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軽水炉高経年時代のこれからを担う 材料科学研究 材料科学研究 財団法人 電力中央研究所 軽水炉高経年化研究総括プロジェクト 軽水炉高経年化研究総括プロジェクト 曽根田 直樹 Copyright © 2009 by CRIEPI 1

軽水炉高経年時代のこれからを担う 材料科学研究...Title 電力中央研究所フォーラム2009 Author Created Date 11/4/2009 12:10:03 PM

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軽水炉高経年時代のこれからを担う材料科学研究材料科学研究

財団法人 電力中央研究所

軽水炉高経年化研究総括プロジェクト軽水炉高経年化研究総括プロジェクト

曽根田 直樹

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国内原子力発電プラントの高経年化

10 50年運転プラント

平成21年度10月現在

• 稼働中軽水炉53基

• 30年目高経年化技術評価完了プラント18基

8

9 40年運転プラント

30年運転プラント

• 30年目高経年化技術評価完了プラント18基

• 40年目高経年化技術評価完了プラント 1基

6

7

ト数

4

5

プラ

2

3

0

1

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24

Copyright © 2009 by CRIEPI

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24

西暦20XX年2

高経年化対策研究の国内実施体制

高経年化技術評価に基づく軽水炉の長期運転

民間規格化 規制基準化

学協会 国

高経年化対策研究(産、官、学)究 、 、

技術情報調整委員会安全WG、情報基盤WG、国際協力WG

NISA原子力安全

基盤小委員会安全WG、情報基盤WG、国際協力WG

基盤小委員会報告

官 学 産

JNES各種技術検討会

高経年化対策強化基盤整備事業

PLM研究推進会議

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高経年化対策研究の特徴

研究成果の規格基準への反映

評価手法、プラント運転のクライテリア等の設定

規格基準における材料経年劣化の評価

データ点の包絡線の設定(帰納的)と外挿デ タ点の包絡線の設定(帰納的) 外挿

メカニズムに基づく評価曲線の設定(演繹的)と外挿

材料

の特

外挿領域

外挿の科学的合理性の確保外挿の科学的合理性の確保や説明性の向上には経年劣化メカニズムの理解が重要

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運転年数現在

高経年化対策研究と材料科学研究

高経年化評価に必要な経年劣化メカニズム研究とは高経年化評価に必要な経年劣化メカニズム研究とは

現象を支配する環境・材料パラメータの特定

それら パ メ タと運転管理 必要なパ メ タ 相関をそれらのパラメータと運転管理に必要なパラメータの相関を計算できる形で具体化すること(知見の数式化)

経 ズ経年劣化メカニズム研究の方法

工学と理学の融合 = 材料科学研究

材料力学や熱流動等の工学(エンジニアリング)に軸足を置きつつ

金属学 物理学 化学 計算科学などの理学(サイ ンス)の金属学、物理学、化学、計算科学などの理学(サイエンス)の知見と技術を柔軟に取り込むこと

経年劣化メカニズム研究の実用化経年劣化メカニズム研究の実用化

規格への反映

実機材料デ タ が極 重

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実機材料データベースが極めて重要

5

電中研における高経年化研究の推進

プ「軽水炉高経年化研究総括プロジェクト」を組織(H19)照射脆化、応力腐食割れ、配管減肉 + ケーブル劣化、非破壊検査

国内の高経年化研究の枠組みの中 材料科学研究の手法国内の高経年化研究の枠組みの中で、材料科学研究の手法によるメカニズム解明研究とその規格化に注力

実プラント運用実用化実機情報

電中研における高経年化研究

実用化実機情報

電中研における高経年化研究• 経年劣化メカニズムの解明• データベースの構築

評価手法の開発 検証

民間規格への反映(学協会)

• 評価手法の開発・検証

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研究の成果材料科学研究手法

原子炉圧力容器の照射脆化の研究例

材料

の強

さ 中性子照射前中性子照射後

材中性子照射量(運転時間)に対する脆化量

温度 (℃)脆化量(単位:℃)

中性子照射量(運転時間)に対する脆化量の変化を精度よく予測することが高経年化評価にとって重要

胴部

評価にとって重要

脆化予測式(日本電気協会JEAC4201)改定

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PWR圧力容器

7

への材料科学研究の適用

電中研の照射脆化研究のアプローチ

照射脆化メカニズム研究• 先端的ミクロ組織観察技術

• マルチスケール計算機シミュ

実機データ• 実機監視試験データ• 監視試験片マルチスケ ル計算機シミュ

レーション技術監視試験片

金属学物理学

照射脆化予測モデルの開発• メカニズムに基づく材料変化

の数式モデルの開発の数式モデルの開発

材料力学

照射脆化予測法の開発

JEAC4201-2007への反映(日本電気協会規程)

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(日本電気協会規程)

先端的ミクロ組織観察技術 : 三次元アトムプローブ

金属内の原子の三次元座標を実験により測定

光学顕微鏡

金属内の原子の三次元座標を実験により測定

500μm

透過電子顕微鏡

Imago LEAP50nm

狛江地区 放射線管理区域に設置狛江地区 放射線管理区域に設置

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中性子照射された圧力容器鋼の測定例: 銅原子の集合体(クラスター)が形成される。

マルチスケール計算機シミュレーション

照射脆化照射脆化

転位と障害物の相互作用

硬化中性子照射前

中性子照射後

上部棚低下

マクロの相互作用

DD

破壊

靭性

遷移温度上昇41J

MD

DD試験温度

ΔRTNDT

メゾMD MDメゾ

拡散 点欠陥-溶質原子相互作用

中性子の衝突ミクロ組織形成

相互作用

ナノ ミクロCopyright © 2009 by CRIEPI 10

KMCMD/KLMCナノ・ミクロ

銅の含有量が多い鋼材の照射脆化

70

80

SP1 Cu: 0.24wt.%

50

60C

)量

(℃

))

40

elta

Tr3

0 (o C

SPT1

SPT2

温度

上昇

量脆

化量

( ℃

20

30De

Surveillance (A)Surveillance (W)

遷移

実機照射(φ=~109n/cm2-s)

実機照射(φ=~1010n/cm2 s)

0

10

0 0E+00 5 0E+17 1 0E+18 1 5E+18 2 0E+18 2 5E+18 3 0E+18

MTR実機照射(φ=~1010n/cm2-s)

試験炉照射(φ=~1012n/cm2-s)

0.0E+00 5.0E+17 1.0E+18 1.5E+18 2.0E+18 2.5E+18 3.0E+18

Fluence (n/cm2)中性子照射量(n/cm2, E>1MeV)中性子照射量 (n/cm2, E>1MeV)

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曽根田、土肥、野本、西田、石野、電中研研究報告 Q06019、平成19年4月.

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80

銅の含有量が多い鋼材のミクロ組織観察80

60

70SP1

℃)

Cu: 0.24wt.%

50

60

70

snts

平均:2.6nm

ト数

30

40

50

Del

ta T

r30

(o C)

SPT1

SPT2

移温

度上

昇量

(℃

脆化

量(℃

20

30

40

Counts

Cou

nカ

ウン

脆化

量(℃

10

20

30D

Surveillance (A)Surveillance (W)MTR

遷移

実機照射(φ=~109n/cm2-s)

実機照射(φ=~1010n/cm2-s)

試験炉照射(φ=~1012n/cm2-s)

0

10

0.0 0.4 0.8 1.2 1.6 2.0 2.4 2.8 3.2 3.6 4.0 4.4 4.8 5.2 5.6 6.0

Cluster diameter (nm)Guinier diamter (nm)クラスターの直径 (nm)

00.0E+00 5.0E+17 1.0E+18 1.5E+18 2.0E+18 2.5E+18 3.0E+18

Fluence (n/cm2)中性子照射量(n/cm2, E>1MeV)

試験炉照射(φ )

中性子照射量 (n/cm2, E>1MeV)20

25

30

平均:2.0nm

ト数中性子照射量 (n/cm2, E>1MeV)

10

15

Cou

ntsCu

P

カウ

ン0

5

0.0 0.4 0.8 1.2 1.6 2.0 2.4 2.8 3.2 3.6 4.0 4.4 4.8 5.2 5.6 6.0

Cluster diameter (nm)クラスターの直径 (nm)41 x 48 x 149 nm3

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曽根田、土肥、野本、西田、石野、電中研研究報告 Q06019、平成19年4月.アトムプローブ解析

Cluster diameter (nm)クラスタ の直径 (nm)

12

41 x 48 x 149 nm6.3M atoms

ミクロ組織形成の計算機シミュレーション(KMC)

銅の拡散のし易さへの照射速度の影響

501010 109 108 107 106 105 104 103 102

Irradiation time (s)照射時間 (秒)

銅の拡散のし易さへの照射速度の影響低照射速度では熱の寄与が無視できない

40

50

08 )

Dose: 0.01 dpan-spectrum: fissionTemperature: 600K

所定の照射量に達するまでの

原子空孔のジャンプ数を計算

30

y ju

mps

(x10 Total vacancy jumps

易さ

クラスターサイズが大きくなる

合計

20

r of v

acan

cy

Irradiation-induced vacancy jumps

拡散

のし

易 大きくなる

照射の寄与

0

10

Num

be

Thermal vacancy jumps熱の寄与実験と計算により劣化のメカニズムが明らかとな た

0

10-12 10-11 10-10 10-9 10-8 10-7 10-6 10-5 10-4

Dose rate (dpa/s)BWR PWR 照射速度 (dpa)

が明らかとなった。

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( p )

N. Soneda, S. Ishino, A. Takahashi, K. Dohi, JNM 323 (2003) 169.

銅の含有量が少ない鋼材のミクロ組織変化

Cu: 0.03 wt.%

41 x 49 x 264 nm341 x 49 x 264 nm11.2M atoms

Cu: 0.04 wt.%

50 x 60 x 158 nm3

10.0M atoms

SiSiP

銅の含有量が非常に少ない鋼材は銅を含まないクラスター(Ni, Mn, Si等)の形成によって脆化する(実機材料で初めて確認)

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, S 等)の形成によって脆化する(実機材料で初めて確認)

曽根田、土肥、野本、西田、石野、電中研研究報告 Q06019、平成19年4月.

電中研脆化予測モデル

反応速度式によるミクロ組織変化の数式モデルの開発

( )( ) ( )( )2089214 1 NiCu

availCuMDCu

matCu

SC CDCCDCC⋅+⋅⋅⋅+⋅+⋅+⋅=

∂ ξξξξξ

反応速度式によるミクロ組織変化の数式モデルの開発

( )( ) ( )( )89214 NiCuCuMDCuCut∂ξξξξξ

( ) CC ∂∂ 2

銅を含まない鋼材の脆化メカニズムを考慮

( )t

CCFt

C SCNiT

MD

∂∂

−⋅⋅+⋅⋅=∂

∂ φξξξ 276

25

21

ηφη ⋅+=+= thermalCu

irradCu

thermalCuCu DDDD

熱による拡散の寄与のメカニズムを考慮

( ) rCuavailCuSC tDCv ⋅⋅⋅=

22ξSCSC

enhSc

SC

matCu Cv

tC

vt

C⋅′−

∂∂⋅−=

∂∂

熱による拡散の寄与のメカ ズムを考慮

tt ∂∂

:,,,

照射時間照射速度銅の拡散係数

ニッケルの濃度:銅の濃度密度マトリックス損傷の数:数密度溶質原子クラスターの:

::

tDCCCC NiCuMDSC

φ

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,,, : 照射時間照射速度銅の拡散係数 :: tDCu φ

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曽根田、土肥、野本、西田、石野、電中研研究報告 Q06019、平成19年4月.

メカニズムに基づく脆化予測法の開発

実機データベースに脆化予測

モデルをフィッティング120

140 JEAC4201-2004

JEAC4201-2007

従来よりも精度の高い脆化予

測法を開発100

120 JEAC4201-2007

1:1 line

±20℃

日本電気協会規程JEAC4201-

2007に採用60

80

予測

値(

℃)

研究の現状

高照射量領域(>60年運転)で20

40

高照射量領域(>60年運転)で

の照射脆化メカニズムの解明

研究を実施中0

-20 0 20 40 60 80 100 120 140

加速照射試験の影響評価

現行予測法の改良に反映予定

監視試験における実測値(℃)

実測値(横軸)と予測値(縦軸)の比較

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これからの高経年化材料科学研究

非常に複雑な事象(応力腐食割れ等)に対する

メカニズム解明研究は今後の中心課題

先端的な研究手法の利用

今後の課題

実機材料の評価研究

デ タベ スの構築データベースの構築

次世代軽水炉への知見の反映

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実機材料の評価研究

実機で経験のない長期予測を行うことは現在の高経年化対策研究の特徴

加速試験の有効利用加速試験の有効利用

加速試験条件と実機条件の違いが材料劣化に与える影響を確 把握する必要がある正確に把握する必要がある加速試験材料と実機材料の比較から得られる情報は極めて多い

実機材料の多くは放射化材料あるいは汚染物として扱われる放射化した材料を扱える先端的研究実施体制の構築が必要

電中研では放射線管理区域での「軽水炉材料分析ステーション」の整備を実施中

実機材料(廃炉材、廃却材)は限られている国内外のネットワークの有効活用が非常に重要

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データベースの構築 : メカニズム研究の観点から

ズ デメカニズム研究と実機適用をつなぐものがデータベース

メカニズムに関する知見は材料挙動の骨格を与える。データベースと連携することで 理論が実データと結びつく連携することで、理論が実デ タと結びつく。

データベースの設計には、その時点でのメカニズム研究の知見を反映する必要がある

データの品質の重要性デデータの品質

一次データを得るときの試験条件等の違い

二次データを得るときの評価手法等の違い次デ タを得るときの評価手法等の違い

初期材のデータ(情報)が非常に重要となる

品質の異なるデータが混在するとメカニズムが見えない

データ取得の条件を統一したベンチマーク研究等による基準データの作成が有意義

国際共同研究の重要性

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国際共同研究 重要性

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実効的な原子力発電設備容量の推移

おわりに

実効的な原子力発電設備容量の推移2006年度供給計画通りの新・増設が行われた場合

一律60年運転・稼働率75%を想定律60年運転 稼働率75%を想定

総合資源エネルギー調査会、「原子力立国計画」 2006年8月8日W

7,000「原子力立国計画」、2006年8月8日

長期運転

容量

(万

kW 6,000

5,000

4 000

的な

設備

容 4,000

3,000

2,000

高効率運転

実効

1,000

01960 1980 2000 2020 2040 2060 2080

>60年運転 + 稼働率>75% + 次世代軽水炉80年運転= 電源確保の大きな選択肢

年 度

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= 電源確保の大きな選択肢

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高経年化研究が大きく貢献できる

軽水炉高経年時代のこれからを担う材料科学研究材料科学研究

おわり

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