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Title Development of advanced Compton imaging camera with gaseous electron tracker and first flight of sub-MeV gamma-ray imaging loaded-on-balloon experiment( Abstract_要旨 ) Author(s) Takada, Atsushi Citation Kyoto University (京都大学) Issue Date 2007-07-23 URL https://doi.org/10.14989/doctor.k13323 Right Type Thesis or Dissertation Textversion author Kyoto University

Development of advanced Compton imaging camera with …4.μ-PIC, μ-TPC & Scintillator: コンプトンカメラを構成するガス飛跡検出器のシステムを開発し、その飛跡検出器と

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Page 1: Development of advanced Compton imaging camera with …4.μ-PIC, μ-TPC & Scintillator: コンプトンカメラを構成するガス飛跡検出器のシステムを開発し、その飛跡検出器と

TitleDevelopment of advanced Compton imaging camera withgaseous electron tracker and first flight of sub-MeV gamma-rayimaging loaded-on-balloon experiment( Abstract_要旨 )

Author(s) Takada, Atsushi

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 2007-07-23

URL https://doi.org/10.14989/doctor.k13323

Right

Type Thesis or Dissertation

Textversion author

Kyoto University

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【107】

氏     名 高たか

田だ

淳あつ

史し

学位(専攻分野) 博  士 (理  学)

学 位 記 番 号 理 博 第 3196 号

学位授与の日付 平 成 19 年 7 月 23 日

学位授与の要件 学 位 規 則 第 4 条 第 1 項 該 当

研究科・専攻 理 学 研 究 科 物 理 学 ・ 宇 宙 物 理 学 専 攻

学位論文題目 Development of Advanced Compton Imaging Camera with GaseousElectron Tracker and First Flight of Sub-MeV Gamma-Ray ImagingLoaded-on-Balloon Experiment(ガス電子飛跡検出器を用いたガンマ線コンプトンカメラの開発及び大気球に

よるサブMeVガンマ線観測実験)

(主 査)論文調査委員 教 授 谷 森   達  教 授 小 山 勝 二  教 授 笹 尾   登

論   文   内   容   の   要   旨

ガス電子飛跡検出器を用いて、従来不可能であった散乱電子飛跡検出型コンプトンカメラを開発し、この新しい検出器を

用いた気球実験を行い、宇宙拡散ガンマ線および大気ガンマ線の観測に成功した。この論文は9章から構成される。

1.MeV Gamma-Ray Astronomy: 1950年代に早川らがπ0起源のガンマ線存在の示唆をして以来、ガンマ線でも気球や衛

星により観測が行われている。これまでに行われた衛星観測および発見されたガンマ線天体をまとめた。

2.Detection of Gamma-Rays: MeVガンマ線天文学を拓くには、エネルギーと到来方向を知る必要があるが、X線のよう

な全反射による集光は使えない。そこでMeV領域で使われる検出方法についてまとめた。

3.Advanced Compton Imaging: 電子飛跡検出型コンプトンカメラは、1光子毎に到来方向とエネルギーを特定でき、ガ

ンマ線以外の事象を排除できるという特徴を持っている。その優位性を評価した。

4.μ-PIC, μ-TPC & Scintillator: コンプトンカメラを構成するガス飛跡検出器のシステムを開発し、その飛跡検出器と

シンチレーション検出器の性能を評価した。

5.Tracking of Charged Particles: このコンプトンカメラで重要となる荷電粒子の飛跡検出能力と電子の飛跡の解析につ

いて、宇宙線ミュー粒子を用いた実験やシミュレーションにより評価した。

6.Prototype Camera: アルゴンガスを用いて電子飛跡検出型コンプトンカメラを作成し、実際にガンマ線のイメージング

試験を行った。この試験により、測定原理が実証された。

7.Flight Model Detector: 宇宙拡散・大気ガンマ線を測定する気球実験用の検出器の設計を、シミュレーションを用いて

行った。この検出器が35kmの上空で3時間観測すれば、3 strの視野内に200個のガンマ線が観測できると期待出来る

ことかわった。この結果を元に、キセノンガスを用いた気球搭載用検出器を作成し、ガンマ線イメージが取得できるこ

とを確認した後、その性能評価を行った。

8.Balloon Flight: 気球搭載用に開発した検出器を実際に気球に搭載し、三陸大気球観測所から放球された。上空において、

検出器・データ収集システムとも安定動作した。回収したデータを解析したところ、実験を通して約1000事象がガンマ

線として再構成でき、水平飛行中の視野内の事象は3.0時間の有効時間で199事象あった。これはシミュレーションの

結果と良く一致する。また、再構成された事象からガンマ線フラックスの天頂角依存性や宇宙拡散・大気ガンマ線の検

出に成功。観測されたフラックスはいずれも過去に行われた実験と矛盾のない結果となった。特にサブMeV領域での

データは過去に1,2例しかなく物理的にも重要なデータとなった。

9.Summary & Future work: 今回の気球実験により、電子飛跡検出型コンプトンカメラが気球高度においてもガンマ線

観測が可能であることを示せた。また電子飛跡を捕らえることで、従来より高いS/Nが実現できることが判明、今後

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予定されている大型装置での気球観測での観測可能性を最後に議論した。

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

近年、X線観測、ガンマ線観測など高エネルギー天文学は大きく進展し、注目を集めている。そのなかで0.1MeVから数

10MeVにわたる低エネルギーガンマ線の天体観測は大変遅れている。進歩著しい天文学の中で数少ない未開拓領域である。

この領域はガンマ線で唯一分光が可能な核ガンマ線放射領域であり、星の元素合成の様子が唯一直接観測出来る領域であり、

またブラックホール近傍を直接観測が期待されるなどガンマ線領域でも最も興味深いエネルギー領域と認識されている。し

かし低エネルギーガンマ線の到来方向の測定は困難であり,コンプトン散乱の散乱電子および電子を捕らえるコンプトンカ

メラ(CP)のみが唯一ガンマ線の方向を得ることが出来る手法である。90年代 GRO 衛星に搭載された CP 検出器

COMPTELが唯一全天観測を行い約30個程度のガンマ線天体を観測した。しかし予想されたガンマ線天体は数百であった

が雑音ガンマ線が強く,予想以上に宇宙でのMEVガンマ線検出が困難であることが認識された。申請者は従来のCPでは

測定出来なかった散乱電子の方向をも捕らえ、完全にガンマ線の入射方向を測定できる電子飛跡検出型CPの開発を原理実

証器から行い、さらに実証のための気球による宇宙拡散ガンマ線および大気ガンマ線測定のための観測装置製作の中心とな

って研究を遂行した。気球実験は平成18年9月に行われ、データ取得に成功し、データ解析を行いサブMeV領域での宇宙

拡散および大気ガンマ線のスペクトルを得ることが出来た。

申請者はMeVガンマ線天文学の意義を述べ、装置原理、プロトタイプ器開発、気球用装置開発について説明した。特に

気球特有の省電力、熱放射などについて報告した。さらに取得されたデータの解析、特にガンマ線を宇宙線雑音からどのよ

うに分離されたか、また得られたガンマ線どのように宇宙拡散ガンマ線と大気ガンマ線成分に分離することが出来たかをシ

ミュレーションとの検討から詳しく述べた。さらに得られたガンマ線分離能力からこの新型装置が従来のCP検出器より10

倍程度S/Nの改善が実現したことを報告した。従来、CP法ではサブMeV領域での宇宙ガンマ線観測の例は1例程度しか

無く、この結果は今後のこの領域の宇宙観測の実現性が高まったことを示すことができた。最後に現在進行中の大型装置に

よる気球実験でのガンマ線天体がこの成果により充分可能であることを示した。

この博士論文は申請者が原理検討から気球実験による検証までを中心となって遂行した成果をまとめた完成度の高い論文

である。よって、本論文は博士(理学)の学位論文として価値あるものと認める。また、論文内容とそれに関連した事項に

ついて試問を行った結果、合格と認めた。