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骨粗鬆症診療のアルゴリズム 【対象者】 65 歳以上の女性、70 歳以上の男性 65 歳未満の閉経後および周閉経期の女性 ・骨折歴、ステロイド使用歴、を有する方 ・関節リウマチ、糖尿病、COPDCKD(ステージ3以上) ・喫煙、過度のアルコール ・骨折の家族歴 ・身長低下(3 年間で 2 ㎝以上の低下) a)後頭部が壁につかない b)肋骨と骨盤の間が 2 横指未満 ・胸部や腹部の X 線にて椎体の変形所見(圧壊所見) ・自歯が少ない、パノラマ X 線による拾い上げ・・・(歯科) ・すでに骨粗鬆症の治療が長期間行われているケース(ビスホスホネート製剤が5年以上など)・・・(薬剤師) 上記項目で下線の項目に当てはまる患者は一項目で それ以外の項目は複数該当者を骨密度測定(腰椎・大腿骨近 位部、前腕 DXA)対象者とする 【スクリーニング】 FRAX®10 年間の骨粗鬆症性骨折確率)が、15%以上 ・骨密度測定(QUS 法(超音波法))・・・踵骨で測定 ・骨密度測定(RA 法(MD 法:CXD 法または DIP 法)・・・非利き手にて測定 上記で疑いがあれば骨密度測定(腰椎・大腿骨近位部 DXA)対象者とする 【診断】 ゴールドスタンダードは腰椎・大腿骨近位部 DXA 法検査である。 アンケート結果にて腰椎・大腿骨近位部 DXA 法検査実施可能な医療機関は、5 病院と3診療所(計 300310 / 受け入れ可能)。また、前腕(手首)DAX 法・pQCT 法検査実施可能な医療機関は、1 病院と 10 診療所。診療 情報提供書(骨密度測定依頼用)を用いて依頼する。 基本的には下記の図に従って骨粗鬆症の診断、薬物治療開始基準にそって診断をする。 非専門医で治療方針決定が困難な場合は、改めて診療情報提供書(骨粗鬆症の診療依頼)を用いて依頼する。

骨粗鬆症診療のアルゴリズム - Med...骨粗鬆症診療のアルゴリズム 【対象者】 ・65歳以上の女性、70歳以上の男性 ・65歳未満の閉経後および周閉経期の女性

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骨粗鬆症診療のアルゴリズム 【対象者】 ・65歳以上の女性、70歳以上の男性 ・65歳未満の閉経後および周閉経期の女性 ・骨折歴、ステロイド使用歴、を有する方 ・関節リウマチ、糖尿病、COPD、CKD(ステージ3以上) ・喫煙、過度のアルコール ・骨折の家族歴 ・身長低下(3年間で 2㎝以上の低下) ・a)後頭部が壁につかない b)肋骨と骨盤の間が 2横指未満 ・胸部や腹部の X線にて椎体の変形所見(圧壊所見) ・自歯が少ない、パノラマ X線による拾い上げ・・・(歯科) ・すでに骨粗鬆症の治療が長期間行われているケース(ビスホスホネート製剤が5年以上など)・・・(薬剤師) 上記項目で下線の項目に当てはまる患者は一項目で それ以外の項目は複数該当者を骨密度測定(腰椎・大腿骨近位部、前腕 DXA)対象者とする 【スクリーニング】 ・FRAX®(10年間の骨粗鬆症性骨折確率)が、15%以上 ・骨密度測定(QUS法(超音波法))・・・踵骨で測定 ・骨密度測定(RA法(MD法:CXD法または DIP法)・・・非利き手にて測定 上記で疑いがあれば骨密度測定(腰椎・大腿骨近位部 DXA)対象者とする 【診断】 ゴールドスタンダードは腰椎・大腿骨近位部 DXA法検査である。 アンケート結果にて腰椎・大腿骨近位部 DXA 法検査実施可能な医療機関は、5 病院と3診療所(計 300~310 件/月 受け入れ可能)。また、前腕(手首)DAX法・pQCT法検査実施可能な医療機関は、1病院と 10診療所。診療情報提供書(骨密度測定依頼用)を用いて依頼する。

基本的には下記の図に従って骨粗鬆症の診断、薬物治療開始基準にそって診断をする。 非専門医で治療方針決定が困難な場合は、改めて診療情報提供書(骨粗鬆症の診療依頼)を用いて依頼する。

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【治療前後での検査】 治療開始時には血液検査が望ましいが、保険請求上骨代謝マーカーの測定には骨粗鬆症の確定病名が必要であるため、DXAによる診断後に行う。 *骨代謝マーカーは骨吸収と骨形成マーカーを測定するが、保険診療上、骨粗鬆症の確定診断後にしか認められていない。治療薬の選択時(開始時)に 1回、その後の 6ヵ月以内の治療効果判定時または治療薬を変更後 6ヵ月以内に 1回測定して治療効果を評価する。 *骨代謝マーカー測定は骨吸収マーカーと骨形成マーカーそれぞれ 1項目は保険で認められている。 ・早朝空腹で検体採取を基本とする ・骨折発生 24時間以内に評価 ・前治療の影響が残っていることを考慮する ・急激な生活習慣の改善があれば、安定を待つ ・測定機関や方法による基準値を基に判断する。 ・テリパラチド(連日投与)の場合、治療開始1~3ヶ月後に P1NPが上昇すれば有効と報告されている。

*Creから年齢・身長・体重にて eGFRを算出。 *Caの補正(mg/dl:基準値は補正 Ca濃度が 8.5~10mg/dL程度)=実測 Ca (mg/dl)+4-Alb(g/dl) *尿中 Caのチェックは、尿路結石予防

治療前 経過観察

ALP、Alb、Ca、P、BUN、Cre、GOT、GPT、γGTP

〇 〇

25(OH)ビタミン D ○ ×

intart-PTH、尿中 Ca × △ 男性

女性 (閉経前)

女性 (閉経後)

単位

骨 吸 収 マーカー

TRACP-5b 〇 〇 170~590 120~420 250~760 mU/dl

sNTX 〇 〇 9.5~17.7 7.5~16.5 10.7~24.0

nmol BCE/L

骨 形 成 マーカー

BAP 〇 〇 3.7~20.9 2.9~14.5 3.8~22.6 μg/L

P1NP 〇 〇 29~181 32~178 32~178 ng/ml

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【骨粗鬆症と診断した段階で、歯科受診の徹底】 ビスホスフォネート製剤(以下:BP製剤)と抗 RANKL抗体製剤投与前は必須!! 【生活指導】 生活習慣の改善 食事 ・1日に摂取すべきカルシウム推奨量は 700~800㎎/日、ビタミン D推奨量は 400~800IU/日、ビタミン K推奨量は 250~300μg/日、良質のたんぱく質。 ・リン、食塩、カフェイン、アルコールの過剰摂取は控える。

口腔ケア ・歯周病予防 運動 ・筋トレ、バランス強化訓練、耐久性訓練などを組み 合わせた運動療法、ロコモ体操 転倒予防 ・ふらつき・転倒の原因となっている薬剤の減量・中止 ・起立性低血圧の原因となるような過剰な降圧剤、利尿剤(特にループ利尿剤)、抗コリン作用を持つ薬剤の減量・中止。 ・リハビリで筋トレ ・環境設定として、段差や障害物をなくす、手すりを付けるなどバリアフリー ・夜間にトイレに行く際は、電気をつける ・排尿障害(前立腺肥大、過活動膀胱、尿失禁)の治療 ・白内障・緑内障の治療 日光を浴びる

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【薬物療法一覧】

【3ヶ月 1回程度の採血で、eGFR、Ca等のチェック】

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【骨粗鬆症と診断した段階で、歯科受診の徹底】 ビスホスフォネート製剤(以下:BP製剤)と抗 RANKL抗体製剤投与前は必須!! MRONJ(Medication Related Osteonecrosis of the Jaw,薬剤関連性顎骨壊死)

参考文献 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年度