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1 1.1 CIM 推進に係る国際標準、人材育成に関する研究 1.1.1 人材教育(熊本大学 小林教授) 平成 24 年度から全国 11 箇所ではじまった CIM 試行業務(設計)は、約 2 年半経過した現在、CIM 試行業務は約 40 件、また CIM 試行工事は約 50 件と全国津々浦々の現場に展開してきている。そ れに伴い、 CIM に携わる国土交通省職員、また業 務・工事の受注者など関係者の増加と、その裾野 は広がりを見せてきている。 しかし、その裾野の広がりが、CIM の内容の理 解向上に繋がってきているかというと、必ずしも そうとは言えない。平成 25 26 年の土木学会 CIM 講演会参加者へのアンケートを見ると、「CIM 内容までよく知っている」が 3040%程度に留ま っており、また、CIM を導入するうえでの課題として、「CIM に関する人材育成・教育」、「CIM 知識・ 技術」が上位をしめる。人材育成・教育が、CIM の普及に必 要不可欠なテーマだと言える。 CIM の人材育成・教育については、さきほどの土木学会 CIM 講演会、また民間団体等による 3 次元 CAD 講習・研修 などの機会とともに、CIM の活用事例、特に一つの事業に CIM を活用した体験事例を通じて、 CIM を身近なものとして 学んでいくアプローチも必要である。 そのような背景のもと、熊本大学大学院自然科学研究科(小 林一郎教授)と JACIC で、人材育成に関する共同研究を行っ た。関係者の合意形成を図りつつ迅速に進める必要があった 河川激特事業(曽木の滝分水路事業)での CIM 活用事例を CIM を学ぶ」として報告書に取りまとめた。ここで最も特 徴的なのは、地元自治会、市、設計コンサルタント、施工会 社、学識者、国土交通省(事業者)等関係者が多岐にわたる建設事業での合意形成において、各検討段 階に適したモデルを作成し、それを効果的に活用したことだ。 景観検討等に対して関係者が思い描く姿が、可視化されたモ デルを媒体として的確に意思表示でき、それらが全員に共有されながら比較案の検討等へとスパイラル アップしていった。合意形成の過程において、3 次元 CAD を主体的に活用するとともに、各場面の対象 者、目的に応じて、3 次元 CAD から派生させた模型モデルなどを作成、活用した。CIM とはモデルを駆 使すること、またマネジメントであることを学べる活用事例である。((一財)日本建設情報総合センタ ー(JACIC)のホームページで平成 27 6 月より公開予定) CIM 講演会アンケート 報告書(河川激特事業における CIM の活用記録)

CIM推進に係る国際標準、人材育成に関する研究 1.1 CIM推進に係る国際標準、人材育成に関する研究 1.1.1 人材教育(熊本大学 小林教授)

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Page 1: CIM推進に係る国際標準、人材育成に関する研究 1.1 CIM推進に係る国際標準、人材育成に関する研究 1.1.1 人材教育(熊本大学 小林教授)

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1.1 CIM 推進に係る国際標準、人材育成に関する研究

1.1.1 人材教育(熊本大学 小林教授)

平成 24 年度から全国 11 箇所ではじまった CIM 試行業務(設計)は、約 2 年半経過した現在、CIM試行業務は約 40 件、また CIM 試行工事は約 50件と全国津々浦々の現場に展開してきている。そ

れに伴い、CIMに携わる国土交通省職員、また業務・工事の受注者など関係者の増加と、その裾野

は広がりを見せてきている。 しかし、その裾野の広がりが、CIM の内容の理

解向上に繋がってきているかというと、必ずしも

そうとは言えない。平成 25・26年の土木学会 CIM講演会参加者へのアンケートを見ると、「CIM の

内容までよく知っている」が 30~40%程度に留まっており、また、CIMを導入するうえでの課題として、「CIMに関する人材育成・教育」、「CIM知識・技術」が上位をしめる。人材育成・教育が、CIMの普及に必要不可欠なテーマだと言える。

CIM の人材育成・教育については、さきほどの土木学会

CIM 講演会、また民間団体等による 3 次元 CAD 講習・研修などの機会とともに、CIM の活用事例、特に一つの事業に

CIMを活用した体験事例を通じて、CIMを身近なものとして学んでいくアプローチも必要である。 そのような背景のもと、熊本大学大学院自然科学研究科(小

林一郎教授)と JACICで、人材育成に関する共同研究を行った。関係者の合意形成を図りつつ迅速に進める必要があった

河川激特事業(曽木の滝分水路事業)での CIM 活用事例を

「CIMを学ぶ」として報告書に取りまとめた。ここで最も特徴的なのは、地元自治会、市、設計コンサルタント、施工会

社、学識者、国土交通省(事業者)等関係者が多岐にわたる建設事業での合意形成において、各検討段

階に適したモデルを作成し、それを効果的に活用したことだ。

景観検討等に対して関係者が思い描く姿が、可視化されたモ

デルを媒体として的確に意思表示でき、それらが全員に共有されながら比較案の検討等へとスパイラル

アップしていった。合意形成の過程において、3次元 CADを主体的に活用するとともに、各場面の対象者、目的に応じて、3次元 CADから派生させた模型モデルなどを作成、活用した。CIMとはモデルを駆使すること、またマネジメントであることを学べる活用事例である。((一財)日本建設情報総合センタ

ー(JACIC)のホームページで平成 27年 6月より公開予定)

CIM 講演会アンケート

報告書(河川激特事業における CIM の活用記録)

Page 2: CIM推進に係る国際標準、人材育成に関する研究 1.1 CIM推進に係る国際標準、人材育成に関する研究 1.1.1 人材教育(熊本大学 小林教授)

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機能性

水理計算

構造計算

3次元

基盤データ

計算結果

3D-CAD

完成形状

平面線形

縦横断図

現況地形

周辺構造物

分水路

経済性

土工量算出

施工法検討

測量段階から

計算結果

景観性

法面形状の検討

線形検討

平面線形

縦横断図

土量

レポート

機能性

水理計算

構造計算

機能性

水理計算

構造計算

3次元

基盤データ

計算結果

3D-CAD

完成形状完成形状

平面線形

縦横断図

平面線形

縦横断図

現況地形

周辺構造物

分水路

現況地形

周辺構造物

分水路

経済性

土工量算出

施工法検討

経済性

土工量算出

施工法検討

測量段階から

計算結果

景観性

法面形状の検討

線形検討

景観性

法面形状の検討

線形検討

平面線形

縦横断図

平面線形

縦横断図

土量

レポート

土量

レポート

法面形状や地山との調和などの景観検討、土工量の算出を行って検討を進める。

作成した線形、横断、縦断から水理計算を行う。

水理計算の結果は、景観検討にフィードバックし、再検討を行なう。

検討アプローチ

モデル空間(3Dモデル)

3Dモデルによる景観の確認

A案

B案

C案

一次案

A案

B案

C 案一次案

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統合型情報運⽤用システム(Kolg)を活用し、関係者が非同期分散で協議を進め、これらのプロセスを繰り返すことで、設計の質を醸成。

コミュニティツール(情報共有運用システム)を利用した意思決定ツール

最終案

協議調整へのアプローチ

データ監理

水理解析景観デザイン

設計マネジメント

Kolg

合意形成

資料提供 : 熊本大学 自然科学研究科 小林教授 (空間情報デザイン研究室)