20
はじめに 2019年12月に中国の湖北省武漢市で報告されたコロナウイルスSARS-CoV-2による 新型コロナウイルス感染症「COVID-19」は,世界に瞬く間に感染拡大し,日本でも,と うとう感染者数15,777人(5月11日時点)を数え(表1),国内感染者の都道府県別割 合では,東京都 4,846 人,大阪府 1,732 人,神奈川県 1,156 人,埼玉県は 959 人,北海道 945人などとなっている(図 1-1).世界でも急速に感染拡大し,感染者の数は世界全体 で4,024,009人となり,国別ではアメリカ1,309,550人,ロシア198,676人,スペイン 223,578 人,イタリア 218,268 人,イギリス 215,260 人,フランス 174,758 人,ドイツ 171,324 人となっている.また,死亡者は 279,311 人で,アメリカ 78,795 人,イギリス 31,587 人,イタリア 30,395 人,フランス 26,271 人,ドイツ 7,549 人,ロシア 1,827 人 などとなっている(図 1-2.5月11日時点/ジョンズ・ホプキンス大学まとめ). 注)COVID-19 の情報は時々刻々と変わるので,常に最新 情報をアップデートして判断して下さい. 筑波大学医学医療系腫瘍内科 筑波大学附属病院 茨城県地域臨床教育センター 教授 小島 寛 (医師) Hiroshi Kojima 筑波大学医学医療系顎口腔外科学 筑波大学附属病院 茨城県地域臨床教育センター 教授 柳川 徹 (歯科医師,医師) Toru Yanagawa 茨城県立中央病院 呼吸器内科副病院長/呼吸器センター長 鏑木孝之 (医師) Takayuki kaburagi 茨城県立中央病院 呼吸器内科部長/感染制御室長 橋本幾太 (医師) Ikuta Hashimoto 患者,スタッフ,そして自院を守るために知っておくべきこと・取り組むべきこと 歯科医院 における 新型コロナウイルス 感染症対策 *本稿執筆時点(2020年5月11日) での対応 * 本稿は「補綴臨床7月号(53巻4号)」に掲載します. 文献リファレンス等は「補綴臨床 53巻4号」とされるよう お願いします. 連載 歯科医院のための内科学講座 ── 全身管理・全身疾患を見据えた補綴治療のススメ 特別編 緊急寄稿 第二報 ADA The American Dental Association ガイダンス 収載 指針 C O V I D - 1 9 Ishiyaku Pub,Inc.

歯科医院における 新型コロナウイルス感染症対策...2020/02/25  · 2019年12月に中国の湖北省武漢市で報告されたコロナウイルスSARS-CoV-2による

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はじめに 2019年12月に中国の湖北省武漢市で報告されたコロナウイルスSARS-CoV-2による

新型コロナウイルス感染症「COVID-19」は,世界に瞬く間に感染拡大し,日本でも,と

うとう感染者数15,777人(5月11日時点)を数え(表 1),国内感染者の都道府県別割

合では,東京都4,846人,大阪府1,732人,神奈川県1,156人,埼玉県は959人,北海道

945人などとなっている(図 1-1).世界でも急速に感染拡大し,感染者の数は世界全体

で4,024,009人となり,国別ではアメリカ1,309,550人,ロシア198,676人,スペイン

223,578人,イタリア218,268人,イギリス215,260人,フランス174,758人,ドイツ

171,324人となっている.また,死亡者は279,311人で,アメリカ78,795人,イギリス

31,587人,イタリア30,395人,フランス26,271人,ドイツ7,549人,ロシア1,827人

などとなっている(図 1-2.5月11日時点/ジョンズ・ホプキンス大学まとめ).

注)COVID-19の情報は時々刻々と変わるので,常に最新情報をアップデートして判断して下さい.

筑波大学医学医療系腫瘍内科筑波大学附属病院 茨城県地域臨床教育センター 教授小島 寛(医師) Hiroshi Kojima

筑波大学医学医療系顎口腔外科学筑波大学附属病院 茨城県地域臨床教育センター 教授柳川 徹 (歯科医師,医師) Toru Yanagawa

茨城県立中央病院 呼吸器内科副病院長/呼吸器センター長鏑木孝之(医師) Takayuki kaburagi

茨城県立中央病院 呼吸器内科部長/感染制御室長 橋本幾太(医師) Ikuta Hashimoto

患者,スタッフ,そして自院を守るために知っておくべきこと・取り組むべきこと

歯科医院における新型コロナウイルス感染症対策

*本稿執筆時点(2020年5月11日)での対応

* 本稿は「補綴臨床7月号(53巻4号)」に掲載します.文献リファレンス等は「補綴臨床 53巻4号」とされるようお願いします.

連載

歯科医院のための内科学講座──全身管理・全身疾患を見据えた補綴治療のススメ

特別編

緊急寄稿 第二報

ADAThe American

Dental Associationガイダンス収載

歯科治療指針がわかる!

COVID-19 下の

Ishiyaku Pub,Inc.

医歯薬出版株式会社

緊急寄稿 第二報

表 1 日本国内の感染状況のサイト(NHK ホームページより).https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/

図 1-2 COVID-19 の 世 界 に お ける感染拡大状況のサイト(NHK ホームページより)https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/

図 1-1 都道府県別の感染者数のサイト(累計・NHK まとめ・NHK ホームページより)URL https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/

図 2 コロナウイルスの危機に最も直面する職業(過去のニューヨークタイムズホームページ上のサイトより)

 日本では緊急事態宣言が4月7日に7都道府県に出され,4月17日にはそれが全国に

拡大され,特定警戒都道府県が13となった.そして,この新型コロナウイルス感染症

「COVID-19」はエアロゾルを介した飛沫感染を起こすことから,歯科医師にとっては最

も危険な疾患であるとされ,歯科医療従事者が感染することや,感染源となってしまうこ

とが危惧されるに至った(図 2).そして,国立感染症研究所は4月27日,COVID-19の

ゲノム分子疫学調査により,「3月末から4月中旬における日本の状況は,初期の中国経

由(第1波)の封じ込めに成功した一方,欧米由来(第2波)の輸入症例が国内に拡散し

たものと強く示唆された」と発表している.

 医療従事者にも次々と感染が報告される中,歯科医師や歯科衛生士の感染者も徐々に

報告されるようになり,ついに,4月22日,恐れていた歯科医院からのクラスター発生

疾患への暴露度

身体の近接度

Ishiyaku Pub,Inc.

歯科医院における新型コロナウイルス感染症対策

図 3 4 月 27 日付の厚生労働省事務連絡「新型コロナウイルス感染症に関する PCR 検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取の歯科医師による実施について」(文献 3)より)

のニュースが報道され,全国の歯科医院に戦慄が走った.さらに4月27日,厚生労働省

から「新型コロナウイルス感染症に関するPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取の

歯科医師による実施について」の発表があり(図 3),時限的に歯科医師のCOVID-19の

PCR(polymerase chain reaction)検査への参加が認められるようになった.歯科医師

にも医療を担う一員として,歯科医師自身やスタッフの感染予防と患者への感染予防の責

任が生じている.大学等の教育機関や公的な病院の歯科部門などでは収入の減収について

はやむなきこととして,安全性と院内感染の防御を最優先に患者の診療を救急対応のみに

制限をかけている歯科施設がほとんどである.

 一方,医科と異なり,歯科医師の全体の約9割が開業医で,個人経営がほとんどであ

る.減収の問題は,他の個人経営の中小企業などと同様に深刻な事態につながる.テナン

ト開業の歯科医院などでは,毎月のテナント料などは,収入が止まったまま支払い続けな

ければならない.借入金の返済などのある歯科医院などは,月々の返済もある上,さらに

1

事 務 連 絡

令和2年4月 日

都 道 府 県

各 保健所設置市 衛生主管部(局) 御中

特 別 区

厚生労働省医政局医事課

厚生労働省医政局歯科保健課

新型コロナウイルス感染症に関するPCR検査のための

鼻腔・咽頭拭い液の採取の歯科医師による実施について

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、新型コロナウイルス感染症に関するPCR

検査の件数も増加しており、新型コロナウイルス感染症が拡大している地域においては、今

後の感染者数の増加に備えた更なる検査体制の整備が急務となっている。PCR検査につい

ては、検査のための検体採取として、鼻腔・咽頭拭い液の採取を行う必要があり、検査体制

の整備に当たっては、検体採取業務を行うことができる医師、看護職員又は臨床検査技師の

確保が課題の一つとなっている。

こうした中で、新型コロナウイルス感染症が拡大している地域においては、地域の医療提

供体制を維持しつつ、更なる検査体制の充実を図る必要があることを踏まえ、4月 日に医

道審議会医師分科会及び歯科医師分科会合同による「PCR検査に係る人材に関する懇談会」

を開催し、新型コロナウイルス感染症の診断を目的としたPCR検査のための鼻腔・咽頭拭

い液の採取の歯科医師による実施の可否についての法的な整理について検討を行ったとこ

ろである。

同懇談会での検討の結果を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の診断を目的としたPCR

検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取の歯科医師による実施の可否についての法的な整理に

ついて、下記のとおりとりまとめたので、その内容についてご了知いただくとともに、地域

の医師会や歯科医師会をはじめとする関係者へ周知し、時限的・特例的な取り扱いとして、

各地域における関係者の連携の下で、必要に応じ、歯科医師の協力を得てPCR検査体制の

強化に取り組んでいただくようお願いする。

2

1.PCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取の医行為・歯科医行為該当性について

新型コロナウイルス感染症の診断を目的としたPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液の

採取については、「歯科医行為」ではなく「医行為」に該当するものであり、医師等の資

格を有さない歯科医師が反復継続する意思をもって行えば、基本的には、医師法(昭和

年法律第 号)第 条に違反する。

2.新型コロナウイルス感染症の感染拡大に際してのPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液

の歯科医師による採取の違法性について

違法性阻却の可否は個別具体的に判断されるものであるが、歯科医師は、その養成課程

において、感染症対策や口腔領域の構造、検体検査についての教育を受けており、また、

口腔領域に加え、口腔と連続する領域である鼻腔や咽頭周囲の治療にも関わっていること

を踏まえると、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大している状況下で、検体採取を行

う医師、看護職員又は臨床検査技師が確保できないことを理由に必要な検査体制の整備が

できないような場合においては、少なくとも下記の条件の下で新型コロナウイルス感染症

の診断を目的としたPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取を歯科医師が行うことは、

公衆衛生上の観点からやむを得ないものとして、医師法第 条との関係では違法性が阻

却され得るものと考えられる。

(1)感染が拡大し、新型コロナウイルス感染症の診断を目的としたPCR検査のための

鼻腔・咽頭拭い液の歯科医師による採取を認めなければ医療提供が困難になるという

状況であること。具体的には、

・ 新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成 年法律第 号)第 条第1項に

基づく新型インフルエンザ等緊急事態宣言の期間中又は新型コロナウイルス感染

症の感染拡大によりPCR検査の必要性が増大している状況下で、

・ 地域に設置された地域外来・検査センターにおいて、直ちに検査を行わなければ

感染が急速に拡大する等の緊急性を要するという状況で、都道府県協議会や地域医

師会等の関係者間で検体採取に必要な医師、看護職員又は臨床検査技師を確保する

ことが困難であること。

(2)新型コロナウイルス感染症の診断を目的としたPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い

液の採取に関し必要な研修を受けた歯科医師が実施すること。

(3)実施に当たって、歯科医師による検体採取について患者の同意を得ること。

なお、PCR検査の必要性については、医師が医学的に判断すべきものであり、歯科医

師がPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取を行うに当たっても、医師の適切な関与

の下で行われる必要があること。

2

1.PCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取の医行為・歯科医行為該当性について

新型コロナウイルス感染症の診断を目的としたPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液の

採取については、「歯科医行為」ではなく「医行為」に該当するものであり、医師等の資

格を有さない歯科医師が反復継続する意思をもって行えば、基本的には、医師法(昭和

年法律第 号)第 条に違反する。

2.新型コロナウイルス感染症の感染拡大に際してのPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液

の歯科医師による採取の違法性について

違法性阻却の可否は個別具体的に判断されるものであるが、歯科医師は、その養成課程

において、感染症対策や口腔領域の構造、検体検査についての教育を受けており、また、

口腔領域に加え、口腔と連続する領域である鼻腔や咽頭周囲の治療にも関わっていること

を踏まえると、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大している状況下で、検体採取を行

う医師、看護職員又は臨床検査技師が確保できないことを理由に必要な検査体制の整備が

できないような場合においては、少なくとも下記の条件の下で新型コロナウイルス感染症

の診断を目的としたPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取を歯科医師が行うことは、

公衆衛生上の観点からやむを得ないものとして、医師法第 条との関係では違法性が阻

却され得るものと考えられる。

(1)感染が拡大し、新型コロナウイルス感染症の診断を目的としたPCR検査のための

鼻腔・咽頭拭い液の歯科医師による採取を認めなければ医療提供が困難になるという

状況であること。具体的には、

・ 新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成 年法律第 号)第 条第1項に

基づく新型インフルエンザ等緊急事態宣言の期間中又は新型コロナウイルス感染

症の感染拡大によりPCR検査の必要性が増大している状況下で、

・ 地域に設置された地域外来・検査センターにおいて、直ちに検査を行わなければ

感染が急速に拡大する等の緊急性を要するという状況で、都道府県協議会や地域医

師会等の関係者間で検体採取に必要な医師、看護職員又は臨床検査技師を確保する

ことが困難であること。

(2)新型コロナウイルス感染症の診断を目的としたPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い

液の採取に関し必要な研修を受けた歯科医師が実施すること。

(3)実施に当たって、歯科医師による検体採取について患者の同意を得ること。

なお、PCR検査の必要性については、医師が医学的に判断すべきものであり、歯科医

師がPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取を行うに当たっても、医師の適切な関与

の下で行われる必要があること。

3

3.研修について

上記2(2)の研修について、具体的な研修内容の例は以下のとおりであること。

研修内容:以下の内容を含むものとする。

① 鼻・口腔・咽頭部の解剖

② 新型コロナウイルス感染症に関する基礎知識

③ 新型コロナウイルス感染症に対する感染管理の基本

④ 個人防護具の適切な着脱方法

⑤ PCR検査の基礎知識

⑥ 検体採取方法の実際と検体採取時の留意事項(鼻出血への対応等) 等

※④⑥については、実技研修も実施すること。

(実技研修については、講義と同日でなくてもよいこととする。)

研修時間:3時間程度 (実技研修の時間も含む。)

4.厚生労働省による支援

歯科医師の協力を得て行うPCR検査の具体的な実施方法等については、厚生労働省医

政局医事課・歯科保健課において必要な助言・協力を行うこととしているので前広に相談

されたい。

また、3.の研修については、その内容等を事前に厚生労働省医政局医事課・歯科保健

課に報告すること。なお、厚生労働省においてeラーニングを活用した研修についての検

討を進めているところであり、追ってお示しすることとしているが、各地域において類似

の研修が予定されている場合には当該研修を活用する等、地域の状況に応じて実施するこ

とも差し支えないものとする。

医歯薬出版株式会社

緊急寄稿 第二報

は休業した場合の減収のみならず,診療スタッフに対しても休業補償の問題も生じてお

り,経済産業省をはじめ, さまざまな支援策が医療機関にも差しのべられているものの

(図 4),感染防御以外の問題も山積しているのが実情である.このような状況で,休院す

べきか,それとも,自身やスタッフ,患者のリスクを冒しながら一定の患者ニーズに応え

るべく治療を継続するのか,多くの歯科医院が深刻な判断を迫られていることだろう.

歯科医院はどこまで歯科治療を行うべきか?  COVID-19感染拡大下にある目下の状態で,優先されるものは何かと考えれば,「歯科

医師とスタッフと患者を感染から守る」ということに尽きる.中国疾患コントロールセ

ンター(Chenese Center for Disease Control and Prevention)の報告では,軽症が

81%,重症が14%,重篤5%,死亡率2.3%となっており,そのうち重篤では49.9%の死

亡率で,一度感染し,不幸にして重篤化した場合は,医療従事者も患者も死に直結するリ

スクと対峙せざるを得ない6).ただ,通常は発熱や呼吸症状を訴えて受診する患者は歯科

●各制度の詳細は下記リンク先のパンフレットをご確認ください。(https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf)●経済産業省HP特設ページにパンフレットを掲載しております。

経済産業省新型コロナウイルス感染症関連 で検索、または右のQRコードよりご確認ください。

持続化給付金事業全般に広く使える現金が最大200万円支給されます対象者は売上が前年同月比で50%以上減少している方

※ 給付上限は、法人200万円、個人事業主100万円、※ 医療法人、NPO法人、社会福祉法人など、会社以外の法人についても幅広く対象となります。【お問合せ先】中小企業 金融・給付金相談窓口 0570ー783183 ※平日・土日祝日9時00分~17時00分

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2. 雇用を維持したいが給与の支払いが心配な方へ 雇用調整助成金の特例措置従業員に支払った休業手当等の最大9/10を国が助成します※ 解雇等をしていないなど上乗せの要件を満たす事業主の助成率は中小企業9/10 大企業3/4【お問合せ先】最寄りの都道府県労働局またはハローワークへ またコールセンターでもお問い合わせに対応します。0120-60-3999(受付時間 9:00~21:00(土日・祝日含む))※雇用調整助成金については今後、特例措置の更なる拡充が予定されています。

IT導入補助金ITツールの導入について最大2/3補助されます※ 対象者:中小企業、小規模事業者

(医療法人は常時使用する従業員の数が300人以下の場合に対象となります)※ 補助額:30~450万円、補助率:1/2(特定の導入用件を満たした場合の特別枠:2/3)※ 特別枠に限り、パソコン・タブレット等のハードウェアにかかるレンタル費用も補助対象※ 想定される活用例:効率化や負担軽減に役立つツールとして、電子カルテ、予約システム、地域医療・多

職種連携ネットワーク、WEB会議など。【お問合せ先】一般社団法人 サービスデザイン推進協議会 0570-666-424 ※9:30~17:30(土日祝日除く)

3.ITツールを導入して業務を効率化したい方へ

新型コロナウイルス感染症で影響を受ける医療機関・医療法人の皆様へ

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について、返済猶予の相談に対応します。【お問合せ先】 独立行政法人 福祉医療機構

開設地が東日本:東京本部福祉医療貸付部医療審査課 03-3438-9940・03-3438-9934開設地が西日本:大阪支店医療審査課 06-6252-0219既往貸付に関すること:東京本部顧客業務部顧客業務課 03-3438-9939日本政策金融公庫(国民事業)で実質無利子・無担保の融資が受けられます(※福祉医療機構の融資と併用はできません)※ 実質無利子化の限度額は、日本公庫(国民事業) 3千万円【お問合せ先】日本公庫 事業資金相談ダイヤル:0120-154-505沖縄公庫 融資第二部中小企業融資第一班:098-941-1785日本政策金融公庫等の過去の借入れを一部実質無利子で借換できます※ 実質無利子化の限度額は最大1億円。借換えの限度額(新規融資と借換えの合計額)は3億円※ 実質無利子化の限度額は、日本公庫 中小事業 1億円、国民事業3千万円【お問合せ先】中小企業 金融・給付金相談窓口 0570ー783183 ※平日・土日祝日9時00分~17時00分

セーフティネット保証4号・5号一般保証(最大2.8億円)とは別枠の保証を対象とする資金繰り支援が受けられます※ セーフティネット保証4号 一般枠とは別枠(最大2.8億円)で借入債務の100%を保証

売上高が前年同月比▲20%以上減少等の場合 <全都道府県を対象に指定>※ セーフティネット保証5号 一般枠とは別枠(最大2.8億円、4号と同枠)で借入債務の80%を保証

売上高が前年同月比▲5%以上減少等の場合 <補正予算成立後、無床診療所、有床診療所、一般病院を含め、全ての業種が対象>

【お問合せ先】 最寄りの信用保証協会

※令和2年度補正予算成立後

※令和2年度補正予算成立後

基本的にすべての税の納税を猶予できます 厚生年金等の保険料の納付を猶予できます 電気・ガス料金の支払いを猶予できます※ 新型コロナウイルス感染症の影響により、対応が困難な電気・ガス事業者もいるため、全ての相談に応じられるものでは

ありません。

5. 税や社会保険料、電気・ガス料金の支払いが心配な方へ

図 4 新型コロナウイルス感染症で影響を受ける医療機関・医療法人の皆様へ/雇用維持と事業継続の為の資金繰り支援等のご案内(経済産業省関東産業局)(文献 4)より)URL https://www.kanto.meti.go.jp/kansensho/data/r2fy_shienpaper_iryou.pdf

Ishiyaku Pub,Inc.

歯科医院における新型コロナウイルス感染症対策

には来院しない.恐れるべきは,無症状なのにウイルスを保菌する無症状病原体保有者で

ある.すなわち,「COVID-19患者もしくは無症状病原体保有者が歯科医院に来院したと

きに,歯科医師とスタッフおよび患者を感染から守ること」である.そのためには,スク

リーニングによってCOVID-19患者を除外し,さらに,もし,そのスクリーニング患者に

COVID-19患者が含まれていたとしても,個人防護具で保護してリスクを最小限に抑え込

むことが最も必要とされる.

 歯科診療については,令和2年4月6日の厚労省の事務連絡(図 5)で「歯科医療機関

における新型コロナウイルスの感染拡大防止のための院内感染対策について」が出され5),

「1 標準予防策の徹底」と「2 歯科診療実施上の留意点について」(1)発熱や咳などの呼吸

器症状がある場合について,速やかに「帰国者・接触者相談センター」に患者を相談させ

ること,(2)換気を行い緊急性がない治療は延期すること,(3)関連学会の考え方を参

考にすること,などが示された.

 一方,日本歯科医学会連合からは「歯科診療における新型コロナウイルス感染症に対す

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への口腔外科の対応に関する注意喚起 Ver.1.2

公益社団法人 日本口腔外科学会 理事長 鄭 漢忠

2020年 4月 6日

日本口腔外科学会は今般の新型コロナウイルス(COVID-19)感染患者の増加に際して、

口腔外科治療にかかわる医療スタッフ及び患者の院内感染予防と私たちの診療室がク

ラスターの発生源となることを防ぐため、2020年 3 月 31 日付で注意喚起 Ver1.1 を発

出しました。現時点においても日本国内では感染の収束のめどはたたず、感染者数が急

増していることから、今後の対応として以下の注意喚起を行います。

1. 緊急を要しない外来の新患の受け入れやリコール、不急と判断される手術については延期を検討してください。

2. 外来においてエアロゾル発生の可能性がある口腔内の手術や口腔ケアについても延期を検討してください。

3. 待機手術では、直前 2 週間の外出自粛、イベントへの不参加、渡航の禁止など

を患者に要請してください。

4. 手術に代わる治療法(エアロゾル被曝が少ない治療法)がある場合には治療法の変更も検討してください。

5. 待機手術実施の可否や延期期間は、医学・歯学的観点および医療資源の合理的配分を考えて総合的に検討して判断するようにしてください。

その他、日本外科学会(https://www.jssoc.or.jp)の外科手術に関する提言も参

考のうえ総合的にご判断ください。

上記は公益社団法人日本口腔外科学会の現時点での原則的な見解であり、国内状況の

変化により変更する可能性があります。会員の皆さまにおかれましては本見解をご参考

の上、各自の状況(所属施設の方針や都道府県の要請)に応じた適切な対応をお願いい

たします。

図 6 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への口腔外科の対応に関する注意喚起 Ver.1.2(日本口腔外科学会ホームページより)URL https://www.jsoms.or.jp/medical/pdf/2020/04/0407_info1.pdf

図 5 歯科医療機関における新型コロナウイルスの 感染拡大防止のための院内感染対策について(令和 2 年 4 月 6 日の厚生労働省事務連絡)(文献 5)より)URL https://www.mhlw.go.jp/content/000620324.pdf

事 務 連 絡

令 和 2 年 4 月 6 日

都 道 府 県

各 保健所設置市 衛生主管部(局) 御中

特 別 区

厚生労働省医政局歯科保健課

歯科医療機関における新型コロナウイルスの感染拡大防止のための

院内感染対策について

歯科医療機関における院内感染対策については、「歯科医療機関等に対する院内

感染に関する取り組みの推進について(周知依頼)」(令和元年 月 日付け医政

歯発 第1号厚生労働省医政局歯科保健課長通知)」等において、必要な取り組

みを行うよう依頼してきたところですが、今般、新型コロナウイルスについて、政

府の新型コロナウイルス感染症対策本部において出された「新型コロナウイルス感

染症対策の基本的対処方針」(令和2年3月 日新型コロナウイルス感染症対策本

部決定。)を受けて、新型コロナウイルスによる感染拡大防止の観点から、下記の

点に留意していただくよう、貴管下の歯科医療機関に周知していただくようお願い

いたします。

1 標準予防策の徹底について

歯科医療に関連する一般歯科診療時の院内感染の予防策については、「一般歯

科診療時の院内感染対策に係る指針(第2版)」を厚生労働省ホームページにお

いて公表していることから、参考にすること。

2 歯科診療実施上の留意点について

新型コロナウイルスについては、飛沫感染が主体と考えられており、標準予防

策に加え、接触感染予防策、飛沫感染予防策が必要である。歯科診療においては、

唾液等の体液に触れる機会が多いことや歯の切削等によりそれらが飛散するこ

とがあるなどの特性に鑑み、感染拡大防止のため、以下の点に特に留意すること。

(1)歯科診療の実施前に、患者の状態について、発熱や咳などの呼吸器症状の

有無や海外渡航歴等について確認すること。新型コロナウイルス感染症の疑

いがある場合については、速やかに「帰国者・接触者相談センター」にご相

談いただくよう、患者に伝えること。

(2)診療室の定期的な換気を実施するとともに、診療の内容に応じて、感染リ

スクを減らすための対策を適切に行うこと。なお、歯科医師の判断により、

応急処置に留めることや、緊急性がないと考えられる治療については延期す

ることなども考慮すること。

(3)歯科診療を行う上での留意点については、関連学会から考え方が示されて

いるので参考にすること。

医歯薬出版株式会社

緊急寄稿 第二報

る留意点について」(日本歯科医学会連合ホームページ)が発表され7),日本口腔外科学

会からは「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への口腔外科の対応に関する注意喚

起 Ver.1.2」(日本口腔外科学会ホームページ)が発せられている8)(図 6).ただ,これら

は,いずれも不急の処置を避けること,治療法に注意すること,ソーシャルディスタンス

を保つことなどが扱われており,

・何が不要不急なのか・どのような患者まで診てよいのか・もし,うっかりCOVID-19患者が来院し,診療してしまった場合,どのような処置

が必要になるのかなどの具体的な指針は明らかにされていない.

患者のスクリーニング  仮定の話として,もし可能であれば,全ての歯科受診患者にCOVID-19のPCR(Poly-

merase Chain Reaction;ポリメラーゼ連鎖反応)検査をおこない,陰性が判明した患者

のみを歯科治療対象にすればよいことである.しかし,残念ながら,医療崩壊寸前の現在

の状態で,咳嗽や発熱などの明確なCOVID-19症状のある患者が多数いるなか,歯科治

療のためだけに全例のPCR検査をおこなうことは不可能である.一部,大学や病院など,

PCR検査を検査部が自前で所持している医療施設では,必要な手術や入院のためにPCR

検査をおこなって手術に臨むことが可能であるが,それでも,歯科の手術のなかでも緊急

性のある感染や外傷,腫瘍などに絞られている.

 PCR検査によるスクリーニングが実際的ではない以上,できうれば,歯科医院に足を踏

み入れる前の段階で,症状からの治療の緊急性と,COVID-19の可能性がスクリーニング

できるとよい.また,たとえ来院後でも,できるだけ早い段階で,これらをチェックしたい.

歯科治療の必要性の評価については,後掲のADA(The American Dental Association:

アメリカ歯科医師会)ガイダンスを参照されたい.

COVID-19がどれほど疑われるかについては,まず,発熱や咳嗽の症状の有無と,流行

地域への滞在歴は必須である.ただ,患者数は地域によって濃淡があるため,日本全国で

同じ対応が必要なわけではない.「特定警戒都道府県」である東京都および大阪府,北海道,

茨城県,埼玉県,千葉県,神奈川県,石川県,岐阜県,愛知県,京都府,兵庫県,福岡県

では,その他の地域に比べて,より厳重な対応が必要であるし,患者がこれらの地域に二

週間以内に滞在していたか,あるいは滞在歴のある人との接触の確認は優先順位が高い事

項と認識する必要がある.と同時に,ステイホームを守っている方の感染リスクは低いと

考えられる.

標準予防策と感染経路別予防策 不要不急の治療は避けるとしても,歯科医療として切迫した問題は生じる.たとえば,

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歯科医院における新型コロナウイルス感染症対策

急性歯髄炎の処置などは著しい疼痛を生むものの,エアタービンによる髄腔開放をおこな

うためには,多数のエアロゾルを飛散させて感染のリスクを負いながら,実施せざるをえ

ない処置が生じてくる.また,COVID-19感染拡大中の現在でも,がん治療ほか,通常の

医科の治療を継続しなければいけない患者は多数おり,その患者の治療前における最小限

の歯科処置も不可避であろう.その場合,どうすればよいのか?

 そこで出てくるのが,標準予防策(Standard Precaution)と感染経路別予防策(Trans-

mission-based Precaution)によって,感染を最小限に食い止めることとなる.標準予

防策(図 7)11)は,全ての感染に対しておこなうものであるが,感染経路別予防策とは,

通常の標準予防策に加え,その感染症特有の感染経路を防護することであり,標準予防策

以上の予防策が必要となる病原体に感染している,もしくは,その疑い患者を対象に,主

に図 7に示すものがある.

 SARS-COV-2ウイルスへの対策としては,標準予防策に加えて,図 7の飛沫予防策(飛

沫感染へ予防策)および接触予防策(接触感染への予防策)が求められる.つまり,サー

ジカルマスク,眼の防護(ゴーグル,アイガード,フェイスシールド),長袖ガウン,手袋

図 7 標準予防策と感染経路別予防策

標準予防策

感染経路別予防策

11)

より).

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緊急寄稿 第二報

は常に必要である(患者毎に,その表面は汚染されたものと考えるため,次の患者への感

染を防ぐためには,全て交換が基本であるが,個人防護具が不足している現状では,患者

に接触する可能性の低い,医療従事者のマスク,眼の防護具は,その表面が汚染されてい

ることに留意し,周囲や患者への接触を充分に防げば,連用が許容されるかもしれない).

 さらに,エアロゾルによる感染も指摘されており,空気中での半減期が1.1〜1.2時間

あり8),歯科医療においてもエアロゾルを生じる処置をおこなう場合には,上記の予防具

に加えて,N95マスクが必要とされている.歯科医療現場でおこなっていただきたい具

体的な対応として,図 8に感染経路別予防策の方法と各種個人防護具(PPE:Personal

Protective Equipment)の取り扱い方法をそれぞれ示す.なお,N95マスクの適切な着

脱と廃棄が可能でなければ,エアロゾルを生じる検査・治療をおこなうことはできない

(ADA暫定ガイダンスのアルゴリズム 3,図 11参照).

図 8-1 歯科衛生士は,N95マスク・フェイスシールド・アイソレーションガウンを完全装備してスケーリングをおこなう(フェイスシールドの下に N95 マスク).

図 8-3 エアロゾルを吸引しないよう,歯科の処置はアシスタントも完全防護するか,アシストに徹して術者以外はなるべく近づかないようにする.

図 8-1 〜 5 感染経路別予防策と歯科治療.

図 8-2 スケーリングや PMTC もエアロゾルを発生する.そのため,口腔内外のバキュームをフルに活用して飛散を防ぐ.

図 8-4 歯科処置を施した後のフェイスシールドの表面.

図 8-5 よく見ると,飛散した多数の液滴が見られる.

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歯科医院における新型コロナウイルス感染症対策

ADA(The American Dental Association:アメリカ歯科医師会)による歯科緊急事態に対応する暫定ガイダンス 

 どのようにしてCOVID-19感染患者の選別をおこない,どの程度の患者に歯科治療を

実施すべきであり,どのような防具を備えるべきか,についての詳細な記述は,残念なが

ら,本稿執筆時点では,我々の渉猟する範囲では国内には見られない.しかし,今や世界

最大の新型コロナウイルス感染拡大国となったアメリカのADA(The American Dental

Association:アメリカ歯科医師会)では,3月18日に,COVID-19の感染拡大を抑制し,

歯科緊急事態に対応する暫定ガイダンス(Interim Guidance)を発行した.

 それらは,要約としての「COVID-19 クライシス下における ADA ガイダンス要約(Sum-

mary of ADA Guidance During the COVID-19 Crisis)」(表 3)および「歯科緊急症とは何か?

(What Constitutes a Dental Emergency? )」(表 4)によって,緊急(emergency)・準緊

急(urgent)・非緊急(routine or non-urgent)の歯科処置に分類し,「緊急症および準

緊急歯科処置の管理のための ADA 暫定ガイダンス(ADA Interim Guidance for Manage-

ment of Emergency and Urgent Dental Care)」を発行し,これは治療の指針を決めた3つ

のアルゴリズム(フローチャート)で構成されている(図 9 〜11).さらに,歯科治療前・

歯科治療中,歯科治療後に分け,スタッフの健康管理から,どのような装備で,どのよう

な患者を診るか,患者の待合室から,サージカルマスクとN95マスク等の使用, 意図せず

感染暴露が疑われる場合の手順,患者の診療の合間の洗浄と消毒,患者への術後指導,職

場と家庭の間の感染を防ぐ方法などを詳細に定めた「COVID-19 感染のリスクを最小化す

るための ADA 暫定ガイダンス(ADA Interim Guidance for Minimizing Risk of COVID-19

Transmission)」(表 5)を公開している.

 これらは,国の保健機関の制度や指針の違い,患者の治癒の判断基準など一部異なる部

分があり,日本の歯科事情に全てがそのまま対応するものではない.しかし,そこに明示

図 8-6 飛沫感染を防ぐためフェイスシールドや防護メガネ.結膜からの感染を防止する.

図 8-6,7 同,続き.

図 8-7  各 種 N95マ ス ク( 別 名:N95 レスピレーター).フィットテストによって空気洩れをチェックする.通常のサージカルマスクとは要求されている機能が異なるので,使用法に注意する.

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【ADA ホームページより執筆者(柳川)翻訳にて作成/ ADA の許諾を得て掲載】表 3 COVID-19クライシス下におけるADAガイダンス要約

コロナウイルス(SARS-CoV-2 ウイルス)によって引き起こされた COVID-19 の世界的流行は,米国の歯科医療チームの生活に大きな混乱を引き起こした.The American Dental Association(ADA)と多くの州の歯科医師会は,歯科医院に救急患者のみを治療するよう促してきた.いくつかの州や地方自治体がこれを義務付けている.ADA は引き続き,閉院勧告に従うよう歯科医院に要請する.緊急患者を治療し,クライシスは続くものの,歯科医療チームと患者,さらには患者に付き添う人々の安全こそ最も重要である. COVID-19 はインフルエンザ,感冒,SARS-1 とは異なり,歯科医療チームが 1980 年代初頭から採用している予防措置とは異なる予防措置を必要とする.

● 新たな科学的知見により以下のことが示された.・ COVID-19 は従来のウイルスよりも「付着しやすく」,感染しやすい.・ COVID-19 は 60 歳以上の人や基礎疾患のある人に重篤な症状を引き起こす.・ COVID-19は空気感染経路を介して広がることがあるため,患者が近くにいなくなった後でも,空

気中に微小な飛沫が残っていると,他の患者にうつる可能性がある. ・ COVID-19 は,高速および低速ハンドピース,超音波スケーラー,空気/水シリンジ,または感

染患者の咳によって生成されたエアロゾルを介して,また,口腔内 X 線撮影でも感染する可能性 がある.

 ・ COVID-19 に感染した人は,症状が現れる前に唾液による媒介などの形で,ウイルスを排出し,感染を成立させる可能性がある.

 ・ 小児は無症状でも感染性のことがある. ・ COVID-19 は,歯科医院で見られるような,金属およびプラスチック表面を含むさまざまな期間,

環境表面上で生存する.

(中略)

● COVID-19 クライシスの間,また,それ以降も歯科治療中のリスクを最小限に抑える必要がある.・ 遠隔歯科診療または他の遠隔モダリティを用いた歯科緊急症のスクリーニングをおこない,感染

のリスクを最小限に抑える. ・ 鼻と口の周りを密閉しないサージカルマスクは,エアロゾルによる感染を完全に防ぐには不十分

であることを理解し,利用できる PPE(Personal Protective Equipment:個人防護具)を十分に 活用する.

 ・ 可能な限り口外法の X 線写真を撮影する(口内法は咳を誘発するため). ・ ハンドインスツルメンテーションおよびラバーダムの使用と高速吸引により,エアロゾル産生を

可能な限り減少させる. ・ 気管挿管をおこなう医科の医療チームの手順と同様に,呼吸器系に近接した患者を治療する際に

は,鼻と口の周りに陽圧シールを施した N95 マスクを全面シールドと組み合わせて着用すべきで ある.N95 マスクが入手できない場合は,ゴーグル,ガウン,手袋を適切に使用するとともに, FDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)認可の手術用マスクを患者ごと に着用し,再使用してはならない.

 ・ エアロゾル治療エリアから 6 フィート(約 1.8 メートル)以内の歯科医療チームのメンバーは,術 者とアシスタントに限定されるべきである.

● ADA は,以下を含む多数のリソース(ADM.org/VirusResources)を展開してきた.・ 歯科緊急症となるものに関するガイダンス.・ 緊急処置の進め方に関する暫定ガイダンスフローチャート.

(中略)

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歯科医院における新型コロナウイルス感染症対策

【ADA ホームページより執筆者(柳川)翻訳 にて作成/ ADAの許諾を得て掲載/最新アップデートについては ADA.ORG/VIRUS 参照】

表 4 歯科緊急症とは何か? 訳者 註:本来,「Emergency」「Urgent」は日本語ではともに「緊急」となりますが,今回,わかりやすくするために「Emergency:緊急」「Urgent:準緊急」「Dental Emergency:歯科緊急症」「Urgent Dental care:準緊急歯科治療と翻訳します.

 ADA は,州政府と州の⻭科医師会がそれぞれの地域の⻭科医師に救急医療を除く全ての診療所を閉鎖する期間を推奨すべきであると認識している.これは流動的な状況であり,問題に最も近い人間が,直⾯している地域の課題を最もよく理解していると考えられる.

DENTAL EMREGENCY 歯科緊急症

 歯科緊急症は潜在的に生命を脅迫し,即時の治療が必要な進行中の組織出⾎を止め,重度の痛み,または,感染を軽減するもので,以下のものを含む.

・コントロール不能の出⾎・蜂巣炎またはびまん性の軟部組織

感染による口腔内,または,口腔外の腫脹で,潜在的に患者の気道の閉塞を起こしうるもの

・顔面⾻を含む外傷で,潜在的に気道の閉塞を起こしうるもの

日常的または緊急でない歯科処置には以下が含まれるが,これらに限定はされない.• 定期的な X 線写真を含む初回または定期的な口腔診査およびリコール来院• 定期的な歯のクリーニングと予防処置• 歯科矯正治療のうち,急性症状(例;痛み,感染,外傷)や患者の害を防ぐために必要な問題を除くもの• 症状のない歯の抜歯• 症状のない齲蝕病変の治療を含む歯の修復処置• 審美的な歯科処置

 その他の準緊急歯科治療:・痛みを伴う広範囲う蝕または修復

物の欠損・可能な場合は暫間修復のテクニッ

クで管理(フッ化ジアンミン銀, グラスアイオマー)

・縫合⽷の除去・放射線治療中の義歯調整・機能が落ちた義歯の調整,または

修理・痛みのある患者の開放中の根管口

の仮封の交換・口腔粘膜を突き刺している,もし

くは潰瘍を形成している矯正のワイヤーの切断または調整

 準緊急歯科処置は,直ちに注意を払う必要がある状態である.感染のリスクを伴う,もしくは伴わない激しい痛みを軽減したり,病院の救急部門での負荷を軽減したりすることに焦点を当てている.可能な限り最小限の侵襲性の処置がなされるべきである.

・歯髄炎による激しい歯の痛み・歯冠周囲炎,または智歯の痛み・手術後の⾻炎,ドライソケットド

レッシングの交換・膿瘍,または局所の細菌感染によ

る限局性の疼痛腫脹・歯の破折により痛みが生じたり、

軟部組織の外傷を引き起こしたりしている

・完全脱⾅/脱⾅を伴う歯科外傷・重要な医科治療の前に必要な歯科

治療・テンポラリーの修復が壊れたり喪

失したりして歯⾁刺激を引き起こしている最終的なクラウンブリッジの合着

・異常組織の生検

Dental Emergencies歯科緊急症

DENTAL NON EMERGENCY PROCEDURES緊急を要さない⻭科処置

Other urgent dental careその他準緊急歯科処置

Urgent dental care準緊急歯科処置

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図 9 緊急症および準緊急歯科処置の管理のためのADA暫定ガイダンスアルゴリズム1:緊急・準緊急歯科処置のための患者トリアージ用暫定ガイダンス

(2020 年 4 月 1 日改訂)

Yes

Yes

Yes

Yes

No

No

No

No

YesYes

NoNo

外傷はあるか?

顔面⾻や潜在的に

気道の閉塞があるか?

救急部門に患者を紹介

する

緊急

緊急準緊急

歯の外傷のみ

顔面や口腔内に熱と腫脹は

あるか?

痛みのレベルは1 〜 10 でいくつ?

追加での質問;嚥下のトラブルがないか?開口障害がないか?

6 〜 10(重度〜自制不能)

1 〜 5(軽度〜中等度 )

疼痛や不快感は2 〜 3 週間,自宅で

耐えられるか?

以下のものが必要か?・ 抜⽷・ 治療や摂食障害のための

義歯の修理・適合・ 医科の治療前の歯科治療

(例:放射線治療)・ 異常組織の生検・ テンポラリークラウンが

なくなったり壊れた最終段階のクラウン・ブリッジの合着

予約を遅らせて,さらなる通知を待ち(例:州や地方の

ガイダンスに従い),状態が悪化する

ようなら連絡するよう指示する

アルゴリズム 2:緊急・準緊急歯科患者の

ための COVID-19感染を識別するスクリーニング・アルゴリズム

COVID-19 感染の緊急患者を歯科施設で

見れるかどうかスクリーニングするための

アルゴリズムを用いる

アルゴリズム 2:緊急・準緊急歯科

患者のためのCOVID-19 感染を

識別するスクリーニング・アルゴリズム

準緊急患者を歯科施設で見れるかどうかスクリーニングするためのアルゴ

リズムを用いる

ルーチン・非緊急

予約を遅らせて,さらなる通知を待ち

(例:州や地方のガイダンスに従い),

状態が悪化するようなら連絡する

よう指示する

疼痛は準緊急の状態に関連する• 歯髄の炎症による激しい歯の痛み• 歯冠周囲炎または智歯の痛み• 手術後の⾻炎,ドライソケットドレッシングの交換• 膿瘍,または局所の細菌感染による限局性の痛みと腫れ• 歯の破折により痛みが生じたり,軟部組織の外傷を引き起こしている• 完全脱⾅/脱⾅を伴う歯科外傷• テンポラリーの修復が壊れたりなくなっして歯⾁刺激を引き起こしている最終段階のクラウン・ブリッジ

の合着・ 痛みのある患者の開放中の根管口の仮封の交換• 口腔粘膜を突き刺している,もしくは潰瘍を形成している矯正歯科のワイヤーの切断または調整アルゴリズム 2:緊急・準緊急歯科患者のための COVID-19 感染を識別するスクリーニング・アルゴリズムCOVID-19 感染の準緊急患者を歯科施設で見れるかどうかスクリーニングするためのアルゴリズムを用いる

準緊急

止められない出⾎があるか?

痛みはあるか?

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歯科医院における新型コロナウイルス感染症対策

図 10 緊急症および準緊急歯科処置の管理のためのADA暫定ガイダンスアルゴリズム2:緊急・準緊急歯科患者のCOVID-19感染を識別するスクリーニング・アルゴリズム

<手順の概要>1. 臨床スタッフは,予定された一連の診療の 1 〜 2 日前(できればもっと早く)に,全ての患者話しておくべき

である.2. 直接受診の必要がない患者や,受診なしで解決する場合は電話で済ませる.

*これらのアルゴリズムは,医療機関(例えば,世界保健機関,疾病管理予防センター)および科学文献からの最新の推奨事項に基づく暫定的なガイダンスである.新出データにより修正して更新される.

Yes Yes

Yes

No

No

No患者に急性呼吸器

感染症の徴候/症状はあるか?

患者に救急部門(歯科の対診が受けら

れるのが望ましい)に行くよう

アドバイスする.すぐ感染管理を探す.

患者に急性呼吸器感染症の徴候/症候は

あるか?

患者は歯科感染に関連する発熱として歯科施設で見る(参照 アルゴリズム 3:

緊急・準緊急歯科患者と医療従事者のCOVID-19 感染リスクを最小化するためのアルゴリズム).

緊急・準緊急患者は歯科施設で見ることがで

きる(参照 アルゴリズム 3:

緊急・準緊急歯科患者と医療従事者の COVID-19 感染リスクを最小化するための

アルゴリズム).

患者に熱があるか?

 このアルゴリズムにおける緊急および準緊急歯科患者は,どの臨床施設で見るべきかを決定するために COVID‐19 感染の徴候/症状について評価するものである.活動性 COVID-19 感染症の患者は,CDC(Centers for Disease Control and Prevention:疾病対策予防センター)のガイダンスに従い,一般の歯科施設で診察すべきではない.

1.COVID-19 感染症のスクリーニング検査の間に,患者に COVID-19 感染の検査結果が陽性であるかどうかを尋ね,陽性であれば,患者は直ちに歯科疾患の状態の管理のために救急部門に紹介されるべきである.患者が過去に COVID-19 感染症の検査で陽性反応を示し,症状が消失してから 3 日が経過していれば,患者を歯科施設(アルゴリズム 1を参照)で診察できる.

2.このアルゴリズムでは,歯科治療を行う場合,呼吸器症状がない発熱は,緊急・準緊急の歯科疾患(例えば,歯の感染症)と強く関連している必要がある.

3.同伴者を診察室内に来させたり、待合室に座らせたりしてはいけない.また,歯科で熱を出している患者がマスクを持っていない場合は,マスクをつけさせる.歯科治療中はマスクを外すが,治療が終了したらすぐにマスクをさせる.

4.患者が COVID-19 感染疑いである場合,または感染確認された人に接触したことがある場合,現在渡航禁止となっている国に旅行したことがある場合,または SARS-CoV-2 が確認されたもの(自分自身または他の個人を介して)に接触したことがある場合,患者を病院へ紹介することを考慮する.感染リスクはこれらの暴露とともに増加するものである.

5.患者を COVID-19 検査のために紹介する必要がある場合には,いつ・どこで検査を受けるべきか,検査の必要性を どうやって検査施設に証明するか,また,歯科医院に連絡して検査結果を報告する方法について,患者に詳細な指示を与えるべきである.診療所の院長および/またはコーディネーターは、対面で来院しない患者のリストをチャートで管理しておくか,診療所のワークフローに適した別の手段を見つける必要がある.COVID-19 感染の疑いによ り他の施設に送った歯科患者のリストを持っていることが重要である.

6.COVID-19 感染疑い例の報告に関する情報 → https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/php/reporting-pui.html

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準緊急の患者か? ルーチンもしくは非緊急の患者か?

診断にエアロゾルを発生させる手技が

必要か?

Aあなたとスタッフは,N95 マスク,フルフェイスシールドと基本的な臨床用 PPE(目の保護を含む)を持っており,全ての手順の直後に承認された消毒手順をおこなう準備ができている

歯科診療施設と

PPE

のシナリオ

 B *あなたとスタッフは,サージカルマスク,フルフェイスシールドと基本的な臨床用 PPE(目の保護を含む)を持っており,全ての手順の直後に承認された消毒手順をおこなう準備ができている

 C *あなたとスタッフは,サージカルマスク,基本的な臨床用 PPE

(目の保護を含む)を持っており,全ての手順の直後に承認された消毒手順をおこなう準備ができている

患者に大きな苦痛を与えずに,予約を延期することはできるか?

さらなる通知が出るまで患者の来院を

延期する

図 11 緊急症および準緊急歯科処置の管理のためのADA暫定ガイダンスアルゴリズム3:緊急・準緊急歯科患者と医療従事者のCOVID-19感染リスクを最小化するためのアルゴリズム

<手順の概要>1. 臨床スタッフは,予定された一連の診療の 1 〜 2 日前(できればもっと早く)に,全ての患者と

話しておうべきである.2.直接受診が必要でなく,再来の不要な患者に電話をかける.3.緊急トリアージおよび COVID-19 感染スクリーニング手順を参照する.

 このアルゴリズムにおける緊急および準緊急の歯科患者は,無症候であり,既知の COVID-19 暴露がないか,COVID-19 感染から回復しているか,または最近検査を受けたが COVID-19 感染はない.

緊急の患者か?

Yes

Yesエアロゾルありエアロゾルなし

YesYes

No

No

No

No

医療者の隔離

• 感染を防ぐために,臨床的な判断をおこない,あらゆる予防措置を講じる

• 歯科治療後に患者に COVID-19感染の検査をおこなうことを提案する.陽性の場合,歯科医療従事者は 14 日間隔離すべきである

• 無症状の患者がウイルスを保有している可能性があることから,CDC は 14 日間の隔離を提案している

• 感染を防ぐために,臨床的な判断をおこない,あらゆる予防措置を講じる

• 治療を実施する場合は,歯科治療の直後に患者に COVID-19 感染症の検査をおこなう必要がある;陽性の場合,歯科医療従事者は 14 日間隔離すべきである

14 日間の隔離は不

推奨される患者への治療プラン

シナリオ A の基準を満たす救急診療部または歯科施設に患者を紹介する.不可能な場合は患者を治療する

患者を治療

医療従事者と患者への伝染のリスク 中等度リスク 中等度〜高リスク低

リスク

* N95 マスクより防護性の低い選択肢は,全面シールド付きのサージカルマスクの使用である.もし,N95 マスクの供給体制がケアと地域感染に従事する歯科医療専門職の感染リスクを増大させるかもしれないと理解したうえで需要を満たすことができないならば,サージカルマスク単独の使用を考慮してもよいかもしれない.これらのアルゴリズムは,医療機関(例えば,世界保健機関,疾病管理予防センター)および科学文献からの最新の推奨事項に基づく暫定的なガイダンスである.新出データにより修正して更新される.HCP:医療従事者,PPE:個人防護具

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歯科医院における新型コロナウイルス感染症対策

■ 歯科治療を始める前に1. 歯科医師と歯科チームの準備

・スタッフの安全確保・診療所のセットアップ・予約のスケジュール

2. COVID-19 の状態のスクリーニングと歯科治療のトリアージ・COVID-19 の電話スクリーニング・歯科医療施設では誰を見ることができるか?・紹介

3. 患者が到着したら・ソーシャルディスタンスと待合室・感染管理エチケット

■ 歯科治療中4. 標準予防策および感染経路別予防策と

個人防護具(PPE)・標準予防策

・感染症に基づく予防策・マスクと N95 マスク等の使用・PPE の着脱・感染から歯科医療従事者を保護するのに

役立つ機器と消耗品5. 臨床手技(ハンドピース , 器具など)

・感染を減らすのに役立つ技術的なアプローチと装置

6. 意図せず感染暴露が疑われる場合の手順

■ 歯科治療の後7. 患者の診療の合間に

・設備や器具の洗浄と消毒8. 患者への術後指導

・治療の補助となる薬9. 仕事から帰ったら

・職場と家庭の間の感染を防ぐステップ

< ガイダンスの内容 >

表 5 COVID-19感染のリスクを最小化するためのADA暫定ガイダンス

■ 歯科治療を始める前に1.歯科医師と歯科チームの準備1) 歯科医療従事者(歯科医療従事者/ DHCP:dental health care personnel)がインフルエンザの予防接種

を受けていることを確認する(https://www.cdc.gov/vaccines/adults/rec-vac/hcw.html).2) 歯科医療従事者で感冒症状(咳,喉の痛み,筋⾁痛)がある場合は出勤しない(https://www.cdc.gov/coronavirus

/2019-ncov/healthcare-facilities/steps-to-prepare.html)(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/dental-settings.html).3) 歯科医療従事者が高齢で,易感染性があったり,妊娠中などの場合,COVID-19 患者もしくは疑い患者と

接すると COVID-19 にかかるリスクが高いとされている(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/specific-groups/

people-at-higher-risk.html).歯科診療所は,働く場でのリスクのレベルと作業内容を考慮して対処すべきである.高齢,易感染性を含む慢性疾患がある,妊娠中などの条件に当てはまらない人を優先して診療に当てるべきである(https://www.osha.gov/Publications/OSHA3990.pdf).

4) 全ての歯科医療従事者は,COVID-19 感染に一致する症状(例:咳,息切れ,喉の痛み)の有無以外にも呼吸器症状に警戒してセルフモニタリングをおこない,1 日に 2 回体温をチェックする.歯科診療所では,従業員が発熱や呼吸器症状がでた場合に,誰に連絡するか,受診させるかどうかを決めておく(https://www.

cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/guidance-risk-assesment-hcp.html ).a:歯科医療従事者または他の患者への感染を防ぐため,患者が COVID-19 と疑われる場合,すぐに地方保健局に連絡をする.また,州保健局に連絡してもよい(訳者 註:日本の場合は所轄の保健所になる)(https://

www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/php/reporting-pui.html ).5) COVID-19 に感染して治った,またはその疑いの歯科医療従事者(臨床的には COVID-19 から回復しており,

防御免疫がある)に優先的に診療に当たるようにする.COVID-19 に罹患して回復した人は,診療にあたるのに好ましい医療従事者と考えられる(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/checklistn95-strategy.html ).

6) 使用可能な個人保護具(PPE)の目録を作成する(例:サージカルマスク,手術用ガウン,手術用手袋,フェイスシールド)(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/healthcarefacility/ steps-to-prepare.html).近い将来に供給

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緊急寄稿 第二報

されなくなる可能性を想定しておく(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/ppe-strategy/face-masks.html ).7) 雑誌,読み物,おもちゃなど他の人が触れる可能性があり,簡単に消毒できないものは片付ける

(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28916372)(https://www.alabamapublichealth.gov/oralhealth/assets/cov-dental-

protocol-031720.pdf ).8) 歯科医院での患者に呼吸に関する標準的な衛生/咳エチケットとソーシャルディスタンスの推奨事項を示

したサイネージ(看板)を印刷して貼り出す(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/downloads/stop-the-spread-

ofgerms. pdf)(https://www.cdc.gov/oralhealth/infectioncontrol/pdf/safecare2. pdf)(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/php/

risk-assessment.html ).9) 待合室にいる他の患者との接触の可能性を最小限に抑えるために,十分な時間を空けてアポイントを取る

(https://success.ada.org/en/practice-management/patients/coronavirus-frequencyly-asked-questions).10) 患者が付き添いを必要とする場合(例:小児患者,特別なニーズを持つ人々,高齢者など)を除いて,同

伴者は来ないようにしてもらう.治療を受けている患者に同伴者を認める場合は,受付で COVID-19 の徴候や症状についてもスクリーニングをおこない,徴候や症状(例:発熱,咳,息切れ,咽頭痛)が認められる場合は入室を許可しない.同伴者で COVID-19 に感染するリスクが高い(例:既往に易感染性を有するなど)と判断された場合も歯科診療室に入れない.患者に付き添う人は,全て歯科治療を行う場に立ち 入 ら せ な い(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/infection-control/control-Recommendations.html ? CDC_AA_refVal =

https% 3A% 2F% 2Fwww.cdc.gov% 2Fcoronavirus% 2F2019-ncov% 2Fhcp% 2Finfection-control.html # manage_access ).

2.COVID-19 の状態のスクリーニングと歯科治療のトリアージ1) 3 月 16 日時点での勧告は,「全国の歯科医師は予定の処置を 3 週間延期した.緊急性のある歯科治療に集中

することで,緊急患者の治療ができ,歯科救急が病院の救急部門にかかる負荷を軽減することができる」に関するものであった.感染率の地域差だけでなく,州や地方の規制も,今後の延期期間に関するガイダンスに影響を与える可能性がある(アルゴリズム 1 参照)(https://www.ada.org/en/press-room/news-releases/2020-

archives/march/ada-Calls-upon-dentists-to-postpone-elective-procedures,https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/dentalset

tings.html ).2) 患者の来院前に,電話,テキスト・モニター・システム,またはテレビ会議などで問診するよう努力する

(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/php/guidance-evaluating-pui.html ,https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/

dental-settings.html ).3) 緊急または準緊急の歯科患者に発熱がなく,それ以外にも COVID-19 感染症に一致する軽度の症状(例:

発熱,咽頭痛,咳,呼吸困難)さえ認められなければ,適切なプロトコールおよび PPE を実施すれば,歯科診療施設で診察できる(アルゴリズム 2 およびアルゴリズム 3 参照).

4) 緊急または準緊急の歯科患者が,歯科診断と強く関連する発熱(例:歯髄および歯根尖周囲の歯痛および口腔内腫脹が存在する)を有しているが,COVID-19 感染症の他の徴候/症状(例:発熱,咽頭痛,咳,呼吸困難)がない場合,適切なプロトコルおよび PPE を実施している歯科施設で見ることができる(アルゴリズム 2 およびアルゴリズム 3 参照).

5) 緊急または準緊急の歯科患者が呼吸器疾患の徴候および症状を示す場合,患者は適切な感染経路別予防策が利用可能な緊急診療所に紹介されるべきである(アルゴリズム 2 参照)(https://www.cdc.gov/oralhealth/infectio

ncontrol/pdf/safe-care2.pdf)(https://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5217.pdf ).6) パンデミックが進行するにつれて,一部の患者は COVID-19 感染から回復する.この疾患と診断された患

者がいつ隔離を中止するかを決定することが重要である.CDC は隔離を中止する許可を出す 2 つのアプローチを提案している.a: 検査をしない方針*→ COVID-19 の症状があり,自宅でのケアを指示された患者は,以下の状況下で自

宅隔離を中止することがある.i) 解熱鎮痛薬を使用せずに解熱し,呼吸器症状(例:咳,息切れ)が改善してから少なくとも 3 日(72

時間)経過していること.そして,ii) 発症から 7 日以上経過していること(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/disposition-in-home-

patients.html)(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/dental-settings.html ).b:検査による方針 → COVID-19 の症状があり,自宅でのケアを指示された人は,以下の状況下で自宅隔

離を中止することがある.

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i) 解熱剤を使用せずに発熱が消失し,ii) 呼吸器症状(咳,息切れなど)が改善され,かつ,iii) 24 時間以上間隔を空けて採取した連続した二つの鼻咽頭のスワブ検体での COVID-19 FDA 緊急使

用承認分子アッセイ(訳者 註:日本での COVID-19 PCR 検査)で陰性**(合計二つの検体が陰性) (https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/disposition-in-home-patients.html).

 検査で COVID-19 が確認され,症状が見られない患者は,COVID-19 診断検査が最初に陽性となってから少なくとも 7 日が経過し,引き続き発症しない時点で,隔離を中止することができる(https://www.cdc.gov/

coronavirus/2019-ncov/hcp/disposition-in-home-patients.html ).

脚註 * この方針により,ほとんどの二次感染は予防できるが,全ての二次感染が予防できるわけではない. 回復後の感染を起こすリスクは,疾患時よりもかなり低いと考えられている. ** 隔離を終了する前に,全てのテストの最終結果が出る必要がある.検査のガイダンスは限られた情報

によるもので多くの情報が入るにつれて変更されることがある(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/

hcp/disposition-in-home-patients.html).

 訳者 註:日本の厚生労働省による指針はアメリカと異なり,退院に関する基準は PCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)検査が必須となっている.詳細は,健感発 0218 第 3 号 令和 2 年 2 月 18 日「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナ ウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて(一部改正)」を参照のこと).

3.患者が到着したら1) 患者が希望する場合,または待合室で適切な「ソーシャル・ディスタンス」(最低 6 フィートまたは 2 メー

トル離れる)が認められない場合は,自分の車で待機するか,施設の外で待機し,自分の番が来たら携帯電話で連絡するようにする.これは,診療所で決めた手順(歯科医師および歯科治療チームの準備のセクション参照)に基づいて,予約の時点で患者に連絡しておく(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/healthcare-

facilities/dialysis.html)(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/infection-control/control-recommendations.html).2) 無症状の患者,COVID-19 感染の検査で陰性となった患者,回復した患者(徴候および症状が消失してか

ら 3 日後に)のみが歯科診療所で診察を受けられることを推奨しているが,歯科医療従事者は「感染管理エチケットのための製品」(例:医療施設の入口,待合室,および受付窓口で 60 〜 95% アルコール含有の速乾性擦り込み式アルコール手指消毒剤,ティッシュおよび非接触で処理できること)を確認すべきである(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/infectioncontrol/ control-recommendations.html ).

■ 歯科治療中4.標準予防策および感染経路別予防策と個人防護具(PPE)1) 歯科医療従事者は,「患者の感染状態の有無にかかわらず,医療が提供されるあらゆる状況において,患

者ケアに適用される最小限の感染予防策である」標準予防策に準拠する必要がある.a:標準予防策には以下が含まれる;手指衛生,PPE の使用,呼吸衛生 / エチケット,鋭利物の安全性,安全な注射方法,滅菌器具とデバイス,清潔で消毒された環境の表面(https://www.cdc.gov/oralhealth/infectioncontr

ol/pdf/safe-care2.pdf).2) 利用可能な場合,歯科医療従事者は 「感染経路別予防策」をおこなう.必要な感染経路別予防策には,患

者の配置(例:隔離),十分な部屋の換気,歯科医療従事者のための呼吸保護(例:N95 マスク),非緊急歯科治療の延期などがある(https://www.cdc.gov/oralhealth/infectioncontrol/pdf/safe-care2.pdf)(https://www.cdc.gov/mmwr/

PDF/rr/rr5217.pdf)(https://www.cdc.gov/infectioncontrol/basics/transmissionbased-precautions.html).3) ⾎液や他の体液(大きな液滴)が飛散する可能性のある処置の間は,眼,鼻,口の粘膜を保護するために,

サージカルマスクとしっかりとしたサイドシールドまたはフェイスシールドを装着する(https://www.cdc.gov/

mmwr/PDF/rr/rr5217.pdf).4) サージカルマスクは 1 回の使用のみで,患者ごとに 1 つのマスクを使用する必要がある(https://www.fda.gov/

medical-devices/personal-protective-equipment-infection-control/n95-respirators-and-surgical-masks-face-masks).

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緊急寄稿 第二報

5) マスクが損傷または汚れている場合,またはマスクからの呼吸が困難になった場合は,フェイスマスクを安全に廃棄し,新しいものと交換する(https://www.fda.gov/medical-devices/personal-protective-equipment-infection-

control/n95-respirators-and-surgical-masks-face-masks).a: FDA のサージカルマスクに関する追加情報がこちらで利用可能.b: フィットテスト済み(N95 マスクの使用法の説明書はこちら)の National Institute for Occupational Sa

fety and Health(NIOSH)が承認した N95 以上のマスクを,病院で COVID-19 で症状のある患者を治療 する際に利用できる他の感染経路別予防策と組み合わせて使用する(https://www.osha.gov/Publicati

ons/OSHA3990.pdf).i) National Institute for Occupational Safety and Health(NIOSH)によって承認された N95 フィルタ

ー付きフェイスマスクまたはそれ以上のものは,フィットテスト,トレーニング,および健康診断を含む総合的に記述された呼吸保護プログラムに沿って使用すること.OSHA(労働安全衛生庁:Occupational Safety and Health Administration)の呼吸保護基準 , 29CFR 1910.134(www.osha.

gov/laws-regs/regulations/standard number/1910/1910.134)を参照(https://www.osha.gov/Publications/OSHA3990.pdf).c: PPE 不⾜の詳細については,PPE の医療供給に関する CDC 情報を参照のこと(https://www.cdc.gov/

coronavirus/2019-ncov/hcp/healthcare-supply-ppe.html).6) 歯科医療従事者は,PPE の着脱は標準手順どおりに行う必要がある

(https://www.cdc.gov/hai/pdfs/ppe/ppe-sequence.pdf).

訳者 註:日本ではサージカルマスクと N95 レスピレーターはともにマスクと表記されることが多いので,ここでは「N95 マスク」と翻訳しているが,サージカルマスクと N95 レスピレーターは本来,目的が異なる.

5.臨床手技(ハンドピース , 器具など)(カッコ内の数字は PMID の番号)1) SARS-CoV-2 は酸化されやすいので,処置前の洗口液として 1.5% 過酸化水素(米国で市販されている)ま

たは 0.2% ポビドンを使用する(32127517).SARS‐CoV-2 に対する術前マウスリンスの殺ウイルス効果を支持する臨床研究はない.

2) 歯科医療従事者は,口腔内デンタル X 線写真は唾液分泌と咳を刺激しうるので,COVID-19 のアウトブレーク時には,これらに替えてパノラマ X 線写真やコーンビーム CT などの口腔外歯科 X 線写真が適切な代替手段となりうる(15311240).

3) COVID-19 の感染は,飛沫またはエアロゾル(32182409)を介して起こると思われるので,エアロゾルの産生を可能な限り減少させるため,歯科医療従事者はハンドインスツルメントの使用を優先すべきである

(32127517).4) エアロゾルを発生させる処置を行っている場合は,エアロゾルや飛散物を最小限に抑えるために歯科医療

従事者はラバーダムを使用すべきである(2681303,15493394).5) 歯科医療従事者は,感染を制御するために 4 ハンドテクニックを使用するとよい(32162995).6) ハンドピースの引き込み防止機能は,クロス・コンタミネーションからの保護に役立つ(32127517).7) 大排気量のバキュームを使用することを推奨する.歯科医療従事者は「排唾管を使用すると逆流が発生す

る場合があること」および「逆流はクロス・コンタミネーションの原因となること」に気をつける(https://

www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr5217a1.htm)(15127864).8) 歯科医療従事者は,吸収性の縫合⽷(すなわち,口腔内で 3 〜 5 日間持続する縫合⽷)を使用することで,

フォローアップの予約が不要になる(https://www.aaoms.org/docs/education_research/dental_students/joms_guide_to_sutu

ring.pdf).9) 歯科医療従事者は,3-in-1 シリンジは,水/空気が強制的に放出されるため,液滴が生成されることがあ

るので,使用を最小限にする(15311240).10) ハンドピースおよび 3-in-1 シリンジ内の消毒剤(次亜塩素酸塩,エタノール)は,飛沫中のウイルス汚染

を減少させることが報告されているが,ヒトコロナウイルスに対する作用は不明である(15311240,786088).

6. 意図せず感染暴露が疑われる場合の手順1) 意図しない曝露(例:患者の分泌物または排泄物と保護されていない状態での直接接触)が疑われる場合は,CDC の勧告に従うこと(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov / hcp / guidance-risk-assesment-hcp.html).

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a: エアロゾルを発生させる処置は,スケジュールをその日の最後の予約に入れる.N95 マスクを使用せ ずサージカルマスクのみを使用してエアロゾルを発生させる処置をすると,消毒の手順がしっかり守 られていても,その後の患者と歯科医療従事者は COVID-19 感染が中程度リスクの扱いとなる.無症状 の患者がウイルスを保有している可能性がある場合,CDC は 14 日間の隔離の指示を出している.ある いは,感染を防ぐためのあらゆる予防措置を講じ,歯科治療の直後に患者に COVID-19 の検査をする. もし陽性なら,歯科医療従事者は 14 日間隔離となる.

b: COVID-19 検査のために紹介された患者には,いつ・どこで検査を受けるべきか,行った先の検査施設 にどのように検査の必要性を説明し,歯科医院に連絡して検査結果を報告する方法について,詳細な 指示を与える(アルゴリズム 3 参照).検査結果が陽性の場合,感染患者の後に治療を受けた全ての患 者に歯科医院は感染曝露を報告する必要がある.

■ 歯科治療の後7. 患者の診療の合間に1) 患者と患者の合間に [PPE] を石鹸と水で洗浄するか,目に見えて汚れている場合は,再利用可能な顔面保

護具(例:臨床医や患者用保護眼鏡または顔面シールド)を洗浄し消毒する(https://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/

rr5217.pdf).2) 感染対策用でなく,かつ,使い捨てにできない機器(例:ハンドピース,歯科用 X 線装置,歯科用椅子お

よび照明)は,製造元の指示に従って消毒すること.患者毎にハンドピースを洗浄して切削片を除去し,その後,乾熱滅菌をおこなう(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/infection-control/control-recommendations.html)

(https://www.cdc.gov/oralhealth/infectioncontrol/faqs/dental-handpieces.html)(https://www.cdc.gov/oralhealth/infectioncontrol/faqs/

cleaning.html).3) 日常の洗浄と消毒手順〔例:製品のラベルに示されているように,アメリカ合衆国環境保護庁(United

States Environmental Protection Agency:EPA)に登録された病院グレードの消毒薬をよく触れるもの表面などに使用する前に,クリーナーと水で一次洗浄してから消毒すること〕は,患者にエアロゾルを発生させる処置をする区域のある医療施設での SARS-CoV-2 対策として適切である(https://www.cdc.

gov/coronavirus/2019-ncov/infection-control/control-recommendations.html)(https://www.epa.gov/pesticide-registration/list-n-

disinfectants-use-against-sars-cov-2).a:ドアハンドル,椅子,机,エレベーター,トイレなどの表面は,清掃して頻繁に消毒する(32127517).

8.患者への術後指導1) イブプロフェンを COVID-19 感染患者に使用すべきかどうか考えたとき,いかなるタイプの疼痛をコント

ロールするのにも,通常どおりイブプロフェンを使用することが推奨される.例えば,免疫能が通常の成人の歯髄および根尖性歯周炎に伴う歯痛および口腔内の腫脹に,アセトアミノフェン(400 〜 600mg のイブプロフェンと 1,000mg のアセトアミノフェン)と組み合わせた NSAID が使用できる(https://twitter.com/

WHO/status/1240409217997189128?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1240409217997189128&ref_url=

https%3A%2F%2Fwww.sciencealert.com%2Fwho-recommends-to-avoid-taking-ibuprofen-for-covid-19-symptoms)(31668170).2) 歯痛および口腔内の腫脹のある患者を治療する場合,歯科医は最も確実で保存的な歯科治療〔抜髄,断髄,

根管治療,または膿瘍のドレナージのための切開(31668170)〕で済むか判断すべきである.抗生物質の使用に関する 2019 年の ADA clinical practice recommendations では,根尖性歯周炎の症状,歯髄壊死および根尖性歯周炎の症状,あるいは歯髄壊死および限局性急性膿瘍を伴う,または伴わない不可逆性歯髄炎の症状に対して免疫能が正常の成人患者では使えるので,治療方針を決定する際には歯科専門医に問い合わせるとよい(31668170).

9.仕事から帰ったら1) 歯科医療従事者は,帰宅する前に,スクラブから私服に変更する必要がある.自宅に着いたら,歯科医療

従事者は靴を脱ぎ,⾐服を脱いで(家の中の人とは別に)に洗うべきである.そして,すぐにシャワーを浴びる(32163102).

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されている詳細な治療指針は,日本の歯科医師各位が「COVID-19感染疑いの患者をどの

ように治療するか」を判断するのに非常に参考になると考える.

 そこで,本稿の付録としてこれら全てを翻訳し,ADA本部の許諾を得たうえで,医歯

薬出版株式会社のホームページ(https://www.ishiyaku.co.jp/pickup/20200225_info_01.

aspx)にて,読者諸氏の一助となるべく公開することとした(なお、ADA との許諾契約

上の理由により,雑誌誌面においてはアルゴリズムのみの掲載となり,ガイダンス完全版

はウェブ限定配信になります点,ご理解ください).COVID-19感染拡大の続く今,最善

の歯科医療体制を整えるために参考にしていただけたら幸いである.

参考文献

1) NHK新型コロナウイルス特設サイト(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)

(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/?cid=dchk-commonheader).

2) ニューヨークタイムズホームページ(https://www.nytimes.com/interactive/2020/03/15/business/econ-

omy/coronavirus-worker-risk.html).

3) 厚生労働省:新型コロナウイルス感染症に関する PCR 検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取の歯科医師に

よる実施について(https://www.mhlw.go.jp/content/000625944.pdf).

4) 新型コロナウイルス感染症で影響を受ける医療機関・医療法人の皆様へ.雇用維持と事業継続の為の資金

繰り支援等のご案内(https://www.kanto.meti.go.jp/kansensho/data/)r2fy_shienpaper_iryou.pdf).

5) 厚生労働省:歯科医療機関における新型コロナウイルスの感染拡大防止のための院内感染対策について

(https://www.mhlw.go.jp/content/000620324.pdf).

6)Wu,Z.,McGoogan, J.M.:Characteristicsofand ImportantLessonsFromtheCoronavirusDisease2019

(COVID-19)OutbreakinChina:SummaryofaReportof72314CasesFromtheChineseCenterforDisease

ControlandPrevention.JAMA,2020;323(13):1239-1242.doi:10.1001/jama.2020.2648.

7) 日本歯科医学会連合:新型コロナウイルス感染症について(COVID-19)(http://www.nsigr.or.jp/coronavi-

rus_dentists.html).

8) 日本口腔外科学会:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への口腔外科の対応に関する注意喚起

Ver.1.2(https://www.jsoms.or.jp/medical/pdf/2020/04/0407_info1.pdf).

9) vanDoremalen,N.,Bushmaker,T.,Morris,D.H.,Holbrook,M.G.,Gamble,A.,Williamson,B.N.,Tamin,A.,Har-

court,J.L.,Thornburg,N.J.,Gerber,S.I.,Lloyd-Smith,J.O.,deWit,E.,Munster,V.J.:AerosolandSurfaceStabil-

ityofSARS-CoV-2asComparedwithSARS-CoV-1.N. Engl. J. Med.,2020Apr16;382(16):1564-1567.doi:

10.1056/NEJMc2004973.Epub2020Mar17.

10)橋本幾太,鏑木孝之,小島 寛,柳川 徹:歯科医院における新型コロナウイルス感染症対策.患者,スタッ

フ,そして自院を守るために知っておくべきこと・取り組むべきこと.補綴臨床,53(3):231-242,

2020.

11)小曽根早知子,吉本 尚,柳川 徹:歯科医院のための内科学講座 第 5 回「患者が肝炎だと言っている.

大丈夫かなあ……,院内感染」.補綴臨床,48(6):610-625,2015.

<コロナウイルス関連論文 無償公開のお知らせ> 2019年12月,中国・武漢市で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が発生し,日本をはじめとして世界各地で感染拡大が続いています.これを受け小社では,本稿(第一報および第二報)をはじめとするコロナウイルス感染症に関する論文を無償公開しております.医療従事者の皆さまの一助となれば幸甚に存じます.