Upload
others
View
18
Download
3
Embed Size (px)
Citation preview
伊予鉄道 5000 形超低床路面電車 133
伊予鉄道 5000 形超低床路面電車伊予鉄道(株) 車両部 アルナ車両(株) 営業・技術部
写真 1 外観
要旨伊予鉄道株式会社(伊予鉄道)は、鉄道(郊外線)及び軌道(市内線)事業を行なっている。このうち軌道事業(市
内線)は、松山城を中心に周囲を循環する環状線、JR 松山駅前から道後温泉を結ぶ JR 松山駅前線、当社のターミナル駅である松山市駅から道後温泉を結ぶ松山市駅線、本町 6 丁目から松山市駅を結ぶ本町線の 5 系統 9.6 ㎞を運行している。
市内線では、バリアフリーに対応するため、国内最初の単車形超低床式軌道電車 2100 形を 2001 年度から 10両導入して好評を博しているが、今回の市内線老朽車両置換え用として、乗ること自体が楽しくなる“夢のある公共交通”をコンセプトとして、外観・内装デザインの一新、車内の通路幅を拡大して居住性を向上し、より快適に利用できる 5000 形を 2017 年 9 月に 2 両導入した。以下に国内 2 例目となる単車形超低床式軌道電車 5000形の概要について紹介する。
1 はじめに伊予鉄道は、四国最初の鉄道として 1888 年に松山(現松
山市)~三津間で営業運転を開始して以来、約 130 年の歴史とともに多くのお客様にご利用いただいている。また、伊予鉄道では、少子高齢化、人口減少という社会の変化、外国人旅行者の受け入れといった新たなニーズに対応するため、①乗ってみたくなるような電車・バス、②観光振興への対応、③お客様視点での安全・サービス向上、の三つのチャレンジを柱とした“IYOTETSU チャレンジプロジェクト”を推進している。
市内線の老朽車両置換え用として、単なる移動手段だけではなく、乗ること自体が楽しくなる「夢のある公共交通」をコンセプトとし、乗ってみたくなる流線形のデザイン、通路幅の拡大等による居住性の向上、デジタルサイネージの導入による中吊広告の廃止、車内へのフリー Wi-Fi設置など、より快適に利用できる 5000形車両を導入した。
2 編成及び車両性能と主な特徴5000 形は、単車式の超低床車両で、台車を車体両端に
配置して低床部の面積を広く取り、従来車両と同様の車軸
写真 2 室内
2018- 9「車両技術 256 号」134
会社・車両形式 伊予鉄道㈱ 5000 形使用線区 市内線全線 軌間(㎜) 1 067基本編成両数 1 両 使用線区の最急勾配 14‰用途 都市内交通 電気方式 直流 600 V車体製作会社 アルナ車両㈱ 製造初年 2017 年台車製作会社 新日鐵住金㈱ 製作両数 2 両主回路装置製作会社 ㈱東芝 車両技術の掲載号 256
基本編成及び主な機器配置
凡例 ●;駆動軸 ○;付随軸 C-PCU;VVVF +補助電源装置 CP;空気圧縮機 BT;蓄電池 >;パンタグラフ ◎;車椅子スペース編成質量(t) 18.5 編成定員(人) 60
個別の車種形式 5000車種記号(略号)空車質量(t) 18.5定員(人) 60うち座席定員(人) 26特記事項
車両性能
最高運転速度(㎞/h) 40加速度(m/s2) 0.69(2.5 ㎞/h/s)
減速度(m/s2)
常用 1.22(4.4 ㎞/h/s)非常 1.39(5.0 ㎞/h/s)
編成当りの定格
編成構成 1M出力(kW) 120引張力(kN) 17.2
ブレーキ制御方式回生 / 発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
制御回路電圧(V) 直流 24抑速制御非常時運転条件その他の運転条件
保安設備
運転保安装置
列車無線 音声無線
表 1 伊予鉄道株式会社 5000 形超低床路面電車 車両諸元
電気駆動系主要設備
集電装置
形式/質量(kg) PT7107-C / 130方式 シングルアーム式パンタグラフ
主制御装置
形式 / 質量(kg) C-PCU / 810方式 2 レベル VVVF インバータ制御方式制御容量(kW) 120特記事項
主電動機
形式 / 質量(kg) TDK6250 / 350方式 三相かご形誘導電動機1 時間定格(kW) 60回転数(min-1) 1 615特記事項 絶縁種別 H 種
最大限流値
力行(A)ブレーキ(A)
電気ブレーキの方式 回生 / 発電ブレーキ
補助電源設備
補助電源装置
形式/質量(kg) APS/LVPS ユニット方式 2 レベルインバータ方式交流出力 三相 200 V 30 kVA直流出力 25.9 V 6 kW
蓄電池種類 / 質量(㎏) 鉛蓄電池 / 33容量(Ah) 104(5 時間率)主な用途 制御用
伊予鉄道 5000 形超低床路面電車 135
その他の主要設備
主幹制御器形式 / 質量(㎏) ES9217 / 34方式 右手操作ワンハンドル
速度計装置 直動式指示計車両情報制御システム
モニタ装置 -モニタ表示器 -
標識灯前部標識灯 LED後部標識灯 LEDその他 LED(信号灯)
その他 運転状況記録装置、ドライブレコーダ
空気ブレーキ設備
電動空気圧縮機
形式 / 質量(㎏) HS5 / 200圧縮機容量 610 ㍑ / min圧縮機方式 単動往復式 2 段圧縮
空気タンク元空気タンク 60 ㍑供給空気タンク 60 ㍑
ブレーキ制御装置 形式 / 質量(㎏) NB05 / 28
台
車
形式動台車 FS95A付随台車 -
車体支持装置 インダイレクトマウント方式けん引装置 ボルスタアンカ枕ばね方式 コイルばね上下枕ばね定数 /台車片側(N/㎜)
動台車 1 060付随台車 -
軸箱支持方式 ペデスタル式軸ばね方式 コイルばね
上下軸ばね定数 / 軸箱(空車時)(N/㎜)
コイルばね動台車 1 839付随台車 -
ゴムばね動台車付随台車
総合動台車付随台車
軸距(㎜) 1 600台車最大長さ(㎜) 2 304車輪径(㎜) 新製時:660基礎ブレーキ
動台車 てこ式踏面ブレーキ付随台車 -
ブレーキ倍率 駆動軸:5.14 付随軸:4.36
制輪子動台車 特殊鋳鉄制輪子付随台車 -
ブレーキシリンダの数
動台車 4付随台車 -
駆動方式 平行カルダン歯数比(減速比) 6.545(72 / 11)継手 TD 継手軸受 密封複式円筒ころ軸受
質量(㎏)動台車 3 670付随台車 -
車両間連結装置先頭部 連結棒中間部 -
記事
車体の構造・主要寸法・特性
構体材料 鋼製構造・工法 溶接組立
車両の前面材料 鋼製(FRP カバー付き)形状 非貫通形
客室の内装材
天井 メラミン化粧板側・妻 メラミン化粧板床 塩化ビニル系床敷物
長さ(㎜)先頭車 12 500中間車 -
連結面間距離(㎜)
先頭車 -中間車 -
心皿間距離(㎜) 8 700車体幅(㎜) 2 300
高さ(㎜)屋根高さ 2 820屋根取付品上面 3 800(パンタ折り畳み高さ)
床面高さ(㎜) 350(低床部)、800(高床部)相当曲げ剛性(MN・m2)相当ねじり剛性(MN・m2/rad)固有振動数(Hz)
主な旅客設備
側窓 上部内倒れ 下部固定
側扉構造 片引戸(プラグドア):900 ㎜片側数 2
戸閉め装置形式 -方式 電気式
妻引戸 -腰掛 ロングシート
空調換気システム
空調装置
形式 / 質量(㎏) RPU-6021 / 395搭載方式 屋根上集中式空調装置特徴容量(kW/ 両) 24.5
暖房装置
方式 シーズ線式、温風式
容量(kW/ 両)450W×4、300W×5(客室)400W×4(運転台)
換気方式 自然換気送風方式 天井ダクト
室内灯照明方式 直接照明灯具方式 LED
非常通報装置 非常通報スイッチ車内案内表示 停留所名表示装置・デジタルサイネージ
放送設備車内向け スピーカ 2台(自動放送付き)車外向け スピーカ 2 台
行先表示器前面 部分カラー LED側面 フルカラー LED
主な移動等円滑化対応設備
車椅子・ベビーカースペース乗降口車椅子スロープドア開閉動作開始ランプドア開閉予告ブザー
便所主な設備汚物処理
その他
2018- 9「車両技術 256 号」136
図1
形式
図
伊予鉄道 5000 形超低床路面電車 137
付き台車を使用しつつ低床化を図っている。車端部の台車上部分のみ高床として運転台を設けているほか、一部は客室として空間を有効利用している。
車両性能は、最高運転速度 40 ㎞/h、加速度 0.69 m/s2
(2.5 ㎞/h/s)、常用減速度 1.22 m/s2(4.4 ㎞/h/s)、非常減速度 1.39 m/s2(5.0 ㎞/h/s)である。また、曲線通過性能及び登坂性能は、使用線区の最小曲線及び最急勾配に対して、十分余裕を持った設計としている。
制御方式は、VVVF インバータ方式を採用し、機器及び部品は、実績のあるものを用いた極力シンプルな構成とすることで、操作性・保守性・経済性を高めるとともに不具合発生のリスクを低減している。
5000 形の車体構造は、国内最初の単車式超低床電車2100 形で既に実現していたが、今回は 2100 形から下記の変更を行って、定員は 60 人(約 28%増)とすることができ、室内が広くなることで、よりスムーズな車内移動が可能となっている。
① 全長を 500 ㎜拡大② 台車中心間隔を 300 ㎜縮小し、車体内方偏
へ ん
倚い
を小さくして、車体幅を 70 ㎜拡大
③ 電動プラグドアを採用し、戸袋部を無くすことによって側構厚を片側 30 ㎜づつ縮小
④ 床下に設置していた空気圧縮機を屋根上に移設して腰掛の奥行きを見直し、通路幅を 240 ㎜拡大
⑤ 運転台スペース後部を、客室として利用できるように高床部のレイアウトを工夫
3 デザイン3.1 エクステリアデザイン
外観は、従来の 2100 形と比べて先頭部を大きく傾斜さ
せ、3 次元曲面ガラスを採用して丸みを強調し、お客様が乗ってみたくなるような流線形デザインとしている。ボディカラーは、現在推進中の“IYOTETSU チャレンジプロジェクト”で採用しているオレンジ色を正面、腰板、妻柱、屋根覆いなどに配している。側面窓、側引戸窓及び運転台袖窓周囲は黒一色とし連続性を持たせている。
前頭部カバーはダークグレーメタリック色とし、前灯・尾灯部周囲のシャープなブラックのアイラインを引き立たせている。また、前灯には LED を採用し、ランプの長寿命化による保守低減を図っている。3.2 インテリアデザイン
室内のデザインは、ホワイトとブラックのモノトーンで統一したカラーリングとしている。乗降口は、アクセントとしてライトグレーの縦ゼブラ柄としている。防滑仕様の床敷物は、グレーの石目調とし、腰掛のジャガードモケットは、ブラックの格子柄とすることで、全体としてシンプルでモダンなイメージを感じさせるスタイリッシュなデザインとしている。
4 車体構造4.1 主要寸法
5000 形は、2100 形の寸法を拡大して、全長 12 500 ㎜、全幅 2 300 ㎜としている。床面高さは、客室低床部及び乗降口部が 350 ㎜、高床部が 800 ㎜である。2100 形と同様に停留所からノンステップで乗り降り可能である。4.2 構体
構体は、普通鋼製溶接組立とし、軽量化を考慮した設計とし、2100 形よりも寸法を拡大したが、各種軽量化により同等の質量に抑えている。前頭部のカバー類及び屋根覆いは FRP 製としている。
図 2 車体断面 写真 3 前灯(上下 2 灯)
2018- 9「車両技術 256 号」138
5 客室5.1 客室構造
天井及び内張板には、アルミニウムメラミン化粧板を使用した。側窓上部は、機器スペースとして、アルミニウム合金製のきせを客室低床部全長にわたって取り付けている。低床部の天井は、ハニカムパネルを採用している。客室照明は、フラットタイプの面発光 LED を採用し、LED特有の眩
ま ぶ
しさを軽減しつつ明るさを確保し、従来の蛍光灯よりも省エネ化を図っている。床敷物は、塩化ビニル製で、防滑性のあるものを採用している。5.2 室内設備
腰掛は、全席ロングシートとし、低床部ロングシート中央にはスタンションポールも設けている。車両両端高床部の腰掛は、2100 形の二人掛けから四人掛けに変更し、さらに運転席後部向かい側には二人掛け収納腰掛を追加した。収納腰掛は、進行方向寄りとなる場合は乗務員スペー
スとなるため仕切扉によって閉鎖するが、後方となる場合は客席として使用できる。
腰掛袖仕切りは、従来よりも大きくすることで着席のお客様と立席のお客様との仕切りを明確化すると同時に、安全性向上を図っている。また、袖仕切りパネルは、耐衝撃性のある半透明のポリカーボネート材を用いて、室内の見通しを遮らないようにしている。5.3 窓及び扉
客室窓は、上部内倒れ・下部固定窓の構成として、十分な換気能力をもたせるとともに、外観をフラッシュサーフェイス化するため、ガラスをダイレクトボンディング取付けとしている。窓ガラスには、UV カット・熱線吸収ガラスを採用し、カーテンを省略している。乗降口は片側 2 箇所設け、扉は片引き電動プラグドアを採用し、有効開口幅は 900 ㎜である。
写真 6 片引戸(プラグドア)
写真 7 車椅子スペース
写真 4 LED 室内灯
写真 5 室内(高床部)
伊予鉄道 5000 形超低床路面電車 139
図3
運転
室機
器配
置
写真
8 運
転台
2018- 9「車両技術 256 号」140
図4
屋根
上・
床下
機器
配置
a)
屋根
上機
器配
置
b)
床下
機器
配置
伊予鉄道 5000 形超低床路面電車 141
5.4 バリアフリー・ユニバーサルデザイン対応設備通路幅は、2100 形から 240 ㎜拡大し、1 220 ㎜としてい
る。これは、公共交通移動等円滑化基準及びバリアフリーガイドラインで規定されている“800 ㎜以上”をクリアしており、全てのお客様がスムーズに車内移動できるようにしている。
室内には車椅子スペースを 1 箇所設けており、その部分は収納腰掛としている。車椅子専用降車押しボタンのほか、座面を収納すると利用できる車椅子ご利用者用の手すり及び車椅子固定用具を設置している。
運賃箱付近の乗降口床には、スロープを内蔵し、電停側に展開することで車椅子ご利用者も楽に乗降することができる。スロープ部の床面には、検知スイッチを設けており、スロープを収納しない場合は力行操作ができないよう配慮している。
乗降口のかもい下部には、扉の開閉時に点滅する開閉予告灯を設け、お客様に注意を喚起している。また、乗降口付近の床敷物は、黄色を配して乗降口であることを識別しやすくしている。
6 運転室設備運転士の操作機器類は、右手ワンハンドルマスコンを操
作しながら、放送装置などワンマン機器の操作がしやすくするとともに前方視界を広く取れるようレイアウトしている。
正面窓は 3 次曲面、袖窓は 2 次曲面の防曇ど ん
合わせガラスで、取付けはいずれもダイレクトボンディングである。
7 機器配置7.1 床下機器配置
低床車両であるため床下搭載機器は、電気笛のみとなっている。7.2 屋根上機器配置
低床車両であるため、空調装置、シングルアームパンタグラフ、空気圧縮機、C-PCU 装置の主要な機器は、屋根上に配置している。パンタグラフは、曲線偏倚を考慮して台車直上に配置し、他の機器は質量バランスを考慮して配置している。
なお、外観を考慮して、屋根上機器が見えないよう、屋根覆いを設けている。
8 主要機器8.1 主制御装置及び補助電源装置
主制御装置として、C-PCU 装置を採用した。C-PCU 装置は、主回路用 VVVF インバータ、空調装置などに用いる交流 200 V 電源(APS)、低電圧回路などに用いる直流24 V 電源(LVPS)を一体とした装置である。
VVVF インバータユニットは、IGBT を使用した 2 レベル方式で 60 kW の主電動機 2 台を一括制御している。電気ブレーキは回生 / 発電方式を採用し、軽負荷時も車両搭載の抵抗器が負荷となるので電制が失効することはない。
APS 部は、2 レベル三相電圧形 PWM インバータ方式で定格容量は 30 kVA である。LVPS 部は、単相インバータ全波整流併用方式で定格容量 6 kW である。8.2 主電動機
主電動機は、2100 形と同様に出力 60 kW の誘導電動機を台車に各一台装架し、平行カルダン中実軸たわみ軸継手(TD 継手)方式で駆動している。8.3 集電装置
集電装置については、2100 形と同様シングルアーム式としている。8.4 ブレーキ装置
ブレーキ装置は、弁類、配管座及びブレーキ制御器をユニット化し、小形軽量化及び保守の容易化を実現している。常用ブレーキは、ブレーキ受量器の機能によって、電気ブレーキを優先的に作用させ不足分を空気ブレーキにて補足する電空協調制御を行う。
また、保安ブレーキは、常用・非常ブレーキのバックアップ用として、別系統の回路によって作用する。8.5 電動空気圧縮機
電動空気圧縮機は、往復形 2 段圧縮式で、小形軽量のものを採用している。電源は C-PCU 装置から供給される三相交流 200 V である。8.6 蓄電池
蓄電池は、腰掛下に格納している。12 V 鉛蓄電池を 2個直列に接続し、制御、戸閉め、サービス機器などの低圧電源のバックアップとしている。8.7 空調装置及び暖房装置
空調装置は出力 24.5 kW の屋根上集中式を 1 台装備し、天井空調ダクトを通して客室内及び運転台に吹出す構造である。高床部客室へは、低床部の天井との段差部分に設けたグリルから冷風を吹出す構造としている。
暖房は、客室には低床・高床の腰掛下にシーズ線ヒータを設置し、運転台には温風ヒータを設置している。8.8 戸閉め装置
戸閉め装置は、電気式プラグドア開閉装置を採用し、前扉、後扉ともに片引戸としている。全ての引戸には扉速度変化検知+モータ電流検知方式の戸挟み検知装置を設け、安全性に配慮した。また、各引戸のかもい部には扉開閉予告灯を取り付けている。8.9 放送装置及び非常通報装置
運転台には、音声合成放送装置用の設備を備えており、押ボタン操作による自動放送のほか、マイクを用いて車内・車外への案内放送を可能としている。また、各扉の開閉操作に合わせて注意喚起放送も備えている。
非常通報装置としては、客室内 1 箇所に非常ボタンを設写真 9 車椅子スロープを展開したところ
2018- 9「車両技術 256 号」142
図5
動台
車(FS
95A
)
写真
10
伊予鉄道 5000 形超低床路面電車 143
図6
主回
路つ
なぎ
2018- 9「車両技術 256 号」144
図7
力行
性能
曲線
図8
ブレ
ーキ
性能
曲線
伊予鉄道 5000 形超低床路面電車 145
置し、ボタンを押下すると非常ベルの鳴動と合わせて非常ブレーキの作動ならびに全てのドアを手動で開けることができる機構としている。8.10 車内案内表示装置
車内案内表示装置として、車端部に停留所名表示装置及びデジタルサイネージを設けており、中づり広告をなくすことで室内を広く見せている。
停留所名表示装置は、音声合成放送装置からの信号に基づいて次電停、運賃表示を行う。デジタルサイネージは、21.5 インチの液晶ディスプレイに広告、映像を表示している。
8.11 行先表示器車外の行先表示器は、カラー LED 式を採用している。
従来車の字幕式と同様に路線系統を色別に表示でき、文字を白色とすることで昼夜を問わず見やすいものとしている。8.12 Wi-Fi 対応設備
5000 形は、Wi-Fi 機器を搭載し、車内で無料公衆無線LAN サービス(えひめ Free Wi-Fi)が利用可能である。
9 台車台車は、2100 形と同様にインダイレクトマウント 2 軸
ボギー台車で、車輪径は 660 ㎜である。軸箱は、ペデスタル支持方式で、軸ばね及び枕ばねはコイルばねを採用している。台車枠には、外観デザイン向上のため、台車カバーを取付けている。
なお、低床部の床面積を確保しつつ台車中心間隔を縮小するために、車体中心寄りの台車ブレーキシリンダを小形化し、台車の回転半径を抑えている。
10 おわりに5000 形は、2017 年 9 月 21 日、松山市駅での盛大な出発
式の直後から営業運転を開始した。幸いなことにこれまで利用者の皆様からご好評をいただいている。5000 形は今後とも増備予定であり、松山の新しいシンボルとして、また新たな観光資源として、皆様から広く愛される車両となることを願っている。
最後に、5000 形の車両製作にあたり、多大なご協力をいただいた関係各位に、この場を借りて心から感謝を申し上げる。
写真 11 デジタルサイネージ
図 9 伊予鉄道(市内線)路線図