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熊本県森林・林業・木材産業基本計画 森林資源の循環利用による林業の成長産業化と 多様で豊かな森林づくりの推進~ 平成29年3月 熊 本 県

熊本県森林・林業・木材産業基本計画熊本県知事 県土の63%を占める森林は、木材を供給するだけ でなく、豊富な地下水を涵養し、災害から生命や財産

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  • 熊本県森林・林業・木材産業基本計画

    ~森林資源の循環利用による林業の成長産業化と

    多様で豊かな森林づくりの推進~

    平成29年3月

    熊 本 県

  • 熊本県知事

    県土の63%を占める森林は、木材を供給するだけ

    でなく、豊富な地下水を涵養し、災害から生命や財産

    を守るなど、県民生活に大きく寄与する貴重な共有財

    産です。

    先人が長年にわたり育成してきた本県の森林は、成

    熟が進み、本格的な利用期を迎えていますが、このた

    びの平成28年熊本地震で、多くの山地災害や林道施

    設等への被害が発生しました。この豊かな森林を元の

    姿に戻し、有効活用することはもちろんのこと、継続

    的に森林を守り育て、次世代に引き継ぐことが私たち

    に課せられた使命です。

    今回、新たに策定した「熊本県森林・林業・木材産

    業基本計画」は、熊本地震からの1日も早い復旧と創

    造的復興を進めるとともに、熊本の森林・林業・木材

    産業を持続的に発展させるため、「森林資源の循環利

    用による林業の成長産業化と多様で豊かな森林づく

    りの推進」を目指すこととしています。

    森林・林業・木材産業のさらなる発展は経済的な豊

    かさだけでなく、山村を中心とする地域の活性化にも

    つながります。県民の皆様が、安全安心で、誇りに満

    ち、未来への夢と希望にあふれ、幸せを実感できる、

    そのような熊本の森林・林業・木材産業が実現できる

    よう全力で取り組んで参ります。

    そのためには、林業・木材産業関係者をはじめ県民

    総参加による取組みが是非とも必要です。県民の皆様

    におかれましては、施策の推進に対する一層のご理解

    とご協力をお願いします。

    平成 年 月

    森林資源の循環利用による林業の成長産業化と

    多様で豊かな森林づくりの推進

  • 目 次

    ■はじめに

    1 策定の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

    2 計画の位置づけ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

    3 計画の期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

    総 論

    第1章 森林・林業・木材産業を取り巻く諸情勢

    1 くまもとの森林・林業・木材産業の現状と課題 ・・・・・・・・・・・・・・ 3

    2 森林の役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

    第2章 将来の目指す姿と基本的方向

    1 森林・林業・木材産業の将来の目指す姿 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

    2 施策の基本的方向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

    (1)森林の施策の方向性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

    (2)林業の施策の方向性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

    (3)木材産業の施策の方向性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

    第3章 熊本地震からの復旧・復興に向けて

    1 平成28年熊本地震の発生 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

    2 平成28年熊本地震からの復旧・復興プラン ・・・・・・・・・・・・・・ 24

    3 復旧・復興プランと熊本県森林・林業・木材産業基本計画との連動 ・・・・・ 24

    4 森林・林業・木材産業における復旧・復興に向けた取組み ・・・・・・・・ 24

    各 論

    くまもとの森林・林業・木材産業の発展に向けた施策の展開方向 ・・・ 27方

    1 充実した森林資源の循環利用による稼げる林業の推進 ・・・・・・・ 28

    (1)「森林経営計画」等による持続的な森林経営の強化

    (2)木材の安定供給に向けた森林整備

    (3)林業生産性の向上

    (4)再造林等による確実な更新の確保

  • 2 県産木材の利活用の最大化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

    (1)建築分野における需要の拡大

    (2)木質バイオマスの利用や木材輸出等における需要の拡大

    (3)需要に応じた木材供給体制の整備

    (4)木材利用の理解の醸成

    3 多様で健全な森林づくり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41

    (1)適正な森林管理の推進

    (2)安全・安心な森林づくりの推進

    (3)シカ被害対策等の推進

    (4)県民参加の森林も り

    づくりの推進

    4 林業を支える担い手の確保・育成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49

    (1)林業従事者の確保・育成

    (2)地域林業をけん引するリーダー等の確保・育成

    (3)高度な知識と技術・技能を有する技術者の育成

    5 山村地域の活性化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54

    (1)特用林産物の生産力強化と販路拡大

    (2)里山林等の地域資源の活用

    6 森林・林業・木材産業を支える研究・技術開発と普及の推進 ・・・・ 58

    ■ 用語の解説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60

  • - 1 -

    ■はじめに

    1 策定の背景 本県では、平成 24年3月に「熊本県森林・林業・木材産業基本計画」を策定し、

    基本方針である「県産木材需要を最大化させ成熟した資源を活かす林業へ」に基づ

    き、様々な施策を推進してきました。

    具体的には、県において「熊本県公共施設・公共工事木材利用推進基本方針」(平

    成 23年)を作成し、積極的に木材の利用に取り組んだことで公共施設等の木造化・

    木質化が進み、また、木材需要の開拓についても、木質バイオマス発電施設の整備

    等によるエネルギー利用や木材輸出の取組みが進展しています。

    一方、林業生産活動の面では、森林施業の集約化の推進、路網整備や林業機械の

    導入等を促進など木材の安定供給や生産性向上に向けて取組みを継続しているとこ

    ろです。

    また、「水とみどりの森づくり税」等を活用した多様な森林づくりや県民参加の

    森林も り

    づくりの普及啓発を進めるほか、山村地域の振興を図るため、しいたけやたけ

    のこ等特用林産物の施設整備等に取り組んだところです。

    しかしながら、本県の森林・林業・木材産業は、多くの森林資源が利用期にある

    にもかかわらず、需要に応じた安定的な木材供給体制が確立されていない状況にあ

    ります。

    また、木材流通の効率化や、品質・性能の確かな製品の生産が不十分となってい

    るほか、CLT等を活用した新たな木材需要の創出などが求められています。

    加えて、平成 28 年4月 14 日・16 日に本県を襲った「平成 28 年熊本地震」によ

    る山地災害や、林道施設、木材加工施設等の被害の復旧・復興へ向けた取組みを加

    速化する必要があります。

    このような状況を踏まえて、「平成 28年熊本地震」からの復旧・復興を進めると

    ともに、熊本の森林・林業・木材産業を持続的に発展させるため、「森林資源の循

    環利用による林業の成長産業化と多様で豊かな森林づくりの推進」を目指すことと

    したところです。

    このような基本的考え方に基づき、今後の本県の森林・林業・木材産業に関する

    施策を体系的に推進していくため、新たに「熊本県森林・林業・木材産業基本計画」

    を策定することとしました。

    2 計画の位置づけ 森林・林業・木材産業の課題は、本県の林業・木材産業関係者のみならず、県

    民の安全・安心で豊かな生活にも密接に関連しており、県民の十分な理解を得つ

    つ解決していく必要があります。

    このため本計画は、森林・林業・木材産業の将来の目指す姿や、林業・木材産

    業が地域の主要産業として発展するための方向性を示す指針であるとともに、広

    く県民へメッセージを伝える性格を持っています。

  • - 2 -

    3 計画の期間 本計画は、「熊本復旧・復興4カ年戦略」と歩調を合わせ、「平成 29年度から平成

    31年度」までの3カ年とします。

    なお、森林・林業・木材産業をめぐる情勢の変化に柔軟に対応して効率的な施策

    の展開が図られるよう、必要に応じて見直すものとします。

  • - 3 -

    総 論

    第 1 章 森林・林業・木材産業を取り巻く諸情勢

    1 くまもとの森林・林業・木材産業の現状と課題

    (1)森林の現状と課題

    1)利用期を迎えている森林資源

    ○ スギ・ヒノキ人工林のうち、主伐が可能な 46 年生以上の面積は 68%を占める

    16万 haで、10年後には 88%にあたる 20万 haが伐採可能になると見込まれてお

    り、人工林資源の成熟化が進んでいます。

    ○ 人工林は、主伐可能な林齢に達したにもかかわらず、林業生産活動の低迷によ

    り、若齢林が非常に尐ない状況であり、51 年~55 年生前後をピークとし、著し

    く偏った林齢構成となっています。

    ○ 人工林の造成は、戦後復興・経済発展等を目的として、国(国有林)や森林所

    有者(民有林)等によって精力的に行われましたが、奥地などでは、経営的に成

    り立たない箇所も見られます。

    ○ 戦後から高度経済成長期にかけての「エネルギー革命」により、薪や炭の供給

    源である広葉樹林(雑木林)は用途を失う一方で、戦後の荒れた国土を緑化する

    とともに、建築材等の木材需要の急速な高まりに応えるために、国をあげてスギ・

    ヒノキ等の人工林が造成されました。

    ○ 高度経済成長期に成長過程であった国内の人工林は、当時の旺盛な木材需要を

    満たすには至らず、1960 年代の林産物(丸太等)の輸入自由化により、輸入材が

    増加するとともに、石油製品等による代替材料の進出による需要の減尐等により、

    国産材は行き場を失いました。また、輸入材の増加等による国産材価格の下落や

    国内の林業生産性の低さなどから、主伐可能な林齢になっても伐採が先送りされ

    る森林が増えてきました。

    偏った林齢構成になった理由

    民有林スギ・ヒノキ人工林の林齢構成(県内)

    0

    5,000

    10,000

    15,000

    20,000

    25,000

    30,000

    35,000

    40,000

    45,000

    面積(ha)

    林齢

    ヒノキ

    スギ

    10年後 主伐可能な面積:約68%

    10年後:約88%

    民有林スギ・ヒノキ人工林の林齢構成(県内)

    資料:熊本県民有林資源調査書

  • - 4 -

    2)適切に管理されない森林の顕在化

    ○ 本県の森林面積は、46 万 ha で県土の 63%を占め、その内訳は、民有林が 40

    万 ha(86%)、国有林が6万 ha(14%)となっています。

    ○ 本県の民有林は、昭和 30年代からの拡大造林政策により 24万 haに及ぶスギ・

    ヒノキ等の人工林が造成されています。

    ○ 森林所有者の高齢化、不在村所有者の増加等から、管理されない森林が県内に

    散見される状況にあります。

    3)森林に対する国民の要請

    ○ 森林の有する多面的機能のうち森林に期待する働きについて、「山崩れや洪水

    などの災害を防止する働き(災害防止)」、「二酸化炭素を吸収することにより、

    地球温暖化防止に貢献する働き(地球温暖化防止)」、「水資源を蓄える働き(水

    資源涵養かんよう

    )」と回答する者の割合が高くなっています。

    また、近年は、一時低迷していた木材生産の働きに対する期待が高まってきて

    います。

    スギ

    35%

    ヒノキ

    23%

    その他

    3%

    人工林

    61%

    天然林

    32%

    その他

    7%

    国有林

    14%県有林

    2%

    市町村有林

    9%

    私有林

    75%

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    7

    8

    9

    10S55 S61 H5 H11 H15 H19 H23 H27

    災害防止

    地球温暖化防止

    水資源涵養

    木材生産

    野生動植物

    野外教育

    保健休養

    大気浄化・騒音緩和

    林産物生産

    手入れが行き届いていない森林

    資料:熊本県林業統計要覧

    所有形態別森林面積

    県の森林面積

    462千 ha

    資料:熊本県林業統計要覧

    民有林の林種・樹種割合

    森林に期待する機能 (順位)

    資料:平成 27年度版 森林・林業白書 (年)

  • - 5 -

    4)シカによる森林被害の状況

    ○ 平成 27年度に発生したシカによる人工林の新規被害の推定面積は 1,144haで、

    平成 20年度以降、毎年 1,000ha程度で推移しています。

    ○ 被害は、県南地域を中心に発生していますが、県北地域へ拡散・拡大していま

    す。また、天草地域においても、被害や目撃の情報が寄せられるようになってい

    ます。

    ○ 新植地での食害や壮齢林での剥皮被害は、造林コストの増加や木材価値の低下

    により森林所有者の経営意欲を減退させ、経営放棄につながる要因のひとつとも

    なっています。

    ○ 立木への被害にとどまらず、下層植生の減尐による裸地化や表土かく乱等の土

    砂流出の被害、希尐動植物の減尐などによる生物多様性への影響等、公益的機能

    の低下も大いに懸念されています。

    5)山地災害の状況

    〇 近年は、梅雨前線や台風に伴う豪雨等により山地災害が多発しており、森林や

    地域住民の生活等に大きな被害が及ぶ事例が発生しています。

    1,080969

    913 878823

    1,031 1,0151,144

    0

    200

    400

    600

    800

    1,000

    1,200

    1,400

    H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 (年度)

    (ha )

    年度 被害額(百万円) 主な災害名等

    平成24年度 24,786 熊本広域大水害

    平成27年度 2,836 台風15号

    34,140 熊本地震(※H28.6.21現在)

    12,276 6月19日からの梅雨前線豪雨平成28年度

    近年の主な山地災害の被害額等

    シカの食害により裸地化した森林

    資料:熊本県業務資料

    シカによる剥皮被害

    シカによる人工林の新規被害推定面積(県内)

  • - 6 -

    【森林の課題】

    ■ 人工林の林齢構成は、若齢林が極端に尐なく 51~55 年生前後に集中している

    ため、このまま経過すると、「植える→育てる→使う→植える」という林業の持

    続性が危ぶまれるほか、生物多様性の確保、災害等のリスク分散を図るためにも、

    主伐と確実な更新による林齢構成の平準化が望まれます。

    ■ 間伐等の手入れが不足している人工林の解消や、主伐後は再造林等による確実

    な更新が必要です。

    ■ 人工林については、地位、地利等を考慮しつつ、永続的に経営に利用していく

    森林と環境保全のため守るべき森林に区分(ゾーニング)し、目的に応じた姿に

    誘導していくことが必要です。

    ■ 人の手が入らず放置された里山林については、地域住民等による利活用を進め

    ていくことが必要です。

    ■ シカをはじめとする有害鳥獣被害から森林を守るための被害防止対策や、捕獲

    等によるシカの個体数管理を進めることが必要です。

    ■ 梅雨前線や台風に伴う豪雨等に加え平成 28 年熊本地震により山地災害が発生

    しており、計画的な防災施設の整備や地域住民への防災に向けた広報活動が必要

    です。

  • - 7 -

    (2)林業の現状と課題

    1)林業構造の推移

    ○ 本県の主要樹種であるスギ、ヒノキの素材(丸太)価格は昭和 55 年をピーク

    に長期的に下落し、素材(丸太)の平均単価は、35年前(ピーク時)の約 1/3ま

    で下がっています。

    ○ 素材(丸太)生産量は平成 25年から 3年連続で 90万㎥を超えており、林業産

    出額は長期的には減尐傾向にあるものの、平成 25年からは増加に転じています。

    ○ 森林の所有構造は、小規模・分散で 10ha 未満の経営体数が約 6 割を占めてい

    ます。経営体数も 5年前の調査時に比べ約3割減尐しています。

    ○ 森林経営計画の認定率は、年々増加しており平成 27 年度末で 35%となってい

    ますが、伸び率は減尐傾向にあります。

    ○ 森林所有者による適切な森林管理がなされていない事例や、主伐時に再造林費

    用が見込めないことから、伐採後土地を手放す事例も見られます。

    資料:農林水産省「生産林業所得統計報告書」 資料:農林水産省「世界農林業センサス」

    素材価格の推移(県内) 素材生産量の推移(県内)

    資料:農林水産省「木材統計」

    2,444

    3,027

    2,396

    1,656

    1,315 1,3471,437 1,364

    1,589 1,654

    0

    500

    1,000

    1,500

    2,000

    2,500

    3,000

    3,500

    H61 H2 H7 H12 H17 H22 H23 H24 H25 H26

    (千万円)

    栽培きのこ等

    木材生産

    (年) 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000

    5ha未満

    5-10ha

    10-30ha

    30-100ha

    100ha以上

    34%

    36%

    27%

    25%

    27%

    26% 9%

    9% 3%

    3%

    総数3,687

    総数2,754H27

    H22

    (経営体数)

    林業産出額の推移(県内) 保有山林面積規模別経営体数(県内)

    資料:農林水産省「木材統計」

    946

    847808 817

    904 892 888

    953929 913

    0

    200

    400

    600

    800

    1,000

    H2 H7 H12 H17 H22 H23 H24 H25 H26 H27

    広葉樹

    針葉樹

    (千㎥)

    (年)

    24,300

    59,600

    0

    10,000

    20,000

    30,000

    40,000

    50,000

    60,000

    70,000

    H2 H7 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27

    スギ中丸太

    14~22cm

    3.65~4m

    ヒノキ中丸太

    14~22cm

    3.65~4m

    14,500

    18,700

  • - 8 -

    2)生産基盤の状況

    ○ 林道・作業道に公道を含めた林内路網密度は、平成 27年度末で 56.8m/haとな

    っています。これは、施業の効率化に必要な路網密度の目安として国が示す 75.0

    m/haと比べて、低位な状況にあります。

    ○ 高性能林業機械の保有台数は、平成 26 年度末で 258 台となっており、全国 5

    位の導入状況となっています。

    資料:熊本県業務資料

    資料:熊本県業務資料

    林道・作業道の開設延長と路網密度(県内)

    高性能林業機械の保有台数(県内)

    8.1 8.2 8.4 8.4 8.5 8.6 8.6 8.6 8.7 8.7 8.8

    16.3 16.9 18.0 18.9

    20.4 21.5 23.0 24.1

    25.4 26.7 27.4

    44.9 45.6 47.0 48.0

    49.6 50.7 52.2 53.4 54.8

    56.0 56.8

    0.0

    10.0

    20.0

    30.0

    40.0

    50.0

    60.0

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    350

    400

    H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27

    (密度 m/ha)(延長 km)

    林道 作業道 林道密度 作業道密度 路網密度

    (年度)

    6

    258

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    H2 H7 H12 H17 H22 H23 H24 H25 H26

    (台)

    スイングヤーダ

    スキッダ

    タワーヤーダ

    フォワーダ

    ハーベスタ

    プロセッサ

    (年度)

  • - 9 -

    3)林業就業者の推移

    ○ 林業就業者数は、平成 17年時点で 1,655人であり、昭和 55年当時の約 32%に

    減尐しています。このうち 65 歳以上の占める割合が 23%に上昇しており、林業

    就業者の高齢化が進んでいます。

    ○ 新規就業者については、平成 19年度から平成 22年度までは 100名程度で推移

    していましたが、平成 23年度からは 80名程度で推移しています。

    ○ 森林組合の林業雇用労働者数は、平成 26 年度現在 811 名で減尐傾向にありま

    すが、40歳未満の割合は増加しています。

    5,094

    4,472

    3,5893,009

    2,453 1,655

    2,782

    6 7

    8

    15

    20

    23

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    0

    1,000

    2,000

    3,000

    4,000

    5,000

    6,000

    S55 S60 H2 H7 H12 H17 H22

    20歳代以下 30歳代 40歳代50歳代 60~64歳 65歳以上65歳以上の割合

    (人)(%)

    【参考】(年)

    資料:熊本県業務資料

    年代別林業従事者の推移(県内)

    資料:国勢調査

    新規就業者の推移(県内)

    ※平成 17 年調査までは、産業別就業者数に「林業」の集計区分が示されていたが、平成 22 年調査では

    「農業、林業」と「うち農業」と変更されたため、その差を林業就業者とした。

    なお、平成 22 年調査では森林組合職員の一部が「農業、林業」として集計されており、統計の取り方が異

    なるため、上記のグラフは参考の標記とする。

    70

    99 110

    100

    115

    86 86

    62

    80 80

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27

    (人)

    (年度)

  • - 10 -

    4)特用林産物の状況

    ○ 本県の特用林産物は、しいたけ等の栽培きのこのほか、たけのこ、竹材、木竹

    炭等があり、平成 27 年度の生産量の全国順位は、乾しいたけで全国 3 位、生し

    いたけで同 20 位(うち原木栽培は同 3 位)、たけのこで同 3 位、竹材で同 2 位、

    竹炭で同 3位となっています。

    ○ 需要の低迷、中国産をはじめとした輸入品との競合、生産者の高齢化、後継者

    不足等から県内の特用林産物の生産量は減尐傾向にありましたが、近年は、食品

    の産地偽装問題などを背景とした消費者の食の安全・安心志向の高まりから、国

    産品の需要増加を受けて主要作物の生産量は横ばいで推移しています。

    1,159

    1,001

    1,1201,033

    1,100 1,077 1,081985

    42,057

    2,388

    0

    5,000

    10,000

    15,000

    20,000

    25,000

    30,000

    35,000

    40,000

    45,000

    0

    200

    400

    600

    800

    1,000

    1,200

    H12 H17 H22 H23 H24 H25 H26 H27

    輸入量(t)生産量(t)

    菌床しいたけ 原木しいたけ 輸入量

    (年)

    221 227 233 292 290 255 221 203

    9,144

    5,029

    0

    1,000

    2,000

    3,000

    4,000

    5,000

    6,000

    7,000

    8,000

    9,000

    10,000

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    H12 H17 H22 H23 H24 H25 H26 H27

    輸入量(t)県内生産量(t)

    生産量 輸入量

    (年)

    乾しいたけ生産量等の推移(県内)

    生しいたけ生産量等の推移(県内)

    資料:熊本県業務資料

    資料:熊本県業務資料

  • - 11 -

    【林業の課題】

    ■ 豊富な森林資源を有効に活用し、需要に応じて素材(丸太)を安定供給するた

    めには、主伐や搬出間伐等の林業生産活動を活発化させる必要があります。その

    際、伐採跡地に確実に再造林が行われることが重要です。

    ■ 林業経営が成り立つような低コスト施業の実施には、森林所有者に施業の提案

    を行い、森林施業を面的にまとめる集約化が必要です。そのためには、森林経営

    計画の作成・実行など地域をまとめる関係者の連携強化が欠かせません。

    ■ 集約化された森林では、路網を整備し、高性能林業機械等を駆使して高い生産

    性を実現していくことが可能となります。路網の整備にあたっては、簡易で耐久

    性のある構造・線形となるよう配慮する必要があります。

    ■ 多様化する木材需要に対応するため、生産目的とそれに応じた生産手段を意識

    した林業経営を行う必要があります。

    ■ 林業の担い手の確保・育成を行うには、事業体の経営基盤の強化とともに生産

    性の向上を図るための技術者の養成、賃金水準の向上、社会保険の加入など雇用

    条件の改善、安全対策等魅力ある就業環境の整備が必要です。

    ■ 特用林産物は、山村地域の重要な収入源であり、食の安全・安心に対する消費

    者ニーズに応えるとともに、地域の特色のある新たな特用林産物等の掘り起こし

    や品目及び規模に応じた生産・流通体制の整備が必要となっています。

  • - 12 -

    (3)木材産業の現状と課題

    1)住宅着工の推移

    ○ 我が国の木材需要の約5割を製材用・合板用が占め、住宅建築の動向が木材需

    要に大きな影響を及ぼしています。

    ○ 全国、本県ともに新設住宅着工戸数は、平成 20 年秋以降の急速な景気悪化等

    の影響を受け、住宅着工戸数は落ち込んでいます。平成 25 年は消費税増税前の

    駆け込み需要で数値が伸びています。

    ○ 住宅着工のうち木造の割合は、横ばいで推移しています。

    2)木質バイオマスの利用と木材輸出の推移

    ○ 木質バイオマスの利用は、これまで、木材乾燥機の熱源等の燃料エネルギー、

    家畜敷料、紙・パルプ用途が主流でしたが、近年、木質バイオマス発電施設の建

    設により新たな分野での需要が高まっています。

    ○ 木材輸出は、為替の影響や中国での需要拡大等により年々増加しており、平成

    27年度の輸出量は約 102千㎥、輸出額は、約 1,434百万円となっています。

    住宅着工戸数と木造率の推移(県内)

    県内木質バイオマス発電施設の状況(平成 28年度現在)

    45 44

    57 56 55 56 55 56

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    0

    200

    400

    600

    800

    1,000

    1,200

    1,400

    H12 H17 H22 H23 H24 H25 H26 H27

    木造 非木造 木造率(%)

    (%)(千戸)

    (年)

    53 43

    67 62

    57 60 58 60

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    0

    2,000

    4,000

    6,000

    8,000

    10,000

    12,000

    14,000

    16,000

    H12 H17 H22 H23 H24 H25 H26 H27

    木造 非木造 木造率(%)

    (%)(戸)

    (年)

    住宅着工戸数と木造率の推移(全国)

    資料:国土交通省「住宅着工統計」 資料:国土交通省「住宅着工統計」

    資料:熊本県業務資料

    事業主体 場所発電出力

    (kw)木材使用量(万m3/年)

       日本製紙㈱八代工場 八代市 5,000 12

    ㈱有明グリーンエネルギー 荒尾市 5,600 10

  • - 13 -

    3)素材(丸太)の需給の動向

    ○ 本県の素材(丸太)の需要は製材用が約7割を占め、合板・チップ用が約3割

    となっています。

    ○ 製材工場等への素材入荷(供給)量は、平成 24年から年々増加し、平成 27年

    は 1,134千㎥となっています。内訳に大きな変化はありませんが、約4割が他県

    産木材(県外からの移入量)で占められています。

    12 20

    39

    66

    102

    122 209

    471

    978

    1,434

    0

    200

    400

    600

    800

    1,000

    1,200

    1,400

    1,600

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    H23 H24 H25 H26 H27

    材積

    金額

    (千m3) (百万円)

    (年度)

    資料:農林水産省「木材統計」

    資料:熊本県業務資料

    1,310

    1,0981,045 1,010

    1,1241,136

    1,085 1,095 1,1241,134

    0

    200

    400

    600

    800

    1,000

    1,200

    1,400

    H2 H7 H12 H17 H22 H23 H24 H25 H26 H27

    製材用 合板用、パルプ・チップ用

    (千㎥)

    (年)

    素材需要の推移(県内)

    木材輸出の推移(県内港)

  • - 14 -

    4)木材の流通

    ○ 国産材の流通経路は、輸入材に比べ取扱量が尐量で多段階であるため、高コス

    ト構造となっています。一方で、大手の住宅メーカーでは、製材工場を自ら所有

    したり、関係業者との協定により流通経路を合理化したりする事例も見られます。

    国産材

    輸入(丸太)

    輸入(製品)

    輸入(燃料)

    輸出(丸太)

    原木市場

    製材工場

    合単板工場

    チップ工場

    集成材工場

    その他(木質ボード等)

    製品市場

    プレカット

    工場

    木材販売業者

    住宅

    メーカー・

    工務店

    チップ

    工場

    製紙

    工場

    発電・

    熱利用

    施設

    住宅・

    公共

    建築物

    工務店等

    紙・板紙

    エネルギー

    輸出(製品)

    木材の流通経路

    1,310

    1,0981,045 1,010

    1,124 1,1361,085 1,095

    1,1221,134

    -400

    -200

    0

    200

    400

    600

    800

    1,000

    1,200

    1,400

    県産木材

    他県産木材(移入量)

    輸入材

    県産木材(移出量)

    (千㎥)

    H2 H22H12 H17H7 H24H23 H26H25 H27 (年)

    素材需要に対応した素材の供給内訳の推移(県内)

    資料:農林水産省「木材統計」

    資料:平成 27 年度版 森林・林業白書

  • - 15 -

    5)製材品出荷量の推移

    ○ 製材品価格は、昭和 55 年をピークに長期的に低落し、35 年前(ピーク時)の

    4~5割まで下落しています。なお、平成 26 年は、円安等による輸入材の供給

    量の減尐や需要量の増加により若干上昇しています。

    ○ 製材品出荷量は、平成 21年と平成 24年は景気悪化の影響等を受け大きく減尐

    しましたが、ほぼ横ばいで推移しています。また、本県の製材品の5割強は、県

    外に出荷されています。

    ○ 品質・性能が明確な木材に対する需要の高まりから、製材品に占める乾燥材の

    割合は、長期的に増加しています。

    ○ 中国等の旺盛な木材需要やロシア等の木材供給国が資源管理を強めているこ

    となどの輸入材を取り巻く環境の不透明感から、国内の住宅メーカー等では国産

    材へシフトしており需要が高まっています。

    477 460 460426

    388

    443423

    388 421 412393

    54 56 7285

    101132 123 136

    149 144 14611% 12%16%

    20%

    26%30% 29%

    35% 35% 35%37%

    0%

    10%

    20%

    30%

    40%

    50%

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27

    製材品出荷量 うち乾燥材 乾燥材比率

    (出荷量 千㎥)

    (年)

    (比率)

    70,800

    39,800

    133,300

    57,000

    0

    20,000

    40,000

    60,000

    80,000

    100,000

    120,000

    140,000

    S55 S60 H2 H7 H12 H17 H22 H23 H24 H25 H26 H27

    (円)

    スギ正角 ヒノキ正角

    (年)

    資料:農林水産省「木材価格」

    製材品価格の推移(福岡)

    製材品出荷量と乾燥材比率の推移(県内)

    資料:農林水産省「木材統計」、熊本県業務資料

  • - 16 -

    ※)シカによる森林被害の現状

    4)特用林産物

    【木材産業の課題】

    ■ 木材の需要を高めるには、住宅や公共建築物等の木造化・木質化に積極的に取

    り組むとともに、CLT等の新たな利用分野の開拓、未利用の木質バイオマスの

    エネルギー利用、木材輸出、土木分野等での木材利用の回帰など様々な分野で木

    材の利用を促進することが必要です。

    ■ 県内では国産材を利用する大規模製材工場や国産材に転換した合板工場等が増

    えてきましたが、製材品等の供給を左右する素材(丸太)の供給能力は増加した需

    要に対して十分でなく、素材の安定供給体制の構築が急務となっています。

    ■ 木材需要者(工務店・住宅メーカー等)が県産木材を安心して使えるよう、川

    上から川中・川下(※)までのマッチングを図り、各事業体間の協業あるいは連携

    を図る安定したサプライチェーンを構築することが必要です。また、県産木材の

    複雑な流通構造を合理化するなどトータルコストの縮減を図ることが必要です。

    ■ 輸入材が利用されてきた分野などに、県産木材が使われるよう、工務店や住宅

    メーカー等のニーズを的確に捉え、乾燥・強度等の品質・性能が確かな木材を安

    定供給する体制を整備することが必要です。また、産地証明やトレーサビリティ

    (生産履歴)制度にも対応していく必要があります。

    ■ 川上から川下までの関係者が一丸となって自ら木造セールスマンとして、木材

    需要の拡大を推進する必要があります。

    ※ 「川上」:森林所有者、森林組合、素材生産業者など原料供給者

    「川中」:製材、合板、チップ等の木製品製造業者

    「川下」:大工、工務店、住宅メーカー等及び施主

  • - 17 -

    2 森林の役割

    県土の 63%を占める森林は、水源の涵養かんよう

    、山地災害の防止、生物多様性の保全等の公益

    的機能を持っており、県民はおいしい水やきれいな空気など多くの恵みを享受しています。

    この機能を維持・増進させながら、健全な状態で次の世代に引き継ぐことが重要です。

    また、本県の森林は豊かな木材を持続的に供給できるまでに育っており、これらの資源

    を有効に活かす時が到来しています。二酸化炭素を吸収・固定し成長した木を伐採して利

    用し、そこに二酸化炭素を活発に吸収して成長する木を植えるという適正なサイクルが、

    地球温暖化の防止や地域の発展に寄与します。

    1)水源を涵養かんよう

    する機能

    森林の土の中には隙間が多くあり、スポンジのように

    雨水を吸収して蓄え、ゆっくりと時間をかけて川に送り

    出します。(洪水の緩和と利用可能な水の増加)

    降った雨が森林の土の中をゆっくりと通過する際に、

    雨水に含まれる窒素・リンなどが土や植物に吸収されま

    す。(水質の浄化)

    2)山地災害を防止する機能

    森林の土の中には木の根が網の目のように張り巡ら

    されていて、土石をしっかりつかんで山崩れを防ぎます。

    また、森林は雨水の直撃から土を守り、地面が削り取

    られ土砂が流出するのを防ぎます。

    3)地球温暖化防止に貢献する機能

    森林は、光合成により地球温暖化の原因の一つである

    二酸化炭素を吸収し、炭素を貯蔵することで、地球温暖

    化の防止に貢献しています。特に、高齢の森林より若い森林の方が二酸化炭素を活発に

    吸収することができます。

    4)快適環境を形成する機能

    森林は、大気や水の浄化、気温や湿度など身近な気候の緩和のほか、汚染物質の吸着

    効果が高く、風や騒音を防ぐなど生活環境を快適にする効果があります。

    5)保健・レクリエーションの場を提供する機能

    森林は、私たちにリフレッシュの場や、野外教育・環境教育の場を提供しています。

    また、森林内の空気は、α-ピネンなどの物質の働きにより、ストレスホルモンを減尐

    させ、心身ともに癒す効果があります。

    6)文化的景観や風致を維持する機能

    史跡・名勝等と一体となった森林は、潤いのある自然景観や歴史的風致を構成してい

    ます。

    79mm/hr

    mm/hr128

    258

    mm/hr

    裸地 森林草原

    資料:村井宏・岩崎勇作「林地の水および土壌

    保全機能に関する研究」

    植生による浸透能の違い

    資料:丸山岩三実践林業大学 1970

    森林 2t/年・ha

    耕地 12t/年・ha

    裸地(荒廃地)

    307t/年・ha

    土砂流出量の違い

  • - 18 -

    7)生物多様性を保全する機能

    森林には、樹木をはじめ様々な植物と、それを餌にする小動物から猛禽もうきん

    類まで様々な

    野生の生きものが生育・生息しています。森林は生物の多様性を守るうえで大切な場所

    です。

    8)木材等の林産物を供給する機能

    森林から生産される木材は、柱や床板等の建築材料のほか、家具や紙の原料となるな

    ど様々な製品として利用され、私たちの生活を支えています。

    また、森林からはしいたけや山菜、木炭等の特用林産物が産出されます。

    平成17年度に導入しました「熊本県水とみどりの森づくり税」は、森林からすべて

    の県民が恩恵を受けているとの認識に立ち、森林をすべての県民の財産として守り育

    て、次の世代に引き継いでいくことを目的としたものです。

    〔水とみどりの森づくり税の概要〕

    導 入 平成17年度(5年を一期とし、平成27年度からは3期目)

    税 率

    (個人)年額 500円

    (法人)法人県民税均等割(標準税率)の 5%相当額

    (1,000円~40,000円)

    税収規模 約4億6千万円

    主な使途

    1 水源涵養かんよう

    養機能などを発揮するための森林づくり

    ◇針広混交林化や、着実な植林対策

    ◇意欲ある担い手へ森林経営を集約化させるための取組み

    ◇耕作放棄地の森林化の推進

    2 森林の重要性を伝え、森林を守り育てるための担い手の育成

    ◇森林を守り育てる地域リーダーの育成

    ◇住民団体や子ども達を対象にした森づくり活動

    ◇森林と親しむ活動

    3 森林や木材を活かした地域・景観づくり

    ◇森林や木材を活用した農山村の地域づくり

    ◇森林や里山の維持に支障を及ぼすシカへの対策

    ◇漁業者等が実施する流木除去等の川上から川下に至るまでの地

    域づくり

    ◇PR等を通じた県民への理解醸成

    熊本県水とみどりの森づくり税

  • - 19 -

    第2章 将来の目指す姿と基本的方向

    1 森林・林業・木材産業の将来の目指す姿

    森林・林業・木材産業を取り巻く状況は依然として厳しく、長期にわたる林業産出額

    や林業所得の減尐、森林所有者の経営意欲の低下等により、適切な整備が行われていな

    い森林が見られるなど、森林の有する多面的機能の発揮への影響も懸念されています。

    また、本県の森林資源は成熟し本格的な利用期を迎えていることから、より適切な整

    備と保全を行う取組みが求められています。

    この取組みにあたっては、県産木材が利用され、その収益が林業生産活動に還元され

    ることによって、「植える→育てる→使う→植える」というサイクルが維持され、森林の

    適切な整備・保全を図りながら、森林の有する多面的機能を持続的に発揮させることが

    重要となります。

    この「森林資源の循環利用」の実現には、「県産木材の需要を最大化」させることが不

    可欠です。このためには、住宅や公共施設等での利用促進や、木質バイオマスを製紙用

    や発電施設等でのエネルギーに積極的に活用し、さらには木材の輸出拡大やCLT等を

    用いた新たな利用分野の開拓など、木材需要をできる限り高め、これらの需要に応える

    競争力のある木材産業づくりが求められます。

    これらに取組むことで、森林所有者等の収入増加を通じて林業経営に寄与し、林業・

    木材産業における新しい分野での雇用が創出され、山村地域の経済の活性化が期待され

    ます。

    以上のことから、本県の森林・林業・木材産業を持続的に発展させるため「森林資源

    の循環利用による林業の成長産業化と多様で豊かな森林づくりの推進」を目指します。

    【森林・林業・木材産業の将来の目指す姿】

    資料:平成 27年度版 森林・林業白書

  • - 20 -

    2 施策の基本的方向

    (1)森林の施策の方向性

    森林には、木材生産のみならず、水源涵養かんよう

    や山地災害防止といった多面的機能を

    健全な状態で発揮させていくことが求められています。

    県下の 24万 haに及ぶ人工林については、将来にわたり持続可能な経営を目指す

    森林(以下「経営林」という。)と、多様な県民のニーズに応え公益的機能の発揮

    を目指す森林(以下「保全林」という。)に区分(ゾーニング)し、それぞれに応

    じた施業を推進します。

    天然生林は、広葉樹を主体とした多様な樹種で構成され、多種多様な生物の生

    育・生息の場であることから適切に保全していきます。

    また、森林の適切な管理・保全においては、シカ等の野生鳥獣による森林植生へ

    の食害や樹木の剝皮等の森林被害が深刻化しており、野生鳥獣との共生を図りなが

    ら、被害の防除や捕獲による個体数管理に取り組んでいくことが重要となっていま

    す。

    これらの森林を適切に管理する取組みと併せ森林環境教育や県民参加の森林も り

    くりを進めることで、生物多様性、地球温暖化防止といった生態系や環境の保全な

    どに深く関わっていくことになります。

    (長期的に目指す森林の方向性) 単位:万 ha

    区 分 方向性の具体的内容 現状 将来

    人工林 経営林 スギ・ヒノキ等の人工林で、主伐や再造林、間伐

    等による積極的な経営の場として活用し、将来的

    には林齢構成が平準化され、永続的な経営が可能

    となる森林 24

    17

    保全林 現状のスギ・ヒノキ等の森林を、針広混交林化・

    広葉樹林化・長伐期化等の非皆伐施業の実施によ

    り公益的機能の持続的発揮を目指す森林

    7

    天然生林 必要最小限の人為を加えつつも、自然の遷移に委

    ねる森林 13 13

    その他 更新困難な未立木地等 3 3

    合 計 40 40

    ※民有林について記載

    森林の方向性のイメージ

  • - 21 -

    (2)林業の施策の方向性

    本県は、森林資源の成熟化が進んでおり、今後は、この豊富な森林資源を積極的

    に循環利用していくことが求められます。

    このような中、県内の林業生産活動を活発化させるには、森林の所有構造が小規

    模・分散であっても、あるいは木材価格が今のままでも一定の利益が確保され、森

    林所有者に利益が還元できる仕組みを構築する必要があります。

    このため、主伐や搬出間伐を積極的に推進するとともに、森林所有者に対し施業

    を面的にまとめる集約化施業の提案や、路網の整備と高性能林業機械の導入等によ

    り高い生産性を確保する取組みを進めます。

    集約化施業の推進にあたっては、地域の森林をマネージメントする林業事業体の

    育成強化、所有者の施業に関する合意形成などを担う森林施業プランナーや市町村

    の森林・林業行政を技術的に支援を行う森林総合監理士(フォレスター)の育成に

    取り組みます。

    林業を支える担い手の確保・育成については、林業従事者や地域林業をけん引す

    るリーダー等の確保・育成などに取り組みます。

    さらに、木質バイオマス資源として期待される未利用材は、課題となる搬出コス

    トの削減と安定供給体制を確立することで、県産木材の需要拡大につなげていきま

    す。

    また、特用林産物の振興や里山林等の地域資源の活用を行うことで山村地域の活

    性化も図っていきます。

    このような取組みを進めながら、森林資源の循環利用による稼げる林業の推進を

    図ります。

    転換 育てる林業から利用する林業へ

    資料:林野庁資料を基に作成

    林業の方向性のイメージ

  • - 22 -

    (3)木材産業の施策の方向性

    県産材の需要の最大化を図るためには、公共建築物や住宅等の木造化・木質化を

    積極的に進めるとともに、輸入材や木材代替品等が多く使われてきた分野での利用

    促進、木材の輸出拡大、木質バイオマスのエネルギーとしての利用、CLT等を用

    いた新たな木材需要の創出等、各分野における県産木材の利活用を最大化させる取

    組みを推進します。

    このような取組みを通して、10年後の県内の木材需要(素材)予測を 154万㎥(H27

    は 133 万㎥)と見込み、このうち県産木材の自給率を 80%程度まで高めていきます。

    また、木材産業については、工務店や住宅メーカー等の製品ニーズを的確に捉え、

    品質・性能が確かな木材の加工・流通体制の整備、新たな技術開発や製品づくりへ

    の支援を進めます。

    特に、これまであまり使われてこなかった梁や桁等(横架材)の部材として大径

    木を活用した家づくり、2×4住宅や木質プレハブ住宅への県産木材の利用拡大を

    推進させます。

    (平成 27年度の需要量) 単位:万㎥

    【素材】 需要量 製材用 合板用 木材チップ 木質バイオマス・

    木材輸出 県外へ

    県内需要量 133 71 21 21 20

    県産木材 85 49 5 16 15 24

    他県産木材 41 21 11 4 5

    輸 入 材 8 2 6 1

    (平成 31年度の需要見通し) 単位:万㎥

    【素材】 需要量 製材用 合板用 木材チップ 木質バイオマス・

    木材輸出 県外へ

    県内需要 150 76 23 21 30

    県産木材 108 56 9 17 25 22

    他県産木材 36 19 9 3 5

    輸 入 材 7 1 5 1

    (平成 38年度の需要見通し) 単位:万㎥

    【素材】 需要量 製材用 合板用 木材チップ 木質バイオマス・

    木材輸出

    県外へ

    県内需要 154 78 23 21 32

    県産木材 121 62 12 18 28 19

    他県産木材 27 15 6 2 4

    輸 入 材 6 1 5 1

    10 年後

    木材需要量の見通し

    素材生産量

    109万㎥

    素材生産量

    130万㎥

    素材生産量

    140万㎥

    資料:農林水産省「木材需給報告書」、林業振興課業務資料

    注)表示単位未満を四捨五入しているため,計算と一致しない場合があります。

  • - 23 -

    ・公共建築物・住宅等の木造化・

    木質化の推進

    ・県外大消費地への販売強化

    ・CLT等の新たな分野や低利用

    分野での利用促進

    ・製紙会社

    ・木質バイオマ

    ス発電施設

    ・農業用加温機

    ・堆肥、菌床き

    のこ培地

    山土場・中間土場での仕分け・直送

    原木市場による広域集荷等

    住宅メーカー

    ・工務店等

    合板・集成材工場等

    県産木材の加工・流通の方向性のイメージ

    輸出

    (製材品)

    製材用材

    原木の

    安定供給

    県 産 木

    材 の 利

    活 用 の

    最大化

    ・森林所有者

    ・森林組合

    ・素材生産業者

    輸 出

    (原木)

    合板用材・チップ用

    製材工場

    プレカット工場

    ・木材流通業者

    ・木材加工業者

    ・消費者

    ・実需者

    チップ・ペレット工場等

    ニーズに

    応じた木

    製品の安

    定供給

    収益の還元

    販売収益

    製材端材

  • - 24 -

    第3章 熊本地震からの復旧・復興に向けて

    1 平成28年熊本地震の発生

    平成 28年 4月 14日及び 16日の二度にわたり本県を襲った震度 7の地震では、尊い人命

    が失われました。また、住宅被害は約 17万 5千棟を超え、農林水産業、製造業、観光業を

    はじめとする地域経済や公共施設も甚大な被害を受けました。

    林業関係では、山腹崩壊が 398箇所確認され、104ヘクタールで立木被害が発生してい

    るほか、林道施設、木材加工施設等で被害が確認されています。

    2 平成28年熊本地震からの復旧・復興プラン

    平成 28年 6月、知事を本部長とする「平成 28年熊本地震復旧・復興本部」を設置し、

    復興後の熊本の将来像、中期的に達成すべき目標や具体的な取組み等を、「平成 28年熊本

    地震からの復旧・復興プラン」としてとりまとめました。

    熊本地震からの復旧・復興にあたっては、「被災された方々の痛みを最小化すること」、

    「単に元あった姿に戻すだけでなく、創造的な復興を目指すこと」、「復旧・復興を熊本の

    更なる発展につなげること」からなる「復旧・復興の3原則」を基本とし、「県民の総力を

    結集し、将来世代にわたる県民総幸福量を最大化する」ことを基本理念に掲げ、「災害に強

    く 誇れる資産(たから)を次代につなぎ 夢にあふれる新たな熊本」を目指した具体的

    な取組みを進めていきます。

    3 復旧・復興プランと熊本県森林・林業・木材産業基本計画との連動

    熊本県森林・林業・木材産業基本計画においても、平成 28年熊本地震の発生を受け、新

    たな計画の施策の方向性を「平成 28年熊本地震からの復旧・復興を進めるとともに、くま

    もとの森林・林業を持続的に発展させるため、『森林資源の循環利用による林業の成長産業

    化と多様で豊かな森林づくりの推進』を目指す。」としています。

    復旧・復興プランと連動して、一日も早い森林の再生と県産材の需要拡大による森林経

    営の強化等の創造的復興を進めていきます。

    4 森林・林業・木材産業における復旧・復興に向けた取組み

    「平成 28年熊本地震からの復旧・復興プラン」における「平成 28年度」と「概ね4年

    間」の主な取組みは以下のとおりです。

    【主に平成 28年度の取組み】

    ○ 治山、林道や林業施設等の復旧

    (治山事業による森林の再生)

    ・山地崩壊箇所における崩土除去など応急対策を実施するとともに、対策工事を4年

    間で完了するため、本工事に着手します。また、高度な技術力が必要な 17箇所につ

    いては、本県が要望した国直轄代行による事業実施が実現したことから、早期復旧

    に向けて国と連携して着実に取り組みます。

    ※山地崩壊箇所:398箇所(6月 21日現在)

  • - 25 -

    ※治山施設の被災箇所:31か所(6月 21日現在)

    ※治山事業については平成 31年度までに復旧予定

    (林道関係災害復旧支援)

    ・被災した林道については、国と連携し、関係市町村への職員派遣による現地調査等

    の支援を行い、年度内に工事着手できるよう支援します。

    ※林道被災箇所:37路線、80箇所(6月 21日現在)

    (特用林産施設の復旧支援)

    ・被災した椎茸生産施設などの特用林産施設について、平成 29年度内の復旧完了を目

    指し今年度中に工事に着手できるよう支援します。

    (木材加工施設の復旧支援)

    ・被災した木材加工施設について、平成 28年度内に復旧完了又は工事に着手できるよ

    う支援します。

    ※被災した木材加工施設 22箇所(6月 21日時点)

    (県産材の利用促進)

    ・木造建築物の耐震性に係る信頼性向上のため、木造建築物に関する強度などの正し

    い情報を発信します。また、県産材を使用した仮設住宅の整備や、CLT(直交集成板)

    など耐震性の高い新たな工法・技術の活用・開発の強化を通じて県産材の利用拡大

    を図るとともに、市町村への情報提供及び県民への情報発信を行います。

    ※木造による応急仮設住宅建設数 677戸(9月 14日現在)

    軽量鉄骨造による仮設住宅建設数 3,589 戸(玄関まわりや床などに県産材を取り入れて

    木質化を推進) (9月 14日現在)

    ○ 土砂災害の防止

    (山腹崩壊等の実態把握)

    ・国が実施した航空レーザ計測調査結果をもとに、山間地に発生した亀裂箇所等を把

    握し、効果的な対策の検討を進めます。

    【概ね4年間の取組み】

    ○ 森林の再生と県産材の需要拡大による森林経営の強化

    ・被災地域をはじめとした治山事業や林業施設等の復旧・整備に取り組むとともに、

    工事に当たっては県産材の需要拡大や景観への配慮の観点から木材を使用する工法

    を積極的に採用します。

    ・豊富な森林資源を活かすべく、意欲ある担い手への森林集約化、木材の安定供給体

    制の確立、主伐植栽の一貫作業、高性能林業機械の導入等による低コスト化及び苗

    木増産体制の構築等により、森林経営の強化を図ります。

    ・特用林産施設や木材加工施設の復旧に取り組み、特用林産物や製材品の生産量の安

    定化を図ります。

    ・被災住宅再建などの復興需要への対応や県産木材の販路拡大を図るため、安定した

  • - 26 -

    木材サプライチェーンの構築に向けた流通体制等の整備を支援します。

    ・被災した住宅、公共施設、文化財などの木造建築物の県産木材での復旧を推進する

    とともに、木造建築物の強度等に対する正しい情報発信等により住宅等への県産木

    材の活用を促進します。

    ・県内の木材需要を創出するため、CLT などの新技術や木造設計アドバイザー制度の

    活用などにより、公共建築物や非住宅建築物等の更なる木造化・木質化を推進する

    とともに、伝統木造建築物に係る熊本独自の設計指針の策定などを行います。さら

    に、未利用材の木質バイオマスエネルギーへの利用などを進めます。

    ○ 農林水産業における多様な担い手の確保・育成

    ・林業や水産業の担い手の確保・育成のため、関係団体や市町村、教育機関等と連携

    した就業支援体制を整備するとともに、就労環境改善などに取り組みます。

    ○ サプライチェーンの強化と県産農林水産物等の認知度向上

    ・県産農林水産物等の消費拡大や、子供たちの郷土の「食」への愛着を深めるため、

    学校給食での県産食材の利用促進、郷土料理の提供などを促進するとともに、「道の

    駅」や JAの物産館などを拠点とした地産地消を進めます。

  • - 27 -

    各 論

    本県の森林・林業・木材産業の発展に向けた施策の展開については、「熊本復旧・復興

    4カ年戦略」を基本に、これまで総論で見てきた本県の森林・林業・木材産業が直面する

    課題等に対処するとともに、それぞれの将来の目指す姿の実現に向け、次に示す6つの方

    向に従って施策を展開することとします。

    1 充実した森林資源の循環利用による稼げる林業の推進

    (1)「森林経営計画」等による持続的な森林経営の強化

    (2)木材の安定供給に向けた森林整備

    (3)林業生産性の向上

    (4)再造林等による確実な更新の確保

    2 県産木材の利活用の最大化

    (1)建築分野における需要の拡大

    (2)木質バイオマスの利用や木材輸出等における需要の拡大

    (3)需要に応じた木材供給体制の整備

    (4)木材利用の理解の醸成

    3 多様で健全な森林づくり

    (1)適正な森林管理の推進

    (2)安全・安心な森林づくりの推進

    (3)シカ被害対策等の推進

    (4)県民参加の森林も り

    づくりの推進

    4 林業を支える担い手の確保・育成

    (1)林業従事者の確保・育成

    (2)地域林業をけん引するリーダー等の確保・育成

    (3)高度な知識と技術・技能を有する技術者の育成

    5 山村地域の活性化

    (1)特用林産物の生産力強化と販路拡大

    (2)里山林等の地域資源の活用

    6 森林・林業・木材産業を支える研究・技術開発と普及の推進

    (1)森林経営、県産木材の需要拡大、特用林産物の生産力強化等に関する研究

    (2)林業普及指導の推進

    くまもとの森林・林業・木材産業の発展に向けた施策の展開方向

  • - 28 -

    本県の森林資源は成熟期を迎えており、今後、これらの資源を適切に管理し、再生産が

    可能な「経済資源としての機能」を持続的に発揮させることが必要です。

    このため、森林所有者、土地の境界、森林資源等の森林情報の充実と活用により、効率

    的な森林の経営・管理を行うことができる「森林経営計画」の作成等を進めるほか、森林

    保険制度の普及を図りながら持続可能な森林経営を目指します。

    1 「森林経営計画」の作成による効率的な施業の推進

    ・森林の経営を行う意欲と能力のある者による「森林経営計画」の作成を支援し、森林

    施業の集約化や路網整備等が計画的に実施できるようにします。

    ・管理が困難な森林所有者や不在村森林所有者等に対し、森林組合等への長期的な森林

    経営の委託等を推進し、低コストで効率的な施業の定着を図ります。

    2 森林関連情報の整備・活用

    ・森林関連情報については、市町村等と連携を強化するとともに、ICT(情報通信技

    術)等の活用による精度向上を図ります。

    ・関係法令や熊本県個人情報保護条例の適正な運用に配慮し、森林経営計画を作成する

    林業事業体等に対し、必要な森林情報等の提供を行います。

    ・森林法(平成 28 年5月改正)に基づき市町村が整備する「林地台帳」については、

    県が保有する森林情報を積極的に提供するなどの支援を実施します。

    3 森林保険制度の普及

    ・台風等による森林被害は、森林経営に大きな損害を与えることから、経営の安定を図

    るため森林保険制度の普及を推進します。

    [目標]

    指標名 基準年(H27) 目標年(H31) 参考(H38)

    民有林面積に占める森林経営

    計画認定率(%)

    35

    50

    70

    取組方針

    具体的な方策

    1 充実した森林資源の循環利用による稼げる林業の推進

    (1)「森林経営計画」等による持続的な森林経営の強化

  • - 29 -

    本県の人エ林は、現在 46年生から 55 年生をピークとした林齢構成であり、今後、本格

    的な利用期を迎えます。

    このような中、建築材や木質バイオマスなど多様な木材需要に対応するため、計画的な

    主伐及び搬出間伐を積極的に進めるとともに、大規模工場との協定取引など木材の安定供

    給体制の構築に向けた取組みを支援します。

    1 計画的な主伐や搬出間伐の推進

    ・大型の製材工場や合板工場等から木材の安定供給が強く求められており、これらの需

    要に対応した安定的な供給を図るため、主伐や搬出間伐を積極的に推進します。

    ・木質バイオマス発電施設の本格稼働等に伴い、燃料チップ用材の需要が増加してきて

    おり、これまで未利用であった林地残材を有効活用するための全木集材の推進など、

    木材搬出量を増やす取組みを支援します。

    2 協定取引等による木材の安定供給体制の構築

    ・大型の製材工場や合板工場等の整備が進み、また、木質バイオマスのエネルギー利用

    が拡大する中、協定取引による木材の安定供給体制の構築を推進します。

    ・原木情報や製品情報の一元化を図る一方で、これに対応した木材の安定供給を図るた

    め、森林の集約化によるスケ-ルメリットを活かした森林整備を推進します。

    [目標]

    指標名 基準年(H27) 目標年(H31) 参考(H38)

    主伐面積(ha)

    搬出間伐面積(ha)

    1,089

    6,083

    1,300

    7,400

    1,500

    7,800

    取組方針

    具体的な方策

    (2)木材の安定供給に向けた森林整備

  • - 30 -

    林業の採算性を確保していくためには、森林施業のさらなる低コスト化が必要なことか

    ら、林業事業体に配置された森林施業プランナー等が森林所有者に働きかけ、小規模で分

    散した森林を取りまとめ、効率的な間伐等の施業を行う集約化を推進します。

    併せて、路網の整備と機械化を積極的に推進するとともに、効率的な作業システムの構

    築を支援することにより、林業生産性の向上を目指します。

    1 森林施業及び林地集約化の推進

    ・零細な所有規模では、個々の森林所有者が単独で効率的な施業を実施することが難し

    いことから、隣接する複数の所有者の森林をとりまとめて、路網整備や間伐等の森林

    施業を一体的に実施する施業の集約化に向けた森林施業プランナー等の取組みを支援

    します。

    ・集約化のモデルとなる重点地区を設定し、市町村や地域の林業事業体等関係者で構成

    する地域協議会が行う「森林経営の委託等による集約化を促進する取組み」を支援し

    ます。

    ・所有者による管理が困難になっている森林について、森林経営に意欲のある担い手と

    して県が認定する「森の担い手」に所有権移転の支援を行い、林地の集約化を推進し

    ます。

    2 路網の整備

    ・地域の森林資源や集約化の状況に応じて、基幹路網と細部路網を効果的に組み合わせ

    た路網整備を積極的に推進します。

    ・路網整備においては、地形に沿った線形を計画することにより、開設費用を抑え、森

    林施業に適した道づくりを行うとともに、環境負荷の低減にも配慮します。

    ・細部路網の整備においては、地形等の条件に応じて丈夫で簡易な森林作業道を開設で

    きる技術者を養成します。

    3 機械化等の推進と効率的な作業システム構築の支援

    ・立木の伐倒、造材、搬出等の各工程において有効な林業機械の導入を支援します。

    ・路網密度等に応じて適切な林業機械(車両系・架線系)の組み合わせによる生産性

    の高い作業システムの構築を支援します。

    取組方針

    具体的な方策

    (3)林業生産性の向上

  • - 31 -

    [目標]

    指標名 基準年(H27) 目標年(H31) 参考(H38)

    「森の担い手」の認定者数

    【累計】

    民有林面積に占める森林経

    営計画認定率(%)【再掲】

    路網密度(m/ha)

    路網延長(㎞)

    労働生産性

    :主伐(m3/人日)

    :間伐(m3/人日)

    37

    35

    57

    13,798

    6.1

    3.7

    80

    50

    61.5

    14,888

    7.2

    4.3

    100

    70

    69.5

    16,795

    7.7

    4.6

  • - 32 -

    戦後造成された人工林が本格的な利用期を迎え、今後、木材の供給量の増加に伴う主伐

    の増加が見込まれる状況にあります。

    林業の持続的な発展のためには、主伐後の再造林による林業の再生産サイクルの確立が

    不可欠です。そのためには、主伐後の植栽から保育に要する育林経費を抑え、森林所有者

    の負担軽減を図り、確実に再造林等が行われる環境整備に取り組みます。

    1 造林コストの低減

    ・再造林の効率化・低コスト化に向けコンテナ苗等を活用した「主伐と植栽の一貫作業

    システム」の構築を推進します。

    ・センダンをはじめとする成長の優れた樹種の活用を促進し、育林経費の大半を占める

    植栽と下刈りにおけるコストの低減を図る施業を推進します。

    2 苗木の安定供給

    ・再造林の実施に不可欠な優良種苗の安定的な供給のため、採種園・採穂園の整備を進

    めるとともに、コンテナ苗や花粉症対策苗木を含む種苗の生産体制を整備します。

    ・林業関係者において、林業種苗の需給情報の共有化を図ります。

    ・コンテナ苗等の品質の向上を図るため、関係団体等の取組みの支援などを通じて種苗

    生産技術の向上を図ります。

    3 伐採・造林届出制度等の適正な運用

    ・伐採後の適切な更新が確保されるよう、県と市町村が連携して、伐採箇所の巡視等

    の徹底、造林の実施状況の適確な把握、無届伐採に対する措置を含む伐採・造林届

    出制度の適正な運用を図ります。

    [目標]

    ※主伐と植栽の一貫作業システム等によりコストが低減された造林面積

    指標名 基準年(H27) 目標年(H31) 参考(H38)

    低コスト造林面積※(ha) 102 300 320

    取組方針

    具体的な方策

    (4)再造林等による確実な更新の確保

  • - 33 -

    熊本地震では、約 17 万8千棟(H28.12.6 現在)の住家等が被災しており、今後予想

    される住宅の復興需要に的確に対応していくため、安定的に木材を供給することが求めら

    れています。また、木造建築物は地震に弱いという誤ったイメージに対しては、耐震性に

    関する正確な情報を発信することが必要です。

    また、住宅の新規着工戸数は、将来的には減尐することが予想されており、公共建築等

    の木造化・木質化はもとより、住宅の木造化の割合を高めるとともに、非木造建築物の木

    質化を図ることにより、県産木材の需要拡大を推進します。

    さらに、CLT等を活用した木材利用の促進や大径化した木材の加工体制を整備するこ

    となどで新たな木材需要の創出を図ります。

    1 「くまもと型復興住宅」等の家づくりの推進

    ・県内の建築士・設計事務所、住宅事業者や大工・工務店、さらに林業、木材関係者、

    建材流通業者等が連携して取り組む、地震に強く、地域産材を使用し、良質でコスト

    低減に配慮した「くまもと型復興住宅」の建設を促進します。

    ・伐採現場や住宅の建築現場の見学等を交えた、森林所有者、製材所、大工・工務店

    等が連携した「生産者の顔の見える家づくり」グループの活動など、消費者への地

    産地消の家づくりの普及啓発活動を支援します。

    2 住宅の木造化・木質化の推進

    ・在来工法における県産木材の使用量を高めるため、主に輸入材が使われている梁や桁

    等(横架材)の部材として、強度性能の確かな大径木を活用する家づくりを推進しま

    す。

    ・横架材としての県産木材の利用を推進するため、熊本県版スギ横架材スパン表の普及

    啓発を図るとともに、製材品への強度表示や原木段階での強度表示を推進し、横架材

    の供給体制を整備します。

    ・これまで県産木材がほとんど利用されていない2×4住宅や木質プレハブ住宅等への

    県産木材の利用やマンション等鉄筋コンクリート造(RC造)などの建物における内

    装の木質化を推進します。

    ・利用が尐なかったシイ・クス・タブ等の広葉樹について、フローリングなどの内装材

    としての利用を推進します。

    取組方針

    具体的な方策

    2 県産木材の利活用の最大化

    (1)建築分野における需要の拡大

  • - 34 -

    3 くまもと県産木材利用の普及啓発

    ・住宅を建てようとする人に対して、「くまもと県産木材アドバイザー」等を通じ、木

    造建築物に関する強度などの正しい情報発信や県産木材の良さについて普及啓発を行

    います。

    ・県産の木材を提供する事業等を活用し、県民に県産木材利用の普及啓発を行うことで、

    県産木材への関心、地産地消への意識の向上を図ります。

    ・県産木材を使用した住宅の見学会の開催等により、県産木材の活かし方、性能、供給

    体制、メリット等について情報発信を行います。

    4 公共建築物等の木造化・木質化の推進

    ・「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」に基づき、「木造設計アド

    バイザー制度」の活用など、率先して公共施設等への木材利用に取み組みます。

    ・さらには、これらの取組みを民間事業者や県民の住宅まで波及させます。

    ・公共施設の整備に必要な木材(大断面、長尺材等の特殊材を含む)の円滑な供給を図

    るため、発注者や設計者等と木材供給者の情報の共有化に努めます。

    ・公共施設で使用する木製品は、品質や性能が確かな木材や合法性が証明された木材が

    求められており、JAS認定工場を増やすための普及啓発や合法木材の普及を促進し

    ます。

    5 CLT等の新たな木材利用分野の創出

    ・これまで木材の使用が進まなかった中大規模施設への新技術の活用や商業施設等での

    新たな需要を開拓します。

    ・CLTや、県内で開発されたBP材などの新技術の普及をはじめ、耐震性、省エネ、

    環境等に対する性能向上に必要となる木質部材の開発・普及を推進します。

    ・大径化した県産木材(丸太)に対応するため加工体制の整備や有効活用するための技

    術開発等を推進します。

    [目標]

    指標名 基準年(H27) 目標年(H31) 参考(H38)

    公共施設の木造率(%) 60 75 100

  • - 35 -

    将来にわたって木材需要を確保・拡大するためには、建築分野以外の様々な分野での県

    産木材の需要の開拓が必要です。

    また、循環型社会の形成に向け、再生可能エネルギー源である木質バイオマスへの期待

    が高まっています。同時に中国等での木材需要の高まりを受け、木材輸出が急速に増加し

    ている状況です。

    このような新しい木材需要に対応するため、木材の効率的な収集・運搬により低コスト

    で安定した供給を図り、エネルギー資材としての利用やアジア地域等への輸出を推進しま

    す。

    1 木質バイオマスの利用等の推進

    ・林地残材を発生させない全木集材の作業システムや「木の駅」の取組みの普及により、

    木質バイオマスの安定供給を図ります。

    ・木材チップや木質ペレットの製造拠点施設の整備を支援するとともに、原料の低コス

    ト調達体制の構築を図ります。

    ・重油や灯油を利用している公共施設や温泉施設等への木質バイオマスボイラーの導入

    を促進します。

    ・木質バイオマス発電施設の導入においては、原料の安定供給を確保するため、供給可

    能量の把握、木質バイオマスの調達方法等の事前検討を求め、適切な整備を推進しま

    す。

    ・木製構造物などの土木資材への木材利用を促進するとともに、新たな木質部材開発に

    向けた研究・技術開発を推進します。

    2 木材輸出の促進

    ・県内の重要港湾である八代港等を活用して、中国、韓国、台湾等のアジア地域を中心

    に木材の輸出を推進します。

    ・「くまもと県産木材輸出促進協議会」を中心に、意欲ある事業者の連携を強め、研修

    会の開催等による事業者のスキルアップや海外での展示会への出展を支援します。

    ・輸出に取り組む県内企業と輸出商社等とのネットワーク構築など、関係者の連携を図

    ります。

    ・丸太の輸出に加え、アジア地域の富裕層や高級飲食店等を対象に、県産木材、畳など

    を活用した「和室」や植木をパッケージ化したPRを行います。

    取組方針

    具体的な方策

    (2)木質バイオマスの利用や木材輸出等における需要の拡大

  • - 36 -

    [目標]

    指標名 基準年(H27) 目標年(H31) 参考(H38)

    木質バイオマスのエネルギ

    ー利用量(千 t) (利用量は、未利用材と製材端

    材とする)

    農林水産物の輸出額

    (億円)

    171

    43

    318

    51

    361

  • - 37 -

    県産木材の需要を高めるためには、住宅メーカー等が求める品質、性能、価格などに対

    応した製品を、必要な時に必要な量を安定的に供給できる体制が必要です。

    また、梁や桁など輸入材の使用割合が高い部材について、資源の成熟化や長伐期化によ

    り増加する大径材を製品化し、需要に結びつける必要があります。

    このため、乾燥材等の品質・性能が確かな木製品を低コストで安定的に供給する体制づ

    くりを推進するとともに、原木の大径化に対応した加工体制の整備を促進します。

    一方、国産材の流通構造は、複雑かつ多段階でありコスト縮減が困難になっています。

    このため、原木の流通では、山土場や中間土場での選別機能を強化し流通の合理化を促進

    します。

    さらに、川上から川中・川下までの需給のマッチングを図るため、木材市場や製材工場

    等の情報を共有化することで、安定した木材のサプライチェーンの構築を促進します。

    1 木材安定供給体制の構築

    ・山土場や中間土場において、原木を用途別に仕分けを行うことで、情報の共有化によ

    る輸送ロットの拡大や輸送回数の効率化などによる流通経費の削減に取み組みます。

    ・原木市場において、これまでの樹種や径級等の区分に加え、強度や含水率等を考慮し

    た仕分け体制の構築を支援します。

    ・原木情報や製品情報を共有化することで、関係者の協定取引や共同出荷等を進め、需

    要者のニーズに合わせた価格競争力のある製品等を迅速に供給するサプライチェーン

    の構築を促進します。

    ・需要者が求める乾燥材等の製品を、プレカット工場などを通じ安定的に供給する体制

    を整備し、邸別出荷体制づくりを促進します。

    2 品質・性能の確かな木製品の安定供給

    ・JAS製品及び乾燥材等の安全・安心な木材の生産量を増加し、他地域材との差別化

    を図る取組みを推進します。

    ・住宅メーカー等の需要者に対して、乾燥や強度等の品質・性能が確かな木製品を、低

    コストで安定的に供給するため、製材工場のJAS認定促進に向けた取組みや木材乾

    燥施設の整備を促進します。

    ・製材・加工関係者へ乾燥技術の向上等について普及啓発を図るとともに、集成材、合

    板等の高次加工施設整備を促進します。

    ・施主の多様な要望(設計)に対応できる県産木材を供給するため、木材流通の拠点と

    なるプレカット工場の機能の拡充を促進します。

    取組方針

    具体的な方策

    (3)需要に応じた木材供給体制の整備

  • - 38 -

    3 森林認証材の普及

    ・大規模森林所有者である市町村、森林組合等を対象に森林認証制度の周知や先進事

    例の情報提供を行います。さらに、2020 年東京オリンピック・パラリンピックにお

    ける認証材の活用に向けた自主的な認証取得の気運を高める取組みを進めます。

    ・森林認証材の証明には、森林の伐採から、木材市場、製材所、工務店等までの木材

    の流通過程の一連の流れで認証を取得することが必要であるため、これらの制度内

    容の普及を行います。

    [目標]

    指標名 基準年(H27) 目標年(H31) 参考(H38)

    乾燥材(製材品)出荷量

    (千m3)

    146 170 180

  • - 39 -

    生活スタイルの変化や木材の代替品の増加により、人々が日常生活において木材に接す

    る機会が減尐する中で、県民の木材に対する親しみや木の文化及び県産木材を利用する意

    義等について理解を深めていくことが必要です。

    このため、多様な関係者と連携し、森林の働きや木材の良さ、木材を利用する意義等を

    学ぶ教育活動である「木育」の取組みを進めます。

    また、木造施設等を活用した広報・普及活動等により、県産木材の良さ等について普及

    啓発を図ります。

    1 木育の推進

    ・子どもから大人までが、木のぬくもりに接したり、森林に親しんだり、また、自然を

    通じた生命観を養う教育を通じて、木の文化や森林・地球環境等に対する興味、理解

    の醸成を図ります。

    ・県民に、木に触れ木に親しむ環境を提供するため、ものづくり体験イベントや木工教

    室等を通じて木と親しむ契機となる取組みを進めます。

    ・木育を推進するため、地域で木育に携わることのできる「木育インストラクター」の

    養成を進めます。

    2 木材利用の理解の醸成

    ・県民に対して、木材は生産段階�