18
Hitotsubashi University Repository Title Author(s) �, Citation �, 16(2): 21-37 Issue Date 1991-07-31 Type Departmental Bulletin Paper Text Version publisher URL http://doi.org/10.15057/5945 Right

非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

Hitotsubashi University Repository

Title 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動

Author(s) 大塚, 晴之

Citation 一橋研究, 16(2): 21-37

Issue Date 1991-07-31

Type Departmental Bulletin Paper

Text Version publisher

URL http://doi.org/10.15057/5945

Right

Page 2: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 21

非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動

大 塚 晴 之

 序

 近年,ポストケインジアンによるカレッキの動学理論に関する解釈において,

銀行組織を含む貨幣的要素の重要性が強調されるに至っている(1)。しかし,従来

多くの論者によってカレツキモデルが実物を中心に把握されていたことに反映

されているように,カレツキの非線形内生的景気循環モデルの理論的発展にお

いて,金融的要素が実物的モデルに十分な形で統合されてきたとは言いがたい。

このことは,後にチャンス=スミス(1971)らによって発展させられたカルド

ア(1940)流の景気循環理論において,その理論的中核をなす非線形投資関数

の逓減の根拠に金融的要因が意識されつつも明示的な定式化が行なわれていな

いことからも容易に理解されよう。一方,周知の「危険逓増」の概念に明らか

な様に,カレツキ自身の理論構成においては金融的要因の重要性は明らかであ

り,フィッシャー=ミンスキー流の負債デフレ理論に連なるMM定理との鋭い

対立の起源をその中に見いだすことができる。そこで本稿では第一に最近のポ

ストケインジアンの発展に鑑みカルドア型の景気循環モデルに金融的要因を明

示的に導入することにより,カレツキ自身の理論を再構成する。

 ところでMM理論との対立という形で発展した議論に,金融契約における情

報の非対称性を明示的に考慮したネオケインジアン的な議論(2>が存在する。こ

の議論は概ね新古典派的伝統に立脚するものであるが,例えばバーナンキ,ガ

ーー gラー等の問題意識はミンスキーの問題意識から大きく逸脱するものではな

い。彼らの議論の特徴は,不確実性を通信的なものと環境的なものに識別して,

通信的不確実性を財務構造によって変化する内生変数としてモデルに組み込ん

Page 3: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

22 一橋研究第16巻第2号

でいる点にある。通信的不確実性という道具自体は,カレツキ=カルドア流の

議論に組み込んでも何ら矛盾を生ぜしめるものではない上,「危険逓増」に対す

る金融仲介機関の反応が明示化できるという利点を持っている。そこで,本稿

でもカレツキモデルに金融的要因を導入する手段としてこれを採用することに

する。またこの際に,金融契約の最適性を考慮して,(タウンゼント(1979),

バーナンキ(1986),ウィリアムソン(1986)流の)負債契約,即ち貸し倒れが

生じたときにのみモニターが行なわれ,モニタリング確率が「危険逓増」を反

映して内生的に決定されるものとする(3)。

 ところで,1987年の株式価格の暴落以来株価変動をマクロ経済との関連にお

いてどのように説明すべきかに関する議論が盛んに行なわれるようになった。

しかし,学術レベルにおけるこれらの議論は以外に少なく,株価の決定理論と

しては,現在のところ収益価値による決定理論(典型的な配当割引モデル)と

資産価値による決定理論(典型的にはトービンのq理論)及び需給を中心に論

じる考え方が共存しているものの,未だに実証に耐え得るような包括的な理論

は存在していない。一方,民間エコノミストの間では,マクロ諸変数の動向を

にらんで株価予想をするという手法は日常的に行なわれており,マクロ経済と

株価との理論的関係を明らかにすることは可能かつ必要であろう。実際,例え

ば一つの統計的事実(一図)を取り上げると,80年忌半ばまでは株価が民間設

備投資に先行していることが大まかに推測され,景気循環と株価との理論的関

係を考察することの一定の意味を見いだすことができよう。そこで,本稿にお

いては第二として,非対称情報下の金融的要因を明示化したカレツキ=カルド

アモデルを用いて,景気循環と株価の関係を理論的に明らかにする。またこの

際に,80年代半ばからの株価高騰に対しても一定の評価を行ないたい。

 本稿の構成は以下の通りである。第一節においては,最も簡単な景気循環モ

デルを構成するために,チャン/スミス=カルドア流の実物マクロ経済モデル

を構成し,更に,非対称情報下の金融契約行動を組み込むことによって体系を

拡張する。第二節において,前節で構成されたシステムの動学的性質を明らか

にする。そして,第三節で,景気変動過程における株価の変動を,従来の視点

と本稿の視点を比較しつつ明らかにする。最後に,本稿の議論から得られる結

論から,近年の株高に対して若干の評価を与える。

Page 4: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 23

(1)例えば,ソーヤー(1982)においては,投資を決定する基本的要因と

  して,資金のコストとその利用可能性が強調されている。

(2)情報の非対称性を導入したマクロモデルを学説史的にどのように捉え

  るかは,必ずしも明らかではないが,グラインダー(1987)により明ら

  かな様に,ネオケインジアン的伝統にコンシステントであり,固定価格

  のミクロ的基礎がより明確にされたと解するのが妥当であろう。

(3) これに対し,スティグリッツ=ワイス(1981)等は,逆選択,モラル

  ハザードにより,事前的に同質な借手のうちあるものは借入ることがで

  きるものが割当てにあうという定式化を行なっている。

(4) この点の概略については,堀内他(1990)参照。

第一節 非対称情報下の金融市場を含む動学システム

① 基本モデル

 はじめに,財市場のみを考慮して,非線形動学モデルを構成する。

 投資を実質所得及び資本ストックの関数とする。資本ストックが高水準にあ

るときには,過剰能力を反映して投資の限界効率表は下方にシフトする。また,

各資本ストック水準に対して,カルドア流のS字型投資関数が描かれる。これ

は,低所得における投資機会の狭隆さ及び高所得における規模の経済の逓減を

反映したものである(5)。これより,

 (1) 1=1 (K, Y); aI/aK〈O, aI/aYlOvY!O,

            02 1/a Y2> OV O 〈Y〈Y,,

            021/aY2$OVY,〈Y.

            (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得)

貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

影響を考慮する。即ち,

 (2) s=s (y, K);as/oy>o, as/aK〈o.

            (S:貯蓄,s:貯蓄性向)

上記において,資本ストック変化に伴うピグー効果と,投資の変動効果の双方

を扱ったが,資本保有者の消費性向は低く安定的であると考えられるので,次

のように仮定する。

   1a 1/ a KI>la s/ o KI

超過需要が存在するとき,所得は増加するので動学方程式は,

Page 5: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

24 一橋研究 第16巻第2号

 (3) dY/dt=a (1-S);a>O

            (α:不均衡調整係数,t:時間)

また,投資は資本の変化分に他ならないから,

 (4) dK/dt=1

以上をまとめることにより,以下の動学システムを得る。

(3)’ dY/dt=a (1 (Y, K)一S

(4)’ dK/dt=1 (Y, K)

(Y, K))

②非対称情報下の金融市場の導入

 次に,上記の体系に金融市場を導入しよう。ここで考える市場は,株式市場

と,銀行及び債券を含む貸出し市場の二種類である。ここで,負債契約に際し

てタウンゼントタイプの情報の非対称性,即ち事後的に借手が自己のプロジェ

クトの成果を偽る事無く貸手に報告するか否かに関する不確実性が存在するも

のとする。この手の情報の非対称には,事後的な債権管理のための費用(監査

費用)をかけることによって対応しなければならない。一方,簡単化のために

株主と経営者の問にはエージェンシー問題は存在せず,株主=経営者(内部者)

といった形で考えられるものと仮定する。但し,この場合にも,株主がプロジ

ェクトを構成するためには情報収集のための費用がかかるものとする(6)。

 いま,簡単化のために,プロジェクトへの投入として,1単位の財を必要と

すると仮定する。また,プロジェクトは一期間で完成し,諸変数に関する期待

は各期に改定されるものとする。更に,負債の非貸し倒れ支払いをxとし,プ

ロジェクト収益のとり得る範囲を[0,K]とし,その累積分布関数をH(k)

とする。

 企業は,負債借入費用を賄い得るときにのみプロジェクトからその残余とし

ての収益を得ることができる。このとき,株主=経営者の均衡における条件は,

(5) EqS: (k-x) dH=rnA

   (Eq:生産計画時点(第二期)の財価格(P、)の生産完成時点(第二

期)の期待財価格(P、)に対する比(P,/P、),r:安全債(政府債の利子)

利子率,n:株主の数, A:各株主の手持ち資金)

Page 6: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 25

即ち,2期において実現する貸し倒れにならない範囲においてのみ得られるプ

ロジェクト収益の期待値が,手持ち保有資金を安全債に運用することにより得

られる収益をカバーし得ることが要求される。ここで,景気の変動に伴ってq

が変化し,実質的な期待収益が変化する可能性を考慮してEqを明示的に示し

てある。

 負債権者は,負債のエージェンシー問題に直面している。ここで,貸し倒れ

が起こらなかった場合には一定の支払いがなされ,プロジェクトの収益が一定

水準に満たず貸し倒れが生じた場合にのみ監査が行なわれる。負債権者の期待

収益は,貸し倒れ時と非貸し倒れ時の期待収益の合計であり,プロジェクトの

借入必要金額は投入必要金額と経営者=株主の手持ち資金との差額であるか

ら,負債権者の均衡における条件は,

(6)Eq[∫X(k一γ)dH+∫k・dH]一・(1+・(・)一・A)

   (k:貸倒れ時のプロジェクトの収益,γ:監査費用,c:プロジェクト

の構成費用)

即ち,負債権者のプロジェクト投入から得られる収益は,安全債への投入収益

をカバーし得る水準になければならない。非貸し倒れ支払いの水準は,監査確

率と正の相関を持つ(Hノ(x)>0)ので,貸し倒れ支払いは可能な限り高く設

定され,非貸し倒れ支払いは低く押さえられる。この結果,貸し倒れ時に没収

される金額は,プロジェクトの収益全部ということになる。

 (5)(6)より,裁定条件式が得られる。即ち,

 (7) Eq pt=r

 但し,

 (8) #=: (1-7H (x)) / (1十。 (n)).;dc/dn>o

   (μ:金融効果,H:倒産確率)

このμは金融効率と呼ばれるもので,式から明らかなように情報の非対称性が

小さいほど1に近付き,情報の非対称性が大きいほど小さな値をとる。

 株主=経営者の数は,所得が高い程多いと考えられるので,

 (9) n=n (Y);dn/dY>O

 ところで,R1を投入時のマクロ鳥総収益,ER2を産出時のマクロ二二期待収

益,Cを産出費用とすると,

  R1=PユY1一℃1

Page 7: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

 26           一橋研究 第16巻第2号

  ER,=E (P,Y,一C2)

上記二式を用い,Cに関する期待形成を静学的であるとすると,

 9R二(ER2-R1)/R1=9R(△P,△Y, P1, Yl).

  (9R≡△R/R、:収益の期待成長率)

これより,

 (10) Eq=P,/P,=1十AP/P,==Eq (AP, P,)=Eq (g. (AY,

Y,))

更に,(8)(9)及び(3)”(4)”を考慮し,9を形成する主体がμの影響を知っており合

理的に反応すると仮定すると,

 (ll) g,=g. (Jt, K, Y,, Eq)Ieg,/aK〈O, ag./ aJt>O

⑩を(7)⑧に代入することにより次式を得る。

(7)t Eq (g,) pt=r

 但し,

(6)r Eq (g.) [SX (k-7) dH+SkdH]=r (1+c (n)一nA)

 上記の式のうち基本的なものは,(6)t(7)t(8)(9)(11)の五本であり,これらが金融市

場によって決まる内生変数9旦,x, n,μ,γの解を与える。また体系が拡張

されたことにより,基本モデルにおける貯蓄関数が修正されなければならない。

安全債の発行主体としての政府を考慮するために,貯蓄を税引き後実質所得か

ら債券購入額を引いたものとし,政府支出は債券発行により調達されるものと

すると,

 (2)ノ S二S (s (Y一(Bt_1-1/rBt))一1/rBt, K).

   (Bt一,:政府債券償還額,1/rBt:債券購入額)

また,(11)より,

  K=K (g,, pt, Y, Eq) ;O K/ a g,〈 O, a K/ O#〈O

と書くことができるので,

 (1)ノ 1=1(K,Y)=1(9R,μ, Y, Eq);∂1/∂9R>0,∂1/

apt>o

 以上で非対称情報下の金融市場を含む,動学的マクロ経済体系が完成された。

(5)カルドアモデルの説明の際には,所得増加に伴う貸し倒れ費用を含む

Page 8: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 27

  金融費用の増大が強調されるが,チャン=スミス等に代表されるモデル

  に金融的要因が含まれているとは考えがたい。そこで本稿は,S字型投

  資関数を実物部門のみで説明すことから始め,これに金融市場を導入す

  るという手法をとる。

(6) タンゼントタイプのモデルのこの定式化は,バーナンキ=ガLトラー

  (1986)に倣ったものであり,以下(5)~(8)は彼らのモデルを修正したも

  のである。

第二節 動学的性質の検討

 はじめに,前節で構成したマクロ経済モデルの動学的性質を調べるために,

可能なかぎり簡単なシステムに要約しよう。

 金融市場の追加により増加した内生変数は,9R, x, n, r,μであるが,

各々について関数関係を明らかにしておこう。

 (8)より,μ=(1一γH(x))/(1十。(n))=μ(x,n(Y))

また,(6)t(7)「より,

 (12) x=x (Y)

が得られるので,       く    く      トラ  くの        くわ

 (13)μ=μ (x (Y),n (Y))=μ (Y)

⑪より,

                            くの  くつ (14) 9R=9R(μ(Y), K, Y, Eq (K,Y))=9R(Y, K)

これより(1)’を変形すると,

  1-1(K,Y)一1(9望(Y,K),1髭(Y),Y)

金融効率の投資に対する影響は,完全情報時の投資水準にバイアスをかけるに

すぎない,

と仮定すると,

 (1)” 1≡∂F1(K, Y);∂Fl/∂K〈0,∂F1/∂Y>0

また(7)tを考慮して②!を変形すると,

 (2)” S=S (s (Y一(Bt一、一1/rBt)一1/rBt, K)      くヨつ                 のう         ゆう

   =S(r,Y,・K)=S(9R(Y, K)μ(Y), Y, K)

貯蓄が主に所得水準に制約され,安全利子率の効果は安全債購入価格を通じて

の間接的なものであり調整的な役割を果たすに過ぎないと仮定すると,

    S=F2(Y, K);∂F2/∂K<0,∂F2/∂Y>0

Page 9: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

28 一橋研究 第16巻第2号

以上より,非対称情報下の金融市場を含む動学システムを得る。即ち,

(3)tf dY/dt=cr (F, (Y, K)一F, (Y, K))

(4)tf dK/d t =i= F, (Y, K)

このシステムは現実性を持たせるためのいくつかの仮定により,実物部門のみ

によって構成されるモデルに若干の修正を加えたものとなっている。したがっ

て,ボアンカレ=ベンディクソンの定理(7>の条件を満たすとき本稿の枠組みに

おいても一定の条件下でY-K平面上にリミットサイクルが存在し(第二図),

景気が循環することが保証される(8)。この点で,チャン=スミス流の景気循環モ

デルと何ら変わるところはないが,金融市場における情報の非対称性を考慮す

ることにより景気循環は下方にバイアスをかけられたものになっている。即ち,

(1)ノ式から明らかな様に,非対称情報下の金融契約を考慮することにより,投資

と正の相関を持ち完全情報下で最大の値をとるμが体系に導入され,これによ

り投資水準は完全情報下のそれより常に下方に修正されるのである。

(7) 〔補題1〕ボアンカレニベンディクソンの定理

  平面のC1級力学系の野州でコンパクトな極限集合が均衡点を含まなけ

  れば閉軌道である。

(8>本稿の文脈に即して,リミットサイクルの存在及びその条件を確認し,

  位相図を示しておこう。このシステムにおけるヤコービアンマトリクス

  は,

J=O (dY/dt, dK/dt)

a (Y, K)

ev (F,,一F,,) cv (F,,一F,.)

  FlyKは偏微分を表す。)

FIK

(下付のY,

特性方程式は,

12-trace A十det J= O

である。仮に,dY/dt=dK/dt=0なる点が極限集合に存在しないならば,特性根の性格から,このときには以下の会式が成立していなければ

Page 10: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 29

ならない。

(!) det J=cu (F2KFiy-F2yFiK)〉 O

@trace J=af (Fty-F2y)+FiK>O

 次に,リミットサイクルが存在するときの位相図を作成しよう。

はじめに,dK/dt=O線を描く。この曲線の傾きは全微分することにより得られる。即ち,

dK/dY=一F,,/FiK>O同様にして,dY/dt=0線の傾きは,dK/dY= (F,.一F,.) / (F,K-F2K)

S字型投資関数,逆S字型貯蓄関数を仮定したので,低所得水準及び高所得

水準において分子が正になり,dK/dY〈0になる。一方正常所得水準に

おいては,分子は負になり,dK/dY>0になる。これより,図一の補助線が描かれるが,小域的不安定条件より,少なくともFIY>F,Yが満たされね

ばならず,補助線の交点は正常所得水準の領域に存在する。更にここでコン

パクトな部分集合,

D= {Y, KIO$Y$Y. OSK$K,}

を考えると,境界上の各ベクトルは全て集合内に向かっている事が解る。こ

のため,特性方程式から得られる上記の局所的不安定条件が満たされるとき,

ボアンカレ=ベンディクソンの定理により直ちにリミットサイクルの存在が

保証される。

第三節 景気変動過程における株価変動

 次に,上記のシステムから内生的に生み出される景気循環過程において株価

がどのような動きをするか,従来の議論と比較しつつ検討しよう。

 ①伝統的見解

 はじめに,従来の議論が事実上どのような内容を持つものか考えてみよう。

(14)より,YとKの一組の組合せに対して一つの9Rが決まることが解る(図三)。

このとき,9Rは経済の成長率と一意に対応し,正の相関を持つと考えられるか

ら,

          (+) (1 5) g,= g. (d Y./ d t)

図四の第二象限はこの関係を利用して描いたものである。

 従来の議論では,株式から得られる収益の割り引き価値を株価と考えた株価

方程式,即ち

 (16) V==2ktRt/ (1十r,) t

Page 11: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

30 一橋研究 第16巻第2号

 (ただし,ktをt期の配当性向, Rtをt期の一株あたり純利益, rtを期待割

  引き率とする。)

を前提としていた。しかし,Vは事実上R, k, rのある時点におけるt期間

にわたる期待の関数にならざるをえないから,期待形成のルールが設定されな

ければならない。R, kで表される企業収益の変動及びrで表される経済環境

の変化は,我々の体系においては9Rで表されると見て良い。そこで,

 (17) v=v ( g一,) 1 o v/ a g. .〉= o

とすると,第三象限にVの動学経路を得,これより第四象限に株価の時間的経

過を得る。これと第一象限に描かれる景気循環曲線と比較されることになるが,

このとき仮に,9RからYの形成の間のタイムラグが無視できるものとするな

ら,次の命題が成立する。

[命題1]

景気が循環するとき,株価の収益価値の最高値は(t,Y)の一循環の最

高点(a)と最低点(b)の間に存在する。

[証明]

 仮にd2Y/dt2=Oなる点が存在しないとすると,極値aとbの間におい

てd2Y/dt2<0であるかd2Y/dt2>0であるかの何れかである。このと

き景気が一定の振幅を持つなら,a, bでは微分不能となる。一方, Y-K平

面上のリミットサイクルは,全ての点で微分可能であるから,Y-t平面上の

全ての点で微分可能でなければならない。後者は前者と矛盾するので,d2Y/

dt2=0なる点が少なくとも一つ存在する。(15)よりd2Y/dt2=0のとき

9,は極値をとるから,⑰より株価Vも極値をとる。従って,景気循環曲線上の

点aと点bの間の時点において株価は極値をとる。(Q.E. D.)

 命題1より景気と株価は完全にシクリカルにはならないことが解る。即ち,

景気循環曲線の形状により変曲点の位置がa,b点に近付く可能性は否定でき

ないものの,景気上昇の中間点付近において株価が最高になり,好況及び不況

において株価が低くなると考えるのが一コ組になる。この関係を描いたのが第

四象限であり,これをA曲線と呼んでおく。もちろん先のタイムラグの非存在

Page 12: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 31

の仮定を外せばその分タイミングがずれることになるが,結論に大きな変更を

もたらすことはない。

 ②余剰資金変動を含む株価理論

 以上に明らかにした従来の議論においては,企業価値がそのまま株価に反映

されるものとしており,株式の発行市場のみが考慮の対象にされていると考え

られる。しかし,実際の株価は,流通市場を含めて形成されており,実証的見

地からもこのことが指摘されている(9>。そこで,本稿においては以上に構成した

マクロ動学モデルを用いて,流通市場を含む株価理論を構成する。

 流通市場を考慮するということは株式売買高を考慮するということであり,

金融市場への資金の流出入及び各金融市場間での資金の移動が明らかにされな

ければならない。金融市場への資金の流出入は1-Sバランスによって見るこ

とができるが,仮に,1〈Sの状況にあれば,実物投資に回されない資金が存

在し,その分が金融資産保有に向かうことになる。このとき資金が株式市場に

向かえば株価インフレが発生することになる。動学システムにおいては,常に

1-Sがアンバランスであるが,この差は常に調整される方向に向かうのでこ

こでは重視しない。しかし,我々の構成した非対称情報下の動学システムでは,

完全情報下の投資水準よりも常に小さな水準しか実現されないので(10),エージ

ェンシーコストに基づく余剰資金は常に存在する。

 景気循環過程でエL一・一ジェンシーコストは変動するが,これはμの変動で表す

ことができる。即ち,

G7) CE=CE (xt);oCE/ ox‘〈O

これと(IDより,

(18) g,= g. (CE) ; a g./ a CE〈o

即ち,負債のエージェンシーコストは収益の期待成長率と負の相関を持つ。Y

と9,の関係は三三より明らかであるから,これより直ちにYとCEの関係を求

めることができる。

 図五の第二象限には,エージェンシーコストCEと所得の関係が描かれてい

る。先に明らかなように,変曲点の近傍で9Rは最大になるので,(18)式よりCEは

最低になる。変曲点がただ一つ存在するとすれば,その点よりYが大きくても

小さくてもCEは逓増的に増加する。第三象限には,エージェンシーコストが存

Page 13: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

32 一橋研究 第16巻第2号

在しないときのファーストベストの資金需給均衡額と,信用割当てによる余剰

資金発生可能性を認めた場合の投資金額の差とエージェンシーコストとの関係

を示している。

 EF=EF (CE), dEF/dCE>O

このEFは,株式市場におけるインフレ圧力になるから,資金需給不均衡を株

価の決定因とみなすことができる。収益の期待成長率が高いときには負債発行

者に対する信用制限はごく小さなものになり,銀行の株式市場における資産保

有は小さくなるのに対し,不況及び景気過熱期には信用割当てにあう借手が増

え,過剰流動性が株式市場に流入する。つまり図四のB線に示すような株価曲

線が得られるのである。

 株価(V)には,株価方程式で決まる部分と余剰資金で決まる部分の双方が

あると考えられるので,

 V=E k,R,/ (1十rt) t十B (EF) ;aB/aEF>O

したがって,A曲線とB曲線の和によって評価しなければならない(図六)。こ

の曲線(C)の形状はA,B曲線の微係数の大小関係に依存し,すぐれて実証

的問題に帰着するが,本稿の立場は余剰資金変動影響が強く働き,景気の過熱

時及び不況時において株価が上昇するとするものである。

 本稿の分析においては,バブル等の要因を一切考慮していないので,株価の

現実の動きと理論的な結論とが完全に一致することはないが,ファンダメンタ

ルズの動きはバブルの引き金になり得るので,得られる結論の一般性が大きく

損なわれることはないといえよう。

(9) 『日本の金融変動と金融対策』堀江他(1990),121頁参照。

(10>Meza and Webb(1987)においては過大投資の可能性についても言及

  されているが,ここでは取り上げない。

おわりに

 本稿の結論は,情報の非対称性を基礎とする余剰資金変動が株価形成の主要

因であるとするものであるが,これにより最近の日本における株価高騰及び暴

落について若干の言及を試みよう。

Page 14: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 33

 はじめに,株価の持続的高騰の背景として次の点を確認しておこう。第一に,

資本市場の整備に伴って裁定関係が機i能し易くなったこと,第二に,日本経済

が持続的好況下にあったということである。第一の点は本稿の議論の前提条件

に関わる問題であり,日本経済の枠組みが本稿の理論的枠組みに近付いたこと

を意味している。これは,近年において,従来とは際立って異なうたタイプの

ストックインフレが生じていることの一つの説明になっている。また,第二の

点は,収益の期待成長率が株価と負の相関にあり,景気上昇の最終局面におい

て株価インフレが発生するという本稿の推測と一致するものである。

 次に,株価暴落の原因であるが,この点についてはバブルを明示しない本稿

の分析の範囲外であるが,資本市場の整備に伴う裁定関係の完全化に一因を求

めることは可能であろう。余剰資金によって株価が形成されているために,実

体経済にとって些細なニュースでも,安全な市場への資金の引き上げが容易に

行なわれ,暴落といった事態の引き金になり易くなるのである。

 本稿の議論は,通常情報の経済学が,新しい古典派及び独占的競争を重視す

る新しいケインジアンの枠組みに組み込まれることが多いのに対し,金融市場

の情報の非対称性をカレルキの動学的枠組みに組み込んでいる点で新し

い(’1)。また,本稿のモデルの構造が結果的にネオケインジアンの数量制約モデ

ルと類似したものになることは興味深い。金融市場の資金供給と資金需要の数

調整が一致しない場合の定式化は,ネオケインジアンの方法に他ならないが,

そのミクロ的基礎が明確である点が情報の経済学のマクロへの適用の意義とい

えよう。

 本稿のモデルでは,全ての資金需要者が同質であり,資金市場において裁定

行動に参加できるものと仮定していたが,信用力の低い借手が債券を発行する

ことは困難である。このため,固定的銀行借入需要者の存在の仮定を追加する

ことが必要になるが,このときには資金需給の不均衡は更に大きくなり,景気

変動に伴う株価インフレの可能性は大きくなるものと思われる。この点に関す

る厳密な議論は稿を改めて行ないたい。

(11)本稿のモデルをより形式的に特徴づければ,非線形,内生的,貨幣+

  実物景気循環理論ということになろう。

Page 15: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

 7「D3113

4

3 000000

一橋研究 第16巻第2号

(1図)株価と民間設備投資

      b-~一

八h~ーーー 〆’

    ∠〆

       -M

     \馳\

               株価一・・実線

               民間設備投資一点線

                   i”ii’/lx

■》》ψ:惣冒’v ク

》」

・一べ, V

K

70 72 74 76 78 80 82(注)対前年同期比変化率 (出典)堀内(1990)

          (2図)

 dY/dt-O         巳                   1         乙                l         l               !         i              !

一m一一一一L一一一一一“一.一一一L”一一一.一一一一一.”一一一L一一一m一.一..一””.一.一

                [

                i

                i                1

       Il

   niln       l

    =一一一一1一

       :

r  R       rL

       I

48

2)80

 9

幽一一「

」L

8868

0=血/Kd

YY,

(位相図)

Page 16: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動

          (3図)

K

Y

35

gR

(4図)

 Y

gR

α,

      一  一 一  一  一

@    I@    l@    「@    1@    1一一一一一一十一一一一一一一一

一  鴨

@  I@  l   l   I   1

l   I

Il

一 鴫 _ 一  一  一

cmー

’一一一一一一一} Cα  1@       1 _____L____ b

17}

Ii

「「         lI        l      ll        1      1

ノ圏   1  1

ll   I

p    1

一一一 ア一一一一一一

@  i@  }

一『一 @ 一一『幽マー一一¶一一「一用一一一〒一一

@       l i i}匹1

1 「  I  I

I  lh  IP   }戟@  I

llb〃 i   l  l堰@ } 1

lII「

F 一  一   一   一一 -  1

レヤー 一一凹一一FF一一 s一一一『一一トー一

@       {   1 「81

I  1 1 1  「  I  l  l

営  一    一  一  一   響  一   一

@艮@l@I@}@1@[@P@圏

一  一  一   一

一一冊一一一一一一宙鼈鼈齲}一@       1@       1@       1@       1@       「@       臨@       1@   一一一一L一』一一一一一一一一一一一

「}ll「1 A一  一   一   一   一  一   一    一   一 幽  噛 一

@       1 、、

一   一  薗  一   一  一   一 「「

ソ         〃Fu     α

t

 t ノ ’’

Page 17: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

36

CE

一橋研究 第!6巻第2号

      (5図)

       Y

IIII.lI

「α

一 一  一  曽 一  _  一 一 一  一  一一  一  一  一  一  一  一  一  一

IllilI

b’81

一  一   一

P

α聖⊥_____

12

b『一一一一一一 P一一一一一

戟@        I’「一一『一■

P

一   一   一   一  一

@    【@    1

「一一一一一一@1QL______L_1 ______1_______

li l旨「

r一一一 u}一一一一u      lh      l

h     I

し1「

紅II

ll

1   1    1P    1    1P    1     1P 1 1      一   一   一   一 一   一

i,「Iα一  一  _  幽  _     [     I r〃@    I    Iα@  一一一←一一一一@    1Q______一」一___

匪1「1

ll「lI

iIIl

lll「I    II   Il    ll    Ii    l   I   I   l

圏iI「IIit211一  一  一  一  一 一  r  一  一  一  一   一  一  一  一   一

IIII8IIiIIIII一

IlllIllII  !1/1ノ

  一  一  一   一  一  一  一  r  一  一  一  一  一  一  一

黶@  一  一   一         一   一 一

一    一

黶@ 一  一  }  一  一  一  一  一  一 一 一  _  _  一  一  一  一  一  一  _  一

b EF br.

t

ノ’

1ノ

V

(6図)

C=A十BBb

Ab

Y

Page 18: 非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 URL ......021/aY2$OVY,〈Y. (1:投資,K:資本ストック, Y:実質所得) 貯蓄は,ケンインズ流に所得の関数とし,更に資産効果として資本ストックの

非対称情報下の内生的景気循環理論と株価変動 37

参考文献Bernanke, B. a.nd Gartler, M. (1986), “Agency Cost, Collateral and Busi-

   ness Fluctuations,” NBER W. P, 2015.

Bernanke, B. (1988), “Monetary Transmission Through Money or Credit.”

   Business Review: Federal Reserve Bank of Philadelphia, November/

   December

Black, F. (1988) “An Equiribrium Model of Crash,” Macroeconomics

   Annual NBER.

Blinder, A. S. (!987), “Credit Rationing and Effective Supply Failures,”

   The Economic Journal, 97, June.

Chang, W. and Smith, D. (1971), “The Existence and Persistence of Cycles

   in a Non-Linear Model: Kaldor’ s 1940 Model Re-Examined.”

   Review・of Economic Studies, 38, pp 37-44.

French, K. R. (1988), “Crash-Testing The Efficient Market Hypothesis,”

   Macroeconomics Annual NBER.

Gabrisch, G. and Lorenz, H (1987).Business Cycle Theory: A Survey of

   Methods and Concepts.

Hirsch, M. and Smale,・S, (1974), Differential Equations, Dynamical Sys-

   tems and Linear Algebra, Academic Press.

堀江他(1990),「日本の金融変動と金融対策』東洋経済。

堀内昭義他(1990),「資産価格変動とマクロ経済構造」,経営経済研究,11-

   20

池尾和人(1990),「銀行リスクと規制の経済学』東洋経済。

小峰隆夫他(1989),『株価・地価変動と日本経済』東洋経済。

Meza, D. and Webb, D (1987), “Too Mach lnvestment: AProblem of

   Asymmetric lnformation,” May.

美濃口他(1985),『現代経済学の新展開』有斐閣。

Minsky, H. P. (1982), Can “lt” Happen Again, M. E. Sherpe.

Sawyer, M. C. (1982) Mcro-Economics in Question, Wheatsheaf.

Stiglitz, J. and Weiss, A. (1981), “Credit Rationing in Market with lmper-

   fect lnformation,” American Economic Review, June.

Townsent, R, M. (1979), “Optimal Contract and Competitive Markets with

   Costly State Verification,” Journal of Economic Theory 21.

和田和夫(1989),『動態的経済分析の方法』中央経済社。

Williamson (1986), Costly Monitoring, Financial lntermediation, and

   Equiribrium Credit Rationing, Journal of Monetary Economics 18.

藪下史郎(1987),「アメリカの金融市場と構造』東洋経済。