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環境計画論第2講 May.26, 2011
1.システム思考とは何か
2.システム図による
問題の構造把握
福島大学共生システム理工学類 後藤 忍
人間環境系とシステム思考
1.システム思考とは何か
2.システム図による
問題の構造把握
環境問題とシステム思考
環境問題の特性
環境問題は様々な要因が絡んでいて複雑である。
環境問題が発生する構造は,自然システムだけではなく,人間の関わりを含めた構造となっている。
問題が起きてから対処する方法(対症療法)では、根本的な解決にならない。
求められる考え方
なぜその問題が起きているのか、その全体的な構造をできるだけ把握する。
どこに作用すればより根本的に解決できるのか、効果的なポイント(leverage point)を探り,構造的な変化により根本的な解決を目指す。
システムとは 一群の要素が互いに連結し、一つの全体を形成しているという考えを表現したもの。
システムの具体例
生態系(ecosystem)
落葉樹林での食物連鎖模式図
出典:http://higheredbcs.wiley.com/legacy/college/raven/0471444529/txt_chaps/ch04.pdf
システムの具体例(2) 生態系(ecosystem)
イギリス・ワイタムの森における食物網出典:日本生態学会編(2004),『生態学入門』,p.196
システムの具体例(3) 水循環系(システム)
システムの具体例(4)人体例:循環器系
機械
例:自動車(プリウス、THSⅡ)
(出典:トヨタウェブサイト)
システムの類型例(1) Boulding(1956)
直感的に判断された複雑性の度合いによって9つの階層に分けた。
①構造。枠組み
②時計仕掛け
③制御機構
④開システム
⑤低いレベルの生体
⑥動物
⑦人間
⑧社会-文化システム
⑨超越システム
Jordan(1968) 変化率、目的、結合の3つの組
織化原理の組み合わせで、8つの分類をした。
①変化率 →構造的(静的)
→機能的(動的)
②目的 →合目的的
非合目的的
③結合 →機械論的
有機体的
例:構造的/合目的的/機械論的
→道路
機能的/非合目的的/有機体的
→時空の連続体(水など)
Peter Checkland(1981) 5つの類型に整理
①自然システム
(地球、天体、生態系、etc.)②人工的物理システム
(自動車、電車、宇宙ロケッ
ト、etc.)③人工的抽象システム
(数学、詩、哲学、 etc. )④人間活動システム
(個人の活動、国際政治シ
ステム、etc.)⑤超越的システム
(知識を超えたシステム)
システムの類型例(2)
(出典:Peter Checkland著,高原康彦・中野文平監訳(1985)『新しいシステムアプローチ』,p.125)
システム思考(systems thinking)について システム思考とはシステムの構成要素間の関係を認識し、それらの構成要素を1つの統一された全体像として捉えることを重視する考え方。
従来の科学的方法では処理できないような問題を取り扱うものとして提唱された。
対義語は分析的思考や還元主義的思考などが相当。
システム・アプローチとは問題に対するアプローチで、視野を広くとり、すべての側面を考慮し、問題内のいろいろの部分間の相互作用に焦点を合わせているものである。
別の表現で言うと・・・「つながり思考」「関連づけ思考」「見えないものまで見ようとする思考」
システム思考の重要性→ 部分的な問題の解決は、全体の問題を
悪化させる可能性がある
洗浄剤
例:水資源の捉え方①「水質」
出典:環境省 水・大気環境局「平成17年度公共用水域水質測定結果」(平成18年12月)
湖沼3.6
海域1.7
河川3.0
湖沼3.3
海域1.9
河川1.6
1985年
1985年~2005年の20年間に、湖沼のCODは0.3mg/ℓ,河川のBODは1.4mg/ℓ改善した。(海域はほぼ横ばい)
例:水資源の捉え方②「資源消費量」 上水道及び下水道事業における電力使用量の推移
出典:国土交通省 土地・水資源局水資源部、『平成18年版 日本の水資源』
1987年~2003年度の16年間に、下水道事業における電力使用量は約83%増加している。
合成の誤謬→ 部分的な最適化(=個別問題の解決)は、
必ずしも全体の最適化には結びつかない
システムの構造理解
出来事と構造出来事、パターン、構造の3つのレベルで捉えられる
最も持続的な変化をもたらすのは、出来事やパターンのレベルの変化ではなく、構造レベルの変化である。
構造
パターン
出来事
出典:バージニア・アンダーソン/ローレン・ジョンソン(2001)『システム・シンキング』
構造理解のレベルの例
火事への対応
できるだけ早く消火する
過去の火事の傾向を調べて、次の火事がどこで起こりそうかを予測する
パターンの原因を調べて、火事の発生を未然防止したり、被害を少なくしたりする(防火設備の改善、建築材料の見直し、人間の行動心理に基づいた防止策など)
出来事
パターン
構造
システム構造の理解のレベル
行動の
種類
時間的な指向
認識の仕方 問いかけ
出来事 対応する 現在 出来事をただ認識する
「出来事に今すぐ対処できる方法は何か?」
パターン 順応する 出来事のパターンを調べ、予測する
「繰り返し起こっている出来事に、傾向やパターンはあるか?」
構造 変化を
創造する
将来 因果ループやその他の構造を把握する
「傾向やパターンの原因となっているのは、どのような構造か?」
1.システム思考とは何か
2.システム図による
問題の構造把握
世界の人口の推移
世界の人口は、産業革命が始まって以来、幾何級数的に増加している。
2001年の世界の人口増加率は年率1.3%であり、倍増期間は55年である。
(出典:D.H.メドウズ他(2005)『成長の限界 人類の選択』,p.7)
人類のエネルギー消費量の推移
幾何級数的成長の威力 池を覆う睡蓮の葉
一日で倍になるスイレンの葉が30日で池を覆い尽くす・・・
→池の半分が覆われるのは29日目
ペルシャの伝説 ある賢い廷臣が王にチェス盤を献上し、褒美として米粒を
申し出る。1番目に1粒、2番目に2粒、3番目に4粒・・・
→21番目には100万粒以上、41番目には1兆粒以上・・・で、64番目には到底たどり着けず。
ピーナッツ 食べる量を増やしていく。1日目1粒、2日目2粒、3日目4
粒・・・
→月末には500トン以上
ヤクザなゴルフ マッチプレイで賭けをし、負けた方が掛け金を払う。第1
ホール100円、第2ホール200円、第3ホール400円・・・
→第18番ホールは1300万円以上
システム的な解釈
システム的な要因
あるシステムに長期間にわたって一貫したパターンがあちこちに見られる場合、システムのフィードバック構造に原因が埋め込まれていると考えられる。
その因果関係の構造を変えない限り、そのシステムをどれほど必死に加速しても、そのパターンは変わらない。
システム的な構造把握~「成長の限界」~ 「成長の限界」(Limits to Growth)の発表
1972年、ローマクラブから研究を委託されたMITの研究グループが、システム・ダイナミクス理論とコンピュータによるモデリング(ワールド3)を用いて、世界の人口と物質経済の成長の長期的な原因と結果を分析。
人口、食料、天然資源、工業生産、公害(汚染)の5要素85変数からなる世界モデルを構築。
動学的モデル(Dynamic Modeling)の手法でモデルを作成し、人間活動と地球環境の相互フィードバックの構造を示す。
1900年から2100年にかけての200年の世界の発展を示す12のシナリオを分析。
人間活動は、天然資源や汚染への配慮なしには成長を続けることができず、突然の崩壊(catastrophe)を起こすことを提示。
未来を予測することが目的だったのではなく、起こりうる様々な未来を見出すことを目的とした。
ローマクラブ『成長の限界』におけるシミュレーション結果(例)
標準計算(対策を行わない場合)
安定化のシナリオ(無制限な成長をやめる政策を実施)
ローマクラブ・ワールド3のモデル構造(一部)
システム図による構造の理解
システム構造の図示
システムがどのように機能しているか、システムの動きをどう変化させることができるかを考えるために、システムの一部を図に表現する方法がある。
対象となっている出来事やパターンの要因についての議論の出発点、あるいはその対象を異なった視点から見るための出発点ともなる。
他の人との共通理解を行う上でも効果的である。
システムの構造を明らかにする手順
主な手順
問題を定義する。
重要な変数を特定する。
時系列での変数の動きをグラフに描く。 時間軸を設定する
グラフを描く
仮説を設定する
因果関係(リンクとループ)を図にする。 因果関係にある変数間を矢印でつなぐ(リンク)
+、-などでリンクの性質を表す
ループのところは、拡張ループかバランス・ループの印をつける
作業をやり直したり、他の人と話し合ったりして改善していく。
因果関係の表現(1) リンクとループ
リンク 2つ以上の変数を結ぶそれぞれの関係をリンクという。
変数間の関係には、少なくとも2つがある。
①変数Aが変化すると、変数Bは「同じ向き」に変化する。
→「+」,「S(Same)」,「同」などで表す
②変数Aが変化すると、変数Bは「逆向き」に変化する。
→「-」,「O(Opposite)」,「逆」などで表す
同
学問への関心
読書量 貯金使用金額
逆
因果関係の表現(2) ループ
変数とリンクによってつくられた閉じた円を「フィードバック・ループ」と呼ぶ。
フィードバック・ループには、拡張フィードバック・ループとバランス・フィードバック・ループがある。
拡張フィードバック・ループ(Reinforce:強化・拡張する)は、一方向への動きをさらに大きな動きへと拡大させるという性質をもっている。好循環や悪循環は拡張ループである。
バランス・フィードバック・ループ(Balance:バランスをとる)は、一方向への変化に抵抗し、逆方向に変化をつくり出す性質をもっている。物事をある望ましい状態に保とうとするものである。
同
同同
逆
BR学問への関心
読書量 貯金使用金額
拡張ループ バランス・ループ
時系列変化とシステム構造の関係(1)
同
同
R成長のための活動
条件またはパフォーマンス
時間
急激な成長/衰退
急激な成長あるいは衰退は、通常の場合、拡張ループから生まれる
時系列変化とシステム構造の関係(2)
目標追求の動き
同
同
B実際のレベル
是正措置時間
目標
ギャップ逆
望ましいレベル
目標追求の動きの場合、単純なバランス・ループとなる。このバランス・ループは、目標と実際の状況のギャップを埋めようという動きをする。
時系列変化とシステム構造の関係(3)
時間
変動(振動)
同
同
B実際のレベル
是正措置
ギャップ逆
望ましいレベル
遅れ
遅れ
変動(振動)は、大幅な遅れを伴うバランスループが、目標レベルに対する実際レベルの修正不足や過剰修正を引き起こすことで生まれる。
時系列変化とシステム構造の関係(4)
S字型成長
時間
同
同じ
努力 成果 制限要因
制約同
逆
BR
S字型成長は、拡張ループによって生まれた成長がバランス・ループによって止められた結果である。
因果ループ図の例~経済成長と資源制約~
同 逆
:重要変数
:リンク
同 :同方向
逆 :逆方向
同 同
B2R1
R:Reinforce(強化・拡張する)
B:Balance(バランスをとる)
※数字はループの主な順序を表す
投資 経済成長 資源制約
変数の設定におけるポイント
変数の選定変数になる可能性があるものは、定量的なものと定性的なものの両方の変数をリストアップする。
いくつかあげた変数の中で、最も重要と思われるものに絞っていく。
変数名の設定変数の名前には、動詞は使用せず名詞を用いる。これは、変数の変化を理解しやすくするためである。
例: ○売り上げ ×販売する
肯定的であるか、少なくとも否定的でない表現を用いる。これは、二重否定による理解の困難さを回避するためである。
例: ○満足度 ×不満足度
システム原型 システム原型とは
様々な状況において繰り返し現れるシステムの共通の構造や動きのこと
代表的なシステム原型
応急処置の失敗(Fix That Fail)問題のシフト(Shifting the Burden)成長(成功)の限界(Limits to Growth/Success)目標のなし崩し(Drifting Goals)成長と投資不足(Growth and Underinvestment)成功には成功を(Success to Successful)エスカレート(Escalation)共有地の悲劇(Tragedy of the Commons)
システム原型の例~成長の限界~
「成長の限界」とは
当初は努力すればするほど成功がもたらされるが、次第に成功の限界に達し、成長が減速する。成長そのものが、それ自体を妨げようとする動きを誘発すること。
結果が悪くなり初めても、当初のやり方を変えずに同じ努力をし続けてしまう。
現象の例
制約条件下での生物の個体数
古代文明の興亡
同
「成長の限界」のシステム構造
成果努力 制限要因
逆
同
R1 B2
同
制約
同
同
「人口」のシステム構造の例
人口出生数 死亡数
逆
同
R1 B2
同
死亡率(1年に死ぬ確率)
同
寿命
出生率(1年に子どもを生む確率)
同
家族計画水準
逆
経済的豊かさ
逆 逆 逆
「成長の限界」のポイント システム構造の特徴
「成長の限界」には拡張ループとバランス・ループの2段階の構造がある。
成長期においては拡張ループが機能し、その後バランス・ループが支配的となり、成長する力が低下する。
成長の限界の比喩的表現の例 「アクセルを踏みながら同時にブレーキを踏む」
「庭の手入れをしながら雑草の種を蒔く」
「空のゴミ袋にゴミを詰めていく」
「コインを積んでタワーをつくる」
バランス・ループの発動成長が停滞し始めると、本能的に「アクセルを強く踏み込む」ような対応が行われるが、これは同時に「知らずにブレーキも踏む」こと、すなわちバランス・ループの発動につながる。
「成長の限界」に対応する方法
注意する点
急激な成長は、急激な崩壊を招く可能性があることを認識する。
「成長の限界」の展開パターンを理解し、限界に達する前に対策を立てる。
成長の限界を仮定し、その限界を引き起こす要因のすべてを明らかにする。
限界に達したら、それまで効果のあった方法をいったん打ち切ってみる。
システム原型~応急処置の失敗~
「応急処置の失敗」とは
ある問題に対して応急処置的に解決策を施した結果、一時的に問題の症状は緩和されるが、しばらくすると当初の問題症状が再発したり、前よりも悪化したりするという、意図しない結果となるパターンのこと。
同様な応急処置を重ねて行えば、問題が次第に拡大していくことになる。
現象の例
国家経済と赤字国債
地方財政の原発への依存
日本の公債残高の推移
(出典:財務省ウェブサイト http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/genjo.htm)
同
「応急処置の失敗」のシステム構造
応急処置問題の症状
意図しない結果
遅れ
同
逆
B1
R2
同
同
国家経済と赤字国債のシステム構造
赤字国債発行による支出
予算のプレッシャー
遅れ
同
逆
B1
R2
同
利払い 債務
同
双葉町の財政状況(1) 双葉町の事例
1960年に双葉町と大熊町の町長
が,東電と県に原発誘致の陳情書を提出
1967年に1号機が着工,1971~1979年に1~6号機が営業運転開始(1~4号機:大熊町,5,6号機:双葉町)
正門やメインの道路は大熊町に取り付けられたため,関係企業の多くは大熊町側に立地した。その結果,法人税は大熊町に偏ってしまった。
2009年の財政力指数
大熊町:1.50(全国23位,福島県1位)
双葉町:0.78(全国396位,福島県8位)
双葉町の財政状況(2) 双葉町の財政力指数
1965年度:0.23 1979年度:1.0を超える
1980年度:3.73 1990年度:再び1.0を下回る
原発の増設 1991年,町議会は前回一致で「原発の増
設に関する決議」を採択。
1993年,東電は電力施設計画に2機の増設を盛り込む。当初は1996~1997年に着工し,2001~2002年に運転開始予定。
増設計画は毎年延期され,2010年で14回目の延期となる。
実質公債費比率は一時30%を超え,全国の市町村でワースト6にランクした。
2007~2011年度,「初期対策分」とされる電源交付金(年間約10億)が交付された。
(出典:http://www.gns.ne.jp/eng/g-ken/doukan/agr_454.htm
同
地方財政の原発依存のシステム構造
原発誘致による財政収入
予算のプレッシャー
遅れ
同
逆
B1
R2
同
維持管理費
原発依存の社会資本整備
同
「応急処置の失敗」のポイント なぜ起こるのか
できるだけその痛みや問題を取り除こうと考えるため、根本的な原因への対処についてはつい後回しにしてしまう。
悪循環の拡張プロセスに陥ると、安定したいというニーズを生み出し、応急処置を施すことで問題の症状を許容可能なレベルに戻そうとする。
意図しない結果の予測はなぜ難しいか応急処置を実施してから効果が表れるまでの時間的間隔がかなり長い場合、原因と結果の因果関係が見えにくい。
人間は、直接的な脅威にはすぐに対応するが、長期間にわたって少しずつ蝕んでいくような脅威には反応が鈍いところがある。
支配的なループの変化応急処置を繰り返し行った結果、応急処置のループ(バランスループ)から意図しない結果のループ(拡張ループ)へと、システムを支配するループが変わる。→悪循環(デス・スパイラル)
「応急処置の失敗」に対応する方法
対応方法問題を正しく定義する。
意図しない結果を見つけ出す。
問題の症状を生み出すメカニズムを理解する。
問題解決策の実施から生み出されると思われる副次効果を図に描く。
「応急処置の失敗」の理解を共有する。
ただし・・・意図しない結果をすべて把握することは不可能なので、「応急処置の失敗」を完全に防ぐことも不可能である。しかし、問題がどこから発生し、解決策がどのように作用するのかについて理解し、ある程度コントロールすることは可能である。
システム原型~問題のシフト~
「問題のシフト」 (Shifting the Burden)とは
ある問題に対して対症療法的解決策を施すと、それが症状を緩和し、根本的解決策を実施しなければというプレッシャーが弱まって、根本的解決策を実施する能力を徐々に衰えさせる副次効果が働くこと。
「応急処置の失敗」を発展させたもの。
現象の例
交通渋滞改善のためのバイパス建設
リサイクル促進による物質投入量の増加
逆
逆
同
同同
逆
「問題のシフト」のシステム構造
対症療法
問題の症状
根本的解決策
副次効果
遅れ
B1
B2
R3
逆
逆
同
同 同
逆
同
逆
同
リサイクルにおける「問題のシフト」のシステム構造
根本的解決策
対症療法的解決策
遅れ
B2
B1
R3R4
廃棄物の排出
リサイクルの増大
物質投入量の削減
新たな資源の投入
利用のしやすさ
消費量の増加
副次効果
課題 右の図はペットボトルの生産量と回収率のグラフです。このグラフから読み取れる問題とシステム構造について,システム原型を参考にして記述してください。また,それに基づいて解決手段の例を考えて下さい。(10分)
(出典:PETボトルリサイクル推進協議会ホームページ)
「問題のシフト」のポイント
システム構造の特徴
「問題のシフト」のシステム構造は、「応急処置の失敗」を発展させたものであり、不安やプレッシャーを緩和し楽になることが目的となったときに働き始める。
「応急処置の失敗」との違いは、根本的解決策が明示的に組み込まれて描かれることである。
構造把握の困難さ
根本的解決策として、唯一絶対の正しいものがあるとは限らない。人の立場や考え方によって捉え方が異なる。
副次効果を特定することも難しいことがある。
他者への依存
「問題のシフト」は、他者への依存という事態を招くことが多い。他者への依存が進んでいくと、中毒という最悪の状態に陥ることになる。
「問題のシフト」に対応する方法
注意する点
副次効果が起きていないかどうかに注意し、問題をシフトしないように意識すること。
「問題のシフト」の恒常化(中毒症状)を防ぐようにすること。
対症療法的解決策を行いながら、根本的な解決策を検討・実施していくこと。
解決策を考えるときは、参加者全員がそれぞれの立場で検討するとともに、システムの構造を理解した上で意思決定していくこと。
まとめ
従来の分析的思考だけでは解決しない問題に対する思考法として、システム思考が役立つ。
環境問題が発生する構造は,自然環境のシステムだけでなく,人間の関わりを含めた「人間環境システム」として捉えることが必要である。
システム思考は様々な環境問題に対して共通に適用可能である。ただし、システム図に正解はないため、構造理解の一つの手法として使い、改善していくことが求められる。