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本日の内容
1.株価の決定要因
2.不確実性とリスク
3.投資パフォーマンスの決定要因
4.投資タイミングとどう付き合うか
5.リターンの分解とアルファ
6.ファクターと投資スタイル
7.投資家は合理的判断を下せるか
2
最近の株価動向(1)
出所:朝日新聞社ホームページ 3
過去3か月の動き(6月13日まで)
最近の株価動向(2)
4出所:朝日新聞社ホームページ
過去5年の動き(6月13日まで)
1.株価の決定要因
出所:野村證券、2013.6.4、2013年度~2014年度の企業業績見通し
国内企業業績
6
なぜ株価は上がったのか?-①利益成長-
なぜ株価は上がったのか?-②金融緩和(金利低下)-
• マネタリーベースと長期国債利回り
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
1.1
800000
900000
1000000
1100000
1200000
1300000
1400000
1500000
201
2/1
/1
201
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/1
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2/4
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/1
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2/1
2/1
201
3/1
/1
201
3/2
/1
201
3/3
/1
長期金利(%、右)
マネタリーベース(億円、左)
出所:日本銀行のデータから講師作成 7
なぜ株価は上がったのか?-③経済リスク(リスクプレミアム*)の低下-
• 欧州危機の後退:イタリアの長期金利(10年国債利回り)
*リスクプレミアム:リスクに対して投資家が追加的に要求するリターン
8出所:海外投資データバンクホームページ
なぜ株価は上がったのか?-まとめ-
• ①利益成長
• ②金利の低下
• ③リスクプレミアムの低下
これでなぜ株価が上がるのか?
9
株価水準を決めるものは何か-配当割引モデルで考える-
• 株価(企業価値)は企業がもたらすキャッシュフローである配当金(利益)の将来にわたる流列の割引現在価値
gr
r
g
r
g
r
E
EEE
1
3
2
1
2
11
)1(
)1(
)1(
)1(
)1(
配当金株価
・・・配当金配当金配当金
株価
利益)の成長率配当金(
割引率
:
:
g
rE(=金利+リスクプレミアム)
現在価値
株価 配当金1 配当金2 配当金N
+ + +=
∴
10
株価水準を決めるものは何か-株価を決める3要素-
• ①金利が低いほど株価は高い
• ②リスクプレミアム(経済リスク)が低いほど株価は高い
• ③成長率が高いほど株価は高い
grE 配当金
株価
g
rE :割引率=①金利+②リスクプレミアム: ③利益(配当金)の成長率
11
なぜ株価は乱高下するのか?
• 金利が低いほど株価は高い
• リスクプレミアム(経済リスク)が低いほど株価は高い
• 成長率が高いほど株価は高い
grE 配当金
株価
g
rE :割引率=金利+リスクプレミアム:利益(配当金)の成長率
の予想値
の予想値
株価は市場の予想値を注目している
12
の予想値
市場参加者の予想値は常に変化している
出所:野村證券、2013.5.23、2013年度~2015年度の経済見通し 13
2.不確実性とリスク
株価変動の特徴
株価と乱数:どちらが本当の株価か?
A B
株価の変動 → 確率的(ランダムウォーク)15
コイン投げとランダムウォーク(Random Walk)
コインを投げる
コインを投げる
コインを投げる
コインを投げる
コインを投げる
表 表
表
裏
裏
16
株価はなぜランダムウォークするのか?
株価はすべての情報を瞬時に織り込む(効率的市場仮説)
情報はランダムに発生する
+
株価はランダムウォークする*
*)ただし、多くのアカデミックな実証研究は株価のランダムウォークを否定している
仮定
仮定
17
株価の変動の特徴
• 長期的には株価は右上がりになっている。
→ 株価の変動は平均すると正の値
• 平時は平均的な変動で、極端に大きな変動はまれにしか起きない
→ 山型の分布になっている(正規分布)
平均値が正の正規分布0
18
-10
0
10
20
30
40
50
60
70
-5.0%
-4.5%
-4.0%
-3.5%
-3.0%
-2.5%
-2.0%
-1.5%
-1.0%
-0.5%
0.0%
0.5%
1.0%
1.5%
2.0%
2.5%
3.0%
3.5%
4.0%
4.5%
5.0%
5.5%
6.0%
6.5%
7.0%
株価変動(リターン)の分布とリスクの定義
日経平均ポートフォリオの日次リターン
日次リターン
度数
日経平均リターンの分布
期待値が外れる度合い、期待値の不確かさ(標準偏差)
一番起こりそうな値、期待値(平均値)
リスクの定義
19
正規分布と標準偏差Normal Distribution and Standard Deviation
標準偏差σ
標準偏差と正規分布標準偏差の意味
2
2
2
)(
2
1)(
aX
eXP
σ:標準偏差a:平均
20
低リスク
高リスク
株価変動の科学的扱い方
• 確率概念の導入により、株価の変動を確率分布で表現することが可能になる
• 標準的な確率分布導入の利点
– 少ないパラメータで変動を記述(再現)できる
– 正規分布の場合2つのパラメータで記述できる
①平均値(期待リターン)
②標準偏差(リスク)
→ モデル化が容易になる(科学として扱える)21
株式投資の科学
• 確率分布で与えられた不確実性(リスク)のもとでの意思決定科学*
• 主要なテーマ
– リスクをもたらす要因(ファクター)は何か
– リスクとリターンとの関係はどうなっているのか
– どのような投資戦略(リスクとリターン)をとるべきか
*)なお不確実性とリスクに関するより厳密な議論にご興味のある方は、
Frank H. Knight、1921、”Risk, Uncertainty, and Profit”
をご参照ください。
22
3.投資パフォーマンスの決定要因
過去20年の株式投資パフォーマンス
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
1990
12
1991
09
1992
06
1993
03
1993
12
1994
09
1995
06
1996
03
1996
12
1997
09
1998
06
1999
03
1999
12
2000
09
2001
06
2002
03
2002
12
2003
09
2004
06
2005
03
2005
12
2006
09
2007
06
2008
03
2008
12
2009
09
2010
06
配当込累積パフォーマンス
新興国市場MSCI Emerging
先進国市場(日本除く)MSCI KOKUSAI
日本TOPIX
1990年12月末=100、2010年12月末まで
出所:東京証券取引所、MSCIBARRAのデータをもとに講師作成
大きな変動と
高パフォーマンス
小さな変動と
低パフォーマンス24
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
1990
/12
/1
1991
/10
/1
1992
/8/1
1993
/6/1
1994
/4/1
1995
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1995
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1997
/8/1
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1999
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2000
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2004
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2005
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2005
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2007
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2008
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2009
/4/1
2010
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2010
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2011
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2012
/8/1
過去20年の日本株式(TOPIX)1990年12月末=100、2013年4月末まで
出所:東京証券取引所のデータをもとに講師作成
日本株式はよりアップダウンが激しかった
2013年4月末
25
出所:キャシー松井、2012、「日本株式市場活性化の条件」、証券アナリストジャーナル2012.1
株価がアップダウンする原因-低い企業収益性は利益の変動性を高める-
(日本)
(米国)
(欧州)
日米欧企業の売上高利益率(マージン)比較
26
株主資本
総資本
総資本
売上高
売上高
当期利益
株主資本
当期利益ROE参考: (デュポン分解)
一方で、勝ち組と負け組の格差も
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
1600
19
95
01
19
95
07
19
96
01
19
96
07
19
97
01
19
97
07
19
98
01
19
98
07
19
99
01
19
99
07
20
00
01
20
00
07
20
01
01
20
01
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20
02
01
20
02
07
20
03
01
20
03
07
20
04
01
20
04
07
20
05
01
20
05
07
20
06
01
20
06
07
20
07
01
20
07
07
20
08
01
20
08
07
20
09
01
20
09
07
20
10
01
20
10
07
久光製薬
テルモ
本田技研工業
キヤノン
ニコン
全日本空輸
東京ドーム
ベスト電器
近畿日本ツーリスト
熊谷組
プラス
マイナス
1995年1月末-2010年9月の配当再投資累積リターン
(958%、12.37%)
(525%、10.20%)
(95%、5.73%)
(375%、10.83%)(349%、12.34%)
(▲89%、▲6.08%)
(▲86%、▲12.42%)
(▲68%、0.24%)
(▲99%、NA)(▲90%、▲30.64%)
(累積リターン、ROE%)
27
教訓
• 株式投資パフォーマンスの決定要因を理解しておく
①株式投資参入・脱出のタイミング
②銘柄選択による超過リターン* (アルファ)
*超過リターン:銘柄選択によって産出された市場平均を
上回るリターン
以下、この2つについて検討する。
28
4.投資タイミングとどう付き合うか
投資パフォーマンスの決定要因と対応①参入・脱出のタイミング
• とは言え、タイミングを当てるのは至難の業
• では、何を目指すのか?
– 普通の人は大きく負けないようにする
– 一般に「大きく負けると取り戻すのが難しい」と言われる→ マイナスリターンを復元するためには負け以上のリターンが必要
・20%下落すると:資産は100→80に減る (80-100)/100=▲20%
・資産を80→100に戻すには:(100-80)/80=25%上昇が必要
80100 100(▲20%) (25%)
30
出所:東京証券取引所のデータをもとに講師作成
0
10
20
30
40
50
60
70
頻度
日次リターン%
TOPIX (配当込)リターン(日次)の分布(1999年1月4日-2010年2月25日)
マイナス プラス
大きなマイナスが起こる確率は想定
より高い(テールリスク)
非対称性
しかも、実際のリスクは非対称
リスクの想定
31
テールリスクの影響
1969年7月1日にTOPIXに1万円を投資した場合の投資結果(1969年7月1日-2008年12月30日:約1万日)
出所:内誠一郎、2009、「わが国のブラックスワン」、証券アナリストジャーナル
32
資産配分によるリスクの管理
• 大きく負けないために何をするのか
– 複数の資産クラスのリスク特性の相違(相関)に着目する例:株式と債券、株式と不動産、日本株と新興国株等
– 異なる資産を組合わせることにより、すべて同時に負けるリスクを下げる(分散投資によるリスク管理)
投下資金
日本株
・・・RIET
先進国株
新興国株
海外RIET
分散投資によるリスクの低減:
(投資で唯一存在するフリーランチ)
33
資産クラス間の相関
34
日本株式
日本債券
外国株式
新興国株式
世界REIT
世界債券
金ヘッジファンド
日本株式 1
日本債券 -0.37 1
外国株式 0.72 -0.22 1
新興国株式 0.73 -0.24 0.90 1
世界REIT 0.72 -0.14 0.89 0.82 1
世界債券 0.37 0.14 0.64 0.59 0.52 1
金 0.23 -0.09 0.29 0.44 0.26 0.44 1
ヘッジファンド 0.67 -0.28 0.85 0.82 0.68 0.67 0.38 1
日本株式:TOPIX、日本債券:NOMURA-BPI総合、外国株式:FTSE Developed ex Japan (Kaigai) Index、新興国株式:FTSE Emerging Index、世界REIT:FTSE EPRA/NAREIT Developed、世界債券:CGBI WGBI WORLD ALL MATS、金:S&P GSCI Gold Total Return、ヘッジファンド:HFR
円ベースリターンの相関係数、月次、2002年12月ー2012年10月
リバランスによりリスクをさらに低減する
株式 :40%
債券 :30%
安全資産:30%
株価の上昇により株式ウェイト増加
株式 :45%
債券 :25%
安全資産:30%
株式 :40%
債券 :30%
安全資産:30%
元に戻す
実際の資産配分が基準の資産配分から乖離したときに元に戻す
基準の資産配分
35
逆張りになりやすく パフォーマンス向上に貢献する場合が多い
中心
中心回帰性(ミーン・リバージョン)とリバランス効果
ミーンリバージョン:価格が上下に振れる→ リスク資産に良く見られる特性
売り
買い
36
逆張りになりやすく パフォーマンス向上に貢献する場合が多い
中心
中心回帰性(ミーン・リバージョン)とリバランス効果
ミーンリバージョン:価格が上下に振れる→ リスク資産に良く見られる特性
売り
買い買い
売り
リバランス対象とは相関が低いほど効果がある
37
5.リターンの分解とアルファ
投資パフォーマンスの決定要因と対応②銘柄選択による超過リターン(アルファ)
• アルファを得ることはできるのか?
• プロにとっても容易ではない
出所:年金積立金管理運用独立行政法人、(2012)、「平成23年度 業務概況書」
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
2006 2007 2008 2009 2010 2011
アルファ
%
日本株式外国株式
公的年金の運用パフォーマンス
39
リターンの分解
• 伝統的な投資理論の考え方
市場要因リターン 個別要因リターン
・市場全体につられて変動するリターン・感応度をベータと呼ぶ例:トヨタのベータ:1.10野村證券のベータ:1.99
(ベータの出所:MSNマネー)
・市場連動リターンでないもの
・会社の個別な要因(新商品の発売、社長のスキャンダル等)
株式のリターン
40
伝統的投資理論の意味すること
<伝統的投資理論>
• 市場要因リターンは長期的にプラスのリターンをもたらす(市場のリスクプレミアム)
• 個別要因リターンはノイズ(雑音)であり期待値はゼロ
• ベータの高い銘柄(リスクが高い)ほど期待リターンが高い
(結論)
• 高いリターンを得るためにはベータの高い銘柄を長期保有するしかない(その場合は、市場下落時の損失も大きくなる)
• あるいは、個別要因リターン(ノイズ)が正の銘柄を予測する(自信があればどうぞ)
41
続・リターンの分解
• 比較的新しい(90年代前半*)投資理論
市場要因リターン 個別要因リターン
他の要因(複数)リターン
株式のリターン
・市場以外の要因によるリターン
複数要因(マルチファクター)モデル
*参考文献: Fama,E.F., French,K.R. [1993] “Common risk factors in the returns on stocks and bonds” Journal of Financial Economics 33(1993) pp.3-56 42
マルチファクターモデルの意味すること
<マルチファクターモデル>
• 市場要因以外にリターンをもたらす要因(ファクター)が存在する
(結論)
• これらのファクターの大きい銘柄を選べば、ベータ高めずにリターンを高めることが出来る
要はそのファクターを見つけることが出来るのかということ
43
6.ファクターと投資スタイル
過去の研究で注目されているファクター
• PBR(バリューファクター)
– PBR=株価÷一株当たり株主資本
– 低PBR銘柄に超過リターン
• ボラティリティ母集団(ボラティリティファクター)
– ボラティリティ=リターンの標準偏差
– 低ボラティリティ銘柄に超過リターン
• 時価総額(サイズファクター)
– 小型銘柄に超過リターン
• 過去のパフォーマンス(小:リバーサルファクター)
– リバーサル=直近のリターン
– 直近低リターン銘柄に超過リターン 45
バリューファクターの超過リターン過去25年のファクターリターン
2.8728
-2.7328
0.8296
-0.479
1.742
-5.648
4.093
-4.235
4.079
-8
-6
-4
-2
0
2
4
6
対市場リターンの超過リターン(%)
1985-2009
2000-2009
1990-1999
低PBR
高PBR 小型
出所:野村證券金融工学研究センター資料から講師作成46
ファクターと投資スタイル
47
あるファクター特性の強い銘柄に特化して投資をすることによって、高いリターンを得ようとする
投資スタイル
例:バリュースタイル、小型スタイル、低ボラティリティスタイル等
バリュー・ファンドの実際
出所:日本経済新聞から転載、2012年8月1日
長期的に高パフォーマンスを示すファンドには
バリュー系が多い。
48
バリューファクターがアルファをもたらすが理由
• アカデミックな研究
– 投資家の非合理的な投資行動の結果
– 実は市場要因リスクが高くなっているだけ
– その他
決定版の説明はない(アノーマリー)
*投資家の本質的な非合理性を仮定するとアルファはなくならない?
アルファの源泉49
ファクターリターンの効果を高めるために分散投資の意義
• 分散により個別要因リターン(ノイズ)の比率を低める
市場要因リターン 個別要因リターン他の要因リターン
・・・
小
銘柄数
大
50
7.投資家は合理的判断を下せるか
どちらの銘柄を売るか?
• 現在、次の2銘柄を保有しているとします。急に現金が必要となり、どちらかを売る必要が出てきました。あなたはどちらを売りますか?
–①1000円で買い、現在1500円。アナリストの評価はA(良い評価)。
–②1000円で買い、現在500円。アナリストの評価はC(悪い評価)。
52
伝統的投資理論に対するアンチテーゼ行動ファイナンス理論
ダニエル・カーネマン
プリンストン大学教授
ノーベル経済学賞受賞
投資家の行動を社会心理学的見地から研究
・ホモエコノミクス、効率的市場仮説への懐疑
・人間が持つ様々な心理的バイアスや制約が投資行動に「非合理性」をもたらす・例:
>損を出したくない(Loss Aversion)>皆が買っているから買う(Herding)>昔学んだことに引きずられる(Anchoring)
53
お申込みは次のサイトからhttp://www.npo401k.org/2013/05/30/kyoto_0705/
株式投資の科学とは分解と分散の科学
投資の各ステップで、賢く分解・分散させる
冷静で科学的な株式投資を!
お疲れ様でした。
55