4
1 1 3 3 3 H 84 D M 3 N . RBC BC CRP H P N. N. 1 1 5 4

褥瘡対策チームの活動例 - kao(花王)また褥瘡重症度をPSST値で表すと、2001年9月は、27.3点 であったのが、2002年9月は、19.3点となっている(図6)。時点データで見る限り、院内発症の症例が減少しており、持ち

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Page 1: 褥瘡対策チームの活動例 - kao(花王)また褥瘡重症度をPSST値で表すと、2001年9月は、27.3点 であったのが、2002年9月は、19.3点となっている(図6)。時点データで見る限り、院内発症の症例が減少しており、持ち

1 はじめに

東芝病院 主任看護師(褥瘡委員会委員長)横山 孝子 専任看護師(スタッフナース)曽我 多美子

外科医師(担当医師)川合 重夫 

1 はじめに

2 褥瘡患者のケア

 当院は、ベッド数 310 床の一般病院である。2001年8月から

褥瘡対策チームを立ち上げ、活動を開始した。専門知識を持

つスタッフもおらず、手さぐりの状態での開始であった。しかし、

チーム担当医師(外科医)、以前から褥瘡に興味を持っていた

ナースを中心にどうにか活発に活動できるようになった。2002

年10月から褥瘡対策未実施減算の取り組みが始まり、病院全

体の意識も高まってきたと思われる。今回は、私たちが行って

きた褥瘡患者のケア、データの管理方法、エアマットの管理方

法について述べたい。

  褥瘡が発 生した患者さんについては、全症例に対し褥瘡

シートを記載する。このシートは、当院独自に作成した物である

(図1)。このシートを、褥瘡対策チームの窓口に提出する。診察

方法は、褥瘡チーム医師、もしくは他科(皮膚科、整形外科等)、

もしくは担当医が診察する場合の3種類に分かれる。いずれ

にしても褥瘡患者の登録は、必ず行うことになっている。その

ためには各病棟に少なくても1人は褥 瘡のリンクナースを選出

してもらう必要がある。こうすることでリンクナースが 中心とな

り各病棟 の褥瘡ケアの相 談ができるようにした。またリンク

ナースの活動期限を1年とし、多くのナースに褥瘡ケアに関わ

ってもらうことを目的の一つとした。回診は、メンバー全員で

毎週1 回 行っている。回診日に合わせてシートを記載し、イン

スタントカメラで写真を撮る事で1週間の変化を確認している。

ケースカンファレンスは、当初半年は毎週、その後は隔週で行い、

褥瘡患者全員のケアの見直しを行っている。

 次に褥瘡症例の1例を示す。

〈症例紹介〉

入院までの経過

寝たきりの夫と2人暮らし。娘が介護していたが、夫 の様態が 不良のため、娘がかかりきりとなり、患者にまで十分な介護が出来なくなった。そのためほとんど毎日ベッドで過ごすようになり、褥瘡が発生した。近医の皮膚科医より往診を受け、イソジン 消毒、ユーパスタにて処置が行われていた。発熱、脱水のため平成13年 6月21日に入院となった。

H氏 84歳 女性

R R

患 者 基 本 情 報

褥 瘡 管 理

記載年月日

褥瘡発生日

身   長

褥瘡発生の既往

D   M

呼吸機能低下

ラジエーション

拘   縮

ステロイドの長期使用

3ヶ月以内の化学療法

麻   痺

記入者名

有 ・ 無

有 ・ 無

有 ・ 無

有 ・ 無

有 ・ 無

有 ・ 無

有 ・ 無

入院年月日

体   重

ふりがな 病名患者氏名

性     別 男 ・ 女

生 年 月 日

年     齢

カルテ番号

ケース No.

褥瘡管理記録シート 褥瘡管理記録シート

●褥瘡の 局所ケア

●栄養の取り方

●全身の スキンケア

●予防用具

●体位変換 方法と回数

知   覚 湿   潤 活 動 性 可 動 性

血   圧 体   温 体   重

検 査 日

そ の 他

総 蛋 白 アルブミン R B C

W B C C R P そ の 他

Hb

栄  養 摩擦ズレ 合  計

サ イ ズ 深   さ 創   縁 ポケット 壊死のタイプ 壊死の量 浸出液のタイプ

浸出液の量

洗 浄 液

被 覆 材

創周囲色調 周囲浮腫 周囲硬結 肉  芽 表 皮 化 PSST合計

a 後頭部

b 耳(右・左)c 肩甲骨(右・左)d 肘(右・左)

e 脊椎骨 f 仙骨

g 尾骨

h 腸骨(右・左)

i 大転子(右・左) j 座骨結節(右・左) k 大腿(右・左)

l 膝(右・左)m 下肢(右・左)

n 踝(右・左)

o 腫部(右・左)

p 足指(右・左)

q その他

ケースNo.

ふりがな

患者氏名

記載年月日   平成  年  月  日   No.

記入者名

カルテ番号

図1 褥瘡記録用紙

褥瘡対策チームの活動例じょく  そう

1 ブレーデンスケール

2 全身状態

3 検査データー

5 P S S T

4 褥瘡部位

6 アセスメント

8 コ メ ント

7 ケ ア 方 法

Page 2: 褥瘡対策チームの活動例 - kao(花王)また褥瘡重症度をPSST値で表すと、2001年9月は、27.3点 であったのが、2002年9月は、19.3点となっている(図6)。時点データで見る限り、院内発症の症例が減少しており、持ち

褥瘡チームの活動例

の感 染 兆 候はなく、柔らかな白 色 壊 死 組 織に覆わ れてい

たため、ブロメライン を使用して壊死組織の除去をはかった。

また低栄養状態のためポケット内側からの肉芽の盛り上がりは

期待できなかった。そこで電気メスにてポケット先端まで一方

向に切開を加えた。ポケット内の壊死組織は認められなかっ

た。次に肉芽の盛り上がりを図るためにフィブラストスプレー と

オルセノン軟膏 を使用し経過を見た。創周囲からの表皮化、

創縮小が見られたが創全体が薄い黄色の皮膜で覆われ感染

を疑い、ゲーベンクリーム を2週間使用して不良肉芽を除去した。

また上下肢関節の拘縮が見られたため四肢どおしが重ならな

いように小枕で調節をした。また日常のケアについては、臀部

全 体を弱酸性石鹸で洗浄し、入浴も出来る限り行った。その

後2 週間で創 収 縮が見られたが尾骨部に1cm大のポケットが

出現した。座位によるずれが原因と考えられた。痴呆があった

ため真夜中から車椅子乗車を希望し、そのまま5 時間以上乗

車していることも珍しくはなかった。そこで車椅子乗車時には、

減 圧クッションを用い、30分毎のリフトアップを行った。その後

ポケットサイズも縮小し退 院時は3.5×4cm、P S S T 27点となっ

た。栄養に対しては、食事を全く口にしない状 況が続き低栄

養状態での褥瘡治癒遅延が懸念された。当初は、点滴と栄養

補助食品を使用しながら食事に興味を持たせるよう働きかけ、

徐々に食事量が増えていった。拘宿に対してはリハビリテーショ

ンを依頼し専門的に行ってもらった。その結果ブレーデンスケー

ルは、10点から16 点に上昇した。退院時に家族にケア方法を

指 導し褥瘡治癒前の 8月18日に自宅へ退院した。後日再入院

してきたときは更なる創の縮小が見られた。

 褥瘡対策チームのメンバーは、ナース12名、医師2名、薬剤師

1名とした。この他に、褥瘡委員会自体を運営していくメンバー

を別に決め資材の購入、今後の方針についてなどを話し合う

機関とした。この中にはMSW、管理栄養士、臨床工学士、医事

課職員が加わる。

 褥瘡対策チームを発足してから、登録された褥瘡症例数は、

18 3 例にのぼるが、2002 年11月末日の時点では、 褥瘡患者

の登録がされているのは、7例となった。この7例の内6例は、

度の褥瘡である。回診を必要とする症例は激減してきた。

 また、症例の登録とは別に褥瘡対策チームの活動開始当初の

2001年9月より半年毎に、時点データを調査することにより院内

の褥瘡患者の状況を把握し評価してきた。1日の大半をベッド

で過ごす患者(自立度B1からC2)は、常に70名程度で変化が

なかった。全患者中の有症率は、2001年9月は、6.3%だったの

が、2002年9月は、4.5%となっている。褥瘡推定発症率(院内

発症の患者のみ)は、2001年9月は、5.1%であったが、2002年

9月は、2.5%と低下した(図5)。

●危険因子の判定

 ブレーデンスケールは、10点であった。湿潤、活動性、栄養、

摩擦ズレにおいて点数が悪く各1点であった。アルブミン値は

3.4g/dlであった。左 側

臥 位を好んでとり、促さ

ないと体交をしない状態

であった。

●経過

褥瘡6カ所各々について

褥瘡シートを記入し、褥瘡

対策チームにて治療を開

始し、週1回の回診を行っ

た。除圧用具として、トライ

セル を使用した。仙骨部の

褥瘡(図3,4)は、3×2.5cm

で尾骨方向に4×3cm大

のポケットを有した。PSST

は、4 3点だった。創周囲

3 褥瘡対策チームの活動とその評価

図3

図4

〈入院時の褥瘡状態〉

部 位

仙骨部

左膝外側

左膝内側

左腸骨部

右大転子部

右腸骨部

深 度

R

R

R

R

図2 褥瘡部位とPSST変化

6/20

PS

ST

7/26/25 7/9 7/16

日 付7/23 7/30 8/6

仙骨部左膝外側左膝内側左腸骨

R

Page 3: 褥瘡対策チームの活動例 - kao(花王)また褥瘡重症度をPSST値で表すと、2001年9月は、27.3点 であったのが、2002年9月は、19.3点となっている(図6)。時点データで見る限り、院内発症の症例が減少しており、持ち

また褥瘡重症度をP S S T値で表すと、2 001年 9月は、27.3点

であったのが、2002年9月は、19.3点となっている(図6)。

時点データで見る限り、院内発症の症例が減少しており、持ち

込みの褥瘡症例が増加している。院内で褥瘡を発生させない

よう予防に力を注いでいることが、数字となって表れておりう

れしい限りである。

  毎 週 褥 瘡 発 生部 位 分のシートと写 真 が 提 出される。褥

瘡データは、チーム発足当時から相当な量になることが予測さ

れた。シートに記載されたデータを管理するため、 Microsof t

Acce s s 9 7を用いて褥 瘡症例登録情報管理用のデータベース

を自作し、院内LANを介してそれらの情報を共有できるように

した。このデータの入力は、褥瘡チームの医師が行っている。

 当院で使用している基本情報記録用紙(シート )、経過観

察と評価の記録用紙(シート )、および写真についてそれぞれ

テーブルを作成し、リレーションを設定しただけの簡単なもので

あるが、症例検討会等では重宝している。活動当初は、慣れる

までシートの記載自体にかなりの時間を要し、担当ナースは遅

くまで残って記載していた。苦労して記載したデータは、毎週

行う症例検討会で使用した。PSSTの点数のつけ方もままなら

ず、合意が得られるまで時間がかかった。毎週行っていた症例

検討会も、回を重ねるほどに活発になり、PSSTの点数化もスム

ースになっていった。またケア方法についても、当初は、一人のナ

ースのアドバイスに委ねていたが、徐々に活発な意見が聞かれる

ようになり、任期終了時にはかなりの成長が感じられた。こうして

出来あがったシートを有効に利用するため、2 0 0 2 年 1 月より、

このデータベースをコンピュータネットワーク上のサーバーに移し、

各病棟のコンピュータで常時閲覧可能な状態にした(図7)。

これにより全ての病棟で毎日の処置前に経過を確認したり、

カンファレンスの際にシートの内容や写真 のデータをコピー・ペ

ーストして利用する事も可能となった。問題は今のところシステ

ムが十分に利用されているとは言えないことであり、この点では

今後スタッフの意識改革が必要であろう。

 当院のエアマットは35台程度あり、基本的には中央管理で、

使用終了後保管場所へ返却することになっている。しかし実

際には一度病棟に持ち出されると、その病 棟で使いまわされ

平成13年9月 平成14年3月 平成14年9月

指定発症率有症率

図5 全院の変化

図6 PSST

4 データ管理

図7 東芝病院褥瘡管理データベース

6.3

4.2

2.5

4.5

5.1

3.5

5 エアマット管理

H13.9 H14.3 H14.9

27.3

18.5 19.3

R

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褥瘡チームの活動例

保管場所に戻ってこないことが多かった。その結果、機器類

の管理を担当する臨床工学士もエアマットの所在を全く把握

できない状態であり、急に必要な事態が生じた場合も探し出し

て供給することが困難な状況にあった。そこでLAN上にエア

マット管理用のデータベースを作成し、2002年3月よりエアマット

の使用状況と、エアマットが必要な症例について、各病棟で

看護師に入力してもらうようにした。使用状況のリストは使用

開始時に開始日の項目を入力してもらい終了時に終了日の入力

をしてもらうことにした。終了日の入力がされていないエアマ

ットを選べば現在使用中の一覧を表示できる(図8)。

またエアマットの空きがない場合、予約入力画面で予約入力

を行う事ができる(図9)。

これらの情報は、即座にメインメニューに表示され全病院で

共有することができる。この画面をチェックし、必要に応じ優先

症例(ブレーデンスケールの点数による)にエアマットを渡すよ

うに采配している。

 これらのコンピュータソフトは、褥瘡対策チームの担当医師

が作成した力作である。コンピュータに不慣れな人でも簡単に

操作ができ、エアマットの入力に関しては日常的に使用される

ようになった。

 褥瘡の院内発生をできるだけ減らすことが第一の目的で

ある。そのため現在手付かずの状態である栄養サポートの活動

について早急に対処する必要がある。

 また現在褥瘡治療の窓口が褥瘡対策チームの他にも、皮

膚科、整形外科等にもあり一本化していない。そのため治療

の標準化がされていない。院内全体の合意のもとに一本化

していきたい。

図8

図9

6 今後の課題