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【資料6】 1 別紙1 平成24年度課題解決型医療機器等開発事業 「低侵襲心臓血管治療普及拡大を目的とした長時間留置可能な 抗血栓性血栓捕捉フィルターデバイスの開発及び製品化」 研究成果報告書(要約版) 平成25年 2月 委託者 経済産業省 委託先 東レ株式会社

【資料6】【資料6】 3 第1章 研究開発の概要 1-1 研究開発の背景・研究目的及び目標 ステント留置術において、ステントを拡張した際、狭窄部の病変組織や血栓(以下、プ

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【資料6】

1

別紙1

平成24年度課題解決型医療機器等開発事業

「低侵襲心臓血管治療普及拡大を目的とした長時間留置可能な

抗血栓性血栓捕捉フィルターデバイスの開発及び製品化」

研究成果報告書(要約版)

平成25年 2月

委託者 経済産業省

委託先 東レ株式会社

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【資料6】

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目 次

第1章 研究開発の概要

1-1 研究開発の背景・研究目的及び目標 p.3

1-2 研究体制(研究組織・管理体制、研究者氏名、協力者) p.5

1-3 成果概要 p.7

1-4 当該研究開発の連絡窓口 p.8

第2章 本論

2-1 サブテーマ1:プロトタイプの有効性・安全性・優位性の検証

2-1-1 動物実験 p.8

2-1-2 モデル実験系確立 p.11

2-2 サブテーマ2:基本製造プロセスの確立

2-2-1 デバイス改良・部材の選定・組み立てプロセス確立 p.13

2-2-2 抗血栓性処理プロセスの確立 p.22

最終章 全体総括

3-1 全体まとめ p.24

3-2 来年度に向けた課題 p.24

3-3 今後のスケジュール

3-3-1 薬事申請の計画 p.25

3-3-2 特許取得の計画 p.25

3-3-3 事業化する医療機器の概要 p.26

3-3-4 事業化(上市)までのスケジュール p.26

3-3-5 事業化の体制 p.27

3-3-6 今後の研究計画の概要 p.27

参考文献 p.28

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【資料6】

3

第1章 研究開発の概要

1-1 研究開発の背景・研究目的及び目標

ステント留置術において、ステントを拡張した際、狭窄部の病変組織や血栓(以下、プ

ラークと記す)が血管壁から剥がれ、微小片となって脳に飛散し脳梗塞を引き起こすことが

報告されており、特に脳に近い頸動脈のステント留置術においては発生率が高い(5%)。プ

ラークを捕捉するデバイスとして、頸動脈用途で海外メーカーの血栓捕捉フィルターデバイ

ス2製品が、冠動脈用途で国内メーカーの1製品が国内で承認され使用されている。

既存の血栓捕捉フィルターデバイスは血流の阻害が大きく、抗血栓性がな

いため使用可能時間が約 15 分と非常に短い。本研究では、①血流の阻害を低

減するために開孔率を増加させ、②血管とのフィット性に優れ飛散血栓の捕

捉性能が高いフィルターを開発し、さらに③抗血栓性処理することで、使用

可能時間が手術時間(3 時間)(本開発品の目標性能)を超えるという点で、

従来品に対して優位性を持つ血栓捕捉フィルターデバイスを開発する。

PTMC 研究所と東レがそれぞれ独自に開発した血栓捕捉フィルターデバイスおよび抗

血栓性技術を組み合わせて競争力のあるフィルターデバイスを市場に投入する。本事

業では、部材製造から滅菌までの基本製造プロセスを確立し、治験品試作・

生産設備構築と共に、薬事申請に必要な設計検証(治験は除く)を実施する。

上記に加えて、従来のフィルターデバイスの本質的な欠陥はフィルターの

搬送及び回収にそれぞれ別個にカテーテルを必要とし、操作が煩雑である。

さらにそれらの操作に伴う合併症の発生の報告がみられる。この欠点を補う

ことを目的にして、プロトタイプのフィルターデバイスを発展改良し、新た

に一体型フィルターデバイスを開発した。これはフィルター搬送用のカテー

テルと回収用のカテーテルがフィルター本体に組み込まれ、一体化した構造

であり、搬送及び回収に別個のカテーテルを挿入及び回収する操作が必要な

くなるので、飛躍的に操作が簡便になる。

本年度は、抗血栓性フィルターデバイスの基本プロセスを確立する。PT

MC研究所の主導のもとに、フィルターデバイスの部材を決定し、量産可能な組立の基

本プロセスを確立し、管理・製品規格を決定する。また、2013 年度末の目標である、

量産品の規格適合性試験の適合に向けて、適合性検証を開始する。

サブテーマ1: プロトタイプの有効性・安全性・優位性の検証

① 動物実験(PTMC研究所、京都大学、東レ株式会社)

中動物の頸動脈へフィルターを留置し、使用可能時間及び使用条件、安全性を検証し、従

来品との優位性を明らかにする。昨年度は、フィルターの部材を確定した。本年度は、引き

続いて動物実験及びフィルターの使用条件を確立し、フィルターの使用可能時間と安全性の

検証を5例以上の動物実験で確認する。動物実験時、定期的に採血し、血液凝固時間や血液

凝固能等を評価することで、フィルター留置前後の血液性状に変化があるか否かを確認する。

動物実験における動物管理や手術中の手技は PTMC 研究所が京都大学と共に実施する。採取

した血液を用いた生物学的評価及び留置後に回収したフィルターの機械的物性及び付着物の

評価等を東レが実施する。

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【資料6】

4

② モデル実験系確立(東レ株式会社)

フィルターの抗血栓性能を最高レベルまで引き上げるための処理プロセスや抗血栓性材料

の合成プロセスの変更に伴う、性能評価が可能なモデル実験系を構築し、評価結果に再現性

があるか否かを見極める。昨年度、抗血栓性処理を施すことによって、トロンビン生成が遅

延するという知見を得た。本年度は、昨年度に得た知見を活かした抗トロンビン性能を評価

する評価系を確立する。PTMC研究所が、これまでの動物実験の蓄積データに関する情報

提供等を行い東レの評価系構築をサポートする。

サブテーマ2: 基本製造プロセスの確立

③ 部材の選定・組み立てプロセスの確立(PTMC研究所)

昨年度に部材選定を終了し、PTMC研究所のフィルターデバイス組み立て工程を量産実

績のある東レに移管することができた。今年度は、次の段階として、大量生産に対応できる

よう生産加工が容易な組立プロセスの指針と工程管理・製品管理項目を決定しプロセスを構

築する。PTMC研究所が主体となってフィルター構造の最適化を行い、東レに指導を行い

ながら、生産加工を容易にするため、組立に必要な治具を設計し、設計後の機械的強度の検

査を定量的に行う。

④ 抗血栓性処理プロセスの確立(東レ株式会社)

目的の性能を達成できる抗血栓性ポリマーの固定化量及び抗血栓性処理の均一性に関する

規格試験法について、昨年度で化学分析・表面分析による定量測定が有効であることを検証

できたので、今年度は、本法を活用して検討を行い、暫定規格を決定する。また、フィル

ターに対する抗血栓性ポリマーの固定化方法(処理濃度、温度など)を本法を用いて検討し、

処理プロセスを確立する。PTMC研究所も、これまでの動物実験の蓄積データに関する情

報提供等を行い処理プロセス確立をサポートする。

確立した組み立てプロセス及び抗血栓性処理プロセスに基づいて試作した抗血栓性フィル

ターについて、GLP基準に則した生物学的安全性試験を実施する。

⑤テーマ全体の進捗管理と運営(東レ株式会社)

東レ株式会社と PTMC 研究所は開発会議を月に1回以上の頻度で開催し、進捗状況、課題

と解決策を明確にする。京都大学は動物実験に関する課題が生じた際、また本研究を統括す

る上で助言、指摘事項等が必要となった場合、東レ株式会社と PTMC 研究所と別途相談会議

を実施する。

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【資料6】

5

1-2 研究体制

1-2-1.研究組織及び管理体制

1)研究組織(全体)

2)管理体制

①事業管理機関

[東レ株式会社]

②再委託先

[有限会社PTMC研究所]

[国立大学法人京都大学]

乙 東レ株式会社

国立大学法人京都大学

有限会社PTMC研究所 再委託

再委託

総括研究代表者(PL)

所属 京都大学大学院医学研究科

器官外科学講座

役職 教授

氏名 坂田 隆造

副総括研究代表者(SL)

所属 有限会社PTMC研究所

役職 所長

氏名 井上 寛治

所長

学長 医学研究科器官外科学講座

生産本部長 医療材技術部

社長 研究本部長

医薬医療事業本部長

先端材料研究所 有限会社PTMC研究所

再委託

国立大学法人京都大学研究開発企画部

医療材事業部門長 医療材事業企画推進室

医療材事業部

生産本部長 医療材技術部

社長 研究本部長

医薬医療事業本部長

先端材料研究所 有限会社PTMC研究所

再委託

国立大学法人京都大学研究開発企画部

医療材事業部門長 医療材事業企画推進室

医療材事業部

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【資料6】

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1-2-2.管理員及び研究員

【事業管理機関】 東レ株式会社

①管理員

氏 名 所属・役職 実施内容(番号)

棚橋一裕 先端材料研究所 主任研究員 ⑤

②研究員

氏 名 所属・役職 実施内容(番号)

棚橋一裕(再)

阪口有佳

坂口博一

藤田雅規

木戸場和志

松田恭祐

先端材料研究所 主任研究員

先端材料研究所 研究員

先端材料研究所 研究員

先端材料研究所

先端材料研究所 補助員

先端材料研究所 補助員

①、②

①、②

【再委託先】

PTMC研究所

氏 名 所属・役職 実施内容(番号)

井上寛治

佐藤 満

永田悦督

補助員

所長 ①、②、③

①、②、③

①、②、③

①、②、③

国立大学法人京都大学

氏 名 所属・役職 実施内容(番号)

坂田隆造

丸井 晃

高井文恵

石上雅之助

医学研究科器官外科学講座 教授

医学研究科器官外科学講座 准教授

医学研究科器官外科学講座 大学院生

医学研究科器官外科学講座 大学院生

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【資料6】

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1-3 成果概要

① 動物実験

改良型フィルターデバイスの評価系としてミニブタを用いて、その冠動脈に狭窄部を作成

し、一体型フィルターの屈曲部を通過する性能、狭窄部を通過する性能、ステントを誘導・

搬送する性能、フィルターの回収性能を比較検証した。いずれも既存品に勝るとも劣らな

かった。同時に安全性も検証された。一体型フィルターを用いて成犬の正常冠動脈に対して、

上記と同様な実験を施行した。

抗血栓性の評価系として、イヌ頸動脈にフィルターを直接挿入・留置する評価系が妥当で

あることを示した。血流計の導入により閉塞時間が数値化できるようになったため、未処理

品の閉塞時間に対する比率という指標で抗血栓性能を定量化することによって、様々な処理

条件で作成した表面の抗血栓性を検証でき、可能性のある処理条件を見出した。動物実験時

に定期的に採血し、血液凝固時間や血液凝固能等を経時的に評価することで、フィルター留

置前後の血液性状に変化の有無を確認できた。また、留置後に観察されたフィルター上の血

栓については、対未処理品比が小さいほど多くの血栓が付着する傾向にあることがわかった。

② モデル実験系確立

抗トロンビン活性と抗血小板活性のそれぞれを評価できる定量評価系の構築に成功したた

め、全体の抗血栓性に対する2つの活性の貢献度を推定可能になった。過酷条件下の in

vitro血液循環評価系も確立できたので、処理条件のスクリーニングや in vivo の結果予測

が、従来に比べて容易になった。イヌ頸動脈留置実験の結果も反映されている。フィルター

の抗血栓性能を最高レベルまで引き上げるための処理プロセスや抗血栓性材料の合成プロセ

スを十分に評価可能な評価系を構築できた。

③ 部材の選定・組み立てプロセスの確立(PTMC研究所)

改良型フィルターデバイスとして、一体型フィルターの有効性・安全性・優位性の検証

いずれも既存のフィルターデバイスとの比較実験を施行した。

a.人体模型を用いた実験 冠動脈の模型の狭窄病変部品を応用して、屈曲部を通過す

る性能、狭窄部を通過する性能、ステントを誘導・搬送する性能、フィルターの回

収性能を比較検証した。いずれも既存品より勝るとも劣らなかった。

b.動物実験にて、いずれも既存製品と比較検証を施行した。

安全性に優れ、また部材の役割毎に柔軟性や機械的強度など適切な物性を持つ部材を選定

した。独自の技術持つ複数の中小企業から供給を受けた。フィルター構造の最適化を行い、

生産加工を容易にするため、組立に必要な治具を設計し、手順の文書化をすすめた。将来の

量産化に移行する際に生じる課題を早い段階で把握するために、生産加工が容易な組立プロ

セスの指針を構築し、PTMC研究所の組み立て工程を東レに移管する準備を進めた。

④抗血栓性処理プロセスの確立(東レ株式会社)

In vitro 血液循環評価法にて好成績であった処方について、pH や抗血栓剤処理量の影響

を調べた。プロセスウインドウはやや狭いものの、今後の条件検討によって最適化・安定化

できると考えられる。

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1-4 当該研究開発の連絡窓口

所属 東レ株式会社 先端材料研究所

氏名 棚 橋 一 裕

電話 077-533-8357

FAX 077-533-8342

E-mail [email protected]

第2章 本論

2-1.サブテーマ1: プロトタイプの有効性・安全性・優位性の検証

2-1-1.①動物実験

1)抗血栓性評価

a)実験目的

抗血栓性能を評価する動物実験系を確立し、抗血栓性フィルターデバイスの性能評価を行

い、現段階での課題を明確にすることを目的とした。

b)実験方法

ヒトと比較して血液凝固能が高いことが知られているビーグル犬を使用した。動物は、鎌

倉テクノサイエンス(以下、KTS)に飼育管理され、審査委員会にて承認を受けた。

イヌを麻酔、手術台上に背位(仰臥位)に固定した後、人工呼吸(換気量:200~400mL、

呼吸回数:13~16 回/分)を実施し、維持麻酔下(ペントバルビタール、50~100mg/時

間)、両側頸動脈を露出した。頸動脈の末梢側(脳側)に電磁血流計(日本光電工業株式会

社)のプローブを装着し、血流をモニターした。大腿部を切開し大腿動脈を露出し、血圧、

心拍数を測定するためにカニューレを挿入した。

投与ヘパリン量を決める実験においては、ヘパリンを 2000IU単回投与後、30IU/kg/hrで

持続投与した後に、15 分ごとにソノクロット(SCIENCO 社)を用いて ACT を測定した。ACT

が200~300sの範囲から逸脱した場合、投与量を調節した。フィルターデバイスを留置する

実験においては、30IU/kg/hrで持続投与開始 60分の ACT測定終了後にフィルター留置操作

を開始した。右頸動脈に未処理フィルター、左頸動脈に処理フィルターを留置した。

左頸動脈の心臓側からサーフロー留置針を用いて未処理フィルターを脳側に向けて挿入し、

直径5mm の血管部位に留置した(図1)。血流がゼロになるまでの時間を測定した(図2)。

続いて右頸動脈を用いて、未処理フィルターと同様の手順で処理フィルターを留置した。

閉塞確認後、留置針を用いてフィルターを回収した。フィルターの開存状態、血栓付着状

態等を観察した。同じ動物に留置した未処理フィルターの開存時間に対する処理品の比率を

対未処理品比として開存性、抗血栓性の指標とした。

c)結果と考察

ヘパリンを2000IU単回投与後、30IU/kg/hrで持続投与したところ、ACTはPRE値の97秒

から投与後 30分にかけて上昇し、最大 254秒に達した(図 3)。その後 ACTは減少し、投与

60 分後には 193 秒と設定範囲より低値になり、投与 120 分後には 163 秒まで減少した。持

続投与量を 40IU/kg/hr に増やしたところ、ACT は 15 分後(最初の投与から 143 分後)に

476秒まで上昇し範囲を逸脱した。再度、持続投与量を30IU/kg/hrに戻したところ、ACTは

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【資料6】

9

再変更後15分(同164分後)に316秒に減少した。再変更後30分(同178分後)にはさら

に 178秒まで減少したがその後上昇に転じ、再変更後 54分(同 203分後)には 253秒とな

り、再変更後 89分(同 238分後)には 302秒まで上昇し、ほぼ設定範囲内で推移した。以

上の結果から、フィルター留置実験でのヘパリン投与量は最初の単回投与量を 2000IU、持

続投与量は30IU/kg/hrとすることとした。また投与開始から60分にかけてACTが一過性に

上昇し下降したことから、投与開始後 60 分の ACT を測定してからフィルター留置を開始す

ることとした。

120920_予備検討2_Dog8(1MY288)_Control_Cal

Blo

od P

res...

-050100150200250

Heart

Rate

...

50

100

150

200

Caro

tid a

rt...

050100150200

9

filter留置

10

閉塞

3:34:00 3:36:00 3:38:00 3:40:00 3:42:00 3:44:00 3:46:00

2012/09/20 14:08:54.877

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

-50 0 50 100 150 200 250 300

ヘパリン投与開始後時間 (min)

AC

T (

sec)

2000IU30IU/kg/hr

30→40IU/kg/hr

40→30IU/kg/hr

図1 フィルター留置部位

図2 フィルター留置後の血流変化の例

図3 ヘパリン投与後のACT推移

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【資料6】

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計 12例のイヌについて留置実験を実施した。12例のうち、各処理フィルターの留置時間

と未処理フィルターの留置時間に対する比を算出可能であった9例の結果を図4に示した。

明確な留置時間延長効果が認められたのは処理1のみであった。処理2および3については

1 例および 2 例で明確な延長効果がみられなかった。処理 4 については 60 分以上閉塞せず

留置可能であったが、未処理フィルターも 60 分以上閉塞しなかったため、延長効果は不明

であった。処理4の抗血栓性の有無の判定のためには例数を追加して再試験を行う必要があ

ると考えられた。なお動物番号5のイヌについては未処理フィルターが留置後120分以上経

過しても閉塞せず、さらに同じ側の血管に再度留置した未処理フィルターも180分以上閉塞

しなかったため、処理フィルターの留置は行わず、試験から除外した。

0

100

200

300

400

500

600

700

800

処理1 処理2 処理3 処理4 処理5

未処

理に

対す

る延

長率

(%)

抜去後のフィルターを観察したところ、未処理フィルターでは、フィルターの先端部、

メッシュ先端部~中央部に強度の血栓付着が、またフィルター開口部を支えるリング部に中

等度の血栓付着がみられた。これに対し、5 時間留置後に抜去した処理 1 フィルターでは

メッシュ先端部に軽度の血栓付着がみられたのみで、メッシュの大半は白色であった。処理

2 フィルターでは先端部、リング部、メッシュ全体に強度の血栓付着がみられた。処理 3

フィルターについては動物番号2のイヌではメッシュの先端部および中央部~リング周囲、

ならびにリング部に強度の血栓付着がみられた。処理4フィルターでは先端部に軽度の血栓

付着がみられたのみで、メッシュの大半は白色で、またリング部にも血栓はみられなかった。

留置条件については、留置前 ACTは 137秒~396秒とばらつきが大きく、ヘパリン投与量

検討時の目標範囲(200~300 秒)から外れていたケースもあった。留置前 ACT 値にかかわ

らず長時間留置できたケースもあり留置前ACT値の留置時間に与える影響は必ずしも明確で

ないが、留置時間のばらつきを予防するためにも留置前のACT範囲ならびに範囲外であった

場合の対応について明確にしておく必要がある。

本評価系は、イヌの抗凝固能を適切に管理さえできれば、抗血栓性能の有無を評価できる

系であることがわかった。抗血栓性能が認められた処理条件について更に検討を継続し再現

性を確認する必要がある。

図4 様々な処理フィルターの抗血栓性

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【資料6】

11

2-1-2.②モデル実験系確立

抗血栓性には、抗血小板付着機能と抗トロンビン機能があり、それぞれの性能について

in vitro 評価系を確立し、性能の位置づけを明確にすることが必須である。これらの評価

系が確立できれば、基本コンセプトの検証や動物実験に代わるスクリーニングだけでなく、

製造条件の最適化や製品の規格試験等の品質管理においても有用である。昨年度確立した抗

血小板付着機能の評価系に加えて、抗トロンビン機能評価系を構築した。

1)抗トロンビン活性評価系

生体の中で起こる血液凝固カスケード反応の最終段階は、フィブリノーゲンがトロンビン

によって分解されてフィブリンが生じる反応であり、このフィブリンがネットワーク構造を

形成して血栓形成が起こる。トロンビンに特異的な発色分解基質を、トロンビン及び抗血栓

性処理基材と共存させることによって、抗血栓性表面のトロンビンに対する阻害活性を定量

評価する評価系を確立した。

本評価系を確立することにより、抗血小板と抗トロンビンという2つの機能について、

様々な抗血栓性処理を施した表面の位置づけを明確にすることが可能となった(図5)。

2)in vitro血液循環

抗トロンビンと抗血小板という2つの機能が、実際に血液に対して抗血栓性を示すことを

検証する必要ある。検証手段として、より使用条件に近い評価系を検討し、フィルターメッ

シュを循環血液中に組み込み、血液循環後のフィルターメッシュに付着した血栓形成の有無

を調べる評価系を確立した。長時間の循環中に起こる血液自身の変性を回避し、抗血栓性能

を過酷条件でテストするため、カルシウム濃度を正常の3倍程度に設定した。この評価系と

3)の評価系を比較することによって、抗トロンビンと抗血小板のどちらの因子が支配的で

あるのかということも推測が可能となった。

イヌの留置実験で対未処理品比が比較的高かった処理 4,5 について抗トロンビン活性と

抗血小板活性との位置づけを調べ、更に in vitro 血液循環試験を行った結果、イヌ実験の

図5 様々な処理表面の抗トロンビン活性と抗血小板活性

トロンビン活性(相対値%)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 1000

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

血小

板付

着量

(相対

値)(

%)

トロンビン活性(相対値%)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 1000

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

血小

板付

着量

(相対

値)(

%)

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【資料6】

12

結果を良く反映し、処理 5は処理 4よりも 25分後の血栓付着の状態が軽度であった(図 6)。

処理 4、5 の抗トロンビン活性、抗血小板活性の位置づけの結果(図 7)から、これら2つ

の処理条件で抗血栓性に差が生じている原因として、抗トロンビン活性の差の可能性がある

ことが示唆された。処理5の性能を高める上でも更に

現段階では、処理 5 を凌ぐ処理条件を見出しており、今後この条件の更な

る最適化及び安定化の検討を進める(図 8)。

1-25 2-25 3-25 4-25 5-25 6-25

1-20 2-20 3-20 4-20 5-20 6-20

7-25

7-20

1-25 2-25 3-25 4-25 5-25 6-25

1-20 2-20 3-20 4-20 5-20 6-20

7-25

7-20

1-25 2-25 3-25 4-25 5-25 6-25

1-20 2-20 3-20 4-20 5-20 6-20

7-25

7-20

1-25 2-25 3-25 4-25 5-25 6-25

1-20 2-20 3-20 4-20 5-20 6-20

7-25

7-20

循環20分後

未処理処理A(control) 処理4 処理5

循環25分後

1-25 2-25 3-25 4-25 5-25 6-25

1-20 2-20 3-20 4-20 5-20 6-20

7-25

7-20

1-25 2-25 3-25 4-25 5-25 6-25

1-20 2-20 3-20 4-20 5-20 6-20

7-25

7-20

1-25 2-25 3-25 4-25 5-25 6-25

1-20 2-20 3-20 4-20 5-20 6-20

7-25

7-20

1-25 2-25 3-25 4-25 5-25 6-25

1-20 2-20 3-20 4-20 5-20 6-20

7-25

7-20

1-25 2-25 3-25 4-25 5-25 6-25

1-20 2-20 3-20 4-20 5-20 6-20

7-25

7-20

1-25 2-25 3-25 4-25 5-25 6-25

1-20 2-20 3-20 4-20 5-20 6-20

7-25

7-20

1-25 2-25 3-25 4-25 5-25 6-25

1-20 2-20 3-20 4-20 5-20 6-20

7-25

7-20

1-25 2-25 3-25 4-25 5-25 6-25

1-20 2-20 3-20 4-20 5-20 6-20

7-25

7-20

循環20分後

未処理処理A(control) 処理4 処理5

循環25分後

図6 抗血小板機能が比較的高い処理条件4、5で処理した

フィルターのin vitro循環評価

図7 処理4、5の条件で処理したフィルターの

抗トロンビン活性、抗血小板活性の位置づけ

図8 様々な処理条件で処理したフィルターのin vitro循環試験結果

1-45 2-45 3-45 4-45 5-45 6-45

1-35 2-35 3-35 4-35 5-35 6-35

7-45

7-35

未処理 処理1 処理6 処理7 処理8 処理9 処理101-45 2-45 3-45 4-45 5-45 6-45

1-35 2-35 3-35 4-35 5-35 6-35

7-45

7-35

未処理 処理1 処理6 処理7 処理8 処理9 処理10

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0

トロンビン活性化量(相対値) (%)

血小板付着量(相対値)(%)

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

処理5 処理4

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0

トロンビン活性化量(相対値) (%)

血小板付着量(相対値)(%)

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

処理5 処理4

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【資料6】

13

2-2.サブテーマ2: 基本製造プロセスの確立

2-2-1.③デバイスの改良・部材の選定・組み立てプロセスの確立

1)フィルターデバイスの改良

a)フィルター開発の背景・経緯

PTMC研究所は 1990年に末梢動脈塞栓防止用の新しいフィルターの研究を開始した。その背景

は血管内治療の発展に伴い塞栓症の発生が飛躍的に増大したにもかかわらず、臨床上有効な

フィルターが存在しない事にあった。最近は多数の新たなフィルターが開発され、市販されて

いるが、問題点が多く、この状態は現在も未解決で残されている。

PTMC 研究所はプロトタイプのフィルターを開発した。In vitro 並びに動物実験を施行した。遊

離片捕獲機能・フィルターを狭窄部経由で目的の位置に搬送する機能・フィルターを回収する

機能等について検証した。何れも良好な結果を得た。既存のフィルターに比較し、勝るとも劣

らない結果であった。

本経産省プロジェクトが 23 年に開始したが、その過程で、我々のプロトタイプのフィルター

デバイスは発展的に改良されて一体型フィルターが出来上がった。本年はその優れた特徴を生

かすべく、その完成に向けて尽力し、有効性・安全性・操作性が確認された。引き続いて、製

品化に向けて、治具の作成、組み立て工程の構築、部材の選定、強度試験等を東レと協力して、

進める予定である。

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【資料6】

14

b)一体型フィルターの開発

図9 Angio guard Filter

図10 新型フィルター(一体型)

本体・搬送カテ・回収カテを含む

回収カテ

本体

搬送カテ

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【資料6】

15

図11 一体型フィルターの放出から回収までの連続写真

①開発の意義とその背景

従来のフィルターデバイスは以下の 3 者がセットで用いられる。(図上段参照)

即ちフィルター本体、それを目的場所まで運ぶ搬送用シース、フィルターを回収するための回

収用カテーテルである。その使用法について述べる。先ず、フィルターを折り畳んで、搬送用

シース先端部に収納し、目的場所まで搬送する。続いて、フィルターを残し、搬送用シースは

体外に回収する。治療操作終了後は新たに回収用カテーテルを体外より挿入し、フィルターを

その先端部に引き込んで、両者を体外に回収する。

フィルターは治療操作を安全に行うための補助的手段である。従って、これ自体が 3 段階の複

雑な操作を必要とするのは肝心の治療手段に集中力を損なう恐れが生じる。

一方今回開発した、一体型フィルターは(図中・下段参照)搬送及び回収装置がフィルター

自体に組み込まれている。従って、搬送用シースを体外へ引き抜く操作と回収用シースを新た

に体外から挿入する操作が不必要となる。

従って、フィルターの操作が飛躍的に簡便となるために、治療手技の安全性向上のほか、今後

より広く汎用される可能性がある。それに伴い、塞栓症の発生が、減少し結果として、血管内

治療や、外科手術の適応が拡大する可能性が期待される。

②開発の現状

製品化に向けて見通しを得た状態である。

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【資料6】

16

c)その他の改良 送達性能向上の研究

目的:フィルターの送達性の向上を図ることで、より広い汎用を実現する

意義:屈曲など患者ごとに異なる様々な血管形態にも、フィルターを無理なく適切に目的部位

まで送達できる性能が重要である。送達性の向上により、適応拡大だけで無く、フィルター操

作の安全性向上が期待できる。

方法:従来はフィルター最先端部に、アングル(角度の付いた)3cmのワイヤーを取り付けて

いたが、今回新たにガイドチューブと呼ばれる部材を開発、採用した。このガイドチューブは

既製品の 0.014“ガイドワイヤーに沿ってフィルターを搬送出来るため、血管選択性に優れたガ

イドワイヤーの性能をそのまま活用することが出来る。

開発の現状:プロトタイプはほぼ完成しているが、さらなる送達性の向上を研究中。

d)その他の改良 一体型フィルターの適応拡大への研究 細径化

目的:フィルター径を小径化する事で、さらに適応拡大を求める。

意義:一体型フィルターサイズを小径化する事で、冠動脈病変に適応を拡大することができる。

また、煩雑な手技の必要が無い一体型フィルターは、より繊細な手技技術を必要とする冠動脈

治療で最も適したプロテクションデバイスと考える。

方法:冠動脈の血管径に対応したφ4mm サイズを作成、小径化したことによるフィルター機能の

低下がないことを確認した。

ガイドチューブ

図12 ガイドチューブ

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【資料6】

17

図13 一体型フィルター(上:φ6mm、下:φ4mm)

φ4mm

φ6mm

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【資料6】

18

e)in Vitro シミュレーションについて

人体の全身の血管摸形(JMC 社製)を用いて、一体型フィルターの搬送・留置・回収操作をシ

ミュレーションする。

目的: 一体型フィルターの操作性、特に目的の分岐血管への送達性を検証する。

方法:冠動脈狭窄モデルに挿入操作を施行する。既存のフィルターを並行して使用し、操作性

を比較検討する。

図14 冠動脈模型(JMC社製)を使用してのシミュレーション実験

図15 冠動脈狭窄部を通過後に放出された一体型フィルター

(狭窄部:赤矢印、フィルターリング部:青矢印)(血流方向は写真左から右)

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【資料6】

19

図16 フィルトラップを用いた実験

フィルトラップ本体は狭窄部を通過する事ができなかった。

(狭窄部:赤矢印、フィルトラップ本体部:青矢印)(血流方向は写真左から右)

f)動物実験について

動脈実験は医療器具の開発には必須である。

既存製品と比較実験を施行した。

主として、成犬を用い、必要に応じて、ミニブタを使用した。

目的:フィルターの搬送について、目的の分岐血管を選択可能か?搬送操作は容易か?

フィルターの留置について、長時間開通するか?移動は無いか?

フィルターの回収について、回収操作は容易か?回収後のフィルターの損傷は無いか等

それぞれについて、調べた。

必要に応じて、成犬を犠牲死させ、フィルターの留置位置の動脈を摘出して、マクロと

ミクロの検査を行い、動脈内壁の損傷の有無を検索した。

方法1:成犬の左冠動脈屈曲部にフィルターを留置・回収を行い機能の検証をした。

フィルターの搬送操作は順調に施行され、目的の位置(屈曲部位)に正確に留置された。フィ

ルターのリングは屈曲血管壁に密着している。また、フィルターより抹消側の血流が阻害され

ないことを造影画像で確認した。既存製品が通過不能な屈曲部を通過可能であった。

方法2:ミニブタの冠動脈に軽度狭窄を作成し、フィルターの通過性・送達性を検証した。その

結果、狭窄病変に対しても通過性・送達性に優れていることを確認した。

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【資料6】

20

以下に実験中の画像を示す。

図17 一体型フィルター留置中の左冠動脈造影(成犬)

図18 左前下行枝に75%狭窄を作成した(赤色矢印)(ミニブタ)

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【資料6】

21

図19 左回旋枝に50%狭窄(青矢印)(ミニブタ)

図20 狭窄部を通過し、左前下行枝に挿入されたフィルターデバイス(矢印)(ミニブタ)

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【資料6】

22

図21 右冠動脈にフィルターを留置(矢印)(ミニブタ)

2)基本製造プロセスの確立

安全性に優れ、また部材の役割毎に柔軟性や機械的強度など適切な物性を持つ部材を選定し

た。独自の技術持つ複数の中小企業から供給を受けた。フィルター構造の最適化を行い、生産

加工を容易にするため、組立に必要な治具を設計し、手順の文書化を進めた。将来の量産化に

移行する際に生じる課題を早い段階で把握するために、生産加工が容易な組立プロセスの指針

を構築し、PTMC研究所の組み立て工程を東レに移管する準備を進めた。

2-2-2.④抗血栓性処理プロセスの確立

1)基本製造プロセスの確立

フィルターに対する抗血栓性ポリマーの固定化条件を検討した。処理水準としては血液循

環評価で最も活性の高かった処理8の条件検討を行った。

抗血栓性処理剤の仕込み時のpHの影響を調べた結果、表面の活性はpHに大きく依存する

ことが判明した(図 23)。抗血栓性処理剤の表面への結合や、抗血栓性処理剤のコンフォー

メーションがpHの影響を強く受けていると考えられる。

最も活性が高かったpH4.0において処理量(仕込量)との関係を調べた結果、処理量に応

じて活性値も増加した(図 22)。pH および処理量のいずれもが活性に影響を与える因子と

なっているので、操作の僅かなばらつきが製品の抗血栓性を左右する可能性がある。今後は

どの程度の活性値のばらつきが今日されるかという点についても検討していく。

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【資料6】

23

0

5

10

15

20

25

30

0 2 4 6 8

pH

相対

活性

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0 50 100 150 200

処理量(相対値)

相対

活性

図22 表面活性の処理pH依存性

図23 表面活性の処理量依存性

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【資料6】

24

最終章 全体総括

3-1.全体まとめ

全体として開発は順調に進み、フィルターデバイスの基本構造が固まりつつある。

PTMC 研究所の開発したフィルターデバイスは発展的改良がなされ、一体型フィルターデ

バイスとして、製品化に向けて、研究開発が施行された。さらに適応拡大を求めて、細径化

を実現し、人体模型及び成犬やミニブタを用いた 実験で、冠動脈への適応の可否を従来型

のフィルターと比較検証した。結果は搬送性能、狭窄通過性能、ステント搬送性能、回収性

能等あらゆる領域で勝る結果を得た。冠動脈等の適応範囲の拡大を実現し、患部への搬送操

作においても術後の回収操作においても問題なく使用できるレベルにあると考え、既存品に

対して優位性を示すことを検証できた。

抗血栓性の in vitro 評価方法を確立でき、抗トロンビン機能と抗血小板機能を別々に評

価可能となったので、全血循環評価で把握できる抗血栓性の程度の違いを2つの機能の寄与

の大きさとして推定可能となった。

フィルター部材候補を絞り込み、組み立ての基本プロセスを構築した。PTMC 研究所から

東レに技術移管し、薬事申請に必要なQMS製造体制のベースとなる、組立加工に関する作業

標準書を整備した。また、留置型デバイス、省力型デバイスへの改良が進み、競争力ある品

揃えができた。

3-2.来年度に向けた課題

一方、本年度の検討を通して、今後検討すべき下記の課題4点が抽出できたので、来年度

中に解決する。

A.冠動脈用途に向けたフィルターデバイスの改良・課題抽出

B.組み立て加工プロセスの確立(処理条件・規格の決定)と製品化に向けた準備

C.試作品の有効性・安全性の検証

D.抗血栓性処理プロセスの確立(処理条件・規格の決定)

E.臨床研究(治験)に向けた準備

冠動脈用途で使用されている国内承認品の性能(特に送達性、操作性)は不十分であり、国

内外での競争が激しい中において常に他社優位の性能を確保していくために、PTMC研究

所は、引き続きフィルターデバイスの改良および機械的強度などの最適化を進める。また、

PTMC研究所は、部材メーカーとの連携を通じて各部材仕様を確定し、東レへの導入をサ

ポートし、東レはPTMC研究所からの移管を受けて部材供給体制を整え試作に着手する。

以上のように、目標とするフィルターデバイスを安定試作できる見通しが立ったので、薬

事承認申請データ取得を推進する。

3-3.今後のスケジュール

研究開発後は、冠動脈ステント留置術(現在のフィルター市場規模:50 億円)を適用と

した臨床研究(あるいは治験)を実施する予定である。2013 年度には、治験および薬事申

請の方針を作成し、機構面談も実施する予定である。2015 年に薬事申請し、2016 年に承認

取得後、2017年に販売開始の計画である。

Page 25: 【資料6】【資料6】 3 第1章 研究開発の概要 1-1 研究開発の背景・研究目的及び目標 ステント留置術において、ステントを拡張した際、狭窄部の病変組織や血栓(以下、プ

【資料6】

25

3-3-1 薬事申請の計画

3-3-2 特許取得の計画

PTMC100%2012出願準備中血管内遊離物質捕獲器具(2)

PTMC100%2011出願済み血管内遊離物質捕獲器具(1)

東レ100%2011出願済み抗血栓性を有する医療材料

東レ100%2011出願済み抗血液凝固作用を示す高分子化合物(1)

東レ100%2011出願済み抗血液凝固作用を示す高分子化合物(2)

PTMC 50% 東レ50%

2011出願済み抗血栓性遊離血栓捕捉器具

発明の名称・内容等※問題ない範囲で、「装置

の~の部分」など簡単に記述ください。

公開番号・特許番号

出願年

特許化

出願の体制と

知財の持分(%)

遊離血栓捕獲器具 4073869 2001 済 PTMC100%

Alienated Thrombus Capture Device

米・独・仏・英権利化済

2001 済 PTMC100%

抗血液凝固作用を示す親水性化合物

WO2011/078208

2010 東レ100%

抗血液凝固作用を示す高分子化合物(3)

出願準備中 2012 東レ100%

PTMC100%2012出願準備中血管内遊離物質捕獲器具(2)

PTMC100%2011出願済み血管内遊離物質捕獲器具(1)

東レ100%2011出願済み抗血栓性を有する医療材料

東レ100%2011出願済み抗血液凝固作用を示す高分子化合物(1)

東レ100%2011出願済み抗血液凝固作用を示す高分子化合物(2)

PTMC 50% 東レ50%

2011出願済み抗血栓性遊離血栓捕捉器具

発明の名称・内容等※問題ない範囲で、「装置

の~の部分」など簡単に記述ください。

公開番号・特許番号

出願年

特許化

出願の体制と

知財の持分(%)

遊離血栓捕獲器具 4073869 2001 済 PTMC100%

Alienated Thrombus Capture Device

米・独・仏・英権利化済

2001 済 PTMC100%

抗血液凝固作用を示す親水性化合物

WO2011/078208

2010 東レ100%

抗血液凝固作用を示す高分子化合物(3)

出願準備中 2012 東レ100%

製造販売承認取得

治験開始

薬事申請

臨床研究開始

QMS設計審査

プロセスバリデーション

QMS製造体制確立

薬事申請に関する

今後の計画

年 計画内容

H24 2012

H25 2013

H26 2014

H27 2015

H28 2016 製造販売承認取得

治験開始

薬事申請

臨床研究開始

QMS設計審査

プロセスバリデーション

QMS製造体制確立

薬事申請に関する

今後の計画

年 計画内容

H24 2012

H25 2013

H26 2014

H27 2015

H28 2016

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【資料6】

26

3-3-3 事業化する医療機器の概要

3-3-4 事業化(上市)までのスケジュール

2015 2016 21071Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q

【技術開発】 【技術開発】 【技術開発】1.冠動脈用途に向けた設計改良 1.臨床研究サンプル供給 1.量産プロセス確立・出荷2.部材供給体制の整備 2.部材供給体制確立 【特許】3.少量試作プロセス確立 3.量産設備準備 1.特許出願継続4.薬事申請用各種検証試験の実施 【特許】 2.審査請求・拒絶理由通知対応【特許】 1.特許出願継続 3.パテントコンファーメーション1.特許出願継続 2.審査請求・拒絶理由通知対応 【薬事関連】2.審査請求・拒絶理由通知対応 【薬事関連】 1.治験実施3.パテントコンファーメーション 1.臨床研究実施 2.製造販売承認申請・承認取得【薬事関連】 2.治験準備 3.CEマーク取得準備1.臨床研究準備 【事業化関連】 4.米国治験準備2.治験に関するPMDA相談 1.国内外販売戦略の精査 【事業化関連】【事業化関連】 2.海外提携先候補の選定 1.製造コスト・価格の決定1.国内外販売戦略の策定 2.国内販売体制の決定

3.海外提携先の決定

2013 2014

申請データ取得

臨床研究準備

臨床研究

試作品供給

治験届○

○薬事申請

承認取得○上市

薬事相談量産化対応

改良 改良 部材供給体制整備

組立プロセス検討

抗血栓プロセス検討

滅菌プロセス検討治験

項目 概要

製品・システム名称 血栓捕捉フィルター

対象疾患/患者数

フィルターデバイスのターゲットとなる患者数(世界)冠動脈バルーン拡張術・ステント留置術:300,000人経皮的大動脈弁置換術:100,000人経皮的胸部ステントグラフト留置術:40,000人

対象顧客 病院(循環器内科、心臓血管外科、放射線科など)

市場規模 150億円(2011年度)→700億円(2020年)

現在の市場の状況(競合、国内/国外等)

捕捉性能および抗血栓性の点で他社競合優位頸動脈 国内:2製品 冠動脈 国内:1製品

海外:9製品 海外:4製品

上市時期 2017年

想定売上規模(上市3~5年目程度)

上市5年目 100億円(海外含め)

項目 概要

製品・システム名称 血栓捕捉フィルター

対象疾患/患者数

フィルターデバイスのターゲットとなる患者数(世界)冠動脈バルーン拡張術・ステント留置術:300,000人経皮的大動脈弁置換術:100,000人経皮的胸部ステントグラフト留置術:40,000人

対象顧客 病院(循環器内科、心臓血管外科、放射線科など)

市場規模 150億円(2011年度)→700億円(2020年)

現在の市場の状況(競合、国内/国外等)

捕捉性能および抗血栓性の点で他社競合優位頸動脈 国内:2製品 冠動脈 国内:1製品

海外:9製品 海外:4製品

上市時期 2017年

想定売上規模(上市3~5年目程度)

上市5年目 100億円(海外含め)

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【資料6】

27

3-3-5 事業化の体制

3-3-6 今後の研究計画の概要

平成25年度は下記の課題を設定し、研究開発を進め、製造プロセスを確立する。

実 施 内 容 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月

①冠動脈用途への設計改良

・デバイス改良・最適化(PTMC)

・部材メーカー供給サポート

②QMS量産試作プロセス確立

組立技術指導(PTMC)

組立プロセス確立(東レ/PTMC)

抗血栓処理プロセス(東レ)

申請データ採取(PTMC/東レ)

③有効性・安全性の検証

・改良品の設計検証(PTMC/京大)

・試作品の有効性・優位性検証

(PTMC/京大)

④臨床研究準 備 (東 レ)

・薬事戦略立案

・治験施設・デザイン検討

・治験相談

・治験施設協議

⑤テーマの進捗管理・運営(東レ)

・開発会議の開催

・報告書作成

販売

相談・申請

第一種製造販売業第一種製造販売業[[13B1X0026313B1X00263]]

東レ(株)東レ(株)•抗血栓性表面設計

•特許権利化•試作・製品化

•薬事ものづくり中小企業ものづくり中小企業

PTMC研究所PTMC研究所デバイス設計・検証

•加工プロセス開発・指導•特許権利化

PMDA

第三者認証機関

PMDA

第三者認証機関

認証

顧客(国内、海外)

顧客(国内、海外)

卸企業、代理店卸企業、代理店

研究機関研究機関

京都大学京都大学•in vivo評価

•申請データの取得(非臨床試験)

事業管理機関

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

日本特殊管製作所日本特殊管製作所•金属管成型・製造

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

小松ばね工業小松ばね工業•コイル成型・製造

製造販売業製造販売業

東レ(株)東レ(株)•製造・販売

開発段階開発段階開発段階 事業化後事業化後事業化後

研究機関研究機関

京都大学京都大学

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

PTMC研究所PTMC研究所

部材供給

部材供給

新規連携先新規連携先

ライセンス 改良・適用拡大改良・適用拡大

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

日本特殊管製作所日本特殊管製作所

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

小松ばね工業小松ばね工業中

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

衣川製作所衣川製作所•治具の作成

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

衣川製作所衣川製作所

新規デバイス開発・イノウエステントグラフト・大動脈弁拡張用バルーン

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

東邦金属工業東邦金属工業•金属線成型・製造

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

SKKSKKテクノロジーテクノロジー•金属ワイヤー開発・製造

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

SKKSKKテクノロジーテクノロジー中

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

東邦金属工業東邦金属工業

PL

販売

相談・申請

第一種製造販売業第一種製造販売業[[13B1X0026313B1X00263]]

東レ(株)東レ(株)•抗血栓性表面設計

•特許権利化•試作・製品化

•薬事ものづくり中小企業ものづくり中小企業

PTMC研究所PTMC研究所デバイス設計・検証

•加工プロセス開発・指導•特許権利化

PMDA

第三者認証機関

PMDA

第三者認証機関

認証

顧客(国内、海外)

顧客(国内、海外)

卸企業、代理店卸企業、代理店

研究機関研究機関

京都大学京都大学•in vivo評価

•申請データの取得(非臨床試験)

事業管理機関

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

日本特殊管製作所日本特殊管製作所•金属管成型・製造

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

小松ばね工業小松ばね工業•コイル成型・製造

製造販売業製造販売業

東レ(株)東レ(株)•製造・販売

開発段階開発段階開発段階 事業化後事業化後事業化後

研究機関研究機関

京都大学京都大学

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

PTMC研究所PTMC研究所

部材供給

部材供給

新規連携先新規連携先

ライセンス 改良・適用拡大改良・適用拡大

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

日本特殊管製作所日本特殊管製作所

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

小松ばね工業小松ばね工業中中

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

衣川製作所衣川製作所•治具の作成

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

衣川製作所衣川製作所

中中

新規デバイス開発・イノウエステントグラフト・大動脈弁拡張用バルーン

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

東邦金属工業東邦金属工業•金属線成型・製造

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

SKKSKKテクノロジーテクノロジー•金属ワイヤー開発・製造

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

SKKSKKテクノロジーテクノロジー中

ものづくり中小企業ものづくり中小企業

東邦金属工業東邦金属工業

PLPL

Page 28: 【資料6】【資料6】 3 第1章 研究開発の概要 1-1 研究開発の背景・研究目的及び目標 ステント留置術において、ステントを拡張した際、狭窄部の病変組織や血栓(以下、プ

【資料6】

28

参考文献

○フィルターデバイス全般

K. Uehara et al., J Thorac Cardiovasc Surg. (in press)

T.G. Brott et al., N Engl J Med. 2010;363(1):11-23

J.S. Yadavet al., Tech Vasc Interventional Rad. 2005;7: 190-193

E.A. Finol et al., J Endvas Ther. 2008;15:177-185

G.M. Siewiorek et al., J Endovas Ther. 2009;16:735-743

J.S. Matsumura et al., J Vasc Surg. 2010;52:576-583

○In vitro評価系関連

B. Seifert et al., Biomaterials 1997;18:1495-1502

S. Alibeik et al., Colloid Surf. B-Biointerfaces 2010;81:389-396

A. Lau et al., Thromb Res. 2007;119:667-677

C.P. Kealey et al., Biomaterials 2010;31:8864-8871

L. Muthusubramaniam et al., Ann Biomed Eng. 2011;39:1296-1305

C. Sperling et al., Biomaterials 2009;30:4447-4456

A.J. Leger et al., Circulation 2006;113:1244-1254

M.T. Nieman et al., J Pharmacol Exp Ther 2004;311(2):492-501