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20174月にMCHCグループはイノベーション創造力の強化に 向けて、大きく 2点の変更を実施しました。第一には、三菱化学、三 菱樹脂、三菱レイヨンの統合により、 3 社のR&Dのリソースと開発 力が結集したことです。この統合による知見の共有や効率化により、 隣接するマーケットの開発、コスト削減、将来のビジネス戦略策定 の強化が図れると考えています。 MCHC グループ内の第二の変化は、世界各国で起きている企 業イノベーションの急速な進化を反映しています。この新しい環境 下では、私たちは新たな技術開発だけでなく、破壊的イノベーショ ンも考慮することが求められています。破壊的イノベーションは、業 界の勝ち組と負け組を再定義する可能性があります。しかもこのイ ノベーションは、従来の考え方の枠を超えて現れるため、長年にわ たり安定した利益を出してきた企業にとって執拗な脅威となります。 破壊的イノベーションは得てして初期段階では否定されます。なぜ なら、かつては成功を導いた既存の考え方ややり方と相反するから です。しかし、この偏見こそが、成長のための発見や、破壊的脅威と の対峙を阻害しているのです。 MCHCグループがCIO Chief Innovation Officer)という新ポジ ションをつくった理由はここにあります。私は光栄にも20174月に 当社に入社し、この任に就くこととなりました。先端技術・事業開発 室は、営業面・技術面ともにグローバルで活躍するリーダー企業と の連携を深めつつ、 MCHCグループのイノベーション創造力を大幅 に発展させることをめざしています。従来との大きな違いは、私を含 め上級職が、 MCHCグループや伝統的な化学業界以外、さらには 日本国外からも任命された点です。当社は、これらの変化を通じて 世界的な視野を広げ、グローバルな革新的企業となるべく取り組 みを続けていきます。 具体的には、インフォメーション・テクノロジーから生まれる破壊 的イノベーションの割合が増えていることに鑑み、当社のデジタル・ トランスフォーメーションをリードする CDO Chief Digital Officer を新設しました。現在、データサイエンティストを増員し ていますが、これは現在の事業活動を強化するためだけでなく、当 グループの事業活動や取引からの膨大なデータの宝庫を活用する 新たな方法を考え出すためでもあります。ベンチャー分野については、 当社は戦略的投資やパートナーシップのためのリソースを確保し、 先端技術・事業開発室は破壊的イノベーションが起こり得る分野 でリスクを恐れないスタートアップ企業のように活動します。 この変化の激しい時代に、大企業は「同じことを続けている」だ けでは、持続的成長の確保どころか、生存すら保証されません。 私たちは世界のイノベーションの中心地と積極的につながり、新規 事業の開発アプローチを充実させ、 MCHCグループ内でグローバ ルイノベーションの新たな文化を築く役割を担いたいと思っています。 新たな視点を取り込み、 リスクを恐れず、 グローバルな連携を深めて、 イノベーションの力を強化します。 執行役常務 Chief Innovation Officer ラリー・マイクスナー CIO Chief Innovation Officer 先端技術・事業開発室 MCHC グループのイノベーション創造力の強化 CMO Chief Marketing Officer CTO Chief Technology Officer CDO Chief Digital Officer 多様な視点 (伝統的な化学業界、 日本国内の視点を超えて) イノベーションに対する 積極的でリスクを恐れない アプローチ グローバルで展開する 戦略的投資とパートナーシップ 「デジタル・ネイティブ」企業への 転換 グローバルベースの 市場の特定・創出 破壊的イノベーション への対応 (テクノロジーおよび ビジネスモデル) AIIoT による 4次産業革命を推進 27 27 CIO メッセージ KAITEKI REPORT 2017 Mitsubishi Chemical Holdings Corporation Value Creation Strategy

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 2017年4月にMCHCグループはイノベーション創造力の強化に向けて、大きく2点の変更を実施しました。第一には、三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンの統合により、3社のR&Dのリソースと開発力が結集したことです。この統合による知見の共有や効率化により、隣接するマーケットの開発、コスト削減、将来のビジネス戦略策定の強化が図れると考えています。 MCHCグループ内の第二の変化は、世界各国で起きている企業イノベーションの急速な進化を反映しています。この新しい環境下では、私たちは新たな技術開発だけでなく、破壊的イノベーションも考慮することが求められています。破壊的イノベーションは、業界の勝ち組と負け組を再定義する可能性があります。しかもこのイノベーションは、従来の考え方の枠を超えて現れるため、長年にわたり安定した利益を出してきた企業にとって執拗な脅威となります。破壊的イノベーションは得てして初期段階では否定されます。なぜなら、かつては成功を導いた既存の考え方ややり方と相反するからです。しかし、この偏見こそが、成長のための発見や、破壊的脅威との対峙を阻害しているのです。 MCHCグループがCIO(Chief Innovation Officer)という新ポジションをつくった理由はここにあります。私は光栄にも2017年4月に当社に入社し、この任に就くこととなりました。先端技術・事業開発室は、営業面・技術面ともにグローバルで活躍するリーダー企業との連携を深めつつ、MCHCグループのイノベーション創造力を大幅に発展させることをめざしています。従来との大きな違いは、私を含め上級職が、MCHCグループや伝統的な化学業界以外、さらには日本国外からも任命された点です。当社は、これらの変化を通じて世界的な視野を広げ、グローバルな革新的企業となるべく取り組みを続けていきます。 具体的には、インフォメーション・テクノロジーから生まれる破壊的イノベーションの割合が増えていることに鑑み、当社のデジタル・トランスフォーメーションをリードするCDO(Chief Dig i ta l

Officer) を新設しました。現在、データサイエンティストを増員し

ていますが、これは現在の事業活動を強化するためだけでなく、当グループの事業活動や取引からの膨大なデータの宝庫を活用する新たな方法を考え出すためでもあります。ベンチャー分野については、当社は戦略的投資やパートナーシップのためのリソースを確保し、先端技術・事業開発室は破壊的イノベーションが起こり得る分野でリスクを恐れないスタートアップ企業のように活動します。 この変化の激しい時代に、大企業は「同じことを続けている」だけでは、持続的成長の確保どころか、生存すら保証されません。私たちは世界のイノベーションの中心地と積極的につながり、新規事業の開発アプローチを充実させ、MCHCグループ内でグローバルイノベーションの新たな文化を築く役割を担いたいと思っています。

新たな視点を取り込み、リスクを恐れず、グローバルな連携を深めて、イノベーションの力を強化します。

執行役常務Chief Innovation Officer

ラリー・マイクスナー

CIOChief Innovation Officer

先端技術・事業開発室

MCHCグループのイノベーション創造力の強化

CMOChief Marketing Officer

CTOChief Technology Officer

CDOChief Digital Officer

多様な視点 (伝統的な化学業界、日本国内の視点を超えて)

イノベーションに対する積極的でリスクを恐れない

アプローチ

グローバルで展開する戦略的投資とパートナーシップ

「デジタル・ネイティブ」企業への転換

グローバルベースの市場の特定・創出

破壊的イノベーションへの対応

(テクノロジーおよびビジネスモデル)

AI、IoTによる第4次産業革命を推進

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CIOメッセージ

KAITEKI REPORT 2017 Mitsubishi Chemical Holdings Corporation Value Creation Strategy