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熊本地震における車中避難者の実態とその後の支援について
第12回福岡県防災講演会
2016年9月2日(金)
福岡県庁3階 講堂
稲月 正(北九州市立大学)
1.報告の目的
(3)震災支援(急迫期と日常移行期の生活支援)のあり方を考える。
(1)車中避難者調査の概要を報告する。
(2)支援組織「こころをつなぐ『よか隊ネット』」による継続的な支援について報告する。
災害は、①新たな課題を生むと同時に②既存の社会的課題(たとえば社会的排除)を顕在化させる→自然災害の被害を最も受けやすいのは社会的弱者→社会的弱者は二次的な被害にもあいやすい
生活困窮者支援との共通性
2
震災被害は、家屋の倒壊や地滑りの発生など、地震によって直接もたらされるものだけではない。
地震後の避難生活の状況や行政・民間による<支援>のあり方、<社会>のあり方によって、震災による被害は増幅されたり軽減されたりする。
さらに、中・長期的に見た場合、社会の構造的な問題(貧困、格差、社会的排除など)が被害には大きく影響するだろう。→「自然災害の影響はもちろん甚大であるものの、それを最終的な決定打とするのは、社会の仕組みである」(阿部彩 2011 『弱者の居場所がない社会』講談社現代新書)
そうであれば、震災被害(1次、2次・・・)を少しでも少なくするためにも、また、震災の予防を考えるためにも、耐震建設やハードなインフラ整備だけでなく、地震発生後の避難生活状況について調べ、よりよい制度や対応方法を構想することは重要である。
お話ししたいこと-調査結果&震災支援のあり方(急迫期・日常移行期・さらに、その後)
(1)災害は、①新たな課題を生むと同時に②既存の社会の課題・脆弱性を顕在化させる
(3)「車中避難に至るプロセス」「困ったこと」からは、「自宅損壊への対応」「恐怖・不安の解消」「避難所の住みやすさ」「ニーズの把握と情報提供」が課題として析出された。
(2)車中避難が示すものは、「ホームレス」問題と重なるところが多い。支援には、そのノウハウが生かせる。
「ハウジング(モノ)、ファースト。ホーム(社会関係)、セカンド」
(4)これらのことから、急迫期の支援として、①速やかな建物の安全性の判定、②入居支援、③安心できる住宅の提供、④心理的なケア、⑤健康、トイレ、個別の事情、プライバシー等に配慮した避難所の準備と設置、⑥情報入手の回路設定、⑦住宅・支援関連情報のさまざまなルートでの提供 などが必要である。(平時からの準備が重要である。)
3
(5)既存の福祉制度には「申請主義」と「縦割り」の問題がある。震災支援でも同様である。それゆえ支援には、①アウトリーチ(訪問)型相談支援、②支援組織のネットワーク(受け皿群)、③持続性のあるコーディネート型支援(伴走型支援)が必要である。cf. 調査はアウトリーチ型相談支援でもあった。
(6)仮設住宅への入居が始まれば、日常生活への移行・継続を支援する組織・人材が必要である。
(7)日常生活への移行した後は、2次的、3次的な被害が生じないよう包摂型支援の継続が必要である。→これは、被災者かどうかにかかわらず、生活困窮者を社会
に包摂していく仕組みづくりである。
2.熊本地震の特徴
(1)特徴
①2度の大地震と余震の頻発前震:2016.4.14 21:26 M6.5 / 本震:2016.4.16 1:25 M7.3
②広範な被害震度5以上の市町村:熊本県(7~6弱)、大分県(6弱)、福岡県、佐賀県、長崎県、宮崎県(5強)の市町村
徳野貞雄「マチ型震災とムラ型震災の複合型震災」
③「車中避難・車中泊」の多さ
日経テレコン21による新聞記事検索(「車中避難」)では「熊本地震(2016.4中)」と「中越地震(2004.10末)」の記事が多くを占める。
強い不安感、先行き不透明感
4
(2)車中避難者の問題化
熊本地震では、「車中泊」や「車中避難」が震災における重要な問題として設定
新聞記事検索データベース(日経テレコン21)を用いて「車中
泊」「車中避難」で検索した記事の件数(対象は新聞全紙、検索期間は地震発生日から2ヶ月間)
記事数は、熊本地震において突出
3.車中避難者調査の概要
○方法
①調査地:熊本市内、益城町、御船町②調査期間:2016年4月26日~5月4日→5/9要望書提出(県・市)
2016年5月5日~5月16日
③方法:調査票を用いた個別面接法(「出水南公園」「北区新地公園」分14票は留め置き)
○対象者①人数:車中避難者182名(車横でのテント生活者含む)②性別:女性93名(51.1%)、男性 88名(48.4%)、不明1名③年齢:10代 1名(0.8%)、20代 15名(8.2%)、30代 32名(17.6%)、
40代 46名(25.3%)、50代 33名(18.1%)、60代 38名(20.9%)、70歳以上 16名(8.8%)、不明1名
④世帯の避難形態:一緒に避難 87名(47.8%)、別々に避難 46名(25.3%)、単身者 34名(18.7%)、その他・不明 15名(8.2%)
5
『熊本日日新聞』2016.5.4
『西日本新聞』2016.5.10
6
(1)自宅の損壊状況
全壊・半壊状況,25.8
全・半壊ではない
が、かなり損傷を
うけた, 35.7
あまり損傷を受け
ていない, 36.8
不明・無回答, 1.6
①「全壊・半壊」と「全半壊ではないが、かなりの損傷」をあわせると約6割
②ただし、「あまり損傷を受けていない」も約4割(そのうちの約半数は
「家具等、ほぼ元通りに片付いている」)
不安
車中避難を開始した日 移動の有無
4/14、4/16の両日で約8割 移動性が高い→状況把握の難しさ
7
(2)車中避難を始めた理由
不安 損壊
0
20
40
60
80
100
120
140
160
再び大きな地震があるのではないか、
と不安なため
余震が続いていて、自宅で寝るのが不
安なため
いざというときに逃げるためには車が
必要なため
自宅に大きな損傷があり、住める状
態ではないため
自宅には目立った損傷はないが、家具
などが片付いていないため
避難所が近くにないため
避難所での生活より車中避難の方が
よいと思うため
水やガスなど、生活に必要なものが不
便なため
その他
人数
避難所
76.4% 75.8% 62.1%複数回答
①不安感②避難所の問題
③自宅の損壊が主な理由
40.1%
再び大きな地震があ
るのではないか、と
不安なため, 36.3%
余震が続いていて、
自宅で寝るのが不
安なため, 23.1%
自宅に大きな損傷が
あり、住める状態で
はないため, 23.6%
自宅には目立った損
傷はないが、家具な
どが片付いていない
ため, 1.1%
いざというときに逃
げるためには車が必
要なため, 0.5%
避難所での生活より
車中避難の方がよ
いと思うため, 6.0%その他,
7.1%
1つには決められな
い, 1.1%不明・無回答, 1.1%
車中避難を始めた最も大きな理由
①車中避難の理由の「最も大きな」要因は「地震への不安」「家屋の損壊」
②建物の状態(全半壊)とは独立に心理的な「不安」要因も避難行動に影響を与えていた。
cf. 自宅が「あまり損傷を受けていない」と答えた人(42人)の8割以上が「余震への不安」を車中避難の理由として挙げていた。
8
(3)避難所ではなく車中避難を選んだ理由
①「落ち着かない」
②「小さい子ども、高齢者、障がいを持った人がいるため周囲に気を遣う」
③「避難所ではプライバシーが守れない」
④「建物は怖い、車の方が揺れが少ない」「車中避難だと自宅のすぐ近くにいれるので安心」
緊急時、多くの人が狭い空間に居住する状況では、特別な配慮を必要とする人びとの声はかき消されやすい。本来であれば当人たちに必要な配慮は、「ぜいたく」や「まわりへの迷惑」といった感覚を当人たちに抱かせてしまう。
「社会的弱者」は一般社会の中でも排除されやすい存在であるが、同様の構造が災害時の避難所においても顕在化しているように思われる。cf. 『西日本新聞』の記事「避難所 女性の視点を」(2016年4月23日朝刊)は、「避難所が男性を中心に
運営される傾向が強い中で、『女性の視点』を取り入れた支援が求められている」ことを指摘している(http://www.nishinippon.co.jp/feature/life_topics/article/240686)。
9
緊急時、限られた資源の中での対応といった状況で、いきなりこうした配慮を行うことは難しい。それゆえ、平時において、避難所の数、スペースについて十分検討しておくことや「社会的弱者」に配慮した避難所のデザイン(指針)の作成と周知が必要
『西日本新聞』「避難所女性の視点を更衣室は男女別にトイレに照明と錠性犯罪防止へ巡回 熊本地震」2016年4月23日
車中避難にいたるプロセス
2度の大地震、終わらない余震
自宅が全半壊、
大きな損傷
あまり損傷なし
車中避難
強い恐怖体験(ケガ/メンタル面)・建物への不安
避難所の問題(設備、プラ
イバシー、気兼ね=排除)
ペット、障がい児・者、小
さい子、通勤(早朝)
自宅・余震
への不安
行政対応の遅れ、情報からの距離
便利さ、自
宅の近さ
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(4)車中避難生活のなかで困っていること
①「困っていること」として「健康」、「衛生に関すること(トイレ)」、「情報・相談に関すること(必要な情報が届かない)」、「生活への不安」をあげる人が多かった。
②自由回答からは、エコノミークラス症候群をうかがわせるものや「心臓の持病があるが病院と連絡が取れず、薬もあと1
週間分しかない」といった深刻なものもあった。
項目 人数 %
水(飲料水) 42 23.1%
トイレ 74 40.7%
お風呂 63 34.6%
衣類 22 12.1%
健康 78 42.9%
必要な情報が届かないこと 36 19.8%
相談先がないこと 28 15.4%
話す人などがおらず孤独なこと 10 5.5%
介護 13 7.1%
育児 20 11.0%
通勤 14 7.7%
生活費 30 16.5%
将来の生活が不安なこと 66 36.3%
その他 57 31.3%
車中避難生活で困っていること
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①「衛生・健康」
○「車中避難で困っていること」を複数回答で尋ねたところ、最も多かったのは「衛生・健康」に関わることであった(「健康」42.9%、「トイレ」40.7%、「お風呂」34.6%、「水」23.1%)。
○主要な属性との関連をみると、「健康」では「年齢」「性別」が、また、「トイレ」では「性別」との関連が強かった。
53.3%
56.3%
63.0%
60.6%
55.3%
43.8%
46.7%
43.8%
37.0%
39.4%
44.7%
56.3%
20歳代
30歳代
40歳代
50歳代
60歳代
70歳代以上
あてはまらない
あてはまる
年齢×健康
71.6%
48.4%
28.4%
51.6%
男性
女性あてはまらない
あてはまる
性別×トイレ
62.5%
51.6%
37.5%
48.4%
男性
女性あてはまらない
あてはまる
性別×健康
・下肢のむくみひどくなった。
・母の健康。3日一緒に車中泊をしたが、足がむくんでおり、病院に行ったら血栓ができていた。・エコノミークラス症候群が不安だ。・足を伸ばして寝れないため、疲れが取れない。
・身体が痛い、足を伸ばせない(軽自動車のため)。肩から背中にかけて痛みあり。・眠れない状態が続いていて 少しの余震で目が覚める。
・糖尿病の持病があり食生活の変化が心配、腰や足も悪く、血圧の薬も飲んでおり体調管理が心配。・疲労感、倦怠感・ろっ骨がおれている。足の打撲もある。・高血圧・子どものPTSD・眠剤を使わないと眠れない。 ・・・
健康
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・トイレが1箇所しかない・トイレが不便だ。・水洗トイレがない。・仮設のトイレが遠いので、子供のトイレは車で行っている。
・夜、一人で仮設トイレまで行くのは嫌(衛生状態、和式は嫌)。
・公園の夜のトイレ。個室に出来ない。コンビニでトイレ済ませて車に戻る。
衛生(トイレ、お風呂)
「数の少なさ」だけではなく、「衛生面での心配」や「安全面での不安」を語る人もいた。
②「情報・相談」
○「必要な情報が届かない」は19.8%、「相談先がないこと」は15.4%であった。
○「必要な情報が届かない」は「自宅の損壊状況」と強い関連を持っていた。自宅が「全壊・半壊」した人びとにとって、罹災証明、仮設住宅への申し込み、地震保険の手続きなどは非常に重要な情報である。そうした情報へうまくアクセスできていないことがわかる。
68.1%
76.9%
92.5%
31.9%
23.1%
7.5%
全壊・半壊状況
全・半壊ではないが、
かなり損傷をうけた
あまり損傷を受けていない
あてはまらない
あてはまる
「行政からの説明や事情の聞き取り」が「まったくなかった」は80.8%、「あまりなかった」は4.9%で、あわせると85.7%にのぼる。
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「必要な情報が届かない」は36人(19.8%)、「相談先がない」は28人(15.49%)
・食べ物等の情報が入ってこない。
・地震保険の手続き。保険屋さんに来るように言っているがなかなかこない。保険制度がよくわからない。
・この先が見えない。情報がない。黄色を貼られたらどうすればよいのか。(住めるのか、再建すべきか、引っ越しは?など考え中。)・役所で手続きに時間がかかる・行政手続が進まない。
情報・相談
情報入手先(複数回答)
・5月1日以降の調査対象者(80名)
・「最も役に立ったもの」:「インターネット」40%、「テレビ」「ラジオ」各15%
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○「将来の生活が不安」は28.2%、「生活費」については16.8%が「困っていること」としてあげている。
○「育児」(11.0%)、「介護」(7.1%)もここに含めることもできよう。○これらは「情報・相談」体制に関連する不安とも考えられる。
○「将来の生活が不安」は「自宅の損壊状況」と強い関連を持つ。また、「避難の形態」とも関連がみられる。
③「生活不安」
48.9%
64.6%
73.1%
51.1%
35.4%
26.9%
全壊・半壊状況
全・半壊ではないが、
かなり損傷をうけた
あまり損傷を受けていない
あてはまらない
あてはまる
70.1%
60.9%
29.9%
39.1%
一緒に車中避難
別々に避難生活しているあてはまらない
あてはまる
自宅の損壊状況×将来への不安
避難の形態×将来への不安
「最も困っていること」では第1位(20.9%)
「将来の生活が不安」は66人(28.2%)、「生活費」については30人(16.8%)が「困っていること」としてあげている。→「困っていること」の中身は、「住宅」、「ローン」、「仕事」にかかわることが多い。
・将来の見通しが立たず 家をどうするか悩んでいる・いろいろなローンの支払い。・生活の全般が不安。住居がない状況で先のことが不安。・住居の見通し、生活再建の方法が見つからない。
・住居にひびが入っていてリフォームするかどうか。金銭面で心配もある。・罹災証明も6月以降と言われていて将来が不安。・仕事ができない(地震で仕事がなくなった)。 ・・・
これからの生活への不安・生活費
15
(5)今後の生活の見通し○「今後の生活の見通し」が「まったく見えていない」「あまり先が見えていない」人は64.9%にのぼる。
○中でも自宅が「全・半壊」の人では、その比率は85.1%に達していた。
59.6%
39.1%
21.2%
25.5%
32.8%
25.8%
8.5%
25.0%
27.3%
4.3%
3.1%
22.7%
全壊・半壊状況
全・半壊ではないが、
かなり損傷をうけた
あまり損傷を受けていない
まったく見えていない あまり見えていない
少し先が見えてきた かなり先が見えてきた
まったく見え
ていない,37.4
あまり見えて
いない, 27.5
少し先が見
えてきた,21.4
かなり先が
見えてきた,10.4
不明・無回
答, 3.3
(6)行政への要望(第1期分)
①「仮設住宅の確保」「住宅等の修理費用の補助」「情報の提供」「避難所間の格差解消」に関する事柄が多かった。②件数上位5項目とその主な内容
(1)仮設住宅等への入居に関すること・仮設住宅を早く設置してほしい・入居に関しては弱者を優先してほしい(2)住宅の修復費用や生活保障に関すること・家の修理費や水道の補修費などを出してほしい(3)情報提供や情報収集に関すること・仮設住宅や補償など必要な情報を適切に提供してほしい・自主避難者の状況把握をしてほしい(4)指定避難所とそれ以外の避難所との格差に関すること・支援物資の届き方を指定避難所と自主避難で平等に・自主避難者にも目を向けて対処してほしい(5)住宅の安全性などに関すること・家の検査や判定をしてほしい
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・今後、住宅やその他の被災状況が明らかになるにつれ、被災者が生活を再建するまでの課題は多岐にわたることが予想される。個別の相談に応える相談窓口の設置と、応急仮設住宅への入居から退去までサポートする体制などによって「生活不安」を少しでも解消していくことが必要である。
・自宅が「全壊・半壊」し住むところも見つかっていない人にとって「生活が不安」になるのは当然である。さらに、自宅の再建費用、公的な保障や地震保険の申請、雇用、生活費など、さまざまな課題も生じる。それらに関する「情報、相談先」がない状態では、「見通し」が「まったく見えない」のもまた当然であろう。仮設住宅の設置やさまざまな制度的支援と同時に、その利用や申請などに必要な情報をできるだけ早く正確に周知する体制の構築が必要である。相談窓口の設置や伝達ルートの構築、アウトリーチ型の情報収集と情報提供の仕組みなどを平時においても準備しておくことが重要である。→地域、NPOとの連携
■活動理念①最も小さくされた人々に、偏った支援を行う②できないことは、あやまる
③震災前から実施されていた地元団体の活動を基本としつつ活動する
■加盟団体数 : 70 (2016.7.29時点)
(1)A型(共同型)事業:地元団体の活動を応援
■事業内容
(2)B型(本体型)事業
①熊本を拠点とする団体への助成事業
②民間支援物資の提供事業
③夜間巡回 / 炊き出し相談事業 / 調査・相談および緊急提言事業
④広報および募金呼び掛け
4.「こころをつなぐ『よか隊ネット』」による継続的な支援(代表:佐藤彩己子、副代表:楠木宏基・高木聡史)
17
http://yokatainet.com/
福祉事務所CW
課題発見・つなぎ(アウトリーチ)
課題解決機関・人のネットワーク(受け皿)
支援のコーディネート
調査・夜まわり コーディネーター
よか隊ネット(70団体)
被災者(要支援者・世帯)
生活困窮者支援
病院
本体事業(B型事業)
参加団体事業(A型事業)
公的機関・他の民間機関
外国人支援
市役所
18
(1)B型(本体型)事業
○調査対象者で、調査後に、生保申請、メンタルなサポート、携帯電話取得など、何らかの形で支援を行った人は40名くらい。そのうち、今も継続して関わり(支援、本人のボランティア参加など)がある方は10名くらい。
○なお、夜間巡回等で知り合った方をあわせると、何らかの形で支援を行ったのは60名くらい。
○たとえば、携帯電話取得のためにパスポートをとる支援→住基
カードは2週間程度で取れたが、マイナンバー制度になってからはカード取得に半年くらいかかる。顔写真入りの身分証明書をできるだけ早くつくるためにパスポートを取得し、携帯電話をとらせる。
○支援した方が、ボランティアに参加してくれる例もある。
夜間巡回 / 炊き出し相談事業 課題の「発見」&相談
訪問(アウトリーチ)型
(2016.7 調査時点)
出典:「よか隊ネット」フェイスブック(7月7日)
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グランメッセと、テクノリサーチパークの2箇所で夜回り 2016_7_7
昨日は、「よか隊」定期活動である、「夜間巡回」の活動を行いました。
巡回にお手伝い下さったボランティアの皆さん夜遅くまでご協力ありがとうございました。
昨日は、グランメッセと、テクノリサーチパークの2箇所で夜回りを実施し、約10
名程の方から、細かいお話を聞くことができました。夜回りのあとは、事務所で報告会をし、情報共有を行います。
熊本地震から、そろそろ3ヶ月がたとうとしていますが、まだ、車中泊、テント生活
の生活を余儀なくされていらっしゃる方がいらっしゃいます。そういった方々に、現状の様子やお困りごとなどを少しずつ聞いて、我々ができる範囲での情報提供や今後のサポートのご提案をさせて頂きました。
仮設住宅等、少しずつ被災者への対応も進んでいますが、個々それぞれの事情によって、対応がなかなかうまくいかないケースもあるということが分かりました。また、必要となるサポートも、それぞれの方で異なっています。
私達「よか隊ネット」は、「顔の見える関係」を基本理念としていますので、何度も足を運んで信頼関係を築くことを心がけています。そして、「できる事」を一つづつやっていきます。
出典:「よか隊ネット」フェイスブック(7月7日)
『西日本新聞』2016.7.14
20
年齢 支援内容 見通し きっかけ
50代女性
4/30アンケート調査。50代の本人と26才のシングルマザーの娘、5才と3才の孫とで車2台で車中避難生活、5/2声かけ。5/5バーベキュー時に○氏中心の発達障害支援団体メンバーが関係性を深める。5/7声かけ。5/11全心連、代表と○さんによる面接。お風呂の提供のために駐留していた自衛隊が撤収したため、治安の低下を恐れ5/12グランメッセに移動。日差しが強いためブルーシート2枚が必要。5/13ブルーシート3枚,ターフ、防犯ブザー提供。5/23水、虫除け、配布と声かけ。子どもたちを保育所に預け、26才の母も午前中のみのパートをはじめる。
長期 調査
60代男性
5/1アンケート調査拒否、しかし、○小学校の避難所ボランティア○氏との連携により本人との関係の継続。5/5○小で健康状態についての面接、5/6○病院連携室、○氏との連携で無料低額にて受診COPDの診断を受ける。5/9東区役所にて生活保護申請、その後、当日中に現地確認終了。5/11無料低額利用の書類として銀行口座の残高照会提出。5/24生保調査の進捗について○が問い合わせる。「まだかかる。」との返答。
長期 調査
60代男性5/4アンケートに回答。5/9調査訪問時にテントを建てる人での必要を要請される。5/11○より連絡、5/12 午後3:30テント補助にSコープ3名参加。
長期 調査
30代女性5/8アンケート調査、外国人シングルマザー、小学○年生の娘さんと車中避難。5/10水、レトルト食品、米10kgお渡しした。5/12車中避難継続確認。5/23防犯ブザー2個配布。
長期 調査
30代男性5/13アンケート調査。夫婦で車中避難生活。仮設への入居方法を教えて欲しいとの要望。5/15深夜折り返し電話対応、(本人希望により)
中期 調査
50代男性5/17夜間巡回。今年2月より車中生活を継続しており、車中で被災。アパートを探している。5/19○不動産紹介、アパート契約の方向で話し合いが進んでいる。
長期 夜間巡回
支援の例 アンケート、夜間巡回からのつなぎ
「発見」から「つなぎ」への継続的支援の例
調査→テント、物資→相談→居宅設置→生活保護申請→相談・みまもり
Aさん(50代男性、農業、心臓に持病、益城町→熊本市で姉、友人と車中泊)
Bさん(60代男性、借金(時効)取り立てから逃れるた
めに身元を隠し友人宅で生活、本人は肺気腫、一緒に車中避難していた友人が入院→公園でテント泊)
調査→物資→相談→居宅設置→身元証明取得→電話→支援組織につなぎ→相談・みまもり
21
(2)A型(共同型)事業:地元団体の活動
くまもと支援の会→路上生活者、車中避難者を対象とした炊き出しくまもと友救の会→行政がカバー出来ていない世帯等への物資配送、ガレキ撤去子ども食堂「寺子屋カフェ」→「ママさん爆睡カフェ」「爆睡ツアー」凸凹ライフデザイン→居場所作り、定例会などでんでん虫の会→お茶碗プロジェクト詫麻東校区婦人会→朝食の提供さくらんぼ保育園→預かり保育くまもと笑いヨガ倶楽部→くまもと笑いヨガフェスティバルNPO災害ボランティアなみの→「阿蘇なみの高原やすらぎ交流館」で被災者サポートさるくっく→アートによる避難者への心のサポート竹ちゃん家→料理教室、料理体験会を開き、食事の大切さの意識を高めるチームおひさま→御船、秋津での毎週火曜日の夕食の汁物の提供Hackademy→キャンピングカーで子どもを遊ばせる障害学生パートナーシップネットワーク→発達障害者の共助活動の経済的サポートよか玉市民ネットワーク→車中避難者を対象としたショートステイ熊本ヒノデ米 → お米農家支援Wish Happines → 母子家庭支援・・・
支援の例 子ども食堂「寺子屋カフェ」による「爆睡カフェ」
『熊本日日新聞』2016.8.31
被災された母子を対象に、ママさん達に身も心も癒していただける場の提供
参加者が次の場所の情報を提供したり、炊き出しボランティアに参加したり、「爆睡カフェ」の企画をしたり、活動が展開
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「爆睡カフェ」(略称)は、被災された母子を対象に、ママさん達に身も心も癒していただける場の提供をしております♡
お子さま連れで参加して、スタッフがお子さまと遊んでいる間、ママさん達にはクーラーの効いた隣のお部屋で手足を伸ばしてぐっすりと眠っていただき、目が覚めたら美味しいご飯を一緒に食べて、たくさんおしゃべりをして、たくさん笑って、身も心もリフレッシュしていただくという癒しの場なんですよ♡♡
夏休み期間中は小中学生の宿題も持ってきて頂いて構いませんよ、現職の教職員が優しく指導します♪*゜
小学生以上であれば、「お子さまのみ」の参加もOKで~す♪*゜
【 開催概要】(佐藤彩己子氏フェイスブックより)
被災状況が過酷な地域の方々ほど、「休む」とか「癒される」とかいう姿勢を罪悪のように捉えられて、頑張りすぎて疲れ果てておられます...ママが 「あした顔晴るわたしのために」 できたしこでさしよりゆる〜っと 心と身体を癒し♡ お子さま達にも「叱られない1日」をプレゼントしに来られませんか♡♡ (佐藤彩己子氏フェイスブックより)
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支援の例 凸凹デザイン
片付けが苦手とされることも多いADHD(発達
障害のうち、注意力を保つことなどが多くの人よりも大変という特徴)のある方などのお部屋を対象に、ご本人と一緒に片付けをします。
5.知見と考察-震災支援のあり方(急迫期・日常移行期・さらに、その後)
(1)災害は、①新たな課題を生むと同時に②既存の社会の課題・脆弱性を顕在化させる
(3)「車中避難に至るプロセス」「困ったこと」からは、「自宅損壊への対応」「恐怖・不安の解消」「避難所の住みやすさ」「ニーズの把握と情報提供」が課題として析出された。
(2)車中避難が示すものは、「ホームレス」問題と重なるところが多い。支援には、そのノウハウが生かせる。
「ハウジング(モノ)、ファースト。ホーム(社会関係)、セカンド」
(4)これらのことから、急迫期の支援として、①速やかな建物の安全性の判定、②入居支援、③安心できる住宅の提供、④心理的なケア、⑤健康、トイレ、個別の事情、プライバシー等に配慮した避難所の準備と設置、⑥情報入手の回路設定、⑦住宅・支援関連情報のさまざまなルートでの提供 などが必要である。(平時からの準備が重要である。)
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(5)既存の福祉制度には「申請主義」と「縦割り」の問題があった。震災支援でも同様である。そのためには、①アウトリーチ型相談支援、②支援組織のネットワーク(受け皿群)、③持続性のあるコーディネート型支援(伴走型支援)が必要である。cf. 調査はアウトリーチ型相談支援でもあった。
3つのネットワークの形成①発見・つなぎ
②支援機関ネットワーク
③コーディネート
○仮設住宅に入居する被災者は、これからの生活に対する不安を抱えている。地震保険未加入者の生活再建や二重ローンの現実、失業、メンタル面など多岐にわたる複合的な困難要素を抱える被災者には、伴走型かつ総合的な個別相談支援体制が必要である。
○特に仮設住宅入居者へのアウトリーチ型の見守り・生活再建の相談支援を実施するためには「被災者総合支援センター(仮称)」のような機関を設置する必要がある。センターの人員は、東日本大震災等での支援経験や伴走型の生活支援の経験を持つ者(団体)が担うことがふさわしいと考える。
(6)仮設住宅への入居が始まれば、日常生活への移行・継続を支援する組織・人材が必要である。
(7)日常生活への移行した後は、2次的、3次的な被害が生じないよう包摂型支援の継続が必要である。→これは、被災者かどうかにかかわらず、生活困窮者を社会
に包摂していく仕組みづくりである。
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cf. 阪神・淡路大震災の教訓
(阿部彩 2011 『弱者の居場所がない社会』 講談社現代新書)
①時間の経過とともに被災者の心の状況がどのように変化するかを図式化した「復興曲線」によれば、震災直後最低であった被災者の心理状況は1年目、2年目にかけて上昇するが、その後、3年後を越えたあたりから急降下し、震災直後に近いレベルにまで落ち込む(←「復興感の2番底」)。(阿部,2011:199)
震災から15年、見過ごされてきた「心の復興」。働き盛りの被
災者を突如襲う「復興感の二番底」――「復興曲線」が語る新事実
NHK「追跡!AtoZ」取材班【第28回】 2010年1月22日
http://diamond.jp/articles/-/3270
②医学誌に掲載された論文(新福尚隆「阪神・淡路大震災被災者の長期的健康被害」『精神医学』48巻3号)によれば、被災者の初期(6ヶ月まで)の健康問題は、ストレスに関連した身体的症状、不安症状であった。抑うつ症状は6ヶ月まで増加傾向にあった。/だが、中・長期的に見ると、震災1年後あたりか
ら、健康問題が社会問題(飲酒問題、人間関係問題など)に転化し、徐々に増加し始め、この傾向は10年後も続いたとい
う。また、飲酒と喫煙の増加による健康被害が現れはじめ、それまで治療歴のない人のアルコール依存症も目立ち始めた。このようなストレス障害のリスクが最も高かったのは、特に、家族を失った高齢男性だという。(阿部,2011:199-200)
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仮設住宅における「孤独死」は、被災直後に起こったのではなく、震災から2年後以降に急増している。→心の問題は時間差で起きてくる
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/74/642/74_642_1813/_pdf
(阿部,2011:200)
田中正人・高橋知香子・上野易弘, 2009, 「災害復興公営住宅における
『孤独死』の発生実態と居住環境の関係」『日本建築学会計画系論文集』第74巻第642号
③直接的な被害に加えて、経済システムへの被害が、後に2次的、3次的に発生する。また、人口流出などによって地元の商店街が経営不振に陥る等、震災時点では被害を免れた人にも間接的な影響がおよぶ。(阿部,2011:192)
被災地は復興バブルで災害後数年は経済状況が上昇するが、その後は、県内の被災地外の地域よりも経済低迷が続いている。(阿部,2011:193-4)
また、NPOによる生活世界レベルでの「支援」といった文脈ではなく、より大きな社会システム上の課題ではあるが・・・
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④神戸新聞が震災後2年後、5年後、9年後に行った調査によれば、2年後よりもむしろ5年後、9年後の方が震災前と比べて収入が減ったと答えた人が多い。 (阿部,2011:196-6)
被災者の救済のために震災後に設けられたさまざまな政府系の融資の返済時期が来たことや、住宅再建や事業再開のための借金の負担、失業などが、被災者に2次的、3次的な経済的インパクトとして訪れるから、と分析されている。
(阿部,2011:196-6)
cf. 「みなし仮設」の家賃問題