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入省案内 2018 https://www.mof.go.jp/about_mof/recruit/mof/index.htm TEL.03-3581-4111(内線5464) [採用に関するお問い合わせ] 国会前庭 洋式庭園 皇 居 外務省 財務省 南門 正門 農林水産省 千代田線 国会議事堂前 丸の内線 国会議事堂前 丸の内線 霞ヶ関 千代田線 霞ヶ関 銀座線 虎ノ門 有楽町線 桜田門 日比谷公園 日本郵政 国会議事堂 経済産業省 金融庁 文部科学省 〒100-8940 東京都千代田区霞ケ関3-1-1 大臣官房秘書課

入省案内2018 - mof.go.jp · 大臣官房秘書課 . 財務省大臣官房秘書課調整室長 ... 今の仕事は昨年7月から担当しており、皆さんの1つ先輩に当たる平成30年入省者の採用プロセス

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入省案内 2018

https://www.mof.go.jp/about_mof/recruit/mof/index.htm

TEL.03-3581-4111(内線5464)

[採用に関するお問い合わせ]

国会前庭洋式庭園

皇 居

外務省

桜田通り

首都高都心環状線

財務省

南門 正門

農林水産省千代田線

国会議事堂前丸の内線 国会議事堂前

丸の内線 霞ヶ関

日比谷線

霞ヶ関

千代田線 霞ヶ関

銀座線 虎ノ門

有楽町線 桜田

日比谷公園

日本郵政

国会議事堂

経済産業省金融庁

文部科学省

〒100-8940 東京都千代田区霞ケ関3-1-1

大臣官房秘書課

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財務省大臣官房秘書課調整室長

松本 圭介 [平成10年入省]

~採用担当者からのメッセージ~

は じ め に

01 02

目 次

予算編成

税制企画

マクロ経済政策

財政投融資

P.05

P.07

P.09

P.10

為替政策

国債管理政策

P.11

P.13

関税政策

国際金融政策

途上国開発政策

P.14

P.15

P.16

留 学

課長補佐

P.20

P.21

企画官

課 長

P.23

P.25

係長×係員

国税局/財務局

P.17

P.19

特集1 経済産業省予算対談P.27

特集2 女性職員からのメッセージP.29

特集3 若手職員インタビューP.31

特集4 特別寄稿 ~財務官から~P.33

地方出向

他省庁出向

P.36

P.37

国際金融機関

在外公館

P.38

P.39

P.04 【第一部】 財務省の活動

【第二部】 財務省職員のキャリアパスP.17

【特 集】P.27

【第三部】 財務省職員の活躍するフィールドP.35

採用に関するQ&AP.40

 はじめに、財務省において不祥事が相次いでいることは、大変申し訳ないことであり、お詫びを申し

上げます。就職活動に際して財務省に関心を持っていただいた皆さんにも、大変なご心配をおかけして

いるのではないかと思います。問題行為については真摯に反省した上で、再発防止に取り組み、信頼

を回復できるよう、しっかりと取り組んでまいります。

 国家公務員は国民全体の奉仕者であり、財務省の職員も、日本の経済社会が直面している諸課題

に対応すべく、それぞれの立場で精一杯取り組んでいます。個々の職員が取り組んでいる仕事の重要

性が変わるものではなく、引き続き、やるべき仕事をしっかりとやっていくことが大切だと考えています。

 私自身のことを言えば、入省以来20年が経過したところであり、今は人事関係ということで、組織の

内部管理を担当しています。過去には、金融商品取引法令の整備、リーマン危機時の金融機関監督、

年金国庫負担の引上げ、特例公債法の多年度化、福島第一原発事故を受けた資金支援、法人実効

税率の引下げ、酒税・たばこ税の見直しなど、日本がそれぞれの時期に直面した様々な政策課題に関

与する機会がありました。苦しい時もありましたが、振り返れば、充実した日々 を過ごしてこられたと感じ

ています。

 今の仕事は昨年7月から担当しており、皆さんの1つ先輩に当たる平成30年入省者の採用プロセス

にも関わりました。たくさんの学生さんとお目にかかり、「なぜ財務省を志望したのか」「ご自身の長所と

短所を教えて欲しい」等 を々お伺いしていきました。私なりに様々な印象を抱きましたが、多様な方 を々

採用できたと思っています。採用面接に模範解答はありませんし、どのタイプが有利だとか不利だとか

いうこともありませんので、皆さんの思うところを、ストレートにぶつけていただければと思います。

 他の進路と迷っている方もおられました。私からは、財務省で働くことの雰囲気を感じ取って欲しいと

思い、上記のような私自身のこれまでの経験もお話をしました。このパンフレットにも、皆さんとかなり近

い若手職員から、私から見ても頭が上がらないような大先輩まで、幅広い職員が文章を寄せています

ので、是非とも、目を通していただければと思います。その上で、採用面接は先輩職員と直接話をできる

絶好の機会でもありますので、いろいろな話を聞いてみてください。

 皆さんとお目にかかれますことを、楽しみにしております。

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03 04

内閣府

警察庁

金融庁

消費者庁

復興庁

総務省

財政政策

不動産市場

株式市場

債券市場

為替市場

金融システム

マーケット関連政策

G20、G7 発展途上国

WTO・WCOASEAN諸国中国、韓国、インド

IMF国際開発金融機関

国際関連政策

P.05

P.07

P.09

P.10

P.11

P.13

P.14

P.15

P.16

文部科学省

厚生労働省

農林水産省

経済産業省

国土交通省

環境省

防衛省

日本銀行

法務省

外務省

予算編成

税制企画

マクロ経済政策

財政投融資

為替政策

国債管理政策

関税政策

国際金融政策

途上国開発政策

国税庁

財 務 省 の 組 織

主計局 主税局 関税局

本 省

財務省

外 局

地方支分部局施設等機関

理財局 国際局財務総合政策研究所

会計センター

税関研修所

関税中央分析所

財務局 税関内部部局 地方支分部局

国税局本庁

税務署

財務大臣

副大臣 (2)

大臣政務官

事務次官

財務官

秘書官

(2)

局長

次長(2)

財政投融資総括課

国有財産企画課

国有財産調整課

国有財産業務課

総務課

国庫課

管理課

計画官(2)

国債企画課

国債業務課

官房長

総括審議官

参事官(10)

審議官(11)

サイバーセキュリティ・情報化審議官

政策評価審議官

秘書課

厚生管理官

文書課

会計課

地方課

総合政策課

政策金融課

局長

次長(3)

総務課

司計課

法規課

給与共済課

調査課

主計官(11)

総務課

調査課

税制第一課

税制第二課

税制第三課

主計監査官

局長

参事官

総務課

管理課

関税課

監視課

業務課

調査課

局長

信用機構課

局長 税関支署

税関出張所

税関監視署

次長

総務課

調査課

国際機構課

地域協力課

為替市場課

開発政策課

開発機関課

財務事務所

出張所

大臣官房

内部部局

[財務省の使命]納税者としての国民の視点に立ち、効率的かつ透明性の高い行政を行い、国の財務を総合的に管理運営することにより、健全で活力ある経済及び安心で豊かな社会を実現するとともに、世界経済の安定的発展に貢献すること。

財務省の活動財務省は、国の資金の流れという観点から、国家のあらゆる分野について重要な動きに関わっています。担当する多岐に渡る活動について、政策立案の最前線で活躍する職員から紹介します。

第一部

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予算編成とは

 予算は、その時々に日本が直面する課題と、それらを克服するための処方箋が凝縮された政策の集合体です。急速な少子高齢化、地方消滅、相次ぐ自然災害、厳しさを増す安全保障環境、そして過去最悪の財政状況。課題を挙げればきりがありません。 こうした中での予算編成は、国のかたちをまもることに直結すると言えます。日本の優れた社会保障システムや地方の美しい田園風景などを守り、未来に引き継ぎたい。自分を含めた国民一人ひとり、予算担当者、相手省庁、全ての関係者の思いを予算に刻み込む、これが予算の編成です。

責任重く、困難な仕事

 ただ、単にみんなの「やりたいこと」を予算に載せればいいわけではありません。財政規律を堅持しつつ、限られた予算を配分する。予算の選択と集中、優先度の高いものへの重点配分が必要になります。 しかし、「言うは易く、行うは難し」です。要求側はみんな「これが最優先」「これが最適な解決策」と考えます。何が本当の

防衛予算の編成

 財政と安全保障は、古来より共に国家を支える屋台骨。しかし、両者の関係は時に緊張し、大蔵大臣が軍部に暗殺されることもありました。そして現代、防衛予算の編成は1人の主計官を含め14人のチームが担当します。

概算要求

 8月末に防衛省から平成30年度の予算要求、その額5兆2,551億円。過去最高額の要求だとの報道の中で、北朝鮮が核実験。防衛予算の編成はそうした緊迫感の中で始まりました。

議論の本格化

 日本の防衛力は5年計画の「中期防衛力整備計画(中期防)」に従って整備されます。平成30年度は今の中期防の最終年度。調達すべき装備品の数は中期防に規定されているので、争点は、数量というよりむしろ価格。必要な防衛力を整備するために、同じ性能でいかに安く装備品を確保するかを追求します。 民生品の活用や、まとめ買いなどで調達手法を工夫します。装備品の原価を分析し、過剰なスペックや不要な価格上乗せを指摘することもあります。財務省の審議会でも、調達原価の計算方式の課題を指摘しました。ただ、本来必要な性能や部品まで削るのは本末転倒。必要な部品がなく維持整備が不十分だと、事故の原因にもなりますし、何より日本の防衛力に支障をきたします。 また、装備品の製造工場を視察して「こうすれば工数を減らせるのでは」と提案することもあります。防衛の最前線を実際に見ることも不可欠。大きな装備

Takuya ODAWARA

[平成14年入省]

平成 14 年 大臣官房総合政策課平成 15 年 大臣官房政策金融課平成 16 年 福岡国税局平成 17 年 留学(米・イエール大)平成 18 年 在ニューヨーク日本国総領事館 副領事平成 20 年 大臣政務官秘書官平成 21 年 国税庁調査査察部査察課 課長補佐平成 22 年 沼田税務署長平成 23 年 関税局業務課 課長補佐平成 24 年 大臣官房政策金融課 課長補佐平成 25 年 青森県農林水産部団体経営改善課長平成 27 年 青森県総務部財政課長平成 28 年 主計局法規課 課長補佐

主計局主計官補佐(防衛係担当主査)

小田原 卓也

05 財務省の活動 06

課題で、国が予算を使って解決すべきものなのか。政策金融や規制など予算以外の手法の有効性、自治体や民間主体を巻き込めるかどうかも検討します。素朴な疑問をぶつけ、謙虚に学び、関係者の納得を得るまで議論して、ゴールを目指します。 事業者や業界団体の方との意見交換や、現場の課題を見て、はじめて実感が持てることも多いです。そうした「生」の情報を背景に、相手省庁が考えもしなかったような建設的な提案もしていきます。学界や立法府との率直な議論や調整も欠かせません。 予算編成の仕事は、このように責任が

の導入を優先するあまり、修理や補給が疎かになるなど現場にしわ寄せが行っていないか。防衛予算は現場抜きには語れません。日本の防衛という大きな責任を胸に抱きながら、必要な防衛力を現場から形作っていくのです。

予算の概算決定、そして来年度へ

 11月末、弾道ミサイルが飛び、議論の緊迫感も増していきます。政府・与党のプロセス、財務大臣・防衛大臣の折衝を経て、最終的に防衛予算は5兆1,911億円。6年連続の増額となる一方で、調達手法の工夫などを通じて調達改革を進めた結果、装備品の製造期間にわたる複数年の財政負担を2,000億円圧縮できました。限られた財源を有効に活用し、必要な防衛力の質と量を確保する「筋肉質」な予算になったと言えます。 平成30年末には次の中期防が策定されます。今度は、装備品の量も議論の対象。しかし、安全保障環境が厳しくなる中でも、防衛予算を青天井にはできません。現実の制約の中で日本の防衛をまもることが、防衛予算担当者の責任です。調達の効率化の取り組みは次の中期防の議論でも活きてくると思います。

おわりに

 予算編成にあたっては、専門性の高いプロの論理や現場の事情をよく理解し、地道な作業を粘り強く進める必要があります。それでいて、未来への視点を持って、木も森も見ることが求められます。チャレンジングな仕事ですが、経験ある先輩、優秀な仲間とともにゴールを目指す予算編成の仕事は、圧倒的な成長機会を与えてくれます。

重く、簡単ではないですが、政策の企画立案を担当する者の総合力が問われるもの。やり遂げた後の「成長した感」は何にも勝ります。

次の予算の編成に向けて

 予算に関連する業務は編成後も続きます。予算の編成(Plan)後、予算が適切に執行(Do)されているか、実態を調査・検証(Check)し、次の予算編成に活かします(Action)。予算執行の結果としての決算も後々の予算編成に反映していきます。PDCAの取り組みや決算が、次の予算編成を支えます。

現 在 、私 が 携 わって い る 業 務 に つ い て

政 策 分 野 に 関 す る 総 論業務の主なカウンターパート

概 要

予算編成は、この国のかたちをまもり、そこに生きる人たちに希望ある未来を引き継ぐため、課題解決の処方箋を創り上げる仕事。現場の課題を把握し、解決策を描き、関係者に働きかけ、説明し、実行する。頭から足まで政策の企画立案担当者に必要な全ての能力が求められるレベルの高い仕事ですが、早く追いつきたいと思える先輩、尊敬すべき同僚に日々刺激を受けながら、成長を実感しつつ励んでいます。

各省庁

国会議員

各業界団体

地方公共団体

経済界

学界

マスコミ

各国財政当局

国際機関

予 算 編 成財政政策

予算をつくり、国のかたちをまもる

黒野 瑠夏Ruka KURONO

[平成29年入省]

主計局総務課

主計局総務課企画係は、毎年度の予算編成全体を統括し、長期的な経済・財政運営目標と整合的になるよう取り組んでおり、私は主に過年度予算の分析と、各予算の編成状況の整理を担当しています。自分が各係とやりとりしながら作成した資料をもとに来年度予算の道筋がつけられるため、プレッシャーは大きなものですが、限られた枠の中で予算の「質」を向上させる工夫を垣間見て刺激を受けるとともに、予算の姿が眼前で定まっていくダイナミズムを感じています。

係員の業務

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Koichi ITO

[平成16年入省]

平成 16 年 理財局総務課平成 17 年 理財局国債企画課平成 18 年 理財局国有財産企画課平成 18 年 広島国税局平成 19 年 関税局関税課平成 20 年 関税局総務課平成 21 年 留学(米・コロンビア大、ニューヨーク市立大)平成 23 年 大臣政務官秘書官平成 25 年 在アメリカ合衆国日本国大使館 二等書記官平成 26 年 在アメリカ合衆国日本国大使館 一等書記官平成 28 年 大臣官房文書課 課長補佐

主税局税制第二課 課長補佐

伊藤 孝一

掛林 美智Michi KAKEBAYASHI

[平成28年入省]

主税局税制第三課

主税局税制第三課にて法人税(特に租税特別措置法)の税制改正に携わっています。平成30年度税制改正で目玉となった賃上げや生産性向上に着目した税制をはじめとする諸制度について、夏から秋にかけて各省庁と連日協議し、公平性、政策目標、それを実現するためにふさわしい制度のあり方、政策の先にあるこの国の姿等について検討を重ね、冬から春にかけては法令の作成作業に関わりました。若手職員であっても、あらゆる政策の本質を考え、議論し、形にすることができるこの仕事に日々やりがいを感じています。

07 財務省の活動 08

係員の業務

国家の運営には租税が不可欠です。財務省主税局では、局長以下200名弱の職員が租税制度の企画立案等を行っています。所得税、法人税等の各税目に加え、国際租税、税収の見積り、税務手続の整備、外国調査といった担当に分かれますが、一丸となって毎年の税制改正に取り組み、租税制度をより良いものにすることが使命です。

業務の主なカウンターパート

概 要

国税庁

総務省(地方税担当部局)

各省庁

産業界

学者

エコノミスト

国会

マスコミ

国際機関

外国税務当局

千年変わらない役割

 私たちが日本で安心して生活するには、外交や国防はもとより、警察や消防、学校教育といった公共サービス、年金や医療の給付、道路整備や災害対策、公債の返済まで、様々な経費がかかります。これを賄うために課されるのが租税です。古今東西、租税は国家運営の要であり、千年前も今も、そして千年後も、その基本的役割が変わることはないでしょう。

毎年の税制改正

 税制は普遍的な役割を持つ一方で、経済活動に大きな影響を与えることから、不断の見直しが求められます。例えば、最近では働き方の多様化を踏まえた所得税の見直しを行っています。また、企業にインセンティブを与える法人税制や環境性能の優れた車に対するエコカー減税等は期限を区切り、都度見直しています。経済社会の変化や国際情勢を踏まえてどのような見直しが必要か、毎年秋から冬にかけて集中的に検討を行い、翌年の通常国会での税制改正法案の成立を目指します。 予算と税制は一体不可分ですが、予算は単年度のお金の配分、税制は継続的な

「観光財源」の担当

 7月、主税局に異動し、「観光財源」の担当を命じられました。成長戦略の柱である観光の充実を図るため、観光庁が財源の確保策を検討しているものです。財源を確保した上で重要政策を進めたい、という提案を財務省が応援しない理由はありません。9月には観光庁で検討会が立ち上がりました。

制度創設の使命感、躍動感、達成感

 11月、検討会が新税の導入を提言しました。主税局でも並行して制度設計を進めます。出国に課税するにあたり、まず、出国の大半を占める航空会社の定期便については空港使用料と同様、航空券を通じて徴収することとしました。さらに、国交省の担当局や国税庁、関税局と何度も検討した結果、既存の徴収方法がないプライベートジェットや船も含め出国全般に公平に課税する制度にすることができました。また、税収の使い道について観光庁や主計局と連日議論し、観光政策にも詳しくなりました。 「どうすれば望ましい制度ができるか」と頭を絞る過程で、国の重要政策に携わる使命感、省内外の仲間と日々課題を乗り越える躍動感、絵空事ではなく実社会で機能する制度を創り上げる達成感を味わえたのは、役人冥利に尽きます。 12月に与党及び政府の税制改正大綱で新税創設が決定された後も、内閣法制局等と法制面や実務面の詰めを行い、2月に「国際観光旅客税法案」として国会

お金の徴収、という点で異なります。税制は常に、「なぜ私がこの税を納めないといけないのか」から「時代に合わないのではないか」まで、様々な声に向き合わなければなりません。このことが、税制企画という仕事を困難でやり甲斐のあるものにしています。

議論し続け、見直し続ける責任

 私たちは消費税を払っていますが、皆さんは消費税法が成立した昭和63年には生まれていなかったのではないでしょうか(私は小学生でした)。当時、国会や政府内では大変な議論をしたに違いありませんが、その後も30年間、消費税を巡る議論は尽きることがなく、また、日本を

に提出、審議いただくことになりました。もし機会があれば(?)、長くないので読んでみてください。極力シンプルな仕組みにしたつもりですが、読みづらい部分も含め、条文全体に検討の苦労と工夫が詰まっています。

難しい仕事も一所懸命、前向きに

 主税局一年生の私にとって、8つの間接税(!)を担当しながら新税を創設するのは楽な仕事ではありません。でも、国税局や関税局での実務経験、留学や大使館での外国経験、秘書官や文書課での国会対応の経験、その他学生時代の経験も含め全身でぶつかって、一所懸命、前向きに役目を果たすしかありません。財務省は難しい課題に直面していますが、国内外で研鑽を積みながら、国民全体のため前向きに仕事をする仲間として、将来一緒に働くことを心待ちにしています。

取り巻く状況の変化に応じ大きな改正を経験しました。主税局の仕事は、この世に生を受けていない世代も含め人々に税を課す責任を負い、将来を見据えた制度を創るだけでなく、議論し続け、見直し続け、次代に託すことだと、4歳になる愛娘の父親としても強く実感しています。

現 在 、私 が 携 わって い る 業 務 に つ い て

政 策 分 野 に 関 す る 総 論

変わりゆく社会と、変わらない役割

税 制 企 画財政政策

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経済・財政政策の総合調整

 財務省は、予算や税制、財政投融資など、マクロ経済政策に関する多くの政策ツールを所管しています。マクロ経済政策が適切に運営されるためには、これらのツールが、日本銀行による金融政策や政府が進める構造改革と最も効果的な組合せのもとで実施される必要があります。総合政策課は、省内外の機関・部署と連携しつつ、その要の役割を果たしています。

経済情勢の把握・分析

 時宜にかなった適切な経済政策を実施するためには、的確な情勢分析が大前提になります。各種機関が集計している経済指標等の情報を幅広く収集するほか、エコノミストや学者との意見交換などを通じて、日本経済を取り巻く構造的・循環的な動向を客観的に把握し、正確かつバランスが取れた分析を行うよう努めています。

経済政策の検討

 人口減少や高齢化、労働需給の逼迫や物価上昇率の低迷などへの対応が経済の重要課題となる中、財政政策や金融政策、構

09 財務省の活動 10

造改革を適切かつ効果的に講じる不断の努力が求められています。その際、政策案の理論的根拠を十分に理解しつつ、短期的及び長期的視点の双方に立った検討が必要です。また、経済的な結び付きがグローバルに深化する中で、何が世界共通の現象で何が日本固有の問題かも考えなければなりません。検討すべき論点は多岐にわたりますが、課内で丁寧に議論を重ねながら、あるべき経済政策を追求し続けています。

持続的な経済成長に向けて

 総合政策課では、経済財政諮問会議等の政府の各種会議や日本銀行の金融政策決定会合など省外の政策検討の場と、省内の関係部局との結節点として、日々、必要な政策調整や情報収集等を行っています。 平成29年12月に、政府は、少子高齢化という最大の壁に立ち向かい、持続的な経済成長を実現するため、「新しい経済政策パッケージ」を閣議決定しました。その中で、消費税率10%への引上げによる増収分の一部等を財源として活用しつつ、社会保障や教育に係る重要施策を実施することが決められています。本施策の政府全体の取りまとめは内閣官房(「人生100年時代構想推進室」(37ページ参照))ですが、総合政策

内外経済情勢の分析と政策の総合調整を通じ、最適な経済政策を追求

末光 大毅Daiki SUEMITSU

[平成11年入省]

大臣官房総合政策課 企画室長

課も財務省の前線に立って、国民負担に由来する財源が真に効果的に用いられるよう、知恵を絞りました。

市場変動への対応

 内外の金融資本市場の動きは時々刻々と変化していますが、必要に応じて適時適切な対応をとるためには、関係当局が緊密に連携することが求められます。このため、金融庁や日本銀行とともに、「国際金融資本市場に係る情報交換会合」を開催し、最新情報の交換を行っています。

歴史に耐え得る仕事を

 マクロ経済政策は人々に及ぼす効果・影響が直ちに見えにくいものですが、そうであるからこそ、その業務に携わる者は、将来世代をはじめ直接知り合うことがない人々の生活に思いを馳せる洞察力や責任感が求められると思います。目の前の経済現象の本質を見極めながら、より良い未来を作り上げるとの気概を持って業務にあたることで、歴史に耐え得る経済政策運営が可能になると考えています。同じ思いを深く共有する皆さんとともに仕事ができる日を楽しみにしています。

財政投融資ってなんだろう

 財政投融資とは、国債(財投債)を発行して調達した資金などを元手に、政府が行う投融資活動です。供給した資金を後に回収する点で、補助金などとは異なっています。 財政投融資の具体的な資金供給方法は、以下の3類型があります。

・主に財投債の発行で調達した資金を元手に、長期・固定・低利の融資を行う「財政融資」・政府保有株式の配当金などを元手に、政策的必要性が高いがリスクが高く民間だけでは十分に資金が供給されない事業に対して出資を行う「産業投資」・政府関係機関などが発行する債券などの元利払いに対して保証を行う「政府保証」

 財政投融資は、社会の様々な分野で活用されています。例えば、政策金融機関への融資によって、中小企業等の資金繰りのほか、創業・事業再生といった地域活性化に資する取り組みを支援しています。また、独立行政法人への融資を通じて、児童福祉施設や病院などの整備を推進しています。民間企業の海外投資やインフラ展開を支援し

ている国際協力銀行や、災害復旧事業や教育施設、上下水道などの整備を行う地方公共団体の資金調達も支援します。 民間資金が行き渡りにくい分野に対して、政府の立場を活かして的確にファイナンスを行います。財務省は、財政投融資という形で、マーケットにおいてユニークな役割を果たしており、近年の各年度の規模は10兆円台半ば、残高は150兆円規模に及んでいます。

財政投融資計画編成業務

 財政投融資は、毎年度、どの機関に、どれくらいの資金を供給していくのかについて「財政投融資計画」という形でとりまとめられます。私は計画編成全体の進捗管理・内容調整を行っています。 計画の編成過程では、関係機関・主務省との間で、

・施策の必要性、重要性・国がやるべきことか、民業圧迫とならないか・確実に返済されるか

といった視点で個別の出融資について1つ

ひとつ具体的に議論を積み重ねていきます。 並行して、計画全体として、どのような特徴を持たせるのか、野放図な計画となっていないかなど、全体を俯瞰した議論も重ねていきます。 私が担当した平成30年度の計画は、我が国の生産性向上に向け、設備投資に前向きな事業者支援のための投融資を拡大、日欧EPAやTPPの進捗を受け農業者向けの資金を倍増させるほか、インフラ面で大都市環状道路等の整備に資するよう1.5兆円の資金を供給することとし、総額14.5兆円になりました。 編成においては、どのような分野に注力すべきかといった財政の視点と、確実に返済がなされるかといった金融の視点の双方のバランスが求められます。この点が財政投融資の難しさでもあり、おもしろさでもあります。各年度の編成に予め決まった正解はありません。現在の経済金融情勢を踏まえ、翌年度の計画がどうあるべきかについて、幹部のみならず、共に働く係長や1年生も巻き込んで議論を行い、みんなの知恵を総動員します。 将来、入省される若いみなさんと一緒に仕事ができることを楽しみにしています。

財政投融資~財政の視点と金融の視点の双方を大切にする仕事~

理財局財政投融資総括課 企画調整室長

経済情勢に適切に対応し、財政政策を含む経済政策が最も効果を発揮できるよう、総合政策課は省内外の結節点として必要な政策調整を行っています。経済情勢に係る各種情報の収集と分析を幅広く丁寧に行った上で、短期的・長期的視点や理論的根拠を踏まえながら、最適な経済政策の実現を日々追求しています。

業務の主なカウンターパート 概 要

財政投融資とは、税財源によらず、財投債(国債の一種)の発行によって調達した資金などを財源とする、政府による投融資活動です。リスクが高く、民間では十分に対応できないものの、政策的必要性から資金供給を行うべき分野に対して、長期・固定・低利の融資やリスクマネーの供給を行っています。

業務の主なカウンターパート 概 要

内閣官房

内閣府

日本銀行

経団連等の民間団体

民間エコノミスト

大学・シンクタンク

格付機関

外国人投資家

政策金融機関(日本政策金融公庫、国際協力銀行など)

独立行政法人(JICAなど)

各省庁

国債発行当局

官民ファンド

地方公共団体

平成 11 年 大臣官房文書課平成 13 年 留学(米・カリフォルニア大)平成 15 年 主計局総務課平成 17 年 関税局関税課 課長補佐平成 19 年 在インド日本国大使館 二等書記官平成 21 年 在インド日本国大使館 一等書記官平成 23 年 主税局総務課 課長補佐平成 24 年 主税局調査課 税制調査室長平成 26 年 主計局主計官補佐(厚生労働係担当主査)平成 27 年 主計局主計官補佐(地方財政係担当主査)平成 28 年 大臣官房総合政策課 政策調整室長

高橋 太朗Taro TAKAHASHI

[平成13年入省]

平成 13 年 理財局総務課平成 14 年 理財局国債課平成 15 年 仙台国税局平成 16 年 金融庁総務企画局企業開示参事官室平成 17 年 金融庁総務企画局企画課平成 18 年 留学(中・北京大)平成 20 年 大臣政務官秘書官平成 21 年 大臣官房総合政策課 課長補佐平成 22 年 主計局主計企画官補佐(財政分析係担当)平成 23 年 主計局調査課 課長補佐平成 24 年 主計局総務課 課長補佐(歳入・国債係担当)平成 24 年 新潟県総務管理部地域政策課長平成 26 年 新潟県総務管理部財政課長平成 28 年 主計局主計官補佐(厚生労働係担当主査)

民間金融機関 マーケット関係者

財政投融資財政政策マクロ経済政策財政政策

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 「為替」といえば何を思い浮かべますか? 海外旅行で両替、円高還元セールで買物、FX取引で一喜一憂…。個人レベルでも様々でしょう。企業活動にも大きな影響があるのはご存知のとおり。為替レートの乱高下があれば、先行きが不透明になり、新たな投資や賃金アップに慎重になるかもしれません。 為替相場は、国民生活にとって身近であり、日本経済に大きな影響を与える存在です。為替レートの過度な変動や無秩序な動きは、経済・金融の安定に対して悪影響を与えうるものであり、為替レートは経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいと言えます。

 2016年日本時間6月24日、英EU離脱国民投票の開票が始まります。大方は、英国のEU離脱は否決されるとの見方でしたが、予想を覆す結果に。ドル円は、1日で107円近辺から99円まで8円も急落…。 そして、6月28日に着任。市場では神経質な動きが続きます。着任当初から、日々市場動向の情報収集を行いながら、市場とのコミュニケーションに頭を悩ませ、実務担当として何があっても対応できるよう準備するなど、目まぐるしい日々。市場は待ってはくれません。こうした状況は、米大統領選まで続きます。

 2016年11月8日、米大統領選挙。大方の予想は、女性初の大統領誕生。英EU離脱国民投票時の経験を踏まえ、逆の結果になれば急激な円高進行の可能性が高いことを想定し、担当者として万全の準備を整えました。 そして、結果は大方の予想を裏切るトランプ大統領の誕生。ドル円は、105円台半ばから急激に円高になり、あっという間に102円台に突入。 そのような状況の中、準備していた対応を開始しました。まずは、財務省、金融庁、日銀による三者会合の緊急開催。すると、101円台で下げ止まり、相場は反

11 財務省の活動 12

 為替の安定に向けて対応していくことが財務省の役割です。

 為替市場は24時間休むことなく、世の中の森羅万象を反映して、目まぐるしく様相を変えます。 各国の要人発言、経済指標、選挙、貿易交渉、安全保障環境の変化など政治・経済・外交面の要因だけでなく、クリスマス休暇など社会イベントも値動きを左右します(市場のプレイヤーの多寡が影響します)。また、国際金融市場において、為替市場の動向は、各国の株式・債券市場、原油などの商品市場の動向から影響を受け、また、逆に影響を与えます。「Buy the rumor, Sell the fact(噂で買って、事実で売る)」。実需筋(輸出入企業や年

転、2016年年初来の急激な円高を巻き戻す展開につながっていきます。

 その後、市場は落ち着きを見せるようになったものの、トランプ大統領は、就任前後から、ドル安を望むような発言、日本の金融政策に対する円安誘導批判などを展開しました。こういった要人の発言は市場の動揺を招きます。 我が国は、様々な機会を捉えて日本の立場や事実関係を説明。そして、為替については、専門家たる財務省間でコミュニケーションを継続することとなり、これまでのG7・G20の合意内容を踏襲することができました。 そして、2017年の為替市場は、総じて安定的に推移しました。

 2018年の相場展開は、2017年とは全く異なる様相を見せています。株の乱高下、米国の長期金利の上昇、ドル安…。今後も、どのように市場が動いていくのか、予断を許しません。 市場は様々な顔を見せます。過去と全く同じ局面はありません。日々目まぐるしく変わる市場にどう対応するのか、そして、市場が日本経済・世界経済にとって望ましくない動きを見せた場合、どのような対応をすべきか。 自ら必要な知識を見つけ吸収し、その対応を自分の頭で考え抜き、同僚や関係者との議論の中で磨いていくことが何よりも大事です。 そんなことを楽しめる新しい仲間をお待ちしています。

金・生保など)の動向だけでなく、投機筋(ヘッジファンドなど)の思惑でも市場は動きます。

 為替市場課では、外貨準備の運用を含め、様々な業務を行っています。例えば、為替市場のモニタリング、市場とのコミュニケーション、各国通貨当局との意思疎通です。 市場に影響を与えうる当面のイベント、各国の経済状況や経済政策の方向性といった点を頭に入れつつ、日々の市場動向を把握します。その上で、必要なときは、市場へのメッセージを検討します。さらに、為替介入を実施するとなれば、その最前線で実務を担当します。 また、グローバル化した国際金融市場では、日本発でなくとも、為替の乱高下が起こりえます。そのため、各国通貨当局との間で意思疎通を図ることも重要です。 為替政策には、高度な専門知識を必要としつつ、迅速かつ的確な対応を要求する仕事が数多くあります。簡単ではないですが、「国家」の立場から市場と対峙し、時には敢然と立ち向かう、極めてエキサイティングな仕事と言えます。

現 在 、私 が 携 わって い る 業 務 に つ い て

政 策 分 野 に 関 す る 総 論業務の主なカウンターパート

概 要

為替の安定は、日本経済・世界経済の健全な発展にとって極めて重要です。財務省は、為替市場の動向を常に注視し、為替の安定に向けて様々な対応を行っています。

市場と国家の結節点に立つ~「通貨マフィア」の世界

為 替 政 策マーケット関連政策

Koki HARADA

[平成13年入省]

平成 13 年 理財局財政投融資総括課平成 15 年 福岡国税局平成 16 年 内閣官房郵政民営化準備室平成 17 年 厚生労働省職業安定局平成 18 年 留学(英・LBS)平成 19 年 IMF(国際通貨基金)理事補平成 21 年 主税局参事官室補佐(国際租税)平成 23 年 内閣官房副長官補室 参事官補佐平成 25 年 主計局給与共済課 課長補佐平成 26 年 主計局法規課 課長補佐平成 27 年 主計局主計官補佐(厚生労働係担当主査)

国際局為替市場課 総括課長補佐

原田 浩気

日本銀行

各国通貨当局(財務省・中央銀行)

IMF

金融機関

関係省庁(外務省、金融庁など)

為替レートの国民生活への影響と財務省の役割

為替市場はどのように動くか為替政策の実務

何が起こったか

私が経験した出来事の一部を簡単に紹介します。

Episode1: 為替市場課への異動~英EU離脱国民投票直後

Episode2: 米大統領選挙

Episode3: 米新政権への対応

政策対応に当たって大事なこと

投資家(輸出入企業、年金・生保、ヘッジファンドなど)

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13 財務省の活動 14

日本国債のセールスマンとして

歴史の1ページを紡ぐ

中対 剛Go NAKATSUI

[平成19年入省]

理財局国債企画課 課長補佐

関税政策とは

 関税とは輸入品に課される税であり、輸入品に課す関税率の上げ下げ等を行うことで、国内産業保護や消費者利益の増大を通じた貿易促進を図ることが関税政策の基本的な役割です。関税局では、国内産業界や消費者への影響だけでなく、これまでの国際交渉の経緯や今後の日本の通商政策も踏まえ、適切な税率水準の設定、輸入急増時のセーフガードの制度設計等、物資所管省庁や業界等と議論をしながら関税政策の企画立案を行っています。また実態把握のため生産現場等に行くことも、Ministry of Financeの中では珍しく「モノ」に着目した政策立案を行う関税局の特徴と言えます。

広がる政策課題

 こうした伝統的な役割に加え、近年関税政策は急速にその政策課題が拡大しています。経済活動のグローバル化やEC(電子商取引)の普及により、貨物量の増大に加えて流通の質の向上(より早く、より確実に)も益々求められる中、通関における手続きの円滑化も重要な政策課題となっています。 国境を超えて動くのはモノだけではありません。10年前には年間800万人程度だっ

た訪日外国人旅行客は今や2800万人を超えており、こうしたヒトの流れは今後も拡大が見込まれます。経済の観点からも文化交流の観点からもこうした流れは歓迎されるべきものですが、残念ながら歓迎せざるもの ̶ テロ関係者、不正薬物、知的財産侵害品等も日本にやってきます。これらを水際で取り締まりそのための効果的な制度を構築するのも、関税政策が直面する大きな課題です。

歴史の1ページを紡ぐ

 関税政策を実行するために必要な法制度の企画立案が私の業務の一つです。具体的には、所管省庁からの関税改正要望を踏まえ、他の法令と齟齬はないか、実証研究結果や経済連携協定等の国際的な動きとの整合性は、等々の論点を一つひとつクリアしながら、関税関連法の改正作業を進めていきます。 大変根気のいる作業ですが、明治時代以来、経済活動のグローバル化等、時代に合わせて改正を重ねてきた関税関連法の歴史に、新たなページを紡ぐ緊張感と充実感が背中を後押ししてくれます。

大局的な観点に立って

 昨年、ある農産品の輸入量が短期的に急

増したことで、数十年ぶりにセーフガードが発動し関税率が引き上げられました。「良好な外交関係に影響が出るので即刻撤回すべきだ」との意見が出る一方で、「国内農家保護のためセーフガードは堅持すべき」との声も聞こえます。「高まる外圧」「庶民の家計を直撃か」との刺激的なヘッドラインも報道されました。 それぞれの立場から見ればもっともな主張です。外交的観点から、国内産業の観点から、国民生活の観点から。では財務省が依るべき観点は何か。それは大局的な観点ではないかと思います。外交も、国内産業も、国民生活も、それぞれの立場を大局的な観点からバランスを図れる唯一の組織、それが財務省だと言えます。 今回の発動の一要因として制度設計時と現在の国際環境の相違を明らかにしつつ、セーフガード発動による国内産業・消費者への影響を検証した上で制度見直しを検討する道筋を敷くこととなりました。それが、私が紡いだ新たな歴史の1ページです。そして今後も、財務省が大局的な観点から議論をリードすることを確信しています。 次の歴史の1ページを紡ぐのは、貴方かもしれません。

藤中 康生Yasuo FUJINAKA

[平成14年入省]

関税局関税課 関税企画調整室長

国が公共サービスを提供していくためには、その裏付けとなる資金が欠かせません。しかし、税収ではその6割程度しか賄えておらず、残りはほぼ国債を発行することで資金調達しています。そのような中、如何に確実かつ円滑に、調達コストが最小限になるよう国債を発行し、必要な資金を調達していくかが国債管理政策です。

業務の主なカウンターパート 概 要

証券会社

外国債務管理当局

日本銀行

国内外の投資家(銀行、生命保険会社投資運用会社、海外中央銀行など)

平成 19 年 主計局総務課平成 20 年 主計局調整第一係平成 21 年 熊本国税局平成 22 年 金融庁監督局銀行第一課平成 24 年 留学(英・LSE、LBS)平成 26 年 国税庁長官官房人事課 課長補佐平成 27 年 横浜市財政局財政部財政課 財政担当課長

平成 14 年 国際局総務課平成 15 年 国際局開発政策課平成 16 年 仙台国税局平成 17 年 留学(英・ノッティンガム大)平成 18 年 大臣官房秘書課財務官室平成 20 年 英国財務省平成 22 年 大臣官房総合政策課 課長補佐平成 24 年 関税局業務課 課長補佐平成 25 年 内閣官房副長官補室 参事官補佐平成 27 年 主計局給与共済課 課長補佐平成 28 年 主計局主計官補佐(総務係担当主査)

国債管理政策マーケット関連政策 関税政策国際関連政策

関税制度の企画立案を通じて国内産業保護や貿易促進等を図ることが関税政策であり、モノやヒトのクロスボーダーの移動が活発化する近年においては、通関の円滑化や効率的な取り締まりも重要な課題となっています。また財務省は、EPA(経済連携協定)交渉や途上国税関への技術協力といった国際的な業務も担っています。

業務の主なカウンターパート 概 要

各省庁

内閣法制局

国会議員

学者・エコノミスト

産業界

どの国債を売るか

 国は、国債という商品を投資家に売る(=発行する)ことで資金調達を行います。約1,000兆円にまで国債残高が積みあがる中で、平成30年度は、国債の借換え等を含め、約150兆円もの国債を売り、資金を調達しなければなりません。 一口に「国債」といっても、1年から40年までの償還期限が異なる国債、物価連動国債、個人向け国債など、その種類は多様です。一方で、投資家層も様々で、投資家によって国債へのニーズは異なります。 ニーズにあわないものを売ろうとすれば、安く売らざるを得ません。つまり、高いコストで資金調達せざるを得ません。そこで、需要や市場動向を見極めながら、最小限のコストで調達できるよう、どの国債をいくら発行するかを国債発行計画で決定しています。国の資金ファイナンスを背負い、マーケットに参

加する。財務省にしかない醍醐味がここにあります。

どう国債を売るか

 発行計画に基づき、日々の入札を通じて、円滑に市場で国債を売ることも我々の使命です。国内外の金融政策や経済動向等、市場に影響を与える要因に目配せしながら、投資家からの声を聞き、市場環境や投資ニーズを的確に把握していくことが欠かせません。また、市場のインフラ整備・改善等を行い、国債市場を魅力的なものにすることも重要です。マーケットにおいて長期的な国の信用力を確保すること。これもまた財務省が担う仕事の一つです。

国債を買ってもらうために

 近年、海外投資家は、日本国債を積極的に売買し、市場でのプレゼンスを高めています。そのた

め、私は、NY・ロンドン・香港など世界中を飛び回り、海外投資家に対して、日本の財政や経済状況等について正確かつタイムリーな情報提供を行い、日本国債の販売促進・長期保有を促す取り組みを担当しています。 「少子高齢化社会の中で日本は成長できるのか」「厳しい財政状況だが格下げの恐れはないか」…面談では、経済・財政・金融政策等あらゆる面から厳しい質問が飛んできます。これらに対して、どのような説明だと相手の心に響き、きちんと日本を理解してもらえるか。日本国債のセールスマンとして、常に日本の行く先を考え、自分のプレゼン能力を駆使しながら、日本をPRするよう心がけています。 また、海外の国債管理政策についての調査も私のミッションの一つです。OECDやIMF等が主催する債務管理当局が集う会議に出席し、現下の低金利環境下における発行戦略や市場の流動性低下という課題への対応等について熱い意見交換を行い、日本の国債管理政策に活かしています。

七転八起

 今は良くともこのままの政策でよいのか。日本の将来のために今できることは何なのか。国内外の知見を集めて自分の頭で考え、仲間と議論し、困難を乗り越えていく。乗り越えた先に新たな景色があり、新しい挑戦を続ける、非常に充実した毎日です。是非そんな財務省を訪れてみてください。

片岡 真理華Marika KATAOKA

[平成29年入省]

理財局国債企画課

「コクサイキカクカ」配属と知った時、「国際企画課」と勘違いした程、国債はなじみの薄い存在でした(薬学部出身なのでなおさらです)。しかし今では、国債発行を円滑に進めるために、買い手のニーズに合わせ、どの種類の国債をいくら発行するか、戦略を練っています。国の資金調達手段の具体的な道筋を決めることで財政運営に貢献していることに、大きな責任を感じています。

係員の業務

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15 財務省の活動 16

世界経済の最前線を舞台に

情けは人のためならず、めぐりめぐって己がため

「コクサイカイハツ」?

 「コクサイカイハツ」という言葉を聞いて、それが何を意味しているか知っているそこのアナタ。残念ながら多分アナタは少数派です。私も官庁訪問が終わって当時の大蔵省から内定を頂いた時でさえ、大蔵省が「コクサイカイハツ」政策を所管していることは全く知りませんでした。「大蔵省っていえば、予算でしょ、税金でしょ、あとは円相場かな、てへっ(^_^)」という感じのフツ―の大学生でした。あれから二十有余年。今私は財務省国際局で「カイハツ」企画官として、財務省の「コクサイカイハツ」政策の一翼を担っております。では、「コクサイカイハツ」政策って何のことでしょう?

途上国の経済発展の支援

 「コクサイカイハツ」政策を漢字で書くと、国際開発政策となります。これは、ひらたく言えば、途上国の経済発展のための努力を支援することです。財務省は、国際協力銀行による投融資活動や国際協力機構による円借款の提供といった二国間での途上国支援に加えて、途上国の経済発展を支援することを主な業務とする世界銀行等の国際機関を通じた支援を提供することにより、途上国の経済発展に深く関与しています。貿易や金融取引を通じて世界経済と密

接なつながりを持つ我が国にとって、途上国を含む世界経済全体の持続的な発展を促進することは、我が国経済の発展にも資するものです。また経済協力の推進は、我が国企業が有する優れた技術や商品・サービスを国際社会に売り込む機会も提供し、ひいては我が国企業の海外進出を促す環境整備にもつながります。「情けは人のためならず、めぐりめぐって己がため」。みんな子供のころよく親に言われたこの言葉を日々実感させられる仕事。それが国際開発政策です。

現在の業務について

 私は現在、途上国が実施する気候変動対策や砂漠化防止といった環境問題対策を支援するために設立された国際的な資金提供メカニズムである、地球環境ファシリティ(Global Environment Facility)や緑の気候基金(Green Climate Fund)の理事会メンバーを務めています。PM2.5による大気汚染、地球温暖化による海面の上昇やゲリラ豪雨の多発、砂漠化の進展による黄砂の到来など、最近は環境問題に関するニュースを聞かない日はありません。こうした環境問題への取り組みは、一国における取り組みの成果がめぐりめぐって国境を越え、他の多くの国にも利益をもたらすものです。従って、途上国の環境問題への取り組みを支援していくことは、支援対象国だけでなく、我が国

を含めて広く国際社会に利益をもたらすこととなります。これは、「めぐりめぐって己がため」という国際開発政策の特徴を最も分かりやすく示す分野の一つと言えるでしょう。 理事会においては、途上国で実施される個別の環境対策事業に対する資金提供要求について、審査が行われます。要求に無駄な経費が積み込まれていないか、きちんと環境対策としての効果が得られる内容なのか、日本にどの程度のメリットをもたらすのか、提供された資金が散逸することなく適切に管理・支出される体制が整っているのか、などなど。様々な視点から要求内容を精査し、事務局や各国間の協議を経て理事会としての結論を出していくこととなります。各国の利害がぶつかる理事会において日本の国益に沿った結論が得られるよう議論を導いていくためには、事前の入念な準備が欠かせません。理事会の前はいつも、国内関係省庁との調整に加え、並行して他の国とも個別に協議を行い、理事会本番での議論に備えます。理事会準備は英語での作業が中心ですし、時差があるため理事会の前は連日深夜までの準備作業が続き、全精力を傾けることになります。その分、無事日本の方針に沿った結論が得られた時の安堵感と達成感は格別です。こうした仕事をしていく上では、かつて主計局で主査をした経験や、国際通貨基金(IMF)の日本理事室の職員として世界各国のカウンターパートと交渉した経験、アジア版IMFと言われる東南アジア諸国連合+3マクロ経済調査事務局(AMRO)のスタッフとして逆に要求側の立場で理事会対応を行った経験がおおいに役立っています。多様な経験を積ませつつ、そうした経験を活かして新たな課題に取り組む機会が提供される職場。それが財務省の大きな魅力の一つです。みなさんも是非財務省の職員と会って話を聞き、その魅力を実感してみて下さい。

グローバル化が進展する中、世界経済の持続可能な成長を確保するためには、各国間の政策協調が一層と重要となっています。財務省は、G7(7か国財務大臣・中央銀行総裁会議)やG20などの国際会議・IMF(国際通貨基金)などの国際機関における議論への参加を通じて、日本のプレゼンス向上に向けた対外発信を担っています。

業務の主なカウンターパート 概 要

G7・G20各国の財務省

IMF(国際通貨基金)

外務省

金融庁

日銀など

冨永 剛晴Takeharu TOMINAGA

[平成19年入省]

国際局国際機構課 課長補佐

平成 19 年 国際局国際機構課平成 21 年 留学(英・LBS)平成 22 年 IDB(米州開発銀行)職員平成 25 年 金融庁総務企画局総務課 国際連携・協力室 室長補佐平成 26 年 金融庁総務企画局企画課 課長補佐 (信用制度参事官室)平成 28 年 金融庁総務企画局市場課 課長補佐

野村 宗成Munenari NOMURA

[平成8年入省]

国際局開発機関課 開発企画官

平成 8 年 国際金融局国際機構課平成 10 年 国際局国際機構課平成 10 年 留学(米・ハーバード大)平成 12 年 財務総合政策研究所研究部平成 14 年 国際局総務課 課長補佐平成 15 年 下関市総合政策部長平成 18 年 主計局主計官補佐(総務・地方財政係担当主査)平成 19 年 主計局司計課 課長補佐平成 20 年 主計局給与共済課 課長補佐平成 21 年 IMF(国際通貨基金)審議役平成 25 年 AMRO(ASEAN+3マクロ経済調査事務局)職員平成 28 年 国際局総務課 国際企画調整室長

途上国開発政策国際関連政策

海外支援を通じた国益の実現

業務の主なカウンターパート 概 要

GEF、GCF等の国際環境関連基金

各国財務省、外務省、環境省など

国内関係省庁(外務省、環境省など)

世界銀行 JICA

G20等を通じた政策協調

 かつてないほどに高まっている貿易・投資・金融面での世界各国の結びつきは、世界経済の成長にプラスの影響を与えていますが、同時に各国の経済活動・政策が、相互に大きな影響(スピルオーバー)を与えるようにもなっています。 国際金融関係の主な業務は、世界経済のキープレーヤーが一同に会するG20やG7などの国際会議を通じて、こうしたスピルオーバーに対応するための政策協調を実現していくことにあります。 例えば、2008年9月のリーマン・ショックに端を発する国際金融危機は、世界経済に大きな影響を与えました。こうした中、世界各国が協力して対応策を協議し、実行に移していくことの重要性が改めて認識され、同年11月には、第一回目G20サミットが開催されました。当時から10年ほどが経ちましたが、G20における政策協調は、国際金融

改革や国際租税などの分野で大きな成果を生んでいます。この10年間、日本は国際協調をリードし続けています(浅川財務官の寄稿(33~34ページ)をご参照)。 2019年には、日本はG20の議長国となり、首脳会合のほか財務大臣会合を含めた関連会合が日本各地で開催されます。財務省は、外務省をはじめとする関係省庁とも協力しつつ、G20の成功に向けて、リーダーシップを発揮していきます。

IMF

 こうした国際会議のほか、国際金融の分野では、IMFが大きな役割を果たしています。欧州債務危機に直面したギリシャなどへのIMFの資金支援が、世界経済の安定に大きく貢献しました。 IMFの業務には、こうした加盟国への資金支援のほか、途上国の能力開発(技術支援)、加盟国に

対する経済審査(サーベイランス)と、大きく分けて3つの柱がありますが、日本は、米国に次ぐ出資国として、IMFの業務運営への大きな関与を通じ、世界に常に貢献しています。実際、IMFの意思決定が行われる理事会での日本の発言を準備することは、国際金融分野における大事な業務の一つです。

世界を舞台に

 世界経済情勢の変化に伴い、国際金融分野の優先事項もダイナミックに変わっていきます。こうした変化に対応しつつ、世界中の優秀な同僚たち(主に、各国の財務省や中央銀行、IMFなどの国際機関)との議論において日本がプレゼンスを発揮していくためには、様々なルートを活用した日々の情報収集や学問的な研究結果の吸収、また、国内外の様々な制度やその背景等の理解が欠かせません。こうした、ある意味地味な基礎体力づくり

の上に、はじめて国益の実現や世界経済の持続可能な成長に向けた戦略の立案が可能となります。最終的には、各国との交渉等を経て合意が形成されたものが実行に移されていくこととなりますが、こうしたダイナミズムを当事者として肌で感じられるのも、国際金融業務に携わる醍醐味の一つです。

茂木 真弓Mayumi MOTEKI

[平成29年入省]

国際局国際機構課

国際機構課は、G7やG20、IMFやOECDといった国際的な枠組みに関する業務を担当しています。私はG7やG20を担当しており、日々、国内外のカウンターパートと連絡を取り合いながら、日本の経済外交の一端を担っています。議論される内容は、世界経済やインフラ、金融規制等と幅広く、国際的なテーマでも国内経済につながっているので、情報のインプットもアウトプットも多く、他国の動きによっては迅速な作業が求められるため大変な時もありますが、若手でも国際交渉の議論に加われる刺激的な毎日です。

国際金融政策国際関連政策

係員の業務

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17 財務省職員のキャリアパス 18

渡邊 里香Rika WATANABE

[平成26年入省]

主税局調査課

岡本 実樹Miki OKAMOTO[平成29年入省]

主税局調査課

現在のお二人のお仕事について教えてください。

渡邊 私の課では、税制に関する経済分析や企画立案、中長期的な視点に立った税制の検討などを行っています。税制について知れば知るほど、税制がいかに社会の在り方の基本となっているかに気づかされますし、自分が関わっている仕事が人々の生活と密接につながっていることを日々実感しており、充実した日々を送っています。また、係長として、広い視野を持って税制が経済社会に与える影響等の資料作成等を行うとともに、政府文書の記述等の調整のハブとしてカウンターパートと良好な関係を築き、係全体のパフォーマンス向上のため周囲の業務量・進捗を常に把握することを心がけています。

岡本 私の主な業務は、(1)他省庁や他局

からの経済情勢の変化・各種政府会議に関する情報やそれらに関して必要な作業を局内に展開する業務、(2)毎年の税制改正や中長期的な税制の在り方の検討の前提となる日本経済・社会の構造に関する調査・試算業務です。 (1)は局全体を俯瞰する目線を心がけ、事案の重要度・優先順位を意識して展開しています。(2)は調査・試算したものを、見る人にとってわかりやすい資料の形に作り上げるところまでが仕事です。自分の資料が、最終的に誰によって・何のために・どのように使われるか考えて作成するべきなのですが…まだまだ修業中です。

渡邊係長から見て、岡本さんが特にこの一年で成長したところを教えてください。

渡邊 重要な仕事から些細な仕事まで、手を抜かずに全力で取り組む姿勢が素晴らしいと思って見ています。初めは慣れないとこ

ろもあったかと思いますが、今ではしっかりと業務に取り組んでいます。局内の調整なども安心して任せられるようになりましたし、最近は、資料作成の際などに、自分の意見を言ってくれることも増えてきており、とても頼りにしています。

係長には、いつもどのように仕事を教えてもらったり、相談したりしていますか?

岡本 窓口業務・調査業務ともにこまめに係長に報告することを心掛け、自分の作業の位置付けや今後の方向性を一緒に確認してもらっています。係長がどんな状況でも丁寧な仕事をされること、瞬時に現実的な判断をされるところを特に尊敬しています。些細な仕事の悩みやこれからの働き方、勉強のことなど、何でも相談しやすいお姉さんのような存在であり、何気ない会話の端々にも勉強になることが多い毎日です。

この一年でやりがいのあった仕事、大変だった仕事について、教えてください。

渡邊 調査課の役割の1つに、中長期的な税制の在り方を検討する議論の材料を提供することがあります。テーマは幅広く、例えば税・社会保障による再分配前後のジニ係数の推移や税・社会保険料の負担率、経済成長に伴う税収の変動のように主税局らしいものから、シェアリングエコノミー市場の現状など新しいトピックまで様々です。 補佐・課長への報告・相談の結果論点が深まり次々と新たな疑問点が浮上することも日常茶飯事で、丁寧な調査と深い理解が要求されるので、係長と係員間の綿密な打ち合わせが不可欠です。一年を通じて、上記のような様々なトピックを扱いましたが、調査を経るごとに係内の連帯感が強くなっていきました。特に、私たちの調査内容が政府税調資料の基礎となり、毎回の税制改正の議論が進んでいくのをみたときには達成感がありましたね!

お二人の働いている主税局調査課の雰囲気について教えてください。

岡本 風通しがよく、係長、係員でも、自分の意見を伝えやすい環境なので、働きやすいです。 また、若手・女性が多く、和気藹々としており、楽しくエネルギッシュに仕事できています。国際機関や他省庁など様々な場所での勤務経験を持った人も多く、日々ご指導いただく中で、新しいことに気づかされる毎日です。 仕事以外でも、ボーリング大会や、女性が多いので女子会など、関係を深める機会に溢れています。

就職活動中の学生へのメッセージをお願いします!

渡邊 就職活動は悩むことも多いと思いますが、自分がどのような形で社会に貢献したいのか、丁寧に自分と向き合った時間は必ず自分の糧になるはずです。様々な会社の方からお話を聞ける貴重な機会でもあります。いろいろな選択肢を悩んで、最後に財務省の一員として働くことを選んでもらえたら嬉しい限りです!

岡本 社会の一員として自分が果たしたい思い・役割(志)を実現する手段は様々だと思います。だからこそ、仕事内容はもちろん、職場の雰囲気、職員の生き方等を含め、幅広い要素を選択の材料とするのも良いのではないでしょうか。 私の場合はたくさん悩んだ末、最終的には「学生の自分に想像しうる仕事内容でなかったとしても、この素敵な方たちと一緒であれば働いてゆける」と思ったことが大きな後押しとなり、財務省を志望するに至りました。散々悩んだ末の決意があるから、毎日迷いなく働けているような気がします。 ぜひたくさん悩んで、自分の納得のいく職場を見つけてください。

係長と係員の一日

係長 係員

係長/留学

課長補佐

国税局/財務局係員 課長企画官

主要情報ソースに目を通す。新聞の1面に自分が関わっている案件が出ることも。今朝の大臣の記者会見でも記事に関する質問が出たようだが、大臣をしっかりサポート。自分の仕事が世の中の動きに直結しているという思い。また、調査課には、各省や省内からの税制関連の大量の情報や案件が集積する。今朝は、大臣スピーチの税制部分についての依頼。各税目の発言について、大臣からご発信いただきたいことを簡潔かつ的確にまとめるよう、担当部局と調整。

登庁09:00

政府税制調査会は、調査課が運営方針や議題について企画・立案を担っている会議で、今後の税制の在り方を学者・有識者の委員に議論いただく場。今日は、フリーランスや副業などに従事する人が増えたり、民泊などのシェアリングエコノミーが進展したりしている最近の我が国の動きについて議論。このような議論を間近で見ることができるのも調査課の醍醐味。

政府税制調査会10:00

政府税調が終わり、ひと段落したところで、昼食の時間。課長以下の課内みんなで省内の食堂に行く(お弁当を持ち込む人も!)。仕事の話からプライベートの話まで、リラックスして楽しむ。

昼食12:00

以前から予定されていた政府の閣議決定文書(経済政策パッケージ)の協議が開始された。税に関する記述について課内で検討し、何を書くことができるか、何を書くべきであるか、知恵を絞る。政府の方針を決める重要な文書だ。

文書協議13:00

今日は定例の課内の女子会!…の予定であったが、国会で忙しくなりそう。普段は夕食もゆっくり取るのだが、この日は近くでさくっと女子ご飯。

夕食19:00

他省との協議が進む中で、その進捗状況について幹部に相談し、主税局としての方針を固めていく。調査課は、この文書に対する担当部局の考え方などをまとめて説明する。幹部の判断のベースになるので、大きな緊張感。決定した主税局の方針を胸に、協議再開。硬軟の交渉を経て、協議が無事に終了する。

閣議決定文書の内容についての幹部会議15:00

調査課は、国内の税制の在り方について国内外への発信も行う。今日はIMFの職員との意見交換。自分たちも課長補佐に同行。世界横断的な視野を持つIMFとの議論の中で、我が国の現状とあるべき税制の在り方について、発信。IMFからも、広い視野ならではの示唆を得る。

IMF職員と今後の税制の在り方に関して意見交換

16:00

今朝から検討していた大臣の挨拶については、無事各担当者と内容を合意。明日以降、局内の幹部説明を経て大臣までご覧いただくことになる。また、明日はIMF職員との意見交換の成果をまとめる必要もある。

業務の整理20:00

【係員】財務省職員として必要な知識・ノウハウを学ぶ。

【係長】係のマネジメントを行い、政策立案のサポートを行う。

キャリアパス

インタビュー係長×係員

財務省職員のキャリアパス財務省の職員は、約2年ごとに様々な部局を経験し、キャリアアップしていきます。それぞれのステージで各々の職員がどのような役割を任され、どのようなことを考えているのかを紹介します。

第二部

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2019 財務省職員のキャリアパス

 プライベートセクターとパブリックセクターを繋ぐ人になり、社会をよりよくしたい、そんな思いから財務省に入省し、入省6年目でアメリカのビジネススクールに入学しました。

“当たり前”を疑ってみる

 生まれてからほとんどの時間を東京で過ごした私ですが、Wharton Schoolに来てから、多くの“当たり前”が覆りました。ビジネスストラテジーについての日本との考え方の違い、それがゆえに日本が得たもの失ったもの等、授業や、クラスメートから学ぶビジネス経験や社会への問題意識

は、私の視野を大きく広げてくれました。視野の狭さゆえに、より良い政策提言をする機会を失っていたかもしれない。そんな思いに駆られています。

Comfort zoneから抜け出し、挑戦をし続ける

 アメリカには、現状に甘んじる人より、挑戦する人を尊敬し応援する文化があります。ただ、挑戦といっても、やみくもに手を出すということではなく、多くの準備や判断力や交渉力も必要になります。私も何度も挑戦の機会に恵まれました。 難病の治療法を研究する医療団体に対し、研究促進に向けたコンサルティングを

した際のことです。当初私たちは、資金不足のみが要因との仮定のもと、作業を進めていました。ところが、徹底的な統計調査や、話を聞くのは無理と思われた人々へのインタビューに踏み込んだところ、真の要因が浮き彫りとなりました。現状に甘んじず、挑戦を続けることの大切さを知りました。

皆さんへ

 財務省は、国内外の別なく、“当たり前”を時には疑い、多様な視点から客観的に現状把握に努め、より良い日本経済・社会・ビジネスを求めて挑戦を続けていく職場だと思います。私は留学前に主税局にいましたが、税制が、人の生活のあらゆる側面に寄り添って変わっていくものであり、さらには、積極的に変化を支えるものでもあると痛感しました。引き続き、周りの変化に広く敏感でありたいと思いますし、政府以外のセクターにも聞く耳と行動力を持つ人間でありたいと思っています。さて、私もそろそろ留学後の実践に向けて気持ちが高まってきました。皆さんと一緒に挑戦できる日を楽しみにしています!

財務省に求められる「武器」

 現在私は英国で金融を学んでいます。国際局での勤務を通じて、金融危機の再発防止に向けて銀行部門の構造を理解すること、また主計局での勤務を通じて、財政事情が厳しい中様々なファイナンスの手法に精通することの重要性を痛感したためです。日々複雑化する社会経済問題に立ち向かう財務省は、旧来の知識や技能だけではなく、時代に応じた新しい「武器」も求められる職場です。

財務省で得られる「武器」

 同級生に比べ、会計や企業金融の知識、英語が優れているわけではありません。それでも自分が議論に貢献できる瞬間が時にあるのは、財務省での勤務を通じて、論理的思考力という「武器」が鍛えられたからだと思います。我々は、「この分野が大事だ」という結論ありきの考え方はせず、時々の様々な問題を等しく吟味した上で、リソースも勘案しながら、考え得るベストの政策パッケージを提案します。提案を関

係者に納得してもらうためには、あらゆる観点から筋が通っていることが重要です。その実現のために、日々議論を繰り返し、多方面の人々のもとに足繁く通います。財務省のこの「武器」の強みは、大学や国際機関といった省外でも職員が活躍していることにも表れていると思います。

迷っているあなたに

 この冊子を見ている人の中には、「私は財務省の人達とは違うんじゃ…」と思っている人もいると思います。私もそうでした。私は理系出身で、財務省志望の友人も周りにいませんでした。面接の際、当時の採用担当にこの不安を打ち明けたころ、「むしろ、周りと違うことに自信を持ちなさい。社会が複雑化する中で、財務省には新しい力が必要だ」という言葉を頂いたことを覚えています。まずは気軽に、しかし胸を張って、財務省の門を叩いてみてください。皆さんの力は、きっと財務省の新しい「武器」となるはずです。

中国5県をみる、広島国税局

 広島といえば、牡蠣、穴子、宮島、原爆ドーム…、そんな印象をもって着任した広島国税局。この印象は、着任早々、新たな気づきとともに塗り替えられることとなりました。外国人と近しい街並み、広島に本社を置く多くの大企業、自動車・造船業を中心とした国際的企業、そして、縷々受け継がれてきた産業を守る人々。 そんな広島は広島城の傍らに位置する広島国税局は、中国5県の税務行政を管轄しています。現在、私は調査査察部に属し、大規模法人の税務調査を中心に、査察、徴収等の業務も担当しています。

入省3年目に地方国税局勤務をするということ

〇税務行政とは 税務行政の目指すところは、税の適正か

つ公平な賦課及び徴収の実現です。私の属する調査部門では、法人の財務書類の確認、経理部長や関連社員へのヒアリング、取引先企業への反面調査等をもとに、適正な納税に向けた支援・指導を行っています。 長年調査をされてきた方々に混じり、税務行政のほんの一部を担う日々ではありますが、企業経営への助言や、時に緊迫した差押えに立ち会うこともあり、その重責に接する場面に枚挙の暇はありません。あらゆる場面を通じ、税務行政の現場が、日本の税制を支えていると痛感しています。

〇「営み」を見る 税務調査を通じて、自動車部品業、造船業、産業廃棄物処理業、塗装業、鉄筋業をはじめ、様々な業種の方々と接する機会がありました。その中で、経営者として、一業界人として、真剣に考え、立ち向かうべき

ものに立ち向かう人々の姿を見ました。間違ったことはしていないと、大吹雪の中、工場を一つひとつ案内する会長。近年話題の多額リベートに関連し、自分の信念と向き合い悩む部長。こだわりと自負をもって自身の生業に取り組む姿、そして一方で、様々な事情を抱え、各々の主張をする姿がありました。そして、そうした人々に真摯に向き合い続ける税務職員の姿もありました。税は、人々の「営み」を映します。これ以上の「現場」を私は想像できません。

広島の地から、今後を考える学生のみなさんへ

 奇しくも、私は3年間税制関連業務に携わり、1年ごとに異なる「税」の側面を見てきました。外国税制調査(税制改正部署のバックアップ)→消費税法制(税制改正を1から考え、税法に落とし込む)→広島国税局(納税者と直に接する)…と、これほど包括的に税のことを学べるキャリアパスはあるだろうかと感じます。「税制企画」と「税務行政の現場」、これらが両輪となって「税」を支えている、という先輩の言葉がありましたが、まさにその通りでした。財務省は長期的視座に立った仕事をする場所であるため、大変なこともありますが、その中でも自分なりの色をつけて仕事ができたり、制度のその先を想像したりすると、やはり手応えがあります。税制だけでもまだまだ学ぶべきことは尽きません。これから先、税制以外にもどのような世界が財務省に広がっているのか、とても楽しみにしています。

2年間の学びを糧に、実践へ

Madoka SHIMANUKI

[平成23年入省]

平成 23 年 大臣官房文書課平成 25 年 札幌国税局平成 26 年 主税局総務課

※筆者は写真右端

留学(米・ペンシルバニア大)

島貫 まどか

広島の地から、税制と現場について考える

Toshiko MATSUI

[平成27年入省]

平成 27 年 主税局調査課平成 28 年 主税局税制第二課

広島国税局 国税調査官

松井 都志子

財務省の「武器」とは

Kohei ASAO

[平成24年入省]

平成 24 年 国際局国際機構課平成 26 年 金沢国税局平成 27 年 主計局総務課

留学(英・ケンブリッジ大)

浅尾 耕平

係員キャリアパス 係長/留学

課長補佐

国税局/財務局 課長企画官

【留学】語学の修得とともに、海外の大学院で修士レベルの勉強をする。

国税局/財務局

課長補佐

係長/留学 企画官キャリアパス 課長

地方の国税局・財務局で財務省行政の現場を学ぶ。

係員

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学生へのメッセージ

矢原 雅文Masafumi YABARA

[平成15年入省]

主計局調査課 課長補佐

ある時は南スーダンに、ある時は金融市場に・・・お金の関わるところならどこへでも!

国税局/財務局

係長/留学 企画官係員キャリアパス 課長

補佐 課長

22

2003年国際局国際機構課(新人時代)

21 財務省職員のキャリアパス

【課長補佐】行政の最前線で政策の企画・立案の中心的役割を務める。

財務省で国際的な仕事? 財務省で国際的な仕事というとイメージが湧かないかもしれませんが、財務省は、世界経済の安定的な発展のため、G7、G20等の国際会議の場で財政・金融政策について他国と協調したり、国際通貨基金(IMF)等の国際機関を通じて経済危機に苦しむ他国に支援を行ったりしています。私が最初に配属された国際機構課は、これらへの対応を担う課でした。 G7等で扱うテーマは、各国の経済政策、為替、IMFの融資制度、貧困国

支援、テロ資金対策等、多岐にわたります。専門的な議論が英語で飛び交う中、必死で食らいつき、関係する部署への連絡・連係に努めました。また、IMFの提言に対して、関係省庁とも調整して政府の対応を策定するなどの仕事に関わりました。 国際会議の場で議論をリードしていく上司を見て、自分もいつか同じようになれるのだろうかと疑問に思ったものです(今でも疑問ですが……)。

2006年プリンストン大学

留 学

経済学に四苦八苦 福岡国税局で1年間、法人の税務調査や査察の仕事を経験した後、米国のプリンストン大学ウッドロー・ウィルソン・スクール(公共政策大学院)に2年間留学しました。国際機構課時代の経験から、「自分もデータに基づく客観的な政策提言・議論ができるようになりたい」と考え、計量経済学を

中心に勉強しました。数学は大の苦手なので大変苦労しましたが、その時に身に着けた知識が今の自分の支えとなっています。夏休みには世界銀行のケニア事務所でインターンをする機会を得て、インフラ開発のプロジェクト管理に携わりました。

2008年

金融庁出向

国際金融危機の衝撃 留学から戻った私は、金融庁に出向しました。配属後すぐに勃発したのが、リーマンショックに端を発する世界的な金融危機です。 危機に対応する中で痛感したのが、お金の流れに国境はないということでした。米国で発生した危機により欧州や日本の投資家が損失を被り、影

響が世界中に伝播していく。一国のみで対応することは到底不可能です。各国の担当者と日々喧々諤々の議論を行い、その結果をそれぞれが国内の規制に落とし込んでいく。私もその末端に関わり、証券会社に対するグループベースの健全性規制の導入等を担当しました。

2014年理財局国際業務課

金融市場の一プレーヤーとして 理財局国債業務課は、政府の運営のため、年間200回を超える国債発行入札等を行い、延べ500兆円超という途方もない資金調達を行っています。私の仕事は日々の入札を行いつつ、必要な資金をより確実に、低いコストで調達するための方策を検討、実施することでした。 国内外の経済動向、金融政策、安全保障情勢…国債市場は世界中のあらゆる事象の影響を受けます。当時は各国の非伝統的な金融政策を背景に、

欧州や日本で金利がマイナスになる、つまり借金の額よりも返済額の方が小さくなる事態が生じ始めた頃でした。そうした事態が市場にどんな影響を及ぼすのか、どんな要因があり、いつまで続くのか。簡単に答えは出ませんが、入札は待ってくれません。国内外のディーラーや投資家と日々意見交換しつつ、不確実性の中で政策を判断、実行し、市場の評価を受ける。大変刺激的な仕事でした。

2010年

IMF

IMF出向 続いて私は、IMFにアフリカ局のエコノミストとして出向する機会に恵まれました。IMFではルワンダという国の支援のため、当局とマクロ経済政策について協議したり、南スーダンという独立したばかりの国に出張し、外貨が不足して食料や医療品の輸入にも苦労する中、必要な対応について検討したりしました。また、いくつかの調査ペーパーを発表することもできました。 一国の経済は、生産、消費、貿易、金融など、様々な活動から成り立ち、相互に連関しています。例えば政府の消費(財政支出)を拡大すれば、経済成長率は一時的に上昇しますが、生産能力が伴わなければ輸入が増え、通貨安となり、物価や金利の上昇を招きます。経済活動の連関やトレードオフを

可視化し、取捨選択して最適な解(=持続的な成長)を導く。IMFではこうした考え方を徹底的に叩きこまれ、それは今でもしっかりと自分の中で生きています。自分の仕事が経済全体の中でどう位置付けられ、どのような影響を有しているか。そうした広い視野を持てるようになったことは、大変有益なことと感じています。 また、プロフェッショナリズムと高い使命感を共有しつつ、様々なバックグラウンドを持つ同僚と働く中で、自分の強み・弱みを認識し、その上でどう仕事に貢献し、付加価値を生み出していくかを徹底的に考えることができたのも貴重な経験でした。

2017年

主計局調査課

「オチ」をつける仕事 私が現在所属している主計局調査課の目下最大のミッションは、経済財政運営に関する新たな計画の策定です。日本という国が、世界史上例のない少子高齢化に突入する中で、どう持続的に成長し、将来世代に明るい社会を引き継いでいくかを日々考え、省内外の関係者との議論・調整を行っています。スケールが大きすぎてくらくらしそうな仕事ですが、留学先やIMFで学んだマクロ経済運営の考え方や、金融庁や理財局で学んだ金融市場の視点もフル活用しつつ、先日生まれた子供の顔を思い浮かべながら、使命感・責任感をもって取り組んでいます。 主計局で働く中で改めて思ったのが、「財務省は分野も時間も超えた視点に立って『オチ』をつける役所だ」ということです。国家運営において大事なことはたくさんあります。年金だって、子育て支援だって、教育だって、インフラ整備だって、地方の活性化だって、防衛だって、すべて重要です。でも皆がそれぞれの課題の重要性を主張し、予算を要求するばかりでは、今声を上げることのできない将来世代が割を食うばかりです。財務省は様々な課題の重要

性を認識・整理した上で、将来世代のことも考え、毎年の予算編成という結果を出すことが求められます。そのような役割を担う財務省だからこそ、ディープな情報が集まり、頼りにされているように感じます。 「財務省は予算を削ることしか考えておらず、政策の中身を知らない。」そう思われる方もいるかもしれません。しかし財務省の仕事はそんな楽なものではありません。各省庁の予算の査定を担当する私の同僚達は、関係者が納得する「オチ」にたどり着くため、限られた財源をどう活用すればより高い政策効果が実現できるか、相手省庁や民間の関係者と徹底的に議論しています。必要と考える予算には積極的に予算を付けたり、相手省庁が様々なしがらみで踏み込めない課題に踏み込んでいくこともあります。 広い視点に立って、日本や世界を少しでも良くするために自分の立場で何ができるかを常に考え、議論や挑戦することを厭わない。財務省に求められるのはそのような人材だと思いますし、自分もそうありたいと願っています。

このパンフレットをご覧の方はお分かりのとおり、財務省の仕事は非常に多岐にわたります。今回、「財務省の仕事って何だろう?」と改めて考えた時、浮かんできたのは、「お金に関わることなら何でも」でした。「お金」というと夢のない仕事だと思われるかもしれません(私は財務省に入るまでそう思っていました)。ただ、ある人がどうやってお金を得て、それをどう使うかは、その人の価値観・生き方そのものです。財務省の仕事はさしづめ、皆の意見を聞きながら、国家としての価値観・生き方を形にしていくものと言えるかもしれません。「お金に関わることなら何でも」ですから、当然、海外とのお金のやり取りも財務省の重要な仕事です。あらゆる局面でボーダーレス化が進んだ現在、仕事において、海外の当局や国際機関、投資家との関わりは常に発生しま

す。また、職員がそうした要請に対応していけるよう、留学や国際機関への出向といった機会が豊富に用意されています。 これからの日本が何で稼ぎ、何にお金を使い、どう世界に貢献するか。強い問題意識と広い視野を持った多様な人材が財務省に興味を持ち、官庁訪問に参加してくれることを期待しています。

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 人生は、自らが作るものです。しかし、思いもかけない人生もあります。思いもかけない人や出来事との出会いが、その後の人生を大きく変えたことはないでしょうか。 私は、財務省で、思いもかけず、これまで様々な経験をしてきました。経験できてよかったと思う仕事はたくさんありますが、その多くは、事前に自分自身で意識して選べたかというと、おそらく選べなかっただろうと思っています。 自分が考える生き方というのは、どうしてもそのときの今ある自分の枠にはまってしまいます。自らの人生の潜在的な可能性は、今ある自分では分

学生へのメッセージ

福田 誠Makoto FUKUTA

[平成8年入省]

理財局国有財産企画課政府出資室長

思いもかけない人生

国税局/財務局

係長/留学

課長補佐係員キャリアパス 企画官 課長

かりません。今ある自分の枠を超えて自分が成長するためには、今ある自分の枠以外の経験を積む機会が重要となります。 財務省は、そうした思いもかけない人や出来事との出会いが様々に存在し、壮大な仕事のスケールの下、人を育てるとともに、新鮮な刺激を常に提供する職場です。 財務省の門戸を叩いていただくことで、学生の皆様と我々の出会いがはじまります。そうした中から思いもかけない出会いが生まれるかもしれません。是非財務省を訪れてみてください。

24

1996年主計局総務課(新人時代)

23 財務省職員のキャリアパス

【企画官】重要事項についての企画・立案に携わる。

新人時代の官邸の思い出 1996年、私が最初に配属されたのは、予算編成の司令塔となる主計局総務課でした。当時の橋本龍太郎総理への説明資料をコピーしたり、深夜遅くに当時の官邸に書類を届けに行き、赤絨毯の敷かれた正

面階段や2.26事件での弾痕(定かではない)を見て、いよいよ予算編成も大詰めだと感じた記憶が懐かしく思い出されます。この一年で鍛えられたことが今も私の財産となっています。

2005年

青森県出向

血の通った予算の現場 介護保険等を担当する高齢福祉保険課長として、日本や家族のため尽くされてきたお年寄りの方への福祉の心の重要性を実感しました。若い人たちが懸命に働いていたことも印象的でした。こうした現場を支えるのが財政の仕事です。現場で予算がいかに使われているのか、社会保障の理念である社会的連帯がまさに具現化された血の通った

予算の現場を経験することができました。 財政課長として、若くして責任ある立場を任され、県の予算編成に携わりました。青森県は、厳しい経済環境の下でも、堅実な財政運営を行っています。私も、行財政改革に取り組みました。

2009年

主計局主査

緊張の政権交代と緊迫の東シナ海 2009年、主計局調整係の主査となりました。政権交代の直後、各官庁が緊張する中、事業仕分け等を担当することとなりました。評価は分かれていますが、当時、最も脚光を浴びた政策の一つでした。予算編成プロセスの一部をオープンにする取り組みで、各事業を国民に分かりやすく説明できるようになり、今も行政事業レビュー等に引き継がれています。 2010年、主計局国土交通係の主査となりました。現地にも赴き、緊

迫する東シナ海情勢を肌身に感じました。海上保安庁等の予算を強化しつつ、予算全体の効率化に取り組みました。また、鉄道運輸機構の剰余金について、財務省は国鉄債務の国民負担により生じたものと主張し、大臣折衝を経て、1.2兆円の国庫納付が実現しました。 その後、東日本大震災が発生します。国民の一人として被災地のためにできることはないかと、鉄道復旧をはじめ被災地のために異例の予算措置を講じました。

2015年文書課広報室長

G7が身近に 広報室長は、大臣の記者会見や報道機関への対応、財務省の広報戦略等を担当します。財務大臣のご発言はとても重要で、為替や株価が大きく動くと直ちに注目が集まります。G7、G20等の国際会議でも必ず記者会見が行われ、広報室長は大臣の外遊には必ず同行します。これまで国内中心の仕事が多かったのですが、G7等が身近に感じられ、国際的な視野が一気に広がりました。更に、G7財務大臣会合が日本しかも仙台開催となったので、復興庁と協力し復興の国際的なアピールも行いました。

 また、報道機関の方々とも頻繁に意見交換を行いました。様々な切り口や様々な問題意識が世の中にはあることがよく分かり、視野がとても広がります。 更に、積極広報にも取り組みました。これは、企業の広報に最も近いかもしれません。各界で活躍する著名人の方々のお話も聞くことができました。国民の皆様に財政の現状や今後を理解して頂くことの重要性は、より一層高まっています。

2013年復興大臣秘書官

復興の加速化 第2次安倍内閣の発足で根本匠復興大臣が就任し、その秘書官を拝命することになりました。当時、復興の加速化は、経済再生、国の危機管理とともに、内閣の最重要課題の一つとされていたことから、大臣が強いリーダーシップを発揮し、政権交代直後の政策変更を行うこととなりました。私も、大臣ならどのように考えるのかといった、普段考えないような視点で物事をみることも少なくありませんでした。幸いにも大臣から絶大な信頼を頂いたおかげで、復興の加速化に貢献で

きたと思います。 また、大臣秘書官の仕事は、非日常の連続でもありました。普段から大臣、SP(警護官)と行動をともにし、毎日テレビで報道される関係閣僚会議やテレビスタジオ、オバマ米大統領が国賓で来日した際の皇居での歓迎式典にも随行することができました。一方、連日の国会審議や記者会見での緊張感も忘れられません。思い出にも残る仕事となりました。

2016年理財局国有財産企画課政府出資室長

ビッグ・ディール 政府出資室長は、特殊会社や独立行政法人等に出資する国の財産を管理することが仕事です。その総額は、2017年3月末で76兆円に上ります。この桁の金額を扱う仕事は、財務省ならではかもしれません。 その中でも特に重要な仕事となっているのが、政府保有株式の売却です。2017年9月、日本郵政株式1兆4,084億円を売却しました。エクイティ・マーケットに直接プレーヤーとして参加するという、官庁にはめずらしい仕事です。この金額は、この年の国内最大のディールとな

り、世界でみても2番目のビッグ・ディールとなりました。この規模を取り扱う機会は、官民通じても、なかなかないでしょう。 日夜、市場動向と格闘しなければなりません。世界の一体化が進み、経済情勢はもちろん北朝鮮等の地政学リスクから海外の選挙まで、様々な出来事が市場に影響を及ぼします。なかなか先が読めない中での決断は厳しかったですが、その分やり遂げたときの達成感がありました。

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 25年以上も前に私が官庁訪問をしていた時、シンプルに、国や人のためになる大きな仕事がしたい、と願っておりました。ご縁あってお世話になった財務省ですが、実際のところ、官邸勤めや破綻金融機関の処理、防衛予算やODA予算の編成、更には「花の都」パリでの勤務など、入省前には想像もできなかったような、多様でやり甲斐のある仕事をやらせて貰ったなと思います。 財務省では若いうちからどんどん「大きな仕事」や「国や人のためになる仕事」を任されます。それは財務省の大きな権限に裏打ちされるものですが、権限が大きければその分責任も重くのしかかってきます。そのため、責任の重さに背骨がきしむような思いをすることや自分の判断が本当に正しいのか

学生へのメッセージ

山崎 翼Yoku YAMAZAKI

[平成3年入省]

大臣官房参事官(関税局関税課担当)

世界一うまいビール

と悩むこともあります。しかし、こうした苦悩や葛藤を乗り越え、仕事に区切りをつけた時の達成感、充実感はひとしおです。 私は仕事の区切りの時に、仲間やカウンターパートと飲むビールを「世界一うまいビール」と思っています。予算折衝を終えて相手省庁と飲むノーサイドのビール、法案作りに苦心した同僚と互いの健闘を称えながら飲むビール。これまで、何度もうまいビールを飲んできましたが、この歳にしても、その旨さは格別で色あせることがありません。どうですか、そんなビール、一緒に飲んでみませんか? (飲めない方はソフトドリンクで! 笑)

2625 財務省職員のキャリアパス

1991年銀行局

(新人時代)

バブル崩壊の入り口で 振り出しは銀行局(当時)。金融機関からの不動産業向け融資を抑制する、いわゆる総量規制を担当しました。当時の異常な地価高騰の中で政府が掲げた「土地神話の打破」のための措置の一つです。私の時に規制解除をしたのですが、「地価は十分に下がっていない」として解

除に反対する声も多く、上司(「バブルと生きた男」の著者)の指導の下、その是非の判断の基となる地価と融資額の相関の分析などに当たりました。

2017年

関税局参事官

いまだ全速力で… 現在、私は関税局の国際担当の参事官として、トランプ政権の動向、NAFTAやBrexitの交渉状況に関する情報収集や分析に追われています。通商問題の核心は関税政策にあるからです。最近では、スタッフと共に、米国大統領がNAFTAからの脱退を通知した場合の米国内の法的効果について所見をまとめたほか、米国の対日貿易赤字の要因や構造について調査・分析を行いました。また、制度所管省庁としてTPPなどのEPA交渉に参画するほか、日米経済対話では個別イシューにつ

き財務省を代表して米国の通商担当等との交渉に当たっています。 今年の6月に世界税関機構(WCO)という国際機関の事務総局長の選挙が予定されていますが、我が国は財務省出身の御厨氏を擁立しています。選挙参謀として選挙戦略の立案や情勢分析を総括するとともに、メンバー国の支持の取り付けのため、チームで手分けをして世界各国を飛び回っています。役人なのに選挙(それも国際的な)に携わるなんて何とも得難い経験ですよね。

国税局/財務局

係長/留学 企画官係員キャリアパス 課長

補佐 課長

【課長】所掌事務の政策立案の責任を担う。

1998年金融再生委員会

金融危機のど真ん中で 1998年以降金融機関の破綻が相次ぎました。私は金融再生委員会事務局で、破綻金融機関を再生する業務を担当しました。急ごしらえの組織で、課長補佐2年目の私が、弁護士や公認会計士、日銀などの職員から成る混成チームのまとめ役となり、譲渡先との交渉、破綻金融機関の管理、5名の委員からなるボードへの案件説明などに当たりま

した。税金を投じる救済に厳しい批判を受けましたが、金融システムを守るという使命感を支えに取り組みました。これは一例ですが、政府の最重要課題に対応するべく特命組織が新設されると、財務省から出向して中核業務を担うことが多々あります。

2002年

主計局主査

がっぷり四つの予算折衝 予算の要求省庁側は「あれもこれも」となりがちですが、主査は要求を精査し、優先順位付けをして相手にぶつけ、折衝を積み重ねて予算としてまとめます。私は主査として3年間で外務省、防衛省などの予算を担当しました。外務省予算では、50億ドルのイラクの復興支援の枠組みをまとめました。融資を活用して国民負担を抑制するとともに「使

途を目に見える形で示せなければ国民の理解は得られない」と外務省を説得し公表につなげました。防衛省予算では沖縄を中心とする米軍の再編への対応が課題でした。米軍の戦略上の再編への税金の投入には批判もありましたが、基地負担の軽減という我が国の国益にも適うものと考え、防衛省と資金負担の枠組みをまとめました。

2008年内閣官房副長官秘書官

政府の中枢で 平成20年の年末、突如「年明けから官邸で働いて欲しい。」と内示を受け、霞が関の事務方のトップである官房副長官の秘書官として働きました。私を含め4人のチームで副長官をお支えしました。霞が関からの重要な案件は総理まで上がる前に副長官にも上がります。秘書官は基本的にその席に同席しますので、各省庁の重要案件を勉強する非常

に良い機会となりました。また、北朝鮮のミサイル発射を受けて官邸のオペレーションセンターに参集される副長官に随行する機会もありました。緊張の日々でしたが、霞が関での意思決定プロセスや、政府の中枢での危機管理を間近で勉強できる大変貴重な経験でした。

2010年

OECD

パリでのワークライフバランス 2年間の留学の機会はありましたが、国内勤務が多かったことから、海外で英語を使う仕事がしたいと思っていたところ、パリの経済開発協力機構(OECD)で勤務する機会を得ました。私の所属した部署は国際租税に関するルール作りを担っており、そのルールをメンバー外の国に普及させるアウトリーチ活動(セミナーの企画立案、予算手当てなど)を担当しました。当然仕事のやり方も財務省とは全く違いますし、外国人の上司・同僚との仕事はとても新鮮で刺激的でした。他方で、

トップダウンの欧米式の仕事を経験するにつけ、財務省ではいかにボトムアップで若い人に大きな仕事が任されているかを強く感じました。 当時1歳半になる子供を抱えての勤務でしたが、休暇におむつを抱えてヨーロッパ各国を回ったのも良い思い出です。ワインに目覚め、ブルゴーニュやボルドーの醸造所巡りもしましたし、帰国後にワインエキスパートの資格を取りました。

2015年

主計局主計官

ODA予算と熊本大地震 課長クラスになると、いわばチームの指揮者として各ラインを統括します。省内では幹部とチームの間の調整はもちろん、大臣等へのご説明を任され、対外的には財務省の「顔」として、国会やマスコミへの対応に当たります。 私は主計局では主計官として内閣、外務省などの予算を担当しました。外務省予算では、折からの円安で、外貨ベースのODAの事業規模を維持しようとすれば円ベースの予算が増加しかねず、100億円を超

える伊勢志摩サミットの開催経費も加わる中で、事業の効率化を行いつつ、予算の姿形をどう作り上げるか苦心しました。また、災害の初動の対応を担当する内閣府の予算を担当した時に熊本地震が発生しました。現地の状況に関する情報が錯綜する中、震災直後から、関係省庁を含め多方面から続々入ってくる情報を基に、水、食料、寝具、仮設トイレなどの支援物資の予算措置に尽くしました。宮内庁の予算も担当し、お茶会で天皇・皇后両陛下にお目にかかる大変光栄な経験もできました。

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27 【特集1】経済産業省予算対談 28

経済産業省予算

春木 経済産業省の予算は昨年12月に政府案が閣議決定され、一つの区切りとなりました。学生の皆さんに向けて、経済産業省予算を私から簡単に説明しますと、経済分野のみならず多岐にわたる幅広い予算と言えます。生産性向上に向けての第4次産業革命の関連予算や中小企業予算に加えて、エネルギー予算や東日本大震災復興特別

会計に計上される福島復興のための予算も含まれます。

小宮 それだけ多岐にわたる予算を少数精鋭のチームで査定し、メリハリのついた予算に仕上げたわけですが、経済産業省との間で前面に立つ主査の立場として、どんな工夫をして予算編成に当たり、日々議論をしていたのかについて教えてください。

財務省からの視点

春木 特に気を付けていた点として、財務省独自の視点からどのような付加価値を付けることができるかについて常々考えていました。受け身にならずに、外から見ている財務省ならではの視点から、経済産業省に提案していくスタイルで議論してきたつもりです。 具体的な例を思い返すと、30年度当初予算では例えばJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)出資金が挙げられます。JOGMECはエネルギー安全保障の観点から日本企業の資源開発を支援していますが、自分の知見を活用して、政府保証付き借入の活用やリスク管理態勢の強化といった改善点を指摘し、必要な出資額についての議論を深めることができたと思います。こうした議論では、国際局為替市場課で為替と原油市場の関係を勉強した経験や、金融庁への出向経験のお陰で銀行関係者からリスク管理について予算編成中に話を聞くことができたことなどが役立ちました。 他の例ですと、経済産業省のエネルギー予算の一部について、環境省に移管したと

このページでは、経済産業省の平成29年度補正予算と平成30年度当初予算の編成を担当してきた主計官と主査が対談をし、予算編成の経験を振り返ります。

経済産業省予算対談

いう点も挙げられます。環境省による執行が適しているのではないかと思われるエネルギー予算の移管について議論し、結果として経済産業省・環境省の両省の理解を得られたという事案がありました。

小宮 予算編成は、予算要求に対して、いくらつけるか、あるいは削るかといった議論のように思われがちですが、予算の大本になっている大きな政策、例えばエネルギー政策であれば、2030年、2050年を見据えてどういった姿にしていくかについても突っ込んだ議論をしましたね。JOGMECを巡る議論にしても、エネルギーミックスにおける石油等の化石燃料の今後の位置づけや需要動向を見た上で、今の石油資源開発の在り方はその動向に合わせてどう見直していくか、それに見合ったリスク管理の在り方は何かという議論の流れですね。 環境省との関係ですが、私は環境省担当の主計官でもあるので直接議論をしました。エネルギー政策と地球温暖化対策が表裏一体である中で、経済や産業を重視する経済産業省と、温室効果ガスの排出削減を重視する環境省の双方の視点を財務省が取り持つことで、両者が協力・連携可能な一層効果的な予算にすることができたのではないかと思います。

メリハリ付けや制度面についての検討

春木 冒頭にメリハリ付けの点について指摘がありましたけど、先程取り上げたJOGMEC出資金については結果的に約3割に当たる140億円程度を削減し、他方で足下の日本の経済情勢を踏まえて、生産性の向上を目指した第4次産業革命の流れを強化していくとの観点から、例えば産学官連

携でのAIチップの技術開発予算に新規に100億円措置するなど、かなりメリハリを付けることができたのではと思っています。

小宮 法務省や警察庁のように、社会の基盤を確実に担っていくため安定性が求められる予算とは違って、経済産業省のように、スピードの速い産業の動きに即応していかなければならない予算の場合には、かなり大胆に中身を見直して、柔軟に重点事項に措置することが必要です。財務省は、それぞれの政策分野で柔軟に対応していく必要があります。

春木 そうですね。あと、予算編成に当たっては、単年度の発想では終わらず、長期的な制度についても相手省庁と議論をしていくことが求められると感じています。JOGMECのリスク管理態勢の強化の例を挙げましたが、これは相応の時間を要する取り組みです。そうした議論を予算編成が終了した後も経済産業省と継続しています。JOGMECの今後5年間の中期目標について経済産業省と意見を出し合いながら、リスク管理の改善案について検討を進めています。

小宮 制度の在り方というのは非常に大事な論点で、民間企業の経営判断を通じて経済構造に影響を与えていくわけですから、きちっとした制度設計ができるか財務省も大きな責任を担っています。他の例をあげると、中小企業関係では、信用保証制度の見直しがありました。これは、金融機関のモラルハザードを排しつつ中小企業の安定的な資金繰りを確保するという金融行政も絡む論点であり、色々な関係者と議論をしながら制度設計をしました。 また、福島第一原発の事故からの復興に

関する制度の見直しもありました。多くの関係者の意見を踏まえ、法律や企業会計など、専門的論点を検討して、国民負担の抑制、福島の復興、電力供給の安定性といった幾つもの要請を満たせる制度設計にするよう、経済産業省や関係省庁と知恵を絞りました。

現場を見る経験

春木 福島の関連で思い出すのは、私が昨年7月にこのポストに着任した後、すぐに現場を見た方が良いと思って福島の復興状況を視察したことです。8月には福島に行き、1F(福島第一原発)の廃炉汚染水対策の状況が今どうなっているのかなどについて理解を深めました。 ほかには、前年は主計局で外務省予算を担当しましたので、トルコのガジアンテップというシリア国境沿いの難民キャンプに行きました。もちろん治安がかなり悪くて危険性もありましたが、外務省の配慮でトルコ警察がしっかりと警護してくれたので無事に進みました。そのときにはジブチにも行き、海賊対策に取り組むジブチの海上保安庁の長官とも面会したのですが、その模様が翌日のジブチの新聞に写真入りで取り上げられて、驚いた思い出もあります。

小宮 自分で現場に行くことは欠かせません。財務省の仕事は机の上だけでは絶対にできないと思います。私もこれまで数えきれないくらいの多くの人達から話を直接お聞きし、現場にもうかがいました。その中で自分の考え方を作っていくわけですが、あわせて財務省に対する期待というものもひしひしと感じることができたと思います。その期待に我々はしっかり応えられるよう頑張っていきましょう。

小宮 敦史Atsushi KOMIYA

[平成3年入省]

主計局主計官 (司法・警察、経済産業、環境係担当)

福島第一原発の視察にて。 トルコ難民キャンプの視察にて。

春木 哲洋Tetsuhiro HARUKI

[平成14年入省]

主計局主計官補佐(経済産業係担当主査)

特 集

1

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29 【特集2】女性職員からのメッセージ 30

城田 郁子Ikuko SHIROTA

[平成13年入省]

大臣官房秘書課 人事企画室長

 入省して17年、現在は、財務省のいわゆる「働き方改革」を担当しています。いざという時には昼夜を問わない対応が求められる役所の世界でも、平常時には、あるいは私生活により比重を置きたい時には、臨機応変に比重の変更ができるよう、省内でフレックスタイム制やテレワークを推進したり、業務の見直しを進めたりしています。 財務省の仕事は、このパンフレットでも多くの人が綴っているように、世の中の動きに呼応して社会の仕組みを設計するような、ダイナミックなものです。国際性豊かな仕事も多く、国内外で多くの素敵な出会いがあります。社会との接点が多く、自己成長の機会に事欠きません。 こうした仕事は、没頭できるほどに魅力的な一方、責任ある仕事なだけに、それ相応のコミットメントも求められる、というのはお

判りいただけると思います。 他方で、財務省で働く個々の「ひと」は、このような仕事という場だけではなくて、家庭や趣味という私的な場も当然に持っています。育児、介護、病気等、環境や事情の変化に応じて、仕事と私生活の最適バランスも変化するので、年代を問わず、また男女を問わず、多かれ少なかれ、その両立にジレンマを抱えている、というのは偽らざる事実だと思います。 私自身、このパンフレットを手に取ってくださっている皆さんと同じ年頃に思い描いていた人生と、実際の人生展開とはかなり異なっているけれども、それでも試行錯誤で歩み続ける中で、仕事のペースダウンをしたい時にはそれをサポートしてくださる方に囲まれていたことは、仕事を今まで続ける上で大きな力でした。

 最近の週末は、猫の額ほどの庭の土いじりや海や山への旅に使う時間も多いです。仕事は、山登りに似ていると思うことがあります。登っている最中には辛くて、「なんで山なんかに来ちゃったんだろう?」と思うことすらあります。でも、ゆっくりでも、休み休みでも歩み続けると、じきに雲海の上に広がる景色に目を奪われます。その場に広がる世界は、たどり着いた時間やお天気によって見え方は違うけれども、登り切った感の清々しさは、登ってみなければ決して判らない、出くわせないもので、仕事を自分なりのペースで歩むのと、どこか似たようなものである気がしています。 各々の歩み方で良いので、財務省で働いてこそ見える景色を見てみたいと思われたら、ぜひ門戸をたたいていただければと思う次第です。

 私は現在、主計局で国家公務員の人件費予算を担当しています。限られた財源の中で行政が高いパフォーマンスを発揮する(予算の質を高める)ためにはどうすべきか、一国民として納得感のある施策なのか、といった観点で仕事ができる、とてもやりがいのある仕事です。 また、2人の子供を持ち働き方に制約を抱える身として、自身の感覚が活かせる仕事でもあります。人件費の価値を高めるためには、業務の効率化や働き方改革を進め、働き方の質の向上を図ることが重要です。私自身もフレックスを利用して早く帰る

日を作りながら、仕事の質とプライベートの質の両立を試行錯誤中ですが、個人だけでなく、組織として生産性を高めることが財政面・組織戦略面からも重要であり、そのために何ができるか、自問自答の日々です。 もちろん仕事は大変なことも多いです。でも、仕事・家庭両面において、理解・サポートしてくれる上司や同僚、私が忙しい時に育児を頑張ってくれる夫など、多くの支えのおかげで頑張れています。そして、好きな仕事で頑張れているからこそ、プライベートでは子供に全力で向き合うことができているし、家事をしながら遊ぶ中で子

供がお手伝いに目覚めるなど、よい効果が生まれることも。 財務省が目指すのは「より良い社会を次世代に引き継ぐ」こと。親になった今、政策形成の際、「未来のために今の政策をどう磨くべきか」という視点が益々強くなり、親としての感覚が活かせることも頑張れる原動力となっています。子供達のより良い未来のため、政策も育児も質を高めるべく奮闘する日々は大きな責任感とやりがいに溢れ、豊かな人生につながっています。そんな日々を一緒に過ごしてみませんか。

 現在私は、育児休業を経て2歳の娘を育てる反面、経済学を中心にアカデミックな分析を行い、政策立案をサポートする業務を行っております。そのため、仕事と子育てを両立させるべく、フレックス勤務で早く出勤・帰宅する、テレワークを活用して家で業務を行うなど、柔軟な働き方を実施しています。もちろん時には打合せなどが必要となる業務もありますが、メールやテレビ電話がある今、古いスタイルにとらわれず、家庭も大切にしつつ仕事も楽しむ、そんな自由な仕事のスタイルを模索していきたいと思っています。堅苦しいと思われがちな財務省ですが、実はそういった働き方にチャレンジしていける風土があるのです。

各々のペースで歩んで見える世界

「質」の高い人生を目指して

ワークとライフ、両方へのチャレンジ

平成 13 年 国際局総務課平成 14 年 国際局開発政策課平成 15 年 金沢国税局平成 16 年 留学(米・タフツ大)平成 18 年 財務総合政策研究所研究部平成 19 年 国税庁調査査察部査察課 課長補佐平成 21 年 主税局調査課 課長補佐平成 22 年 主税局総務課 課長補佐平成 23 年 主税局税制第一課 課長補佐平成 24 年 理財局国債業務課 課長補佐平成 26 年 大臣官房会計課 課長補佐

平成 17 年 大臣官房文書課平成 19 年 仙台国税局平成 20 年 金融庁総務企画局市場課平成 22 年 留学(英・インペリアル・カレッジ・ロンドン、 オクスフォード大)平成 24 年 国税庁長官官房国際業務課 課長補佐平成 25 年 育児休業平成 26 年 大臣官房信用機構課 課長補佐平成 26 年 大臣官房文書課 課長補佐平成 28 年 育児休業

平成 25 年 大臣官房文書課平成 27 年 関東財務局平成 28 年 育児休業

恵﨑 恵Megumi EZAKI

[平成17年入省]

主計局給与共済課 課長補佐

浅見 万葉Mayo ASAMI

[平成25年入省]

財務総合政策研究所総務研究部 主任研究官

女性職員からのメッセージ特 集

2

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31 【特集3】若手職員インタビュー 32

財務省に興味をもったきっかけや志望した理由を教えてください。

   高校生の頃に偶然『官僚たちの夏』という本を手に取ったことがきっかけで、「日本をよくする」ために心血を注ぎ働く行政官に漠然とした憧れを持っていました。財務省の説明会に足を運ぶ中で、予算や税制、財政投融資や為替等、自分の仕事ぶりを現在・将来の日本に大きく直結させることができる制度を数多く所管している財務省に魅力を感じました。

   私は、まだ見ぬ子や孫たちに誇りを持てる社会を引き渡すために働きたいと考えており、財務省なら長期的視点で国のあるべき姿を考えられると思い志望しました。また、説明会等で職員が「声なき世代の代弁をしないといけない」と話して

いるのを聞き、ここで働きたいという想いが強まりました。自分の生きる社会に責任をもち、よりよい社会のため尽力する姿勢に感銘を受け、自分もそのような意識で働きたいと思うようになりました。

   子どもはどこに生まれるか自分で決められないにもかかわらず、生まれ落ちた場所で人生のさまざまなことが決まっていきます。私は幼少期に海外に住んでいたときに、日本に対するイメージで自分自身が判断されることを何度も経験しました。そのため、「未来の子どもにはどのような国を残したら幸せか」という問題意識を心のどこかで常に持っていました。財務省ではまさに国の枠組み作りという仕事ができ、自分の問題意識に応えてくれる場所だと感じたため、志望しました。

現在担当している業務について教えてください。

   主計局調査課の役割は、日本の財政の健全性を確保することです。他の先進諸国に類を見ない規模の債務残高を抱える日本において、世代間の不平等をこれ以上拡大させない為にもその役割は非常に重要です。私が運営を担当している財政制度等審議会という財務大臣の諮問機関でも、財政健全化に向けた目標実現のため各界の有識者に御意見をいただいています。審議会の運営というものは非常にハードですが、官民の垣根無く財政に関する知見を集結させる、そうした大き

な仕事を係員に任せてもらえる懐の広さも財務省の魅力だと思います。

   私は、大臣官房文書課で財務省が国会に提出する法令や省内の重要案件の審査を担当しています。文書課審査の対象は財務省が所掌する分野すべて、すなわち国内外のあらゆる事象に及ぶので、入省後も経済や法律について常に勉強し続けることが必要になりますが、その分自分の成長を感じることができます。また、国会の会期中は、実際に国会議事堂や議員会館に行く機会が多く、政治が動く瞬間を目の当たりにすることもしばしばで、日本という国の意思決定過程を肌で感じ、心が動かされる毎日です。

   私は、大臣官房総合政策課で「国内経済の分析」を行っています。日銀の金融政策などに関

連するマネー動向の分析など、経済指標のモニタリングを日常業務として取り組み、月に何度か課長等幹部に直接説明しています。自分の分析が、経済に関する幹部の認識の基礎となり、ひいては財務省の経済状況に対する認識につながっていくため、責任を感じながら業務に取り組んでいます。

   私の所属する国際局開発政策課では、途上国開発分野において日本が世界で貢献していく政策や世界に進出する企業を支援する政策の企画立案を担当しており、具体的にはJICA(国際協力機構)を通じた開発途上国支援やJBIC(国際協力銀行)を通じた経済協力に携わっています。国際会議や諸外国要人との面会などに関わる機会も多く、多様な経験を得られる環境であると感じています。

働きはじめてから、入省前とのギャップはありましたか?

   入省して意外だったことは、1年目であっても責任のある仕事を任せられることです。特に自分の取り組んでいる経済指標の分析などは、経済政策立案の基礎にもなります。入省する以前のイメージよりも、政策の中身に触れる機会が多く、情報もたくさん入ってくることに驚きを感じています。

   入省前、財務省はクールでドライな印象がありましたが、実際に働くと、職場の人間関係が非常に濃密なことに驚きました。特に、同期との仲は良く、1年をとおして旅行や飲み会など様々な企画があり、昨年は箱根や軽井沢に行きました。1年生は多くの場合、異なる課に配属されますが、配属後にも孤独にならない、暖かい環境です。また、先輩も言っていることですが、異なる課にいても同期がつながっていることが、財務省が広大な政策分野を相手にできる基盤になっていると感じます。

これまでの仕事で大変だったのはどんなことですか?

   入省してからしばらくの間は、課内の業務

に関する知識を吸収するのに苦労していました。主計局調査課では、局内の予算係を横串で取りまとめる業務があると同時に、日本国内外の予算制度・財政の調査業務も行っています。そのため、社会保障や地方財政等の個別の予算から公的債務管理政策、またマクロ経済学の理論等、幅広い知識をもとに議論が行われています。初めのうちはそうした専門知識に基づく上司のやり取りにキャッチアップするので精一杯でしたが、上司のフォローにも救われながらどうにか食らいつくことで、少しずつ成長出来ていると感じます。

この1年間の仕事で印象的だったことを教えてください。

   印象的だったのは、自分の分析した資料が財政制度等審議会の資料に使用されたことです。先ほど座光寺も言っていたように、この審議会は財政健全化の議論の中心ですので、普段取り組んでいる仕事が、目に見える形で成果になったことは、日本の将来を議論する一助になったということでもあり、非常に嬉しく思いました。

   2017年12月に他省庁・国際機関と「UHCフォーラム」という国際会議を共催しました。特に心に残ったのは、大臣のスピーチ原稿の構成などを考える仕事です。近年日本は国際保健の分野でリーダーシップを発揮していますので、大臣からいかに日本の貢献をアピールしていただくか頭を絞りました。フォーラム最終日、大臣のスピーチが始まると自分が話すわけでもないのに緊張し、聞き終えたときはホッと安堵を覚えたことを思い出します。

職場や同期の雰囲気を教えてください。

   職場の空気は明るく、雰囲気はいいと感じます。昨年は課の有志で、リレーマラソンに出場するなどしました。竹谷も言っていましたが、同期も仲がいいです。金曜の夜など、仕事終わりに飲みに行くことも多く、良いリフレッシュになります。同期は仕事上のカウンターパートになることも多く、関わる機会が豊富なので、仕事をする中でも仲が深まっていきます。

   部下を「育てる」という雰囲気を強く感じています。上司はどんなに忙しくても、「後学のためにね…」と時間を割いて指導してくれます。一つひとつの業務に対し丁寧なフィードバックを受けることで、深い理解に繋がっています。同期は互いに助け合い、刺激を受け合う戦友だと思っています。所属する局や課は違っても、共通する悩みはあるもので、胸襟開いて話せるのは同期だからこそなのではないかと思います。また、同期の存在は「自分も頑張らなければ」と仕事へのモチベーションにも繋がっています。

それでは最後に、就職活動中の学生へのメッセージをお願いします!

   就職活動は、省庁・民間企業を問わずあらゆる業界の方々から本音を聞き出せる貴重な機会だと思います。噂や先入観に囚われ自らの可能性を閉ざしてしまうのではなく、今は興味のない分野だったとしても、一通り見比べてみることで数年後に後悔の残らない選択が可能になるのではないかと思います。そのうえで言えば、皆さんには、このパンフレット以外の機会もとらえて、いわゆる「同業他社」がいない財務省の魅力をもっと感じてもらえればとても嬉しいです。

   「たくさんの世界を見てみること」と「自分の直観・判断を信じること」のバランスをうまくとって、ぜひ実りの多い就職活動を実現してください。そして、その過程でぜひ財務省という職場にも足を運んでみてください。一人の職員として、心からお待ちしております!

入省から1年がたつ若手職員4名に、就職活動の思い出や入省してからの1年間を振り返ってもらいました。

若手職員インタビュー特 集

3

座光寺

座光寺

座光寺

座光寺

深 澤

深 澤

深 澤

竹 谷

徳 田

徳 田

徳 田

徳 田

竹 谷

竹 谷

竹 谷

[平成29年入省]深澤 舞 Mai FUKASAWA

国際局開発政策課

[平成29年入省]座光寺 琢 Taku ZAKOJI

主計局調査課

[平成29年入省]德田 雄大 Yuta TOKUDA

大臣官房総合政策課

深 澤

[平成29年入省]竹谷 綾 Aya TAKETANI

大臣官房文書課

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33 【特集4】特別寄稿 ~財務官から~ 34

のにもかかわらず、当時アメリカが大統領選挙の年であったため必ずしも迅速に対応することができないと考えられたことです。初めてのワシントンG20サミットにあたり、私も財務省から来た秘書官として今回の危機の本質を総理ととことん議論させていただき、日本として何を訴えるべきかを真剣に考えました。実際に麻生総理(当時)はG20において、①長期的にはあくまでもドル基軸通貨体制を基本としつつ、②IMFの資金基盤増強によるグローバル・セーフティー・ネットの拡充、③日本の経験に鑑み銀行セクターに対する公的資金の注入や不良債権処理の必要性とその問題点等をペーパーにして各首脳に訴えました。結果的にその時麻生総理が示したシナリオどおりに金融危機が処理されていくことになりました。わが国がその経済力だけでなく、知恵を使って世界的な危機の克服に貢献できた、画期的な出来事だったように思います。

 国際課税という分野があります。国境をまたがる経済活動に対して、関係国間でどう課税権を配分するか、いかに二重課税を排除して適正な資本の流れを確保するかが課題となります。ただし、課税権というのは最も国家主権に近い各国の固有の権利なので、為替や貿易に比べるとはるかに国際協調になじみにくい分野だと思います。そうした背景もあり、第二次大戦後、為替の分野ではIMF、貿易の分野ではGATT(現在のWTO)という国際機関が設立され、いわゆるブレトンウッズ体制が構築されましたが、租税の分野ではそれに匹敵する国際機関

はできませんでした。そんな中、国際課税分野のルール作りを唯一担ってきた国際機関が、OECDの租税委員会です。私は、副財務官を務めていた2011年6月に、幸運なことに選挙を経てこの租税委員会の12代目の議長に選出され、結果的に5年半議長職を続けることとなりました。日本人としては初めての議長でした。 さて、議長に就任した直後、各国から租税委員会の役員を集めて今後の国際課税における課題につきブレーンストーミングを行いました。その中で、近年多くの多国籍企業が、経済活動をやって利益を上げている国で正当な課税ができていない、あるいはタックスヘイブンが利用されて租税が不当に回避されている、といった問題がクローズアップされました。いわゆる二重非課税の問題です。そこで、租税委員会でこの問題を真正面から扱おうと立ち上げたのが、いわゆるBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトでした。その後3年あまりにわたって精力的な議論を続け、最終的には2015年11月のG20アンタルヤ・サミットで報告書が了承されました。最初はOECDのプロジェクトとして始めたのですが、G20、新興国、そして主要なタックスヘイブンとみるみるうちに参加国が増え、現在は110カ国を超える国が参加し、BEPS合意に従って必要な国内法、条約の改正作業を行ってくれています。 BEPSプロジェクトが当初期待していたより大きな成功を見せたのは、各国の首脳レベルを含めた政治的なサポートを得たことも大きいのですが、それと同時に、租税委員会の中でこれをリードしていった役員会(ビューロー)、そしてOECD事務局のメンバーとの信頼関係であったと私は思っています。国際課税というのは、ある所得に対し

て課税権を奪い合うという側面があるので、いつもきれいな理屈だけで物事が決まるわけではありません。しかし、毎月のように、多い時には月に2回も顔を突き合わせ、何とかこのプロジェクトをまとめようと議論をしていくうちに、我々の中にある種強烈な連帯感ができたのは事実です。立場の違いこそあれ、最終的にはお互いの信頼関係がどこまで構築できるか、あいつの言うことなら最終的に仕方がないと思える人間関係がどこまでできるのかが、こうしたマルチの交渉の場でも結局ものをいうのです。それと同時に、租税の分野における多国間での国際協調という、今まであまり進展してこなかった分野において、小さな一歩ではあるが確かな歩みを踏み出せたこと、その時に議長としてこの仕事に関与できたことに関して、正直少なからずの興奮を覚えたことも事実でした。

 現在は財務官として、麻生大臣をアシストしながら日々国際金融問題にかかわっています。2016年は為替動向、中国経済の減速やBREXIT、2017年はアメリカで誕生したトランプ政権との間に設けた日米経済対話の準備等に奔走しました。振り返りますと、財務省は私に予算、税制、財政投融資、貿易政策、そして国際金融政策と、随分と幅広い仕事を経験させてくれました。その中で強く感じたことは、すべての政策はどこかで相互に連関しているということ。少なくとも、何か一つ狭い分野に閉じこもって事が済むような甘い世界ではありません。しかし逆に、財務省はやる気のある皆様に、あらゆる可能性と機会を与えてくれます。ご一緒に世界を相手に仕事をするのを楽しみにしています。

 よく日本は、外生的に起こった状況に受動的に対応することにはたけているが、自ら状況を能動的に作り出すことは苦手だといわれます。他方、少子高齢化やIT化など、今後世界経済の行く末を考えるにあたって避けて通れない課題がありますが、実はいずれも日本が課題先進国なのです。こうしたことを考えると、国際舞台において、今後わが国に期待される役割、貢献は、これまでとは当然質の違ったものになっていくでしょうし、我々には国際社会に責任のある一員としてそれに応える責務があるのだと思います。こうした観点から、私の財務官僚としての経験の中から、いくつかのエピソードを皆

様にご紹介したいと思います。

 2008年の9月15日に起こったリーマンショックは、今振り返っても世界経済にとって致命的な出来事でした。それ以降、金融危機は個別の金融機関の危機というモードから、世界の実体経済への負の連鎖へという、全く新しい次元へと進化することとなります。 さて、わが国では、リーマンショックのわずか2週間後の9月24日に麻生政権が発足し、財務省から、当時副財務官であった私が総理秘書官として麻生太郎総理大臣にお仕

えすることとなりました。結果的に麻生政権の約1年間は、このリーマンショック後の世界金融危機をいかに乗り切っていくのかが政権の最も重い課題の一つとなったのです。 その2か月後の11月に、第1回G20首脳会談がワシントンで開かれました。G20に関して重要な背景が2つあります。一つは、かくも深刻な銀行・金融危機は欧米にとっては全く初めての経験ではありましたが、実は日本ではすでに1990年代後半に経験しており、苦労の末、金融危機に対する種々の処方箋を既に持っていたこと、そしてもう一つは、金融危機を発生させた張本人であった

浅川 雅嗣Masatsugu ASAKAWA

[昭和56年入省]

財務官

昭和 56 年 関税局国際第一課昭和 58 年 留学(米・プリンストン大)昭和 60 年 主税局国際租税課昭和 63 年 国際金融局国際機構課 課長補佐平成 元 年 ADB(アジア開発銀行)総裁補佐官平成 6 年 主計局主計官補佐(運輸係担当主査)平成 8 年 IMF(国際通貨基金)審議役平成 13 年 国際局地域協力課長平成 14 年 主税局国際租税課長平成 16 年 国際局為替市場課長平成 18 年 国際局開発政策課長平成 20 年 副財務官平成 20 年 内閣総理大臣秘書官平成 21 年 大臣官房参事官(副財務官、大臣官房・主税局担当)平成 24 年 国際局次長 兼 財務大臣秘書官平成 25 年 大臣官房総括審議官平成 26 年 国際局長

財務官から

世界の中で状況を作り出すということ

特別寄稿

リーマンショック

BEPS

財務省という職場

特 集

4

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ニューヨーク総領事館IMF世界銀行米州開発銀行地球環境ファシリティハーバード大学プリンストン大学ジョンズ・ホプキンス大学

ASEAN代表部

カンボジア経済財政省カンボジア大使館

インドネシア大使館インドネシア財務省

ラオス財務省

台北交流協会 ベトナム財務省ベトナム税関

アジア開発銀行フィリピン大使館フィリピン財務省

在外公館国際機関等

マレーシア大使館マレーシア財務省

タイ大使館タイ税関

ミャンマー大使館

インド大使館ブータン大使館

ベトナム大使館

ミャンマー財務省

スリランカ大使館

ASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス

36

ウラジオストク総領事館

オークランド総領事館

マイアミ総領事館

国際交流基金サンパウロ日本文化センター

サンフランシスコ総領事館

JOGMECバンクーバー事務所

スタンフォード大学香港総領事館上海総領事館

中国大使館 韓国大使館

オーストラリア大使館

メキシコ大使館

ボリビア大使館ブラジル大使館

アルゼンチン大使館

カナダ大使館アメリカ大使館

トルコ大使館

ロシア大使館

在ドバイ総領館エジプト大使館

アフリカ開発銀行

ロサンゼルスチェンナイジャカルタ香港バンコクホーチミン

JETRO研究所 JICA事務所 JBIC事務所ジャカルタロンドンワシントンシンガポール

シンガポール大使館

ミャンマーハノイ

四国財務局高松国税局尾道税務署

北海道財務局札幌国税局

中国財務局広島国税局

東北財務局仙台国税局

福岡財務支局福岡国税局

九州財務局熊本国税局

関東財務局関東信越国税局

本省東京税関東京国税局

東海財務局名古屋税関名古屋国税局

沖縄国税事務所沖縄地区税関

近畿財務局大阪税関大阪国税局

岐阜県庁

横浜市役所横浜税関

神戸税関

長崎税関

門司税関

函館税関

三重県庁

奈良県庁

大阪府庁徳島県庁

和歌山県庁

熊本県庁

青森県庁

北陸財務局金沢国税局

山形県庁

新潟県庁

石巻市役所

名寄市役所

石川県庁

地方支分部局地方公共団体

八幡浜市役所

日本国内

35 財務省職員の活躍するフィールド

阪井 聡至Satoshi SAKAI

[平成16年入省]

石巻市復興担当審議監

※写真は、日本・シンガポールの医療・介護シンポジウム(JISP)での 市内水産品のプレゼンテーション

平成 16 年 国際局総務課平成 17 年 国際局開発政策課平成 18 年 広島国税局平成 19 年 主計局司計課平成 21 年 主計局主計企画官付平成 21 年 留学(中・中国人民大)平成 23 年 在マレーシア日本国大使館 二等書記官平成 26 年 在マレーシア日本国大使館 一等書記官平成 26 年 大臣官房信用機構課 課長補佐平成 27 年 内閣官房副長官補付平成 27 年 内閣官房日本経済再生総合事務局 局員

尾道税務署からこの国を支える

長久 善彦Yoshihiko CHOKYU

[平成22年入省]

尾道税務署長

地方出向

地方出向

平成 22 年 大臣官房文書課平成 24 年 仙台国税局平成 25 年 主税局調査課平成 27 年 留学(米・シカゴ大)

財務省だからこそ、「力」を発揮できる「現場」がある君は「傍観者」で終わるのか?

 2011年3月11日、留学先の自室で、テレビに映し出される東北各地、母国の惨状を「傍観者」として見つめるしか出来なかった苦い思い出。 死者・行方不明者数3,601名、最大避難者数50,758人、建物被害56,702棟など、「東日本大震災 最大被災地」の異名を背負いながら、未だ被災に苦しむ多くの市民、企業のため、懸命に奮闘する復興の最前線、石巻市役所に赴任して1年半が経過しまし

た。あの日を胸に、今、最大被災地の復興・創生に直接尽力できるチャンスが巡ってきたことを、偶然では終わらせたくない。

財務省だからこそ、「力」を発揮できる「現場」がある

 14年前、財務省の扉をくぐり、多くの職場で同僚、上司、カウンターパートと交わしてきた議論、過ごした日々が最大の武器。国・県・市の事業が輻輳し、民間企業、NPO等との密接な連携が求められる「現場」で、

今まで培った官民の人脈、経験等、蓄えてきた「力」が、私を支えています。 「財務省は所詮、予算査定しかできない役所」か? 未曾有の震災の爪痕が依然色濃く残り、疲弊した現場、行政の最前線において、「単機能」人材はいらない。得手不得手なく、分野・状況に応じて最善の施策・選択肢を選び出す「多機能」人材として市内外を駆け回る術は、財務省での14年間で身につけたものです。

真の「復興」とは何か? 「地域の未来」は国の行く末

 あれから7年。震災対応に留まらず、急激に進む人口減少・少子高齢化など、山積するリアルな課題解決のための議論は、霞ヶ関が取り組む現在進行形の政策にも、多くの示唆を与えてくれます。 「復興」は「復元」ではありません。市民の安心・安全な暮らしを未来永劫、支え続けるという使命・業務は、「その先」を見据えたものでなければなりません。 着実なまちの復興の風を感じつつ、懸命に生きる被災者、事業者、市職員との協働の日々が、官僚としての自分の「力」を高めてくれると信じて止みません。そしてそれが、この国の「その先」を目指す原動力になります。

 尾道税務署は日本一海岸に近い税務署です。署の窓外に広がる瀬戸内のオーシャンビューに、「さすが文学の街、尾道。税務署にも風情があるな。」と膝を打ち、心を奪われていたのも束の間のこと。組織を率いる立場として、緊張の日々が始まりました。

現場を動かす

 尾道税務署は総勢40名。税務の現場の

役割は、「適正かつ公平な賦課・徴収の実現」のため、納税者サービスを充実しつつ、悪質な納税者には徹底した調査・徴収を行うことです。この役割を果たすため、署全体の目標と課題を設定し、限られた40名の人員を使って、効率的かつ効果的な運営を行っていく。これが税務署長の職責です。 税務一筋の現場の職員と比べ、知識も経験も劣る私にとって大いなる挑戦です。とにかく、職員の話に耳を傾け、全人格をかけ

て向き合い、試行錯誤を繰り返しました。やがて、客観的な視点や柔軟な発想などの自分の強みが見えてくると、「現場を動かす」自信を少しずつ持てるようになりました。

国家の土台

 先日、若手職員が、「国税職員としての使命感をもって毎日を過ごしています」と口にするのを聞き、胸がグッと熱くなりました。 税務署の仕事は、地道な作業が多く、ミスが許されないものであり、職員の働きに光があたることは稀です。しかしながら、税は国家の基本であり、税の賦課・徴収を担う税務署はいわば国家の土台です。現場の職員一人ひとりが、善良な納税者に報い、そしてこの国の財政・税制を支えるという使命感を胸に秘めています。

財務省の強み

 使命感を胸に、現場で職責を果たす多くの職員によって、財務省の予算や税の仕事は成り立っています。財務省の強みは、人の熱意と厚みと言えるでしょう。ぜひ、一緒に働いてみませんか。

英王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)

FATF

BIS

欧州復興開発銀行

OECD

スペイン大使館

イタリア大使館

ベルギー大使館

フランス大使館

フランクフルト総領事館

ドイツ大使館

英国大使館

在ジュネーブ代表部

EU代表部

関税協力理事会(WCO)

平成30年4月1日現在、約200名の財務省職員(留学を除く)が世界各地の在外公館や国際機関、シンクタンク等でグローバルな活躍をしています。また、国内各地の地方支分部局や地方自治体でも多くの職員が活躍しています。

第三部 財務省職員の活躍するフィールド

ヨーロッパ

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国際金融機関

変わり行く任地 変わらぬ志~国際機関の経営の中枢を担いながら~ 

新たな世界金融危機を未然に防ぐために

 世界で新たな金融危機を未然に防ぐために必要なことは何か、その為に日本が世界に貢献できることは何か。現在私は財務省から金融庁総務企画局国際室に出向し、そのようなスケールの大きな課題に向かいあっています。

世界に影響を与える仕事

 主な仕事は、G20やFSB(金融安定理事会)等での金融システムに関する国際的な議論・対応です。既存の国際金融規制(バーゼルⅢ等)の機能の評価から、Fintech等金融技術革新に関する国際的な対応の検討など、幅広い内容を取り扱います。 特に、2019年には日本がG20の議長国として、国際的な議論をリードしていく機会が訪れるため、そこで日本がいかにイニシアティブを発揮し、世界に貢献していくかについて日々知恵を絞るのは、とてもやりがいのある仕事です。仕事上財務省と協力して取り組むことも多く、特にG20関係は、財務省が経済・財政・金融分野の取りまとめ等広く対応を行っているため、頻繁に議論を行います。

 金融庁に出向する前は、世界のマクロ経済の課題に対応する国際機関であるIMFに、日本政府の理事補として出向し、世界各国の理事補やIMFのエコノミストの方々と仕事をしました。時には一国の命運を左右するような丁々発止の議論をすることもありました。 こうした世界を相手に仕事をする職場への出向も、財務省で働く面白さの一つだと思います。

財務省の活躍のフィールドは幅広く、壮大

 財務省は多くの省庁、国際機関等と相互に協力して、様々な世界/社会の課題、それも他に類を見ないようなスケールが大きく、複雑で、難しい課題の解決に向け、主体的に取り組むことができる職場です。世界/社会貢献をしたい人にとっては、思う存分できる職場です。是非、一緒に働きましょう。

人生100年時代を見据えて

河﨑 麻悠子Mayuko KAWASAKI[平成28年入省]

内閣官房人生100年時代構想推進室 室員

他省庁(内閣官房)

37 財務省職員の活躍するフィールド

池田 洋一郎Yoichiro IKEDA

[平成13年入省]

ADB(アジア開発銀行)総裁首席補佐官

平成 13 年 主計局総務課平成 14 年 主計局主計企画官付平成 15 年 広島国税局平成 16 年 金融庁総務企画局政策課平成 18 年 留学(米・ハーバード大)平成 20 年 国際局総務課 課長補佐 (担当:グローバル金融危機対応)平成 21 年 国際局国際機構課 課長補佐 (担当:IMF、G20)平成 22 年 国際局開発機関課 課長補佐 (担当:世界銀行)平成 23 年 世界銀行職員 (バングラデシュ現地事務所:2年) (ワシントンDC本部:1年)平成 26 年 国際局開発政策課 総括課長補佐 (担当:JICA円借款、 JBIC投融資制度の改革)平成 27 年 主税局参事官補佐 (担当:国際租税に係る国際交渉、 国内制度改革)

世界/社会貢献を思う存分できる職場

竹内 雅彦Masahiko TAKEUCHI

[平成20年入省]

金融庁総務企画局総務課課長補佐

他省庁(金融庁)

平成 20 年 主計局総務課平成 21 年 主計局調査課平成 22 年 広島国税局平成 23 年 主税局総務課平成 25 年 留学(英・LSE、BBK)平成 27 年 IMF(国際通貨基金)理事補

平成 28 年 大臣官房秘書課

38

2018年2月:フィリピン マニラアジア開発銀行(ADB) 総裁室

 ダイナミックな成長を遂げるアジア・太平洋地域の国々から信頼され、選ばれ続ける組織であるために、ADBは今後、どのようなビジョンの下、如何なる道具を持って、どのようにクライアントと関わっていくべきだろうか。磨くべき強み、補うべき弱みは何か。変えるべき旧弊、守るべき価値は何か… 総裁室では、2030年までの経営戦略を巡る激しい議論が展開されている。僕のすぐ横で議論をリードするのは我が直属の上司であり、かつて財務省国際局で共にグローバル金融危機と戦った大先輩、中尾武彦総裁だ。アジアを中心に世界中から集っ

た約3,100人の職員が、各々の強みを引き出し合いながら一丸となって組織のミッション実現に邁進できるよう、総裁と職員とのコミュニケーションの架け橋となるとともに、縦割りに陥りがちな各部門間の協働を促していく…組織の潤滑油的存在である総裁首席補佐官の果たすべき役割は極めて大きく、そして幅広い。圧倒的な量と種類の業務に日々追われながら、国際機関を経営することの難しさと深さとを、頭と体と心とで学ぶ日々が続く。

2017年10月:タジキスタン ドゥシャンベ 大統領官邸

 握手を交わしたその手の分厚さと、交わ

した視線の深さに印象付けられる。向き合う相手はラフモン大統領。旧ソ連の頚木から脱し、内戦を終焉に導き、タジキスタン共和国を20年以上リードしてきた国家経営者と、その道程を二人三脚で支えてきた開発金融機関のトップとが膝詰めで率直に語り合う。そんな歴史的場面に常に居合わせ、会話をサポートし、記録を綴るのも総裁首席補佐官の役割。着任して8ヶ月、ウルムチ、ドゥシャンベ、ワシントンD.C.、ダボス、パリ、北京、ハノイ、シンガポール…、アジアを中心に世界各地を飛び回り様々な経営者と議論を交わしながら、自らの内なる地球儀がよりクッキリと立体感を持っていくことに気付く。

2017年12月:バングラデシュダッカ カウランバザール

 5年前の初春、財務省から世界銀行に職員として出向中だった僕は、ダッカのスラムから財務省を志す後輩たちに向けたメッセージを綴っていた。昨年末、休暇を利用し、思い出深いその場所を再訪。組織経営や政策立案の現場と、人々の生活やビジネスの現場とを往復し続けようと言う自分の原則をこれからも大切にし、行動し続けようという意志を改めて心に刻む。マクロとミクロ、両方の視点を持ち続けることが、経営を担う者には欠かせないと信じるから。

変わらぬミッション

 ADBの「戦略2030」を巡る重いディスカッションを終えてオフィスに戻ると、壁に掛かった7人の男たちの集合写真に眼が留まる。耳を澄ませば、50年以上前、多国籍の同志とともに、ADBというベンチャー企業を興し、一流の国際機関へと育て上げるという比類なき物語の主人公として歴史を創ってきた歴代総裁からの叱咤激励が聞こえてくる-「アジアの安定と繁栄無くして日本の発展なし」、「経営者の雛たる財務省総合職職員は、常に好奇心、向上心、公共心を磨きながら、多彩な経験を綜合していくべし」-そんな先輩たちの声に、17年前の春、財務省入省に当たって掲げた我がミッションが共鳴している。「経済成長と社会の安定の基盤をつくり、世界から争いを無くしていく力となろう」、「霞ヶ関の中だけでなく、広く世界で求められる人材を目指そう」。志に向けて不器用な歩を進める僕を、偉大な先輩たちが厳しくも温かい目で見守ってくれている。

「100年室」について

 内閣官房人生100年時代構想推進室、通称「100年室」。耳慣れない部屋だと思いますが、安倍政権が看板政策として掲げる「人づくり革命」を担当しています。今後「人生100年時代」という超長寿社会を迎えるにあたって、子育て、介護などに対して人々が抱えている不安を解消し、高齢者も若者も安心できるような「全世代型」の社会保障制

度をいかに構築するか、誰もがその能力を最大限に発揮できる社会をどう作っていくか等々…関係府省から集められたメンバーが検討を重ねる毎日です。

問題意識を政策の現場でぶつける

 大きな政策を実行するのに欠かせないのが財源です。ただ、日本全体として見ると財源は限られており、政策を進めると同時

に財政健全化を確実に実現していく必要があることも事実。例えば、看板政策の一つである教育無償化でも、新しく必要になるお金はどのように調達するのか、無償化の対象範囲はどうするのか、いつから政策を実行するのか等、考えるべき論点はたくさんあります。政権をあげての重要政策を断行しようとしている時にこそ、特定の分野、関係者に偏らないバランスの取れた判断が一層求められるのではないか…日頃の問題意識を現実の政策課題に重ね合わせて考えるのはとても刺激的です。

想像もしていなかったフィールドで

 入省1年目は採用担当として学生の皆さんに財務省をアピールする日々。「財務省には、今の皆さんには想像もできないような活躍のフィールドが広がっていますよ」と話していました。その自分が、今「100年室」にいます。若干2年目職員を、政権の目玉政策の部局に放り込むのは、フィールドを限定しない財務省らしいと思います。100年室での経験を、未来の自分はどこでどう振り返るだろうか…、その想像のできなさに今から心を躍らせています。

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39 財務省職員の活躍するフィールド

在外公館

野田 恒平Kohei NODA

[平成13年入省]

EU(欧州連合)日本政府代表部 参事官

平成 13 年 大臣官房文書課平成 15 年 広島国税局平成 16 年 留学(米・コロンビア大)平成 18 年 国際局地域協力課平成 19 年 在フィリピン日本国大使館 二等書記官平成 22 年 理財局国債企画課 課長補佐平成 24 年 関税局関税課 課長補佐平成 26 年 関税局関税課 関税地域協力室長平成 27 年 EU(欧州連合)日本政府代表部 一等書記官

4040

財務省の採用について、みなさんから多く寄せられる疑問にお答えします。

採用に関するQ&A

QA

入省後どんな経験を積むことができるのでしょうか。海外、地方や他省庁など本省以外で働く機会はありますか。

地方自治体(都道府県や市町村)、国税局など地方での勤務の機会がある他、留学や、IMF・世界銀行グループなどの国際金融機関、各国の大使館など海外で経験を積む機会も豊富にあります。また、他省庁に出向する機会もあります。財務省が相手にする世界が多様であるからこそ、職員も多様な経験から様々な学びを得て、日本を背負って立つ人材として成長することが求められています。

QA

財務省本省ではどのような採用イベントを行っているのか教えてください。

財政政策の立案体験ができる「2daysワークショップ」を例年夏と冬に開催している他、本省で開催する独自説明会、人事院主催の「公務研究セミナー」・「総合職中央省庁セミナー」、若手職員や採用担当者との少人数座談会などがあります。これらの説明会を通じ、財務省職員が日々どのような思いを持って政策課題に取り組んでいるのかを知っていただきたいと考えています。

QA

財務省の採用試験について教えてください。

財務省では、以下の部局別に採用を行っています。それぞれ必要となる試験が異なるのでご注意下さい。財務省本省総合職の場合は、国家公務員採用総合職試験(院卒者試験)、もしくは(大卒程度試験)の合格が必要です(試験区分は問いません)。詳細については人事院のホームページをご覧下さい。

総合職

一般職

総合職

財務専門官

総合職

本 省 財務局 税 関 国税庁総合職国税専門官税務職員一般職

QA

毎年採用人数はどれくらいでしょうか。また、女性や理系の採用について教えてください。

財務省本省では、区分ごとに採用人数を決めているのではなく、人物本位・能力本位の採用を行っています。そのため、性別、出身大学・学部、試験区分に区別はありません。また、文系・理系についても区別せず一括の採用を行っており、入省後のキャリアパスについても差はありません。

採用実績 平成26年度 平成27年度 平成28年度 平成29年度 平成30年度

22 23 23 22 22

5 7 7 7 6

1 2 3 1 3

採用数

女性数

理系学部出身者数

唯一のEU、無二の自分との出会い。

人類史の現場を、ライブ配信

 「Sui Generis(スアイ・ジェネリス)」というラテン語の単語があります。これは、「独自で類を見ない・唯一無二の」という意味で、EUを表す際にしばしば用いられます。EUは、言うまでもなく国家ではありません。しかし、国連をはじめとした一般的な国際機関とも違います。加盟国が部分的とは言え主権を委譲し合い、共通のルールを様々な形で定め、その下で各国家が行動する。こんな奇妙な連合体は、地球上の他のどこにもありません。それは二つの大戦の惨禍を経た、欧州における究極の平和の試みであり、人類史的な挑戦と言えます。そして現在、移民・難民、英国の離脱、対露政策等の問題に揺れるEUは、未だかつてなく全世界からの注目を浴びています。私は、2年余りに亘りEU本部のあるベルギー・ブリュッセルで、そのような動きに文字通りライブで立ち会って来ました。

余暇的な仕事、仕事的な余暇

 日本政府の対EU外交を担うこの代表部の主な仕事は、このような様々な課題に関し、タイムリーな情報収集とその発信を行うことです。それは、会議室で行われるとは限りません。食事の場、更には喫茶店で

コーヒーを飲みながらポロっとこぼれた相手方の言葉の中に、重要な情報が潜んでいる場合もあります。端から見れば寛いでいるようにしか見えない場面も、実は重要な外交活動の一環ということもあるのです。他方、余暇で培った人間関係の中から、思わぬ知見が広がるということもあります。私はこの地で、芸術家、料理人、果ては国際試合で来訪したオリンピック選手まで、様々な分野の方々と交友を築くことができました。その多くは、私自身の文化の理解を通じて話題を豊富にし、外交活動において相手の懐に飛び込んでいくに当たっての有効なツールになっています。勿論、余暇の活動の全てが直接仕事に繋がる訳ではありませんが、このような世界の広がりは、私の人生観を豊かにし、仕事への更なる探求心をも生んでくれています。最近流行りの言葉であるワークライフ・バランス(WLB)の真の含意とは、仕事と余暇の単純な時間的均衡ではなく、それらが生産的に相互連関するようなスタイルを各自が確立することにあると、私は考えています。

就職先を選ぶ、単純な基準

 自分の進路を考えようとする皆さんは、無数の選択肢の中で迷い、

座標軸を失うことも多いと思います。しかし、その答えは「自分を育ててくれる職場を選ぶ」ということに尽きます。それは、各人の成長過程を長い眼で見て、人材育成を十分に行う余力のある、懐の深い環境であるということです。私自身、海外留学を始めとした潤沢な研修制度、時として分不相応に与えられる大きな仕事の持ち場での経験、更には、勤務環境を活かした様々な人たちとの出会いにより、自らが大きく成長していったことを実感しています。一つひとつのタイルは突飛な色ではなくとも、それらが集まり、形作られたモザイク画は、世界に一つしかありません。仕事とは、即ち様々な機会との出会いであり、それはひいては新しい自分との出会いです。「Sui Generis」を目指す皆さんと一緒に働ける日を、楽しみにしています。