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2016:05 48 ●  シリーズ 商圏分析と立地診断[第24回] 自社競合となるのは33店 図 1 は、DCM グループ(●印)と (株)ケーヨー(■印)のホームセ ンター(HC)およびプロストア全 店をマッピングしたもの。前述のよ うに、各社の商勢圏がおおむね棲み 分けできていることが分かる。 この地図を基にして、DCMグル ープとケーヨーデイツー(D2)の 競合状況を示したのが表1。D2の5 キロ圏内に1店でもDCMがある店 をピックアップした。表の「○km 圏DCM」は、それぞれの圏内にあ るDCMの店数を示している。また 「○ km 圏自社」は、自店を含む自社 競合の店数。その右には各圏内の人 口と、1 店当たりの人口(人口を D2 とDCMの店数で割ったもの)を掲 載した。表は「5km圏DCM」の降 順に並べてある。 D2 の 5 キ ロ 圏 内 に 1 店 以 上 の DCMがある店は33店。このうち2 店のDCMがある店は6店、3店あ る店は 3 店、4 店ある店は 1 店。 これが3キロ圏内になると、1店 以上ある店は16店ある。このうち 2店のDCMがある店は3店、3店あ る店は 2 店。 また2キロ圏内では、1店以上が DCMホールディングスとの経営統合で 撤退する可能性のあるケーヨーD2を予測 資料提供:技研商事インターナショナル(株) 『MarketAnalyzer™』 DCMホールディングス(株)と(株)ケーヨーが 経営統合に向けた協議を開始した。DCMグループの 主な商勢圏は、DCMホーマック(株)が北海道およ び東北地方、DCMカーマ(株)が中部地方、DCMダ イキ(株)が近畿・中国・四国地方だ。これに対して (株)ケーヨーは関東地方が主な商勢圏なので、真っ 向から競合している店はそう多くはないと思われる。 そこで今月は、GIS を使って実際にどの程度の店が 競合し、またどの程度閉店の可能性があるのかを調べ てみた。 (田中) 図1 表1

DCMホールディングスとの経営統合で 撤退する可能性のある …2016:05 49 シリーズ 商圏分析と立地診断[第24回] 9店、2店ある店が3店。閉店候補は全16店

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シリーズ 商圏分析と立地診断[第24回]

自社競合となるのは33店図1は、DCMグループ(●印)と

(株)ケーヨー(■印)のホームセンター(HC)およびプロストア全店をマッピングしたもの。前述のように、各社の商勢圏がおおむね棲み分けできていることが分かる。この地図を基にして、DCMグループとケーヨーデイツー(D2)の競合状況を示したのが表1。D2の5キロ圏内に1店でもDCMがある店をピックアップした。表の「○km圏DCM」は、それぞれの圏内にあるDCMの店数を示している。また「○km圏自社」は、自店を含む自社競合の店数。その右には各圏内の人口と、1店当たりの人口(人口をD2とDCMの店数で割ったもの)を掲載した。表は「5km圏DCM」の降順に並べてある。D2の 5キロ圏内に1店以上のDCMがある店は33店。このうち2店のDCMがある店は6店、3店ある店は3店、4店ある店は1店。これが3キロ圏内になると、1店以上ある店は16店ある。このうち2店のDCMがある店は3店、3店ある店は2店。また2キロ圏内では、1店以上が

DCMホールディングスとの経営統合で撤退する可能性のあるケーヨーD2を予測

資料提供:技研商事インターナショナル(株)『MarketAnalyzer™』

DCMホールディングス(株)と(株)ケーヨーが経営統合に向けた協議を開始した。DCMグループの主な商勢圏は、DCMホーマック(株)が北海道および東北地方、DCMカーマ(株)が中部地方、DCMダイキ(株)が近畿・中国・四国地方だ。これに対して

(株)ケーヨーは関東地方が主な商勢圏なので、真っ向から競合している店はそう多くはないと思われる。そこで今月は、GISを使って実際にどの程度の店が競合し、またどの程度閉店の可能性があるのかを調べてみた。� (田中)

図1

表1

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シリーズ 商圏分析と立地診断[第24回]

9店、2店ある店が3店。

閉店候補は全16店これらの資料から、閉店もしくは移転する可能性が高い順に抽出したのが以下①~⑤の全16店だ。①2キロ圏に2店のDCMがある3店(表のケーヨー1、同5、同6)。②2キロ圏に1店のDCMと1店の自社競合がある2店(表の11、12)。③3キロ圏に2店以上のDCMがある2店(表の2、7)。④5キロ圏に2店以上のDCMがある5店(表の3、4、8、9、10)。⑤5キロ圏に1店のDCMと1店の自社競合がある4店(表の13、27、31、32)。

一方で、競合店の数ではなく1店当たり人口で抽出する方法も考えられる。例えば2キロ圏の1店当たり人口が最も少ないのはケーヨー13と同1の1.6万人。3キロ圏では同じく同1の2.5万人が最も少なく、5キロ圏では同9の3.7万人が最少となる。商圏や売場面積その他の状況にもよるが、単純に1店当たり人口で考えると、過度に少ない店はないようだ。これまで互いに営業を続けていたのだから当然といえば当然だ。

存続できそうなD2岡崎店次に、DCMと競合しているD2を何店かピックアップして、地図上でその競合状況を示したのが図2~ 5の地図。それぞれ、一番内側の円が半径2キロ圏、真ん中の円が半径3キロ圏、一番外側の円が半径5キロ圏を示している。また各図の枝番2のメッシュ図は、色が濃い部分は人口の多い地域を示している。図2はD2岡崎店の周辺図。2キロ圏内にDCMグループの店はないも

図2-1

図3-1

表2

図2-2

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のの、3キロ圏内ではHCのDCMカーマが2店、プロストアのホダカが1店ある。また5キロ圏の円のすぐ外側にもDCMカーマが2店ある。2キロ圏の人口は5.7万人、3キロ圏は13.5万人、5キロ圏は28.6万人。2キロ圏内にDCMはないが、DCMカーマ2店とは商圏が重なっているため、足元商圏を独占しているという訳ではない。ただ、D2岡崎店の屋内売場面積は1,900坪なのに対し、DCMカーマ岡崎店は約1,200坪、DCMカーマ岡崎上和田店は約700坪と、DCMグループの方が屋内売場面積は小さい。またメッシュ図を見ても分かる通り、足元人口はD2岡崎店が最も多い。競合状態から考えて少なくてもいずれか1店が撤退もしくは移転する可能性があるが、それはD2ではなくDCMグループの店になるかも知れない。

至近距離にあるD2清水店図3は、D2清水店の周辺図。2キロ圏内にはDCMカーマ清水店(プロストアのホダカ清水店を併設)がある。この2店を除けば、5キロ圏内にDCMグループの店はない。2キロ圏の人口は8.0万人、3キロ圏は14.7万人、5キロ圏は23.2万人。ピックアップした4店の中では、足元の人口が最も多い。1店当たり人口を考えると成立できない人口ではないが、自社競合と考えると近すぎる立地だ。D2の屋内売場面積は約800坪に対し、DCMカーマの屋内売場面積は約2,600坪なので、D2は閉店もしくは増床を兼ねて移転する可能性がある。

売場規模の小さいD2上尾店図4は、D2上尾店の周辺図。2キロ圏内にDCMホーマックのHCが1店、園芸専門店のローゼンハーブが

1店ある。それ以外には、5キロ圏まで円を広げてもDCMグループの店はない。2キロ圏の人口は5.9万人、3キロ圏は14.1万人、5キロ圏は29.0万人。このケースも2店のHCが成立できない人口ではないが、自社競合と考えると近すぎる。D2の屋内売場面積は約600坪、DCMホーマックの屋内売場面積は約2,600坪なので、D2は閉店もしくは増床を兼ねて移転する可能性がある。その場合はメッシュ図を見ても分かる通り、足元人口がより多く取れる北東側への移転が望ましい。

自社競合が多いD2春日井店図5のD2春日井店は、2キロ圏内にDCMカーマが1店ある。3キロ圏内になるとDCMカーマが1店増え、5キロ圏内ではさらにもう1店増える。また5キロ圏の円のすぐ外側にも、DCMカーマがもう1店あることが分かる。2キロ圏内の人口は5.0万人、3キロ圏は10.1万人、5キロ圏は28.0万人。5

図3-2

図4-1

表3

表4

図4-2

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シリーズ 商圏分析と立地診断[第24回]

キロ圏の人口は比較的多いものの、足元人口はピックアップした4店の中では最も少ない。D2春日井店の屋内売場面積は約1,200坪、DCMカーマ春日井店は約1,300坪。この商圏では後発のD2は2004年の開店で、もう10年以上営業を続けているが、DCMグループとの競合が多い地域なのでいずれかの店をより効率的な立地へと移転する可能性はある。

茨城県では売場面積シェア1位に図6は、茨城県内のHCをマッピングしたもの。●印がDCMグループの店、■印がD2、・印がその他企業のHCを示している。D2を囲んでいる円は半径5キロ圏を示しているが、それぞれの円の中にはDCMグループの店が殆ど入っていないことが分かる。同県内のHCは全121店で、屋内売場面積の合計は約16万坪。店数でシェアを出すと、D2は11店(シェア9.1%)で5位、DCMホーマックは13店(同10.7%)で3位になる。この2社が統合した場合は、シェア2位の山新(同18.2%)を抜いて2位になる。ちなみに店数シェアの1位は41店(同33.9%)あるコメリ。また屋内売場面積では、シェア3位のDCMホーマック(同14.3%)とシェア6位のケーヨー(同7.7%)を足すと同22.0%となり、山新(同21.3%)を抜いてシェア1位になる。

図5-1

図5-2

表5

図6