唾液腺細胞診断アルゴリズムと報告様式

相澤病院 病理診断科

樋口佳代子

第31回長野県臨床細胞学会学術集会

2017.3.12 信州大学旭研究棟 松本

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第31回長野県臨床細胞学会学術集会COI開示

演者名：樋口佳代子

今回の演題に開示すべきCOIはありません。

本日の講演内容

• 唾液腺細胞診の特徴

• 唾液腺細胞診新報告様式

• 唾液腺細胞診報告のためのミラノシステム

• 唾液腺細胞診断のアルゴリズムの提案

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唾液腺穿刺吸引細胞診の有用性

• 唾液腺腫瘤の評価のために広く受け入れられている

• 病変が腫瘍か非腫瘍か

• 腫瘍性病変についてはあきらかな良性腫瘍か否か

• 悪性腫瘍については低悪性度か高悪性度か

などについて推定可能なため、手術の適否など治療法の決定に有用である

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唾液腺穿刺吸引細胞診の問題点

• 唾液腺腫瘍は頭頚部腫瘍の約3-10%と比較的稀な腫瘍群

• 多数の組織型がある（34種類）

• 頻度の低い低悪性腫瘍や、良悪性にわたって類似の細胞パターンを示す筋上皮系腫瘍、異型の弱い悪性腫瘍などが存在し、 FNAによる良悪性判定、組織型推定が困難

• 唾液腺FNAの感度、特異度は、術者の穿刺技術、

標本作製法、診断者の経験、病変内での組織の多彩さ、嚢胞成分など種々の要因に左右される

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唾液腺の良性腫瘍(2005 WHO)

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筋上皮・基底細胞関連腫瘍 筋上皮・基底細胞非関連腫瘍

多形腺腫

基底細胞腺腫

筋上皮腫

ワルチン腫瘍

嚢胞腺腫

オンコサイトーマ

細管状腺腫

脂腺腺腫

導管乳頭腫

リンパ腺腫

筋上皮・基底細胞関連腫瘍 筋上皮・基底細胞非関連腫瘍

低悪性度基底細胞腺癌

転移性混合腫瘍

粘表皮癌 （低悪性度）

腺房細胞癌

多型性低悪性度腺癌

腺癌 NOS （低悪性度）

中悪性度腺様嚢胞癌（篩状・管状）

上皮筋上皮癌

粘表皮癌 （中悪性度）

明細胞腺癌

嚢胞腺癌

脂腺癌

粘液腺癌

腺癌 NOS (中悪性度）

高悪性度

腺様嚢胞癌 （充実型）

悪性混合腫瘍

（多形腺腫由来癌・癌肉腫）

筋上皮癌

粘表皮癌 （高悪性度）

オンコサイト癌

唾液腺導管癌

腺癌 NOS (高悪性度）

腺・扁平上皮癌

扁平上皮癌

未分化癌 7

多形腺腫悪性

良 性

唾液腺腫瘍の頻度

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唾液腺腫瘍の組織パターン

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多形腺腫

多形腺腫

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ワルチン腫瘍

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多形腺腫と鑑別を要する良性腫瘍筋上皮腫

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多形腺腫と鑑別を要する悪性腫瘍腺様嚢胞癌

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異型に乏しい悪性腫瘍（非筋上皮関連）腺房細胞癌・乳腺類似分泌癌

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あきらかに悪性といえる高異型の癌唾液導管癌

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唾液腺細胞診新報告様式

2004年第45回日本臨床細胞学会総会において

ワークショップタスクフォース（廣川ら）により提案

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1. 標本作製2. 検体の評価3. 診断のカテゴリー4. 報告内容5. 精度管理

PA

【標本作製】

• Papanicolaou 染色

• Romanowsky 染色

May-Grünwald-Giemsa 染色

Diff-Quik 染色

Wright 染色

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腺様嚢胞癌

【診断のカテゴリー】

• 検体不適正

理由を記載し診断はしない

• 検体適正

1.良性

2.良・悪性鑑別困難

3.悪性の疑い

4.悪性

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EMC

“良・悪性鑑別困難”

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1. 少数の異型細胞を含む・細胞密度が高い良性病変

2. 異型性が乏しい悪性腫瘍

3. 浸潤性発育の有無により良性・悪性が区別される

腫瘍群

4. 偽篩状構造・基底膜物質が豊富な腫瘍

唾液腺細胞診新報告様式

1. 少数の異型細胞を含む・細胞密度が高い良性病変

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• 異型のある多形腺腫• 冨細胞性多形腺腫• 化生性ワルチン腫瘍• 異型のあるオンコサイトーマ• 壊死性唾液腺化生• 放射線唾液腺炎

HE Pap

異型のある多形腺腫

2. 異型性が乏しい悪性腫瘍

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腺房細胞癌

HE Pap

• 腺房細胞癌• 低悪性度粘表皮癌• 多型低悪性度腺癌• MALT型リンパ腫

3.浸潤性発育の有無により良・悪性が区別される腫瘍群

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基底細胞腺腫 基底細胞腺癌

PapPap

• 基底細胞腺腫 / 腺癌• 筋上皮腫 / 筋上皮癌• オンコサイトーマ / オンコサイト癌

4. 偽篩状構造・基底膜物質が豊富な腫瘍

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多形腺腫

HE MGG

• 多形腺腫• 基底細胞腺腫 / 腺癌• 上皮筋上皮癌• 筋上皮腫 / 筋上皮癌• 多型低悪性度腺癌

全検体に占める割合(%)

最終的な悪性の比率(%)

検体不適正 ≤ 10 -

良悪性鑑別困難 ≤ 10 ≤ 20

悪性の疑い - ≥ 70

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【精度管理】

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Q9. Do you use ‘ the guideline for reporting salivary gland aspiration cytology’ ?

29%

71%

yes

no

2011 唾液腺細胞診に関するアンケート結果より抜粋

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唾液腺術前細胞診の目的

• 手術適応のある腫瘍性病変を見つける

• 多形腺腫、ワルチン腫瘍を診断する

• その他の良性腫瘍、軽度～中等度異型の悪性腫瘍は術式が同じなので、必ずしも最終組織診断にいたらずともよい

• 郭清など術式の異なる高悪性腫瘍を指摘する

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反応性病変腫 瘍

多形腺腫

多形腺腫以外

なしあり

線維粘液腫様成分

なしあり

高悪性腫瘍群

正常構成細胞以外の腫瘍成分

• 背景の間質粘液

• 細胞の特徴（好酸性細、淡明、 顆粒状、

基底細胞様など）

• 核所見、細胞配列

高度異型

その他の良性

ワルチン腫瘍

意義不明な異型

低～中等度悪性腫瘍群

軽度から中等度の異型

悪性度不明な腫瘍

謝辞

座長の先生、東信地区幹事各位、

並びに副会長と現役員各位、

長野県臨床細胞学会会員各位

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このような講演の場を与えていただきましたこと、また4年間、学会業務にご協力いただきましたことをこの場をかりて御礼申し上げます。