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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System Title Author(s) �, Citation Issue date 2013-03-25 Type Thesis or Dissertation URL http://hdl.handle.net/2298/30905 Right

熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository Systemreposit.lib.kumamoto-u.ac.jp/bitstream/2298/30905/1/22-1906.pdf · This model for emergency surgery, CORES,

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熊本大学学術リポジトリ

Kumamoto University Repository System

Title 緊急手術における術後死亡率予測モデルの開発

Author(s) 宮崎, 直樹

Citation

Issue date 2013-03-25

Type Thesis or Dissertation

URL http://hdl.handle.net/2298/30905

Right

1

学位論文

Doctoral Thesis

緊急手術における術後死亡率予測モデルの開発

(Development of a model predicting postoperative mortality in emergency surgeries)

宮崎 直樹

Naoki Miyazaki

熊本大学大学院医学教育部博士課程臨床医科学専攻臨床国際協力学

指導教員

芳賀 克夫 客員教授

熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻臨床国際協力学

2013年3月

2

学位論文

Doctoral Thesis

論文題名:緊急手術における術後死亡率予測モデルの開発

(Development of a model predicting postoperative mortality in emergency surgeries)

著 者 名: 宮崎直樹

(単名) Naoki Miyazaki

指導教員名:熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻臨床国際協力学 芳賀 克夫教授

審査委員名 : 麻酔科学担当教授 氏 名 山本達郎

侵襲制御医学担当教授 氏 名 木下順弘

脳神経外科学担当教授 氏 名 倉津純一

2013年3月

3

目次 ページ

1. 要旨

1) 要旨 4

2) Summary 6

2. 学位論文の骨格となる参考論文リスト 8

3. 謝辞 9

4. 略語一覧 11

5. 研究の背景と目的 12

6. 研究方法

1) 研究デザイン及び倫理的配慮 14

2) 対象 14

3) 方法 16

a) データ収集 16

表1 18

表2 20

表3 23

b) 統計解析 24

7. 研究結果 26—49

図1 27

表4 29

表5 31

表6 35

図2 37

表7 38

図3 40

表8 42

表9 44

図4 45

表10 47

図5 48

表11 49

8. 考察 50

9. 結語 55

10. 文献 56

4

1.要旨

背景

我々は過去、予定消化器外科手術で術後死亡率を予測する統計モデルEstimation of Phy

siologic Ability and surgical Stress(E-PASS)を開発した。E-PASSはあくまで患者の状態

が安定した待機手術患者が対象であり、緊急手術患者には適用できない。本研究の目的

は、外科系全診療科の緊急手術症例のデータを解析し、緊急手術症例における術後死亡

率を予測する統計モデルを開発し、その有用性を検証することにある。

方法

国立病院機構熊本医療センターで行われた 479例の緊急手術症例をロジスティック回帰分析で

解析し、術後在院死亡率を予測するモデルを開発した。このモデルは Calculation of post-

Operative Risk in Emergency Surgery (CORES)と命名した。CORES の予測精度は同じく国立病

院機構熊本医療センターで行われた別の緊急手術症例(モデル検証群)を対象とし、イギリス

で開発された術後死亡予測モデル Portsmouth modification of Physiological and Operative

Severity Score for the enUmeration of Mortality and morbidity (P-POSSUM)と ROC曲線下

面積を用いて比較した。さらに、多施設(6病院)で得られた緊急手術症例(多施設群)を対

象とし、CORES の予測精度を検証した。

5

結果

P-POSSUM は術後死亡率予測に 20 の周術期パラメータを要するが、CORES はわずか 5つの術前パ

ラメータしか要しない。モデル検証群 (n=494) における在院死亡予測の ROC曲線下面積(95%

信頼区間)は、CORES で 0.86(0.80-0.93)であり、P-POSSUM の 0.87(0.82-0.93)と同等の予

測精度を示した。CORES の予測死亡率と術後合併症の重症度は有意に相関した。多施設群

(n=1471) においても在院死亡に関する ROC曲線下面積(95%信頼区間)は 0.85(0.81-0.89)

と高値を示した。また、予測死亡率と術後合併症の重症度も有意な相関を示した。

結論

緊急手術の術後在院死亡率を予測する CORES は、P-POSSUM と同等の高い予測精度を示した。し

かし、CORESは P-POSSUM と比べ必要とするパラメータが極めて少なく、術前に予後予測ができ

るという利点がある。

今後の展望

CORES は臨床現場で部門間のカンファレンスや家族へのインフォームド・コンセントに活用で

きるだろう。その結果、効率的な医療の提供と医師患者間の信頼性向上に寄与できるだろう。

また、病院間の外科技術評価を行う際に対象患者のリスク補正に有用と考えられる。

6

SUMMARY

Backgrounds

We constructed a prediction model to predict postoperative risk in elective digestive surgery,

designated as Estimation of Physiologic Ability and Surgical Stress (E-PASS).E-PASS targets

only elective surgery, in which patient’s conditions are usually stable.In this study, we aimed to

develop a scoring system that predicts postoperative mortality in a wide variety of emergency

surgeries.

Methods

A logistic regression model was constructed in order to predict in-hospital mortality using data

from a cohort of 479 cases of emergency surgery performed in a Japanese referral hospital.

The discrimination power of the current model, termed Calculation of post-Operative Risk in

Emergency Surgery (CORES), and Portsmouth modification of Physiological and Operative

Severity Score for the enUmeration of Mortality and morbidity (P-POSSUM) were validated

using the area under the receiver operating characteristic curve (AUC) in another cohort of 494

cases in the same hospital (Validation subset). We further evaluated the accuracy of CORES in

a cohort of 1471 cases in six referral hospitals (Multicenter subset).

7

Results

CORES requires only 5 preoperative variables, while P-POSSUM requires 20 perioperative

variables. In Validation subset, CORES had a similar discrimination power to P-POSSUM for

detecting in-hospital mortality (AUC, 95%CI for CORES: 0.86, 0.80–0.93; for P-POSSUM: 0.87,

0.82–0.93). The predicted mortality rates of CORES significantly correlated with the severity of

postoperative complications. The following multicenter study also demonstrated that CORES

exhibited a high AUC value (0.85: 0.81–0.89) and a significant correlation with postoperative

morbidity.

Conclusions

This model for emergency surgery, CORES, demonstrated a similar discriminatory power to P-

POSSUM in predicting postoperative mortality. However, CORES has a substantial advantage

over P-POSSUM in that it utilizes far fewer variables.

8

1. 学位論文の骨格となる参考論文リスト

関連論文(英文1編)

Naoki Miyazaki, Yoshio Haga, Hidekazu Matsukawa, Tatsuhiro Ishimura, Miki Fujita, Tadashi

Ejima, Hironari Tanimoto

「The development and validation of the Calculation of post-Operative Risk in Emergency

Surgery (CORES) model」

Surgery Today,published online. DOI10.1007/s00595-013-0707-1

参考論文(その他の論文、和文1編)

1.小寺厚志,芳賀克夫,宮崎直樹,宮成信友,片淵茂「90才以上の腹部緊急手術症例におけるリス

ク評価法P-POSSUMの有用性」日本臨床麻酔学会誌, 2010;30:619-624.

9

2. 謝辞

まず、大学院に入学する際に私の所属する麻酔科学以外の分野への入学を認めていただ

き、選択した緩和ケア学理論の授業においても熱心に指導して頂いた熊本大学大学院医学

教育部博士課程医学専攻麻酔科学分野の山本達郎教授に、この場を借りて深くお礼を申し

上げたく思います。

また、今回の学位論文を作成するにあたって熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専

攻臨床国際協力学分野の芳賀克夫教授に、生物統計学の分野を中心に詳細なご指導をいた

だきましたことをここに深くお礼申し上げます。また、本研究の一部を2010年6月に福岡で

行われたアジア、オーストラレーシア麻酔学会でのポスター発表や、2011年8月に横浜で行

われたInternational Surgical Week 2011で口演で発表した際も、英語での発表の仕方や

原稿作成など熱心にご指導いただきましたことも深く感謝しております。国際学会での発

表という貴重な体験は私にとって一生の思い出となるでしょう。ここに改めてお礼を申し

上げます。本当に有難うございました。

さらに、カリフォルニア大学ロサンゼルス校消化器内科学のJonathan D. Kaunitz教授に

は、論文執筆に於いて懇切丁寧な英語指導をいただきましたことを感謝申し上げます。ま

た、エール大学経営学部のWilliam A. Vance博士には、CORESという統計モデルの命名にお

いて貴重なご助言をいただきましたことを感謝申し上げます。

最後に、関連論文を作成するにあたって約2000例の症例を研究対象とすることができま

10

した。国立病院機構熊本医療センター麻酔科部長瀧賢一郎先生、済生会熊本病院麻酔科部

長原武義和先生、労働者健康福祉機構熊本労災病院麻酔科部長成松紀子先生、健康保険熊

本総合病院麻酔科部長谷本宏成先生、水俣市立総合医療センター麻酔科部長田尻晃彦先生

をはじめ,研究データ収集にご協力いただいた各施設の麻酔科の先生方、データ収集の場

所、時間、情報をご用意いただいた事務の方々、本研究の実施をお認めいただいた各施設

の倫理委員会のメンバーの方々にも深くお礼を申し上げます。また、研究機関中の多忙な

生活をささえてくれた家族にも感謝の意を表します。本当に有難うございました。

11

4.略語一覧

E-PASS: Estimation of Physiologic Ability and Surgical Stress

CORES: Calculation of post-Operative Risk in Emergency Surgery

POSSUM: Physiological and Operative Severity Score for the enUmeration of Mortality and

morbidity

P-POSSUM: Portsmouth modification of Physiological and Operative Severity Score for the

enUmeration of Mortality and morbidity

ROC: Receiver Operating Characteristic/:

AUC: Area Under the Reciever Operating Characteristic Curve

KMC: Kumamoto Medical Center

JCS: Japan Coma Scale

GCS:Glasgow Coma Scale

ASA: American Society of Anesthesiologists

SOFA: Sequential Organ Failure Assessment

ICU: Intensive Care Unit

OE ratio: Observed-to-Estimated mortality rates ratio

12

5.研究背景と目的

緊急手術は国家の保険医療にとって重大な課題である[1–3]。日本のDPCデータによると、

腸閉塞手術数は悪性腫瘍の結腸切除術数の44%に相当する。さらに、緊急手術は症例数が多い

だけでなく、術後患者はしばしば集中治療を必要とし、多くの医療資源を消費している。よっ

て、緊急手術の専門領域として発展したAcute Care Surgeryは、現代保険医療にとって重要な

役割を担っており、その医療の質を評価することは極めて重要である[1]。

外科の技術評価を行うために、待機手術と緊急手術の双方の術後死亡率を予測するモデルが

開発されている[4–6]。しかし、種々の外科領域において緊急手術と待機手術の術後死亡率に有

意な差があることが以前より報告されている[7–10]。待機手術では、術前主要臓器機能を評価

する機会があり、もし機能障害があった場合でも、機能を改善させたり、対策を練ることによ

って、術後の合併症発生率や死亡率を下げることも可能である。一方、緊急手術では原疾患に

よって主要臓器のホメオスタシスは破綻していることが多く、術後の合併症発生率や術後死亡

率は高い。さらに、最近のアウトカム研究では、緊急手術と予定手術で術後死亡の危険因子が

異なることが報告されている[11]。これらの報告は、既存の予測モデルによる緊急手術の術後

死予測は適切でないことを示唆している。

我々は如何なる種類の待機手術に於いても、患者の予備力を超える大きな手術侵襲が患者に

加わると、サイトカイン・ストームと言われる全身性の炎症反応が起こり、主要臓器が障害さ

れ、さまざまな術後合併症が惹起されるという仮説を立てた [12]。この仮説に基づいて、我々

13

は待機消化器外科手術の術後死亡率を予測する統計モデルE-PASSを開発した。その後、複数の

研究者が、E-PASSの再現性を、消化器外科[17]、呼吸器外科[18]、心臓外科[19]、血管外科

[20]、整形外科の手術[21]に於いてを証明した。今回、我々は複数の診療科にまたがる緊急手

術に於いても、術前の患者の状態や手術の侵襲の大きさを適切に評価すれば、患者の予後を単

一の統計モデルで予測できるという仮説を立てた。本研究の目的は、緊急手術における新しい

術後死亡予測モデルを開発することである。

14

6. 研究方法

1) 研究デザイン及び倫理的配慮

本研究では、最初に単一施設でコホート研究を行い、その後多施設共同研究を行った。両研

究とも、厚生労働省および文部科学省の定める疫学研究に関する倫理指針に従って実施した。

単一施設研究は、国立病院機構熊本医療センターにおける倫理審査委員会で、2009年 5月 14

日に承認された。すべてのデータは診療録に記載されている内容であり、患者個人を特定でき

る情報は収集していない。患者へのインフォームド・コンセントは行わなかったが、指針に従

い、データ収集時に国立病院機構熊本医療センターのホームページで本研究の概要を公開し

た。

次に行った前向き多施設コホート研究のプロトコールは、患者登録前の 2011 年 11 月に日本

の公式な臨床研究登録サイトである UMINに登録した (UMIN000006486) 。多施設コホート研究

には熊本県の 6 つの病院が参加した。参加病院は、熊本赤十字病院、済生会熊本病院、労働者

健康福祉機構熊本労災病院、健康保険熊本総合病院、水俣市立総合医療センターと国立病院機

構熊本医療センターである。患者へのインフォームド・コンセントは行わず、データ収集時に

国立病院機構熊本医療センターのホームページで本研究の概要を公開した。本研究の実施は各

病院の倫理審査委員会で承認された。

2) 対象

15

単一施設におけるコホート研究では、国立病院機構熊本医療センターに来院してから 24時間

以内に緊急手術を施行した 15 才以上の患者を対象とした。小児患者と成人患者は生理学的特性

が異なるため、対象から 14 才以下の患者は除外した。また、来院から 24時間以内に手術を行

ったが、医学的な緊急性はなかったと判断される整形外科の手術、例えば下肢の単純骨折手術

は、対象から除外した。整形外科の症例に関しては、医学的緊急性を認める開放骨折、刺創、

神経障害を伴う骨折や脱臼、感染を伴う骨折や脱臼、ガス壊疽性筋膜炎、切断が必要な下肢の

急性動脈塞栓症などを対象とした。国立病院機構熊本医療センターは年間に救急車で搬送され

る患者数は 8000人を超え、すべての分野の専門医を配置した日本でも有数の救急病院である。

単一施設研究では、2つの患者群を設定した。2007 年 5月 29日から 2009 年 3月 31 日の間に緊

急手術を施行した症例をモデル開発群とし、統計モデルの開発に用いた。次に、2009年 4月 1

日から 2010 年 9月 7日の間に緊急手術を行った症例をモデル検証群とし、開発した予測モデル

の検証に使用した。モデル開発群は後ろ向きに調査を行い、モデル検証群は前向きに調査し

た。モデル開発群のサンプルサイズについては、ロジスティック回帰分析のエンドポイント事

象の必要数を考慮して決定した。5つの独立変数を用いてロジスティック回帰分析を行うに

は、50例のエンドポイント事象が必要となる。対象患者の在院死亡率を 10%であると仮定する

と、モデル開発群で 50例の在院死亡を得るには、登録症例数は 500 例が必要である。よって、

モデル開発群のサンプルサイズは 500に設定した。モデル検証群のサンプルサイズは、統計解

析の項で示す解析が行えるように 500に設定した。

16

引き続き行った多施設共同研究の対象患者の選択および除外基準は、上記の単一施設研究と

同じもとした。2011年 11月 1日から 2012年 10 月 31 日に対象となった患者は全例登録した。

我々はこの多施設研究の患者群を多施設群と命名した。 診療科間のモデルの予測精度を検証す

るために、多施設群のサンプルサイズは 1500 に設定した。

3) 方法

a)データ収集

モデル開発群において、既往歴、現病歴、薬歴、到着時のバイタルサイン、術前の検査値、

身体所見及び術中・術後所見を含む 35 項目のデータを収集した。一次アウトカムは在院死亡、

二次アウトカムは術後 30日死亡と術後合併症である。

緊急で搬送された患者の意識状態を評価するために、日本では日常的に Japan Coma Scale

(JCS)が用いられる。従って、本研究においても JCS を用いた[23]。JCS は一方向スケール

で、3 ケタのコードで構成されている。それぞれのコードは 3 つのグレーディングを有してい

る。JCSと海外で頻用されている Glasgow Coma Scale(GCS)の関係は、Namiki らが以前報告

している (表 1) [24]。

モデル検証群では、モデル開発群から求められたモデルに必要なパラメータと POSSUM スコア

[4]に必要なパラメータを術後死亡と術後合併症の情報とともに収集した。POSSUM スコアの定

義は表 2 に提示する。術後合併症の定義は、Doglietto らの報告した既存の定義を用いた

17

[25]。これらの術後合併症の重症度は、表 3に示す Clavien 分類によって分類した[26]。

多施設群では、新しく開発されたモデルの独立変数と術後の合併症と在院死亡の有無を収集

した。術後合併症の重症度は、同様に Clavien 分類により分類した。

18

表 1. Japan Coma Scale と Glasgow Coma Scale の関係

Japan Coma Scale Glasgow Coma Scale

E: 開眼 V: 発語 M:最良運動反応

刺激しなくても覚醒している状態

0: 意識清明 4: 自発的に開眼 5: 見当識あり 6: 命令に従う

1: 大体意識清明だが、今一つはっき

りしない

4 5 6

2: 時・人・場所がわからない(見当

識障害)

4 4:混乱した会話 6

3:自分の名前や生年月日がいえない 4

刺激すると覚醒する状態

10: 普通の呼びかけで容易に開眼する 3: 呼びかけにて 3: 混乱した言葉

20: 大きな声または体を揺さぶると開

眼する

3

30: 痛み刺激にてかろうじて開眼する 2: 痛み刺激にて 2: 理解不能な音声

100: 痛みに対して払いのけるような

動作をする

1: 全くなし 5: 疼痛部へ

19

200: 痛み刺激で手足を動かしたり,顔

をしかめる

1 4: 逃避

3:異常屈曲

2: 異常伸展

300: 痛み刺激にまったく反応しない 1 1: 全くなし 1: 全くなし

(文献 24参照)

20

表 2. POSSUM スコアリング・システム

I. Physiological score (術前)

スコア

1 2 4 8

1. 年齢 ≤60 61—70 ≥71

2. 心臓

兆候

不全(-)

利尿剤, ジゴキシ

ン, 抗狭心剤,降

圧剤などの治療

四肢浮腫; ワーフ

ァリン治療

頸静脈圧上昇

胸写 境界型心肥大 心肥大

3. 呼吸

兆候

息切れ(-)

労作時の息切れ

限られた息切れ

(one flight)

安静時の息切れ

(rate > 30/min)

胸写 軽度の COAD 中等度の COAD Fibrosis or

consolidation

4. 収縮期血圧 (mmHg) 110—130 131—170

100—109

≥171

90—99

<89

5. 脈拍(回/分) 50—80 81—100 101—120 ≥121

21

40—49

6. Glasgow coma

score

15 12—14 9—1 1 ≥8

7. ヘモグロビン

(g/dl)

13—16 11.5—12.9

16.1—1 7.0

10.0—11.4

17.1—18.0

≤9.9

≥18.1

8. 白血球数 (×103/

m1)

4—10 10.1—20.0

3.1—4.0

≥20.1

≤3.0

9. BUN(mg/dl) ≤20 20.1—27 27.1—40 ≥40.1

10. ナトリウム

(mEq/L)

≥ I36 131—135 126—130 ≤I25

11. カリウム(mEq/L) 3.5—5.0 3.2—3.4

5.1—5.3

2.9—3.1

5.4—5.9

≤2.8

≥6.0

12. 心電図 正常 心房細動

(脈拍数 60−90)

他の不整脈または

期外収縮 5回/分

以上、異常 Q波、

ST-T異常

2.および 3.では徴候または胸写所見のスコ アの大きい方をそのスコアとする。

COAD, chronic obstructive airways disease

22

II. Operative severity score. (術後)

スコア

1 2 4 8

1. Operative

severity*

Minor Moderate Major Major +

2. 30 日以内の手術数 1 2 >2

3. 出血量(ml) ≤100 101—500 501—999 ≥1000

4. 腹水の汚染度 なし 漿液性少量 膿性だが限局してい

便汁、膿、血液が

汎発性にある

5. 悪性新生物 なし 原発巣のみ リンパ節転移 遠隔転移

6. 手術の様態 予定手術 緊急手術

(受診後 2 時間以上

24 時間未満の執刀で

よい)

超緊急手術

(受診後 2 時間以

内の執刀が必要)

Moderate は虫垂切除、胆摘、乳房切除、経尿道的前立腺切除などを含む。Major はいかなる開

腹手術、大腸切除、総胆管切開、末梢血管手術などを含む。Major+は 大動脈手術、直腸切断

術、膵切除、肝切除、食道切除などを含む。

予測合併症発生率: R/(1- R) = - 5.91 + (0.16 × physiological score)+ (0.19

×operative severity score)

予測 30日死亡率: R/(1 –R) = -7.04+ (0.13 × physiological score)+ (0.16 × operative

severity score)

23

(文献 2参照)

24

表 3.術後合併症の重症度(Clavien 分類)

グレード 定義

1 順調な術後経過からは逸脱するが鎮痛剤、輸液、利尿剤など一般的な薬で軽

快するもの

2 特殊な薬剤を必要とするもの(輸血、高カロリー輸液を含む)

3 外科的治療、内視鏡的治療、Interventional radiology のいずれかを必要と

するもの(3a: 全身麻酔を要しない治療、3b: 全身麻酔を要する治療)

4 生命に危険があり ICU 管理を必要とするもの(4a: 1臓器の障害、4b: 多臓

器の障害)

5 術後合併症死

(文献 26 参照)

25

b)統計解析

全ての統計解析は SPSS17.0(SPSS Inc.シカゴ、イリノイ州、アメリカ合衆国) ソフトウェア

を使用して行った。モデル開発群に於いて、術後死亡の危険因子を単変量解析でスクリーニン

グした。この解析では、ピアソンのカイ二乗検定に、必要時イエーツの補正を用いて、P値を

求めた。変数が連続変数の場合、カットオフ値は P値が最少となる閾値に設定した。具体的に

は、当該変数の大きさに従って患者を並べ替え、死亡イベントの分布を観察する。死亡分布が

極端に変化する閾値を見つけ、P 値を求める。その後、閾値を変えながら、各々P 値を求め、P

値が最小となる閾値をカットオフ値に決定した。

次に、単変量解析で得られた有意な変数を独立変数、在院死亡または 30 日死亡を従属変数と

して、二項ロジスティック回帰分析ステップワイズ変数増加法を行い、術後死亡率の予測式を

算出した[27]。我々はこれらの予測式を総称して、 Calculation of post-Operative Risk in

Emergency Surgery (CORES)と名付けた。

モデル検証群では、各症例ごとに CORESと POSSUM、P-POSSUM の予測死亡率を算出した

[4,5]。P-POSSUM は POSSUM と同じスコアリング・システムを採用しているが、予測死亡率の式

が修正されている。P-POSSUM スコアの在院死亡率の予測式は以下の通りである。

ln[R/(1−R)] = −9·065 + (0·1692×Physiological score) + (0·1550×Operative severity

score)

POSSUM は術後 30日死亡率を予測し、P-POSSUM は在院死亡率を予測する。CORES は両方の死亡

率を予測する。POSSUM の観察死亡数と予測死亡数の比である OE ratioは既出のように指数関

26

数解析を用いて計算した[28]。一方で他のモデルの OE ratio は線形解析にて計算した。

死亡患者と生存患者を判別するモデルの検出力は受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUC)

で評価した。ROC曲線下面積は 0.5~1.0の値で算出され、値が大きいほど、予測精度が高いこ

とを示している。ROC曲線下面積が 1.0の場合は、そのモデルは完全であり、特異度および感

度がともに 100%であることを示している。予測モデルの較正力は Hosmer-Lemeshow 検定を用

いて評価した [27]。Hosmer-Lemeshow 検定は症例を予測死亡率の順に 10 のグループに分け、

予測死亡者数と実際の観察死亡者数の数からカイ二乗統計量を計算する。この検定は、観察死

亡者数と予測死亡者数に差がないという帰無仮説を検証するものであり、適合度がよいモデル

であれば高い P 値を示すことになる。また、順序変数と間隔変数、または、間隔変数と間隔変

数の相関関係は、スピアマンの順位相関係数を算出し、その有意差をスピアマンの rank sum

検定により検定した。

27

7.研究結果

図 1は本研究における患者の流れを示している。モデル開発群では、478 人の患者の 479 件

の緊急手術を用い、予測モデルを開発した。登録期間中、一人の患者は閉鎖孔ヘルニアと急性

大動脈解離の緊急手術をそれぞれ別の入院で受けた。これらのデータから、我々は術後死亡率

を予測する回帰モデルを作成した。これらのモデルはモデル検証群に於ける 494 例と多施設群

に於ける 1471例で検証された。モデル検証群の手術症例数は、調査期間中の予定外手術の

68%(494/727)に相当した。

28

図 1. 研究プロファイル

本研究の対象患者は三つのコホート群に分けられる。モデル開発群とモデル検証群の患者は国立病院機構熊本医

療センターにて手術を受けた。多施設群の患者は6つの病院で手術を受けた。

29

表 4は対象患者の術前データを示している。全てのサブセットは同様の疾病構成を有してい

た。モデル開発群に於いて 30 日死亡率と在院死亡率はそれぞれ 8.6% (41/479)と 9.6%

(46/479)、モデル検証群に於いてそれぞれ 6.5% (32/494) と 7.3% (36/494)であった。多施設

群に於ける在院死亡率は 5.2% (76/1471)であった。

モデル開発群の単変量解析では、27の変数の中の 23 の変数が P 値が 0.05 未満であった (表

5)。術後死亡率の予測式は、この有意な変数を用いて二項ロジスティック回帰分析のステップ

ワイズ法によって求めた(表 6)。

30

表 4. 対象患者基本情報

モデル開発群

(n=479)

モデル検証群

(n=494)

多施設群

(n=1471)

性別, %男性 55.3% 54.9% 50.9%

年齢の中央値(範囲) 65 (15—104) 62 (15—100) 61 (15—101)

診療科

主傷病名

症例数(%)

一般外科 269(56.2) 295(59.7) 813(55.2)

急性虫垂炎 83 100 336

小腸閉塞 43 39 102

ヘルニア陥頓 21 23 57

大腸穿孔 20 20 45

十二指腸潰瘍穿孔 21 23 45

胃穿孔 9 4 11

急性腸間膜虚血 11 9 17

小腸の穿孔 7 9 20

その他 54 68 180

31

*その他の診療科には皮膚科,形成外科,眼科,産婦人科,泌尿器科,耳鼻咽喉科が含まれる.

整形外科 56(11.7) 23(4.7) 151(10.3)

下腿の開放骨折 16 4 21

大腿骨開放骨折 8 0 13

前腕骨開放骨折 6 0 9

その他 26 19 108

脳神経外科 43(9.0) 34(6.9) 163(11.1)

くも膜下出血 18 12 75

急性硬膜下血腫 9 10 29

頭蓋内出血 12 10 42

その他 4 2 17

心臓血管外科 40(8.4) 33(6.7) 89(6.1)

急性大動脈解離 20 14 39

腹部大動脈瘤破裂 9 9 21

不安定狭心症 5 0 8

その他 6 10 21

その他の診療科* 70(14.6) 78(15.8) 238(16.2)

32

表 5. モデル開発群における在院死亡予後因子の単変量解析

パラメータ 状態 症例数 在院死亡率 P 値

性別 男性 265 0.12 0.12

女性 214 0.075

年齢,歳 ≥70

<70

210

269

0.15

0.059

0.0013

来院前の住居 病院または介護施設

自宅

108

371

0.17

0.078

0.0065

48 時間以内の抗血小板薬の内服 あり 60 0.12 0.61

なし 419 0.095

48 時間以内の抗凝固薬の内服 あり 24 0.13 0.92

なし 455 0.097

来院前の呼吸状態 酸素なし 358 0.059 <0.001

鼻カヌラ、マスクによる酸素 112 0.19

気管挿管 9 0.56

来院方法 救急車 369 0.12 0.013

その他 110 0.036

33

来院後の移動方法 ストレッチャー 405 0.11 0.0078

車椅子または歩行 74 0.014

体温, °C <36 66 0.17 0.039

≥36 398 0.085

ショック・インデックス a <0.7 270 0.056 0.00037

≥0.7 209 0.15

Japan Coma Scale b 0–20 432 0.071 <0.001

≥30 31 0.39

ヘモグロビン, g/dL <8.0 25 0.27 <0.001

≥8.0 454 0.088

白血球数, cells/μL <2,500 10 0.40 <0.001

2,500–<16,000 389 0.077

≥ 16,000 80 0.16

血小板数, cells/μL <150,000 72 0.18 <0.001

150,000–<300,000 350 0.063

≥300,000 57 0.21

総蛋白, g/dL <6.0 106 0.24 <0.001

34

≥6.0 372 0.059

BUN, mg/dL ≥40

<40

53

426

0.30

0.073

<0.001

血清クレアチニン, mg/dL ≥1.1

<1.1

97

382

0.26

0.088

<0.001

血清ナトリウム, mEq/L <130 27 0.26 0.010

≥130 452 0.088

血清カリウム, mEq/L <3.5 77 0.14 0.22

3.5–<4.5 337 0.083

≥4.5 65 0.12

プロトロンビン時間, INR ≥1.2

<1.2

67

397

0.24

0.076

<0.001

総ビリルビン, mg/dl ≥1.5

<1.5

54

422

0.19

0.088

0.024

ASAクラス 1 or 2 237 0.013 <0.001

3 183 0.13

4 59 0.36

35

術中出血量, g ≥2,000

<2,000

10

467

0.40

0.092

0.0070

手術時間, 分 ≥100

<100

213

266

0.16

0.049

<0.001

腹水の汚染度 汎発性の消化管内容液、また

は、膿瘍

なし、または、限局性膿瘍

74

405

0.22

0.077

<0.001

悪性腫瘍の有無 あり

なし

32

447

0.28

0.085

<0.001

皮膚切開の長さ 10 cm 以上

10 cm 未満

322

157

0.14

0.019

<0.001

ASAクラスは米国麻酔学会術前状態分類を意味する。a ショック・インデックス=脈拍数(回/分)

/収縮期血圧、b Japan Coma Scale 30 は痛み刺激にてかろうじて開眼する状態

36

表 6. CORES

I. 術後在院死亡率予測式

Ln(R1/1 − R1) = 1.3X1 + 1.8X2 + 3.0X3 + 1.8X4 + 0.84X5 + 1.2X6 − 4.6

X1: Japan Coma Scale 30 以上 a(1)か、否か(0)

X2: ASA クラス 3(1) か、否か(0)

X3: ASA クラス 4(1) か、否か(0)

X4:白血球数 2,500 cells/μL 未満(1) か、否か(0)

X5:血小板数 150,000cells/μL 未満または 300,000cells/μL 以上 (1) か、否か(0)

X6: BUN 40 mg/dL 以上(1) か、否か(0)

II. 術後 30 日死亡率予測式

Ln(R1/1 – R1) = 1.2X1 + 1.4X2 + 3.2X3 + 4.1X4 + 1.3X5 – 6.2

X1: ショック・インデックスが 0.7 以上(1) か、否か(0)

X2: Japan Coma Scale 30 以上(1) か、否かは(0) a

X3: ASA クラス 3(1) か、否か(0)

X4: ASA クラス 4(1) か、否か(0)

X5:総ビリルビン 1.5 mg/dL 以上(1) か、否か(0)

ASAクラスは米国麻酔学会術前状態分類を意味する。ショック・インデックス=脈拍数(回/分)

/収縮期血圧。a: Japan Coma Scale30 は痛み刺激にてかろうじて開眼する状態で、Glasgow Come

Scale を使用してこれを判断する場合は、少なくとも以下の一つの条件が必要である。①開眼 1

または 2、②発語 1 または 2、③最良運動反応 5 以下(表 1参照)。

37

我々が開発した CORES で重要なことは、わずか 5 つの術前変数を入力するだけで、術後死亡

率を予測できることである。モデル開発群に於いて、CORES は在院死亡率と 30日死亡率の双方

に高い予測精度を示した (図 2)。AUC(95% 信頼区間) は在院死亡 0.88 (0.83–0.93) と 30日

死亡 0.88 (0.82–0.93)であった。

次に、表 7にモデル検証群と多施設群の術後合併症の発生率を示す。モデル検証群において

術後に ICUに入室した患者の SOFAスコアの中央値(範囲)は 8(1−19) であった。図 3にモデ

ル検証群における CORES と POSSUM、P-POSSUM の ROC曲線を示す。CORES の在院死亡に関する

AUC (95%信頼区間) は 0.86(0.80–0.93)で P-POSSUM の 0.88(0.82–0.93)と同等であった。同様

に、30日死亡に関して CORESの AUC (95%信頼区間) は 0.82(0.74–0.90) で POSSUM の

0.85(0.78–0.91)と同等であった。

38

図2. モデル開発群におけるCORESモデルのROC曲線分析

39

表 7. モデル検証群と 多施設群に於ける術後合併症発生率

モデル検証群

(N = 494)

多施設群

(N=1471)

術後合併症 症例数(%) 症例数(%)

呼吸不全 55(11.1) 148(10.1)

創感染 27(5.5) 27(1.8)

胸水 18(3.6) 35(2.4)

肺炎 18(3.6) 51(3.5)

腎不全 (Grade II) 16(3.2) 22(1.5)

筋膜炎 10(2.0) 18(1.2)

肝機能異常 8(1.6) 10(0.68)

体腔内出血 8(1.6) 31(2.1)

小腸閉塞 6(1.2) 27(1.8)

腹腔内膿瘍 6(1.2) 17(1.2)

敗血症性ショック 5(1.0) 22(1.5)

創離開 4(0.81) 14(0.95)

脳卒中 4(0.81) 44(3.0)

心肺停止 3(0.61) 22(1.5)

40

心原性ショック 2(0.40) 13(0.88)

腎不全(Grade I) 1(0.20) 6(0.41)

縫合不全 1(0.20) 7(0.48)

敗血症性凝固異常 1(0.20) 20(1.4)

菌血症 0(0) 36(2.4)

尿路感染 0(0) 10(0.68)

胃腸出血 0(0) 6(0.41)

胃腸虚血 0(0) 5(0.34)

胃腸穿孔 0(0) 4(0.27)

肺塞栓 0(0) 2(0.14)

膵炎 0(0) 1(0.068)

急性心筋梗塞 0(0) 1(0.068)

術後合併症の定義は、Doglietto らの定義に従った。(文献 25参照)

41

図3. モデル検証群における予測モデルの術後死亡予測.

CORES: Calculation of post-Operative Risk in Emergency Surgery, POSSUM: Physiological and

Operative Severity Score for the enUmeration of Mortality and morbidity, P-POSSUM: Portsmouth

modification of the POSSUM

42

モデル検証群に於いて、CORES と P-POSSUM の較正力を検討した(表 8)。これは、各モデルの

予測死亡率で症例を 10等分し、各群の予測死亡数と観察死亡数を比較検討したものである。

CORES は低リスク群から高リスク群まで予測死亡数と観察死亡数がほぼ等しいが、P-POSSUM は

高リスク群で予測死亡数が観察死亡数より大きいことが分かる。この予測死亡数と観察死亡数

の分布を Hosmer Lemeshow 検定で検定すると、CORES はχ2=8.0, 自由度 8, P=0.94に対し、P-

POSSUM はχ2=96.3, 自由度 8, P=0.28であった。この検定は P 値が高いほど、予測死亡数と観

察死亡数の分布が近似していることを意味しているので、CORES の方が有意差はないが良好な

較正力を示していることが分かる。モデル検証群における CORES と P-POSSUM の在院死亡 OE 比

は各々0.86と 0.40 であった。一方、CORES と POSSUM の 30 日死亡 OE 比は各々1.2 と 0.39 であ

った。

さらに、我々はモデル検証群に於いて、診療科別にモデルの精度を調査した(表 9)。 CORES

はすべての診療科において予測死亡者数と観察死亡者数に有意な差を認めなかった。一方、P-

POSSUM は一般外科とその他の診療科において、死亡を有意に過大予測した。次に、我々はこれ

らのモデルの予測在院死亡率と術後合併症の重症度の関係を調査した(図 4)。CORESと P-

POSSUM は術後合併症の重症度と有意に相関していた。(CORES: ρ=0.49, n=494, P <0.001; P-

POSSUM: ρ=0.48, n=494, P<0.001)。さらに、CORES の予測在院死亡率は P-POSSUM スコアの予

測在院死亡率と有意に相関した(ρ=0.76, n=494, P<0.001)。

43

表 8. モデル検証群に於ける各モデルの在院死亡予測較正力

I.CORES

リスク群 n 平均予測死亡率 予測死亡数 観察死亡数

1 49 0.010 0 0

2 49 0.010 0 0

3 49 0.010 0 0

4 49 0.010 0 2

5 49 0.016 1 0

6 49 0.039 2 2

7 50 0.057 3 3

8 50 0.098 5 4

9 50 0.156 8 7

10 50 0.439 22 18

総計 494 42 36

II. P-POSSUM

リスク群 n 平均予測死亡率 予測死亡数 観察死亡数

1 49 0.006 0 0

44

2 49 0.008 0 0

3 49 0.014 1 0

4 49 0.022 1 1

5 49 0.036 2 0

6 49 0.065 3 1

7 50 0.119 6 4

8 50 0.226 11 5

9 50 0.438 22 5

10 50 0.822 41 20

総計 494 88 36

45

表 9. モデル検証群の各診療科に於ける予測モデルの較正力

I. CORES (在院死亡予測)

症例数 予測死亡者数 観察死亡者数 P 値

脳神経外科 34 6 4 0.79

一般外科 295 23 20 0.67

心臓血管外科 33 6 8 0.56

整形外科 62 4 1 0.44

その他の診療科 78 6 3 0.51

II. P-POSSUM(在院死亡予測)

症例数 予測死亡者数 観察死亡者数 P 値

脳神経外科 34 8 4 0.21

一般外科 295 48 20 <0.001

心臓血管外科 33 15 8 0.071

整形外科 62 3 1 0.10

その他の診療科 78 12 3 0.013

P 値はカイ二乗検定で求め、必要時イエーツの補正を行った。

46

図4. モデル検証群における予測死亡率と術後合併症の重症度の関係

患者のデータはCORES(A)またはP-POSSUM(B)の予測死亡率に従い、4つのリスク群に分割された。各リスク群にお

いて術後合併症の重症度は、Clavien分類を使用して分類した(表3参照)。

47

最後に、我々は多施設群において CORESの再現性を検証した。在院死亡に関して CORES の

AUC (95% 信頼区間) は 0.85(0.81–0.89)であった (図 5 上段)。在院死亡に関して CORES の較

正力は、Hosmer Lemeshow 検定でχ2=19.9, 自由度 8, P=0.81であり、良好であった(表 10)。

在院死亡に関して CORES の OE ratio は 0.70であった。また, CORES の予測在院死亡率は術後

合併症の重症度(Clavien 分類)と有意に相関していた(ρ=0.49, P<0.001) (図 5 下段)。

CORES は多施設群においてすべての診療科において死亡の予測死亡者数と観察死亡者数に有意

な差は認めなかった(表 11)。

48

表 10. 多施設群に於ける CORES の在院死亡予測較正力

リスク群 n 平均予測死亡率 予測死亡数 観察死亡数

1 147 0.010 1 2

2 147 0.010 1 1

3 147 0.010 1 0

4 147 0.010 1 1

5 147 0.010 1 0

6 147 0.023 3 1

7 147 0.050 7 6

8 147 0.069 10 12

9 147 0.146 21 16

10 148 0.392 58 37

総計 1471 108 76

49

図 5. 多施設コホート研究における CORES モデルの検証(n = 1,471).

(上段)CORESモデルの在院死亡予測に関する ROC曲線解析

(下段)予測死亡率と術後合併症の重症度との関係。患者のデータは CORESの予測死亡率(R)に従い 4つのリ

スク群に分割された。各リスク群において術後合併症の重症度は Clavien分類を使用して分類した(表 3参

照)。

50

51

表 11. 多施設群の各診療科に於ける CORES モデルの較正力

症例数 予測死亡者数 観察死亡者数 P 値*

脳神経外科 163 22 17 .39

一般外科 830 51 34 .058

心臓血管外科 89 17 17 1.0

整形外科 151 8 4 .24

その他 238 10 4 .10

*P 値はカイ二乗検定で求め、必要時イエーツの補正を行った。

52

8.考察

本研究で、我々はさまざまな緊急手術の術後死亡率を予測する CORES を開発した。このモデ

ルの術後死亡予測能は、単一施設で行った前向きコホート研究とその後の多施設コホート研究

に於いて再現性が認められた。両研究に於いて、さまざまな診療科で良い適合度を示したこと

から、CORES は多方面の緊急手術に適用できる可能性が示唆された。最後に、CORES の予測死亡

率は術後合併症の重症度と強く相関した。

我々の知る限り、本研究は緊急手術に特化した術後死亡予測モデルを最初に報告した研究で

ある。緊急手術と待機手術の双法の術後死亡を同じ予測式を用いて予測するモデルは過去にい

くつか報告されているが[4–6]、そもそも待機手術と緊急手術では術後死亡の危険因子は異なる

ことが報告されている[11]。待機手術では、多くの場合患者の臓器機能は恒常性が保たれてお

り、全身性炎症反応症候群(SIRS)のような病態を示すことはまずない。術前の併存症により

全身状態に問題があっても、治療を行うことによって補正することができる。一方、緊急手術

では、多くの場合患者の生理機能はすでに破綻しており、術前に補正する時間的余裕がない。

そのため、すでに SIRS や敗血症の状態に陥っている患者は、手術という Second insult を受

け、さまざまな臓器障害が惹起される[29]。予定手術と緊急手術の患者ではベースとなる術前

の状態が異なるため、両患者集団を単一のモデルで解析すると、誤った結論を得る可能性があ

る。Tekkis らは[30]待機手術と比較して緊急大腸手術の術後死亡は POSSUM、P-POSSUM で過少

に予測されることを報告した。さらに、待機手術の手術件数が多い High volume center と緊急

53

手術の High volume center とは必ずしも一致しなかった。Ingraham らは[11]、待機手術と緊

急手術を分けて外科技術水準を分析したが、待機手術と緊急手術での病院の成績が一致しない

ことを報告した。これらの研究結果は、待機手術と緊急手術を個別に評価する必要があること

を示唆している。

我々は術前因子のみを使用し、緊急手術の在院死亡率を予測するモデルを作成したが、これ

は術中出血量や手術時間などの術中因子を加えてもモデルの検出力が向上しなかったからであ

る。その理由としては、外科医が緊急手術で救命を優先させるため手術時間や術中出血量を最

小限に抑えていることに因るのかもしれない。その結果、術後死亡予測に於いて術前因子が相

対的に重要になっていると考えられる。術前因子のみを用いる CORES の利点は、予測死亡率を

術前に計算できることである。それは治療法の意思決定やインフォームド・コンセント、術後

管理を計画する上で有用であろう。その他、術中因子を使用しない利点は、外科技術評価を行

う上で不必要な交絡を避けることができる点である。病院間の医療の質を比較するとき、当該

病院の OE ratioは医療の質の評価基準として使用されている。OE ratio が 1より大きいこと

は観察された死亡率が予測死亡率よりも高いことを示し、医療の質が低いことを示している。

逆に、OE ratioが 1より小さいことは医療の質が高いことを意味する。しかしながら、もし術

中因子をリスク調整に使用した場合、矛盾した結果が得られることがある。例えば、経験の浅

い外科医が手術を行った時、術中出血量や手術時間が増加するであろう。彼の手術した患者の

術後死亡率は当然高くなるだろう。しかし、術中出血量や手術時間を術後死亡率の予測式に含

54

めている場合、これらの値が増加するにつれて予測死亡率も増加する。そのため、彼の OE

ratio は増加した予測死亡率によって補正されるという矛盾した結果になる。従って、治療の

結果を評価する時のリスク調整には、治療の結果に関わる因子を除外すべきである。

CORES を臨床で使用する場合には、臨床医は例外的なケースがあることを常に念頭に置く必

要がある。モデル検証群の症例で、65才の男性が持続する激しい上腹部痛を訴えて当院に救急

搬送された。患者は特発性食道破裂と診断された。患者は糖尿病の既往があったが、全身状態

は良好で、予測在院死亡率は 1.0%であった。手術は、破裂部を心外膜脂肪片を用いて補強しな

がら縫合閉鎖した。食道内と縦隔内にドレーンを挿入し、術後の縫合不全症に備えたが、術後

縫合不全症が発症し、縦隔炎となった。集中治療の甲斐なく、この患者は術後 22 日に敗血症性

ショックで死亡した。このようなケースもあるため、予測死亡率が低い症例でも、患者家族に

インフォームド・コンセントは慎重に行われなければならない。

我々が特定の分野の緊急手術を対象にせず、多種類の診療科の緊急手術を包含して予測モデ

ルを作成した理由は、手術侵襲に対する患者の反応は手術の種類に関わらず同じあると考えた

からである[12, 29]。そこで我々は、患者の術前の生理学的状態を適切に分析すれば、術後の

有害事象を単一モデルで予測できると仮定した。さらに、幅広い緊急手術を同じ予測モデルで

予測できれば、各診療科の専門医だけでなく、多彩な患者を扱う救急医や麻酔科医にとっても

有用だろう。CORES はモデル検証群と多施設群において、さまざまな診療科の手術で良い適合

度を示していた。注目すべきは、脳神経外科と心臓血管外科の手術においては死亡予測が極め

55

て正確だったことである。これは CORESが意識レベルと ASAクラスに相対的に高い重みづけを

していることに因るのであろう。診療科間でのさらなる検証が今後必要であろう。

Koushi らは [2] 、最近緊急開腹手術における E-PASS の有用性を報告した。彼らは E-PASS

のスコアが 0.5 未満の患者が 0.5以上の患者より、術後合併症の発生率と死亡率が有意に低い

ことを示した。しかしながら、緊急手術では、併存症の有無やパフォーマンスステータスなど

いくつかの E-PASS の変数を入手できない問題がある。例えば、我々は緊急手術の前に肺機能検

査を行うことができない。その場合、重度の肺疾患が存在するかどうかは既往歴から推測する

しかないが、患者家族が十分な情報を持っていない場合にはその推測は難しい。従って、我々

は緊急手術に E-PASSを適用するのではなく、新規のモデルを開発することとした。

世界で最も有名な外科技術評価モデルである POSSUM と P-POSSUM は、20個の変数の入力が必

要である。これらのモデルの複雑さは、しばしばデータの欠損値を生む[31]。対照的に CORES

は緊急手術のみを対象としことから、5 つの変数しか必要としない。CORES の 3つの変数である

意識レベル、白血球数、BUN は POSSUM にも含まれている。CORES は少ないデータで死亡予測が

行えるので、大規模な研究調査に有用だろう。驚くことに、CORES の予測死亡率は、P-POSSUM

の予測死亡率と強く相関していた。従って、CORES は P-POSSUM の代わりに簡便に使用すること

ができるだろう。

本研究では、POSSUM と P-POSSUM は 2.5 倍以上も死亡率を過大に予測した。そのような死亡

率の過大予測は、我々が過去予定消化器外科手術で調査した際にも見られた [15, 16]。これら

56

の過大予測の原因は、これら英国のモデルは 1990 年代に開発されたものであり、最近の周術期

管理の進歩が術後死亡率を改善させたことも一因と考えられる。一般外科において P-POSSUM よ

りも CORES の較正力が優れているもう一つの理由は、変数に血小板数が含まれていることに因

るのかもしれない。ICU 患者において、血小板減少症は死亡の独立した危険因子であると報告

されている[32]。従って、この因子を含めたことが CORES の較正力の向上をもたらしているの

かもしれない。驚くべきことに、我々は血小板数が 30 万以上の患者も高い死亡率を示すことを

見出した。モデル検証群の血小板数 30 万以上の患者の血小板数の中央値(範囲)は 336,000

(300,000—753,000) であった。この相対的な血小板増多症の臨床的意義は今後明らかにされる

だろう。

本研究の限界の一つは、JCS が日本以外では使用されていないことである。そのため、日本

以外で CORESの普及は難しいかもしれない。しかしながら、 Namiki らは表 1に示すように

JCSと GCSの関係を明確化した。このレイアウトを使用すると、CORES は日本以外でも使用でき

る。最近 Shigematsu ら [33]は、JCSの簡便性、信頼性、適応力とともに、高いアウトカムの

予測能を強調し、JCSの使用を啓蒙している。従って、我々はやがて JCSが世界中に普及する

ものと信じている。他の限界としては、CORES は日本のみでしか検証されていないことであ

る。CORES の再現性は将来多くの国で検証されるべきである。

57

9.結語

我々はあらゆる種類の緊急手術に適用すべく新しい術後リスクモデル CORES を開発した。

CORES は少ない術前の変数のみで構成されていることから、臨床現場での適用だけでなく、外

科技術評価ツールとしても使用できる可能性がある。

58

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