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世界のラグジュアリー企業ランキング 2019 新旧の溝を埋める

世界のラグジュアリー企業ランキング 2019 - …...ブランドを抱えるKering は、サステナビリティ向上のため に再生可能な原材料の割合を高めている。また同社は、倫

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世界のラグジュアリー企業ランキング 2019新旧の溝を埋める

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目次

はじめに 3主要統計 4新旧の溝を埋める 6世界経済の見通し 12Top 10社のハイライト 15世界のラグジュアリー企業ランキングTop 100社 19地域別の動向 25商品カテゴリー別の動向 31新たにランクインした企業 36急成長ラグジュアリー企業20社 38調査手法とデータソース 41注記 43問い合わせ先 45

原著:「Global Powers of Luxury Goods 2019 Bridging the gap between the old and the new」注意事項: 本書は 2019年 4月にDeloitte Touche Tohmatsu Limitedが発表した内容をもとに、デロイトトーマツ コンサルティング合同会社が翻訳したものです。和訳版と原文(英語)に差異が発生した場合には、原文を優先します。

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『世界のラグジュアリー企業ランキング』第 6回発行にあたり

本レポートでは、2017年度(2018年 6月 30日までの会計年度)の連結売上高をベースにリストアップした世界のラグジュアリー企業 Top 100社について分析し、ラグジュアリー市場における重要トレンド、およびそれを取り巻くグローバルな経済動向に対する見解を提示するものである。

2017年度、世界のラグジュアリー企業 Top 100社の売上高は、前年度の2,170億米ドルから 300億米ドル増加して2,470億米ドルとなった。また、為替変動の影響を除いた売上高成長率は 10.8%と、前年度の成長率 1.0%を大幅に上回る急成長を記録した。

2017年度の世界のラグジュアリー企業 Top 100社に入るために必要な売上高は、前年度比 700万米ドル増の2億1,800万米ドル、平均売上高は 24億 7,000万米ドルだった。

中国、ユーロ圏、米国を含む主要市場の経済成長はこのところ鈍化しているが、ラグジュアリー市場は堅調である。Top 100社の2017年度業績は好調で、全体の76%の企業でラグジュアリー品の売上高が増加し、その半数近くは前年度対比で二桁成長を記録した。

本レポートの主要な調査結果は、以下のとおりである。

• 2017年度はすべての主要国・地域で売上高が前年度から増加しており、ラグジュアリー企業にとって堅調な年となった。

• イタリアは去年に続きラグジュアリー企業数で首位を守ったが、依然、成長率に課題がある。フランスは売上高成長率では首位となり、世界のラグジュアリー企業 Top 100社に占める売上高のシェアが最も大きかった。

• 企業数が最も多いのは衣料・靴カテゴリーで、ラグジュアリー品売上高成長率は、化粧品・香水カテゴリーが最も高かった。

• 複合ラグジュアリー企業 10社は突出した売上規模を誇り、平均売上高は 75億 9,000万米ドルと、世界のTop 100社の平均値を上回った。これら10社の売上高の合計は Top 100社のラグジュアリー品売上高の 30.8%を占めた。

最後に、本レポートが、読者の皆様の関心に応え、有益なものとなることを願っている。

パトリシア・アリエンティ EMEA ファッション&ラグジュアリーリーダー デロイト グローバル

はじめに

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出所:Deloitte Touche Tohmatsu Limited。Global Powers of Luxury Goods 2019。2018年6月までを期末とする会計年度について各社アニュアルレポートに基づく財務内容および業界推計値を分析。

10.8%

48.2%

24億7,000万米ドル

2015~2017年度のラグジュアリー品売上高の年平均成長率(CAGR)ラグジュアリー品売上高の

前年度対比成長率

Top 100社においてTop 10社が占める売上高構成比

ラグジュアリー品平均売上高

総資産利益率

Top 100社に入るために必要なラグジュアリー品売上高

ラグジュアリー品売上高総額

5.3%

2,470億 米ドル

7.6%

Top100社に関する主要統計(2017年度)

2億1,800万米ドル

9.8%純利益率

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新旧の溝を埋める

時代は急速に変化している。ラグジュアリー市場では「HENRYs(: High-Earners-Not-Rich-Yet=まだ富裕層とはいえない高所得者)」と呼ばれる新たな消費者層が台頭し、将来的に重要な影響力を持つ存在として注目を集めている。ラグジュアリー企業は将来の顧客となる若年層、すなわちミレニアル世代と Z世代の関心を喚起しようと、大型投資に乗り出している。

テクノロジー慣れした「新しい」世代による、個人の嗜好に合わせたシームレスな関係構築のニーズに対し、ラグジュアリーブランドはソーシャルメディアの活用を拡大し、世界中でデジタルマーケティングに投資している。

その一方で、各社はブランドの伝統と歴史が顧客にもたらす価値についても再検証している。今や消費者の要求が企業の最大の関心事であり、販売チャネルを問わないオムニパーソナル・アプローチの採用が重点課題となっている。

これを実現するため、ラグジュアリー企業は人工知能(AI)やビッグデータなど、顧客との関係を再設計できるデジタル技術にますます傾倒している。

デジタル化が進む時代において、消費者はより一層プライバシー確保を重視する傾向が見られるが、企業はこれを、パーソナライズされた商品とサービスを提供するチャンスに変えようと努めている。

新たなラグジュアリー・セグメント-HENRYsの台頭ラグジュアリーブランドは、将来の富裕層や超富裕層候補である新しい消費者層と長期的な関係を築き、維持し始めている「HENRYs」と呼ばれる新しい消費者層は将来、特にラグジュアリーブランドにとってきわめて重要な存在になるとみられている。この層は現在、相当な可処分所得を有しており、将来豊かになる可能性がきわめて高い。HENRYsの年収は 10万~25万米ドルだが 1、Equifaxの幅広い定義では、平均年齢は 43歳、所得は 10万米ドル以上、投資可能資産は 100万米ドル未満である 2。HENRYsはデジタルに精通し、ネットショッピングが好きで、支出額も大きい。特にミレニアル世代のHENRYsはその傾向が強い(図 1参照)。

彼らは将来、社会の最富裕層の一角を占めるとみられている。この層をラグジュアリーブランドの商品とサービスに呼び込むことの潜在的なメリットは二つある。貴重な既存顧客を保持すること、そして将来、最富裕層となる可能性が最も高い消費者との関係を構築し、売上を確保することである。

HENRYsをターゲットとするラグジュアリーブランドは、インクルーシブ(包括的)でありながらも個々の嗜好に合わせた、消費者の自己表現が可能な商品を提供しなければならない。

HENRYsはきわめて重要な顧客セグメントであり、彼らが重視している本物志向や共感性、正義、持続可能な慣行の遵守といった価値観を保証することによりロイヤルティを形成することができる 3。そのため各ブランドは、この理想の高い若年層の価値観に意識的に目を向け始めている。

最後に、HENRYsの購買行動には最新技術とソーシャルメディアが大きく影響するため、ラグジュアリーブランドはソーシャルメディア・プラットフォームを活用した顧客の取り込みに乗り出している。

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平均年齢43歳

平均所得13万 6,000米ドル

投資可能資産<100万米ドル

図 1:HENRYsのプロフィール

HENRYsは金払いが良い そしてオンラインショッピングを好む

決済形態の選好

携帯端末でのオンライン決済

8万 6,000米ドル

ミレニアル世代のHENRYs

衣料・靴 家具・調度品

休暇

書籍

娯楽

化粧品

玩具/ゲームペット消耗品/商品

X世代のHENRYs

HENRYsの世帯当たりの平均年間支出額

ベビーブーマーのHENRYs

6万 7,000米ドル

6万米ドル

特典付き(キャッシュバック、マイレージなど)

のクレジット/デビットカード

ローン(自動車、住宅ローンなど)

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サステナビリティが新しい顧客世代を獲得するためのカギこれまでラグジュアリー業界には、行き過ぎた大量消費や極端な高価格、エリート意識、罪深い楽しみなどのイメージが付きまとっていた。しかし新しい世代による新たな価値観が台頭し、消費者のラグジュアリーブランドへの期待も変容している。

消費者にとって倫理と道徳的価値観がますます重要になり、それが購買判断に大きく影響し始めている。今では購入の際、環境やサステナビリティ、動物福祉、生産・労働慣行、コミュニティに対する影響まで考慮されるようになっており、ラグジュアリー品も例外ではない。特に、若い世代とミレニアル世代はサステナビリティに最も専心し、ブランドの倫理基準を強く意識している。裕福なミレニアル世代の消費者は、ラグジュアリーブランドが実践的行動によってエコシステムへの関与や積極的な貢献を行うよう望んでおり、意識の高いブランドの商品には進んでプレミアム価格を支払おうとする。実際、彼らは透明性と真正性を尊重しており、自分が購入するブランドは自らの価値観を反映するものと考えている。

新しい裕福な世代は社会意識や環境意識が高いため、ラグジュアリーブランドの製造過程における持続可能性と道義的責任により高い期待を抱いている。これは重要な示唆で、ラグジュアリーブランドがこうした顧客を保持するには、倫理的で持続可能なラグジュアリー品という新たなモデルへ進化する必要があることを示している。

BURBERRYBurberryは 2018年 9月、売れ残り品の焼却処分を止め、今後は再利用や修復、寄付を強化すると発表した 4。

KERINGGucci、Stella McCartney、Saint Laurentなどの最高級ブランドを抱える Keringは、サステナビリティ向上のために再生可能な原材料の割合を高めている。また同社は、倫理規程とサステナビリティチームを導入した最初の企業の一つである。さらに女性への暴力の撲滅を目的とした Kering Foundationを創設している。また 2018年には、傘下のブランドとサプライヤー向けに先進的な業界環境や社会要件を定めた「Kering基準」を発表した。同社のチーフ・サステナビリティ・オフィサーのMarie-Claire Daveu氏は、「当社が

目指すのは『ラグジュアリー』を再定義し、こうした前向きな変化に影響を与え促進させること」と述べている 5。

PRADA遡ること 2007年、Pradaはグループの職務における倫理規程を導入した最初の企業の一つとなった。同社はまた、多くのサステナビリティ活動の推進企業でもある。「イタリアファッション業界におけるサステナビリティのマニフェスト(Manifesto of sustainability for Italian Fashion)」を支援しているほか、イタリアのファッション業界の主要企業による共通の環境・倫理基準を策定することを目的とした「サステナビリティ・エコロジー・環 境 委 員 会(Sustainability, Ecology and Environment Commission)」のメンバーでもある。さらに製品の安全性向上と汚染低減に向け、化学物質の使用を厳しく制限する新基準を定めた「衣料品、革製品、靴、アクセサリーのための生体毒性要件に関するガイドライン(Guidelines on eco-toxicological requirements for articles of clothing, leather goods, footwear and accessories)」にも貢献している 6。

ROLEX高級時計ブランドの Rolexは、「Rolex Award for Enterprise」を創設し、慈善事業と社会貢献の先駆的企業となっている。このアワードは、環境や文化の向上に貢献しているプロジェクトを対象に、若手起業家(18歳から 30歳まで)に絞って贈られている。これは持続可能なラグジュアリー業界と社会意識の高いイノベーションを目指す目に見える貢献の例である。個人の生活のみならず、地球全体を改善するための現実的な一歩を踏み出した例といえる 7。

TIFFANY高級ブランドTiffanyが属するダイヤモンド業界は、業界が長年アフリカの地域社会に紛争をもたらしているとして批判を浴びている。同社はこのネガティブイメージを払拭するため、最高級ブランドとしては初めて、信頼を満たす鉱山会社から金属とダイヤモンドを調達することを決定した。現在 Tiffanyは、人権侵害が生じている国々からのダイヤモンド購入にゼロトレランス(不寛容)方針を採用している。さらに、サンゴ礁の保護と責任ある鉱業の意識向上に取り組む慈善基金を設立し、社会・環境への取り組みを前進させた 8。

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マーケティング戦略にソーシャルメディアを活用するラグジュアリーブランドラグジュアリーブランドは、ブランド価値の毀損に注意を払いながら、ソーシャルメディア・プラットフォームを活用してミレニアル世代と Z世代の興味を刺激し取り込もうとしているラグジュアリーブランドの将来の成否は、テクノロジーに強い新世代の消費者にどれだけ訴求し、商品を販売できるかにかかっている。急速なデジタル化とデジタルプラットフォームの簡便性の向上により、特にその中でも若い世代では、ソーシャルメディアを用いて自分のブランド嗜好を表現する消費者が増えている。

テクノロジーに強いミレニアル世代と Z世代は、より価値のあるお金の使い方やパーソナライゼーション、統合されたデジタルアクセスを求めており、ラグジュアリーブランドはこれに対し精度の高いソーシャルメディア戦略を展開し始めている。

現在、ほぼすべてのブランドが既存顧客の嗜好と選択を踏まえた明瞭なソーシャルメディア戦略を構築している。ソーシャルメディア・プラットフォーム上でのコレクション発表もその一つである。

一方で、ブランドの伝統的な価値への影響を避けるため、買いやすさよりも憧れのブランドとしての特色を強く打ち出す目的でソーシャルメディアを活用するブランドもある。彼らはプラットフォーム横断でコンテンツを差別化し、最適化しながら定期的、継続的に情報を発信している。

最後に、多くのラグジュアリーブランドは、関連コミュニティにおいてブランド支持者となるインフルエンサーやニッチブロガーとの関係を強化している。Mr. Bagsはすでに中国では有名な存在だが、ファッションブロガー(Gogoboi、Gabi Gregg、Jenn Im、Julia Engel)やファッション・ビジネスウーマン(Chiara Ferragni)などの多くのインフルエンサーがラグジュアリー品の宣伝に重要な役割を果たしている 9。

マイナス面として、インフルエンサーの使い過ぎが米国を始め複数の国で規制当局の注意を喚起し、広告の透明性に関する規制がブランドのインフルエンサーとの関係に影響を及ぼすことがある。多くの広告団体は、#adや #sponseredなどのハッシュタグの使用に関して明確なルールを発表しており、高級ブランドのソーシャルメディア活動にも適用されることとなる。

ソーシャルメディア戦略2017年、Chanelはソーシャルメディアで最も影響力のある高級ブランドに選ばれた。Chanelは、YouTubeやFacebookに全広告を掲載する一方で、Instagram上で関心を集めるための広告枠も購入している。同社のコンテンツ戦略は入念に練り上げられ、クリエイティブな動画制作に焦点を合わせている。theloup.coのラグジュアリー・ソーシャルビデオ・インデックス(2017年7月)によると、Chanelの動画の閲覧数は他のあらゆる高級ブランドを抑え、YouTubeとFacebookで 3億を超えた。また「Inside Chanel」シリーズなど、舞台裏映像もソーシャルメディア・プラットフォームに流している。さらに Chanelは、アフォーダブルラグジュアリーではなく、憧れのブランドとしての特色を強調する販促活動を行っている 10 11。

Gucciは HENRYsを取り込む策として、業界をリードするデジタル戦略に投資している。Instagramのアーティストとのコラボレーション #GucciGramや、アーティストが Gucciのビデオプロジェクトに参加し、同社の Snapchatアカウントを1時間占有する #24HourAceなどが挙げられる 12。

Louis Vuittonは、新製品発売の特別先行上映を行ったり、様々なプラットフォーム上でノベルティグッズ付きイベントを主催するなどしてソーシャルメディアのフォロワーを引き込んでいる。また、ファッションショーや広告キャンペーン、販促イベント、店舗開設情報のほか、同社の製品を身に着けたインフルエンサーなどを定期的にアップしている。Similarwebによ

ると、Louis Vuittonサイトの平均閲覧時間は 4.15分で、同社のソーシャルメディア戦略は成功を収めている(通常の平均閲覧時間はわずか1.5分)13。

2018年7月、影響力のあるファッションブロガーであり、中国最大のソーシャルメディア・プラットフォームWeiboの 350万の購読者とWeChat上の 85万人超のフォロワーを持つMr. Bagsは、Montblancと女性用ハンドバッグの限定コレクションでコラボした 14。この戦略は、ファッションブロガーが同社の代理人の機能を果たし、インフルエンサーのコミュニティでブランドを宣伝することを期待したものだった。

Pradaは 2017年、広告キャンペーンの #Prada365を立ち上げ、ソーシャルメディアの世界に足を踏み入れた。同社は従来型の広告から、紙媒体、オンライン、ソーシャルメディアを融合させる最新の戦略へと舵を切った。キャンペーンのコンセプトは、従来の季節ごとのキャンペーンに代わり、年間を通じた切れ目のないビジュアルデータを作ることである。広告の核をなすのは商品となり、Pradaはキャンペーン推進のためにテスティモニアル広告を採用した 15。

2018年7月、Mr. Bagsは自身の新しいWeChatのミニプログラム「Baoshop」上で、Tod′ sのハンドバッグ売上に、わずか 6分間で 324万人民元(50万米ドル)相当の貢献をした 16。

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由緒ある高級ブランドはブランドの伝統と歴史の価値を再検証している世界的に増えつつある裕福なミレニアル世代に訴えるため、最高級ブランドの企業は、近寄りがたい高級感と高価格が不可欠なブランド特性であるという長年の信念を捨て去ろうとしている

長い歴史をもつラグジュアリーブランドは、新たな現実に直面している。世界規模で消費者の人口構成が変化し、誇ってきた長い歴史の有効性が低下していることを認識している。実際、「新しい」ラグジュアリー消費者は、直近で自分に価値を与えてくれたブランドにしか興味がない。

Luxury Instituteの報告書によると、ミレニアル世代と X世代、さらに一部のベビーブーマーにとってブランドの歴史と伝統は、ラグジュアリーブランドの購入決定要因として重要ではなく、品質、カスタマーサービス、デザイン、縫製技術、商品の希少性に続く6位となっている 17。

そのため各企業は、このまま伝統に頼って抜本的な改革を行わなければ、増え続ける世界の裕福なミレニアル世代に受け入れられないと認識している。

したがってラグジュアリーブランドの中には、新しい世代に訴求し関係を保つため、伝統への依存を排除した急進的な再設計をしようと、ストリート系ファッション企業の「異物ブランド混入」を行うところもある。ミレニアル世代に最も人気のあるファッションブランドを取り込んで競争力と高い現代性を確保しようと 18、Louis Vuitton× Supreme、Manolo Blahnik× Vetements、Jimmy Choo×Off-Whiteなど、最高級ブランドはストリート系ファッション企業とコラボし、異物ブランド混入を容認している。

「オムニチャネル」ラグジュアリーから「オムニパーソナル」ラグジュアリーへテクノロジーに強く、個人の嗜好に合わせたシームレスな関係構築をブランドに求める若い世代に対し、ラグジュアリーブランドはオムニパーソナルなサービスを通じた消費者ニーズへの対応に注力しているオムニチャネルによる過剰なサービスが拡大するにつれ、顧客はそれを当然のものと受け止め、消費者体験を商品化している。これに対してブランド各社はロイヤルティの最大化に向け、パーソナライゼーションを推進し、個々の顧客の要求に対応し始めている。

ラグジュアリーブランドのパーソナライゼーション戦略Keringは、2018年 11月に発表したデジタル戦略強化策の一環としてカスタマーサービスへの新しいデジタルアプローチを採用し、顧客のリクエストに一元的に対応する専門チームを欧州と米国に設置した。顧客サービス担当者が各顧客をあらゆる角度から見ることのできる、業界最高クラスのデジタルツールが全傘下ブランドで使用されている 19。

Louis Vuittonは 2018年 10月、メンズウェアの「Now Yours」で初のパーソナライゼーションプログラムを立ち上げた。代表的な Run Awayスニーカーのカスタマイズ可能なカプセルコレクションのほか、一連のアビエータージャケット、バーシティカーディガン、クラシックなデニムパンツなど、パーソナライズ対応の既製品であるが 20、戦略自体は目新しくない。Gucciは 2016年、顧客が商品をパーソナライズできる「Do It Yourself」サービスを打ち出し、Dionysusハンドバッグがその第一弾となった 21。それ以前にもBurberryが 2011年、顧客がトレンチコートのスタイルや色、織りや素材を選べる「Bespoke」キャンペーンに乗り出している 22。同社は 2017年にもニューヨークでカスタマイズ香水コレクションを発売した 23。

2018年 11月、Hugo Bossは 2022年に向けた事業計画を発表した。その中で、売上拡大策として、消費者を個々に扱うパーソナライゼーションの強化を打ち出し、ブランドオリジナルのショッピング体験としてのオーダーメイド商品を拡充し、あつらえ服のデザインや生産における独自の幅広い経験を活用するとしている 24。

パーソナライゼーションが高い利益をもたらすと判断し、顧客のフィードバックを積極的に取り入れ個人的な対応を行うブランドがある。

一方、パーソナライズされた商品を提供して、パーソナライゼーションへの高まるニーズに対応しているブランドもある。

パーソナライゼーションの緊急性はきわめて高く、ブランドの中にはパーソナライゼーションを長期戦略に盛り込み、完璧なデザインとサービスによって自社を差別化しているところもある。

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ラグジュアリーブランドがデータアナリティクスで協業2017年 12月、Louis Vuittonは Facebook上でデジタルアシスタント・チャットボットを始動した。これにより、ユーザーは Facebookの知人に商品を共有し、購入すべき商品に投票してもらうことができる 26。2018年 9月には、Ted Bakerも Facebook上でバーチャルアシスタンスを提供する AIベースのチャットボット、Seemoreを開始した 27。

2018年 11月、Keringは、顧客サービスとショッピング体験を向上させるため、データを評価するデータサイエンス・チームを発足させた。顧客をあらゆる角度からリアルタイムに捉えることで、豊かなパーソナライゼーション体験を実現し、個々のニーズに応えることを目指している 28。

データに基づく関係の構築 - 高級ブランドの新しい視点オムニパーソナルなアプローチを採用しながら、ラグジュアリーブランドは特定のセグメントの絞り込みにデータアナリティクス・ツールを使用し、顧客エンゲージメント技術を再設計している

ラグジュアリーブランドはきわめて限定的な顧客層をターゲットにしており、個々の顧客と良好な関係を築いた上で、優れた購買体験を提供しなければならない。グローバルな調査・顧問会社のGartner, Inc.が 2011年に行った調査では、顧客は 2020年までに、企業との関係の 85%を人手を介さずに管理できると予測していた 25。

ラグジュアリー企業は、ビッグデータを活用した消費者セグメンテーション、行動・心理分析、予測分析により、パーソナライズされた高度な顧客サービスを提供することができる。Louis Vuitton、Burberry、Tommy Hilfiger、Dior、Estée Lauderなど数社は、すでにこうしたテクノロジーを活用し始めており、よりパーソナライズされたタイムリーな顧客サービスを提供するため、マシンラーニングやアナリティクスなどの AI駆動技術を利用している。彼らは AIベースのチャットボットを導入し、現在、ターゲットマーケティング、パーソナライゼ―ション、タイムリーオートメーションを用いた商品を販売できるようになっている。

また、データを使って顧客に関する洞察を導出し、市場のトレンドと動向を把握するための新しいデジタル戦略を策定している。

さらに、ビジネスインテリジェンスのツールやソフトウェアを用いてデータ分析と示唆の導出を行い、マーケティング活動の設計やサービスの最適化を行っている。

パーソナライゼーションとプライバシー保護の適切なバランスを見つけるデータ保護法の施行は、ラグジュアリーブランドが消費者データを利用してパーソナライズサービスを提供する際の自由を制限するものの、多くの企業は迅速に対応しているラグジュアリー業界の最近の特徴は、豊富な知識に基づいたオーダーメイドのシームレスなサービス提供である。ラグジュアリーブランドにとって顧客を理解し、その嗜好を知ることは、顧客が期待するパーソナライゼーションを提供する上できわめて重要である。

しかし、データ保護法の施行により様相が変わりつつある。データ保護法およびその関連法によって、各社がカスタマイズされたショッピング体験を提供できる範囲が限定され始めている。2018年 5月に施行された EU一般データ保護規則(GDPR)、2020年から施行されるカリフォルニア州消費者プライバシー法(the California Consumer Privacy Act)などの新たな規定は、企業が顧客の個人データを収集、活用できる範囲に制限を設けている。

法的枠組みについては、法域によってデータ所有者の保護水準が異なるため、特に複雑である。英国から米国および他の非 EU加盟国へのデータの流通は、安全でないと見なされて厳しく制限されており、厳格なコンプライアンス要件が課されている。これがほぼすべてのラグジュアリーブランドに影響を与え、定義上グローバルとされる小規模ブランドにまで及んでいる。

ラグジュアリーブランドは、購買行動、位置情報、ソーシャルメディア利用状況、閲覧履歴などの情報を活用しようとしているため、影響を受ける可能性がある。様々なプライバシー保護法の下で、消費者は自らの権利を強く意識するようになっている。そのため、各社は顧客基盤を損なわないよう、保有データ、データ格納場所、監視体制、安全対策、使用目的など、データの活用に優先順位をつけるようになった。

多くの企業では、専門のデータ・プロテクション・オフィサーが任命され、顧客データの脆弱性を監視する役割を担っている。また、顧客データを含む契約に携わるすべての従業員に、新しい法律と最善の慣行例、法改正の意義に関する研修を行っている。

さらに、最も先見性のあるブランドの中には、GDPRの実施を機に、上得意客へのよりパーソナライズされた商品とサービスの提供を検証しているところもある。

例えば Estée Lauderは、EMEA(欧州、中東およびアフリカ)24ヵ国で新しい POSインフラを整備している。このインフラは操作性と拡張性に優れ、モバイルとの決済の統合が可能で、顧客とそのオンライン、オフラインの購買行動を単一ビューで見ることができ、最終的によりパーソナライズされたサービスの提供を可能にする。Estée Lauderの複数国にわたる展開は、世界有数の厳格なデータ保護規制を定めているドイツからスタートする 29。

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世界経済の見通し

概況中国、ユーロ圏、米国を含む主要市場の経済成長がこのところ鈍化しているが、ラグジュアリー市場は堅調にみえる。米国の最近の保護主義政策や財政政策、緊張感を増す金融政策、制限的な通商政策は、個人消費の減速と消費者物価の上昇、グローバルサプライチェーンの混乱を招いている。ブレグジット(英国の EU離脱戦略)の先行き不透明感も、まちがいなくユーロ圏と世界に影響を与えるだろう。他にも世界のラグジュアリー市場の将来に影響を及ぼす要因として、デジタル革命やテクノロジーがもたらすインパクト、世界的なミドルクラス(中間所得層)の台頭、ミレニアル世代のHENRYsと Z世代の影響などがある。

保護主義政策の影響米政府が 2018年に打ち出した保護主義政策の影響はいまだ完全には顕在化していない。政策では、対外貿易赤字を減らすという視点から現在の貿易相手国とその適用関税を再検証している。米政府はこれまで、環太平洋経済連携協定(TPP)からの脱退、EU、カナダ、メキシコからの鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税発動、中国からの輸入品に対する相次ぐ大幅な関税引き上げなど、いくつか大胆な措置を講じた。関税は、米国国内では競争を管理するために使われるが、収益を生み出す目的もある。また消費者の購買力に影響を与えるばかりか、貿易相手国の報復関税を招く。企業の生産コストは増加し、その結果、競争力が低下する。2018年末時点では関税の施行からまだ間もないため、個人消費にそれほど大きな影響は出ていない。

デジタル革命テクノロジーはすべての産業に破壊的変化をもたらしている。ラグジュアリー市場への最大の影響は eコマースの台頭であり、各企業はオムニチャネル戦略、すなわちオンラインとリアル店舗の両方を運営する必要に迫られている。オンライン購入件数、店舗での購入前にオンライン検索をする消費者の数ともに増えている。店舗とオンライン双方で顧客体験の重要性は増している。また、取引コスト低下により、品揃えにグローバルな均質性をもたせることも可能となっている。

増えるミドルクラス2020年には消費者の 50%以上が「ミドルクラス」になる見通しである 30。ラグジュアリー市場は、台頭するこの新しい中間所得層を取り込んで大幅な成長を遂げるとみられる。この市場の主役はミレニアル世代のHENRYsと Z世代であり、彼らは可処分所得が高く、新興市場の成長著しい国々において際立つ存在である。その意味で、中国とインドはブランド各社にとって魅力的な市場だが、いずれも市場に対する深い理解が求められる。

ユーロ圏ユーロ圏は 2018年に引き続き成長したものの、成長率は鈍化した。スペインとフランスはユーロ圏の平均を上回ったが、ドイツとイタリアは小幅のマイナス成長となった。成長鈍化の原因に、エネルギー価格の上昇、ユーロ高、貿易の不確実性、グローバルな需要減退が考えられる。ユーロ圏が米中貿易摩擦の影響を受けているのは明らかだが、圏内の債務対 GDP比率も成長鈍化に拍車をかけている。とはいうものの、ユーロ圏は雇用水準と賃金の伸びが過去最高となっており、個人消費を喚起している。

ブレグジットは、いうまでもなくユーロ圏における最大の政治的脅威だが、最近のフランスでの抗議活動など、地域全体で繰り返し騒乱が起きている。ユーロ圏はブレグジットと無縁ではいられないだろうが、影響を正確に予想するのは困難である。

中国中国経済は 2018年に 28年ぶりの減速を経験した。にもかかわらず、ラグジュアリー品売上高は中国本土および国外でも拡大し、中国の消費者は今や国内外のラグジュアリー品消費を主導する存在である。中国は、旅行観光収入の対 GDP比では世界第 2位であり、2028年には GDPの 12.9%を占めると予想されている 31。中国は政府の大規模な財政支援を背景に、この 30年間で社会・経済状況を大きく変貌させた。その結果、債務対 GDP比率は高水準となっている。これは明らかに持続不可能な構造であり、政策改革が必要である。米国の保護主義政策は中国経済にとって大きな脅威であり、中国は輸出市場からの保護措置を講じている。

「中国製造 2025」は、自給自足とハイテク産業の強化を目指す政策である。もう一つの政府債務の削減策は、株式市場への投資と多数の大手国有企業の持分株式売却である。現在、米国と中国は現行の関税についての交渉に入っており、2019年に何らかの変化が生じることが予測される。

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米国米国経済は 2018年に財政刺激策の恩恵を受けた。減税と歳出増の組み合わせにより需要が増加し、成長が一時的に加速した。ラグジュアリー品の需要も継続している。しかし、すでに完全雇用の状態にあるため、財政政策はボトルネックと賃金上昇を招いている。米連邦準備制度理事会(FRB)はこれに対して金利の引き上げで応じており、この利上げプロセスは 2019年も続く可能性が高い。最終的にタイトな金融政策と貿易摩擦、財政政策の反転への懸念が重なり、今後の米経済は鈍化に向かい、2~ 3年以内に景気が後退する恐れがある。投資と輸出は低調だが、個人消費が成長をけん引している。しかし、消費が所得より速いペースで伸びており、家計は貯蓄に手をつけ、負債が増加している。賃金上昇が大幅に加速しない限り、個人消費は 2019年に鈍化するとみられる。さらに、関税が全面施行されれば、これもまた個人消費にマイナス影響を与えることが予測される。

インドインドのラグジュアリー市場は高成長が続いている。可処分所得の増加に加え、テクノロジーによって購買判断が容易となった結果である。市場が主要都市以外にも広がり、またラグジュアリー品を消費するHENRYsの数が増加していることも市場の成長に寄与している。今後数年は、特に「Bridge to Luxury」セグメントで成長と競争が高まり、インドのラグジュアリー市場は活況となるであろう。ラグジュアリーの伝統的な「定義」や「特性」は進化しており、それによって既存企業と新規参入企業の双方に新たなチャンスが訪れている。

スタッフの質や不動産などに課題はあるものの、多くの企業はビジネスモデルや戦略を変更して解決を図っている。高級モールやホテルに入居しているラグジュアリーブランドはブティックに大型投資を行ったり、現地の販売会社と合弁企業を設立したりしている。また、アートや工芸、医薬品などの分野におけるインドの伝統的な強みを発揮し、自力でニッチなラグジュアリー品を作り出す現地企業の数が増加している。ラグジュアリー市場の継続的な成長には、2019年の国政選挙後の政治的安定、輸入関税障壁の是正に向けた政府の支援、インドルピーの対ドル相場の安定が必要になる。

日本日本のラグジュアリー市場は、2019年から2022年にかけて継続的な成長が予想されている。2022年も引き続き高級ファッション、高級化粧品・香水が売上を占め、高級時計・レザーグッズも安定成長を維持するであろう。賃金の上昇継続と雇用水準の改善を背景に個人消費は増加しており、市場は着実に成長している。一方で所得格差の広がりによる消費者層の二極化や少子高齢化が進む日本で、ラグジュアリー企業が売上を確保するためには、HENRYsを中心とした富裕層に加え、一定の消費余力のあるシニア向けの訴求も課題となっている。

アラブ首長国連邦アラブ首長国連邦(UAE)のラグジュアリー市場は持続的に成長している。その要因は、ブランドのオムニチャネル戦略と観光業界の拡大である。UAE経済は、VAT(付加価値税)の導入と教育費、不動産賃料のコスト増などの課題に直面しているが、ラグジュアリー市場の予測はプラス成長である。ラグジュアリー市場は、市場の成熟と世界的トレンドへの順応を背景に成長が続くと予想されている。

中南米中南米では混迷の選挙期間が終わり、2019年は混乱が著しく少なくなる1年と予想されているが、ベネズエラ問題の影響が今後生じると見られている。ラグジュアリー市場は GDPの増加でわずかに成長し、見通しも全般的に明るい。選挙後の安定は消費意欲を確実に押し上げる。消費者が店舗購入を好むため、ラグジュアリー市場では依然、リアル店舗が圧倒的に強い。ラグジュアリー品売上高はメキシコを筆頭に成長する見通しだが、中南米地域が持続可能な安定を実現し、成長を確かなものにするためには、経済課題に取り組む必要がある。

ロシアロシアの高級品の中心地は、国内のラグジュアリー品売上高の70% 32を占めるモスクワである。ロシアのラグジュアリー市場は、2019年から2022年にかけて成長を維持すると予測される。この需要増に対応するため、東欧最大級の百貨店 TSUMは営業面積を7万平方フィート拡大した。2019年度決算では、商品価格をミラノやパリと同一かそれ以下とする「ミラノ価格」に加え、2018年1月1日から導入するラグジュアリー品売上高に対する租税還付の影響も出てくるとみられる。現在は店舗販売が消費者体験の主流であるため、この市場ではオンライン売上を増やせる余地がある。

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Top 10社のハイライト

2017年度のラグジュアリー品売上高順位

順 位 の変動 企業名 本社所在国

2017年度のラグジュアリー品売上高(100万米ドル)

2017年度の 総 収 益(100万米ドル)

2017年度のラグジュアリー品売上高成長率*

2017年度の純利益率1**

2017年度の純資産利益率**

2 0 1 5 ~ 2017年度のラグジュアリー品売上高のCAGR2*

1 LVMH Moët Hennessy- Louis Vuitton SE

フランス 27,995 48,057 17.2% 13.2% 8.2% 10.9%

2 The Estée Lauder Companies Inc. 米国 13,683 13,683 15.7% 8.1% 8.8% 10.2%

3 Compagnie Financière Richemont SA スイス 12,819 12,819 3.1% 11.1% 4.8% -0.4%

4 Kering SA フランス 12,168 17,446 27.5% 12.1% 7.3% 17.2%

5 Luxottica Group SpA イタリア 10,322 10,322 0.8% 11.4% 10.4% 1.8%

6 Chanel Limited 英国 9,623 9,623 11.5% 18.6% 19.6% ne

7 L'Oréal Luxe フランス 9,549 e 9,549 e 10.6% n/a n/a 8.2%

8 The Swatch Group Ltd. スイス 7,819 8,082 5.4% 9.5% 5.6% -2.9%

9 Chow Tai Fook Jewellery Group Limited 周大福珠宝集团有限公司

香港 7,575 7,575 15.4% 7.1% 7.3% 2.2%

10 PVH Corp. 米国 7,355 8,915 10.7% 6.0% 4.5% 8.1%

Top 10社 118,909 146,071 14.2% 11.6% 7.8% 7.5%Top 100社 246,664 276,754 10.8% 9.8% 7.6% 5.3%

Top 100社のラグジュアリー品売上高に占めるTop 10社の割合 48.2% 52.8%

ラグジュアリーTop 10社(2017年度の売上高別)

+1

+1

-1New

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ラグジュアリー Top 10社:アジア太平洋地域がラグジュアリー品売上高の高成長をけん引2017年度のラグジュアリー品売上高Top 10社は、100社全体の売上高のほぼ半分(48.2%)を占めた、昨年のレポートから1ポイント拡大している。売上高成長率は前年度から13.6ポイントと大幅に拡大し、14.2%となった。Top 10社の純利益率は11.6%に改善し、売上高成長率も純利益率とともに、Top 100社を上回った。Top 3社の顔ぶれに変更はなかったが、Keringは売上高が27.5%増加し、Luxotticaに代わって4位に浮上した。Top 10社で最も目立った変化は、Chanelが6位に食い込んだことである。非上場の高級ブランドChanelは英国に本社があり、2018年に初めて財務実績を公表した。また、Chow Tai Fookは、PVHに代わって9位に浮上。さらに、本レポートの創刊以来の常連だったRalph Laurenは、今回初めてTop 10社から姿を消し、減収が続いたことで2016年度から4つランクを落として12位となった。

LVMHの2017年度の売上高は前年度比17.2%増の280億米ドルで(36億ユーロ超の増加)、昨年度に続き首位の座を守った。LVMHの強さは、Top 100社のラグジュアリー品売上高に占める割合が11.3%に達することからも明白である。また、同社の2017年度の売上高成長率は、Top 10社で3.0ポイント、さらにTop 100社では6.4ポイント上回った。傘下のラグジュアリー事業3グループがすべて本業で12~14ポイントの力強い伸びを見せたことに加え(連結範囲と為替変動の影響を除く)、買収の効果もあった。特に、2017年度下半期にChristian Dior Coutureの売上高がファッション&レザーグッズ事業グループに連結されたことが大きい。この事業グループの売上高は21.1%の大幅な増加を示し(約27億ユーロ)、現在、LVMHの個人向けラグジュアリー品売上高の62.3%を占めている。LVMHを代表するブランドのLouis Vuittonを始め、Loewe、Kenzo、Fendi、Berluti、Loro Pianaによる本業の着実な成長に、買収した高級スーツケースのRimowaの統合が加わったことで、

1 連結売上高および純利益に基づく純利益率² 年平均成長率(CAGR)e=推定値 n/a=該当なし ne=存在せず(再編で生じた)*Top 100社の売上高成長率は為替調整後の売上高加重平均**Top 100社の純利益率、総資産利益率(ROA)および資産回転率は売上高加重平均出所:Deloitte Touche Tohmatsu Limited。Global Powers of Luxury Goods 2019。2018年6月までを期末とする会計年度について各社アニュアルレポートに基づく財務内容および業界推計値を分析。

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Donna Karanの売却と為替の不利な影響を相殺した。香水・化粧品事業セグメントは、LVMHの個人向けラグジュアリー品売上高の22.4%を占め、アジアを中心にすべての地域で大幅な増収となり、12.3%の成長率を記録した。Zenithなど一部のブランドは、中国のLuxury Pavilion Tmallに出店した。Benefit Cosmetics、Make Up For Everを含む化粧品ブランドは同セグメント内で急速に構成比を伸ばしており、2015年度の40%から2017年度には47%に拡大した。時計と宝飾品はLVMHの個人向けラグジュアリー品売上高の15.3%を占め、前年度比の売上高成長率は、Bvlgariの好決算とChaumet、Hublot、Fredの増収が寄与して9.7%となり、中でもアジアと欧州が最も好調だった。またLVMHは、2017年度の純利益率、総資産利益率が2016年度からそれぞれ1.6ポイント、0.9ポイント上昇している33。

米国を本拠地とするラグジュアリー大手Estée Lauderは、前年度比15.7%の売上高成長率となり、2位を維持した。有利な為替相場、オンラインと専門マルチチャネルおよびトラベルリテールにおける大幅な増収、さらには2016年末に買収した化粧品ブランド、Too Faced、BECCAの通期連結計上など、すべてが成長に寄与した。2017年度業績ではEMEAと、特に中国などのアジア太平洋諸国(2016年度比で29.1%増)が二桁台の増収を記録したほか、高級美容ブランドへの旺盛な消費者需要とサードパーティ・オンラインプラットフォームでのブランド浸透も奏功した。伸長している美容ブランドはEstée Lauder、La Mer、M.A.C、およびライセンスブランドのTom Ford Beauty、また、香水ではJo Malone London、Tom Ford、Le Labo、By Kilianである。今後は、同社が2016年5月に打ち出した再編計画「Leading Beauty Forward」によりデジタル化への注力と投資も進む見通しで、2018年度から2021年度にかけて利益率の上昇が期待される34。

2年連続で3位につけたスイスのRichemontは、2016年度は3.9%の減収だったが2017年度は売上高が3.1%増に回復した。例外的な在庫買い戻しの影響を除くと、売上高は7%増加している(為替変動の影響を除く)。この回復は主にRichemontのラグジュアリー品売上高の58.9%を占めるJewelry Maisonsの9%の増収に加え、小売チャネルの一桁台後半の高成長、アジア太平洋地域の二桁台の伸びによるものである。欧州事業は、相対的なユーロ高や在庫買い戻しのほか、Richemontの小売企業が売れ残りの時計をグレーマーケットに流さないようマルチブランドを取り扱う小売パートナーの外部販売拠点で在庫管理を厳しくしたことが売上に響いた35。Richemontは2018年5月、オンラインチャネルのみで販売する若年層向けの新しい低価格帯ラグジュアリー時計ブランドBaumeを発表した。これにより、「グリーン・イニシアチブ(Green Initiative)」という、ミニマリスト・デザインで動物由来の素材や希少素材を使わず、時計ベルトは再生利用可能な素材を用い、包装は紙と段ボールしか使わない36取り組みに向けた一歩を踏み出している。Richemontは、eコマースにおけるラグジュアリー品売上高をさらに伸ばすため、2018年にオンラインの高級時計小売、Yoox Net-A-PorterとWatchfinder(英国を本拠地とするオンラインの中古高級時計専門大手)の買収を完了した37。同年10月には中国でのオンライン販売のため、Alibabaとの提携を発表した。

Keringは、2017年度のラグジュアリー品売上高成長率でTop 10社中最も高い27.5%を達成し、Luxotticaを押さえて4位に浮上した。同グループのラグジュアリー品売上高は、すべての商品カテゴリー、地域、流通チャネルでオーガニック成長を記録し、120億米ドル台に乗せた。ラグジュアリー品売上高に占める直営店のシェアは引き続き拡大して75.1%に達した。特に目立ったのがGucci、Yves Saint Laurent、Balenciagaのきわめて好調な店舗売上高と、70%以上の急成長を見せたオンライン売上高である。新興市場の売上高は32.8%と急増し、特に中国本土は37.7%、グループ第2位の新興市場である韓国は40.0%の高成長を記録した。成熟市場については、北米で当地域のラグジュアリーブランドの主要流通チャネルである百貨店の販売低迷が続いたものの、日本と西欧で観光業が回復したため、売上高は28.1%増と好調に推移した。2017年5月、同社の子会社、Kering Eyewearは、Richemont所有のMaison Cartierと、Cartierメガネコレクションの開発、製造、流通に関する契約を締結した。同時にRichemontはKering Eyewearの少数持分を取得した。Keringは完全なラグジュアリー企業に変貌する計画の一環で、2018年5月にスポーツブランドPumaのスピンオフを完了させた。

イタリアのメガネグループLuxotticaは、前年度比成長率が0.8%とTop 10社の中で最も低く、2017年度の順位を一つ落として5位となった。対ユーロの米ドル、英国ポンド相場の下落が響いた。為替相場の影響を除く売上高は2.2%の増加だった。欧州は11.7%伸び、3年連続で成長の原動力となったが、同社売上高の59%を占める北米は2.4%の減収だった。小売チャネルにおける1.7%の増収が卸売チャネルにおける0.6%の減収を相殺した。Luxotticaは2017年7月、ブラジルの最大手メガネチェーンの一つÓticas Carol(950店舗)の買収を完了した38。またレンズメーカーEssilorとの500億ユーロ規模の合併は、2018年10月に世界全体で完了し、EssilorLuxottica SAが誕生した39。LuxotticaのLeonardo Del Vecchio氏が自らの持株会社、Delfinを通じて新会社の筆頭株主(39.83%)および執行会長となっている。

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Chanelは、2018年に初めて財務実績を発表し、ラグジュアリー企業Top 100社に初登場するなり一気に6位に食い込んだ40。報道では、ChanelはKeringのGucciを押さえ、LVMHのLouis Vuittonに次ぐ世界第2のラグジュアリーブランドである。個人向けラグジュアリー品の4カテゴリーすべてで事業を展開し、100億米ドル近い売上を達成している。同社の純利益率は18.6%とTop 10社では最も高く、Top 100社でも5番目であった。2017年度の売上高は前年度比11.5%増加した。これには16.5%と最も高い成長率となったアジア太平洋を始め、すべての地域の高い消費者需要が寄与した。香水の成長を新製品「Gabrielle」がけん引し、また同じGabrielleブランドで新発売のハンドバッグも成功し、既製服およびレザーグッズのコレクションの成長に貢献した。同社のハイジュエリー・カテゴリーは、特にCoco Avant ChanelとFlying Couldのコレクションが好調で、過去最高の成績となった。Chanelは2018年2月、グローバルなeコマースプラットフォームFarfetchとの提携を発表した。目的は、店舗内体験のパーソナライゼーションに向けたデジタルイニシアチブの開発、eコマースにおけるラグジュアリーなショッピング体験の強化、ミレニアル世代の顧客に訴求するアプリの導入である41。このパートナーシップの一環として、ChanelはFarfetchの株式を取得した。Chanelは2017年度も新旧店舗への投資を継続し、12月に新たな旗艦店を東京にオープンしたほか、ロンドンに本社を置く新しい持株会社Chanel Limitedを設立し、全事業と2万人の従業員を集約した。

第7位のL'Oréal Luxeは、Chanelのランキング登場により一つ順位を落としたが、2017年度の売上高は95億5,000万米ドルとChanelに肉薄している。L'Oréal Luxeの売上高成長率は前年度比10.6%で、2000年以来の高い水準となった。2017年度に高い伸びを示したのはアジア太平洋と中南米地域、およびトラベルリテールとeコマースだった。西欧も好調だったが、一方で北米の売上高はYves Saint LaurentとIT Cosmeticsが二桁の伸びを記録したものの在庫圧縮を受けて減速した。同社の報告によると、メークアップとフェイシャルスキンケア市場で業績が平均を上回り、特にメークアップのMonsieur Big mascara、L'Absolu Rouge、Teint Idole Ultra、スキンケアのGénifiqueが好調だったLancômeの成長が奏功した。Yves Saint Laurentは新しいメンズ向け香水「Y」の発売で香水事業が引き続き好調だったほか、化粧品カテゴリーではTatouage Coutureの口紅が好業績を上げた。10億米ドル規模のブランドとして、従来のLancômeとYves Saint LaurentにGiorgio ArmaniとKiehl’sが加わった。中国と香港特別行政区(SAR)の成長は、アイコニックなラグジュアリーブランドに対する若年層の消費者とミドルクラスからの旺盛な需要にけん引された。中国の消費者は、アジアのトラベルリテール拡大の主な原動力となっている42。

Swatchは、2017年度に売上高成長率が5.4%と、2016年度の減収から回復し8位となった。当年度下半期は、すべての価格帯セグメントで成長が加速した。特にHarry Winstonの異例の好業績に支えられたプレステージおよびラグジュアリー・セグメントが最も伸びたほか、Omegaの売上高も大幅に拡大した。すべての地域で成長を遂げ、特に中国本土と日本など、アジア太平洋地域が好調だった。欧州では、英国、イタリア、ドイツ、オーストリア、ベネルクス三国、スイスを含む大半の国が増収となったが、フランスとスペインは低調だった。2017年度はオンライン売上高が引き続き増加し、オンライン上での存在感を高めるとともに中国、シンガポール、ロシアへも事業を拡大した。Swatchのeコマース戦略には、中国のTmallや日本の楽天などのマーケットプレイス経由の販売、およびZalandoなどのオンライン小売専業を通じた販売が含まれている43。また、Instagramを通じたOmega時計の「Speedy Tuesday」販売も大ヒットしている。

Chow Tai Fook Jewelleryは、ラグジュアリー品の売上高を15.4%拡大し、2017年度ランキングでPVH Corp.を押さえて9位に浮上した。すべての市場で業績が回復し、前年度の9.4%減収から復活した。中国本土が18.7%の売上高成長率を計上した一方、香港、マカオ等の市場の伸びは10.5%だった。金製品は2017年度、旺盛な消費者需要を背景に売上高構成比が前年度比2ポイント拡大して59.4%となった。市況回復は時計の成長率18.3%も押し上げた。小売チャネルの伸びは11.7%だが、卸売(主にフランチャイズ加盟店向け売上高)は36.6%の大幅増を記録した。拡大中のeコマースは66.8%の急成長となった44。

米国を本拠地とするラグジュアリー企業PVHは、傘下のCalvin KleinとTommy Hilfigerブランドが成長率10.7%と健闘したものの、10位に後退した。2017年度は米国以外の売上高成長率が16%を記録した。欧州とアジア(特に中国)で高成長が続き、Calvin Kleinは21%、Tommy Hilfigerは19%の増収となった(主に2016年4月に中国のTommy Hilfiger合弁企業を買収したことによる)。北米では両ブランドの純売上高はやや減少した。卸売事業およびTommy Hilfigerの小売が伸びたものの、メキシコのCalvin Klein事業の連結除外、米国とカナダのTommy Hilfigerの直営レディース事業の撤退によって相殺された(2016年にG-IIIにライセンス供与)。PVHは2017年度も合弁事業のパートナーや代理店を買収し、重点販売国・地域での直営事業を拡大した。2017年9月にベルギーとルクセンブルクでの卸売およびコンセッション事業の買収を完了し、2019年2月にはオーストラリアの合弁事業パートナーGazalの買収計画を発表した45。2017年3月、同社は長期成長を支えるデジタルプラットフォームへの投資戦略の一環として、強力なデータアナリティクス・ツールをもつD2C(direct-to-consumer)の肌着デジタルコマース、True & Co.を買収した。

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2017年度のTop 10社にランクインするために必要な売上高は、73億5,000万米ドルに拡大した。Top 10社のすべてが前年度比増収となり、RichemontとSwatchを除く全社で2015~2017年度の年平均成長率がプラスとなった。純利益を開示している全9社が最終黒字を計上し、Top 6社中5社が二桁台の純利益率となった。Top 10社中6社は前年度から利益率を改善させており、Keringがの改善幅の最も大きい5.0ポイントだった。

ラグジュアリー企業Top 10社のうち、3社が本拠地をフランスとしており、米国とスイスが2社ずつ、残りはイタリア、英国、香港SARが1社ずつだった。商品カテゴリーでは、3社でジュエリー・時計、複合ラグジュアリーの売上高構成比が最も大きく、続いて2社で化粧品・香水、それぞれ1社でバッグ・アクセサリー、衣料・靴カテゴリーが強かった。

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世界のラグジュアリー企業ランキングTop 100社ラグジュアリー企業の売上高が大幅増;利益改善2017年度の世界のラグジュアリー企業 Top 100社のラグジュアリー品売上高は 2,470億米ドルとなり、前年度の 2,170億米ドルから増加した。売上高成長率は、為替変動の影響を除き10.8%で、前年度の1.0%から大きく改善した。全体の76%の企業がラグジュアリー品売上高を伸ばし、その半数近くが前年度比二桁台の成長率を記録した。2016年度比で減収となったのは 18社のみで、二桁台のマイナス成長は Safiloとミキモトだけである。一桁台の減収となった企業の過半数は衣料・靴企業で、Ralph Lauren、Giorgio Armani、OTB、Dolce&Gabbana、Tod's、三陽商会、Marc o'Polo、Gefin、Trinityが含まれている。2015~2017年度の売上高率を見ても、為替調整後の売上高加重平均 CAGRは5.3%と、2014~2016年度から1.4ポイント上昇した。

ラグジュアリー品売上高の最終損益を開示している77社のうち、66社が黒字を計上した。ラグジュアリー企業 Top 100社の純利益率(合計の総収益と純利益に基づく)は 9.8%で、前年度から1.0ポイント上昇した。21社は二桁台の純利益率となった。この高収益企業は規模も平均より大きく、Top 6 社のうち 5社、Top 50社のうち15社が、巨大ラグジュアリー企業である。最終損失を計上した企業は昨年のレポートと同じ 11社だったが、2017年度に純利益率が二桁台のマイナスとなったのは 3社のみで、Fossil Group、Safilo Group、香港拠点のTrinityだった。

2017年度は、「オールラウンドの好業績企業(all round high achievers)」の数が倍以上に増えた。ラグジュアリー品売上高成長率、純利益率がともに二桁台となった企業は、昨年の 5社に対して 11社となった。昨年に続いてこのグループに入った企業はPandoraとMonclerで、2014 年度以降連続して異例の成長率と収益性を記録している。ラグジュアリー大手の LVMH、Kering、Chanelも、日本の高級化粧品会社の株式会社コーセー、ポーラ・オルビスとともに 2017年度の「好業績企業」に含まれている。

2017年度のTop 100社の総資産利益率は7.6%と、前年度から0.7ポイント改善した。Top 100社の 24%がイタリアを本拠地としており、商品カテゴリー別では衣料・靴企業が 38社と、引き続き最多となっている。

2017年度に世界のラグジュアリー企業 Top 100社にランクインするために必要な売上高は 2億 1,800万米ドルで、2016年度から700万米ドル増加した。ラグジュアリー企業のラグジュアリー品平均売上高は 24億 7,000万米ドルだった。Top 100社のうち、ラグジュアリー品売上高が 10億米ドルを上回ったのは 50社で、

2016年度から1社増加した。また、2017年度は大手 15社が50億米ドル以上のラグジュアリー品売上高を上げた。一方、100社の下位企業で 2017年度に売上高が 5億米ドルを下回ったのは32社だった(その71%以上が同族経営)。

2017年度のTop 100社では、大型の合併・買収活動により前年度のリストから 3社が姿を消した。

• 2016年度に 26位だった Christian Dior Coutureは、全株式を LVMHに 60億ユーロで譲渡し、2017年7月の買収完了により、2017年度のTop 100社から姿を消した。Christian Dior Coutureの売上高のうち、2017年度のほぼ 6カ月分が LVMHのファッション&レザーグッズ・セグメントの売上高に連結されている。

• 2016年度に Top 100社の 40位だった Kate Spadeは、2017年7月に 24億米ドルで Coach(現 Tapestry)に買収された。

• Jimmy Choo(2016年度に 66位)は 2017年 11月、12億米ドルでMichael Kors(現 Capri)に買収された。

2017年度のラグジュアリー企業によるその他の主要な買収、売却、提携案件は以下の通り。

• Kalyan Jewellersは 2017年 4月、オンライン宝飾品企業のCandereを買収した。

• Movado Groupは 2017年 7月、英国のファッション時計・宝飾品ブランドOlivia Burtonの保有企業 JLB Brandsを 6,500万ポンドで買収した 46。

• CVCは 2017年に Breitlingの支配権株式を取得し、2018年11月に一族から残りの発行済株式を取得した。

• 資生堂は「パーソナライズ美容を次の段階に引き上げるため」、2017年に米国拠点のテクノロジー関連企業を相次いで買収した。これにはMATCHCo(顧客にモバイルアプリを通じて自身の肌の状態をスキャンさせ、収集したデータを使って個々に合わせた特別なファンデーションを個別に配合)とGiaran(人工知能プラットフォームのリーディングテクノロジーをもつ企業)が含まれている 47。また、Shiseido Americasは、2017年 10月にヘアケア子会社の Zotos InternationalをHenkelに、2017年11月に傘下の高級スキンケアシリーズの ReViveをプライベートエクイティ会社のTengram Capital Partnersに売却した。

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• 中国の繊維コングロマリットShandong Ruyiは、ラグジュアリーファッション事業拡大を継続した。2016年の SMCP、2017年のTrinityなど、過去のラグジュアリー品企業の買収に加え、2018年 2月には Ballyの支配権株式を取得した。SMCPとTrinityは親会社の財務報告書で連結されていないため、2017年度のTop 100社ランキングにそれぞれ登場している。

• 中国のコングロマリット Fosunもラグジュアリー企業への投資を続行した。2018年 2月にフランスの Lanvin、同年 5月にはドイツのWolfordの過半数株式の買収を完了した。

• Keringは、純然たるラグジュアリー専業企業への変革計画として、スポーツブランド Pumaのスピンオフを 2018年 5月に完了した。Keringは Puma株式の16%弱を維持した。

• Puigは 2018年 6月、ベルギー人デザイナーDries van Notenのファッションブランドの過半数株式を取得した。

• ラグジュアリーオンライン企業、Yoox Net-A-Porterの完全支配に向けた Richemontの 27億ユーロの買収は、2018年 5月に完了した。また Richemontは 2018年 6月、英国を本拠地とするオンラインの中古高級時計専業Watchfinderを、その株主らとの個人取引を通じて買収した。同じ 6月には革製品企業の Lancelの売却を完了した。

2017年度にスタートし、2018年度に完了した主な買収、売却、提携案件は次の通りである。

• Ermenegildo Zegnaは 2018年 8月、米国の高級レーベルThom Browneの 85%の株式持分を Sandbridge Capitalから 5億米ドルで取得した。

• Luxotticaによるレンズメーカー Essilorとの 500 億ユーロ規模の合 併は、2018 年 10月に世界全 体で完了し、EssilorLuxottica SA が 誕 生した。Luxottica の Leonardo Del Vecchio氏が自らの持株会社 Delfinを通じて新会社の筆頭株主(39.83%)となっている 48。

• Canada Gooseは 2018年 11月、カナダを本拠地とする高機能のアウトドア、工業用靴の設計製造会社 Baffin Inc.を 3,250万カナダドルで買収した。Canada Gooseは、Baffinの靴づくりの強みをテコに独自の寒冷用靴シリーズを開発する一方、Baffinブランドを子会社として独立経営させる方針である。

• Michael Korsは、21億 2,000万米ドルで取得した Gianni Versaceの買収を 2018年末に完了した。2019年初めには、自社が「世界をリードするグローバルなファッションラグジュアリー・グループの一つ」になったことを示すため、社名を Capri Holdings Limitedに変更した 49。

• Trussardiは 2019年 2月、新会社の Levrieroを通じて、投資ファンドのQuattroRへの約 60%の過半数株式の売却(売却額は約 5,000万ユーロ)を完了した。残余株式はまだグループの会長、Trussardi FamilyのTomaso Trussardi氏が所有している。Levrieroは、Trussardiの単独株主、Finosの 86%を所有している。

為替相場がランキングに及ぼす影響2017年度の世界のラグジュアリー企業ランキングTop 100社は、当年度の米ドル換算のラグジュアリー品売上高に基づいて順位を付けている。前年度比の順位の変動は概ね、企業の売上高の増減によって決まる。ただし、2017年度にある通貨の対ドル相場が上昇した場合、他の条件がすべて同じであれば、当該通貨建てで会計報告を行っている企業の2017年度のランキングは、2016年度より高くなる可能性がある。逆に、会計報告に使用している通貨が下落した場合、その企業のランキングは低下する可能性がある。

2017年度は、低調な英国経済と進まないブレグジットの移行を背景に、英国ポンドが対米ドルで4.7%下落した一方、ユーロは1.9%上昇した。ブラジルレアルは9.3%、インドルピーは3.2%それぞれ上昇した。他の通貨はすべて3%未満の変動にとどまった。企業にとって、これらの為替相場の変動による売上高ヘの影響は、その会社の報告通貨、事業展開地域の範囲、およびそれによりどの通貨の影響をどの程度受けるかによって決まる。

データの入手可能性がランキングに及ぼす影響2017年度のTop 100社では、5社が初登場し、3社が返り咲いた。これらの多くは、企業売上高に変動があったというより、より多くのデータが入手可能となったことによるものだった。詳しくは「新たにランクインした企業」のセクションを参照されたい。

多くのラグジュアリー企業は非上場会社である。一部の企業は財務情報を含む公式な報告書を発表しているが、それ以外の企業については、記者会見やニュース記事、業界アナリストなどの情報源に基づいて推定値を出している。

ごく少数の企業は財務情報をまったく開示していないため、2017年度のTop 100社に加えることができなかった。今年の調査では、2016年度に取り上げた以下の企業について妥当な推定値を算出することができなかった:True Religion Apparel、Laboratoire Nuxe、Tasaki & Co、Sungjoo D&D、Clarins。

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2 0 1 7年度のラグジュアリー品売上高順位

順位の変動 企業名 本社所在国 対象ラグジュアリーブランド

2 0 1 7年度のラグジュアリー品売上高(100万米ドル)

2017 年度の総収益(100万米ドル)

2 0 1 7年度のラグジュアリー品売上高成長率

2017年度の純利益率1

2 0 1 5~2 0 1 7年度のラグジュアリー品売上高のCAGR2

1 0 LVMH Moët Hennessy-Louis Vuitton SE

フランス Louis Vuitton, Christian Dior, Fendi, Bvlgari, Loro Piana, Emilio Pucci, Acqua di Parma, Loewe, Marc Jacobs, TAG Heuer, Benefit Cosmetics

27,995 48,057 17.2% 13.2% 10.9%

2 0 The Estée Lauder Companies Inc. 米国 Estée Lauder, Bobbi Brown, La Mer, Jo Malone London, Aveda; Licensed beauty & fragrance brands, Tom Ford Beauty

13,683 13,683 15.7% 8.1% 10.2%

3 0 Compagnie Financière Richemont SA

スイス Cartier, Van Cleef & Arpels, Montblanc, Jaeger-LeCoultre, Vacheron Constantin, IWC, Piaget, Chloé, Officine Panerai, YNAP

12,819 12,819 3.1% 11.1% -0.4%

4 1 Kering SA フランス Gucci, Bottega Veneta, Saint Laurent, Balenciaga, Brioni, Pomellato, Girard-Perregaux, Ulysse Nardin

12,168 17,446 27.5% 12.1% 17.2%

5 -1 Luxottica Group SpA イタリア Ray-Ban, Oakley, Vogue Eyewear, Persol, Oliver Peoples; Licensed eyewear brands

10,322 10,322 0.8% 11.4% 1.8%

6 New Chanel Limited 英国 Chanel 9,623 9,623 11.5% 18.6% ne

7 -1 L'Oréal Luxe フランス Lancôme, Kiehl’s, Urban Decay, Biotherm, IT Cosmetics; Licensed brands

9,549 e 9,549 e 10.6% n/a 8.2%

8 -1 The Swatch Group Ltd. スイス Omega, Longines, Breguet, Harry Winston, Rado, Blancpain; Licensed watch brands

7,819 8,082 5.4% 9.5% -2.9%

9 1 Chow Tai Fook Jewellery Group Limited 周大福珠宝集团有限公司

香港 Chow Tai Fook, CHOW TAI FOOK T MARK, Hearts on Fire, Monologue, Soinlove

7,575 7,575 15.4% 7.1% 2.2%

10 -1 PVH Corp. 米国 Calvin Klein, Tommy Hilfiger 7,355 8,915 10.7% 6.0% 8.1%

11 0 Hermès International SCA フランス Hermès, John Lobb 6,255 6,255 6.7% 22.1% 7.1%

12 -4 Ralph Lauren Corporation 米国 Ralph Lauren, Polo Ralph Lauren, Lauren Ralph Lauren, Chaps, Club Monaco

6,182 6,182 -7.1% 2.6% -8.6%

13 2 Tapestry, Inc. (formerly Coach, Inc.) 米国 Coach, Kate Spade, Stuart Weitzman 5,880 5,880 31.0% 6.8% 14.4%

14 -2 Rolex SA スイス Rolex, Tudor 5,686 e 5,686 e 5.7% n/a 0.9%

15 -2 Lao Feng Xiang Co., Ltd 老凤祥股份有限公司

中国 Lao Feng Xiang 5,346 5,889 14.1% 3.7% 7.9%

16 1 Shiseido Prestige & Fragrance 日本 SHISEIDO, clé de peau BEAUTÉ, Benefique, bareMinerals, NARS, IPSA, Laura Mercier; Licensed fragrance brands

4,748 e 4,748 e 31.1% n/a 19.3%

17 -3 Michael Kors Holdings Limited (now Capri Holdings Limited)

英国 Michael Kors, MICHAEL Michael Kors, Jimmy Choo

4,719 4,719 5.0% 12.5% 0.1%

18 -2 Tiffany & Co. 米国 Tiffany & Co., Tiffany 4,170 4,170 4.2% 8.9% 0.8%

19 -1 Burberry Group plc 英国 Burberry 3,619 3,619 -1.2% 10.7% 4.2%

20 0 Pandora A/S デンマーク Pandora 3,452 3,452 12.3% 25.3% 16.7%

21 -2 Prada Group イタリア Prada, Miu Miu, Church's, Car Shoe 3,445 p 3,445 p -3.6% 8.2% -7.2%

22 3 Coty Luxury 米国 philosophy, JOOP!, Lancaster; Licensed fragrance brands: Hugo Boss, Gucci, Calvin Klein, Burberry etc

3,211 3,211 25.1% n/a 32.2%

23 -2 Hugo Boss AG ドイツ BOSS, HUGO 3,080 3,080 1.5% 8.5% -1.4%

24 -1 Swarovski Crystal Business オーストリア Swarovski 3,043 3,043 3.8% n/a 1.9%

25 -3 Fossil Group, Inc. 米国 Fossil, Michele, Relic, Skagen, Zodiac, Misfit; Licensed brands

2,683 e 2,788 -8.4% -17.0% -7.1%

26 -2 Giorgio Armani SpA イタリア Giorgio Armani, Emporio Armani, Armani, A|X Armani Exchange

2,637 2,637 -7.3% 10.4% -6.3%

27 1 Titan Company Limited インド Tanishq, Zoya, Nebula, Xylys 2,449 2,517 23.6% 6.8% 19.7%

28 -1 Puig S.L. スペイン Carolina Herrera, Nina Ricci, Paco Rabanne, Jean Paul Gaultier, Penhaligon's; Licensed fragrance brands

2,181 2,181 8.1% 11.8% 8.5%

29 New Kosé Corporation 日本 DECORTÉ, SEKKISEI, ADDICTION, JILL STUART, ALBION, Tarte

2,071 e 2,737 15.4% 11.1% 12.9%

世界のラグジュアリー企業Top 100社

¹ 親会社やグループの収益および純利益にはラグジュアリー品以外の事業の業績が含まれる場合がある

² 年平均成長率(CAGR)e = 推定値 p = 試算

出所:Deloitte Touche Tohmatsu Limited。Global Powers of Luxury Goods 2019。2018年6月までを期末とする会計年度について各社アニュアルレポートに基づく財務内容および業界推計値を分析。

n/a = 該当なしne = 存在せず(合併や売却の結果)

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2 0 1 7年度のラグジュアリー品売上高順位

順位の変動 企業名 本社所在国 対象ラグジュアリーブランド

2 0 1 7年度のラグジュアリー品売上高(100万米ドル)

2017 年度の総収益(100万米ドル)

2 0 1 7年度のラグジュアリー品売上高成長率

2017年度の純利益率1

2 0 1 5~2 0 1 7年度のラグジュアリー品売上高のCAGR2

30 0 Chow Sang Sang Holdings International 周生生集团国际有限公司 Limited

香港 Chow Sang Sang 1,863 2,134 3.4% 5.3% -6.8%

31 +2 Max Mara Fashion Group Srl イタリア MaxMara, SportMax, Marina Rinaldi, Max & Co, PennyBlack

1,784 1,784 8.8% 14.2% 6.2%

32 +3 Luk Fook Holdings (International) Limited 六福集团(国际)有限公司

香港 Luk Fook 1,777 1,867 13.8% 9.4% -0.6%

33 -2 OTB SpA イタリア Diesel, Marni, Maison Margiela, Viktor&Rolf 1,713 1,713 -3.7% 0.2% -2.2%

34 -5 Onward Holdings Co., Ltd. 日本 Nijyusanku, Joseph, Jil Sander, gotairiku 1,670 2,181 1.1% 1.9% -0.6%

35 2 Kalyan Jewellers India Pvt. Limited インド Mudhra, Tejasvi, Glo 1,628 e 1,628 e 6.9% n/a -0.3%

36 -2 Salvatore Ferragamo SpA イタリア Salvatore Ferragamo 1,556 1,571 -3.1% 8.2% -1.3%

37 4 Pola Orbis Holdings Inc. 日本 Pola,Jurlique, Three 1,552 2,178 18.7% 11.1% 9.9%

38 0 L'Occitane International SA ルクセンブルク

L’Occitane en Provence, Melvita, erborian, L’Occitane au Brésil

1,541 1,541 -0.3% 7.3% 1.4%

39 -3 Dolce & Gabbana イタリア Dolce&Gabbana 1,515 1,515 -8.1% 4.7% 2.7%

40 3 PC Jeweller Ltd. インド PC Jeweller, AZVA 1,490 1,504 13.4% 5.5% 14.5%

41 1 Valentino SpA イタリア Valentino, REDValentino 1,380 1,380 4.7% 6.0% 8.1%

42 8 Eastern Gold Jade Co., Ltd 中国 Eastern Gold Jade 1,372 1,372 40.7% 2.5% 2.3%

43 1 Ermenegildo Zegna Holditalia SpA イタリア Ermenegildo Zegna, Z Zegna, Agnona 1,369 1,369 6.6% 2.7% -4.5%

44 2 Moncler SpA イタリア Moncler 1,345 1,345 14.7% 20.9% 16.4%

45 0 Patek Philippe SA スイス Patek Philippe 1,239 e 1,239 e 3.8% n/a 1.3%

46 -7 Safilo Group SpA イタリア Safilo, Carrera, Oxydo, Smith ; Licensed eyewear brands

1,180 1,180 -16.4% -24.0% -9.5%

47 2 Joyalukkas India Pvt. Limited インド Zenina, veda, Pride, Eleganza 1,141 e 1,141 e 9.6% 3.2% 12.9%

48 -1 Tod's SpA イタリア Tod’s, Hogan, Fay, Roger Vivier 1,108 1,108 -5.5% 7.1% -3.2%

49 -1 Tory Burch LLC 米国 Tory Burch, Tory Sport 1,050 e 1,050 e 0.0% n/a 0.0%

50 2 SMCP SAS フランス Sandro, Maje, Claudie Pierlot 1,028 1,028 16.0% 0.7% 16.2%

51 0 Audemars Piguet & Cie スイス Audemars Piguet 995 e 995 e 12.0% n/a 9.3%

52 New Revlon, Inc/Elizabeth Arden segment

米国 Elizabeth Arden; Licensed fragrance brands

953 953 ne n/a -0.7%

53 0 Le Petit-Fils de L.-U. Chopard & Cie SA

スイス Chopard 848 e 848 e 9.9% n/a 2.2%

54 1 Ted Baker plc 英国 Ted Baker 769 769 11.4% 8.9% 13.9%

55 -1 Gianni Versace SpA イタリア Versace, Versace Collection, Versus Versace

760 760 -0.1% 2.2% 1.8%

56 3 Graff Diamonds International Limited

英国 Graff 693 693 21.6% 7.5% 4.8%

57 New Samsonite International S.A./ Tumi brand only

米国 Tumi 678 678 ne n/a 11.3%

58 -1 Longchamp SAS フランス Longchamp, Le Pliage 626 e 626 e 0.4% n/a -1.0%

59 -1 Cole Haan LLC 米国 Cole Haan 600 e 600 e 0.0% n/a 1.3%

60 1 Inter Parfums, Inc. 米国 Lanvin, Rochas 591 591 13.5% 9.3% 12.3%

61 7 Furla SpA イタリア Furla 574 574 18.7% 6.8% 21.5%

62 1 Brunello Cucinelli SpA イタリア Brunello Cucinelli 570 570 10.6% 10.4% 10.4%

63 -3 Movado Group, Inc. 米国 Concord, EBEL, Movado, Olivia Burton; Licensed watch brands

568 568 2.8% -2.7% -2.3%

64 -2 Gerhard D. Wempe KG ドイツ Wempe, Wempe Glashütte, By Kim 565 e 565 e 7.7% n/a -2.7%

65 7 Chow Tai Seng Jewellery Co., Ltd. 中国 Chow Tai Seng 563 563 31.1% 15.6% 18.1%

世界のラグジュアリー企業Top 100社

¹ 親会社やグループの収益および純利益にはラグジュアリー品以外の事業の業績が含まれる場合がある

² 年平均成長率(CAGR)e = 推定値 p = 試算

出所:Deloitte Touche Tohmatsu Limited。Global Powers of Luxury Goods 2019。2018年6月までを期末とする会計年度について各社アニュアルレポートに基づく財務内容および業界推計値を分析。

n/a = 該当なしne = 存在せず(合併や売却の結果)

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2 0 1 7年度のラグジュアリー品売上高順位

順位の変動 企業名 本社所在国 対象ラグジュアリーブランド

2 0 1 7年度のラグジュアリー品売上高(100万米ドル)

2017 年度の総収益(100万米ドル)

2 0 1 7年度のラグジュアリー品売上高成長率

2017年度の純利益率1

2 0 1 5~2 0 1 7年度のラグジュアリー品売上高のCAGR2

66 -10 Sanyo Shokai Ltd. 日本 Mackintosh, Paul Stuart 558 558 -7.5% -1.6% -19.9%

67 -3 Zhejiang Ming Jewelry Co., Ltd. 浙江明牌珠宝股份有限公司

中国 MINGR, VI 545 545 10.1% 2.4% -16.1%

68 -1 Marcolin Group イタリア Marcolin; Licensed eyewear brands 529 529 6.2% -3.1% 3.9%

69 2 Tse Sui Luen Jewellery (International) Limited

香港 TSL|謝瑞麟 489 489 11.8% 1.2% 3.8%

70 -1 De Rigo SpA イタリア Police, Lozza, Sting; Licensed eyewear brands

483 483 1.4% -2.4% 1.0%

71 -1 MARC O’POLO AG ドイツ MARC O’POLO 466 e 466 e -4.4% n/a -2.3%

72 11 Canada Goose Holdings Inc. カナダ Canada Goose 461 461 46.4% 16.3% 42.6%

73 New Vera Bradley, Inc. 米国 Vera Bradley 455 455 -6.4% 1.5% -4.9%

74 -1 Breitling SA スイス Breitling 437 e 437 e 2.9% n/a 2.3%

75 -1 Kurt Geiger Limited 英国 Kurt Geiger London, KG Kurt Geiger, Miss KG, Carvela

422 422 4.7% 7.0% 7.4%

76 0 S Tous SL スペイン Tous 415 e 415 e 10.5% n/a 10.9%

77 5 Euroitalia S.r.l. イタリア Reporter, Naj-Oleari Licensed Fragrance brands: Moschino, Versace, Missoni

402 402 n/a -1.5% n/a

78 New Zadig & Voltaire フランス Zadig & Voltaire 394 e 394 e n/a n/a n/a

79 1 Restoque Comércio e Confecções de Roupas S.A.

ブラジル Le Lis Blanc, Dudalina, Bo.Bô, John John 391 391 11.0% 33.7% 2.5%

80 -3 Sociedad Textil Lonia SA スペイン Purificación García; Licensed brand : CH Carolina Herrera

389 389 1.6% 8.9% 0.6%

81 -3 Liu.Jo SpA イタリア Liu.Jo 388 388 8.5% 9.1% 6.1%

82 -1 Aeffe SpA イタリア Moschino, Pollini, Alberta Ferretti, Philosophy

357 357 10.1% 3.6% 7.5%

83 -4 Gefin SpA イタリア Etro 338 338 -2.3% -2.6% -2.7%

84 2 Franck Muller Group スイス Franck Muller 305 e 305 e 13.2% n/a 2.6%

85 -1 Marc Cain Holding GmbH ドイツ Marc Cain 296 308 3.3% 3.1% 1.7%

86 -1 TWINSET—Simona Barbieri SpA イタリア Twin Set, SCEE 287 287 3.7% -5.4% 1.7%

87 2 Tribhovandas Bhimji Zaveri Limited

インド tbz 273 273 3.6% 1.2% 3.2%

88 5 J Barbour & Sons Ltd 英国 Barbour 270 270 9.2% 13.4% 14.3%

89 1 Festina Lotus SA スペイン Festina, Lotus, Candino, Jaguar, Calypso 268 e 268 e 5.3% n/a -2.0%

90 6 Richard Mille SA スイス Richard Mille 264 e 264 e 15.6% n/a 18.5%

91 1 Fashion Box SpA イタリア Replay 262 262 4.4% 0.6% -1.2%

92 7 Falke KGaA ドイツ Falke, Burlington 262 262 0.6% 4.5% 1.1%

93 -5 Charles Tyrwhitt Shirts Limited 英国 Charles Tyrwhitt 250 250 12.2% -2.6% 6.7%

94 New Van de Velde NV ベルギー Marie Jo, PrimaDonna, Andres Sarda, Rigby & Peller

235 242 1.1% 15.8% 0.0%

95 -8 Paul Smith Group Holdings Limited

英国 Paul Smith 234 234 3.5% 1.1% -1.8%

96 New Giuseppe Zanotti SpA (formerly Vicini SpA)

イタリア Guiseppe Zanotti Design, Vicini 232 232 16.4% 8.1% 7.4%

97 -6 K.Mikimoto & Co., Ltd. 日本 Mikimoto 226 226 -10.6% n/a -5.0%

98 0 Mulberry Group plc 英国 Mulberry 225 226 0.9% 2.9% 4.3%

99 1 Acne Studios Holding AB スウェーデン Acne Studios 222 222 9.3% 8.8% 15.6%

100 -5 Trinity Limited 利邦控股有限公司 香港 Cerruti 1881, Kent & Curwen, Gieves & Hawkes

218 218 -4.3% -35.8% -5.7%

世界のラグジュアリー企業Top 100社

¹ 親会社やグループの収益および純利益にはラグジュアリー品以外の事業の業績が含まれる場合がある

² 年平均成長率(CAGR)e = 推定値 p = 試算

出所:Deloitte Touche Tohmatsu Limited。Global Powers of Luxury Goods 2019。2018年6月までを期末とする会計年度について各社アニュアルレポートに基づく財務内容および業界推計値を分析。

n/a = 該当なしne = 存在せず(合併や売却の結果)

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企業数

ラグジュアリー品平均売上高(100万米ドル)

2017年度ラグジュアリー品売上高成長率*

Top 100社のラグジュアリー品売上高に占める割合

Top 100社 100 2,467 10.8% 100%

中国・香港 9 2,194 13.8% 8.0%

フランス 7 8,288 18.7% 23.5%

ドイツ 5 934 4.3% 1.9%

イタリア 24 1,439 2.2% 14.0%

日本 6 1,804 14.1% 4.4%

スペイン 4 813 9.8% 1.3%

スイス 9 3,379 7.7% 12.3%

英国 10 2,082 7.4% 8.4%

米国 14 3,433 9.7% 19.5%

その他 12 1,360 14.2% 6.6%

国別のプロフィール(2017年度)

業績は各国に本社を置くTop 100社のもの* 為替調整後の売上高加重平均出所:Deloitte Touche Tohmatsu Limited。Global Powers of Luxury Goods 2019。2018年6月までを期末とする会計年度について各社アニュアルレポートに基づく財務内容および業界推計値を分析。

ラグジュアリー企業の本拠地は、欧州、米国、およびアジアの主要市場に集中していることから、この地理的分析では個々の国に絞り込み、各企業が本社を置く国ごとに分類している。そのため、ラグジュアリー品売上高の多くを占める国とは必ずしも一致していない。

多くの企業が本社所在国以外からも売上を上げているが、この分析では、各企業の売上高の100%がその企業の本社所在国で得られたものと見なしている。この分析は、デロイトのTop 100社分析の対象企業のみに該当する。

分析の対象は以下の 9カ国である。 • 中国・香港 • フランス • ドイツ • イタリア • 日本 • スペイン • スイス • 米国 • 英国

2017年度はラグジュアリー企業にとって堅調な年となり、すべての国で売上高が前年度から増加した。

2017年度は、ラグジュアリー企業 Top 100社のうち 88社が上述の 9カ国を本拠地とし、Top 100社による世界のラグジュアリー品売上高の 93%強を占めた。ラグジュアリー品売上高の前年度比成長率が最も高かったのはフランス、日本、中国および「その他」の国々で、いずれも Top 100社の平均成長率を上回った。

フランスは、2017年度のラグジュアリー品売上高成長率が18.7%と最も高かったほか、Top 100社のラグジュアリー品売上高全体に占める割合も最も高かった。イタリアはラグジュアリー品売上高成長率が最も低かったが、Top 100社に含まれる企業数は最も多かった。

地域別の動向

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国別業績(2017年度)

業績は各国に本社を置くTop 100社のもの* 為替調整後の売上高加重平均** 売上高加重平均*** 年平均成長率1 純利益率と総資産利益率は2社からのデータに基づく 出所:Deloitte Touche Tohmatsu Limited。Global Powers of Luxury Goods 2019。2018年6月までを期末とする会計年度について各社アニュアルレポートに基づく財務内容および業界推計値を分析。

18.7

.%

13.8

%

5.3%

10.8

%9.

8%7.

6%

4.3%

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9.8% 11

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n/a

7.7%

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7.8%8.

5%

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12.0

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5.9% 7.

4%14

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7.6%

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-0.3

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16.7

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2017年度ラグジュアリー品売上高成長率*

2017年度の純利益率** 2017年度の総資産利益率**

2015~2017年度のラグジュアリー品売上高CAGR*/***

-5%

15%

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中国・香港 スペイン日本イタリア 米国フランスTop 100社 ドイツ 英国スイス1 その他

フランスがラグジュアリー品売上高成長率でトップ;中国は回復;イタリアは依然伸び悩む 中国・香港中国・香港を本拠地とする企業のラグジュアリー品売上高は、3年間のマイナス成長を経て2017年度に13.8%増加し、成長軌道に戻った。その主な要因は、中国の予想を上回る経済成長、中国人民元の安定、金需要の増加50、さらには香港の観光業の好調だった。また、売上の増加傾向には、中国の裕福なミレニアル世代(アッパーおよびアッパーミドルクラスの)51と中国人女性の購買力の向上も寄与した52。

中国と香港を本拠地とするラグジュアリー企業9社のうち、8社が宝飾品企業である。2017年度はこの8社すべてが好調で、売上高が前年度比で伸び、大半で純利益率が改善した。残る1社の紳士服グループTrinityは2017年度も減収が続き、損失が拡大するなど苦戦した。Trinityは2017年11月、中国の繊維メーカーShandong Ruyiに過半数株式を買収されている。

中国・香港企業の業績は、当該企業群のラグジュアリー品売上高の約3分の2を占めるChow Tai Fook JewelleryとLao Feng Xiangに左右される。両社の前年度比成長率は14~15%と好調だった。他のジュエリー企業も、Chow Sang Sangを除く全社が二桁台の成長率を記録した。

最も高い成長となった企業は、40.7%の前年度比成長率を記録したEastern Gold Jadeで、金地金への投資需要の変化と翡翠製品

の販売増が奏功した。また、31.1%成長のChow Tai Sengは、店舗拡大とブランドのオーガニック成長が追い風となった。

このグループの2017年度の純利益率は5.4%と、Top 100社の純利益率を4.4ポイント下回ったものの、前年度からは小幅上昇した。

フランスフランスは、2017年度のラグジュアリー品売上高の前年度比成長率が18.7%と最も高かった。観光客数の増加53と消費の拡大54が奏功した。フランスは世界最大のラグジュアリー企業の母国であり、そのうちTop 11社に含まれるLVMH、Kering、L'Oréal Luxe、Hermèsの4社がそれぞれ2017年度に60億米ドル以上のラグジュアリー品売上高を記録した。その結果フランスに本社を置く7社で、Top 100社全体のラグジュアリー品売上高の最大シェアを占めた(23.5%)。

Kering、LVMH、SMCP SASは、L'Oréal Luxeとともに二桁台の増収を記録し、フランス企業で最も急成長した。Keringのラグジュアリー品売上高が27.5%と大幅に増加したが、Gucci、Yves Saint Laurent、Balenciagaの店舗売上がきわめて好調だったほか、オンライン売上の急拡大(70%超の増加)、新興市場(32.8%増)、成熟市場ともに大幅な増収となったことによる。280億米ドル近いラグジュアリー品売上高を誇る世界最大の個人向けラグジュアリー企業LVMHは、複数地域で本業が伸びたほか、2017年度の連結業績にChristian Dior CoutureとRimowaが加わったことで成長率が17.2%となった。2016年以来、中国の繊維メーカーShandong Ruyiが所有しているSMCPは、ラグジュアリー品売上

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高が16.0%伸びた。傘下のSandro、Maje、Claudie Pierlotの3ブランドはすべて二桁台の成長率を記録した。非公開のファッション企業Zadig & Voltaireは、主要5市場のフランス、米国、英国、スイス、スペインでの好調を原動力に12%の成長率となり、Top 100社に初登場した。

フランス企業のうち4社が2017年度に純利益を公表し、Top 100社の平均を3.7ポイント上回る13.5%の高い純利益率を記録し、2016年度比でも改善した。LVMH、Ker ing、Hermès Internationalは二桁台の純利益率を確保し、特にHermèsは製造現場での生産性の高さと2016年からの為替ヘッジ効果が効いて22.1%を達成した。総資産利益率は8.5%で、Top 100社の総資産利益率を0.9ポイント上回った。

ドイツTop 100社のドイツ企業は2016年度と変わらず、2017年度の成長率は4.3%だった。ドイツのラグジュアリー企業Top 2社のHugo BossとGerhard D. Wempeは、2017年度に成長に転じた。Hugo BossはTop 100社に含まれるドイツ企業のラグジュアリー品売上高合計の約3分の2を占める圧倒的な有力企業である。同社の公表成長率は1%、現地通貨建てでは3%で、中国本土と英国で好業績を上げた。Wempe一族が所有する非上場企業Gerhard D. Wempeは、ドイツで7.7%の最も高い前年度比成長率を記録した。これは主に、同社のラグジュアリー品売上高の84%近くを占める時計の平均価格が上昇したことによる。

2017年度に純利益を公表した5社のうちの3社については、純利益率が7.7%とTop 100社の純利益率9.8%を下回った。

イタリアイタリアのラグジュアリーブランドは、世界中の人々が最も憧れる存在である。強力な「Made in Italy」ブランドは、消費者に優雅さや趣味のよさ、品質、職人の技を連想させる。イタリアはTop 100社に含まれるラグジュアリー企業の数では依然トップの24社で、2016年度から変化はない。イタリア最強の有名ラグジュアリー産業はファッションである。ミラノはしばしば「世界のファッションの都」と呼ばれている。Top 100社に含まれるイタリア企業の3分の2以上が衣料・靴カテゴリーに属しており、世界の高級ファッションにおけるイタリアの傑出した存在感を裏付けている。

イタリアを本拠地とする企業のラグジュアリー品売上高の前年度比成長率は2.2%と、2017年度も低調だった。この水準は分析対象国の中で最も低かったが、前年度の成長率からは1.2ポイント改善した。イタリアの2017年度ラグジュアリー品売上高では、Top 3社のLuxottica、Prada、Giorgio Armaniが半分近くを占めた。15社が増収を確保した一方、9社は前年割れとなった。

Luxotticaは0.8%の成長にとどまった。小売売上高が1.7%増加したものの、対ユーロの米ドル、英国ポンド相場の軟調もあって、卸売売上高の0.6%減で相殺された。Luxotticaは、2017年度にブラジル最大のレンズチェーンの一つOticas Carolの買収を発表したほか、2018年10月にようやくEssilorとの合併完了とEssilorLuxotticaの設立を発表した。PradaとGiorgio Armaniはラグジュアリー品売上高が前年度比でそれぞれ3.6%、7.3%減少した。Pradaは既製服事業の売上高が7%増加したものの、それ以上に革製品と靴のそれぞれ3%、7%の減収が響いた。Giorgio

Armaniの減収は主要3ブランドのGiorgio Armani、Emporio Armani、A/X Armani Exchangeの流通網、店舗、ブランドの合理化に向けた再編によるものだった。

「急成長ラグジュアリー企業20社」に含まれるイタリア企業の数は、2016年度の6社から2017年度はFurlaとMonclerのわずか2社に減少した。Monclerは本業の高成長と単一ブランドを扱う小売店舗網の拡大を背景に、2015~2017年度の平均成長率、ラグジュアリー品売上高成長率、純利益率がすべて二桁台となり、再びオールラウンドの好業績イタリア企業の面目を保った。Furlaは18.7%と最も高い売上高成長率を記録した。店舗網での成長に加えアジアでの2016年度比50%の増収が効いた。

イタリア企業の純利益率は7.2%で2016年度から0.1ポイント改善したものの、Top 100社の平均を下回った。Luxottica、Giorgio Armani、Max Mara Fashion、Moncler、Brunello Cucinelliの公表純利益率は二桁台となり、特にMonclerは20.9%と最も高かった。

日本日本に本社を置く6社は、2017年度のラグジュアリー品売上高成長率が3番目に高い14.1%だった。これはTop 100社を3.3ポイント上回る。日本のラグジュアリー市場は堅調に成長を続けている。その背景には、消費市場全体の成長に加え、ラグジュアリー企業がミレニアル世代に代表される新たな顧客層獲得のため、顧客接点強化、パーソナライゼーション、デジタル技術活用などの取り組みを進めたことにある。一方で所得格差の拡大による消費者層の二極化や、少子高齢化への対応が課題となっており、一定の消費余力のあるシニア層への訴求も必要となるだろう。

Top 3社の資生堂プレステージブランド・フレグランス事業、コーセー、オンワードホールディングスで、日本企業のラグジュアリー品売上高の67%を占めた。

前年度比成長率が二桁台の急成長企業はすべて、拡大している高級美容製品セクターに属している。31.1%の資生堂プレステージブランド・フレグランス事業、18.7%のポーラ・オルビス、初登場した15.4%のコーセーがそうである。資生堂は2016年のLaura Mercierの買収、EMEAにおけるDolce & Gabbanaのライセンス供与、他の新たに買収したブランドが成長に寄与したが、ポーラ・オルビスの成長は中国で新コンセプトの店舗をオープンさせたことが結実した。コーセーは最高級化粧品ブランドのDecorté、雪肌精、Addiction、Jill Stuartへの集中化を進めたことが高成長につながった。ミキモトと三陽商会はともに2017年度は減収となった。

利益を公表している4社はすべて、2017年度の前年度比業績が改善した。コーセーとポーラ・オルビスはともに純利益率が11.1%に改善し、日本企業の中で最も高い水準となった。三陽商会の損失は縮小し、純利益率はマイナス1.6%だった。在庫圧縮、サプライチェーンの最適化、品揃えの改善、eコマースへの注力を含む再編計画が奏功した。日本企業の2017年度の平均純利益率は7.8%だった。

スペインスペインに本社を置くラグジュアリー企業4社の顔ぶれは前年度から変わらず、ラグジュアリー品売上高成長率はTop 100社をやや下

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回る9.8%だった。これらの非公開会社は、ラグジュアリー品の平均売上高がわずか8億1,300万米ドルと、分析対象国の中で最も小さい。

スペイン最大手のPuigは、同国のラグジュアリー品売上高の67%を占めており、全体の業績動向を左右する。この美容企業の2017年度のラグジュアリー品売上高成長率は8.1%、純利益率は11.8%で、主要市場のスペイン、米国、フランス、英国、さらに新興市場での高成長が寄与した。4社のすべてが増収となり、Textil LoniaとFestina Lotusは2017年度に成長軌道に戻った。

スイスイタリアといえばファッションであるように、スイスといえば高級時計で認知されている。Top 100社に含まれるスイス企業9社はすべて、プレミアム・ラグジュアリーブランドを擁するジュエリー・時計メーカーである。スイス企業は2017年度に成長に転じ、ラグジュアリー品売上高成長率が2016年度を13ポイント近く上回る7.7%となった。スイス企業の多くが成長軌道に戻った最大の要因は、中国本土での売上高とデジタルプレゼンスの強化である。例えば、Richemontはオンライン小売のYoox Net-a-Porterとwatchfinders.com(中古高級時計専門)の買収を完了した一方、Audemars Piguetは2018年4月、中国のJD.comとの提携によるオンラインブティックを発表した。

Top 3社のRichemont、Swatch、RolexはすべてTop 15社にランクインしており、この3社でスイス企業のラグジュアリー品売上高の86%超を占めている。RichemontとSwatch以外はすべて非公開企業であるため、売上高は推定値である。Richemontは2016年度の減収から2017年度は3.1%の増収に転じた。中国、韓国、香港、マカオを筆頭に、アジア太平洋地域の業績が好調だった。2017年度の同社の純利益率は、提携するマルチブランド小売業者の在庫圧縮に伴う時計の買い戻しに2億4,000万米ドルを投じたため、小幅低下の11.1%だった。Swatchはそれ以上に力強い回復を見せ、アジア太平洋と欧州での高成長を背景に、2017年度の前年度比成長率は16.4ポイント上昇の5.4%となった。収益性も改善し、2017年度の純利益率は9.5%と1.6ポイント上昇した。

スイスに本社を置く他の企業群の推定成長率は、主にRichard Mille、Franck Muller、Audemars Piguetの二桁台の成長率がけん引した。最も業績が好調だったのはRichard Milleで、値上げにより15.6%の成長率を記録し、3年連続で「急成長ラグジュアリー企業20社」にランクインした。

英国英国企業が公表した純利益率は14.2%と、Top 100社の純利益率を4.4ポイント上回り、分析対象国の中で最も高い水準となった。ラグジュアリー品売上高は7.4%増加した。これらの業績のけん引役となったのは、売上高に基づく英国3大企業のChanel(初登場)、Michael Kors(現Capri)、Burberryで、この3社で英国のラグジュアリー品売上高の86.3%を占めた。

英国を本拠地とするChanelは、2018年に初めて財務実績を公表するなり一気に世界のラグジュアリー企業Top 100社の6位に食い込んだ55。高級品の代名詞ともいえるChanelの決算はどの基準でみても好調であり、オールラウンドの好業績企業であることを実証

した。2017年度の年間売上高は96億米ドルを超え、特に好調だったアジア太平洋の16.5%を含め全ての地域で消費者需要が旺盛だったことから、前年度比成長率は11.5%を記録した。純利益率も18.6%と、Top 100社の中で5番目に高かった。Chanelは大規模な構造改革に着手し、全事業と2万人の社員を集約することにより、組織と個別法制を簡素化するための取り組みの一環として、新しい持株会社のChanel Limited(本社ロンドン)を設立した。

Michael Korsの2017年度のラグジュアリー品売上高成長率は5.0%、純利益率は12.5%だった。小売売上高は増加したが、戦略的な在庫圧縮による卸売売上高の減少で相殺された。2017年11月に買収したJimmy Chooも同社の成長に寄与した。Burberry Groupは、2017年度に減収をみた唯一の英国企業である(前年度比1.2%の減少)。これは主に、2017年10月から傘下の美容事業をCotyにライセンス供与する契約を結んだため、卸売売上高が減少したことによる。既存店売上高が3%伸びた一方、純利益率は10.7%と小幅改善した。

これ以外の英国拠点の企業3社は、二桁台の売上高成長率を達成した。Graff Diamondsは、パリ、マカオ、シンガポールでのラグジュアリー小売店舗の拡大により、最も高い21.6%の前年度比成長率を達成した。Charles Tyrwhittの売上高成長率は12.2%で、オンラインと小売販売網の拡大が効いた。Ted Bakerはオンライン売上高の35%増を含め、ラグジュアリー品売上高が前年度比で11.4%増加し、「急成長ラグジュアリー企業20社」内にとどまった。

米国海外事業を展開する米国ラグジュアリー企業の多くは順調に売上を伸ばしたが、北米市場は多くの企業にとって厳しい状況となった。米国を本拠地とする企業のラグジュアリー品売上高成長率は、急成長企業のEstée Lauder、Tapestry、Coty Luxury3社による買収活動もあり、2017年度に9.7%と大幅に加速した。

2017年度は米国拠点のTop 5社、すなわちEstée Lauder、PVH、Ralph Lauren、Tapestry、Tiffany & Co.がTop 100社に含まれる米国企業のラグジュアリー品売上高の77.6%を占めた。Estée Lauderのラグジュアリー品売上高は15.7%増加した。増収要因は有利な為替相場、オンラインと専門マルチチャネルおよびトラベルリテール事業の高成長、さらに2016年末に買収した化粧品ブランドのToo Faced、BECCAの業績連結が寄与したことが大きい。PVHは、高級ブランドのCalvin KleinとTommy Hilfigerの国際事業が伸び、2017年度のラグジュアリー品売上高は10.7%増加した。Ralph Laurenは、ラグジュアリー品売上高が7.1%減少した。主に北米セグメントの減収、販促活動の減少、出荷量の戦略的削減に加え、ブランドの廃止と消費者需要の減退が響いた。

2017年度の「急成長ラグジュアリー企業20社」には4社の米国企業が含まれている。Coty Luxury、Tapestry、Inter Parfums、Tumi(Samsonite傘下)である。Tapestryは2017年7月にKate Spadeを買収したことから、売上高成長率が31%と最も高くなった。Coty Luxuryの25.1%の成長率も主にP&GとBurberry Beauty事業の買収によるものである。Inter Parfumsの13.5%の成長率は主に欧州事業によるもので、北米の売上高は小幅減少した。Tumiは新しい親会社のSamsoniteの投資により、アジア諸国

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における流通業者の直接管理や店舗網の拡大、マーケティング費用の引き上げなどの展開により、史上最高の売上高を記録した。

Vera Bradleyは2017年度のラグジュアリー品売上高が4億5,500万米ドルとなり、今年のTop 100社に登場した。

2017年度に純利益を公表した米国拠点の企業9社のうち7社は黒字で、損失を計上したのはFossilとMovadoのみだった。米国企業の純利益率は5.0%で、Top 100社を4.8ポイント下回った。

その他Top 100社中12社が「その他」に含まれている。うち5社はインドを拠点とし、残る7社はそれぞれオーストリア、デンマーク、ルクセンブルク、カナダ、ブラジル、ベルギー、スウェーデンに本社を置いている。この多様なグループは2017年度のラグジュアリー品売上高成長率が14.2%と、分析対象国の中で2番目に高い成長率を達成した。7社がジュエリー、4社が衣料・靴(初登場したベルギー拠点の高級ランジェリー企業Van de Veldeを含む)の企業で、L’Occitaneが唯一の化粧品・香水企業である。売上高Top 3社のPandora、Swarovski Crystal、Titanは、2017年度の「その他」グループによる売上高の54.8%を占めた。

「急成長ラグジュアリー企業20社」の中の6社は、「その他」グループからランクインしている。アウター専門のCanada Gooseは、すべての販売チャネルにおける本業の成長と店舗網の拡大を主な要因として、2017年度の売上高成長率が46.4%となり、2年連続でTop 100社の急成長企業トップに選ばれた。成長企業のうちの3社は高級ブランドを擁する垂直統合型のインドのジュエリー企業である。Titanは2年連続でジュエリー部門の本業が高成長を遂げ、ラグジュアリー品売上高が23.6%増加した。PC Jewellerの売上高は13.4%増加し、Joyalukkasは9.6%の成長率となった。

デンマークの「アフォーダブルラグジュアリー」のジュエリー企業Pandoraは2017年度、驚異的な増収ペースは再び落ちたものの、依然12.3%の成長率を達成した。スウェーデンのファッション企業Acne Studiosも2017年度の成長率が大幅に減速し、12.9ポイント低下の9.3%となった。

このグループの中で最終利益を開示している10社はすべて黒字を計上した。2017年度に最も高い純利益率を記録したのはブラジルのRestoqueで33.7%、次いでオールラウンドの好業績企業Pandoraと、Canada Gooseがそれぞれ25.3%、16.3%だった。グループ全体の平均純利益率はTop 100社平均を3.4ポイント上回る13.2%だった。「その他」グループの企業群は、総資産利益率が16.7%とこの分析では最も高かった。

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商品カテゴリー別の動向

企業数

ラグジュアリー品平均売上高(100万米ドル)

2017年度ラグジュアリー品売上高成長率*

Top 100社のラグジュアリー品売上高に占める割合

Top 100社 100 2,467 10.8% 100.0%

衣料・靴 38 1,112 3.2% 17.1%

バッグ・アクセサリー 9 1,674 1.5% 6.1%

化粧品・香水 11 3,680 16.1% 16.4%

ジュエリー・時計 32 2,281 9.7% 29.6%

複合ラグジュアリー 10 7,586 15.9% 30.8%

リーのランキングともに最下位を争っており、カテゴリー別売上高のシェアは1.0%にとどまった。

衣料・靴カテゴリーの2017年度の売上高成長率は2016年度の0.2%に対して3.2%だった。Canada Goose(46.4%)、SMCP(16%)、Moncler(14.7%)は2017年度に前年度比で二桁台の売上高成長率を記録し、当カテゴリーでは数少ない急成長企業となった。Canada Gooseの成長は一連の事業拡大戦略の成果である。これには商品価格の最適化、シカゴ、ロンドン、ボストン、カルガリーにおける新規小売店舗の出店、アイルランド、スウェーデン、ドイツ、中国などの新市場におけるeコマースの拡大、事業エリア拡大への注力、日本、韓国などアジア太平洋市場の高成長が含まれている。SMCPの成長率が16.0%と堅調で、主に傘下のSandro、

「世界のラグジュアリー企業ランキング」では、地域別の業績に加え、ラグジュアリー商品のカテゴリー別の業績についても分析を行った。カテゴリー別分析の対象は以下の 5つである。

• 衣料・靴 • バッグ・アクセサリー • 化粧品・香水 • ジュエリー・時計 • 複合ラグジュアリー

衣料・靴カテゴリーが企業数でトップ;化粧品・香水がラグジュアリー品売上高成長率でトップ

衣料・靴このカテゴリーに属するラグジュアリー企業数が最も多く、2017年度は前年度と同じ38社だった。Top 100社のラグジュアリー品売上高に占める割合は、2016年度の19.5%に対して17.1%と3番目に大きかった。しかし1社当たりの平均売上高は11億米ドルで、分析対象の商品カテゴリーの中では最下位となった。PVHは、Top 10社にランクインしている唯一の衣料・靴企業で、このカテゴリーの2017年度売上高合計の17%強を占めた。PVHに加え、Ralph Lauren、Hugo Boss、Giorgio Armaniで衣料・靴カテゴリーの売上高の45%超を占めた。Acne StudiosとTrinityは、Top 100社、当カテゴ

商品カテゴリーのプロフィール(2017年度)

* 為替調整後の売上高加重平均

出所:Deloitte Touche Tohmatsu Limited。Global Powers of Luxury Goods 2019。2018年6月までを期末とする会計年度について各社アニュアルレポートに基づく財務内容および業界推計値を分析。

注:商品カテゴリーの企業数が前年度から変化した場合、分類を見直した可能性があり、必ずしも初めてのランクインとはいえない。2016年度は、Richemontと Tod’s SpAが複合ラグジュアリーに分類されていたが、2017年度はそれぞれジュエリー・時計、衣料・靴に区分された。

特定の商品カテゴリーでラグジュアリー品売上高の大部分を構成している企業は、当該商品カテゴリーの企業として分類している。また、売上高の相当割合を複数のラグジュアリー商品カテゴリーで構成している企業は、複合ラグジュアリー企業に分類している。なお、当分析は本調査におけるTop 100社を対象としている。

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商品カテゴリー別業績(2017年度)

* 為替調整後の売上高加重平均** 売上高加重平均*** 年平均成長率出所:Deloitte Touche Tohmatsu Limited。Global Powers of Luxury Goods 2019。2018年6月までを期末とする会計年度について各社アニュアルレポートに基づく財務内容および業界推計値を分析。

20%

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0%

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5%

2017年度ラグジュアリー品売上高成長率*

2017年度の純利益率 2015~2017年度のラグジュアリー品売上高CAGR*/***

2017年度の総資産利益率**

衣料・靴Top 100社 バッグ・アクセサリー

ジュエリー・時計 複合ラグジュアリー化粧品・香水

3.2%

10.8

%

1.5%

16.1

%

9.7%

15.9

%

5.1%

7.6%

6.2%

9.0%

6.0%

9.4%

6.1%

9.8%

6.6%

8.9%

7.7%

13.3

%

1.2%

5.3%

2.0%

12.7

%

1.7%

9.1%

Maje、Claudie Pierlotの3ブランド全ての二桁台の成長に加え、中国、台湾での新店舗開設によるアジア太平洋地域の40.0%に及ぶ飛躍的な売上拡大、イタリアとドイツでの継続的な店舗網拡充による欧州と中東の伸長が寄与している。当カテゴリーで他に二桁台の成長率を記録したのは、Moncler、Charles Tyrwhitt Shirts、Ted Baker、Restoque Comércio e Confecções de Roupa、PVH、Brunello Cucinelli、Aeffeだった。

対照的に業績不振の企業に目を向けると、2017年度は10社の衣料・靴企業が売上を減少させた。Dolce & Gabbana、三陽商会、Giorgio Armaniはそれぞれ8.1%、7.5%、7.3%と最も大幅に落ち込んだ。Dolce & Gabbanaの前年割れは卸売事業の売上低下と欧州地域の業績不振が響いた。一方、三陽商会は引き続き「Sanyo Innovation Plan 2017」を進めており、289の百貨店不採算店舗の閉鎖とCotoo、Ilfaroを含むいくつかのブランドの撤退が実施された。同様にGiorgio Armaniでは事業プロセスを合理化し、ラグジュアリー品を傘下のGiorgio Armani、Emporio Armani、A/X Armani Exchangeの3ブランドに統合し、より減収となった。またRalph Lauren、Tod’s、MARC O’POLO、Trinityなど他の7社も2016~2017年度にかけて売上高が減少した。

衣料・靴カテゴリーの2017年度の純利益率は6.1%で、ラグジュアリー市場の回復力を背景に2016年度から1.8ポイント改善した。当カテゴリーではイタリア企業16社の存在感が際立ったものの、Top 2社は米国のPVHとRalph Laurenだった。また赤字企業より黒字企業のほうが多く、38社のうち32社は2017年度にプラスの純利益率を計上した。当カテゴリーで最も高い純利益率を公表したのはRestoque Comércio e Confecções de Roupaの33.7%だった。この高業績の主な原動力は、効率性改善と商品の品質向上に向けた2017年の再編戦略の実施により平均商品価格が17.3%上昇した結果、主要ブランドのLe Lis Blanc、Dudalina、John Johnが二桁台の成長となったことである。当カテゴリーの2017年度の総資産利益率は平均5.1%と、2016年度の3.7%から上昇した。また為替調整後の売上高加重平均ベースのCAGRは1.2%と、商品カテゴリーの中でも最も低く、2014~2016年度の2.3%から低下した。

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バッグ・アクセサリーバッグ・アクセサリーに属する企業数は2017年度も最も少なかった。9社のうち7社が欧州、残る2社が米国の企業だった。企業数は2016年度と同じだったが、ラグジュアリー品売上高の平均規模は2016年度の17億3,000万米ドルから減少して16億7,000万米ドルとなった。2017年度のTop 100社のラグジュアリー品売上高に占める当カテゴリーの割合も前年度から1.1ポイント低下し、6.1%と引き続き最低だった。Top 10社の5位にランクインしているLuxotticaが当カテゴリーの売上高全体の68.5%を占めた。

当カテゴリーのラグジュアリー品売上高成長率は為替調整後の売上高加重平均ベースで1.5%と、前年度から1.9ポイント上昇した。イタリアのバッグメーカーFurlaは2017年度に前年度比18.7%の二桁成長を記録し、急成長ラグジュアリー企業20社の3位に食い込んだ。また同社は、50%以上の成長となったアジア太平洋地域を始め、すべての市場で既存店売上高が堅調で、2017年度に5億米ドルの大台を超えた。オーストラリア、ポルトガルなどでの店舗網拡大も高成長に寄与した。他にもMarcolin、De Rigoは、ラグジュアリー品売上高成長率がそれぞれ6.2%、1.4%と一桁台であった。De Rigoの売上増は本業の成長と流通網の拡大によるが、それでも2.4%の損失を出している。Marcolinは欧州の売上高が5.0%増の810万米ドルに、新興市場の売上高はさらに増加して1,920万米ドルになった。それ以外のLongchamp、Luxottica、Mulberryは、2017年度の前年度比のラグジュアリー品売上高成長率が1.0%を割り込んだ。Luxottica Groupは成長率が鈍化したものの、ラグジュアリー品売上高に基づくTop 10社の5位に踏みとどまった。Top 10社に入った唯一のバッグ・アクセサリー企業である。

業績不振が目立ったのはSafiloとVera Bradleyで、それぞれ2017年度の前年度比売上高が16.4%減、6.4%減と最下位を争った。SafiloはGucciのライセンス契約を供給契約に切り替えたことに起因する欧州とアジア太平洋地域での減収、およびPaduaの流通センターで販売管理システムの構築が進まず、グループ業務に支障が出たことが響いた。一方Vera Bradleyのラグジュアリー品売上高の減少は、主に「Vision 20/20」プログラムにおける再編において、不採算5店舗とアウトレットストア1店舗を閉鎖したことによる。

2017年度の当カテゴリーの純利益率は6.6%と、2016年度から0.3ポイント低下した。最終利益を公表している7社のうち、4社が純利益を計上した。しかし、振るわなかったSafilo、De Rigo、Marcolinなどの企業がカテゴリー全体の純利益率を引き下げた。当カテゴリーの2017年度の総資産利益率は6.2%で、前年度の6.4%から0.2ポイントの小幅低下となった。また2015~2017年度のCAGRも、2014~2016年度の8.4%から6.4ポイント低下の2.0%となった。

化粧品・香水化粧品・香水は、2017年度に為替調整後の売上高加重平均ベースでTop 100社のラグジュアリー品売上高の16.4%を占め、前年度と同じ第4位のカテゴリーとなった。当カテゴリーの企業の平均売上高は36億8,000万米ドルで、2016年度の31億米ドルから増加した。企業数は前年度と同じだった。Estée LauderとL'Oréal LuxeがTop 10社リストの中でそれぞれ2位と7位にランクインしており、2017年度の当カテゴリーの売上高の57%超を占めている。一方RevlonのElizabeth Arden、Inter Parfums、Euroitaliaは、売上高が10億米ドル未満と最も貢献度が低く、2017年度の当カテゴリーのラグジュアリー品売上高に占める割合も5.0%未満だった。

2017年度のラグジュアリー品売上高の前年度比成長率は16.1%と、化粧品・香水は全カテゴリーの中で最も高い伸びを示した。これは当カテゴリーに含まれる11社のうち7社の成長率が前年度比二桁台となったことが大きい。中でも20%以上の伸びとなったのが、資生堂プレステージブランド・フレグランス事業とCoty Luxuryである。特に前者は、Laura Mercierなど新たに買収したブランドの売上好調やElixir Superieurなどの新ブランドの発売により、2017年度のラグジュアリー品売上高が前年度比31.1%増加した。またこの増収には、EMEAにおけるDolce & Gabbanaフレグランス事業のライセンス取得と、特に中国人消費者向けの資生堂、Clé de Peau Beauté、IPSAブランドの販売を強化した会社の方針も寄与した。

同じくCoty Luxuryは、事業統合計画を通じて25.1%の売上高成長率を叩き出した。同社は計画に基づきCerrutiとChopardのブランドを売却した一方、P&G Beauty Businessの買収と併せてBurberry Beautyの高級香水、化粧品、スキンケア事業を取得し、Tiffany & Co.、Gucci Bloom、Calvin Kleinの「Obsessed」などの新製品を発売した。さらに中国と中東諸国でのラグジュアリー品売上高の好調が高成長に寄与した。この他に2017年度に二桁台の成長率を公表した企業5社は、ポーラ・オルビス、The Estée Lauder、コーセー、Inter Parfums、L'Oréal Luxeである。前年度比で成長率が一桁台にとどまったのはPuigだけだった。

L’Occitaneはルクセンブルクに本社を置く化粧品・香水企業で、2017年度に当カテゴリーで唯一業績が振るわず、ラグジュアリー品売上高は前年度比0.3%減の15億4,000万米ドルだった。原因は主に、日本、台湾、英国、ルクセンブルク市場のラグジュアリー品売上高の減少である。中国やブラジルなどでは全般に高成長となったものの、不利な為替相場の影響を受けた海外事業、台湾などでの店舗閉鎖によって増収が相殺された。

最終損益を公表した7社のうち6社が黒字を計上した一方、Euroitaliaは2017年度に損失を計上し、純利益率がマイナス1.5%となった。その結果、当カテゴリー全体の純利益率は8.9%と全カテゴリーで3番となり、2016年度からは0.7ポイント低下した。当カテゴリーの2017年度の総資産利益率は、2016年度から1.1ポイント低下して9.0%だった。2015~2017年度CAGRは、為替調整後の売上高加重平均ベースで12.7%と全カテゴリー中最も高く、2014~2016年度から5.3ポイント上昇した。

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ジュエリー・時計ジュエリー・時計カテゴリーに含まれる企業32社のラグジュアリー品売上高の平均規模は、2017年度は22億8,000万米ドルだった。当カテゴリーの売上高は前年度の4.0%減から好転し、9.7%のプラス成長となった。これにより2017年度のTop 100社のラグジュアリー品売上高に占めるジュエリー・時計カテゴリーのシェアは29.6%に拡大し、全体に占める割合は2位を維持した。当カテゴリーの上位を占める企業(2017年度の売上高構成比50%超)は、Rolex、Lao Feng Xiangに加え、Richemont、Swatch、Chow Tai Fook(ラグジュアリー品売上高Top 10社にもランクイン)だった。

ラグジュアリー品売上高の前年度比成長率が高かった企業のうち、15社が二桁台、15社が一桁台の成長率を記録した。中でも中国を拠点とする2社が最も大幅な成長となった。まずEastern Gold Jadeは、主に国内の最高級品消費の復活と二級都市、三級都市の消費者需要の台頭により、前年度比40.7%の最も高い成長を記録した。また不動産・証券市場などの金融市場の変動により、金現物投資商品の需要が増加したことも奏功した。急成長企業2位のChow Tai Seng Jewelleryは、2017年度のラグジュアリー品売上高が前年度比で31.1%増加した。532カ所の新店舗開設、27カ所の新規自動店舗の増収に加え、Tmall.com(中国最大のeコマース小売企業)との協業により、eコマース売上高が28.2%伸長したことなどが効いた。他にもTitan、Graff Diamonds、Richard Milleなどが二桁台の成長率となり、Chopard、Joyalukkas、Gerhard D. Wempeは2017年度に成長率が一桁台となった数少ない企業であった。

当カテゴリーの中で2017年度の業績が低迷したのは、ミキモトとFossilの2社だけである。ミキモトは、ラグジュアリー品売上高が前年度比10.6%減少した。一方Fossilは、14ブランドで新製品のハイブリッドおよびディスプレイスマートウォッチを発売したほか、Michael KorsとArmani watchesの業績が好調だったにもかかわらず、従来型時計の減収と日本市場などの売上減少が響いて、ラグジュアリー品売上高は8.4%低下した。

ジュエリー・時計カテゴリーの2017年度の純利益率は7.7%と、2016年度から0.1ポイント低下した。ラグジュアリー品事業の最終損益を開示している19社のうち17社は黒字を計上した。特にPandora、Chow Tai Seng、Richemontは高い二桁台の純利益率となった。対照的にMovadoとFossilは損失を計上し、それぞれ純利益率がマイナス2.7%、マイナス17.0%と最低だった。当カテゴリーの2017年度の総資産利益率は前年度を1.7ポイント下回る6.0%だった一方、2015~2017年度の為替調整後の売上高加重平均CAGRも1.7%と、他のカテゴリーに比べて低迷した。ただ、当カテゴリーのCAGRは2014~2016年度のマイナス1.1%からは改善した。

複合ラグジュアリー複合ラグジュアリー企業10社は、2017年度のラグジュアリー品売上高の平均規模が75億9,000万米ドルと全商品カテゴリー中最も大きく、Top 100社の平均売上高24億7,000万米ドルを上回っている。さらにTop 100社のラグジュアリー品売上高に占める当カテゴリーの割合も30.7%と最大である。Top 10社にランクインしたLVMH、Kering、Chanelの3社は、2017年度の当カテゴリーのラグジュアリー品売上高に占める割合が65%以上と、最も大きなシェアを占めた。複合ラグジュアリー企業群の主役は欧州の多国籍企業で、2社がイタリア(Prada、Salvatore Ferragamo)、3社がフランス(LVMH、Kering、Hermès)、3社が英国(Chanel、Michael Kors(現Capri)、Burberry)を本拠地としており、2社が米国(Cole Haan、Tapestry(旧Coach))を拠点としている。

2017年度のラグジュアリー品売上高の前年度比成長率は15.9%と、化粧品・香水に次ぐ第2位だった。この急成長に寄与した6社のうち、Tapestry、Kering、LVMH、Chanelの4社が二桁台の成長率、HermèsとMichael Kors(現Capri)が一桁台の成長率を記録した。このうち最も高い31.0%の成長率となったTapestryは、主に2017年7月のKate Spadeの買収により、北米で180店舗、海外で95店舗が加わったことが奏功した。また同社は、今年度下半期に中国北部でStuart Weitzmanの流通業者の資産を取得したほか(海外20店舗の売上高追加)、Kate Spade合弁会社の経営支配権獲得に向けた契約を締結し(50店舗の売上高追加)、オーストラリアとニュージーランドのCoach流通業者の資産を取得した(海外21店舗の追加)。27.5%の成長率を記録したKeringは、主に傘下のGucci、Yves Saint Laurent、Balenciagaのブランドの売上好調、RichemontとのMaison Cartierメガネコレクションに関する合弁契約、eコマース売上高の高い伸長、アジア太平洋地域の堅調な業績が寄与した。

一方、イタリアのファッション企業、PradaとSalvatore Ferragamo、英国のラグジュアリー大手のBurberryは、ラグジュアリー品売上高がそれぞれ3.6%、3.1%、1.2%減少した。Prada はグループ内の靴事業の再編、バッグを含むレザー製品事業の減収、アジア太平洋を除く地域における低迷が響いた。Salvatore Ferragamoの業績不振は、主に卸売チャネルの減収、韓国マクロ経済状況の悪影響、ユーロ高の逆風、日本における流通業務の再編に起因する。Burberryのラグジュアリー品売上高は主に、2017年度に美容事業をCotyに売却したことが影響した。

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財務実績で最終損益を公表した9社はすべて黒字を計上し、当カテゴリーの2017年度の純利益率は13.3%となった。この水準はTop 100社を3.5ポイント上回り、前年度から1.9ポイント上昇した。また当カテゴリーの総資産利益率は9.4%、2015~2017年度のCAGR実績は9.1%と、ともにTop 100社の2017年度実績を上回った。

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2017年度ラグジュアリー品売上高順位 企業名 本社所在国 商品カテゴリー

2017年度のラグジュアリー品売上高(100万米ドル)

2 0 1 7年度のラグジュアリー品売上高成長率

6 Chanel Limited 英国 複合ラグジュアリー 9,623 11.5%

29 Kosé Corporation 日本 化粧品・香水 2,071 e 15.4%

52 Revlon, Inc/Elizabeth Arden segment 米国 化粧品・香水 953 ne57 Samsonite International S.A./Tumi brand 米国 バッグ・アクセサリー 678 ne

73 Vera Bradley, Inc. 米国 バッグ・アクセサリー 455 -6.4%

78 Zadig & Voltaire フランス 衣料・靴 394 e n/a

94 Van de Velde NV ベルギー 衣料・靴 235 1.1%

96 Giuseppe Zanotti SpA (formerly Vicini SpA) イタリア 衣料・靴 232 16.4%

太字の企業は、売上高成長率(米ドル建て)または新会社の設立によって新たにランクインしたか、過去のレポートでTop 100社にランクインしたことがある企業。その他の企業はデータの改善によってTop 100社に入った企業。e = 推定値 n/a = 該当なし ne = 存在せず(合併や売却の結果)出所:Deloitte Touche Tohmatsu Limited。Global Powers of Luxury Goods 2019。2018年6月までを期末とする会計年度について各社アニュアルレポートに基づく財務内容および業界推計値を分析。

新たにランクインした企業(2017年度)

2017年度のTop 100社に新たにランクインした企業は 8社である。3社が衣料・靴、2社が化粧品・香水、2社がバッグ・アクセサリー、1社が複合ラグジュアリーの商品カテゴリーに属している。

また、3 社は過去に「世界のラグジュアリー企業ランキング Top 100社」にランクインしたことのある復活組である。Elizabeth Ardenと Tumiは、それぞれ年度半ばに Revlon、Samsoniteに買収されたためデータ収集ができず、2016年度のランキングから除外されていた。両社の親会社はラグジュアリー品を主力事業としていないが、2017年度にこれらの買収ブランド/事業セグメントの売上高を公表したため返り咲いた。イタリアの高級靴専門 Giuseppe Zanottiは、1年置いてTop 100社に再登場した。

残る 5社の新しい顔ぶれは、データの公表範囲の拡大や、より多くのデータが入手可能となったためランクインした。その代表例が Top 10社の 6位に初登場したラグジュアリーの代名詞、Chanelである。非上場企業の Chanelは 2018年に初めて財務実績を公表した。Chanelは英国を本拠地とし、1位のLVMHの Louis Vuitton、3位の Keringの Gucciの間に位置する世界第 2位のラグジュアリーブランドとされ、個人向けラグジュアリー品 4カテゴリーのすべてを手掛けている 55。

新たにランクインした企業で 2番目に売上高が大きいのは、29位に入ったコーセーである。日本の資生堂と同様、コーセーは拡大する高級美容市場を主戦場としている。同社の売上高の 4分の 3は国内市場だが、2014年に天然由来成分による製品に特化したニューヨークのカラー化粧品・スキンケアブランドTarteを買収して以来、北米でも事業を展開している。コーセーは世界的な持続的成長のけん引役として、最高級化粧品ブランドの Decorté、雪肌精、Addiction、Jill Stuartに特に力を入れている。残る初登場の 3社は、米国のバッグ企業の Vera Bradley、フランスの非公開ファッション企業 Zadig & Voltaire(フランスに次ぐ第 2の市場は米国)、ベルギーを本拠地とし Rigby & Peller、Marie Joなどのブランドを所有する高級ランジェリー専門のVan de Veldeである。

新たにランクインした企業

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急成長ラグジュアリー企業20社

Canada Gooseが成長率トップ;衣料・靴カテゴリーが優位を失う急成長ラグジュアリー企業20社の順位は、2年間のラグジュアリー品売上高の年平均成長率(CAGR)によって決まる。今年の順位はTop 100社の2015~2017年度 CAGRに基づいている。

2015~2017年度、急成長企業 20社のラグジュアリー品売上高の年平均成長率は、Top 100社の 5.3%に対して 18.4%となり、前年度から 3.3ポイント上昇した。2017年度は前年度比成長率も加速し、急成長企業 20社の成長率(為替調整後の売上高加重平均ベース)は 24.4%と、2016年度の前年度比成長率から13.9ポイント上昇した。今年の急成長企業20社ランキングのうち12社は、2016年度も登場しており(太字の企業)、継続的に高成長を記録している。

2017年度の急成長企業 20社のTop 3社ある Canada Goose、Coty Luxury、Furlaは、2016年度のリストにも登場していた。Canada Gooseは 2015~2017年度 CAGRが 42.6%と昨年に続いてトップの座を維持したほか、Top 100社の前年度比成長率ランキングでも 46.4%と首位だった。同社の売上急増は、価格の最適化と事業エリア拡大戦略、小売新店舗の開設、アイルランド、スウェーデンなどの新市場における eコマースを通じた堅調な売上実績によるものである。米国に本社を置くCoty Luxuryは 2015~2017年度の CAGRが 32.2%となり、順位を大きく上げて 2位に食い込んだ。背景には Procter & Gamble、Burberry美容事業を含む複数の買収効果がある。Furlaは既存店売上高の持続的高成長と店舗拡大が奏功し、3番目に高い 21.5%の CAGRを記録した。

C A G R順位

Top 100社順位 企業名 本社所在国

2017年度のラグジュアリー品売上高(100万米ドル)

2015~2017年度のラグジュアリー品売上高CAGR2

2017年度のラグジュアリー品売上高成長率

2017年度の純利益率1

1 72 Canada Goose Holdings Inc. カナダ 461 42.6% 46.4% 16.3%

2 22 Coty Luxury 米国 3,211 32.2% 25.1% n/a

3 61 Furla SpA イタリア 574 21.5% 18.7% 6.8%

4 27 Titan Company Limited インド 2,449 19.7% 23.6% 6.8%

5 16 Shiseido Prestige & Fragrance 日本 4,748 e 19.3% 31.1% n/a

6 90 Richard Mille SA スイス 264 e 18.5% 15.6% n/a

7 65 Chow Tai Seng Jewellery Co., Ltd. 中国 563 18.1% 31.1% 15.6%

8 4 Kering SA フランス 12,168 17.2% 27.5% 12.1%

9 20 Pandora A/S デンマーク 3,452 16.7% 12.3% 25.3%

10 44 Moncler SpA イタリア 1,345 16.4% 14.7% 20.9%

11 50 SMCP SAS フランス 1,028 16.2% 16.0% 0.7%

12 99 Acne Studios Holding AB スウェーデン 222 15.6% 9.3% 8.8%

13 40 PC Jeweller Ltd. インド 1,490 14.5% 13.4% 5.5%

14 13 Tapestry, Inc. (formerly Coach, Inc.) 米国 5,880 14.4% 31.0% 6.8%

15 88 J Barbour & Sons Ltd 英国 270 14.3% 9.2% 13.4%

16 54 Ted Baker plc 英国 769 13.9% 11.4% 8.9%

17 29 Kosé Corporation 日本 2,071 e 12.9% 15.4% 11.1%

18 47 Joyalukkas India Pvt. Limited インド 1,141 e 12.9% 9.6% 3.2%

19 60 Inter Parfums, Inc. 米国 591 12.3% 13.5% 9.3%

20 57 Samsonite International S.A./Tumi brand only 米国 678 11.3% ne n/a

急成長ラグジュアリー企業20社*/** 43,375 18.4% 24.4% 11.4%

Top 100社*/** 246,664 5.3% 10.8% 9.8%

急成長ラグジュアリー企業20社(2015~2017年度CAGR2)

太字の企業は、2014~2016年度CAGRに基づく2016年度の急成長ラグジュアリー企業20社にもランクインしている。

1 連結売上高および純利益に基づく純利益率² 年平均成長率(CAGR)e = 推定値 p=試算 n/a = 該当なし ne = 存在せず*売上高成長率は為替調整後の売上高加重平均**純利益率は売上高加重平均出所:Deloitte Touche Tohmatsu Limited。Global Powers of Luxury Goods 2019。2018年6月までを期末とする会計年度について各社アニュアルレポートに基づく財務内容および業界推計値を分析。

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2017年度の急成長ラグジュアリー企業 20社には、8社が新たにランクインした。Titan、資生堂プレステージブランド・フレグランス事業、Chow Tai Seng、Tapestry、J Barbour & Sons、コーセー、Inter Parfums、それにSamsoniteのTumiブランドである。インドのジュエリー・時計メーカーのTitanは新店舗開設、新ブランド発売、ウェブサイトの Caratlane.com経由の eコマースの堅調を背景に、小売事業の販売実績が好調だった。

日本に本社を置く資生堂プレステージブランド・フレグランス事業の拡大は、主に新たに買収したブランドの良好な販売実績、新ブランドの発売、EMEAにおけるDolce & Gabbana香水事業とのライセンス契約、さらには 2016年の Laura Mercierの買収効果の持続によるものだった。Chow Tai Seng Jewelleryの成長は、主に新店舗の開設、eコマースの拡大が寄与した。Tapestryは CAGR14.4%を記録し、急成長企業 20社の 14位にランクインした。この高成長の原動力は Kate Spadeの買収のほか、カナダ、中国北部、オーストラリア、ニュージーランドで Stuart WeitzmanとCoachの流通業者の資産を取得したことだった。J Barbour & Sonsは厳しい市場環境にもかかわらず、大半の主要市場で傘下のブランドが強く、14.3%の CAGRを記録した。日本の高級美容会社のコーセーは、主に高級スキンケア、メークアップ・ブランドの Cosme Decorteと Albionの高成長、および傘下の米国企業 Tarteのリアル店舗とeコマースの継続的な急成長を背景に、12.9%の CAGRとなった。

Inter ParfumsのCAGRは12.3%で、2017年度に19位に入った。新発売の Coachの男性向け香水ブランドが大ヒットしたほか、特に欧州で Jimmy Choo、Rochasなど他のライセンスブランドの好業績が寄与した。急成長企業 20社の最後尾は、2015~2017年度の CAGRが 11.3%となった Tumiブランドである。新しい親会社の Samsoniteがこのブランドへの投資を続けており、新小売店舗の開設に加え、韓国、中国、香港、インドネシア、タイで小売、卸売事業の直接支配権を得たことが大きかった。

注目点はこれらの急成長企業が、平均より高い収益性も確保したことである。2017年度の急成長ラグジュアリー企業 20社のうち、最終損益を公表した16社はすべて黒字を計上した。純利益率の平均は 11.4%と Top 100社の 9.8%を上回り、前年度と同様であった。急成長企業 20社のラグジュアリー品売上高平均は 21億6,900万米ドルで、前年度比 7.7%増加したが、Top 100社の平均売上高をやや下回った。急成長企業 20社のうちの11社は 10億米ドル超の売上高を記録した。

2017年度の急成長ラグジュアリー企業 20社では、4 社が米国に、3社がインドに本社を置いていた。これは、イタリアを本拠地とする企業が最も多かった過去 2年度のリストとは異なる。残る13社は、イタリア、日本、フランス、英国拠点の企業が 2社ずつ、カナダ、スイス、中国、デンマーク、スウェーデンが 1社ずつで、すべての地域に広がっている。

急成長企業 20社における企業数で、衣料・靴カテゴリーが減少した。2015年度、2016年度はランキングに10社含まれていたが、2017年度はわずか 6社に減った。ジュエリー・時計カテゴリーも6社だが、前年度から1社増加した。最も増えたのは、企業数を4 社に倍増させた化粧品・香水カテゴリーである。残るバッグ・アクセサリーと複合ラグジュアリーはそれぞれ 2社ずつだった。

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調査手法とデータソース本レポートにおけるラグジュアリー品とは、個人向けのラグジュアリー品であり、デザイナー衣料・靴(高級既製品)、高級バッグ・アクセサリー(眼鏡類を含む)、高級ジュエリー・時計、高級化粧品・香水を総称したものである。本レポートの対象に含まれないラグジュアリー品のカテゴリーは、自動車、旅行・レジャーサービス、ボート・ヨット、美術品・蒐集品、高級ワイン・蒸留酒である。ラグジュアリーブランドの再販業者についても対象外としている。

「世界のラグジュアリー企業ランキング」Top 100社の対象となる企業は、第一に、本レポートが対象とするラグジュアリー商品カテゴリーの定義に従ってラグジュアリー企業とみなされる必要がある。

Top 100社ランキングの対象企業は、伝統的な超高級品から、スーパープレミアムやアスピレーショナルラグジュアリー、さらにはアクセシブルラグジュアリーといった、中所得層向けの普及価格帯でありながら高級店で販売されている比較的新しいラグジュアリー商品カテゴリーまでを含んでおり、それらのカテゴリーで強力な消費者向けブランドをもつ企業である。こうしたラグジュアリー業界における各社の位置付けは、以下のような要因に左右される。

• 価格プレミアム

• 原材料の品質や希少性

• 職人技の質

• 商品の独自性

• サービスとパーソナライゼーション

• 販売場所の質と独自性

ラグジュアリー企業であるかどうかは、その企業が、デザイナー衣料・靴(高級既製品)、バッグ・アクセサリー、高級ジュエリー・時計、高級化粧品・香水という 4つのラグジュアリー品カテゴリーから売上高の過半数(50%以上)を得ているかどうかで判断する。また、これらのカテゴリーは一般に、最終消費者向けに生産され、有名なラグジュアリーブランドとして販売される商品と定義されている。対象企業には、ラグジュアリー事業の売上高が圧倒的に大きい企業(L'Oréal Luxeなど)も含まれている。財務情報を開示していない企業についてはランキングの対象外としている。

Top 100社は、ラグジュアリー品の販売を主力事業とする企業を対象に、2017年度(2018年 6月 30日までの 12カ月間内に期末を迎える会計年度と定義)のラグジュアリー品の連結売上高に基づいて順位を決めたものである。

Top 100社の作成に当たっては複数のデータソースを使用した。財務その他の企業情報の主な情報源は、アニュアルレポートや

SEC提出書類のほか、会社のプレスリリースやファクトシート、企業ウェブサイトなどに掲載された情報などである。また、企業発の情報を入手できない場合は、業界誌の予測情報や業界アナリストのレポート、各種ビジネス情報データベース、プレスインタビューなど、その他の公開された情報源を使用した。どのデータソースからも十分なデータが得られず、ラグジュアリー品売上高を合理的に推定できない場合は、ランキングの対象外としている(例年、少数の非公開会社が該当)。

米国以外の企業の純売上高については米ドルに換算し、共通の基準に基づいて順位を決めているため、ランキングは為替変動の影響を受ける。為替の情報源としてOANDA.comを利用している。各企業の会計年度に対応する為替相場の日次平均値を使用し、各社の業績を米ドルに換算している。ただし、個々の企業の2017年度の前年度比成長率と 2015~2017年度の年平均成長率(CAGR)は、各社の現地通貨で算出されている。

地域別動向と商品カテゴリー別動向では、Top 100社ランキングに含まれる企業に関するデータのみを使用している。これらは市場で大きな割合を占めているが、100%にはなっていない。

分析グループごとの財務業績本レポートでは、分析グループごとの財務業績を理解するための主な尺度として、単純な算術平均ではなく売上高加重平均を使用している。したがって、大企業の業績がグループ全体の平均値に大きく影響を与えている。順位付けのためにデータを米ドルに換算していることから、また、グループ間の比較を行いやすくするため、CAGRについても為替変動の影響を調整し、補正している。このようにして得られる平均値は、算術平均と概ね同様の振る舞いを示すが、ベンチマーキングに使用する代表値としては算術平均より適切である。

分析グループごとの財務業績は、データが存在する企業のみに基づいているが、すべての企業についてあらゆるデータ要素が入手できるわけではない。

また、各企業について使用したある年度の財務情報は、その年度の財務報告書が当初発行された日付時点の情報として正確である点に留意されたい。事業の変更に伴って前年度の業績が修正される場合があるが、本調査では業績の修正は考慮していない。

本レポートは、会計報告書ではない。一定期間の市場の動きとラグジュアリー業界への影響を振り返ることを目的としている。こうした要因の結果、掲載されている個々の企業の成長率は、他の公表されている業績と一致しない場合がある。

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Acne Studios Holding AB 99Aeffe SpA 82Audemars Piguet & Cie 51Breitling SA 74Brunello Cucinelli SpA 62Burberry Group plc 19Canada Goose Holdings Inc. 72Chanel Limited 6Charles Tyrwhitt Shirts Limited 93Chow Sang Sang Holdings International Limited 周生生集团国际有限公司

30

Chow Tai Fook Jewellery Limited 周大福珠宝集团有限公司

9

Chow Tai Seng Jewellery Co., Ltd. 65Cole Haan LLC 59Compagnie Financière Richemont SA 3Coty Luxury 22De Rigo SpA 70Dolce & Gabbana 39Eastern Gold Jade Co., Ltd 42Ermenegildo Zegna Holditalia SpA 43Euroitalia S.r.l. 77Falke KGaA 92Fashion Box SpA 91Festina Lotus SA 89Fossil Group, Inc. 25Franck Muller Group 84Furla SpA 61Gefin SpA 83Gerhard D. Wempe KG 64Gianni Versace SpA 55Giorgio Armani SpA 26

Giuseppe Zanotti SpA (formerly Vicini SpA) 96Graff Diamonds International Limited 56Hermès International SCA 11Hugo Boss AG 23Inter Parfums, Inc. 60J Barbour & Sons Ltd 88Joyalukkas India Pvt. Limited 47K.Mikimoto & Co., Ltd. 97Kalyan Jewellers India Pvt. Limited 35Kering SA 4Kosé Corporation 29Kurt Geiger Limited 75Lao Feng Xiang Co., Ltd. 老凤祥股份有限公司

15

Le Petit-Fils de L.-U. Chopard & Cie SA 53Liu.Jo SpA 81L'Occitane International SA 38Longchamp SAS 58L'Oréal Luxe 7Luk Fook Holdings (International) Limited 六福集团(国际)有限公司

32

Luxottica Group SpA 5

LVMH Moët Hennessy-Louis Vuitton SE 1Marc Cain Holding GmbH 85MARC O’POLO AG 71Marcolin Group 68Max Mara Fashion Group Srl 31Michael Kors Holdings Limited (now Capri Holdings Limited) 17Moncler SpA 44Movado Group, Inc. 63Mulberry Group plc 98Onward Holdings Co., Ltd. 34OTB SpA 33Pandora A/S 20Patek Philippe SA 45Paul Smith Group Holdings Limited 95PC Jeweller Ltd. 40Pola Orbis Holdings Inc. 37Prada Group 21Puig S.L. 28PVH Corp. 10Ralph Lauren Corporation 12Restoque Comércio e Confecções de Roupas S.A. 79Revlon, Inc/Elizabeth Arden segment 52Richard Mille SA 90Rolex SA 14S Tous SL 76Safilo Group SpA 46Salvatore Ferragamo SpA 36Samsonite International S.A./Tumi brand only 57Sanyo Shokai Ltd. 66Shiseido Prestige & Fragrance 16SMCP SAS 50Swarovski Crystal Business 24Tapestry, Inc. (formerly Coach, Inc.) 13Ted Baker plc 54Textil Lonia 80The Estée Lauder Companies Inc. 2The Swatch Group Ltd. 8Tiffany & Co. 18Titan Company Limited 27Tod's SpA 48Tory Burch LLC 49Tribhovandas Bhimji Zaveri Limited 87Trinity Limited 利邦控股有限公司 100Tse Sui Luen Jewellery (International) Limited 69TWINSET—Simona Barbieri SpA 86Valentino SpA 41Van de Velde NV 94Vera Bradley, Inc. 73Zadig & Voltaire 78Zhejiang Ming Jewelry Co., Ltd. 浙江明牌珠宝股份有限公司

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ラグジュアリー企業Top 100社のアルファベット順リスト

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注記1. WTFはミレニアルHENRYsか?、2015年6月17日。ht tps: //

digiday.com/marketing/wtf-millennial-henry/から抽出。

2. HENRYsはスタート地点であって、ターゲットの富裕層ではない、2016年11月9日。https://insight.equifax.com/henrys-represent-a-starting-point-not-a-targetaffluent-audience/から抽出。

3. 新しいラグジュアリーブランドのためのマーケティング、2019年2月10日。http://www.themarketingsage.com/marketing-for-newluxury-brands/から抽出。

4. Burberry、売れ残りのラグジュアリー製品を破壊する慣行を止める、2018年9月10日。https://www.environmentalleader.com/2018/09/burberry-finished-luxuryproducts/から抽出。

5. Ker ingの持続可能性。ht tps : // w w w.ker ing .com /en /sustainability/から抽出。

6. 社会的責任、Prada Group。https://www.pradagroup.com/en/group/social-responsibility.htmlから抽出。

7. Rolex企業賞。https://www.rolex.org/rolex-awardsから抽出。

8. Tiffany財団。http://www.tiffanyandcofoundation.org/から抽出。

9. トップファッションの I n s t a g r a mインフルエンサー、2018年3月10日。ht tps: // izea.com/2018/03/05/top-fashioninstagraminfluencers/から抽出。

10. Chanelはなぜ、ソーシャルで最も影響力のあるラグジュアリーブランドなのか、2018年4月。https://econsultancy.com/why-chanel-isthe-most-influential-luxury-brand-on-social/から抽出。

11. Chanelはどのようにして最もソーシャルなラグジュアリーブランドになったのか、2017年8月25日。https://www.luxurysociety.com/en/articles/2017/08/how-chanel-became-most-social-luxurybrand/から抽出。

12. Gucciはどのようにしてアートとデジタルを融合し、ミレニアルの心をつかんだのか、2018年5月17日。http://www.r-directed.com/headline/how-gucci-married-art-and-digital-to-win-millennials/から抽出。

13. 今、すごく流行っている:Louis Vuittonはソーシャルメディアでどのようにうまくやっているのか、2018年2月6日。https://www.askattest.com/blog/home/how-louis-vuitton-are-killing-itonsocial-media-awrから抽出。

14. M r. B a g s x M o n t b l a n c、2 018年7月26日。h t t p : //w w w . m r b a g s . c o m / i n d e x . p h p / 2 0 1 8 / 0 7 / 2 6 /mrbagsmontblanc-2018/から抽出。

15. #Prada365: ブランドの新しいソーシャル、広告戦略、2017年1月5日。http://www.thefashionlaw.com/home/prada365-the-brands-new-social-advertising-strategyから抽出。

16. Mr. Bags、6分間で324万人民元相当のバッグを販売、2018年7月13日。https://www.businessoffashion.com/articles/news-bites/mr-bags-sets-new-record-3-24-millionrmb-on-wechat-in-6-minutesから抽出。

17. Luxury Instituteの「ラグジュアリー業界の現状(State Of The Luxury Industry)」調査によると、世界の豊かな買い物客はラグジュアリーブランドとの心のこもった人間的な結びつきを求めている、2019年1月22日。https://www.globenewswire.com/news-release/2019/01/22/1703335/0/en/Luxury-Institutes-State-Of-The-Luxury-Industry-Survey-Shows-Wealthy-Shoppers-Around-The-World-Crave-Emotional-and-Human-Connections-With-Luxury-Brands.htmlから抽出。

18. ミレニアルへのマーケティング:ラグジュアリーブランドはどのように宣伝を作り出すか、2018年12月。https://luxe.digital/digitalluxury-trends/marketing-hype-millennials/から抽出。

19. Ker ingがデジタル戦略における新たな活動を発表、2018年11月26日。ht tps: //w w w.businesswire.com/news/home/20181125005169/en/Kering-Announces-New-Developments-Digital-Strategyから抽出。

20. Louis Vui t tonがメンズウェア、「Run Away」スニーカーにもパーソナライゼーションプログラムを採用、2018年10月25日。https://mr-mag.com/louis-vuit ton-extends-personal izat ion-programto-menswear-run-away-sneakers/から抽出。

21. Gucciがパーソナライゼーションサービスを始動、2016年5月26日。https://www.harpersbazaar.com/uk/fashion/f a sh i o n - n e w s /n e w s /a 37 2 3 6 /g u cc i - l a u n c h e s - a -personalisationservice/から抽出。

22. Burberryはどのようにデジタルに対応しているか、2014年1月10日。https://www.luxurysociety.com/en/articles/2014/01/howburberry-does-digital/から抽出。

23. Burberr yの新しい香水コレクションは、カスタムメイドのリボンから名前入りのボトルまでパーソナライゼーション、2017年6月21日。https://www.vogue.com/article/burberry-bespokefragrance-perfume-best-new-perfume-roses-oak-heath-thistleから抽出。

24. HUGO BOSSが2022年の戦略的事業計画を発表、2018年11月。https://group.hugoboss.com/en/press/press-releases/pressrelease/hugo-boss-presents-2022-strategic-business-plan-focus-on-personalization-and-speedto-further-driv/から抽出。

25. Gar tnerのカスタマー360サミット2011。ht tps: //w w w.gartner.com/imagesrv/summits/docs/na/customer-360/C360_2011_brochure_FINAL.pdfから抽出。

26. Louis Vuitton、チャットボットを始める最新のラグジュアリーブランドになる、2017年12月8日。https://www.forbes.com/sites/rachelarthur/2017/12/08/louis-vuitton-becomes-latestluxury-brand-to-launch-a-chatbot/#1c56198ffe10から抽出。

27. Ted Baker、顧客が自社の新しいコレクションを発見しやすいよう、AI駆動のFacebookチャットボットを始動、2018年9月11日。https://lovelymobile.news/ted-baker-launch-ai-powered-facebook-chatbot-to-helpcustomers-discover-more-about-the-new-collections/から抽出。

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28. Ker ingがデジタル戦略における新たな活動を発表、2018年11月26日。ht tps: //w w w.businesswire.com/news/home/20181125005169/en/Kering-Announces-New-Developments-Digital-Strategyから抽出。

29. Esteé Lauder、そのテクノロジー改造によりビデオブロガーに対する勝利を察知、2017年9月14日。https://www.computing.co.uk/ctg/analysis/3017280/estee-lauder-scentsvictory-against-the-vloggers-with-its-tech-makeoverから抽出。

30. Kharas , H and Kr is tofer J (2018) グローバルな転換点 – 世界の半分が今やミドルクラスかそれ以上に豊か、2019年3月2日。ht tps : // w w w.brook ings .edu/b log /futuredevelopment/2018/09/27/a-global-tipping-point-half-theworld-is-now-middle-class-or-wealthier/から抽出。

31. 世界旅行ツーリズム協議会 (2018) 旅行と観光の経済的インパクト:中国2018年。https://www.wttc.org/-/media/files/reports/economic-impact-research/countries-2018/china2018.pdfから抽出。

32. GQ Magaz ine、2017年12月22日。ht tps : // w w w.gq -magazine.co.uk /ar ticle/why-russia-is-the-place-to-shopfor-2018から抽出。

33. L V M Hの2 0 17年度業績は過去最高、2 0 1 8年 1月 2 5日。ht tps : //r. l v mh -s t a t i c .com /up loads / 2018/01/lvmhannualresults2017va.pdfから抽出。

34. Estée Lauder各社が好調な2017年度業績を発表、2017年8月18日。https://www.elcompanies.com/news-and-media/newsroom/press-releases/2017/08-18-2017-114420311から抽出。

35. Corderのコラム: Richemontは世界最大のRolexディーラーになることができた、2018年6月5日。https://www.watchpro.com/corders-column-richemont-become-worldsbiggest-rolex-dealer/から抽出。

36. スイスの時計メーカー、Richemontがミレニアル世代を取り込むため、より低価格のブランドを投入、2018年5月16日。https://in.reuters.com/article/richemont-baume/swiss-watchmakerrichemont-launches-lower-priced-brand-to-lure-millennialsidINKCN1IH2C0から抽出。

37. オンライン販売がラグジュアリー品グループ、Richemontの収益を押し上げ、2018年1月13日。https://www.businesslive.co.za/bd/companies/retail-and-consumer/2019-01-13-onlinesales-boost-luxury-goods-group--richemonts-earnings/から抽出。

38. Luxotticaが1億1,000万ユーロの取引でブラジルの小売企業Oticas Carolを買収、2017年1月30日。https://www.reuters.com/article/us-luxottica-m-a-brazil/luxottica-buys-brazilretailer-oticas-carol-in-110-million-euro-deal-idUSKBN15E1GDから抽出。

39. EssilorとDelfinはアイケア、アイウェア業界のグローバルリーダー、EssilorLuxotticaを誕生させ、EssilorとLuxotticaの組み合わせを順調に完了、2018年10月1日。https://www.essilorluxottica.com/essilorand-delfin-successfully-complete-combination-essilor-andluxottica-creatingから抽出。

40. Chanelが100億米ドルの売上高を初めて発表、2018年6月21日。https://www.businessoffashion.com/articles/news-analysis/chanel-reveals-10-billion-revenue-for-first-timeから抽出。

41. ChanelとFarfetchがラグジュアリーの小売体験を刷新するため、チームを組む、2018年2月19日。https://www.ft.com/content/b7dafa04-1330-11e8-8cb6-b9ccc4c4dbbbから抽出。

42. L'Oréalの2017年度決算、2018年2月8日。https://www.loreal-finance.com/eng/news/2017-annualresults-1231.htmから抽出。

43. Swatch Groupの2017年度アニュアルレポート、2018年3月14日。https://www.swatchgroup.com/en/services/archive/2018/annual-report-2017から抽出。

44. Chow Tai Fook Jewellery Group Limitedのアニュアルレポート。https://corporate.chowtaifook.com/en/ir/reports/ar2018.pdfから抽出。

45. PVHがGazal Corporation Limitedの買収契約を発表、2019年2月20日。https://www.marketwatch.com/press-release/pvh-corp-announcesagreement-to-acquire-gazal-corporation-limited-2019-02-20から抽出。

46. MovadoがOlivia Burtonを買収、2017年7月5日。https://www.businesswire.com/news/home/20170705005119/en/Movado-Group-Acquires-Olivia-Burtonから抽出。

47. Shiseido AmericaがGiaran, Inc.を買収、2017年11月7日。https://www.businesswire.com/news/home/20171107006109/en/Shiseido-Americas-Acquires-Giaranから抽出。

48. EssilorとDelfinはアイケア、アイウェア業界のグローバルリーダー、EssilorLuxotticaを誕生させ、EssilorとLuxotticaの組み合わせを順調に完了、2018年10月1日。https://www.essilorluxottica.com/essilorand-delfin-successfully-complete-combination-essilor-andluxottica-creatingから抽出。

49. CapriがVersaceの買収を完了、2018年12月31日。http://www.capriholdings.com/news-releases/news-releases-detai ls /2018/Capri -Holdings-L imited-Completes-Acquisition-of-Versace/default.aspxから抽出。

50. 中国の金消費は2017年に9.41%増加、2018年2月1日。http://www.xinhuanet.com/english/2018-02/01/c_136942243.htmから抽出。

51. グローバルなラグジュアリーブランド、再び中国の若い富裕な買い物好きを狙う、2018年8月20日。ht tps: //w w w.reuters.com/ar ticle/us-china- luxur y-focus/global-luxurybrands-again-chase-chinas-young-rich-and-spendthriftidUSKCN1L40Q6から抽出。

52. 中国のミドルクラス女性が主導し、ラグジュアリーが再び流行、2017年9月28日。https://www.businessoffashion.com/articles/news-analysis/luxury-back-invogue-as-chinas-middle-class-women-lead-the-wayから抽出。

53. 世界のツーリズムは2017年に最高の伸びを記録、フランスがトップ、2018年1月17日。https://uk.fashionnetwork.com/news/Global-tourism-hits-record-increase-in-2017-Franceleads,936945.html#.XIdbZtozY2wから抽出。

54. フランスの企業景況感がほぼ10年ぶりの高さとなる、2017年11月23日。https://www.thelocal.fr/20171123/business-confidence-in-france-hits-near-10-yearhighから抽出。

55. Chanelが100億米ドルの売上高を初めて発表、2018年6月21日。https://www.businessoffashion.com/articles/news-analysis/chanel-reveals-10-billion-revenue-for-first-timeから抽出。

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謝辞以下の方々には本レポートに多大なるご協力をいただきました。心より御礼申し上げます。Marzia Casale、Venessa Lee、Valeria Scaramuzzi、Pranasha Sahu、Abhilasha Singh、Lisa Su、Frances Trought、Annie Wallaceの各氏。

問い合わせ先松尾 淳パートナー[email protected]

渡邉 知志パートナー[email protected]

松岡 和史パートナー[email protected]

大塚 泰之アソシエイトディレクター[email protected]

霜山 伸人マネジャー[email protected]

太田 裕之アソシエイトディレクター[email protected]

編集担当者

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デロイト トーマツ グループは、日本におけるデロイト アジア パシフィック リミテッドおよびデロイトネットワークのメンバーであるデロイト トーマツ合同会社ならびにそのグループ法人(有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ税理士法人、DT弁護士法人およびデロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは、日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従い、監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務等を提供しています。また、国内約40都市に1万名以上の専門家を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデロイト トーマツ グループWebサイト(www.deloitte.com/jp)をご覧ください。

Deloitte(デロイト)とは、デロイト トウシュ トーマツ リミテッド(“DTTL”)ならびにそのグローバルネットワーク組織を構成するメンバーファームおよびそれらの関係法人のひとつまたは複数を指します。DTTL(または“Deloitte Global”)および各メンバーファームならびにそれらの関係法人はそれぞれ法的に独立した別個の組織体です。DTTLはクライアントへのサービス提供を行いません。詳細は www.deloitte.com/jp/about をご覧ください。デロイト アジア パシフィック リミテッドはDTTLのメンバーファームであり、保証有限責任会社です。デロイト アジア パシフィック リミテッドのメンバーおよびそれらの関係法人は、オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、東ティモール、ミクロネシア連邦、グアム、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、ニュージーランド、パラオ、パプアニューギニア、シンガポール、タイ、マーシャル諸島、北マリアナ諸島、中国(香港およびマカオを含む)、フィリピンおよびベトナムでサービスを提供しており、これらの各国および地域における運営はそれぞれ法的に独立した別個の組織体により行われています。

Deloitte(デロイト)は、監査・保証業務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、リスクアドバイザリー、税務およびこれらに関連する第一級のサービスを全世界で行っています。150を超える国・地域のメンバーファームのネットワークを通じFortune Global 500®の8割の企業に対してサービス提供をしています。“Making an impact that matters”を自らの使命とするデロイトの約286,000名の専門家については、(www.deloitte.com)をご覧ください。

本資料は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本資料の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本資料の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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