看護職の ワーク・ライフ・バランスと

病院経営

社会福祉法人 聖隷福祉事業団 執行役員

聖隷三方原病院 総看護部長

吉村 浩美

医療勤務環境改善マネジメントシステム 普及促進トップセミナー

平成２8年2月22日（月）＠東京

【勤務環境改善に向けた取組③】

地域医療支援病院 ◆高度救命救急センター 地域がん診療連携拠点病院 ◆地域周産期母子医療センター 認知症疾患医療センター 病床数 934床（一般810床、精神104床、結核20床） 一般：ホスピス27床、医療型障害児入所施設170床 ※2015年4月 2014年度実績 病床利用率 80.6 ％ 外来患者数 1,179 人／日 入院患者数 753 人／日 手術件数 6,658 件 救急車搬入患者数 5,242 件 救急患者数 16,407 人 分娩件数 867 件 （助産所分娩 179 件）

概要 実績

1

幅広い領域

2

Ⅰ．看護職の労働環境

3

看護職員の年齢階層別就業率

4

81.9% 74.1%

65.8% 64.7% 66.6% 69.9%

60.9% 59.7%

29.0%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

20～24 25～29 30～34 35～39 40～44 45～49 50～54 55～59 60～64歳

「看護職員の潜在化傾向とその要因」宮崎悟 中田喜文 ITEC Working paper Series 08-08 September 2008から作成 ※ 看護職員の就業率は、2006年末の潜在率より算出している。

■25～40歳が継続雇用されて ■潜在看護師の就業促進 ■離職を５％減少 ■60歳以上の雇用を創出する ⇒ 働き続けられる職場づくりが重要

Copyright 2013 公益社団法人 日本看護協会

2025年（H37）年 看護職員

約200万人

2011年（H23）年 看護職員

約150万人

医療・介護サービス提供の改革

離職理由：長時間労働と夜勤負担

5

30.0'％ 28.4'％

21.7'％ 16.4'％

15.8'％ 13.5'％

12.5'％ 11.4'％

10.8'％ 6.9'％ 6.8'％

5.7'％ 5.4'％ 5.4'％

3.1'％

21.9'％ 17.8'％

14.9'％ 14.4'％

11.3'％ 8.6'％

7.1'％ 6.0'％ 5.9'％ 5.7'％ 5.7'％ 5.4'％

3.5'％ 3.3'％

妊娠・出産 結婚

子育て 自分の健康

転居 配偶者の転勤

家事と両立しない リフレッシュ

自分の適性・能力への不安 通勤困難

親族の健康・介護 興味が持てない・やりがいがない

進学・研修・留学 看護職の他の職場への興味

定年 看護職以外の他の職場への興味

勤務時間が長い・超過勤務が多い 夜勤の負担が大きい

責任の重さ・医療事故への不安 休暇がとれない 上司との関係

雇用形態に不満 同僚との関係

昇進・昇給・給与に不満 看護の自律性・専門性が認められない

教育・研修体制に不満 医師との関係

看護の理念・方針に不満 福利厚生に不満 雇用者側の都合

医療のIT化に適応できない 患者・ケア対象者との関係

個人の状況に関する理由

職場環境に関する理由

ここを改善しない限り 離職防止 につながらない

■潜在看護職の離職理由 / 離職（潜在化）の理由は ２種類 ① 個人の状況 「妊娠・出産」「結婚」「子育て」 ② 職場環境 「勤務時間が長い・超過勤務が多い」「夜勤の負担が大きい」 「休暇がとれない」など

夜勤・交代制勤務ガイドライン

6

①勤務間隔 ・11時間以上あける

②拘束時間 ・拘束時間は13時間以内

③夜勤回数 ・3交代は月8回以内

④連続夜勤回数 ・2連続まで

⑤連続勤務日数 ・5日以内

⑥休憩時間 ・1時間の休憩

⑦夜勤時の仮眠 ・夜勤の途中で連続した仮眠時間

⑧夜勤後の休息 ・1回の夜勤後24時間以上あける

⑨週末の連続休日 ・月1回以上

⑩交代の方向性 ・正循環の交代周期

⑪早出の始業時刻 ・7時前は避ける

赤字： 聖隷三方原病院において整備すみ 下線： 2016年度診療報酬改定(案) 夜間看護体制の充実に関する評価

勤務環境改善マネジメントシステム

雇用の質向上のための4つの領域

7

「雇用の質」向上の取組

「医療の質」の向上

①働き方・休み方

改善

②職員の健康支援

③働きやすさ確保

④働きがいの向上

Ⅱ. 看護職のWLB推進

によって得た効果と経営

8

• 専門・認定看護師休職奨学金制度／役割手当

• チャレンジングな組織参画 他職場・在宅研修

／画期的な物品導入

• 時間外労働の削減 • 夜勤交代制勤務表作成基準の改訂 • 有給消化促進 • 多様な勤務形態

働き方・

休み方改善

• 職業感染 針刺し予防／予防接種／メンタルヘルス

• 長時間労働対策

• 夜勤回数の是正 健康支援

• 院内保育園／育児支援／ワークシェア制度 • 夜勤専門看護師制度 • 柔軟な応援体制 • 看護補助者の増員／他職種連携

働きやすさ

確保

働きがいの

向上

WLＢ実現にむけて聖隷三方原病院の取組

9

人数(

人)

制度（育児短時間・ワークシェア）利用者数

72

116

84

111

0

20

40

60

80

100

120

2011年度 2012年度 2013年度 2014年度

10

291

201

103 93

140

0

50

100

150

200

250

300

350

2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度

延べ数(

人)

夜勤専門取得者延べ数

働き方・働きやすさの向上

15.2 15.0

13.8

15.7 15.0

12.9

11.8

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

11

取組の成果（看護）

78.0%

84.8% 83.4% 82.7%

89.9%

50%

55%

60%

65%

70%

75%

80%

85%

90%

95%

2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度

１人あたりの超過勤務時間 有給消化率

超過勤務時間(

時間/

人)

有給消化率

352 348 330 333 339

287

260

15.2 15.0

13.8

15.7

15.0

12.9

11.8

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

14.0

16.0

18.0

0

100

200

300

400

500

600

2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度

12

超勤金額(

百万円)

超過勤務時間・金額

1人あたりの超勤時間(

時間/

月)

１人あたりの 超過勤務時間

超過勤務金額

特定の病棟に対して、看護補助者の三交代制勤務を導入

13

事例：補助者交代制勤務の導入効果

補助者交代制勤務

26.2

21.9 21.8 22.3

19.4

16.6

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度

1人あたりの超勤時間(

時間/

月)

１人あたりの 超過勤務時間

2011年8月 導入

超過勤務による人件費が削減し、

導入当初と比較し、『約10万円/月』の人件費削減効果が得られた

※ 2015年度は2015年4月～12月までの実績値の平均値

特定の病棟の勤務体制を三交代制（８時間×３）から二交代制（12時間×２）に変更

14

事例：二交代制勤務の導入 二交代制勤務

27.3

20.8 19.0

9.3

7.3

9.2

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度

1人あたりの超勤時間(

時間/

月)

１人あたりの 超過勤務時間

2012年11月 導入

※ 2015年度は2015年4月～12月までの実績値の平均値

超過勤務時間・金額ともに、『約50％』削減され、

人員の増減も加味し、『約15万円/月』の 人件費削減効果が得られた

ジェネラル 看護管理 専門領域 教育・研究

意思決定支援 看護倫理

看護過程３

ラダーレベルⅣ 所属の臨床場面においては卓越した

看護実践を実施し、組織的にも広範囲な役割遂行を実践できる

ラダーレベルⅢ 優秀な看護実践に加えて組織的な役割遂行を実践できる

ラダーレベルⅡ 所属の臨床場面において看護実践を一人前に実践できる

ラダーレベルⅠ 職場の指導や教育を受けながら看護実践を行うことができる

情報収集・アセスメント計画・ 実施・評価

職業倫理 目標管理 安全管理

人間関係能力

自己啓発 教育指導

研究

看護実践能力 組織的役割遂行

能力 自己教育・ 研究能力

大学院進学支援

セカンド・

サード・

管理認定

専門･認定看護師教育課程

看護研究

新人看護職員臨床研修制度

（職場配属型、職場ローテーション研修）

退院調整

【必須研修】

臨床教授･准教授

臨床講師 教育講座

・摂食・嚥下障害看護

・感染管理

・褥瘡ケア

・救急看護

・集中ケア

・がん化学療法看護

・脳卒中ﾘﾊﾋﾞﾘﾃｰｼｮﾝ看護

・緩和ケア

ファースト

【看護部教育理念】

聖隷三方原病院キャリア開発プログラム 概念図 15

看護部の理念に基づき看護部の目指す看護を実現するために看護職員として 専門知識・技術・態度を習得し、人として成長し続けていける人材を育成する

10 11 11

13 13 13

15

19

1 2 2

2 2 4

5

5

1

1 1

1 1

1

2

2

0

5

10

15

20

25

30

認定看護師 専門看護師 認定看護管理者

16

91

110

131 145 148

175

194

217

9.7%

11.9%

14.0% 15.2%

16.6%

19.8%

21.7%

25.1%

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

0

50

100

150

200

250

300

ラダーⅢ以上の人数 全体に占める割合

クリニカルラダーⅢ以上の人数推移 スペシャリストの人数推移

人数(

人)

人数(

人)

働きがいの向上

17

852 843 858 881 891 887 894

671 726 719 737 746 762 784

6.98 7.07 7.37 7.28

7.95 8.23

8.42

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

0

200

400

600

800

1,000

1,200

2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度

クラーク・その他 看護師・助産師・准看護師 勤続年数

看護部職員数と看護師勤続年数

職員数(

人)

取組の成果（看護）

勤続年数（年）

10,175 10,642

11,091 11,247 11,233 11,220

12,428 12,718 12,459 12,616

14,013 13,439

14,212 14,522 14,196

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

18

入院収益(

百万円)

入院収益と特定入院料の算定

2001年9月 救命救急入院料（４対１） （38床 ※現在は47床）

2006年9月 7対1入院基本料

2009年7月 特定集中治療室管理料（２対１） （12床）

入院収益

10,175

11,220

12,428 12,718 12,459 12,616

14,013 13,439

14,212 14,522 14,196

94.9% 91.6%

94.0% 90.4%

88.0% 85.8%

89.1%

83.6% 85.1% 84.5% 81.7%

0.0%

20.0%

40.0%

60.0%

80.0%

100.0%

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

38,750

44,091

47,652 50,235 50,857

53,099

56,643 57,600 59,850

61,741 62,267

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

入院単価（円）

19

入院収益(

百万円)

入院収益と入院単価

病床稼働率

病床利用率

入院収益

入院単価

53.8% 53.5% 53.3% 53.7% 54.2% 55.6%

51.7% 51.9% 53.8% 54.3%

51.7%

55.9% 54.8%

53.6% 53.5%

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

入院収益 外来収益 その他医業収益 20

入院収益(

百万円)

医業収益と人件費率

人件費率

人件費率

医業収益

診療部

26.5%

看護部

45.2%

事務・医療技術

28.3%

人件費

54.1% 材料費

22.1%

その他経費

23.8%

医業費用の内訳 人件費の内訳

※2014年度実績値より 超過勤務手当：4.1% ※人件費の7.6%

診療部

41.9%

看護部

32.2%

事務・医療技術

25.9%

1,879

1,423

1,333

1,200 1,114

1,069 1,038 1,040 1,086 1,090 1,097

32名 30名

38名 37名

47名 43名

45名

52名 53名 52名

7,911

5,231

3,156

2,075

1,218 900 844 728 749

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

0

500

1,000

1,500

2,000

21

外来患者数(

人/

日)

外来受診数と医師の負担軽減

18時以降の外来診療時間（時間/

月）

18時以降の 外来診療時間 外来患者数

2008年度診療報酬改定 「医師事務作業補助体制加算」の新設

⇒加算新設以前より体制を構築しており、 新設と同時に「診療支援室」を看護部から診療部に移管

※ 2006年度より外来診療時間の計測（データ蓄積）を開始

医師事務作業 補助者

WLBの実現は経営に貢献する

22

近代的 労務管理

健康的な職場 制度の活用

お互い様 離職減少

WLBの実現

確保/定着

業務改善 他職種連携により 超過勤務のコントロール 勤務表の管理 希望や有給の取得が公平に

Offが楽しく活用 健康的 いずれ私も○○制度を

使って仕事を続けよう・・ 私はキャリアアップを・・

安全と質的担保 モチベーションアップ 経営効率アップ

パラダイムシフト お互い様文化の醸成