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第10章 プラント設備方針 新ごみ中間処理施設の処理方式として、今回絞り込みを行ったガス化溶融方式(流動床式)、ガ ス化溶融方式(シャフト炉式)(コークスベッド式)のプラント設備方針を以下に示す。 10.1 基本処理フロー ガス化溶融方式(流動床式)の基本処理フロー例を図 10-1 に示す。ガス化溶融方式(シャフト炉 式)(コークスベッド式)の基本処理フロー例を図 10-2に示す。 図10-1 主要設備の基本処理フロー図(ガス化溶融方式(流動床式)) 計量機 プラットホーム 投入扉 ごみピット(Wピット) ごみクレーン ごみ破砕機投入ホッパ ごみ破砕機 受入供給設備 破砕ごみホッパ 給じん装置 ガス化炉、溶融炉 助燃装置 ガス化溶融設備 押込送風機 空気予熱器 通風ダクト 通風設備 ボイラ及び関連設備 (脱気器、蒸気だめ、蒸気 復水器等) 燃焼ガス冷却設備 発電設備 蒸気タービン その他設備 余熱利用設備 減温塔 ろ過式集じん器 有害ガス除去設備 ダイオキシン類除去設備 排ガス処理設備 誘引送風機 排ガスダクト及び煙道 煙突 通風設備 スラグ冷却設備 スラグ貯留搬出設備 スラグ処理設備 処理対象ごみ スラグ搬出 (空気) 熱分解残渣選別設備 スラグ 溶融飛灰処理設備 前処理破砕機 (切断式) 破断破砕設備 不燃物排出装置 不燃物選別装置 砂循環装置 流動砂 流動砂 不燃物搬出 溶融飛灰処理設備 溶融飛灰処理物搬出 69

chukan hon 1011 - union-kamiina.jp · 図10-2 主要設備の基本処理フロー図(ガス化溶融方式(シャフト炉式)(コークスベッド式)) 計量機

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第10章 プラント設備方針 新ごみ中間処理施設の処理方式として、今回絞り込みを行ったガス化溶融方式(流動床式)、ガ

ス化溶融方式(シャフト炉式)(コークスベッド式)のプラント設備方針を以下に示す。

10.1 基本処理フロー

ガス化溶融方式(流動床式)の基本処理フロー例を図 10-1 に示す。ガス化溶融方式(シャフト炉

式)(コークスベッド式)の基本処理フロー例を図 10-2 に示す。

図 10-1 主要設備の基本処理フロー図(ガス化溶融方式(流動床式))

計量機プラットホーム

投入扉ごみピット(Wピット)

ごみクレーンごみ破砕機投入ホッパ

ごみ破砕機

受入供給設備

破砕ごみホッパ給じん装置

ガス化炉、溶融炉助燃装置

ガス化溶融設備

押込送風機空気予熱器通風ダクト

通風設備

ボイラ及び関連設備(脱気器、蒸気だめ、蒸気

復水器等)

燃焼ガス冷却設備

発電設備蒸気タービンその他設備

余熱利用設備

減温塔ろ過式集じん器有害ガス除去設備ダイオキシン類除去設備

排ガス処理設備

誘引送風機排ガスダクト及び煙道

煙突

通風設備

スラグ冷却設備スラグ貯留搬出設備

スラグ処理設備

処理対象ごみ

排 気

スラグ搬出 飛灰

(空気)

熱分解残渣選別設備

スラグ

溶融飛灰処理設備

前処理破砕機(切断式)

破断破砕設備

不燃物排出装置不燃物選別装置砂循環装置

流動砂

流動砂

不燃物搬出

溶融飛灰処理設備

溶融飛灰処理物搬出

69

図 10-2 主要設備の基本処理フロー図(ガス化溶融方式(シャフト炉式)(コークスベッド式))

計量機プラットホーム

投入扉ごみピット

ごみクレーン(副資材貯留・供給装置)

受入供給設備

ホッパ給じん装置

ガス化溶融炉燃焼室助燃装置

酸素・窒素発生装置

ガス化溶融設備

押込送風機空気予熱器通風ダクト

通風設備

ボイラ及び関連設備(脱気器、蒸気だめ、蒸気

復水器等)

燃焼ガス冷却設備

発電設備蒸気タービンその他設備

余熱利用設備

減温塔ろ過式集じん器有害ガス除去設備ダイオキシン類除去設備

排ガス処理設備

誘引送風機排ガスダクト及び煙道

煙突

通風設備

スラグ・メタル冷却設備スラグ・メタル貯留搬出設備

スラグ・メタル処理設備

処理対象ごみ

排 気

スラグ・メタル搬出 飛灰

(空気)

スラグ・メタル

溶融飛灰処理設備

前処理破砕機(切断式)

破断破砕設備

溶融飛灰処理設備

溶融飛灰処理物搬出

70

10.2 主要設備概要

主要設備は受入供給設備、ガス化溶融設備、燃焼ガス冷却設備、排ガス処理設備、余熱利用

設備、通風設備、スラグ・メタル処理設備、溶融飛灰処理設備等で構成される。

10.2.1 受入供給設備

受入供給設備は、搬入されるごみ量・搬出される焼却残渣量等を計量する計量装置、搬入・

退出車路、ごみ収集車がごみピットにごみを投入するために設けられるプラットホーム、ご

みを一時貯えて収集量と処理量を調整するごみピット及びごみピットからごみをホッパに投

入するごみクレーン等で構成される。なお、ごみの性状及び炉の形式によっては、溶融処理

のための前処理として破砕等の設備を設ける場合がある。

(1) 計量機

計量機は、搬入されるごみや搬出する副生成物の量、運搬車両種別・台数等を正確に把

握して施設の管理を合理的に行う目的で設置するものである。正確な情報の把握のために、

計量に際しては車両種別・台数にかかわらず、2回計量できるよう計量機を2基(入口1

基+出口1基)以上設置することを基本とする。

(2) プラットホーム

プラットホームは、ごみ収集・運搬車両による切り回しやごみピットへの投入作業が容

易かつ安全に行え、渋滞等をできる限り生じないようにスペースを確保する必要がある。

プラットホームの床幅は、安全性を考慮して 15m以上を基本とする。また、自動扉及び

現場手動にて速やかに開閉できるとともに、運搬車両の出入口にはエアカーテンを設ける

等、臭気の遮断を図り、保安上シャッター等で閉鎖できるようにする。

(3) ごみ投入扉

ごみ投入扉の設置基数は搬入車が集中する時間帯でも車両が停滞することなく円滑に投

入作業が続けられるよう搬入車の種類・収集計画等を勘案し、設計要領に示されている施

設規模別の扉基数の考えにより、投入扉の基数は3基以上を基本として設置する。また、

直接搬入車のごみ搬入を考慮して、ダンピングボックスを設置する。

クレーン操作室からのインターロックが可能な構造とし、ごみピット内を負圧として臭

気が外部に漏れるのを防ぐためにごみをピットに投入する時間以外は基本的に閉めた状態

とする。

(4) ごみピット

ごみピットの奥行きはクレーンの自動運転を考慮する観点から、クレーンバケット開き

寸法の 2.5 倍以上とすることが望ましい。ごみ汚水の浸出、外部からの地下水の浸入が発

生じないよう、水密鉄筋コンクリート構造とする。ごみピット内より臭気が外部に漏れな

いよう、建屋の密閉性を考慮する。

71

ごみピット容量は2章で試算したように処理能力の約9日分、5,300m3以上を基本とする。

(5) ごみクレーン

ごみクレーンは、ごみピット内の撹拌、ガス化溶融設備への供給、投入扉前からのごみ

の積替えを支障なく行える能力とする。また、クレーンは、点検・補修時にも施設を稼働

する必要があるため、2 基設置する。なお、クレーンは全自動運転を基本とするが、ごみ

搬入時間帯は、万一の転落事故等に対応するため、手動運転を行うことが望ましい。

バケットにはフォーク式とポリップ式があり(図 10-3 参照)、一般的には比較的小型の

施設にフォーク式が、大型の施設にポリップ式が採用されているが、方式については特に

指定せず提案によるものとする。

ポリップ式 フォーク式

図 10-3 ごみクレーンバケットの例

(出典)「設計要領」(社)全国都市清掃会議より

10.2.2 前処理設備

ガス化溶融設備における燃焼を安定させるため、ごみを供給する前に破砕する設備である。

処理方式・プラントメーカーによっては不要な場合もあるため、必要に応じて設置すること

とし、形式は各プラントメーカーの提案によるものとする。

10.2.3 ガス化溶融設備

ガス化溶融設備は、1 炉 1 系列式で構成し、1 日 24 時間連続運転を基本とする。定期点検

整備時には 1 炉のみ停止し、他炉は原則として常時運転することとする。運転条件は以下に

示すとおりとする。

① 炉出口(燃焼室出口)温度 :850℃以上(燃焼ガス滞留時間 2秒以上)

② 一酸化炭素濃度 :30ppm 以下(酸素濃度 12%換算値の 4時間平均値)

③ 安定燃焼 :100ppm を超える一酸化炭素濃度瞬時値のピークを

極力発生させない

④ 集じん装置入口ガス温度 :200℃未満

(参考:「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」)

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(1) ガス化溶融設備(流動床式)

ガス化溶融設備(流動床式)は、ごみの乾燥、熱分解をガス化炉で行い、熱分解ガス

とチャーを溶融炉に供給する。溶融炉では燃焼空気を供給して熱分解ガスとチャーの高

温燃焼を行わせ、灰分を溶融スラグとして排出する。

① ガス化炉

ガス化炉では低空気比の部分燃焼により、砂層温度を 500~600℃程度に保持し、熱分

解が継続して行わせるのでごみに含有される鉄分、非鉄分は未酸化の状態で回収できる。

給じん装置により供給されたごみを熱分解して、炉上部から熱分解物を溶融炉へ、ま

た炉下部から不燃物を排出する。排出された熱分解物は次の燃焼溶融炉で効率よく完全

燃焼させ、熱分解物の灰分を溶融スラグ化する機構を有するものとする。

ガス化炉の構造は、地震又は熱膨張などにより崩壊しない堅牢なものであることや内

部の可燃性ガスが漏出しない完全な気密構造とする。

ガス化炉については、熱分解残渣の抜き出しが円滑に行える構造とする。

図 10-4 ガス化炉(流動床式)の方式例

(出典)「設計要領」(社)全国都市清掃会議より

② 溶融炉

溶融炉は、ガス化炉から供給される熱分解ガスおよび熱分解残渣(チャー)に燃焼用

空気を吹き込んで高温燃焼を行わせ、灰分を溶融スラグとして分離排出する。

溶融炉については、熱分解ガス及び熱分解残渣などを連続的に高温で燃焼させるとと

もに、溶融スラグを連続して安定的に排出する機構を有するものとする。また、地震又

は熱膨張などにより崩壊しない堅牢なものであることや内部の可燃性ガスが漏出しない

完全な気密構造とする。

溶融炉は図 10-5 に示すように種々のタイプがあり、熱分解残渣、熱分解ガスを適切に

処理できる設備構成とする。

73

図 10-5 溶融設備(流動床式)の例

(出典)「設計要領」(社)全国都市清掃会議より

(2) ガス化溶融炉(シャフト炉式(コークスベッド式))

副資材としてコークス、石灰石を用いるコークスベッド式では、炉下部に赤熱したコー

クスベッドを形成し高温溶融するが、炉上部が充填層のものと流動層のものがある。

炉上部が充填層のものでは、炉中央上部からごみとともにコークスと石灰石を投入する。

炉内はごみが充填されており、上部から乾燥・予熱帯、燃焼・溶融帯に区分される。乾

燥・予熱帯ではごみが加熱され水分が蒸発する。熱分解帯で有機分がガス化され、発生ガ

スは別置きの燃焼室で完全燃焼される。熱分解後の残渣は、コークスとともに燃焼・溶融

帯へと降下し、複数段の羽口から供給される空気又は酸素富化された空気により高温で燃

焼・溶融される。投入された石灰石の効果によって溶融物は塩基度を調整後炉外へ排出さ

れ、通常は水槽に投入急冷することで粒状のスラグとメタルになり、磁選機で分離回収さ

れる。

一方、炉上部が流動層のものでは炉内に投入されたごみは副羽口から供給される空気で

74

流動化され熱分解される。ここで発生したガスは炉 上部のフリーボードに吹き込まれた

空気により一部燃焼され高温に維持された後、別置きの燃焼室で完全燃焼される。熱分解

後の残渣はコークス、石灰石ととともに炉下部に移動し主羽口から吹き込まれる高温・高

濃度酸素の空気による燃焼熱で溶融される。溶融物は炉底側面に空けられた出滓口から連

続的に出滓され、水槽に落ちて急冷され、分離性の良い粒状のスラグとメタルが得られる。

また間欠出滓方式を採用することや塊状の空冷スラグを製造することも可能である。

ガス化溶融炉については、ごみ、副資材等を安定的に所定量投入でき、高温で燃焼・溶

融させるとともに、溶融対象物を溶融(スラグ化)し、容易に排出できる機構を有するも

のとする。また、地震又は熱膨張などにより崩壊しない堅牢なものであることや内部の可

燃性ガスが漏出しない完全な気密構造とする。

図 10-6 ガス化溶融炉(シャフト炉式(コークスベッド式))の例

(出典)「設計要領」(社)全国都市清掃会議より

10.2.4 燃焼ガス冷却設備

燃焼ガス冷却設備は、ボイラおよび蒸気復水設備を主体に構成され、ごみ処理により発生

する燃焼ガスを所定の温度まで冷却し、蒸気を発生させるための設備と発生蒸気を復水し、

循環利用するための設備である。

燃焼ガス冷却設備は、排ガス処理設備が安全に効率よく運転できる温度まで溶融処理後の

燃焼ガスを冷却するために設置するものであり、施設規模や余熱利用方法により廃熱ボイラ

方式と水噴射式等に分けられるが、余熱をできる限り回収し利用するため、廃熱ボイラ方式

(全ボイラ方式)を採用するものとする。

なお、蒸気温度及び蒸気圧力は、高効率ごみ発電施設の要件である発電効率 14.0%以上を

達成するために、極力、高温高圧化を図る。

燃焼ガス冷却設備は、ボイラ本体、スートブロワ、ボイラ給水ポンプ、脱気器、脱気器給

75

水ポンプ、ボイラ用薬液注入装置、連続ブロー装置、蒸気だめ、蒸気復水器、復水タンク、

純水装置、純水タンクから構成されるが、安全性や経済性、効率性を考慮して容量や方式の

検討を今後行うものとする。

76

10.2.5 排ガス処理設備

排ガス処理設備は、排ガス中に含まれているばいじん、塩化水素、硫黄酸化物、窒素酸化

物、ダイオキシン類の規制物質を「公害防止基準値」以下にするために、以下(1)~(5)に示

すような設備を設置する。

(1) 減温塔

ごみ処理に係る「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン」では、新設炉の場合、集じ

ん器入口ガス温度を 200℃未満とすることとしている。そのため、ボイラの出口ガス温度

を集じん器の入口温度(150~200℃未満)まで冷却する目的で水噴射式の減温塔を設置す

ることを基本とする。

(2) 集じん設備

集じん設備は、除じんのみを目的とするのではなく、有害ガス除去を含めた排ガス処理

システムの一部として設置するものである。その種類としては、電気集じん器、ろ過式集

じん器(バグフィルタ)等があるが、ダイオキシン類の削減という観点から、近年の新設

炉において も実績が多いろ過式集じん器(表 10-1 参照)を採用する。

表 10-1 ろ過式集じん器の特徴

項 目 ろ過式集じん器

特 徴 ・ろ布と呼ばれる複数の織布に通ガスすることによ

り、その表面に粒子層を堆積させ、ばいじんを捕集

するものである。

・一般的に集じん効率は90~99%程度とされている。

シ ス テ ム

概 略 図

長 所 ・除じん効率が良く、近年の新設炉では も使用実績

が多い。

短 所 ・通風損失が約1~2kPaと高く、後段の誘引送風機等

の動力負荷が大きくなる。

・排ガス温度が高い場合には、ろ布焼損のおそれがあ

る。

(出典)「設計要領」(社)全国都市清掃会議より

77

(3) 塩化水素(HCl)・硫黄酸化物(SOx)除去設備

塩化水素・硫黄酸化物除去設備は、排ガス中の塩化水素・硫黄酸化物をアルカリ剤と反

応させて除去するために設置するものであり、除去方式として乾式法と湿式法に分類され

る(表 10-2 参照)。

しかし、湿式法は排水が多く発生し、洗浄塔や排水処理設備などが必要となることから

乾式法と比較してコスト、面積ともに増加する。また、特に排水を系外へ排出しないクロ

ーズドシステムとした場合において特にその傾向が顕著であり、イニシャルコスト及びラ

ンニングコストの両方で高価となる。

乾式法は、炭酸カルシウム(CaCO3)や消石灰(Ca(OH)2)等のアルカリ粉体をバグフィル

タや電気集じん器の前の煙道あるいは炉内に吹込み、反応生成物を乾燥状態で回収する方

法である。他施設において実績が多数あり、水を使用しないため、排水処理が不要である。

よって、塩化水素 50ppm 以下、硫黄酸化物 50ppm 以下を遵守できる乾式法を基本とする。

78

表 10-2 塩化水素(HCl)・硫黄酸化物(SOx)除去設備の比較

項 目 乾 式 法 湿 式 法

特 徴 ・集じん器前のダクト部に噴射注入ゾーンを設け

、別置の消石灰貯槽よりアルカリ粉体(炭酸カ

ルシウム(CaCO3)や消石灰(CaOH2)等)を切り出

し、付設ブロアによる空気輸送により噴射注入

ゾーンに導き、直接排ガスと接触させて塩化水

素・硫黄酸化物と反応させる。

・反応生成物(CaCl2、CaSO4等)と未反応物は、ば

いじんと共に後段の集じん器にて捕集される。

・排出除去可能濃度

塩化水素(HCl):50ppm以下

硫黄酸化物(SOx):30ppm以下

・苛性ソーダ水溶液(NaOH等)を反応塔内に噴霧

することにより、排ガスと気液接触させ塩化水

素・硫黄酸化物を吸収する。

・反応生成物(NaCl、Na2SO4等)は塩類を含む排水

として引き抜き、洗煙排水処理設備で処理す

る。

・排出除去可能濃度

塩化水素(HCl):10ppm以下

硫黄酸化物(SOx):10ppm以下

システム

概 略 図

注)

長 所 ・水を一切使用しない完全乾式のため排水処理

が不要である。

・反応塔を必要としない。

・構造が簡単で安価である。

・運転操作が容易である。

(起動、停止が容易)

・吸収効率が高く、塩化水素除去率が99%以上も

可能である。

・硫黄酸化物の吸収効率も高く、除去率が80%以

上も可能である。

・負荷変動に対する追随性がよい。

・回収塩を処理すれば再利用できる。

・薬品の反応効率は、ほぼ100%と極めて高い。

短 所 ・除去率95%程度である。

・塩類及び重金属類を含む排水処理が必要である。

・排水の塩濃度(3~15%)と高いため、高度廃水処

理が必要である。

・洗浄塔内壁は、腐食、摩耗対策が必要である。

・設備は、排ガスを気液接触するガス洗浄塔他、

排水処理設備など機器点数が多いため高価であ

る。

実 績 ・多数あり。 ・HCl、SOxの保証値が10ppm以下とされる施設で採

用されてきた。

(出典)「設計要領」(社)全国都市清掃会議

79

区分 方式 除去率[%] 排出濃度[ppm] 設備費 運転費 採用例

低酸素法

水噴射法

排ガス再循環法 - 100程度 中 小 少

無触媒脱硝法 30~40 70~100 小-中 小-中 多

触媒脱硝法 60~80 20~60 大 大 多

多燃焼制御法

- 80~150 小 小

乾式法

(4) 窒素酸化物(NOx)除去設備

窒素酸化物の除去方式としては、燃焼制御法、乾式法及び湿式法に分類されるが、燃焼

制御法と乾式法が圧倒的に多く採用されている。

表 10-3 窒素酸化物(NOx)の除去方法

※上記以外に湿式法もあるが、ごみ処理施設での採用例はない ※乾式法は燃焼制御と併用するのが一般的である。 ※除去率、排出濃度は運転条件によって異なるが、一例として示した。

(出典)「設計要領」(社)全国都市清掃会議より

① 燃焼制御法

燃焼制御法は、溶融・燃焼条件を制御することによって窒素酸化物を低減する方法で

あり、排出濃度を 80~150ppm 程度にすることが可能である。

② 乾式法

乾式法は、アンモニアガスまたはアンモニア水、尿素を炉内の高温ゾーンに噴霧して

窒素酸化物を還元し除去する方法であり、排出濃度を 100ppm 以下にする場合に多く採用

されている。無触媒脱硝法、触媒脱硝法等の方式(表 10-4 参照)が実用化されているが、

除去率と排出濃度は、無触媒脱硝法が 30~40%と 70~100ppm 程度であり、触媒脱硝法

が 60~80%と 20~60ppm 程度である。

③ 湿式法

湿式法は、オゾン等の酸化剤により窒素酸化物の大部分を占める一酸化窒素を二酸化

窒素にした後に、アルカリ液で洗浄して吸収するものである。しかし、本方式は酸化剤

が高価なこと、吸収排液の処理が困難なこと等の理由で他施設では実用例が無い。

よって、今後、詳細な技術提案内容等を参考にして検討を進め、採用する方式を選定す

るが、「燃焼制御法」とダイオキシン類の除去も期待できる「触媒脱硝法」を基本として検

討を行う。

80

表 10-4 窒素酸化物(NOx)除去方式(乾式法(代表的なもの))の比較

項 目 無触媒脱硝法 触媒脱硝法

特 徴 ・アンモニアガス(NH3)又はアンモニア水、

尿素((NH2)2CO)を炉内の高温ゾーン

(900℃前後)に噴霧してNOxを選択還元

する。

・低温ガス領域(400℃前後)で触媒の存在

により、還元剤(アンモニアガス(NH3))

を添加してNOxを窒素(N2)と水(H2O)に

還元する。

シ ス テ ム

概 略 図

注)

長 所 ・装置が簡単で、運転保守が容易であり

安価である。

・除去率は60~80%となる。

・ダイオキシン類の酸化分解も可能であ

る。

短 所 ・ 適反応温度範囲が比較的狭い。

(約800~900℃)

・リークアンモニアによる二次公害が予

想される。

・除去率は30~40%である。

・触媒の維持管理が必要である。

・通過排ガス温度を 適反応温度範囲

(200~350℃程度)に保つ必要がある。

・触媒塔及び補機が必要であり高価とな

る。

(出典)「設計要領」(社)全国都市清掃会議より

(5) ダイオキシン類除去設備

ダイオキシン類の除去方式は、種々の型式があるが、触媒脱硝方式を基本とする。

触媒脱硝方式は、概ね 200℃前後に冷却された排ガスを、金属製の触媒反応装置(ダイ

オキシン類分解触媒を保持)に通し、ダイオキシン類を酸化分解し無害化する方式である。

この触媒反応装置は基本的に窒素酸化物用の触媒脱硝装置と同じである。

10.2.6 余熱利用設備

余熱利用設備として、高効率ごみ発電施設の要件である発電効率 14.0%を達成するための

発電設備を設ける。熱及び温水供給設備については、住民要望等をふまえ、今後検討を行う。

10.2.7 通風設備

通風設備は、燃焼・溶融に必要な空気をガス化溶融設備に送るとともに、排ガスを煙突か

ら大気に排出するために設置するものである。通風方式には押込通風方式、誘引通風方式、

平衡通風方式の 3 方式がある。押込通風方式は、燃焼用空気を送風機で炉内に送り込み誘引

は煙突の通気力による方式であり、誘引通風方式は逆に排ガスを送風機で引き出すことによ

り、燃焼用空気を炉内に引き込み供給する方式である。平衡通風方式は押込・誘引の両方式

を同時に行うもので、ほとんどのごみ処理施設において平衡通風方式が用いられている。

よって、押込・誘引の両方式を同時に行うことにより、炉内へ送り込む空気量の調整や炉

81

圧の制御を容易に出来ることから平衡通風方式を採用する。

(1) 煙突

煙突の高さが地表又は水面から 60m 以上に達する場合は、航空法により昼間障害標識及

び航空障害燈を設けなければならないことにより、全国的に煙突高さを 59m に採用してい

る状況となっている。

環境影響評価を実施するに当たっては、煙突高さを 59m とし、周辺への景観に与える影

響を考慮した形状とする。なお、環境影響評価の結果により煙突の高さを 終的に決定す

る。

(2) 白煙防止設備設置の有無の検討

① 白煙防止設備の概要

(ア) 白煙とは

ごみに含まれる水分が燃焼されることで発生する水蒸気と、排ガス処理に使用する

水蒸気が、煙突から大気中に放出された時に冷却され、温度と湿度の条件により結露

する。これが白煙と呼ばれる排ガス中の水蒸気で、特に気温が低い冬場には白い煙と

して見える。また夜間には光の反射の影響などで黒い煙として見えることもある。

図 10-7 白煙の概要

(イ) 白煙防止装置の概要

図 10-7 のような白煙が外観上好ましくない場合、白煙防止装置を設置し白煙を除去

する。

高効率ごみ発電施設整備マニュアル (環境省)によると、白煙防止装置は主に3方式

に分類される。

82

表 10-5 白煙防止装置の概要

蒸気式加熱空気吹込方式 ガス式加熱空気吹込方式 燃料式加熱空気吹込方式

ボイラ設備等の蒸気を用いた熱

交換器により空気を加熱し、煙道

に吹き込む方式。オフライン方式

とも呼ばれる。

燃焼排ガス(主にボイラ出口)

の熱交換器にて空気を加熱し、煙

道に吹き込む方式。インライン方

式とも呼ばれる。

別途灯油等の燃料を用いた熱風バ

ーナにより空気を加熱し、煙道に吹

き込む方式。

(出典)高効率ごみ発電施設整備マニュアル(平成 21 年 3月(平成 22 年 3月改訂)環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部

廃棄物対策課より

白煙防止を行う場合、排ガスの再加熱や混合空気の加熱に蒸気が使われることが多

い。その蒸気使用量は白煙防止条件により異なり、白煙防止条件の外気が低いほど、

また、湿度が高いほど多くなり、それに伴い発電量が低下する。

プラントメーカーアンケート調査では白煙防止有りと白煙防止無しでは無しが有り

と比較して 11%程度発電電力量が多い結果となった。

(ウ) 公害防止基準(排ガス基準)について

排ガスは排ガス処理設備で適正に処理するため、白煙防止装置の有無に係わらず公

害防止基準(排ガス基準)を満足した排ガスを排出する。

白煙は排ガス中の水分(水蒸気)の結露であり、視覚的な影響以外に環境への影響は

特にない。

② 高効率ごみ発電施設整備マニュアルによる発電設備の位置づけ

高効率ごみ発電施設整備マニュアルによる発電設備では蒸気の効率的利用として以下

の技術・施策を示している。

白煙防止空気加熱用に利用されていた蒸気を発電に利用することで発電効率の向上を

図る方法である。

白煙防止条件を設定しない場合は、白煙防止用空気加熱蒸気が不要になる。

白煙防止条件の設定なし、あるいは、白煙防止装置の運用停止

83

③ 白煙防止装置の設置状況・利用状況

廃棄物研究財団施設台帳(平成 21 年度版)より白煙防止装置の設置状況・利用状況につ

いて整理した。「白煙防止装置なし」が 225 施設、「白煙防止装置は有るが使用停止中」

が 40 施設の合計 265 施設であり、約 45%が白煙防止対策を実施していない。

エネルギーの有効利用(発電量の向上)も目的として白煙防止対策を実施していない施

設が増えていると考えられる。

表 10-6 白煙防止装置設置・利用の状況

白煙防止装置有 白煙防止

装置無し 合計

計 常時使用 気象条件等

により使用

使用

停止中 不明

施設数 361 179 92 40 50 225 586

割合 62% 31% 16% 7% 9% 38% 100%

よって、本施設では白煙防止装置を設置しないことを基本とする。

10.2.8 溶融飛灰処理設備

溶融飛灰処理設備は、各部で捕集された溶融飛灰を飛灰貯留設備または飛灰処理設備へ搬

送するとともに、処理物を場外へ搬出するために設置するものである。

溶融飛灰については 終処分場への搬入が前提となるため、搬出車輛への対応等を考慮し

た設備とする。

10.2.9 スラグ・メタル処理設備

シャフト炉式(コークスベッド)式は、ごみ中の金属をガス化溶融炉内で溶融し、スラグ

とともに溶融メタルとして排出するため、出滓後にスラグとメタルを分離する磁選機が必要

となる。

スラグの貯留・搬送設備は、バンカ方式を採用する場合もあるが、スラグの品質管理や需

要の変動から、直接搬出することは少ないため、一定の量を保管できるヤード方式を基本と

する

10.2.10 排水処理設備

排水はプラント系排水及び生活系排水ともに無放流である、クローズドシステムとする。

排水処理設備は、主に無機系排水処理装置(ボイラ排水等)と有機系排水処理装置(プラ

ットホーム床洗浄水等の処理装置)で構成される。基本的にごみピット汚水は、ガス化溶融

設備で噴霧し、その他の排水は、排水処理設備で処理した後に再利用水として場内で利用す

る。

その場合においても公共用水域への排水は行わない。

84

10.2.11 電気設備

電気設備は電力会社から受電した電力を、必要とする電圧に変成し、それぞれの負荷設備

に供給する目的で設置される設備をいい、受変電設備、配電設備、動力設備、電動機、非常

用電源設備、照明設備、その他設備及び電気配線工事から構成される。またごみ焼却施設に

おける熱回収として汽力発電を行う蒸気タービン発電機及び制御装置等から構成される発電

設備も設置する。

電気設備は、関係法令、規格を遵守し、使用条件を十分満足するよう合理的に設計、製作

されたものとする。計画需要電力は、施設の各負荷設備が正常に稼働する場合の 大電力を

もとにして算定する。

受電電圧及び契約電力は、電力会社の規定により計画する。

受電設備は本施設で使用する全電力に対し十分な容量を有する適切な形式とする。なお、

自家用発電設備付の場合には「電力品質確保に係る系統連係技術要件ガイドライン」(平成

16 年 10 月 1 日資源エネルギー庁)他に準拠するものとし、特に契約電力が 2,000kW 以上の

受電及び系統と連系する 2,000kW 以上の発電を行う場合には原則として特別高圧電力の契約

となるので、受電電圧及び発電機出力の決定に当っては電力会社と協議する。

10.2.12 計装設備

計装設備は、プラントの操作・監視・制御の集中化と自動化を行うことによりプラント運

転の信頼性の向上と省力化を図るとともに、運営管理に必要な情報収集を合理的、かつ迅速

に行うことを目的にしたものである。本設備の中核をなすコンピューターシステムは、危険

分散のため主要部分は2重化システムとし、各設備・機器の集中監視・操作及び自動順序起

動・停止、各プロセスの 適制御を行うものとする。また、工場の運転管理及び運営管理に

必要な情報を各種帳簿類に出力するとともに、運営管理及び保全管理に必要な運転データ作

成を行う。

計装設備は、計装機器、計器盤、動力源、その他設備及び計装配線配管工事から構成され

る。

85

10.3 公害防止対策

10.3.1 施設稼働中の対策

(1) 大気

施設稼働後の大気質への影響については以下の措置を講じ、大気汚染物質の排出による

環境への負荷の低減を図ることとする。

① 各設備は、定期点検を実施し、常に正常な運転を行うように維持管理を徹底する。

② 排出ガスは、温度計、CO 連続分析計、O2連続分析計及び有害物質等の連続分析計を煙

道に設置し、排出ガスの常時監視を行うとともに、定期的な検査を実施して設定基準値

(自主基準値)を超えることがないよう適正な維持管理を徹底する。

③ ダイオキシン類対策特別措置法に従い、ダイオキシン類の発生を抑制する。

④ 公害防止基準値を遵守するように維持管理を徹底する。

⑤ 施設の運転は、可能な限りごみ質が均一になるように努め、炉への負荷を適正な範囲

に保ち、安定した燃焼が継続できるように留意する。

⑥ 可能な限り連続運転が長期化できるように維持管理を行う。

⑦ 法規制等に基づき定期的な検査を実施して記録に残し、適正な稼働を確認するととも

に、必要に応じて適切な対策を講ずる。

⑧ 受入供給設備は、安定した燃焼の継続のために、十分なごみピット容量を確保すると

ともに、自動ごみクレーンによる効率的な撹拌と定量的な供給が可能となるよう設計す

る。

⑨ ガス化溶融設備は、炉形式、構造、炉規模、燃焼方法、ごみ質のほか、高温に保持し、

十分な滞留時間を確保できる構造のものに設計する。安定した燃焼を確保するため、燃

焼温度(850℃以上)、ガス滞留時間(2 秒以上)、煙突出口の一酸化炭素濃度(30ppm 以下:

O212%換算値の 4時間平均値)を遵守する。

⑩ ガス冷却設備は、エネルギーの有効利用促進の観点から積極発電が行える廃熱回収ボ

イラとなるため、ボイラ伝熱面上におけるダストの堆積を抑制できる構造とし、ボイラ

出口排出ガスの低温化等にも留意する。

⑪ 排出ガス処理設備は、低温腐食防止に配慮しつつ、ガス冷却塔での水噴霧により入口

排出ガス温度を 200℃未満となるように集じん器の低温化を考慮し設計する。

⑫ ろ過式集じん器(バグフィルタ)のろ布の破損を間接的に感知するシステムを採用

する。

⑬ 飛灰処理物の場外搬出時の飛散防止を徹底する。

(2) 水質汚濁

プラント系排水及び生活系排水はクローズド方式とすることから、公共用水域への排水

はしないこととする。

(3) 騒音・振動

施設には、空気圧縮機や送風機以外にも騒音規制法及び振動規制法に該当しないポンプ、

86

クレーン等の出力の大きな原動機を持つ設備があり、排水処理設備の水音あるいは排風口

等が騒音源となることもある。また、誘引送風機の回転数が煙突や煙道の固有振動数と同

調することにより、騒音を発生する現象にも注意する必要がある。

そのため、騒音・振動の防止対策としては、低騒音、低振動型の機器を採用するととも

に、これらを地下や建物内部に設置する等、外部に漏洩しないよう配置することが重要で

ある。また、排風口の位置や、音の反射にも注意し、音源の種類と敷地境界までの距離を

考慮した設計を行い、試運転後に騒音問題が生ずることのないようにする必要がある。具

体的には、騒音・振動の発生を防止するため、以下の対策を行う。

① プラント設備類を極力屋内に設置し、遮音対策に努める。また、屋外に設置する機器

は、必要に応じて周辺の壁に吸音材を取り付けるなど、騒音を減少させる対策を行う。

② 低周波音の発生を抑えるために、ダクトのサポートの強化および換気ダクトのリブを

バタつかせない等など適切な対策を講じる。

③ 振動の発生する恐れのある設備機器は、防振装置等による防振対策を行う。

(4) 悪臭

施設には、悪臭源となる受入設備及び溶融飛灰処理設備等がある。悪臭を施設から出さ

ないためには、発生源において極力捕集するほか、建築設備面での密閉化、燃焼用空気と

しての活用及び施設の適正な維持管理が重要な要素となる。

悪臭の発生を防止するため、以下の対策を実施する。

① ごみピット内の空気を燃焼用空気として強制的に燃焼設備に吸引し、ごみピット内を

常に負圧に保ち、臭気が漏れないようにする。また、燃焼設備の高温燃焼で熱分解し、

脱臭する。

② ごみピット室の外壁は機密性確保するため、天井まで鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄

筋コンクリート造として臭気の漏洩を防止する。また、貫通部の仕舞いを十分に行うこ

と。

③ ごみピットには投入扉を設け、ごみ投入時以外は閉じておく。

④ プラットホーム内の出入口にはエアカーテン及び自動扉を設置し、臭気の漏洩を防止

する。

⑤ 定期点検整備等の休炉時には、ごみピット内の空気を脱臭装置に送って活性炭吸着に

より処理するとともに、ごみピット内を負圧に保ち臭気が漏れないようにする。

10.3.2 建設工事中の対策

(1) 大気

工事に伴う大気質への影響については、以下の措置を講じ、大気汚染物質の排出による

環境への負荷の一層の低減を図ることとする。

① 工事が同時期に集中しないように配慮して、工事計画(工法、工程、日時等)を立

てる。

② 排出ガス対策型の建設機械を採用する。

87

③ 建設機械は、始業前点検を励行し、不良な機械等の使用禁止や適正な運行管理を遵守

する。

④ 建設機械は可能な限り無駄な稼働を抑える。

⑤ 資機材の運搬車輌は、タイヤ洗浄機の通過を励行し、タイヤに付着した土砂が敷地外

へ出ることを可能な限り防止する。

⑥ 資機材の運搬車輌は、始業前点検を励行し、不良な機械等の使用禁止や適正な運行管

理を遵守する。

⑦ 資機材の運搬車輌は、可能な限り無駄な走行を抑える。

⑧ 資機材の運搬車輌の敷地内外におけるアイドリング・ストップを励行する。

⑨ 資機材の運搬車輌の運行にあたっては、制限速度の遵守、安全運転の励行、急発進・

急加速・急ブレーキの自粛等の推進を行う。

(2) 騒音・振動

① 工事には、できる限り低騒音、低振動型の建設機械及び工法を採用する。また、建設

機械は点検、整備を行い、良好な状態で使用し、騒音、振動の発生を極力少なくする。

② 工事区域は、建設機械類の配置については一箇所で集中稼働することの無いように、

事前に作業計画を十分に検討する。

③ 作業時間及び作業手順は、周辺に著しい影響を及ぼさないように、事前に工事工程を

十分に検討する。

④ 資材の搬入、土砂の搬出入に際しては、車両の走行ルートの限定、低速度走行の励行

などにより、騒音、振動などの低減を図る。

88

10.4 建築計画方針

建築計画は建築配置計画、建築構造計画、建築デザイン計画、建築設備計画の観点から整理す

る。

10.4.1 建築配置計画

建築配置計画は、以下に示す基本的な考え方に基づくものとする。

・作業の効率や見学者動線を考慮した明快で安全性の高い平面配置とする。

・遮音性や防振性に配慮した構造及びレイアウトとする。

・見学者がプラント設備の機能だけでなく、ごみ処理の流れが理解できるような見学者動

線とする。

・階層ごとに機能分離を行い、管理運営を行いやすい断面配置する。

・周辺環境に配慮した、建物の高さとする。

・建物の性格からバリアフリーへの配慮を行う必要があるため、フロアベースの段差が生

じないよう配慮する。

・ 地盤の性状を的確に把握するため十分な調査を行い、耐震安全性を考慮した構造とする。

・周辺状況を勘案し洪水への対策を講ずる。

10.4.2 建築構造計画

建築構造計画は、以下に示す基本的な考え方に基づくものとする。

・溶融炉関連設備を収納する特殊な建築物であり、それらの設備は重量の大きい設備であ

ることから、建築物は十分な耐力を持つ構造とする。

・建築物は地盤条件に応じた基礎構造とし、荷重の偏在による不等沈下を生じないものと

する。

・屋根は軽量化に努めるともに、風圧や機器荷重に対し十分な強度を有するものとする。

またエキスパントジョイント部は漏水がなく。接合部の伸縮に十分対応でき、経年変化

の少ない構造とすること。

・工場棟の屋根は採光に配慮し、換気装置を設けるものとし、雨仕舞と耐久性に配慮する

こと。

・プラットホーム等臭気の発生がある部屋の屋根や外壁については、機密性を確保し悪臭

の漏れない構造とすること。

10.4.3 建築デザイン計画

建築デザイン計画は、以下に示す基本的な考え方に基づくものとする。

・周辺への威圧感を和らげ開放的な雰囲気を感じるデザインとする。

・周囲の景観に配慮したデザインとする。

・メンテナンス性や耐久性等にも十分配慮する。

89

10.4.4 建築設備計画

本施設の建築設備計画は、以下に示す基本的な考え方に基づくものとする。また、環境負

荷の低減・省エネルギー・省力化を踏まえたうえで、信頼性・安全性・利便性・経済性・保

守管理性などについても十分に検討を行うものとする。

・更新性、メンテナンス性を考慮した建築設備を設置する。

・積極的な自然エネルギーの活用(太陽光利用、太陽熱利用)及び雨水利用等の検討を行

う。

・排ガスや悪臭を低減できるようプラント設備と総合的な計画作成を行い、作業環境に配

慮した建築設備を設置する。

90

第11章 事業方式について

11.1 はじめに

今後の新施設整備において、事業方式は重要な要因であるため、事業方式の概要について整

理した。

11.2 事業方式について

事業方式としては、その実施主体や役割分担の違い等により、公設公営方式のほか、運転維

持管理を長期委託する長期包括委託方式、公設民営方式(DBO)及び PFI 方式(BTO 方式、BOT

方式、BOO 方式)がある。これらの事業方式の公共と民間事業者の役割を以下に示す。

11.2.1 公設公営方式

公共が財源確保から施設の設計・建設、運営等のすべてを行う方式。運転業務を民間に委

託する場合を含む。

11.2.2 公設+長期包括委託方式

公共が施設の設計・建設を行い、運営に関しては民間事業者に複数年にわたり委託する方

式。

11.2.3 公設民営方式(DBO 方式)(Design-Build-Operate;設計―建設―運営)

公共が起債や交付金等により資金調達し、施設の設計・建設、運営等を民間事業者に包括

的に委託する方式。

11.2.4 民設民営方式(PFI 方式)

(1) BTO 方式(Build-Transfer- Operate;建設―譲渡―運営)

民間事業者が自ら資金調達を行い、施設の設計・建設・運営を行う。所有権については、

施設の完成後に公共に移転

(2) BOT 方式(Build-Operate-Transfer;建設―運営―譲渡

民間事業者が自ら資金調達を行い、施設の設計・建設・運営を行う。所有権については、

委託期間終了後に公共に移転。

(3) BOO 方式(Build-Own- Operate;建設―所有―運営)

民間事業者が自ら資金調達を行い、施設の設計・建設・運営を行う。所有権については、

委託期間終了後も公共に移転を行わない。

91

表 11-1 廃棄物処理施設(中間処理施設)の整備・運営事業における

事業方式別公共・民間の役割分担

項 目 公設公営方式 公設+長期包括運営業務委託方式

公設民営方式 (DBO 方式)

民設民営方式(PFI 方式)

BTO 方式 BOT 方式 BOO 方式

民間関与度 小 大

計 画 策 定 公共 公共 公共 公共 公共 公共

資 金 調 達 公共 公共 公共 民間 民間 民間

設計・建設 公共 公共 公共 民間

民間 民間 民間

運 営 公共 民間 民間 民間 民間 民間

施設の所有

(建設時) 公共 公共 公共 民間 民間 民間

施設の所有

(運営期間中) 公共 公共 公共 公共 民間 民間

施設の所有

(事業終了後) 公共 公共 公共 公共 公共 民間

運営モニタリング

(運営期間中) - 公共 公共

公共 民間

公共 民間

公共 民間

92

表 11-2 事業方式の主要項目の定性的比較

凡例:○公共から見た利点,●課題,留意点

93

11.3 先行事例

公表データ等を基に、民設民営方式の 1 号案件(秋田県大館事業)の実施方針が公表された

平成12年度から平成22年度までの11年間で熱回収施設の事業手法別の事業実績件数をまとめ

ると表 11-3 に示すとおりとなる。

過去 11 年間合計でみると、計 121 件のうち、公設公営方式が 72 件、公設+長期包括運営業

務委託方式が 19 件(本表の他、平成 11 年以前の工事契約施設への導入件数が 9 件あり、いず

れも長期包括運営業務委託契約締結は平成 15 年以降)、DBO 方式が 22 件、民設民営方式(PFI

方式)が 8 件であり、公設公営方式による事業の実施が多いことがわかるが、単年度毎の内訳

をみると近年においては、DBO 方式の占める件数が増加してきている。

表 11-3 全国の熱回収施設に係る事業方式別実績件数

※ごみ焼却施設台帳((全連続燃焼方式編 平成21年度版)廃棄物研究財団)及び自治体PFI推進センターホームページ等より整理 ※公設公営方式及び DB+長期包括運営業務委託方式の年度は工事契約年度、DBO 方式及び民設民営方式の年度は実施方針公表

年度

11.4 その他

PFI 事業に関しては破たんの事例(タラソ福岡(BOT)、近江八幡市立総合医療センター(BOT)、

名古屋港イタリア村(BOT))があるが、いずれも独立採算型で経営状況が悪化したものである。

一方、廃棄物処理事業の場合、行政側が事業者に対して一定の委託料を支払う仕組みであるこ

とから、破たんの可能性はほとんどないと考えられる。

BTO方式

BOT方式

BOO方式

小計

平成12年度 29 5 0 0 0 1 1 35

平成13年度 10 1 0 0 0 2 2 13

平成14年度 4 0 0 0 0 0 0 4

平成15年度 6 1 1 1 1 0 2 10

平成16年度 7 2 1 1 0 0 1 11

平成17年度 4 3 1 0 0 1 1 9

平成18年度 7 2 1 0 0 0 0 10

平成19年度 1 4 3 0 0 0 0 8

平成20年度 1 1 9 1 0 0 1 12

平成21年度 2 0 2 0 0 0 0 4

平成22年度 1 0 4 0 0 0 0 5

合 計 72 19 22 3 1 4 8 121

合計年度 公設公営方式公設+長期包括運営業務委託方式

公設民営方式(DBO方式)

民設民営方式(PFI方式)

94

11.5 発注方式について

地方自治法に定められる契約方式としては、一般競争入札、指名競争入札及び随意契約があ

る。また、一般競争入札には、価格その他の条件が当該自治体にとって も有利なものをもっ

て申し込みをした者を落札者とすることができる「総合評価一般競争入札」がある。

一般競争入札(総合評価一般競争入札含む)、指名競争入札及び随意契約の内容を以下に整理

する。

表 11-4 各発注内容の特徴

一般競争入札

指名競争入札

随意契約

従来方式 総合評価方式 公募型プロポーザル

方式

概要

発注者の仕様に基づいて、不特定多数の

入札を募り、発注者に も有利な価格を

提示した入札者と契約を締結する方式で

ある。

〈総合評価落札方式〉

地方自治法に定める「一般競争入札」の

一つであり、予定価格の範囲内で申込を

した者のうち、価格だけでなくその他の

条件(維持管理・運営のサービス水準、

技術力等)を総合的に勘案して落札者を

決定する方式である。

平成 17 年 4月に「公共工事の品質確保の

促進に関する法律」(以下、「品確法」

という。)が施行され、国においても、

市町村等は、廃棄物処理施設建設工事の

発注・選定方式として、品確法に基づき、

総合評価落札方式を導入していくべきで

あるという見解を示している。

発注者が、技術、

経験、資金力等に

ついて信頼でき

る入札者をあら

かじめ指名し、指

名入札者間で、発

注者に も有利

な価格を提示し

た入札者と契約

を締結する方式

である。

技術的水準は入

札者を指名する

ことにより、ある

程度担保でき、そ

の中での入札価

格競争を図るこ

とが可能である。

競争の方法によらない

で、公募により提案を

募集し、あらかじめ示

された評価基準に従っ

て優先順位を特定した

後、 優先順位の民間

事業者との間で契約す

る方式。

公正な手続きや適正な

契約価格の確保が課題

となる。

(1)応募者の参加 公募 公募 行政側で設定 公募

(2)事業者の決定方法 価格 価格+技術 価格 技術

価格+技術

(3) 事 業 者

決定までの

主な作業

公告前 発注仕様書の作

発注仕様書の作成

落札者決定基準の作

発注仕様書の作

発注仕様書の作成

(落札者決定基準の作

成)

公告後

価格審査

( も安価な応募

者が落札)

技術審査

価格審査

価格審査

( も安価な応募

者が落札)

技術審査

(価格審査)

(4)有識者の意見聴取 不要 必要 不要

必要

(制度としては不要で

あるが、技術審査を実

施するため実質必要と

なると考えられる)

95

11.6 まとめ

近年の熱回収施設の動向をみると、公共が資金調達し、施設の設計・建設、30 年間程度の使

用を前提とした 15~20 年間の運営を包括的に委託する DBO 方式の割合が増加してきている。

DBO 方式を採用する理由は、自治体の事情により様々であるが概ね下記の理由が挙げられる。

① プラントメーカーに施設の建設・運営を委ねる PFI 方式に比べ、自治体が施設を建設し所

有することにより地元など施設周辺の住民に対して信頼を得やすい。

② 廃棄物処理施設の整備・運営事業が、他の箱物施設と異なる大きな点は、施設を建設した

後の運営コストが建設コストと同等以上にかかることとなり、運営コストが莫大になること

である。が、これまでほとんどの自治体では、この運営部分の業務のほとんどを施工プラン

トメーカーまたはその関連会社の見積をベースに予算化し、次年度に当該業者に随意契約等

により発注することとなり、競争原理がほとんど働きにくい環境下にあった。

③ DBO 方式を採用する場合、PFI 方式と同様に建設+運営業務(20 年間程度)をセットで入

札させ総合評価するため、20 年分の運営業務についても競争原理を働かせることができる。

こうしたコスト縮減を実現できることにより住民理解が得られる。

④ 運営を民間に長期包括的に委託することにより、施設の維持管理を安全かつ効率的に実施

できることにより住民理解が得られる。

一方、PFI 方式は本来民間のノウハウを 大限に活かし、施設の設計や運営において 大限

の費用対効果を期待するものであるが、

① 施設の安全性確保の点から発注仕様書で設計の自由度を求めない場合、コスト縮減効果が

少ない。

② 金融機関との手続きが煩雑。

③ 民間が施設建設に係る資金調達する場合、自治体が資金調達する起債より高利となり、結

果的に自治体の負担となる。

等の理由で近年 PFI 方式が採用されていないと考えられる。

一方、民間事業者が施設を運営していくことに対しては、周辺住民に不安を与える場合があ

る。先行事例では公共が事業運営の内容を細かくチェックするモニタリング体制を構築し、住

民不安の解消を図っているが、安全性への信頼度は安心につながるものであり、何よりも重視

されるべきものである。

これらのことから、本施設の事業手法については、DBO 方式による施設建設・運営を視野に

入れ、民間事業者の参入意欲の確認、期待される経費削減効果の定量的評価などを含む事業方

式可能性調査を実施したうえで決定していくこととする。

しかし、DBO 方式及び PFI 方式においては事業者に依存する部分が多くなり、行政側の技術

の蓄積が行われにくい。建設時は問題ないが次の施設建設時に困ることがあるため、できる限

り行政側にも技術の蓄積ができるようなモニタリングシステムの活用も検討する必要がある。

発注方式については、競争性を確保し、より品質の良いものを適正な価格で購入することの

できる総合評価方式(総合評価一般競争入札方式、公募型プロポーザル方式)を採用する方向

で、今後さらに検討を重ねる。

96