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高速信号に対する AgilentTektronixプロービングによる詳細な比較 Application Note 1491 はじめに 高速信号のシグナル・インテグリティ を測定する場合、使用するオシロスコ ープとプローブが測定確度に大きな影 響を与えます。アプリケーションに最 適な製品を見つけるには、異なるメー カのオシロスコープやプロービング・ システムを比較する必要もあります。 この場合、重要なことはプローブの負 荷の影響も含め、真の比較が得られる テスト手法を採用することです。 このアプリケーション・ノートでは、 Tektronix社とAgilentの6GHz帯域幅リ アルタイム・オシロスコープと差動ア クティブ・プローブ・ソリューション を使用して、高速信号を正しく比較す るための方法を紹介します。また、立 上がり時間(10%~90%)が50psと100ps の信号に対する詳細なテスト結果を記 載し、AgilentとTektronixのテストに対 する考え方や、高速ディジタル・デザ インでは重要なプローブ仕様の違いに ついて説明します。 目次 はじめに . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 テスト方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2 50psの立上り信号に対する プロービングの比較 . . . . . . . . . . . . . 3 ブラウザ接続 . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 ソルダイン接続 . . . . . . . . . . . . . . . . 5 100psの立上り信号に対する プロービングの比較 . . . . . . . . . . . . . 6 ブラウザ接続 . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 ソルダイン接続 . . . . . . . . . . . . . . . . 8 「発生していたもの」または「発生してい るもの」のいずれを測定すべきか?. . . 9 差動プローブの測定方法 . . . . . . . . . 10 結論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11 用語 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12 高性能Infiniiumオシロスコープと プローブ. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13 サポート、サービス、アシスタンス 14

高速信号に対する AgilentとTektronixの プロービングによる …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-0553JA.pdf高速信号に対する AgilentとTektronixの

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  • 高速信号に対するAgilentとTektronixのプロービングによる詳細な比較

    Application Note 1491

    はじめに

    高速信号のシグナル・インテグリティを測定する場合、使用するオシロスコープとプローブが測定確度に大きな影響を与えます。アプリケーションに最適な製品を見つけるには、異なるメーカのオシロスコープやプロービング・システムを比較する必要もあります。この場合、重要なことはプローブの負荷の影響も含め、真の比較が得られるテスト手法を採用することです。

    このアプリケーション・ノートでは、Tektronix社とAgilentの6GHz帯域幅リアルタイム・オシロスコープと差動アクティブ・プローブ・ソリューションを使用して、高速信号を正しく比較するための方法を紹介します。また、立上がり時間(10%~90%)が50psと100psの信号に対する詳細なテスト結果を記載し、AgilentとTektronixのテストに対する考え方や、高速ディジタル・デザインでは重要なプローブ仕様の違いについて説明します。

    目次

    はじめに . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1

    テスト方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2

    50psの立上り信号に対するプロービングの比較 . . . . . . . . . . . . . 3ブラウザ接続 . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3ソルダイン接続 . . . . . . . . . . . . . . . . 5

    100psの立上り信号に対するプロービングの比較 . . . . . . . . . . . . . 6ブラウザ接続 . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6ソルダイン接続 . . . . . . . . . . . . . . . . 8

    「発生していたもの」または「発生しているもの」のいずれを測定すべきか?. . . 9

    差動プローブの測定方法. . . . . . . . . 10

    結論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11

    用語 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12

    高性能Infiniiumオシロスコープとプローブ. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13

    サポート、サービス、アシスタンス 14

  • 2

    Agilent 8133Aパルス/パターン発生器を使って立上り時間が約50ps(10%~90%)の2.5Gb/sシリアル・テスト信号を作成しました。この高速信号を正確にディジタイジングすることは、テスト対象の6GHz測定システムの測定性能を超えており、測定結果は実際の信号を表示するものではなく、実際にはオシロスコープの応答を示しています。しかし、帯域外信号が入力された場合の測定システムの応答を観察することは意味があります。特にリアルタイム・オシロスコープは、非常に高速な信号を測定するために使用される場合もあります。

    この非常に高速な信号をローパス・フィルタに通して、立上りが約100psの信号を発生させます。100psの信号は、6GHz帯域幅のリアルタイム・オシロスコープを使用して妥当な確度で測定可能な最高速信号です。また、50Ωの差動マイクロストリップ・テスト・フィクスチャを作成して、差動信号のプロービングを可能にしました。なお、各テストを調整してAgilentの機器の長所またはTektronixの機器の短所を目立たせるようなことはしていません。最近、発行されたホワイト・ペーパやビデオの中でTektronix社が使用したものと類似のテスト・セットアップを使用しました。もっと正確に言えば、このテストを実行したとき、両方のメーカのソリューションを正確に比較するために、リアルタイム・サンプリング・オシロスコープを使用してプローブ接続を注意深く比較しました。また、参照のために、広帯域サンプリング・オシロスコープを使用して負荷付き信号と負荷なし信号を捕捉しました。

    図1b. プローブ・スタンド・ホルダを使用してプローブをテスト・フィクスチャに取り付けたテスト・セットアップ

    比較のために以下の信号を捕捉しました。

    1. Agilent 54750 20GHzサンプリング・オシロスコープを使用して捕捉した負荷がない(プローブなし)信号

    2. Agilent 54750 20GHzサンプリング・オシロスコープを使用して捕捉した負荷がある(プローブあり)信号

    3. TektronixおよびAgilentの6GHzリアルタイム・オシロスコープと差動アクティブ・プローブを使用して種々の接続/プローブ・ヘッドで捕捉した測定信号

    図1aはテスト・セットアップのブロック図、図1bは特別に設計された50Ω差動マイクロストリップ・ボードへのブラウザ接続でTektronix TDS6604/P7350を使用した場合の実際のテストを示しています。サンプリング・オシロスコープはこのテスト・フィクスチャ用の正確な50Ω終端を備え、基準との比較のために負荷がある信号と負荷がない信号を広帯域サンプリング・オシロスコープで測定します。

    テスト手法

    パルス/パターン発生器

    20GHzサンプリング・オシロスコープ

    6または7GHzリアルタイム・オシロスコープ

    差動テスト・フィクスチャ

    差動 アクティブ・ プローブ

    図1a. テスト・セットアップのブロック図

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    図2. 広帯域サンプリング・オシロスコープで測定した、負荷がない50psの立上り速度の入力テスト信号

    50psの立上り信号に対するプロービングの比較

    50psの立上り信号に対して、ブラウザ接続とソルダイン接続を使用して、TektronixとAgilentの6GHzオシロスコープ/差動アクティブ・プロービング・ソリューションをテストしました。

    ブラウザ接続図3は、Tektronix P7350差動アクティブ・プローブでプロービング中のプローブ・チップ部でのテスト信号を示しています。この信号は並列に接続された広帯域サンプリング・オシロスコープにより捕捉されています。これから分かるように、波形はプローブ負荷のために理想的なフラット応答を示していません。図4は、Tektronix TDS6604/

    P7350を使用して、ブラウザ接続によりこの信号を測定した応答を示します。Tektronix P7350差動アクティブ・プローブはピーキングの大きな応答を示し、このプローブ・チップ部で実際に信号がどうなっているかを正確に示していません(図3)。この過剰な負荷やピーキングは、プローブ固有の寄生容量と寄生インダクタンスが原因です。一部の人の中には、この波形(図4)はプローブが当てられる前(図2)のテスト・フィクスチャのテスト・ポイントでの信号を正確に示していると主張する人もいます。9ページの「『発生していたもの』または『発生しているもの』のいずれを測定すべきか?」とタ

    図3. 広帯域サンプリング・オシロスコープで測定した、Tektronix P7350ブラウザ接続を使用した場合の50psの立上り信号 図4. Tektronix P7350ブラウザ接続を使用して、

    50psの立上り信号を測定した場合の応答

    イトルが付けられたセクションでこの問題について説明します。

    このテストを行ったとき、Tektronixブラウザ・プローブチップ「セーバ」は使用しませんでした。経験から、このアダプタは負荷をさらに大きくしてピーキング(オーバシュート)を過剰にする原因となるためです。プローブチップ・セーバにより、利便性が向上し、固定されてユーザが交換できないプローブ・チップが曲げや折れから保護されますが、シグナル・インテグリティの測定が重要な場合は、このプロービング・アクセサリを使用して高速信号を測定することはお勧めできません。

    図2は、(50Ω差動テスト・フォクスチャに入力される)Agilent 8133Aパルス/パターン発生器の出力のアイ・ダイアグラムを示しています。Agilent 54750サンプリング・オシロスコープで捕捉されているように、非常にフラットで立上り速度が50ps(10%~90%)の応答となっています。この信号は、テスト・フィクスチャにプローブを接続する前に、捕捉したものです。

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    50psの立上り信号に対するプロービングの比較

    図5は、Agilent 1134A InfiniiMax差動アクティブ・プローブを使用してブラウザ接続によりプロービングした場合の50psの立上り速度の入力信号を示しています。Agilentのプローブも信号に負荷をかけますが、Tektronixのプローブよりもその程度が小さいことに注目してください。図6は、Agilent 54855Aオシロスコープを使用して、1134AInfiniiMaxブラウザ接続により測定された応答を示しています。このプローブ接続の場合、元のプローブなしの入力信号(図2)に近い非常にフラットな応答が表示されます。しかし、プローブなしの信号と測定された応答を比較してはいけません。9ページで説明するように、測定された応答(図6)は、プローブ・チップ部での実際の信号

    (図5)と比較する必要があります。

    Agilentのブラウザ・プローブは寄生成分に起因するいくらかのピーキングを示しますが、Tektronixのプローブに起因するピーキングほど深刻ではありません。残念なことに、これらの寄生成分とそれに起因した挙動は、利便性に優れたブラウザ・タイプのプローブを使用する場合は回避することができません。図6に示す測定された応答は、ブラウザ・タイプのプローブを使用した場合の最高の応答を示しています。

    図6. Agilent 1134Aとブラウザ接続を使用して、50psの立上り速度の信号を測定した場合の応答

    図5. 広帯域サンプリング・オシロスコープで測定した、Agilent 1134Aとブラウザ接続を使用した場合の50psの立上り信号

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    50psの立上り信号に対するプロービングの比較

    ソルダイン接続図7は、50psの立上り信号に対する同じテストを示していますが、ここではTektronixの推奨するソルダイン接続を使用しています。このソルダイン接続は、可能な限り短く調整したダンピング抵抗付きのTektronixのソルダイン・アダプタを使用して、差動テスト・フィクスチャにはんだ付けします。図8は、このテスト・セットを使用して測定された応答を示しています。この接続では帯域幅の低下による制限のために、立上り速度は大幅に遅くなり、また測定された応答は過剰なピーキングを示しています。この測定された応答

    (図8)は、元の負荷がない(プローブ

    図7. 広帯域サンプリング・オシロスコープで測定した、Tektronix P7350とソルダイン接続を使用した場合の50psの立上り信号 図8. Tektronix P7250とソルダイン接続を使用し

    て、50psの立上り信号を測定した場合の応答

    なし)入力信号(図2)または意味のある比較のための負荷がある(プローブあり)入力信号(図7)のいずれと比較しても、被試験信号よりもかなり劣化しています。

    図9は、Agilent 1134A InfiniiMaxソルダイン・プローブ・ヘッドを使用してプロービングしたときの、50psの立上り信号に与える負荷の影響を示しています。ここでも、いくらかの負荷が観察されますが、Tektronixのプロービング・ソリューションを用いた場合に比べて影響が少ないことが分かります。図10は、Agilentソルダイン・プローブ・ヘッドを使用して測定された応答

    図9. 広帯域サンプリング・オシロスコープ測定した、Agilent 1134A InfiniiMaxソルダイン・プローブ・ヘッドを使用した場合の50psの立上り信号 図10. Agilent 1134A InfiniiMaxソルダイン・プ

    ローブ・ヘッドを使用して、50psの立上り信号を測定した場合の応答

    を示しています。6GHzオシロスコープ/プローブ・システムの帯域幅の制限を考えると、この応答がプローブ・チップ部での実際の信号に非常によく似ている(図9)ことが分かります。Agilent 54855Aオシロスコープを1134AInfiniiMaxソルダイン・プローブ・ヘッドと組み合わせて使用することにより、今日の業界で最も忠実度の高いアクティブ・プローブ測定を実現することができます。この組み合わせ(54855Aオシロスコープと1134A InfiniiMaxソルダイン・プローブ・ヘッド)では、アクティブ・プローブを使用したリアルタイム広帯域オシロスコープ測定の場合と同様の良好な測定結果を得ることができます!

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    このアプリケーション・ノートの前のセクションでは、非常に高速な信号

    (50psの立上り速度)のプロービング測定を比較しました。しかし、より現実的なテストは、6GHzオシロスコープ/プロービング測定システムの帯域幅性能内の、立上り速度がより低速な

    (100ps以上)信号に対して測定を比較することです。図11は、広帯域サンプリング・オシロスコープで捕捉された、立上り速度が約100psの負荷がない(プローブなし)テスト信号を示しています。続く2つのスクリーン・ショットはこのアプリケーション・ノートの前のセクションに記載したものと同じプロービング測定を示しています。この場合も、Agilentのオシロスコープとプロービング・システムは、Tektronixのオシロスコープとプロービング・システムよりもすべての点において優れた性能を示しています。

    ブラウザ接続図12は、Tektronix P7350差動アクティブ・プローブでプロービング中の信号を示しています。図13は、TektronixTDS6604/P7350を使用してブラウザ接続により、この信号を測定した場合の応答を示しています。50psの立上りの入力信号の場合と同様に、TektronixP7350差動アクティブ・プローブは大きなピーキングのある応答を示し、プローブ・チップ部で現われる信号を正確に示していません(図12)。

    100psの立上り信号に対するプロービングの比較

    図11. 広帯域サンプリング・オシロスコープで測定した、100psの立上り速度のテスト信号

    図13. Tektronix P7250アクティブ・プローブを使用して、ブラウザ接続により100psの立上り速度の信号を測定した場合の応答

    図12. 広帯域サンプリング・オシロスコープで測定した、ブラウザ接続されたTektronix P7250アクティブ・プローブを使用した場合の100psの立上り速度の信号

  • 7

    図14は、ブラウザ接続によりAgilent1134A InfiniiMax差動アクティブ・プローブでプロービングした場合の100psの立上りの入力信号を示しています。図15は、Agilent 54855Aオシロスコープを使用して、1134A InfiniiMaxプローブでのブラウザ接続による応答を示しています。ここでも、Agilentのブラウザ・タイプのプローブ接続による測定にはいくらかのピーキングが現われていますが、図13に比べると被試験信号をより正確に再現しています。

    100psの立上り信号に対するプロービングの比較

    図14. 広帯域サンプリング・オシロスコープで測定した、ブラウザ接続されたAgilent 1134Aアクティブ・プローブを使用した場合の100psの立上り速度の信号

    図15. Agilent 1134Aアクティブ・プローブを使用して、ブラウザ接続により100psの立上り速度の信号を測定した場合の応答

  • 8

    100psの立上り信号に対するプロービングの比較

    ソルダイン接続図16は、Tektronixのソルダイン接続を使用した場合の、100psの立上り速度の信号に対する同じプローブ負荷テストです。図17は、このテスト・セットアップを使用して測定された応答を示しています。ここでも、大きな負荷と過剰なピーキングが観察されています。

    図18は、Agilentの1134A InfiniiMaxソルダイン・プローブ・ヘッドを使用してプロービングした場合の、100psの立上り速度の信号への負荷の影響を示しています。図19は、Agilentのソルダイン・プローブ・ヘッドを使用して測定された応答を示しています。この応答はプローブ・チップ部での実際の信号(図18)に非常によく一致していて、負荷の影響がほとんどないことに注目してください。

    図16. 広帯域サンプリング・オシロスコープで測定した、Tektronix P7250アクティブ・プローブとソルダイン接続を使用した場合の100psの立上り速度の信号

    図17. Tektronix P7250アクティブ・プローブとソルダイン接続を使用して、100psの立上り速度の信号を測定した場合の応答

    図18. 広帯域サンプリングで測定した、Agilent1134Aアクティブ・プローブとソルダイン接続を使用した場合の100psの立上り速度の信号 図19. Agilent 1134Aアクティブ・プローブとソル

    ダイン・プローブ・ヘッドを使用して、100psの立上り速度の信号を測定した場合の応答

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    「発生していたもの」または「発生しているもの」のいずれを測定すべきか?

    AgilentとTektronixの考え方の違いは、オシロスコープおよびプロービング・システムにより、差動アクティブ・プローブ・チップの入力部において「発生していたもの」または「発生しているもの」のいずれを表示させるかという点にあります。また、この考え方の違いは、両方のメーカの広帯域プローブの評価方法や仕様にも及びます。

    「発生していたもの」とはプローブが接続される前にテスト・ポイントにおいて存在していた信号のことです。

    「発生しているもの」とはプローブが接続され被試験デバイスに負荷がかけられている状態でのプローブ・チップにおける実際の信号のことです。

    理想的な環境では、プローブは無限大の入力インピーダンスがあり、被試験回路への誘導負荷はゼロであるはずです。しかし、実際には、どのプローブを使用しても、特に高周波数では、回路に負荷がある程度かかり、このため被試験信号は変化します。

    プローブの寄生成分に起因する誘導性ピーキングがあると、プローブは元の負荷がない(プローブなし)信号のいくつかの高周波特性を復元する場合があります。しかし、負荷や人工的な信号の復元の程度は被試験デバイスの信

    号源インピーダンスに大きく依存します。このアプリケーション・ノートに記載したテストでは、パルス/パターン発生器に設計上組み込まれている信号源インピーダンスやサンプリング・オシロスコープの負荷インピーダンスにより、被試験デバイスの実効信号源インピーダンスは固定の25Ωでした。しかし、実際の測定ではエンジニアが50Ωで終端された信号源の特性を測定することはほとんどありません。実際の被試験回路の信号源インピーダンスはかなり変化するので、プローブ負荷および誘導されたピーキングの影響は非常に異なり、予測することはできません。

    これまでのいくつかの測定例でも示されているように、回路への負荷や信号の変化が大きくなる場合があります。残念なことに、プロービングのこの望ましくない副作用が被試験回路内の問題の原因となっていることにまったく気が付いてない場合もあります。プローブの寄生ピーキングが負荷の問題を覆い隠す場合もあります。また、場合によっては、デバイスにプローブを当てることにより、高速ディジタル・システムがクラッシュすることもあります。Agilentのアクティブ・プローブはピーキングが小さく回路負荷も小さい

    ので、回路の問題の原因をより良く理解することができます。

    高速デバイスに対してストレス・テスト(たとえば、差動レシーバの感度)を行う場合、「発生していたこと」を推測するのではなく「発生していること」を知ることの方が重要な理由がほかにもあります。高速パルス/パターン発生器のような信号源によるストレス・テストでは、オシロスコープを使用してレシーバの差動入力部での実際の信号を測定し、種々のタイプのスティミュラス・テストに基づいて、誘導性ジッタや信号レベルの減少などの不具合がいつ、なぜ発生したかを明らかにすることが重要です。プローブを付けないときの入力部に発生していることを推測することにより、不具合が生じる特定の入力レベルに対する情報を得ることは不可能です。プローブを付けた状態のデバイスの入力部での正確な不具合条件を知ることが必要です。この場合、オシロスコープとアクティブ・プローブは実際には被試験システムの一部となり、これらの影響も必ず含まれています。誘導性ピーキングが現実の不具合の条件を覆い隠したり、マージンが実際よりも小さくなることがあります。

  • 10

    差動プローブの測定方法

    これまで述べてきたように、AgilentとTektronixの考え方は、高速アクティブ・プローブの評価方法と仕様でも異なります。昔は、帯域幅の狭いプローブをテストし、仕様化する場合、VIN(プローブへの入力)とVSOURCE(テスト発生器の出力)は基本的に同じであると仮定していました。この仮定により、どのオシロスコープ/プローブ・ベンダもプローブの応答をVOUT/VSOURCEで評価していました。しかし、Agilentの7GHz 1134A InfiniiMaxアクティブ・プローブまたはTektronixの5GHz P7350アクティブ・プローブのような高周波用のプローブを評価する場合、VSOURCEとVINが同じであると仮定することはできません。広帯域アクティブ・プローブをタイム・ドメインと周波数ドメインの両方で正確に評価するために、Agilentでは現在、入力信号を観察できるテスト・フィクスチャを使用してVINを測定しています。

    オシロスコープのプローブは電圧測定デバイスであるため、その伝達関数はVOUT/VINとして指定する必要があります。VINが周波数依存負荷の関数として変化する場合、VINをVOUTとともに正確に測定する必要があります。残念

    ですが、Tektronixは未だにアクティブ・プローブの伝達関数の測定および計算に対して従来の方法であるVOUT/VSOURCEを使用しています。しかし、このアプリケーション・ノートで示したようにVSOURCEとVINは高周波負荷の影響により、かなり異なる場合があります。被試験デバイスが発生器の出力のみの場合、または負荷の大きさが固定量の信号源インピーダンスから推測可能な場合は、VOUT/VSOURCEが有効な予測値であると主張することができます。しかし、実際の被試験デバイスの信号源インピーダンスは大幅に変化します。

    以上より、高周波アクティブ・プローブの場合、指定されたタイム・ドメインおよび周波数ドメインの伝達関数の特性/仕様(VOUT/VINに基づいて)に加え、回路への負荷も考慮する必要があります。Agilentのアクティブ・プローブを回路に接続したときの負荷の影響を正確に予測できるように、Agilentでは周波数依存のインピーダンス・プロットとすべてのプローブ・ヘッド接続に対するSPICEモデルを提供しています。

  • 11

    広帯域アクティブ・プローブの性能を評価するために、Tekt ron ixまたはAgilentのいずれの測定性能標準を使用するかに関わらず、このアプリケーション・ノートに記載した全ての点でAgilentのプローブの方がTektronixのプローブよりも性能が優れています。様々なプローブ・ヘッド(ブラウザ、ソルダイン接続)を使用したAgilentの1134A InfiniiMaxアクティブ・プローブでは、プローブ負荷が小さく、プローブ・チップに印加される信号が正確に再現されました。プローブ負荷を無視してTektronix標準を適用して、負荷がない(プローブなし)信号を測定して比較した場合でも、同じプローブ構成(Tektronixブラウザ接続対Agilentブラウザ接続、Tektronixソルダイン接続対Agilentソルダイン接続)で比較し、同じサンプリング・テクノロジー(リアルタイム)を使用すると、このアプリケーション・ノートで示したように、Agilentのプローブの方がTektronixのプローブよりも性能が優れていました。

    まとめ

    新しい1130シリーズInfiniiMax差動アクティブ・プローブの導入にあたり、Agilentでは新しいプローブ・アーキテクチャ/トポロジー(正確なRF伝送ライン・テクノロジーを使用してプローブ・アンプを物理的にプローブ・ヘッドから移動させ、ハイインピーダンス接続を実現)を採用しました。この新しいプローブ・テクノロジーにより、広帯域アプリケーションに対して利便性と測定性能が向上しました。実際、Agilentの新しい1130シリーズInfiniiMaxアクティブ・プロービング・システムは、EDNがスポンサーを務める2002Test & Measurement Product-of-The-Year賞に選ばれました。我々が知る限り、EDNが電子計測部門でこの賞にアクセサリを選定したのはこれがはじめてのことです。

    InfiniiMax:最高性能の高速プロービング・システム

    EDNマガジンはAgilentのInfiniiMaxアクティブ・プローブ・システムに2002 Innovation of the YearAwardを授与しました。

  • 12

    用語

    ブラウザ・プローブ:ユーザが手で持てるように、またはプローブ・スタンドと組み合わせて使用できるように設計されたプローブまたはプローブ・ヘッド

    ダンピング抵抗:高周波プローブの負荷を最小に抑えて帯域内共振(リンギング/ピーキング)を低減するための広帯域プローブのチップ付近にある抵抗値の小さな(一般的には100Ω)抵抗。

    ジッタ:理想的な位置に対する、高速ディジタル信号のエッジ遷移の位置に関するタイミング・エラー。タイム・インターバル・エラー(TIE)または位相ジッタと呼ばれる場合もあります。このタイミング・エラーは、デターミニステック・エラーとランダム・エラーに分けられます。

    帯域外:テスト・システムの帯域幅測定性能の外側にあると考えられる信号の周波数成分

    寄生成分:被試験回路に望ましくない負荷が生じる可能性がある、プローブの好ましくないキャパシタンス、インダクタンス、レジスタンス

    プローブ・ヘッド:様々な使用モデルに合わせて、オシロスコープ/プローブのユーザが、プローブ・アンプから離して種々のパッシブ・プローブ接続に交換可能なAgilent Technologiesが開発したプローブ・テクノロジー。このプローブ・ヘッド・テクノロジーにより、利便性が向上し、寄生成分によるプローブ負荷が低減し、測定確度が向上します。

    リアルタイム・オシロスコープ:シングル・ショットで信号を捕捉するために高速サンプリングを使用するオシロスコープ

    サンプリング・オシロスコープ:広帯域信号を捕捉するために繰り返しサンプリング・テクノロジーを使用するオシロスコープ

    ソルダイン・プローブ:プローブが簡単に被試験回路にはんだ付けできるように設計されたプローブ・ヘッド。ハンドフリー・プロービングまたはブラウザ・タイプのプローブ・ヘッドが使用できない狭いスペースにアクセスできます。

    伝達関数:常に入力電圧に対する出力電圧の比(VOUT/VIN)として計算されるデバイスまたは回路の電圧伝達関数(利得)。信号源、プローブ、オシロスコープ/プローブ測定システムの理想的な伝送関数は、減衰率が等しい場合は必ず

    「1」になります。

    関連カタログ

    タイトル 種類 カタログ番号

    Infiniium 54850シリーズ・オシロスコープ、InfiniiMax 1130シリーズ・プローブ Data Sheet 5988-7976JA

    高速信号を正確に測定するためのプローブ性能の検証方法 Application Note 1419-01 5988-7951JA

    広帯域アクティブ・プローブのユーザビリティと性能の向上 Application Note 1419-02 5988-8005JA

    差動/シングルエンド・アクティブ・プローブの性能比較 Application Note 1419-03 5988-8006JA

    Ten Things to Consider When Selecting Your Next Oscilloscope Application Note 1490 5989-0552EN

    オシロスコープ選択の決め手 5つのアプリケーション: Application Note 1489 5989-0526JATektronix TDSとAgilent Infiniiumの比較

    カタログは、www.agilent.co.jp/find/scopesにアクセスするか計測お客様窓口お問い合わせください。

  • 13

    高性能Infiniiumオシロスコープとプローブ抜群の性能、確度、コネクティビティ

    図21. 上段の入力信号を、中段の他社のプローブからの入力信号、下段のInfiniiMaxからの入力信号と比較してください。

    • 4チャネル同時20Gサンプル/sのサンプリング・レート、6GHz、4GHz、2.5GHz帯域幅のオシロスコープ

    • 任意のサンプリング・レートで最大1MポイントのMegaZoomロングメモリ、2Gサンプル/s以下では32MポイントのMegaZoomロングメモリ

    • 半導体アッテネータによる信頼性の向上

    • 最小1.0ps rmsのトリガ・ジッタ

    • 最高の性能を持つ差動およびシングルエンド・プローブにより、プロービング確度を保証(InfiniiMax7GHz、5GHz、3.5GHzプロービング・システム)

    オシロスコープの測定において、プロービング・システム以上の性能を得ることはできません。帯域幅が広くなるほど、プローブではなく、回路を確実に測定することがますます重要になってきます。設計上の問題として追跡していて、それが品質の悪いプローブが原因だったと分かったときほど、ストレスを感じることはありません。

    最新のInfiniiumオシロスコープと画期的なInfiniiMax高性能プロービング・システムを組み合わることにより、優れた性能、確度、コネクティビティを有するエンド・ツー・エンドの測定ソリューションが実現します。この結果、回路動作をより深く理解でき、信頼性の高い測定が実現します。

    図20. 受賞に輝いたAgilentのInfiniiumシリーズの最新モデルは、6GHz、4GHz、3.5GHz高性能リアルタイム・オシロスコープです。InfiniiMaxの広帯域アクティブ・プローブは、優れた性能、確度、コネクティビティを実現します。

    図22. InfiniiMax 7GHz差動ソケット・プローブ・ヘッド

    図23. InfiniiMax 6GHz差動ブラウザ・プローブ・ヘッド

    図24. InfiniiMax 7GHz差動ソルダイン・プローブ・ヘッド

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    March 8, 20045989-0553JA

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    サポート、サービス、およびアシスタンス

    アジレント・テクノロジーが、サービスおよびサポートにおいてお約束できることは明確です。リスクを最小限に抑え、さまざまな問題の解決を図りながら、お客様の利益を最大限に高めることにあります。アジレント・テクノロジーは、お客様が納得できる計測機能の提供、お客様のニーズに応じたサポート体制の確立に努めています。アジレント・テクノロジーの多種多様なサポート・リソースとサービスを利用すれば、用途に合ったアジレント・テクノロジーの製品を選択し、製品を十分に活用することができます。アジレント・テクノロジーのすべての測定器およびシステムには、グローバル保証が付いています。製品の製造終了後、最低5年間はサポートを提供します。アジレント・テクノロジーのサポート政策全体を貫く2つの理念が、「アジレント・テクノロジーのプロミス」と「お客様のアドバンテージ」です。

    アジレント・テクノロジーのプロミス

    お客様が新たに製品の購入をお考えの時、アジレント・テクノロジーの経験豊富なテスト・エンジニアが現実的な性能や実用的な製品の推奨を含む製品情報をお届けします。お客様がアジレント・テクノロジーの製品をお使いになる時、アジレント・テクノロジーは製品が約束どおりの性能を発揮することを保証します。それらは以下のようなことです。● 機器が正しく動作するか動作確認を行います。● 機器操作のサポートを行います。● データシートに載っている基本的な測定に係わるアシストを提供します。● セルフヘルプ・ツールの提供。● 世界中のアジレント・テクノロジー・サービス・センタでサービスが受けられるグローバル保証。

    お客様のアドバンテージ

    お客様は、アジレント・テクノロジーが提供する多様な専門的テストおよび測定サービスを利用することができます。こうしたサービスは、お客様それぞれの技術的ニーズおよびビジネス・ニーズに応じて購入することが可能です。お客様は、設計、システム統合、プロジェクト管理、その他の専門的なサービスのほか、校正、追加料金によるアップグレード、保証期間終了後の修理、オンサイトの教育およびトレーニングなどのサービスを購入することにより、問題を効率良く解決して、市場のきびしい競争に勝ち抜くことができます。世界各地の経験豊富なアジレント・テクノロジーのエンジニアが、お客様の生産性の向上、設備投資の回収率の最大化、製品の測定確度の維持をお手伝いします。

    電子計測UPDATE

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    Agilent電子計測ソフトウェアおよびコネクティビティ

    Agilentの電子計測ソフトウェアおよびコネクティビティ製品、ソリューション、デベロッパ・ネットワークは、PC標準に基づくツールによって測定器とコンピュータとの接続時間を短縮し、本来の仕事に集中することを可能にします。詳細についてはwww.agilent.co.jp/find/jpconnectivityを参照してください。