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漁船の排熱を利用した発電システムの研究 誌名 誌名 水産工学 ISSN ISSN 09167617 巻/号 巻/号 451 掲載ページ 掲載ページ p. 35-44 発行年月 発行年月 2008年7月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

漁船の排熱を利用した発電システムの研究漁船の排熱を利用した発電システムの研究 誌名 水産工学 ISSN 09167617 巻/号 451 掲載ページ p

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漁船の排熱を利用した発電システムの研究

誌名誌名 水産工学

ISSNISSN 09167617

巻/号巻/号 451

掲載ページ掲載ページ p. 35-44

発行年月発行年月 2008年7月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

水産工学 Fisheries Engineering Vol. 45 No. 1. pp.35-44, 2008

[研究論文]

35

漁船の排熱を利用した発電システムの研究

西田哲也*1・一瀬 純 弥l・中岡 勉I

植田貴宏2・中島大輔2

Study of Power System Utilizing Waste Heat Energy

of Marine Engines for Fishing Vessels

Tetsuya NISHIDA *1, Junya IcHINOSE1, Tsutomu NAKAOKA1,

Takahiro UEDA2 and Daisuke NAKASHIMA2

Abstract

An analysis of performance of the power system utilizing waste heat energy exhaust gas and cooling

water from marine engine for fishing vessels is conducted. The working fluid was using Trifluoroethanol

(TFEA). A procedure is developed to maximize a net power of power system using of shell and plate

type heat exchanger under the condition of designate power system. The maximum net power is given

by minimizing of heat transfer area of the heat exchangers which consume most cost in total cost of a

power system. The minimum value of objective function is about 3.lm2/kW when the inlet temperature

difference of exhaust gas and sea water is 376t. The output power of marine engine for fishing vessels

is obtained from an analysis of performance.

1 .はじめに

現在,漁業経営においては,経費に占める燃油経費の

割合が高く ,これをいかに抑えるかが効率的かつ安定的

な経営の実現に向け極めて重要な諜題となっている。こ

れまで,燃料油経費節減のために様々な省エネルギ一対

策が検討されている I)。漁船の省エネルギ一対策として

は,船体形状の改善2)-5),電気推進システムの導入,排

熱回収技術の導入や集魚灯に発光ダイオードを使用する

技術等が考えられ, 実用化されているものもある 1)。こ

れまで,燃油価格が最近まで低迷していた事から,積極

的な開発はあまり行われていなかった。

しかし,最近の原油価格の高騰や環境問題の社会的な

関心から,漁船推進機関においても省エネルギ一対策を

推進する事が緊急な課題となっている。従来から,船舶

いる。排熱回収技術として,音成ら6)は,ディーゼル船

の省エネルギーシステムの可能性について,船全体にお

ける複合システムの評価を行っている。田中7)は,デイ

ーゼル船における蒸気プラン トについて,その概念と問

題点について報告している。田口8)は,フロン系の作動

流体を用いた排熱回収システムについて,実験結果を報

告している。

近年,舶用デイ ーゼル機関の高効率化や高効率過給機

の採用により,冷却水温度の高温度化によ り,排熱エネ

ルギーは減少している。また,舶用デイーゼルエンジン

では,特に大型船用 2サイクルロングストローク機関な

どで,熱効率が50%を超すエンジンもある針。 しかし,

このような高効率エンジンでも残り半分のエネルギーは,

排気ガスや冷却海水に捨てられている。また,従来の排

熱回収システムで,作動流体に水を使用するシステムは,

の省エネルギ一対策として,排熱回収技術は採用されて エンジン自身の高効率化によ って排熱の温度レベルは低

2007年2月22日受付, 2008年2月12日受理

キーワード :舶用機関,排熱回収,発電システム,省エネルギー, TFEA

Key wひrds:Marine engine, Waste heat energy, Power system, Energy saving, TFEA

1 National Fisheries University, 2ネ 1Nagata-Honmachi, Shimonoseki 759-6595 ]apan (水産大学校 干759-6595

山口県下関市永田本町2ネ1)

2 National Fisheries University (Training ship) , 2-7-1 Nagata-Honmachi, Shimonoseki 759-6595, ]apan (水産大学

校 (練習船) 干759-6595山口県下関市永田本町2-7-1)

ホ Tel:083-286-5111 (308), Fax・083-286-7433,[email protected]

36 水産工学 Vol.45 No.l

下し,排熱エネルギーを利用する設備投資に見合うに十

分なエネルギーを回収することが難しくなっている 10)。

しかし,まだ舶用機関において,緋熱として捨てられ

るエネルギー量は,供給熱量に対して,約半分の多量の

利用可能なエネルギー量があり,種々の熱回収システム

が考えられている。

そこで,本研究は,環境に優しい冷媒であるTFEA

(トリフルオロエタノール (C2H3F30))ll)を作動流体と

して使用し熱交換器にプレート式熱交換器を用い,高

熱源として漁船の機関の排ガスと主機関を冷却する冷

却水を有効利用する発電システムの性能解析を行った。

また.発電システムを構築するために必要な機関の出力

についても検討を行った。

記号

A:伝熱面積

Bo:ポンド数

Bo' :修正ボンド数

Cp・定圧比熱

d ・直径

Dep・相当直径

ん:圧力係数

g:重力加速度

h:比エンタルピ

h:フルートピッチの高さ

H:顕潜熱比

k:熱伝導率

e:長さ

L: i替熱

LlL :プレート伝熱面の幅

m:質量流量

p:フルートピ ッチ

P:出力 [kW],圧力

Pr:プラントル数

LlP:圧力損失

Q:熱流量

Re レイノルズ数

s:比エントロピ

T:温度

LlTm:対数平均温度差

U:熱通過係数

v:流速

X:無次元数式仰)

[m2]

[一]

[一]

[kJ/(kg. K)]

[m]

[m]

[-]

[mlジ]

[kJ/kg]

[m]

[一]

[kW/(m.K)]

[m]

[kJ/kg]

[m]

[kg/h]

m [MPa]

[一]

[Pa]

[kW, MJ/h]

[一]

[kJI (kg. K)]

["C ]

[K]

[W/(m2・K)]

[m/s]

[一]

L1X :プレート伝熱面の長さ [m]

Y:式(1)で定義される値 [円IkWh]

LlY:プレート伝熱面の間隔 [m]

α.熱伝達係数

y:評価関数

[kW/ (m2 • K)]

[m2/kW]

δ・プレート伝熱面の厚さ

η-効率

λ目摩擦係数

μ:粘性係数

v 動粘性係数

p:密度

σ・表面張力

[m]

[-]

[一]

[mPa .s]

[m2/s]

[kg/m3]

[N/m]

添 字

abs:絶対 min:最小

crz :臨界 N:正味

C:凝縮器 0:出口

CS:海水 R:ランキン

CW:冷却水 5:飽和

E:蒸発器 T:タービン

g:カ「ス V 蒸気

G:発電機 W:壁面

1:入口 防'F:作動流体

2. 漁船の排熱エネルギーについて

Fig.l は,漁船の機関の排熱エネルギーの一例を示す12)。

Fig.lより,供給熱量に対して軸出力4l.6%,残り の

58.4%はエネルギー損失となっている。エネルギー損失

の内27.0%は排気損失, 17.3%は冷却水損失である。ここ

で,排気損失は,過給機で仕事を行った後,煙突から排

出される排熱エネルギーである。また,冷却水損失は,

清水により機関のシリンダライナーやシリンダヘッドを

冷却した後,冷却水用熱交換器により熱交換し,海水中

に捨てられる排熱エネルギーである。本研究は,この 2

つのエネルギー損失の有効利用を考える。

3.作動流体について

現在,低温度,低温度差の発電システムの作動流体に

Supply heat flow rate Recovery heat of

tu向田harger 15.8拍

Brake power

100%

Lo輔ofair

E抽ler 12.8 %

4l.6 %

Lo曲。fexhaust

ga8 27.0 %

water 17.3%

Fig.l Heat ba1ance of marine engine.

漁船の排熱を利用した発電システムの研究 37

Table 1 Properties of Trifluoroethanol (TFEA)

Trifluoroethanol (TFEA)

Saturation temperature Ts Ct;) 30 50 100

Saturation pressure PS (MPa) 0.016 0.048 0.276

Specific heat at constant CpL (kj/kg' K )1 1.648 1.814 2.013 pressure of liquid

Enthalpy of liquid hL (kj/kg) 47.24 92.05 177.2

Enthalpy of vapor hv (kj/kg) 464.1 490.1 526.1

Entropy of liquid SL (kj/kg'K) 0.161 0.306 0.549

Entropy of vapor Sv (kj/kg'K) 1.551 1.508 1.472

Density of liquid ρL (kg/m3) 1422 1374 1250

Density of vapor ρv (kg/m3) 0.389 1.844 9.238

Latent heat L (kj/kg) 421.7 396.9 344.8

Viscosity of liquid μL (mPa's) 1.780 1.∞o

Viscosity of vapor μv (mPa's) 0.011 0.012 0.013

Thermal conductivity of kL (W/m'K) 0.117 0.114 0.108 liquid

Thermal conductivity of kv (W/m'K) 0.016 0.017 0.020 vapor

Surface tensio日 。 (N/m) 0.022 0.019

Kinematic viscosity of νL (m2/s) 1.121 0.724 liquid X 10-6 X 10-6

Kinematic viscosity of νv (m2/s) 16.95 16.95 1.618 vapor X 10-6 X 10-6

Critical temperature 九n ('C) 227

Critical pressure Pcri (MPa) 4.930

ついては,自然冷媒(水.NH3. プロパン等)やフロン

系冷媒等が検討されている。

Table 111)は. TFEAの物性値の代表的な値 (30. 50.

100. 150t)と近似式を示す。計算に使用する物性値は,

熱力学的な飽和圧力,定圧比熱,比エンタルピ,比エン

トロピ,密度,蒸発潜熱と輸送性質の粘性係数,熱伝導

率,表面張力,動粘性係数を用いた。TFEAの物性値の

150 Approximated equation

PS = 5.505 X 10-7 X Tab,

3 -5.016 X 10-4 X Tab, 2 + 0.1532

1.088 x Tab, -15.67α92.87 ~五 Ta俗 語 405.48)

PS = 3.079 x 10-4 x九b,2-0.2355 x九b,+ 45.59 (405.49 ~ 九b,~ 494.98)

2.248

CpL =ー1.401x 10-5 x Tab, 2 + 1.485 x 102 x九..-1.566 (292.87 ~三 九b, ~ 405.48)

CpL = 3.188 x 10-6 x Ta.. 3 -4.096 x 10-3 x Tab,z + 1.759

x Tab, -250.0 (405.49 ~ Taω ~ 494.98)

284.9 hL = 3.023 x 10-3 x九b,2-0.2344 x Tab, -159.2

(292.87 ~ 九b, ~ 494.98)

554.8 hv=ー2.356x 10-3 x Tab,

2 + 2.462 x九b,-65.64 (292.87 ~九b,~ 494.98)

0.816 SL = 5.407 x 10-3 x Tab, -1.477

(292.87 ~ 九郎 ~ 494.98)

Sv =-4.820 x 10-8 x Tab,3 + 5.964 x 10-5 x九b,z-2.486

1.457 x 10-2 X Tab, + 4.948 (292.87 ~ 九b,~ 494.98)

1051 ρL=ー1.343x 10-2 x Tab/ + 6.701 x Tab, + 624.5

(292.87 ~ Tab, ~ 494.98)

Pv = 1.298 x 10-3 x Tab,2 -0.7665 x Tab, + 113.5

3(2vJ9R 2TI .8ah7s 2 豆Tabs壬355.04)

40∞ ρv=-6.422 x lO-.x Ta

.."-4.507 x Tab, + 796.5

×(3e5O5O.0M45422

×

九ぉ三433.65)ρv = 1.190 x 10-3 九b,

(433.65 ~ 九お く 494.98)

L=ー3.254x Tab,2 + 1132.3 x Tab, + 377370

273.4 (292.87 ~三 九b, 壬 405.48)

L=ー12.54x Tab,2 + 9079.4 x Tab, -1322ωo (405.49 ~ 九b, ~ 494.98)

μL = 3.430 x 10-7 x Tab,z -2.440 X 10-4 X Tab, + 4.404 x 10-2

(298.15 ~ Tab, ~ 343.15)

0.014 μv = 2.618 x 10-5 x Tab, + 3.545 x 10-3

(293.15 ~ Tab' ~ 393.15)

kL = 1.005 x 10-6 x Tab/ -8.139 X 10-4 x Tρ,+ 0.2717 (293.15 ~ Tab, ~ 393.15)

kv=-6.469 x 1O-5x Tab,-3.680 x 10-3

(293.15 ~ Tab, ~ 393.15)

d =-1.129 X 10-4 X Tab, + 5.632 x 10-2

(298.15 ~ 九b, ~ 343.15)

νL = 2.325 x 10一10x Tab,2 -1.652 X 10-7

X Tab, + 2.985 x 10-5

(298.15 ~ Taω ~ 343.15)

νv = 1.970 X 10+幻 xTab, -11.31 (293.15 ~ 九b, ~ 393.15)

九ωabsolutetemperature

近似式は,最小二乗法により作成した。また,物性値の

実験債Fと近似式の計算値F叫との誤差qY-Ycall jY X 100)

は.4.75 X 10-4-14.7%の範囲であるo

4. 漁船の排熱を利用した発電システムについて

Fig.2は,漁船の排熱を利用した発電システムを示す。

この発電システムは,ランキンサイクルである。高熱源

38 水産工学 Vol.45 NO.l

TE

PG

Generator

トPump

Pump Pump

Sea Water Fig.2 Power system utilizing waste heat energy of marine engine.

側に,加熱器とプレート式蒸発器がある。加熱器 (漁船

の機関を冷却する冷却水の熱量Qcw)で,作動流体を加

熱する。また,プレート式蒸発器で,漁船の機関の排気

ガスにより作動流体を蒸発させる。低熱源側は,海水を

利用する。

作動流体は,作動流体ポンプで加熱器に送られ,ここ

で,加熱器(機関を冷却する冷却水の熱量Qcw)で加熱

され,プレート式蒸発器へ送られる。ここで,さらに,

漁船の機関の排気ガスにより加熱されて蒸気となる。蒸

気は,タービンに入り発電機を回し発電する。タービン

を出た蒸気は,プレート式凝縮器で海水によって冷やさ

れ液体となる。発電された電力は,船内の電力として利

用される。

5. 発電システムの評価

1)評価関数

一般に,発電システムは,単位時間当たりにlkWを

発電するために要する費用の総計である,発電単価Yで

評価することが出来る。発電単価Yは,次式で表すこと

が出来る。

y=発電に要した費用の総計Y/

単位時間当りの正味出力PN(円IkWh)……(1)

すなわち,この発電システムは,このYの値が最小と

なる条件が最適である。しかし,発電に要した費用の総

計Eうは,算出しにくい。そこで,漁船の排熱を利用した

発電システムの評価は,据付コスト(熱交換器の総伝熱

面積)と正味出力に着目して,従来用いられている次式

の評価関数yを用いた13)。

評価関数 y:

y=熱交換器の総伝熱面積Arl正味出力PN

= (AE+Ac)IPN (m2/kW) …・υ(2)

ここで,AE' Acは,プレート式蒸発器,プレート式

凝縮器の伝熱面積,んは正味出力である。

この計算の場合,作動流体は,プレート式蒸発器の熱

量QEと加熱器の熱量 (機関を冷却する冷却水の交換熱

量)Qcwの両方で加熱される。

しかし,加熱器の伝熱面積は,以下の理由により省略

した。この加熱器は,舶用機関の冷却用として使用して

いる熱交換器を兼用した。また,伝熱面積は, プレート

式蒸発器の伝熱面積に比較して小さい。

計算は,与えられた条件において,評価関数yが最小

となる点をこの発電システムの最適値とした。最適な評

価関数yを求める方法として,最急勾配法を用いた13)。

6. 基本式

ここでは,式(2)の変数の計算方法について,簡単に説

明する。

1)正昧出力

式(2)の正味出力んは,次式より求める。

PN=Pc-(九s+PWF) -・・・・(3)

ここで,んは発電端出力,1そ's,PWFは,それぞれ,海

水,作動流体ポンプ動力である。次式より求める。

Pc=mwr-ηT恥 (hJ-h2)

Pcs=mcsMα/加

-・・(4)

-・・(5)

漁船の排熱を利用した発電システムの研究 39

PWF = fflwF L1PWF /ηw -・・(6)

ここで.fflwF. mcsは作動流体流量,海水流量であ

る。ηT. ηG.ηcs.ηwはタービン,発電機,海水ポンプ,

作動流体ポンプ効率である o Iq.んはタービン入口,出

口のエンタルピである。

.Mモsは,プレート式凝縮器の圧力損失.L1PWFは,作

動流体側の圧力損失である。L1Pcsは,次式で与えられる。

L1Pcs=&そ+(L1PCS)p

ここで.L1PC. (&モs)pは,次式より求める。

L1Pc= λ(V~l /2g) (L1Lcs /(Deq) cs)

(L1Pcs) P =0.5 [mJ

…ぃ(7)

-・・・・・(8)

.・・作)

式(6)の作動流体側の圧力損失L1PWFは,次式で与えら

れる。

L1PWF= (L1PWF) A' + (L1PWF) P + (L1PWF) E + (L1PWF)c

・・・・・(10)

=(今一九)/ pg+(L1PWF)p + (L1PWFlE+ (L1PWF)c

・・・(11)

ここで.(L1PWF)A' は作動流体の圧力差による損

失.(.1んF)P は配管損失.(L1PWFlE はプレート式蒸発器

内部の損失.(L1PWF)cはプレート式凝縮器内部の損失で

ある。また,ろ.}そは蒸発,凝縮圧力である。

印刷p. (L1PWFlEは,次式のように仮定して行った。

(L1PWF)p =9.8xl04/pg

(L1PWFlE =0.0 [mJ

-・・・・・(12)

.・・・・・(13)

プレート式凝縮器内部の損失 (L1PWF)cは,次式より求

める。

(L1PWF) c = (2À.v~ LIX)/((九)cg) -・・・(14)

ここで, λは.Maslovの経験式14) より算出した。

2)伝熱面積

式(2)の各プレート式蒸発器,プレート式凝縮器の伝熱

面積AE• Acは,次式より求める。

AE=m9cpg(九I 九o)/!UE(L1Tm)EI

Ac=mcscpcs(TcSI-Tcso) I!Uc(L1丸山|

......(15)

.. '(1紛

ここで.mgは排気カ'ス量.mcsは海水流量であるo Ctg,

Cpcsは排気ガス,海水の定圧比熱であるo Tgf, 九oはプレ

ート式蒸発器のガス側入口,出口温度である 。 TCSI • Tcso はプレート式凝縮器の海水側入口,出口温度である 。 UE•Ucはプレート式蒸発器,プレート式凝縮器の熱通過係

数.(L1TmlE. (.11レたはプレート式蒸発器,プレート式凝

縮器の対数平均温度差である。以下,熱交換器の伝熱面

積を計算するためには,熱通過係数UE• Ucが必要であ

る 。 このUE• Ucは,それぞれ,次式より算出する。

l/UE,c=l/α8,C+δ/kw+l/αg, cs ……(1力

ここで, δはプレート伝熱面の厚さ.kwは熱伝導率で

ある。また,これを算出するために, 蒸発側,ガス側,

凝縮側及び海水側の熱伝達係数 α8.αg.αc.αcsが必要

である。以下に示す,それぞれ,経験式(18).似).凶,同

より算出した。

(1) プレート式蒸発器の熱伝達係数

a) 沸騰熱伝達係数

プレート式蒸発器の沸騰熱伝達係数は,次に示す

西川・山県ら 15)のプール沸騰熱伝達の式を用いた。

Y=8.0(んX)2/3 -・・同

ここで,

Y=α8 Deq/kL -・・・(1幼

X=((M2 }も)ー lXCPLP~g/(kLσLpv))山:De~2q"'" ・側

ここで,

M=900 [m-1J 九=1.976[wJ

b) 強制対流熱伝達係数

加熱するガス側の熱伝達係数は, 平板の強制対流

熱伝達係数の式を用いた16)。

NUg= 0.037Re~Jl Pr//3

ここで,

Reg=VgDeq/Vg

Pら=μgCpg/kg

(2) プレート式凝縮器の熱伝達係数

a) 凝縮熱伝達係数

. "(21)

......(22)

… ・・同

凝縮熱伝達係数は,フルーテッド面上の経験式を

用いた17)0

NUe=1.77Bo*-OI (GreprdHt4

ここで,

Bぷ=Bo(P/ LIX) (p/め

Bo=g,ρLP2/σL

向 =gLIX3M (pc pけ/PL

PrL= CPLμL/kL

H=cPL ('丸一 Two)/L

-・・(24)

-・・.(25)

.・・・同

....・・制

・・・0国

.・・側

40 水産工学 Vol.45 NO.l

Fig.3 Calculated flowchart.

b) 強制対流熱伝達係数

冷却する海水側の熱伝達係数は,次式を用いた18)。

NUcs=0.047Re2f Pr/;2

ここで,

Reヒ5= VCS/ Deq / Vcs

Prcs=μcscpcs/kcs

3) ランキンサイクルの熱効患について

-・0骨

-・・・・'(31)

.…'(32)

ランキンサイクルの熱効率引は,次式で定義する。

ηR=(Q1-QZ)/Ql =l-Qd<J:t=l-(hz-h3)/ (h1-h4) ......附

ここで.<J:tはプレート式蒸発器の交換熱量と加熱

量,。はプレート式凝縮器の交換熱量である o ~. hz• h3.

hは,プレート式蒸発器出口(状態点 1 (Fig.2中の番

号)).プレー ト式凝縮器入口(状態点 2).プレート式

凝縮器出口(状態点 3)と加熱器入口(状態点 4)のエ

ンタルピである。

7. 計算条件と方法

式(2)の評価関数 yを支配する諸設計因子には,設計

条件因子(発電端出力pc. 各熱交換器の伝熱面材質kw.

排気ガス入口温度九/.海水入口温度Tcs/)• 状態変数

(蒸発温度TE• 凝縮温度Tc). 形状変数(各熱交換器(プレート式蒸発器,プレート式凝縮器)のプレート伝熱面

の長さLIX.幅L1L.伝熱面の厚さδ,伝熱面の間隔L1Y).

稼働変数(海水ポンプ効率ηcs.作動流体ポンプ効率ηWF.

タービン効率ηT. 発電機効率低,海水流速VCS/)と配管

変数(海水配管長ecs• 管径dcs• 作動流体側の配管長eWF •

管径dWF) が考えられる。

ここで,発電端出力Pc. 排気ガス入口温度九J. 海水

入口温度TcsJ • 伝熱面の熱伝導率kw. 作動流体と海水の

物性値,すなわち,熱伝導率k. 比熱Cp• 粘性係数μなど

は,すべて与えられるものとする。このような変数の中

で,工作上の制約や理論的計算によって決められるもの

は変数から外し入力データとすると,評価関数は,次式

となる。

Y= f(TE.Tc. VCS/) -・・'(34)

式凶の 3個の独立変数を変化させて.Yの値が最小に

なるように求めた。ここでは,従来と同様な方法で最適

計算を行った。Fig.3は,計算の流れ図を示す。計算

は.pc. kw. Tcs/. TgJ • V,α'/. Vg • dcsを与える。次に,各

効率と各熱交換器の長さ,幅,伝熱蘭の間隔と厚さを与

える 。 次に,初期値としてTE • Tc• VCS/を与える。次に,

プレート式凝縮器の伝熱面積Ac.プレート式蒸発器の

伝熱面積AEの総伝熱面積を計算する。次に,各部の圧

力損失L1Pを計算し,作動流体ポンプ動力PWF• 海水ポン

プ動力Pcsを計算する。そして,正味出力んを計算する。

次に,評価関数yを求める。

この最適な評価関数を求める方法を,以下に簡単に示す。

まず,ある点での評価関数 yを計算する。次に, 他の

変数は固定して変数(例えばむ)を若干変化させた

場合のY1を計算する。これによりむに対する偏微係

数(Yl-γ)/L1むを求める。そして.TEに対する新しい初

期値として,任意の定数δIを乗じたものを歩みとして,

次のステップへ進む。同様に,他の 2つの変数Tc.vCSJ

も行う 。この新しい変数の組み合わせで yを計算し,

最小値を求める。

漁船の排熱を利用した発電システムの研究 41

Table 2 Design conditions

Busber power Pc 200. 250 [kwl

Working自uid TFEA lnlet temperature of TCSI 10. 24. 32 [tl

surface sea water Flow velocity of exhaust gas Vg 10.0 [m/sl lnlet temperature of TgI 400.0 [tl exhaust gas Heat flow rate of Heater Qcw 683. 1000 [MJ/hl

Dimensions of Evaporator, Condenser

Length of plate .1x 2.0 [ml

Width of plate .1L 1.0 [ml

Thickness of plate δ 1.0 [mml

Clearance of plate (exhaust gas side)

LlYg 5.0 [mml

Clearance of plate (evaporating side)

LlYWF 5.0 [mml

ClearanLcCe O of plate ndensing side)

LlYc 5.0 [mml

Clearance of plate (surface sea water side)

LlYCS 5.0 [mml

Thermal condu{ctlttiavnitly u of plate Ctitanium) kW 17.17 [W/m'Kl

Surface sea water ep伍ucmlfp ency

1JCS 80.0 [%l

Working fluid pump e伍c1ency 甲肝'F 75.0 [%l

Turbine efficiency 1Jr 85.0 [%l

Generator e伍c1ency 1Jc 96.0 [%l

8.計算結果と考察

Table 2に計算条件を示す。計算は,発電端出力Pcは

200kW. 250kWの場合について行った。また,作動流

体はTFEAである。漁船の排熱の条件は,排気ガス入口

温度九Iは. 400'C.機関出力が小型の場合を参照して,

加熱器の熱量は.683. 100011J/hとした。また,漁船の

熱交換器の設計条件及び海水の温度変化を考えて,海水

入口温度TCSIは • 10.0. 24.0. 32.0'Cに変化させた。排気

ガス流速 Vgは.10.0m/sで一定と仮定した。また,加熱

器の熱量(機関を冷却する冷却水の熱量Qcw) は,

68311J/hとした。これは,現在使用されている漁船の機

関のデータを参照した19)。

また,プレート式蒸発器,プレ ート 式凝縮器の長

さL1Xは. 2.0m. また,幅.dLは. 1.0m. プレート式蒸発

器のガス側,作動流体側とプレート式凝縮器の作動流体

側,海水側のプレート間隔は,それぞれ. 5mmとした。

また,海水,作動流体ポンプ効率ηCS.ηWFは,それぞれ,

0.80. 0.75とした。また,ターピン,発電機効率ηr.ηc

は. 0.85. 0,96としfこ。

プレート式熱交換器(蒸発器,凝縮器)のプレート材

質は,それぞれ,チタニウム Ikw=17.l7W/ (mK) Iを用

いた。また,海水の物性値は,文献 [20Jを使用 した。

1)評価関数

Fig.4は,最小評価関数Yminと排気ガス入口温度と海水

入口温度差(九rTcs/)との関係を示す。発電端出力Pcが

200kW. 250kWの場合である。また,排気ガス入口温

5.0 TFEA

TQqCwI(℃{M)l/.h4)∞ 683

• 4.0

四+ Ocw (MJIh) : I棚

g

金ロE

?- 2.0

1.0 350 360 370 380 390 400

Tgf -Tcs1 (C) Fig.4 Objective function.

度九Iが400'C.加熱器の熱量Qcwが68311J/hである 。

Fig.4中の+印は,発電端出力んが250kW. 加熱器の熱

量Qcwが100011]/hの場合を示すo Fig.4より,最小評価

関数Yminは,排気ガス入口温度と海水入口温度差(九rTcs/)

が大きくなると減少する。

加熱器の熱量Qcwが大きい場合,最小評価関数Ymin~立

小さくなる。これは,プレート式蒸発器に入る作動流体

の温度が高くなり,プレート式蒸発器の交換熱量が小さ

くなるためと考えられる。

また,発電端出力んが200kW. 排気ガス入口温度と

海水入口温度差(九.rTcs/)が376'Cの場合,最小評価関

数Yminは,約3.1m2/kWとなる。これより,発電端出

力pcが200kWの発電システムを製作するには,総伝熱

面積が約620m2必要となる。この総伝熱面積は,システ

ムを製作するコストに大きく関係する。

Fig.4より,評価関数は,次式のようになる。

Pc=200kW:

, Ymin=7.03xlOJO(九/-TCS/r4.020 -…同

九=250kW

Y min = 3.90 X 1010 ('九'1-TCS/r3.914 -・・・同

以上より,最小評価関数y醐は,発電端出力Pcが

200kWと. 250kWを比較すると,約 5%差異があるこ

とがわかった。すなわち. lkWあたりの必要な伝熱面

積が約 5%の差違がある。

2) 正昧出力と各ポンプ動力

Fig.5は,正味出力丹、/. 作動流体ポンプ動力PWF• 海水

ポンプ動力PCSと排気ガス入口温度と海水入口温度

差(九rTcsUとの関係を示す。Fig.5よりわかるように,

排気ガス入口温度と海水入口温度差(九I 九51)が大きくな

ると,各ポンプ動力は減少する。その結果,正味出力ん

は増加する。また,この発電システムの場合,従来の低

温度差発電システム13)と比較すると,作動流体ポンプ

動力P附は大きくなる。これは,作動流体の飽和圧力が

X 102 12.0';;'甘甘す

1 1.0E-:!:下品~ Ta I ('C)・4∞

10.0ιQcw(州制 683

9.0 8.0 7.0

u 6.0

そ5.0

.< 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 350

Vol. 45 NO.1 学工産水

103 r

TFEA T。パ"C): 4∞ Qcw (Mllh) : 683

42

400

'"

Eι」360 370 380 390

Tg1 -Tcs1 CC) Heat transfer area.

A

@

O O

250kW ロ200 kW ロ

~ 102

,垣

= a司

白色

~ 101

Fig.6

ぎ}pwr

!rPcs

g 250kW 団

200kW 団

2回 kW 田

町田 kW 田100

Tg1・TCS1(K) Net power and pumping power (200kW, 250kW).

高くなるため,蒸発圧力と凝縮圧力の差が大きくなり,

作動流体償uの圧力損失が大きくなるためと考えられる。

この作動流体ポンプ動力品Fの影響は,このシステムと

従来の低温度差の発電システムとは巽ったものとなる 13)。

この計算範囲の場合,発電端出力Pcが200kW,排気

ガス入口温度と海水入口温度差(九,1-Tcs/)が376'C,加熱

器の熱量Qcwが683M]/hの場合,正味出力は約196kWと

なる。これは,発電端出力Pcの約98%が得られる。

このことより,漁船の機関出力が小型の場合でも,十

分な正味出力が得られるため,漁船の機関の排熱を利用

した発電システムは,十分経済性があると考えられる。

この発電システムを導入する場合,実際の船舶におい

ては,機関出力も変動し,また,電力消費量も変動する

と考えられる。そのために,電力制御については,この

発電システムを常時最大出力で運転し,不足する電力を

ディーゼル発電機で補う溢流制御を導入する必要がある。

また,作業負荷を軽減するため,舶用の機関の使用状況

に応じて,自動的にディーゼル発電機に切り替えるよう

なシステムも必要である。

3)伝 熱面積

Fig訓立,プレート式蒸発器,凝縮器の伝熱面積Ac,

AEと排気ガス入口温度と海水入口温度差(九I-Tcs/)との

関係を示す。Fig.6よりわかるように,排気ガス入口温

度と海水入口温度差(九,rTcs/)が大きくなると,必要な伝

熱面積が減少する。これは,蒸発温度が高くなり,熱伝

達係数が大きくなって,熱通過係数が大きくなる。その

400

Tg,-TCS1 (K) Evaporating temperature and condensing temperature.

390 380

@

370 360

150

O 350

100

50

(ハヒda凶ト

400 390 380 370 360 350

Fig.5

Fig.7

ために,排気ガス,作動流体,海水の必要な流量が少な

くなるためである。

プレート式蒸発器の伝熱面積AEは,プレート式凝縮

器の伝熱面積Acに比べて,必要な伝熱面積が大きくな

る。この理由は,熱通過係数,対数平均温度差が小さく

なるためである。また,熱通過係数が小さくなる理由は,

熱源に排ガスを使用しているため,排ガス側の熱伝達係

数が小さくなるためである。また,発電端出力んが

200kW,排気ガス入口温度と海水入口温度差(九1-Tcs/)

が376'C,加熱器の熱量Qcwが683M]/hの場合,総伝熱

面積は, 612m2 (AE: 564m2, Ac: 48m2) となる。具体

的には,プレート式蒸発器の大きさは,長さ 2m,幅 1m,

奥行き1.47mになる。プレート式凝縮器の大きさは,長

さ2m,幅 1m,奥行きO.l3mになる。

4)蒸発温度.凝縮温度

Fig.7は, 蒸発混度TE,凝縮温度Tcと排気ガス入口温

度と海水入口温度差(九1-Tcs/)との関係を示す。

蒸発温度TEは,プレート式蒸発器のガス側,作動流体

側の熱量を算出して,ヒートバランスより求める。また,

同様に,凝縮温度Tcは,プレート式凝縮器の凝縮側,海

漁船の排熱を利用した発電システムの研究 43

0 350 360 370 380 390 400

Tg1 -TCS1 (C)

Fig.8 Flow rate of exhaust gas versus inlet temperature difference of exhaust gas and surface sea water.

(

訳、--'

30.0

出 25.0r

o @

A a

20.D~ 350 360 370 380 390 400

Tg1一Tα1 ('C) Fig.9 Efficiency of Rankine cycle.

水倶ijの熱量を算出して,ヒートバランスより求める。蒸

発,凝縮圧力は,この蒸発,凝縮温度より求める。

Fig.7より,海水入口温度Tcs/が低いほど,蒸発温度TE•

凝縮温度Tcともに低くなる。発電端出力fもが200kW.排

気ガス人口温度と海水入口温度差(九./-Tcs/)が376't.加

熱器の熱量Qcwが683M]/hの場合, 蒸発温度TEは166't.

凝縮温度Tcは30.6'tとなる。この蒸発温度TEが1660

Cに対

する飽和圧力は,約1.55MPaになる。このため,プレー

ト式蒸発器内の圧力は,プレート式熱交換器が耐え得る

圧力に設計する必要がある。そのために,プレート式蒸

発器は,溶接式の熱交換器やプレージングタイプのプレ

ート式熱交換器を使用する必要がある。

5)排気ガス量と排気ガス入口温度と海水入口温度差

の関係

Fig.8は,排気ガス量mgと排気ガス入口温度と海水入

口温度差(九/-Tcs/)との関係を示す。Fig.8中の+印は,

発電端出力fもが250kW.加熱器の熱量Qcwが1000M]/h

の場合を示す。Fig.8より,排気ガス入口温度と海水入

口温度差(九/-Tcs/)が大きくなると,排気ガス量mgは減少

する。また,同じ温度差の場合,加熱器の熱量Qcwが大

x 1()4 3.0

520 Z

EClI.O

。fJ

.1わ珂

x J()3 『〒司5.0

4.0 ~ ~

3.0 a 2.0 d

σ 1.0

。『 1" ,.1,... 1....10

o 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 PE (kW) x 103

Fig.lO Flow rate of exhaust gas mg. heat flow rate of the heater Qcw versus output power of marine engine.

きくなると,排気ガス量mgは減少する。これは,プレ

ート式蒸発器の伝熱面積が小さくなるためと考えられる。

また,発電端出力Pcが200kW.排気ガス入口温度と海

水入口温度差(九./-Tcs/)が376't.加熱器の熱量Qcwが

ω3M]/hの場合, 必要な排気ガス量は,約1.2x 104Nm3/h

となる。

6) 熱源の条件とランキンサイクル熱効率について

この発電システムの性能は,前節で述べた評価関数の

他に,ラ ンキンサイクル熱効率についても検討する必要

がある。ここでは,熱源の条件とランキンサイクル熱効

率について検討した。

Fig.9は,ランキンサイ クル熱効率ηRと排気ガス入口

温度と海水入口温度差(九/-Tcs/)との関係を示す。Fig.9

より,排気ガス入口温度と海水入口温度差(九rTcs/)が大

きくなると,ランキンサイクル熱効率引は大きくなる。

これは,プレート式凝縮器で海水に捨てられる熱量が減

少するためと考えられる。また,発電端出力んが200kW.

排気ガス入口温度と海水入口温度差(九,/-Tcs/)が376't.

加熱器の熱量Qcwが683M]/hの場合,ランキンサイクル

熱効率ηRは.24.4%となる。

9. 実際の漁船の機関出力と排気ガス量,冷却水

の熱量との関係

Fig.l0は,中・大型漁船に搭載されている実際の漁船

の機関(中速ディーゼル機関)の場合の漁船の機関出

力PEと排気ガス量mg.機関を冷却する冷却水の交換熱

量Qcwの関係を示す19)。図中破線は,排気ガス量mg.一

点鎖線は,機関を冷却する冷却水の熱量Qcwを示す。ま

た,排気カ・ス量mgは,排気ガス入口温度九Iが375-420't

の場合である。

Fig.l0より,漁船の機関出力んが大きくなると,排気

ガス量mg.機関を冷却する冷却水の熱量Qcwともに大き

くなる。Fig.lOより,排気カ・ス量mg.機関を冷却する冷

却水の交換熱量Qcwは,次式のように近似できる。

44 水産工学 Vol.45 NO.1

EAnu

-

-

A

a

τ

8

+

7

w

+

g

r

m

u~

M

4

1

h

A

U

川和

'一十

zneJW

H

&

7

5

nunu

'EA

SEA

×

×

A性

a

a

4

4生

=一一

E

E

P

P

-・・・・'(37)

・・0司

10.発電システムを構築するために必要な漁船の

機関出力の算出

ここでは,第8.5節 9節の結果を参照して,実際の

漁船の機関の排気ガス量mgの関係から,発電システム

を構築するための漁船の機関出力ろを算出した。

Fig.8より,発電端出力Pcが200kWの場合,排気ガス

入口温度と海水入口温度差(九./-Tcs/)が368-3900

Cの範囲

で,排気ガス量mgは, 1.02 x 104- 1.27 x 104Nm3/hであ

る。この結果より, Fig.lOから,漁船の機関出力PEを算

出すると,約1702-2097kWが必要になる。

以上,結果から,この発電システムを中 ・大型漁船及

び内航船舶等に搭載し,発電した電力を船内消費に供給

することにより,発電用デイーゼル機関の運転時間及び

燃料消費量を削減することが可能になり,省エネルギー

化及び環境負荷の軽減が見込まれると考えられる o

11.結論

本研究は,環境に優しい冷媒であるTFEAを作動流体

として使用し,プレート式熱交換器を用い,高熱源に,

漁船の機関の排熱の利用可能なエネルギーと低熱源に海

水を用いる発電システムを構築し,性能解析を行った。

また,発電システムを構築するために必要な機関の出力

について検討した。以下の結果を得た。

1) 発電端出力んが200kW,排気ガス入口温度と海水

入口温度差(九-/-Tcs/)が376tの場合,最小評価関数Ymin

は,約3.1m2/kWとなる。これより,発電端出力Pcが

200kWの発電システムを製作するには,総伝熱面積

が約620m2必要となる。

2) 発電端出力Pcが, 200kW,排気ガス入口温度と海

水入口温度差(九rTcs/)が376t,加熱器の熱量Qcwが

683MJ/hの場合,正味出力は,約196kWとなる。こ

れより,発電端出力Pcの約98%が得られる。

3) 発電端出力Pcが200kW,排気ガス入口温度と海水入

口温度差(九./-Tcs/)が376t,加熱器の熱量Qcwが

683MJ/hの場合,ランキンサイクル熱効率hは24.4%

となる。

4) 中 ・大型漁船に搭載されている実際の漁船の機関の

場合,漁船の機関出力PEと排気カ駒ス量mg,機関を冷

却する冷却水の熱量Qcwの関係は,式(3司,岡となる。

5) 発電端出力Pcが200kW,排気ガス入口温度と海水

入口温度差(九./-Tcs/)が368-390tの範囲で,排気ガス

量刑gより,発電システムを構築するために必要な機

関の出力乃を算出すると,約1702-2097kWとなる。

謝 辞

おわりに, TFEAの物性値の技術資料は,東ソー ・エ

フテック株式会社,また,機関出力と排気ガス等の技術

資料は,ヤンマー株式会社に提供して頂きました。ここ

に,深く感謝の意を表します。

参考文献

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go.jp/funesyouene.pdf.

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11) 東ソー・エフテック株式会社, TFEA物性値,私

信.

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