、プロセスの

最適化のあらゆるツールを 1 つのパッケージとして提供しています。プロセス最適化のた

めのツール(Process Optimizer)、装置サイジングのためのツール(Sizing Tool)、ダイナ

ミックシミュレーションのツール(CC-DYNAMICS)の完全な統合により、迅速かつ簡単な

シナリオの計算と改善提案の作成を実現します。設備オーナーとオペレーターに対して、

あらゆる局面で、Infraserv GmbH & Co. Knapsack KG がサポートとコンサルティングを提供し

ます。これまでにも、多くの顧客が生産の運転コストの大幅な削減を実現してきました。

CHEMCADの刊行物、チュートリアル、セミナー、その他のソリューションに興味を持たれ

ましたら、以下にご連絡ください。 連絡先: メール: [email protected] 電話 : +49 (0)30 20 200 600 www.chemstations.eu

本資料の著者:

Jan Schöneberger

Moritz Wendt