38
1 医薬品医療機器総合機構 佐久嶋 研 難病・希少疾病治療薬の 薬事承認における現状と課題 本発表は、発表者の個人的見解に基づくものであり、 PMDAの公式見解を示すものではありません。 文部科学省 「未来医療研究人材養成拠点形成事業」 臨床発実用化マネジメント人材養成拠点 第4回シンポジウム 創薬イノベーション人材の育成を目指して ~ 難病克服のエコシステムを探る ~ 日 時 平成2710 29 () 場 所 東京大学 情報学環・福武ホール

難病・希少疾病治療薬の 薬事承認における現状と課題1 医薬品医療機器総合機構 佐久嶋研 難病・希少疾病治療薬の 薬事承認における現状と課題

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1

医薬品医療機器総合機構

佐久嶋 研

難 病 ・ 希 少 疾 病 治 療 薬 の薬事承認における現状と課題

本発表は、発表者の個人的見解に基づくものであり、PMDAの公式見解を示すものではありません。

文部科学省 「未来医療研究人材養成拠点形成事業」臨床発実用化マネジメント人材養成拠点 第4回シンポジウム創薬イノベーション人材の育成を目指して

~ 難病克服のエコシステムを探る ~

日 時 平成27年10 月29 日 (木)場 所 東京大学 情報学環・福武ホール

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アウトライン

難病・希少疾病治療薬に関わる制度

希少疾病用医薬品の指定状況

希少疾病用医薬品の承認状況

希少疾病用医薬品開発における課題

まとめ

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3

アウトライン

難病・希少疾病治療薬に関わる制度

希少疾病用医薬品の指定状況

希少疾病用医薬品の承認状況

希少疾病用医薬品開発における課題

まとめ

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4

難病・希少疾病の創薬開発はなぜ難しいのか?

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5

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000087752.pdf

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http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000089136.pdf

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http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000089136.pdf

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希少疾病用医薬品・希少疾病用医療機器・希少疾病用再生医療等製品の指定制度

制度概要 患者数が少ない疾患に対する医薬品及び医療機器等は、有効性、安全性等

を検証する試験が行いにくい 研究や開発に対する投資回収も容易でないため、充分な開発が進みにくい

傾向がある 平成5年(1993年)、こうした医薬品及び医療機器等を希少疾病用医薬品

又は希少疾病用医療機器等に指定し、開発を支援する制度が構築された

医薬品医療機器等法第77条の2に基づき、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が指定するもの。 対象患者数

我が国における対象者数が5万人未満であること。ただし、対象疾病が指定難病の場合は、その限りではない。

医療上の必要性 難病など重篤な疾病を対象とするとともに、次のいずれかに該当するなど、特に医

療上の必要性が高いものであること。 代替する適切な医薬品・医療機器又は治療法がないこと。 既存の医薬品・医療機器と比較して著しく高い有効性又は安全性が期待されること。

開発の可能性 対象疾病に対して当該医薬品又は医療機器を使用する理論的根拠があるとともに、

その開発に係る計画が妥当であると認められること。

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9

http://www.nibio.go.jp/part/promote/orphan_support/

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10

アウトライン

難病・希少疾病治療薬に関わる制度

希少疾病用医薬品の指定状況

希少疾病用医薬品の承認状況

希少疾病用医薬品開発における課題

まとめ

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11

日米欧の開発支援制度

日本 欧州 米国

1993年 2000年 1983年

指定要件

・対象者数50,000人未満(3.9人/10,000人)または指定難病であること・医療上の必要性・開発の可能性

・10,000人あたり患者数5人・重篤な疾患・医療上の必要性

患者数200,000人未満(6.5人/10,000人)または米国において開発コストの回収が困難である

指定品目数(~2012年まで)

305 1000 2614

承認数/指定数 190/305(62%) 70/1000(7%) 390/2614(15%)

助成制度医薬基盤研究所による開

発支援事業ECまたは他の団体による

Orphan products grants program

指導、助言 あり あり あり

ベンチャー企業への支援

薬事戦略相談 ありSmall business

assistance

税制措置 あり あり あり

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希少疾病用医薬品の指定品目① 指定品目数

※2004~2014年度指定品目191品目について集計*:「未承認薬使用問題検討会議」の関連品目を含む

11

3

17

8

16

4

15

27

31 31

28

0 1 0 0

4

1

7

13

6

2

5

1 1

42

6

24

8

57

13

0

5

10

15

20

25

30

35

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

品目総数 うち「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」*関連品目 うち指定難病

(年度)

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希少疾病用医薬品の指定品目② 推定患者数別

※2004~2014年度の指定品目191品目からHIV治療薬及びワクチンを除いた170品目

24%

7%

45%

14%

10%

~500500~1,0001,000~10,00010,000~20,00020,000~50,000

40

12

77

241714

3

21

105

0

20

40

60

80

総品目数 うち、指定難病

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・2分野:循環器用薬、抗パーキンソン剤、アルツハイマー病薬・3-1分野:中枢神経系用薬、末梢神経系用薬。但し、麻薬用薬を除く・6-1分野:呼吸器官用薬、アレルギー用薬(外皮用薬を除く)、感覚器官用薬(炎症性疾患に係るもの)・6-2分野:ホルモン剤、代謝性疾患用剤(糖尿病、骨粗鬆症、痛風、先天代謝異常等)・エイズ:HIV感染症治療薬・ワクチン:ワクチン(感染症の予防に係るものに限る)、抗毒素類・抗悪:抗悪性腫瘍薬

希少疾病用医薬品の指定品目③ 分野別

2分野

9% 3-1分野

14%

6-1分野

10%

6-2分野

11%抗悪

31%

ワクチン

7%

エイズ

6%

その他

11%

※2004~2014年度指定品目191品目について集計

0

5

10

15

20

25

30

2 3-1 6-1 6-2抗悪 ワクチン エイズ その他

191品目

(年度)

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アウトライン

難病・希少疾病治療薬に関わる制度

希少疾病用医薬品の指定状況

希少疾病用医薬品の承認状況

希少疾病用医薬品開発における課題

まとめ

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希少疾病用医薬品の承認審査と優先審査

希少疾病用医薬品・希少疾病用医療機器に指定されたものについては、できるだけ早く医療の現場に提供できるよう、他の医薬品・医療機器に優先して承認審査がなされる。

年 度 目標値(中央値)

実績

平成22年度 10ヵ月 12.0ヵ月

平成23年度 9ヵ月 9.2ヵ月

平成24年度 9ヵ月 9.0ヵ月

平成25年度 9ヵ月 8.0ヵ月

平成26年度 9ヵ月 8.9ヵ月

優先審査品目の総審査期間(医薬品の場合) 優先審査品目の承認件数と総審査期間

13

1825 31

37

12

9.2 98

8.9

0

2

4

6

8

10

12

14

05

10152025303540

22年度 23年度 24年度 25年度 26年度

総審査期間承認件数

承認件数 総審査期間

(未承認薬対応の公知申請は除く)

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承認品目の分野

※2004~2014年度の指定品目のうち承認済み111品目

• 2分野:循環器用薬、抗パーキンソン剤、アルツハイマー病薬• 3-1分野:中枢神経系用薬、末梢神経系用薬。但し、麻薬用薬を除く• 6-1分野:呼吸器官用薬、アレルギー用薬(外皮用薬を除く)、感覚器官用薬(炎症性疾患に係るもの)• 6-2分野:ホルモン剤、代謝性疾患用剤(糖尿病、骨粗鬆症、痛風、先天代謝異常等)• 抗悪:抗悪性腫瘍薬• ワクチン:ワクチン(感染症の予防に係るものに限る)、抗毒素類• エイズ:HIV感染症治療薬• その他

2分野

7%3-1分野

10%

6-1分野

7%

6-2分野

14%

抗悪

33%

ワクチン

8%

エイズ

11%

その他

10%

111品目

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臨床試験:臨床データ

5

5

10

5

6

17

9

2

5

1

2

1

2

13

2

1

0 5 10 15 20 25

その他

2

3-1

6-1

6-2

抗悪

ワクチン

エイズ臨床試験あり(国内)

臨床試験あり(国際共同)

使用成績調査

臨床研究のみ

なし(公知)

なし(エイズ)

その他

※2004~2013年度の指定品目のうち承認済み86品目

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分野別の試験デザイン

※2004~2013年度の指定品目のうち承認済み品目からエイズ治療薬を除いた66品目

4

4

1

3

3

1

1

1

2 2

1

1

4

4

6

19

1

6

1

1

0 5 10 15 20 25

2分野

3-1分野

6-1分野

6-2分野

抗悪

ワクチン

その他

二重盲検並行群間比較試験 二重盲検交叉比較試験 二重盲検前後差比較試験

単盲検前後差比較試験 非盲検並行群間比較試験 非盲検前後差比較試験

PK試験 その他

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20

海外開発状況と国内データ

40

16

3

5

1

2 3 13 2

0 10 20 30 40 50 60 70

海外承認あり

海外承認なし

海外審査中

不明

臨床試験あり(国内) 臨床試験あり(国際共同) 使用成績調査

臨床研究のみ なし(公知) なし(エイズ)

その他

※2004~2013年度の指定品目のうち承認済み86品目

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海外開発状況と国内試験の試験デザイン

9

5

1

1

1

1 2

2 32

7

2

1

1

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

海外承認あり

海外承認なし

海外審査中

不明

二重盲検並行群間比較試験 二重盲検交叉比較試験 二重盲検前後差比較試験

単盲検前後差比較試験 非盲検前後差比較試験 PK試験

その他

※2004~2013年度の指定品目のうち国内臨床試験を実施している66品目

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希少疾病用医薬品の承認審査状況から

これまでに承認された希少疾病用医薬品の多くは海外で開発が先行していた

→海外(特に欧米)臨床試験を 大限利用できた

ドラッグラグは短縮され、国内外でほぼ同時に開発される品目が増加していくことが予測される

→海外と時間差なく開発を進めるための戦略は?

有効性・安全性の客観的な評価に基づき「医薬品」となり得る、希少疾患であっても一定のエビデンスを構築することが求められる

→エビデンスとなり得るか?

→もっとも適切な試験デザインは?

→その実施可能性は?

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アウトライン

難病・希少疾病治療薬に関わる制度

希少疾病用医薬品の指定状況

希少疾病用医薬品の承認状況

希少疾病用医薬品開発における課題

まとめ

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適切な開発戦略のために:薬事戦略相談

日本発の革新的医薬品・医療機器の創出に向けて、現状では有望なシーズを発見した大学・研究機関、ベンチャー企業等が製品化につなげるための開発戦略に不案内であることから、それら有望性の高いシーズの実用化に向けて、シーズ発見後の大学・研究機関、ベンチャー企業を主な対象とし、医薬品・医療機器候補選定の最終段階から臨床開発初期(Proof of Concept: POC)試験(前期第Ⅱ相試験程度)までに至るまでに必要な試験・治験計画策定等に関する相談への指導・助言を行うもの。

以下の優先分野に該当し、かつ有望性が期待できるものは対面助言の対象となる。

優先分野

• 再生医療(細胞・組織加工製品)分野の製品• がん分野の製品• 難病、希少疾病分野の製品• 小児分野の製品• 上記以外でも特に革新的な技術を利用した製

品(注)分野間の順位は問わない

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適切な開発戦略のために:薬事戦略相談

平成23年7月~平成26年度実施分(取り下げを除く)

153

254

346325

0

50

100

150

200

250

300

350

400

23年度 24年度 25年度 26年度

事前面談

20

28

66

48

6 5

38

16

25 7

19 19

0

10

20

30

40

50

60

70

23年度 24年度 25年度 26年度

対面助言

医薬品 医療機器 再生医療等製品 その他

臨床試験を実施するためにやっておくべきことは?対面助言に必

要な資料は?

さぁ、次の段階へ!

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課題の整理

開発に影響する要因を適切に整理してLimitationへの対処を考える

原因・病態の解明→バイオマーカー等の活用

患者数→国際共同試験、患者レジストリ

疾患の進行様式→試験デザイン

現在の科学水準で出来る事・出来ない事

実行可能な事に取り組めているか?

未解決の課題は何かわかっているか?

薬事戦略相談で何を相談するのか?

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27

課題:対照群の設定が困難

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28

比較対照試験が困難な場合:外部対照の可能性

「1.2 対照群の目的」

・被験治療により患者に起こった結果(outcomes 例えば症状、徴候、その他の病態の変化)と、疾患の自然の進行、観察者・患者の期待、他の治療等の要因により引き起こされた結果との弁別を可能にすること

・対照群を用いることにより、被験治療が行われなかった場合に患者に起こったであろう結果、または有効であることが知られている他の治療を受けた場合に起こったであろう結果を知ることができる。

・同時対照群は、被験群と同じ母集団から選ばれ、被験治療が検討されている同じ試験の一部として、あらかじめ定められた方法で、同じ時期に治療される群である。

(ICHガイドラインE10:「臨床試験における対照群の選択とそれに関連する諸問題」)

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外部対照を考える

国内で実施されたヒストリカルコントロールを用いた外部対照試験:

「プログラフカプセル0.5mg」他

効能・効果:

多発性筋炎(PM)・皮膚筋炎(DM)に合併する間質性肺炎

臨床試験(計画時):

非盲検非対照下で本剤とステロイド剤併用時の有効性及び安全性を検討(目標症例数20例)。外部対照としてステロイド単剤で初期治療が行われたデータを後ろ向きに収集したヒストリカルコントロール群を設定し、マッチングを行った上で本剤投与群と比較する。

主要評価項目:

52週後の生存率

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30

外部対照を考える

結果:

ヒストリカルコントロール群の症例集積が進まず、途中で選択/除外基準を変更して追加集積を行ったが、集積例数は目標に到達しなかった。

→臨床現場では、ステロイド剤と免疫抑制剤の適応外使用による併用治療が一般化され、初期治療としてステロイド剤単剤治療が行われる患者は軽症例等に限られる状況であったことが考えられた。

有効性の評価は、臨床試験における本剤投与群の生存率と、当該疾患患者についてステロイド剤と免疫抑制剤の併用治療が行われた患者及びステロイド剤のみによる初期治療が行われた患者を対象として生存率が記載された公表文献のデータと比較した結果に基づき考察された。

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外部対照を考える

PMDA審査チームの見解:

本剤の適用対象となるPM・DM に合併する間質性肺炎は予後不良で不可逆的に進行する難治性疾患であること、多くの患者が既存治療のステロイド剤単剤治療に抵抗性を示すこと、さらに、医師主導治験の計画時には、ステロイド剤単剤治療が効果不十分な場合に免疫抑制剤を追加併用するよりも、初期治療からステロイド剤と免疫抑制剤を併用投与する方が、短期死亡率が低下することが報告されており、臨床現場において初期治療から当該併用投与が支持される状況であったことを勘案すると、医師主導治験を非盲検非対照試験として実施したことについてはやむを得なかったと考える。

また、本剤を含む免疫抑制剤とステロイド剤の併用が広く適応外使用されている実態を踏まえれば、現状では、Historical control(パートB/B’)のデータとして、本剤の適用対象となる患者と同様の重症度を有し、ステロイド剤単剤治療を受けた患者のデータを収集することは困難であったこともやむを得なかったと考える。

(「プログラフカプセル0.5mg」他 審査報告書(効能追加時))

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32

外部対照を考える

PMDA審査チームの見解(専門協議後):

希少疾病用医薬品の承認申請においても無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施し、被験薬の有効性及び安全性を検討することが原則であると考えるが、本剤の適用対象となるPM・DM に合併する間質性肺炎は予後不良で不可逆的に進行する難治性疾患であること、多くの患者が既存治療のステロイド剤単剤治療に抵抗性を示すこと、さらに、既に本剤を含む免疫抑制剤とステロイド剤の併用が広く適応外使用されている実態があり、適切な対照を設定した臨床試験の実施が困難な状況であることを勘案した上で、提示された医師主導治験成績及び公表文献情報より、PM・DM に合併する間質性肺炎に対する本剤の一定の有効性は期待できると評価することは可能と判断した。

(「プログラフカプセル0.5mg」他 審査報告書(効能追加時))

計画段階から比較可能性、実施可能性を考慮することが重要であり、その後の開発にも有用なデータベースとなり得る。

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外部対照を考える

比較可能なデータを収集できなければ意味がない

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外部対照の問題点

「2.5 外部対照(既存対照も含む)」

対照群は、治療される集団と正確に同じ集団から得られるものではない

バイアスを制御できないことが外部対照試験の主たる、そしてよく知られた限界である

試験治療の使用の有無以外に、人口統計学的特性、診断基準、病期又は疾病の重症度、併用治療及び観察の条件(結果の評価方法、研究者の期待)等、試験結果に影響しうる様々な因子が群間で異なる可能性がある。

(ICHガイドラインE10:「臨床試験における対照群の選択とそれに関連する諸問題」)

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外部対照の問題点

「2.5.4 特定の条件での外部対照試験の有用性及び推測の妥当性」

被験治療が全ての既存治療法より優れているとの事前の確信が極めて強いため、他の試験デザインが受け入れ難いと考えられ、治療される疾患や症状の経過が文献上確立し十分予測できる場合のみ

「2.5.6 外部試験の長所」

全ての患者が有望な薬剤の投与を受けられること

(ICHガイドラインE10:「臨床試験における対照群の選択とそれに関連する諸問題」)

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外部対照を考える前に

開発に影響する要因を適切に整理してLimitationへの対処を考える

原因・病態の解明→バイオマーカー等の活用

患者数→国際共同試験、患者レジストリ

疾患の進行様式→試験デザイン

現在の科学水準で出来る事・出来ない事

実行可能な事に取り組めているか?

未解決の課題は何かわかっているか?

Limitationに対応した臨床開発戦略

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37

アウトライン

難病・希少疾病治療薬に関わる制度

希少疾病用医薬品の指定状況

希少疾病用医薬品の承認状況

希少疾病用医薬品開発における課題

まとめ

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まとめ

日本には難病・希少疾病の創薬の土台となる制度がある

日本の希少疾病用医薬品の開発は増加傾向にある

これまでに承認された希少疾病用医薬品では、多くが先行する海外での開発を 大限利用し、国内での臨床開発をおこなっていた

難病・希少疾病治療薬の臨床開発の課題の整理と解決策の検討を行うために何ができるか

→効率がよい、実施可能性のある、適切な臨床開発戦略とは・・・?