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農林水産関係試験研究推進構想(農業の部) 平成 28 年3月 農業技術センター

農林水産関係試験研究推進構想(農業の部)2016/07/21  · - 1 - 第1章 農業と研究を取り巻く状況 1 農業を取り巻く状況 (1)国内農業の状況

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農林水産関係試験研究推進構想(農業の部)

平成 28年3月

農業技術センター

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目 次

第1章 農業と研究を取り巻く状況

1 農業を取り巻く状況 ------------------------------------------------ 1

2 研究を取り巻く状況 ------------------------------------------------ 2

3 これまでの取組みの結果と課題 -------------------------------------- 3

第2章 研究開発の方向

1 基本的考え方 ------------------------------------------------------ 7

2 構想の位置づけ ------------------------------------------------------ 7

3 試験研究課題の設定方針 -------------------------------------------- 7

第3章 研究開発の推進体制

1 基本的考え方 ------------------------------------------------------ 7

2 試験研究課題の設定 ------------------------------------------------ 8

3 研究成果の評価・情報化と普及 -------------------------------------- 10

4 人材育成 ---------------------------------------------------------- 11

5 情報発信 ---------------------------------------------------------- 12

第4章 主な研究課題の取組み

1 試験研究体系 ------------------------------------------------------ 13

2 個別研究課題整理シート -------------------------------------------- 15

第5章 部所別研究課題の実施期間 ---------------------------------------- 36

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第1章 農業と研究を取り巻く状況

1 農業を取り巻く状況

(1)国内農業の状況

我が国の総合食料自給率は、供給熱量ベースでは約 40%、生産額ベースでは 70%

に近い水準で推移している。また、農業総産出額は8兆円台で推移しており、品目

別の割合は畜産が最も高くて 32%、次いで野菜の 27%、米の 21%となっている。

農地面積は、近年、緩やかな減少傾向となっているが、耕作放棄地は高齢農業者

のリタイア等に伴い増加傾向となっている。担い手は、依然として減少傾向で推移

しており、高齢化が進行している。

一方、現在、国際的な経済の自由化を目的とする多角的な経済連携協定(EPA)

に関わる農産物貿易交渉が進められており、今後、農産物の国際的な動向や需給バ

ランスの変化が価格や量へ及ぼす影響を注視する必要がある。

このような状況の中で、食料消費は単身世帯の増加など全世帯で生鮮食品の消費

が減少する一方で加工食品が増加し、食の外部化が進展するなど食料消費の動向が

変化している。食の安全・安心、地球環境問題への関心はさらに高まっており、生

産から消費にわたって科学的根拠に基づくリスク管理や、安全・安心、環境保全に

配慮した農業生産への取組みが進んでいる。

また、農産物等の輸出を促進するため、平成 32年に開催されるオリンピック・パ

ラリンピック東京大会などを積極的に活用し、日本食や日本文化を海外展開するた

めの環境整備も進められている。

(2)県内農業の状況

県内では、野菜や花きを中心に高い技術力を活かした土地生産性の高い経営が行

われている。また、温暖な気候や大消費地に近いという利点を活かして、野菜や果

実など生鮮食料を中心とした生産が行われ、市場出荷や直売、契約販売、観光もぎ

とりなど様々な方法で販売されている。

しかし、担い手の高齢化と減少が進行しており、今後も高齢農業者がリタイアす

ること等により生産の担い手、農地の担い手が不足し、県内農業の活力が低下する

ことが懸念される。一方、農業者の中には経営規模の拡大や、組織化、法人化を積

極的に進める動きや、農外からの新規参入や企業等の参入も増加してきており、新

たな担い手として期待されている。

そこで本県において、消費地に近いメリットを活かした地産地消を推進していく

ためには、食の安全・安心や環境にも配慮した生産活動はもとより、県民ニーズに

基づいた農産物の生産、販売に取り組んでいくことが求められている。

(3)県民の期待

平成 27年度の県民ニーズ調査結果では、県内農業の役割については、「安全・安

心な食料の供給」が 58%で最も多く、次いで「食料の安定供給」が 16%、「価格の

安い食料の供給」が9%となっている。また、将来の県内農業については、「今後も

様々な形で、県が農業を振興することが必要である」が 73%を占め、県内農業に対

する県民の期待は大きい。

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2 研究を取り巻く状況

(1)国の基本計画等

ア 食料・農業・農村基本計画

国は、食料・農業・農村に関する施策の改革や国民全体による取組みを進める

ための指針となる「食料・農業・農村基本計画」を平成 27年3月に策定した。

この計画では、高齢化や人口減少の進行、消費者ニーズの多様化などの情勢を踏

まえ、農業の構造改革、国内外の新たな需要の取り込み等を通じて農業や食品産

業の成長産業化を促進する「産業政策」と、農業・農村が持つ多面的機能の発揮

を進める「地域政策」を車の両輪として、施策を展開することを示している。具

体的には、6次産業化の戦略的推進のための新たな価値の創出による需要の開拓、

担い手への農地集積・集約化、経営所得安定対策や規模拡大、省力化や低コスト

化を実現するロボットやICT(情報通信技術)を活用したスマート農業等の推

進及び気候変動に対する緩和・適応策などに取り組むこととしている。

イ 農林水産研究基本計画

国は、「食料・農業・農村基本計画」と併せて「農林水産研究基本計画」を平成

27年3月に策定した。

この計画では、生産現場等が直面する課題を速やかに解決するための研究開発

を最優先課題に位置付け、普及組織、担い手等と協働した研究開発を強力に推進

するとともに、異分野の技術シーズを国産農林水産物のバリューチェーンに結び

付ける新たな産学官連携研究の仕組みを創設した。さらに地球温暖化や少子高齢

化など中長期的な視点で取り組むべき課題についても、将来の目指すべき方向を

定め、計画的かつ体系的に研究開発を展開することとしている。

(2)県総合計画等

ア かながわグランドデザイン

県では、県政運営の総合的・基本的指針として「かながわグランドデザイン基

本構想」及び「かながわグランドデザイン実施計画」を平成 24年3月に策定した

が、平成 26年度に「実施計画」の最終年度を迎えたため、第2期の「実施計画」

を平成 27年7月に策定した。

この実施計画では、平成 27~30年度の4年間に取り組む施策が示されており、

23のプロジェクトのうち、農業関連では次のプロジェクトが位置づけられている。

柱Ⅰ 健康長寿

1 未病~健康寿命を延伸し、生き生きとくらせる神奈川をめざして~

・未病を治す取組みを支える社会環境の整備

・未病を治すために重要な、食、運動、社会参加など生活習慣改善の支援

柱Ⅱ 経済のエンジン

10 農林水産~農林水産業の活性化による地産地消の推進~

・県民ニーズに応じた農林水産物の生産支援と利用促進

・新たな担い手の育成・確保の推進

柱Ⅴ まちづくり

21 自然~多様な生物を育む自然環境の保全と活用~ ・人と動物の共生

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イ かながわ農業活性化指針

県内農業は、県民への新鮮で安全・安心な食料等の供給と、農業の有する多面

的機能の恵みを提供する役割を担っている。しかしながら、担い手の減少、高齢

化や農地の減少が進んでおり、さらに、国際的な経済連携の推進や東京電力福島

第一原子力発電所の事故などにより、農業を取り巻く環境は大きく変化してきて

いる。

このような状況を受けて、県では「神奈川県都市農業推進条例」(平成 18年4

月施行)に基づく指針として、平成 24年3月に「かながわ農業活性化指針」を改

定した。この改定指針では、「いちの輝くマグネットかながわ」の実現に向け、都

市農業のメリットを最大限に活かした「強い農業かながわモデル」を構築するた

め、現在、『県民の求める「食」の提供』、『「農」の潜在力の活用』、『都市農業の

持続的な発展を支える基盤の整備』の3つの視点で基本的施策を重点的に展開し

ている。

3 これまでの取組みの結果と課題

平成 24年3月に策定した「農林水産関係試験研究推進構想(農業・畜産の部)」で

は、「県民の求める食の提供」、「「農」の潜在力の活用」及び「都市農業の持続的な発

展を支える基盤の整備」の3つの研究開発の方向と9つの研究目標を設定し、取り組

んだ。

県民の求める食の提供

(1)地産地消の新たな展開

ア 多様なニーズを踏まえた農産物を提供する調査研究

・ コンパクトネギの栽培方法の開発、品質特性の解明、消費者ニーズ調査から

販売価格を推定し、経営モデルを構築した。

・ メロン美味しさについて消費者調査と理化学特性から、メロンの美味しさ基

準を3段階に設定し、販売力向上に貢献した。

【今後の課題】

地産地消の拡大に向けた販売手法の検討など農家所得の向上に結びつく取組

みが必要である。

(2)安全・安心な農産物の提供

ア 茶園における放射性セシウムの動態解明と対策技術の開発

・ 茶樹及び茶園土壌での放射性セシウムの動態を調査し、土壌からの移行は小

さいことを明らかにした。

・剪枝による放射性セシウム低減技術を開発した。

【今後の課題】

長期間での放射性セシウムの動態に関するデータの蓄積が必要である。

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(3)環境にやさしい土壌管理技術の開発

ア 精密土壌管理技術による低コスト施肥技術の開発

・ PK成分比が小さいL型肥料の利用や局所施肥により施肥コストを削減する

環境に配慮した施肥技術を開発した。

・ 夏季の緑肥栽培は窒素溶脱による土壌汚染の低減化に有効であることが明ら

かとなり、緑肥の種類による施肥管理方法を確立した。

【今後の課題】

長期的観点からみた緑肥導入の効果を明らかにするとともに、現場に導入可

能な技術の体系化が必要である。また、環境負荷を軽減する適正施肥のため、

土壌のモニタリング調査等にも継続して取り組む必要がある。

(4)地域資源の循環と有効利用を促進する技術開発

ア 亜臨界水反応による生ごみ資源の有効活用技術の開発

・ 生ごみの亜臨界水処理物の肥効特性を明らかにし、牛ふん堆肥を添加する堆

肥化条件を明らかにした。

・ 栽培に生ごみ由来の堆肥を用いた情報を付加した農産物の消費者評価は高ま

り、リサイクル・ループの形成に活用できる可能性を示した。

イ 地域内肥料資源を適正に使用するための技術開発

・ 牛ふん堆肥中のカリ成分は化学肥料と同等の肥効を持つことを実証した。

【今後の課題】

未利用資源・家畜排泄物等を有効に活用する技術は、地域内でリサイクル・

ループの形成につながるとともに、リン酸肥料原料等への高騰対策という観点

が必要である。

「農」の潜在力の活用

(1)担い手の多様化に対応した経営手法の研究

ア 都市農業における経営の安定強化のための調査研究

・ 作物別・作型別経済性標準指標の改訂を行い、直売所調査を基にした直売価

格を掲載した。

・ 平成9年に開発した「現実くん」の作物・作型の粗収入、経営費などの基礎

データを改訂するとともに、新たに果樹、花き等の作物・作型を追加し、より

現実に近い形で経営計画が作成できるように改良した。

【今後の課題】

直売を主体とした経営、新規作物等に対応した経済性標準指標の作成及び多

様化する担い手への対応が必要である。

都市農業の持続的な発展を支える基盤の整備

(1)農産物の差別化とブランド化を支える新品種の開発と特性の解明

ア 新規性・独自性に着目したかながわ特産品の開発

・ 白首で食味のよい総太りのダイコン‘湘白’を育成し、特性を発揮する秋ま

きでの栽培体系を確立した。

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・ 梅干し用のウメ品種‘虎子姫’、‘十郎小町’を育成した。

・ 花弁に刷毛目の模様があるスイートピー品種‘スプラッシュブルー’、‘スプ

ラッシュパープル’及び‘スプラッシュレッド’を育成した。

・ 水稲の早生品種‘はるみ’、パン用小麦品種‘ゆめかおり’製麺適性に優れる

小麦品種‘さとのそら’、大麦縞萎縮病に強い六条大麦品種‘カシマゴール’

を奨励品種として採用した。

イ 品質向上と高付加価値のための技術開発 ・ ‘湘南ゴールド’の短期及び長期貯蔵技術を開発し、販売、加工原料の供給

期間を延長した。

・ 未利用資源である摘果ミカンを活用し、新たな飲料、調味料等の開発を支援

した。

・ 遺伝子解析技術を活用してナス‘サラダ紫’の品種判別、除草剤抵抗性雑草

の簡易判別手法を確立するとともに、‘湘南ポモロン’のカロテノイド生合成

機構を明らかにした。

【今後の課題】

県内農業の活性化、地産地消の推進に適した対象品目・形質の精査、マーケ

ティング戦略を含めた総合的な対応方策の構築が必要である。

(2)地産地消を推進する農産物の安定生産技術の開発

ア 新鮮で安全な農産物を安定して提供するための技術開発

・ 促成作型でのトマト‘湘南ポモロン’の栽培技術を確立した。

・ ナス‘サラダ紫’の夏秋作型での仕立て法による着果特性及び収量特性を明

らかにした。

・ 多品目少量栽培の直売向け切り花生産に適した、育苗箱と肥効調節型肥料を

用いた簡易な栽培方法を開発した。

・ ウメ新品種‘十郎小町’、‘虎子姫’及びナシ新品種‘香麗’、‘なつみず’の

受粉樹選択に役立つ交雑親和性を明らかにした。

・ ブドウ‘シャインマスカット’の果粒肥大を促進する夏季新梢管理法を開発

した。

・ ナシジョイント栽培において、窒素成分施肥量の 30%削減を実証した。また、

ジョイント樹形対応型の防除機を試作し、薬剤散布量の約 30%削減を達成した。

・ ジョイント栽培に不可欠な長尺苗の育成に、ジベレリンペースト3回処理が

有効であることを明らかにした。

・ 共同研究により、ナシ主要品種に対するジョイント栽培の適用性を検討し、

マニュアルを改訂した。

・ 主枝高を低くし、側枝を斜め上方に誘引するジョイント新樹形を開発するこ

とにより、ジョイント栽培によるウメの早期成園化と大幅な省力、農薬散布量

の低減を実現した。

・ リンゴについて、側枝を下垂させるジョイント樹形を開発し、品種ごとの適

応性を明らかにした。

・ 北相地域に適したハイブッシュ系ブルーベリー品種を選定した。

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イ 三浦半島の温暖な気候を活かした野菜生産技術の開発

・ 遊休ハウス等を利用して低コスト型(無加温)の夏秋どりパプリカ栽培法及

び低温期の未着色果の着色を促す追熟技術を確立した。

【今後の課題】

解決要望の課題が多い分野であるが民間・他県試、大学等での周辺状況の情

報収集を徹底し、取組み課題を精査し優先順位付けによる重点化が必要である。

そこで、今後はICT等を活用した栽培の高度化・省力化のための技術開発

への取組みへの重点化を目指す。

(3)病害虫の総合的管理技術(IPM)の開発

・ 病害虫の診断同定、生態の調査及び発生予察を行い、防除対策を検討、確立し

た。特産品を含む県内産農産物に対する農薬の適用拡大を行った。

・ 化学合成農薬に依存しない、園芸作物の主要病害虫に対する総合防除体系を検

討した。

・ 古紙を原料としたバイオエタノールによる低濃度エタノール消毒技術について

検討した。

【今後の課題】

安全・安心な農作物生産の基礎となる病害虫の診断同定や発生予察、低農薬栽

培技術、新規病害虫への対応技術、マイナー作物に対する農薬登録試験は継続し

て取り組む必要がある。

(4)省エネルギー生産技術の開発

ア 気象変動に対応した農作物の生育シミュレーション技術の開発

・ 温暖化に対応し光変換型生育モデルを基に春どりキャベツの生育モデルを作

成した。

イ 施設園芸における斬新な環境制御技術や再生可能エネルギー利用技術の開発

・ 暖房エネルギーの 30%削減が可能となるバラの株元加温栽培技術を確立した。

・ 暖房エネルギーの 50%削減が可能で、低温障害果の発生が少ないイチゴの高

設栽培の果実・クラウン同時加温技術を確立した。

【今後の課題】

コスト削減及びCO2排出削減につながる省エネルギー生産技術とともに、

ICT等の活用も含め県内の経営規模に適したコンパクトな統合的な環境制

御技術の開発が必要である。

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第2章 研究開発の方向

1 基本的考え方

本県農業を技術的な面から支援し、県内産農産物の利用をさらに促進して、県民ニ

ーズに応えるかながわ農業を実現するため、「神奈川や当所の強み」を活かした試験

研究に重点化する。

このため、「新鮮で安全・安心な農産物の安定供給と地産地消の推進」、「多様な担

い手の育成・確保」、「農業の有する多面的機能の発揮と循環型社会への貢献」の3つ

の研究開発の方向を定め、それぞれの方向に沿って「地産地消を推進するための技術

開発」、「農産物の生産段階における安全・安心を確保するための技術開発」、「農業経

営の高度化と安定化を促進するための技術開発」、「多様な担い手を育成・確保するた

めの技術開発」、「未利用資源を有効活用する技術開発」及び「環境に調和する農業を

推進するための技術開発」の6つの研究目標を設定した。

2 構想の位置づけ

本研究推進構想は、農業技術センターにおける試験研究の基本姿勢を示すものとし

て、基本的考え方に沿った課題解決や目標の実現に向けて試験研究業務として実施す

べき内容を明示するものである。

本研究推進構想は、社会情勢や科学技術の変化に対応するため、原則として5年ご

とに見直すものとし、本構想の取組年次は平成 28年度から 32年度とする。

3 試験研究課題の設定方針

本県農業に期待されている県民ニーズに応える地産地消を推進し、生産現場が直面

する課題へ対応するため、神奈川や当所の強みとなっている品種や技術を活かすとと

もに、緊急性・妥当性を精査し、試験研究課題を設定する。

また、民間等との共同研究や外部資金の獲得に向けては、本県の特徴を反映した試

験研究課題を設定する。

第3章 研究開発の推進体制

1 基本的考え方

(1)技術移転の加速

試験研究部門、普及指導部門、病害虫防除部門が一体となった組織の特性を活か

し、試験研究課題の設定、実施から成果の普及・フォローの各段階において各部門

の連携を強化し、技術移転を加速化する。

(2)フレキシブルな研究推進体制

必要に応じて各部門の研究勢力を結集した所内プロジェクトチームや国立研究

開発法人、大学等との共同研究体制を構築して試験研究を推進する。

(3)行政施策への支援や顕在的・潜在的ニーズへの迅速かつ効果的な対応

学会や研究会、シンポジウムなどへの積極的な参加と、国等のコーディネイト支

援事業を活用し、大学や企業、農業関係団体等との情報共有・連携を強化する。

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2 試験研究課題の設定

(1)研究ニーズへの対応

試験研究課題の設定にあたっては、関係機関等から試験研究に対する要望問題(以

下「要研究問題」という。)の収集等により、研究に対するニーズを的確に把握する。

また、農業関係団体等との意見交換の場を設定し、現地情報を収集し、潜在的ニー

ズの掘り起こしにも努める。

また、長期的な課題や情勢変化に対応するため、農林水産技術会議の課題設定部

会や所内セミナー等を活用して、分野内外の有識者の助言を研究推進に積極的に反

映する。

さらに、中長期的な視点で、研究資源・シーズを積極的に活用して実効性の高い

試験研究を展開するため、新たに「技術シーズを創出するための調査研究」(下記の

表を参照)を大課題として試験研究体系に位置づける。

【技術シーズを創出するための主な調査研究課題】

① 鮮度、日持ち等の品質に関係する代謝物質の解明

概 要 農作物の鮮度、日持ち、香りなどに関連する揮発物質や内容成

分などの二次代謝物を探索し、形質・品質との関係を解明する。

想定される効果 鮮度、日持ち、香りなどを示す客観的な指標・基準の作成

将来の展開方向 かながわ特産品の有利販売を支援する技術開発

② 化学物質によって誘導、活性化される植物の自己防衛メカニズムの解明

概 要 ジャスモン酸※1などの化学物質が、植物がもともと持っている

害虫に対する忌避性などの自己防衛反応を誘導・活性化するメカニズムを解明する。

想定される効果 殺虫剤に依存しない防除技術の開発

将来の展開方向 環境保全型農業を推進するための技術開発

③ 生物工学及び遺伝子診断技術を活用した画期的な新作目の育成及びそれに関わ

る成分育種手法の開発

概 要 胚珠培養等を活用した遠縁交雑により、画期的な新規形質を持

つ新作目の育成及びそれに伴う機能性成分や花色成分等に着目した育種選抜手法を開発する。

想定される効果 機能性に優れる野菜品種及び新規花色を有する花き品種の育成

将来の展開方向 新たなかながわ特産品の開発

④ 植物マイクロバイオーム※2に基づく土壌生物性の改善による作物の生育促進及

び病害虫防除技術の開発

概 要 土壌に生息する微生物相をPCR-DGGE法 ※3等を用いて

評価し、土壌生物性の改善及び病害虫防除に必要な基礎情報を蓄積する。

想定される効果 土壌の生物性診断技術の開発

将来の展開方向 環境保全型農業を推進するための技術開発

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⑤ 6次産業化の推進における農商工連携の経済的パフォーマンスの解明

概 要 遺伝的アルゴリズム※4を採用した経済的評価法を活用し、都市

農業における農商工連携の関係性を解明する。

想定される効果 経済的効果の高い連携関係の提示

将来の展開方向 かながわ特産品の有利販売を支援する技術開発 ※1病害虫などのストレスに対抗する防御遺伝子等を発現させるスイッチとなる植物ホルモン。 ※2植物の根の周りの土壌中に生存する微生物群全体を示し、それを把握する研究を行う。 ※3塩基配列等の部分的な違いを検出する手法で、ここでは土壌微生物の特定の遺伝子の PCR 増

幅産物を変性剤濃度勾配ゲル電気泳動したときのバンドパターンを比較することで微生物群の

変化・相違を把握するための手法として用いる。 ※4自然淘汰により最適な遺伝子が残ってきた生物の進化過程を真似て作られた計算手法。応用

範囲が広く、さまざまな問題に適応できる。

(2)役割分担の考え方

試験研究部門では、大学・国立研究開発法人・民間等の成果を活用して応用研究

につながる広域的な適用が見込まれる基礎的研究段階の課題、また、本県の生産状

況への適応性の検証が必要な品種や技術等で生産現場での実施ではリスクを伴い、

収量や品質等の詳細な分析が必要な課題及び本県が独自開発している課題に優先的

に取り組む。

一方、民間等の開発品種等、我が国の主要な気象条件での検証が進められている

品種や近県における試験データが得られる技術については、より迅速な普及を図る

ため、普及指導部門が主体となって農協、生産者団体等と連携して取り組み、より

迅速に生産現場への普及を図る。

(3)研究課題の設定手順

① 試験研究課題の設定にあたっては、年度当初に農業関係団体、市町村及び県関

係機関に対して要研究問題を照会する。

② 研究員等は要研究問題に関する情報収集や普及指導部門との情報交換等を通じ

農業技術センター

研究部門

農協・生産者団体・市町村

生産現場への普及

大学・国立研究開発法人・民間等

基礎的研究の成果

リスクの大きい品種・技術

リスクの小さい品種・技術

普及部門

・活用→応用研究

・地域適用性検証 情報共有

・現地実証等による展示

連携

県内に適した品種・技術開発

・県独自技術の開発

【研究・普及部門の役割分担】

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て現場ニーズを把握し、試験研究推進構想及び試験研究計画を踏まえて対応方針

案を作成し、必要に応じて試験研究計画案に反映させる。

③ 要研究問題への対応方針案と関連する試験研究計画案を説明し、検討・調整す

る場として研究課題検討会議を開催する。研究課題検討会議での検討結果及び研

究の進捗状況等を反映した試験研究計画案を課題設定会議で検討し、次年度の予

算編成に反映する。

④ 必要に応じて農林水産系技術連絡会議において他の県試験研究機関及び行政部

門との調整を行い、年度末の次年度予算可決後に要研究問題の対応方針と次年度

の試験研究計画を決定する。

3 研究成果の評価・情報化と普及

実施している試験研究課題については、毎年度、中間段階及び年度末に所長ヒアリ

ングを行い、その結果を次年度の試験研究計画に反映させる。また、毎年度実施する

農林水産技術会議試験研究課題設定部会及び成果評価部会(中間評価を含む)では、有

識者及び実務者から意見を聴取し、その結果を試験研究計画等に反映させるとともに、

所のホームページ上で公開する。

研究成果については、試験成績内部検討会及び試験研究成果検討部会での検討を経

た後に試験研究成績書や試験研究成果資料を作成し、普及指導部門へ研究成果を移転

するとともに、所のホームページ上での情報公開を通して生産者、消費者・県民に還

元する。

農業団体 行政機関

生産者 消費者

普及部門

事業部門

研究部門

課題検討会議

農林水産技術連絡会議

所内研究・普及推進チーム

提案機関への回答 研究計画の決定

課題設定会議

要研究問題(外部)

要研究問題(内部)提案機関との調整

予算への反映

他県試・行政機関との調整

研究実施

情報共有現場ニーズ把握・整理連携

【研究・普及部門の役割分担】

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4 人材育成

(1)研究能力の維持・向上

研究能力を維持・向上させるため、中長期的な視点から計画的に研究人材を育成

する。所内ではOJTによる研究知識・技術の習得を基本とし、経験や能力により

研究職新任者研修、新規採用研究職員研修、研究高度化研修、研究推進支援研修等

を実施する。

若手研究員に対しては、当所独自の所内応募型研究課題(先導的シーズ研究)を設

定し、研究計画の作成、実施能力の向上を図る。また、国等の階層別・課題別研修

等を積極的に活用し、資質の向上と技術の継承を図る。

プレゼンテーション力及び情報収集力の向上については、他試験研究機関との交

流、合同発表会、講演会等に積極的に参加させるとともに、自主研修や学会、シン

ポジウムへの参加を促し、研究能力の向上を図る。

所内での情報発信と共有、プレゼンテーション、研究推進力向上のためのOJT

等については、所内セミナー及び専門セミナーを随時開催し、実践力を養う。

(2)研究不正防止体制の整備

近年の我が国の科学技術の研究活動における不正行為事案の発生を受け、平成

27年1月に「農林水産省所管の研究資金に係る研究活動の不正行為への対応ガイド

ライン」が改訂された。これまでは不正行為への対応が研究者個々の自己責任に委

ねられていたことから、今後は、試験研究機関が組織として責任を持って不正行為

の防止に関わることにより、対応の強化を図ることを基本的な方針としている。

これを受けて、当所では平成 27年度に「神奈川県農業技術センター研究活動の不

正行為等への対応に関する規程」を改訂した。これにより、「研究活動の不正行為」

を明確化し、研究の各段階において当該研究に携わる職員の責任と権限を定めた。

農林水産系技術連絡会議試験研究成果検討部会

農林水産系技術連絡会議

県研究機関行政機関

中間評価農林水産技術会議

有識者・実務者助言指導 成果評価農林水産技術会議

有識者・実務者評価情報公開

普及へ移転

生産者消費者県民

試験研究成績書

試験研究成果資料

農林水産技術会議評価結果

試験研究成績発表会HP公開

試験研究課題実施

研究進行管理

所長ヒアリング内部検討会

【研究成果の評価・普及の手順】

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- 12 -

また、公正な研究活動を推進するために、コンプライアンス教育の実施や不正防止

計画の作成も明示するなど、不正行為の未然防止に関する取り組みを強化する。

5 情報発信

広報活動を強化するため、一般県民向け、生産者、関係団体等、広報対象に適した

広報媒体・活動方法を体系化し、所の情報発信力を強化する。

また、都市農業の推進を基本とする当所の試験研究活動に対しては、生産者のみな

らず県民全体からの認知向上が重要である。このため県庁公開など関係課や国等が開

催するイベントへの積極的な参加や、多様なメディアによる研究成果の広報に努める

とともに、県民向けの、分かりやすい発表会等の開催に努める。

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- 13 -

第4章 主な研究課題の取組み

1 試験研究体系

(1)全体イメージ

(2)体系図

研究開発の方向

研究目標

試験研究課題(大課題)

試験研究課題(中課題)

新鮮で安全・安心な農産物の安定供給と地産地消の推進

1 地産地消を推進するための技術開発

① かながわらしい地産地消を推進するための技術開発 重

1 新たなかながわ特産品の開発

2 消費者ニーズに応える高品質・安定生産技術の開発

② かながわ特産品の有利販売を支援するための技術開発 重

3 かながわ特産品の有利販売を支援する技術開発

2 農産物の生産段階における安全・安心を確保するための技術開発

③ 安全・安心を確保するための技術開発

4

病害虫の診断同定及び発生生態の解明に基づく予察・防除技術の

確立

5 かながわ特産品の生産に必要な農薬の実用化試験

6 安全・安心な茶を生産するための技術開発

3 農業経営の高度化と安定化を促進するための技術開発

④ かながわらしいスマート農業を推進するための技術開発 新・重

7 ICTを活用した温室内制御技術の開発及び経営モデルの構築

⑤ 果樹の超省力・多収安定生産を実現するための技術の確立 重

農産物の安定供給と地産地消の推進

多面的機能の発揮と循環型社会への貢献

多様な担い手の育成・確保

大課題

地産地消を推進する

有利販売を支援する

安全・安心を確保するスマート農業を推進する

果樹の超省力多収を実現する

技術シーズを創出する多様な担い手に

対応する担い手を確保し安定した農業経営を実現する

未利用資源を有効活用する

環境保全型農業を推進する

地球温暖化に対応する

【試験研究課題の相互関係】

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- 14 -

8

ジョイント栽培新樹形(JV-トレリス)による次世代果樹(ナシ)生産シス

テムの開発

9 ジョイント栽培を活用した果樹の安定生産技術の開発

⑥ 技術シーズを創出するための調査研究 新

多様な担い手の育成・確保

4 多様な担い手を育成・確保するための技術開発

⑦ 多様な担い手に対応するユニバーサル生産技術の開発 新・重

10 多様な担い手に対応するユニバーサル生産技術の開発

⑧ かながわ農業の担い手確保や安定した農業経営実現のための調査研究 重

11 かながわ農業の担い手を育成・確保するための調査研究

12 かながわの農業経営を安定強化するための調査研究

13 農産物大型直売施設を拠点とした医食農連携推進モデルの構築

農業の有する多面的機能の発揮と循環型社会への貢献

5 未利用資源を有効活用する技術開発

⑨ 未利用有機質資源を有効活用するための技術開発

14 地域内の未利用有機質資源の有効活用技術の開発

6 環境に調和する農業を推進するための技術開発

⑩ 環境保全型農業を推進するための技術開発

15 化学合成農薬の使用量を削減する防除技術の開発

16 環境に優しい環境保全型施肥技術の開発

⑪ 地球温暖化に対応した生産技術の開発 重

17 地球環境に優しいエネルギー利用技術の開発

18 気候変動に適応する技術開発

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2 個別研究課題整理シート

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研究開発の方向 新鮮で安全・安心な農産物の安定供給と地産地消の推進

研 究 目 標 地産地消を推進するための技術開発

大 課 題 名 かながわらしい地産地消を推進するための技術開発

試験研究期間 平成28年度~平成32年度

担 当 部 ・ 所 生産技術部、北相地区事務所、三浦半島地区事務所、足柄地区事務所

1 背景

・ 都市農業として地産地消の推進が重要であり、販売の活性化のためには、特色ある新品種の

育成・普及が求められている。

・ 多様な消費者ニーズに対応するためには、他機関で育成された新品種・系統を有効に活用す

る必要があり、本県における適応性の評価が重要である。

・ 新品種および地球温暖化、燃油高騰や生理障害等に対応する技術開発が必要である。

2 めざす姿

・ 多様化する県民ニーズや地球温暖化に対応した、かながわらしい地域特産品を開発する。

・ 地域の特徴を活かした農業経営を確立するための新品目・新品種を選定する。

・ 新品種・新系統の収益性を高めるための、高品質・安定生産技術を確立する。 3 達成目標

(1) 湘南ポモロンシリーズの改良を行う他、三浦ダイコン「中葉」の改良、青ウメ「6-1」の現

地適応性試験、耐暑性のスイートピー、枝垂れ性観賞樹の新品種を育成する。

(2) 野菜類で品種審査会、普通作で品種検定試験、花き・観賞樹で品種特性検定試験、果樹で系

統適応性試験等を行い、優良品種を選定する。

(3) トマト「湘南ポモロン」の栽培技術を開発する。

(4) 水稲の高温対策技術を開発する。

(5) ナシ「なつみず」の果芯褐変対策技術を開発する。

(6) 直売向けトルコギキョウの品種選定・栽培法の開発を行う。

(7) 本県に適した茶の直がけ被覆栽培技術を開発する。

(8) 「湘南ゴールド」のさび果等の障害果低減技術を開発する。

(9) 三浦半島におけるタマネギの新規作型の開発を行う。 4 具体的な取組み

試験研究課題 実施期間 主な取組

1 新たなかながわ特産品の開

H28~32 (1) 特産品となる新たな品種の育成

(2) 新たな作物・品種の探索による特産品の開発

2 消費者ニーズに応える高品

質・安定生産技術の開発 H28~32 (1) 野菜類の高品質・安定生産技術の開発

(2) 作物の高品質・安定生産技術の開発

(3) 落葉果樹の高品質・安定生産技術の開発

(4) 花き・観賞樹の高品質・安定生産技術の開

(5) 茶の高品質・安定生産技術の開発

(6) カンキツ類などの高品質・安定生産技術の開

(7) 三浦半島地域の特徴を活かす技術の開発

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5 実施イメージ図

地産地消を推進するための技術開発 ○ 経営安定のための高品質・安定生産技術の開発

○ 地域の特徴を活かした農業経営の確立

オリジナル品種の育成 「湘南ポモロンシリーズ」の改良・作出

三浦ダイコン「中葉」の改良

青ウメ用の早生・大玉品種

耐暑性スイートピー 枝垂れ性ヤポン(雄株)

三浦半島 多様なマーケットに対応したブランド農産物の開発 北相地域 中山間地に適した特産品の高品質安定生産技術確立 県西地域 県西地域に適した優良品種・系統・新規作物の選定

新品種・系統に対応した技術開発

湘南ポモロン・レッド、ゴールド(トマト)、湘白(ダイコン)、サラダ紫(ナス)

湘南一本(ネギ) 野菜類

湘南ゴールド(カンキツ類)

片浦イエロー(キウイフルーツ)

十郎小町、虎子姫(ウメ)

香麗、なつみず(ナシ)

スプラッシュシリーズ、リップルシリーズ(スイートピー)

ディアシリーズ(サルスベリ)

湘南おりひめ、湘南ひこぼし(アオキ) 果樹類 花き観賞樹

多様な消費者ニーズ・地球温暖化等経営環境変化への対応が必要 加工・業務用、高付加価値等、燃油高騰・難防除病害虫・生理障害

新品種開発

民間等で開発した

品種・系統の比較選抜 野菜類(コマツナ、トマト等)、作

物・普通作(水稲、麦、落花生等)、

果樹(ナシ、ブドウ、カキ、ウメ、カ

ンキツ類)、花き観賞樹(トルコギキ

ョウ、花壇苗、コトネアスター等)、

茶、地域の特性を活かした新規作物

かながわらしい地域特産品(新品種・系統)

優良品種の選定

現地実証圃等での経営的検証

現地での普及部門等による評価

当所育成品種

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研究開発の方向 新鮮で安全・安心な農産物の生産供給と地産地消の推進

研 究 目 標 地産地消を推進するための技術開発

大 課 題 名 かながわ特産品の有利販売を支援するための技術開発

試験研究期間 平成28年度~平成 32年度

担 当 部 ・ 所 生産環境部、企画経営部

1 背景

・ 平成 22 年 12 月に六次産業化・地産地消法が公布され、「6次産業化」に関する施策や、

「地産地消等」に関する施策を総合的に推進することにより、農林漁業の振興等を図ることを

目指している。

・ 本県では、農産物直売所が各地に展開し、生産者と消費者の距離を短くし、地産地消法に貢

献しているが、コールドチェーンなど流通技術の普及により県外産地の農産物も品質がよい状

態で本県にも入荷している。

・ そこで、県産農産物の有利販売を支援するため、その品質特性を明らかにし消費者の選択の

目安とするとともに、実需者の潜在ニーズを把握し農産物直売所の活性化に資する。

・ また、6次産業化の推進をマーケットインの発想から支援するため、ビジネスモデルを作成

し、さらに県産農産物を活用した新たな農産加工品を開発する。

2 めざす姿

・ 県産農産物の品質特性、実需者潜在ニーズを明らかにし、有利販売に活用できる科学的デー

タを集積する。

・ 県産農産物を活用した新たな農産加工品の開発や6次産業化ビジネスモデルを提案し、県内

の農産物直売所、6次産業化事業を活性化する。

3 達成目標

(1) 当所育成品種等の品質特性、実需者潜在ニーズを明らかにし、普及・販売時の科学的データ

を提供する。

(2) 農産物機能性成分の変動を明らかにし、機能性表示のためのデータを蓄積する。

(3) 県産農産物を活用した新規加工品を開発する。

(4) 大型直売所を核とした6次産業化ビジネスモデルを提案し、地産地消の推進に資する。

4 具体的な取組み

試験研究課題 実施期間 主な取組

1 かながわ特産品の有利販売

を支援する技術開発

H28~32

H28~32

H28~32

(1) 県産農産物のニーズ解明と商品性評価

ア 新品種等県産農産物の実需者潜在ニーズの

解明

(2) 県産農産物の機能性成分等の品質特性の解明

ア 県オリジナル品種等の品質・品質保持特

性、加工適性評価

イ 機能性成分等の変動解析

(3) かながわ特産品を活用した6次産業化への取

組を支援する技術開発

ア 県産農産物等を活用した加工品の開発

イ 6次産業化等のビジネスモデルの経営評価

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5 実施イメージ図

背 景

目 標

研究課題

(1)県産農産物のニーズ解明と商品性評価

ア 新品種等県産農産物の実需者潜在ニーズの解

(3)かながわ特産品を活用した6

次産業への取り組みを支援す

る技術開発

ア 県産農産物等を活用した加

工品の開発

イ 6次産業化等のビジネスモ

デルの経営評価

研究手法・連携体制

農業技術センター

企画経営部

経営情報担当

生産環境部

品質機能研究課

1 県産農産物等の品質特性、消費者ニーズが解明され有利販売が可能となり地産地消が推進

2 ビジネスモデルの提案、新規加工品を開発し、6次産業化が活性化

効果

六次産業化・地産地消法、産地間競争の激化、消費者ニーズの多様化

新品種 加工品 機能性 ビジネスモデル

売れる農産物 6次産業化 地産地消

1.品質特性、消費者ニーズ等

科学的データに基づく県産農産

物、加工品の有利販売支援

2.大型直売所を核とした6次産業化ビ

ジネスモデル、新規加工品の提案による

6次産業化、地産地消の活性化

(2)県産農産物の機能性成分等の品質特性の解明

ア 県オリジナル品種等の品質・品質保持特性、

加工適性評価

イ 機能性成分等の変動解析

県農業行政機関

生産技術部

普及指導部

地区事務所

衛生研究所

産業技術センター

KAST

市町村

JA

民間企業

NPO法人

大学等研究機関

マーケティング調査

品質評価

機能性評価

加工品開発 新製品開発

農家・直売所調査

栽培技術

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研究開発の方向 新鮮で安全・安心な農産物の安定供給と地産地消の推進

研 究 目 標 農産物の生産段階における安全・安心を確保するための技術開発

大 課 題 名 安全・安心を確保するための技術開発

試験研究期間 平成28年度~平成32年度

担 当 部 ・ 所 生産環境部、北相地区事務所、三浦半島地区事務所、足柄地区事務所

1 背景

・ 消費者の農産物に対する安全・安心志向、生産現場では環境に負荷の少ない農業、すなわち

総合的病害虫管理技術(IPM)の推進が望まれている。

・ 防除にかかる労力・コストを軽減する省力的かつ経済的で、的確な防除対策が求められてい

る。

・ 地域特産農作物の生産振興のために、病害虫防除体系の確立が望まれている。

・ 茶については、茶園における放射性セシウムの除染対策は確立できたものの、茶樹や茶園土

壌における放射性セシウムの長期的な動態に関する知見の蓄積が必要である。

2 めざす姿

・ 原因不明の病害虫被害の原因を解明し、難防除病害虫に対する有効な防除対策を構築する。

・ 総合的病害虫管理(IPM)の手段として、病害虫発生予察手法の改善を行う。

・ 地域特産農作物において、環境への負荷に配慮しつつ、農薬の実用化をはかる。

・ 茶樹体内及び茶園土壌の放射性セシウムの動態をモニタリングし、茶の安心を担保する。

3 達成目標

(1) 発生生態が明らかでなく、防除が困難な病害虫に対する診断同定・予察・防除対策を確立す

る。

(2) 地域特産農作物に対する農薬の適用拡大を行い、その適切な利用方法について検討する。

(3) 被爆から数年経過した茶樹体内の放射性セシウム濃度を明らかにし、土壌からの吸収量を推

定する。あわせて土壌中の放射性セシウムの動態を解明する。

4 具体的な取組み

試験研究課題 実施期間 主な取組

1 病害虫の診断同定及び発生生

態の解明に基づく予察・防除技

術の確立

H28~32 (1) 診断・同定及び防除技術の開発

ア 病害虫診断同定及び診断同定技術の開発

イ 難防除病害虫の防除技術の確立

(2) 発生予察及び発生予察技術の開発

2 かながわ特産品の生産に必要

な農薬の実用化試験

H28~32 (1) 農薬の実用化試験

ア 新農薬実用化試験

イ マイナー作物に対する農薬の適用拡大

(2) 新規除草剤・植物成長調整剤試験

3 安全・安心な茶を生産するた

めの技術開発

H28~32 (1)茶における放射性セシウムの動態モニタリング

ア 茶樹および茶園土壌の放射性セシウム濃度

の推移

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5 実施イメージ図

安全・安心を確保するための技術開発

具体的な取り組み

病害虫の診断同定および発生生態の

解明に基づく予察・防除技術の確立

かながわ特産品の生産に必要な農薬

の実用化試験

安全・安心を確保するための技術開発

病害虫診断同定・発生予

察・予察手法の改善 環境に負荷の少な

い農薬の実用化

難防除病害虫の

発生生態の解明

環境に負荷の少

ない病害虫雑草

防除法の確立

茶の安心を担保する技術開発

茶における放射性セシウムの動態のモニタリング

県内のニーズ

消費者

・農産物に対する安全・安心志向

・地産地消に対する関心

生産者

・効果的かつ必要最小限の防除

・地域特産農作物の防除対策

・農薬使用の作業リスク軽減

・担い手の高齢化等による防除の負担の軽減

・農耕地周辺住民との協調

・生産環境中の放射性物質に関する情報

・安全・安心な農産物の高付加価値化

農耕地周辺住民

・農業生産に対する理解

環境と調和した

合理的な病害虫防除

海外のニーズ

○和食に対する関心 → 日本産農産物の輸出量増加

→ 相手国の検疫基準・残留農薬基準に合致した病害虫防除

○原発事故以降、多くの国・地域が日本産農林水産物・食品の輸入

規制を強化したが、各国・地域で規制緩和・撤廃の動き

→ 国際的にも特異な事例、安全を担保するうえでも長期的

な情報の蓄積が不可欠

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研究開発の方向 新鮮で安全・安心な農産物の安定供給と地産地消の推進

研 究 目 標 農業経営の高度化と安定化を促進するための技術開発

大 課 題 名 かながわらしいスマート農業を推進するための技術開発

試験研究期間 平成28年度~平成32年度

担 当 部 ・ 所 生産技術部、企画経営部、生産環境部、三浦半島地区事務所、北相地区

事務所、足柄地区事務所

1 背景

・ 本県では消費地に近いメリットを活かした都市農業として、市場、市場契約出荷、直売等の

多様なマーケットに対応できる生産・経営モデルが求められている。

・ 高齢化の進行や生産コストの上昇から、さらに効率的な農業を行うとともに、生産性や収益

性の向上が求められている。

・ データの見える化による篤農家技術の伝承や低コスト、省力化による段階的な規模拡大が必

要である。

2 めざす姿

・ ICTを活用した効率的な農業経営や雇用による企業的な経営を確立する。

・ 環境制御により、市場、契約出荷、直売等の多様なマーケットに対応できる計画的な生産

(品種、作期拡大)を実現する。

3 達成目標

・ 収益性向上・規模拡大を可能にするICTを活用した温室内環境制御法を確立する。

*施設経営規模の拡大:施設トマトの例;20~30a→60a、収量の増大:10aあたり10t→20t

4 具体的な取組み

試験研究課題 実施期間 主な取組

1 ICTを活用した温室内制

御技術の開発及び経営モデル

の構築

H28~32 (1) トマト栽培における環境制御法の開発

ア 環境条件を変えた栽培試験及び作物情報の

取得

(2) 複数の中小規模温室に用いる効率的で低コス

トな統合環境制御システムの確立

(3) トマト栽培における環境制御システムの現地

実証、経営評価

ア 導入条件の解明

イ 経営モデルの構築

ウ 現地での実証試験及び経済性の評価

2 多様な担い手に対応するユ

ニバーサル生産技術の開発

【再掲】

H28~32 (2) ロボット等の導入による省力化・簡易化を推

進する技術開発

ア 農業機械、システム等利用による省力化技

術の開発

・農作業用アシストスーツの実証

・ジョイント仕立てに適した農業機械の開発

・農業機械等を利用した省力化技術の開発

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<研究課題>

1 トマト栽培における環境制御法の開発

2 複数の中小規模温室に用いる効率的で低コストな統合環境制御システムの確立

3 トマト栽培における環境制御システムの現地実証、経営評価

5 実施イメージ図

<背景>

<目標>

<推進体制>

かながわの施設園芸に適した新たなスマート農業の展開

農業技術センター

<所内プロジェクトチーム>

○生産技術部

野菜作物研究課

企画経営部

経営情報担当

生産環境部

土壌環境研究課

かながわスマート農業

普及推進研究会

①環境制御技術普及WG

②販売・経営モデル作成WG

連携

○ 施設トマトの平均収量 20t/10aを達成

○ 障害果(抑制栽培での裂果や促成栽培でのチャック果など)の発生を抑制し、品質を 30%

以上向上

○ 経営規模60aで、粗収益4,560万円、農業所得1,368万円を達成(従来の所得比約2倍)

○都市化の進展により、複数の中小温室による施設園芸経営

○消費地に近いメリットを活かして多様なマーケットに対応できる環境

○高齢化による篤農家技術の伝承の衰退

大学、企業等 共同研究等

二酸化炭素、湿度、温度制御がト

マトの生育・収量に及ぼす影響調

査(H28~H30)

制御センサ及び複数温室を

制御する統合環境制御シス

テムの確立(H29~32)

統合環境制御システムの導入条

件の解明等(H28~29)

統合環境制御システムの現地実

証、経済性評価(H31~32)

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研究開発の方向 新鮮で安全・安心な農産物の安定供給と地産地消の推進

研 究 目 標 農業経営の高度化と安定化を促進するための技術開発

大 課 題 名 果樹の超省力・安定多収生産を実現するための技術の確立

試験研究期間 平成28年度~平成32年度

担 当 部 ・ 所 生産技術部、企画経営部、北相地区事務所

1 背景

・ 生産者の高齢化が急速に進み、担い手の不足と生産コストの上昇から、果樹産地を維持、活

性化するための省力、コスト削減などの新たな栽培技術の開発が強く求められている。

・ 省力化に向けた樹形改造についてはニホンナシジョイント栽培の実用化が進み、さらに適用

樹種拡大研究により多くの果樹でジョイント栽培の活用が可能なことが明らかとなった。中で

もジョイント V 字トレリス樹形(以下 JV-トレリスと表記)は早期成園、省力効果が極めて

高く、栽培管理の機械化についても最適と考えられる。

2 めざす姿

・ ニホンナシでは、JV-トレリスにより省力性と安定多収生産を両立し、同時に樹形に合わせ

て汎用性が高く、価格的にも導入可能な作業機械を民間企業の先端技術を活用して開発する。

・ 人による管理作業と協調する低コスト作業支援機械の開発により、より一層の栽培管理の省

力化を図り、同時に果樹園管理における除草、防除等の危険、きつい作業を一部自動化する。

・ 規模拡大と新規参入の促進、高齢者でも活き活きと長く果樹栽培に従事できる生産環境を実

現する。

3 達成目標

(1)‘幸水’で収量3,000kg/10a、平均果実糖度12.5%、平均果実重400g程度を維持する。

(2)年間労働時間を果樹農業振興基本方針の目標値 192時間/10a(赤ナシ)を目指して削減する。

(3)汎用性の高い自動走行可能な運搬車の開発、除草、防除作業等を自動化する。

(4)ナシジョイント栽培‘幸水’の経済樹齢25年超(平棚樹形)とする。

(5)リンゴ、カキ等のジョイント栽培による省力化により長く果樹栽培に従事できる生産環境を

整備する。

4 具体的な取組み

試験研究課題 実施期間 主な取組

1 ジョイント栽培新樹形(JV-

トレリス)による次世代果樹

(ナシ)生産システムの開発

H28~32 (1) 安定生産技術の開発

(2) 労働時間のさらなる削減技術の開発

(3) 人による管理作業と協調する低コスト作業支

援機械の開発

(4) 栽培管理(除草、防除等)自動化への挑戦

(5) 次世代果樹生産システムの経営的評価

2 ジョイント栽培を活用した

果樹の安定生産技術の開発

H28~32 (1) ナシジョイント栽培の優位性検証

(2) 東日本大震災被災地農業の復興に資する研究

ア クリ‘ぽろたん’の生産安定及び環境負荷

低減技術の開発(宮城)

イ 放射性物質汚染地区におけるナシ産地再生

技術の実証研究(福島)

(3) ジョイント栽培によるカキ、リンゴ等の安定

生産技術の開発

Page 27: 農林水産関係試験研究推進構想(農業の部)2016/07/21  · - 1 - 第1章 農業と研究を取り巻く状況 1 農業を取り巻く状況 (1)国内農業の状況

- 25 -

5 実施イメージ図

ジョイント栽培適用樹種拡大プロジェクト(農食事業:平成21~25年)

平棚樹形ナシ、モモ、スモモ

下垂樹形リンゴ、

JV-トレリス樹形カキ、ウメ

最もメリットの多い樹形は!

早期成園(期間半減)、省力(せん定時間半減)

軽労化(高所作業なし)、農薬散布量30%減等の効果が得られる

JV-トレリス樹形

プロジェクト化!

ニホンナシについてもJV-トレリス樹形を適用し、超省力・低コストのナシ栽培 を実現しよう!

棚が無くなり、樹形が単純になればコンパクトで、コストも抑えた

自動化機械の開発が実現できる!+

カキ

ウメ

民間・大学のロボット開発に関する先端技術

(さがみロボット産業特区)

次世代果樹生産システムの構築(安定生産・超省力 + 作業支援機械・自動化機械)

栽培研究グループ 機械研究グループ

①安定生産技術の開発②労働時間のさらなる削減技術の開発③自動走行車を活用した栽培管理省力化技術の開発④次世代果樹生産システムの経営的評価

①樹体認識による自動走行作業台車の開発②除草、防除作業自動化技術の開発③果実等の自動認識装置の開発④自動収穫ロボット試作機の開発協調

生産現場への効果

ジョイント栽培を活用した果樹の安定生産技術の開発

①ナシジョイント栽培の優位性検証②東日本大震災被災地農業の復興に資する研究③ジョイント栽培によるカキ、リンゴ等の安定生産技術の開発

①単純樹形と栽培標準化による果樹生産技術の簡易化②汎用性の高い機械開発により栽培管理の機械化促進③機械化と作業効率の向上による年間労働時間の半減④規模拡大と新規参入の促進、高齢者でも活き活きと長く果樹栽培に従事⑤ロボットと共生する社会の実現

まだまだ ガンバルぞ~!

・・・そうね頑張りましょ ♡!

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研究開発の方向 多様な担い手の育成・確保

研 究 目 標 多様な担い手を育成・確保するための技術開発

大 課 題 名 多様な担い手に対応するユニバーサル生産技術の開発

試験研究期間 平成28年度~平成 32年度

担 当 部 ・ 所 生産技術部、北相地区事務所、三浦半島地区事務所、足柄地区事務所

1 背景

・ 2010 年世界農林業センサスによると農業就業人口の年代別の構成のうち 65歳以上が占める

割合は56.3%となっており、高齢者が半数以上を占めている。

・ 農業就業人口は減少傾向にあり、2010 年までの 10 年間で約 46%が減少しており、特に女性

及び30歳未満の若い世代の減少が著しい。

・ 経営規模については、担い手の少ない農家が縮小したり、離農したりする一方、意欲のある

農家は拡大しており、二極化が進展している。

・ 以上のことから、経営規模に応じた多様な世代、特に高齢者、女性、農業後継者が農業に参

画しやすい生産技術、経営モデルの確立が必要である。

2 めざす姿

・ ユニバーサル型農業機械や省力的栽培体系の導入により高齢・女性農業者を支援する。

・ 中小規模経営体における低コスト・軽労化農業機械の導入による省力化を推進する。

・ ロボット等の導入による省力化・簡易化を促進する。

3 達成目標

(1) 経営規模が比較的小さい経営体でも導入可能な低コスト・省力的作業体系を構築する。

(2) 大規模経営体における効率的作業体系を構築する。

(3) 高齢者や女性でも使いやすい農業機械の改良及び利用技術を開発する。

(4) 長時間労働が不要な省力的栽培体系を構築する。

4 具体的な取り組み

試験研究課題 実施期間 主な取組

1 多様な担い手に対応するユ

ニバーサル生産技術の開発

H28~32

(1) 経営規模に即した農作業の軽労化・機械化を

推進する技術開発

ア 地域の農作業体系に合致した効率的作業体

系の構築

(2) 多様な担い手に対応する営農環境の整備

ア 農作物の省力栽培技術の開発

(3) ロボット等の導入による省力化・簡易化を推

進する技術開発

ア 農業機械、システム等利用による省力化技

術の開発

・農作業用アシストスーツ等農業機械を利用

した省力化技術の開発

・果樹ジョイント仕立てに適した農業機械の

開発

・施設システム利用による省力・高収益技術

の開発

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- 27 -

5 実施イメージ図

担い手の確保

農業経営の安定

地産地消の維持・推進

農業経営体 担い手の

高齢化

就農人口の

減少

規模拡大 新規就農

アシストスーツの利用

多様な担い手に適したユニバーサル生産技術 若い担い手・女性に適した省力・簡易な技術

雇用を活用した効率的な大規模営農技術

農作物の省力栽培技術の開発

カンキツ等の低樹高化栽培技術の開発

雇用を活かす作業技術体系の構築

省力栽培技術

低樹高化栽培

作業ロボット利用技術

Page 30: 農林水産関係試験研究推進構想(農業の部)2016/07/21  · - 1 - 第1章 農業と研究を取り巻く状況 1 農業を取り巻く状況 (1)国内農業の状況

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研究開発の方向 多様な担い手の育成・確保

研 究 目 標 多様な担い手を育成・確保するための技術開発

大 課 題 名 かながわ農業の担い手確保や安定した農業経営実現のための調査研究

試験研究期間 平成28年度~平成32年度

担 当 部 ・ 所 企画経営部

1 背景

・ 2010 年世界農林業センサスでは、販売農家の農業就農人口の平均年齢は 64.4 歳と前回より

3.4 歳上昇し高齢化が進んでいる。スムーズな経営継承に向けた後継者の就農支援が求められ

る。

・ 農業の担い手は新規参入、定年帰農、企業参入の他、農作業受委託など様々あるが、地域に

定着する要件と経営を軌道に乗せるための関係機関の支援方策は明らかとなっていない。

・ 本県の農業経営は地域により多様性に富み、販売方法も多様で、新技術や新作物導入に際し

ては、経済性の評価と共に販路別の経営モデルの検討が必要である。

・ 地産地消の推進拠点として設置された大型直売所は、健康への関心が高い消費者が利用して

いることが判明している。ヘルスケアや食育、農育をコンセプトとした情報発信は、魅力的な

直売所の作りと顧客の確保に有効と考えられ、その具体的な情報提供方法が求められている。

2 めざす姿

・ 地域の農業条件を踏まえた農業の担い手の定着要件の解明と支援策を提示する。

・ かながわ農業の経営安定化のための経済性を評価し、経営モデルおよび指標の作成を行う。

・ 直売所の活性化に貢献する食育、ヘルスケアに関する効果的な情報提供の具体策を提示する。

3 達成目標

(1) 地域別の農業の担い手構造変化の把握と将来方向を解明する。

(2) 地域の農業条件を踏まえ、多様な担い手の経営成立要件を解明する。

(3) 新技術等の経営的評価と経営モデルの策定及び作物別・作型別経済性標準指標を改訂する。

(4) 直売所活性化に活用でき、消費者のニーズを取り入れた食育、ヘルスケアに関する情報提供

の方法をとりまとめた食育マニュアル※を作成し、医食農連携推進モデルを構築する。

4 具体的な取組み

試験研究課題 実施期間 主な取組

1 かながわ農業の担い手を育

成・確保するための調査研究

H28~31

(1) 農業の担い手の構造変化と将来方向の分析

(2) 地域の農業条件を踏まえた担い手の成立要

件の解明

2 かながわの農業経営を安定

強化するための調査研究

H28~32 (1) 新技術等の経営的評価

(2) 作物別・作型別経済性標準指標の策定

(3) 地域農業の経営モデルの作成

3 農産物大型直売所を拠点と

した医食農連携推進モデルの

構築

H28〜32 (1) 直売所での食育・ヘルスケア推進を目的と

した消費者ニーズの収集と活用策の検討

(2) 県産農産物と食生活への理解を深める食育

マニュアル※の作成と効果測定 ※食育マニュアルでは、直売所が取り組みやすく顧客の定着や確保につながるよう、食育や地産地消、ヘルスケアに関す

るイベントや講習会、広報媒体(レシピ、広報誌等)の情報発信の具体的な方法と、効果的な組合せをとりまとめる。

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5 実施イメージ図

1 かながわ農業の将来予測に基づく、各地域の農業のあり方を提案

〔担い手・経営スタイル・水田地域・畑作地域・中山間地域・・・〕

2 多様な農業経営に活用できる経済性指標や経営モデルの策定

3 県民の健康増進と直売所活性化に活用できる食育マニュアルの作成

目 標

研究課題

・農業センサス分析

・聞き取り調査

・アンケート調査

・経済性評価

・実証試験

研究手法・連携体制

農業技術センター 県機関

・農業振興課

・担い手支援課

・農業アカデミー

・普及指導部

・地区事務所

・畜産技術センター

関係機関

・市町村

・JA

その他

・大学

・企業

・NPO法人等

相互連携によるデータ収集と結果のフィードバック、施策への提言、経営改善への活用

1 県農業の多様性を踏まえた、地域別の担い手の確保対策の提示(事業・支援連携体制)

2 経営類型に応じた経営開始、新部門導入の経済効果資料の提示

3 食育マニュアルによる県民の健康への貢献と地産地消の推進

効果

背 景

○ かながわ農業の担い手を育成・確保するための調査研究

○ かながわの農業経営を安定強化するための調査研究

○ 農産物大型直売所を拠点とした医食農連携推進モデルの構築

農業経営体の減少と高齢化 多様な農業経営と販売形態 新技術、新作物の開発

多様な担い手・確保対策

法人化 農作業 受委託

定年帰農 新規参入 新規就農

地産地消の推進・発展

経営評価・県民への貢献・地域農業活性化効果

担い手の構造

変化把握 新技術の経営

評価

経営モデル

の作成

食育マニュ

アルの作成 地域別担い

手支援策 経済性指標の

改訂

担い手の確保・育成と農業経営の安定、農業活性化

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研究開発の方向 農林の有する多面的機能の発揮と循環型社会への貢献

研 究 目 標 未利用資源を有効活用する技術開発

大 課 題 名 未利用有機質資源を有効活用するための技術開発

試験研究期間 平成28年度~平成32年度

担 当 部 ・ 所 生産環境部

1 背景

・ 環境保全型農業の推進のため、施用する有機物の肥料成分を考慮した適切な有機物施用が求

められているが、実際には有機物由来の肥料成分は適切に評価されておらず、土壌中のカリや

リン酸といった土壌中の肥料成分が過剰に蓄積している圃場が見受けられる。

・ 未利用有機質資源の農業有効利用による資源循環型社会への貢献が求められているが、堆肥

の施用は受給の地域的な偏りや労力不足等により、農耕地への有機物施用量は減少傾向にある。

2 めざす姿

・ 施用する有機質資材中の肥料成分を適切に評価することにより、有機物施用の効果的な利用

を図る。

・ 堆肥の省力的で効果的な施用方法を確立し、土壌中への適切な有機物補給を図る。

・ 地域内未利用有機質資源の有効活用により、循環型社会へ貢献する。

3 達成目標

(1) 有機物由来の肥料成分の評価法を開発し、作物別施肥基準に各種有機質資材施用時の肥料効

果と有効な施用方法について記載する。また、その成果を土壌診断プログラム・施肥設計プロ

グラムへ反映する。

(2) 有機物と化学肥料等を混合・成型した混合堆肥複合肥料の適切な施肥法を確立する。

(3) 堆肥中の肥料成分よりも土壌物理性改善効果を期待する堆肥(カット野菜残渣等を加工した

繊維質堆肥)等、新たな未利用有機質資源の有効利用法を開発する。

4 具体的な取組み

試験研究課題 実施期間 主な取組

1 地域内の未利用有機物資源

の有効活用技術の開発

H28~32 (1) 有機物由来肥料成分の評価法の開発

ア 有機物由来窒素成分の評価法の開発と実証

イ 有機物由来リン酸成分の評価法の開発と実

ウ 有機物由来肥料成分の総合的な評価と効果

的利用方法の開発と実証

(2) 堆肥等有機質資源の有効活用技術の開発

ア 混合堆肥複合肥料の開発と有効利用法の

開発

イ 土壌物理性改善効果を期待する堆肥の開発

と有効利用法の開発

ウ 未利用有機物資源の有効活用技術の開発

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5 実施イメージ図

<期待される効果>

<背景と問題点>

環境保全型農業の推進

= 有機物の積極的な利用

有機物中の肥料成分や有効化率がさまざま

<適切な評価がなされないままの施用>

土壌診断の結果、土壌にリン酸・カリが集積

<目標>

未利用資源を有効活用する技術開発

<研究課題>

・有機物由来肥料成分の評価法の開発

・堆肥等有機質資源の有効活用技術の開発

・有機物(堆肥)生産の

時期的、地域的偏り

・散布労力の不足

<有機物施用量の減少傾向>

土壌の理化学性の悪化

堆肥由来肥料成分

を考慮した適切な

施肥

混合堆肥複合肥料の利用

堆肥と肥料を同時施用

・堆肥の散布労力の低減

・有機物と同時施用するこ

とによる肥料成分の肥効

率の向上

・地域内資源の有効

利用

・土壌中の養分の過

剰蓄積防止

土壌物理性改善効

果を期待する堆肥

等の開発と有効利

用法の開発

循環型社会へ

の貢献

環境に配慮した適切な有機物施用が行われる

適切な量の有機物が土壌に供給される

安定した農産物生産の確保

土壌の保全

資源循環型社会への貢献

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研究開発の方向 農林の有する多面的機能の発揮と循環型社会への貢献

研 究 目 標 環境に調和する農業を推進するための技術開発

大 課 題 名 環境保全型農業を推進するための技術開発

試験研究期間 平成28年度~平成32年度

担 当 部 ・ 所 生産環境部、三浦半島地区事務所

1 背景

・ 環境に配慮した環境保全型農業の推進のため、化学合成農薬の使用量を削減した防除技術の

確立や、有機物を適切に利用した環境にやさしい環境保全型施肥技術の確立が求められている。

2 めざす姿

・ 化学合成農薬や化学肥料の使用量の削減を可能とする技術を確立する。

・ 環境に配慮した適切な土壌養分状態の維持を可能とする施肥技術を確立する。

・ これらにより、環境と調和した環境保全型農業の推進を図る。

3 達成目標

(1) 天敵利用や物理的防除により、化学合成農薬を削減した総合防除技術を確立する。

(2) 県内農耕地土壌の定点調査と県内で実施された土壌診断結果から、県内土壌の理化学性の実

態を明らかにする。

(3) 普及指導員、農協営農指導員や先進的農家が現場でできる簡易な土壌診断や施肥診断技術の

開発、資材や施肥法の改善及び緑肥の有効活用技術の開発等により、化学肥料減肥及び適正施

肥の推進を図る。

4 具体的な取組み

試験研究課題 実施期間 主な取組

1 化学合成農薬の使用量を削

減する防除技術の開発

H28~32

(1) 園芸作物の主要病害虫に対する総合防除体系

の確立

(2) 難防除微小害虫行動抑制技術体系の確立

(3) 三浦半島における難防除病害虫に対する総合

的病害虫防除管理(IPM)技術の開発

2 環境に優しい環境保全型施

肥技術の開発

H28~32

(1)適正施肥のための土壌環境モニタリング

(2)簡易土壌診断・施肥診断技術の開発

(3) 資材や施肥法等の改善による省力・減肥技術

の開発

(4) 緑肥の有効活用技術の開発

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5 実施イメージ図

【背景】

・環境と調和した農業の推進

・環境保全型農業による安全・安心な食料生産

【目標】 環境に調和する農業を推進するための技術開発

・化学合成農薬や化学肥料の使用量の削減

・有機物の施用と環境に配慮した適切な土壌養分状態の維持

【期待される効果】

<肥料や農薬等の資材の適正使用>

・環境に配慮した環境保全型農業の推進

・無駄のない肥料や農薬の使用によるコスト削減

<化学合成農薬の使用量を削

減する防除技術の開発>

(1)園芸作物の主要病害虫に

対する総合防除体系の確立

(2)難防除微小害虫行動抑制

技術体系の確立

(3)三浦半島における難防除

病害虫に対する IPM技術の

開発

<環境に優しい環境保全型施肥

技術の開発>

(1)適正施肥のための土壌環境

モニタリング

(2)簡易土壌診断・施肥診断技術

の開発

(3)資材や施肥法等の改善によ

る省力・減肥技術の確立

(4)緑肥の有効活用技術の開発

大課題:

未利用有機

質資源を有

効活用する

ための技術

開発

環境保全型農業の推進 環境に配慮した持続的農業生産

安全安心な食料生産

研究課題

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研究開発の方向 農林の有する多面的機能の発揮と循環型社会への貢献

研 究 目 標 環境に調和する農業を推進するための技術開発

大 課 題 名 地球温暖化に対応した生産技術の開発

試験研究期間 平成 28年度~平成 32年度

担 当 部 ・ 所 企画経営部、生産技術部、北相地区事務所、三浦半島地区事務所、足柄

地区事務所

1 背景

・ 近年、地球温暖化による平均気温の上昇や記録的な猛暑等の異常気象が増加している。

・ ゲリラ豪雨や竜巻等の極端な気象も増加しており、地球温暖化との因果関係が疑われている。

・ 農業生産においても地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出を抑制する技術の導入が求め

られている。

・ 今後、地球温暖化が本県に及ぼす影響についての予測とその適応技術が求められている。

2 めざす姿

・ 再生可能エネルギーや効率的なエネルギー利用技術を導入し、二酸化炭素の排出を抑制する。

・ 地球温暖化等気候変動の状況把握や主要農作物に及ぼす影響を予測し、適応技術に活用する。

・ 地球温暖化等気候変動に適応した栽培技術、作型、品目を導入し、本県農業の持続的発展を

推進する。

3 達成目標

(1) 本県の農業生産に適合した再生可能エネルギーや局所加温等効率的なエネルギー利用技術を

開発する。

(2) 本県の気象状況の傾向と気象災害等との関係性の解明や気候変動が本県の主要農産物に及ぼ

す影響を予測する技術を開発する。

(3) 地球温暖化等気候変動に適応した栽培技術を開発する。また、新たな作型、品目を探索する。

4 具体的な取組み

試験研究課題 実施期間 主な取組

1 地球環境に優しいエネルギ

ー利用技術の開発

H28~32 (1) 再生可能エネルギーの利用技術の開発

ア 地下水熱、太陽光等利用技術の開発

(2) 局所加温等効率的なエネルギー利用技術の開

ア 局所温度管理技術の開発

2 気候変動に適応する技術開

H28~32 (1) 県内の気象状況の傾向と気象災害等との関係

性の解明

(2) 気候変動に対応する農作物シミュレーション

技術の開発

ア 地球温暖化に対応した農作物の生育モデル

開発

イ 生育モデルによる影響評価

(3) 気候変動に対応する適応技術の開発

ア 地球温暖化に適応した栽培技術、作型の開

3 新たなかながわ特産品の開

発【再掲】

(1) 特産品となる新たな品種の育成

(2) 新たな作目・品種の探索による特産品の開発

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5 実施イメージ図

・気象状況の傾向と気象災害等との関係性の解明

地域的、期間的傾向の把握等

・農作物シミュレーション技術の開発

生育モデル開発、影響評価

・気候変動に適応した技術開発

病害虫生態変化の予測

障害を回避する技術開発

ブナ林再生に及ぼすオゾンガスの影響

温暖化に適応した品種開発と品目の探索

地球温暖化の進行

気温の上昇

気象災害の増加(ゲリラ豪雨・干ばつ)etc

再生可能エネルギーの利用

局所加温等効率的エネルギー利用 品質の低下

適応作型・品種の変化

病害虫発生パターンの変化

クラウン(イチゴの株元)

イチゴの局所冷却・加温

侵入害虫のモニタリング・発生予察

高温に強い

イネ品種の選定

果実の障害

ミスト・スプリンクラー

生産の不安定化

地球に優しい

エネルギー利用

新たなかながわ

特産品の開発

経営の安定化

産地の維持・発展

地球温暖化抑制への貢献

生産・作柄の安定化

新たな特産品の開発

地産地消の推進

CO2の排出抑制

温度を下げる技術

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第5章 部所別研究課題の実施期間

【企画経営部】

研究開発の方向

年次計画 研究目標

研究課題(大課題)

研究課題(中課題) 研究課題(小課題) 28 29 30 31 32

新鮮で安全・安心な農産物の安定供給と地産地消の推進

1 地産地消を推進するための技術開発

②かながわの特産品の有利販売を支援するための技術開発

かながわ特産品の有利販売を支

援する技術開発

県産農産物のニーズ解明と商品

性評価

かながわ特産品を活用した6次

産業化への取組を支援する技術

開発

3 農業経営の高度化と安定化を促進するための技術開発

④かながわらしいスマート農業を推進するための技術開発

ICTを活用した温室内制御技

術の開発及び経営モデルの構築

トマト栽培における環境制御法

の開発

トマト栽培における環境制御シ

ステムの現地実証、経営評価

⑤果樹の超省力・多収安定生産を実現するための技術の確立

ジョイント栽培新樹形(JV-トレ

リス)による次世代果樹(ナシ)生

産システムの開発

次世代果樹生産システムの経営

的評価

多様な担い手の育成・確保

4 多様な担い手を育成・確保するための技術開発

⑧かながわ農業の担い手確保や安定した農業経営実現のための調査

研究

かながわ農業の担い手を育成・

確保するための調査研究

農業の担い手の構造変化と将来

方向の分析

地域の農業条件を踏まえた担い

手の成立要件の解明

かながわの農業経営を安定強化

するための調査研究 新技術等の経営的評価

経済性標準指標の策定

地域農業の経営モデルの作成

農産物大型直売施設を拠点とし

た医食農連携推進モデルの構築

直売所での食育・ヘルスケア推進

を目的とした消費者ニーズの収

集と活用策の検討

県産農産物と食生活への理解を

深める食育マニュアルの作成と

効果測定

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- 37 -

【生産技術部】

研究開発の方向

年次計画 研究目標

研究課題(大課題)

研究課題(中課題) 研究課題(小課題) 28 29 30 31 32

新鮮で安全・安心な農産物の安定供給と地産地消の推進

1 地産地消を推進するための技術開発

①かながわらしい地産地消を推進するための技術開発

新たなかながわ特産品の開発 特産品となる新たな品種の育成

新たな作物・品種の検索による特

産品の開発

消費者ニーズに応える高品質・安

定生産技術の開発

野菜類の高品質・安定生産技術の

開発

作物の高品質・安定生産技術の開

落葉果樹の高品質・安定生産技術

の開発

花き・観賞樹の高品質・安定生産

技術の開発

3 農業経営の高度化と安定化を促進するための技術開発

④かながわらしいスマート農業を推進するための技術開発

ICTを活用した温室内制御技

術の開発及び経営モデルの構築

トマト栽培における環境制御法

の開発

複数の中小規模温室に用いる効率的で低コストな統合環境制御システムの確立

トマト栽培のおける環境制御シ

ステムの現地実証、経営評価

多様な担い手に対応するユニバーサル生産技術の開発【再掲】

ロボット等の導入による省力化・簡易化を推進する技術開発

⑤果樹の超省力・多収安定生産を実現するための技術の確立

ジョイント栽培新樹形(JV-トレ

リス)による次世代果樹(ナシ)生

産システムの開発

安定生産技術の開発

労働時間のさらなる削減技術の

開発

人による管理作業と協調する低

コスト作業支援機械の開発

栽培管理(除草、防除等)自動化へ

の挑戦

ジョイント栽培を活用した果樹

の安定生産技術の開発

ナシジョイント栽培の優位性検証

東日本大震災被災地農業の復興に資する研究

ジョイント栽培によるカキ、リンゴ等の安定生産技術の開発

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- 38 -

研究開発の方向

年次計画 研究目標

研究課題(大課題)

研究課題(中課題) 研究課題(小課題) 28 29 30 31 32

多様な担い手の育成・確保

4 多様な担い手を育成・確保するための技術開発

⑦多様な担い手に対応するユニバーサル生産技術の開発

多様な担い手に対応するユニバ

ーサル生産技術の開発

多様な担い手に対応する営農環

境の確立

ロボット等の導入による省力

化・簡易化を推進する技術開発

農業の有する多面的機能の発揮と循環型社会への貢献

6 環境に調和する農業を推進するための技術開発

⑪地球温暖化に対応した生産技術の開発

地球環境に優しいエネルギー利

用技術の開発

再生可能エネルギーの利用技術

の開発

局所加温等効率的なエネルギー

利用技術の開発

気候変動に適応する技術開発 気候変動に対する適応技術の開

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- 39 -

【生産環境部】

研究開発の方向

年次計画 研究目標

研究課題(大課題)

研究課題(中課題) 研究課題(小課題) 28 29 30 31 32

新鮮で安全・安心な農産物の安定供給と地産地消の推進

1 地産地消を推進するための技術開発

②かながわの特産品の有利販売を支援するための技術開発

かながわ特産品の有利販売を支

援する技術開発

県産農産物のニーズ解明と商品性評価

県産農産物の機能性成分等の品質特性の解明

かながわ特産品を活用した6次産業化への取組を支援する技術開発

2 農産物の生産段階における安全・安心を確保するための技術開発

③安全・安心を確保するための技術開発

病害虫の診断同定及び発生生態の解明に基づく予察・防除技術の確立

診断・同定及び防除技術の開発

発生予察及び発生予察技術の開発

かながわ特産品の生産に必要な

農薬の実用化試験

農薬の実用化試験

新規除草剤・植物成長調整剤試験

3 農業経営の高度化と安定化を促進するための技術開発

④かながわらしいスマート農業を推進するための技術開発

ICTを活用した温室内制御技術の開発及び経営モデルの構築

トマト栽培における環境制御法の開発

農業の有する多面的機能の発揮と循環型社会への貢献

5 未利用資源を有効活用する技術開発

⑨未利用有機質資源を有効活用するための技術開発

地域内の未利用有機質資源の有

効活用技術の開発

有機物由来肥料成分の評価法の確立

堆肥等有機質資源の有効活用技術の開発

6 環境に調和する農業を推進するための技術開発

⑩環境保全型農業を推進するための技術開発

化学合成農薬の使用量を削減す

る防除技術の開発

園芸作物の主要病害虫に対する総合防除体系の確立

難防除微小害虫行動抑制技術体系の確立

環境に優しい環境保全型施肥技

術の開発

適正施肥のための土壌環境モニタリング

簡易土壌診断・施肥診断技術の開発

資材や施肥法等の改善による省力・減肥技術の開発

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【北相地区事務所】

研究開発の方向

年次計画 研究目標

研究課題(大課題)

研究課題(中課題) 研究課題(小課題) 28 29 30 31 32

新鮮で安全・安心な農産物の安定供給と地産地消の推進

1 地産地消を推進するための技術開発

①かながわらしい地産地消を推進するための技術開発

新たなかながわ特産品の開発 新たな作物・品種の検索による特

産品の開発

消費者ニーズに応える高品質・安

定生産技術の開発

野菜類の高品質・安定生産技術の

開発

茶の高品質・安定生産技術の開発

2 農産物の生産段階における安全・安心を確保するための技術開発

③安全・安心を確保するための技術開発

かながわ特産品の生産に必要な

農薬の実用化試験

農薬の実用化試験

新規除草剤・植物成長調整剤試験

安全・安心な茶を生産するための

技術開発

茶における放射性セシウムの動

態モニタリング

3 農業経営の高度化と安定化を促進するための技術開発

④かながわらしいスマート農業を推進するための技術開発

多様な担い手に対応するユニバ

ーサル生産技術の開発【再掲】

ロボット等の導入による省力

化・簡易化を推進する技術開発

⑤果樹の超省力・多収安定生産を実現するための技術の確立

ジョイント栽培を活用した果樹

の安定生産技術の開発

ジョイント栽培によるカキ、リン

ゴ等の安定生産技術の開発

多様な担い手の育成・確保

4 多様な担い手を育成・確保するための技術開発

⑦多様な担い手に対応するユニバーサル生産技術の開発

多様な担い手に対応するユニバ

ーサル生産技術の開発

経営規模に即した農作業の軽労

化・機械化を推進する技術開発

多様な担い手に対応する営農環

境の確立

農業の有する多面的機能の発揮と循環型社会への貢献

6 環境に調和する農業を推進するための技術開発

⑪地球温暖化に対応した生産技術の開発

気候変動に適応する技術開発 気候変動に対する適応技術の開

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【三浦半島地区事務所】

研究開発の方向

年次計画 研究目標

研究課題(大課題)

研究課題(中課題) 研究課題(小課題) 28 29 30 31 32

新鮮で安全・安心な農産物の安定供給と地産地消の推進

1 地産地消を推進するための技術開発

①かながわらしい地産地消を推進するための技術開発

新たなかながわ特産品の開発 特産品となる新たな品種の育成 新たな作物・品種の検索による特産品の開発

消費者ニーズに応える高品質・安定生産技術の開発

三浦半島地域の特徴を活かす技術の開発

2 農産物の生産段階における安全・安心を確保するための技術開発

③安全・安心を確保するための技術開発

かながわ特産品の生産に必要な

農薬の実用化試験

農薬の実用化試験

新規除草剤・植物成長調整剤試験

3 農業経営の高度化と安定化を促進するための技術開発

④かながわらしいスマート農業を推進するための技術開発

多様な担い手に対応するユニバーサル生産技術の開発【再掲】

ロボット等の導入による省力化・簡易化を推進する技術開発

多様な担い手の育成・確保

4 多様な担い手を育成・確保するための技術開発

⑦多様な担い手に対応するユニバーサル生産技術の開発

多様な担い手に対応するユニバ

ーサル生産技術の開発

経営規模に即した農作業の軽労化・機械化を推進する技術開発

多様な担い手に対応する営農環境の確立

ロボット等の導入による省力化・簡易化を推進する技術開発

農業の有する多面的機能の発揮と循環型社会への貢献

6 環境に調和する農業を推進するための技術開発

⑩環境保全型農業を推進するための技術開発

化学合成農薬の使用量を削減す

る防除技術の開発

三浦半島における難防除病害虫に対する総合的病害虫防除管理(IPM)技術の開発

環境に優しい環境保全型施肥技

術の開発

資材や施肥法等の改善による省力・減肥技術の開発

緑肥の有効活用技術の開発

⑪地球温暖化に対応した生産技術の開発

気候変動に適応する技術開発 気候変動に対応する農作物シミュレーション技術の開発

気候変動に対する適応技術の開発

Page 44: 農林水産関係試験研究推進構想(農業の部)2016/07/21  · - 1 - 第1章 農業と研究を取り巻く状況 1 農業を取り巻く状況 (1)国内農業の状況

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【足柄地区事務所】

研究開発の方向

年次計画 研究目標

研究課題(大課題)

研究課題(中課題) 研究課題(小課題) 28 29 30 31 32

新鮮で安全・安心な農産物の安定供給と地産地消の推進

1 地産地消を推進するための技術開発

①かながわらしい地産地消を推進するための技術開発

新たなかながわ特産品の開発 特産品となる新たな品種の育成

新たな作物・品種の検索による特

産品の開発

消費者ニーズに応える高品質・安

定生産技術の開発

カンキツ類などの高品質・安定生

産技術の開発

2 農産物の生産段階における安全・安心を確保するための技術開発

③安全・安心を確保するための技術開発

病害虫の診断同定及び発生生態

の解明に基づく予察・防除技術の

確立

診断・同定及び防除技術の開発

発生予察及び発生予察技術の開

かながわ特産品の生産に必要な

農薬の実用化試験

農薬の実用化試験

新規除草剤・植物成長調整剤試験

多様な担い手の育成・確保

4 多様な担い手を育成・確保するための技術開発

⑦多様な担い手に対応するユニバーサル生産技術の開発

多様な担い手に対応するユニバ

ーサル生産技術の開発

多様な担い手に対応する営農環

境の確立

農業の有する多面的機能の発揮と循環型社会への貢献

6 環境に調和する農業を推進するための技術開発

⑪地球温暖化に対応した生産技術の開発

気候変動に適応する技術開発 気候変動に対する適応技術の開