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平成20年 度 学 位 論 文

折 り紙の作図可能性について

兵 庫 教 育 大 学 大 学 院

教 科 ・領域 教 育 学専 攻

MO6234C

学 校 教 育 研 究 科

自 然 系 コ ー ス

和 田 宗 士

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目 次

は じめに 3

第1章

1.1

1.2

1.3

1.4

基 礎 概 念 とユ ー ク リ ッ ド作 図

作 図 につ い て.....

体 の拡 大.......

ユ ー ク リッ ド作 図 可 能 性.

ギ リシ ャ の作 図不 可 能 問 題..

6

6

2

6

2

1

1

9自

第2章

2.1

2.2

2.3

2.4

2.5

折 リ紙作 図

折 り紙 につ いて....

折 り紙作 図手順04,05に つ いて

折 り紙作 図 とユー ク リッ ド作 図.

折 り紙 で方程 式を解 く

折 り紙作 図 と体 の拡大_....

6

6

6

0

7

4

2

2

3

4

4

5

第3章

3.1

3.2

3.3

3.4

3.5

3.6

ガ ロア 理論 と作 図 可 能 性

同 型 写 像 と不 変 体..

正 規 拡 大 とガ ロ ア理論 の 基 本 定 理

分 解 体 と正 規 拡 大.....

準[n]次 拡 大.

3次 方 程 式 の解 法...。....。

可 解 群....._......

68

68

79

88

96

100

109

第4章

4.1

4.2

4.3

正 多角形 の作図

円分多項式

正n角 形 の作図可能性.

正n角 形 の作図_..

4.3.1正7角 形 の作図.

4.3.2正13角 形 の作 図

119

119

127

132

135

139

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4.3.3正17角 形 の作 図

付 録A基 礎知識

A.1体 と多項式

A.2ベ ク トル空 間

A.3連 立方程式

A.4群

参考文献

144

151

151

155

157

160

167

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は じめに

折 り紙 は,日 本 に古 くか ら伝わ る遊び道具 であ り,誰 もが一度 は鶴 や手

裏剣 な どを折 って遊 ん だことが あるだろ う.近 年 では,そ の芸術性 が評価

され,海 外 で も 「origami」 と呼 ばれて親 しまれて いる.一方 で

,作 図 とい えば,誰 もが想像す るのは,定 規 とコンパス によるユー

ク リッ ドの作図であろ う.1796年,ガ ウスが,定 規 とコンパ スのみ で,正17

角形 が作 図可能 であ る ことを示 した こ とは,有 名 な話 であ る.ま た,ユ ー

ク リッ ド作 図で得 られ る数(長 さ)は,1次 方程式 や2次 方程式 を繰 り返 し

解 くこ とで得 られ る数 である と知 られ てお り,「 角 の3等 分」や 「あ る立

方体 の倍 の体積を持 つ立方体 」がユー ク リッ ド作 図不可 能 である ことは,

ギ リシャの作 図不可能 問題 と して知 られてい る.

このギ リシャの作図不可能問題のうち,「 角の3等 分は折 り紙で作図可

能である」 と知 ったことが本研究を始めるきっかけ となった.本 論文は,

折 り紙の作図可能性について研究 したものであり,折 り紙によって作図で

きる数や図形には,ど のような特徴があるのかをまとめたものである.

ユー クリッ ド作図では,コ ンパスによって円が作図できる。ところが,

紙を折ったときに生 じる折 り目は直線であり,折 り目と折 り目の交点から

点が指定されるので,円 周上の有限個の点を 作図することができても,円

そのものを折 り紙によって作図す ることは不可能である。よって,一 見す

れば,ユ ークリッド作図の方が,折 り紙作図よ りも,有 効な作図方法であ

るかのように見える.し かし実際には,よ りたくさんの長さを作図できる

とい う意味で,折 り紙作図の方が,ユ ークリッ ド作図よりも強力な作図方

法であることが分かっている.こ のことは,紙 を折ったときに得られる折

り目の幾何学的な性質が関係 している.

本論文では,「紙を折 る」ことを 「ある図形を別の図形に重ね合わせる」

ことと考 える.こ のように考えた とき,折 り紙作図において,点 を直線に

重ねるように折 る折 り方には,あ る特徴的な性質がある.そ れは,点Pと

直線Zが 与えられているとき,Pをaに 重ね る折 り目が,Pを 焦点,1を 準

線 とす る放物線の接線になっているとい うことである.こ のことから,点

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P,Qと,あ る直線1が 与 え られた とき,PがZへ,QがQへ 重 な る折 り目

は,Pを 焦点,」 を準線 とす る放物線 の点Qを 通 る接線 で ある こ とが示 さ

れ る.ま た,点P,Qと,あ る直 線Z,mに 対 して,PがZへ,Qがmへ 重 な

るよ うに折 った ときの折 り目は,Pを 焦点,Zを 準線 とす る放 物線 と,Qを

焦点,mを 準線 とす る放物線 の共通接線 で ある こ とが示 され る.そ して,

図を描 けば分か るよ うに,点 があ る範 囲にある とき,そ の点 を通 る放物 線

の接線 は2本 引 くことが でき,2つ の放物 線の共通接線 は3本 引 くことが

でき る.こ の ことが示 唆す るのは,折 り紙作 図 によって2次 方 程式や3次

方程 式が解 ける ことであ る.

「折 り紙で方程式を解 く」とは,適 当な直交座標が与えられているとき,

与えられた方程式の係数から,そ の方程式の 「実数解を傾きとする直線を

折 る」 ことである.実 際に,あ る点を通る放物線の接線の傾 きは,2次 方

程式の解 として与えられる.ま た,2つ の放物線の共通接線の傾 きは,3次

方程式の解 として与えられる.一 方で,ユ ークリッド作図で作図可能なの

は,2次 方程式の解までなので7折 り紙作図は,ユ ークリッド作図によって

得 られる全ての図形を作図することが可能なのである.

本論文では取 り上げないが,高 校3年 の数学Cで,2次 曲線を学習する.

この2次 曲線でも特に放物線の身近 な例 として,物 体の斜方投射や,パ ラ

ボラアンテナなどが挙げ られるが,実 は,折 り紙 とい う誰 もが慣れ親 しん

だ遊 び道具の中にも放物線が潜んでいる.先 ほど述べたように,折 り紙で

は,放 物線 の接線が折れることを利用 して,2次 方程式や,3次 方程式を解

くことができる.こ の 「3次方程式」は数学IIの 複素数 と方程式や微分 ・

積分などで扱 う内容であ り,「接線」は数学IIの 微分 ・積分で扱 う内容で

ある.ま た,折 り紙による2次 方程式や3次 方程式の解法を考察するとき

には,「 判別式」が用いられる.こ れは,複 素数 と方程式で扱 う内容 であ

る.こ のように折 り紙作図には高校で学習する内容が散 りばめ られてお

り,高 校での総合的,発 展的な教材 としての可能性 も秘めている.

以下,本 論文の構成について,簡 単に説明する.

1章 では,ユ ー クリッ ドの作図を例に挙げて,作 図に関する基本的な概

念 にっいて述べた.ま た,定 規とコンパスで どのような数が作図可能であ

るかを考察することから,ユークリッド作図によって得 られる数の集合が

体を成す こと,さ らに,あ る実数がユークリッド作図可能であることと,そ

の実数を付加 して得 られる体 との関連について述べた.

2章 では,折 り紙作図手順にっいて考察 し,各 手順によって生 じる折 り

目の幾何学的な性質を考察 した.そ して,折 り紙作図によって得 られる数

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の集合が体を成す ことや,ユ ークリッド作図と折 り紙作図との関係につい

て述べた.ま た,折 り紙で,1次,2次,3次 方程式を解 くことを考え,そ の

結果を用いて,あ る実数が折 り紙作図可能であることと,そ の実数を付加

して得 られ る体 との関係について考察 した.

3章 では,E.ア ルティンの方法に倣ってガロア理論を構成 した.ア ルティ

ンの論法では,「 体Eが 体K上 の正規拡大体である」ことを,「KがE

の有限個の自己同型写像の不変体 である」 と定義す ることが特徴的であ

る.こ の定義のもとで,正 規拡大体の中間体 と,体 の自己同型群の部分群

との間に,1対1の 対応があることを示 した.次 に,正 規拡大 と多項式の分

解体 との関連について述べた.ま た,3次 方程式の解法を考察することに

よって,あ る複素数がユークリッ ド作図や折 り紙作図可能であることの必

要十分条件について考察 した.

4章 では,正 多角形の作図可能性を考 えるために,円 分多項式の性質に

ついて述べた.そ して,2章 や3章 で得 られた結果を応用 し,正 多角形が

ユー クリッ ド作図や折 り紙作図可能であるための必要十分条件について

考察 した.さ らに,正7角 形 と正13角 形 については,ガ ロア理論を応用 し

て,そ れらを実際に折 り紙作図する手順 も考察 した.正17角 形について

は,作 図を行 う代わりに,四 則演算と根号のみを用いて… 粂 表す方法

につ い て述 べ た.

なお,本 論文を読むにあた り必要 となる,群,体,線 形代数等の基本的な

事項を付録 として最後にま とめた.

本 論文 を書 くあたっては,1章,4章 で は主 に,足 立恒雄 著rガ ロア理

論講 義』 を,2章 では主 に,ロ ベル ト・ゲ レ トシュ レー ガー著,深 川 英俊訳

『折 り紙 の数 学 一ユー ク リッ ドの作 図法 を超 え て』 を,3章 では主 に,エ

ミー ル ・アルテ ィン著,寺 田文行訳 『ガ ロア理論 入門』 を参考 とした.

最後にな りま したが,3年 もの間,熱 心にご指導 していただきました濱

中裕明先生に,心 から感謝 します.先 生には何かとご迷惑をおかけ しまし

たが,先 生のご指導のおかげで数学の楽 しさや,研 究の楽 しさを味わ うこ

とができま した.ま た,様 々な機会を通 して,適 切な示唆を与えて くださっ

た数学教室 の先生方にも感謝いたします.そ して,3年 間の大学院生活を

支えて くださった,数 学 コースの方々をはじめとする,多 くの友人,知 人

にも感謝 します.そ して何よ りも,兵庫教育大学への進学の機会を与えて

くれた両親 に感謝 します.

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第1章 基礎概念 とユーク リッ ド

作図

折 り紙による作図との対比のために,ユ ークリッドの作図を例に挙げて,

作図についての基本概念について述べ る.

1.1作 図 につ い て

一般 に,与えられた道具を使って,決 められた手順によって,有限回の操

作で図を描 くことを作図とい う.そ して,い くつかの図形を基に して図形

Fを 含む図形が作図できるとき,図形Fは 作図可能である とい う.し か

し,こ の定義では不明瞭な点 も多いので,以 下 に作図可能性の定義を詳述

する.一般 に作図を考察する際には

,作図に現れるい くつかの基本的な図形の

種類を指定 してお く必要があるだろう.そ こで,そ のような図形の集合を

基本図形集合 といい,F刕と 表すことにする.ま た,Figの 元を基本図形 と

い うことにする.例 えば,定 規 とコンパスによるユークリッドの作図では,

{平 面上の全ての点,直 線 円}が 基本図形集合であり,点,直 線 円が基

本図形である。また,後 に詳述する折 り紙での作図では,{平 面上の全て

の点,直 線}が 基本図形集合であり,点,直 線が基本図形である.

定義1.1.1あ る基本図形集合Figの 元か ら,あ らたな基本図形を指定す

る方法を作図手順 といい,作 図手順の有限個の集 まりを,記 号を定めて作

図法∫,ま たは,∫ 作図という.□

具体的には,各 作図手順は,与 えられた図形からどんな図形を加えるこ

とができるかを記述 したもので,例 えば

(1)与 え られた2点 を通る直線を引くこと

(2)与 え られた点を中心にして,別 に与えられた点を通 る円を描 くこと

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第1章 基礎概念 とユークリッド作図

(3)与 えられた2点 を結ぶ線分の垂直二等分線を引 くこと

な どが作図手順 として挙げられる.

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以下,定 規 とコンパスを用いた作図としてFigを{平 面上の全ての点,

直線,円}と する,以 下の5つ の作図手順

E1与 え られた2点 を通 る直線を引 く.

E2与 えられた点を中心にして,別 に与えられた点を通る円を描 く

E3与 えられた2直 線の交点をとる.

E4与 えられた直線 と円の交点を とる.

E5与 え られ た2円 の交点 を とる.

を総 称 し,作 図法 ε と呼ぶ ことにす る。た だ し,作 図手順E3,E4,E5に 関

して は,交 点 が取れ ない場合 があ る。また,作 図手 順E4,E5で は,交 点 が

2つ 取 れ る場合 もあ る.こ のよ うに,あ る作 図手 順 に対 して,常 に基本 図

形 が存在 す るとは限 らない.ま た,あ る作 図手順 に対 して,複 数(た だ し有

限個)の 基本 図形 が存 在す る こともある 。以下,そ の よ うな作 図手順 も,1

つ の作 図手順 と して認 める ことにす る.

既に描かれている図形同士の交点が取れることは当た り前のようだが,

作図法 においては,与 えられる図形 と,そ こか ら得 られる図形が厳密に定

められているので,論 理的な整合性のため,直 線同士の交点や直線 と円の

交点を とる といったような作図手順も加えてお く必要がある,そ こで,次

のように作図可能の定義を行う.

定 義1.1.2Al,A2,…,AmとB1,B2,…,Bnを 基 本 図 形 集 合Figの 元,

∫ を 作 図 法 とす る.B1,B2,…,Bπ か ら始 め て,作 図 法 ∫ の 作 図 手 順 に

よ っ て 次 々 に基 本 図 形 を 加 え て い き,最 終 的 にAl,AZ,…,、 ㌔ を 含 む 図

形 が得 られ る とき,Al,A2,…,砺 はB1,B2,…,Bnか ら始 め て,∫ 作 図

可 能 と い う1.ま た,与 え られ るFigの 元 が 最 も少 な い 場 合 と して,距 離

1離 れ た2点 か ら始 め てAl,A2,…,.㌔ が ∫ 作 図 可 能 で あ る とき,単 に

Al,Az,・ ・.Amが.F作 図可 能 で あ る とい う.□

一 般 に,ε 作図 においては,コ ンパスで等 しい長 さを測 る とい う手順,っ

ま り,あ る与 え られた点 を中心 に して,与 え られた半径 の円 を描 くとい

1作図手順が複数の基本図形を指定する場合,それらの全てを加えると考える.

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第1章 基礎概念 とユークリッド作図 8

う作 図手 順 は,当 た り前 のよ うに行 われ る.と ころが,こ の作 図手順 は先

ほ どの作 図法 εに は含 まれてい ない.し か し,以 下 の命題 によって,こ の"線 分 の移動"は ε作 図可能 である ことが示 され る

.

命 題1.1.3点0と,線 分ABが 与 え られ た とす る.こ の とき,0を 中心 と

して,ABを 半径 とす る円は ε作 図可能 であ る.

証明 この作 図 は,以 下 のよ うに して行 われ る(図1.!参 照).

(1)点1'か らそれぞれoBを 半径 とす る円を描 き,そ の交 点を それぞ

れC,Dと す る.

(2)線 分CDと 線分0-Bの 交点 をEと す る.

(3)点Eを 中心 に して,点Aを 通 る円を描 き,直 線AEと の交点 でAで な

い点 をFと す る.

(4)点0を 中心 と して,点Fを 通 る円を描 けば,こ れが求 め る円であ る.

図1.1:線 分 の移 動

この ことは,OE=EBか つAE=EFよ り,四 角形/'Cが 平行 四辺

形 で ある こ とか ら示 され る.口

命 題1.1.3に よ りrE2':与 えられた点を 中心 として,別 に与 え られ た2点

の距離 と等 しい長 さの半径の 円を加 え る」 とい う手順 を作 図法 εに加 え

て も,作 図法 εの作 図可能 性は変 わ らない こ とになる.

与えられた図形から,指定された作図手順を有限回用いて,求 めたい図

形を含む図形が作図可能かどうか,ま た作図可能な場合は,そ の作図手順

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第1章 基礎概念 とユークリッド作図 9

を求める問題を作図問題 とい う.一 般に,作 図問題 はある長 さが作図でき

るかどうかを調べることに帰着される場合が多いので,数 の作図可能性の

定義を以下のように行 う.

定 義1.1.4∫ を作図法 とし,基 本 図形集合Figは 平 面上 の全 ての点 を含

む とす る。αを実数Aを 実数 の部分集 合,線 分 ・'を 長 さ1の 線分 とす

る。この とき,点 の集合{PzIPzは 半直線OP上 でloPzl∈A}U{0,-P}か

ら始 めて,∫ の有限 回の手順 によって距離 國 だ け離れ た2点 を含 む図が

作 図 で きる とき,数 αがAの 元か ら ∫ 作 図可能 であ る とい う.Aが 空集

合�フ ときは,単 に αが ∫ 作 図可能 とい う.口

ところで,ε作図において,与えられた点Aか ら,与えられた直繍 に対

して垂線を引 くとき,点Aを 申心 とした,適 当な長さの半径の円を,1と 交

わるように引 くとい う作図手順が使われる。また,勝 手な点を とるとい う

作図手順が使われる場合 も多い,と ころが,先 に述べた作図法 εにおいて

は,適 当な長さを とる作図手順や,勝 手な点を とるとい う作図手順が認め

られていない.

》図1.2:適 当 な 長 さ

この問題を解決するために,次の定義を用意する.

定義1.1.5平 面上の点集合xが 稠密であるとは,平面上の任意の点Pに

対 して,Pに い くらでも近い点がX内 に存在することを言 う.つ まり,任

意の正数 εと任意の点Pに 対し,点Pを 中心 とする半径 εの円内にXの

点が存在するということである.口

定義1.1.6与 えられた2点 から,作 図法 ∫ の作図手順によって得 られる

点の集合が稠密であるとき,∫ は加点可能であると呼ぶことにする.□

長さを扱 う作図問題においては,必 ず基準の長さが指定される必要があ

るので,そ の基準の長さを与える2点 が指定 されている と仮定すれば,加

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第1章 基礎概念 とユークリッド作図 10

点可能 な作図法においては,作 図できる点の集合が稠密である。よって,ど

のような点に対 しても,十 分に近い作図可能な点があることに注意する

と,勝手 な点をとる代わ りに,そ の近傍の適当な作図可能な点をとるとす

ればよい.す なわち,加 点可能な作図法においては,初 めに2点 が与え ら

れている限 り,指定した領域内の勝手な点を とるとい う作図手順を認めて

も認めな くても,作 図可能性は変わ らない.実 際に,作 図法 εが加点可能

であることは,次 のように確認できる.

補 題1.1.72点A,Bが 与 え られ た とき,点Aを 通 って直線!IBに 垂 直 な

直 線 は ε作 図可能 であ る.

証 明 この作 図は,次 の ように して,適 当な点 を とる ことな く作 図可能 で

あ る(図1.3参 照).

(1)点.4を 中心,半 径9Bの 円Aを 描 き,円Aと 直線ABと の交点 でBで

ない点 を0と す る.

(2)点Bを 中心,半 径Cの 円Bを 描 き,点0を 中心,半 径mの 円0を

描 く.

(3)円Bと 円Cの 交点をそれぞれD,Eと す る と,直 線DEが 求 め る直線

で ある.

図1.3:垂 線 の作 図

証明は簡単なので省略する. 日

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第1章 基礎概念 とユー クリッ ド作図11

命題1.1.8与 え られた2点0,Aに 対 し,そ の2点 が,点0(0,0),点A(1,0)

とな る よ うな座標 におけ る有理点,つ ま り,座 標 の成分 が有理 数 とな るよ

うな点 は,全 て ε作図可能 である.

証 明 まず,与 えられた2点0,Alに 対 し,そ の2点 が点0(0,0)と 点Al(1,0)(=

A)と な るよ うな座標 にお ける格 子点を,適 当な点 を取 らず に作 図す る.

(1)コ ンパス に よって,直 線OAI上 の点 で,0か らの距離 が線 分OAの

整数 倍 の距離 に あ る点 は明 らか に作 図可 能 であ る.そ の よ うな点 を

Ai(i,0)(zは 整 数)と す る.

(2)次 に補題1.1.7に よ り,点0か ら直線OA1に 対 して垂 線Zを 引 く.

(3)点0を 中心,半 径OAIの 円を描い て,Zと の交 点 をB1,B_1と す る.

(4)コ ンパ スによ って,直,,OBI上 で点0を 基準 と して線分1:の 整数

倍 の距離 にあ る点Bi(o,2)(2は 整数)は 明 らかに作 図可 能 である.

(5)こ の とき補題1.1.7に よ り,点Az,Bi(i∈Z)か らそれ ぞれOA2jOBiに

対 して垂線をひけば,格子点が作図できる.

次 に,先 ほ ど作 図 した格子点 か ら ⊥ の長 さの線分 を作 図す る.

(1)1を 作 図す るには,点(n,1)と 点(0,0)を 通 る直線 んを引 く.n

(2)比 直続 司 との交点をPと すると,Pと 点(・,・)の問の長さが 王

で あ る(図1.4参 照).

01n.一.1_,.._図1

.4:一 の 作 図

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第1章 基礎概念 とユー クリッド作図 12

よ って,命 題1.1.3に よ り,線 分 の移動 が可 能 であ ったか ら,任 意 の有理

数 は,ε によ り全 て作 図可能 なので,全 ての有理 点は作図可能 であ る.有 理

点 は稠 密 なの で,ε は加 点可能 である。 ロ

1.2体 の拡 大

ε作 図問題においては,作 図可能な数の集合が体をなすため,体 に関す

る理論が有効である.よ って,こ こでは体の拡大について述べる。ただし,

作図可能性への応用を目的 とするため,複素数体Cに 含 まれる体 しか扱わ

ない.、

定 義1.2.1Kを0で ない元を含 む(Cの 部分集合 とす る.こ の とき,Kの

任 意 の元 α,βに対 して

(1)α ± β ∈K

(2)cx゚EK

(3)゚∈K(β ≠o)

が成立す るとき,Kは 体 であるという.口

この とき,α=β とする と,一=1か ら1∈K,a-a=0か ら0∈Kで

あ る.し たがって,全 ての整数がKに 含 まれ る.さ らに3つ の条 件 よ り全 て

の有 理数 が含 まれてい る ことが分 か る.よ って,有 理 数 の集合Qは 最小 の

体 であ る。他に も,全 ての実数全体の集合 や複素数全 体 の集合 も体を なす.

定義1.2.2体K,Lに 対 してK⊂Lが 成 り立つ とき,KはLの 部分体,ま

たは,LはKの 拡大体 であ る とい う.ま た,B⊂K⊂Lの よ うな関係 が

成 り立 って いる とき,KをBとLの 中間体 とい う.[]

一般 に,体 はQや 飛の他 に もい ろい ろあ る.そ の 中でも,次 に述べ る,あ

る数 が付 加 された体 は特 に重要で ある.

定 義1.2.3い くつかの複素数 α1,α2,…anと,体K⊂(Cに 対 して,Kの

元 と α1,… απを含 む最小 の体をK(α1ジ ・・α。)と表 し,Kに α1,… 飾 を

付 加 した体 と呼ぶ.体 と体 の共通部 分が体 を成す こ とは容 易に確認 でき る

か ら,K(α1,… αの は 「Cと α1,… α。を含 むCの 全 ての部分 体」 の共通

部分 で ある.[コ

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第1章 基礎概念 とユー クリッド作図 13

実際に,ρ が代数的な数ならば,次 に示すように ρをKに 付加 した体

K(ρ)が どのような集合かを書 き表すことができる(あ る数 ρが代数的で

あるとい うことの定義は,定 義A.12を 参照)。

命 題1.2.4Cの 元 ρを,K上 で代 数的な数,つ ま り,あ る 一κ上既約 なn次

多項 式!(x)の 根で ある とす る.こ の とき,

五={・ 。+α 、ρ+・,ρ2+…+・n-、 ρπ一11・、∈K}

とす る と,次 が 成 り立 っ.

1:Lは 体 で あ り,L=K(ρ)で あ る.

2:Lは{1,ρ,ρ2,…,pn-1}を 基 底 とす るK上 のn次 元 ベ ク トル 空 間 で

あ る.

証 明 まず,五 が体 である ことを示す.

(1)P,q∈Lに 対 してp土q∈Lは 明 らかで ある.

(2)Lの 元 の積が,Lの 元 であ ることを示 す.Lの2つ の元 は,Kの 元 を係

数 とす る変数 ∬のn次 未満の多項式p(x),g@)に 対 して,p(ρ),q(ρ)と

表 す こ とができる.こ の とき,p(x)q(x)はKの 元 を係数 とす る多項 式

であ る.こ こで,p(x)q(勾 をf(x)で 割 る,多 項式 の除算 を考 える と,

p(x)q(x)=f(x)d(x)+r(x)(た だ しdeg!@)>degr(x))

とな るK係 数 の多項式4@),r(勾 が存在 す る(た だ し,定 数0と な る

多項式 の次数 は 一。oと 定 める).こ こでx;ρ を代入す る と,ノ(ρ)=0

か らp(P)q(ρ)=r(P)で あ る.よ って,r(④ はp(x),q(x)の 次数 に よら

ず,n次 未満の式 で書 けるので,Lの 元 の積 はLの 元 であ る.

(3)qELを 示 す に はq,_=q.1よ り,1.Lを 示 せ ば よ い ま ず,・ で なpPPpいn次 未満 の多項式g(④ によ りp=g(ρ)と 表 され てい る とす る.こ

の とき,ノ(x)は 既約 なので!(x)とg(x)は 互 いに素 とな り,命 題A⊥10

か ら

ん(駕)!(x)十k(x)9(x)=1 (1.1)

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第1章 基礎概念 とユー クリッド作図 14

とな る多項式h(x),g(x)が 存在す る.そ こで,式(1.1)にPを 代 入す る

と,κ(ρ)9(ρ)=1で あ る よ って,ん(ρ)19(P)で あ る ゆ え に,(2)と

同様 の議論によ り,双ρ)はκ(x)の次数に関わ らず ρのn次 未満の式1

で書 ける・したがって,爾=吻 可(ρ)∈Lで あ る・

したが って,Lは 体 である.

次 に,L=K(ρ)を 示 す.Lの 元 は,Kの 元 とPの 四則演算 で書 かれ てい

るので,明 らかに 五 ⊂K(ρ)で ある.一 方 で,Lは 体 よ り,K(ρ)の 最 小性

か らK(ρ)⊂Lで あ る.し たが って,L=K(ρ)で あ る,

さ ら に,Lが{1,PPZ,…,pn-1}を 基 底 とす るK上 のn次 元 ベ ク トル 空

間 で あ る こ とを示 す.{1,p,ρ2,…,pn-1}がK上1次 従属 とす る と,少 な く

と も1つ はOで ないbo,bl,…,わ 雅_1を 用 い て,bo+brP+…+隔_1〆-1=0

と で き る.こ のbを 用 い て,g(勾=bo+blx+…+nn-lx-1と す る と,

f(x),g@)は 互 い に素 よ り,命 題A.1.10か らh(x)f(x)+た@)9(x)=1と

で き る.こ こで,ρ を 代 入 す る と0リ1よ り矛 盾 が 生 じる.し た が っ て,

{1,ρ,ρ2,…,〆-1}はK上1次 独 立 で あ る.よ っ て,{1,ρ,ρ2,…,〆-1}

は 明 らか にL生 成 して い る の で,LのK上 の基 底 で あ る.ゆ え にLは

{1,ρ,ρ2,…,ρ η一1}を 基 底 とす るK上 のn次 ベ ク トル 空 間 で あ る.□

定義1.2.5LをKの 拡大体 とす る.こ の とき 五はK上 のベ ク トル空 間に

な って い る.LをK上 のベ ク トル空間 とみ な した ときの次元 の ことを,L

のK上 の拡 大次数 といい,

dimKL=[L:珂

と表 す.ま た,[L:K]=nで ある とき,LはKのn次 拡大 で ある とい う.

LがK上 無限次拡大 であ る とき,[L:K]=○ 。とか く.口

命題1.2.6Kを 体,α を複素数 とす る.こ の とき,[K(α):珂=nで あれ

ば,α はK上 既約なn次 多項 式の根 である.

証 明[K(α)二K]=nで あ る か ら,n+1個 の 元1,α,α2,…,α πはK上1

次 従 属 で あ る.よ っ て,1,α,α2,…,♂ は,少 な く と も1つ はOで な い 一κ

の 元 を 用 い て,

α。+α 、α+α2α2+…+α 。απ 二 〇

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第1章 基礎概念 とユークリッド作図 15

と で き る.こ の αo,α1,…,ateを 用 い て,

!ω 一 ・。+・ 、針 ・、x2+…+anan

とお くと,α を根に持つ ようなK上 の多項式 ノ(勾 ≠0の 存在 が分 か る.し

たが って,α は代数的 な数 であ る.そ こで,K上 の αの最 小多項式 をg(の

とす る と,命 題A.1.7か らg(x)は 既約で あ り,命 題1.2.4か ら[K(α):K]_

degg(x)=nで あるか ら,題 意は成立す る.口

命題1.2.7体K,M,五 があ って,K⊂M⊂Lで,そ れ ぞれ有 限次拡 大 で

あ る とき,

[五:珂=[五:.M][M:K]

が成 り立 つ.

証 明LのM上 の基 底 を α1,α2,…,αm,.MのK上 の基 底 を β1,β2,…,魚

とす る と,[L:M]=m,[M:珂=nで あ る.

まず α1,…,α 魏がLを 生成す るか ら,Lの 任 意の元 αは

・一 Σ わ・α・(bz∈M)(1・2)

2

と書 け る.さ らに,β1,…,β πがMを 生 成 す る か ら,Mの 元b、 は

b・一 Σb・ 、卿,、 ∈κ)(1・3)

と書 け る.そ こで,式(1.2)に 式(1.3)を 代 入 す る と,α=D沸 防 とな る.

つ ま り,Lの 任意 の元 はKの 元 わ,ゴを係数 とす る α,β3の1次 結合 で書 け る。

次に,Kの 私 メこ対 してΣ%α あ ニ0と すると,

Σb・ 、α紡 一 Σ(Σ δ・、β、)α・一 ・ij2ゴ

である・ここでΣ6鴻 ・Mで あり,aiはM上 ・次独立よりΣ わ渦 一

0で あ る.さ らに,βiはK上1次 独 立 よ り,%=0で あ る.し た が っ て,

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第1章 基礎概念 とユークリッド作図 16

偽β」はK上 でLを 生成 してい て1次 独 立 なので,偽 βゴはK上 のLの 基底

で あ る.ゆ えに,

[L:K]=dimKL=mn

_[L:M][M:K]

とな り,題 意が成立 する。 口

系1.2.8体Kの 有 限 次 拡 大 体Lは,L=K(α1,α2,…,α の と表 す こ と

が で き る.

証 明[L:K]=nと して,nに 関す る帰納 法で証明す る.

ま ず,n=1の とき はLeKで あ る か ら明 らか で あ る.そ こ で,[L:

K]<nの と き に題 意 が 成 立 す る と して,[L:K]=nの とき を 考 え る.

Kに 含 ま れ な いLの 元 を α1と す る.こ の とき,Kl=K(α1)と す る と,

K⊂K1⊂Lで あ る か ら,命 題1.2.7よ り,[L:K]=[L:K1][K1:珂

か つ,[K1:K]>1と な る.よ っ て,[L:κ1]<nで あ る か ら,帰 納

法 の 仮 定 よ り,L=K1(α2,α3,…,α の と表 す こ と が で き る.ゆ え に,

L=K(α1,α2,…,am)と 表 す こ とが で き る.□

1.3ユ0ク リッ ド作 図可能 性

この節では,以下の定理を証明することを目標 とする.

定 理1.3.1al,α2,…,α ηを 実 数,K=Q(α1,α2,…,an)と す る.実 数 α

が α1,α2,…,anか ら ε作 図 で き る こ との必 要 十 分 条 件 は,適 当 な拡 大 体

の 列

KeKo⊂K1⊂K2⊂ ・ ・⊂Kπ ⊂ 】R

が あ って,[瓦:K2-1]=2か つ,α ∈κ几となる ことであ る.

まず,こ の定 理の十分性 を証 明す るため に,以 下 の補題 を証 明す る.

補 題1・3・2α,β(≠0)族 数 とす る・この とき,α 土飾%は,そ れ ぞ

れ α,βか ら ε作 図可能 である.つ ま り,ε 作 図可能 な数 の集合 は体 であ る.

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第1章 基礎概念 とユークリッ ド作図 17

証明 α士βが作図可能であることは明 らカ'である・ α%の 作図は,

図1.5に お い て,OA=1,0B=a,OC=β と して,ACllCIと な

る よ う に,線 分0(フ の 延 長 上 に点 、0を と る と,α β が作 図 で き る.ま た,

・'=1,0B=α,OD=β と して,Aq}:1と な る よ うに,線 分 ・1上

に点 ・を とると弩が作図できる・このことは,△OACと △・BDの 相似

から容易に証明できる.ロ

OAB

図 ・.5・αβと 号 の作 図

補 題1.3.3正 の実数 αが与え られ てい る とき,V優 は ε作 図可能 であ る.

証明 以下 の手 順 によって作 図で きる(図1.6を 参照).

(1)同 一 直 線 上 にB,A,0の 順 で,AB=1,AC=cxと な る よ うに3点 を

と る.

(2)m.の 中点Mを 求 めて,申 心.M,直 径BCの 円を描 く.

(3)Aか らmの 垂線を引 き,(2)の 円 との交点 をDと す る と,.4D=〉 五

で あ る.

この とき,∠-CIは 直 径 に対 す る円周 角 か らgooで ある.ま た,∠ADC=

90。-LACD=∠ 孟BDで あ る.よ って,対 応 す る2つ の角 が そ れ ぞ れ等 し

い の で,△DACと △B.4Dは 相似 であ る.し たが っ て,1':-BA=CA:

Dオ か らDAZニ;.で あ る,こ こで,-DA=xと す る と,x2=α で あ

る.ゆ え にx=>xで あ る.口

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第1章 基礎概念 とユー クリッド作図 18

BAMC

図1,6:平 方根の作 図

補 題1.3.4K⊂Lを 体 とす る.[L:K]=2な ら ば,ρ2∈Kか つ ρ¢ κ

と な る よ うな ρが 存 在 して,L=K(ρ)で あ る.

証 明K上 のLの 基底 を1を 含む よ うに選 び,(1,勾 とす る.こ の ときx2

は,Kの 元a,bを 用い て,

x2=a十bx

と表 す ことが できる.こ れ を解 くと,

b±b2+4ax=

2

で あ る ・よ っ て,・ 〒1,α 一b≒4α とお く と(1,c+~/石)は 基 底 で あ る,

したが って,(1,~厄)が 基底 である.ゆ えに,L=K(轟)で あ る.□

命 題1.3.5体Kの 元 が全 て ε作 図可 能で ある とき,Kの2次 拡大 の元 も

ε作 図可能 であ る.

証 明 まず,補 題1.3.4に よ り,Kの2次 拡大 体 は,Kに,Kの 元 αの平方

根 を付 加 した体K(轟)と して書 ける.K(而)の 元 は(1,V石)のK上 の

1次 結合 で書 け る.こ こで,補 題1.32,補 題1.3.3か ら,題 意 が示 され る こ

とが分 か る.[コ

以上 の結果 を用い て,定 理1.3.1の 十分性 を示す.

証 明(定 理1.3.1の 十分性)命 題1.3.1の よ うなi適当な体 の列 が作れ た と

す る と,Qの 元 は全 て ε作 図可能 よ り,Qを 何度 か2次 拡大 して得 られ る

K2の 元 は全 て ε作図可能 である.し たが って,α ∈Knか ら αは ε作 図可

能 であ る.し たがって,命 題13.1の 十分性 は成 り立 っ.□

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第1章 基礎概念 とユークリッ ド作図

次に定理1.3.1の 必要性を証明する.1.1節 では作図法 εを,

E1与 え られた2点 を通 る直線を引 く

E2与 えられた点を中心にして,別 に与 えられた点を通る円を描 く

E3与 えられた2直 線の交点を とる

E4与 えられた直線 と円の交点を とる

E5与 えられた2円 の交点を とる

19

と定義 した.こ の作図手順 か ら分 か るよ うに,ε 作 図 では,直 線や 円の交点

を とる こ とによ って作 図が行 われ る.よ って,ε 作 図の可能性 を調べ るた

め に,点 に注 目 して以下 の命題 を示す.

命 題1.3.61.1節 の作 図法 εに よる作 図可能 性を次 の よ うに言 い換 え る

ことがで きる.

,ん の うちの2点 を通 る直 線 どうしの交点 であ る.

,Aiの うちの2点 を通 る直線 と,Al,…,Aiの1点 を

中心 とし,他 の もう1点 を通 る円 との交 点 であ る.

(3)-Ai+1は,Al,…,Aiの1点 を 中心 と し,他 の も う1点 を通 る円 どうし

の交点である.

証明 作図問題では,基準 となる長 さを与える2点 が与え られている.そ

の2点 を直交座標の(0,0),(1,0)と すると,ε作図は,す でにある点を通 る

直線や円を描き,それらの交点を求めることで点を増や してい く作図なの

で,こ の言い換えが同値であることは明 らかである.口

α を 実 数 と す る.点 列Ao,Ai,・ ・,.傷,…,-ANが あ っ て,

Ao=(o,o),Al=(1,0)

A2=(α 、,0),,An=(2n,0)

An+、,An+2,,AN=(α,0)

で あ り,各A、(i=n+1,n+2ジ,N)が 次 の い ず れ か を 満 た す とき,α

は ε作 図可 能 で あ る.

(1)Ai+1は,Al,…

(2)ノ ー2+1`よ,Al,…

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第1章 基礎概念 とユークリッド作図 20

さ て,直 交 座 標 を 導 入 して,ε 作 図 に よ っ て得 ら れ る 点 の座 標 が どの よ

う な 体 に含 まれ る か を 考 え る 。

定 義1.3.7KをRの 部 分 体 とす る.P(x,〃)∈ 飛2に 対 してx,y∈Kの と

き,PはK点 で あ る とい う,口

命 題1.3.8KをRの 部分 体 とす る.こ の とき,次 が 成 り立 つ.

(1)2つ のK点pi,P2を 通 る直 線 の方 程 式 はK係 数 で あ る

(2)K点Piを 中 心 と して,K点P2を 通 る 円 の 方 程 式 はK係 数 で あ る.

証 明Pi(xl,雪1),P2(x2,�2)をK点 とす る.そ の と き そ れ ぞ れ の 方 程 式 は,

(1)(〃 一92)x-1-(x2-x・)〃+(x、 ッ2一 靱 、)=0

(2)(x-9σ1)2十(㌢ 一3/1)2=(x2-xl)2十(�2-91)2

で あ る.よ っ て題 意 は満 た され る.口

命 題1.3.9KをRの 部 分 体,1,1'をK係 数 の方 程 式 で与 え られ る 直 線

c,c'をK係 数 の方 程 式 で 与 え られ る 円 とす る.そ の とき

(1)Zと1'の 交 点 はK点 とな る

(2)あ るKの 元 αが あ っ て,Zとcの 交 点 はK(轟)点 とな る

(3)あ るKの 元 αが あ っ て,cとc'の 交 点 はK(轟)点 とな る

証 明 α,b,c,α',b',♂,p>4,r,〆,4,r'∈Kと す る.

(1)Z=ax+by+cニ0,Z':α'x+b'y+c'=0と す る と,交 点 を 求 め る方 程

式は

aba'b')(の 一(⇒

であ る.こ こで,1と1'が 平行 であれ ば交点 は存在 しないの で,1とZ'は

平行ではない したがつて 一 ≠ ・より(aba'b')は 逆行列を持

つ の 一1�zx‐ab‐c'

ya'b'‐c'と な つ`Z,2直 線 の 交 点 囎

はK点 である.

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第1章 基礎概念 とユークリッ ド作図 21

(2)Z二ax+bg+c=0,c:x2+ゲ+p∬+卿+rニ0と す る.ま ず,u,b

のいず れかが0の とき,例 え ば α=0の とき直線 の方程式 か ら〃∈K

とな り,こ れを 円の方程式 に代入す る と,xに つ いて のあ る2次 方程

式x2+sx-}-t;0(s,t∈K)を 解 くこ とにな るの で,解 の公式 か一s士s2‐4t

であ る(交 点 が存 在 す る こ とが前提 な ので,ら,x=2

s2‐4ts'‐4t≧0で あ る こ とに 注 意 す る).こ こで,αリ とす る と,4

直 線 と円の交点 のx座 標 はK(轟)点 である.

次 に,a,bが 共 に0で ない とす る.こ の とき,Zとcの 式か ら 忽を消去

す る と,xに つ いてのあ る2次 方程式 を解 くこ とになる.し たが って,

先 ほ どと同様 に直線 と円の交 点 のx座 標 は,あ るKの 元 αがあ って

K(轟)で ある,こ のxをax+by+c=0に 代入 す る と,や は り円 と

直線 の交点 の 〃座標 はK(轟)点 であ る.

(3)c:∬2+〃2+px+9y+r=0,♂:∬2+〃2+p'∬+q'雪+r'=0と す る.

この2式 を 引 き算 す る と,(p-p,)x+(q-4)y+(r-r')=0と な っ

て直 線 と円 の場 合,つ ま り,(2)に 帰 着 で き る.よ って 円 と円 の 交 点 の

座 標 は,K(轟)点 で あ る.口

以 上 の結果 を用 い て,定 理1.3.1の 必要性 を示す.

証 明(定 理1.3.1の 必 要 性)実 数 αが ε作 図 可 能 で あ る とす る と,命 題

1.3.6の よ うに点Ao,Al,…,ANの 各Ai(xz,yz)(i>_n十2)が 次 の い ず れ

か を 満 た す よ うに 取 れ る.

(1)ん は,Ao,…,AZ_1の うち の2点 を 通 る 直 線 ど う しの 交 点 で あ る.

(2)AZは,Ao,…,.4、-1の うち の2点 を 通 る 直 線 と,Al,…,義 一1の 点 を

中心,他 の も う1点 を通 る円 との交点 で ある.

(3)Aiは,Ao,…,ん 一、の点 を 中 心,他 の も う1点 を 通 る 円 ど う しの交 点

で あ る.

こ の とき,体Kn+1~KNをKn+1=K,KZ+1=瓦 偽+1,ッ 盛+1)の よ うに

順 次 定 め て い く と,命 題1.3.9か ら[KZ+1:瓦]=1ま た は2,か つ α ∈Kn

で あ る.し た が っ て αが ε作 図可 能 で あ る とす る と,定 理1.3.1の よ うな

Qを 次 々 に2次 拡 大 して 得 られ る拡 大 体 の 列,

K⊂Kn+2⊂-Kn+3⊂ … ⊂KN⊂R(α ∈KN)

が 作 れ る の で,定 理1.3.1の 必 要 性 も成 り立 つ 。 □

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第1章 基礎概念 とユークリッ ド作図 22

OBD

図1.7:角 の3等 分 か らCOS3

OBDB'

図1.8:COS3か ら角 の3等 分

1.4ギ リシ ャの作図不可能 問題

前節の結果を用いて,ギ リシャの3大 作図不可能問題の うち,立方倍積

問題 と角の3等 分問題 について考える.

立方倍積問題 与えられた立方体の倍の体積を持つ立方体を作図せよ.

角の3等 分問題 与えられた角度を3等 分せよ.

前述の用語を用いると,これ らは次のように言い換えられる.

立方倍積問題 ある作図法 ∫ に対 して,32は ∫作図可能か.

角の3等 分問題 ある作図法∫ に対 して,… θから…1が ∫作図可能か・

立方倍積問題 についてはこの言い換えが同値であることは明 らかであ

る.角 の3等 分問題の言い換 えについては自明ではないが,次 のよ うにし

てこの言い換えが同値であることが確認できる.

まず 図1.7に おい てOA=・1と ・C=cosθ が与 え られた とす る.こ の

とき,Bを 通 るOAの 垂線 と0を 申心 として点Aを 通 る円 との交点 をA'

とす れ ば,∠'IC=θ であ る.こ こ で,角 の3等 分が ∫ 作 図可能 であ れ

ば,∠A'0-Bの3等 分線 上に00=1と な る点0を と り,m⊥ ・Cと な

る直線 ・B上 の点Dを とると,・D-…1と な る・

逆 に,図1.8に おい て長 さ1の 線分 と角A'/:=θ が与 え られた とす る.

この とき,OA=1と なるよ うにOA'上 に点Aを と り,Aか ら ・C'に 垂線

を引 いて ・B'と の交 点をBと す る と,・B-… θで ある・ここで,…1

が … θか ら ∫ 作図可能 であ轍 半直線 ・B上 に ・D-…1と な る点

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第1章 基礎概念 とユー クリッド作図 23

Dを と り,Dを 通 ってODと 垂直 な直 線上 に0σ=1と な る ような点 σ

を取轍 ∠・・D-1と なる

定理1.4.1与 えられた立方体の倍の体積を持つ立方体の1辺 は ε作図不

可能である.

証明 先の考察より,32が ε作図不可能であることを証明する.

まず,x3-2=0がQ上 既約で ある ことを示 す.そ こで,仮 にx3-2が

Q上 可約 であ る とす る.こ の とき,x3-2は1次 の多項式 と,2次 の多項

式 の積 で書 け る.一 方 で,〃=x3-2の グラ フを考 えれ ば分 か るよ うに,

x3-2の 実 根 は32の み である.つ ま り,x3-2はx-32を 因数 に持つ 。

しか し,こ れ は 酒 が無理数 である ことに矛盾 す る.よ って,x3-2はQ上

既約 で あ る.

したがって,命 題1.2.4か ら,体Q(拒)はQ上 のベ ク トル空間で,[Q(酒):

Q]=3で ある.

次 に32は ε作 図不 可能 である ことを示す.も しも,a2が ε作 図可能

であ る とす る と,定 理1.3.1か ら,次 の よ うな2次 拡大体 の列 が作 れ る.

Q⊂K、 ⊂K、 ⊂ … ⊂Kn⊂ 飛([Ki・K、.、]-2パ 疹 ∈Kn)

この とき 命 題1.2.7か ら,

[Kn:(Q]=[Kn:Kn-i]…[K1:Q]=2n

で あ る.

一方,Q(砺)⊂Knよ り[Kn:Q]二[Kn:Ql(糎 川Q(32):Q]と なって,

2nが3で 割 り切 れる ことにな り矛 盾す る.し たが って32は ε作 図不可能

であ る.口

命 題1.4.2t3-3t-1=0の 実 数 解 の うち,ど れ か1つ で も ε作 図不 可 能

な らば,3の3等 分 は ε作 図不可能 であ る.

証明 以下,対 偶を示す.

先の繍 ・よ り,角の3等 分が作 図できることは,… θから …1が 作

図可能 であ るこ とと同値 であ る.そ こで,3倍 角 の公式 か ら,

cos8=4cosa6‐3cos933

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第1章 基礎概念 とユークリッ ド作図 24

8な の で,… θ一 ・,…r比 お く と,

4x3-3x-a=0 (1.4)

とな る・ここで,θ 一 暮 とす る と,・-1で り,こ れ を式(購 代 入す る と,

14x3-3x-一=02

とな る ・…8・ ・(θ、2π),…(θ も4π)は 式(1.4)の 根 で あ る か ら7

7「7π13π…9…(

.9)…(9)

が式(1.5)の3実 根 で ある

(1.5)

したが って,一 は ε作 図 でき るので,3の3

等 分 がE作 図 であれ ば,こ の3実 根 は全 て ε作 図可能 で ある.式(1.5)の

両 辺 を2倍 して 翫 を改 めてtと お くと,

t3-3t-1=0 (1.s゚

とな る.よ って,式(1.5)の 実解 が全 て ε作 図可 能 な らば,式(1.6)の3実

解 も ε作 図可能 であ る.式(1.6)が 実 数解 を持 つ ことは,微 分 をす る こと

に よ って確 認で きる.〔 〕

定理1.4.3一 般 に,角 の3等 分 は ε作図不可能 であ る.

証明 角の3等 分が一般に ε作図不可能であることを示すには,ε作図不

可能な角度が1つ で視 つかればよレ'ので,特 に3の3等 分が ε作図不可

能 であ る こ とを示す.そ のため には命題1.4.2よ りt3-3t-1=0の 実 解

が ε作 図不 可能である ことを示せ ばよい.そ こで,ま ず!(勾=♂ 一翫 一1

がQ上 既約 で ある ことを示 す.

!@)が 有理鯉(た だしa,bは互L・關 を持つとすると,(艶 軒

1=0か ら,a3‐3ab2‐b3=0で あ る.よ っ て,

a3=b2(3a-}-b)

で あ る.a,bは 互 い に素 よ り,α と3a+bは 互 い に 素 で あ る.し た が っ て,

a3とb2(3a+b)も 互 い に素 で あ る が,こ れ は α3=b2(3a+b)と 矛 盾 で あ る 。

し た が っ て,f(x)は 有 理 数 解 を持 たな い.ゆ えにf(x)はQ上 既 約 で あ る.

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第1章 基礎概念 とユー クリッド作図 25

次 に ノ(勾 の実数 解 の1つ を ρとす る と,命 題1.2.4か らQ(ρ)は 体 で,

{1,ρ,ρ2}を 基 底 とす るQ上 のベ ク トル空 問で ある.し たが って,[Q(ρ):

Q]=3で あ る.こ こで,ρ が作 図可能 である とす る と,定 理1.3.1よ り,適 当

な2次 拡大 体の列 が作 れ るの で,命 題1.2.7か ら[Kn:Ql]=2nで あ る.一

方,Q(ρ)⊂Knよ り[κがQ~]=[κ π:Q(・(1)(A):Q】 とな って,2π が3で

割 り切 れ る ことに な り矛盾 す る.し たが って ρは ε作 図不可 能 である.し

たが って,一 般 には角 の3等 分 は ε作 図不可能 で ある.□

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26

第2章 折 り紙作図

この章 では,折 り紙による作図法0を 構成 し,折 り紙作図(0作 図)の

可能性について考察する.

ある図形の作図可能性 は,作 図法 としてどのような作図手順を採用する

かに影響を受ける.そ こで,作 図法0を 明確に定義 し,作 図法0の 作図手

順によって得 られる折 り目の幾何学的な特徴を考察する.そ して,0作 図

によって,ど のような方程式の解が作図できるのかを考えて,0作 図の可

能性について検討する.ま た,0作 図とε作図の関係 も明 らかにする.

2.1折 り紙 につ い て

折 り紙の作図可能性つまり,紙を折ることで生 じる折 り目でどのような

図形が作図できるかについて考える.そ のために,ま ず,紙 を1回 折った

とき,ど のよ うな図形か ら,どのような図形が作図できるのかを考え,そ

れ らをまとめて,折 り紙による作図法0を 構成する.

まずはじめに,折 り紙作図における,基 本図形集合を考える.例 えば,ε

作図では全て点から出発 して直線や円が作図され,ま た直線や円の交点 と

して点が定まる.一 方0作 図では,折 り目は全て直線 とする.そ して,点 は

2直 線(2つ の折 り目)の交点 として指定される.し たがって0作 図では,

基本図形集合Fig={平 面上の全ての点,直 線}と する.

次 に,0作 図手順を考える。紙を折ると,あ る図形をある図形の上に重

ね合わせることになる.よ って,「 どのような図形をどのような図形に重

ね合わせるか」を考 えて,0作 図手順を決定 してい く.以 下,あ る図形F

をある図形Gに 重ね合わせることをF斡 σ と書 くことにする.

点 と直線から紙を折ってい く場合,そ の折 り方を指定す る条件 は,大 き

く分 ければ,点H点,点 → 直線 直線 ← 直線の3種 類が考 えられる.そ

こで,そ の3種 類の条件を詳 しく考察すると,次 の通 りである.

1ま ず,点 と点を重ね合わせるとい う条件を考えると,あ る点Pを それ自

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第2章 折 り紙作図 27

身に重ね合わせ る場合 と,ある点Pを 別の点Qに 重ね合 わせ る場合が

ある.こ こで,点Pを 点Pに 重ねるように折 るとはPを 通 る直線を折

ることである.よ って,以下の2通 りが考えられる.

1-a点P⇔ 点P(点Pを 通 る直線)

1-b点P⇔ 点Q(線 分.PQの 垂直2等 分線)

2次 に,直 線と直線を重ね合わせるという条件を考 える.あ る直線Zを そ

れ自身に重ね合わせる場合 と,ある直線Zを 別の直線mに 重ね合わせる

場 合がある.た だ し,ある直線1を それ 自身に重ね合わせる場合 は2通

りある.その直線 自身を折る場合 と,その直線 置の垂線を折 る場合であ

る.し か し,直 線1自 身を折 る場合は折 り目として既に存在 しているこ

とになるので,この場合は除外 して考 える.し たがって,以下の3通 りが

考 えられる(IIは平行関係を表す記号である).

2-a直 線 脈→ 直線Z(直 線Zの 垂線)

2-b州mの とき,直 線Ze直 線m(直 線Z,mに 平行 でZ,mと 等 距離

にあ る直線)

2-c耐mの とき,直 線`⇔ 直線m(直 線1,mの 成す角 の2等 分 線)

3最 後に考えられるのは,点Pを 直線Zに 重ね合わせる場合である.こ の

場合 は少 し複雑 なので2.2節 で詳 述す る.た だ し,点Pが 直 線Z上 にあ

る場合 は この よ うな折 り目はPを 通 る直線 も しくは,Zの 垂線 で あ り,

この条件 は上 に述べ た1a,2aの 組 参合 わせに他 な らない ので,こ の場

合は除外 して考 える.

3-a点PH直 線Z(た だ し,PはZ上 の点 では ない とす る)

この ように細か く分類 した6種 の条件の組み合わせで,直 線(折 り目)の

指定の仕方にどのようなものがあるかを考える.

(1)最 初 に,折 り目の条件 として直線ZE→ 直 線mを 考 え る.こ のよ う

な折 り方 は,州mの ときは1通 り,研mの ときは2通 りに定 まる

ので,(2b)も し くは(2c)の 条件 は単独で折 り方 を指定 してい ると考

え られ る.

(II)ま た,別 の条 件 として点PH点Qを 考 える.こ の よ うな折 り方 は'1通 りしかないので

,こ の場合 も(1b)の 条件 が単独 で折 り方 を指定

していて,こ れ以上条件 を付 け加 える ことはで きない.

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第2章 折 り紙作図 28

(III)次 に単独 では折 り方 の定 ま らない(1a),(2a),(3a)の 組 み合 わせ に

よる折 り方 につい て考 える.ま ず折 り目の条件 と して(la)の 点P

→ 点Pを 考 える.こ の ような折 り目は無 数 に存在 す る.そ こで,さ

らに条件を付 け加 えて考 える と,次 の3通 りが全 てであ る.

r

(a)別 の点Qに つい て,laの 点(2← 点Qを 条件 として付 け加 え

る と,折 り目は直線PQで あ り,折 り方 は1通 りに定 ま る.

(b)他 に,2α の直線Z← 直線Zを 条件 として付 け加 え る と,折 り目

はPを 通 る1の 垂線で,折 り方 は1通 りに定 まる。

(c)3α の点(2・ → 直線 ♂を条件 と して付 け加 える と,折 り方 は高 々

2通 りに定 ま る.こ の折 り目が どの ような折 り目かは2.2節 で

詳述 す る.

(IV)次 に折 り目の条件 として(2a)の 直線Z・ → 直線Zを 考 える.こ の よ

うな折 り目は無数 に存在す る.そ こで,さ らに条件 を付 け加 えて考

え る,

(a)(la)の 点P斡 点Pを 指定 す る と折 り方 は1通 りに定 ま るが,

これは前述 の(IIIb)の 場合 であ る.

(b)別 の直線mに つい て(2a)の 直 線m⇔ 直 線mを 条 件 と して

付け加えると,研mの 場合は折ることができない.州mの 場

合,Zに 垂直な直線はmに も垂直であ り,直 線m・ →直線mは

何 ら新 しい条件の付加になっていない.

(c)(3a)の 点PH直 線mを 指 定す る と折 り方 は高 々1通 りに定

ま る(2.2節 で後述す る),

(V)さ らに折 り目の条件 と して(3a)の 点P曾 直線Zを 考 え る.こ の よ

うな折 り目は無数 に存在す る.よ って,2つ 目の条件 を考 え る.(3a)

と(1a),(2a)の 組み合 わせは既に述 べ たの で,他 に,3aの 点(2→ 直

線mを 条件 として付 け加 える と,折 り方 は高 々3通 りに定 まる(2.5

節 で後述す る).

以 上 の8つ の折 り方 が,考 え られ る全 ての折 り方 で ある.こ こで,折 り

目 と折 り目の交 点を とるこ とも作 図手順 の1つ として加 え,こ れ ら9つ の

作 図手順 を ま とめる と,次 のよ うにな る.

手順(1)州mの とき,1,mに 平行 で1,mと 等 距離 にあ る直線 を折 る.

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第2章 折 り紙作 図29

手順(2)研mの とき,Z,mの 成す角 の2等 分線 を折 る.

手順(3)点P,Qが 与 え られた とき,直 線PQを 折 る.

手順(4)点P,Qが 与 え られた とき,線 分PQの 垂直2等 分線 を折 る.

手 順(5)点Pと 直 線Zが 与 え られた とき,Pを 通 る1へ の垂線 を折 る.

手 順(6)点P,Qと 直線Zが 与 え られ た とき,PがZへ,QがQへ 重 な るよ

うに折 る.

手 順(7)点P,Qと 直線 」,mが 与 え られ た とき,PがZへQがmへ 重 な

る よ うに折 る.

手 順(8)点Pと 直線Z,mが 与 え られた とき,PがZへ 重 なる よ うに,ま た

mに 垂直 とな るよ うに折 る.

手順(9)直 線Zと 直 線mの 交 点を とる.

これを表 に したものが,表2.1で ある.た だ し,PとQは 点,1とmは 直

線 であ る.

表2.1=折 り紙 の折 り方

手順(1) Zlim 1・→m(1,mに 平 行 な 直 線)

手順(2) z壮 皿 lHm(1,mの 成 す角 の2等 分線)

手順(3) P,Q P・ →P,(2斡Q(P,Qを 通 る直 線)

手順(4) P,Q PHQ(線 分PQの 垂直2等 分線)

手順(5) P,1 P←P,Z←>Z(Pを 通 るZへ の垂 線)

手順(6) P,Q,z PHl,(2⇔(2

手順(7) P,Q,1,m PHI,QHm

手順(8) P,1,m ∫)←>z,m←>m

手順(9) 1,m Zとmの 交点

この9つ の作図手順の うち,い くつかの作図手順は他の作図手順によっ

て実現できる.

補題2.1.1以 下の4つ の作図手順は他の作図手順で折 ることが可能であ

る.

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第2章 折 り紙作図 30

(1)勝 手 な点を加 える とい う作図手順 を認 めれば,手 順(1)は 手順(4),(5),

(9)に よって折 る ことが できる.

(2)勝 手 な点を加えるとい う作図手順を認めれば,手 順(2)は 手順(6)に

よって折ることができる.

(3)手 順(4)は 手 順(3),(5),(6),(9)に よ って 折 る こ とが で き る.

(4)手 順(8)は 手 順(4),(5),(9)に よ っ て折 る こ とが で き る.

証 明 まず手 順(1)は,仕 に適 当な点Pを と り,手 順(5)に よって,mへ

垂 線 んを 引 く.手 順(9)に よって たとmと の交点 をQと す る と,手 順(4)

に よ り線分PQの 垂直2等 分線を折れ ば よい.

次 に手順(2)は,♂,mの 交 点をQと し,Z上 に適 当な点Pを とって手 順

(6)に よ りQを 通 る折 り目でPがmへ 重 な るよ うに折 れば よい.

さ らに手順(4)は,直 線PQ=Zと す る と,図2.1の よ うに,手 順(5)に よ

り,PがPに1がZに 重 なるよ うに折 る.ま た,手 順(5)に よ り,QがQに

ZがZに 重 な るよ うに折 る.こ の折 り目をそれ ぞれ α,bと す る.手 順(6)に

よ りPを 通 る折 り目でQがaに,Qを 通 る折 り目でPがbに 重 なる よ う

に折 る.こ の折 り目の交点 をKと する と,手 順(5)に よ りKか ら1へ 垂線

を折れ ば よい(図2.1参 照).

a b

P.

1

K:亀

Q

図2.1:垂 直2等 分線 の作 図

最後 に手順(8)は 図2.2の ように,手 順(5)に よ り点Pか らmへ 垂線k

を引 く.次 に手順(5)に より点Pを 通 るkの 垂線を引き,手順(9)に より1

との交点をQと する.そ して,手順(4)に より点PをQに 重ねるように折

ればよい.口

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第2章 折り紙作図 31

m

.P. Q

1

図2.2:(8)の 作 図

これ らを ま とめる と図2.3の よ うにな る.

(1)(g)(4)(5)

(9)(3)(5)(6)(9)

(2)一(6)

図2.3:各 作 図手 順の関係

つ ま り勝手 な点 を加 える とい う作 図手順 を認 めれば,手 順(3),(5),(6),

(7),(9)で 他 の作 図手順 は全 て実現 可能 であ る.よ って,作 図法0と して

作 図手 順(3),(5),(6),(7),(9)を 採用 し,作 図法0を 以 下 の よ うに定義

す る.

定 義2.1.2以 下の5つ の作 図手順を作 図法0と する.

01互 い に平行 でない直線Z,mが 与 えられ た とき,Z,mの 交点 を とる.

022点P,Qが 与 え られ た とき,直 線PQを 折 る.(P・ →P,QeQ)

03点Pと 直線Zが 与 え られた とき,点Pを 通 るZへ の垂 線を折 る.(PE→

P,z⇔ の

04点P,Qと 直線Zが 与 え られた とき,PがZへQがQへ 重 な るよ うに

折 る.(QHQfrHL)

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第2章 折 り紙作図 32

05点P,Qと 直線1,mが 与 えられ た とき,-Pが1へQがmへ 重な るよ う

に折 る.(P⇔Z,Q⇔ 親)口

作図手順04や05に よって得られる折 り目が,幾 何学的に どのような

性質の直線かは2.2節 で詳 しく述べ る.

ここで,補 題2.1.1か ら,この作図法0に よ り,表2.1の 手順(4)と 手順

(8)は0作 図可能であるが,手 順(1)と 手順(2)は 「勝手な点を加える」 と

い う作図手順が作図法0に 含まれていないため,現 状では0作 図できな

い ことに注意する.そ こで,こ の作図法0が 加点可能であることを示す.

実際0が 加点可能であることが分かれば,2点 を含む図形から作図を始め

るとき,勝 手な点をとるとい う作図手順を認めな くても,定 義2.12の5つ

の0作 図手順で,表2.1の 手順(1)か ら手順(9)が 全て再現可能である.つ

ま り,点 と直線を基本図形 とし,「 図形 どうしを重ねる」 とい う方法で折

り方を指定 して作図できる全ての点や直線は,0作 図の5つ の手順だけで

作図可能である.逆 に言えば,0作 図不可能な点は,紙 を折ることでは作図

できないことになる.そ のために,以下の補題を用意する。

補題2.1.3線 分PQが 与えられたとする。この とき,あ る整数 αに対して,

直線PQ上 で点Pか ら線分PQの 回 倍の距離にある点は0作 図可能で

ある.

証 明 以下 の よ うに して折 る ことがで きる(図2.4参 照).

重%

一1 im

k

図2.4:整 数倍 の作 図

(1)02に よ り,直 線P(2を 折 る.

(2)03に よ り,Pを 通 る直 線PQへ の垂線 を折 り,そ の折 り目をZと す る.

ま た,Qを 通 る直線PQへ の垂線 を折 り,そ の折 り目をmと す る.

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第2章 折 り紙作図 33

(3)04に よ り,Pを 通 る折 り目でQを1に 重 ね るように折 り,そ の折 り目

とmの 交点 をAと す る.

(4)03に よ り,Aを 通 る直線P五 への垂 線を折 り,直 線PQと の交点 をP'

とす る とPQ=P'Qで ある.

以上の操作を繰 り返すことで,題 意が示 されることが分かる. 口

補題2.1.4(線 分 の移 動)直 線 ♂上の点0と 線分 孟β が与 え られ た とす る.

この とき,作 図法0に よ ってAB=OPと なる点PをZ上 に とるこ とが可

能 で あ る.

証 明 以下 の よ うに して折 る ことができ る.

まず,0=Aの 場合 を考 える(図2.5参 照).

0

B

P

図2.5:線 分 の移動1

(1)04に よ り,0←A)を 通 る折 り目でBをiに 重ね,そ の折 り目を んと

す る.

(2)03に よ り,Bを 通 る たの垂線 を折 り,そ の折 り目 とZと の交点 をPと

す る と,AB=OPで ある.

ここで,折 り目kは 直線OBと1の 成す角の2等 分線 であ り,2通 りあ る.

そ の2通 りのそれぞれが,1上 でPを0の どち ら側 に とるか に対応 してい

る.す なわ ち,0の どち ら側 に もPを 作 図で きる,

次 に,0≠Aで0,A,Bが1直 線上 にない場合 を考 え る(図2.6参 照).

(1)02に よ り,直 線 ・:を 折 る.

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第2章 折 り紙作図 34

B/

σ嵐

D'\

図2.6:線 分 の移 動2

(2)補 題2.Uに よ り,表2.1の 手順(4)は 勝手 な点 を とるこ とな く0作 図

可 能 だ ったか ら,0をBに 重 ね るよ うに折 り,そ の折 り目 と直 線OB

との交 点を σ とす る.ま た,02に よ り,直 線ACを 折 る。

(3)補 題2.1.3に よ り,AC=CDと なる点Dを 直線AC上 に折 る.こ の と

き四角 形 オβDOは 平行 四辺形 で'G・/で あ る.

(4)以 上 か ら,0=.4の 場合 に帰着 できて,'C・-Pと なる点Pを0作

図す る こ とが可能 であ る.

最 後 に,0,A,Bが1直 線上 にあ る場合 で,0≠Aの ときを考 え る(図

2.7参 照).

図2.7:線 分 の移動3

(1)03に よ り,Bを 通 る ・Cへ の垂線mを 折 る.

(2)04に よ り,Bを 通 る折 り目でAをmに 重 ね る.こ の折 り目をnと す る.

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第2章 折 り紙作図 35

(3)03に よ り,Aを 通 るnへ の垂線 を折 り,そ の折 り目 とmと の交 点を

A'と す る.こ の とき,.;で あ る.

(4)0,A',Bが1直 線上 にないの で,前 述 の方法 で.;=・'と なる点P

を とる ことが可能 である.口

命題2.1.5作 図法0は 加点可能 であ る.

証明 まず,2点O,Aが 与 えられた として,点0(0,0),点A(1,0)と なるよ

うな座標 にお ける格子 点が全 て作 図可能 であ る ことを示す.

19ρ"

f

ρ

B

」巳

噛,'∂αcし

℃8c

\/6

¢,`」

ρ8ら 亀

L

7「 「 尋

,'

ρ

96「

' o大.,

し覧

9

図2.8:格 子点 の作 図

(1)02に よ り,直 線0.4を 折 る.

(2)03に よ り0を 通 る直線OAへ の垂 線を折 り,そ の折 り目を んとす る.

(3)03に よ りAを 通 る直線OAへ の垂 線を折 り,そ の折 り目を1と す る.

(4)04に よ りAを 通 る折 り目で0をZに 重 ね るよ うに折 り,そ の折 り目

とkと の交点 をBと す る.

(5)04に よ り0を 通 る折 り目でAを 層 こ重 ね るよ うに折 り,そ の折 り目

と1と の交点 を0と す る.

ここで,2点0,Aに 対 して,線 分OAの 整数倍 の点A2(¢ は 自然 数)は 補

題2.1.3か ら0作 図可能 である.ま た同様 に,2点0,Bに 対 して,線 分1;

の整 数倍 の点 易(2は 自然数)は 補題2.1.3か ら0作 図可能 で ある.よ っ

て,各AZに 対 して,Azを ん に,直 線OAを 直線OAに 重 ね るよ うに折 り,

各B墲ノ 対 して,BgをBiに 沸 を んに重 ね るよ うに折 れば,点0(o,o),点

A(1,0)と な るよ うな座標 におけ る格子点 が全て作 図可 能で ある.

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第2章 折 り紙作図 36

次 に 、.・節 命 題.1.8の 図 ・.4の よ う}・す れ ば,点(11.一,)が 作 図 可 能 で あ

り,補 題2.1.4か ら線分の移動が可能なので,全 ての有理点 は0作 図可能

である.有 理点は稠密なので,作 図法0は 加点可能である.口

2.2折 り紙作 図手順04,05に つ いて

ここでは2.1節 でふれ た,点Pを 直線1に 重ね る場 合 につ いて考察す る.

まず,以 下 の命題 が成 り立つ.

命題2.2.1直 線ZとZ上 に無 い点Pが 与 え られ た とき,PをZに 重ね るよ

うに折 っ た ときの折 り目の集 合 は,点Pを 焦 点 として,1を 準線 とす る放

物 線 πの接線 の集合 であ る(図2.9参 照).

、廊

P

§津聖野

1

図2.9:点 を直線に重ね る折 り目の集合

証明 まず,Pを 乙に重 ね る折 り目は πの接 線 であ る こ とを示 す.PをZ

上 の点Qに 重 ねた ときの折 り目をcと した とき,cは 線分PQの 垂直2等

分線 で ある.放 物線 πは,点Pと 直線Zか ら等距離 にあ る点 の集合 である

か ら,Qか ら引い たZへ の垂 線 とcと の交 点をXと した とき,XP=XQ

よ り,xは π上 の点 である.ゆ えに,こ の命題 を示す には,折 り目c上 には

X以 外 に π上 の点 が無 い こ とを示せ ばよい.

仮 に,c上 にx以 外の π上 の点yが 存 在す る と仮定 す る と,Yはc上

の 点 よ り,YP=YQで あ る.一 方,Yか ら下 ろ したzへ の垂線 の足 をQ'

とす る と,△YQQ'は 直角 三角形 よ り,YQ'<YQで あ る.し たが って,

1,Q,<YQ=YPで あ る.と ころが,Yは π上 の点 と仮定 した ので,こ れ

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第2章 折 り紙作図 37

はYがzとPか ら等 距離 にあ るこ とに矛 盾す る.ゆ えに直 線cに はx以

外 に π上 の点 は存在 しない.よ って,cは 点Pを 焦点,iを 準 線 とす る放 物

線 πの接 線 であ る(図2.10参 照).

'・Y

・XPM・

Q'Q1

'c

図2.10:放 物線 の接線(1)

逆 に,放 物線 πの焦点Pを πの接線 オで折 り返 す と,PはZに 重 な る こ

とを示 す.つ ま り,図2ユ1に おいて,tと π との接点 をX,Xか らZへ 引い

た垂 線 の足 をQ,YをPQとtの 交 点 とす る と,tが 線 分PQの 垂直2等

分線 であ る こ とを示 す.こ こで適 当な直交 座標 にお いて点P(0,c),直 線

1:y=一 ・とす る と,π の方程式 はx・-4・ 櫛 嵯 であ る・そ こで

点X(pzp'4c)と お く・この とき,Qの 麟 よい)で あ る・

ま殖 纐 の傾きは2c,一一Pで ある訪 πの灘 の傾きはdy_xdx2c

よ喋 である.Lた がって傾 きの積が ・になるので頂 劒 とtは

垂 直 であ る.

さ らに,瑚 程式 は傾 き喋 よ り,〃 一 釜(x-p)+pz4cで ある 一 方

で,直 線PQの 方 程式 は 〃=-2cx+cで あるか ら,直rPQと 接 線tと の

交 点Yは,こ の2式 の連立耀 式 を解い て(p2'・)で あ る.Lた が って,Y

は線分PQの 中点でありtは 線分PQの 垂直2等 分線 となるので,π の

接線tで 折 り返すとPは1に 重なる.以 上から命題は成立す る.□

この命 題2.2.1か ら,次 の2つ の系 は容 易 に分 か る.

系2.22作 図法0の04に 関 して,点Pを 焦点 として,1を 準線 とす る放

物 線 を πとす ると,作 図手順04と は 「Qか ら πへ の接 線を び く」 とい う

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第2章 折り紙作図38

図2.11:放 物線 の接 線(2)

作 図手順 に他 な らな い。この とき,接 線 の本数 を見 る こ とか ら,次 の3つ

の ことが分 か る.

(1)π の内部 にQが 存在 する とき,Qを 通 る折 り目でPを1に 重ね る こと

は不可 能 である(図2.12参 照).

1

図2.12:Qが πの 内部 の とき

(2)π 上 にQが 存在 する とき,Qを 通 る折 り目は1本 である(図2.13参 照).

1

図2.13;Qが π上 の とき

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第2章 折り紙作図 39

(3)π の外部 にQが 存在 する とき,Qを 通 る折 り目は2本 存在 す る(図2.14

参照).

図2.14:Qがnの 外 部 の とき

系22.305に 関 して,あ る点P,Qと ある直線Z,mに 対 して,PがZへ,(2

がmへ 重 なる ように折 った ときの折 り目をcと す る.こ の折 り目cは,P

を焦点,Zを 準線 とす る放物線 と,Qを 焦 点,mを 準線 とす る放物線 の共通

接線 であ る(図2.15参 照).□

図2.15:放 物 線の共通 接線

この共通接線が最大で何本引けるかは2.5節 で述べる.

系22.4表2.1の 手順(8)に つい て,点Pと 直 線1,mが 与 え られ た とき,

Pが1にmがmに 重 な るよ うな折 り目cは,Pを 焦点zを 準線 とす る放

物 線 πの接線 でmに 垂 直な ものであ り,こ の ような折 り方 は高 々1通 りで

あ る.

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第2章 折 り紙作図 40

証 明 まず,手 順(8)の 折 り目cが どの よ うな折 り目か を考 える と,Pが9

に重 な るよ うに折 るので,命 題2.2.1か ら,cはPを 焦点 」を準線 とす る放

物 線 πの接線 であ る。また,mがmに 重 な るよ うに折 るの でcはmの 垂

線 で あ る.し たが って,cは πの接線 でmと 垂直 な直線 であ る.

次 に,こ のよ うな折 り目がなぜ高 々1通 りしかない かを考 える.適 当な

直 交座 標 を とる ことで,放 物線 πの方程式 をy=ax2と してよい.こ の と

き点P(2p,ap)で の接線の傾 きはZapで あ る.

初めに 州mと すると,準 線zとmが 平行であるから,接 線(折 り目c)

は1に も垂直である.上 の接線の傾きの式から,放物線 πの接線 は準線 ♂

と垂直にならず,こ の ときは折 り目が存在 しない.そ こでmの 方程式を

y一 鮒 詑 すると,cとmが 垂直 より。の傾きは1で ある したがっ

て,ユ ー2。pで あるか ら,mを 指定すればただ ・つ 測 決まるので接 線

が1本定まる.ロ

2.3折 り紙作 図 とユ ーク リッ ド作 図

この節では0作 図 と,ε作図の関係について述べる.ま ず初めに,折 り

紙作図で円を描 くことは不可能である.な ぜな ら,円は中心0か ら距離 γ

にある点の集合であるが,0作 図手順01か ら05で 得 られるのはい くつ

かの折 り目や,い くつかの折 り目どうしの交点であ り,円 周上のい くつか

の点が得 られても,円周上の無限個の点を折ることはできないか らである.

よって,一見すれば円を描けるε作図の方が0作 図よりも様々な図形が

作図できるように思える,し かし,これから示すように,実 際には0作 図

の方が ε作図よ りも多 くの数(長 さ)が 作図でき,あ る意味で ε作図よ り

も優れた作図法である.

この こ とを示す ため に,ま ず,以 下 の補題 を証明 す る.

補題2.3.1A,B,0を 与 え られ た点 とす る.こ の とき,0を 通 り直線.;

と平 行 にな るよ うな直線Zは0作 図で きる.

証明 図2.16の よ うに,直"Cを 折 り,0を 通 る 孟Bへ の垂線 を折 る.

この ときの折 り目を んとす る(手 順02,手 順03).次 に,0を 通 るkの 垂

線 をZと す る と,」が求 め る直線 で,丑BIμ であ る(手 順03).口

以 下,作 図法0か ら05を 除いた,作 図手順01か ら04に よる作 図法 を

0'と す る.こ の とき,次 の意 味で作 図法 εは作 図法0'で 代 用可能 であ る.

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第2章 折 り紙作図

/1

/図2.16:平 行線 の作 図

41

定 理2.3.22つ 以 上の点 か ら始 めて,ε 作 図 によ り得 られ る点 は全 て0'

作 図 で得 られ る.

証明 ε作図によって得 られる点は,命題1,3.6の(1)か ら(3)の 操作によっ

て得 られる点である.し たがって,直線についてはその直線上の2点 が,円

については中心 と円周上の1点 が与えられているとき,与 えられた点から

定 まる直線 と直線の交点,円 と直線の交点,円 と円の交点が0'作 図可能で

あることを示せばよい.

(1)直 線 と直 線の交点 を とる作 図手順 は,01と 同 じであ る.

(2)円0の 申心o,円 周上 の点P,直 線1が 与 えられ ている とき,円0と 直

線iの 交点 を0'作 図に よ り求 め る ことを考 え る.

は じめ に,PがZ上 でない場 合 を考 える(図2.17参 照).ま ず,0を 通

1c

図2。17:円 と直線 の交 点1

る折 り目cでPを!に 重ね る.Pを 通 るcへ の垂 線 を折 り,1と の交点

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第2章 折 り紙作図 42

をP'と す る と,P'が 求 める点で ある.折 り目cは 高々2通 り考 え られ,

そ れぞ れの折 り目か ら円 と直線Zと の2交 点 が定 まる.

次 に,Pが ♂上 の ときを考 える(図2.18参 照)。 まず,0を 通 る1へ の垂

線cを 折 り,」とcの なす角の2等 分線m,nを 折 る.こ こで,Pを 通 る

mへ の垂線 とcと の交点 を,Qと す る.そ して,Qを 通 るnへ の垂線

を折 れ ば,そ の折 り目と どとの交点 が,求 め る点P'で あ る.

1

一n

図2.18:円 と直 線 の交 点2

(3)2円 の交点を求めるには,交点を直接求める代わりに,2円 の共通弦を

求 め る ことを 目標 とす る.こ れ によって,(2)の 場 合 に帰着 できる.

まず,一 方の円の中心0を 直交座標 の中心 に とり,も う一方 の円の申心

0'をx軸 上 で0か ら距離 αの位 置 にあ る とす る.ま た,円0の 半径 を

c,円0'の 半径をb(b≧c)と す る.こ こで,2円 の 中心 と2円 上の点 が

与 え られているので,長 さ α,b,cの線分は与 え られている ことに注意す

る(補 題2.1.4か ら線分 の移動 が可能 であ ったか ら,線 分が どこに与 え

られてい るかは重要 ではない).こ の とき円0の 方程式 はx2+〃2ニc2,

円0'の 方程式 は(x-a)2+〃2=わ2で あ る.よ って共通 弦 の方 程式 は

a2‐b2+C2

x2+y2-c2=(x-a)2+ノ ーb2よ り,こ れ を 解 い てx=2a

で ある.し たが って,2円 の交点 は2円 の中心 を結 ん だ直 線 と直交す

a2‐b2+c2る共 通 弦 上 に あ り,そ の 共 通弦 は 円0か ら の 距 離 に あ り,2

aa2+b2‐c2 の 距 離 に あ る

.円0'か ら2a

a2‐b2+C2以 上 か ら,長 さ α,b,cが 与 え られ た とき, の長 さ の 線 分 が2

a0'作 図可能であることを示せばよい.そ うすれば,共通弦が作図でき

て,(2)の 場合に帰着する

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第2章 折 り紙作図 43

(3)-aま ず,直 角 を挟 む2つ の辺の長 さがaとcの 直角3角 形 を折 る.

この とき斜辺の長さはV評 である.こ の作図は03と 線分

の移動によって可能である(図2ユ9参 照).

c

図2.19=2円 の 交 点(1)

(3)-b次 に,斜辺の長さが ~廊 で他の一辺の長さがbの 直角3角

形 を折 る.こ の作 図は,03と 線分 の移 動,さ らに前述 の 円 と直

線 の交 点を求 める手順 に よって可能 であ る.こ の とき残 った辺

の長 さ はa2‐b2+c2で あ る(図2.20参 照)。

a2-1-cz

b

a2-b2+c2

図2.20:2円 の交 点(2)

(3)-c2つ の 半 直 線ooxとOoYを 折 り,OoX上 に点Ao,Alを,Ooy

上 に 点.Boを,Oo.40=1,00Bo=a2_.b2+c2,00AIe

a2‐b2+c2と な る よ う に と る.さ ら に,補 題2.3.1に よ っ て

.40Boと 平 行 な直 線 をAlか ら引 い て,OYと の交 点 をB、 とす る

と,OoBl=a2‐b2+c2で あ る(図2.21参 照).

(3)-d同 様 に して,2つ の半直 線02X'と02Y'を 折 り,02X'上 に点A3

を,02Y'上 に 点 β2,B3を とる.た だ し,OZB2;1,0ZB3=2a,

OZA3=α2-b2+c2と す る.補 題2.3.1に よ ってAgBgと 平 行

な直 線 をBZか ら引 い て,ox'と の 交 点 をA2と す る と,OzAz=

a2‐b2+c2で あ る(図2.22参 照).

2a

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第2章 折 り紙作図

Oo

図2.21:2円 の交 点(3)

Y

44

Yノ

02 AZA3

図2,22:2円 の 交 点(4)

X'

ゆえに,題意は成立する.[コ

上記の証明で(1),(2)は ともか く,(3)は 原理的な可能性を示 している

に過ぎず,こ のまま作図を実行す るのは困難である.(3)の 可能性の具体

的な作図手順を含む証明を以下に述べる.

補 題2.3.34点A,B,c,Dが 与 え られ た とき,-Bを 中心 と して,Aを 通 る

円 と,0を 中心 と して,Dを 通 る円の交点 は0'作 図可 能 である,

証 明 線 分ABニ わ,線分i=a,線 分CD=cと す る と,以 下の よ うに

して折 る ことが可 能 である(図2.23参 照).

(1)直 線Bσ を折 る.そ して,Bを 通 るCの 垂 線 を折 る.同 様 に,σ を

通 るmの 垂線mを 折 る.

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第2章 折 り紙作図 45

(2)1上 にm=bと な る点Eを とる.さ らに,EFllm,と な る点 一Fを

m上 に とる.

(3)m上 にCG=cと なる点Gを とる.さ らに,σHlβ0と なる点Hを

Z上 に とる.

(4)線 分FHの 垂直2等 分線 を折 り,こ の折 り目 と辺Cの 交点 を1と

す る.

(5)1を 通 るmの 垂線nを 折 る.

(6)03,04に よ って,具 体 的 に は 定 理2.3.2の2の 方 法 で,BE=BKと

な る点Kをn上 に とれ ば,CK=cで あ る.

なぜ な ら,△IFHに おい て,

IF=IH (2.1)

△IC-Fに お い て,IF2=1。r2+b2で あ る.ま た,△IBHに お い て,IHZ=

IBZ+c2で あ る.し た が っ て,式(2.1)か ら,

b2‐1B2=C2‐1C2 (2.2)

であ る.ま た,m=m=bか ら,

IK2=b2‐IBZ (2.3)

した が って,式(2.2),式(2.3)か ら71K2=C2-ICi2で あ る.ゆ え に,CK=c

とな る の で,Kは2円 の 交 点 で あ る.[]

以上 か ら作 図法 εが作 図法0'で 代用 で きる こ とが分 か った.特 に,基

準 の長 さ(こ の線分 の長 さを1と す る)が 決 ま ってい て,2つ の線分が与 え

られ た とき,そ れ ら2つ の長 さの和,差,積 商 の長 さの線分 は0'作 図 によ

り作 図で きる.こ れ は原理 的には作 図法 εが作 図法0'で 代 用 でき るこ と

か ら明 らか であるが,実 際の作図手順 として も和,差 が0'作 図可能 な こと

は線分 の移動が可能 である ことか ら明 らか であ り,積,商 は定理2.3.2の 証

明 の(3c),(3d)の ように して0'作 図可能 であ る,し たが って,次 の系が成

り立 つ.

系2.3.4基 準の長 さの線分が与えられた とき,0'作 図によって作図でき

る数は体を成す.口

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第2章 折 り紙作図

1 m

G

46

A

E

K

嚇 ・ 璽 噛 辱

1

FD

B 1 c

図2.23:2円 の交 点の作 図

次に,作 図法0'が 作図法 εで代用できることを示す.つ ま り,作図法0

の一部 である作図法0'か ら作図できる数の集合 と,ε作図できる数の集

合 が一致す るのである.

定理2.3.52つ 以上 の点か ら始め て作 図法0'で 得 られ る点 は,全 て ε作

図可能 であ る.

証明 以下のようにして示 される.

(1)OlはE3と 同 じであ る.ま た,02はE1と 同 じで ある.

(2)03は あ る点Pか ら直線 に垂 線 を引 くこ とであ るが,簡 単 に証 明 で

き るので省略す る.

(3)点P,Qと 直線Zが 与 え られた とき,点Qを 通 る,点Pを 焦点,直 線1を

準 線 とす る放物線 πの接線tを 求 め るには,線 分PQ=P'(2と な る

よ うな点P'をZ上 に と り,線 分PP'の 垂直2等 分線mを 引けば よい.

この とき,mで 折ればPはP'に 重 なるので,命 題2.2ユ か らmが 求 め

る接線tで あ る(図2.24参 照).

定 理2.3.2と 定 理2.3.5か ら,

{0作 図可能な数}⊇{0'作 図可能な数}={ε 作図可能な数}

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第2章 折 り紙作図 47

m

P、!

..Q.一

P'㌔

図2.24:放 物線 の接線

であることが分かる.し かし,0作 図可能な数の集合が ε作図可能な数の

集合 よりも真に大きいかどうかは分か らない.そ こで次節では,折 り紙で

方程式を解 くことを考えることによって,こ の関係が真に大きいかどうか

を調べる.

2.4折 り紙で方程式を解 く

この節 で は折 り紙 で1次,2次,3次 方程式 を解 くこと,つ ま り,与 えられ

た方程 式の解 を作図す る ことを考 える.

作図によって方程式を解 くとは,あ る実係数の代数方程式f(x)ニ0が

与 えられたとき,係 数の絶対値の長さの線分から,実解の絶対値の長 さの

線分を作図することである.た だ し,長さを与えるので,基準の長さ1と な

る線分が与えられていないといけない ことに注意する.

そ こで,長 さ1の 基準 となる線分OAが 与 え られて い るとき,0:原 点,

A:(1,0)と なる よ うな直交 座標 を考 える.こ の とき,0作 図にお いて は

「長 さ1刎 の線分 が作 図できる」 こ とと 「傾 きmの 直線 が作 図 できる」 こ

とは等価 である.な ぜな ら,長 さmの 線分が作図で きた とき,Aを 通 るOA

の垂線 をひ いて,そ の垂線上 にmの 符号 に応 じて,A8=1刎 とな る点B

を取れ ば,直 線 ・Cの 傾 きがmで あ る.逆 に傾 きmの 直線Zが 作 図で きた

とす る と,ま ず,原 点0を 通 るZに 平行 な直線 を作 図す る.次 にAを 通 る

・'の 垂 線 を引いて,1と の交点 をBと す る と,.4B=瞬1で あ る(図2.25

参 照).

以下,折 り紙 によって方程式を解 く,つ まり,方程式の解を0作 図する

とは,与 えられた方程式の係数の長さの線分から,実解を傾 きとする直線

を0作 図することとする.ま た,作 図にあたっては,常 に基準 の長さの線

分OAが 与 えられているとし,0を 原点,Aを(1,0)と する直交座標が定

まってい ることを前提 とする.さ らに,線 分の移動が可能なので,あ る長

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第2章 折 り紙作図 48

o

雪=m

B

AP

lx

図2.25:直 線 の傾 き

さa,bが 与 え られ た とき,適 当な直交 座標上 に点(a,b)を 取 れ る ことに注

意す る.

以 上 をふ まえて,1次,2次,3次 方程式 の解 の0作 図可能性 につい て

述べ る。

命 題2.4.11次 方 程式ax-b=0の 解 は0作 図可能 であ る.

証明 直交座標において源 点・と点F(a,b)樋 る直線の方程式はby=‐x

で あ る.つ ま り,ax-b=0の 解が直線 の傾 き として現れ る.□

o

P

/F

ax

図2.26:1次 方程 式の解

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第2章 折 り紙作図 49

次 に,2次 方程 式axe+bx+cニ0を0作 図 に よって具体 的 に解 くこ

とを 考 え る.こ の とき,α ≠0と してよい.し たが って,a,b,cが0作 図

可能 な数 であれば,系2.3.4か らb,cをaで 割 った数 も0作 図可能 なので,

axe+bx+c=0の 代 わ りに,両 辺をaで 割 りx2+px+q=0を 解 くこ と

を考 え る.

補 題2.42与 えられた点Po(v,w)か ら,放 物線 π:x2=4uy(た だ し賜≠0)

へ引 い た接 線の傾 きを8と す る と,5は

x2--x+一=O

uu

の解 で あ る.

証明 点Poを 通 り,傾 きsの 直線Zの 方程 式 はy=s(x-v)+wで あ る.

この直線 が放物線 πの接線 であ るための条件 を考 えるため に,π と1の 共

有点 のx座 標 を求 め る方程式 を考 える と,

x2=4u{8(x-v)十w}

4=x2‐4usx十4uvs‐4uw=0

であ る.Zが πと接 するための必要十分条件 は,こ の方程式の判別式 が0と

な る ことで ある.し たが って,求 める条件 として次 を得 る.

u2s2‐uvs-1-uw=0

⇔S2-s+一=0uu

定 理2.4.32次 方 程 式x2+Px+4=0の 解 は,点P(-p,9)か ら,放 物 線

x2=4yへ 引 い た接 線 の 傾 き で あ る.

証 明 補題2.4.2に おいて,u=1,v=-P,w=qと お くと,点 ←p,g)か ら

放物線 ♂=4yへ 引いた接線の傾 きは,与 え られ た2次 方程式x2+px+q=

0の 解 となる.口

以上の考察か ら,2次 方程式を0作 図で解 く具体的な手順は,次 で与 え

られることが分かる.

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第2章 折 り紙作図 50

系2.4.4与 え ら れ た2次 方 程 式x2+p∬+geOに 対 して,点(-p,g)

を 通 る折 り 目 で,点(0,1)を 直 線 ッ=-1に 重 ね れ ば,折 り 目の 傾 き は

x2+px+q=0の 解 で あ る 。

証 明 定 理2.4.3か ら,点 ←p,q)を 通 る折 り目 で,点(0,1)を 直 線g=-1

に重 ね る と,点(-p,q)を 通 る,点(0,1)を 焦 点,直 線 〃;-1を 準 線 とす る

放 物 線 πの 接 線 が 作 図 で き る.こ の とき,π の 方 程 式 は,x2ニ4yだ か ら,

定 理2.4.3よ りx2+px+4=0の 解 が0作 図 可 能 で あ る.口

次 に3次 方程式について考える.3次 方程式 も2次 方程式の ときと同様

に考 えて,3次 の項の係数は1と す る.

補 題2.4.52つ の 放 物 線

7「1:(雪 一n)2e2α(x-m)

π2:x2e2b゚ノ

を考 え る(α ≠0,b≠0).実 数cが,こ れ らの放物線 のある共通接線kの 傾

き とな るた めの必要 十分条件 は,cが

x・-2m-x・+2n‐x+a-0bbb

の解 とな る ことであ る.

証 明2つ の放物線 π1,π2の1つ の共通 接線 んをy=cx+dと す る.ん と

π1の 共有 点 のx座 標 を求 める方程式 を考 える と,

(cx-1-d‐n)2=2a(x‐m)

ぐ⇒c2x2+2{・(d-n)一 ・}x+(d-n)2+2・m-0

で あ る.こ こで,判 別式 をD1と す る と,

D,

4{・(d-n)一 ・}・一 ・・{(d-n)・+2・m}

=c2(d‐n)2‐2ac(d‐n)-Fa2‐c2(d‐n)2‐2ac2m

=a2‐2ac(d‐n)‐2ac2m

=a2‐2ac(d‐n-{-cm)

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第2章 折 り紙作 図51

で あ る.κ は 雪軸 と平行 にな らない か ら,kと π1の交 点の数 は交 点 のx座

標 の個 数 と一致 す る.ゆ えに,kが π1と接 す るための条件 は,D1=0と な

る ことであ るか ら,そ の条件 は

a‐2c(d‐n十cm)=0(2.4)

で あ る.

次 に,kと π2の共有 点のx座 標 を求め る方程 式を考 え る と,

∬2=2b(cx→-d)

⇔x2-2bcx-2bdリ0

で あ る 。こ こ で,判 別 式 をD2と す る と,kが π1と 接 す る た め の 条 件 は,

DZ=62c2+2掘 コ0で あ る 。ゆ え に,

‐bc2

(2.5)d=2

で あ る.

式(2.5)は 臆 の傾 き ・に対 して,〃切 片 をd‐bc22と すれ ば 鵬

‐bc2に接す るこ とを示 している.cが 共通接線の傾 き となるためには,4=

2

で決 ま る直 線が π1に も接 す る,つ ま り,式(2.4)を 満 たす ことが必要 十分

で ある.よ って,式(2.5)を 式(2.4)に 代入 すれ ば,

一bC2

)‐n+cm}=Oa‐2c{(2

⇔bc3-2mc2一 ト2nc十 α=0

⇔ 。・-2m。 ・+… 塾。+a-0わ わ わ

で あ り,題 意 が 成 立 す る.口

定 理2.4.63次 方 程 式x3+pxz+qx+r=0の 解 を α とす る.こ の とき,

次 で 決 ま る2つ の放 物 線 π1,π2

π1:焦 点F1←p+r,q)準 線z1:x=-p-r

π2:焦 点FZ(O,1)準 線12:〃=-1

の共通接線で傾き αとなるものがある.

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第2章 折 り紙作図 52

証 明 補題2.4.5に おいて,放 物線 π2の パ ラメー タbを 基 準 の長 さの2倍

の長 さ と して,m=-p,n=q,a=2rと す れ ばよい。この とき αは,以 下

の よ うな2つ の放物線,

π、・(〃-4)a=4r(x+P)

π2:∬2=4y

の 共 通 接 線 の傾 き に な る.こ こで,

π1:焦 点Fl(-p+r,4)準 線ll:x=-p-r

π2:焦 点F2(0,!)準 線Z2:雪=-1

であるか ら,題意が成立する。 口

以上の考察か ら,3次 方程式を0作 図で解 く具体的な手順 は,次 で与え

られ るこ とが分 か る.

系2.4.7与 え られ た3次 方 程 式x3+pxz+卿+r=0に 対 して,2点 と2

直 線

Fr(r-p,q)FZ(0,1)

ll:x=-p-rl2:y=-1

を考 えて,F1をlrに,F2を12に 重ね るよ うに折 れば,そ の折 り目の傾 きは

与 え られ た方程式 の解 で ある.

証 明F1をllに,FZを12に 重ね る よ うに折 れ ば,系22.3よ りその折 り

目Cは,Frを 焦点,llを 準 線 とす る放 物 線 と,F2を 焦点,12を 準 線 とす

る放物 線 の 共通接 線 で ある.こ の とき,命 題2.4.6か らcは3次 方程 式

♂+pxz+q∬+r=0の 解 である.口

系2.4,7よ り,3次 方程 式が0作 図 によ って解 け る ことが分 か った.こ

の こ とか ら,以 下の定理 が示 される.

定 理2.4.832は,0作 図 可 能 で あ る.

証 明s2はx3-2=0の 解 なの で,系2.4.7か らp=q=0,r=-2と す

れ ば,α は 点F1←2,0)を 焦 点,ll:x=2を 準 線 とす る放 物 線 π1と,点

FZ(0,1)を 焦 点,12:雪=-1を 準 線 とす る放 物 線 π2の 共 通 接 線 を折 れ ば

よ い.

具体 的な作 図手 順 としては,図227に おいて,

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第2章 折 り紙作図 53

(1).4β=1,BC=2と な る長方形"1を 長方 形 を折 る,こ の とき,A

が上 の証 明 にお ける直 交座標 の原点 に相 当す る.

(2)1:の 延長 上にAE=1と な る点Eを,・4Dの 延長上 にAF=2と な

る点Fを とる.

(3)Eがm上 に,FがOD上 に重 な るよ うに折 り,そ の折 り目をkと す

る と,kの 傾 きが,32で ある.

(4)-ADの 垂 直2等 分 線 とkと の交点 をM,ん とDCの 交点Gか ら.4D

に平行 に引いた直線 とADの 垂直2等 分線 との交点をNと す ると,

-MN=酒 である.□

1Z

F

A

E

A

ノ>G

l… D

B

`

M c 12

図2.27:2の3乗 根

定 理2.4.9与 え られ た角 の3等 分 は0作 図可能 であ る.

証 明1.4節 よ り,角 の3等 分 が作 図できる ことは,cos3θ か らcosθ が作 図

可 能 で ある こ とと同値 であ る.同 様 に して,tan38か らtanBが 作 図でき

る こ とと同値 であ るこ とも容 易に分 か る.そ こで,3倍 角の公式 か ら,

cos3リ=4cosaB‐3cosB

sin3リ=3sin8‐4sinaB

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第2章 折 り紙作図 54

なの で,

tan8(3‐tan28)tan38=

1‐3tane8

ta皿3θ=α,tanθ=xと お く と,

x3-3ax2-3x十a=0 (2.6)

とな る.し た が っ て,式(2.6)の 実 解 が0作 図 に よ っ て求 め られ れ ば よ い.

この 作 図 は,系2.4.7か らp=-3a,q驚 一3,r=α とお け ば作 図 す る こ と

が可 能 で あ る.つ ま り,点 現(4a,-3)を 焦 点,Z1:x=2aを 準 線 とす る放

物 線 π1と,点F2(0,1)を 焦 点,12:ッ=-1を 準 線 とす る放 物 線 π2の 共 通

接 線tを 折 れ ば よ い.

具 体 的 な作 図手順 と して は,図2,28に おい て,∠ 、4Bσ=3θ(m=

1,∠AOB=90。),AC=aと す る.以 下,点0が 上 の証明 の原点 に相 当

す る.

(1)Cの 延長上にcD=2α となるよ うに点Dを とる.さ らに,m=2α

とな るよ うに点Eを とる.

(2)直 線AC上 に図2.28の よ うにFC=CG=1と な るよ うな点F,Gを

とる.

(3)Eを 通 るBEの 垂線を折 り,EH=3と なる点Hを とる.

(4)Dを 通 るmの 垂 線llを 折 る.さ らに,Gを 通 るACの 垂 線 を12を

折 る.

(5)Hがll上 に,Fが12上 に くるよ うに折 る.こ の折 り目をnと す る と,n

とCの 成す角 が θで ある.

2.5折 り紙作図と体の拡大

この節 では,以 下の命題を証明することを目標 とする.

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第2章 折 り紙作図 55

F

A

)

CD

n

B腎 「FT 一

E

12 G

ll

H

図2.28=角 の3等 分

定 理2.5.1α1,α2,…,an∈IR,Q(α1,a2,…,an)=Kと す る.実 数 αが

α1,α2,…,α 。か ら0作 図 可 能 で あ る こ との必 要 十 分 条 件 は,適 当 な体 の列

K=Ko⊂K1⊂KZ⊂ … ⊂Kπ ⊂IR

が あ っ て,0≦2<nに 対 して,[瓦+1:Ki]=2ま た は3,か つ α ∈Knと な

る こ とで あ る.

まず,こ の命題の十分性を証明する.そ のために,以 下の補題を示す.

補題2.5.2あ る実数の部分体Kに 対 し,Kの 元が全て0作 図可能である

とき,Kを2次 拡大,も しくは3次 拡大 して得 られるLの 元は0作 図可能

である.

証 明Lの 元 αに対 して,1,α,α2,α3はK上1次 従 属 で あ る.し た が って,

少 な くと も1つ は0で ないKの 元 α,b,c,dを 用 い て,α α3+bat+α ∬+4=0

とで き る.つ ま り,α は3次 以 下 の 方 程 式axa+bx2+cx+d=0の 解 で あ

る.ゆ え に,命 題2.4.1,系2,4.4,系2.4.7か ら,α は0作 図 可 能 で あ る.□

以上 の結果 か ら,定 理2.5ユ の十分性 を示 す.

証 明(定 理2.5.1の 十分性)定 理2.5.1の よ うな体の列が作れた とす る.ま

ず,Qの 元 は全て0作 図可能 であ る.よ って,補 題2.5,2か ら,Qを 何 度か

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第2章 折 り紙作図 56

2次 拡 大 もし くは,3次 拡大 して得 られ るKiの 元 は全 て0作 図可能 で あ

る.し た が って,α ∈κηであったか ら,α は0作 図可能 であ る.以 上 か ら,

定 理2.5.1の 条件 の十分性 は成立 す る.〔]

次に,ε 作図の ときと同様にして,0作 図可能の再定義を行 う.た だし,

ε作図では点に注 目して定義を行 ったのに対 して,0作 図では,直 線の傾

きが作図できるか どうかを調べてきたので,直 線の傾きに注 目して以下の

命題を示す.

命 題2.5.3定 義2.1.2の 作 図法0に よ る,0作 図可能 性 は次 の よ うに言

い換 え る こ とが可能 であ る.

α を実 数 とす る.直 線 の列lo,ll,… 盃,…,伽 が あ っ て,

losy=0,ll:x=0,12:x=1

1g:〃=alx,・,ln+2:2」=Llnx

ln,:y=cxx

であ り,碩 乞=n+3,n+4,…,1>)が 次 のいずれ かを満 たす とき,ま たそ

の ときに限 って,α は0作 図可能 である.

(1)扇 よ,1≦5,ちp,q≦i-1で あ るs,ちP,4に 対 して,lzは,Z,とltの 交

点 と,lpとlqの 交 点 を通 る直 線 で あ る.

(2)liは,1≦5,ちp≦2-1で あ る8,ちpに 対 して,Z、 は,isとltの 交 点 か

ら,lpに 引 い た垂 線 で あ る.

(3)'Z、 は,1≦s,t,p,q,r≦2-1で あ る8,t,p,q,rに 対 し て,Z`は,isとltの

交点 か ら,ZpとLqの 交 点を焦点,lrを 準 線 とす る放 物線 へ引い た接線

であ る.

(4)堀 ま,1≦s,t,u,p,q,r≦2-1で あ るS,t,u,p,q,rに 対 し て,12Gま,Z3と

Z孟の交点 を焦 点,luを 準 線 とす る放 物線 と,ら とlqの 交点 を焦点,LT'C

準線 とす る放物線 の共通 接線 である.口

証明0作 図では基準 とな る長さを与 える2点P,Qが 与 え られ てい る.そ

の2点P,Qを 通 る直線 と,Pを 通 って,PQに 垂直 な直 線が それぞれloと

llで あ る.ま た,Qを 通 って 一PQに 垂直 な直線が12で ある.ゆ えに,lo,ll,12

はP,Qか ら0作 図可能 であ る.よ って,.Aの 代 わ りにlo,Z1,Z2か ら始

め る と考 えて もよい.

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第2章 折 り紙作図 57

このように考 えるとき,0作 図は全て,すでにある直線の交点および,す

でにある直線から

(1)2交 点を通る直線を折る.

(2)あ る交点を通 って,あ る直線へ垂線を折る.

(3)あ る直線の交点か ら,別のある交点を焦点,あ る直線を準線 とす る放

物線の接線を折る.

(4)あ る交点を焦点,あ る直線を準線 とする放物線と,別 の交点を焦点,別

の直線を準線 とする放物線の共通接線を折る./

のいずれかの手順によって直線を増や してい く作図なので,こ の言い換え

が同値であることは明らかである.口

さて,ε作図で作図法 εによって得 られる点の座標に注 目したの と同様

に して,直 交座標上で0作 図によって得 られ る直線の式の係数 がどのよ

うな体 に含 まれるかを考 える.た だし,直線の式の表示方法は唯一通 りで

はないので,次 の定義を用意する.

定義2.5.4直 線Z:ax+by+c=0に おいて,

(1)b≠0の ときは全体 をbで 割 り,yの 係数 を1に す る.

(2)b=0の ときは全体 をaで 割 り,xの 係数 を1に す る.

とで きる.こ の ような係数 を1の 標準係数 と呼ぶ ことにす る.□

以下,与 えられた直線の式の係数は全て標準係数 とする.そ こで,あ る

体Kを1つ 決めたとき,Kの 元を座標 とする点やKの 元を係数 とする直

線に対 して,作 図法0に よって得 られる直線の標準係数がどのような体

に含 まれ るかを調べ る

補題2.5.5平 行 でない2直 線Z1,12の 交点 の座標 は,Qにll,12の 標準係数

を付 加 した体 に含 まれ る.

証 明ll,12の 方程式 を

ll:alx+α2y+α3=0 12:blx+bey+b3=0

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第2章 折 り紙作図 58

とする と,この2直 線の交点の座標は,こ の2式 の連立方程式を解いて,

a2b3‐a3b2

x=

albe‐a2bl

で あ る.し たがって命題 は成立す る.

alba‐a3b1

雪=a2b1‐alb2

補 題2.5.6点P(pi,pz)と 点Q(ql,Q2)を 一κ 点 とす る.こ の とき,P,Qを 通

る直 線Zの 標 準 係 数 はKの 元 で あ る.

証 明Zの 方 程 式 を求 め る と,p1≠41の とき,〃=Pz-Q2(x-pl)+p2でpi-qi

あ り,p1=q1の とき,x=piな の で 明 らか で あ る.□

補 題2.5.7点P(P1,1ρ2)をK点,直 線Z=ax-1-by-{-c=0をK係 数 の直 線

とす る.こ の と き,-Pを 通 るZの 垂 線mの 方 程 式 はK係 数 で あ る.

証明 場合分けをして考える.

(1)b≠0の ときは,全 体 をbで 割 るこ とがで きるか ら始 めか らb=1と し

て よ い.つ ま り,雪=-ax‐cの と き.

(・).a。 ≠ ・の とき,mの 傾 き は1で あ り,mの 方程式 蜘 一1(x一

Pi)+pzで あ る.し たが って,mの 標準 係数 は明 らかにKの 元

であ る.

(1)-bα=0の と き,1:y=-cよ り,mは ッ軸 に 平 行 で,Pを 通 る直

線 で あ る.し た が って,mの 方 程 式 はx-pi=0な の で題 意 は

満 た され る 。

(2)e1の ときは,全 体 を αで割 る ことが でき るか ら始 めか ら α=・1と

して よい.つ ま り,1:x=-cよ り,mはx軸 に平行 で,Pを 通 る直線

であ る.し たが って,mの 方程式 はg-p2=0な ので題 意 は満 た され

る.口

2.4節 では,2つ の放物線の共通接線を折ることで3次 方程式が解 ける

ことを示 した.そ のとき用いた放物線は準線が座標軸に平行な場合であっ

たが,一般 に与えられた焦点,準 線で決まる2つ の放物線であっても,そ れ

らの共通接線の標準係数は,焦点の座標や準線の標準係数を含む体の3次

拡大の中に含まれ るのである.そのことを示す.

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第2章 折 り紙作図 59

補 題2.5.8Kを0作 図可能 な数 の集 合 と し,pi,p2,α,b,cをKの 元 とす る.

点P(p1,pa)を 焦 点,Z:ax+by+c=0を 準 線 とす る放 物 線 πの方 程 式 は,適

当 なKの 元4,B,c,D,E,Fを 用 い てAxe+Bx+Cy2+Dy+E鞠+F=0

と書 け る.

証 明 放 物線 の定義 か ら,π 上の点(x,〃)は 以 下を満 たす,

iα∬+勿+cie

したがって,

(x-p、)2+(y‐pa)2

(ax十by-1-c)2e(α2十 わ2){(x-pi)2十(〃-p2)2}(2.7)

〈・===>bZx2-2(αc十alpi十b2Pi)x一 トatz/2

一2(be十a2pa十b2p2)雪 一2abxy-←(α2十b2)(pi十P舞)-c2=0

とな る.こ こで,

A=b2

C=a2

E_‐2ab

B=-2(αc十 α2P1→-b2p2)

D=‐2(bc十a2pa十b2pa)

F=(α2+b2)(pi+2p2)-C2

とす る と,

Ax2+Bx+Cy2+Dy+Exy+F=0

と な り,A,B,C,D,E,F∈Kで あ る.[コ

次に,一 般の放物線 も適当な1次 変換 により準線が座標軸 と平行な放物

線に移せることを示す.

定秘 …(abcd)と する このとき,∫・爬 一麟

!(1)《1)

で与 えられる写像を1次 変換 とい う. 口

補題2.5.10あ る行列Aが 逆行列 を持つ こと,Aで 与 え られ る1次 変換 が

逆写 像 を持つ こと,及 び,detA≠0は 全 て同値 であ る.

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第2章 折 り紙作図 60

証明 ほ とんど明 らかなので,証 明は省略する.

このような1次 変換を正則 な1次 変換 という。

補 題2.5.11Kを 体 と し,pi,pa,α,b,cをKの 元 とす る.点P(pi,p2)を 焦

点,Z:ax+by+c=0を 準 線 とす る放 物 線 を π とす る.こ の とき,Kの

元 を係数 とす る正則 で!㈲=(o)と な る1次 変換!に 対 して,ノ(π)は,K

の元s,u,v(s≠0)を 用い て,次 のよ うに表す ことが でき る.

f(π):x=s(ツ ー 切2十v

証明A-(m'm"n'n")がf(1)-A(1)を 満たすとすると,

A(b/=(1)よ り

① 一A-1(1)

なのZA-1-ambn)と 書 ける このとき,点@齢)上 の点

で あ る こ と は,!}1(x,ω が π上 の 点 で あ る こ と と同 値 で あ る.つ ま り,

(ax+my,bx+ny)が π上 の 点 で あ るか ら,式(2.7)に 代 入 し て,

(x,ツ)∈f(π)

⇔{α(ax+吻+b(bx+吻+c}2

=(a2+b2){(ax-1-my‐pl)2+(bx+ny‐pa)Z}

⇔{(α2+う2)x+(・m+bn)㌢+・}2

-(α2+わ2){(・2+b2)♂+伽2+n2)〃2+2(am+bn)xy

‐2(apl十bp2)x‐2(mpl十np2)y十pi十p2}

⇔(α2十b2)2x2十(am十bn)2y2十2(α2-←b2)(am十bn)xy

十2(α2十b2)c∬ 十 ④ の1次 式)

一(α2+b2)2♂+(α2+b2)(m2+n2)〃2+2(α2+b2)(・m+bn)xy

-2(α2+δ2)(api+bp2)x+@の1次 式)

⇔{(・m+bn)2-(α2+b2)(m2-}-n2)}ず

=-2(α2+b2)(api+bpz+c)x+(〃 の1次 式)

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第2章 折 り紙作図 61

で あ る.こ こ で,

(αm十 わη)2-(α2+わ2)(m2-Fn2)

=一(a2n2-2abmn十 わzm2)

一 一(α 卜6m)2

な の で,〃2の 係 数 は0で は な い.さ ら に,xの 係 数(a2+b2)(api+δp2+c)

を 考 え る と,α,bは 直 線Zの 係 数 で あ る か ら,ど ち らか 一 方 は0で な い の

で,a2-1-b2は0で な い.ま た,点Pは π の 焦 点 よ り,i上 に は無 い の で,

αp1+bpa+cも0で は な い.よ っ て,xの 係 数 は0で は な い.し た が って,

!(π)の 式 は,s,s',s"(た だ し,5≠0)を 用 い て,

〃∬esy十8〃 十s

と表す こ とがで きる.ゆ えに,題 意 は成立 す る. 口

系2.5.12Kを 体 と し,a,b,cをKの 元 とす る.ま た,点P(p1,pa)を 焦 点,

直 線Z:ax+by+c=0を 準 線 とす る 放 物 線 を π とす る.

この とき,Kの 元 を係数 とす る正則 で!㈲=(Dと なる1次 変換 ノに

対 し,f(π)は 次 のよ うに表 され る.

∫(π)・9-s(x‐u)2+v(・,u,v∈K,s≠0)

証明9(1)一(1)と して.f'-9・!と すれ`弍

.f'Cb/=g(1)リ(1)で あ る.し た が って,補 題2.5.11か ら,焦 点P,準 線Zで 決 ま る放 物 線 πに対

して,∫'(π)は ∬=8@一 の2+vと 書 け る.よ っ て,f(π)=g・!'(π)よ り,

!(7「)・ 〃-s(x‐u)2+v

で あ る. 口

補題2.5.13Zを 直 線!:R2→R2を 体Kの 元 を係数 とす る正則 な1次

変i換であ る とす る。この とき,f(1)の 式 の係 数 がKの 元 で あれ ば,Zの 標

準係 数 もKの 元 であ る.

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第2章 折 り紙作図

証 明Kの 元p,q,r,8に 対 して,

f(1)一 オG) )98P

r(;

62

とす る.f(1>の 式 をax+by+c=0と す る と,Z上 の 点(x,y)に 対 して,!

が 正 則 で あ る こ とか ら,

(x,〃)∈z⇔!(x,〃)∈!(1)

⇔(P∬ 一トqy,rx十sy)∈f(の

で あ る.し た が っ て,Zの 式 はa(px+g〃)+b(rx+Sy)+c=0で あ る か ら,

x,影 に つ い て整 理 す れ ば,

(ap+br)x+(αq+わ8)〃+c=o (2.8)

で あ る.

ここで,式(2.8)の 係数 はKの 元の積 と和なのでKの 元である,し た

がって,標 準係数の定義か ら,置の標準係数が 一κの元であることは明 らか

である.口

命題2.5.14P,QをKの 元 を座標 とす る点,ZをKの 元 を係数 とす る直

線 とす る.こ の とき,Pを 焦点,」 を準 線 とす る放物 線 πに対 して,π に接

してQを 通 る直線mが あれ ば,mの 標準係数 はKの2次 拡大 に含 まれ る.

証 明Z:ax+吻+c=0と す る.1次 変 換 ∫:聡2→R2を,

ノ① 一壽 ¢マ)c)

とすると,fは 正則で係継 の元であり,!(1)一(1)で ある・

こ の と き,系2.5.12か ら,!(π)の 式 は,Kの 元s,u,vを 用 い て,

!(π)・ ッ ーs(x‐u)a+v

と書 け る.

!(Q):(p,q)と お く と,p,qはKの 元 で あ り,!は 正則 な の で,直 線!(m)

はf(π)に 接 して!(Q)を 通 る,こ のf(m)の 傾 きを κとす る と,f(m)が

!(Q)を 通 る ことか ら,∫(m)の 式 は,

f(m):y=k(x-p)+4

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第2章 折 り紙作図 63

と表 され る.!(m)がf(π)に 接す る条件 を求 めるため に,∫(m)とf(π)の

共 有点 を求 め る方程式 を考 える と,

k(x‐p)-1-q=s(x‐u)2-1-v

⇔k(x-u+レP)+4=s(x-u)2+v

で あ り,x-u=Xと お くと

sX2‐k.X+レ9一 ん(u-p)=0

で ある.こ こで,f(m)とf(c)が 接 す るための条件 は,判 別式 が0と なる こ

とであ るか ら,

k2+4s{k(u‐p)‐(v‐g)}=0

で あ る.よ って,kはK係 数 の2次 方程 式を満 たす.つ ま り,mが 存在 す

るな らば,f(m)の 傾 きkは,あ るKの 元 αに対 して,鳶 ∈K(轟)で ある.

f(m)は ッ=槍 一p)+qと 書 けるので,!(m)の 係 数 は全 てK(轟)の 元

で あ り,(ノ の係数)∈K⊂K(亟)だ か ら,補 題2.5.13よ り,mの 標準係

数 はK(轟)の 元 であ る.口

命 題2.5.15P,P'をK点,1,1'をKの 元 を 係 数 とす る,平 行 で な い2直

線 と し,次 の よ うに 定 め る.

P:(p,4')

、P':(pノ,q)

1:ax+by-1-c=O

l':痊十b'y-{-c'=0

この とき,P,1で 決 ま る放物線 π1とP',z'で 決 まる放物 線 π2の共通 接線 ん

の標 準係 数 はKの3次 拡大 に含 まれ る.

証 明 ま ず,Z,Z'は 平 行 で な い の で,ab'‐a'b≠0で あ る.そ こで,π1,π2に

対 し,正 則 な1次 変 換 ノ:R2→IR2を.

!(1)-A(1)た だしA-1(b'‐a' ‐ba)

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第2章 折 り紙作図

とす る と,!㈲

ノ(π1),f(π2)は

64

=(10),!(91)リ(Oi)よ り,補 題2.5.11,系2.5.12か ら

f(π 、)・x=s(y-u)2+v(s,u,vEK)

ノ(π、)・y=s'¢ 一 の2+v'(s',u',v'∈K)

と書 け る.さ らに,x軸 方 向に 一u',〃軸方 向 に 一v'だ け並行 移動す る写像

をhと すれ ば,

hof(π1):x=s(9-u+v')2+v-u'

ん 。!(π 、)・9-s'x2

とな る,こ の とき,補 題2.4.5か らhof(π1)とhof(π2)の 共通接 線k'の

傾 きはKの3次 拡大体K'に 含 まれ る。さ らに,1の 影切片 は補題2.4.5の

式(2.5)で 与 え られ るか ら,Zの ッ切 片 も同 じ3次 拡 大体K'に 含 まれ る.

さ らに,u',v'∈Kよ り,!㈹eh-1(ん')の 標準 係数 もK'に 含 まれ る.

つ ま り,∫㈹ の標準係数 はKを3次 拡大 して得 られた体 に含 まれる.よ っ

て,(ノ の係数)∈K⊂K'よ り,補 題2.5.13か ら,kの 傾 きはKの3次 拡大

体K'に 含 まれ る。 口

命題2.5.16P,P'をK点,♂,1'をKの 元 を係数 とす る平行 な2直 線 とし,

次 の よ うに定 める.

P:(p,g)

Pノ:(p',q')

Z:α ¢+吻+c=O

Z':α コじ+⑳+c'=0

この とき,P,♂ で決 まる放物 線 π1とP',1'で 決 ま る放物線 π2の 共通接 線

kの 標 準係 数 は,Kの2次 拡 大に含 まれ る.

証 明 π1,π2に 対 し,正 則 な1次 変 換!:飛2→ 飛2を

ノ(1)一 澄(1)た だし_1‐baAa2+b2ab)

とす る と,f(b)=(Oi)で あ る.よ って,系2.5.12か らg(π1),g(π2)は

!(π 、)・y=s(x-u)2+・(s,u,v∈K,s≠0)

f(π 、):y=s'(x-u')2+v'(8',�,v'∈K,s'≠0)

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第2章 折 り紙作図 65

と書 ける.ま た,∫㈹ の方程式を ッ=m¢+nと お く。そ こで,∫ ㈹ と!(π1)

の共 有点 のxを 求 め る方程式 を考 える と,

mx+n=s(x‐u)a+v

⇔m@-u+の+n-8(x-u)2+v

で あ る.こ こで,x-u=Xと お く と

8×2-mX+v-mu-n=0

で ある.こ こで!㈹ と 八π1)は接 す るので,こ の2次 方 程式 の判別 式 が0

とな る.よ って,mが 満 たすべ き条件 は,

m2‐4s(v‐mu‐n)=0(2.9)

で あ る.同 様 に,!㈹ と!(π2)が 接 す る た め のmが 満 た す べ き条 件 は,

m2‐4s'(v'‐m冝]n)=0(2.10)

で あ る.

した が っ て,式(2,9),式(2.10)か らnを 消 去 し て,mが ∫(π1),f(π2)の

共 通 接 線 とな る条 件 を 求 め る と,

('s-s)m2-485'{(u-%ノ)十(〆-t)m}=0

で あ る.よ っ て,mはK係 数 の2次 方 程 式 を 満 たす 。つ ま り,ん が存 在 す

る な らば,!㈹ の傾 きmは,あ るKの 元 αに対 して,m∈K(轟)で あ る.

さ ら に,式(2.9)か ら,

m2n=mu‐v--4

s

であるか ら,!㈹ の 雪切片nもKの2次 拡大に含 まれる.し たがって,

(!の 係数)∈K⊂K(轟)だ から,補 題2.5.13よ り,鳶の標準係数 はKの

2次 拡大 に含まれる.し たがって,kの 標準係数はKの2次 拡大に含まれ

る.口

以 上 の結 果を用 いて,定 理25.1の 必要性 を示す.

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第2章 折 り紙作図 66

証 明(定 理2.5.1の 必 要 性)実 数 αが0作 図 可 能 で あ る とす る と,命 題

2.5.3の よ うに直 線lo,11,12,…,Zπ の各liが あ っ て,

Z。・〃=0,Z、 ・x=0,12:x=1か つln・y=cxx

で あ り,ら が 次 の い ず れ か を 満 た す よ う に 取 れ る.

(1)Z`は,1≦s,t,p,q≦i-1で あ るs,t,P,qに 対 し て,Z哲 は,1,とltの 交

点 と,lpとlqの 交 点 を通 る直 線 で あ る.

(2)晒 よ,1≦s,t,p≦2-1で あ るs,t,pに 対 して,liは,isとltの 交 点 か

ら,Lpに 引 い た 垂 線 で あ る.

(3)IEは,1≦s,t,p,q,r≦2-1で あ るs,t,pに 対 し て,Z,は,isとiε の 交

点 か ら,lpとiqの 交点 を焦点,ITを 準 線 とす る放 物線へ 引い た接線 で

ある.

(4)婦 ま,1≦s,t,u,p,q,r≦i-1で あ るs,t,u,p,q,rに 対 し て,liは,ISと

♂孟の交点 を焦点,㌔ を準 線 とす る放物線 と,ら とZqの 交 点を焦点,lrを

準 線 とす る放物線 の共 通接線 である.

この と き,体Ko~KnをKo=◎,瓦+1=KZ(lz+1の 標 準 係 数)の よ う

に 順 次 定 め て い く と,補 題2.5.5,補 題2.5.6,補 題2.5.7,命 題2.5.14,命 題

2.5.15及 び,命 題2.5.16か ら,[Ki+1:瓦]=1,2ま た は3か つ α ∈ κπで

あ る.し た が っ て αが0作 図 可 能 で あ る とす る と,定 理2.5、1の よ うなQ

を 次 々 に2ま た は3次 拡 大 して得 られ る適 当 な 体 の列 が作 れ る の で,定 理

2.5.1の 必 要 性 も成 り立 っ.□

特 に,命 題2,5.15,命 題2.5.16か ら,2.2節 で述べ た2つ の放物 線の共通

接線 の本数 は,そ の放 物線 が どの よ うな放 物線 であ っても,そ の共通接線

は最大 で も3本 しか引 けない ことが分 か った(図2.29参 照).

系2.5.170作 図 におい て,既 約 な有理 係数 の5次 方程 式!(x)=0を 解

くこ とは,一 般的 には不可 能 であ る.

証明f(勾=0の 解 の1つ を ρとお くと,f(勾 は既約な有理係数 の多項 式

なので,命 題1.2.4か ら[Q(ρ):K]=5で あ る.

も しも ρが0作 図可能 な らば,定 理2.5.1の よ うな適 当な体 の列

Q=κ0⊂K1⊂K2⊂ …Kn⊂IL8

([瓦:K2-1]=2ま た は3,α ∈ κ の

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第2章 折 り紙作図 67

図2.29:共 通接線 の数

が 作 れ る.こ の とき,命 題1.2.7か ら,

[Kπ:(Q]=[1(π:κ 冗_1]。 ・[K1:(Q≧ 】=2P39(p十q=n)

で あ る.

一方,Q(ρ)⊂ κπよ り,[κπ:Q]=[κ がQ(ρ)1[Q(ρ):K]と で きて,2P34

が5で 割 り切れ る ことにな り矛盾す る.し たが って,0作 図で既約 な有理

係数 の5次 方程式!@)=0を 解 くこ とは不可 能で ある.口

0作 図において,Qを2次 拡大や3次 拡大した体の元が作図できること

は,指 定 した条件を満たす折 り目が2本 や3本 であるような作図手順を0

作図が含む ことと対応 している.し たがって,5次 方程式の解を0作 図す

るためには,条 件を満たす折 り目が5本 現れるような折 り方の指定方法を

考える必要があると予想される.

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68

第3章 ガロア理論と作図可能性

2章 までの考察で分かったことは,あ る実数 αが,基 準の長さ1か ら0

作図できるとい うことの必要十分条件は,適 当な体の列

Q=Ko⊂K1⊂KZ⊂ ・ ・⊂Kn⊂R

が あって,0≦2<nに 対 して,[KZ+1:Ki]=2ま た は3,か つ α∈Knと な

る こ とであ った.し か し,こ の条 件で は,例 えば既 約 な有 理係数 の5次 方

程式 の解が0作 図できない ことが分 かって も,6次 方程式 の解が一般 的 に

0作 図で きるか どうかは直 ちに判 定 できない,そ こで この章で は,こ の条

件 を さ らに詳 しく考察 す るために,ガ ロア理論 につ いて述べ る.

ガロア理論 は,正 規拡大 と呼ばれ る,あ るよい性質を もった体 の拡大

E⊃Kに おいて展開される理論である.K上 のEの 自己同型群 と呼ばれ

る群をGと すると,こ の理論は,KとEの 中間体 と,(7の 部分群 との間に

表裏の関係があることを主張する.こ の理論によって,例 えば5次 以上の

方程式の解が一般には0作 図できないことが分かる.・この章 では,ガ ロア理論の構成をまとめることを目標 とする.そ して,

ガロア理論を用いて,ε作図や0作 図による作図可能性のより詳細な判定

条件を考察する.ま た,以 下は群の知識を必要 とするが,群 の基本的事項

は付録にまとめた.

3.1同 型写像 と不変体

ガロア理論の構成については様々な手法があるが,こ こではE.ア ルティ

ン[4]に よる構成にならう.こ の方法は,線形代数の手法を巧みに用いてお

り,わずかな代数学の予備知識からガロア理論を構成することができる.

ある体Lか らある体Kへ の全ての写像の集合

Map(L,κ)={σ=五 一→K}

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 69

を考 え る.Map(L,K)の 元 σ,σ'とKの 元 κに対 して,新 た なMap(L,K)

の元 σ+σ'とkQを,五 の 元xに 対 して,

(σ+σ')(勾 一 σ@)+σ'(x)

(んσ)(x)ニk(σ(x))

とな る写像 とすれ ば,Map(五,K)がK上 のベ ク トル空 間で ある こ とが容

易 に確認 でき る.こ のMap(L,K)の 特別 な元 として,次 を考 え る.

定 義3.1.1KとLを 体,L*をLか ら0を 除い た集合 とす る.こ の とき,L*

は乗法 に関 して群 をな し,Lの 乗法群 と呼ばれ る.ま た,写 像 σ:L*一 →K

がL*の 任意 の元 α,βに対 して

σ(αβ)=σ(α)・ σ(β)

を満 たす とき,σ をKに おけ る ひ の指標 とい う.た だ し,L*の 任 意 の元

αに対 して σ(α)≠0で あ る とす る.口

ここで は,指 標 はL*か らKへ の写像 であ るが,今 後,指 標 をMap(L,K)

の元 と考 え るために,

σ(o)●1

とす る こ とで,σ をLか らKへ の写像 に拡張 して お く.こ の よ うな定義 の

も とで は,指 標 は次 のよ うな著 しい性 質が ある.

定 理3.1.2L,Kを 体 とす る.こ の と き,Kに お け るLの 異 な る 指 標

σ1,σ2,…,σ 。は,Map(L,K)に お い て1次 独 立 で あ る.つ ま り,Kの 元

α1,α2,…,α ηに 対 して,

α、σ、@)+α2σ2(x)+…+α 。σ。ω=0

がLの 任意の元xに 対 して成立 しているときは,

a1=a2=...=an=0

(3.1)

で あ る.

証 明nに つ い て の 帰 納 法 で証 明 を行 う.n=1の とき,α1σ1@)●1と す

る と,x≠0の と き,σ1(勾 ≠0で あ るか ら,α1=0で あ る.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 70

次 に,n〈kの とき,定 理 が成 り立 つ として,n=kの ときを考 える.ま

ず,式(3.1)が 全 て のKの 元xに つ いて成 り立 つ と仮定 す る。Lの 元 αに

対 して,式(3.1)のxに α諮を代入す る と,

α、σ、(α)σ、(x)-f-a2Q2(α)σ2(x)+…+α 鳶σた(α)σ南(勾=0

で あ る.一 方 で,式(3.1)の 両 辺 に σん(α)を か け る と,

α、σk(α)σ、(鎧)+α2σ ん(α)σ2(勾+…+α 纏(α)σ た@)=0

で あ る.そ こ で,式(3.2)か ら式(3.3)を 引 くと,

(3.2)

(3.3)

al{σ 、(α)一 σ鳶(α)}σ・(x)+…+α 鳶一・{6k-・(α)-9た(α)}σ た一・(勾 二 〇

(3.4)

で あ る.こ こで,帰 納 法 の 仮 定 か ら,ai{σ 歪(α)一σk(α)}=0(i=1~ ん一1)

で あ る.特 に,α1{σ1(α)一 σん(α)}=0で あ る.と こ ろ で,σ1,…,σ んは異

な る指 標 な の で,σ1(α)一 σん(α)≠0で あ る よ うな αが 存 在 す る.そ の よ う

な α を用 い る と,α1=0で あ る.こ れ を式(3.1)に 代 入 して,再 び 帰納 法 の

仮 定 を 用 い る と,α2=…=α ド0で あ る.[コ

ガロア理論では,あ る体Eの 自己同型写像 と呼ばれる写像が重要な役

割を果たす.

定 義3.1.3K,K'を 体,σ を.κ か らK'へ の写 像 とす る.Kの 任 意 の元 α,

βに 対 して,σ が

(1)σ(α+β)=σ(α)+σ(β)

(2)σ(α β)=σ(α)・ σ(β)

(3)σ(1)≠0

を満 たす とす る.こ の と き,0で な いKの 元 αに 対 して,σ(α)≠0で あ る.

な ぜ な ら,も し も,α ≠0か つ,σ(α)=0で あ る とす る と,

σ(1)一 σ(αα一1)一 σ(α)σ(α一1)-0

とな って,(3)に 矛 盾 す る か らで あ る.よ って,(3)を 以 下 の よ うに 変 え て も

上 記 の3条 件 は 同 値 で あ る.

(3)'α ≠0な らば σ(α)≠0

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 71

この よ うな写像 σは単射 である.実 際 σ(α)=σ(β)な らば

o=σ(α)一 σ(β)=σ(.G)

で あ る.よ っ て(3)'の 対 偶 に よ り α 一 β=0で あ る か ら,α=β を得 る.

この よ うに,上 記 の(1)~(3)を 満 たす σを,Kか らK'へ の中へ の同型

写像 とい う,さ らに,こ の σが全射 でもあ るとき,σ をKか らK'へ の上へ

の 同型 写像,ま たは,単 に同型写像 とい う.ま た,Kか らK'へ の上 への 同

型写像 が存在 す る とき,KとK'は 同型 であ る とい う.特 に,K=K'の と

き,σ を 自己同型写像 といい,Kの 自己 同型写像全体の なす集合 をAut(K)

と書 く.口

定 義3.1.3の(3)の 意 味につ いて考 える.今 仮 に,同 型 の定義 の(1)と(2)

は満 たす σが,(3)は 満 たさない とす る.つ ま り,Kの1つ の元 α≠0に 対

して σ(1)=0と す る と,任 意 のKの 元 αに対 して

σ(α)=σ(1・ α)=0・ σ(α)=0

であ るか ら,K全 体 が0に 写像 されて しま う.し か し,こ のよ うな写像 は,今

回の考察 では意味 のない写像なので,(3)の 条件が定義 に加 え られてい る.

補 題3.1.4.κ を体 とす る.こ のとき,Aut(K)は 写像 の合成 に関 して群 を

なす.

証 明Aut(K)の 任意 の元 σ1,σ2に対 して,σ1・ σ2がAut(K)の 元 である

こ とは明 らかであ る.ま た,単 位元 は恒等 写像 であ る.さ らに,自 己 同型

写 像 は全 単射 で あるか ら,σ1-1も 自己 同型 写像 であ る こ とは容易 に確認

で きる.口

さて,同 型写像の満たす性質について考える.上記のような定義のもと

で,同 型写像には以下のような性質がある.

補 題3.1.5K,Lを 体 とす る.こ の とき,任 意 の有 理数 αはKか らLへ の

中へ の 同型写像 σに対 して,σ(α)=α であ る,つ ま り,有 理数 は σで不変

で あ る.

証明 まず,整 数 が σで不変 である ことを示 す.は じめに,

σ(1)=σ(1・1)=σ(1)m(1)

σ(0)=σ(0+0)一 σ(0)+σ(0)

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第3章 ガ ロア 理 論 と作 図 可 能 性

よ り,σ(1)=1,σ(0)=0で あ る,さ ら に,

σ(2)=σ(1)十 σ(1)ニ1十1==2

σ(3)=σ(2)十 σ(1)=2十1=3

σ(4)=σ(3)十 σ(1)=3十1=4

72

で あ るか ら,任 意の 自然数 ηは σで不変 であ る.さ らに,

σ(o)=σ(n+←n))=σ(n)+σ(-n)=n+σ ←n)=o

よ り,σ(-n)=-nで あ る.ゆ え に,任 意 の 整 数 は σで 不 変 で あ る.

次 に,

σ(・)一 σ(1cti・‐a)一 σ(α)・σ(表)=1

より,σ(1α)は σ(α)の積に関する逆元で σ(餅 σ毒)が成 り立っ

よ って,任 意 の整 数 α,b(b≠0)に 対 して,

・(ab)一 瑠 一号

よ り,有 理 数 も σで不 変 である.口

系3.1.6σ を体Kか らK'の 中へ の同型 写像 とす る.こ の とき,Kの 元 α

が有 理係 数 の多項 式f(x)の 根 で あるな らば,σ(α)も!(x)の 根 である.

証 明 まず,有 理係数 の多項式!(勾 を

!@)一 α。♂+・ 。一、♂-1+…+α 。

とお く.こ の とき,α は ノ(勾 の 根 よ り,

α。αn+α 。一、♂-1+…+α 。●1

で あ る.こ こ で,両 辺 に σを 施 す と,σ は 同型 写 像 な の で,補 題3.1.5か ら,

CLnU(α)n+an-、 σ(α)n-1+…+a。-0

で あ る.し た が っ て,題 意 は 成 立 す る.口

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第3章 ガロア理論 と作図可能性

以下に,自 己同型写像の例を挙げる.

(例1)Cか らCへ の複素共役 という写像 σ

σ:m→(C,σ(z)=z

を 考 え る.ま ず,σ(1)≠0は 明 らか.ま た,cCの 元 α,β に対 して,

a+゚=a+゚

a゚=a・゚

であるか ら,σが自己同型写像であることは容易に確認できる.

(例2)Q(而)の 自己同型写像 σを考える.

73

まず,補 題3.1.5で みた よ う

に,◎ の元 は σで動 か ない.ま た,命 題1.2.4か らQ(西)の 元 は有理 数 α,

bを 用 い て α+~ 厄bと 書 けるか ら,σ は 而 の移 り先で決 ま って しま う.

西 はx2-2=0の 解 であるか ら,系3.1.6よ り,σ(轟)も ∬2-2=0の

解 で ある.し たが って,Vづ の行 き先 は 西 か 一轟 である.よ って,Q(西)

の 自己同型写像 は

而 一→V冨

而 一3->2

の高々2通 りである.σ(西)=西 の ときは7明 らかに σは恒等写像であ る.

そ こで,σ(轟)=一 ~厚 とな る 自己 同型写像 が存 在 す る こ とを確認 す

る.実 際 に,σ(而)=一>2と す れ ば,σ(1)≠0は 明 らか.ま た,Qの 元

a,b,α',b'に 対 して,Q(轟)の2つ の 元 を α=α+V励 と β=α'+V㊥ わ'と

す る.こ の とき,Q(西)の 元 の 和 の写 像 は,

σ(α+β)=σ(・+>2b+・'+>2b')

一(α+・')一 西(b+b')

一(・ 一>2わ)+(・L・ 厄b')

=σ(α)+σ(β)

で あ り,Q(而)の 元 の積 の 写 像 は,

σ(αβ)一 σ((・+・ 働(・'+〉 僖6'))

一 ・((αα'+2bb')+~ 厄(・b'+・'わ))

一(・ ・'+2bb')一 而(・ わ'+・'わ)

一(・ 一 ~働(・L~ 痂')

=σ(α)・ σ(β)

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 74

で あるか ら,σ はQの 自己同型写像 で ある.

一般 に,Q(α1,α2,…,α η)の 自己同型写像 σは 砺 の移 り先で決 まる.a2

の像 は,系3⊥6か ら α、を解 に持つ方 程式 と同 じ方程 式 の解 で ある.よ っ

て今後 は,Q(α 、,α2,…,αη)の 自己 同型 写像 を示 す とき,σ(α∂が 防 にな

る とすれ ば,σ を 偽 一→ βゴとい うよ うに,砺 の移 り先 のみ で表 す ことが

あ る.た だ し,azの 移 り先 を任意 に指 定 した とき,そ の よ うな 自己同型写

像 の存 在 は保 障 されない ことに注意 す る.

定 義3.1.7E,E'を 体 と す る.

σ1,σ2,…,砺 に 対 し て,

この とき,Eか らE'の 中へ の 同型 写像

σ、(α)=σ2(α)=…=σ 。(α)

とな る よ うな,Eの 元 αをEの σ1,σ2,…,6nに 関 す る不 変 要 素 とい う.

特 に,E=E'で σ1,σ2,一 ・,σ.の 中 に恒 等 写 像 が含 まれ て い る とき(仮

に,σ1を 恒 等 写 像 とす る),

α 一 σ、(α);σ2(α)ニ … 一 σ。(α)

であることから,こ のよ うなEの 元 αに対 してネ変要素 とい う名前がっ

け られ てい る. 口

補 題3.1.8体Eか ら体E'の 中へ の同型写像 σ1,σ2,・・,6nに 関す る不変

要素 の集合 はEの 部分体 である.

証明 α,bを不 変要素 とす る と,

Qg(α ±b)一 σ・(の 土 σ・㈲ 一 σゴ(・)± σゴ㈲ 一 σゴ(α土 の

62(α の=62(α)・6�(b)=σ ゴ(α)・σゴ(b)=σ ゴ(ab)

で あ る.ま た,σ 盛(b)≠0な らば,

の(ab)一瑠 一瑠 一ら(号)

であ る.し たが って,不 変 要 素の和,差,積,商 は,ま た不 変 要素 であ り,

σ1,σ2,…,σ 。に 関す る不 変 要 素 の 集 合 はEの 部 分 体 で あ る.

この よ うな 部 分 体 を σ1,σ2,…,σnに 関 す る 不 変 体 とい う.

今後 体Eか ら体E'へ の同型写像の不変体Kと したとき,K上 のEの

次元を考えたい。そのために,σ線 形写像の概念を導入する.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 75

定義3.1.9K,Eを 体,VをK上 のベ ク トル空 間 とす る.ま た,σ:K-→

Eを 申へ の同型 とす る.任 意のKの 元kと,Vの 元x,雪 に対 して,V『か ら

Eへ の写像 ノが,次 の2つ,

(1)∫(x十y)=!(の 十∫ω

(2)!(kx)=σ(k)・ プ「(x)

を満 た す とき,!を σ一線 形 写像 とい う. 口

補題3.1.10K,Eを 体,VをK上 のベ ク トル空 間 とし,σ:K-→Eを

中へ の同型 とす る.ま た,f,gをLの 元,α をEの 元 とす る.こ の とき,σ一

線 形写 像全体 の なす集合Lは,Lの 元 の和 ノ+gと,α によ るス カ ラー倍

を次 の よ うに定 め る ことに よ り,-E上 のベ ク トル空 間 とな る.

(1)(!十9)(x)=ノ(x)十9(x)

(2)(α!)(x)=α!(x)

証 明!+gと α!が,σ 線 形写像 になる こ とを示 す.

まず,(1)に 関 して,v『の元をx,ッ とし,Kの 元 をkと す る と,Vの 元 の

和 の写 像 は,

(!十9)(x十21)=∫(x十eノ)十9(x十9)

一 .f(x)十!ω 十y(x)十9ω

=∫@)+9(x)+!ω 十9ω

;(f十9)(勾 十(ア 十9)(〃)

で あ り,Vの 元 のスカラー倍 の写像 は,

(f十9)(kx);f(ん 勾 十9(ん勾

一 σ㈹!(勾+σ ㈹9(x)

一 σ㈹(f+9)@)

で あ るか ら,σ線 形 写像で ある.

次 に,(2)に 関 して,Vの 元 をx,〃 とし,Kの 元 を ん,Eの 元 を α とす る

と,Vの 元 の和 の写 像 は,

(af)(x-f-y)=α!@+y)

=α{f(x)+掬)}

=(α!)(x)+(α ノ)ω

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 76

で あ り,Vの 元 のスカ ラー倍 の写像 は,

(αア)(爾=α!(ん 勾

;α σ㈹!(x)

=σ(κ)(α ノ)(勾

よ り,や は りσ線 形写像 であ る.

また,こ の定義のもとで,Lが ベ クトル空間の定義の条件を満たすこと

は容易に確認できる.口

補題3.1.11K,Eを 体,σ:K-→Eを 中へ の 同型写 像,vをK上 のベ

ク トル空 間 とす る.こ の とき,σ線 形 写像 プ:V-→EはVの 基底 の行 き

先 で決 ま る.口

証 明Vの 基 底al,az,…,anに 対 して2つ の σ一線 形 写 像.f,gが ノ(α∂=

g(α∂ を 満 た す とす る.こ の と き,Vの 任 意 の元xはKの 元 紐,ん2,…,kn

を用 い て,

と書 け るか ら,

x=kaal+kZa2+…+砺 απ

!(勾=f(k・a・)+!(k2a2)+…+f(ん 。α。)

=σ(焉 、)f(a、)+σ(ん2)!(α2)+

=σ(k、)9(α 、)+σ(k2)9(α2)+・

=9(x)

とな って,題 意は成立 す る.

…+σ(砺)f(a n)

・・+σ(砺)9(an)

定 理3.1.12体Eか ら体E'へ の 中 へ の 同型 写 像 σ1,σ2,…,σ 。の不 変 体

をKと す る と,[.E:K]≧nで あ る.

証 明Eか らE'へ の 中 へ の 同型 は,E'に お け るE*の 指 標 で あ る.し た

が って,定 理3.1.2よ り σ1,σ2,…,σ ηは,E}'上1次 独 立 で あ る.そ こで,背

理 法 を 用 い て,仮 に[.E=K]=r<nと した と き,σ1,σ2,…,Qnが1次 従

属 とな る こ とで,矛 盾 を示 す こ とに す る.そ の た め に は,少 な く と も1つ

は0で ないEノ の元xl,x2,…,賜 に対 して,

ψ=∬1σ1+∬2σ2+…+賜 ση

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 77

が,望 ≡0と な れ ば よい.そ こで,そ うな る よ うなxl,晦,…,り じπを探 す.

ま ず,σ1,σ2,…,σ ηはK上 で は一 致 す る.よ って,σ1,σ2,…,σ πをK

に制 限 した 写 像 を σ とす る.そ の とき,Eの 元 α,β とKの 元kに 対 して,

σ¢(2e1,2,…,n)は

σ盛(α+β)=σ 乞(α)+σ 葛(β)

σ盛(ka)=σ,㈹ ・σf(α)=σ(k)Qi(α)

で あ る か ら,σ1,σ2,…,σ 。は σ一線 形 写 像 で あ る.よ って,補 題3.1.10か ら,

σ一線 形 写 像 の 全 体 がE'上 のベ ク トル 空 間 で あ る こ とを考 えれ ば,ψ も σ一

線 形 写 像 で あ る.こ こで,EのK上 の基 底 を ω1,ω2,…,蛎 とす る と,補

題3.1.11か ら,曽 ≡0で あ る こ とは,ψ(ω1)=¢(ω2)e…=妖 ω。)●1で

あ る こ と と同値 で あ る.つ ま り,こ の定 理 を 背 理 法 で示 す に は,

σ、(ω、)∬・+σ2(ω 、)x2+…+σ 。(ω、)xnニ0

σ、(ω2)x・+σ2(ω2)∬2+・ ・+σ 。(ω2)xn=0

(3.5)

σ、(ω。)x、+σ2(ω 。)x2+…+σ 孔(ω。)簸=0

が,自 明 で ない 解xl,x2,…,賜 ∈E'を 持 て ば よ い,r〈nよ り,文 字 の数

よ りも式 の 数 の 方 が 少 ない の で,式(3.5)を 満 たす,少 な く と も1つ は0で

な いxl,x2,…,賜 が 存 在 す る(定 理A.3.5参 照).し た が っ て,定 理3.1.2

か ら σ1,σ2,…,σ πがK上1次 独 立 で あ る こ と と矛 盾 す る の で,題 意 は成

立 す る.口

定理3.1.12に おいて,の はEか ら 一E'への 中への 同型 写像 で あった が,

特別 な場合 として,E=E',σ1を 恒等写像 とし,そ の他 の σ、をEか らE

へ の 自己 同型写像 と考 え る.こ の とき,定 理3.1.12に おいて等 号が成立 す

るのは どの よ うな ときかを考 えた い.

Eの 自己 同型写像 を σ1(=幼,σ2,…,σ πと して,そ の不 変体 をKと す

る.こ の とき,Kの 元kは6iに 対 して σ1㈹=ん と文 字通 り不 変 なの で,

σ乞とσ」の合 成や,σ、の逆変換 に関 して も不 変 であ る,よ って,定 理3.1.12

の結果 か ら,Eの 自己 同型写像6zの 個数 とEのK上 の次元 が完全 に一 致

す るため には,σ1,σ2,…,σ 。が写像 の合 成や,逆 変換 に関 して閉 じてい る,

つ ま り,σ1,σ2,…,σ 。が写像の合 成に関 して群 をなす必要 が ある.以 下 で

は,そ の こ とを示す ことを 目標 とす る.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 78

まずは,そ のような自己同型写像の集合の具体的な例を考える.例 えば,

Q(V僖,~厄)の 自己同型写像を考える.Vう と調 は,そ れぞれ

xz-2=Ox2-3=0

の解 であ るか ら,Q(>2,V冨)の 自己 同型写像 で,

σ1=id

σ、(而)一 一>2σ 、(語)一 ・徳

σ,(而)-V冨 σ、(而)一 一~徳

σ、(而)一 一》至 σ、(語)一 一>3

を満 たす,σ1,σ2,σ3,σ4が存在 し,そ れ らが,写 像 の合 成 に関 して群 を成 す

こ とは容易 に確認 でき る.

定 義3.1.13σ1,σ2,…,σ 。を体Eの 自己 同型 写像 とす る.{σ1,σ2,…,砺}

がAut(E)の 部 分 群 に な っ てい る とき,Eの 元 αに 対 して

s(α)=σ 、(α)+σ2(α)+…+σ 。(α)

を αの トレー ス とい う. 口

補 題3.1.14σ1,σ2,…,σ 。を体Eの 自 己 同型 写 像 とす る.ま た,(77=

{σ1,σ2,…,砺}がAut(E)の 部分 群 に な っ て い て,(7の 不 変 体 をKと す

る.こ の と き,Eの 任 意 の元 αに対 して,α の トレー ス はKの 元 で あ る.

証 明Gの 元 の をS(α)に かける と,付 録 の系A.4.5に ある よ うに,

σ琶3(α)=σ 、σ、(α)+QiQ2(α)+…+Qi�(α)

=σ 、(α)+σ2(α)+…+σ 。(α)

=s(a)

で あ るか ら,s(α)はGの 元 の によ って不変 で ある.し た が って,α の ト

レー スはKの 元で ある.□

定 理3.1.15σ1,σ2,…,σ 。を体Eの 自己 同型 写 像 とす る.こ の とき,G=

{σ1,σ2,…,σ π}をAut(E)の 部 分 群 と し,Gの 不 変 体 をKと す る と,[E:

K】=nで あ る.

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第3章 ガロア理論と作図可能性 79

証 明 定 理3.1.12よ り,[E:K)≧nで あ るか ら,n+1個 のEの 任 意 の

元 α1,α2,…,α 。+1がK上1次 従 属 で あ る こ とを 示 せ ば よい.今,Eの 元

xl,x2,…,鞠+1に 関 す る連 立 方 程 式,

x、 σ、-1(α 、)+x、 σ、-1(α,)+…+xn+、 σ、-1(α 。+、)-O

x、 σ、-1(α 、)枕 、σ、-1(α 、)+…+xn+、 σ,-1(α 。+、)-0

苅 σ。-1(α 、)+x2�-L(α 、)+…+xn+、 σガ1(α 叶 、)-0

(3.6)

を考 え る と,未 知 数 の数 の方 が方 程式 の数 よ りも多 い ので,式(3,6)はE

内に 自明 でない解を持 つ(定 理A.3.5参 照).こ こで,番 号を改 めて,∬1≠0

とす る.xl,x2,…,xn+1にEの 任意 の元 をか けて も解 とな るの で,x1を

Eの 任意 に指 定 した元 に取 る こ とが で きる.定 理3.1.12に 注 意す れ ば,

S(xl)≠0と な るよ うに取 る ことが できる.

式(3.6)の2番 目の式 に σ,をかけ る と

σ、@、)α 、+σ1(即2)α2+…+σ 、@。+、)α 。+、=0

σ2(xl)α 、+σ2(x2)α2+…+σ2(xn+、)α 。+1=0

σ。@、)α 、+σ π(x2)α2+…+σ 。(xn+、)α 。+、=0

で あ る.こ れ を縦 に加 える と,

s(xl)α 、+S(x2)α2+…+S(恥 、)α。+、●/

で あ る.S(∬ ∂ はKの 元 か つ,S(xl)≠0よ り,α1,α2,…,α 叶1はK上1

次 従 属 で あ る.し た が って,題 意 は成 立 す る.口

3.2正 規拡大とガロア理論の基本定理

ガロア理論は,体K上 の正規拡大体 と呼ばれる体上で展開される理論

である.そ こでまず,正 規拡大の定義を行 う.

定 義32.1体K上 のあ る拡大体Eが あ って,KがAut(E)の 有 限部分 群

Gの 不 変体 にな ってい る とき,ElをK上 の正規拡 大 とい う.□

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 80

どの ような拡大体が正規拡大であるかを考える。これまでに出てきた,

Q(西)やQ(V冨,~ 原)はQ上 の正規拡大である.な ぜな ら,Q(西)の 自己

同型写像 は

σ1:V冨 一→ ~厄

O'2:yG-3-yG

の2通 りである こ とは前述 の通 りであ るが,こ れ らが群 θ を なす ことは

明 らか で あ り,こ のGの 不変 体はQで あ るか らであ る.ま た,(Q(V冨,V雪)

の 自己 同型写像 は,

酒而順

=

=

=

罵溜

σ

σ

σ

σ

語調調

=

=

=

σ

σ

σ

の高 々4通 りで あるが,こ れ らは全 て 自己 同型 写像 とな っていて,群Gを

なす.そ して,そ の ときのGの 不変 体は,明 らかにQで あるか らであ る.

さて,◎(酒)の 自己同型 写像を考 える.32は,

x3-2=0

の解 であ る.よ って,系3.1.6か ら,1の 原始3乗 根 θ聖 を ω とす る と,32

の移 り先 は32か,s2wかs2w2で あ る.し か し,@(32)は ωを含 まない

の で,結 局,Q(砺)の 自己 同型写 像 は恒等写像 しか存 在 しない.し たが っ

て,QはAut(Q(糎))の 部分群 の不変体 とな り得 ず,Q(3n)は ◎上 の正規

拡 大 で はない.

今後 のた めに記 号 を2つ 定義す る.K上 の拡大体Eに 対 して,Kを 不

変 にす るEの 自己同型写像 のなす群 をAut(E/K)と 書 く.ま た,Eの 自

己 同型 写 像を元 とす る群(穿 に対 して,Gで 不変 なEの 部分 体 をEGと 書

く ことにす る.こ の とき,上 記 のQ(V冨,~ 唐)の 例 を も とにすれ ば,

Aut(Q(v僖,~ 徳)/Q)={61,σ2,σ3,σ4}

Q(v竃 ~%3)A・t(Q(禰 渦/Q)-Q

で あ る.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 81

ここで,Aut(E)の2つ の部分 群G'⊂Gに 対 して,EGとEG'の 包含 関

係 を考 え る と,EGの 任意 の元 はG'で 不変 で あるか ら,EG⊂EG,で あ る.

っ ま り,Aut(E)の 部分群 の包含 関係 と,そ れ らの群 の不変 体 の包含 関係

は丁 度逆 になってい る.

補題3.2.2Kを 体,EをK上 の有 限次 拡大体 とす る.こ の とき,EがK

上 の正規 拡大 であ るこ との必要十分 条件 は,EAut(E/K)=Kで あ る.

証 明Eerut(E/K)=Kで あれば,EがK上 の正規拡 大 であ る ことは定 義

か ら明 らか である.一 方 で

,EがK上 の正規拡大 である とす る.こ の とき,Kの 任意 の元 は

Aut(E/K)で 不変 よ り,

K⊂EA・t(E/K) (3.7)

である.と ころで,EはK上 の正規拡大であ ると仮定 してい て,Aut(E/K)

はKを 不 変 にす る よ うな群 であ ったか ら,G⊂Aut(E/K)で あ る ような

Gが 存 在 して,-EG=Kで あ る.こ の とき,

EAut(E/K)CEG=K (3.8)

で あ る.し た が って,式(3.7)と 式(3.8)か ら,EAut(E/K)=Kで あ る.口

さて,章 の始めに述べ たように,ガ ロア理論 では,体K上 の正規拡大体E

に対 し,そ の中間体 と,Aut(E/K)の 部分群 との間には表裏の関係 があるこ

とが主張 され る.そ こで,具 体的 にそ の関係 を述 べ よう.ま ず,Aut(E/K)

の部 分群全 体の集 合をu,Eの 中間体全体 の集合 を13と す る.β の元Bに

対 してuの 元Aut(E/B)を 対応 させ る写像 を Φ とす る.つ ま り,

Φ:β 一 →u リ(B)=Aut(E/B)

と定義する.・

次 に,uの 元Uに 対 して,β の元E° を対 応 させ る写像 を0と す る.っ

ま り,

e:u-→13 O(U)=EU

と定 義 す る.こ こで,U⊂Aut(E/K)か ら,σ はKを 不 変 にす るの で,

K⊂EU⊂Eで あ るこ とに注意す る.こ の とき次の定 理 が成 り立つ(図

3.1参 照).

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 82

β={KとEの 中間体}幽 〃={Aut(E/K)の 部分群}O

図3.1:中 間体 と部分群 の 関係

定理3.2.3(ガ ロア理論の基本定理1)体Eが 体K上 の正規拡大 である

とき,上 記の定義のもとで,次 のことが成 り立つ.

(1)任 意 のuの 元Uに 対 して,Φ ・e(σ)=σ が成 り立つ.

(2)任 意 の13の 元Bに 対 して,o。 Φ(B)e-Bが 成 り立 つ.

証 明(1)定 理 の(1)を 示 す には,U⊂Aut(E/K)で あ るUに 対 して,

EUニBと す る と,Aut(E/B)=σ で あ る こ とを 示 せ ば よ い.つ ま り,

Aut(F/B)⊂Uか つU⊂Aut(EソB)を 示 せ ば よい 。

まず,Uの 任 意 の元 はBを 不 変 に す る か ら,U⊂Aut(E/B)で あ る.

次 に,任 意 のAut(.E/B)の 元 がUに 含 まれ る こ とを示 す.そ こで仮 に,

あ るAut(E/-B)の 元 ぴに対 して,σ ¢ σ で あ る とす る.こ の とき,σ を

σ に含 め た集 合 σ'を 考 え る と,Eσ'=Bで あ る.し た が っ て,團=γ

とす る と,定 理3.1.12か ら,[E:B]≧r+1で あ る,と こ ろ が,定 理

3.1.15か ら,[E:-B]=rで あ る か ら,こ れ は矛 盾 で あ る 。ゆ え に,任 意

のAut(E/B)の 元 がUに 含 ま れ る こ とに な り,Aut(E/B)⊂ σ が 示

さ れ た.し たが っ て,Aut(E/-B)=Uで あ る.

(2)定 理 の(2)を 示す には,K⊂B⊂Eで あ るよ うな中間体Bに 対 して,

Aut(E/-B)=Uと すれ ば,-EU=Bで あ る ことを示 せ ばよい。そ こで,

lAut(E/K)1=η,剛=γ,Eσ=B'と す る.こ の とき,UはBを 不 変

にす る群 であるか ら,任 意のBの 元 βに対 して,β ∈B'よ り,明 らか

に,B'⊃Bで あ る.し たがって,定 理3.1.15か ら[E:B']=rな ので,

B=B'を 示 すには,[E:B]=rを 示せ ば よい.

Aut(E/K)の 元 σ1をBに 制 限す る と,BはEの 中へ同 型 に写像 され

る.こ の とき,異 な るEの 自己同型写像がB上 で は同 じ写 像を引 き起

こす ことはあ りえるので,ど の よ うな ときに 同 じ写像 にな るかを考 え

たい.そ こで,Aut(E/K)の 任意 の2元 σ1,σ2が,Bの 任 意 の元 βに

対 して,

σ、(β)=σ2(β)

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 83

で ある とす ると,こ の等式 は,

σ一1、σ、(β)一 β

であ るこ とと同値 であ る.つ ま り,σ一11σ2がUの 元 で ある こと と同値

であ る.そ れは,σ2がUに よる左 剰余類 σ1σの元 で あ るこ とと同値

であ る(定 義...7参 照).し たが って,nじ 左剰 余類 σ1σの元 がBか

らEへ 同 じ同型写像 を引き起 こす.

今,n=rsと すれ ば,sが 剰 余類 の個 数 であ るか ら,Au七(E/K)をB

に限定 した写像 で は,Bか らEへ8個 の同型写 像が 引き起 こされ る.

このs個 の写像 σ'1,σ'2,…,σ'、の不 変体 をK'と す る と,任 意 のKの

元 κに対 して沸 は任意 の σ'歪で不 変 よ り,K⊂K'で ある.

一 方,任 意のK'の 元k'は,

σ、(め=σ2(め 一 … 一 σ。(め

を 満 たす.σ'1,σ'2,…,σ'、 は 恒 等 写 像 を含 む か ら σ'Z(β)=β とな る。

σ'、はAut(.E/K)の 元 をBに 制 限 し た写 像 で あ り,任 意 のAut(E/K)

の 元 で ん'は不 変 とな るか ら,補 題3.2.2よ り κ'はKの 元 で あ る.ゆ え

に,K'⊂Kで あ る.つ ま り,KニK'で あ る か ら,s個 の 異 な る 写 像

の不 変 体 はKで あ る.

した が っ て,定 理3.1.12か ら

[B:K]〉_s

で あ る.こ こで,

[E:B]=[E:K]

[B:K][B:K]

で あるか ら,

[E:B]<_r

で あ る.一 方 で,B'⊃Bで あ っ た か ら,

[E:B]〉_[E:B']=r

であ る.ゆ えに,こ の2つ の不等式 か ら,[E:B]=rで ある,し たが っ

て,題 意 は成立 する.口

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第3章 ガロア理論と作図可能性 84

定理3.2.3の(2)の 証 明 によ り,Aut(E/B)の 不変体 はBで あ る ことが

示 され たか ら,次 の2つ の系 が成 り立つ.

系3.2.4-Eを 体K上 の正規拡大体 で ある とす る.こ の とき,EとKの 中

間体 をBと す る と,EはB上 の正 規拡大体 で もある.

系3.2.5Eを 体K上 の正規拡大体 とし,そ の中間体 をBと す る.ま た,

Aut(E/K)を(77,Aut(E/」B)を σ とす る.こ の とき,

[B:K】=8=lo/σ1

が 成 り立 っ.

証明 まず,BはKとEの 中問体 よ り,

[E:K]=[E:B][B:K]

で あ る.定 理3.2.3の(2)の 証 明 に お い て,

[E:K]=n=rs=IGI[E:B]=r=1ひ1

で あ る か ら,[B:K]=s=ρ/σ1と な っ て,題 意 は 成 立 す る. []

さて,系3.2.4で は,BがK上 の正規拡大 か どうか は保障 されてい ない.

そ こで,ど んな条件 の も とでBがK上 の正規拡 大 とな るか を考 える.

補 題3.2.6体K上 の拡 大体Eが 正規拡大 であ る こ との必 要十分条 件 は,

lAut(E/K)1=[E:K]

で あ る.

証 明Eが 正 規 拡 大 で あ れ ば,補 題32.2よ りEAut(E/K)=Kな の で,定

理3,1.15よ り,明 らか で あ る.

一 方 で,

1Aut(E/K)i=[E:K]

が成 り立 ってい る とす る.こ の ときAut(E/K)の 不変 体 をK'と お くと,

[E:K'1=IAut(E/・K)1=[E:K]

であ り,K⊂K'で あ るか ら,K=K'で あ る.し たが って,補 題3.2.2よ り

EはK上 の正 規拡大 である.口

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第3章 ガロ ア理論 と作 図可能性85

補題3.2.7Eを 体K上 の正規拡 大体,GをAut(E/K)と す る.こ の とき,

中間体Bに 対 して,Aut(E/B)=Uと す る と,Gの 元 σに対 して,

Aut(E/σ(B))=σ σσ㎜1

が成 り立 つ.

証 明TをGの 元 とす る。この とき,Bの 任意 の元 βに対 して,

TQ(β)=σ(β)

を満 たす とす る と,6-1TU(β)ニ βで ある.そ れ はつ ま り,σ一1TQがUの 元

で あ る とい うこ とであ る.し たが って,T自 身 は,σ ひσ一1の 元 であ る.[コ

定義3.2.8EをK上 の正 規拡大 体 とし,Bを そ の中間体 とす る.こ の と

き,Kを 不変 にす るよ うな,Bか らEへ の 中へ の同型 写像 の集 合を,

HomK(B,E)

と書 くことにす る。 口

補題3.2.9EをK上 の 正規拡大体 と し,Bを そ の 中間体 とす る.こ の と

き,以 下 の2つ が成 り立つ.

(1)[HomK(.B,E)卜[B:K]で あ る

(2)Aut(E/K)か らHomK(B,E)へ の写像 ρを次 のよ うに定 める.

ρ:Au七(E/K)→HomK(B,E)A(σ)=σ1β

こ の と き,ρ は全 射 で あ る.

証 明HomK(B,E)の 不 変 体 を 一κ'と す る と,定 理3.1.12及 び,K'がKを

含 む こ とか ら,

lHom、 κ(B,E)1≦[B:Kノ]≦[B:珂(3.9)

で あ る.

一方 で,Imρ は,Aut(E/K)をBに 制限 して得 られ る写像 の集合 で あ

り,定 理3.2。3の(2)の 証 明で述べ た ように,Bへ の制限で得 られ る写像 の

個 数 は,Aut(E/K)のAu七(E/B)に よる左剰余類 の個数 となる.ゆ えに,

lHomκ(B,E)t≧lImρ1;lAuも(E/K)/Aut(E/-B)1=[B:K](3。10)

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 86

で あ る.式(3.10)の 一 番 右 の 等号 は,系32.5に よ る.し た が っ て,式(3.9)

と式(3.10)で の 全 て の不 等 号 は等 号 と な り,

lH・mK(B,E)1-[B:κ]

で あ る.ま た,

Ilmρ1=iH・mK(B,E)1

で あ る か ら,ρ は全 射 で あ る. 口

定 理3.2.10(ガ ロア理論 の基本定理2)Eを 体K上 の正 規拡大体,(,/7を

Aut(E/K)と する.BをKとEの 中 間体 とする.こ の とき,以 下の2つ が

成 り立 っ.

(1)BがK上 の正規拡大 となるための必要十分条件は,Bに 対応するG

の部分 群 Φ(B)=UがGの 正 規部分群 となってい る こ とである.

(2)BがK上 の正 規拡 大 であ る とす る.こ の とき,Aut(B/K)は 商 群

Aut(E/K)/Aut(E/.B)に 同型 で あ る.

証明(1)ま ず,UがGの 正規部分群 である とす る.こ の とき,正 規部分群

の定義 か ら,σ は任意 のGの 元 σに対 して,

σσσ一1リU

で あ る.し た が っ て,補 題3.2.7か ら,

Aut(E/σ(B))=Aut(E/B)

で あ る.し た が っ て,定 理3.2.3よ り,

σ(B)=B(3.11)

であ る.つ ま り,Gの 元 をBに 制 限す る と,そ れ は全 てBの 自己同型

写 像 になる.よ って,Gの 元をBに 制 限 したBの 自己 同型写像全体 の

集合 をHと す る と,Hは 群 にな る.そ して,HはGの 制 限で あるか

ら,Hの 不変体 はB∩K=Kで あ り,BはK上 の正規拡 大 である.

次 に,BがK上 の正 規拡大で ある とす る.こ の とき,補 題3.2.6か ら,

[B:・K]elAut(B/・K)1

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第3章 ガロア理論 と作図可能性

で あ る.

か ら,

87

と こ ろ で,補 題3.2.9か ら,(HomK(B,E)1ニ[.B:K]で あ る

lHomK(B,E)1;(Au七(B/K){(3.12)

で ある.こ こで,Aut(B/K)の 任意 の元 σはKを 不変 にす るBか らB

への写 像であ るが,BがEの 部分集合 であるか ら,σ はBか らEへ の

写像 とみなす こ とが でき る.そ の対応 で考 える と,

Aut(B/K)CHomK(B,E)

で あ る.ゆ え に,式(3,12)と 式(3.13)か ら,

(3.13)

Aut(B/K)=HomK(B,E)(3.14)

で あ る.さ て,補 題3.2.9か ら,HomK(B,E)の 元 は全 て,Aut(E/K)

をBに 制 限 した 写 像 で あ った が,式(3.14)よ り,そ の 像 はBで あ る.

し た が っ て,BがK上 の正 規 拡 大 体 で あ れ ば,Gの 任 意 の 元 σ に対

して,

σ(B)=B

で あ る.よ っ て,補 題3.2.7か ら,

σσグ1=U

で あるか ら,UはGの 正規部分群 で ある.

(2)(1)か ら,BがK上 の正規拡大体 であ るとき,Aut(B/K)の 元 は全 て,

Aut(E/K)の 制 限に よって得 られ る写像 であ った.し たが って,写 像

PをBへ 制限す る対 応 で,

ρ:Aut(E/・K)一 →Aut(B/K)

の よ うに定 め る と,Imρ=Aut(B/K)よ り,ρ は 全 射 で あ る.こ こで,

kerp=Aut(E/B)で あ る.よ っ て,補 題A.4.16か ら,Aut(E/B)は

Aut(E/K)の 正 規 部 分 群 で あ り,準 同 型 定 理(定 理A,4.17)か ら,

Aut(B/K)望Aut(E/K)/Aut(E/B)

を得 る. 口

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 88

3.3分 解体 と正規拡大

EがK上 の正規拡大体であることの定義は,KがAut(E)の 有限部分

群の不変体であることであった.つ ま り,Eの 自己同型写像を用いて定義

されていた.こ の節では,別 の視点か ら考えて,具 体的に体Kを どのよう

に拡大するか,つ まり,Kに どのような元を付加すれば正規拡大になるか

を調べる.

定義3.3.1Kを 体 とするとき,xを 変数 とするK上 の多項式全体の集合

をK[x]と 書 く.口

定義3.3.2σ を体Eか らE'へ の上 への 同型写像 と した とき,

σ:E[x]一 ・E個

を 次 の よ うに定 め る.ま ず,こ こでは,Eの 元 αの像 σ(α)を α'と書 くこ

とにす る.そ して,E上 の多項式

!(x)=α 。+α 、x+・ ・+α 。♂

に対 して,

あ る ことが容易 に分か る.

この とき,E上 の多項式f(x)とg(x)に 対 して,

σ(ノ(勾)=�0+αi針 …+α 髭∬π

とす る.定 義か ら,σ:E[x]一 →E'囮 は多項式 の次数を変 えない全単射 で

σ(!(x)+9@));σ(∫@))+σ(9(x))

σ(ノ(x)9(x))=σ(∫@))σ(9(∬))

が成 り立つ ことは容易に確認できる(つ まり,環 の同型である).

補題3.3.3f(x)を 体E上 の既約多項式 とす る.ま た,σ をEか らE'へ の

上 へ の同型写像 とす る.こ の とき,σ げ@))はE'上 で既約多項式 で ある.

証 明 仮 に,σ(f(x))が 可約 であった とす る。つ ま り,E'上 の定数 でない多

項 式g(勾,h(x)を 用いて,

σ(f(x))=9(x)h(x)

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 89

と書 け た とする.σ は全単射で あるか ら,σ の逆 写像 σ一1が 存在す る.し た

が って,

σ一'σ(ア(諮))一 グ1(9(ψ(x))

一 σ一1(9ω)グ1(ん(勾)

=!(勾

で あ り,σ一1(9(∬)),σ一1(h(x))は 定数 でないE上 の多項式 であるか ら,f(の

が既約 であ るこ とに矛盾す る.ゆ えに,σ(!(x))は 既 約 であ る.口

補題3.3.4σ を体Kか らK'へ の上 への 同型写 像 とす る.!(x)をK上 の

既約多項式 と し,σ(f(x))をfノ(勾 とお く.ま た,複 素数 αとα'をそれぞれ,

!(α)=o!'(α')=o

を 満 た す 数 と し,さ らに,

E=K(cx)E'=K'(�)

とす る.こ の とき,σ は σ(α)=α1で あ る よ うなEか らE'へ の 上 へ の 同 型

写 像 に 拡 張 で き る.

証明 まず,容 易 に分 かるよ うに,!(x)を モニ ック(定 義A.1.5参 照)と し

て も一 般性 は失わ ない.よ って,f(勾 はモニ ックであ る とする.こ の とき,

!'(勾 もモ ニ ックで ある,以 下,σ:K[x]一 →K'[telに よ って,K@)の 各 多

項式g(x)に 対応 す るK'(x)の 多項式 をg'(x)と 書 くことにす る.

θをEの 任意 の元 とす る。!(勾 は既約 なので,命 題1.2.4よ り,θ は!@)

よ りも次数 の低い 一κ上 のあ る多項式g(x)を 用い て,

θ=9(α)

と一 意 的 に書 け る.そ こ で,

σ(θ)e9ノ(α')

と して,写 像 σをEか らE`へ 拡 張 す る.

ま ず,σ が 同 型 写 像 で あ る こ とを 示 す.θ1=9i(α),θ2=g2(α)に 対 し,

σ(θ1十 θ2)eσ(91(α)十92(α))

=σ((g1十g2)(α))(こ こ で,deg(g1十g2)(x)<f(x))

=(9、+9、)'(α')

-9'、(α')+9'、(α')

=σ(θ1)十 σ(θ2)

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第3章 ガロア理論 と作図可能性

で あ る.次 に,積 θ1θ2について考 える.多 項式 の割 り算 に よ り,

gl(x)g2(x)=q(x)f(x)一}-r(x)(degr(x)<degf(x))

90

(3.15)

とな るg(勾,r(x)を と り,α を 代 入 す る と,g1(α)g2(α)=r(α)で あ る 。

よ って,

σ(alee)・=σ(91(α)92(α))eσ(r(α))=〆(α ノ)

で あ る.一 方 で,式(3.15)に σを施 す と,

9'、(x)9'2(x)-q(x)!'(x)+r'(x)

で あ る 。よ って,α'を 代 入 す る と,

σ(θ、)σ(θ,)=9'、(α')9'2(α')-r'(α')

で あ る.し た が っ て,σ(θ1θ2)=σ(θ1)σ(θ2)で あ る.ま た,1は0次 式 で あ

り,σ:E-→E'の 定 め 方 か ら,σ(1)=1で あ る.よ って,σ:E-→E'は

体 の 同型 写 像 な の で,σ は単 射 で あ る.

最後 に,σ が全射 である ことを示 す.σ はK[x]か らK'[x]へ の全単射 で

あ ったか ら,E'の 元 θ'=h(α')に 対 して,g'(x)=h(x)と な るK[x]の 元

g(x)が 存在 す る.よ って,θ=g(α)と すれ ば,σ(θ)=θ'で あるか ら σは全

射 であ る.以 上か ら題意 は示 され た.[コ

通常,体 論では体をCの 中だけに限定するのではなく,体 の公理を満た

す抽象的な集合 として論を進めることが多い.し か し,本 論文では,作 図

可能性への応用を主 目的 としているため,体 をCの 部分体 に限定 してい

る.そ こで,以 下は代数学の基本定理を認めて考察を進める。代数学の基

本定理 とは次のような定理である(証 明は参考文献[9]を 参照せ よ).

定理3.3.5(代 数学の基本定理)定 数でないC係 数のn次 多項式は,C内

に少な くとも1個 の根を持つ.□

C上 の多項式f(x)の 次数 をnと す る と,代 数 学の基本定理 に よ り,ノ(の

は少 な くとも1つ の根 α1を 持っ.し たが って,f(x)は(x一 α1)で 割 り切

る こ とがで きて,

!(勾=(x-a・)9(x)

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第3章 ガロア理論と作図可能性 91

とでき る.こ の とき,9(x)は ∫(x)よ り次数が1小 さいC上 の多項式 であ る

か ら,同 じ事 を繰 り返 す こ とで,

f(の=@一 α、)(x‐cx2)…(x‐(kn)

とな っ て,∫(x)はn個 の根 α1,α2,…,%を 持 つ.た だ し,α1,α2,…,an

の 中 に は 同 じ値 が 存 在 す る 可 能 性 もあ る.そ こ で,仮 にn個 の 根 の 中 に

ち ょ う ど2個 の 等 しい根 が 存 在 した とす る,つ ま り,

f(x)一@一 α)琶9(勾 か つ9(α)≠o

の よ うな根 αを持つ とす る.こ の とき,そ の根 αを重根 といい,Zを 重複

度 とい う.

定 義3.3.6f(x)を 複素 数体 の部 分体K上 のn次 多項式 とす る この と

き,六 勾 の全 ての根 α1,α2,…,飾 に対 して,

E=K(α 、,α2,…,α の

であるような拡大体Eを,!(勾 のK上 の分解体 とい う.[]

代数学の基本定理により,分解体は必ず存在する.

分解体はガロア理論 においては本質的である.実 際 これまでは,体K

上 のあ る拡 大体Eが 正規拡大 である とは,KがAut(-E/K)の 不変体 になっ

てい る ことであった.し か し,実 は,EがK上 の分 離多項式 と呼 ばれ る多

項式 の分 解体 にな ってい る とき,ま た,そ の ときに限 り,EはK上 の正 規

拡 大体 となる.以 下 この節 では,そ の こ と(定 理3,3.12)を 示 す.

補題3.3.7KとK'を 体 とし,σ をKか らK'へ の 同型写像 とす る.ま た,

f(勾 をK上 の多項式 と し,σ(ル))f'(x)と す る.さ らに,体EをK上

のf(勾 の,E'をK'上 のf'(勾 の分解体 とす る と,σ はEか らE'へ の同型

写像 に拡張 され る.

証 明K上 の多項式 八勾 の次数 に関す る帰納法 で証明 を行 う.!(x)が1

次 式 の とき,f'(勾 も1次 式 であるか ら,分 解体 はE=Kか つ,E'=K'と

な って明 らか である.

次 に,!(x)の 次数 がn(>1)よ り小 さい場合 に この補題 が成立 してい る

と し,ノ(勾 の次数 がnの ときを考 える.ノ@)の 根 の1つ を α1と して,α1

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第3章 ガロア理論と作図可能性 92

のK上 の最小 多項 式を9(x)と す る.こ の とき,f(勾 は9(x)で 割 り切れ る

か ら,

ノ(x)=P(x)9(x)

で あ る.こ の式 の 両辺 に σを 施 す と,

!'(x)=P'(x)9'(x)

で あ り,g'(x)は 既 約 で あ る.こ の と き,g'(x)の 根 の1つ を ッ とす る と,

!'(7)=P'(の9'(の;0

で あ る.つ ま り,f'(勾 の根 を β1,β2,…,β ηとす る と,β1,β2,…,β ηの 申

に 少 な く と も1つ7と 等 しい もの が あ る 。

そ こで,仮 に7=β1と す る と,補 題3,3.4か ら σはK(α1)か らK'(β1)へ

の 同型 写 像 へ と拡 張 さ れ る.そ こで,

!@) ノ'(勾ノ{(の二!、(勾=

躍 一 β1x-al

とす る と,fl(x)は,K(α1)上 の多項式 であ り .fi(x)はK'(β1)上 の多項式

と見 る ことがで きる.ま た,EはK(α1)上 の ∫、(x)の分解 体,E'はK'(β1)

上 の!{(x)の 分 解体 と見 る ことがで きる.し たが って,帰 納法 の仮定 か ら,

σはEか らE'へ の同型 写像 に拡張 され る.目

定義3.3.8体K上 の多項式f(x)の 全ての既約因子が重根を持 たないと

き,f(x)は 分離的であるという.口

C係 数 多項式!(④ の微分 誌∫@)を 扱 いたい.体K上 の多項 式!(x)を

ル)=α 。+α1∬+…+anan

とす る.こ の とき,導 関数

d

dx!@)x=1imfz-一>0+z(x)

は,複 素 数zの0へ の近 づ き方に よ らず,

誌 掴 一 ・・+2・ ・x+…+nanan-・(3.・6)

となる こ とが知 られ てい る(参 考 文献[11]を 参照).式(3。16)か ら,疆詛(勾

もまたK上 の多項式 であ ることに注意 す る・また,導 関数dd詛(の は次の

2つ の性質

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第3章 ガロア理論と作図可能性93

(1)ddx(∫(x)+y(x))=誌 ∫(の+疆x9(x)

(2)dd�(掴9(x))f(x)誌9(x)+(疆詛(x))9ω

を満 たす.実 は,体 論へ の応用 が 目的 であれば,極 限操作 に頼 らず とも,式

(3.16)を"多 項式 の微分 の定義"と して考 える こともできる.そ の とき,上

記 の微 分 の2つ の性 質を示す ことも難 しくは無 いが,こ こで は省略 す る.

補 題3.3.9体K上 の多項 式f(勾 が重 根 を持 つ ため の必要 十分 条件 は,

f(x)と その導 関数 蓋∫(x)が 共通 根を もつ こ とである.

証 明K上 の多項式 ∫(勾の根 の1つ を α とし,

!(x)_(x-a)鳶Q@)(た だ し,Q(α)≠0)

とお く.こ の とき,導 関 数 誌 六勾 は,

df

dx(x)+α)・ 蕩Q@)+k(x一 α)・一・Q(x)

であ る誘 ≧2の とき,α は明 らか に!(勾 とdd詛(勾 の共 通根 であ り,!(勾

の重根 で ある.鳶=1の とき,Q(α)≠0で あ るか ら

d_....d

薇!(α)e(α 一α)爺Q(α)+Q(α)≠o

であ る.よ って,α は ∫@)とdd 詛(x)の 共通 根 とはな らず,f(x)の 重根 で

は ない.[コ

命 題3.3.10Cの 部分体K上 の任意 の多項式 ノ(勾 は分 離的 である.

証 明 分 離 的の定義 か ら,!(勾 がK上 既約 で ある とき を考 えれ ば十分 で

あ る。f(x)の 導 関数 蓋!(x)はf(勾 よ りも次数 が低 いK上 の多項式 であ

る.し たが って,f(x)が 既約 であれば,f(x)と疆詛(x)はK係 数 の共 通因

子 を持 たい ので,共 通根 を持 たない.よ って,補 題3.3.9か らf(x)は 重根

を持 た ない.口

定理3.3.11Eを 体Kの 正規拡大体,Aut(E/K)をG,α をEの 任意 の元

とす る.ま た,Gの 元 σ1,σ2,…,σ πに よる αの像 の うちで異 な る ものを,

α1,α2,…,α γとす る.つ ま り,

{σ 、(α),σ2(α),…,σ 。(α)}={α 、,α2,…,α 。}

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 94

であ る とす る.こ の とき,多 項式

p(x)=(x一 α、)@一 α2)…(x一 α。)

は αを根 に持つK上 の既約 多項 式 であ る.つ ま り,Eは αの最 小多項 式

の根 を全 て含 む.

証 明Gは 群 よ り,Gの 任意 の元 の に対 して,

{σ 、(α、),σ ¢(α2),…,σ 、(α∂}={σ 信σ、(α),Qi62(α),…,σ ¢σ。(α)}

={σ 、(α),σ2(α),…,σ 。(α)}

={α 、,α2,…,α 。}

で あ る.し た が っ て,

σ(P@))=σ((x一 α、)(x一 α2)…(x一 α∂)

=(x-6(α 、))(x一 σ(α2))…(x一 σ(α。))

=P(勾

とな って,p(x)は,Gの 任意 の元 で不変 である.ゆ えに,p(x)を 展 開 した

とき の係数 もGで 不変 で あ り,p(x)はK上 の多項 式 であ る.ま た,α 自

身,α の像 であ るか ら,α は α1,α2,…,αTの うちの どれか と等 しい.よ っ

て,α はp(x)の 根 である.

次 に,p(x)が 既約 で ある ことを示 す.α を根 に持 つ,K上 の任意 の多項

式 をf(x)と し,

f(勾=ao十alx÷ …+α 鴨♂

とす る.こ の式 に αを 代 入 す る と,

f(α)=α 。+α 、α+…+αmα ㎜=0

で あ る.さ ら に,両 辺 に σ1,σ2,…,σ π を 施 す と,

σz(!(α))=σ 乞(α。+α 、α+…+αmα 皿)

=α 。+α 、σ,(α)+…+σ 、(α)m-0

であ るか ら,α1,α2,…,α.はf(x)の 根で ある.よ って,∫(勾 はp(x)で 割

り切 れ る.し たがって,p(x)はK上 の αの最小 多項式 で あ るか ら既 約 で

あ る(命 題A.1.7参 照).□

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 95

定理3.3.12Eが 体K上 の正規拡大 であることの必要十分条件は,Eが

K上 のある多項式1の 分解体であることである.

証 明EはK上 の正規拡大 とす る.ま た,EニK(wl,ω,…,ω の とし,Wi

を根 に持 つK上 既 約な多項式 をPi(勾 とす る.こ こで,

p(x)-p、(勾P2@)…P。(④

と して,p(x)の 分 解 体 をE'と す る と,p(x)の 根 の 中 にWiは 全 て含 まれ る

の で,E⊂E'で あ る.一 方 で,Au七(E/K)の 元 を σ1,σ2,…,σmと す る と,

定 理3.3.11よ り,Eは,各 蝋 ∬)の 全 て の 根Q1(ω ∂,σ2(ω∂,…,σm(Wi)を 含

む の で,Eノ ⊂Eで あ る.ゆ え に,E'=Eで あ る.

次 に,p(x)を 体K上 の多項式 と し,p(x)の 分 解体 をEと す る.ま た,

Aut(E/K)をGと お ぐ この とき,Eの 元 θに対 して,Gの 任意 の元 σで

不変 な θはKに 含 まれ るこ とを示 す.

Kに 含 まれ ないp(勾 の根 の個数 を κとす る と,k=0の とき はK=E

よ り明 らか である.次 に,κ がnよ り小 さい ときには定理 が成 り立 つ とし

て,k=nの ときを考 える.p(x)の 根 の うちでKに 含 まれ ない ものの1つ

を α1と し,α1の 最 小多項式 をp1(x)と す と,pi(x)はp(勾 の因子 であ る。

ここで,Kに α1を 付加 した体上 で考 え る と,EはK(α1)上 のP(x)の 分解

体 であ り,p(の の根で,K(α1)に 含 まれない根の個数 はn未 満 であ る.よ っ

て,帰 納 法 の仮定 か ら,EはK(α1)上 の正 規拡 大 であ り,Aut(E/K(α1))

はGの 部 分群 であ る.Eの 元 θが,任 意 のGの 元 σで不 変 であれ ば,θ は

任 意 のAut(E/K(α1))の 元 で不変 よ り,θ はK(α1)の 元 で ある.今,p1(勾

の次数 をsと す る と,θ はKの 元CO,C1,…,C。-1を 用 いて,

θeCO十C1α1十 … 十CS_Slal-1 (3.17)

と書 け る.pi(x)の 根 を α1,α2,…,α 、とす る と,命 題3.3.10か らp1(勾 は

重 根 を 持 た な い の で,α1,α2,…,α 、は全 て異 な る.補 題3.3.4か ら,

σz:K(α 、)-K(α ∂ σ乞(α、)篇 α、

のよ うなKの 元 を不変 とす る同型 写像 砺 が存在 す る.こ の σ信はp(勾 を

P(x)へ 移す.EはK(α1)上 のp(x)の 分 解体 で ある とともに,K(α ∂上 の

1本論文では,体 はCの 部分体 しか扱わないが,抽 象的な体,特 に標数が0で ない体 に

おいては,多 項式が分離的であるという条件が必要である.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 96

P(勾 の分解体 で もある.補 題3.3.7よ り,の をEの 自己同型写 像Ti∈0へ

と拡 張 で きる.θ はTzで 不 変 であ り,式(3.17)にTを 施す と,

で あ る.よ っ て,

θ=C。+C、 α汁 …+C卜 、-Xs-1z

(co_9)十clx十 …-1-cs_lxs-1=0

は,s個 の 異 な る 根 α1,α2,…)a5を 持 つ.こ こで,命 題A.1.13よ り,根 の

数 の 方 が 多 項 式 の 次 数 よ り も多 い の で,全 て の 係 数 は0と な る.よ っ て,

CO=θ とな り,θ はKの 元 で あ る.結 局E,Aut(E/K)=Kと な っ た の で,補

題3.22か ら,EはK上 の 正 規 拡 大 で あ る.口

3.4準[n]次 拡 大

定義3.4.1あ る体Kに 唯一つの数 αを付加 した体K(α)をKの 単純拡

大体 とい う.口

以下,有 限次拡大は単純拡大であることを示す.こ の ことを用いずに後

の証明を行 うことも可能ではあるが,こ の命題を用いることで後の証明が

大変簡明 となるため,こ こで触れてお く.

命題3.4.2ZEを 体K上 の有限次拡大 体 とす る.こ の とき,

(1)KとEの 中間体 は有限個 である.

(2)EはKの 単純拡 大体 である.

証 明(1)E=K(α1,α2,…,α の とす る.ま た,PZ(x)をa8の 最 小 多 項 式

とす る.さ らに,

p(④ 一rlp、(勾乞

として,p(x)の 分 解体 をノと す る.こ の とき,定 理3。3.12か ら,万 は

K上 の正規拡大体 で ある.ま た,E⊂ノで あるか ら,ノの 中間体 が有

2本論文では,Eを 複素数の部分体に限定 しているために特に触れてはいないが,Eの

標数が0で ないときは,こ の命題は成立 しない.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 97

限 個で ある ことを示せ ば よい.K⊂B⊂Eと す る と,定 理3.2.3か ら,

.BはAut(万/K)の 部分群 と対応 す る.と ころで,Aut(ノ/K)の 元 は,

P(勾 の根 の入 れ替 え方 で全てが決 まって しま うので,Aut(万/K)は 有

限 群 で あ り,そ の部分 群 は有 限個 しか存在 しない 。したが って,題 意

は成立 す る.

(2)EがKの 有 限 次 拡 大 体 で あ る とす る.そ こで,E=K(α1,α2,…,α η)

と して,Kに 付加 す る元 の個 数 に関す る帰納 法 を用 い る.ne1の

ときは明 らかであ るか ら,付 加す る元 の個数がn個 未 満 の ときには命

題 が 成立 す る と して,付 加す る元 の個 数 が丁度 η個 の ときを考 え る.

この とき,帰 納 法の仮定 か ら,K(α1,α2,…,αn_1)=K(β)と で きる.

よって,α η;α とお けば,E=K(α,β)で あ る.こ こで,Kの あ る

元Cを 取 り,ッ。=α+Cβ とす る.こ の とき,K。=K(7c)と す る と,

K。=K(α,β)と なるcが 存在す る ことを示 す.

K、 はEの 中間体 で あるか ら,K。 の選 び方 は有 限個 しか存 在 しない.一方 で

,KはCの 部分 体 であ るか ら有 理数 の集合 を含み,cの 選 び方

は無 限 に存在 す る.よ って,c≠dか つK.=Kaと な るよ うなc,dが

存 在 す る.そ の よ うなc,dに 対 して,ッ。と 物 はK。 の元 であ るか ら,

ッ.一 物=(c一 のβはK。 の元 であ る.よ って,β は 一κ。の元 で あ り,a

もK。 の元 であ る.ゆ え に,K(α,β)⊂K('1'。)で ある.一 方,K(α,β)

は明 らか に α+cβ を含むか ら,K(/C)⊂K(α,β)で ある.し たが って,

K、=K(α,β)で ある.よ って,E=K(7。)と で き るの で,題 意 は成立

す る.

さて,例 えば,あ る数 αが体Kの 元 か ら ε作 図可 能 である こ とは,

K=Ko⊂K1⊂ … ⊂Kn⊂R(た だ し,[Ki+1:瓦]=2)

の よ うな体 の列 が存 在 して,α がKnに 含 まれ る こ とであ った.こ の よ う

な体 の列 の性質 につ いての定義を以下 に行 う.

定 義3.4.3自 然数 の集 合{1,2,…,n}を[n]と 表 す こ とにす る.体K上

の拡大 体 五 と,あ る 自然 数nに 対 してaあ る拡大 体の列

K=KicK2C…CKm=L

が あ って,2≦2≦mに 対 して,[Ki:瓦 司 ∈[n]を 満 たす とき,LをK上

の準 回 次 拡大体,ま たは,準{2,3,…,n}次 拡 大体 とい うこ とにす る.

特 にn=2の ときは,単 に準2次 拡 大 とい う.口

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 98

この定義に従 えば,数 αがKの 元からε作図可能であることの必要十

分条件は,αが,K上 の実数からなる,あ る準2次 拡大体に含まれることで

ある.ま た,数 αがKの 元か ら0作 図可能であることの必要十分条件は,

αが,K上 の実数からなる,あ る準{2,3}次 拡大体に含 まれることである.

そ こで,数 αがK上 の ある準 回 次 拡大 に含 まれ るため の条件 を考 え

る.即 ち,定 理3.4.9を 示 す こ とが この節 の主 たる 目的 であ る.そ の ため

に,い くつ かの補題 を証 明す る.

補題3.4.4LとL'を 体K上 の拡大 体,σ をKを 不変 にす るLか らL'へ

の 同型写像 とす る.こ の とき,Lが 準 回 次拡 大 であれば,L'も 準 回 次拡

大 であ る.

証明Lが 準[n]次 拡大であるから,

K=KoCKICK2C...CKs=L([Ki:Kz_1]<_n)

であ る、まず,σ が同型写像 であるか ら,Lの 中間体Kiに 対 して,K、 の像

σ(κ琶)がL'の 中間体 であ る ことは用意 に確認 でき る.

次 に,命 題3.4.2か ら,瓦=K(α)と 書 け る.よ って,[Ki:K]=pと す る

と,α はK上 既約 なp次 多 項 式!@)の 根 で あ る.こ こで,σ(Ki)=K(σ(α))

で あ る.σ はK上 の 線 形 写 像 で あ る か ら,σ(α)は 六 勾 の 根 で あ る.し た

が っ て,[Kz:K]=[σ(Ki):K]=pで あ る.ゆ え に,KzのK上 の 次 元 は

σに よ って 不 変 で あ る.さ らに,[瓦:K]_[瓦:KZ-1][KZ-1:K]で あ る か

ら,Ki_1上 の 瓦 の 次元 も σに よ っ て不 変 で あ る.以 上 か ら,L'はK上 の

準[n]次 拡 大 で あ る,口

定義3.4.5KとK'を 体 とす る.こ の とき,KUK'を 含む最小の体をKK'

と書 き,KとK'の 合成体 とい う.口

例 えば,

L=-K(α 、,α2,…,α の L'=K(β 、,β2,・,β 。)

で あ る と す る と,LL'=K(α1,・ ・,α物 β1,・ ・,βη)で あ る.

補 題3.4.6Lを 体K上 の 拡 大 体 とす る.こ の とき,あ る数 α に対 して,

[K(α):K]=nな らば,[L(α):L]≦nで あ る,

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第3章 ガロア理論と作図可能性 99

証 明[K(α):K]=nで あれば,命 題1.2.6か ら,α はあるK上 の既約n次

多項式f(x)の 根である.こ のf(勾 がL上 で も既約 であれば,[L(α):L]ニn

で あ る.!@)がL上 で可約 であれ ば,α はdeg9(の くdegf(x)で あ るよ

うなL上 の既約 多項式g(④ の根で あるか ら,[L(a):L]<nで ある。 口

補 題3,4.7LとL'をK上 の拡大体 とす る.LとL`がK上 の準[n]次 拡

大体 な らば,LL'も またK上 の準[n]次 拡 大 であ る.

証明L'はK上 の準 回 次拡大であるか ら,

.K=K・ ⊂K2⊂ … ⊂-Km一 五'([Ki+、 ・Ki]≦n)

と で き る.こ の と き,命 題3.4.2か ら,κ,+1=Ki(α ∂ と し て よ い.よ っ て,

L'=K(α1,α2,…,αm_1)で あ る.ゆ え に,LL'=L(α1,α2,…,am-1)で

あ る.し た が っ て,Lz=Lz-1(α ∂ と す る と,

κ ⊂ 五=五 〇 ⊂L1⊂ 五2⊂ … ⊂ 五凱一1=五 刀

であ る.こ こで,補 題3.4.6か ら,[五,:五¢-11≦nで あ る.し たが って,題 意

は成 立す る.日

定理3.4.8Lが 体K上 の準 囮 次拡 大体 である とす る.こ の とき,Lを 含

むK上 正 規 な準[n]次 拡 大体 Ωが存在 する.

証 明 命題3.4.2か ら,L=K(α1)と して よい.α1の 最小多項式 をf(x)と

し,f(x)の 根 を α1,α2,…,α ηとす る.f(x)は 既 約で あるか ら,補 題3.3.4

よ りK(α ∂は全 てK(α1)と 同型 で あ る.し たが って,補 題3.4.4か ら各

K(α ∂は全 てK上 準 回 次拡大 である.そ こで,52=K(α1,α2,…,α の と

す る と,Ω は各K(α ∂の合成体 であ る.よ って,補 題3.4。7か ら ΩはK上

準 回 次 拡大 であ り,L⊂ Ω であ る.と ころで,Ω は!(x)の 根 を全 て含 む

か ら ノ@)の 分 解体 である.ゆ えに,定 理3.3.12か ら ΩはK上 の正 規拡大

であ る.よ って,命 題 は成 り立つ.口

定理3.4.9Lを 体K上 の準[n]次 拡大 体 とす る.ま た,Lの 元 αに対 し

て,α のK上 の最小 多項 式を ア(勾 とす る。この とき,f(x)のK上 の分解

体 をEと す る と,EのK上 の次数 は,0以 上 の整数pz,p3,…,pnを 用い

て,[E:K]=2P23P・ … η翫 と表 す こ とがで きる.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 100

証 明 五は体K上 の準[n]次 拡大 体で あるか ら,定 理3.4.8よ り,Lを 含 む

K上 正 規 な準[n]次 拡大体 Ωが存在 す る.よ って,[Ω:K]=2q・3q・ …n4n

と表 す ことができる.α は Ωの元で もあ るか ら,定 理3.3.11よ り,Ω は ノ(x)

の根 を全 て含む ゆえに,K⊂E⊂ Ωであ るか ら,[E:K]は[Ω=珂 の約

数 であ り,[E:K]=2p23P3… ηP・と表 す ことが でき る.□

この定理の特別な場合 として,作 図に関係するn=2とnニ3の 場合を

系 として抜 き出す.

系3.4.10α を複素数 と し,∫(x)を αの最小 多項式 とす る.α がK上 のあ

る準2次 拡大 体Lに 含 まれ る とき,f(x)のK上 の分 解体 をEと す る と,

[E:K]=2kと 表す ことが できる.

系3.4.11α を複素 数 と し,!(x)を αの最 小多項式 とす る.α がK上 の あ

る準{2,3}次 拡大 体Lに 含 まれる とき,!(x)のK上 の分解体 をEと す る

と,[E:K]=2鯉 と表す ことができ る.

3.53次 方程式の解法

ある実 数 αが,体Kの 元 か ら0作 図可能 である ことの必要十分 条件 は,

定 理2.5.1か ら,α がK上 のあ る準{2,3}次 拡大体L(⊂R)に 含 まれ る こ

とであ った.ま た,そ の とき,系3.4.11か ら,α のK上 の最小 多項 式の分

解体 の拡大 次数 は,231次 で あるこ とも分か った.以 上 を ま とめ る と次 の

よ うに なる.

あ る実数 αが,Kの 元 か ら0作 図可能 で ある.(3.18)

⇔K上 の準{2,3}次 拡大体L(⊂1[8)が 存在 して,α ξLで あ る.(3.19)

⇒K上 の準{2,3}次 拡大体L(⊂(C)が 存在 して,a∈Lで あ る.(3.20)

⇒K上 のαの最小多項式 の分解体Eに 対 して,[E:珂=231(3。21)

同 様 に,ε の 作 図 可 能 性 につ い て は,定 理1.3,1お よ び,系3.4.10か ら,

あ る実数 αが,Kの 元 か らε作 図可能 であ る.

⇔K上 の準2次 拡大体L(r)が 存在 して,α ∈Lで あ る

⇒K上 の準2次 拡大体 五(⊂C)が 存在 して,α ∈Lで ある。

⇒K上 のαの最小多項式 の分 解体Eに 対 して,[E:K]=2k

(3.22)

(3.23)

(3.24)

(3.25)

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第3章 ガロア理論と作図可能性 101

で あ る.

そ こ で,(3。18)か ら(3.21)お よ び,(322)か ら(3.25)が そ れ ぞ れ が全 て

同値 な条 件 で あ る こ とを 示 したい.し か し,例 え ば,0作 図 に 関 連 して,こ

れ ま で の考 察 で は,(3.20)⇒(3.19),(3.21)⇒(320)が 示 さ れ て い な い.

そ こ で,こ の 節 で は,(3.20)⇒(3.19)を 示 す 代 わ りに,(3.20)⇒(s.1s)

を 示 す こ とで,(3.18),(3.19),(3.20)が 全 て 同値 な条 件 で あ る こ とを示 す.

これ は,ε 作 図 につ い て も 同様 で あ る.

さて,今 まで は,数 αの作 図可 能性 を実 数 の範 囲 に限 って進 め てきた.

しか し,(3.20)⇒(3.18)を 示 す ために は,α の作 図可能 性 を複 素数 の範

囲 に広 げて考 える ことが有効 であ る.そ こで,α が作図可能 で ある こ との

定義 を複素 数 の範 囲に拡張す る.

定義3.5.1体Kが 複素化 された体 で ある とは,Rの 部分 体Koに 対 して,

K=Ko(の と表 され る ことである.こ の とき,Ko=K∩ 飛 であ る.口

補題3.5.2Cの 部分体Kが 複素化 され た体 で あ る とす る.

素数 αに対 して,次 は同値 で ある.

この とき,複

(1)α がKの 元 である,

(2)α の実 部 と虚部 が共 にKの 元 であ る.

証 明Ko=K∩Rと す れ ば,K=Ka(の で あ る.

ま ず,α ∈Kと す る と,α は,Koの 元x,雪 を用 い て,

α=x-1-yi

と表 す こ と が で き る.よ って,∬=Reα,彩=Imα で,x,〃 ∈Ko⊂Kで

あ る.

逆 に,aの 実 部 と虚 部 が 共 にKの 元 で あれ ば,Ko=K∩Rよ り,Reα,

Imα ∈Koで あ る 。よ って,K=Ko(2)で あ る か ら,p=Reα,q=Imα

とす れ ば,α=P+q2と 表 す こ とが で き る の で,α ∈Kで あ る.口

定義3.5.3作 図法 ∫,複素化された体K,複 素数 αに対 して,K∩ 聡の元

か らαの実部および虚部が∫作図可能であるとき,αがKの 元か ら∫作

図可能であるとい う.特 に,αがQ(の の元から∫作図可能のときは,単 に

αが.F作 図可能であるとい う.口

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第3章 ガロア理論と作図可能性 102

実数 αに対 して は,Reα ニ α,Imα=0で あるか ら,α を実 数 として考

えて も,複 素数 と考 えても,作 図可能 の定義 は等 し く,こ の定義 は 自然 な

拡張 にな ってい る.ま た,作 図可能の定義 を複素数 に拡張 して も,次 に示す

よ うに,(3.18)⇒(3.20)と,(322)⇒(3.24)は 成 り立 っ.

命題3.5.4複 素数z=α+禽 に対 して,zが ある複 素化 され た体Kの 元

か ら ε作 図可能 な らば,K上 の準2次 拡大 体Lが あ って,z∈Lで あ る.

また,zが ある体Kの 元か ら0作 図可能な らば,K上 の準{2,3}次 拡大体

Lが あ って,z∈Lで ある.さ らに,上 記 のLは 複素 化 された体 で もある.

証 明 証 明 はほ とん ど同様 に行 われ るので,zが あ る体Kの 元 か ら0作

図可能 の場合 のみ示 す。また,Ko=K∩Rと す る.

zが あ る体Kの 元 か ら0作 図可能 な らば,複 素数 の作 図可 能 の定義 か

ら,α と βがKの 元 か ら0作 図可能 であ る.し たが って,定 理2.5.1か ら,

あ るKo上 の準{2,3}次 拡大体 五1,LZ∈Rが あって,そ れ ぞれ,α ∈L1,

β ∈L2で あ る.こ こで,補 題3.4.7か ら,LIL2はK上 の準{2,3}次 拡大体

で あ る.最 後 に,L=LIL2(の とす れば,K⊂Lか つ,z∈Lで あ る.ゆ え

に,題 意 は成立す る.・ 口

補 題3・5・5複 轍 α,βが与 えられ たとき,a土 β,α%(β ≠0),α の平

方 根 は,Q(Reα,Imα,Reβ,Im゚,i)の 元 か ら ε作 図 可 能 で あ る.さ らに,

αの 立 方 根 は,Q(Reα,Imα,Reβ,Imβ,の の 元 か ら0作 図可 能 で あ る.

証 明 複 素 数 の 和,差,積,商 の作 図 可 能 性 を 考 え る 。α=al+ia2,β=

bi+ib2と す る と,

α士 β=(a・ ±b、)+(α2±b2)2

αβ=(α1わ1一 α2わ2)+(α1わ2+α2わ1)2

α α、+ia2(α 、b、+a2b2)+(alb一 α、b2)2

βbl+ib2 bi+b2

である.実 数の四則演算は全 てε作図可能であるから,複 素数の四則演算

は全て ε作図可能である.

αの平方根の作図可能性を考える(図3.2参 照).は じめに,直 交する適

当な2直 線を作図 し,そ れぞれ実軸 と虚軸 とする.そ して,実 軸上に原点

からReα の距離の点,虚 軸上に原点か らImα の距離の点を取れば,複 素

数平面上に αを作図することができる.よ って,角 の2等 分線や実数の平

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 103

方根 は ε作 図可能 であるか ら,國;r,argcx=θ とす ると,θ の2等 分線1

を引 き,Z上 に0か ら長 さ 面 の点Aを 取れ ば,そ の点Aが,α の平方 根 を

表す 点 であ る.ゆ えに,点Aか ら実軸 と虚 軸 にそれぞ れ垂 線 を下 ろせ ば,

αの平方 根 の実部 と虚部 がそれぞれ ε作 図可能 で ある.よ って,α の平方

根 は ε作 図可 能 であ る.

a

1.gpp

rrρ

底/気,

Re

図3.2:複 素数 の平方 根

αの立 方根 の作 図可能 性 を考 え る.は じめに,平 方根 の とき と同様 に

適 当な 直交 す る2直 線 を折 り,複 素 数平 面上 に αを作 図す る.國=r,

argcx=θ とす る と,

(1)折

(2)cos(θ+32n゚)

がそれぞれ0作 図可能であればよい.(1)は,IR係 数の3次 方程式x3-r=0

の実数 解 で あるか ら,系2。4.7よ り,0作 図可 能 であ る.(2)は,定 理2.4.9

よ り,0作 図可能 であ る.よ って,角 θの3等 分線Z上 にOA;折 とな る

点Aを 取 れ ば,そ の点Aが,α の立 方根 を表 す点 であ る.ゆ えに,点Aか

ら実軸 と虚軸 にそれぞれ垂線を下 ろせ ば,α の立方根 の実部 と虚部 がそれ

ぞれ0作 図可能 である.し たが って,α の立方根 は0作 図可能 であ る.口

1の3乗 根 に つ い て考 え る.1は 明 ら か にx3=1を 満 た す 。 と こ ろ で,

x3-1e(x-1)(x2+x+1)よ り,x2+x+1=0の 解 を

一1+V冨 乞_-1-~ 競

W=W=22

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 104

A

Im

cti

'

`

'

9

ρ

9

'

9「

o

ρ

.,

.!i儒 ,ρ 響7

9r,,.,,

A..t'

.,

r.●

ρ 冒「 ・,

㌔P7,一

Re

図3.3:複 素 数 の立 方根

とす る と,W=W2で あ る.こ の ω を,1の 原 始3乗 根 とい う.し た が っ て,

複 素 数 αの3乗 根3Q,に 対 して,x3=α を 満 た す もの は,

3aω 面 ω2面(3.26)

の3つ であ る.よ って,複 素数 では,α の3乗 根3a,は 一意 的 には決 め られ

ない.

命題3.5.6複 素化 され た体K上 の3次 多項式f(x)の 根 は,Kの 元 とωを

用 いた 四則 演算,平 方根,立 方根の組み合 わせ で表 す こ とがで きる3.

証明f(x)は モニ ックであ る として も一般 性 は失 わない.よ って!(x)を,

ノ(x)-x3+px2+qx+r

とす る.x=X-p3と お くと・

f(x)一(Xp3)3+p(Xp3)2+(・ 次 式)

=X3-pX2+pXa+(1次 式)

3式(3 .26)で 示したように,立 方根を全 て考えれば,必 然的に ωを用いることになる

が,こ こでは明示的に ωの必要性を加えている.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性

であるか ら,2次 の項の無い3次 多項式に帰着できる.よ って,

!(x)一 伍3+ax+b

と して,そ の 根 を α,β,ッ とす る.

Z)=(α 一 β)2(β 一 ッ)2(y一 α)2

とす る と,Dは α,β,'Yの 対 称 式 で あ る か ら,基 本 対 称 式

α+β+7=0

cx゚一}一,゚ry-1-rya=a

αβッ=一 わ

を用い て表 す こ とができる.実 際

D=‐4a3‐27b2

105

で ある 。次 に ~① を考 える.複 素数 で は,>Dの 取 り方 は2通 りあ るので

こ こで は,

Vく万=(α 一β)(β一7)(ッ ーα)

とす る.こ の とき,α を β,β を ッ,7を αに置 き換 えて も ~/Dの 値 は変 化

しない ので,こ のV万 の取 り方 は,α,β,㌣ が ノ(勾 の3根 の うち の どれを

示 す か は完全 には規 定 してい ない ことに注意 す る.こ こで,

P1=a+゚+ry=O

P2=α 十 ωβ 十W2ry(3.27)

ps=α+ω2β+ω7

とす る.こ の とき,1の 原 始3乗 根 ω と,α+β+7=0を 用 い る と,

pa3=α3+β3+rya+3w(α2β+β2ッ+72α)

十3ω2(α β2十 βツ2十7α2)十6α β7

一 誓 αβ7+3(α 一 β)(β 一 ツ)(ツー α)

であるか ら,基 本対称式 とV万 を用いれば,

p・一 誓b+1藏 の

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 106

で あ る.よ っ て,

pz=3

32b+(313+2/aC/(3.28)

で あ る.た だ し,複 素 数の立 方根 には多価 性が あ り,3つ の値 を取 りうる.

実際 式(3.28)の 右辺 は,pa,Wpa,W2p2の3つ の うちの どれか であ る.一

方 で,

p2=U%+W゚+W2'フ'

WP,-7+ω α+ω2β

w2p2一 β+ω7+ω2α

であ るか ら,pa,Wpz,Wzpzは α,β,ッを入れ替 えた値 になってい る。よっ

て,paは αが!@)の3つ の根の うちの どの根 に対 応す るか で決定 され る

ので,式(3.28)の 右辺 の立方根 の値 は 自由 に選 ぶ ことが でき る.ま た,

p33eα3十 β3十y3十3w(α β2十 β・γ2十 ツα2)

,十3ω2(α2β 十 β27十,Y2a)十6α β7

一 誓 αβ7-3(α 一 β)(β一7)(7一 α)

であるか ら,基本対称式 とV万 を用いれば,

P33=-27b2-32・ 厄而

で あ る.よ っ て,

2

)70

一2(十

3

一3(》一b-

一2}司3=

3P (3.29)

で あ る.こ こで,paの とき と 同様 に考 え れ ば,p33の3乗 根 で あ る式(3.29)

の 右 辺 の値 は,ps,Wp3,W2p3の3つ の うち の どれ か で あ る.た だ し,

p、ps-(α+ω β+ω2の(α+ω2β+ω の

=(α+β+の2-3(α β+β7+7α)

_‐3a

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 107

で あ るか ら,式(3.29)は,式(3.28)と の 積 が 一3aと な る よ うに 選 ぶ 必 要 が

あ る.し た が って,pa,psの 値 が 定 ま り,連 立 方 程 式(3.27)を 解 い て,

+●31_

3

β=ω

ツー'3

(3.30)

で あ る.た だ し,

3 -1-b2+G)3+(ξ)23

とす る.

132‐2b‐Ca/+C2/_‐3a

補 題3.5.7Kを 複素化 された体 とす る.こ の とき,次 が成 り立つ.

(1)Kの 元が全てε作図可能であるとき,Kを2次 拡大 して得 られるLの

元は全て ε作図可能である.

(2)Kの 元 が全て0作 図可能であるとき,Kを2次 拡大,ま たは3次 拡大

して得 られる五の元 は全て0作 図可能である.

証明 証明はほ とん ど同様に行われるので,(2)の 場合のみ証明を行 う。

[L:K]は2も し くは3で あ る か ら,L=K(α)と す る と,α はK上3次

以 下 の 多 項 式f(x)の 根 で あ る。degf(x)=2の と き,!(x)=x2+ax+b

と書 け る.よ っ て,

一α土》画.●

2

であ る。したがって,xはKの 元の四則演算 と平方根で表 す ことができるの

で,補 題3.5.5か ら0作 図可能である.特 に,1の3乗 根 ωはx2+x+1=O

の根 で あるか ら,0作 図可能 であ る.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 1:

deg!(x)ニ3の と き,!(勾=x3+P∬2+卿+rと 書 け る.よ っ て,

cx=X一 誓 とす る と,掴 一x3+・x+bと 書 け るゆ え に,xは 式

(3.30)の うちのいずれ かで あるか ら

X=ω3-k3 一lb2+a3)3+G)2+バ+(a3)3+(1)2

(k=0,1,2)

であ る.し たがって,∫(X)の 根 はKの 元 の四則 演算 と平 方根 お よび立方

根 で表 す こ とが でき る・さ らに,a-Xp3で あ るカ・ら,鞭3・5・5か ら

0作 図可能 で ある.

Lの 元は,Kの 元を係数 とする αの多項式 として表すことができる.以

上か ら,Lの 元は全て0作 図可能である。 口

補題3.5.8Kを 複素化 され た体 で ある とす る.こ の とき,次 が成 り立 つ 。

(1)五=K(α)がK上 の2次 拡大 な らば,M=K(α,�)は,K上 の準2次

拡大であ り,Mは 複素化された体であ り,Mの 元はKの 元か らε作

図可能である.

(2)L=K(α)がK上 の3次 拡大な らば,M=K(α,司 は,K上 の準{2,3}

次拡大であ り,Mは 複素化された体であ り,Mの 元はKの 元か ら0

作図可能である。

証明 証明はほとん ど同様に行われるので,(2)の 場合のみ証明を行 う.

Ko=K∩II8と す れ ば,K=Ko(の で あ る.ま た,L・=K(厨)と す る と,

K⊂Lで あ る.L=K(α)がK上 の3次 拡 大 よ り,α のK上 の最 小 多 項

式 を!(勾 とす る と,命 題12.6か ら,!(x)=x3+a2x2+alx+αoと 表 す

こ とが で き る.f(x)=x3+�2i2+�1x+aaと す れ ば,

ノ(司=α3+α2α2+α 、α+α 。

=α3+α2α2+α1α+ao

●!

であ るか ら,!(x)は 石を解 にもつ.五 はK上 の3次 以下 の拡大体 である.よ

って,任 意 のLの は,Kの 元か ら0作 図可能 である.ゆ えに,M=K(α,司

とお くと,任 意 のMの 元 はKの 元 か ら0作 図可能 で ある.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 109

また,f(x)はL上 の多項式 とも考 え られるの で,.M=L(�)は 五上 の3

次 以下 の拡大 体 である.し たがって,MはK上 の準{2,3}次 拡 大 であ る.

さ らに,KはZを 含むの で,M=K(Reα,Imα)で あ り,-Mは 複素 化 さ

れ た体 で あ る.口

定 理3.5.9α を複素数,Kを 複素 化 され た体 とす る.

(1)α がK上 のある準2次 拡大体Lに 含 まれ るな らば,α はKの 元 か ら

ε作図可能である.

(2)α がK上 のあ る準{2,3}次 拡 大体Lに 含 まれ るな らば,α はKの 元

か ら0作 図可 能で ある.

証 明 証 明 はほ とん ど同様 なので,(2)の 場合 のみ証明 を行 う。そ こで,

K=Lo⊂L1⊂L2⊂..⊂ 玩([Lz+1:五 ¢]=2ま た は3)

と し,ん に関す る帰納法 に よって示 す.

ん一1の ときは,補 題3.5.8よ り明 らかであ る.よ って,ん くnの とき,定

理 が成 り立つ と仮定 して,k=nの ときを考 える.補 題3.5.8か ら,L1を 含

む よ うなK上 の準{2,3}次 拡大体Mが 存 在す る.そ こで,

M=LIMCLZMC…LnM

とす る と,補 題3.4.7と 同様 に して,[L¢+1M:LiM]は[LZ+1:L,]以 下 であ

る ことが分 か る.よ って,Ln-MはM上 準{2,3}次 拡 大 であ る.帰 納法 の

仮定 によ り,塩MはMの 元 か ら0作 図可能 であ る.補 題3.5.8か ら,M

の元 はKの 元 か ら0作 図可能であ るか ら,現 の元 は,Kの 元 か ら0作 図

可能 で あ る 口

3.6可 解 群

次 に挙げる定理は,あ る数 αの作図可能性に関する定理であ り,本論文

における主定理である.

定 理3.6.1α を複素数,Kを 複素数 の部分体 とす る.こ の とき,次 の こ と

が成 り立 つ,

(1)次 は同値 である.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 110

(1)α がKの 元 か らε作 図可能 で ある

(2)K上 のあ る準2次 拡大 体 五(⊂C)が 存在 して,α ∈Lで ある.

(3)K上 の αの最小 多項式 の分解 体Eに 対 して,[E:珂=2kで

あ る.

(II)次 は同値 である.

(1)α がKの 元 か ら0作 図可 能 であ る.

(2)K上 の ある準{2,3}次 拡大 体L(⊂C)が 存在 して,α ∈Lで

ある.

(3)K上 の αの最小多項式の分解体Eに 対 して,[E:瑚=2鯉 で

ある.口

この定 理が成 り立つ ことを示 したい.こ れまでの考察(定 理3.5.9)か ら,

(1)と(II)の どち らに関 しても,(1)と(2)の 同値 性,お よび,(2)⇒(3)は

す でに示 され てい る.よ って,定 理3.6.1を 示 す ために は,あ る体K上 の

2総次 の正規 拡大体Eが,K上 の準2次 拡大体 であ る こと,ま た,あ る体K

上 の2k31次 の正規拡大体Eが,K上 の準{2,3}次 拡大 体 である こ とを示

せば よい.と ころで,体K上 の正規拡大 体Eに 対 して,定 理3.1.15か ら,

[E:珂=IAut(E/K)1で ある こと,定 理3.2.3か ら,EとKの 中 間体B

と,Aut(E/K)の 部分群 σが1体1に 対 応す るこ と,系3.2。5か ら,BのK

上 の拡 大次 数 は,UのAut(E/K)に お け る指数 と等 しい こ とが分 か って

い るので,結 局次 の命題 を示 せば よい.

命 題3.6.2Gを 有 限群 とす る.こ の とき,

(1)IGI=2た の と き,あ る部 分 群 の列

/e}=GICG2c…CGn=G

が あ っ て,2≦ 琶≦nに 対 して,1砧/σ`_11ニ2で あ る.

(2)IGI=2k31の とき,あ る部 分 群 の列

{e}=GICG2C…CGn=G

が あ っ て,2≦ ② ≦nに 対 し て,1(xi/GZ-1i=2ま た は,IGz/(i-1i=3

で あ る.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性

実 際 命 題3.6.2が 示 されれ ば,次 の定理 が得 られ る.

定理3.6.3Kを 体,EをK上 の正規拡大体 とす る この とき,

(1)[E1:K]=2た な らば,EはK上 の準2次 拡大体 であ る.

(2)[E:珂=2鯉 な らば,EはK上 の準{2,3}次 拡大 体 である.

が成 り立っ.

111

証明 証明はほ とん ど同様 に行われるため,(2)の 場合のみ証明を行 う.

まず,定 理3。1.15か ら,[E:κ]=lAut(E/K)1で あ るか ら,Aut(E/K)=

2南3で あ る.こ の と き,命 題3.6.2か ら,Aut(E/K)に 対 して,あ る群 の列,

{e}eGl⊂G2⊂ … σπ_1⊂Gn=Aut(E/K)

が 存 在 し て,IGZ/Gz-11=2ま た は,10、/GZ-11=3で あ る.EはK上 の 正

規 拡 大 体 な の で,定 理3.2.3か ら,上 の群 の 列 に対 応 す る よ うな 体 の列,

E=K1⊃K2⊃ … ⊃Kn-1⊃Kn=K

が存 在 す る.こ の とき,命 題A.4.9か ら,1σ,+11;1σ ¢llσ乞+1/σ¢1であ る.と

こ ろ で,命 題1.2.7か ら,[K1:Kz+1]=[K1:Kz][瓦:瓦+1]で あ る.系

3.2.4,定 理3.1.15か ら,lG+11=[K1:瓦+1]お よ び,iσ ¢1=[K1:瓦]で あ

る か ら,【(31+1/Gd=[、 臨:Ki+1]で あ る.ゆ え に,Iq+1/(剥 は2か3で あ

るか ら,[Ki:瓦+1]は2か3で あ る.し た が っ て,EはK上 の 準{2,3}次

拡 大 体 で あ る.口

以 上 に よ り,命 題3.6.2を 示 す こ とを 目標 とす る.ま ず は,命 題3.62の

(1)の 場 合,つ ま り,1σ1=2鳶 の と き を考 え る.

定 義3.6.4Gの 元x,gに 対 して,xと シが あ るGの 元gに 対 して,

一1

ツegxg

を満 た している とき,露 は 〃に共役 である とい う.ま た,{9x9-lIs∈G}を,

xを 含 む共役類 とい う.口

容 易 に確認 で き る ことであ るが,Gの 任意 の元 はそ れ 自身 に共役 で あ

る.ま た,xが ッに共役 であれば,㌢ はxに 共 役 である.さ らに,xがgに,

ッがzに 共役 であれば,xはzに 共 役で あ るか ら,「xカ1に 共役 で あ る」

とい う関係 は,同 値 関係 であ るこ とが分か る.共 役類 とは,こ の同値 関係

によ る,同 値類 に他な らない.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 112

補 題3.6.5Gを 群 とす る.ま た,(7の 元xに 対 して,xと 可換 なGの 元 の

集 合 をCG(x)と す る と,cG(勾 はGの 部分群 で あ る.こ の とき,xと 共 役

なGの 元 の個数 は,0σ@)の 剰余類 の個数 と等 しい.

証 明 まず,OG@)がGの 部分群 であ る ことを示す.CG(x)の 元をg,hと

す る と,Gの 元xに 対 して,

xgh-1=gxん 一1

=gxh-1ガ1灘

;gx(∬ ん)-1∬

=gx(hx)-lx

=9諮 ガ1ん 一lx

=9h-lx

で あ る か ら,補 題A.4.3よ り,CG(x)はGの 部 分 群 で あ る.

次 に,Gの 元9,hに 対 して,ど の よ うな とき に,卯g-1=hxh-1と な る

か を 考 え る.条 件,gxg-1=hxh-1は,

(ん『19)x-x(h-19)

と同値 で あ り,こ れ は,rxがh-1gと 可換 であ る」 こ とに他 な らない.こ

れを言 い換 える と,h-lg∈CG(x)で あ るか ら,g∈ んOG@)で あ る.つ ま

り,剰 余類hCG(x)の 元 αは,xを 同 じ共役 な元axa-1に 移 し,異 な る剰余

類 の元 は,xを 異 な る共役 な元 に移 す.し たが って,xと 共役 な元 の個数

は,0σ@)の 剰 余類 の個数 と等 しい.口

さて,Gの 任意 の元 と可換 なGの 元xを 考 える.こ の とき,xは,Gの 任

意 の元gに 対 して,

一1

9躍9=x

で あ るか ら,xは ただ1つ だけで共役 類 を成す.こ の よ うに,Gの 任意 の

元 と可換 なGの 元 の集合 をz(G)と 書 き,Gの 中心 とい う.容 易 に分 か る

よ うに,Z(G)はGの 単位元eを 含 む.ま た,Z(G)がGの 部分 群 である こ

とも容 易 に示 され る.

補 題3.6.6群Gが あ って,iq=2鳶 で あ る とす る.こ の と き,次 が 成 り

立 っ.

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 113

(1)Gの 単位元e以 外に,Gの 全ての元 と可換なGの 元が少な くとも1つ

存在する.

(2)Gは,位 数2の 正規部分群 を持 つ.

証 明Gの 複数 の元 か らな る共 役類 を,01,02,…,(%と す る.0、,c2,…,Om

の元 の個 数 を そ れ ぞ れll,12,…,砺 と し,Z(の の位 数 をzと す る と,

2k=z十h十12十 … 十1,,, ,

で あ る.こ の とき,補 題3.6.5お よ び命 題A。4.9か ら,ll,12,…,lmが 全 て2

で 割 り切 れ る こ と,z≧1で あ る こ とを 考 え る と,zは2で 割 り切 れ る.し

た が っ て,Z(G)はe以 外 の元 を少 な く と も1つ 持 つ.

次 に,eで ないZ(G)の 元 をaと す る と,補 題.,.20よ り,α の位数 は2歪

と してよい.こ の とき,H={e,α2H}と す ると,(a2z-1)2_a2z=eで あ る

か ら,Hは 明 らかに,Gの 部分群 であ る.ま た,aがGの 任 意 の元 と可換

であ るか ら,Hの 全 ての元 はGの 任意 の元 と可換 で ある.よ って,HはG

の位数2の 正規部分群 であ る.口

補 題3.6.7G,(γ を群 とし,!をGか らG'へ の全射 な準 同型写 像 とす る.

この とき,次 が成 り立っ.

(1)H'がG'の 部分群 であれば,H_f-1(H')はGの 部分群 である.

(2)G'の2つ の 部分 群 κ'⊂H'に 対 して,H=f-1(H'),K=!-1(K')と

す る と,障/瑚;111'/K'1で あ る.

証 明 まず,HがGの 部分群 である ことを示す.Hの 元x,yに 対 して,H'

がG'の 部分 群 であるか ら,

x,9∈H⇒!(x),!ω ∈H`

⇒f(x)!(9)-1-∫(xy-1)∈H'

=⇒xy-1∈ 、H

と な り,補 題.,.3よ り,HはGの 部 分 群 で あ る.

次 に,写 像!を,Hに 制 限 して考 え る と,!はHか らH'へ の全射 な準

同型 であ る.そ こで,写 像9をH'か らH'/K'へ の 自然 な写像 とす る と,9

と ノの合成 写像g。 ノは,Hか ら,H'/K'へ の全射 な写像 であ る.こ の と

き,Hの 元xと 〃に対 して,g。!(勾=g。f(y)と な るのが どのよ うな とき

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第3章 ガ ロア理論 と作 図可能性1.14

かを考 える.g。f(x)=g。!(の で ある ことは,!(勾 と!(〃)が,H'/K`の

同 じ剰 余類 の元 であ る こと,つ ま り,f(〃)-1f(勾 ∈K`で あ る ことで あ り,

fが 準 同型 であるか ら,ア(ガ1勾 がK'の 元 で ある こと と同値 であ る。した

が って,ガ ㌃ がKの 元 であ るこ とと同値 であ り,IH/珂=口'/K'1で あ

る.口

以上 の結 果を用 いて,命 題3.6.2(1)を 示 す.

証 明(命 題3.6.2(1))Gの 位数 に関す る帰納法 で証 明す る.ま ず,[q=2

の とき は明 らか であ る.そ こで,IGI<2鳶 の とき,命 題 が成 立す る として,

Iq=2た の ときを考 える.補 題3.6.6か ら,(7は 位数2の 正規部 分群Eを

もつ.よ って,1σ/珂 く2ん で あるか ら,帰 納法 の仮定 よ り,

{eH}=GiCGZC…CG�=G/H

の よ うな 部 分 群 の 列 が あ って,iOl/(71 -1i=2で あ る.こ の と き,Gか ら

G/Hへ 全 射 な準 同 型 写 像 ∫が存 在 す る の で,σ6=!-1(/G:乞)と す る と,補

題3.6.7か ら,GiはGの 部 分 群 で あ り,104Q-1[=1(71/q-1i=2で あ る.

した が っ て,あ る群 の列

{e}CH=GICG2C…CGn=G

が 存 在 して,臥/α 一11=2で あ る.口

次 に,}(7[=2k31の ときを考 え る.そ こで,あ る部分 群 の列 に対 して次

の よ うな定 義 を行 う.

定義3.6.8群Gに 対 して,部 分群 の列

G=(7・ ⊃G・ ⊃GZ⊃ … ⊃ σ。={e}

が あ って,以 下 の2つ

(1)傷+1は σ¢の正規部分群 であ る.

(2)GZ/GZ+1は 巡 回群 である.

を満 たす とき,Gは 可解群 である とい う.口

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 115

実 は,素 数pに 対 して,1σ1=pkの とき,Gは 可解 群 であ る こ とが知 ら

れ てい る.そ して,1904年 に,素 数P,4に 対 して,IGI=pagaの 群 は可 解群

であ る ことが,Burnsideに よって証 明 されてい る.そ して,そ のお よそ70

年後 に,松 山,Goldschmidt,Benderら に よ り,群 論 的な証 明 が得 られてい

る(参 考文 献[10]参 照).こ の結果 を引 用す る.

定 理3.6.9あ る群Gが あ っ て,iq=2》 の と き,(穿 は 可 解 群 で あ る.

こ の結 果 を 用 い て,命 題3.6.2(2)を 示 す.

証 明(命 題3.6.2(2))Gの 位数 に関す る帰納法 で証明 す る.

lq≦3の ときは明 らか である.1σ1<231の とき命題 が成 り立つ とし

て,[q=231の ときを考 える.こ の とき,i(-Y7/珂 が2ま たは3と な るよ う

な,Gの 部分群11が 存在 すれば,帰 納法 の仮定 よ り,群 の列

G⊃H=Hi⊃HZ⊃ … ⊃Hn={e}

が あって,1≦i≦n-1に 対 して,瓦/瓦+1は2か3で あるか ら,そ の よ

うなHを 構 成す る.

定理3.6.9よ り,(,aは可解 群である.ゆ えに,Gの 正規部分群 で,G/σ1が

位 数nの 巡 回群 〈a>(ただ し,an=e)と 同型 となる σ1が 存 在す る.nは2

か3で 割 り切れ るので,〈α〉は,指 数 が2ま た は3の 部分群,つ ま り,〈α2>ま

たは 〈a3>を部 分群 に持つ.そ こで,Nを,同 型G/σ1窪 〈α〉によってr〈a2>

も し くは,〈α3>に対 応 す るG/G1の 部分 群 であ る とす る と,Gか らG/G1

へ全射 な写像!が 存在す るので,補 題3.6.7か ら,H= 1(N)と すれ ばよ

い.こ の とき,

1σ/珂=ic(7/Gl)/2VlNl〈a>/〈ae>1(た だ し,e=2ま た は3)

で あ るか ら,G/H=2ま たは,(7/H=3で ある.口

以 上 に よ り,本 論 文 の主 定理で あ る,定 理3.6.1が 完全 に証 明 され た こ

とにな る.

さ て,1.3節 か ら,2次 方程式の解 が ε作 図可能 で ある こ と,3次 方 程式

の解 が一 般 的には ε作 図不 可能で あ るこ とが分 か ってい る.ま た,2.5節

か ら,2次,3次 の方 程式 の解 は0作 図可能 であ るが,5次 方程式 の解 は一

般 的に は,0作 図不可能 である ことが分か ってい る.そ こで,定 理3.6.1を

用 い た応 用 として,そ れ以外 の場 合,つ ま り,n≧4の とき,n次 多項 式 の

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 116

根 が ε作 図可 能 であ るか,ま た,n=4も し くは,n≧5の とき,n次 多項

式 の根 が0作 図可能 であ るか を考 える.

!(④ を,あ る体K上 のn次 多項式 と して,!(勾 の分 解体 をEと す る と,

定 理3.1.15か ら,IAut(E/K)ト[E:K]で あ る,Aut(E/K)の 元 は根 の

入れ替 え方 を指定 する写像 なので,IAut(E/K)1は 最大 でn!で あ る.実 際

に,次 の結果 が知 られてい る(詳 細 は参考文献[8]を 参照).

定理3.6.10Q上 の多項式f(勿 を,次 の よ うに定 め る,

!(x)一 ・Cn1)釜+(婁)妥 …+(一 ・畷

この とき,!(の は既約である.ま た!(勾 の分解体をEと すれば,Aut(E/Q)

は,n個 の文 字の集 合{1,2,…,n}の 置換 全体 のなす群,つ ま り,n次 対称

群 と呼 ばれ る群 亀 と同型 となる.

この定 理 か ら,Aut(E/K)の 位数 が,最 大 値 のn!と な る場 合 が存 在 す

る ことが分 か る.し か し,一 般 のK上 の多項 式 ∫(x)に お い ては,常 に

Aut(E/K)の 位数 がn!と なる とは限 らない.そ の よ うな場合 に は,!(x)

の分 解体Eに 対 して,[E:K]はn!の 約数 とな る.そ の ことを示 す.

命 題3.6.11Kを 複素数 の部分体,f(勾 を体K上 のn次 多項 式 とし,ノ(勾

の分解体 をEと す る.こ の とき,Aut(E/K)はSnの 部分群 に同型 であ る.

証 明 ア(勾 の 根 を,θ1,θ2,・,θ ηとす る.こ の と き,Aut(E/K)の 元 σを

Bl82Q=

6e1682

en

ben

の よ うに 置 換 の形 で 表 現 す る こ の と き,0.82=θ3と す る と,θゴも ノ(勾 の

根 で あ る か ら,σ θ琶を θ。(のと表 し て よい.こ の とき,σ に 対 し て,置 換

(茄 ゐ)を対 応 させ る写像P:Aut(E/K)一 →Snを 考 え る.こ の ρが単射 な準 同

型写 像 であ ることを示 す.そ こで,Aut(E/K)の 任意 の元 を σ1,σ2とす る.

まず,ρ が単 射 で あ る こ とを 示 す.そ こ で,魯 の元,P(σ1),ρ(σ2)に 対 し

て,ρ(σ1)=P(σ2)で あ る とす る.ρ(σ1):2-→ σ1(の,ρ(σ2)2-→ σ2(2)

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第3章 ガロア理論と作図可能性 117

で あ る か ら,σ1(の=σ2(2)で あ り,θ 。、②=θ σ、(i)であ る.つ ま り,各ezに

対 して,σ1(θ ∂=σ2(θ,)と な る,こ れ に よ り,σ2-1σ1θFθ1を 得 る.よ っ て,

σ2-1σ1が 恒 等 写 像 とな る か ら,σ1=σ2と な っ て,ρ は 単 射 で あ る.

次 に,ρ が準 同型写像 で あ るこ とを示 す。そ こで,σ1と σ2の 合 成写像

σ1σ2が,ρ によって どの よ うに写像 され るかを考 え る.

6162Bieσ1θ σ2(の=θ σ1σ2ω

で あ る.よ っ て,ρ(σ1):2→ σ1(の,ρ(σ2):2→ σ2(の で あ る か ら,ρ(σ1σ2)

は,ρ(σ1)と ρ(σ2)の 合 成 写 像 ρ(σ1)ρ(σ2)で あ る,し た が っ て,ρ(σ1σ2)=

P(σ1)ρ(σ2)で あ る.

以上の ことか ら,ρは単射な準 同型写像である.よ って,Aut(E/K)は

Snの 部分群に同型である.口

ゆ え に,体K上 の多 項式!(勾 の分 解体Eに 対 して,命 題A.4.9か ら,

Aut(E/K)はn!の 約数 であ るか ら,定 理3.1.15よ り,[E:K]はn1の 約数

であ る.し たが って,次 の定理 が成 り立つ.

定理3.6.12∫@)を あ る体K上 の多項式 と し,α を!(勾 の根 とす る.こ

の とき,

(1)degf(x)=4の とき,α はKの 元 か ら0作 図可能 であ り,一 般 には ε

作 図不可能 であ る,

(2)degノ(④ ≧5の とき,一 般 には,α はKの 元 か ら0作 図不可能 であ る.

が成 り立っ.

証 明 八勾 の分 解体 をLと して,α のK上 の最 小多項式 の分 解体 をEと

す る。この とき,E⊂Lで あるか ら,[E:K]は[L:珂 の約数 で ある.た

だ し, .f(x)が 既約 な らば,∫(x)が αの最小 多項式 なので,L=Eで あ る.

degノ(x);4の とき,[L:珂 は4!=233・ の約 数 で あ る か ら,[L:K]=

231で あ る.し た が って,定 理3.6.1か ら,α はKの 元 か ら0作 図 可 能 で

あ る.と こ ろで,定 理3.6.10か ら,[L:K];233と な る既 約 な 多 項 式 ノ(の

が 存 在 す る.こ の とき,L=Eで,[E:K]が3で 割 り切 れ る.こ の よ うな

場 合 は,定 理3.6.1か ら,α は ε作 図 不 可 能 で あ る か ら,一 般 に は,α は ε

作 図 不 可 能 で あ る.

ま た,deg!(x)=n≧5の とき,定 理3。6.10か ら,[五:珂=n!と な る

!(勾 が 存 在 す る.こ の とき,[E:K]は5で 割 り切 れ る.定 理3.6.1か ら,

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第3章 ガロア理論 と作図可能性 118

このような場合は,αは,Kの 元か ら0作 図不可能であるから,αは,一般

にはKの 元から0作 図不可能である.口

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119

第4章 正多角形の作図

正3角 形,正 方形を ε作図や0作 図することは容易である.ま た,作 図

法 εでは,角 の2等 分線が作図できるので,正6角 形や,正8角 形など,正

3角 形や正方形の頂点の数を次々に2倍 にしてできるような正多角形は全

て ε作図可能である.さ らに,作 図法0で は,角 の3等 分線も作図できる

ので,正9角 形や,正12角 形など,正3角 形や正方形の頂点の数を次々に

2倍 や3倍 にしてできるような正多角形は全て0作 図可能である.と ころ

で,こ れ以外の場合として,正17角 形が ε作図可能であることが,ガ ウス

によって発見されている.

そ こで この章では,こ れ までの結果を応用 し,正 多角形(以 後,正n角 形)

が,ど の よ うな ときに ε作 図や0作 図可能 であ るか を考 える.さ らに,実

際 に正n角 形 を ε作 図お よび,0作 図す るこ とを考 える.以 下,作 図法 ∫

を εか0で あ る とす る.

4.1円 分多項式

まず,作 図法 ∫ に対 して,正n角 形が ア作 図可能であるための条件を

考 える.

正n角 形(正 確には,正n角 形 の頂点)が ∫ 作図可能 であるためには,

θ一 …竺 とした とき,角 θが ∫作 図可能であればよい。もし涌 θが ∫作

図可能 であれば,作 図法 ∫ によって円周をn等 分することができるか ら,

正n角 形が ∫作図可能であることは明 らかである.

角 θが ∫ 作図可能 であるためにはsin8とcosθ が それぞれ ∫作 図可能

で ある こ とが必要 かつ十分 であ り,複 素数 が作 図可能 である ことの定義か

ら,そ れ は,複 素数 α=cosθ+isin8が ∫ 作 図可 能 であ る こ とと同値 で

あ る.よ って,正n角 形 の作 図可 能性 を考 え たければ,定 理3.6.1か ら,α

の最小 多項 式の分 解体 のQ上 の拡 大次数 を考 えれば よい.

以上 か ら,α の最小 多項式 につい て考 え る.ま ず,α π=1で あるか ら,α

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第4章 正多角形の作図 120

は1のn乗 根 であ る.よ って,1のn乗 根 として の αの最小 多項式 を考 え

る.そ こで,次 の よ うな定 義を行 う.

定 義4.1.1Sn-1を 満 たすある複素数 ζが,1≦d<nで あ る全 てのdに

対 して ご ≠1で あ る とき,ζ を1の 原始n乗 根 とい う.□

補 題4.1.2ζ を1の 原 始n乗 根 とす る.こ の とき,ζ α=1で あ れ ば,α はn

で割 り切 れ る.

証 明 整 数p,rに 対 し て,a=pn+r(n>r≧0)で あ る とす る.こ の

と き,

ζα=(ζ π)Pく「=rT=1

である。1の原始n乗 根の定義から,r=0で なければならないので,題 意

は成立する.口

補 題4.1.3ζ を1の 原始n乗 根 とす る.こ の とき,raが1の 原 始n乗 根 で

あ るため の必 要十分条件 は,α とnが 互 い に素 であ る ことで ある.

証 明 ζαが1の 原 始n乗 根 で あ る とす る.こ の とき,aとnに 最 大 公 約 数

dが あ っ て,α=da',n=dn'で あ る とす る と,

(ζα)n=(ra)d;(ζ π)d=(rn)α=・1

で あ るn�,a痰ヘ 整 数 で あ る こ とに 注 意)。 よ っ て,ζ αが1の 原 始n乗 根 で あ

る か ら,d=1で あ る.

逆 に,aとnが 互 い に素 であ る とす る.こ の とき,自 然リxに 対 して,

(ζα)皿=1と な る条件 を考 える.(ra)皿=ζ αzであ り,ζ は1の 原 始n乗 根 で

あ るか ら,補 題4⊥2よ り,axはnで 割 り切 れ る.α とnは 互 い に素 なの

で,∬ はnで 割 り切 れ る.よ って,ζαは1の 原 始n乗 根 である.

1の 原 始n乗 根の1つ を ζとす る と,1のn乗 根 は,n個 あ って,

1,く,ζ2,,ζ π一1

であ る.し たが って,1のn乗 根を根 に持 つ多項 式 は,

xn-1-@-1)@一 ζ)(x一 く2)…@-rn-1)

と因数分解できる.そ こで次のような多項式を考える.

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第4章 正多角形の作図 121

定義4.1.4n≧1と し,ζ を,あ る1の 原始n乗 根 であ る とす る.こ の と

き,全 ての1の 原 始n乗 根 を根に持つ 多項式,

Φ。@)-H@一 ζα)

(Q,n)=1

を円分多 項式 とい う.n=1の とき は,Φ1(の=x-1と す る.

この円分多項 式の性質 を考 えるた めに,い くつ かの準備 を行 う.

[コ

定 義4.1.5あ る整係数 の多項式!(x)が あって,∫(勾 の各 係数 の最大 公約

数 が1の とき,∫(x)を 原始 多項式 とい う.

補 題4.1.6(ガ ウスの補題)2つ の原 始多項式 の積 は,原 始 多項 式 である.

証明2つ の原始多項式をそれぞれ,

!(勾 一 α♂+α ん.、♂-1+…+α 。

9(x)=blxl+ba‐lx1-1+...+bo

と し,背 理 法 で証明 を行 う。

ノ@)g(x)が 仮 に,原 始 多項式 でない,つ ま り,!(x)9(x)の 全 ての項 の係

数 を割 り切 る,あ る素数pが 存在 した とす る.!(x)とg(x)は 原 始多項 式

であ るか ら,f(x)とg(の の それぞれ の項 の係 数 には,pで 割 り切 れない も

のが存 在 す る.そ こで,プ(x)の 項 で,pで 割 り切 れない最低 次 の項 の係数

をa2,g@)の 係数 で,pで 割 り切れ ない最低次 の項 をbゴ とす る.こ の とき,

!(x)g(x)の ω溺 の項 の係数 は,

α・bi+ゴ+α ・b、+ゴ.・+…+αzbフ+…+α 爾b・ (4.1)

で あ る.仮 定 に よ り,式(4.1)の 項 の うちで,αあ を除 いて,そ れ以 外 の項

は全 てpで 割 り切れ る.し たが って,式(4.1)全 体 の値 はpで 割 り切れ な

い.こ れ は,!(勾g(の の全ての項 の係数 がpで 割 り切 れ る と仮 定 した こと

に矛盾 す る.ゆ えに,題 意 は成立 す る.口

命 題4.1.7円 分 多項 式に関 して,次 の2つ が成 り立つ.

(1)xn-1=Hdlπ Φd@)で あ る ・

(2)Φ η@)は 整 係 数 か つ モ ニ ック で あ る.

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第4章 正多角形の作図 122

証 明 ま ず,♂-1=Hd[.Φd@)で あ る こ とを示 す.e聖=ζ とす る.こ

の と き,

xn-1-H(x-rk)k=1

一(∬-!)H(x-・k27rin)

k=1

である.こ こで1n-1-Niを 既約分数 に して,同 じ分母 ごとに鯉 す る と,nn

xn-・ 一(x-・)H(H(x-・ 誓2・乞))

列π1≦ 鳶'≦d-11≠d(k',d)=1

e(x-・)rIΦ ・(x)

=rjリa(x)

dlη

で あ る.し たがって,げ 一1=n伽 Φd(x)で あ る.

次 に,Φ π@)が 整係数 かつモニ ックであ るこ とを,nに 関す る帰納法 で

証 明 す る.n=1の とき は明 らか で あ る.よ って,n<kの とき 成 り立 つ と

し て,n=kの とき を 考 え る.ん の 約 数 をdl(_1),d2,…,dm← 初 とす

る と,

xk-1=リd、(勾 ×リd、(x)× … ×Φdm_、(勾 × Φん(勾

で あ り,帰 納 法 の仮 定 か ら,リd、(勾,リd、(勾,…,Φd_、(勾 は整係 数 かつ モ ニ

ックで あ る.よ って,補 題4.1.6よ り,∫(x)=リd、(x)×リd,(x)x… ×Φdm -、(の

は整 係 数 か つ モ ニ ッ クで あ る.し た が っ て,!(勾 が モ ニ ッ クで あ る こ とか

ら,各 項 の 係 数 の最 大 公 約 数 は1と な っ て,f(x)は 原 始 多 項 式 で あ る.と

こ ろ で,xk-1が 整 係 数 で あ るか ら,リk(x)はQ上 の 多 項 式 で あ る.そ こ

で,軌(x)に 適 当 な有 理 数 石を か け て,石 軌(勾 が原 始 多 項 式 で あ る よ うに

で き る.こ の とき,

石(♂ 一・)一 綱 石Φ・(勾(4・2)

であ る.式(4.2)の 右辺 は,2つ の原始多項式 の積 であ るか ら,補 題4.1.6よ

り,式(4・2)の 左辺 であ るb(xk-・)姦 謹 係数 で原始 多項式 であ り,b-・

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第4章 正多角形の作図 123

となる.ゆ えに,軌(勾 は,は じめ か ら整係数 の多項式 である。また,」じ鳶一1

と!(勾 がモ ニ ックかつ整係数 であ る こ と,リn(x)が 整係 数 であ る ことか

ら,Φ π(x)は モニ ックであ る.口

複素数 αが,あ る体Kの 元から∫作図可能であるか どうかを調べ るた

めには,α の最小多項式の分解体のK上 の拡大次数を考える必要がある.

よって,あ る多項式が既約かどうかを判定する方法が必要である.そ の定

理を示す.ま ず,次 の補題を証明する.

補題4.1.8整 係数 の多項式!(勾 がQ上 で可約 な らば,f(x)は 整係数 の

多項 式9(勾,h(勾 を用い て,!(勾=g(x)h(x)と 因数分 解 でき る.

証 明f(x)が,Q上 の多項式90(x),ho(勾 を用 いて,

∫(x)=90(x)ん0(¢)

と因数 分解 された とす る.こ の とき,90(x)とho(x)に 適 当な有理数 をか け

た結 果,そ れ ぞれが原始多項式 とな るよ うにで きる.そ こで,

9@)一 隻9。@)ん@)=璽 ん。(x)Plpa

と して,g(勾 とh(x)が それぞれ原 始多項式 であ るよ うにす る と,

塾 ル)-9(ψ(x)

pipi

⇔ 望∫@)=9(ψ(勾

⇔(1!(x)=p9(x)ん(x)(4.3)

で あ る 。こ こで,qは,4'iQaを 可 能 な 限 り約 分 した 結 果 で あ る 。g(勾,h(x)pPipz

は原 始多 項式 よ り,補 題4.1.6か ら,そ の積g(x)h(x)も 原始 多項式 であ る.

式(4.3)に おいて,gの 各素 因数は9(x)h(x)の 係数 かpの どち らか の約数

であ るが,9(x)h(x)が 原始多項式 であ る こと,P,4が 互 い に素 で ある こと

か ら,q=1で ある.し たがって,!(の=pg(x)h(x)と な るか ら,題 意 は成

立 す る.口

定理4.1.9(ア イゼンシュタインの定理)あ る素数pに 対 して,整 係数の

多項式!(勾 が3条 件

(1)ノ(勾 の最高次の項の係数はpで 割 り切れない.

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第4章 正多角形の作図 124

(2)f(x)の 最高 次以外の項 の係数 は,pで 割 り切 れ る.

(3)f(x)の 定数 項 はpaで 割 り切 れない.

を満 たす とき,!(勾 はQ上 既約である.

証 明 ノ(x)が,3条 件 を満 た してい て,Q上 可約 で ある とす る.こ の とき,

補題4.1.8か ら,L∫(x)は2つ の整係数 の多項 式

9(x)一 α鳶♂+ak.、xk-1+…+α 。

h(x)_blxa+bi_lxi-1+…+bo

を 用 い て,!(x)=g(x)h(勾 と因数 分 解 で き る.ま ず,!(x)の 定 数 項Co=

apboは,pで 割 り切 れ て,p2で 割 り切 れな い こ とか ら,仮 に,αo…0(modP)

か つ,bo≠0(modp)と して も,一 般 性 を 失 わ な い.次 に,f(勾 の ∬の 係

数c1=albo+aoblを 考 え る,bo≠0(modp)と 仮 定 した の で,定 理 の 条

件 を満 た す た め に は,al-0(UQ'L)で な け れ ば な らない.そ こで,f(勾

のxiの 係 数(i<deg!(x))を 考 え る と,

α、bo+α 卜1b1+…+albZ-1+aobz

で あ る.こ こで,α1,α2,…,α 盛一1が全 てpで 割 り切 れ るこ とを仮定 す る と,

!(勾 の係数 は最高次 の項 を除い て全 てpで 割 り切 れ ること,boはpで 割 り

切れ ない ことか ら,aiはpで 割 り切 れ る.さ らに,deg!(x)>degg(∬)>0

であ るか ら,数 学 的帰納法 を用い る ことで,α1,α2,…,akは 全 てpで 割 り

切 れ る こ とが示 され る.そ うす る と,f(x}の 最 高次 の項 の係数 は,α画 で

あるか ら,pで 割 り切れ るこ とにな る.こ れ は定理 の条件 に矛盾 す る.よ っ

て,f(x)はQ上 既約 であ る.口

後 に示 すよ うに,nの 素因数分解 がdlQ2plp2…pm/p墲ヘ 異なる素数)で ある

とき,正n角 形が ∫作 図可能 であるためには,正 拶 角形(2=1,2,…,m)

が作 図可 能 であ る ことが,必 要かつ十分 である.よ って,以 下 の この節 で

は,定 理4.1.9を 用い て,素 数pに 対 して,リps(x)がQ上 既約 である こと示

す こ とを 目標 とす る.

補 題4.1.10pを 素 数 とす る.こ の と き,0<2くp8で あ る2に 対 して,

ps(ろ ≡0(modp)で あ る.

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第4章 正多 角形 の作 図125

証明nがpaで 割 り切 れて,Pl+1で 割 り切 れない とき,1=オ(n)と 表 す こ

とにす る と,

プ!

PsCZ=頚 炉 一 の!

で あ る か ら,μ(psl)〉 μ(乞!)+μ((ps一 のり を 示 せ ば よ い.

さ て,ん ≦p8で あ る んに対 して,た!は,1×2x…xん で あ り,オ(k1)は,

1~kの 中 にp,p2,…,プ の 倍 数 が い くつ 含 まれ る か を 足 した もの に な る

の で,

μ(k!〉一川 劃+…+[券 」

であ る・た鷹 し,回 は審数 粥を超 えない最大の整数を表す ・また,o<2<

psの とき,多 一 声+Pデ であるから,

[多1≧,,+[Pデ 」

で あ る.と くに,ブ=sの ときは等号 は成立 しない.以 上 か ら,

μ(pst)一書[多 」

〉書 圖+書[(P㌃ の」

=μ(の+オ((プ ーの!)

であ り,題 意 は成 立す る.口

定 義4.1.11整 係数 の多項式f(x)とgcx)に 対 して,ノ(x)-g(コ じ)の全ての

係 数 がpで 割 り切 れる とき,

f(x)≡9(x)(m.odp)

と書 く こ とに す る.

補 題4.1.12素 数pに 対 して,

(1十 ∬ゾ ≡1十 ダ(modp)

で あ る.

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第4章 正 多 角 形 の 作 図126

証 明 二 項 定 理 よ り,(1+甥5のxiの 係 数 は,p。qで あ る.補 題4.1ユ0よ

り,2≠0,psで あれ ば,PsCz≡0(modp)で あ るか ら,明 らか に題 意 は成

立 す る.ロ

補 題4.1.13素 数pに 対 して,

1十(y十1)十(g十1)2十 … 十(y十1)P-1≡ ジ ー1(modp).

で あ る.

証 明1+x+♂+…+♂-1に 対 して,

xp-11+x+x2+…+xp-1=

∬-1

で あ るか ら,xに 雪+1を 代入 すれば,

1+(ツ 十1)+(ッ+1)・+_+(〃+1)・ 一・_(9+1)P-1

であ る.し たが って,

(〃+1)P-1yp+㊥ ㌢P}1+…+(PP-1)y

シ 〃

イ ー1+(膨 一2+…+(pp-、)

であ るか ら,題 意 は成 立す る.

補題4.1.14素リpに 対 して,

Φ。・(x)-1+ゾ1+・2・s-1+…+x(・-1)Ps-1

で あ る.

証 明psx-1=ndlp,Φ4(勾 で あ る か ら,

psx-・ 一 Φ。・(x)・HΦ ・(x)一 Φ。・(小(xPs-1-1)

伽3-i

で あ る 。し た が っ て,

xps-1_1枕 ・ 1惚2・3一1+_+x(P-1)ps-1リPs(x)_

記P5-1_1

で あ る,

[コ

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第4章 正多角形の作図

命 題4.1.15pを 素 数 とす る.こ の とき,リPs(x)はQ上 既 約 で あ る.

証 明x=g+1をリPs(勾 に代 入 す る.こ の と き,

Φ炉(〃+1)-1+(〃+1ゾ1+…+(ツ+1)(・ 一1)プー1

127

で あ る.よ って,Pを 法 と して 考 え る と,補 題4.1,12と 補 題4.1.13よ り,

Φグ(彩 十1)≡1+げ 一1+1)+..・+げ}1+1)P-1(m・dp)

≡ げ 『1)・-1… 〃(P-1)ps-1(m・dp)

であ る.ゆ えに,リps(〃+1)の 最高次 の項以外 の係数 は,全 てpで 割 り切

れ る.定 数項 はPよ り,p2で は割 り切れない 。したが って,定 理4.1.9か ら,

リps(〃+1)はQ上 既約 であ る.よ って,Φp、(x)はQ上 既約 で ある.口

ε作図および,0作 図への応用に限定 して,こ こではリps(勾 の既約性 し

か示さなかったが,軌@)は 任意の自然数 ηに対 して既約であることが知

られてい る.

4.2正n角 形 の作 図可能性

どの よ うなnに 対 して,正n角 形 が ∫ 作 図可能(∫ は εか0)か を考

える.

補題4.2.1p,qを 自然数 とす る.こ の とき,p,4が 互 いに素 であれ ば,適

当な整数 α,bが 存 在 して,

ap十bg=1

とで き る.ま た,逆 も成 り立つ.

証 明P>qと し,p,qが 互い に素 であ る とす る.ユ ー ク リッ ドの互 除法

を用 い て,P,qの 最大公約数を求 める と,P,qが 互 いに素 で あるので,最 大

公 約数 が1と なって,そ こか ら

αP十 δ9e1

を導 くこ とがで きる.

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第4章 正多角形の作図 128

逆 に,ap+bg=1で あ る とき,p,qの 最 大 公 約 数 を κと して,p=枷',

g=ん4と す る と,

k(疳'+bg')=1

で あ る.た,ap'+bq'は 共 に整 数 で あ るか ら,k=±1と な っ て,題 意 は成 立

す る.

補題4.2.2互 い に素 な数p,gを 用 いて,nがn;pqと 因数分解 され る と

す る.正n角 形 が ∫ 作 図可能 であ るための必 要十分条 件 は,正p角 形,正

q角 形 が それ ぞれ.F'作 図可能 である ことで ある.

証明 正n角 形が ∫作図可能であれば,正n角 形の頂点をq個 ずつ取れば

正p角 形が,正n角 形の頂点をP個 ずつ取れば正4角 形が得 られる.

逆 に,正p角 形,正q角 形がそれ ぞれ ∫ 作 図可能 で ある とす る.こ の と

き,p,qは 互 いに素 なので,補 題4.2.1か ら,あ る整数 α,bが 存在 して,

ap-bq=1

とで き る.こ の式の両辺 をpqで 割 る と,

abl

qpp4

で あ る.つ ま り,同 じ半 径の 円に対 して,あ る円周上 の点 を基準 に正p角

形,正4角 形 を作 図すれば,正p角 形 のb番 目の頂点 と,正4角 形のa番 目

の頂点の間の弧の長さが,円 周全体の1で ある.□n

この証 明の簡単 な例 と して,p=3,q=5の 場合 を考 える(図4.1参 照).

2.3-1.5=1で あるか ら,正3角 形の1番 目の頂点B1と,正5角 形 の2

番 目の頂 点.4,の 間 の弧 の長 さが円周全体 の1で ある.15

したが って,nがala2n‐piP2…p鰍paは 異 な る素数)と 素 因数分解 され

る とき,正n角 形の ∫ 作図可能性 を調べ るため には,各 拶 角形 が ∫作 図

可能 か ど うかを考 えれば よい,つ ま り,1の 原始ps乗 根 が ∫ 作 図可能 か

どうか を考 えれ ばよい ことになる.そ こで,1の 原始Ps乗 根 の最小 多項式

Φp、(勾の分解体 のQ上 の拡大 次数 を考 える.

補 題4.2.3pを 素 数 と し,Φp,(の の分解 体 をEと す る.こ の とき,[E:Q]リ

(P-1)プ ー1で あ る.

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第4章 正多角形の作図 129

Ao=・Bo

図4,1:正15角 形 の 作 図

証 明 命 題4.1.15か ら,リps(x)はQ上 既 約 でdegリp3(勾;(p-1)ps-1な

の で,命 題12.4か ら,Φp。(勾 の1つ の 根 ζに対 して,E=Q(ζ)を 示 せ ば

よい.

Q(ζ)一{・ 。+・ 、ζ+…+・(p.、)P9-・ ζ(p-1)・ 11・、∈Q}

であ り,明 らかにQ(ζ)はリ.pS(勾 の根 を全 て含 むか ら,E⊂Q(ζ)で あ る.一方 で

,Eが ζを含 む こ とと,Q(ζ)の 最小性 か ら,Q(ζ)⊂Eで あるか ら,

E=Q(く)で あ る.口

定理4.2.4Pを 素数 とす る とき,作 図法 ∫ に関 して,次 が成 り立 つ.

(1)正ps角 形が ε作図可能であ るこ との必要十分 条件 は,rp=2解1か

つ8=1」 また は,「p=2」 であ る.

(2)正ps角 形 が0作 図可能 であ る ことの必要十分条 件 は,rP=2鯉+1

かつs=1」 または,「p=2,3」 であ る.

証明 証明はほとん ど同様に行われるため,正 プ 角形の0作 図可能性の

みを示す.

正PS角 形 が0作 図可 能 である こ とは,リp3(x)の 根 αが0作 図可能 で

あ るで あ る ことと同値 である.定 理3.6.1か らその こ とを言い 換 え る と,

Φp。@)の 分 解体EのQ上 の拡大次数 が2憾 であ る とい うこ とであ る.

よ っ て,補 題4.2。3よ り,[E:Q]e(p-1)ps-1で あ る か ら,α が0作 図

可 能 で あ る こ との 必 要 十 分 条 件 は,(p-1)p5一1=2た3`と な る こ とで あ る.

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第4章 正 多角形 の作 図130

Pが2ま た は3の 場合 は,(p-1)ps-1は2た3zで 割 り切 れ るので,正ps角 形

は0作 図可能 であ る.pが5以 上 の素数 の場合,s≧2と す る と,ps-1は

231で 割 り切 れ ない ので,こ の場 合 は,正ps角 形 がC)作 図可能 であ るた

め には,s=1か つ,p-1=2鳶3`で あ るこ とが必要 かつ十分 であ る.

以上 か ら,正p5角 形が0作 図可能 であ るこ との必要十分条 件 は,rp-

231+1か つs=1」 または,「p=2,3」 であ る.□

したが って,理 論 的 に ε作 図お よび,0作 図可 能 な正 プ 角形 と しては,

正3角 形,正 方形,正5角 形,正17角 形,正257角 形 な どが存在す る.ま た,

ε作 図不可 能で はあるが,理 論的 に0作 図可能 な正ps角 形 としては,正7

角 形,正9角 形,正13角 形,正19角 形 な どが存在 す る.ま た,容 易 に次 の

定理 を得 る こ とができる.

定理4.2.5正n角 形の作 図可能性 に関 して,以 下 の2つ が成 り立 つ.

(1)正n角 形 が ε作 図可能 であるこ との必 要十分 条件 は,nが

n=チ ×pi×p2× … ×pr(た だ し,p2は28+1の 形 の素数)

と素 因数分解 でき るこ とであ る.

(2)正n角 形 が0作 図可能 である ことの必要十 分条 件は,nが

η=2》 ×pixpa× … ×pT(た だ し,p¢は2S3�+1の 形 の素数)

と素因数分解できることである.

さて,次 節以降で,実 際に正ps角 形(pは 素数)を 作図することを考える

ため に,Φp。@)のQ上 の分解体 の 自己 同型群 を求 め る.

定 義4.2.6あ る自然数 ηに対 して,集 合(Z/ηZ)× を

(Z/ηZ)x={〈 α〉∈Z/πZlα とnは 互 い に素}

の よ うに定義す る.た だ し,(Z加Z)× の元 くの を,艪ニ 書 くこ ともあ る。口

命題4.2.7(Z/ηZ)xは 積 に関 して群 を成す。

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第4章 正多角形の作図 131

証 明(Z/nZ)xの 元 を 互 とbと す る,こ の とき,α ……a'(modn),b… …b'

(modn)と す る と,α=a'+nk,b=b'+nlと 表 す こ とが で き る.よ っ て,

ab=(a'+nk)(b'+nl)

=α'b'+n(・'z+殉+π2んz

で あ るか ら,ab=a'b'と な るこ とが分 かる.こ こで,a'とb'はnと 互い に

素 であ るか ら,α'とb'の 素 因数分解 を考 えれ ば,明 らか に α'b'はnと 互い

に素 で あ り,(Z/ηZ)× の元 は積 に関 して閉 じてい る.ま た,(Z/ηZ)xの 元

の積 が結合 法則 を満 たす ことは明 らかで あ り,単 位元 は,了 で あ る.

次に,(7L/n7)xの 任意 の元に対 して,逆 元 が存在す ることを示す.(z/ηz)×

の元痰ヘ,nと 互い に素 であ るか ら,補 題4.2.1よ り,適 当な 自然 数p,qが

存在 して,

pa‐qn=1 (4.4)

とで き る.式(4.4)を 変 形すれ ば,

pa-1=qn

であ るか ら,pa≡1(modn)と な って,痰フ 逆元Pが 存在 す る ことが示 さ

れ る.以 上 か ら,(Z/ηZ)xは 積に関 して群 にな る.ロ

定 理4.2.8ipを 素 数 と し,η=プ とす る.ま た,く を1の 原 始n乗 根 の う

ち の1つ と し,κ π=Q(ζ)と す る.こ の とき,

Aut(κ 。/Q)N(Z/ηZ)x

が成 り立つ.

証 明 この定 理を示す には,Aut(Kn/Q)か ら(Z/ηZ)× への 同型 が存在 す

る ことを示 せば よい.

ま ず,Aut(Kn/Q)か ら(Z/πZ)xへ の 写 像 を 考 え る.Aut(Kn/(Q)の 任 意

の 元 σに対 して,σ(ζ)n=σ(rn)=σ(1)=1で あ る か ら,σ(ζ)はrkと 表 す

こ とが で き る。そ こで,ζ の 指 数 んを 用 い て,Aut(Kn/Q)か ら(Z/nZ)× へ

1こ こでは示さないが,n=psで なくても,実 は[Q(ζ):Ql=ψ(n)(ψ(n)は オイラー

関数)で あることが知られてお り,任 意の自然数 ηに対 して,こ の定理は成 り立つ.

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第4章 正多角形の作図 132

の 写 像 αを,σ を 万に対 応 さ せ る写 像 で あ る とす る.つ ま り,σ(ζ)=ζ α(σ)

とす る.実 際 に,σ 『1(ζ)=rbと す る と,

σσ 1(ζ)一 σ(rb)

=(σ(ζ))b

_rba(σ)

で あ る.し た が って,b× α(σ)≡1(modn)で あ り,b× α(σ)-kn=1と

表 す こ とが で き る か ら,補 題4.2ユ よ り,α(σ)とnは 互 い に素 で あ る こ と

が 確 か め られ る.よ って,α(σ)∈(Z/ηZ)× で あ る 。

この 写像 αが準 同型 で ある こ とを示 す.Aut(κ 。/Q)の 元 を σ,Tと す

る と,

σ7(ζ)一 σ(・(ζ))一 σ(ζα(丁))一(σ(ζ))α(丁)一 ζα(σ)α(7)

で あ る か ら,a(UT)≡a(σ)α(T)(modn)と な っ て,α は準 同型 写 像 で あ る.

次 に,aが 全 単 射 で あ る こ とを 示 すAut(Kn/Q)の 元 を σ,τ とす る.

この と き,α(σ)=a(T)な ら ば,ζ α(σ)=ra(T)で あ り,σ(ζ)eT(ζ)と な っ

て,ブ1σ(ζ)=ζ を 得 る.よ って,T-la.が 恒 等 写 像 とな る か ら,σ=T

で あ る.よ っ て,α は単 射 で あ る.さ らに,定 理3.1.15,補 題4.2.3か ら,

Aut(κ 。/Q)=[κ π:Q]=(p-1)ps-1で あ り,1(Z/ηZ)×1=(P-1)ps4で

あ る か ら,α が単 射 で あ る こ とを考 え る と,α は全 射 で も あ る.口

4.3正n角 形の作 図

この節 で は,p=2k+1やp=2κ3`+1と な る素数pに 対 して,正p角 形

を実 際 に ε作図や0作 図す る手順 を考 え たい.

まず,定 理4.2.4に よって,上 記 の よ うな正P角 形 が理論 的に0作 図可

能 で あ る ことは既 に示 してい る.そ の根 拠 とな った のは,定 理3.6.1か ら,

1の 原始P乗 根 ζに対 して,

Q=Ko⊂K1⊂ … ⊂(1)(ζ)([瓦+1=κ ¢]=2ま た は3)(4.5)

の よ うな体 の列 が作れ る こ とであ る.こ こで,定 理3.6.1で は,体 をCの

部分 体 と してい るため,式(4.5)の 各 中間体 をKi+i=Kz(α ∂ とすれば,a8

は"(C上"の2次 も しくは,3次 多項式 の根 であ る.こ の α乞の0作 図可能

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第4章 正多角形の作図 133

性 は,3.5節 の考察 か ら分 かるよ うに,3次 多項式の解法 を根拠 とす るため,一般 に は

,砺 を具 体的 に0作 図す る ことは困難 であ る.

ところ で,2.4節 での考察 か ら,R上 の3次 以 下 の多項式 の実数 根 の作

図法 は明 らかにな ってい る.ま た,正p角 形 が0作 図可 能 であ るこ とは,

θ=塾 と した とき,cosθ が0作 図可能 で ある こ とと同値 であ る.し たP

がって,正p角 形の0作 図手順を考 えるために,

Q=Ko⊂K1⊂_⊂Kn=Q(cosθ)([Ki+1=KZ]=2ま た は3)

のような体の列の具体的な拡大の方法を考えることにする.そ のために,

い くつかの命題を示す.

命題4.3.1ζ を1の 原 始p乗 根 の うち の1つ と し,θ=i竺 とす る とき,

@(ζ)はQ(cosθ)上 の2次 拡大体 であ る.

証 明 ζを どの1の 原 始p乗 根 として も,Q(く)は 全 て等 しい の で,ζ=

COSθ+isingと して よい.こ の とき,

く+ζ 一1cos8=

2

で あ り,明 らか に,Q(cosθ)⊂Q(ζ)で あ る.ま た,ζ ζ一1=1で あ る か ら,

解 と係 数 の 関係 か ら,ζ と ζ一1は,2次 方 程 式,

x2‐2cosBx十1=0(4.6)

の 解 で あ る.ま た,式(4.6)の 判 別 式 を 考 え れ ば,

D

‐=coseB‐1=‐sineリ<04

で あ るか ら,式(4.6)は 実数 解 を持 たない ので,Q(cosθ)上 で既約 であ る.

したが って,Q(ζ)はQ(cosθ)上 の2次 拡大体 であ る.口

この命 題4.3.1か ら,QとQ(cosθ)お よび,Q~(ζ)の 間 に は,

Q⊂(Q(COSθ)⊂(Q(ζ)

の よ うな関係 があ る ことが分 か る.こ こで,補 題4.2.3の 証 明 か ら分 かる

よ うに,ζ の最小多項式 の分解体 はQ(ζ)な ので,定 理3.3.12か ら,Q(Gは

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第4章 正多角形の作図 134

Q上 の正規 拡大体 であ る.そ こで,ガ ロア理 論 を用 い て,Qか らQ(COSθ)

までの拡 大 の方法 を考 えたい,

定 理3.2.3よ り,Qか らQ(cosθ)の 中間体 の列 に は,Aut(Q(ζ)/Q)の 部

分群 の列 が対応 す る.し たが って,Aut(Q(ζ)/Q)の 部分 群 の列 を具 体 的

に決定 して い き,そ れ らの部 分群 に対応 す る不 変体 を求 め れ ば,Qか ら

Q(cosθ)ま での具体 的 な拡 大の方法 が分 かる こ とにな る.次 節 におい て,

このAut(Q(く)/Q)の 部分群 を決 定 してい く際に は,Aut(Q(ζ)/Q)が 巡 回

群2で あ る ことを利 用 す る.そ こで,次 の命題 を示 す.

命題4.3.2G=〈a>と し,1σ トnと す る.こ の とき,次 が成 り立つ 。

(1)Gの 部分群 をHと す る.こ の ときHは,Hの 位数 で決 まる.

(2)mをnの 約数 とす る.こ の とき,1珂=mと な るGの 部分群Eが 存

在 す る,

(3)H,KをGの 部分群 とす る.こ の とき,1珂 が 囚 を割 り切 るな らば,

HはKの 部分 群で ある.

証 明(1)111【=1の とき は明 らか なの で,1珂=m≠1で あ る とす る と,

命題A.4.9か ら,mはnの 約 数 なの で,nニkmと で きる.こ の とき,

H=〈 α勺 を示 せば よい.

まず,Hが 巡 回群 であ ることを示す.そ こで,ゴ を,αゴがHに 含 まれ

るよ うな最小 の 自然数 とする.こ の とき,任 意 のHの 元alに 対 して,

1=sj+r(0≦r<の とできて,

aT=al-s'=al(a')_sEH

で あ る.よ って,ブ の 選 び 方 か ら,rニ0で あ る.し た が っ て,Zは,ゴ の

倍 数 に な るの で,!珂=〈 αフ〉で あ る.

次 に,H=〈 α鳶〉を示 す.(α ゴ)㎜=1で あ る か ら,jmはnの 倍 数 で あ る.

特 に,ゴ はkの 倍 数 で あ る.こ こで,ブ=挽 とす る と,

・ゴ=α 挽 一(ak)t∈ 〈αん〉

で あ る.よ っ て,H⊂ 〈ak>で あ る.こ こ で,(ak/mニ ♂m=an=1で

あ る か ら,1〈ak>1=mで あ る.よ って,1珂=1〈 αり[で あ る こ とを 考 え

る と,H=〈ak>で あ る.

2定 理4 .2.8か ら,Aut(◎(く)/◎)は(Z/pZ)× と同 型 で あ る が,実 は,Pが 素 数 の とき は,

(Z/pZ)× はZ/(p-1)Zと 同 型 で あ り,巡 回群 に な る こ とが 知 られ て い る.

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第4章 正多角形の作図 135

(2)π=κmと す る,こ の とき,♂ のべ き乗 を考 えば,

(ak)琶 ≠1(2<m)

(αり 呪=1

なので,αたで生成される巡回群は位数がmのGの 部分群である.

(3)1珂=p,lEl=qと す る と,1珂 がlKIを 割 り切 る こ と と,命 題A.4.9

か ら,η=初=k(lq)で あ る.(1)よ り,KとHは 巡 回 群 で あ るか ら,

κ 一{1,ak,(α り2,…,(ak)P-1}

H-{1,α 鳶`,(α んり2,…,(α んり ・-1}

であり,H⊂Kで ある.口

こ の 命 題4.3,2か ら,Aut(Q(ζ)/Q)が 巡 回 群 の と き,そ の 各 部 分 群 は,

Aut(Q(ζ)/Q)の 位 数 の 約 数 で全 て決 ま っ て しま う こ とが分 か る.こ こ で,

Tを,ζ を ζ一1に 移 すAut(Q(ζ)/Q~)の 元 で あ る とす る と,ζ+ぐ1=2cosθ

で あ る か ら,〈T>の 不 変 体 はQ(cosθ)を 含 む.と こ ろ で,命 題4.3.1か ら,

[Q(ζ):Q(cosθ)]=2で あ り,KT>1=2で あ る か ら,Q(ζ)〈 ⇒ はQ(cosθ)と

な る.

そ こで,Aut(Q(ζ)/Q)の 部 分群 の列 を考 え るこ とに よ って,正7角 形,

正13角 形,正17角 形の作 図方法 を考 え る.ま た,正7角 形,正13角 形 に

つい て は,実 際の作図手順 も示す.

4.3.1正7角 形 の作 図

θ一 箏 とし,・… を ・作 図す る方法 を考 える・そ こで,ζ を ・の原 始7

乗根COSθ+isinBと す れば,次 の よ うな拡 大体 の列 が考 え られ る.

Q⊂ 《⊇(C・Sθ)⊂Q(ζ)

こ こ で,K1=Q,K2=Q(COSθ),(1)(ζ)と お け ば,

KICK2CK3 (4.7)

で あ る.こ の と き,命 題4.3.1か ら[K3:1ぐ2]=2で あ り,補 題4.2.3か ら,

[K3:K1]=6で あ る か ら,[KZ:Ki]=3で あ る.

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第4章 正多角形の作図 136

さて,式(4.7)の ような体 の列 に対 応す るAut(Kg/K1)の 部分 群 の列

Aut(K3/K1)=G1⊃G2⊃G3={e} (4.8)

が,具 体 的 に どの よ うな群 の列 なの か を考 え る まず,定 理4.2.8か ら

Aut(Q(ζ)/Q)は(Z/7Z)xと 同型 であ る.そ こで,7を 法 と して,3の べ き

乗を考 える と,

31-332-233-634-435-536=1

で あ る.よ って,(Z/7Z)× は3で 生成 され る巡 回群 で あ り,

(7L/77G)X={1,3,2,6,4,5}

で あ る こ とが確 認 で き る.ゆ えに,同 型Aut(Q(ζ)/Q~)N(Z/7Z)xで,3に 対

応 す るAut(Q(ζ)/Q)の 元 σに対 して,G、=〈 σ〉で あ る.ま た,系3.2.5か ら,

K2はG2の 不 変体 で あ り,[K3:K2]=2で あ る か ら,[(司=2で あ る.よ っ

て,命 題4.3.2か ら,(72=〈 σ3>で あ る.実 際 に,2cosθ=ζ+ζ 一1=ζ+σ3(ζ)

で あ るか ら,KZはG2の 不 変 体 に な って い る こ とが 確 認 で き る,こ こで,

(Q(ζ)と,Qの 中 間 体 と,Aut(Kg/K1)の 対 応 を 図 に した もの が,図4.2で

あ る.

G3F〈1>

G2=〈 σ3>

G、 ニ 〈σ〉

Q(ζ)=K4

↑・を付加

Q(C・Sθ)=Ka

↑恥を付加

Q=K1

図4.2:部 分群 と中間体 の対応(1)

次 に,上 記 のよ うな自己同型 群を用いて,COSθ の満 たす多項式を考 える.

まず,[K2:Kr]=3で あるか ら,cosθ はQ上 の3次 多 項式 の根 であ る.ま

た,2cosθ=ζ+σ3(ζ)で あ るか ら,

η1=2cosθ=ζ 十 σ3(ζ)

とお き,η1の 共役根 を探 せ ばよい.定 理3.3.11よ り,共 役 根 を求 め るには

G1の 全 て の元 を η1に作用 させれば よい.実 際に η1の共 役根 を求 めれ ば,

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第4章 正 多角形 の作 図

σ(η1)と σ2(η1)がη1の共役根 であ る.よ って,

η、一 σ(η、)一 σ(ζ)+σ4(ζ)一 ζ3+r4

η,一 σ2(η、)一 σ2(ζ)+σ5(く)一 ζ2+ζ5

とす れ ば,1+ζ+ζ2+…+ζ6=0を 用 い て,

η1十 η2十 η3eζ 十 ζ2十 … 十 ζ6=-1

η1η2十 η2η3十 η3η1=2(ζ 十 く2÷ … 十 ζ6)=-2

η1η2η3=く 十 ζ2十 … 十 く6十2=1

を得 る.よ っ て,解 と係 数 の 関 係 よ り,η1,η2,η3は,

x3十x2-2x-1=0

の根 であ る.

式(4.9)に 代入 する と,

8×3十4×2-4X-1=0

⇔X・+主X・ 一 主X三 一 〇228

137

(4.9)

と ころ で,η1=ζ+ζ6=2cosθ で あ る か ら,x=2Xと して,

であ り,cosθ を根 に持つ3次 方程式 が得 られ た。したがって,系2.4、7か ら,

111p2q=2r=-8

とす る と,

51._3F1(-g,-2)ll:x=-8(4.10)

F2(0,1)12:y=-1(4.11)

よ り,F1が11に,F2が12に 同時に重 なる ように折れ ば,そ の折 り目の傾 き

がCOSθ で ある.

以上の結果から,実際に正方形の折り紙を用いて,θ考 の作図手順

に つ い て 述 べ る3(図4.3,図4.4を 参 照).

3正多角形の作図を行 う場合,厳密には定義2⊥2で 定めた5つ の手順によって作図を

行 うべ きであるが,折 り目が多くなり,煩雑 となるため,以 後,折 り目で印を付けるな ど,

具体的に実行可能な方法で手順を簡略化 して作 図を行 うことも認めることにする.

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第4章 正多角形の作図 138

(1)折 り紙 の 各 頂 点 を,A,B,C,1)と す る.

(2)図4.3の よ う に,辺.4Bを 次 々 に2等 分 して い き,ABを5:11に 内分

す る点 をF2と す る.ま た,辺.4Bと 辺DCを1:7に 内分 す る点 を通

る折 り目をlrと す る.さ らに,辺ADを 次 々に2等 分 していき,AI)を

3:1に 内分す る点 をF1と し,辺CDを12と す る,

(3)こ の とき,図4.3に お い て,F2を 通 って,.;に 垂 直 な 折 り目 が 〃軸 で,

.4Dの 垂 直2等 分 線 力`x軸 で あ る.つ ま り,点0が 原 点 で あ る 。 よ っ

て,図4.3の 点F1,直 線llが 式(4.10)に,点F2,直 線12が 式(4。11)に

対 応 して い る.

(4)F1がllに,F2が12に 同時に重 なるよ うな折 り目の うちで傾 きが最 大

(正 の傾 き)の ものをtと す る と,tの 傾 きがCOSθ であ る.こ こで,tと

β0の 交点 をP,tとADの 交点 をQと す る.

Q

llF2B

t

P

● 匿... ・.・P

o

「 鴨 o鴨 曾 ・ ・ ■ ..匿 幽.一.一...r■ 【P騨 醗 ● ● ■

Dl2C

図4.3:角 θ考 の作 図(1)

(5)図4.4に お い て,Pか ら,0-Dに 対 して 平 行 な折 り 目を 折 り,.4Dと の

交 点 をP'と す る.ま た,Qか ら,CDに 対 して 平 行 な 折 り目 を 折 り,

BOと の 交 点 をQ'と す る.こ の と き,QQ':Q'P=1:cosθ で あ る .

(6)線 分Qα 上に理 一PRと なる点Rを 取れば,∠ … 一 ㍗ である・

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第4章 正多角形の作図 139

(7)辺ABと 辺ADの 垂直2等 分線の交点をEと し,辺ABのリ点 をN

とす る.Eを 通 って,線 分PRに 垂直 な直 線mを 折 り,Eを 通 ってm

に垂 直 な直線 ηを折 る.こ の とき,nと 辺mの 交 点 をmと す る と,

∠MEN=塗 で ある.7

P`

Q

llFaNB●

n ./とM

P

Q

m\ \ 箋レ::/

ち,/

「8

E.・<

R

Dl2C

図4.4・ 角 θ導 の作図(2)

4.3.2正13角 形 の 作 図

θ諮 とし,… θを実 く,x・・作図する方法を正7角 形のときと隙 ・

考 え る.ま ず,ζ を1の 原 始13乗 根 ζ=cosθ+isinBと し,

(1> K3;(Q(COSθ)

とす る.そ こで,次 の よ うな拡大体 の列 を考 えたい 。

KICK2CK3CK4

(n(ζ)

(4.12)

この と き,命 題4.3.1か ら[K4:K31=2で あ り,補 題4.2.3か ら,[K4:

K1]=12で あ る か ら,[K3:K1]=6で あ る.ま た,[K2:K1]は2ま た は

3の2通 りが 考 え られ るが,実 際 に作 図 す る こ とを 考 え,[K2:K1]=2と

す る.

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第4章 正多角形の作図 140

さて,式(4.12)の ような体 の列 に対応 す るAut(K4/K1)部 分群 の列

Aut(・K4/K1);G1⊃ σ2⊃G3⊃Cio={e} (4.13)

が,具 体 的 に どの よ うな群 の列 な のか を考 える.ま ず,定 理4.2.8か ら

Aut(Q(ζ)/Q)は(Z/13Z)xと 同型 であ る.そ こで,13を 法 と して,2の べ

き乗 を考 える と,

21-222-423-824-325-626-12

27-1128-929-5210-10211-7212-1

であ る.よ って,(Z/137E)xは2で 生成 される巡 回群 であ り,

(7L/137G)X={1,2,4,8,3,6,12,11,9,5,10,7}

で あ る こ とが 確 認 で き る.ゆ え に,同 型Aut(Q(ζ)/Q)N(Z/13Z)× で,2

に対 応 す るAut(Q(く)/Q)の 元 σに 対 して,(771=〈 σ〉であ る.ま た,系3.2.5

か ら,K3はG3の 不 変 体 で あ り,[K4:1(3]=2で あ るか ら,1σ31=2で あ

る.よ っ て,命 題4.3.2か ら,σ3=〈 σ6>で あ る.ま た,[KZ:K1]=2と 仮

定 した の で,系3.2.5か らIG2i-6で あ り,命 題4.3.2か ら,G2=〈 σ2>で

あ る.こ の と き,

η、=ζ+σ2(ζ)+σ4(ζ)+σ6(ζ)+σ8(ζ)+σ10(く)

=ζ+く4+ζ3+ζ12+ζ9+ζ10

とす れ ば,η1は 〈σ2>の 元 で不 変 で あ る か ら,K1⊂K1(η1)⊂K2で あ る.

と こ ろ で,[K2:K1]=2で あ り,く,ζ2,…,ζ12はKl(Q)上1次 独 立 で あ

る.ま た,〈 σ2>以 外 のGlの 元,例 え ば σを η1に 作 用 させ る と,

σ(η、)一 σ(く)+σ3(ζ)+σ5(ζ)+σ7(ζ)+σ9(ζ)+σ11(ζ)

一 ζ2+ζ8+ζ6+ζ11+ζ5+く7

と な り,η1は 不 変 で は な い の で,K2=K1(η1)で あ る.こ こで,Q(ζ)と,Q

の 中 間体 と,Aut(K4/Kl)の 対 応 を 図 に した もの が,図4.5で あ る.

次 に,COSθ の満 たす多項式 を考 えるために,上 記 の よ うな 自己同型群を

用 い て,ま ず η1の満 たす多項式を考 える.[KZ:Kl]=2で あるか ら,ilの

満 たす多項式 は,Q上 の2次 多項 式で ある.よ って,η1の 共役根 を考 える.

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第4章 正多角形の作図 141

G4=(1)

G3=〈 σ6>

G2=〈 σ2>

G、=〈 σ〉

Q(ζ);K4

↑・を付加

Q(C・Sθ)-K3

↑6を付加

Q(η1)=K2

↑町を付加(1)

図4,5:部 分群 と中間体 の対応(2)

定 理3.3.11よ り,そ の 共 役 根 を求 め る に は,G1の 全 て の 元 を η1に 作 用 さ

せ れ ば よ い の で,η1の 共 役 根 は σ(η1)で あ る.η2=σ(η1)と お く と,

σ(η、)=η 、一 σ(ζ)+σ3(ζ)+σ5(ζ)+σ7(ζ)+σ9(ζ)+σ11(ζ)

一 ζ2+ζ8+く6+ζ11+く5+ζ7

で あ る.よ って,η1の 満 たす 多項 式 を求 め るには,解 と係数 の 関係か ら,

η1+η2と η1η2を求めれ ば よい.ま ず,

η1十 η2=ζ 十 ζ2十 … 十 ζ12=-1

で あ る.次 に,η1η2を 考 え る.ま ず,η1と η2を 構 成 す る各 項r2に 対 して,

そ の逆 数 はr13-iで あ る.と こ ろ で,η1と η2の 定 め方 か ら,η1η2を 展 開 し

た36個 の 項 の 中 に1と な る もの は 存 在 しな い.ゆ え に,η1η2を 展 開 して

整 理 す れ ば,

η・η・一 ・・ζ+・ ・ζ2+…+・ ・2ζ12(・ ・≧0Σ ・2-36)(4ユ4)

と な る.こ こで,

σ(η1η2)=σ(η1)σ(η2)==η1η2(4.15)

で あ る.ま た,く,ζ2,…,ζ12はQ上1次 独 立 な の で,ζ,ζ2,…,ζ12の1次

結 合 は,全 て の係 数 が 一 致 した とき の み,同 じ値 に な る.よ っ て,式(4.14)

と,式(4.15)か ら,

C1=C2=...=C12 (4.16)

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第4章 正多角形の作図 142

と な る.し た が っ て,c,e3で あ り,η1η2ニ ー3で あ る.ゆ え に,η1と η2

は,2次 方 程 式,

x2十x-3=0

の 解 で あ る,こ こで,ζ ニcosa+isin8と した の で,

η1==ζ 十・<12十 ζ4十 ζ9十 く3十 く10

=2(cosθ 十cos4θ 十cos3θ)

=2(cos14リ十cos4リ十cos3リ)

=2(cos(9θ 十5θ)・ 十一cos(9θ 一5θ)十 ・cos3θ)

=2(2cosgBcos58十cos3リ)>0

であ り,

-1十13-1-13

η1=2η2=2

と決 定 す る こ とが で き る.

さ ら に,cosθ の 満 た す 多 項 式 を 考 え る.[K3:KZ]=3で あ るか ら,cosθ

はK2上 の3次 多 項 式 の 根 で あ る.ま た,2cosθ=ζ+σ6(ζ)で あ る か ら,

ξ1=2cosθ=ζ'+σ6(く)リζ+ζ'12

とお き,ξ1の 共 役 根 を 探 せ ば よい.定 理3.3.11よ り,そ の 共 役 根 を 求 め る

た め に は,G2=〈 σ2>の 全 て の元 を ξ1に 作 用 させ れ ば よ い の で,ξ1の 共 役

根 は σ2(ξ1)と σ4(ξ1)で あ る.し た が っ て,

ξ2�ミ2(Sl)eσ2(ζ)+σ8(ζ)=ζ4+S9

ξ3・=σ4(ξ1)=σ4(◎+σ10(ζ)リζ3+く10

と お け ば,

ξ1+ξ2+ξ3=ζ+r4→ 一ζ3+ζ12-1-S9+ζ10=η1

ξ1ξ2+ξ2ξ3+ξ3ξ1=ζ+く2+…+。12=-1

ξ1ξ2ξ3=2+ζ2+ζ8+ζ6+く11+ζ5+ζ7=2+η2

で あ る.ゆ え に,2cosθ は,

x3一 η1欝2-x-(2十 η2)リ0

_・+1->-3-x2-x+-3+>-3-。22

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第4章 正多角形の作図

の解 で あ る.し たが っ て,系2.4,7か ら,

1-13p=2 q=-1 r=

一3+13

2

143

とす る と,

Fl(-2+13,-1)

F2(0,1)

1

1⊥

=

「「

.

(4.17)

(4ユ8)

よ り,F1が11に,F2が12に 同 時 に重 な る よ うに折 れ ば,そ の折 り目の 傾 き

が2cosθ で あ る.

以上の結果 をふまえて,折 り紙 による θ一 誓 の作図手順轟・ついて述

べ る.

(1)図4.6に お い て,辺 、4Dの 中点 を 式(4.17)で のF2と し,辺ABを1:3

に 内分 す る点を通 って,ADに 平行 な直線 を 式(4.17)で のllと す る.

この とき,�ADが 〃軸であ り,辺AZ)を3:1に 内分 す る点を通 って,

.4Dに 垂直 な直線 がx軸 である.よ って 辺CDが 式(4.18)で の12に

対 応 す る.

(2)上 記 の よ うに定 めた座標 において,点D(0,-1)と,点E(3,1)と の距

離が>-3で ある.そ こで,∠EDCの2等 分線 を折 った とき,EがCD

に重 な る ところをE'と す る.

(3)辺DCの 中点 をGと し,E'がGに 重 な るよ うにCDの 垂 線 を折 る.

この折 り目で,σ がCDに 重 な る ところが式(4。18)で のF1に 対応す

る.よ って,F1がllに,F2が12に 重 な るよ うに折 る折 り目の うち で

傾 きが最大(傾 き角 は最 少)の ものをtと おけば,tの 傾 きが2cosθ で

あ る。この ときの折 り目 と,ODと の交 点 をP,ABと の交点 をQと

す る.

(4)図4.7に おいて,点Qを 通 る,CDへ の垂線 を折 り,そ の垂 線の足をH

とす る.ま た,(~Hと,.4Dの 垂 直2等 分 線 の 交 点 を1と す る.こ の と

き,直 線1-Pの 傾 きがcosθ で あ る.よ っ て,PH:HI=1:cosθ で

あ る.

(5)Pを 通 る,CDの 垂線 と,蓋Dの 垂直2等 分 線 の交点 をRと す る.そ し

て,IR=IR'と な る点R'をCD上 に とれ ば,∠R'IH=θ で ある.

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第4章 正多角形の作図 144

(6)図4.8に おい て,-ADの 垂直2等 分線 と,ABの 垂直2等 分 線 の交 点 を

0と す る.ま た,点0を 通 る直線 ηγへの垂線 をtと す る.そ こで,点

0を 通 る直線 孟へ の垂 線を折 れ ば,∠JOK=θ であ る.

All B

F2 興 ご1,_●

,9ρ

宅ρ

… ・… …/一}… … ・

-Fi;G●

騨 ●rρ ・ ・ 隔.

● ●DP

_12E'C

図舶 θ宅 の作図(・)

All B

∬/F2R

//豊

,,吾 R' HDP _la

図嫡 θ宅 の作図(2)

c

llJ

・0

π

3

2

1

K

1

B

R'

DFI-12C

図4.8・ 角 θ諮 の作 図(3)

4.3.3正17角 形 の 作 図

θ一 籍 し,… θについて,正7角 形 や 正 ・3角 形 の とき と同様}・考

察す る.た だ し,実 際の正17角 形 の作 図は煩雑 とな るため行 わない 、その

代 わ りに,COSθ を実際 に計 算 し,四 則演算 と根号 のみを用 いて表 す.作 図

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第4章 正多角形の作図 145

法 εに よって,実 際に正17角 形 を作図す る方 法 は,参 考 文献[5]に 示 され

てい る.

まず,1の 原 始17乗 根 を ζ=cosθ+isin8と し,

κ1=Q K4=(Q(COSθ)

とす る.そ こで,次 のよ うな拡大体 の列 を考 えたい.

KICK2CK3CK4CK5

K5=Q(ζ)

(4ユ9)

こ の と き,補 題4.2.3か ら[K5:κ1]=16な の で,[Kz+1:Kz]=2と す る.

さ て,式4.19の よ うな拡 大 体 の 列 に対 応 す るAut(一 κ5/K1)の 部 分 群 の 列

Aut(、K5/K1)=(穿1⊃G2⊃(穿3⊃G4⊃G5={e}(4.20)

が,具 体 的 に どの よ うな 群 の 列 で あ る か を 考 え る.ま ず,定 理4.2.8か ら

Aut(Q(ζ)/Q)は(Z/17Z)xと 同 型 で あ る.そ こ で,17を 法 と して,3の べ

き乗 を 考 え る と,

31-332.933-1034-1335-536.1537-1138-16

39-14310-8311-7312-4313.12314-2315-6316-1

で ある.よ って,(Z/17Z)× は3で 生成 され る巡 回群 であ り,

(7G/177G)X={1,3,9,-0,13,5,-5,-1,-6,14,8,7,4,12,2,6}

で あ る こ と が 確 認 で き る.ゆ え に,同 型Aut(Q(ζ)/Q)N(Z/177E)× で,3に

対 応 す るAut(Q(ζ)/Q)の 元 σ に 対 し て,(71ニ 〈σ〉で あ る 。 ま た,式(4.19)

に お い て,[瓦+1:Ki]=2な の で,1(721;8,1(731=4,(G4=2で あ る 。 し

た が っ て,命 題4.3.2よ り,(72=〈 σ2>,(ヌ3=〈 σ4>,G4=〈 σ8>で あ る.こ の

と き,

η・一 ζ+σ2(ζ)+σ4(ζ)+σ6(ζ)+σ8(ζ)+σ10(ζ)+σ12(ζ)+σ14(ζ)

一 ζ+ζ9+ζ13+ζ15+r16+ζ8+ζ4+ζ2

ξ1リζ+σ4(ζ)+σ8(ζ)+σ12(ζ)

一 ζ+r13+ζ16+ζ4

ρ1=ζ 十 ζ16

とす れ ば,η1は 〈σ2>の 元 で不 変 で あ る か ら,Kl⊂K1(η1)⊂KZで あ る.

と こ ろ で,[Kz:K1];2で あ り,〈σ2>以 外 のG2元 で は,η1は 不 変 で は な

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第4章 正多角形の作図 146

σ5=〈1>

G4=〈 σ8>

G3=〈 σ4>

Gz=〈 σ2>

G1=〈 σ〉

Q(く)=κ5

↑・を付加

Ql(COSθ)==K4

↑融Q(ξ1)ニK3

/・を付加

Q(η1)=KZ

↑恥を付加(1)

図4.9:部 分群 と中間体 の対 応(3)

い の で,KZ=Ki(η1)で あ る.同 様 に し て,K3=κ1(ξ1)で あ る こ と も示

され る.こ こで,Q(ζ)と,Qの 中 間 体 と,Aut(K5/K1)の 対 応 を 図 に した

も の が,図4,9で あ る.

そ こで,cosθ の満 たす多項式 を考 えるため に,正7角 形 や正!3角 形 の

とき と同様 に して,η1,ξ1,ρ1の 満 たす多項 式 を考 え る.

(1)ま ず,η1の 満 た す 多 項 式 を考 え る.[K2:Kl]=2で あ るか ら,η1の 満

たす多 項式 は,Q上 の2次 多項式 であ る.よ って,η1の 共役根 を考 え

る.定 理3.3.11よ り,そ の共役根を求 めるには,G1の 全 ての元を η1に

作 用 させ れば よい ので,η1の 共役根 は σ(η1)であ る.η2=σ(η1)と お

くと,

η,=σ(く)+σ3(ζ)+σ5(G+σ7(く)+σ9(く)+σ11(く)+σ13(く)+σ15(ζ)

=ζ3+ζ10+ζ5+ζ11+ζ14+ζ7+ζ12+く6

で あ る.よ って,η1の 満 たす 多項式 を求め るには,解 と係数 の関係 か

ら,η1+η2と η1η2を求めれば よい.ま ず,

η1十 η2eζ 十 ζ2十 ・ ・十 ζ16リ一1

で あ る.次 に,η1η2を 考 え る.ま ず,η1と η2を 構 成 す る各 項 ぐ に対 し

て,そ の 逆 数 はr17-iで あ る.と ころ で,η1と η2の 定 め 方 か ら,η1η2を

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第4章 正多角形の作図 147

展 開 した64個 の項の中に1と な るものは存在 しない.ゆ えに,η1η2を

展 開 して整理 すれば,

η、η、リ・ ・ζ+・ ・ζ2+…+・ ・6ζ16(・i≧0Σ ・2-64)

と な る.こ こ で,σ(η1η2)=σ(η1)σ(η2)=η1η2で あ る.よ っ て,式(4.16)

の と き と 同 様 に し て,c1=CZ=…=c16が 示 さ れ る の で,C�=4で あ

り,η1η2=-4で あ る.ゆ え に,η1と η2は,2次 方 程 式,

x2十x-4=0

の解 で あ る.こ こで,ζ=cosθ+¢sinθ と した の で,

η、一(ζ+ζ16)+(ζ2+く15)+(ζ4+ζ13)+(ζ8+ζ9)

=2(cosB十 ,cos28十cos4B十cos88)

で あ る.こ こで,

cosリ一1-cos26十cos88=cos188-{-cos2B十cos8リ

=cos(IOB十88)-i--cos(10リ‐8B)十cos88

=2cos10θcos8θ 十cos8θ

_(2cos10B十1)cos88>0

で あ る か ら,η1と η2を,以 下 の よ うに決 定 で き る.

-1十 ~価 一1一 西

η1=2η2e2 (4.21)

(2)次 に,ξ1の 満 た す 多 項 式 を 考 え る.[K3:K2]=2で あ る か ら,ξ1の 満

たす 多項式 は,KZ上 の2次 多項式 であ る.そ こで,ξ1の 共役 根を考 え

る.定 理3.3.11よ り,そ の共役根 を求 めるには,G2の 全 ての元を ξ1に

作用 させれ ばよいの で,ξ1の 共役根 は σ2(ξ1)であ る.ξ2=σ2(ξ1)と お

くと,

ξ2=σ2(ζ)+σ6(ζ)+σ10(ζ)+σ14(ζ)

=ζ9+ζ15+S$+ζ2

であ る.よ って,ξ1の 満 たす 多項式 を求 め るには,解 と係数 の関係 か

ら,ξ1+ξ2と ξ1ξ2を求 めれば よい.ま ず,

ξ1+ξ2=く+ζ9+く13→ 一ζ15+ζ16+く8→ 一く4+ζ2=η1

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第4章 正多角形の作図 148

で あ る.次 に,ξ1ξ2を考 える.ま ず,ξ1と ξ2を構成す る各項r2に 対 し

て,そ の逆数 は,同 じξゴの中 に含 まれて いて,他 方 の ξたには含 まれ て

い ないので,ξ1ξ2を展 開 した16個 の項 の中に1と なる もの は存在 しな

い.ゆ えに,ξ1ξ2を展 開 して整 理すれ ば,

ξ1ξ2ユcoζ+c1σ(ζ)+…+c・5σ15(ζ)(Ci≧0,Σc乞=16)

とな る.こ こで,

σ2(ξ1ξ2)=σ2(ξ1)σ2(ξ2)=ξ1ξ2

で あ る.ま た,ζ,σ(ζ),…,σ15(く)はQ上1次 独 立 な の で,そ れ らの

1次 結 合 は,全 て の係 数 が 一 致 した と きの み,同 じ値 に な る.よ っ て,

CO=C2=…-C14か つ,C1;Cg=…=C15で あ りブξ1ξ2は,

η1-←η22η12η2

の い ず れ か で あ る.こ こで,ζ ζ2=ζ3か つ,ζ ζ8=く9で あ る か ら,ξ、ξ2

は,η1を 構 成 す る ζ9と,η2を 構 成 す るr3を 同 時 に含 む こ とに な り,2η1

や2η2で は 有 り得 な い.よ っ て,ξ1ξ2=η1+η2=-1で あ り,ξ1と ξ2

は,

x2一 η、x-1=0

の解 で ある.つ ま り,

η、± 〉再ξ1,ξ2=

2(4.22)

で あ る.こ こで,

ξ1=(ζ+く16)+(ζ4+r13)

=2(cosB十cos4B)

=2(cos18B十cos4B)

=2(cos(11B-{-7リ)十cos(11リ‐7B))

=4cosl1Bcos78>0

ξ2=(ζ2+ζ15)+(ζ8+ζ9)

=2(cos28十cos8B)

=2(cos(5θ 一3θ)十cos(5θ 十3θ))

=4cos58cos38<0

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第4章 正多角形の作図

であ るか ら,式(4.22)の 複号 を決定 す る ことが できて,

η、+V腕ξ1=

2

η一 〉/諦ξ2=

2

149

(4.23)

とな る.

(3)さ らに,cosθ の満 た す 多 項 式 を 考 え る.[K4:K3]リ2で あ る か ら,

cosθ はK3上 の2次 多 項 式 の 根 で あ る.実 際2cosθ=ζ+σ8(ζ)で あ

る か ら,

ρ1e2cosθ=ζ 十 σ8(ζ)=ζ 十 ζ16

とお き,ρ1の 共 役 根 を 探 せ ば よい.定 理3.3.11よ り,そ の 共 役 根 を 求

め る た め に は,G3=〈 σ4>の 全 て の元 を ρ1に 作 用 させ れ ば よ い の で,

ρ1の 共 役 根 は σ4(ρ1)で あ る.ρ2=σ4(ρ1)と お く と,

ρ、一 σ4(ζ)+σ12(ζ)

=ζ13+ζ4

で あ る.よ って,ξ1の 満 たす 多項 式 を求 め るに は,解 と係数 の 関係か

ら,ρ1+ρ2と ρ1ρ2を求めれ ばよい.ま ず,

ρ1+ρ2=ζ+く13+く16+ζ4eξ1

で あ る.さ らに,

ρ、ρ、一(ζ+ζ16)(ζ13+ζ4)

=r3+ζ5+ζ14+ζ12

で あ る.こ れ を,ξ1と ξ2を 用 い て表 せ ば,

piP2=ξ12一 ξ2-4

2(4.24)

で あ る.実 際に,

(ξ1)2=(ζ+rl3+ζ16+ζ4)2

=ζ9十 く15十 ζ8十 ζ2十2(く3十 く5十 ζ14十 く12)十4

==2(ζ3+ζ5+ζ14+ζ12)+ξ2+4

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第4章 正多角形の作図 150

で あ るか ら,式(4.24)が 成 り立 って い る こ とが 分 か る.し たが って,P1

と ρ2は,

ξ12一 ξ2-4∬2一 ξ1∬+ ●12

の 解 であ る.つ ま り,

S1士 一 ξ12-1-2ξ2+8

ρ1,A2リ2

で あ る.こ こで,

ρ・=2cosθ=2cos‐17

ρ・一 く4+ζ13-2…4θ 一2… 警

で あ り,… 笹1か つ,… 警 〈1で あ るか ら,ρ ・〉 ρ・であ る・

よ っ て,P1と ρ2を 決 定 す る こ とが で き,

P1=ξ1+一 ξ12+2ξ2+8

2ρ・一 ξ・一 一ξξ+2ξ ・+8(4.25)

と な る,

した が って,式(4.2・),式(4.23),式(4.25)に よ り,Pl2-… 警 は,四 則

演算 と根号 のみを用いて,

1

16{一1-}-17+〉 薪+2・7+3揖 一~漏 一2~/漏}

と表 す こ とができ る.よ って,ε 作 図や0作 図では,あ る数 の平方 根 が作

図で きるの で,1の 原始17乗 根は,ε(0)作 図可能 であ る.

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151

付 録A 基礎知識

ここでは,各 章で必要 となる基礎知識について述べ る.

A.1体 と多項式

定義A.1.1あ る数 αとK係 数 の多項式 ∫@)に 対 して,ノ(α)=0と な る

とき,α を!(x)の 根 とい う.口

定義A.1.2あ る数 αがある体Kの 元を係数 とする多項式の根であると

き,α はK上 代数的であるという.ロ

定義A.1.3Kの 元を係数 とする2つ の多項式f(x),g㈹ について,f(の

とg(勾 を共に割 り切るK係 数の多項式が定数のみであるとき,!(勾 と

g(x)は 互いに素であるという.ロ

定 義A.1.4K係 数のn次 多項式f(x)が,K係 数 の多項式g(x)とh(x)を

用 い て!(④=g(x)h(勾 と書 けてい る ときには必 ず,g(x),h(x)の いずれ

かが定数 の とな る とき,∫(x)はK上 で既約 であ る とい う.口

定 義A.1.5体K上 の0で ない多項 式f(x)の 最高 次の係数 が1で あ る と

き,!(x)は モニ ック である とい う.

定 義A.1.6あ る数 αを根 に もつ 多項式!@)が,次 の2つ を満 たす とき,

f(勾 を αの最小 多項式 とい う.

(1)α を根 に もつ,!(x)で ない任意 の多項 式g(勾 に対 して,deg!@)<

degg(x)で ある.

(2)!(x)は モ ニ ッ クで あ る. 口

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付 録A基 礎知識 152

命題A.1.7KをCの 部分 体 と し,α ∈cCがK上 代数 的 で ある とす る.

この とき,α を根 に持つ多項式f(勾 が既約 であ る こ との必要 十分 条件 は,

f(勾 が αの最小 多項式 の定数倍(た だ し,0は 除 く)で あ る ことであ る.

証 明!(x)が αの最小 多項式 で あ る とす る。 も しも!(x)が 可 約,つ ま

り!(勾=g(x)h(勾 かつg(勾,h(x)が 共 に定数 で ない とす る と,ノ(α)=

g(α)h,(α)�0よ り,g(α)=0ま たはh(α)=0で あ る.よ って,g(勾 また

はh(勾 は,!(勾 よ りも次数 が低 いaを 根 に持つK係 数 の多項 式 で ある.

しか し,!(x)の 選び方 か らこれは矛盾 であ る.よ って ノ(勾 は既 約 である.

一方,f(x)が 既約 であ る とす る.仮 に,α を根 に持 つf(の よ りも次数 の

低 い 多項式 が存 在 した とす る.そ こで,そ の よ うな多項式 の中で次数 が最

小 の もの をg(x)と す る.こ の とき,多 項式 の除法 によ り,

f(x)=p(x)g(x)十r(x)(degr(x)<degg(x))

とな る多項 式p(x),r(x)が 存在す る,x=α を代入 す る と,

!(α)=p(α)9(α)+r(α)=o

で あ る.f(α)=g(α)=0で あるか ら,r(α)ニ0で あ るが,こ れ はg(x)の

選 び方 に矛 盾で ある.よ って,f(x)が 既約 であれ ば,!(x)よ りも次数 の低

い 多項式 は αを根 に持 たない.[コ

命 題A.1.8あ る数 αの最小 多項式 を!(x)と す る.こ の とき,α を根 に持

つ任 意 の多項式g(x)は ノ(x)で 割 り切 れ る.

証 明 多項 式の 除法 に よ り,9(x)をf(x)で 割 る と,

9(x)=p(x)!(x)十r(x)(degr(x)くdeg!(x))

とで き る,∬=α を 代 入 す る と,

9(a)=p(a)f(cti)一}-r(cti)=0

で あ る.ノ(α);g(α)●iで あ る か ら,r(α)=0で あ る が,f(勾 の 選 び 方

か ら,r(x)≡0で な け れ ば な らな い.よ って,

9(x)=P(x).f(x)

とな って,g(勾 はf(勾 で割 り切れ る. [コ

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付 録A基 礎知識 153

命 題A.1.9KをCの 部分 体,α をCの 元 とし,E=K(α)と す る.ま た,

αを根 に もつK上 既約 な多項式 を ノ(x)と す る.こ の とき,Eの 任意 の元

θは,ノ(x)よ りも次数 の低 いK上 の多項式g@)を 用い て,

θ=9(α)

と一 意 的 に 書 け る.

証明f(x)よ りも次数 の低 い多項式g@),g'@)を 用 いて,

θe9(α)=9'(α)

と2通 りに書 け た とす る.こ の と き,g(α)-g'(α)●1で あ るか ら,

ん(x)=9(伍)-9ノ(x)

とす る と,h(勾 は αを根 に持 つ 多項式 で あ る.命 題A.1.8と!(x)の 選

び 方 か ら,そ の よ うなh(の は零多 項式 以外 に有 り得 ない.し たが って,

9(x)=9,@)で ある.口

命題A.1.102つ の多項式f(x),g(x)が 互い に素で ある とき,あ る0で な

い多項 式h(x),双 の を用 いて

!(∬)ん(x)十9(x)k(x)==1

とで き る.ま た,そ の逆 も成 り立 つ.

証 明 多項式f(x),g(x)が 互 いに素 である とす る.deg!(x)>degg(x)と

す る.こ の ときユー クリッ ドの互 除法を用い てf(x),9(x)の 最大公約数 を

求 め れば,f(x),g(x)が 互 いに素 よ り1と なって,そ こか ら導かれ る.詳 細

は参考 文献[7]を 参 照.

次 に,多 項式!(勾,9(x)が あ る0で ない多項式h(x),ん@)を 用 いて,

!(x)ん(x)十9(x)ん(x)=1

と で き る とす る.こ の とき,f(勾,g(x)に,

∫(x)=!ノ(x)P(x)9(偲)=9ノ(x)p(x)

の よ うな0で ない共通 因子p(x)が 存在 した とす る と,

.f'(x)p(x)h(勾+g'(x)P@)k(勾=1

で あ り,p(④ の根 αを代入す れば,0=1と なって矛盾 す る,し たがっ て,

ノ(勾,g@)は 互い に素 であ る.口

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付 録A基 礎知識 154

補題A.1.11∫(x)を 体K上 の多項式 と し,∫(�)と 互い に素 なK上 の多

項 式 をp(勾,q(勾 とす る.こ の とき,p(x)4'(勾 も ノ(x)と 互 い に素 であ る.

証 明p@),q(x)は!(勾 と互 い に素 よ り,補 題A.1.10よ り,K上 の 多 項 式

α(x),b(x),α'(x),b'(の を用 い て,

f(x)a(x)+P(x)b(x)=1

!(x)α'(x)+q(x)わ'㈲ 一1

とでき る.式(A.2)の 両辺 にp(の をか ける と,

p(④ ノ(勾αノ(x)+p(x)q(x)b'(勾=P(勾

であ り,こ れを式(A.1)に 代入 す る と,

f(x)a(x)+{p(23)!(x)Q'(④+p(x)q(x)b'(x)}b(x)=1

⇔!(x){a(x)+P@)α'@)b(x)}+p@)q(x)わ(x)b'@)=1

した が っ て,補 題A.1.10よ り,p(x)g@)はf(勾 と既 約 で あ る,

(A.1)

(A.2)

命題A。1.12!(の を体K上 の多項式 とす る.∫(x}の 既約 多項 式への分解

は,順 序 と定数倍 を除い て一意 であ る.

証 明 ノ(勾の各項 の係数 の最大公約数をdと し,g(x)=df(コ じ)とす る.g(勾

がK上 の既約 な多項式 を用 いて,

9(勾=P、(珈2@)・ ・P。(x)=q、(x)42(x)…qm@)

と2通 りに因数分解 された とする.n=1の とき,pl(x)は 既約 であ るか ら,

明 らか にm=1で あ り,p1(x)=ql(x)で あ るか ら,こ の命題 は成 り立つ.

次 に,既 約 因 子 がn個 よ り少 な い とき に この 命 題 が 成 立 す る と して,既

約 因 子 がn個 の と き を考 え る.仮 に,41(x)カ ㍉)1(x),P2(x),…,pn(勾 の い

ず れ と も一 致 しな けれ ば,Q1(x)とp1@),pz(x),…,pπ(x)が 互 い に 素 で あ

る か ら,補 題A.1.11か ら,g1(x)と ノ(勾=P1(x)pz(x)…pη(x)は 互 い に

素 で あ る が,こ れ は矛 盾 で あ る.し た が って,p1(x)=ql(④ と して よい.

よ っ て,帰 納 法 の仮 定 か ら,pz(勾,p3(x),…,pπ(x)を 適 当 に並 び 替 えれ ば,

Q2(④,Q3(x),…,q鼠 勾 と一 致 す るの で,命 題 は 成 立 す る.□

命題A.1.131次 以上 の体K上 のn次 多項 式f(x)は,n個 よ り多 くの異

なる根 を持 たない.

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付 録A基 礎知識155

証明nに 関す る帰納法で示すn=1の とき,∫(x)を

ア@)=ax+わ(α ≠o)

とす る と,!@)の 根 はx=一 で あるか ら明 らかに根 は1つ で ある.

次 に,degf(x)<nの ときに この命題 が成立 す る と して,degf(x)=n

の ときを考 えるf(x)の 根 の1つ を αとす る と,

∫(勾=(卜 α)9(x)

とで きる.degg(x)=n-1で あ るか ら,帰 納法 の仮定 よ り,9(④ はn-1

個 よ り多 くの根 を持 たない.し たが って,題 意 は成立す る.〔]

A.2ベ ク トル 空間

あ る数 の作図可能性 を調べ るとき,そ の数 が含 まれ る体 をベ ク トル空間

とみ な した次元 が重要 となる.そ こで,以 下 に抽象 的 なベ ク トル空 間の定

義 を行 う.

定 義A.2.1Kを 体,Vを 集合 とす る.任 意 の ∬,〃∈五,α ∈Kに 対 して,

(a)xと ッの和 と呼 ばれるVの 元x+y

(b)xの スカラー倍 と呼 ばれ るvの 元 α窟

が定 ま っていて,以 下 の8つ の条件 が満 たされ る とき,VはK上 のベ ク ト

ル空 間 であ るとい う.

(1)(x+野)十z=x十(ツ+z)

(2)x十2ノ=〃 十x

(3)あ る0と 呼 ばれ る特別 な γ の元 が あって,任 意 のx∈Vに 対 して,

x十 〇=コ じ

(4)任 意 のx∈Vに 対 して,x+x=oと な るx∈Vが 存 在 す る.

(5)α,β ∈K,x∈Vに 対 し,(α β)・x=.●(β ・勾 が成 り立 っ.

(6)α,β ∈K,x∈Vに 対 し,(α+β)・x=a・x+β 切 が 成 り立 つ.

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付 録A基 礎知識

(7)α ∈K,x,雪 ∈Vに 対 し,α ・伽+ω=α 切+a・yが 成 り立 つ ・

(8)Kの 乗 法 に 関 す る単 位 元1に 対 して,1畷=xが 成 り立 っ.

156

[コ

定 義A.22VをK上 の ベ ク トル 空 間,xl,x2,…,賜 ∈Vと す る.こ の

とき,任 意 のx∈Vが,

x=λ 両+λ2∬2+…+λ 凸(λ 、∈ 一κ)

と書 け る と き,娠 物,…,賜 はVを 生 成 す る とい う.こ の と き,Vを

(xl,ω2・ 一,∬ π〉と表 す.□

定 義A.2.3VをK上 のベ ク トル 空 間 とす る.こ の とき,xl,∬2,…xn∈V

に対 して,λ1=λ2=…=λ η=0で あ る と き以 外 は,

λ、x、+λ2∬2+…+λ 凸=0(λ 乞∈K)

を満 た さない とき,xl,x2,… 賜 はK上1次 独 立 であ る とい う.

xl,x2,…xnが1次 独 立 で な い,つ ま り,少 な くと も1っ は0で な い λを

用 い て λ1∬1+λ2∬2+…+λ 濯n=0と で き る とき,¢1,x2,… 妬 は1次 従

属 で あ る とい う.日

定義A.2.4VをK上 のベ ク トル空間 とす る.こ の とき,xl,x2,…xn∈K

がVを 生 成 してい て,か つ1次 独立 であ る とき,xl,x2,…,賜 はVの 基

底 であ る とい う.ロ

補題A.2.5VをK上 のベ ク トル空 間 とす る。xl,x2,… ∬m∈VがVを

生成 してい る とき,mよ り多いVの 元 の組 は1次 従属 。つ ま り,V内 の1

次独立 であ るベ ク トルの個数 はm以 下で ある.

証明 証明は参考文献 国 を参照. 口

命 題A.2。6VをK上 の ベ ク トル 空 間 とす る 。この とき,xl,x2,…,xnと

g1,〃2,…,伽 を そ れ ぞ れVの 基 底 とす る と,n=mと な る.

証 明xl,ω2,…,xnはK上 で,Vを 生 成 して い て,賀1,yz,…,除 はK上

で1次 独 立 な の で,補 題.4.2.5よ り,m≦nで あ る.一 方 で,〃1,y2,…,腕

はVを 生 成 して い て,娠 ∬2,…,賜 はK上 で1次 独 立 な の で,n≦mで

あ る.し た が って,こ の 二 つ の不 等 式 か らmニnで あ る.□

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付 録A基 礎知識 157

定義A.2.7VをK上 のベ ク トル空 間 とす る.Vに 基底 があ る とき,上 の

命題 オ.2.6に よ り,Vの 基底xl,x2,…,xnに 含 まれ るベ ク トル の個 数n

は,基 底 によ らず一定 である、このnをVのK上 の次元 とい う.ま た,基

底 を持つ ベ ク トル空間 を有 限次元 ベ ク トル空間 とい う.口

定義A.2.8あ るベ ク トル空間Wに 対 して,Wの 部分 集合VがWの 演

算 で閉 じている とき,つ ま り,Vの 任意 の元 α,bとKの 任 意 の元 鳶が

a十bEV κ ・α ∈V

を満 たす とき,VをWの 部分ベク トル空間 とい う. 口

補題A.2.9VがWのK上 の有限次元の部分ベク トル空問であるとき,

dimKV<dimKW

で あ る.

証 明Wの 基 底 をxl,x2,…,賜,Vの 基 底 をyi,g2,…,筋 とす る.こ の

と き,ω1,偲2,…,∬ ηはWを 生 成 して い る.こ こ で,ッ1,〃2,…,脈 は1次

独 立 よ り,補 題A.2.5か らm≦nで あ る.口

A.3連 立方程 式

定 義A.3.1体K上 のベ ク トル空 間V,Wの 間の写像!:V-→Wが,V

の元 α,β とKの 元kに 対 して

(1)f(α+β)=ノ(α)+ノ(β)

(2)f(ka)=ん!(α)

を満 たす とき,fを 線形 写像 とい う. [コ

定 義A.3.2V,Wを ベ ク トル空 間 とす る.Vか らWへ の線 形写像 ∫に

対 して,fに よって移 され るベ ク トル 全体 のなす集合{f(x)∈ 瑚 ∬∈V}

を ノの像 といい,Imfと 書 く.ま た,!に よって零 ベ ク トル に移 され るV

の元 全体 の なす集合{x∈yl!(x)=0}をfの 核 といい,kerノ と書 く.口

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付 録A基 礎知識 158

補 題A.3.3体K上 のベ ク トル空 間V,Wに 対 して,∫ がVか らWへ の

線形写 像 とす る.こ の とき,fの 核 はVの,fの 像 はWの 部分 ベ ク トル空

間 であ る.

証 明ker!の 任意 の元 を 銑 〃識 をKの 任意 の乖 とす る.こ の とき,

!(x十 〃)=ア(勾 十!ω;0

ノ(ん勾=ん ∫ω=0

で あ る.し た が って,x+y,ん ∬はkerfの 元 で あ る.し た が っ て,kerfはV

の 部 分 ベ ク トル 空 闘 で あ る.

x,〃 をVの 任意 の元 とし,kをKの 任意 の元 とす る.こ の とき,

f(x)十 ∫(ツ)=ノ(x十 〃)

んノ(勾=ノ(kx)

であ る.し たが って,f(x)+f(〃),好(x)はImfの 元 であ る.よ って,Imf

はWの 部 分ベ ク トル空間 である.口

定 理A.3.4体K上 のベ ク トル空 間V,Wに 対 して,!をVか らWへ の

線 形写像 とす る.こ の とき,

dimkerf-1-dimImf=dimV

で あ る.

証 明Imノ の基 底 を ッ1,g2,…,腕,kerfの 基 底 をxl,x2,…,xmと す る.

さ らに,ノ で 跳,〃2,…,腕 に移 る よ うなVの 元 を ッi,託,…,垢 とす る.

ま ず,xl,x2,…,賜,班,垢,…,垢 が1次 独 立 で あ る こ と を 示 す.

b1ッi十b2託 十 … 十 わη垢 十alxl十a2x2十 … 十CLmxm=0(A.3)

とす る.こ の とき,両 辺 にfを かける と,

biyl+b2y2+…+6蔽=0

よ り,〃,は 基 底 だ か ら,bl=b2=…=6η=0で あ る.し た が って,こ れ を

式(A.3)に 代 入 す れ ば,x2が 基 底 だ か ら,α1=α2ニ …;αm=0で あ る.

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付 録A基 礎知識 159

次 に,xl,窺,…,り じ禰 垢 垢,・一,垢 がVを 生 成 す る こ とを示 す.任 意 の

Vの 元vに 対 して,f(v)は

f(v)=わ 、〃、+b2y2+…+bnyn

と 書 け る.こ こ で,

v'=b、/yi+62垢+…+b溜 あ

と お く.こ の と き,f(v`)=f(v)で あ る.よ っ て,

f(v)f(v')=f(v-v')=0

よ っ て,v-v'はkerfの 元 よ り,

v-v=α1∬1十a2x2十 … 十amam

で あ る.し た が っ て,

v=a、x、+a2x・+…+α 隅鰍+b、 班+わ2垢+…+bm垢

で あ る 。

の で,xl,x2,…,鰍,班,蜴,…,垢 はVの 基 底 で あ る.よ っ て,

dimt/=m十n

で あ る,nはIm!の 基底 の個数 であ ったか ら,題 意 が成立す る.

定 理A.3.5K係 数 の連 立方程式

α11∬1+α21瓢2+…+α η1躍π=O

ataxi+α22∬2+…+α π2賜 二 〇

α1糾1+α2m∬2+… ÷ απ㎜妬=0

はm<nの とき,非 自明 な 解 を持 っ.

以 上 か らxl,x2,…,Zm,/yi,垢,…,垢 はVを 生 成 して い て,1次 独 立 な

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付 録A基 礎知識160

証明K上 のベク トル空間Kπ からKmへ の線形写像 ∫を次のように作る.

!(1)一(驚鷲.燃)

この と き,dimlmf≦m,m〈nよ り,

dimkerf=n‐dim(lmf)>0

よつて ・でないベクトル(1)でf(1)一 ・となるものがある □

A.4群

定 義A.4.1あ る集 合Gと,Gの 元x,〃 に対 す る2項 演 算

G×G-→G(@,の ト →x・y)

が 次 の3つ の 条 件 を満 た す とき,Gは 群 で あ る とい う.

(1)結 合 法 則 が成 り立 つ.つ ま り,任 意 のx,〃,z∈Gに 対 して,(飾 〃)・z=

x・(y・z)で あ る.

(2)単 位 元 が存 在 す る.つ ま り,あ る元e∈Gが 存 在 して,x・e=e・x=x

であ る.

(3)逆 元 が存 在 す る.つ ま り,任 意 のxに 対 して,x-1∈Gが 存在 して,

x・x-1=x-1・x=eで ある.

さ らに,群Gが 交換法則(x・y=y・x)を 満 たす とき,Gを アーベル群 また

は,可 換 群 とい う.ま た,Gが 有限集合 であ る とき,Gを 有限群 とい う.有

限群Gの 元 の個 数の ことをGの 位数 といい,IGIと 表す.口

定義A.4.2Uを 群0の 空 で ない部分集 合 とす る,こ の とき,σ の元がG

で定 義 され た演算 に対 して群 をな す とき,σ をGの 部分群 とい う.口

補題A.4.3Gを 群 と し,HをGの 空 でない部分集合 とす る.こ の とき,H

の任 意 の元x,〃 に対 して,

xy-1EH(A.4)

な ら ば,HはGの 部 分 群 で あ る.

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付 録A基 礎知識 161

証 明 式(A.4)に お い て,2じ ニyで あ る とす る と,xx-1=e∈Hで あ るか

らHはGの 単 位 元eを 含 む.よ っ て,x=eと す る と,ey-1=〃-1∈H

で あ る か ら,Hは 〃の逆 元 禦一1も 含 む.ま た,xと 〃がHの 元 で あ る と き,

g-1もHの 元 で あ るか ら,x(ガ1)-1二 ωッとな り,xyもHの 元 とな る.よ っ

て,HはGの 演 算 で 閉 じて い る.Hの 元 の演 算 が結 合 法 則 を 満 たす こ と

は明 らか で あるか ら,HはGの 部分群 であ る.

補 題A.4.4Gを 群,aをGの 元 とす る.こ の とき,Gの 元xに 対 して,

G

σ

σ

σ

.伽

.㌍

E

とな るよ うな写像L、,R、 は全単射 であ る.

La(x)=ax

Rd(x)=xa

〔]

証 明 ま ず,L、 が 単 射 で あ る こ とを示 す.Gの 元xと ッに対 して,五 、@)=

La(〃)な らば,ax=ayで あ り,

一1 -一_-1x=a-ax=a-ay=y

であ るか らLaは 単射で ある.

次 に,L、 が全射 であ るこ とを示 す.Gの 任意 の元 ッに対 して,Gの あ る

元xが 存 在 して,y=L。(勾 で あれ ば よい.x=a-lyと おけ ば明 らか であ

るか ら,L、 は全射 であ る.し たが って,L、 は全単射 であ る.

同様に してR、 が全単射であることも導かれる.

系A.4.5群G={xl,x2,'",2)η}と す る.こ の と き,x8を 固 定 す れ ば,

で あ る.

{xzx、,xZx2,…,xixn}一{x、,x2,…,記 。}

群Gの 部分群Hに 対 しては次の性質がある.

(1)Gの 単位元はHの 単位元である.

(2)x∈Hな らば,x-1∈Hで あ る.

(3)∬ 瑠 ∈Hな らば,xy∈Hで あ る.

⊂]

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付 録A基 礎知識 162

この性質 を利 用 して,群Gと そ の部 分群Hに 対 して,同 値 関係 を作 り,

そ れ によ って,新 しい集合 を定義 す る ことを考 えたい.そ こで,Gの 元x,

〃に対 して,xと 〃の同値 関係 を次 の よ うに定 義す る.

の~ ツ⇔x-ly∈H

実 際 に,x~xはx-1∬ ニe∈Hな の で,反 射 律 を 満 た す こ とは 明 らか

で あ る.ま た,x-lyの 逆 元(x-ly)-1は ガ1∬ で あ るか ら対 称 律 も満 た す.

さ ら に,x~ 〃,〃 ~Zな らば,ガ1Z=(x-ly)(ッ 『1の ∈Hか ら推 移 律 も満

た す.

補 題A.4.6Gの 部分集合 盟 を

xH={xん ∈(亨1ん∈H}

と定義すれば,上 記の同値関係において,∬Hがxを 代表元 とする同値類

である.

証 明 上記 の同値 関係 において,xを 代 表元 とす る同値類c(勾 は,

o(x)一{シ ∈σ1偲一1ッ∈H}

であ る.と ころ で,x-lyEHで あ る ことは,Hの あ る元hに 対 して,〃=xh

で あ る こ と と同値 で あ るか ら,0(x)=xHで あ る 。 口

定義A.4.7xを 代表元 とする同値類xHの ことを,Hに よる左剰余類 と

い う.こ の左剰余類全体の集合は,同 値関係 ~の商集合G/~ である.よ っ

て,こ の商集合をG/Hと 書いて,GのHに よる左剰余集合 とい う.ま た

は,GをHで 右から割 った集合とい う.口

こ こで,上 記 の同値 関係x~gを ∬シー1∈Hと 定義 して も同様 の考察 が

可能 であ る.こ の とき,xを 代表元 とす る同値類 は,

Hx=伽 ∈Glん ∈珊

であ り,Hxを 右剰余類 とい う.こ の同値 関係 に よる商集合G/~ をH\G

と書 く.

定義A.4.8有 限群 σの部分群Hに 対 して,左 剰余集合 の濃度をHのG

における指数 といい,1σ/珂 と書 く.

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付 録A基 礎知識163

命 題A.4.9有 限群Gの 部分群をHと す る.こ の とき,

lGl=1珂1σ/珂

が 成 り立 つ.

証 明[0/El=rと し,(77のHに よ る 類 別 をx1H,xZH,…,∬ 。∬ と仮 定

す る.こ の とき,

G=x1HUx2HU…UxrH

で あ る.こ こで,x2H∩%H=φ であれ ば,矧=γ1珂 であ るか ら題意 は

示 され る.そ こで,同 値 関係 ではないx2と 賜 につ い てxiH∩ 紛H≠ φと

す る.こ の とき,xiHと ¢ゴHに は共通元cが 存 在 して,

・一 帥 一ψ'(h,h'∈H)

と書 ける.こ の式 の右 か ら ん一1を かけ る と,銑=賜 ん'h-1で あ る.よ って,

ん'ん一1はHの 元 よ り,xiHは 紛Hと 同 じ剰余 類 であ る しか し,こ れは証

明 の最初 の仮定 と矛盾 す る。したが って,xiH∩ ¢メ∫=φ であ る.以 上 か

ら,IGIニ バ珂 であ る.口

定義A.4.10群Gの 部分群Eが,

H=gHg-1(・ 一{9ん9一11ん ∈H})

を満 たす とき,HをGの 正規部分群 とい い,(ヌ 〉 ∬ ま たはHぐGと 書

く.口

補題A.4.11正 規部分群G>Hに 対 して,剰 余 集合(77/Hは 自然 な演算

に よ り再 び群 にな る.

証 明G/Hの 元xHとyHに 対 して,次 の よ うに演算 の定 義す る.

(xH)(yH)=xyH(A.5)

まず,式(A.5)が 剰余類の代表元 の選 び方 に よらない こ とを示 す.つ ま り,

xH=ゴH,yH=�H⇒xyHニxy'H

で あ る こ とを示せ ばよい.

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付 録A基 礎知識 164

ま ず,h,h'∈Hが 存 在 し て,x=x'h,雪=y'h'と か け る.よ っ て,

xy=x'h�h'

で あ る.と ろ こで,σ>Hで あ るか ら,ッー1勿 ∈Hで あ る.し た が っ て,

xy-x'hy'h'-xy'((ツ')-lhe')h'∈,xy'H

であ る.

したが って,式(A.5)の ように,G/Hの 元 の演 算 を定 義す る と,単 位 元

は明 らか に,eHで あ り,xHの 逆 元 はx-1Hで あ る.以 上 か ら,題 意 は成立

す る.口

定義A.4.12群Gの 正規部分群Hに よる剰余集 合G/Hが なす群 をGの

Hに よる剰 余群 または商群 とい う.口

定 義A.4.13GとG'を 群 とす る.こ の とき,写 像 ∫:G-→(γ がGの 任

意 の元x,〃 に対 して,

!(xy)=f(x)∫ ω

を満 たす とき,!をGか らG'へ の準同型(写 像)と い う.さ らに,fが 全単

射 の とき,ノ を同型 とい う.2つ の群GとG'の 問 に同型写像 が存在す る と

き,GとG'は 同型 であ るといい,

GN(γ

と書 く.口

補 題A.4.14GとG'を 群,!をGか らG'へ の準 同 型 写 像 とす る.こ の と

き,Gの 元 をxと す る と,∫@一1)=∫ ㈲ 一1で あ る.ま た,Gの 単 位 元 をe,

G'の 単 位 元 をe,と す る と,f(e)=e'で あ る.

証 明 ノ(e)f(e)リ!(e・e)ef(e)で あ る.よ っ て,両 辺 に ノ(e)-1を か け

る と,

∫(・)一 ∫(・)!(・)!(・)-1-!(・)!(・)-1-・'

で あ る.ま た,

∫(・)一 ノ(xx-1)一!@)∫(x-1)一 ・'

で あ る か ら,!(x-1)f(④ 一1で あ る.□

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付 録A基 礎知識 165

定 義A.4.15(7とG'を 群fをGか らG'へ の準 同型写像 とす る.こ の と

き,Imfを をfの 像,kerfを!の 核 とい い,次 の よ うに定義 す る.

Im!={∫(a)[α ∈G}ker!一{α ∈Gi!(α)-e}

補 題A.4.16Gと(γ を群,ア をGか らG'へ の準 同型写像 とす る.こ の と

き,Imfは(γ の部分群 で あ り,kerfはGの 正 規部分群 で あ る.

証明Im!の 元,yl,y2に 対 して,

!(勾=影 ・f(x2)=92

とな る,(穿 の 元xl,x2が 存 在 して,

鵬2=∫(xl)ノ(x2)=f(侮 偲2)

で あ る.さ らに,!@)-1_f(一1)で あ る か ら,Imfは(γ の 部 分 群 で あ る.

次 に,kerノ がGの 部 分 群 で あ る こ とを示 す.!(x)=∫(g)=e'と す る と,

ノ(xy)=f(x)∫ ω 濡e'

で あ る.ま た,

!(e)=ノ(x)f(x-1)=�

よ り,!@-1)=e'で あ る か ら,ker!はGの 部 分 群 で あ る.さ ら に,ker!

の任 意 の 元xに 対 して,

ノ(gxg-1)=!(9)!(勾!(9-1)

一!(9)∫@)!(9)-1

.f(9).フ(9)-1

=e

よ り,g∬g一1もker!の 元 であるか ら,kerノ はGの 正規 部分群 であ る.□

定理A.4.17(準 同型定 理)Gと(γ を群,!をGか ら(γ へ の準 同型 写像

と し,K=kerfと す る.こ の とき,写 像7を,9∈Gに 対 して

f・G/一 κ 一→Im!f(9・K)=!(9)

とす る と,fは 商 群 σ/Kか ら,G'の 部 分 群Im!へ の 同型 で あ る.

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付 録A基 礎知識 Iss

証 明 ま ず,ア が 写 像 で あ る こ と,つ ま りwell-definedで あ る こ とを示 す.

Gの 元 α,bに 対 して,aKebKと す る.こ の と き,a-1b∈ker!で あ る

か ら,

e=f(a_ib)f(a-1)f(b)=ノ(の 一1∫(b)

で あ り,ノ(a)=f(b)と な る.

次 に,!が 準 同型写像 である ことを示 す.任 意のG/Kの 元aKとbKに

対 して,

f(aKbK)=f(abK)=f(ab)=f(a)f(b)=f(aK)f(bK)

で あ る.

さ らに,fが 全 単射 であ る ことを示 す。 まず,Gの 元 α,bに 対 して,

f(aK)=f(bK)で あ る とする と,f(a)=ア(b)で あ り,

f(a‐lb)e!(α 1)!(b)一 ∫(α)『1!(う)一 ・

で あ るか ら,a‐lb∈ker!,つ ま り,aK=bKで あ り,!は 単 射 で あ る.ま

た,任 意 のGの 元aに 対 して,

f(a)=f(aK)Elmf

で あ るか ら,!は 全射 で もあ る.以 上 か ら題意 は示 され る.口

定義A.4.18あ る群Gが,た だ1つ の元gか ら生成 されてい る とき,σ を

巡 回群 とい う.つ ま り,Gの 元9あ って,任 意 の元xに 対 して,

x=gn

となる よ うな整数nが 存在す るこ とである.ま た,巡 回群Gがgか ら生成

されてい る とき,Gを 〈g>とか く.口

定義A.4.19群Gの 元gに 対 して,Qn=eと なる よ うな最 小の 自然数 η

をgの 位 数 とい う.[]

補題A.420Gを 有限群 とする.Gの 元gの 位数 をnと す る と,nはlq

の約数 であ る。

証 明gに よって生成 され る巡回群 〈g>は,明 らかにGの 部分群 である.し

たが って,命 題A.4.9よ り,〈g>は1G[の 約 数 であ る.と ころで,群 の元 の

位数 の定義 か ら,kg>iと9の 位数 が等 しい ことは容易 に示 され るの で,題

意 は成立 す る.口

Page 168: 折り紙の作図可能性についてrepository.hyogo-u.ac.jp/dspace/bitstream/10132/2603/1/...3 はじめに 折り紙は,日本に古くから伝わる遊び道具であり,誰もが一度は鶴や手

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