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終末期医療に対する意思決定
千葉科学大学 大学院 看護学研究科
高橋方子1
千葉科学大学 公開講座 2018/11/18
本日の予定
2
1. 終末期医療についての意思表示をめぐって代理判断、看取りの満足度、事前指示、
終末期医療決定プロセスに関するガイドラインなど
2.日本版バリューズヒストリー(VH)とは?作成のプロセス、日本版VHの項目と理由、使用方法
3.アドバンスケアプランニングとは?アドバンスケアプランニング、事前指示は誰のため
自分の終末期医療について考えたことがありますか?
3
• Aさんは86歳男性、重度認知症がある。• 子どもはいなくて、妻Bさんが在宅介護をしながら、2人で暮らしていた。• ある日Aさんは自宅で転倒し、骨折のため、C病院に入院した。Aさんの骨折は
治ったが、筋力が低下して、寝たきり状態になってしまった。• さらに、入院中に誤嚥性肺炎を併発し絶食管理となり、肺炎の回復後に食事が
再開されたが、口をあけず、食事を取らなくなった。• 併せて意識状態が低下し、末梢の点滴だけでは、栄養が十分取れない状態と
なってしまった。
あなたなら、どうしますか?どうしてほしいですか?
4
• 医師からBさんに以下の説明があり、どうしたいか考えて下さいと言われた。
� 現在、骨折も誤嚥性肺炎も治っているが、わずかな食事でも誤嚥するため、再び肺炎を起す危険性が高い。
� このまま口から食事が取れなければ、Aさんに残された命は1ヶ月くらいである。� 胃瘻を造り、経管栄養を行えば延命することができる。
NPO法人PDN:PEGhttp://www.peg.or.jp/eiyou/peg/about.html
どうすればいいのかな。
あなたなら、どうしますか?どうしてほしいですか?
5
お父さんはどうしてほしいのかな?
私に経管栄養の処置ができるかな?
胃瘻を作らないと決めたら、もうお父さんは死んでもいいって私が決めたことになるのかな?
認知症でもお父さんがいなくなったら、独りで寂しくないかな?
このままでは身体が衰弱していくばかりだし
身体に穴を開けてまでも生きたいかな?
世話がたいへんになってお父さんが早く死ねばいいって思うようになってもいやだな
お父さん、どうしたいか自分で決めて、、、
人生の最終段階の医療・ケアについての意思表示
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人生の最終段階における 医療 の普及・啓発の在り方に関する検討会(2018) :人生の最終段階における医療関す意識調査 報告書 平成30年3月
人生の最終段階の医療・ケアについての意思表示
7人生の最終段階における 医療 の普及・啓発の在り方に関する検討会(2018) :人生の最終段階における医療関す意識調査 報告書 平成30年3月
事前指示:ADADADAD(advance care directive)とは?
将来自らの判断力が失われた事態を想定して、自分に行われる医療行為への意向について医師へ事前に意思表示をすること
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代理人指示
内容的指示
=リビングウィル
代理の意思決定者。つまり本人の意思決定能力が低下、もしくは消失したときに本人の意思を代行する人。「本人であったらどう考えるか」を推定する態度が望まれる。
生命維持治療を含む医療行為、希望する療養環境や周囲からの配慮、自分の死後に家族に望むことなどが含まれる。※DNAR(do not attempt resuscitation)も含まれる。心肺停止状態になったときに蘇生行為をしないでほしい
(心臓マッサージ、気管内挿管、人工呼吸器、除細動、昇圧剤の使用)
事前指示
日本における延命治療の問題
2004年北海道立羽幌病院
誤嚥窒息のため心肺停止状態で搬送された90代の患者の蘇生後に、医師が人工呼吸器を取り外して「死亡させた」として殺人罪として書類送検された。
2006年
富山県射水市民病院医師が複数の末期患者から人工呼吸器をはずし、殺人罪の容疑で捜査が入った。
2006年
事件後 「一旦装着した人工呼吸器は心臓死に至るまで取り外すことはしない。それを患者家族に十分説明しておくこと」を終末期医療の基本方針とした。
岐阜県多治見病院80代の患者が誤嚥窒息で運ばれた。この患者は蘇生処置後に心拍が再開したが、脳神
経外科医2名によって回復の見込みなしと診断され、本人が事前に延命処置を拒否する文
書を用意してあり、家族も治療の中止を希望し、病院倫理委員会も人工呼吸器の中止を容認したが、病院長と岐阜県の担当課が「尊厳死に関する法律やガイドラインが未整備で、医師が刑事罰に問われる恐れがあるとして治療の中止に反対し、結局中止されなかった。
延命中止問題 →終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会の発足→ガイドラインの作成へ
終末期医療決定プロセスに関するガイドライン(2007)が策定された経緯
• 人生の最終段階における治療の開始・不開始及び中止等の医療のあり方の問題は、従来から医療現場で重要な課題となってきた。
• 厚生労働省においても、人生の最終段階における医療のあり方については、昭和62年以来4回にわたって検討会を開催し、継続的に検討を重ねてきた。
• 誰でもが迎える人生の最終段階とはいいながらその態様や患者を取り巻く環境もさまざまなものがあることから、国が人生の最終段階における医療の内容について一律の定めを示すことが望ましいか否かについては慎重な態度をとってきた。
• 人生の最終段階における医療のあり方について、患者・医療従事者ともに広くコンセンサスが得られる基本的な点について確認をし、それをガイドラインとして示すことが、よりよき人生の最終段階における医療の実現に資するとして、厚生労働省において、初めてガイドラインが策定
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人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインが策定された経緯
• 平成27年3月
「終末期医療に関する意識調査等検討会」において、最期まで本人の生き方(=人生)を尊重し、医療・ケアの提供について検討することが重要であることから、「終末期医療」から「人生の最終段階における医療」へ名称の変更を行った。
• 平成30年3月(ガイドライン策定から約10年後)
近年の高齢多死社会の進行に伴う在宅や施設における療養や看取りの需要の増大を背景に、地域包括ケアシステムの構築が進められていることを踏まえ、また、近年、諸外国で普及しつつあるACP(アドバンス・ケア・プランニング:人生の最終段階の医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス)の概念が盛り込まれた。
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人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン
<項目4>
• 人生の最終段階における医療・ケアの提供にあたって、医療・ケアチームは、本人の意思を尊重するため、本人のこれまでの人生観や価値観、どのような生き方を望むかを含め、できる限り把握することが必要です。
• また、本人の意思は変化しうるものであることや、本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、本人が家族等の信頼できる者を含めて話し合いが繰り返し行われることが重要です。
<項目5>
• 本人の意思が明確でない場合には、家族等の役割がいっそう重要になります。
• 特に、本人が自らの意思を伝えられない状態になった場合に備えて、特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めている場合は、その者から十分な情報を得たうえで、本人が何を望むか、本人にとって何が最善かを、医療・ケアチームとの間で話し合う必要があります。
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事前指示の問題点:事前指示のない人も多い
早すぎる意思表明は役に立たない意思決定のプロセスがわからない
方策:バリューズヒストリー意思決定の根拠となる価値観歴
運用:バリューズヒストリー提示の質問内容に回答価値観の顕在化・意思決定の促進
代理人でも、示された価値観を用いて本人が望むと思われる選択が可能
米国における意思表示
日本におけるバリューズヒストリーの活用の可能性文化の相違(米国:個人を前提、日本:家族の絆を尊重)
科学研究費助成事業:「日本版バリューズヒストリーの開発」(課題番号:26670960)
平成27年度訪問看護認定看護師および在宅看護専門看護師418人を対象にデルファイ法による3回の調査 35項目
平成28年度看取りを経験された家族36人を対象とした調査 36項目
日本版バリューズヒストリーの開発
44項目
※バリューズヒストリーの開発にあたっての研究対象の選定理由� 訪問看護認定看護師、在宅看護専門看護師
→訪問看護師は在宅療養高齢者の意思把握の役割を担う極めて重要な立場→在宅療養高齢者の暮らしに密着し、自己決定の支援→意思把握に必要な情報を日常経験的に把握し意思を顕在化
� 看取りを経験した家族→家族が終末期医療の決定をしている場合が多い
東・永木ら(1997),上村・青木ら(2013)
日本版バリューズヒストリーの開発
Lambertらによる米国版バ
リューズヒストリーの質問内容(Lambert,Gibson,Nathanson,1990)
� 看取りを経験された家族・必須であると回答した人が
70%以上・必須度の平均が4.0以上
UNM Health Sciences Center
Institute for Ethicsのホーム
ページに掲載されている最新版のバリューズヒストリー(University of New Mexico,2014)の内容
在宅療養高齢者の意思に添う終末期医療が提供できたと訪問看護師が判断した事例から抽出された意思把握に必要な情報(高橋・布施,2013)を基本
�訪問看護認定看護師および在宅看護専門看護師調査
・必須であると回答した人が80%以上
・必須度の平均が4.0以上
日本版バリューズヒストリーの抽出基準
※回答の範囲1点:全く必須でない~5点:絶対に必須である
調査項目の設定
バリューズヒストリーの使用
�バリューズヒストリーは実質的な医療指示を目的とはしておらず、医
療判断を下す際に常に(意識的または無意識に)配慮して欲しい価
値前提を伝えてくれる手段
健康に対する考え方、医療・ケアチームとの関係、
人の世話になることについての考え方、意思決定の特徴、生き方、
安心できる環境、終末期医療に対する希望、代理判断者、介護費用
� 価値観は時間とともに変化するため、定期的に見直す。
� 必要と考えられる項目は自由に追加する。
� 家族をはじめ医師や訪問看護師、ケアマネージャーなどの関係者
に知っておいてもらう。
� 事前指示書を作成した場合は一緒に保管する。
健康に関する考え方
分野 日本版バリューズヒストリーの構成項目 訪問看護師調査 家族調査
日常生活動作で困難なこと ○ ○
最近の自分の健康状態 ○ ○
自分の健康状態について知ってもらいたいこと ○
健康上の問題と向き合う姿勢 ○ ○
病状の悪化が役割や能力に与える影響 ○ ○
健康上の問題に対する医師から説明内容 ○ ○
余命についてどう思っているかとその理由 ○
健康に対する
考え方
健康に関する考え方が必要な理由
• ヘルスプロモーションの考え方は重要。太く短い人生か、細く長い人生か、酒、タバコ
を例にとっても根幹の本人の考え方の影響は大きい。
• 意思を決定する機会として健康状態が影響するので絶対必要と考えます。
• 日頃どのように健康問題を捉えそれについて向き合い取り組んでいるかなどその人
なりの考え方を知ることは重要なことだと思う。
• 病状を医師からどう説明を受けどう受け止めているか、今後どうしていきたいかは重
要な情報である。
• どのように説明され、それをどのように理解しているのか、そして余命についてどう考
えどのようにしていきたいかがわからないと支援する方向がぶれる可能性があるの
で必要である。
• 健康状態やその価値観、生活に与える影響は終末期医療に対する意思決定に大き
く影響すると思う。
医療ケアチームとの関係
分野 日本版バリューズヒストリーの構成項目 訪問看護師調査 家族調査
受診状況 ○
主治医の選択理由 ○ ○
主治医に対する信頼 ○ ○
医療処置の決定を主治医にゆだねることの希望 ○
医師以外のケアサービスの関わり方の希望 ○ ○
医療・ケア
チームとの関係
医療ケアチームとの関係が必要な理由
• 主治医が信頼できるかどうかによって看取る場所の選択が違ってくる。
• 自分の最期を見とどけてくれる先生とは信頼関係がなければうまくいか
ない。
• 医師を信頼しているかどうかは意思決定をしていく上で重要である。
• 主治医に対して信頼があるケースでは意思決定において揺れが少ない
ことが多いように思われる。
• 専門職との信頼関係により自己の表出ができると考えられる。
• 主治医に対する信頼は選択した理由と関係が強い。自分の意思があっ
て選択した医師を他人の判断のときの参考になる。
人の世話になることについての考え方
分野 日本版バリューズヒストリーの構成項目 訪問看護師調査 家族調査
人の世話になる事についての考え方 ○ ○
人の世話を受けなくてはならなくなった時の希望 ○ ○
人の世話になるこ
とについての考え
方
人の世話になることについての考え方が必要な理由
• 自分でこれだけはしたいということもあるし家族にしてほしい、してほしくないなどい
ろいろな価値観があるので必要である。
• 生活の中でどのように過ごしたいかということをあらわすためにも必要と考える。
• 生きる希望や生きがいにもつながる考え方なので重要である。
• 自立していることが生きている事が、重要な価値観と考える人もいる。
• 「人」の定義が重要。嫁などの家族と施設の職員では違う。どこまでの範囲かが分
かるようにしたほうがいい。
• 生活史、人生観が大きく影響し、終末期(後天的)にはそのかかわりの中で新たに
価値変化を見出せば変わると思う。
• 本人の確認を必要とするが、これは場合によって変化しやすいと考える。
意思決定の特徴
分野 日本版バリューズヒストリーの構成項目 訪問看護師調査 家族調査
自分の意思決定の特徴 ○ ○
自分のコミュニケーションの特徴 ○ ○意思決定の特徴
意思決定の特徴が必要な理由
• 情報をたくさん提供してもらって自分で決めるのか、家族に一緒に考えてもらうかな
どその人によって違うので必要である。
• 意思決定の機会を作るときに配慮する点から考えると必要と思う。
• 意思決定をしても、それをどう表現し、誰に伝えるかも重要な項目だと思う。
• とくにコミュニケーションが得意でない人にとっては、これらの特徴を早期に把握して、
他者に伝えられないと間に合わなくなる。
• 個別性が大切なので、人を理解していく上でこれらの特徴が理解できているかは大
切である。
• その人らしさは、人とのコミュニケーションの中で大きく浮きぼりとなり、意思に反映
する。
生き方分野 日本版バリューズヒストリーの構成項目 訪問看護師調査 家族調査
その人が望む生活 ○ ○
大事にしたい事 ○ ○
責任を果たしたい事 ○ ○
やり残したことがあると感じている内容 ○
人生に対する姿勢 ○ ○
自分の人生に対する満足感 ○ ○
生きる事に対する幸福感 ○ ○
自分が恐れていること ○
趣味、テレビ鑑賞など自分が好きな活動 ○
自分を笑わせる事 ○
共に過ごしたい人 ○ ○
人生における家族の価値 ○
死に対する考え方 ○
生き方
生き方が必要な理由
• これが最も肝と思います。文章で記入し意思決定を託される人にも分かるように示
せるとよいと思う。
• 望む生活、大事にしたいことは絶対に必要かと思う。その方の今までの生き方が表
れてくるのではないかと思う。
• 生き様は死に様に大きく影響すると思うので、その生き方を知ることは重要である。
• 最期までその人らしく暮らすための支援の方向性を決める大事な項目だと思う。残
された時間をどう過ごすのかを決めていくために、必要な項目なので詳しく知りたい
ところである。
• 終末期医療の意思決定には人生の振り返りが必要である。そして治療の中断が多
く選択され、死を受け入れられることを迫られるため、これらは必要最低限の価値
観である。
安心できる環境
分野 日本版バリューズヒストリーの構成項目 訪問看護師調査 家族調査
安心できる環境 ○ ○
病気や障害を持った時や加齢の影響があるときでも
安心していられる環境○ ○
過去10年間に一緒に住んでいた人 ○
安心できる環境
安心できる環境が必要な理由
• 安心できる環境は心身を安らげるために必要と思われる。
• 心地よさは精神的にも身体的にも安定できる条件のひとつである。
• 安心できる環境であることは、どのような意思決定を行うとしても適切な判断を行う
うえで重要である。
• 終末期を過ごす環境(人も含めて)に対しても、潜在的な希望を持っているため表在
化することは意思決定に必要である。
• 今後は、サービス付き高齢者住宅のようなところに住むのか、自宅で最期まで過ご
すのかということも決めていくケースが増えるので必要である。
• どんな環境で最期を過ごしたいか、サービス調整の上でも必要である。
終末期医療に関する希望
分野 日本版バリューズヒストリーの構成項目 訪問看護師調査 家族調査
末期疾患になった場合の延命処置に対する希望 ○ ○
意識の回復が望めない場合の延命処置に対する希望 ○ ○
重篤な認知症になった場合の延命処置に対する希望 ○
臨終場所の希望 ○ ○
臨終の際の家族の同席に対する希望 ○
臨終の際に最も重要だと思うこと ○
本人が希望する終末期医療に対する家族の同意 ○ ○
終末期医療に対
する希望
終末期医療に関する希望が必要な理由
• 自分自身で決めることも必要である。家族では決められないこともある。
• このあたりは急変して病院に搬送するかどうかにも関わってくるし、家族や親戚の
判断で本人の意思が反映されないケースもあるので大事だと思う。
• 家族が代理意思決定を行うことの困難さ、自分の意思に反する選択のことを考える
と事前に伝えておく必要があると思う。
• 意思決定時期にこれらの希望を自分で決めておく(考えておく)ことは、最期のとき
を自分で決められ納得のできる時間を持つことができる。
• その時になった時には、確認すべきことが困難な場合が多いので。調子のよい段
階で確認できていると判断しやすいかと思う(希望に沿いやすいので)。
• 希望が全て叶うとはいかずとも、希望の確認は必要である。
終末期医療に関する希望が必要な理由
• 臨終の際の家族の同席は望んでも相手の意思がある。今までの人間関係もある。本
人の意思に添おうとして代理人が困難するのでは?
• 臨終の際に最も重要だと思うことや家族の同席に対する希望までイメージできるかど
うかむずかしいかもしれない。
• 何を延命処置ととらえるか明確にする必要がある。
• 末期疾患ではある程度予測ができるが、それ以外では希望を聞いていく時期が難し
い。どのようにし終活するか事前に親しい人に伝えておくことが必要である。
• 折にふれ、考えや希望が変化していないかを見返すことが必要である。そのためには
自由に語れる環境と関係性が必要となる。
• これまでの過程でイメージまたは考える機会があったと思われ、この繰り返しによって
これからの過ごし方を整理していくのだと思う。
代理判断者
分野 日本版バリューズヒストリーの構成項目 訪問看護師調査 家族調査
自分の代わりに終末期医療の判断をしてくれる人の希望 ○
代わりに判断する人の承諾の有無 ○
代わりに判断を頼みたい具体的な状況 ○
代理判断者
代理判断者が必要な理由
• 独居や自分で意思表示ができなくなったときは必要である。
• 自分の人生に対する後押しという意味でも必要だと思う。
• 誰が代理判断者になるか必ずしも親族がするとは限らない。
• 自分の思いを理解してくれている代理人の存在の有無を把握することは大切である。
• 家族との同意がとれていない場合本人が判断できない時に違う結果になってしまうこ
とも多いので必要である。
• 家族に意思決定を委ねる人もいるが、家族も悩み続けることもある。それらに対し意
思表示をしておくことは代理決定者のアフターフォローにも必要である。
• 在宅で積極的な治療をしないというようなとき、どうしても家族の同意は必要である
(親戚などが口を出してきてもめることも多いので)。
• 代わりに判断する人には具体的にどんなことをどんな風にと説明した上で承諾しても
らう。あとあと混乱しないためにも。
介護費用
分野 日本版バリューズヒストリーの構成項目 訪問看護師調査 家族調査
自分の介護に必要な資金の心配 ○ ○
自分の介護にかける費用の方針 ○ ○介護費用
介護費用が必要な理由
• 希望の実現のために必須条件である。
• 資金がない時には利用できる制度などあらかじめ説明するなど準備で
きる。
• 金銭的な不安を抱えていることで選択肢がないと思っている患者も多い。
また終末期の過ごし方について費用面のことが最重要になっている人
もいるので、明確にしておく必要がある。
• 経済的な側面は受けたい医療、介護に心理的にも制限がかかるので
重要である。
• 何をするにも資金は必要である。きちんと確認しておくことで最期の過
ごし方が変わってくることを知っておく必要がある。
おわりに
�自分の価値観を振り返り、家族や大事な人と終末期医療の意思決定について考えてみてください。
�自分の価値観を振り返るときに日本版バリューズヒストリーを使ってみてください。自分が大事にしたいこと、家族との関係など、人生の終焉までに見直すことが明らかになってくるでしょう。もちろん、自分の好きなエンディングノートでもかまいません。
�自分の終末期の迎え方によっては、遺された家族に悲しみや後悔をもたらします。反対に生きる希望も与えることができます。
�倒れてからではなく、元気なうちから考え、周りの人と話し合うことそれが大切です。
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私の人生は私のも
の!
私は周りの人と生きている!
終末期医療について考え、話し合うことは、皆を幸
せにします!
引 用 文 献
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ガイドライン解説編https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197702.pdf
人生の最終段階における 医療 の普及・啓発の在り方に関する検討会(2018) :人生の最終段階における医療関す意識調査 報告書平成30年3月https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/saisyuiryo_a_h29.pdf
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ご清聴をありがとうございました。
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