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高齢者にとっての自立とは
長期にわたって身体、精神、社会的に自立した人生を送ってきた人が、身体的な自立を失い、家族の介護負担が発生している
QOL の向上(生活の質)
IADL の自立(家事などの生活関連動作)
身体身体
精神精神 社会社会
ADL の自立(日常生活動作)
• 脱水• 低栄養• 排便困難• 寝たきり、運動不足
• 1,500mlの水分摂取• 1,500Kcalの栄養摂取• 生理的、規則的な排便• 歩行を中心とした運動量の確保
【4つの基本ケア】
介護が必要になる原因
老化に伴い…
自立支援ケアの全体
水分
食事 排便
運動食事量低下
食事量低下食事量低下
水分量低下
水分量低下水分量低下
水分量低下
運動量低下
運動量低下運動量低下
運動量低下
便秘
失 禁 改 善 歩 行 改 善 常 食 化 認知症改善
【4要素の連鎖】
おむつをつけて元気になれますか?
排泄の失敗が自信を喪失し、自立に対する意欲を失くしている
「人間性」への侵害
健康状態の悪化・おむつかぶれ(5割)・膀胱炎(8割)
生きる意欲の喪失
望んでいる利用者はいない
誰にでもできる仕事
専門性を低下させる
向上心や働く意欲を妨げる
介護職員 利 用 者
おむつ
おむつの原因は便失禁!!• 下剤の廃止• 規則正しい生活• 規則正しい食生活と常食• 水分摂取• 起床時冷水• 食物繊維(ファイバー)• 運動(歩行能力の回復)• 決まった時間の排便• 座位(トイレ等)での排便
生理的で規則的なトイレでの排便
都内を中心に8つの拠点60の事業展開
介護老人福祉施設グループホーム小規模多機能型居宅介護地域包括支援センター居宅介護支援事業短期入所生活介護(ショートステイ)通所介護(デイサービス)訪問介護(ホームヘルパー)訪問看護 訪問入浴 訪問食事
社会福祉法人 正吉福祉会
法人理念
• 誰もが暮らしたいところで継続して生活できるよう自立を支援
• 地域包括ケアシステムの確立により「安心な暮らし」の実現
施設方針• 地域でも施設でも、“自分らしく暮らせる「家」”に住み続けることを支援します!
• 「自立支援ケア」の実施により、開設時よりおむつは買わずにおむつゼロの施設運営
• 元気になったら家に帰る「在宅復帰」の支援• 地域包括ケアの拠点施設への取組み
施設の概要
杜の風・上原
• 平成25年4月 開設
• 渋谷区上原• 特養入居者80名・短期利用者20名• 平均介護度 3.75
• 平均年齢90.3歳• デイ(35名)・居宅が併設• 1Fに「こども園」が併設(別法人)
(H28.3.31現在)
脱水によるADLへの影響
意識レベル低下
便 秘
唾液分泌低下
尿便意喪失
認知力低下
意欲低下
体の活動性低下
む せ
歩行・立位不可
失 禁
周辺症状出現
水分不足
排泄
認知症
活動
食事
排便
水分ケアの取組み結果
2 階 3 階 4 階
Aユニット
Bユニット
Cユニット
1,518ml
1,395ml
1,600ml
Aユニット
Bユニット
Cユニット
1,647ml
1,841ml
1,554ml
Aユニット
Bユニット
Cユニット
1,437ml
1,446ml
1,550ml
入所前平均 915 ml
半年後平均 1,543 ml
※ 不明者 15名
歩行が与える様々な影響筋力アップ
身体機能向上
血流の改善
意識レベル向上 日中の覚醒・夜間良眠
生活動作の向上(トイレ、移乗、入浴等)
認 知 力 向 上
歩行 尿意・便意の回復
下肢浮腫の改善
日中の尿量増加夜間頻尿・多尿の改善
腸のぜん動運動の促進起立大腸反射
学習理論とは
≪学習理論の原則≫
• そのものを使った練習を行う
• 反復する• 練習量(運動量)
動 作 の 課 題
動 作 実 行
記憶回路(システム)
起動
神経システム
筋肉システム
ピアノを弾く・・・ 指を動かす・・・
ピアノを弾く
上手に弾けているかフィードバックする
開設から半年後の成果
<歩行改善状況> <便失禁改善状況>
入所前 半年後
全車イス 46.1 19.1
車イス併用 10.1 29.2
歩行 43.8 51.7
歩く機会あり 53.9 80.9
入所前 半年後
常時の便失禁あり 33 1.1
常時の便失禁なし 67 98.9
おむつの必要がない!!
(%) (%)
おむつゼロの実践報告
排泄形態(24時間)
利用者人数
おむつ 0名
紙パンツ 0名
布パンツ(パッド含む)
80名
排泄場所(日中)
利用者人数
ベッド上 0名
ポータブルトイレ
2名
トイレ 78名
平成25年1月8日現在(入院者4名については入院前の状況です。)
栄養状態(アルブミン)の改善
H25.6.11 H26.5.16 H27.5.1
Alb3.0未満 24.5% 8.9% 0%
Alb3.0以上~3.5未満
62.2% 42.2% 35.2%
Alb3.6以上 13.3% 48.9% 64.8%
改善割合(%) - 88.9% 68.5%
アルブミンとは? 血液中にあるタンパク質のうち最も多いもの高齢者の健康維持の指標(多い人は健康寿命)少ないと病気にかかりやすい(心筋梗塞、脳梗塞、肺炎など)
低栄養状態として治療が必要
介護度変化
施設入所後の介護度の変化
入所時 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ
Ⅰ 0 0 0 0 0 0
Ⅱ 7 1 3 3 0 0
Ⅲ 23 2 6 11 3 1
Ⅳ 25 4 5 9 5 2
Ⅴ 8 0 0 1 2 5
平均 3.54 (変化後) 2.97
合計 63
人 人
利用者数 割合
悪化 9人 14%
維持 24人 38%
改善 30人 48%入所後に介護保険認定更新された利用者63名を対象
≪改善者の内訳≫
人
H27.2時点
Kさん 93歳 女性 要介護5
障害自立度 B2 認知症 Ⅲa
病名:アルツハイマー型認知症・高血圧症・骨粗しょう症・便秘症・気管支拡張症・完全右脚ブロック貧血
本人状況
入所経過
長男家族と同居。長男が主介護者
平成24年4月 誤嚥性肺炎にて入院。その後、介護状態が悪化し、自宅へ戻れず、他施設のショートステイから直接入所。
移動 車イス全介助時に手引き歩行
食事 主)ペースト 副)ペースト 全介助
水分 600ml 全介助
排泄 尿・便失禁 下剤服用 ほとんどベッド上での排泄
意識レベル
声かけに対してほぼ反応なし
パワリハ 立位・歩行訓練
高カロリーゼリーによる栄養改善 食事形態の向上
1,500mlの水分摂取
下剤の中止 定時のトイレ誘導 便失禁の改善
水分・栄養・運動による覚醒状態の改善
入所前のADL 行ったケア
Kさんへのケア・ご本人状況の経過月 移動 食事 水分 排泄 意識レベル
5月
6月
7月
8月
9月
10月
立位困難
立位可能
サークル歩行器開始(居室⇔食堂)パワリハ開始フロアー1周(100m)歩行車イス中止
シルバーカー
30%程度の摂取
高カロリーゼリー追加(350Kcal)1,200~1,300Kcal粥・きざみに変更
時に自己摂取
1,122ml
1,364ml
1,500ml以上
トイレ誘導開始下剤中止
便失禁消失
3日に1回の排便トイレでの排尿増える
反応なし常に傾眠状態
覚醒状態が向上発語みられる
笑顔多い自ら話しかける簡単な会話成立
移動 車イス使用せず歩行器歩行
食事 主)粥 副)キザミ 自己摂取することあり
水分 1,500ml以上 自己摂取
排泄 便失禁なし 排便1回/3日 トイレ内での排尿増える
意識レベル
ほぼ傾眠なし大きい声で挨拶、会話も成立
半年後のADL
パワーリハビリのご様子
事例概要S様 男性 92歳 要介護2 認知症自立度Ⅲa
《生活暦》
渋谷区に生まれ、プレス職人として働き、1男2女をもうける。
《生活・介護状況》
H15年アルツハイマー型認知症と診断、その後は10年間一歩も外に出ていない。
長女と妻と3人暮らしだが、介護は妻が行っている。
ご本人の状況 (H25.4)
水 分 500~600ml/日
食 事1日2食 自力摂取粥、やわらかい物
歩 行 不安定 妻が抱えて行う
運 動 食事以外はほとんど横になっている
排 泄尿失禁あり(間に合わない)排便は確認できず
入 浴 歩行不安定、拒否もあり、入れず
社会交流 10年間閉じこもり
• 介護保険サービスの利用なく、10年間つきっきりの介護に妻も疲労困ぱい
認知症による症状 (H25.4)
症 状 出現状況 アセスメント
幻 覚
「窓から誰かがのぞいている」「洗濯物に火がついている」夕方~夜間ほぼ毎日ある
夕方から夜間にかけて発生⇒水分不足による意識障害、せん妄身体不調型(脱水)
拒 否興 奮
食事や入浴のために起こすと怒り出す
気のすすまないことに対して発生⇒体力低下(低栄養、低活動)により億劫に身体不調型(低体力)
支援の開始
認知症改善の為に
⇒短期間の入所(ショートステイ)により体調を整える
10年間閉じこもりであり、サービス利用に繋ぐことが困難⇒担当ケアマネが、ほぼ毎日自宅訪問し関係作り
4/20 ショートステイの利用について説明
4/24 4度のお迎えをするが、起き上がらず4/25 機嫌悪く、お迎えに対して強い拒否
4/26 数回お誘いするが、拒否
昼食後、散歩に誘い、そのまま車イスにて入所
⇒ ショートステイによる、約3週間のケアがスタート
ショートステイ中のケア(H25.4.26~5.20)ケア内容 結 果
水 分こまめな声かけゼリーなど本人の好む物の提供
平均1639ml/日の摂取日中起きている時間が長くなり、夜間も良眠
食 事高カロリーゼリー(350kcal)義歯作成の受診開始
2/3~全量摂取体重:39.7kg→41.4kg
運 動シルバーカー使用し歩行訓練(毎日)体操、マシーントレーニング
ふらつきがなくなり、シルバーカーにて安定屋外の散歩も可能に
排 泄夜間、センサーにて排尿・排便リズムの確認
当初の尿失禁が消失排便は3・4日周期
認知症症状
適切な水分摂取体力の回復(栄養改善、運動量の増加)
幻覚、粗暴な行為は消失興奮・拒否はほぼ消失
その後のS様の生活退所後、当施設のデイ、ショートを利用し、引き続きケアを継続
排便状況も改善され、認知症状が更に改善
H25.10
水 分 1,544ml
食 事 常食
体 重 44.2Kg(+4.5Kg)
歩 行 自立
排 便 1日おき
生活リズム 規則的
認知症症状 消失
ご夫婦でのお散歩も可能に
認知症によって10年間、諦めていた生活が再び!!
在宅・入所相互利用とは…
在宅
特養
Aさん
Bさん
3ヶ月を限度とした入所
在宅サービスを利用しながらの在宅生活
在宅復帰
相互利用入所
24時間の集中的なケアによる自宅での問題解決
介護・看護・リハビリ・栄養・医師等の 専門職の連携
在宅・入所相互利用の取組み
• 入所中の自立支援ケア(認知症、歩行、排泄など)• 家族へのアプローチ• 在宅サービスとの一体化(シームレスケア)
特養の機能を活かし、特養が中心となった在宅生活継続への取り組み
家族の介護負担ゼロ利用者本人の自立性利用者本人の自立性
の回復
事例紹介Aさん 88歳 男性 要介護4 160cm 40Kg BMI 15.6
病名:前立腺肥大、うつ状態、不眠症、慢性心不全
障害高齢者自立度 B1 認知症自立度 Ⅱa
ADL:歩行不安定(伝え歩き)、夜間排泄時に毎回妻を起こす
生活状況:H21~22年に、入退院を繰り返し胃ろうを勧められるほどADL低下、その後2年間は閉じこもりの生活を送っていた
介護状況:別の階に長女家族居住しているが
協力体制なく、腰痛を抱える高齢の妻のみが介護
在宅生活を困難にするニーズ
・歩行能力低下、低体力、また14段の
外階段にて環境的にも外出ができない
・夜間の排泄時に毎回妻を起こす
毎日の介護負担により、在宅生活をあきらめていた・・・
相互利用入所(4/3~7/2)
ケア内容 退所時の状態
水 分 1,500ml水分摂取 850ml⇒1,500ml
食 事 栄養量の増加 50%⇒80~100% 2Kg体重増
運 動パワリハ、歩行練習階段昇降
施設内はシルバーカーにて自立14段の階段昇降可能
夜間排泄 排泄動作の自立全介助⇒見守り 失禁なし起居動作も自立
排 便下剤中止、水分・ファイバー摂取
1回/3日の規則的、生理的な排便
その他 デイサービス参加体操のみから参加し、週3日参加可能
在宅復帰後の生活
• 外階段の昇降は見守りで可能(閉じこもり解消)• 夜間排泄時は妻を起こすことがなくなる• 週3回のデイ、月2回のショート、また自宅でも、食事、水分、運動のケアを継続
• 「人に頼らずに自分の為を思って努力しないといけない、妻には迷惑を掛けたくないと思う」
• 元々活動的だった妻は、太極拳など社会交流の機会を再び作るようになる。
• 「せっかく良くなったので、これからもリハビリを頑張ってもらいたい、定期的に休めれば自宅でも住めると思う」
本人
妻
相互利用実績報告(H27年度)
項 目 実 績 数
相互利用ベッド数(H28.3.31)
5 床
登録利用者数(H28.3.31)
10 名
延べ在宅復帰回数 26 回
退所者の在宅復帰率63.4%
(26件/41件)
ADL向上=選択肢が増えること
施設や在宅、関係なく、住む場所が選択できることが、本当の自立支援ではないか
要介護状態になった
施設入所しなければならない
住み慣れた家での生活の支援
自立支援介護の実施そして、相互利用という選択肢
①組織全体で取り組む
経営トップの意思表明
組織の体制作り
・「介護力向上委員会」・・・全職種が参加、施設全体の運営に
ついて協議(1回/月)
・「個別ケア会議」・・・関係職種が参加、利用者ケアについて
ミニカンファレンスの実施(1回/週)
キーパーソンとなる介護職員の決定
各専門職が同じ方向を向く
例:おむつを外す⇒水分提供、トイレ誘導(介護)、
下剤の中止(看護)、歩行改善(リハビリ)、常食へ移行(栄養)
方針を明らかに
②理論に基づいたケア
自立支援介護の教育システムの構築
・理論、知識の勉強会
・ケアプラン作成能力の向上
・事例検討会の実施
原因を考える職員の育成
・「何でおむつ?」「何で歩けない?」
脱“思いつきケア”
知識、理論なしに導入すると、水分・歩行ケアなどがノルマ化されてしまう
基礎知識
理 論
技 術
経 験 知
【自立支援介護実践の4要素】
基礎知識を知る(例:水の生理学)
基礎知識から組み立てられる理論を知る
実践技術を身につける
経験から生まれてくる知識・知恵がベテラン介護職を生む
③まずは水分から
導入しやすく、取組みやすい
・今、行っているケアを見直せば良い
・利用者の変化が出やすい
(意識レベルの変化、便秘の解消、認知症周辺症状の消失等)
成功体験から職員のモチベーションアップ
水分ケア→歩行・排泄ケア→認知症ケア→常食化
自立支援介護のベースは水分ケア
自立支援介護の更なる進展へ繋がる
1,500mlの水分摂取のために
水分の大切さを知る
組織全体で取り組む
職員の技術向上
・知っているか、知らないかでは、職員の熱意が違う・基礎知識の習得と成功体験を重ねる
・様々な水分を準備する(飲めなければ食べる水分)・水分プランの作成・毎日のチェック体制作り
・起床時には水分を欲する・動いたら飲む・昔の習慣、好みを活用
④おむつは使わない
いつまでに何をする、そして達成日の設定
排泄の成功が利用者の元気の第一歩
おむつが無いと便失禁を失くさなければならない
各専門職の連携が強化される
介護職員の自信とやりがいが生まれる
(「排泄の自立」は介護職員の専門領域)
おむつゼロへの決意とスケジュール策定
• 収支状況に対する影響⇒健康を促進するケアにより
入院者の減少
⇒おむつ代、ゴミ処理代等
の削減
• 地域への評判⇒「あそこに行くと元気になる
みたい」
介護度が下がったり、在宅へ帰られたりすることが、単純に施設の経営に悪影響を及ぼすわけではない!
稼働率アップコスト削減
デイ、ショート等の利用者増加
自立支援ケアが施設経営を健全化する