日本冠動脈外科学会・理事長

瀬在幸安

冠動脈外科全国アンケート調査結果2012年

日本冠動脈外科学会・全国アンケート調査委員会

委員長： 折目由紀彦 （日本大学）

副委員長： 荒井裕国 （東京医科歯科大学）

委員： 落 雅美 （日本医科大学）

委員： 西田 博 （東京女子医大）

委員： 申 範圭 （東京歯科大学市川総合病院）

委員： 新浪 博 （埼玉医大国際医療センター）

日本冠動脈外科学会公式ホームページ：http://www.jacas.org

冠動脈バイパス術(CABG)

総数 : 14,999

単独手術 : 10,658 (71%)(前回72%)

合併手術 : 4,341 (29%)(前回28%)

単独手術

初回待機手術 : 8,983 初回待機手術以外 :1,675

Off-pump : 5,865 Off-pump : 880

On-pump : 3,118 On-pump : 795

(Off-pump率 : 65%) (Off-pump率 : 53%)

(前回 : 67%) (前回 : 55%)

Off-pump CABG（初回待機手術）の年次推移

0

10

20

30

40

50

60

70

80

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

%

年

67%

65%

初回待機手術総数 :8,983(100%)

On-pump (心停止) :2,038(22.7%)

On-pump (心拍動) :1,080(12.0%)

Off-pump (総数) :5,865(65.3%)

Off-pump (完遂) :5,718

On-pump (移行) : 147

Off-pumpの完遂率 :97.5%

Off からOn-pumpへの移行率 : 2.5%

(前回:3.8%)

単独CABG総数死亡率:1.49%

(前回:2.72%)

単独初回待機手術死亡率:0.72%

(前回:2.12%)

On-pump (心停止) :0.83%

On-pump (心拍動) :1.67%

Off-pump (総数) :0.51%

Off-pump (完遂) :0.45%

(前回:2.11%)

On-pump (移行) :2.72%

(前回:3.16%)

死亡率の年次推移（単独手術総数と単独初回待機手術）

2.72%

2.12%

1.45%

2.12%

0.75% 1.20%

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

%

年

総数

初回待機

2.72%

2.12%

0.72%

1.49%

手術手技別死亡率の年次推移（単独初回待機手術）

0

1

2

3

4

5

6

7

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

%

年

Off-pump（完遂）

On-pump（心拍動）

On-pump（心停止）

Offからon-pumpへの移行

病変数による手術成績 (初回待機手術 総数：8,983例、死亡率:0.72%)

死亡率

(%)

1.0

0 25 50 75 100 (%)

1VD

(0.26%)

2VD

(0.92%) 3VD

(0.64%)

LMT

(0.83%)

LMT＋2VD

(0.47%)

LMT＋1VD

(1.27%)

LMT＋3VD

(0.89%)

2.0

病変数による手術成績 (初回待機手術 off-pump完遂：5,718例、死亡率:0.45%)

死亡率

(%)

2.0

1.0

0 25 50 75 100 (%)

1VD

(0.3%)

2VD

(0.51%)

3VD

(0.33%)

LMT

(1.24%)

LMT＋1VD

(1.40%)

LMT＋2VD

(0.55%)

LMT＋3VD

(0.40%)

病変数による手術成績 (初回待機手術 on-pump 心停止：2,038例、死亡率:0.83%)

死亡率

(%)

2.0

1.0

0 25 50 75 100 (%)

1VD

(0%)

2VD

(0.82%)

3VD

(1.00%)

LMT

(0%)

LMT＋1VD

(0%)

LMT＋2VD

(0%)

LMT＋3VD

(1.16%)

病変数による手術成績 (初回待機手術 off on-pumpへの移行：147例、死亡率:2.72%)

死亡率

(%)

20

10

0 25 50 75 100 (%)

2VD

(0%)

3VD

(0%)

LMT

(0%)

LMT＋1VD

(0%)

LMT＋2VD

(12.5%)

LMT＋3VD

(8.11%)

病変数による手術成績 (初回待機手術 on-pump心拍動：1,080例、死亡率:1.67%)

死亡率

(%)

2

0 25 50 75 100 (%)

1VD

(0%)

3VD

(1.47%)

LMT

(0%)

LMT＋1VD

(3.23%)

LMT＋2VD

(0%)

LMT＋3VD

(1.44%)

4

1

3

2VD

(3.82%)

病変数による手術成績 (初回待機以外の手術 総数：1,675例、死亡率:5.61%)

死亡率

(%)

10

5

0 25 50 75 100 (%)

1VD

(7.27%)

2VD

(5.26%)

3VD

(5.32%)

LMT

(7.50%)

LMT＋1VD

(4.82%)

LMT＋2VD

(5.33%)

LMT＋3VD

(5.66%)

手術手技による手術成績 (初回待機以外の手術 総数：1,675例、死亡率:5,61%)

死亡率

(%)

10

5

0 25 50 75 100 (%)

Off-pump(total)

3.40%

On-pump

(心拍動)

9.45% On-pump

(心停止)

6.62%

手技別のバイパスグラフト本数（初回待機手術）

総数

On-pump

心停止

On-pump

心拍動

Off on

移行

Off-pump

完遂

0 25 50 75 100%

平均本数

(昨年）

2.97

(2.96)

3.22

(3.17)

3.01

(3.08)

3.17

(3.25)

2.87

(2.86)

１枝 ２枝 ３枝 ４枝以上

４枝以上

４枝以上

４枝以上

４枝以上

３枝

３枝

３枝

３枝

２枝

２枝

２枝

２枝 １枝

１枝

１枝

バイパスグラフト本数別の手技（初回待機手術）

１枝

２枝

３枝

４枝以上

0 25 50 75 100%

Off-pump

Off on-pumpへの移行 On-pump(心拍動)

On-pump

(心停止)

Off-pump

Off-pump

Off-pump

On-pump

(心停止)

On-pump

(心停止)

On-pump

(心停止)

障害枝別の手技（初回待機手術）

１枝

２枝

３枝

0 25 50 75 100%

Off pump

Off on-pumpへの移行 On-pump(心拍動)

Off pump

On-pump

(心停止)

LMT

LMT＋1枝

LMT＋2枝

LMT＋3枝

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

On-pump

(心停止)

On-pump

(心停止)

On-pump

(心停止)

On-pump

(心停止)

On-pump

(心停止)

On-pump

(心停止)

障害枝別のon-pump（心停止）とoff-pump（完遂）の手術成績 （初回待機手術）

死亡率

(%)

2.0

1.0

0

Off-pump（完遂）

On-pump（心停止)

1枝 2枝 3枝 LMT LMT

＋2枝

LMT

＋1枝

LMT

＋3枝

総数

0.45

0.83

0.3

0

0.51

0.82

0.33

1.0

1.24

1.40

0

0.55

0

0.4

1.16

0

障害枝別のoff on-pumpへの移行率(初回待機手術）（全体:2.5%)

１枝

２枝

３枝

0 25 50 75 100%

Off pump

Off on-pumpへの移行

Off pump

LMT

LMT＋1枝

LMT＋2枝

LMT＋3枝

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

0%

2.3%

2.9%

1.8%

1.4%

1.4%

3.5%

移行率

(前回：3.8%)

グラフト吻合箇所別のon-pump(心停止）とoff-pumpの比較(初回待機手術）

0 25 50 75 100%

On-pump(心停止)

On-pump(心停止)

On-pump(心停止)

Off-pump

Off-pump

Off-pump

66%

60%

86%

89%

76%

69%

吻合＋

吻合−

RCA

LAD

LCX

吻合部位の有無によるoff-pumpとon-pumpへの移行の関係(初回待機手術）

0 25 50 75 100%

RCA(＋) 3,533

LAD(＋) 5,233

LCX(＋) 4,075

RCA(−) 2,332

LAD(−) 632

LCX(−) 1,790

Off-pump

Off on-pumpへの移行

2.7%

2.6%

2.8%

2.1%

1.7%

1.8%

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

症例数 移行率

男女別の年齢分布（初回待機手術）

2000 1000 1000 0 0

347

991

2584

2767 678

45

129

493

892

331

49≧

60−69

50−59

70−79

≧80

（年齢） 男性：79.6% 女性：20.4%

3000

高齢者割合の年次推移（初回待機手術）

51.5%

10.7%

0

10

20

30

40

50

60

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2008 2009 2010 2011 2012

%

年

70歳以上

80歳以上

年齢別死亡率の年次推移（初回待機手術）

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2008 2009 2010 2011 2012

%

年

49歳≧

５０−５９歳

６０−６９歳

７０−７９歳

８０歳≦

グラフトの選択 （単独バイパス手術における延べ本数：28,489本）

左内胸動脈

(35.9%)

右内胸動脈

(14.1%)

胃大網動脈

(3.0%)

橈骨動脈

(5.0%)

大伏在静脈

(41.8%)

グラフト選択の年次推移

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

%

年

左内胸動脈

右内胸動脈

胃大網動脈

橈骨動脈

大伏在状静脈

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

Off-pump（完遂） On-pump（心拍動） On-pump（心停止） OffからOn-pumpへの

移行

%

手術手技別のstrokeの発生率（全単独冠動脈バイパス術） 全体の発生数：112例

全体の発生率：112/10658(単独冠動脈バイパス術数）＝1.05%

0.81%

1.62%

1.19%

3.24%

p=0.0113

p<0.0001

p=0.4973

p=0.1243

p=0.3161

p=0.0215

PCI後の合併症に対する緊急冠動脈バイパス手術の成績 定義；PCI後の合併症（冠動脈閉塞や出血など）に対して

24時間以内に緊急手術をおこなった症例

例数：108例

発生率：108例／10658例(単独CABG症例）；1.0%

死亡例：15例

死亡率:13.9%

手術手技別の成績

例数 死亡数 死亡率(%)

1枝バイパス 29 6 20.69

2枝バイパス 29 4 13.79

3枝バイパス 28 2 7.14

4枝バイパス 11 0 0

その他の手術 11 3 27.27

心室中隔穿孔の手術成績の年次推移

2012年;

総数：189、死亡：35(死亡率：18.5%)

0

10

20

30

40

50

60

死亡率（％）

年

心室中隔穿孔の手術成績(1) 生存

0 50 100 150

総数

バイパス（＋）

バイパス（−）

死亡

35

189(死亡率18.5%)

81 11

108 24

154

84

(死亡率13.6%)

(死亡率22.2%)

(例数）

200

70

心室中隔穿孔の手術成績(2)

0 50 100 150

Dagett法

生存

死亡

(死亡率8.8%)

24

22

(死亡率20.8%)

(死亡率45.5%)

(例数）

Komeda法

34

98

31 3

93 (死亡率15.3%)

前壁梗塞(死亡率13.7%)

Dagett法

Komeda法

後下壁梗塞(死亡率32.0%)

83 15

その他 7 (死亡率0.14%)

19 5

12

その他 4 (死亡率25.0%)

1

10

1

6

3

左室乳頭筋断裂の手術成績の年次推移

2012年;

総数：34、死亡：7(死亡率：20.6%)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

死亡率（％）

年

左室乳頭筋断裂の手術成績

0 10 20 30

総数

バイパス（＋）

バイパス（−）

生存

死亡

34 (死亡率20.59%)

16

18 14

(死亡率18.75%)

(死亡率22.2%)

(例数）

7 27

13

4

3

心破裂の手術成績の年次推移

2012年;

総数：166、死亡：42(死亡率：25.3%)

0

20

40

60

80

100

120

死亡率（％）

年

心破裂の手術成績

0 50 100 150

総数

バイパス（＋）

バイパス（−）

生存

死亡

166 (死亡率25.3%)

(死亡率53.1%)

(死亡率12.5%)

(例数）

42 124

Blowout type 54 (死亡率51.9%) 28 26

5 (死亡率40.0%) 2

3

49 26 23

Oozing type

バイパス（＋）

バイパス（−）

112 14 98

22 (死亡率13.6%)

11 79 90 (死亡率12.2%)

3

19

左室瘤全体の手術成績の年次推移

2012年;

総数：308、死亡12(死亡率：3.89%)

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

死亡率（％）

年

左室瘤・虚血性心筋症に対する左室形成術（左室瘤切除を含む）の手術成績

0 100 200 300

総数

バイパス（＋）

バイパス（−） 生存

死亡

5 (死亡率2.59%)

144 5

188

139 (死亡率3.47%)

(死亡率0%)

(例数）

49 49

193

虚血性僧帽弁閉鎖不全に対する僧帽弁形成・置換術の手術成績

0 200 400

総数

死亡

47

1

(死亡率4.24%)

(例数）

20 451

総数

バイパス（＋）

バイパス（＋）

バイパス（−）

バイパス（−）

総数

381（死亡率3.67%) 14 367

343（死亡率3.79%) 13 330

38（死亡率2.63%)

37

90（死亡率6.66%)

84

72（死亡率8.33%)

6

66

18（死亡率0%)

18

生存

僧帽弁形成術

僧帽弁置換術

100 300 500

6

600

1

左室瘤・虚血性心筋症＋虚血性僧帽弁閉鎖不全の手術成績

0 50 100 150

総数

死亡

115 (死亡率6.08%)

(例数）

7

総数

バイパス（＋）

バイパス（＋）

バイパス（−）

バイパス（−）

総数

99（死亡率7.0%) 7 92

82（死亡率4.88%) 4 78

17（死亡率17.65%)

7（死亡率0%)

7

16（死亡率0%)

9（死亡率0%)

生存

左室形成術

＋

僧帽弁形成術

左室形成術

＋

僧帽弁置換術

14

16

3

108

9

結語(1) 1. 冠動脈バイパス手術症例は単独手術の割合が減少し、

他の手術との合併手術の割合が増加した。

2. 単独冠動脈バイパス手術全体の死亡率は1.49%、初回

待機手術の死亡率は0.72%と前回より著明に低下し、調査を初めて以来、最良の手術成績であった。

3. 初回待機手術の内65%がoff-pumpで行われ、施行率は依然高率であった。また、その死亡率は0.45%と極めて低く、これも近年では最良の成績であった。

4．Off-pumpからon-pumpへの移行率は2.5%と、前回 より低下し、その死亡率は2.72%と、前回より低下 し、成績は改善した。

5．多枝バイパスほどoff-pumpの施行率が低下するが、4

枝以上でも59%の症例がoff-pumpで行われた。

結語(2) 6．症例は年々、高齢化しており、70歳以上は50%、80歳以上は11%を占めた。

7．動脈グラフトは全グラフトの58%に使用されたが、その使用率は年々低下し、静脈グラフトの使用率(42%)が増加した。

8．単独冠動脈バイパス術後の脳血管イベントの発生率は1.05%であり、手術手技間の発生率ではoffからoff-pumpへの移行は脳血管の有害事象を起こす危険因子であり、off-pump（完遂）はon-pump（心拍動）に比して有意に脳血管イベントを回避することが示された。

9. PCI後の合併症に対する緊急手術は単独冠動脈バイパス術の1%を占め、その死亡率は13.9%と前回より低下したが、依然予後不良であった。

10.心筋梗塞後合併症は、前回より手術成績は向上した。

しかし、後下壁梗塞の心室中隔穿孔、 左室乳頭筋断裂、blowout typeの心破裂の成績は依然として不良であった。