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JMPR及びCCPRに関する勉強会 2013/8/23 1 食品中の残留 食品中の残留農薬に 農薬に関する 関する 国際的基 国際的基準値の設定 準値の設定 山田 友紀子 23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 2 概要 概要 農薬に関わる重要な国際会議 CCPRJMPR MRLとは何か Codexにおける定義 MRL設定の意義 何にMRLを設定するのか (何を分析するのか)? JMPRによる評価の概要 CCPRによる検討 23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 3 国際貿易機関( 国際貿易機関(WTO WTO)の協定 )の協定 貿易に関連して各種の協定を策定 衛生と植物防疫措置に関する協定(SPS) 人の生命と健康食品安全 動物の生命と健康 植物の生命と健康 コーデックス委員会Codex Alimentarius Commission)の勧告を、食品の安全性につ いての唯一の参考規格として明確に認識 23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 4 衛生 衛生と と植物 植物防疫 防疫措置に関する協定 措置に関する協定 WTO加盟国の食品安全に関する措置は: 科学的原則に則っていなければならな い;科学的根拠なしに維持してはいけな い(第2.2項) もしCodexの規格が存在するならば、そ れに基づいていなければならない (3.1) Codexによって確立されたリスク評価手 法を使った、人へのリスクの評価に基づ いていなければならない(第5.1項) 23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 5 残留農薬に関する基準策定に 残留農薬に関する基準策定に 関わる国際機関 関わる国際機関 コーデックス委員会(CAC) リスク管理機関 政府代表団・オブザーバー機関 科学的に基づく加盟国への勧告 消費者の健康保護と、公正な食品貿易・取 引の保証に関する他の正当な因子を考慮 Joint FAO/WHO Meeting on Pesticide Residues (JMPR) リスク評価機関 専門家が個人として参加 科学的分析とアドバイス 科学的な評価 政治・経済的な 考慮はなし! 23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 6 残留農薬に関する基準策定に 残留農薬に関する基準策定に 関わる国際機関 関わる国際機関 コーデックス委員会(CAC) リスク管理機関 政府代表団・オブザーバー機関 科学的に基づく加盟国への勧告 消費者の健康保護と、公正な食品貿易・取 引の保証に関する他の正当な因子を考慮 Joint FAO/WHO Meeting on Pesticide Residues (JMPR) リスク評価機関 専門家が個人として参加 科学的分析とアドバイス 科学的な評価 政治・経済的な 考慮はなし! 農薬登録機関 ではない!

食品中の残留農薬に関する 国際的基準値の設定 - …JMPR 及び CCPR に関する勉強会 2013/ 8 / 23 1 食品中の残留農薬に関する 国際的基準値の設定

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Page 1: 食品中の残留農薬に関する 国際的基準値の設定 - …JMPR 及び CCPR に関する勉強会 2013/ 8 / 23 1 食品中の残留農薬に関する 国際的基準値の設定

JMPR及びCCPRに関する勉強会 2013/8/23

1

食品中の残留食品中の残留農薬に農薬に関する関する国際的基国際的基準値の設定準値の設定

山田 友紀子

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 2

概要概要

農薬に関わる重要な国際会議 CCPRとJMPR

MRLとは何か Codexにおける定義MRL設定の意義

何にMRLを設定するのか(何を分析するのか)?

JMPRによる評価の概要CCPRによる検討

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 3

国際貿易機関(国際貿易機関(WTOWTO)の協定)の協定

貿易に関連して各種の協定を策定

衛生と植物防疫措置に関する協定(SPS)

人の生命と健康←食品安全

動物の生命と健康

植物の生命と健康

コーデックス委員会(Codex Alimentarius

Commission)の勧告を、食品の安全性についての唯一の参考規格として明確に認識

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 4

衛生衛生とと植物植物防疫防疫措置に関する協定措置に関する協定

WTO加盟国の食品安全に関する措置は:

科学的原則に則っていなければならない;科学的根拠なしに維持してはいけない(第2.2項)

もしCodexの規格が存在するならば、それに基づいていなければならない (第3.1項)

Codexによって確立されたリスク評価手法を使った、人へのリスクの評価に基づいていなければならない(第5.1項)

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 5

残留農薬に関する基準策定に残留農薬に関する基準策定に関わる国際機関関わる国際機関

コーデックス委員会(CAC) リスク管理機関政府代表団・オブザーバー機関

科学的に基づく加盟国への勧告

消費者の健康保護と、公正な食品貿易・取引の保証に関する他の正当な因子を考慮

Joint FAO/WHO Meeting on Pesticide

Residues (JMPR) リスク評価機関専門家が個人として参加

科学的分析とアドバイス

科学的な評価

政治・経済的な

考慮はなし!

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 6

残留農薬に関する基準策定に残留農薬に関する基準策定に関わる国際機関関わる国際機関

コーデックス委員会(CAC) リスク管理機関政府代表団・オブザーバー機関

科学的に基づく加盟国への勧告

消費者の健康保護と、公正な食品貿易・取引の保証に関する他の正当な因子を考慮

Joint FAO/WHO Meeting on Pesticide

Residues (JMPR) リスク評価機関専門家が個人として参加

科学的分析とアドバイス

科学的な評価

政治・経済的な

考慮はなし!

農薬登録機関

ではない!

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JMPR及びCCPRに関する勉強会 2013/8/23

2

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 7

OECDOECDの役割の役割

OECD Working Group on Pesticides (WGP)

目的:農薬に由来するリスクの評価及び削減に係る各国の協力支援

効率的な農薬登録の推進 ← Work share

人の健康や環境への農薬のリスクを監視・削減するためのツールの開発

下部組織(Steering Groups)1. 登録

2. リスク削減

3. 生物農薬

• 農薬残留に関するテストガイドライン

• MRL設定の方法論

• ドシエ/モノグラフ様式23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 8

MRLMRLののCodexCodexににおける定義おける定義

Maximum Residue Limits (最大残留基準) 残留農薬の最大濃度(mg/kgで表される)

食品や飼料中に合法的に存在が認められる最大濃度として、Codex委員会によって勧告

農薬使用の使用基準(GAP)に基づく MRL以下の残留農薬を含む食品から製造される食品は毒性学的に受け入れ可能であると考えられる

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 9

MRLMRL設定の意義設定の意義

Codex農薬が、使用基準(GAP)に従って使用されているかどうかの指標←食品全体に設定

その上で、食品中の農薬濃度が当該残留基準値以下であれば、その食品が安全であることを保証←暴露評価

食品衛生法厚生労働省:「安全基準」

←可食部 ←暴露評価単位はppm

MRLとEMRLの区別はない

飼料の基準値

•農水省

•国際的に合意されている方法

→畜産物基準値 23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 10

EMRLEMRLのコーデックスにおける定義のコーデックスにおける定義

Extraneous Maximum Residue Limit

(外因性最大残留基準) 作物に直接または間接的に使用した場合を除いて、環境からの汚染による(過去の農作物への使用を含む) 残留農薬や汚染物質について設定食品や飼料中に合法的に存在が認められるか、受容できると認められるとしてCodex委員会によって勧告される上記物質の最大濃度(mg/kgで表される)

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 11

何に何にMRLMRLを設定するのか?を設定するのか?(何を分析するの(何を分析するのか?)か?)

対象物質 JMPRが決定MRL用使用基準の遵守のチェックのため食品中に残留していること毒性学的重要性簡便・迅速に分析可能であること

リスク評価用経口暴露による人の健康影響の可能性毒性のある代謝物を含むように設定分析は簡便とは限らない

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 12

何に何にMRLMRLを設定するのか?を設定するのか?(何を分析するのか?)(何を分析するのか?)

対象食品と分析部位 CCPRが決定(CACが採択)食品・飼料分類の中に記載食品・飼料分類MRL適用・分析部位農薬への暴露についても記載

ほとんどの場合、食品全体(例外:しおれた部分を除く、へたを除く、等)

経口暴露評価においては、可食部

農薬は作物に使用。MRLは食品(商品)に設定。

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JMPR及びCCPRに関する勉強会 2013/8/23

3

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 13

科学的アドバイス科学的アドバイス

JJoint FAO/WHO MMeeting of PPesticide RResidues (JMPR)

正式名

Joint Meeting of the FAO Panel of Experts on Pesticide Residues in Food and the Environment

and the WHO Core Assessment Group

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 14

JMPRJMPRの歴史の歴史

1959年4月:FAOがPanel of Experts on

the Use of Pesticides in Agriculture開催 1961年10月:第1回JMPR会議 (Meeting

of WHO Expert Committee on Pesticide

Residues held jointly with the FAO

Panel of Experts on the Use of

Pesticides in Agriculture)

1963以降ー9月開催

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 15

JMPRJMPRの任務の任務

下記の物質について、毒性学的および残留試験やモニタリングデータの評価

GAPに従って農薬を使用した結果として食品・飼料中に存在する残留物

以前農薬として登録されており、現在は農薬として使用できないにもかかわらず、その化学的な性質(分解されにくい)から、環境汚染物質として食品・飼料中に存在する物質

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 16

JMPRにはどんな人が参加?JMPRにはどんな人が参加?

個人として参加(国や機関を代表してはいけない)

専門家(実際的な知識が必要)政府機関の職員が主大学教員はごく少数、元国際機関職員も

利害関係がないこと(利害関係を申告)

地域的な分布も考慮(しかしヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアが比率的に多い)

外国政府内の職員には専門家が多数

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 17

JMPRへの参加とは?JMPRへの参加とは?

データの解析と文書の作成に、毎日一日中やっても最低一か月かかる

予備会議(FAOパネルだけ)5日間本会議10日間討議しながら、合意に至る討議のたびに文書を改訂通常3ラウンドくらいは討議一般問題も討議

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 18

JMPRJMPRによる評価による評価毒性学的評価(WHOグループ)Principles and Methods for the Risk

Assessment of Chemicals in Food (EHC 240, WHO 2009)による

作物残留試験評価(FAOパネル)FAO Manual on the Submission and

Evaluation of Pesticide Residues Datafor the Estimation of MaximumResidue Levels in Food and Feed (FAO, 2009, 初版1997)による

暴露評価はEHC 240

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JMPR及びCCPRに関する勉強会 2013/8/23

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23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 19

• FAOパネルの評価の基礎

•データ提出者がどのようなデータをどのように提出するのかの指針

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 20

JMPRJMPRによる毒性(安全性)評価による毒性(安全性)評価

急性毒性短期毒性長期毒性発がん性遺伝毒性代謝

生殖毒性 多世代にわたる毒性 発達毒性 催奇性

神経毒性内分泌活性

安全係数(通常100)

Acceptable Daily Intake(一日許容摂取量)(意図的に使用される物質)または

Provisional Tolerable Daily Intake (暫定一日耐容量)(意図的に使用されない物質)

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 21

JMPRJMPRによる毒性(安全性)評価による毒性(安全性)評価

コリンエステラーゼ阻害一時経口投与による致死性母体への毒性の結果として起きる発達毒性繰り返し投与の初期に見られる影響急性神経毒性ホルモンその他生化学的変化

Acute Reference Dose (Acute RfD)(急性参照量)

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 22

JMPRJMPRによるによる作物残留評価作物残留評価

植物と家畜における代謝環境中の動態分析法農薬の登録と使用に関する情報GAPに従った作物残留試験(通常8試験以上) MRL, STMR(-P), HR(-P)

(モニタリングデータ EMRL )食品加工試験可食部における残留濃度動物への移行試験

残留物の定義

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 23

JMPRJMPRによるによる作物残留評価作物残留評価

毒性学的重要性、残留濃度、分析可能性等を考慮して、残留物の定義(何を分析するべきなのか)を決定MRL用リスク評価用(毒性のある代謝物を含む)

上記の定義に従って、作物残留試験結果から基準値を推定データが十分でない場合は推定しない。すなわち、その作物には残留が認められない

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 24

加工食品の基準値加工食品の基準値

実際の加工と同等(スケールは小さいことが多い)の加工試験ワイン、ジュース、油、ビール、パン、トマトペーストなど

原料農作物から加工食品への加工係数を計算

加工食品のSTMR‐Pを計算、摂取量推定に

残留物濃度が高くなるものは基準値を設定

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JMPR及びCCPRに関する勉強会 2013/8/23

5

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 25

動物性食品の基準値動物性食品の基準値

飼料として使用される農作物に基準値がある場合

飼料中の理論的最大残留濃度と平均的残留濃度を計算する

動物移行試験における飼料中の濃度と上記の濃度を比較し、動物性食品(肉、内臓、乳、卵など)中の残留濃度を計算する。その際、農薬の脂溶性を考慮に入れる。特に、肉の場合、肉全体を分析するのか、周りの脂肪を剥ぎ取って分析するのか?

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 26

リスク評価リスク評価

基準値の妥当性は、暴露評価によって確認

当該残留物質の平均的総経口摂取量の推定値とADIの比較

食品ごとの最大可能摂取量の推定値(全国民及び6歳以下の子供)とARfDの比較

毒性指標を超える場合は、それを明示 CCPRが検討

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 27

日本との違い日本との違い

データの要求度が高い(数や精度管理)

加工試験・可食部の分析・動物移行試験の要求

脂溶性の考慮動物性食品の基準急性毒性の考慮より詳細な摂取量推定

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 28

Codex Codex AlimentariusAlimentarius

CommissionCommission

(コーデックス(コーデックス委員会)委員会)国連食料農業機関(FAO) and 世界保健

機関(WHO)により1963に設置

Joint FAO/WHO Food Standards

Programmeを実施するため

政府間機関+国際機関(IGO & INGO)

Codex Alimentarius “Food Law” or “Food Code”を意味するラテン語

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 29

目的目的

消費者の健康の保護食品の貿易や取引の公正性の保証食品規格の標準化作業の調整

食品規格(残留基準値を含む)の国際的ハーモナイゼーションのために設置

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 30

コーデックス委員会の構造コーデックス委員会の構造

総会執行委員会一般問題部会(10)

個別食品部会 (11)

ad hoc政府間タスクフォース地域調整部会 (6)

事務局

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JMPR及びCCPRに関する勉強会 2013/8/23

6

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 31

食品の安全性に係わる分野食品の安全性に係わる分野

残留農薬残留農薬

食品添加物・汚染物質

食品衛生

食品中残留動物薬

一般原則

分析・サンプリング法

食品表示

食品輸出入検査認証システム

他に政府間特別部会も

食品安全に係る分野では、リスクアナリシスの枠組みに基づいて議論

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 32

コーデックス残留農薬部会コーデックス残留農薬部会((CCPRCCPR))

コーデックス委員会の下部組織 1966年1月に第1回(現在のホスト国:中国)

任務食品・飼料中の残留農薬基準(MRL)

JMPRによって評価するべき農薬のpriority list

残留農薬定量のためのサンプリング・分析法

残留農薬を含む食品・飼料の安全性の問題

農薬様の性質を示す環境・産業汚染物質の食品・飼料中の残留基準(EMRL)

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 33

CCPRCCPRによるによるMRLMRLの審議の審議

コーデックスの規則に従う消費者の健康保護と各国の農業・食品産業・貿易の事情を考慮

時には幾つかのリスク管理オプションを考慮

JMPRの評価に対する意見も科学的・技術的な問題の場合、JMPRや

FAO/WHOにアドバイスを求める

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 34

CCPRCCPRによるによるMRLMRLの審の審議(2)議(2)

MRLへの適合性を検査するためのサンプリング法、分析法、GLP

分析するべき食品の部位(MRLの適合部位)

MRL設定のための食品・飼料分類リスクアナリシスADIやPTDIは審議しない

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 35

CodexCodex残留農薬基準の設定手順残留農薬基準の設定手順

CCPR

JMPR

Codex

MRL/EMRL

ADI/

maximum

residue

level等

CAC

CCPR CAC

Priority list 政府だけが 提案可能

リスク管理

リスク評価

Step 4

Step 5

Step 7 Step 8 or 5/8

Comment at Step 3

Comment at Step 5

Comment at Step 6

Comment at Step 5/8 Comment

at Step 8

暴露暴露評価の必要性評価の必要性

山田友紀子

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JMPR及びCCPRに関する勉強会 2013/8/23

7

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 37

暴露評価の必要性暴露評価の必要性(1)(1)

ハザードが含まれているからといって重要なリスクがあるとは限らない

ハザードの毒性が高くても、ほとんど摂取しない食品にしか含まれていなければリスクは無視できる

ADIやARfDの比較毒性の強弱はわかるその農薬に由来するリスクの大きさはわからない

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 38

暴露評価の必要性暴露評価の必要性(2)(2)

リスクの大きさを知るためにハザードの含有濃度

そのハザードの毒性の性質と程度

そのハザードを含む食品の消費量

等を考える必要がある → 暴露評価が必須

食品のMRL設定のためのデータからは、経口暴露評価のみ可能

推定経口暴露量とADIまたはARfDとの比較により、リスクの程度を推定

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 39

JMPRJMPRによる暴露評価の限界による暴露評価の限界

国内では入手・活用できるデータが、国際レベルでは活用できないモニタリング、サーベイランス、トータルダイエットスタディー

詳細な分析値、食品摂取量加工調理の影響当該農薬の使用量、使用率

他の起源からの暴露を考慮するのも困難数学モデルのみ可すべての利用可能なデータを使用

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 40

JMPRJMPRにによるよる経口経口暴露評価暴露評価

長期 短期

期間 一生(毎日) 一日

残留濃度 平均的 最大

食品消費量 平均的 大量(97.5パーセンタイル値)

計算対象 全MRL対象食品 食品ごと

比較の対象 ADI ARfD

長期経口暴露評価: 平均的な経口暴露 短期経口暴露評価: Worst scenario

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 41

JMPRJMPRにによるよる長期長期経口経口暴露評価暴露評価にに必要なデータ必要なデータ

一人一日当たりの平均的摂取量の推定

Supervised trials median residue

(STMR): GAPの許す最大条件の下で使用した場合に、最もありそうな残留濃度(中央値)ーなぜ中央値?

可食部中の残留濃度

食品加工試験データによる加工係数

FAO Food Balance Sheetデータに基づいたCluster diets(13)(平均的値に相当)

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 42

International Estimated Daily International Estimated Daily

Intake (IEDI)Intake (IEDI)

IEDI = STMR(-Pi) x Fi

STMR-P = 加工係数を考慮したSTMR (mg/kg)

F = 食品消費量 (kg/日/人)

ADI (mg/kg-bw) x 60 (kg/人)と比較(東アジアは55 kg)

ADI(またはPTDI)を越える場合は、その事実を明記

リスク管理者に決断をゆだねる

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JMPR及びCCPRに関する勉強会 2013/8/23

8

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 43

短期短期経口暴露に関する経口暴露に関するCAC/CCPRCAC/CCPRにおける議論における議論

Composite sampleの分析結果が基準値以下でも、その中のunitには、基準値を超える濃度のものがある?

イギリス政府が、ニンジンやジャガイモなどで試験を行い、上記を証明 →急性毒性?

一緒に分析した結果 ≠ 個別に分析した結果 23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 44

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.03 0.13 0.24 0.35 0.46 0.57 0.67 0.78 0.89 1.00

Midpo int [mg /kg]

Rela

tive f

req

uen

cy

Sample size 1

Sample size 24

Sample size 12

Sample size 10

Sample size 5

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 45

JMPRJMPRによるによる短期短期経口暴露経口暴露評価評価にに必要必要なデータ(1)なデータ(1)

Composite sampleの分析結果に基づき

Highest residue (HR): GAPの許す最大条件の下で使用した場合に、最もありそうな最大濃度

Supervised trials median residue

(STMR): GAPの許す最大条件の下で使用した場合に、最もありそうな残留濃度(中央値)

可食部中の残留濃度

食品加工試験から得られた加工係数 23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 46

JMPRJMPRによるによる短期短期経口暴露経口暴露評価評価に必要なデータに必要なデータ((22))

Highest large portion (kg): 摂食者のうち、97.5 percentileの一人一日当たり摂食量(各国からの提出データ)

Body weight (kg): 上記に対応する体重)

Variability factor (v): 平均濃度で、最高濃度を除したもの。IUPACや厚生労働科学研究、農水省委託事業の結果から3前後の数値が得られている。 Compositeの分析値から、unitの最高濃度を予測するのに使用。

基準値が妥当か評価←過大な摂取量

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 47

International Estimated ShortInternational Estimated Short--

term Intake (IESTI)term Intake (IESTI) by JMPRby JMPR

Case 1 (一度に食べるのが数ユニットの場合)

(ユニットの重量が25g以下)例、イチゴ

Case 2(ユニットの重量が25g以上)例、リンゴ

Case 3 (混合された食品や、大量生産の加工食品)例、牛乳、穀類、油糧種子、豆類

ARfDと比較

ARfDを超える場合、その事実を明記

リスク管理者に決断をゆだねる

いまだ、進化中(確率論的手法も?)23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 48

International Estimated ShortInternational Estimated Short--

term Intake (IESTI)term Intake (IESTI)

Case 1 (一度に食べる量が混合物である場合)(unit weight < 25 g)

IESTI = LP x (HR or HR-P)/bw

LP: highest large portion (97.5th percentile)(kg)

HR: highest residue in composite sample of

edible portion(mg/kg)

HR-P: highest residue in processed commodity

(mg/kg)

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JMPR及びCCPRに関する勉強会 2013/8/23

9

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 49

International Estimated ShortInternational Estimated Short--

term Intake (IESTI)term Intake (IESTI)

Case 2 (unit weight > 25 g)

A: unit weight < large portion

IESTI = {U x (HR or HR-P) x v + (LP - U) x

(HR or HR-P)}/bw

B: unit weight > large portion

IESTI = LP x (HR or HR-P) x v / bw

U: unit weight in edible portion (kg)

v: variability factor (3)

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 50

International Estimated ShortInternational Estimated Short--

term Intake (IESTI)term Intake (IESTI)

Case 3 (processed commodity, bulked

or blended)

IESTI = LP x STMR-P / bw

加工せずに摂取する場合と大規模に加工した場合では、計算式が異なる

従って、長期暴露評価のように生鮮重量に換算してまとめて計算はできない。

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 51

特別な考慮が必要な特別な考慮が必要な経口暴露評価の例経口暴露評価の例

MethamidophosとAcephateなど同じ毒性メカニズム しかし、毒性の強さは異なる→毒性の強さによって換算

Methamidophos: ADI, 0.004 mg/kg bw; ARfD, 0.01 mg/kg bw Acephate: ADI, 0.03 mg/kg bw; ARfD, 0.1 mg/kg bw 長期経口暴露評価(Acephate ADIと比較) Methamidophosx7.5+Acephateを用いて算出 短期経口暴露評価(Acephate ARfDと比較)

Methamidophosx10+Acephateを用いて算出

23 Aug. 2013, Y. Yamada, Ph.D. 52

短期経口暴露評価今後は短期経口暴露評価今後は??

わが国は、各種のデータを蓄積する必要作物残留試験例数の増加(決定済み)Unit weightのデータベースの拡充各基準値の妥当性の確認から農薬ごとの暴露評価へ この場合は、摂食者のみの97.5 percentile

ではなく、各個人の各食品摂取量を活用し、Probabilistic methodを使用

Unit weightやvariability factorは活用可能