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訪問看護・介護施設における看護管理者 確保・育成に関する方向性について(案) Japanese Nursing Association 公益社団法人 日本看護協会

訪問看護・介護施設における看護管理者 確保・育 …...訪問看護・介護施設における看護管理者 確保・育成に関する方向性について(案)

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訪問看護・介護施設における看護管理者確保・育成に関する方向性について(案)

Japanese Nursing Association

公益社団法人 日 本 看 護 協 会

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(1)訪問看護における看護管理者の現状と位置づけについて

(2)訪問看護ステーションの看護管理者のあるべき姿・役割について

(3)訪問看護ステーションの看護管理者の役割とコンピテンシー

(4)看護管理者の確保・育成のために必要な体系的研修と支援策(案)

(5)研修プログラムの内容ー看護管理者ビギナー研修ー(案)

目次

1.訪問看護・介護施設における看護管理者確保・育成策検討の背景と目的

2.看護管理者の位置づけの整理

3.訪問看護における看護管理者確保・育成について

4.介護施設における看護管理者確保・育成について

(1)介護施設の管理者の現状と課題(2)介護施設の管理者のあるべき姿と役割(3)介護施設の看護管理者の確保・育成のための体系化(4)新研修プログラムの構成(案)(5)新研修プログラムの学習手法と内容(案)

5.まとめ

[看護管理者の現状と課題]ア)医療機関からの転職者や自ら起業した者も多く、必ずしも管理職としての経験が豊富であるとは限らない。イ)在宅・介護領域の看護管理者に対する育成や支援の仕組みは充分に整備されているとはいえず、看護管理者本人の自助努力に任されているところが大きい。

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1 訪問看護・介護施設における看護管理者確保・育成策検討の背景と目的

この案作成にあたって「訪問看護・介護施設における看護管理者確保・育成策に関する検討委員会」の検討結果を参考にした。

地域包括ケアシステムの構築に向け訪問看護・介護施設の看護職への多様な役割の期待がされている

在宅・介護施設の利用者に質の高い看護サービスを効率的・安定的に提供していく

②一人一人の看護職の資質の向上が必要

①組織を束ねる看護管理者のマネジメントスキルの向上が必要

背景

目的 訪問看護・介護施設における看護管理者に求められる役割と資質を明確化し、確保・育成策について検討を行い、その案について示す。

看護管理者の位置づけの整理

経営者兼管理者

全ての経営と運営を行う管理を行う

経営者兼管理者

管理者

管理者

経営者

2 看護管理者の現状の位置づけについて

経営者

訪問を中心に業務をし、合間で管理を行う

管理者兼スタッフ

管理者

訪問看護ステーションの看護管理者の位置づけ 現状の多くの管理者が該当する

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施設

看護 介護

事務

事務 栄養

施設

看護・介護部

看護 介護

事務

施設

看護・介護部

看護 介護

事務

施設管理者 看護介護部門管理者 看護部門管理者

施設全体の管理を行うケア提供者看護職・介護職の管理を行う

看護職の管理を行う

介護施設における看護管理者の位置づけ

左2タイプがあるべき位置づけ

訪問看護における看護管理者確保・育成について

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3-(1)訪問看護における看護管理者の現状と課題について

①管理者のあるべき姿、役割、コンピテンシーの明示が必要

訪問看護の管理者の現状

課題

②訪問看護ステーション看護管理者の確保・育成策が体系的に実施されていない

組織での役割・立場に応じて求められる姿が違う

継続的に地域に貢献する訪問看護ステーションの姿について考えられていない

管理者になるにあたり、

最低限、どれくらいの経営・管理の経験、知識があればよいかが不明

ロールモデルとなる管理者が存在しない

管理に関する研修は各団体で実施されているが、ターゲットや到達目標設定などがあいまいだ

訪問看護ステーションの多くが小規模であり、研修に人を出せていない

管理者自身が系統立てて学んできていないため、訪問看護師を育成するというところに力をかけられていない

認定看護管理者研修・訪問看護認定看護師研修では訪問看護で求められる経営や福祉に関する内容が手薄だ

訪問看護ステーション管理者のあるべき姿

ケアの質の管理

リーダーシップ

管理者の役割

※すべてのあるべき姿につながる役割は「ケアの改善と訪問看護サービスの質の向上」である

※他4つの役割を果たしながら、「ケアの改善と訪問看護サービスの質の向上」という役割を発揮することを求められている

3-(2)訪問看護ステーションの管理者のあるべき姿と役割

経営

多種職連携

③いつでも利用者・家族・地域住民や関係機関らの相談やニーズに対応し、新しい関係性をつくり・資源をつなぐ

①魅力的な管理者としてケア理念を浸透させ、質の高いケアが継続的に提供できる

②リーダーシップを発揮し、人材の育成・確保をはかりながら経営の安定化がはかれる

ケアの改善と訪問看護サービスの質の向上(利用者等の自立と療養支援のために)

ケアの質の管理

リーダーシップ

多職種連携 経 営

ケアの改善と訪問看護サービスの質の向上

(利用者等の自立と療養支援のために)

• 起業・経営の実行• 経営安定のため大規模化をする

コンピテンシー

役割

経営者となる段階で付加するコンピテンシー

5つの役割を中心とし、その役割に対応したコンピテンシーがある

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• ケアの評価・改善のために体制構築ができる

• 人材育成のための環境整備ができる

• 自ステーションの理念を示し、スタッフに伝えることができる

• 組織内外に自ステーションの価値を発信し、利用者獲得ができる

• 経営状態を把握し根拠を持って経営者と折衝できる

• 労働衛生管理を適切に行える

• 多職種の役割を明確化し、資源を活用することができる

• 多職種・組織間連携の窓口として機能できる

• 他ステーションの管理者の相談役・スタッフ育成に貢献できる

• 訪問看護ステーションの連携範囲を拡大する

• 地域の中のステーション間のネットワークを構築できる

• 訪問看護の価値・役割を地域に根付かせる

3-(3)訪問看護ステーションの管理者の役割とコンピテンシー

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3-(4)看護管理者の確保・育成のために必要な体系的研修と支援策(案)

自施設による実践の繰り返し

事前課題 講義

施設実習(シャドウウィング含む)

グループワーク

テキストによる振り返り

最終課題

参加型学習

②看護管理者のコンピテンシー獲得のための実践的研修(初級・中級・上級)

①看護管理者ビギナー研修

③運営支援事業

④各地域でのネットワークづくりのための交流会

⑤起業・経営のための情報提供

講義

演習

最終レポート

小テスト

3-(5)研修プログラムの内容ー看護管理者ビギナー研修ー(案)

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学習手法 内容 学習時間

1 講義 管理者に求められる役割訪問看護の現状

0.5日

2 講義 保助看法・介護保険法・健康保険法にかかる諸制度と保険のしくみ

0.5日

3 講義 訪問看護ステーションの経営の基礎労務管理・安全管理

0.5日

4 演習 診療報酬・介護報酬に係わる保険請求事務演習事例シミュレーション演習

0.5日

5 小テスト 理解度・到達度チェック

6 レポート テーマ

7 交流会 現任管理者との交流

目的:①看護管理者に求められる役割を理解する②身につけておくべき知識・保険請求にかかわる一連の流れを理解する

介護施設における看護管理者確保・育成について

介護施設の管理者の現状

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①介護施設における看護管理者に求められている役割の明示が必要

②介護施設の看護管理者を育成するための体系的な教育体制が必要課題

4-(1)介護施設の管理者の現状と課題

医療機関から介護施設への異動により、医学モデルから生活モデルへの考えの転換が図れず、葛藤が生じ、適応に困難を感じたり、役割の十分な発揮ができなくなる状況がある

介護施設における看護の価値を他職種、地域等へ発信できない

介護施設において看護管理者の役割がはっきりしておらず、位置づけも確立されていない

医療機関等での勤務、既存の研修では、介護施設の管理について学ぶ機会が少ない

介護施設の看護管理者は、認定看護管理者研修を受講する人が少ない

既卒の看護職は、

基礎教育で介護施設の看護管理者という職位があることを知らされていない

施設における看護職の配置人数が少ないため、研修等の教育機会への参加が難しい

看護管理者の責任範囲が多様で育成プログラムが作成しにくい

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看護管理者のあるべき姿

組織の理念を理解し、自身の果たす役割の理解やビジョンを持ちリーダーシップを発揮できる

医療機関から施設に異動した際に再度、施設における看護のあり方を見つめなおし、自身のすべき看護を捉え発信できる

介護・福祉制度、法制度・政策について幅広く情報収集し理解している

規範・規則に則った人材管理と成長のための人材育成ができる

多職種の役割を理解し、連携・協働することで利用者中心のケア提供チームの構築ができる

施設全体のケアの評価・改善・定着が行える

利用者が安全・安心できる施設経営のため、資金調達を踏まえた事業展開や長期計画の立案ができる

地域での連携体制構築とネットワークを生かした活動ができる

リーダーシップ

多種職連携

医療提供の責任をもつ

経 営

役割

※ すべての看護管理者に求められているものにつながるのは「ケアの改善/サービス向上」である※ 他4つの役割を果たしながら「ケアの改善/サービス向上」という役割を発揮することが求められている

2-(2)介護施設の管理者のあるべき姿と役割

ケアの改善/サービス向上、(利用者の権利擁護、ケアの安全・安心、倫理の実践)

医療提供の責任をもつ

リーダーシップ

多職種連携

• ケアの説明責任を果たせる• 介護施設の看護の知識を普及できる

• 介護施設入居者のために政策に影響を与えられる

• 入居者の権利擁護ができる

• 関係法規・制度を適切に運用できる• 人材の確保・育成ができる• 経営理念の実現ができる• ケアの安全・安心を担保できる

経 営• 多職種それぞれの役割を明確化・尊重し協働できる

• 多職種で全人的ケアプランを作成・実践できる

• 地域包括ケアシステム構築のために組織間連携のルートを作成できる

• 重症化予防のためにケア提供体制を構築・維持できる

• 慢性期疾患に対する質の高いケアを担保できる

• 看取りの実践体制を整備できる

ケアの改善/サービス向上、(入居者の権利擁護、ケアの安全・安心、倫理の実践)

コンピテンシー

役割

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5つの役割を中心とし、その役割に対応したコンピテンシーがある

4-(2)介護施設の看護管理者の役割とコンピテンシー

医療機関等 介護施設

管理者

社会福祉施設長資格認定講習(通信授業)

管理者

養成機関

医療・福祉・介護に関する各種の研修(県協会・大学などが主催)特別養護老人ホーム看護リーダー養成研修

認定看護管理者研修(日本看護協会)

+介護保険と福祉分野に関する項目

新研修プログラム介護施設の看護管理者

の役割とコンピテンシー

獲得のための研修

介護施設の看護管理者に関する

キャリアパスイメージの獲得

① 基礎教育において介護施設の看護管理者に関するキャリアパスを提示する② 医療機関等の管理者(候補)が介護・福祉分野について学ぶ機会を作る

③ 医療機関等での管理経験の有無に関わらず、介護施設の管理者(候補)が、介護施設の看護管理について学ぶ研修体制を構築する

④ 看護管理者の孤立を防ぐためネットワークづくりのための交流会を実施する

スタッフNs スタッフNs

受講

受講

受講管理者

受講

基礎教育、医療機関等での勤務期間も含め介護施設の看護管理について学ぶ機会を拡充する

新研修プログラム

看護管理者のネットワークづくりのための交流会④

4-(3)介護施設の看護管理者の確保・育成のための体系化

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事前課題において管理者としての日常の行動や考え方を振り返り、講義・参加型学習により実感を伴った理解を促進する。さらに事後課題を行うことで、自施設における改善・実践の実現化を支援する。加えて、研修ツールを活用することで効果的に学びを深めていく。

事前課題• 自組織の自己評価のレポート

講義

施設実習

(シャドウウィング含む) グループワーク

テキストによる振り返り

事後課題• 自組織の自己評価レポートを修正

• 改善計画を立案

参加型学習

自施設による実践の繰り返し

1 2 3 4 6

5

計3日間程度

4-(4)新研修プログラムの構成(案)

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No 学習手法 内容

1 事前課題 自組織の自己評価

2 講義 介護(高齢者)施設の看護管理者の役割とコンピテンシーについて

「医療提供の責任」について 「経営(組織分析、多職種分析)」について 「ケアの改善」について

3 施設実習 「リーダシップ」について 「多職種連携」について 「経営」について

4 グループワーク 「経営(組織分析、多職種分析)」について 「ケアの改善」について

5 テキスト振り返り 「経営(組織分析、多職種分析)」について 「ケアの改善」について

6 事後課題 自組織の自己評価・修正 今後の改善計画の立案

※ 施設実習、グループワークを考慮し受講者は40人程度を想定

マニュアル2冊(受け入れ施設用・受講者用)

テキスト2冊(理論編・実践編)

4-(5)新研修プログラムの学習手法と内容(案)

まとめ

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訪問看護ステーション及び介護施設における看護管理者は長期ケアを担う看護管理者として以下をビジョンとして描き、活動することが必要である。

介護施設も訪問看護ステーションもその組織単体で成立しているわけではない。

自組織のケアの改善だけでなく、地域全体を見渡しながらケアの現状を適切に理解・解釈・分析し、改めて表現する。

5-1 長期ケアを担う看護管理者が描くビジョン

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5-2 今後の検討課題

1. 看護管理者の役割・コンピテンシーの獲得のため、体系的な研修体制・研修プログラムの構築が必要である。

2. コンピテンシーについて

① 検討により明らかにされた看護管理者の役割及びコンピテンシーについて関係各所に広く周知する必要がある。

② 研修プログラムを構築する際には実践・体験型で学ぶべき内容を厳選し、知識等の習得はオンデマンドやテキスト等により自主的に習得できる体制を整えるなどの工夫が求められる。

③ 認定看護管理者研修(Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ)について介護・福祉についての内容の充実が必要である

④ 訪問看護の管理者については長期に職場を離れないでも管理者教育が受講可能な研修の実施が必要である。

⑤ 他団体とも連携・協力し、訪問看護・介護施設における管理者養成ができる指導者を育成するよう国に要望する。

①検討されたコンピテンシーを原型としてブラッシュアップしていく必要がある。②コンピテンシーについて看護職全体の合意形成に取り組む必要がある。

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訪 飯島かおり 神奈川県保健福祉局保健医療部保健人材課看護指導グループ/主査

訪 小田美紀子 兵庫県看護協会/専務理事

訪 平田 晶奈 訪問看護ステーションエール/代表取締役

訪 藤野 泰平 みんなのかかりつけ訪問看護ステーション名古屋/代表取締役

訪 山田 雅子 聖路加国際大学大学院看護学研究科/教授

訪 山本 志乃 株式会社在宅看護センター横浜/代表取締役

介 海老根典子 練馬区社会福祉事業団富士見台特別養護老人ホーム/施設長

介 九里美和子 元済生会特別養護老人ホーム淡海荘/施設長

介 小泉 立志全国老人福祉施設協議会/介護保険事業等経営委員会特別養護老人ホーム部会 部会長

介 酒井 郁子 千葉大学大学院看護学研究科/教授

介 松本 淳子 医療法人社団栄宏会人材開発部/部長

介 吉竹 弘行 千葉商科大学人間社会学部/教授

オブ 後藤 友美 厚生労働省老健局老人保健課 看護専門官

オブ 長谷川洋子 厚生労働省老健局老人保健課看護係長

オブ 山口 道子 厚生労働省医政局地域医療計画課 在宅医療推進室 在宅看護専門官

(敬称略、「訪」は訪問看護WG、「介」は介護施設WGご担当、「オブ」はオブザーバー)※五十音順※所属は平成29年1月末日現在

訪問看護・介護施設における看護管理者確保・育成策に関する検討委員会 委員名簿

本会では平成29年度も引き続きの検討を行ってまいります。最後に,「訪問看護・介護施設における看護管理者確保・育成策に関する検討委員会」に積極的に参加いただいた先生方のお名前を記して感謝申し上げます。

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訪問看護・介護施設における看護管理者確保・育成に関する方向性について(案)

【問い合わせ先】公益社団法人 日本看護協会 医療政策部〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-8-2TEL:03-5778-8804 FAX:03-5778-8478

E-mail:[email protected]

(2017年4月7日発行)禁無断転載