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連絡が遅くなり、失礼しましたweb.tuat.ac.jp/~biophy07/shibukai/allprogram.doc  · Web viewその結果、全く異なる種類のタンパク質に共通する、安定したβ-ヘアピン様の構造形成能を有する短い領域の同定に成功した。

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連絡が遅くなり、失礼しました

生物物理関東地区研究会

プログラム・要旨集

会期:2012年3月5日(月)・6日(火)

会場:東京農工大学小金井キャンパス・140周年記念会館

生物物理関東地区研究会(第0回生物物理関東支部研究会?)へのお誘い

研究者間の交流と学生のエンカレッジを目的として、生物物理の関東地区のメンバーを中心とした研究会の開催を計画しています。将来的には生物物理関東支部の活動として認められる方向で、生物物理学会の運営委員会で議論をしていただいています。

 研究会のスタイルは、全員で1つの発表をじっくり聞くというものです。時間の短いA発表と時間の長いB発表のどちらかを選ぶことが出来ます。ある程度まとまった話をじっくり議論したい場合はB発表を、予備的な話だが反応を見たいとか、学生のトレーニングの機会としたいなどの場合はA発表を選ぶのがよいかもしれません。もちろん、学生さんがB発表に申し込んでいただくのも歓迎します。

賛同者リスト

発起人(五十音順)(5名):太田 善浩(東京農工大)、加藤 薫(産総研)、黒田 裕(東京農工大)、園山 正史(群馬大)、由良 敬(お茶の水女子大)

事務局:東京農工大学・大学院工学研究院・生命工学専攻

太田善浩 Email: ohta @cc.tuat.ac.jp

日  時:3月5日(月)10:10~・6日(火)9:20~

(初日は第一発表20分前、二日目は10分前から受付を開始)

懇 親 会:3月5日:17:30~19:30

場  所:東京農工大学小金井キャンパス・140周年記念会館(エリプス)3階会議室

参加費:事前申し込み3000円(学生0円)懇親会金額 3000円(学生2000円)

     当日申し込み4000円(学生1000円)懇親会金額 3000円(学生2000円)

懇親会費は準備の関係3月5日13:30までにお支払い下さい

それ以降ご参加の方は会場で懇親会費を頂きますので事前に連絡を下さい

参加資格:生物物理に興味がある人(生物物理の学会員であるかどうかは問いません)

参加者へのご案内

· 発表形式:日本語による口頭発表(外国の方は英語も可)、液晶プロジェクター使用 A発表:講演7分・質疑応答3分 B発表:講演15分・質疑応答10分以下の通りベルを鳴らします。タイムキーパーは座長が務めます。ベル1回:講演時間終了、質疑応答開始ベル2回:質疑応答終了時間厳守で講演を進めてください。次に発表する方は前の発表が終わり次第、速やかにパソコンの接続準備等をしてください。

· 各自パソコンをご持参ください。パソコンを持ち込まれる際のご注意

※会場のプロジェクターとお持ち込みのパソコンとの接続はD-sub15ピンとなります。付属のコネクターが必要な場合、お忘れなくご持参ください。

※バッテリー切れに備え、必ず電源アダプターをお忘れなくご持参ください。

※発表中にスクリーンセーバーや省電力モードにならないよう、設定してください。

      

パソコン側(メス)  接続ケーブル側(オス)

· 事務局で予備のパソコンを用意します。(仕様:OS:Windows7/パワーポイント2003)上記仕様に対応するパワーポイント資料をUSBにてご持参ください。

· 昼食はエリプス、大学生協食堂・パンショップがご利用になれます。春休み営業です:エリプス11:00~14:00、食堂11:30~13:30

· 会場内に無線LANでインターネットの接続が可能です。無線LAN接続に必要なESSID、WEPキー、認証ID、パスワードは当日お知らせいたします。注意事項

※Windows7で接続テスト済みです。それ以前のOSでの動作は未確認です。

※IEEE802.11b/gの規格で接続ができる必要があります。IEEE802.11a/nに対応していますが、外部アンテナの設置の関係上利用できない場合があります。

※ すべてのカードの接続検証は行っていません。一部無線LANカードが使用できない可能性があります。

※無線LANアクセスサービスは、経路の暗号化がなされておりません。

· 交通及び会場のご案内交通案内:JR中央線「東小金井駅」下車、徒歩約10分

· 住所:184-8588、東京都小金井市中町2-24-16

キャンパス案内:エリプス3階会議室

プログラム

3月5日(月)

10:30~10:35(5分程度)

~生物物理関東地区研究会(第0回生物物理関東支部研究会?)へのお誘い~

太田善浩(東京農工大学・大学院工学研究院・生命工学専攻)

座 長

由良 敬(お茶の水女子大学・生命情報学教育研究センター)

中村周吾(東京大学大学院・農学生命科学研究科・応用生命工学専攻)

【1AM1】10:35~12:35

1 cross profile analysisにより同定されたタンパク質セグメントの収斂(25分)

p. 1

富井健太郎(産業技術総合研究所)

2 SAXS法によるタンパク質立体構造の計算科学的解析(25分)

p. 1

森本康幹(東京薬科大学)

3 高圧下におけるaアクチン構造安定性の理論的解析(25分)

p. 2

若井信彦(東京大学大学院・新領域創成科学研究科)

4 ロボット工学の手法を用いたタンパク質シミュレーション(10分)

p. 2

山守 優(東京大学大学院・新領域創成科)

5 全原子量子化学計算法による、レチナールタンパク質の吸収波長制御メカニズムの解析(25分)

p. 3

林 智彦(東京工業大学院・生命理工学研究科・生体分子機能工学専攻)

6 構造ドメインデータベースの作成およびそのWeb提供(10分)

p. 3

梅澤祐貴(東京農工大・工学部・生命工学科)

~ 昼  食 ~

座 長

加藤 薫(産業技術総合研究所)

瀧ノ上正浩(東京工業大学大学院・総合理工学研究科知能システム科学専攻)

【1PM1】13:30~14:55

1 プロリン異性化酵素の散歩道(25分)

p. 4

伊倉貞吉(東京医科歯科大学)

2 Cyclophilin D の活性阻害が細胞内薬物輸送に及ぼす影響(10分)

p. 4

四戸大介(東京農工大学・工学部・生命工学科)

3 Cyclophilin D が細胞のエネルギー代謝に及ぼす影響(10分)

p. 5

中里 眸(東京農工大学・工学部・生命工学科)

4 VanXの大腸菌溶菌活性を利用した新規スクリーニング法の開発(10分)

p. 5

Wu Nan(東京農工大学・工学府・生命工学専攻)

5 マイクロドロップレットアレイを用いた多剤排出トランスポーター遺伝子スクリニーング法の開発(10分)

p. 6

雨澤広海(東京大学・工学部・応用化学科野地研究室)

6 トルク減少型変異体F1モーターにおけるATP結合・解離及びATP加水分解・合成の平衡定数の角度依存性(10分)

p. 6

小安司馬(東京大学・工学部・応用化学科・野地研究室)

7 UTPを基質としたときのF1-ATPaseの回転運動(10分)

p. 7

新井秀信(東京大学・工学系研究科・応用化学・野地研究室)

~ 休  憩 ~

座 長

吉村英恭(明治大学)

園山正史(群馬大学大学院・工学研究科・応用化学生物化学専攻)

【1PM2】15:10~16:50

1 酸化コレステロールが与えるリン脂質膜分子充填への影響(10分)

p. 7

星野達也(群馬大学大学院・工学研究科・応用化学生物化学専攻)

2 High resolution Crystal structure of Dengue 3 envelope protein domain III (ED3) (10分)

p. 8

Montasir Elahi(東京農工大学・工学府・生命工学専攻)

3 二次元結晶からのアクアグリセロポリンAQP3の投影像(10分)

p. 8

光岡 薫(産業技術総合研究所・バイオメディシナル情報研究センター)

4 n-アルキル-β-グルコシドにより可溶化したバクテリオロドプシンの構造・安定性(10分)

p. 9

舟見顕彰(群馬大学大学院・工学研究科・応用化学生物化学専攻)

5 In-situ光照射固体NMRによる光受容膜タンパク質の光中間体の捕捉とタンパク質構造変化の解析(25分)

p. 9

内藤 晶(横浜国立大学・大学院工学研究院)

6 天然変性タンパク質p53による標的タンパク質CBPの分子認識(25分)

p.10

新井宗仁(東京大学大学院・総合文化研究科・広域科学専攻 生命環境科学系)

7 抗体精製に向けたpH感受性の高いリガンドタンパク質の設計(10分)

p.10

塚本雅之(東京大学大学院・新領域創成科学研究科・メディカルゲノム専攻)

17:00~17:30

~支部立ち上げに関する意見交換~

17:30~19:30 

~ 懇 親 会 ~

3月6日(火)

座 長

大澤研二(群馬大学大学院・工学研究科応用化学・生物化学専攻)

赤沼哲史(東京薬科大学・生命科学部)

【2AM1】9:30~10:55

1 Contribution of individual amino acids to protein solubility using amino acid tag(10分)

p.11

Mohammed M. A. Khan(東京農工大学・工学府・生命工学専攻)

2 疎水性表面を持つタンパク質の溶解性の回復(10分)

p.11

八木創太(東京薬科大学・生命科学科)

3 タンパク質凝集後に生じる酸化的な修飾プロセスとその役割(10分)

p.12

三冨康司(慶應義塾大学・理工学部・生命機構化学研究室)

4 ジスルフィド結合によるSOD1タンパク質の新たな凝集制御のメカニズム(10分)

p.12

東一圭祐(慶應義塾大学・理工学部・生命機構化学研究室)

5 SODタンパク質の活性化を担うジスルフィド結合導入のメカニズム(10分)

p.13

櫻井靖之(慶應義塾大学・理工学部・生命機構化学研究室)

6 限られたアミノ酸から安定なタンパク質が創れるか?(10分)

p.13

島田真実(東京薬科大学・生命科学部)

7 耐熱性酵素の設計と好熱菌酵素の低温高活性化(25分)

p.14

赤沼哲史(東京薬科大学・生命科学部)

座 長

古川良明(慶應義塾大学・理工学部・生命機構化学研究室)

光岡 薫(産業技術総合研究所・バイオメディシナル情報研究センター)

【2AM2】11:10~12:25

1 ミトコンドリアの密集によるATP合成の効率化(10分)

p.14

吉松大輝(東京農工大学・工学部・生命工学科)

2 ミトコンドリアの内部密度と膜電位の相関(10分)

p.15

兼松啓太(東京農工大学・工学府・生命工学専攻)

3 蛍光色素一分子によるpH測定(10分)

p.15

安川純平(東京大学・工学部・応用化学科4年)

4 人工脂質二重膜に再構成したFoF1-ATP合成酵素による輸送されるH+の検出(10分)

p.16

紀 十男(東京大学・工学部・応用化学科野地研究室)

5 細胞融合によるバクテリアゲノム導入の試み(10分)

p.16

十河孝夫(東京大学・工学部・応用化学科)

6 生細胞におけるErbB蛋白質ネットワークの網羅的解析(25分)

p.17

白 燦基(理化学研究所・佐甲細胞情報研究室)

~ 昼  食 ~

座 長

新井宗仁(東京大学大学院・総合文化研究科・広域科学専攻・生命環境科学系)

内藤 晶(横浜国立大学・大学院工学研究院)

【2PM1】13:20~15:00

1 老化による海馬ステロイドホルモン系・受容体の変化(25分)

p.17

若林正彦(東京大学大学院・総合文化研究科/理学系研究科)

2 チャコウラナメクジ嗅覚神経系に見られる時空間活動パターンとその非線形解析(10分)

p.18

浜崎雄太(日本大学大学院・総合基礎科学研究科・相関理化学専攻)

3 チャコウラナメクジ嗅覚中枢の長期活動ダイナミクス(10分)

p.18

田中 裕一(日本大学大学院・理工学研究科・物理学専攻)

4 性ホルモンによる海馬神経シナプスの伝達制御の電気生理学的解析(25分)

p.19

長谷川賢卓(東京大学大学院・総合文化研究科/理学系研究科)

5 心筋細胞における収縮自励振動特性の研究(10分)

p.19

新谷 正嶺(早稲田大学・先進理工学研究科・石渡研究室)

6 フェリチンを用いたナノ粒子の配列法の開発(10分)

p.20

荻村 史佳(明治大学)

7 フェリチンを用いたカーボンナノチューブ金属触媒の作製(10分)

p.20

伊藤 誠一郎(明治大学)

~ 休  憩 ~

座 長

田端和仁(東京大学・大学院工学系研究科・応用化学専攻)

今井清博(法政大学・生命科学部・生命機能学科)

【2PM2】15:15~16:30

1 フェリチンを用いた磁性ナノ粒子の作製(10分)

p.21

引地祐介(明治大学)

2 球状たんぱく質を用いた蛍光体ナノ粒子の作製(25分)

p.21

原田知明(明治大学)

3 不安定な二次構造がDNAのハイブリダイゼーション反応速度に及ぼす影響(10分)

p.22

畑 宏明(東京大学大学院・理学系研究科)

4 ALS原因タンパク質TDP-43におけるRNA結合ドメインの機能探索(10分)

p.22

鈴木 陽(慶應義塾大学・理工学部・生命機構化学研究室)

5 硬骨魚類由来の祖先型ヘモグロビン遺伝子の設計・合成および発現(10分)

p.23

梶原弘毅(法政大学・大学院・工学研究科・生命機能学専攻)

6 ヤツメウナギの祖先型ヘモグロビン遺伝子(node25)の発現系構築(10分)

p.23

幕 晋一(法政大学・大学院・工学研究科・生命機能学専攻)

~ 終  了 ~

1 cross profile analysisにより同定されたタンパク質セグメントの収斂進化

· 富井健太郎1、澤田義人2、本田真也2

1産総研・生命情報、2産総研・バイオメディカル

類似(類縁)タンパク質に特徴的なアミノ酸配列のパターンは、配列情報や立体構造情報などを利用して構築されるプロファイルとして表現可能である。近年、配列情報のみから作成されたプロファイルを利用することで、構造類似タンパク質の検索も可能であることが明らかになった(プロファイル-プロファイルアラインメント)。

このことから、配列ベースのプロファイルにも構造情報が含まれていることが示唆される。一方、古くは例えば超二次構造予測などに、立体構造情報に基づくプロファイルが用いられてきた。こうした2種類のプロファイルを比較(cross profile analysis)し、その共通点を抽出することで、配列ベースのプロファイルに含まれる構造情報を同定することが可能になるのではないかと考えた。そのために、タンパク質断片構造のデータベースProSegにより提供される構造情報に基づくプロファイルと立体構造既知のタンパク質の配列ベースのプロファイルの網羅的比較を、われわれが開発したプロファイル-プロファイルアラインメント法FORTEを用いて行った。その結果、全く異なる種類のタンパク質に共通する、安定したβ-ヘアピン様の構造形成能を有する短い領域の同定に成功した。

2 SAXS法によるタンパク質立体構造の計算科学的解析

○森本康幹1、小島正樹1

 1東京薬大・院・生命科学

 X線小角散乱(SAXS)法は溶液中のタンパク質の構造情報を得られる手法であり、対象分子の分子量に制限がなく、また迅速かつ簡便であることから様々なタンパク質の構造解析に用いることができる。一方で、本手法により得られる構造情報は少なく、単独で立体構造を決定することは不可能であると言われてきた。

 本研究は、SAXS法の与える構造情報(SAXS構造情報)がどのような量および質であるのか、またタンパク質が立体構造を形成する際に本質的に必要な情報とはどのようなものであるかを明らかにし、SAXS法の特徴を活かした新規立体構造決定方法論を開発することを目的としている。具体的にはSAXS法と同様に溶液中の構造情報を与えるNMRデータを種々の分類で抽出し、それをSAXSデータと統合して構造計算を行うことにより、両構造情報間での相補性の検討を進めてきた。その結果、SAXS構造情報は三次構造を規定する構造情報をかなりの程度有していることが明らかとなり、二次構造を規定する構造情報と組み合わせることにより、アミノ酸残基レベルの粗視化構造を構築することに成功した。

3 高圧下におけるアクチン構造安定性の理論的解析

○若井信彦1、竹村和浩2、森田貴己3、北尾彰朗2,4

 1東大・院・新領域,2IMCB, 東大,3中央水産研,4JST, CREST

筋繊維の主構成要素であるアクチンは様々な細胞機能において重要な役割を有し,単量体アクチンはATPの加水分解を伴いフィラメントを形成する.一般にアクチンのアミノ酸配列の保存性は非常に高く,生物種による違いが少ないことが知られている.深海魚のアクチンはQ137K/V54AまたはQ137K/L67Pに特異的な置換を有する.このQ137Kの置換は活性部位付近に位置し,圧力耐性に貢献していると考えられている.高圧における残基置換の影響は実験で観察されているが,圧力耐性の詳細なメカニズムは明らかでない.このため,単量体アクチンに対する圧力影響を分子動力学シミュレーションで解析した.その結果,深海魚のアクチンは非深海魚に比べて塩橋の総数が多い傾向にあった.さらに,深海魚に特異的なK137とATPの間に塩橋が存在し,高圧においてATPが活性部位から解離するのを防ぐと考えられる.また,深海魚の塩橋は二次構造間や異なるサブドメイン間を結ぶものが多く存在し,圧力耐性に貢献すると推測される.

4 ロボット工学の手法を用いたタンパク質シミュレーション

○山守 優1、竹村 和浩2 北尾 彰朗1

 1東京大・院・新領域創成科学、2東京大・分生研

背景:タンパク質の分子動力学においては、扱いたい現象とシミュレーション可能な時間スケールのギャップが問題となる。

目的:本研究は、自由度を二面角に限定することでの MD におけるタイムステップ(最小の時間刻み)の拡大とロボット工学で開発された Articulated-Body Algorithm (ABA) を用いた運動方程式の高速解法によって、タンパク質のシミュレーションを効率よく行う方法の開発を目的とする。

方法:本研究の特徴として、従来は末端固定の系を扱う方法であった ABA を拡張し末端にも自由度を付与したFreed-end ABAにし、これによって、複数鎖を扱うことも可能となった。

結果:上記に基づき、力場 Amber 、ECEPP を読み、NVE一定の条件、NVT一定の条件でタンパク質のシミュレーションを行うプログラムを開発し、妥当性や性能の検討をした。20 種のアミノ酸ジペプチドを対象に得られたスペクトルを二面角空間での基準振動解析の結果と比較し、両者が一致するという結果を得、妥当性を確認した。現在、5fs 程度のタイムステップを可能とする力場のチューニングを行っている。

考察:今後、シミュレーションをより大規模化・効率化するようall-atom Go –model の導入を行い、本研究の成果を用いた応用を行う。

5 全原子量子化学計算法による、レチナールタンパク質の吸収波長制御メカニズムの解析

○林智彦1、松浦東2、佐藤博之2、櫻井実1

 1東工大バイオセンター、2富士通研

 レチナールタンパク質の吸収波長制御メカニズムの解明は、分子生物学的にも計算化学的にも重要な問題として知られている。タンパク質のような巨大分子の吸収波長計算では、色素部分を量子化学計算法(QM)で計算し、それ以外の大部分を分子力学的な手法(MM)で近似するQM/MM法が主流である。しかしこの手法では、領域間の電子移動を考慮できず、また、領域の分割方法に任意性があるなどの問題点がある。この問題を解決するためには、数千原子のタンパク質をまるごとQM法で計算する手法の開発が必要不可欠である。本研究では、我々の開発したタンパク質全原子を考慮可能なINDO/S-CIS法を用いて、古細菌のレチナールタンパク質のであるバクテリオロドプシン(bR)の吸収極大(λmax)を計算した。その結果、タンパク質によるレチナールシッフ塩基のλmaxのシフトを、0.04 eV以内の精度で再現するとともに、励起に伴う色素-タンパク質間の電子移動が重要であることを初めて見出した。本発表では、226個の一残基変異体の計算結果を元に、bRの吸収波長制御メカニズムについて議論する。

6 構造ドメインデータベースの作成およびそのWeb提供

○梅澤 祐貴、蝦名鉄平、黒田裕

東京農工大学工学府生命工学専攻

生物学的に重要なタンパク質は多くの場合、構造的・機能的単位であるドメインを複数含むことが知られている。ドメインの中でも独立して構造を持つ「構造ドメイン」は単独で発現・精製が可能なため、近年においてはまず計算的手法により構造ドメイン領域を予測し、構造ドメインに分割して解析の効率化を図ることがしばしば行われている。構造ドメインの予測において学習データとなる構造ドメインデータは不可欠であるが、現存するドメインデータベースであるSCOPやCATHは構造の独立性に特化していない。

そこで本研究では、SCOPやCATHで定義されたドメイン中、独立して構造を形成する構造ドメインのみを集計した「構造ドメインデータベース」を作成した。データベースの作成には、ドメイン間の(1)主鎖間の水素結合数、(2)側鎖が関与する水素結合数、(3)疎水性クラスター数を原子座標から定量的に評価し、相互作用数がある基準値より小さいドメインが独立して構造を形成すると考えた。

基準値を求める際に、SCOPやCATHで定義されているドメインで単独で構造がPDBに登録されているため独立した構造体であることが証明されている構造ドメイン(本研究ではAFDと呼称する)と、構造が発表されていないNonAFDに分類した。各相互作用の個数を系統的に変化させた結果、「水素結合(主鎖)5個以下、水素結合(主鎖-側鎖)10個以下、水素結合(側鎖-側鎖)7個以下、疎水性クラスター8個以下」の条件でAFDとNonAFDの分類感度が最大となったため、この値を構造ドメインの定義に用いた。以上、SCOPに登録されている37035ドメイン中、14356個が本研究によって構造ドメインであると定義された。その14356構造ドメイン中5129(35%)個においては構造がPDBに登録されているAFDであり、構造ドメインであると証明されていた(SCOPドメインにおいては、僅か16%程度がAFDに対応していた)。一方、残りの9227ドメインにおいても単独で構造を形成する可能性が高いことが本研究で示された。以上の定義を満たすドメインを選出して構造ドメインデータベースを作成した。

 本研究で作成したデータベースは既存のものより構造の独立性に特化しているものであり、これをWeb上で提供することで構造ドメイン予測手法の予測効率向上への貢献が期待される。

1 プロリン異性化酵素の散歩道

◯伊倉貞吉

東京医科歯科大学

プロリン異性化酵素は、X-Proのシス-トランス異性化反応で触媒活性を示すタンパク質である。原核生物から高等生物にいたるまで、あまねく存在することが知られているが、その生体内の実際の機能については謎が多い。現在までにわかっていること、わかっていないことなど、実験などの裏付けの有無などにも言及して、参加の皆様にご紹介したい。

2 Cyclophilin Dの活性阻害が細胞内薬物輸送に及ぼす影響

○四戸大介、岩崎あすか、後藤真理奈、太田善浩

東京農工大学・工学部・生命工学科

ミトコンドリアが障害を受けると細胞内ATP濃度が低下し、細胞の機能障害が生じる。ま

たミトコンドリアは細胞死誘導因子を保持しているため、ミトコンドリアが障害を受けて

細胞死誘導因子を放出すると細胞死が誘導される。これらのことからミトコンドリアは細

胞死を考える上で重要なオルガネラであると考えられている。Cyclophilin D(CypD)はミトコンドリアマトリックスに存在するプロリン異性化酵素であり、その欠損は細胞に薬物誘導性の細胞死に対する耐性をもたらすことが報告されていた。この耐性を持つ理由として単離ミトコンドリアではその薬物に対する耐性をもつことが報告されている。しかし細胞が耐性を持つ理由として、薬物のミトコンドリアへの届きやすさも検討される必要がある。我々はCypDのPPIase活性が持続的に阻害された細胞ではCalcein-AMがリソソームなどの膜系に回収されやすく、ミトコンドリアに届きにくいことを見出した。この結果はCypDが阻害された細胞ではある種の薬物がミトコンドリアに届きにくくなっている可能性を示唆するものである。

3 Cyclophilin D が細胞のエネルギー代謝に及ぼす影響

○中里 眸 桝口 卓摩 大崎 光 太田 善浩

東京農工大学・工学部・生命工学科

 ATP は細胞内のエネルギー代謝において大切なエネルギー運搬体である。ATP が枯渇すると細胞の活動力は低下し、やがて細胞死の1種であるネクローシスへ向かっていくことが知られている。それゆえ ATP の主な産生元であるミトコンドリアは、細胞死の調節を担う重要なオルガネラとして注目されている。ミトコンドリアマトリックス内のプロリン異性化活性を有する Cyclophilin D (Cyp D) と呼ばれるシャペロン様タンパクは、ネクローシスを促進することで知られている。我々の過去の実験で Cyp D 酵素活性正常細胞では酵素活性欠損細胞と比較して細胞内 ATP 量が少ないことが確認された。しかし、Cyp D がどのようにして細胞内 ATP 量の低下に寄与するのか、そのメカニズムは分かっていなかった。そこで我々は ATP の産生に着目し、その中心である解糖系と電子伝達系の働きについて考察するため、乳酸生成速度と酸素消費速度の計測を行なった。現在はその解析中で、Cyp D 酵素活性の違いで乳酸の生成速度に一部優位な差が出たが、ATP 産生量に影響を与えるものかは、まだ分かっていない。

4 VanXの大腸菌溶菌活性を利用した新規スクリーニング法の開発

○Wu Nan、上岡 哲矢、黒田 裕

東京農工大学工学府生命工学専攻、〒184-8588、東京都小金井市中町2-24-16

近年、タンパク質を改変するためにランダム変異を導入した変異体のスクリー二ングを行うことは不可欠な方法となっている。しかし、スクリーニングには、目的タンパク質の活性を測定するために機械的・化学的な手法で大腸菌を破砕し変異体タンパク質を菌体から抽出することが必要である。しかし、多数のサンプル数を処理するスクリーニングにおいて、従来の菌破砕法は、容易で安価な手法とは言えない。

VanXは、バンコマイシン耐性遺伝子酵素群VanA酵素群のひとつでD-Ala-D-Alaを加水分解する。我々は最近、VanXによるD-Ala-D-Alaの加水分解により、ムレインモノマー同士間の架橋が行われずペプチドグリカン層の伸張が滞り、大腸菌が溶菌することを解明した。さらに、大腸菌が溶菌する際に菌体内のタンパク質が培地に漏出することを観測した。本研究では、VanXによる大腸菌の溶菌活性を利用して目的の組換えタンパク質であるGFP(緑色蛍光タンパク質)を大腸菌体外に漏出させる手法を開発し、超音波破砕を必要としないスクリーニング法への応用を目指した。

本研究では、GFPとVanXの遺伝子を抗生物質耐性が異なるベクターに挿入し、両ベクターを大腸菌に共に形質転換し、VanXと目的タンパク質を共発現させた。培養液の上清画分から目的タンパク質であるGFPを回収、精製し、従来の方法で得られたGFPと同等の蛍光活性を有することを確認した。機械的・化学的細胞破砕を必要としない組換えタンパク質の従来の抽出法として、分泌シグナルの利用が考えられるが、VanXを用いた本手法では、新しい発現系を構築する必要がなく、既存の発現ベクターを用いることができる点も特長である。現在、この手法をGaussia Luciferaseに応用し、汎用性を検証すると同時にスクリーニングへの応用の可能性を検討している。

5 マイクロドロップレットアレイを用いた多剤排出トランスポーター遺伝子スクリニーング法の開発

○雨澤広海1、飯野亮太2、葉山浩平3、西野邦彦3、山口明人3、松本佳巳3、野地博行2

1東京大・工学部、2東京大・院・工学系研究科、3大阪大・産業科学研究所

大腸菌は薬剤を細胞外に排出するトランスポーターシステムを細胞膜に保有している。以前我々はマイクロ流路と蛍光発生基質FDGを用いた排出活性アッセイを開発し、野生株、ΔacrB(内膜トランスポーター欠損株)、ΔtolC(外膜チャネル欠損株)に適用した(Matsumoto et al 2011 PLoS ONE)。本研究ではマイクロ流路の代わりに直径10 μmのマイクロドロップレットアレイを用い、大腸菌1細胞でのアッセイを行った。マイクロ流路での実験と同様に、野生株では菌と培地の両方が暗く、ΔacrBではFDGの流入と分解で生成されたフルオレセインの排出により菌と培地が蛍光を発し、ΔtolCではフルオレセインの蓄積により菌のみが蛍光を発するという結果を得た。またΔtolC株に形質転換によりtolC遺伝子を導入し、薬剤排出能が回復して野生株の様に光らなくなることを確認した。これにより、遺伝子発現により表現系が変化した菌を顕微鏡下でスクリーニング可能であると考えられる。今後は形質転換でtolCを発現させ薬剤排出能を回復させた株とtolC遺伝子を導入しない株を混合し顕微鏡で観察して光らない菌を回収し、tolC遺伝子を保有しているかをPCRにより確認する予定である。

6 トルク減少型変異体F1モーターにおけるATP結合・解離及びATP加水分解・合成の平衡定数の角度依存性

○小安司馬1、渡邉力也1、谷川原瑞恵2、野地博行1

 1東大・工、2阪大・生命機能

F1モーターはATP加水分解を駆動力として回転するタンパク質分子モーターである。先行研究により、加水分解の各反応素過程で反応速度及び平衡定数が回転角度に応じて変化することが判明した。それにより各反応素過程の平衡定数の角度依存性から、その素過程のトルクへの寄与を推算することは出来たものの、その関係の実験的な検証は為されていない。一方で、固定子と回転子の間で強く相互作用するDELSEED領域と呼ばれる部位の残基をグリシンにすることで、野生型F1に対して反応速度は変化せずトルクが約半減する変異体F1が谷川原によって発見された。本研究では、その変異体F1を用いてATP結合・解離及びATP加水分解・合成の平衡定数の角度依存性を調べている。ATP結合・解離については、ATP結合速度定数の角度依存性は野生型F1と変わらないが、ATP解離速度定数の角度依存性が大きく失われていた。その結果、平衡定数の傾きが小さくなり、ATP結合過程で発生するトルクが減少したことが明らかとなった。現在はATP加水分解・合成について検証を進めており、その最新の状況も合わせて報告する。

7 UTPを基質としたときのF1-ATPaseの回転運動

○新井秀信1、渡邉力也1、野地博行1

1東大院・工

F1-ATPase(F1)は、ATPの加水分解を駆動力として回転するタンパク質分子モーターである。先行研究によって、様々な基質を利用してF1の加水分解活性と回転運動の相関関係が調べられた。加水分解活性のある基質を利用した場合、F1の回転運動は観察されたが、唯一UTPを基質とした時の回転運動は現在まで確認されていなかった。本研究では、UTPに混入しているATPの影響を排除し、UTPを加水分解して駆動されるF1の回転運動の観察に成功したので報告する。磁気ビーズを回転プローブとし1分子観察をしたところ、F1がUTPを加水分解して反時計方向に回転する様子が観察された。また、様々なUTP濃度条件下でF1の回転速度を計測しミカエリスメンテンカーブを作成したところ、F1へのUTPの結合速度がkonUTP=2.3x104 M-1s-1であった。この値は、多分子計測による計測結果とほぼ一致しており、ATPの結合速度の約1000分の1であった。現在、UTPの加水分解を駆動力とした回転運動の基本的な性質を理解するため、回転トルクの大きさや加水分解速度の計測を行っている。

1 酸化コレステロールが与えるリン脂質膜分子充填への影響

○星野達也1・引間孝明2・高田昌樹2・小林俊秀3・高橋 浩1 

(1:群大工・院・応化生化、2:理研・Spring-8、3:理研・和光)

生体膜中のコレステロール(Chol)は、酸化により酸化Cholに変質する。酸化Cholの一部は疾病との関連が指摘されており、分子機構の解明が求められている。

本研究では、酸化部位の異なる酸化Chol、7β-hydroxycholesterol(7β-OH)と25-hydroxycholesterol(25-OH)の、モデル生体膜であるリン脂質dipalmitoyl phosphatidylcholine(DPPC)膜への影響の違いを調べた。

蛍光分光測定により、Cholと7β-OHのDPPC膜の流動性への影響を評価し、さらにDPPC/CholとDPPC/7β-OHの系に対して浮沈法による体積測定を行い、X線回折法による膜厚の測定をDPPC/25-OHの系も加えて行った。

実験結果、流動性は7β-OH混合膜の方がChol混合膜に比べ高いことが示唆されたが、体積に差は認められなかった。膜厚はChol混合膜より7β-OH混合膜の方が薄くなり、25-OH混合膜の厚さはそれらの中間であった。以上の結果から、7β-OH混合膜はChol混合膜に比べ側方で広がり、厚さ方向で縮むことで、体積を保ちDPPC分子間距離を広げていると考えられる。

流動性の増大はこの分子間距離の広がりによるものと推測される。25-OH混合膜の体積測定を予定しており、酸化部位による違いを考察したいと考えている。

2 High resolution Crystal structure of Dengue 3 envelope protein domain III (ED3)

Montasir Elahi 1, Mohamad M. Islam1, Keiichi Noguchi2, Masafumi Yohda1 and Yutaka Kuroda1*

1Department of Biotechnology and Life Sciences, Graduate School of Engineering, and 2Instrumentation Analysis Center, Tokyo University of Agriculture and Technology.

Dengue viruses are the causal agent of the deadly disease dengue fever. Dengue viruses are classified into four serotypes (DEN1, DEN2, DEN3, and DEN4) and effective drug or vaccine has yet to be developed. The third domain of the envelope protein (ED3) contains the epitope regions as well as attachment sites to the target cell. ED3 exhibits high structural similarities among the serotypes and is responsible for serotypes cross reactivity. Here, we report the 1.8 Å X-ray crystal structure of a bacterially expressed ED3 of DEN3. The structure showed high similarity with the ED3 of other serotypes. The main chain RMSDs ranged from 0.57Å to 1.11Å. Additionally, the main chain structure of the isolated ED3 was very close to the previously reported ED3 structure determined in the whole Envelope protein context (PDB:1UZG), with a main chain RMSD of 0.63 Å. However, ED3’s first beta-sheet (β-1), which was only 3 residues long in the isolated ED3 structure, is 10 residues long in the whole envelope protein structure. A similar phenomenon is also noticeable in DEN1. This discrepancy indicates that domain isolation can introduce minute but significant local structure deformation. Since β-1 overlaps with the epitope region, we predict that recognition by monoclonal antibody to ED3 could be affected by domain isolation. We hope that such structural information will provide a better understanding of the mechanism of ED3-antibody interaction, and help the designing of effective drugs or vaccines against dengue infection. 

3 二次元結晶からのアクアグリセロポリンAQP3の投影像

刑部伸彦1、○光岡薫2

 1一般社団法人バイオ情報化コンソーシアム、2独立行政法人産業技術総合研究所

 二次元結晶を用いた電子線結晶構造解析は、膜タンパク質の高分解能の構造を決定できる方法の一つであり、タンパク質が脂質二重層中にあることから、天然の状態に近い構造が得られることが期待できる。そのような電子線結晶構造解析に応用できる二次元結晶化を、水チャネルであるAQPファミリーの一つであるAQP3という膜タンパク質について試みた。水チャネルには主に水のみを通すアクアポリンと、水以外にグリセロールなどの小分子も透過するアクアグリセロポリンがあることが知られており、AQP3はヒトの皮膚などに局在するアクアグリセロポリンである。その二次元結晶化の結果、電子回折が得られるような結晶を得ることができたので、その投影像を計算し、他のアクアグリセロポリンと同様に、水のみを通すチャネルより大きな透過経路があることを示唆する結果を得た。また、その結晶の再現性を向上するために行ったAQP3の熱安定性に関する測定結果も示し、AQP3の二次元結晶化に関する知見について述べる。

4 n-アルキル-β-グルコシドにより可溶化したバクテリオロドプシンの構造・安定性

〇舟見 顕彰1・園山 正史1(群馬大・院工)

膜タンパク質の研究では、界面活性剤により膜タンパク質を可溶化し、その後人工脂質二重膜に再構成する手法が広く用いられる。しかし、用いる界面活性剤によっては可溶化の段階でタンパク質を変性させてしまうことも多い。実際、n-オクチル-β-グルコシド(OG)を用いて、膜タンパク質バクテリオロドプシン(bR)を可溶化した向井らによる研究では、OG可溶化bRは天然状態と比べて安定性が著しく低下することが報告されている。

本研究では、アルキル鎖長の異なる3種類のn-アルキル-β-グルコシド界面活性剤を用いてbRを可溶化し、界面活性剤の構造と可溶化bRの安定性の相関を調べた。

暗中および光照射下における可溶化bRの変性挙動を比較したところ、アルキル鎖長が長くなるにつれて変性速度定数が小さくなることがわかった。しかし、CD測定により得られたbRの構造やヒドロキシルアミンを用いた分子内部への水分子の侵入具合に大きな差は見られなかった。さらに、光サイクルの挙動を観測すると、基底状態の回復に2つの成分が見られ、アルキル鎖長が短くなるほどその傾向が顕著であった。当日、その詳細を報告する予定である。

5 In-situ光照射固体NMRによる光受容膜タンパク質の光中間体の捕捉とタンパク質構造変化の解析

○内藤 晶1、友永雄也1、日高徹郎1、川村 出1、須藤雄気2、和田昭盛3、沖津貴志3、加茂直樹4

1横浜国大・院工、2名古屋大・院理、3神戸薬大、4松山大・薬

フォボロドプシン(ppR)(センサリーロドプシンII)は負の光走性を示す光受容膜タンパク質であり、トランスデューサー(pHtrII)と2:2複合体を形成する。光に応答してレチナールの異性化がおこり、K-中間体に励起後、L-, M-, O-中間体を経て、基底状態(G-状態)に戻る光反応回路を示す。この中で、M-中間体が信号伝達状態であるので、M-中間体でのタンパク質の構造、運動性、相互作用変化を観測することが、このタンパク質の信号伝達機構を明らかにする上で、重要である。本研究ではIn-situ光照射固体NMR装置を開発し、この光受容膜タンパク質のM-中間体状態を捕捉すること試み、次にその中間体状態でのタンパク質の構造、運動、相互作用変化の観測を試みた。520 nmのLED光をppRおよびppR/pHtrII複合体に連続照射して、NMRスペクトルを観測した結果、-20℃では80%がG-状態からM-中間体に転移した。このとき、M-中間体は単一ではなく、少なくとも3種類以上の多重状態であることが判明した。タンパク質の[1-13C]Tyr174の13C NMR信号の観測から、タンパク質側の構造も多重構造であることが判明した。このM-中間体における構造多様性が信号伝達状態として重要であることが考えられる。

6 天然変性タンパク質p53による標的タンパク質CBPの分子認識

○新井宗仁1,2,3、Josephine C. Ferreon1、Peter E. Wright1

1The Scripps Research Institute、2東大・総合文化、3科学技術振興機構 さきがけ

 天然変性タンパク質は、様々な標的分子を認識できるというpromiscuousな特徴を持つ。我々は、がん抑制因子p53の天然変性領域にあるAD1とAD2領域が、転写コアクチベータCBPのTAZ2ドメインと結合して形成する複合体構造をNMR滴定法によって調べた。その結果、TAZ2上には2ヶ所のAD1結合部位が存在していた。また、AD2結合部位もAD1結合部位と一致していたが、AD2のほうが強く結合していた。これらの結果は、天然変性タンパク質による分子認識は、特異性が低いことを示唆している。さらに、AD2とTAZ2結合の反応速度を、NMRピークの線形解析から求めたところ、結合速度は1.7 × 1010 M-1 s-1であった。この値は、これまでに知られているタンパク質間結合反応速度の中で最速であり、ほぼ拡散律速限界である。これは、AD2とTAZ2間に極めて強い静電相互作用が働くためと考えられる。一般に天然変性タンパク質が変性した構造をとるのは、荷電残基が多いことに起因する。したがって、結合速度が速いことは、天然変性タンパク質に本来的に備わっている性質と考えられる。

7 抗体精製に向けたpH感受性の高いリガンドタンパク質の設計

○塚本雅之1)、大石郁子2)、松丸裕之2)、渡邊秀樹2)、本田真也1)2)

1)東大院・新領域 2)産総研・バイオメディカル

抗体医薬品製造プロセスにおける分離・製造工程の技術革新が、医薬品製造における安全性・信頼性の向上には重要であると考える。

本研究では、ヒト免疫グロブリン(Ig)G1抗体に対する天然型プロテインAのBドメイン(PAB)の相互作用を改変させた変異型PABの構造設計することを目的とする。

天然型PABがIgG1抗体と結合した複合体のX線結晶構造解析データを用いて、相互作用界面にあるPABのアミノ酸変異導入部位を決定した。変異導入は、変異導入するアミノ酸自身とヒスチジンをコードするようにして、変異型PABのDNA配列ライブラリーを構築した。そして、変異型PABのIgG1に対する結合力がpH変化に対して天然型より感受性が高いものをファージ・ディスプレイ法を用いてスクリーニングし、DNA配列を決定した。DNA配列決定した変異型PABを発現・精製する条件を検討し、精製した数種類の変異型PABとIgG1との相互作用を速度論、アフィニティ・カラム実験、および設計に用いたX線結晶構造解析データから考察し、pH感受性変換を目的とした本設計手法の妥当性について検討した。

1 Contribution of individual amino acids to protein solubility using amino acid tag

○Mohammed Monsur Alam Khan, Mohammad Monirul Islam, Yutaka Kuroda*

Tokyo University of Agriculture and Technology.

The contribution of a particular amino acid to protein solubility can depend on its physiochemical properties, location within the protein structure and its interaction with surrounding amino acids. In our previous study we observed that short peptide tags remain fully extended from the target protein and influence protein solubility without interfering the native structure, function and thermodynamics of target protein. Here we report the contribution of individual amino acid on protein solubility using short artificial poly amino acid tag. We added short poly amino acid tag made of a single amino acid type to the C terminus of a model protein simplified bovine pancreatic trypsin inhibitor (BPTI) and measured the influence of tag on BPTI`s solubility. The effect of tags on the model protein solubility was dependent on both amino acid type and length of amino acids tags. For example, a 5-Lys tag increased protein solubility over 10 folds whereas a 5-Arg tag increased solubility rather modestly (by 5 folds). On the other hand, a 5-Ile tag significantly decreased protein solubility. Regarding length-dependency, the influence of tag containing 5 amino acid residues was much higher than that of 3 and 1 amino acid containing tag. Finally, we report the time dependence of protein aggregation.

2 疎水性表面を持つタンパク質の溶解性の回復

○八木創太1、福田真己1、松本茜1、赤沼哲史1、山岸明彦1

 1東京薬科大学・院・生命科学科

 本研究ではヘリックスバンドルタンパク質表面の疎水性アミノ酸による凝集を電荷アミノ酸によって抑制させ、疎水性表面を持つタンパク質でも可溶性の維持が可能であるかを検討した。同じ電荷を持つアミノ酸同士では静電的な反発が起こることから、疎水性面近傍に電荷アミノ酸を導入することで疎水性同士での相互作用が働かず凝集の抑制が期待される。本実験ではヘリックスバンドルタンパク質として超好熱菌Sulfolobus tokodaii由来の二量体タンパク質Sulerythrinを用いた。このタンパク質の外側の2本のαヘリックスに疎水性アミノ酸であるロイシンを6個導入することで疎水性面を持った変異体6L を作製した。そして疎水性面の側に負電荷を持つグルタミン酸を5個導入した変異体6LEを作製した。6Lは可溶化することなく凝集し沈殿した。しかし6LEは可溶性を示した。しかしゲルろ過クロマトグラフィーで解析したところダイマー以上の構造を形成していることが示された。このことから電荷アミノ酸により疎水性面を持ったタンパク質ではある程度可溶が回復できることが分かった。

3 タンパク質凝集後に生じる酸化的な修飾プロセスとその役割

○三冨 康司1、古川 良明1

1慶應義塾大学・理工学部 生命機構化学研究室

タンパク質の不溶性凝集は、多くの神経変性疾患における主要な病理変化として観察される。凝集体の構成タンパク質には様々な化学修飾が施されることがあり、タンパク質凝集の制御因子として頻繁に議論されている。しかし、化学修飾がタンパク質の凝集プロセスにどのように関わっているのか、その役割が明確となっている例は非常に数少ない。そこで本研究では、ハンチントン病に見られる変異ハンチンチン(HTT)凝集体に着目し、タンパク質凝集における化学修飾の新たな役割について検討した。まず、精製した変異HTTタンパク質から不溶性凝集体を作製し、質量分析法を応用することで、メチオニン残基が酸化されていることを初めて見出した。メチオニン残基の酸化は、変異HTTが凝集した後にのみ進行し、野生型HTTには生じない修飾プロセスであることが分かった。さらに、光散乱解析や電子顕微鏡観察を行うことで、HTT凝集体のサイズがメチオニン酸化に伴って増大することが明らかとなった。つまり、化学修飾はタンパク質の凝集後にも生じるプロセスであり、凝集体間の相互作用を制御しうる因子であることが示唆される。

4 ジスルフィド結合によるSOD1タンパク質の新たな凝集制御のメカニズム

○東一 圭祐1、古川 良明1

1慶應大・理工・生命機構化学

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は筋肉の萎縮と筋力低下を伴う神経変性疾患の一種で、最も主要な病因遺伝子としてCu, Zn-superoxide dismutase(sod1)が報告されている。SOD1タンパク質は、銅・亜鉛イオンを結合し、分子内にジスルフィド(S-S)結合を形成することで活性化する抗酸化酵素であるが、sod1遺伝子に変異を有するALS患者の脊髄には、変異SOD1からなる不溶性の封入体が観察される。変異SOD1の凝集が疾患の発症や進行に果たす役割は未だに明らかでないものの、タンパク質構造の安定化に寄与するS-S結合形成は、SOD1の不溶性凝集を制御する重要な因子となる可能性がある。そこで本研究では、SOD1凝集における分子内S-S結合の役割について検討を行った。その結果、変異SOD1はS-S結合の有無に寄らず不溶性凝集体を形成できることが明らかとなったものの、SOD1凝集体の性質や形成メカニズムはS-S結合の有無によって異なることが分かった。今後、モデルマウスなどを用いて、ALS発症に関わるSOD1凝集体を特定し、その形成メカニズムを明らかにする計画である。

5 SODタンパク質の活性化を担うジスルフィド結合導入のメカニズム

○櫻井 靖之1、古川 良明1

1慶應大・理工・生命機構化学

Cu, Zn-superoxide dismutase(SOD)はスーパーオキサイドの不均化を触媒する抗酸化酵素であり、その活性を発現するには銅イオンの結合と分子内ジスルフィド(S-S)結合の形成が必要である。SODは、CCSと呼ばれる銅シャペロンによって特異的に認識され、銅イオン及びS-S結合の供給・導入を受ける。しかし、CCSに対応する遺伝子を持たない生物も数多く報告されており、CCSに依存しないSOD活性化経路の存在が示唆される。本研究では、CCSを持たない大腸菌をモデルとすることで、CCS非依存的なSOD活性化経路の解明を目指している。

大腸菌のペリプラズムには、タンパク質へのS-S結合導入酵素であるDsbAが存在する。そこで、ペリプラズム特有の酸化的環境を試験管内に再現し、SODにおけるS-S結合形成を電気泳動法により追跡したところ、DsbAを添加することでS-S結合形成が加速されることが分かった。よって、大腸菌のSODがペリプラズムに局在していることからも、SOD活性はDsbAによるS-S結合形成により制御されていることが示唆される。

6 限られたアミノ酸から安定なタンパク質が創れるか?

○島田真実1、赤沼哲史、山岸明彦

 1東薬大・生命

 本研究では、アミノ酸の種類を減らしても、ある程度の機能と安定性を保ったタンパク質を構築することが可能であるかの実験的な検証を行った。分子系統解析から推定されたアミノ酸配列を持つ古細菌共通祖先型ヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NDK_Arc1)のアミノ酸組成を、20種類から減らした単純化型酵素の構築を試みた。まず、NDK_Arc1の保存性の高くないM,Q,K,Y,Nを他のアミノ酸に置換したArc1_s1を作製して、解析を行った結果、Arc1_s1はArc1と同程度の熱安定性と酵素活性を保持していた。次に、保存性の高い部位も含めてM,Q,K,Y,N全てを他のアミノ酸に置換した改変体Arc1_s2を構築して解析を行ったところ、Arc1_s2は高い熱安定性を保持していたが触媒活性は大きく低下した。さらに、NDK_Arc1から1種類のアミノ酸を減らした1アミノ酸単純化型変異体を作製し、減らしたアミノ酸が安定性と活性に与える影響の評価も行っているので、その結果も併せて報告する。

7 酵素の温度適応化:好熱菌酵素の低温高活性化と祖先型設計による耐熱性酵素の創出

○赤沼哲史、徳永千尋、下田有希子、二宮拓也、中島慶樹、山口美奈子、横堀伸一、山岸明彦

 東薬大・生命

 好熱菌酵素は高い耐熱性を持つ反面、低温、常温では活性が小さい場合が多い。我々はランダム変異と選択によって低温での活性が上昇した好熱菌由来イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素(IPMDH)の変異体を獲得してきたが、そのうちのいくつかは、補酵素NADのアデニン環と相互作用する脂肪族側鎖を持つアミノ酸が他の疎水性アミノ酸に置換した変異体であった。また、IPMDHのアデニン環と相互作用する他のアミノ酸、および、IPMDH以外の好熱菌由来脱水素酵素も、同種のアミノ酸置換によって低温高活性化することを明らかにした。補酵素のアデニン環と結合する脂肪族アミノ酸の置換が、好熱菌由来脱水素酵素の低温高活性化のためのgeneralな設計法なのかもしれない。

 一方、進化系統解析により推定した祖先型アミノ酸配列を持つ酵素の作製もおこなった。配列全長を、推定された祖先型アミノ酸で構築したDNAジャイレース由来ATPaseドメインとヌクレオシド二リン酸キナーゼを作製したところ、両者とも好熱菌または超好熱菌並みの耐熱性を有しており、祖先型設計法が耐熱性酵素を創出する有効な方法であることが示された。

1 ミトコンドリアの密集によるATP合成の効率化

1 ミトコンドリアの密集によるATP合成の効率化

○吉松 大輝  太田 善浩

東京農工大学・工学部・生命工学科

化学浸透共役とは生物が生体内で作り出したエネルギーを利用して膜外にイオンをくみ出し、膜電位やイオン濃度勾配としてエネルギーを貯蔵・利用する仕組みである。葉緑体やミトコンドリアなどの器官は、この仕組みを利用していることが知られている。このような器官は密集すると汲み出したイオンを共有できるので、効率的なエネルギー利用を行っている可能性が考えられる。そこで本研究では様々な密度でミトコンドリアをポリスチレンディッシュに吸着させ、ミトコンドリア一つ当たりのATP合成量、膜電位の大きさなどを比較した。膜電位の大きさは膜電位感受性蛍光色素で染色した個々のミトコンドリアを蛍光顕微鏡で観察し調べた。現在は解析中であるが、ミトコンドリアを密集させるとミトコンドリアが分極し、ATP合成速度が増加することを示唆するデータが得られている。一方、プロトン汲み上げを伴わないATP合成の速度は密度の上昇と共に大きく減少した。この結果は、化学浸透共役を利用したATP合成は密集により効率化される可能性を示唆している。

2 ミトコンドリアの内部密度と膜電位の相関

○兼松啓太、長谷田圭亮、太田善浩

東京農工大学・大学院工学府・生命工学専攻

ミトコンドリアの機能は、内膜に形成される膜電位と密接な関わりがある。1個の細胞内で個々のミトコンドリアの膜電位を比較すると、様々な膜電位を持ったミトコンドリアが存在する。この膜電位の多様性には、個々のミトコンドリアがおかれる細胞内環境と、そのミトコンドリア自体の性質の両方が寄与していると考えられている。細胞内ミトコンドリアの活性調節機構に関する従来の研究は、ミトコンドリアの置かれる細胞内環境の変動に着目して行われてきた。本研究では、ミトコンドリアの伸び縮み等に伴う内部密度の変化が活性に及ぼす影響を調べることを目的として、ミトコンドリアの内部密度と膜電位の大きさの相関を調べた。内部密度は改良した位相変調型微分干渉顕微鏡により、位相差を計測して評価し、膜電位は膜電位感受性蛍光色素を用いて評価した。用いた試料は培養神経細胞株IMR-32と、単離ブタ心筋ミトコンドリアである。その結果、神経突起を観察すると、ミトコンドリアの内部密度と膜電位の間に有意な相関は見られなかった。一方単離ミトコンドリアでは有意な相関が得られた。これらの意義について、議論したい。

3 蛍光色素一分子によるpH測定

○安川純平1

1東京大学・工学部・応用化学科

破骨細胞によるプロトン放出やプロトンポンプによる細胞膜を介在したプロトン輸送、あるいは腫瘍細胞の表面など生体内において局所的にpHが変化している例は多くみられる。このような局所的なpH変化を観察することは、その機能を知る上で極めて重要である。本研究では、一分子観察の手法を用いて局所的pH変化の定量的測定法を開発することを目的とした。pH変化の検出には、pH感受性蛍光色素pHrodoを用いる。pHrodoはpHの低下に対応して蛍光強度が増加するローダミン由来の蛍光色素であり、一分子レベルでの蛍光観察が可能である。一分子観察することで、色素一分子の領域に対応する極微少領域のpH変化を定量的に測定できるようになると考えられる。現在のところ、pHrodoのpHに対する蛍光強度の応答について検討を行っている。具体的には、バルクにおいてpHrodoのpKaを求めると同時に、pHrodoをガラス上に固定し、蛍光強度の時間変化をpH毎に一分子観察をし、定量的解析を行っている。

4 人工脂質二重膜に再構成したFoF1-ATP合成酵素による輸送されるH+の検出

○紀十男1、田端和仁1、野地博行1 

1東京大学・工学部・応用化学科

膜タンパク質であるFoF1-ATP合成酵素は膜中にありH+運ぶ役割を果たすFo部位と膜から突き出しヌクレオチドと結合するF1部位からなる。FoF1は膜間の電位差およびH+濃度勾配を用いてADPとPiからATPを合成する。一方でATP存在下ではATPを加水分解し、膜間でH+輸送を行う。本研究では人工脂質二重膜に再構成したFoF1を用い、一分子レベルでのH+輸送のイメージングを目指す。具体的には、ATP存在下で脂質二重膜上に固定したFoF1を蛍光で確認し、FoF1のH+輸送にともない誘起されるpH変化の検出には、pH感受性色素であるpHrodoを用いる。pHrodoはpH低下に対応して蛍光強度が増加する分子であり、これにより局所的なpH変化を観測できると考えられる。こうしてFoF1一分子の存在と、そのH+輸送をイメージングすることが、本研究の目標である。

現在のところ、H+輸送に伴うpHrodoの蛍光変化を検出できるか検討を行っている。すなわち、pHrodoをガラス上に固定し、大量にFoF1を再構成した脂質二重膜をガラス上におしつけATP有りと無しの条件で蛍光強度に変化がみられるかを観察している。今後システムを改良していくとともに、一分子レベルの観察を目指したい。

5 細胞融合によるバクテリアゲノム導入の試み

○十河孝夫1、田端和仁1、野地博行1

 1東京大学・工学部・応用化学科

既存の微生物には数千の遺伝子が存在し、目的のタンパク質のみを生産する効率は低い。生産効率の向上のために、生存のためのゲノムと目的のタンパク質のみを発現させるゲノムだけを持つ微生物を生産できればよいが、ゲノムを欠失させていく既存の方法では、操作できるゲノムの位置や範囲の制限により実現が困難である。そのため、本研究ではゲノムを分解した大腸菌に外部から人工ゲノムを持った別の細胞を融合させ、ゲノム交換を行うことを最終目標として、バクテリアのゲノム入れ替えに関する検討を行う。これまでの結果、宿主のゲノムを取り除くために大腸菌内で制限酵素SacⅠの発現系を構築し、バクテリア同士を電気融合させる装置を製作した。1m程度の大きさの大腸菌同士を任意に取り扱うのは困難なため、宿主大腸菌を10m程度まで巨大化させた。巨大化大腸菌でSacⅠ発現系が機能するか検証を行ったところ、一定時間まではSacⅠが発現し、巨大化大腸菌のゲノムが切断されていることが確認された。現在は、ゲノムにGFP遺伝子を挿入した別種の大腸菌との融合を試みている。

6 生細胞におけるErbB蛋白質ネットワークの網羅的解析

○白 燦基1、佐伯夕子2、廣島 通夫1、岡田 眞理子2、佐甲靖志1

1理化学研究所・ASI・佐甲細胞情報研究室、2理化学研究所・RCAI・細胞システムモデル化チーム

 細胞の生理的運命を決める情報伝達システム等細胞内の化学反応系は多要素・多反応の極めて複雑なものであり、反応系が発現するダイナミクスの由来を理解するには、システムバイオロジーの手法が必須である。ところが計算機中に反応ネットワークを構成するために必要ないろいろな細胞内反応系の構成要素や要素間の関係(活性化や不活性化、複合体形成など)といった定性的情報が急速に蓄積されているのに対し、蛋白質ネットワーク中の素反応記述に必要な反応キネティクスやダイナミクスの定量は大幅に遅れている。

これらの現状を克服するため本研究ではErbB受容体とその補助因子らによって構成される蛋白質ネットワークに注目し、蛍光相関分光法および単一分子イメージングを用いて関与する因子らの時空間的なダイナミクスパラメータ(濃度、並進拡散係数、結合解離反応速度定数、解離定数)を生細胞で直接定量化する手法を確立したいと考えた。現在まで生細胞に置いてEGFP(ErbB1)受容体をはじめとする補助因子ら(15種類)のダイナミクスパラメータの定量化に成功し、シグナル伝達過程を素反応レベルで時空間的に評価出来ることが示唆された。

1 老化による海馬の性ステロイド合成系の変化

○若林正彦 東京大学総合文化研究科広域科学専攻 

 老化によって、記憶・学習などの認知機能が低下することはよく知られている。だがその根拠となる事象は定かではないのが現状である。また、最近は性ホルモンと認知機能の関係が注目されているが、老化によって精巣・卵巣などの内分泌器官から脳に運ばれる性ホルモンの低下が、認知機能の低下に関与しているというのが従来の考え方であった。しかし、本研究室の先行研究により、海馬内では、性ステロイドを独自に合成しており、その働きが注目されている。本研究では、海馬が合成する性ステロイドに着目し、老化によってどのような影響が現れるのかを調べた。

 若齢として3ヶ月齢、老齢として24ヶ月齢のオスラットの海馬を使用し、比較した。その結果、性ステロイド合成系では、P450(17α)、17β-HSD3、5α-reductase2がいずれも発現量が減少した。性ステロイド受容体では、男性ホルモン受容体であるARと、女性ホルモン受容体であるERβがいずれも発現量が減少した。また、性ステロイド濃度では、男性ホルモンであるテストステロン、ジヒドロテストステロンが激減し、女性ホルモンであるエストラジオールも減少した。

 この結果により、老化によって海馬内の性ステロイド合成系の発現量が減少することが、海馬内の性ステロイド濃度の減少に関与していることが示唆された。また、海馬内性ステロイド濃度の減少と性ステロイド受容体の発現量の減少が、記憶・学習などの海馬機能の低下に関与することも示唆された。

2 チャコウラナメクジ嗅覚神経系に見られる時空間活動パターンとその非線形解析

○浜崎雄太、斎藤稔

 日大・院・総合基礎科学

 本研究では、匂い刺激によって生じるチャコウラナメクジの嗅覚中枢の神経活動の変化を電気生理的手法および膜電位イメージングによって調べた。チャコウラナメクジの嗅覚受容器は嗅上皮と呼ばれ大・小触角の先端に存在している。匂い情報は嗅上皮で神経活動に変換され、嗅覚中枢神経節である前脳葉に伝達される。最初に、触角に匂い刺激を行い、これによって生じる前脳葉の神経活動(局所場電位(Local Field Potential; LFP))の変化を、ガラス電極を用いた細胞外電位測定により調べた。そして、得られた時系列データに対してウェーブレット解析を行った。その結果、広く分散していたLFPの周波数成分が、忌避性の匂い刺激後はいくつかの周波数に集中するようになり、結果としてエントロピーの減少が見られた。また、このときの前脳葉全体の時空間活動パターンを、膜電位イメージングを用いて調べたところ、前脳葉の先端部と基部に存在していたLFPの位相差が匂い刺激後に解消し、前脳葉全体の神経活動が同期していく様子が捉えられた。

3 チャコウラナメクジ嗅覚中枢の長期活動ダイナミクス

○田中裕一1、加藤巧弥1、小松﨑良将2

 1日本大・院・理工学、2日本大・理工・物理

背景

神経回路における相互作用・同期活動の解析は、複雑な神経機能の理解に重要である.陸生軟体動物ナメクジの嗅覚神経系には,高度に発達した前脳葉と呼ばれる脳部位があり,規則的な神経回路を持つ.この前脳葉では,特徴的な周期活動が見られ,前脳葉表面から局所場電位(LFP)として記録できる.その周波数はほぼ一定であるが,匂い刺激を与えられたとき、その大きさが変わる.

目的

本研究で,この前脳葉神経回路網に生じるLFP振動活動の長期活動ダイナミクスを調べ、その特性を見出すことを目的とした.

方法

チャコウラナメクジの触覚-脳神経標本を培養液に浸し,前脳葉の細胞外電位を長時間(~3時間)スパイク振動活動を計測した(周波数: 0.5~0.6Hz).このスパイク間隔の長期活動ダイナミクスを解析するために,心拍や脳波の時系列の長期相関特性を解析する手法であるDetrended Fluctuation Analysis(DFA)を用いた.

結果・考察

この結果,101.5 < n <102付近を境に、異なるスケーリング指数(短時間スケール~0.7,長時間スケール~1.2)によって特徴付けられることがわかった.

4 性ホルモンによる海馬神経シナプスの伝達制御の電気生理学的解析

○長谷川賢卓

東京大学大学院

長期増強(LTP: long-term potentiation)はシナプス間の情報伝達効率が長期に亘り増強される現象であり、記憶の素過程の候補として考えられている。

哺乳類のアクチビンAは性腺や下垂体などで合成される性ホルモンと知られており、近年の研究から海馬でも、アクチビンAやその受容体が存在することがわかった。しかし、LTPを誘導するシータバースト刺激(TBS)では、アクチビンAによるLTPへの増強効果は見られなかった。

そこで、weak-TBSにより誘導したweak-LTPに対するアクチビンAの作用効果を調べることとした。

その結果、TBSではなく、weak-TBSを用いることでアクチビンAによるLTPへの増強効果を世界で始めて示すことができた。さらに、アクチビンAがweak-LTPへの効果を示すための細胞内情報伝達系を特定した。アクチビンAのLTPへの作用経路を特定した研究はこれまでにない。

また、weak-TBSで誘導したLTPへのアクチビンAによる効果を阻害剤実験による解析した結果、アクチビンAのLTPへの作用はアクチビンA→アクチビン受容体→MAPK/ERK→NR2Bリン酸化という細胞内情報伝達経路を介していることがわかった。

5 心筋細胞における収縮自励振動特性の研究

○新谷正嶺1、大山廣太郎1、栗原敏2、福田紀男2、石渡信一1,3

(1 早大・物理 2 慈恵医大・細胞生理、3 早大・WABIOS)

アクトミオシンと心臓という臓器の中間階層に位置付けられる心筋収縮系は、階層相応の機能性を備えていると期待される。事実筋原線維は、定常的な収縮の中間活性化条件下で、各サルコメアが収縮と弛緩を繰り返す自発振動状態(SPOC)となって動的安定性を保つ。我々は、細胞レベルで発現する筋収縮系の機能を検討するため、ラットの心筋細胞に対し、Z線へのAcGFPの発現、細胞内へのFluo4の導入を行い、サルコメアの長さ変化と細胞内Ca2+濃度の同時計測を行った。この系において、電気刺激応答による筋小胞体からのCa2+放出に伴うサルコメア収縮を計測したところ、4Hz以上の生理的高頻度刺激で収縮変動時間のバラつきが無くなり、連続振動状態となった。一方、細胞内Ca2+濃度制御によりサルコメアの収縮振動(Cell-SPOC)を惹起したところ、振動数が振幅依存的に1~5Hzとばらついた。しかし4-5Hzの振動波形が、電気刺激で見られた振動波形と合致した。このことは、生理的振動におけるサルコメア振動が、Ca2+非依存的な、筋収縮系に備わった特性であることを示唆している。

6 フェリチンを用いたナノ粒子の配列法の開発

○荻村史佳、吉村英恭

 明治大学理工学部物理学科

 近年、コンピューター等の電子機器は急激に発展をしており、半導体素子などのナノサイズでの微細化が求められている。しかし、現在の半導体作製に用いられているフォトリソグラフィー法では、まもなく微細化に限界が来ると予想されている。そこで、外径13nm、内径7nmの球殻構造をもつフェリチンタンパク質を用いてナノ粒子を作製し、二次元的に規則正しく配列することで、半導体素子を作製する方法を試みている。フェリチンの内部にナノ粒子を形成させることで粒子の大きさが内径の7nmに制限される。フェリチンを二次元的に配列させることによりナノ粒子の規則的な配列を作り、高密度に集積した半導体素子を作成することができる。

二次元配列を行う方法としては、すでに多くの成功例があるタンパク質変性膜法が知られている。ところが、この方法では金属を架橋にし、フェリチンを配列しているため、二次元配列が行えても架橋に使用した金属が基盤上に残ってしまうという欠点がある。そのため、本研究では酸化鉄のナノ粒子を形成したフェリチンを用いて、シリコン基盤上に直接配列させる方法を模索した。

7 フェリチンを用いたカーボンナノチューブ金属触媒の作製

○伊藤誠一郎1、吉村英恭2

 1明治大

カーボンナノチューブを密に規則正しく作製するにあたって触媒となる金属の粒径の制御や配列が重要である。本研究では球状のタンパク質フェリチンを用いることによってこの課題に取り組んだ。フェリチンとは外径13 nm、内径7 nmの内側に空洞を持つタンパク質で、その空洞に金属のナノ粒子を形成する性質を持つ。さらにフェリチン同士は六方細密に配列する性質も併せ持つ。これらの性質により粒径の揃った金属ナノ粒子として白金ナノ粒子を作成し、規則正しく配列することを目的としている。白金ナノ粒子を作成するに際して以下の条件を用いた。100 mM リン酸バッファー(pH 8.0)、0.5 mg/ml fer0、2 mM K2PtCl4、2.6 mM チオ尿素。これらを4 ℃の条件下で24時間反応させることによりフェリチンの内部に粒径の揃った硫化白金ナノ粒子を作成する事が出来た。しかし白金ナノ粒子を内包しているフェリチンの数が非常に少ないため、粒子を含むフェリチンの数を増やすことが今後の課題となっている。また同時に配列するために不純な物質を取り除くことも課題となっている。

1 フェリチンを用いた磁性ナノ粒子の作製

○引地祐介1、吉村英恭2

 1明治大学

ハードディスクなどに使われている磁気記録媒体の面記録密度を向上するにはより小さな磁性粒子を作製し、それらを高密度に二次元配列することが必要となっている。フェリチンとは直径13 nmの球状タンパク質で内部に7 nmの空洞を持っている。特徴として①イオンチャネルから金属イオンを取り込み内部の空洞に金属のコアを形成する、②自己集合して六方最密に二次元配列する、の二つが挙げられる。この二つの特徴を利用すると、内部に磁性粒子を形成しているフェリチンを二次元配列することで面記録密度2.3 Tbit/in2の磁気記録媒体を作製することが可能となる。

磁気記録媒体としては最小2.2 nmまで強磁性体となるSmCo5を用いることとした。

pH6.5(PIPES)中のフェリチンにSm(NO3)3を加えてフェリチン内部にSm粒子を作製し、さらにpH8(HEPES)中でSm内包フェリチンにCoSO4を加えることでSm-Co内包フェリチンを作製した。しかし、現在Sm-Co内包フェリチンの形成率は5 %以下であることから率を向上する事が課題となっている。さらにフェリチン内に形成されている粒子はSmとCoの酸化混合物であるためSmCo5の状態にするために焼結することが必要となる。

2 球状たんぱく質を用いた蛍光体ナノ粒子の作製

○原田知明1、吉村英恭1

 1明治大学

蛍光体ナノ粒子は、白色LED、ディスプレイ、分子マーカーとしての応用が期待されています。白色LEDで使用されている蛍光体粒子は光の波長よりも大きいため、後方への散乱が発生し、取り出し効率の減少が問題になっています。そこで、波長よりも小さい蛍光体ナノ粒子を用いることにより、この問題を解決することができると考えられています。そこで多種のミネラリゼーションに成功している、7 nmの空洞内を持つ球状たんぱく質フェリチンを使用し、その空洞内に均一な蛍光体ナノ粒子の作成を試みました。また、蛍光体ナノ粒子内包フェリチン表面に、遺伝子操作によるペプチドを修飾することにより、分子マーカーとして使用できる。そこで、赤色蛍光体であるEu3+ をドープしたY2O3、緑色蛍光体であるTb3+をドープしたY2O3の作成を目的としている。作成されたナノ粒子は、透過型電子顕微鏡により、フェリチン空洞内に形成されていることが確認された。また、エネルギー分散型X線分析により、それぞれの元素の特異的ピークが確認された。これらのナノ粒子を焼成することにより、赤色と緑色の蛍光が確認された。

3 不安定な二次構造がDNAのハイブリダイゼーション反応速度に及ぼす影響

○畑宏明1、北島哲郎2、陶山明2

 1東大・院・理、2東大・院・総合文化

 ハイブリダイゼーション反応速度は核酸の配列に大きく依存する。このメカニズムの詳細は未だ明らかにされておらず、配列から反応速度を予測することが現状では困難である。このメカニズムには核酸配列の長さや熱力学的安定性、二次構造など多くの要因が関与しており、その解明を困難にしている。これに対し我々は長さと熱安定性が均一なDNA配列を数多く合成し、一定の実験条件下でそのハイブリダイゼーション速度を測定・比較することで、二次構造の影響のみを取り出し解析を進めてきた。今回我々はDNA 配列から予測される二次構造の中でも、ランダムコイル構造よりも不安定なものに注目し、これらがハイブリダイゼーション反応速度に大きく影響することを明らかにした。さらに、そのメカニズムを説明する反応モデルを構築した。このモデルから予測されるハイブリダイゼーション反応速度は、実験結果ととてもよい相関を示した。本発表では上記の実験結果、ならびに反応モデルについて報告する。

4 ALS原因タンパク質TDP-43におけるRNA結合ドメインの機能探索

○鈴木 陽1、古川 良明1

1慶應大・理工・生命機構化学

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は神経変性疾患の一種であり、主要な病理学的所見として、病変部位である脊髄への不溶性封入体の蓄積が挙げられる。孤発性ALSに見られるほぼ全ての封入体には、TDP-43タンパク質が含まれていることが報告されており、それ以来TDP-43の凝集に伴う機能異常がALSの発症に重要ではないかと考えられている。しかし、ALSの発症に関わるTDP-43の生理機能については未だ明らかとなっていない。

TDP-43には2つの構造ドメイン(RRM1、RRM2)が存在し、RRM1はUG繰り返し配列と特異的に結合してスプライシングなどを制御する機能を備えていることが分かっている。一方で、RRM2はRRM1と同様のRNA認識モチーフを有しているものの、RNAを結合できるのかはこれまでに定かではない。そこで本研究では、大腸菌を利用することでタンパク質-RNA間相互作用を評価し、RRM1と同様にRRM2にもRNA結合機能が備わっていることを明らかにした。よってTDP-43は、RRM2におけるRNA結合を通じて、何らかの生理機能を発揮している可能性があり、現在さらなる検討を行っている。

5 硬骨魚類由来の祖先型ヘモグロビン遺伝子の設計・合成および発現

○梶原 弘毅1 松尾 高稔2  長井 幸史2  中川 太郎3  今井 清博1,2

1法政大学・院・工学研究科生命機能学専攻、2法政大学マイクロ・ナノテクノロジー研究センター、3長浜バイオ大学・バイオサイエンス学科

[背景・目的]

魚類由来ヘモグロビン(Hb)は、陸上生物の祖先的なHbであり、多くの脊椎動物由来Hbと同じ機能を持つ。本研究では、Hbの分子進化において硬骨魚類由来Hbに特徴的なRoot効果をはじめ、協同機構に関する新たな知見を得ることを目的とした。

[方法]

作成した最尤系統樹をもとに硬骨魚類由来の祖先型Hbに相当する分岐点ancfαおよびancfβのアミノ酸配列を推定した。各アミノ酸配列を用いて祖先型Hb遺伝子を設計した。そして大腸菌を宿主とした祖先型Hb遺伝子の発現型プラスミドを構築し、形質転換体の取得を試みた。なお得られた各形質転換体は、各種祖先型Hb遺伝子の発現実験及び産生した組換え型ancfαおよびancfβタンパク質の精製を試みた。また両タンパク質精製品を用いた吸収スペクトル測定および等電点電気泳動も合わせて行った。

[結果・考察]

今回行った各実験結果より、産生した組換え型ancfαおよびancfβタンパク質は、ともに約14kDaの大きさを示したヘムタンパク質であり、複合体を形成することが示唆された。

6 ヤツメウナギの祖先型ヘモグロビン遺伝子(node25)の発現系構築

○幕 晋一1、松尾 高稔2、長井 幸史2、中川 太郎3、今井 清博1,2

1法政大学・院・工学研究科・生命機能学専攻、2法政大学・マイクロ・ナノテクノロジー研究センター、3長浜バイオ大学・バイオサイエンス学科、

【背景・目的】

ヤツメウナギなどの円口類ヘモグロビン(Hb)は、Oxy型の場合は単量体を、Deoxy型の場合は、二量体および四量体構造をとることが報告されている。本研究では、現存する脊椎動物において最古種とされる円口類の中のヤツメウナギHbの祖先型Hbを設計・合成し、脊椎動物Hbが分子進化の過程において獲得した酸素結合協同作用の起源について新たな知見を得ることを目的とした。

【方法】

作成した最尤系統樹をもとにヤツメウナギの祖先型Hbに相当する分岐点node25のアミノ酸配列を推定した。このアミノ酸配列を用いてNode25遺伝子を設計した。さらに大腸菌を宿主としたNode25遺伝子の発現型プラスミド(pET-Node25)を構築し、形質転換体を取得した。Node25遺伝子の発現により生産した祖先型Hbの粗精製品の吸収