66
オペアンプ基礎 2020930群馬大学協力研究員 東京電機大学非常勤講師 中谷 隆之 1)オペアンプとは?(理想オペアンプ) 2)増幅器回路の基本 ・反転増幅器と非反転増幅器 3)負帰還の効果 ・精度や歪の改善 ・入力抵抗の理想化、出力抵抗の理想化 4)キーとなるオペアンプ仕様 ・DC特性(入力バイアス電流、オフセット電圧/電流と温度ドリフト) ・AC特性(周波数特性、スルーレート、歪、雑音など) 5)電圧帰還オペアンプと電流帰還オペアンプ ・汎用、高精度、高速オペアンプの選択 ・電圧モードオペアンプと電流モードオペアンプの選択 実践的

実践的 年 月 日 オペアンプ基礎 - Gunma University...2020/09/30  · Inverting amplifier R1,R2 抵抗の絶対精度ではなく比精度が重要 反転増幅回路の特徴

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

  • オペアンプ基礎2020年9月30日

    群馬大学協力研究員

    東京電機大学非常勤講師

    中谷 隆之

    1)オペアンプとは?(理想オペアンプ)

    2)増幅器回路の基本

    ・反転増幅器と非反転増幅器

    3)負帰還の効果

    ・精度や歪の改善

    ・入力抵抗の理想化、出力抵抗の理想化

    4)キーとなるオペアンプ仕様

    ・DC特性(入力バイアス電流、オフセット電圧/電流と温度ドリフト)

    ・AC特性(周波数特性、スルーレート、歪、雑音など)

    5)電圧帰還オペアンプと電流帰還オペアンプ

    ・汎用、高精度、高速オペアンプの選択

    ・電圧モードオペアンプと電流モードオペアンプの選択

    実践的

  • オペアンプ(演算増幅器)

    2

    オペアンプはアナログ回路設計における基本コンポーネント。

    名前の通り、様々な演算(線形演算、非線形演算)が可能なコンポーネント

    オペアンプを用いた回路設計のポイントを理解しよう。

    線形回路応用:

    ・増幅(ゲインアンプ)

    ・信号加減算

    ・差動増幅

    ・電圧源

    ・電流源

    ・電圧-電流変換

    ・電流-電圧変換

    ・アクティブフィルタ

    ・積分回路

    ・微分回路 など

    非線形回路応用:

    ・対数演算

    ・指数演算

    ・平方根演算

    ・乗算/除算演算

    ・絶対値演算

    ・正弦波発振

    ・方形波、三角波発振

    ・リミッタ回路 など

    http://www.philbrickarchive.org/

    1952年世界初商用真空管オペアンプ

    K2-W GAP/R社(George A Philbrick)

    真空管:12AX7 2本

    ゲイン:X15,000 (84dB)

    電源:±300V4.5mA

    信号レンジ:±50V

    価格:20ドル

    用途:

    アナログコンピュータ

    1963年世界初モノリシックオペアンプμA702 Fairchildゲイン:68dB電源:+12V/-6V 価格:300ドル(売れず)

    1965年μA709 Fairchildゲイン:94dB電源:±15V 商業的に大成功

    Operational Amplifier

    オペアンプ重要技術・負帰還(Negative Feedback)・差動対( Differential Pair)

  • 理想オペアンプ

    3

    理想オペアンプの条件

    ・オープンループゲインが無限大

    ・入力インピーダンスが無限大

    すなわち入力電流がゼロ

    ・出力インピーダンスがゼロ

    すなわち出力電流による出力電圧変化なし

    ・周波数特性が無限大

    ・パルス立ち上がりや立下り時間がゼロ(スルーレートが無限大)

    ・入力オフセット電圧がゼロ。温度影響なし

    ・内部雑音ゼロ

    実際のオペアンプ回路設計では、

    ・まず理想オペアンプで回路設計を行い

    ・次に様々な特性劣化要因、誤差要因

    を検討して最適なオペアンプを選択し回路設計

    を行うとやりやすい。

    Ideal Op Amp.

    出力

    反転入力

    非反転入力 +

    -ANon-inverting input

    inverting input

    A反転入力

    非反転入力

    オペアンプのシンボル

    この様なシンボルもある

  • 4

    基本的な使い方:反転増幅回路

    いろいろな言い方

    バーチャル・ショート

    バーチャル・グランド

    イマジナリ・ショート

    イマジナリ・グランド

    仮想接地、仮想グランド、

    仮想短絡

    二つの入力端子(反転入力と非反転入力端子)の電圧差が 0V というバーチャル・ショート

    (仮想短絡)の考えを利用すると回路設計が簡単。そうすればオームの法則程度で設計可能。

    入力

    出力

    Vout

    Vin

    0V

    R1

    R2仮想接地

    基準点

    R1

    R2

    VinVout仮想接地

    V1≈0V

    電流 I

    反転増幅回路はシーソーと同じ考え方

    負帰還が正しく動作していると、

    ・オペアンプの反転入力はバーチャルグランド(V1≈ 0V)

    ・入力電流はI=Vin/R1

    ・この電流はR2にのみ流れて、R2の両端にVR2=Ix R2

    すなわち

    電流 I

    𝐕𝐨𝐮𝐭 = −𝐈 𝐱 𝐑𝟐 = −𝐕𝐢𝐧𝐑𝟐

    𝐑𝟏

    𝑮𝒂𝒊𝒏 = −𝑹𝟐

    𝑹𝟏

    反転ゲイン式

    Inverting amplifier

    R1,R2抵抗の絶対精度ではなく比精度が重要

  • 反転増幅回路の特徴

    5

    反転増幅回路の特徴

    ・入出力の位相が反転

    ・入力抵抗が低い(Rinになる)

    ・CMRR(同相信号除去特性)の影響受けない

    反転入力の電位が固定されて入る為

    ・簡単に信号の加算回路が作れる

    Rin

    Rf

    VinVout

    入力抵抗

    帰還抵抗

    R1

    R2

    RfVin1

    Vin2

    Vout

    信号の加算

    ~

    ~

    𝑽𝒐𝒖𝒕 = −𝑹𝒇

    𝑹𝟏𝑽𝒊𝒏𝟏 +

    𝑹𝒇

    𝑹𝟐𝑽𝒊𝒏𝟐

    Rの最適抵抗値範囲(経験的に)

    ・高精度DC応用:10K~100KΩ

    高い抵抗精度(組抵抗)得るには100KΩが限度

    抵抗値大きくすると抵抗雑音が増加

    ・Audio帯域応用:2K~20KΩ

    周波数帯域確保、抵抗からの雑音低くするため

    ・Video帯域応用:200~2KΩ

    周波数帯域確保するため抵抗値は高くできない

    これ以上抵抗下げると電力増加と歪増加

  • 信号切り替え/ゲイン切り替え回路

    6

    反転増幅回路+CMOSスイッチ

    で入力切替やゲイン切り替え回路を構成

    すると、CMOSスイッチのON抵抗がゲイン

    精度に影響する.

    CMOSスイッチのON抵抗は数十~数百Ω

    しかも、温度や信号レベルでON抵抗が変化

    R1

    R2

    R3Vin1

    Vin2

    CMOSスイッチ

    ron1

    ron2

    Vout

    反転増幅

    反転増幅回路でCMOSスイッチのON抵抗が問題とならないゲイン切り替え

    Vin1

    Vin2

    VOUT

    R1 R2

    R3 R4

    SW1 SW2

    Vin

    VOUT

    R1 R2 R3

    SW1 SW2

    𝐆𝐚𝐢𝐧1=-𝐑𝟐+𝐑𝟑

    𝐑𝟏

    𝐆𝐚𝐢𝐧𝟐=-𝐑𝟑

    𝐑𝟏+𝐑𝟐

  • 基本的な使い方:非反転増幅回路

    7

    非反転増幅回路でもバーチャル・ショート(仮想短絡)の考えを利用する。

    非反転増幅回路の特徴・入出力の位相が同相

    ・入力抵抗が極めて高い。この特徴が重要

    CMOSスイッチを用いたゲイン切り替え回路

    などに多用される

    R1

    R2

    Vin

    Vout

    0VGND

    非反転増幅器の考え方

    負帰還が正しく動作していると、

    ・反転入力は非反転入力電位が入力電圧に

    と等しくなる

    ・R1,R2に流れる電流は、I=Vin/R1

    ・出力VoutはR1とR2にかかる電位の足し算

    Vout=Vin+(I x R2) すなわち

    𝑽𝒐𝒖𝒕 = 𝑽𝒊𝒏 + (𝑽𝒊𝒏

    𝑹𝟏R2)=Vin(1+

    𝑹𝟐

    𝑹𝟏)

    Non-inverting amplifier

    Vin Vout

    R1 R2

    バーチャルショートでこの電位はVin

    電流 I

    Vin

    非反転増幅ゲイン式

    𝐈 =𝐕𝐢𝐧

    𝐑𝟏

    𝑮𝒂𝒊𝒏=1+𝑹𝟐

    𝑹𝟏

  • 信号切り替え/ゲイン切り替え回路

    8

    非反転増器の入力インピーダンスが非常に大きい(理想オペアンプでは無限大)特性を利用

    ・信号源抵抗Rsの影響を無視できる

    ・非反転増幅回路をゲイン切り替えに使用すると、CMOSスイッチのON抵抗が無視できる

    CMOSスイッチ

    R1

    R3

    R2

    ron1

    ron2

    +-

    Vin

    Rs

    Vs

    信号源

    Zin=∞

    Zin

    =∞

    Vout+-

    ゲインを決める抵抗は高精度レシオ特性(比精度)を持つアレイ抵抗(組抵抗)使用

    CMOSオン抵抗ronの影響は、オペアンプ反転入力インピーダンスが高いため無視できる

    非反転増幅

    Gain𝟏 = 𝟏 +𝐑𝟏

    𝐑𝟐+𝐑𝟑

    𝐆ain2=1+ 𝐑𝟏+𝐑𝟐

    𝐑𝟑

  • CMOSアナログスイッチを用いたゲイン切り替え回路

    9

    ・非反転増幅でX1,X10,X100,X1000ゲイン切り替え

    ・AD797はバイポーラ入力超低雑音オペアンプ。等価入力雑音 0.9nV/√Hz(typ)

    ・ADG412は汎用CMOSアナログスイッチ。Ron=25Ω(typ)、ton=175ns(typ)

    CMOSアナログスイッチRon特性ADG412

    10K

    1K

    100Ω

    11.1Ω

    x1

    x10

    x100

    x1000

    20p

    1K

    1K

    1K

    +15V

    -15V

    1KVin

    Vout

    スイッチ制御(TTL)

    0.1μ

    0.1μ

    0.1μ

    0.1μ

    0.1μ

    ADG412

    AD797

    +15V

    -15V

    +5V 高精度アレイ抵抗ADG412データシート Analog Devices

    参考 OpAmp Applications Analog Devices

  • 反転増幅+非反転増幅組み合わせ:信号加減算回路

    10

    ・オペアンプの反転、非反転回路を組み合わせると信号の加減算回路(差動回路)を構成できる

    ・左回路だと入力抵抗低いので、各入力に非反転増幅回路を付加して高精度差動回路

    (Differential Amplifier)を実現。

    加減算(差動)回路

    Vin1

    Vin2

    R1 R2

    R3

    R4

    VOUT

    R1=R3R2=R4とすると

    𝑽𝒐𝒖𝒕 =𝑹𝟐

    𝑹𝟏(Vin2-Vin1)

    差動回路:Vdiff差動信号のみ増幅しVCOM同相信号(誘導雑音など)は除去

    R1

    R3

    R2

    R4

    R5

    R6

    R7

    +

    +-

    -

    VOUT

    Vin1

    Vin2

    Vdiff

    VCOM

    高精度差動増幅回路

    R1=R2 R4=R5=R6=R7 とすると

    Vout=(1+𝟐𝐑𝟏

    𝐑𝟑) 𝐕𝐢𝐧𝟐 − 𝐕𝐢𝐧𝟏 =(1+

    𝟐𝐑𝟏

    𝐑𝟑)𝐕𝐝𝐢𝐟𝐟

    Vin1

    Vin2

    差動信号(信号成分)

    同相信号(雑音成分)

    Note:右回路も仮想短絡の考え方使えばオームの法則で解析可能

  • 負帰還システム

    11

    ・負帰還は1927年にベル研のHarold S. Blackにより発明

    ・増幅度Aを有する増幅器出力から帰還増幅度β(通常減衰系)を介した信号を

    入力に負帰還する。増幅度Aが充分に大きいと、ゲインはβにより決まる。

    負帰還の効果を知る Negative Feedback

    β回路は一般的に抵抗網で構成

    増幅度A

    帰還増幅度β

    Σ+

    -

    入力Vin

    出力Vout

    帰還Vβ

    Vout=A 𝑽𝒊𝒏 − 𝑽𝜷

    =A 𝑽𝒊𝒏 − 𝜷𝑽𝒐𝒖𝒕

    𝑽𝒐𝒖𝒕𝑽𝒊𝒏

    =𝟏

    𝜷

    𝟏

    𝟏 +𝟏𝑨𝜷

    Vout

    VβR1

    R2 β=𝑹𝟏

    𝑹𝟏+𝑹𝟐

    𝑽𝜷 =𝑹𝟏

    𝑹𝟏 + 𝑹𝟐𝑽𝒐𝒖𝒕

    Harold S. Black

  • 負帰還の基本原理と効果

    12

    負帰還:

    オペアンプ出力を位相反転して入力へ帰還すること

    負帰還の主な効果

    ・安定なゲインの確保、高精度化、歪の改善

    ・オペアンプ出力インピーダンスの低減

    ・オペアンプ入力インピーダンスの増加

    負帰還動作時の入出力関係式

    Vout=Vin𝑨

    𝟏+𝑨𝜷

    𝛃 =𝐑𝟏

    𝐑𝟏 + 𝐑𝟐

    Vin Vout

    R1 R2 β回路

    A

    ・オープンループゲイン:A

    ・帰還率:β

    ・ループゲイン:Aβ

    ・帰還量:1+Aβ

    ・クローズループゲイン:G

    VinVout

    +

    -A

    負帰還ループ

    ββVout

    𝑮 =𝑽𝒐𝒖𝒕

    𝑽𝒊𝒏=(1+

    𝑹𝟐

    𝑹𝟏)(

    𝟏

    𝟏+𝟏

    𝑨𝜷

    )

    𝟏

    𝜷 誤差項

  • 負帰還の効果:高精度化

    13

    例えばオープンループゲインAOL=100dB(=105)を有するオペアンプで、クローズゲイン

    ACL=40dB(x100)で使用すると、帰還量Aβは60dBとなり、精度、歪などが60dB(x1000

    または1/1000)改善される

    𝑽𝒐𝒖𝒕

    𝑽𝒊𝒏=(1+

    𝑹𝟐

    𝑹𝟏)(

    𝟏

    𝟏+𝟏

    𝑨𝜷

    )

    誤差項周波数(Hz)

    100

    80

    60

    40

    20

    0

    ゲイ

    ン(d

    B)

    10 100 1k 10k 100k 1M

    クローズループゲイン:ACL=1+R2/R1

    オープンループゲイン:AOL

    帰還量 1+Aβ(≒ループゲインAβ)

    -6dB/oct(-20dB/dec)の一次特性

    帰還量 (1+Aβ)≈ 𝑨βこれが精度や歪の改善に寄与する

    回路設計では、この帰還量が必要な精度を満たす様に設計帰還量60dBだと0.1%精度0.01%精度必要なら帰還量は80dB確保

    周波数2倍で-6db減衰周波数10倍で-20dB減衰

  • 負帰還:オープンループゲインが及ぼす精度

    14

    1M100K10K1K100101

    0

    -1.0

    +40

    +100

    +120

    ゲイン誤差(%

    )

    -0.5

    ゲイン(d

    B)

    拡大

    オープンループゲイン120dBと100dBオペアンプ(ユニティゲイン周波数は1MHzで同じ)クローズループゲイン20dB(x100)としたときの、ゲイン精度をシミュレーションAOL=120dBオペアンプではゲイン誤差0.01%,AOL=100dBオペアンプではゲイン誤差0.1%

    𝐀𝐎𝐋 = 𝟏𝟐𝟎𝐝𝐁

    𝟏0𝟎𝐝𝐁

    𝐀𝐂𝐋 = 𝟒𝟎𝐝𝐁(𝐱𝟏𝟎𝟎)

    𝐀𝐎𝐋 = 𝟏𝟎𝟎𝐝𝐁 クローズループゲイン精度

    シミュレーション

  • 負帰還:ノイズゲインと信号ゲイン

    15

    信号ゲイン=1+R2/R1

    信号ゲイン=-R2/R1

    信号ゲイン=-R2/R1信号ゲイン=-R2/R3

    信号ゲイン=-R2/R1

    ノイズゲイン=1+R2/R1

    ノイズゲイン=1+R2/R1

    ノイズゲイン=1+𝐑𝟐

    𝐑𝟏∕∕𝐑𝟑

    ノイズゲイン=1+𝐑𝟐

    𝐑𝟏∕∕𝐑𝟑

    ・Vin入力に対するVout出力へは

    信号ゲインで決まる

    ・電圧ノイズやオフセット電圧は

    ノイズゲインで決まる

    ・負帰還の安定性に寄与するβは

    ノイズゲインによる

    ・非反転増幅器では、信号ゲインと

    ノイズゲインは同じ

    ・反転増幅器では、信号ゲインと

    ノイズゲインが異なる

    ・負帰還回路で(D)の様にR3追加すると

    帰還の安定性は向上するが

    精度劣化、雑音増加、

    オフセット電圧誤差増加を伴う

    参考 Op Amp Applications :Analog Devices

    (A)非反転増幅

    (C)反転加算増幅

    (B)反転増幅

    (D)位相補償でR3追加

    Vin

    Vout+-

    Vin1

    Vin2

    Vout

    R1 R2

    R1

    R2R3

    +

    -

    Vin

    Vout

    R1

    R2R3

    +-

    Vin Vout

    R1 R2

    +-

    信号ゲイン:入出力間の信号ゲイン

    ノイズゲイン:帰還量を決め、精度を決める

    非反転増幅では

    信号ゲイン=ノイズゲイン

  • 実際のオペアンプオープンループゲイン直線性

    16

    入力30μV

    出力20V

    8μV-27%

    高精度オペアンプOP177のオープンループDC直線性の例・オープンループゲイン

    AOL≒20V/30μV=6.67x105=116dB

    ・±10V出力における、エンドポイント

    法での最大非直線性誤差は

    約27%もある。

    図はOP177データシート Analog Devices

    ・オープンループ直線性があれば簡単にゲイン補正で精度維持可能

    ・実際のオペアンプにおけるオープンループゲインは非安定性、非直線性が数十%にも及ぶ

    原因は温度、負荷、電源電圧、信号レベル依存性ほか様々

    ・このため負帰還で必要精度を確保するには帰還量1+Aβが必要

    入力

    出力

  • オペアンプの出力インピーダンス特性

    17

    シミュレーションオペアンプAol特性

    100dB

    0dB1MHz10Hz

    負帰還を施したオペアンプの出力インピーダンス

    A

    +

    -

    オープンループ

    出力抵抗Ro

    オペアンプはオープンループで数十~数百Ωの出力抵抗がある。

    負帰還をかけると、出力インピーダンスは帰還量だけ改善(出力インピーダンスが低下)

    Zo

    𝒁𝒐 ≈𝑹𝒐

    𝑨𝜷

    オープンループ特性が周波数特性を持つので、周波数高くなると帰還量が減り出力インピーダンスは高なる。

    Aβが80dBあればRoが𝟏

    𝟏𝟎𝟒倍される

    10 100 1K 10K 100K 1M 10M

    100

    10

    1

    100m

    10m

    1m

    出力

    イン

    ピー

    ダン

    スZo

    周波数 (Hz)

    出力インピーダンス特性(シミュレーション)

    ・非反転バッファ・オープンループゲイン100dB・ユニティゲイン周波数1MHz・オープンループ出力抵抗100Ω

  • オペアンプの入力インピーダンス特性

    18

    オープンループ入力抵抗Rin=100KΩとした時の、入力インピーダンス特性(シミュレーション)

    シミュレーションオペアンプAol特性

    100dB

    0dB1MHz10Hz

    負帰還によりバイポーラ入力オペアンプの入力抵抗を理想に近づける

    オープンループ入力抵抗値が、負帰還効果でAβ倍される。

    A

    +

    -Zin

    𝑍𝑖𝑛 = 𝐴β Rin

    オープンループ特性が周波数特性を持つので、周波数高くなると帰還量が減り入力インピーダンスは低くなる。

    Aβが80dBあればRinが104倍される

    100k

    1M

    10M

    100M

    1G

    10G

    0dB20dB

    1M100k10k1k10010

    𝐀𝐂𝐋 = 𝟒𝟎𝐝𝐁

    周波数 (Hz)

    入力

    イン

    ピー

    ダン

    ス(Ω

  • 負帰還:負帰還系の安定性に留意

    19

    ・一般的な汎用オペアンプは、単一極のみを持つ一次特性に内部位相補償されている。

    このため、x1~Aolまでのクローズループゲインにおいて、安定して使用可能(発振しない)

    ・オープンループ特性に2つ以上の極を持つと、クロズーループゲンイをx1からfp2の範囲で使用

    すると発振。fp1~fp2の範囲で使用すれば負帰還の系は安定。

    クローズループゲイン

    全て範囲で負帰還系は安定

    この範囲だと不安定(発振)

    この範囲だと安定

    周波数(Log) 周波数(Log)

    fp1 fp1

    fp2

    オー

    プン

    ルー

    プゲ

    イン

    (dB

    )

    オー

    プン

    ルー

    プゲ

    イン

    (dB

    )

    -6dB/oct(-20dB/dec)

    -6dB/oct(-20dB/dec)

    -12dB/oct(-40dB/dec)

    00

    0

    AOL AOL

    ACL

    ACL

  • 2つの極(時定数)を持つ負帰還

    20

    2つの極(時定数)を持つオペアンプ回路において、2つ目の極をfp2とすると

    ・クローズループゲインACLをfp2以上とすると不安定

    ・ACLがfp2だと、周波数特性上に+3dBのピーク発生(位相余裕45度)

    ・ACLを1/fp2以下とすると、ピークの発生はほとんどない(位相余裕60度)

    ・fp2の極が不安定性に影響する低いACLで使用する場合は、位相補償を行う

    極-ゼロ補償や、fp1を低い周波数に移すなど

    fp1に極を持つオペアンプ

    Ro

    CL

    負帰還

    +

    -

    RoとCLによるfp2

    2つの極(時定数)が出来る例

    負荷容量

    AOL

    ACLfp2

    fp1

    -6dB/oct(-20dB/dec)

    -12dB/oct (-40dB/dec)

    fC < fp2/2

    周波数 (Hz)

    クローズループゲインACLをこの範囲で使用する

    クローズループゲインACLをこの範囲で使用すると不安定

    ゲイ

    ン(d

    B)

  • オペアンプの主な仕様

    21

    入力特性 主な単位 AC動的特性 主な単位

    入力オフセット電圧 (Vos) mV ゲインバンド幅積 (GBW) MHz

    オフセット電圧ドリフト (dVos/dT) μV/℃ フルパワーゲインバンド幅 (FPBW) MHz

    入力バイアス電流 (Ib) nA スルーレート (SR) V/μs

    入力オフセット電流 (Ios) nA 高調波歪み (HD2,HD3) %

    同相入力電圧範囲 (Vcm) V 全高調波歪み+雑音 (THD+N) %

    同相信号除去比 (CMRR) dB セトリング時間 (ts) μs

    オープンループループゲイン (Aol) dB

    入力インピーダンス (Zin) kΩ//pF 雑音特性

    入力電圧雑音 (En:0.1~10Hz) μV/p-p

    出力特性 等価入力電圧雑音密度 (en) nV/ HZ

    出力電圧範囲 (Vo) V 等価入力電流雑音密度 (in) nA/ HZ

    最大出力電流 (Io) mA

    短絡電流 (Is) mA 電源特性

    出力インピーダンス (Zo) Ω 電源電圧 (Vs) V

    最大容量負荷 (Cload) pF 静的電源電流 (Is) mA

    電源電圧変動 (PSRR) dB

    代表的なオペアンプ仕様

    オペアンプの仕様を理解しよう

  • 入力オフセット電圧・バイアス電流・オフセット電流

    22

    入力オフセット電圧は、オペアンプ入力段を構成する

    2つのトランジスタ(差動回路)のベース-エミッタ間電圧

    Vbe差により発生。

    FET入力オペアンプでは差動構成FETのゲート-ソース間

    電圧Vgs差により発生。

    入力バイアス電流は、入力トランジスタのベース電流.

    FETではゲート電流は、ほとんど無視できる。

    入力オフセット電流は、+入力と-入力の

    入力バイアス差 Ios=Ib(+)-Ib(-)

    入力オフセット電圧

    Vos

    Ib+

    Ib-入力バイアス電流 A

    +

    -

    2I

    I I

    Q1 Q2

    FET入力オペアンプ入力部

    +

    -

    𝑉𝑂𝑆 = 𝑉𝑔𝑠1 − 𝑉𝑔𝑠2

    入力オフセット電圧2I

    I I

    Q1 Q2

    バイポーラ入力オペアンプ入力部

    +

    -

    Ib+

    Ib-

    𝑉𝑂𝑆 = 𝑉𝑏𝑒1 − 𝑉𝑏𝑒2

    入力オフセット電圧

    入力バイアス電流

    入力バイアス電流はpA

    Differential pair

  • 入力オフセット電圧・バイアス電流・オフセット電流の影響

    23

    オペアンプの入力オフセット電圧Vosおよび入力バイアス電流Ibの影響を計算

    出力換算オフセット誤差(RTO)=Vos 1 +𝑅2

    𝑅1+ {𝐼𝑏+ ⋅ 𝑅3 1 +

    𝑅2

    𝑅1} − (𝐼𝑏− ⋅ 𝑅2)

    入力換算オフセット誤差(RTI)=𝑉𝑂𝑆 + 𝐼𝑏+ ⋅ 𝑅3 − 𝐼𝑏−𝑅1∙𝑅2

    𝑅1+𝑅2

    ただし 𝑅3 =𝑅1∙𝑅2

    𝑅1+𝑅2ならば 入力換算オフセット誤差(RTI)=𝑉𝑂𝑆

    ノイズゲイン=𝟏 +𝐑𝟐

    𝐑𝟏

    Vin1に対する

    信号ゲイン=𝟏 +𝐑𝟐

    𝐑𝟏

    Vin2に対する

    信号ゲイン=−𝐑𝟐

    𝐑𝟏

    +

    -

    入力オフセット電圧

    入力バイアス電流

    Refer to output

    Refer to input

  • FET入力オペアンプの入力バイアス電流

    24

    FET入力オペアンプの入力バイアス電流はバイポーラ入力タイプに比べ極めて低い

    FETゲート電流は、周囲温度+自己発熱により大きく影響され、10度で2倍増加する。

    また入力レベル(CMV:同相電圧)によりバイアス電流が変化する。

    高インピーダンス部分の高精度回路設計では要注意。

    汎用FET入力オペアンプ(LF412)入力バイアス電流

    約50pA汎用FET入力オペアンプ(LF412)入力バイアス電流温度特性

    高速・高精度FET入力オペアンプ(OP627)入力バイアス電流

    TIデータシートより

    100

    80

    60

    40

    20

    01050-5-10

    同相(入力)電圧 (V)

    入力バイアス電流(PA

    )

    1p

    10p

    100p

    1n

    10n入力バイアス電流(A

    )

    -50 50 1000

    温度 (℃)

    -50 50 1501000接合部温度 (℃)

    1p

    10p

    100p

    1n

    10n

    0.1p

    入力バイアス電流(A

    OPA627入力バイアス電流温度特性

    1.0

    1.1

    1.2

    0.9

    0.80 15-15

    同相(入力)電圧 (V)

    入力バイアス電流(

    倍率)

  • オープンループゲイン特性

    25

    汎用タイプLF412オープンループゲイン

    AOL=106dB

    高精度タイプOP177オープンループゲイン

    AOL=140dB

    ビデオ用高速タイプAD8045オープンループゲイン

    AOL=63dB

    TIおよびADIデータシートより

    ・DCにおけるオープンループゲインAOLは

    汎用オペアンプで約106dB,高精度タイプで120dB以上、ビデオ用で約60dB

    ・基本的には1次特性(-6dB/oct,-20dB/dec)になっており、0dBのクローズループで

    使用しても安定となるように内部位相補償されている

    ・広帯域オペアンプではx2やx10以上で安定となるように内部位相補償してある品種もある

    100

    0

    80

    60

    40

    20

    120

    1M10K1001

    利得(d

    B)

    周波数 (Hz)

    0

    80

    40

    120

    140

    1M10K10010.01周波数 (Hz)

    利得(d

    B)

    0

    20

    40

    60

    1G10M100K 1M 100M

    0

    -90

    -180

    -270

    -360

    位相

    ゲイン

    利得(d

    B)

    位相(d

    eg)

    Open loop gain

  • 同相信号除去(CMRR)特性

    26

    オペアンプの入力電圧が変化すると

    同相信号除去特性(CMRR)を受け

    入力部での誤差要因となる。

    ・非反転増幅回路で影響

    ・反転増幅回路では影響受けない

    反転、非反転入力が≒0Vのため

    ・CMRRは周波数特性を有する

    オープンループ(AOL)に似た特性

    非反転増幅器では、必ずCMRR特性による精度劣化を伴う

    高精度オペアンプのCMRR特性例

    100K10K1K10010

    150

    140

    130

    120

    110

    100

    90

    80

    CM

    RR

    (dB

    )

    周波数 (Hz)

    OP177

    Common mode rejection ratio

    ADIデータシートより

    非反転増幅におけるCMRRによる誤差

    A+

    -CMRR=100dBとすると

    CMRRによる誤差

    105

  • 入力レベル(CMV)により変化するCMRRおよびオフセット誤差

    27

    ・入力電圧(CMV)範囲において、CMRR特性が

    変化するオペアンプがある。

    ・特にCMOSオペアンプRail to Rail特性に注意

    ・(+)入力と(-)入力でCMRRが相違

    ・ある入力レベルの所でCMRRに段差を生ずる

    ・入力同相電圧で入力バイアス電流が変化

    するオペアンプがある。

    入力同相電圧でCMRR特性が変化するオペアンプ例

    CMRR

    http://www.rohm.co.jp/web/japan/news-detail?news-title=2015-07-30_article_opamp&defaultGroupId=fa_1

    Common mode voltage

  • 電源電圧変動(PSRR)

    28

    PSRRは電源電圧の変動がオペアンプ出力に及ぼす影響。

    ・PSRRは周波数特性を有する。オープンループゲイン特性と近い特性

    ・高い周波数でのPSRRが悪くなるので、最適なパスコンによるデカップリングが重要

    オペアンプ電源にスイッチング電源使用するとスイッチング雑音がオペアンプ出力に重畳される

    1M10K1001

    140

    120

    100

    80

    60

    40

    20

    0

    周波数 (Hz)

    PSR

    R (

    dB

    )

    OP177

    オペアンプのPSRR特性例

    Power supply rejection ratio

    OP177データシート Analog Devices

    電源ピンは“入力信号ピン”と考えよ

    電源ピン 0.1μFセラコン

    100μF~電解コンデンサ

    電源入力

    +V

    -V

    数十μF電解コンデンサ

    数十μF電解コンデンサ

    ~5cm

    100μF~電解コンデンサ+

    +

    +

    +

    A

  • ノイズ特性:オペアンプ電圧ノイズと電流ノイズ

    29

    等価入力電流ノイズ密度電流ノイズは1Hzあたりの密度で表す

    𝑖𝑛=pA/ 𝐻𝑍 またはnA/ 𝐻𝑍

    オペアンプ雑音は、fc周波数より高い周波数

    では、フラットなノイズ特性(ホワイトノイズ)

    特性を有する。

    fc以下では、1/fの周波数特性でノイズが

    増加する1/fノイズ特性を有する。

    またオペアンプは電圧性ノイズと電流性ノイズ

    がスペックされる。

    ノイズは1Hzあたりの密度で定義される

    等価入力電圧ノイズ密度電圧ノイズは1Hzあたりの密度で表す

    𝑒𝑛 = 𝑛𝑉/ 𝐻𝑍

    周波数 (Hz)

    雑音密度

    nV/ 𝑯𝒁

    k

    fC

    𝟏

    𝒇コーナ周波数

    -3dB/octave

    𝑒𝑛 = 𝑘 𝑓𝑐1

    𝑓1/fノイズ

    ホワイトノイズ

    +~等価入力ノイズ電圧密度

    en

    In+

    In-

    等価入力電流ノイズ密度

    +

  • 抵抗から発生するノイズは大きい

    30

    全ての抵抗は次式で表される熱雑音enを発生する。

    抵抗値が大きくなるとノイズが増加し、また温度が上昇してもノイズが増加する

    R:抵抗値 (Ω)

    T:絶対温度 T(K)=T(℃)+273

    B:ノイズ帯域(Hz)

    K:ボルツマン定数 (1.38 x10-23 J/K)

    27℃において

    ・50Ωの抵抗は0.9nV/ 𝐻𝑍

    ・1KΩの抵抗は4nV/ 𝐻𝑍

    ・10KΩの抵抗は12.7nV/ 𝐻𝑍のノイズを発生

    オペアンプ用いたノイズ設計では、

    ・オペアンプ電圧ノイズ、電流ノイズ

    ・抵抗熱雑音(結構大きい)

    ・ノイズは周波数帯域の関数

    に留意した設計を行うこと

    𝒆𝒏 = 𝟒𝒌𝑻𝑩𝑹 (𝑉𝑟𝑚𝑠/ 𝐻𝑍)抵抗の熱雑音

    1

    0.1

    10

    100

    1000

    雑音

    電圧

    密度

    (nV

    /𝑯𝒁)

    抵抗値 (Ω)1 10 100 1K 10K 100K 1M

    27℃

  • ノイズ帯域とrms/p-pノイズ

    31

    ノイズ計算するときの帯域はノイズ帯域。一次特性の(-3dB)帯域とは異なる。

    rmsとp-pノイズの関係

    ノイズ計算はrms実効値で計算される。

    rms実効値とp-p雑音の関係は

    ノイズがガウシアン分布と仮定し、

    一般的に p-p≈6.6 x rms で扱われる

    p-p値左記p-pを外れる確率

    2 x rms 32%

    3 x rms 13

    4 x rms 4.6

    5 x rms 1.2

    6 x rms 0.27

    6.6x rms 0.10

    7 x rms 0.046

    8 x rms 0.0006

    ノイズ帯域

    -6dB/oct一次特性

    ノイズ帯域の定義

    fp fe

    ゲイン(d

    B)

    周波数

    𝑓𝑒 =π

    2𝑓𝑝=1.57𝑓𝑝

    -3dB帯域

  • ノイズ特性:rmsノイズの計算

    32

    rmsノイズは周波数の関数。周波数帯域広ければrmsノイズは増加する

    周波数帯域(fL~fH)の Vn rmsノイズは、

    1/fノイズ

    𝑽𝒏 𝒓𝒎𝒔 = 𝑽nw 𝒇𝑪 𝐥𝐧𝒇𝑪

    𝒇𝑳+ 𝒇𝑯 − 𝒇𝑪

    ホワイトノイズ電圧密度nV/√Hz

    ホワイトノイズ

    NJM5532(NJRC)

    1/fノイズコーナー周波数fc=10Hz

    Vnwホワイトノイズ

    1/fノイズ

    オペアンプ入力換算電圧雑音特性例

    計算例:

    𝒇𝐋 = 𝟎. 𝟓𝐇𝐳, 𝒇𝐇 = 𝟏𝐊𝐇𝐳, 𝒇𝐂 = 𝟏𝟎𝐇𝐳,

    𝑽𝒏,𝒓𝒎𝒔 = 𝟏𝟔𝟎𝒏𝑽 𝒓𝒎𝒔

    𝑽𝒏,𝒑−𝒑 = 𝟔. 𝟔𝒙𝟏𝟔𝟎𝒏𝑽𝒓𝒎𝒔

    = 𝟏. 𝟎𝟔μ𝑽𝒑 − 𝒑

    𝐕𝐧𝐰 = 𝟓𝐧𝐕/ 𝐇𝐙

    DC計測以外では、rmsノイズはホワイトノイズが支配項となる

    NJRCデータシート

  • オペアンプノイズ特性例

    33

    ・入力電圧ノイズ特性において、バイポーラ入力タイプはFET入力タイプより低ノイズ

    バイポーラ入力低雑音オペアンプでは、1nv/ 𝑯𝒁以下の低ノイズタイプもある

    1nv/ 𝑯𝒁は50Ω抵抗で発生する熱雑音レベル

    ・FET入力低ノイズオペアンプでは5nv/ 𝑯𝒁程度

    ・ FET入力タイプの1/f ノイズはバイポーラ入力に比べて大きく1/f コーナ周波数も高い

    fcコーナが約100Hzでen≒0.9nV/√Hz fcコーナが約10KHzで

    en≒1nV/√Hz

    FET入力タイプは1/fコーナがブロード

    FET入力低雑音タイプOPA627

    1M10K10011

    10

    100

    周波数 (Hz)

    入力電圧雑音密度(n

    V/√H

    z)

    バイポーラ低雑音タイプAD797

    100 10K 1M0

    1

    2

    3

    4

    周波数(Hz)

    入力電圧雑音密度(n

    V/√H

    z)

    バイポーラ高速タイプAD8099

    1M 100M10K10011

    10

    100

    1000

    入力電圧雑音密度(n

    V/√H

    z)

    各オペアンプデータシート Analog Devices およびTI

  • オペアンプ増幅器におけるノイズ計算

    34

    50Ω抵抗熱雑音

    1KΩ抵抗熱雑音

    1KΩ抵抗熱雑音

    オペアンプ電圧雑音

    オペアンプ電流雑音

    オペアンプ電流雑音

    出力換算雑音 雑音源

    Op Amp Applications :Analog Devices

    ノイズゲイン

    50Ω信号源、オペアンプ非反転増幅器(x2)、オペアンプ等価入力電圧雑音密度5nV/√Hz,

    等価入力電流雑音密度2pA/√Hz、オペアンプ帯域180MHz(-3dB)としたときの出力雑音rmsを計算。

    各要素雑音を2乗加算し平方根

  • オペアンプ:ゲイン帯域幅積(GBW)

    35

    オペアンプのオープンループゲイン特性AOLが一次特性(-6dB/oct)とし、

    小信号ユニティゲインfu(オープンループゲインがx1=0dBとなる周波数))とすると、

    各クローズループゲインG(正確にはノイズゲイン)とカットオフ周波数fcの積が等しい

    𝑮𝟏𝒇𝑪𝟏=𝑮𝟐𝒇𝑪𝟐=𝒇𝑼

    例えばユニティゲイン周波数1MHz

    (GBW=1MHz)のオペアンプで、

    20dBゲイン(x10)増幅器構成すると

    -3dB周波数帯域は100KHz

    40dBゲイン(x100)増幅器構成すると

    -3dB周波数帯域は10KHz

    ただし小信号時

    Gain bandwidth product

    ゲイン(d

    B)

    AOL オープンループゲイン特性-6dB/oct (-20dB/dec)

    fc1 fc2 fu

    ACL2

    ACL1ノイズゲインG1

    ノイズゲインG2

    G= 1 +𝑅2

    𝑅1

    周波数(Hz) 1M100K10K

    x100

    x10

    x1

  • スルーレートとフルパワーバンド幅

    36

    スルーレート(SR)とは出力電圧の最大変化率の事

    通常v/μsで表す。

    ・バイポーラ汎用オペアンプでは数V/μs

    ・FET汎用オペアンプでは十数V/μs

    ・ビデオ用高速オペアンプでは数百V/μs

    オペアンプのフルパワーバンド幅(FPBW)は

    アンプの最大フル振幅を 2Vp とすると

    サイン波の最大スルーレート(傾き)は

    (dV/dt)max=2πfVp

    (Hz)

    計算例スルーレートSR=10V/μs,振幅Vp=10V(20Vp-p)

    FPBW=𝑺𝑹

    𝟐𝝅𝑽𝒑=

    𝟏𝟎(𝑽

    𝝁𝒔)

    𝟐𝝅×𝟏𝟎= 𝟏𝟓𝟗 (𝑲𝑯𝒛)

    Slew rate & Full power bandwidth

    入力波形Ein

    出力波形Eout

    スルーレートで歪んだ波形

    NECデータブック

    小信号ユニティ帯域が3MHzあっても、FPBWは159KHz

    Ein

    EoutA

    ボルテージフォロワー

  • オペアンプ:全高調波歪(THDとTHD+N)

    37参考 Op Amp Applications :Analog Devices

    THD+N = 𝑉2

    2+𝑉32+𝑉4

    2+ ...+𝑉𝑛2+𝑉𝑛

    2

    𝑉𝑆*100 (%)

    THD = 𝑉2

    2+𝑉32+𝑉4

    2+ ...+𝑉𝑛2

    𝑉𝑆∗ 100 (%)

    Vs:信号振幅 (Vrms)

    V2:2次高調波歪 (Vrms)

    Vn:n次高調波歪 (Vrms)

    Vn:測定帯域での全ノイズ (Vrms)

    全高調波歪THDは信号振幅(Vrms)と、n次までの高調波歪成分(Vrms)の比。%かdBで表現。

    一般的には5次高調波成分まで計算されることが多い。

    高調波歪は2次歪みと3次歪成分が支配項。

    THD+Nでは、高調波歪と雑音の合算と信号振幅の比で計算。ただしDC成分は除く

    Total harmonic distortion

    THD =20Log 𝑉2

    2+𝑉32+𝑉4

    2+ ...+𝑉𝑛2

    𝑉𝑆(𝑑𝐵)

    または

    THD+N =20Log 𝑉2

    2+𝑉32+𝑉4

    2+ ...+𝑉𝑛2+𝑉𝑛

    2

    𝑉𝑆(dB)

    または

  • 各オペアンプのオーディオ帯域THD+N特性の例

    38

    NE5532 (NJRC):汎用オーディオ用

    Gain=+10,RL=10kΩ

    出力電圧 (Vrms)

    -80

    -100

    -120

    (dB)

    20KHz

    1KHz

    20Hz

    LME49990 (TI) 超低歪みオペアンプ

    -80

    -100

    -120

    -140

    (dB)

    Gain=1相当

    AD797 (ADI) 超低ノイズ産業用

    Gain=+10RL=600Ωf=10KHz

    0.001

    0.01

    0.1

    0.0001

    (%) OPA627 (TI) FET入力産業用-60

    -80

    -100

    -120

    -140

    (dB)

    TI,およびADIデータシートより

  • セトリング特性

    39

    ・セトリング時間は、最終収束値の規定誤差範囲に収まるまでの時間

    ・最終収束値の0.1%または0.01%に収まるまでの時間で規定される場合が多い

    ・高速/高精度なセトリング時間を測定するには高度な測定ノウハウが必要。・セトリング特性にロングテール特性を有するものがあるので注意

    位相補償方法や熱的な結合などにより発生

    高速オペアンプのセトリング特性例AD8099

    +0.1%

    -0.1%

    Settling time

    AD8099データシート Analog Devices

    出力

    0 時間

    セトリング時間

    回復時間立上り時間不感時間

    セトリング時間仕様の誤差幅

    参考 Op Amp Applications :Analog Devices

  • セトリング特性:周波数特性ピーク発生とパルス特性オーバシュート

    40

    パルス特性上でのオーバシュート

    周波数特性上でのピーク

    周波数 (Hz)

    ゲイン(d

    B)

    周波数特性上での位相余裕量とピーク量

    規格化ゲイン(d

    B)

    規格化周波数 (Hz)

    位相余裕 30度

    -3dB

    Operational Amplifier Analog Devices

    広帯域化かセトリング特性重視かで、最適な位相補償方法が異なる

  • 一次特性に位相補償されたオペアンプがセトリング特性に有利

    41Application Report JAJA206 高速データ変換 TI

    きれいな一次特性-6dB/oct

    高精度なセトリング特性は、一次特性が優れる

    一次特性セトリング時間

    誤差 時間

    1% 4.6τ

    0.1% 6.9τ

    0.01% 9.2τ

    10ppm 11.6τ

    1ppm 13.8τ 周波数特性

    最終値

    時間τ

    63%

    100%

    0

    時定数 τ=CR

    RC~

    Vin Vout

  • セトリング特性:ロングテールの発生

    42

    オペアンプの位相補償回路において、

    極-ゼロがミスマッチしていると、過渡応答に

    “ロングテール”と呼ばれる長い時定数を持つ

    セトリング項が形成される

    高精度セトリング特性の劣化 Long tail

    セトリング特性

    セトリング特性にテール(段差)が生じる

    Application Report JAJA206 TI

    ω0 ω1 ω1’

    ゼロ点

    極(ポール)

    極(ポール)

    極-ゼロ補償のBode線図例

    極-ゼロ位相補償で段差生じやすい

    周波数

    ゲイン(dB)

    時間

    出力電圧

  • オペアンプの出力位相反転

    43

    入力が許容コモンモード電圧範囲を外れた場合、反転入力と非反転入力の機能が

    入れ替わり、出力が反転する現象。古いタイプのFET入力オペアンプなどで見られる。

    Analog Devices AN-849

    位相反転を生じないCMOSオペアンプ例OPAx172シリーズ TI

    オペアンプの位相反転例

    OPAx172データシート TI

    出力位相反転せずに飽和するのみ

  • 位相反転なし、過大入力保護内蔵オペアンプ例

    44

    ADA4096オペアンプオペアンプ内蔵の過大入力保護用に、シリーズ抵抗に替え

    てFETを使用。過大電圧により等価ON抵抗が増加する。

    過大電圧0Vでは4.5KΩが、30Vでは22kΩに増加。

    ±40Vの過大同相入力電圧印加しても、位相反転を

    生じない。

    ADA4096オペアンプデータシート ADI

    過大入力印加時の入力バイアス電流

    ADA4096

    入力±40V

    出力±10V

    オペアンプ電源±10Vの時

    ADA4096

  • オペアンプのEMI除去比:EMIRR

    45AN-1689 TI

    EMI対策オペアンプ

    一般的なオペアンプ

    携帯電話などのRF電磁波(数百M~数GHz)が

    オペアンプに入力されると、RF信号がオペアンプ内

    部の非線形性要因で検波され、オペアンプ出力に

    オフセット電圧誤差として現れる。

    最近のオペアンプでは入力にEMI対策がされている

    タイプもある。

    携帯電話など

    オペアンプ出力

    最近のCMOSオペアンプEMI特性(OPAx172)

    OPAx172データシート TI

    Electromagnetic interference rejection ratio

  • 両電源(デュアル電源)オペアンプ

    46

    両電源(デュアル電源)オペアンプでは、プラスとマイナスの2種類の電源を使用する。一般的には、±15Vまたは±5Vがよく使われる。単一電源でも、プラスとマイナスの電源電圧が異なっても問題ない。

    両電源動作における信号振幅範囲

    +V

    -V

    +V +V

    -V -V

    GND

    GND

    電源電圧が異なる両電源GNDレベルが中心ではない

    電源電圧が同じ両電源GNDレベルが中心

    パスコンは+V,-Vにそれぞれ接続

    信号振幅を最大限利用できる

    マイナス側での信号振幅が制限される

  • 単電源オペアンプ

    47

    単電源動作における信号振幅範囲

    プラスの単一電源

    +V

    +V

    GND

    マイナスの単一電源

    GND

    -V

    -V

    両電源(デュアル電源)での使用もOK

    +V

    -V

    +V

    -V

    GND

    +V

    +V/2

    単電源での一般的使用方法(AC結合アンプ)

  • 単電源オペアンプ

    4848

    単電源オペアンプ特長

    ・一電源のみでOK

    ・一般的に低消費電力

    ・バッテリ駆動ポータブル機器用などに適する

    単電源オペアンプ設計上の留意点

    ・信号振幅が小さくなるので誤差の影響が大きくなる

    オフセット電圧、バイアス電流、有限なオープンループ利得、雑音など

    ・一般的に、ノイズの多いデジタル電源が使用される事が多いのでPSRRに要注意

    ・扱う振幅からRail-to-Rail入力&出力特性が必要とされることが多い

    ・デュアル電源オペアンプに比べて一般的に精度が劣る。必要精度を吟味

    ・多くのオペアンプでは単電源動作での仕様もデータシートに提示している。

    ただしGNDおよび電源電圧近傍のRail-to-Rail特性についての仕様に注意

  • レール・ツー・レール オペアンプ

    49

    信号振幅が電源電圧(+Vcc~GNDまたは+Vcc~-Vcc)範囲まで扱えるオペアンプを

    Rail-to Railオペアンプと呼ぶ。

    Rail to rail Op amp

    汎用両電源オペアンプ 汎用単電源オペアンプ

    GND

    +V

    -V GND

    +V

    この範囲使用NG

    Rail to railオペアンプ

    GND

    +V

    GND~+V範囲で使用可能

    +V

    GND

    +V入力rail to rail

    GND

    +V出力rail to rail

    入力rail to rail、出力rail to rail および入出力rail to railタイプがある

  • 2個入り、4個入りオペアンプ

    50

    AD822(dualタイプ)のクロストーク

    2個入り(Dualタイプ)、4個入り(Quadタイプ)オペアンプでは

    チャンネル間クロストーク(チャンネル間セパレーション)に注意

    ・1KHzで約-130dB,100KHzで約ー95dBのクロストーク発生。

    ・DC応用では問題ないがビデオ帯域では注意必要

    ・発熱変動(負荷電流変化)大きい所での使用は注意。(熱帰還影響)

    ・経験的に4個入りのスペースフアクターはあまり高くない。デュアルタイプが使いやすい。

    NEC産業用リニアICハンドブック

    -80

    -70

    -90

    -100

    -110

    -120

    -130

    -1401M100k10k1k

    周波数 (Hz)

    クロ

    スト

    ーク

    (dB

    )

    100K10K1K10010

    150

    100

    50

    0

    周波数 (Hz)

    チャ

    ンネ

    ルセ

    パレ

    ーシ

    ョン

    (dB

    )

    Analog Devicesデータシート

    デュアルタイプ 汎用オペアンプチャンネルセパレーション uPC458

  • 汎用オペアンプの選択

    51

    タイプ 用途概要 特性概要 価格汎用 12ビット精度以下での オープンループゲイン約100dB 数十円

    DCからオーディオ応用 入力オフセット電圧数mV周波数帯域(BW) 約1MHzスルーレート1V/μsから10V/μs程度

    高精度 14ビット精度以上での オープンループゲイン 120dB以上 100円以上おもにDC回路応用 入力オフセット電圧数1mV以下

    温度特性(温度ドリフト)1μv/c以下高速 数MHz以上を扱う オープンループゲイン60-80dB

    ビデオ信号応用 周波数帯域(BW) 数十MHz 数百円スルーレート数百V/μsec

    タイプ 利点 欠点バイポーラ入力 汎用(低価格) 入力バイアス電流

    高精度化しやすい 入力抵抗低い(オープンループ)スルーレート低い(FET比較)

    FET入力 高入力インピーダンス DC特性がバイポーラに比べ悪い低入力バイアス電流 ノイズ特性がよくない高いスルーレート バイポーラタイプより高価

    チョッパ入力 極めて低い温度特性 チョッパノイズが発生安定度が極めて高い 周波数特性よくない(DC応用が主)オープンループゲインが大きい

    CMOS 極めて低い消費電力 DC特性があまり良くないノイズ特性がよくない

    アーキテクチャ 利点 欠点電圧帰還型 汎用で品種おおい クローズループゲインで周波数特性

    いかなる演算回路も可能 が大きく影響される電流帰還型 高周波特性が良い 汎用的に使用できない

    クローズゲインで周波数特性 (例えば積分回路など)があまり影響しない DC特性があなり良くない

    その他の選択要素

    ・1個、2個、4個入りか

    ・単電源かデュアル電源か

    ・電源電圧

    ・消費電力

    ・入手性(セカンドソースあるか)

    ・形状、パッケージ

    ・コスト

  • 電圧帰還(VFB)オペアンプ

    52

    電圧帰還オペアンプ電圧帰還オペアンプ・一般的なオペアンプアーキテクチャ

    ・二つの入力が高入力抵抗で

    電圧入力として使用

    ・出力から反転入力に負帰還が

    施こされ、反転入力の電圧が

    非反転入力と等しい電圧に制御される

    特徴:

    ・種々の演算回路(積分や微分回路他)

    に使用できる。

    ・クローズループゲイン(使用ゲイン)が

    高くなると周波数特性悪くなる

    周波数特性は(1+𝑅2

    𝑅1)で決まる。

    +

    -

    Vin

    Vout

    入力抵抗=∞

    入力抵抗=∞

    R1

    R2

    v≈ 𝟎𝒗𝑨(𝒔)v

    𝑽𝑶𝒖𝒕

    𝑽𝒊𝒏= 𝟏 +

    𝑹𝟐

    𝑹𝟏

    𝟏

    𝟏+𝟏

    𝑨 𝑺 𝜷

    A(S):オープンループゲイン

    Voltage feedback Op amp

  • 電圧帰還型汎用オペアンプ構成

    53

    NE4558

    ロームApplication Note

    差動増幅 エミッタ接地増幅

    Cc

    2I

    電圧帰還型汎用オペアンプは

    差動増幅+エミッタ接地増幅+出力段から

    構成されている。

    差動増幅+エミッタ接地の2段増幅回路

    で約106dBのオープンループゲンを確保。

    エミッタ接地増幅器の入出力間に接続

    されたコンデンサCcにより、一次特性に

    位相補償されている。

    スルーレートは差動回路の動作電流(2I)と

    位相補償容量Ccにより決定される。

    オープンループゲイン特性

    NE4558

    1M

  • 電圧帰還オペアンプのアーキテクチャによる選択

    54

    汎用オペアンプ:2段増幅構成

    高精度オペアンプ:3段増幅構成

    高速オペアンプ:1段増幅構成

    低歪みオペアンプ:3段増幅構成

    gm1

    A1 +1

    CCZL1

    gm1

    A1 A2 +1

    ZL1 ZL2

    A3

    C1

    C2

    R1 gm1

    A1 A2 +1

    ZL1 ZL2

    A3

    ZL3

    Ccミラー容量による一次特性に位相補償AOL=106dB

    1段構成増幅のため高速。数百MHオペアンプAOL=60dB程度

    3段構成増幅のため高オープンループゲイン複雑な位相補償。帯域は低いAOL=130~140dB

    gm1

    A1 A2 +1

    CC

    ZL1 ZL2

    gm2

    出力バッファ

    3段構成増幅だが各段局部負帰還で直線性改善複雑な位相補償。オーディオ帯域での歪み向上AOL=100dB

    複雑な位相補償セトリング特性は良くない

  • 電圧帰還バイポーラ汎用オペアンプ

    55

    ・μA741は1968年Fairchild社が開発した汎用オペアンプ

    ・RC4558は1970年中頃にレイセオン社がオーディオ用に開発

    ・NE5532/34は1980年前半にSignitics社が開発した、低歪みオーディオ用オペアンプ

    これらオペアンプは、いまだに現役

    ・汎用オペアンプは各社からセカンドソースあり。ただし特性は各社異なり互換性には要注意

    型番 開発もと 回路数入力タイ

    プオープンループ

    AOK(dB)入力オフセット

    電圧 (V)入力バイアス

    電流(A)入力雑音電圧V/Hz

    入力雑音電流A/Hz

    帯域(Hz)

    スルーレート(V/μs)

    備考

    μA741 Fairchild 1 BJT 106 1m 80n 1M 0.5 歴史ある汎用オペアンプ

    RC4558 Rayheon 2 BJT 110 0.5m 150n 8n 3M 1.7 汎用&オーディオ

    RC4560 Raytheon 2 BJT 100 0.5m 40n 15M 5.5 4558の出力段強化

    RC4580 Raytheon 2 BJT 110 0.5m 100n 5.5n 12M 5 4558性能向上

    NE5532 Signetix 2 BJT 100 0.5m 200n 5n 0.7p 10M 9 特にオーディオ用

    NE5534 Signetix 1 BJT 100 0.5m 500n 3.5n 0.4p 10M 13 特にオーディオ用

    LF356 NS 1 JFET 106 3m 30p 15n 0.01p 5M 12 FET入力パイオニア

    TL081/82/84 TI 1/2/4 JFET 106 3m 30p 18n 0.01p 3M 13 FET入力汎用

    TL071/72/74 TI 1/2/4 JFET 106 3m 65p 18n 0.01p 3M 13 FET入力汎用

    LF412 NS 2 JFET 106 1m 50p 25n 0.01p 4M 15 FET入力汎用

    LM2904 NS 2 BJT 100 2m 25n 0.6M 0.5 単一電源

    LM358 NS 2 BJT 100 2m 45n 1M 0.25 ローパワー

    汎用オペアンプ仕様概要 仕様値はtyp

    TI社データシートから

    BJT:バイポーラ入力オペアンプFET:FET入力オペアンプ

  • 汎用オペアンプの高調波歪み

    56

    シリーズ 型番 メーカ 歪み(%)

    5532/34 NE5534P TI 0.00040 NE5532AP TI 0.00040

    NJM5532DD NJRC 0.00077 NE5532N Signetics 0.00123

    4500系 NJM4556ADD NJRC 0.00077

    NJM4580DD NJRC 0.00094 UPC4570 NEC 0.00126

    NJM4565D NJRC 0.00153 UPC4560C NEC 0.00210 RC4558P TI 0.00299 NJM4560DD NJRC 0.00421 NJM4558DD NJRC 0.00435

    UPC4558C NEC 0.01450 2000系 NJM2068DD NJRC 0.00081

    NJM2043DD NJRC 0.00086 NJM2041D NJRC 0.00180

    741系 UPC741C NEC 0.00909

    MC1741CP Motorola 0.04030 UA741CN STM 0.04160

    データ http://blogs.yahoo.co.jp/denshiyorimichi/50206283.html

    汎用/オーディオオペアンプ2次+3次歪み特性例周波数4KHz、負荷2.5KΩ、電源±15V

    同一型番でも製造メーカ異なると、かなり歪み値が異なる。互換性に注意のこと

    型番THD

    1KHz(dB)THD

    10KHz(dB)

    NJM5532 -122 -117NJM4580 -120 -105

    NJM4560 -117 -101NJM2082 -112 -94

    NJM2114 -121 -115OPA627 -122 -113

    LM833 -119 -105

    LF356 -118 -90TL072 -108 -91

    汎用オペアンプTHD測定例

  • 高精度、低雑音オペアンプ

    57

    世代 型番オープンループ

    AOK(dB)入力オフセット

    電圧 (V)オフセット電圧ドリフトV/℃

    入力バイアス電流(A)

    入力オフセット電流(A)

    入力雑音電圧V/Hz

    入力雑音電流A/Hz

    帯域(Hz)

    スルーレート(V/μs)

    電源電流(A)

    1st OP07 114 30μ 0.3μ ±1.2n 0.5n 9.6n 0.12p 600k 0.2 1.7m2nd OP77 142 10μ 0.1μ +1.2n 0.3n 10n 600k 0.3 1.7m3rd OP177 142 10μ 0.1μ +1.2n 0.3n 10n 600k 0.3 1.2m4th OP1177 130 15μ 0.2μ +0.5n 0.2n 7.9n 0.2p 1.3M 0.7 0.4m5th AD8677 140 45μ 0.5μ 0.2n 0.2n 10n 0.07p 600k 0.2 1.1m

    6th AD4077 130 10μ 0.1μ -0.4n 0.1n 6.9n 0.2p 3.6M 1.2 0.4m

    高精度オペアンプOP07系の進化 電源±15V、仕様はtyp値、Analog Devices

    型番オープンループ

    AOK(dB)入力オフセット

    電圧 (V)オフセット電圧ドリフトV/℃

    入力バイアス電流(A)

    入力オフセット電流(A)

    入力雑音電圧V/Hz

    入力雑音電流A/Hz

    帯域(Hz)

    スルーレート(V/μs)

    備考

    OP27 125 10μ 0.2μ ±10n 7n 3n 0.4p 8M 2.8 初代低雑音

    LT1028 150 10μ 0.2μ ±25n 12n 0.85n 1p 10M 15 高AOL

    AD797 146 25μ 0.2μ 0.25μ 100n 0.9n 2p 110M 20 低ノイズ高速

    OP627 120 40μ 0.4μ 1p 0.5p 5.2n 1.6f 16M 55 FET入力

    低雑音オペアンプ 電源±15V、仕様はtyp値

    製造メーカ:OP27(ADI),LT1028(LTC),AD797(ADI).OP627(TI)

    ADI,LTC,TI各社データシートから

  • 汎用と高精度との境は?

    58

    分解能 1LSB相当

    ビット数N

    2N % FS ppm FS dB FS

    2 4 25 250,000 -124 16 6.25 62,500 -246 64 1.56 15,625 -368 256 0.39 3,906 -4810 1,024 0.098 977 -6012 4,096 0.024 244 -7214 16,384 0.0061 61 -8416 65,536 0.0015 15 -9618 262,144 0.0004 4 -10820 1,048,576 0.0001 1 -12022 4,194,304 0.000024 0.24 -13224 16,777,216 0.000006 0.06 -144

    分解能12bit程度までが汎用アナログ設計範囲、

    それ以上の精度だと高精度アナログ設計領域

    ppm=10−6 20𝐿𝑜𝑔1

    2𝑁

    汎用域

    高精度域

  • 高速オペアンプ(電圧帰還型)

    59

    型番オープンループ

    AOK(dB)入力オフセット

    電圧 (V)オフセット電圧ドリフトV/℃

    入力バイアス電流(A)

    入力雑音電圧V/Hz

    帯域(Hz)

    スルーレート(V/μs)

    最大電源電圧(V)

    備考

    AD8099 ADI 85 0.1m 2.3μ -6μ 0.95n 510M 1350 12.6 x5周波数帯域

    AD8021 ADI 86 0.4m 0.5μ 7.5μ 2.1n 490M 120 24ADA4895 ADI 108 53μ 0.15μ -11μ 1n 236M 943 11 x10周波数帯域

    ADA4898 ADI 103 20μ 1μ -0.1μ 0.9n 65M 55 36THS4211 TI 70 3m 40μ 7μ 7n 1G 970 15THS4304 TI 65 0.5m 5μ 7μ 2.4n 3G 830 6OPA836 TI 125 65μ 1μ 650n 4.6n 200M 200 5.5LM6171 TI 90 1.5m 6μ 1μ 12n 160M 3600 34 Quad Core

    高スルーレートの得られるQuad Core型電圧帰還オペアンプ(LM6171)

    +V

    -V

    Vout

    (+)Vin

    (-)VinRg

    ADI,TI各社データシートから

  • ローパワーCMOSオペアンプ

    60

    CMOSオペアンプの特長

    ・極めて小さい入力バイアス電流(pA~fAオーダ)特性と低消費電力

    ・低電源電圧および低入力バイアス電流を必要とするアプリケーションに最適

    ・一般的にRail to Rail入出力フルスイング動作を実現

    入力および出力のダイナミックレンジをGNDから電源電圧までとることが可能

    バイポーラオペアンプの特長

    ・高耐圧化が容易であり、広い動作電源電圧範囲が実現

    ・バイポーラデバイスはCMOSデバイスよりも素子のマッチング精度が優れDC精度が良好

    ・デバイス構造上入力バイアス電流(トランジスタのベース電流)が大きい

    ・素子単体の雑音特性はCMOSよりもバイポーラデバイスのほうが優れる

    ・音声信号を扱う用途や低雑音が望まれる分野に対してはバイポーラオペアンプが適する

  • 最近の汎用CMOSオペアンプ:OPAx172

    61

    CMOSオペアンプの欠点といわれた、精度、雑音、速度、高耐圧などの課題を克服したCMOSオペアンプが製品化。例えばOPAx172シリーズ(TI製)など

    1ドル/個(1000個単位)

    オープンループ特性 全高調波歪(THD)特性

    OPAx172 データシート(TI)

    ・電源: +4.5 V to +36 V,±2.25 V to ±18 V 、電源電流:1.6mA/amp

    ・オフセット電圧: ±0.2 mV 、オフセット電圧ドリフト: ±0.3 μV/℃

    ・入力バイアス電流 : ±8pA、等価入力雑音: 7 nV/√Hz

    ・オープンループゲイン:130dB、同相電圧除去(CMRR): 120 dB

    ・ゲインバンド幅(GB積): 10 MHz 、スルーレート:10V/μs

    ・全高調波歪THD:0.00005%(-126dB) (1KHz)

    ・Rail to Rail入出力、EMI and RFI フィルタ入力

  • 電流帰還(CFB)オペアンプ

    62

    電流帰還オペアンプ(別名:トランスインピーダンス・オペアンプ)・ビデオ用途などの高速用オペアンプ回路として使われる

    ・非反転入力は高入力抵抗で電圧入力、反転入力は低入力抵抗(インピーダンス)で

    電流入力。反転入力へは出力から電流で帰還され反転入力電流がゼロとなるように

    制御される。結果的に反転入力電位は非反転入力電位に等しくなる。

    ・基本的に、増幅回路(反転増幅および非反転増幅)として使用される。積分回路などの使用は向かない。

    広帯域、高スルーレート高速オペアンプ Current feedback Op amp

    電流帰還オペアンプ

    反転入力低インピーダンス

    非反転入力インピーダンス=∞ +

    -

    +1

    RO

    VinVout

    R1

    R2

    T(S)T(S):トランスインピーダンスゲイン

    i

    i𝑽𝒐𝒖𝒕𝑽𝒊𝒏

    ≈ 𝟏 +𝑹𝟐𝑹𝟏

    𝟏

    𝟏 +𝑹𝟐𝑻 𝒔

    𝑹𝑶 ≪ 𝑹𝟏 , 𝑹𝟏 ≪ 𝑹𝟐 とすると

    電流帰還オペアンプではR2をデータシート最適値に設定し、ゲイン設定はR1により決定すること。ゲインによる周波数特性劣化が防げる

  • 電流帰還型オペアンプの構成

    63

    電流帰還オペアンプは、非反転入力は高インピーダンス電圧入力に対し、反転入力は低インピーダ

    ンス電流入力。反転入力に負帰還かけると、反転入力へ流れる電流がゼロとなるように系が働く。

    反転入力端子電流I はA点でRT(トランスインピーダンス)にて電圧に変換される。RTは数百KΩ~数

    MΩ。RTが高いほど高精度(電圧帰還型でのオープンループゲインAOLが高いことに相当)

    非反転入力反転入力

    A

    トランスインピーダンス

    (高入力インピーダンス)

    (低入力インピーダンス)

    Op Amp Applications :Analog Devices

    電圧ノード

    電流ノード

    別名トランスインピーダンスオペアンプとも言われる。電流をトランスインピーダンスで電圧に変換する意味。

  • 電流帰還型オペアンプのパイオニアはComlinear

    64

    ・電流帰還オペアンプ(CFA)は、HP技術者のNelsonが1980年に設立したComlinearが先駆者

    ・モジュール型、ハイブリッドIC型の電流帰還オペアンプを次々に開発

    Comlinearは後にNSに買収された。

    ・厚膜ハイブリッドICで作られたCLC103の回路が、以降の各社電流帰還オペアンプの原型

    CLC103仕様概要:

    周波数特性:300MHz(4Vp-p)

    85MHZ(20Vp-p)

    スルーレート:6000V/μs

    立上り時間:2ns(5Vp-p 10-90%)

    セトリング時間:5ns(10Vstep 0.4%)

    2次、3次歪み:-46dB(2Vp-p,

  • オペアンプ企業の栄枯盛衰

    65

    発足企業名 途中名 現企業名 オリジナルオペアンプ 備考

    Texas Instruments(TI) TI TL060/080/070シリーズ M&Aで幅広いレパートリ

    National Semiconductor(NS) TI LMシリーズ(LM301など) モノリシックオペアンプの2大老舗

    Burr Brown TI OPAシリーズ 産業用中心

    Comlinear NS TI CLCシリーズ 電流帰還オペアンプのパイオニア

    Raytheon TI RC4558など オーディオ用オペアンプ老舗

    Analog Devices(ADI) ADI ADシリーズ 産業用中心

    PMI ADI OP07/77/177など 高精度オペアンプ老舗

    Computer Lab. ADI HOSシリーズ 高速オペアンプ

    Linear Technology(LTC) ADI LTCシリーズ 高精度オペアンプ

    Maxim ADI MAXシリーズ 高速オペアンプ

    FairChild NS ルネサス μA709/741など モノリシックオペアンプ2大老舗

    Harris ルネサス HA25シリーズ 誘電体プロセス使用高速オペアンプ

    Intersil Onsemi ICLシリーズ ローパワー

    Elantec Onsemi ELシリーズ 高速オペアンプ(Harris互換)

    RCA Onsemi CAシリーズ 高速オペアンプ

    Motrola Onsemi 汎用オペアンプ互換

    Apex Cirrus Apex 高圧オペアンプ、パワーオペアンンプ

    AMD (AM685/687コンパレータ) 汎用オペアンプ、高速コンパレータ

    Philbrick(GAP/R) モジュール型オペアンプの老舗

    Philips NXP 汎用オペアンプ

    Signetics Philips NXP NE5532/34など オーディオオペアンプ

    Thmson STM 汎用オペアンプ

    日立/NEC ルネサス 汎用オペアンプ

    新日本無線 (NJRC) NJRC MUSE高級オーディオ 汎用、オーディオオペアンプ互換

    ローム ローム 汎用オペアンプ

    ・過去、アメリカ中心に多数のオペアンプメーカがあった。

    ・各社それぞれ特徴のあるオペアンプを開発してきた

    ・近年M&Aで再編が進み淘汰。特にTIが多くのアナログ企業を買収しアナログ帝国を作り上げている

    予定

    アナログICはTIとADIの2社に集約

  • 伝説のアナログ・グル

    66

    1960年代、何人かの有名なアナログルがいた。彼らがアナログICの礎を築いた。

    1960年代にIC OPアンプの歴史を作った

    Widlarもその一人。

    世界初のICオペアンプ μA702、電圧レギュ

    レータ μA723 などを開発。

    汎用オペアンプとして広く使われている

    μA741 の元となった LM101 もWidlarの設計

    である。

    アナログ要素回路の発明もしており、ワイド

    ラー電流源やバンドギャップ・リファレンスは

    実際のアナログICで、よく使われている。

    Robert J WidlarBob DobkinJim WilliamsBarry Gilbertetc

    Operational Amplifiers Analog Devices