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自然な膝伸ばし歩行を実現する下駄歩行ロボット技術
A technology of natural walk with knees stretched ad biped robot by using geta (Japanese clogs)
東京都立産業技術高等専門学校 ものづくり工学科 医療福祉工学コース准教授 深谷 直樹
提案技術の背景
現在の二足歩行ロボット
1) 歩行が不自然(膝曲げ歩行)2) 消費電力が大きい3) 不整地の歩行が課題
極めてシンプルな手法(下駄状の足裏)を持つ下駄ロボットで解決
従来技術と問題点
多くの2足歩行ロボットは膝曲げ歩行
1)踵やつま先など複雑な構造が不要2)足裏面積を人間以上に拡大可3)足先軌道を逆運動学により導出4)重心を低く、一定の高さに保持し安定化
<利点>
1) 複雑な構造2) 高度な制御(逆運動学等)3) 高価な部材、開発費が必要4) 消費電力、発熱が大きい5) 歩行は不自然さが残る
<欠点>
ASIMO(ホンダ)(膝曲げ歩行)
HRP-4C(産総研)(膝曲げ歩行)
従来の2足歩行ロボット
早稲田大:WABIAN-2R(膝曲げ歩行・膝伸ばし歩行)
ISAMU(川田重工業・東大)
(膝曲げ歩行・つま先あり)
安定歩行のため膝を曲げた歩行ばかり膝伸ばし歩行も不安定・不自然さが解消できず
1)膝伸展時に特異点が生じる
2)板状の足裏では蹴り出し力・接地時の足先長さが不足
3)縦方向への重心揺動、踵着地の衝撃により振動が生じる
重心を一定の高さに保持するのは難しい
人のような歩行(膝伸ばし歩行)実現のポイント
従来技術とその問題点
1)歩行が不自然(膝伸ばし歩行が困難)
a) つま先の機能を実現するのが難しい
b) 逆運動学を用いる際に特異点が生じる
2)消費電力が大きい
3)不整地へ対応しにくい
従来技術とその問題点
1) 歩行が不自然(膝伸ばし歩行が困難)a) つま先の機能を実現するのが難しい
・歩行に合わせ、つま先の角度も制御→ 小型のアクチュエータで精密位置決め
・ヒンジやリンクでパッシブに→ 蹴りだしの力が無く、腰などに動力が必要
WABIAN-2R(早稲田大:高西ら)http://www.takanishi.mech.waseda.ac.jp/top/research/wabi
an/index_j.htm
ISAMU(川田重工業・東大井上研)http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/20011108/isamu
25.jpg
一般的な小型2足ロボットの足裏(平板状)
b) 逆運動学を用いる際に特異点が生じる
・多くの2足歩行ロボットは逆運動学+ZMPを利用して安定歩行を実現
<ZMP>Zero Moment Point の略、総慣性力のモーメントがゼロとなる点総慣性力と釣り合うようにするのが目標ZMP足の角度を調整し床半力を目標ZMPに一致させれば安定に歩行
慣性力とZMPとの釣り合い(ホンダHPより)http://www.honda.co.jp/factbook/robot/asimo/200011/04.html
釣り合い状態 非釣り合い状態(足の角度を調整して床半力を目標ZMPに一致させる)
目標ZMPに床半力を一致させる足先の軌跡を導出前提:重心高さは常に一定とし、これを基準に足先の軌道を求めるこの軌跡を満たす腿・膝・足首の関節を計算により導く
※問題点膝が伸び切ると特異点(どちらの方向に曲がるかわからない)となり解が求まらないつまり、特異点とならないよう、常に膝を曲げ続けている
<逆運動学>
2)消費電力が大きい
膝を曲げ続けるため、アクチュエータへ負荷がかかり続ける
発熱が増加し、効率低下→さらに大電流という負の連鎖
※人も膝を曲げたまま歩けば、すぐに音を上げる
3)不整地へ対応しにくい
地面から重心までの高さを一定とし、その重心位置を基準に足先の軌跡を導出
凸凹だと、地面-重心間の距離が変わるため逆運動学で正確な足先の軌跡が導出できず転ぶ(数ミリ~15ミリの高さでも転倒)(ZMPを基準にある程度カバーできるが限界がある)
凸凹があると重心位置が変わってしまい計算が成り立たない
重心高さは常に一定で歩行
・平板状の足裏では、自然な膝伸展歩行は難しい(スキー板装用時など困難)
下駄は台は板状だが、歯があるため足先の回旋が実現
我々は、板状の足裏でも自然に歩行できる場合がある
新技術の特徴・従来技術との比較
下駄装用時の足先
・脚の傾き等は、ほぼ同様
・前側に倒れ込む作用も同様
・後脚の足先が傾くのはわずかに早い
後歯が踵、前歯がつま先として、見かけ上の足の長さを伸ばす。両足支持を実現し、重心の低下を防止
下駄装用時の足先
離床時:TO,接地時:HC
<後側の立脚:通常より早く後歯が浮く>前歯の角は回りにくい→ 前歯は,つま先より足首側に早い段階から回転モーメントを発生させる→ 滑らかな遷移に必要
<鼻緒の作用>台前縁が接触して回転停止つま先付根を回転軸として鼻緒の弾性に抗しつつ踵がわずかに浮く(重心を支えるが、滑らかな体幹の遷移のための作用が主)
新技術の基となる研究成果・技術
従来技術の歩行(膝曲げ歩行)
新技術による歩行(膝曲伸ばし)
下駄ロボットによる膝伸展歩行(改造部分:既存ロボットの足裏のみ)
1)「膝伸ばし歩行が困難」への対策「 a) つま先の機能を実現するのが難しい」
新技術の特徴・従来技術との比較
・下駄後歯が踵,前歯がつま先として機能・鼻緒を模した弾性板で、最後の蹴りだしも実現
「 b) 逆運動学を用いる際に特異点が生じる」
・逆運動学に依存しない歩行手段・前方向への倒れ込みを積極的に利用するため逆運動学は不要
重心位置の変動(身長の約1.3%、約0.02m程度)
・歩行初期:位置エネルギの減少と運動エネルギの増大が比例
・位置エネルギは運動エネルギへ変換→脚力へ合算され推力を補助。効率のよ
い歩行を実現する要因の一つ
歩行時の位置エネルギと運動エネルギ
○ 江原義弘,山本澄子:歩き始めと歩行の分析,医歯薬出版,2002より
2)「消費電力が大きい」への対策
新技術の特徴・従来技術との比較
2)「消費電力が大きい」への対策
新技術の特徴・従来技術との比較
1) 重心が上下に揺動、位置エネルギを運動エネルギに変換2) 立脚中期に股関節-膝-足首が直線上に、棒状となって重力を支えるため、アクチュエータへの負荷がほぼ無くなる3)骨盤やつま先に余計なアクチュエータが不要
図 膝屈曲歩行時・膝伸展歩行時における電流の比較
2)「消費電力が大きい」への対策
新技術の特徴・従来技術との比較
膝曲げ歩行
膝伸ばし歩行
歩行開始後数歩の比較膝曲げ歩行と比較して65%ほどの電流のみ
3)「不整地へ対応しにくい」への対策
新技術の特徴・従来技術との比較
面で地面に接触するため、急激な姿勢変化になる(地面が平坦であることを前
提にプログラムされるため)
平板上の足裏+膝曲げ歩行 下駄+膝伸ばし歩行
接触は踵で接地(点接触)重心を揺動させた不安定状態のまま歩行するため、多少の外乱は吸収
想定される用途
1)サービスロボット家庭用・セールス・アミューズメント・医療介護・・・
2)医療福祉機器開発ロボット
3)荒野や災害地用ロボット
4)月面など宇宙用ロボット
人間型はロボットの基本のため、様々な用途に
応用が可能
将来の市場
家庭用サービスロボット2008年:77億円 → 2012年:231億円
富士経済株式会社 「2009 ワールドワイドFAロボット/RT関連市場の現状と将来展望」より抜粋
実用化に向けた課題
1)足裏のセンシングによる床半力の検出
3)子供~大人等、人サイズのロボットの構築
2)制御回路・制御プログラムの作成
企業への期待
1)床半力の検出はセンサ処理技術を有する会社ならば容易に対応できると思われる2)ロボットの制御技術を有する企業の支援を期待する3)家庭ロボット、サービスロボット等の開発を考える企業には有用な技術と考えている
・極めて単純な機構のため、実用化に向けては制御関連を整備し、実機製作・実験が主
本技術に関する知的財産
発明名称:二足歩行ロボット出願番号:2010-052233発明者:深谷直樹出願人:首都大学東京
産学連携の実績
・2007-2010:ダブル技研株式会社と共同研究・2008-2009:板垣製作所への技術支援・2008-2010:荒川区ものづくり技術支援事業・2010:志幸技研株式会社へ技術支援・2010:戦略的創造研究推進事業採択
お問い合わせ先
TAMA-TLO(株)研究成果移転事業部 事業部長創造的産学連携体制事業産学連携スペシャリスト
松永義則
TEL:042-570-7240e-mail:[email protected]