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多分散高分子溶液の法線応力効果 (昭和46年7月31日受理) §1序 われわれはさきに固有粘度に関するFixmanの理論1)・2)を高分子希薄溶液の法線応力効果に適用し た3)・4)。その主な結果を列挙するとおおよそ次のようになる。 i)単純ずり流動において流動の方向を¢,速度勾配慮の方向をツとすると一般に法線応力成分間に σ卯砂≒σ廻≒σ篇 ・なる関係が成立し,特に髭が微少ならば σ皿の≒σ鰐;σ3勿 が成立する。 ii) κが微少ならばσ淵一σ麗は♂に比例し,吻写はκに比例する。 iii)分子量をM,κ→0のときのずり弾性率をσo,溶液の濃度(9/cm3)をρ,気体定数をR,絶体温度 ・をTとすると,2MCo/ρRTは最低モード膨脹係数(lowest mode expansion factor)αのみ のときの値4.9からαの増大にするにっれ減少し1に近づく。 iv)瓢σ=1.06x106のPIB/decali賎にっいての実験結果5)と比較すると,F1。59×10-2sec}1 のとき実験値 σ溜一σ四=10.49dyne/cm2 に対し,理論値は隻7dyne/cm2である。 i),ii)は種々の実験で検証されており,また,現象理論からの帰結でもある。iii)はわれわれの理論の ・特徴的な結論の一つであるが,残念ながらこれを検証する直接的な実験結果はまだない。この関係式は逆 にルf,Go,ρ,T,の測定値からαの値を決定するのに用いることができよう。次にiv)に関して一言しよ う。粘度や法線応力のむ→0における理論値を求めるにはあらかじめαの値が定められなければならな い。前論文では粘度と法線応力の理論値が実験値とできるだけよく合うようにとの要請からこれを定め た。後にみるように,ここではわれわれはまずHi)の関係を用いてαを定め,次にこのα値と粘度式とか ら非摂動長を定め,最後にこれらの値を用いて法線応力の理論値を求めることになる。 われわれの理論を改善する方向には種々のものが考えられる。例えば,1)多分散高分子溶液にも適用 可能ならしめること,2)非すぬけの仮定を除くこと,3)分子間相互作用を考慮に入れることなどであ る。本稿においては特に1)に着目し・この点からの理論の一般化を行ないたい。 §2応力成分およぴずり弾性率 高分子溶液の単位体積あたりに存在するα種高分子数をCαとすると,応力テンソルσは σ=σ。+Σq碗 (2.1) α によって与えられる。ここにσ。は溶媒のみによる応力テンソルであり,砺はα種高分子1個の応力テン 1

多分散高分子溶液の法線応力効果...多分散高分子溶液の法線応力効果 瀬 川 渡 ・ 石 田 勝 己 (昭和46年7月31日受理) 1序 われわれはさきに固有粘度に関するFixmanの理論1)・2)を高分子希薄溶液の法線応力効果に適用し

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多分散高分子溶液の法線応力効果

瀬 川 渡 ・ 石 田 勝 己

(昭和46年7月31日受理)

§1序

 われわれはさきに固有粘度に関するFixmanの理論1)・2)を高分子希薄溶液の法線応力効果に適用し

た3)・4)。その主な結果を列挙するとおおよそ次のようになる。

 i)単純ずり流動において流動の方向を¢,速度勾配慮の方向をツとすると一般に法線応力成分間に

                  σ卯砂≒σ廻≒σ篇

・なる関係が成立し,特に髭が微少ならば

                  σ皿の≒σ鰐;σ3勿

が成立する。

 ii) κが微少ならばσ淵一σ麗は♂に比例し,吻写はκに比例する。

 iii)分子量をM,κ→0のときのずり弾性率をσo,溶液の濃度(9/cm3)をρ,気体定数をR,絶体温度

・をTとすると,2MCo/ρRTは最低モード膨脹係数(lowest mode expansion factor)αのみの関数でα=1

のときの値4.9からαの増大にするにっれ減少し1に近づく。

 iv)瓢σ=1.06x106のPIB/decali賎にっいての実験結果5)と比較すると,F1。59×10-2sec}1,α=3・807

のとき実験値

                σ溜一σ四=10.49dyne/cm2

に対し,理論値は隻7dyne/cm2である。

 i),ii)は種々の実験で検証されており,また,現象理論からの帰結でもある。iii)はわれわれの理論の

・特徴的な結論の一つであるが,残念ながらこれを検証する直接的な実験結果はまだない。この関係式は逆

にルf,Go,ρ,T,の測定値からαの値を決定するのに用いることができよう。次にiv)に関して一言しよ

う。粘度や法線応力のむ→0における理論値を求めるにはあらかじめαの値が定められなければならな

い。前論文では粘度と法線応力の理論値が実験値とできるだけよく合うようにとの要請からこれを定め

た。後にみるように,ここではわれわれはまずHi)の関係を用いてαを定め,次にこのα値と粘度式とか

ら非摂動長を定め,最後にこれらの値を用いて法線応力の理論値を求めることになる。

 われわれの理論を改善する方向には種々のものが考えられる。例えば,1)多分散高分子溶液にも適用

可能ならしめること,2)非すぬけの仮定を除くこと,3)分子間相互作用を考慮に入れることなどであ

る。本稿においては特に1)に着目し・この点からの理論の一般化を行ないたい。

§2応力成分およぴずり弾性率

 高分子溶液の単位体積あたりに存在するα種高分子数をCαとすると,応力テンソルσは

                  σ=σ。+Σq碗           (2.1)

                      αによって与えられる。ここにσ。は溶媒のみによる応力テンソルであり,砺はα種高分子1個の応力テン

1

研 究 紀 要(1972)

ソルヘの寄与である。α種高分子のセグメント数を1覧とすると                  ハ置α              σα一2解Σ(1+G西)(莇+瓦’)+砿M1     (2・2)                 きエがなりたつ4)。(2.2)を(2.1)に代入しΣC罐丁1覧1をσoに含ませると

                 ゆ             σ一σ。+Σ2たTCαΣ(1+α)(莇+瓦呂’)     (2・3)                 ぴ      ニが得られる。ここにG己,瓦‘,および莇’は速度勾配κと最低モード膨脹係数αの関数である。

 4種高分子の非摂動長をLo、とし,またαはαに依存しないと仮定すると,(2,3)より応力成分は次の

如く求められる(Appendix I)。

                 ユ        σ…鰍(11歪3)㍉・α3κ¥αL・α翫z)(}+G、)(1+劉  (乞4)

              σ一一σ 1(11葦3)窟η・α・κ}2鞠CαL膿・隆{ろ(」)(1ヤG,)}・(・+繁一難)(a5)

(2.4)(2。5)においてZについての和は一般にNαしたがってαに依存する。しかし,これらの級数の性

質から瓦αが十分大きいときは瓦、依存性は小さく,また,ふつうNαの平均値は著しく大きいので,上

記の和はその収束値(実際上はその近似値)でおきかえることができると仮定する。

 したがって,高分子の存在に因るずり弾性率をCとすると

      G;(σ一・ツ)2=莚(層CαL・3α)21苧瓢1+G、)(1+灘)}2

         耽一吻2押予1五(」)(}+6評(1+睾難)(26)

力弍なりたつ。

 κが十分小さいとき,これらの式は

                   1    σ・のツ+(12琶1)2η・α3κ¥CαL・α3¥ム(Z)(}+G乙・)

         ユ       σ一ツー{(1賓)㍉・α3κ}壱寄CαL・α6写{ム(Z)(、しG、・)12

     碍竪鷲ム(・)(華ω)「

           α   」1ム(Z)(1+G‘o)}2

(2.7)

(2。8)

(2.9)

となる。このときZについての和はαのみの関数となるので,単分散理論におけると同様耽@はκに比例

し,σ傭一σ擁はκ2に比例している。

  §3!陛*およぴL。*の導入

 4種高分子の分子量をM、,セグメント長を60,セグメントあたりの分子量を・鴻とすると

                  L・α2-Nα6・2歌み・2    (3・1)

がなりたつ。また,Avogadro数をN。,溶液単位体積あたりの高分子の質量をρとすると

                   ρ一寄C磯     (3・2)

2

多分散高分子溶液の法線応力効果(瀬川・石田)

である。したがって

      為丁(ぞ鰯3)2一ゐT(艶剛一ρRT=些 (歌3)      丁一Σ丁砺Loα6一一一ガ  ΣCαM、3一一星2NoΣCα幡3   Mル磁

         α   α (署Cα並312)22砿,

となる。ここに・Ml”,M3は周知の如く

      πω』C轟2  (3,4),  砿一ΣCαMα3  (3.5)         ΣCαMα             ΣCαMα2

で定義され,また砿びoは

                                         私・一(繋濫12)    (36)

で与えられる。これは粘度平均分子量

                私一(Σ野総)1ん    (歌7)

においてレ=0。5とおいたものである。

 さて

                  磁脇_M*        (3.8)                   砿“o

とおけば,(3.3)はρRT/2M*となり,(2.6),(2.9)は単分散の場合の対応する式において・Mを単に

M*とおきかえたものに等しいことが分る。

 次に,(2.4)や(2.7)が単分散の場合の式と同じ形になるためには

                丸ΣCαL・α3誰L・*3

                  αであればよい。これよりLo*を求めると

                 L・*・一雪絵;    (歌9)

が得られる。(3.8),(3。9)を用いると

               素ΣCαL・α6一赤L・*6

                 αが成立し,(2.5)や(2.8)も単分散の場合と同じ形になることが分る。M*,Lo*を用いて(2。4),(2.5),

(2・6)を記すと

             ユ     σの一+(1峯葦3)百瓦η・α3κ看索L・*3鞍z)&+G、)(・+灘) (鋤

σ一一・,,一{(・劉榊}2論赤塘¥1ム(」)(1+G、)}・(・蝶一湘(鋤

                1+鍵   1+聖_莇’ツ         G一孫{¥ム(、)(、驚,)}2/写砺餐+謡・  (訊12)

3

研 究 紀 要(1972)

となる。また, κ→0のときには

                σ一♂1峯珪3)嘱η・α3噛L・*3昇涛(」)(鈴爾

         ユσ一一σ卯一{(1亀葦3)百莇η・α3κ}2蒲訪*L・*6昇1ム(Z)(、1+G、・呼

(3.13)

(3.14)

            G・轟{肺)(そ+G、。)}2/写{ム(z)(、㌃G、・)1・  (3・15〉

が成立する。また,(3.13)より躍→0のときの粘度式として

                                η一η・+(1迄葦3)2鵡 3赤L・*3¥ム(」)(}+G、・)  (3・16〉

が導かれる。(3.15)を書き直すと

                 2M*G,={苧ム(Z)(呈+G君・)}2   (3,1げ)

                  ρRT      1                     ヲ伍(」)(・+G彦・)}2

となる。この式の右辺は単分散のときと同じαの関数であり,これより2凝*(ヲoノρRTとαとの関係が理

論的に定められる(ApPendix II)。また,もし実験値から2M*σ0/ρRTの値が定まると上記関係からα

の値を決定することができる。

 以上の考察から,単分散理論の諸式においてMをル介,LoをLo*とおきかえたものが多分散の場合に

成立することが分った。

 次に,L。*と

                   所一γ/Σ舞2    (3・17)

によって定義されるV瓦2との関係を求めよう。(3,1)(3。9)より

                                                       恥*3一暴総確(鑑)百一睾砦(笠)2   (318〉

が得られ,また,数平均分子量ハ右を用いると

なる故

   ゐ02_Lo2   .Mo 、甑

    Mωハ4z 一旦L・*3一_一よLD22   M/Mび02

(3.19)

が成立する。

 Lo*,V/ 戸は単分散理論におけるLoに代って共に多分散高分子の非摂動長を表現する物理量である

が,前者は6次および3次のモーメントに関係し,後者は2次のモーメントに関係しているので,前者の・

方がより大きい値をとることが予想される。もちろん,単分散試料では ・M炉M“o-Mω=砿なる故

(3.19)より

4

多分散高分子溶液の法線応力効果(瀬川・石田)

L・*一γ!η

が導かれる。

  §4 分子量分布関数

 i)Schultz-Zimm分布

 M*/Mπ,!謄/M門”・M*/Mω・!謄/ハ転およびゾL・2/ゐo*などの値を求めるためには分子量分布関数が

与えられねばならない。まずよく用いられる重量分布についてのSchultz-Zimm分布関数6)

            ツ厄+1        9(切=r(h+1)漉一蝉          (4,1)

                      1ノレ          h 冨{~(h十レ+1)/∫T(h+1)} _h+1 _h+2        ツ=π   猛  一島、瓦一    (な2)を用いることにする。

 第1表Schultz-Ziulm分布における     (4.2)より

   』Mi*/Mπ,M*/Mω,M*/M、の計算値

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

M*/Mπ

3.395

2.173

1,774

1,577

1,459

1.382

1.327

1.285

1、253

1.228

M*/!脇

1.698

1.449

1,330

1.261

1,216

1,184

1.161

1,142

1,128

1,116

M*/M3 ハ盃

ハ蛎o

1.132

1.086

1.064

1,051

1,042

1,036

1.032

1,028

1.025

1,023

{r(h+1.5〉77(h+1)戸『

橘          ユ{r(h十レ+1)/∫▼(ん+1)}3

M20  z%2h+1一=耳7(4・3》

が成立するから(3.8)に代入して

  4V*_、 (ん+1)(h+2)

  菰一π写鵠1)r

  M*_  (h+1)(量2)

π{与傭)}2醗篇昇ド

(4.4〉

(4.5〉

第2表Schultz-Zimm分布におけるM*/Mかの計算値

ん レ;0.5 レ=0.6 ンー・,71レー・,81レーα9レ=1。0

第3表Schultz-Zimm分布にお

  けるV扉/Lo*の計算値

h

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

1.921

1.574

1、416

1.326

1.268

]。227

1.198

1、175

1.156

1,142

1.872

1.547

1.398

1,313

1.257

1。219

1.190

1.168

1.151

1,136

1.824

1.521

1.380

1.299

1.247

1.210

1.183

1.162

1.145

1.131

1.780

1.496

1.363

1.286

1,236

1,201

1,175

1.155

1.139

1。126

1,738

1472

1.347

1.274

1,226

1,193

1.168

1.149

1.133

1,121

1.698

1.449

1.330

1,261

1.216

1.184

1.161

1,142

1.128

1,116

1

2

3

4

5

6

7

8

910

4石壱/L。*

0.6051

0.7316

0.7956

0.8347

0.8612

0,8803

0,8947

0,9061

0、9152

0,9227

5

研究、紀要(1972)

          ん+2                  h+1      M*                   M*      π僻鍔)}2(46) 瓦『={讐震il)}2 (↓7)

などが導かれる。同様1ご(4.3)を(3.19)に代入すると

                  エ                         ゾ 恥・*一h2{与講)}冨/1(h+1)(h+2)1巻  (広8)

が得られる。

 第1表はル磐/巫.,M*/冴ω,M*/忍、の計算値,第2表はM*/砿の計算値,第3表はゾ耳/Lo*の

計算値を示してある。んが増すにつれ分布は鋭くなり単分散に近づくが,このとき各種の分子量の比は小

さくなることが分る。また,M*/瓦はレの増すにつれ減少する。vだ戸/Lo*の値はhが増すにつれ増大

し,1に近づく。(4.4)~(4.7)または第1表,第2表を用いると,Mη,ル臨M覇M2の値が与えられたと

き八握の値を定めることができる。また,(4.8)または第3表はLo*が与えられたときゾηrを定めるのに

用いること力三できる。

 ii) Tung分布

 同様な計算をTung分布関数7)について行なってみよう。重量についてのTmg分布関数は

                 9(M)一yh砂一・…酔        (4.9)

                                        (4.10)

によって与えられる。(4.10)より

     ππ  _  π⑳  _  ハゐ  = M” =    M2   レ(1一幻P-171f+毒)}2-/r(1+青)}}r(・+去)r(1+芸){r(1+肯)}一1(411)

が成立するから,(3.8)より

                 M*r(1+芸)r(1一去)

                私=lr(1+ゑ一)}2   (412)

               M.  r(1+芸)

               瓦 ={’(縁ん)}2{凧継   (姻

                     r(1+芸)

               藩ぺ・+去){F(1÷■)}・  (“4)

                  ハ芦「(1+去)

                 ガ{r(1+毒)}2    (415)

が導かれる。また,前と同様に(3.19)より

ッ去」ψ諾)「一{「(》)}廿(景糞)一f(1+募)竪1+去)}二1

一6一

多分散高分子溶液の法線応力効果(瀬川・石田)

h 蜘畝麿/島  一M*/!脇

                      エ                         ユ          ゾ瓦・/L・*一{r(1+立)}2/lr(1一差)}互{r(1+芸)}百  (416)

が導かれる。

 これらの量の計算値は第4表,第5表および第6表に示してある。i)におけると同様第4表,第5表

ではhが増すにつれ(分子量分布が鋭くなるにつれ)ハ4*と平均分子量との比は減少し,また第5表では

前と同様にレが増すにつれ減少している。第6表ではy!τ7/Lo*の値はhが増すにつれ増大している。

これもi)と同様な結果を示している。

 分子量分布が鋭くなるにつれ,M*と平均分子量との比は減少しゾ瓦2/L。*は増大するといった性質は

普通の分子量分布ならば関数形によらない一般的な性質と考えることができる。

 第4表Tung分布における   M*/巫.,ルで*/彫、,M*/π、の計算値     §5 混合系への応用

                     分子量1鴫(α=1,2,……)の単分散高分子試料を重量

                    分率Wα(α耳1,2,……)で混合した系について考えよ

     QO1

2

3

4

5

6

7

8

910

2,157

1,420

1,225

1.141

1.098

1.072

1.055

1,(144

1.035

2.546

1.373

1.175

1.102

1.068

1.048

1,036

1,028

1,022

1.018

1,273

1.079

1.038

1.022

1.014

1.010

1.008

1.006

1.005

1.004

つo

 (3.8),(3.18)より

               ぎ   繁一瓦・百儲)冨一

                 (多制’)(揺一)ヤ鴨器3(臥・)

が得られる。したがって(3.16)よりκ→0のときの粘度

   η=η・+Σ四αηα     (5.2)       α

第5表Tung分布におけるM*/M・の計算値

h レ=0,5レー・,61レー・.7

ツ=0.8り一・。giンー・,・

第6表 Tung分布における

  》扉/Lo*の計算値

’2

3

4

5

6

7

8

910

3.242

1.482

1,219

1.127

1.083

1.059

1.044

1.034

1、027

1.022

3.072

1.458

1.209

1.122

1.080

1,057

1,042

1.033

1.026

1,021

2,920

1.435

1,200

1,117

1.077

1,055

1.041

1,032

1.025

1.021

2.783

1.413

1,191

1.112

1.074

1.052

1,039

1,030

1.024

1、020

2.659

1.393

1.183

1.107

1.071

LO50

1.038

1,029

1.023

1.019

2.546

1.373

1,175

1.102

1.068

1.048

1.036

1.028

1.022

1.018

2

3

4

5

6

7

8

910

》1万2/Lo*

0

0.7269

0.8672

0.9218

0.9486

0,9636

0,9729

0,9791

0.9833

0,9864

7

研 究 紀 要(1972)

                              顎一(1餐)烹端η・α3ρ擁五(」)(’+G、・)  (5・3)

で与えられる。

 2種の単分散試料からなる混合系の場合には,(5.2)は

             エ                                  む

       η一加+(1舞)喜端η・・3ρ(W源+1隅毒)(笠)》双Z述爾 (ε4)

となる。したがって,ハ4、<ハ42ならばンρ一一定のとき

                              ユ             41・9(η ηD)一 聖+岬、>・    (55〉               4wr2                    WF、M、2+wp2脇頁

が成立する。

 また少(3.15)よりκ→0のときのコンプライアンスは

                        1             」,≡・=塑Σ{ム(1)(1+G君・)}2   (丘6〉

               2GoρRT{Σ玉(」)(’+爾}2

で与えられる。ここにA登は(3.8)より

                    ΣWFαハ41α2                 、M*コー旦…             (5.7)                   (署監焔巻)2

となる。

 (5.6)式の右辺でルf*以外の部分をAとおく。2種の単分散試料からなる混合系において,ρが一定の

とき

 4」盈___4・  {M毒(脇髭砿き)(ハが_颯舞弧轟幹砿巷雌) 躍2(w、M者+w、轟巷)3

w,(雌一M2)(雌一M巷)}            (a8)が成立する。し・たがって,λあ>瓢ならば次式の右辺は正であって

           w、…妬蟹二M暑+服立壷璽    (ag)                   M22-M12

のとき

               4」60              -WΣ……0   (複号同順)             (5ユ0)

となる。

§6 実験との比較および論議

 以上の如く,§2の仮定の下では応力成分やずり弾性率の式が単分散の場合と同じ形で成立することが

分った。したがって,序に途べたような法線応力成分間の関係やにが微少なときの館依存性についても,

単分散理論と同様に実験結果をうまく説明することができる。

 単分散理論における明らかな欠陥は,いうまでもなく平均分子量に関連した物理量を含んでいないこと

8

多分散高分子溶液の法線応力効果(瀬川・石田)

である。本稿ではハ4*がパラメーターとして含まれ,分子量分布が与えられればM*の値が定められる。

また・非摂動長はゐoに代ってLo*およびγ五をーが現われている。

 さて,(2.6),(3.12)より

            1・9(触一魎)一C+1・gM*+2b9(吻一σ。の彩)    (6.1)

が導かれる。われわれの理論によれば,分子量分布が拡がるにっれM*は大となるから上式によれば,σ砂写

一σo鞠が一定のとき109(σ淵一σ鞠)は分子量分布が拡がるにつれ大となる。希薄溶液に関する実験ではな

いが・石田らの高密度ポリエチレン融液についての実験8)(第1図)は上記の理論結果と定性的に一致し

ている。また・遠藤らのpoly・α・methylstyre査e/chlorinated diphenylに関する実験9)(第2図)によれ

ば・7wt%溶液につき一定のσ聰一恥ηoκ(ηo:溶媒の体積分率)に対するσ砂躍一σッΨの値は前者が十分

小さいとき単分散試料よりブレンドの方が大となることが示されたが,これは石田らの実験8)と同様(6.1)

.式から期待することができる。

106

ド105ぎ

104

         。.ぜ

        8日。。       一・臼談。

      ロ日。’。

     ロ B や。臼 e9    圏 8♂   コ    の  口 8e+ S     、    eo 口   ●Φo

鵬     Φ

口  ΦeO o ●

 G

105

 101蔓

㊤属

hで

bル

 10

104

σ∫暫

105 106

z

 103       104σ、ジV。η。κ(dynecゴ2)

第1図高密度ポリエチレン融液に関する実験

  (石田ら8))

  31脇/M罷3,B:π、/豆藤5

第2図 Poly・α一methylstyrene/chlorinated

  diphenylに関する実験(遠藤ら9))  W2の値は 61.00, d O.720,か0.500,   P O・252,♀0,100,ρ0.051,り0

 さらに,遠藤らのブレンドに関する実験9)(第3図)によれば分子量の大きい方の成分の重量分率をW2

とすれば,κ→0のときのηはW2の増すにつれ単調に増大することが示されたが,このことは(5.5)式から

説明することができる。また,」80…・1/2GoのWF2に関する変化については極値を有することが実証された

が,これは(5。9),(5.10)により説明することができよう。

 既に述べたように,κ→0のとき(3.13)~(3.16)が成立する。このとき,ηはκに依存せず,ずり応力

はκに,法線応力は髭2に比例するから,κの値がこのような領域にあるかどうかは測定値をプロットする

ことにより確かめられる。前論文4)と同様PhilipPo在5)のPIB/decalinに関する次のようなデーターを

適用してみよう。

9

研究紀要(1972)

r 1雲

6昆

εも

×

104

  の  .望

103&  峯

                 102    0     0,5

          W2 第3図poly一α一methylstyrene/chlorinated

   dipheny1に関する実験(遠藤ら9))

   ○:η,  ●:」βo  (7wt%)

および

Σε

 、、fでご=1.06×106, ρ篇0.1359/cn13

 T=3030K, ηo-2.13×10-2po捻e

 κ二1.59×10-2seCH1のとき

 η=9430poise,Go=2150dyne/cm2

σ鑓一σ2,ザ10.49dyne/cm2

上のκ値は上述の意味で十分小さい値である。

 Schultz-Zimm分布を仮定し,h皿1とすると

 惣*G旦_2輪G・ 竺_2.27  ρRT  ρR7『M”

が得られる。したがって,2M*Go/ρRT~α関係から

α篇2.09が得られ,Σ1/1、(Z)(1+G五〇)~αおよび

Σ1/伍(Z)(1+Go)}2~α関係からそれぞれ

Σ _1 一一〇.375,1ろ(Z)(1+αo)

{ム(」)(1モG、・)}2一α0620

が求められる。故に,(3。16)より

              L。*3η。_7590×10一・7(L。*一15300A)

が得られ,これらの値を(3.14)の右辺に代入すればσ∫rσ鯉の理論値は10・5dynelcm2となり・実験値

10.49dynelcm2と一致する。

 同様な操作をSchullz・Zimm分布の他のたの値について行なうと,それぞれの1}の値に対応したLo*ηo

およびL。*の値が得られるが,hが大となるにつれ(分子量分布が鋭くなるにつれ)Lo*の値は小さくな

ることが分った。しかし,h→・。(単分散)のときでも従来の非摂動長についての知見からみて10倍程度

の値(7000A)が得られる。このくいちがいの原因はわれわれの理論が無視した分子間相互作用の存在に

あると考えられる。遠藤らの実験9)によれば7wt%溶液で分子量が106より大ならば粘度は分子量の3・5乗

に比例し,したがって,分子間相互作用の存在が実証されている。

 残念ながら現時点ではわれわれの理論を適用するのに必要なすべての物理量の測定値が示された実験結

果は極めて少ない。今後この種の実験が多く出現することを期待している。なお,われわれの今後の問題

としては,1)§2の仮定を除くこと,2)非すぬけの仮定を除くこと,3)分子間相互作用を導入するこ

となど多くが残されている。

終りに,武藤俊之助教授をはじめ物理学教室の各位に厚く御礼申し上げる。

1)

2)

3)

M。Fixman:」,chem.Phys.45(1966)785,

M.Fixman:」.chem,Phys.45(1966)793,

W,Segawa:J.Phys.Soc.Japan.25(1968)1519,

一10一一

多分散高分子溶液の法線応力効果(瀬川・石田)

4)W.Segawa:Proc、Inst.Natural Sci.Nihon Univ,5(1970)1.

5)W.PhilipPo旺:」.apPl.Phys.27(1956)984.

6)B.H.Z玉mm;J。chem.Phys,16(1948)1099.

7) L H.Tmg:」。Polym.Sci.20(1956)495,24(1957)333,

8)石田信博他:第20回高分子学会年次大会(昭和46年5月)における講演

9) H。Endo et aL二J.Polym.Sci.A-2,g(1971)345.

10)J.Boersma=Math.Comp.14(1960)380.

11)N.W.TschoegL J.chem。Phys,3g(1963)149,

                   Aopen“ix I

             σ一σ〇+Σ2走TCαΣ(1+G君)(M+N乙,)

           卵(耀1)・酬誉誉lll)

を用い,0でない応力成分として

            σ麹一σ。卿+Σ鍛TCαΣ(1+G乙)(茄c+2Wc)                 α       君

            σ鋤=σo聞+Σ2ゑTCαΣ(1十G乙)(1〉〆十1〉〆記)

                     呂                 α              σ開=σ。鯉+Σ2為TCαΣ(1+G‘)ノVこ’μ

                   α       呂

                   σε3篇σσ29

(2.3)

(A1.1)

(A1.2)

(A1.3)

(A1.4)

(A1.5)

が得られる。

  茄』⊥市。・(1+G君)2}一・

     41

輩(12蒼)瑠η・α3L・・3ムI」)

(A1.9)

を(A1.2)に代入すると

     ・麹一 ツ+寄2為TC噴一赤、旱G、(・+灘)

              、      1+聖皇       一鵯+(12詳 鞠Σ螂写ム(z)(誓G、)

(A1.7)

(2.4)

が導かれる。同様に

  κ2  11〉〆=_  4イ‘02(1+G呂)3

(AL8)

と(A1.7)を用いると,(A1.3)(A1。4)より

         σ銘一σ盟=Σ2為TCαΣ(1+G乙)(1V〆十2〉己’¢一1〉ε,Ψ)

              α      己

一11一

研究紀要(1972)

一馨2鵬¥(・+C乙)号淫、・2(計+G、ア(・+繁一睾)

     ・         1+2〉〆㌃並’汐一{(11ゴ)2卯・鞠}2音Σ仙・Σ{ム(轟C簿

(2.5)

カi得られる。

                  Appendix II

 Σ1/石(」)(1+G己o)の値は次のようにして求められる。文献2)の(115)式および(117)式から

              。。   1        α弓3              黒π)(1+G乙・)㎝=α5837×予     (A2・1)

なる式が導かれる。しかるに,文献2)の第1表からα,αηの値が得られるので,これらを上式に代入す

ればよい。

 次に,Σ1/伍(Z)(1+G乙o)}2の求め方を述べよう。Boersmaの方法・o)を用いたTsch㏄91の計算法n)を

用いてまずFresne1積分S(1π),C(1π)(Z:正整数)を計算する。次に,ム(Z)は文献2)の(87)式

               ム(Z)一πZ垂{ZπC(1π)一壱3(1π)}   (A2・2)

から,また,g乙は文献1)の(76)式

     去Z一書8嘉14(2」)『者ズ・1・+・)‘}÷か(2♂π)一5S(Zπ)T2!πC(Zπ)](Aa3)

から計算する。次に,G己oは文献1)の(95)式

                   α2-1                 G西o;   (9r9’乙)              (A2.4)                    91

から求められる。これらのム(」),GPを用いてΣ1/伍(」)(1+G志o)}2の値が定められる。

 したがって,2M*Go/ρRTの値が各α値に対して求められる。第4図,第5図および第6図はこれらの

理論値を用いて描いた曲線である。

一12一

。I

o ←・

畳 唱Σ 眺

N1

5.0

4.0

3.0

2.0

1.01.0 2.0

α

     2M*Go第4図    ~α曲線      ρRT

3.0 4.0

iミ

陀一に1×

信り

0.6

0.5

0.4

0.3

0.21、0  2.0                  3.0

         α

         1第5図.Σ      ~α 曲線     11(♂)(1十G,o)

4.o

li

* ~+ ~

P~

o. 08

0.07

0.06

0.05

0.04 l.O 2,0

~~6~l 2

3.0

a

1

{11(1 ) (1+Gl") } ' -a ~~ff~

4,0