7
I-43 I-43 技術資料 I-43 選定計算 モーター 電動 アクチュ エータ ファン& サーマル マネジメント 寿命 AC 小型標準 モーター ステッピング モーター AC サーボ モーター ギヤヘッド 電動 アクチュ エータ ファン& サーマル マネジメント スピード コントロール モーター ステッピングモーター ステッピングモーターの構造 ステッピングモーターの断面図を下図に示します。 ステッピングモーターは大きく分けてステーター(固定子)とロー ター(回転子)の2 つの部品から構成されています。 ローターはローター1、ローター2、永久磁石の 3 つから構成され ています。 また、ローターは軸方向に磁化されており、ローター 1 N 極の場合、ローター2 S 極となります。 ボールベアリング シャフト ローター1 ローター2 マグネット ステーター 巻線 モーター構造図:シャフトと平行方向の断面図 ステーターには小歯を持つ磁極があり、それぞれに巻線されてい ます。 その巻線は向かい合った磁極でつながっており、電流を流すと同 じ極性に磁化されるように巻線されています。(ある巻線に電流を 流すことにより、向かい合った磁極で N 極または S 極というよう に同極に磁化されるということです。) 向かい合った 2 つの磁極で 1 つの相を形成しています。A 相から E 相までの 5 つの相があるタイプが 5 相ステッピングモーター、A B 相の 2 つの相があるタイプが 2 相ステッピングモーターと呼ば れています。 ローターの外周には 50 枚の小歯があり、ローター1 とローター2 小歯は1/2 ピッチ機械的にずれて構成されています。 励磁:モーターの巻線に電流を流した状態のこと 磁極:励磁することによって電磁石化するステーターの突出部のこと 小歯:ローターやステーターの歯のこと ABCDEローター ステーター シャフト 5 相モーター構造図:シャフトと垂直方向の断面図 A相 B相 ローター ステーター シャフト A相 B相 2 相モーター構造図:シャフトと垂直方向の断面図 ステッピングモーターの動作原理 実際に磁化した場合のステーターとローターの小歯の位置関係を 5 相ステッピングモーターを実例として説明します。 A 相を励磁した場合 A 相を励磁すると磁極は S 極に磁化され、N 極の極性を持つロー ター1 の小歯と引き合い、S 極の極性を持つローター2 の小歯とは 反発し、釣り合って停止しています。 このとき励磁されていない B 相の磁極の小歯は、S 極の極性を持っているローター2 の小歯と 0.72˚ ずれています。 これが A 相を励磁したときのステーターとロ ーターの小歯の位置関係です。 0.72˚ 3.6˚ 7.2˚ 3.6˚+0.72˚ N N S N N N S ローター1 ずれ無し ABCDE電流 ずれ無し ステーター B 相を励磁した場合 次に A 相励磁から B 相励磁に切り替えると、B 相の磁極は N 極に磁 化され、S 極の極性を持つローター2 と引き合い、N 極の極性を持 つローター1 とは反発します。 0.72˚ 3.6˚ 0.72˚ 3.6˚ S S S S S S S S N N N N N N N ABステーター ローター1 CDE電流 つまり、A 相励磁から B 相励磁に励磁相を切り替えることにより 0.72˚ ローターが回転したことになります。これからわかるように、 励磁相を A B C D E A 相と切り替えていくこ とにより、ステッピングモーターは 0.72˚ ずつ正確に回転していき ます。 また、逆方向に回転させたい場合は、A E D C B A 相と、励磁する順番を逆にすることによりおこなえ ます。 0.72˚ という高分解能は、ステーターとローターの構造上の機械的 なズレによって生み出されており、これがエンコーダなどのセン サを使用せずに正確に位置決めできる理由です。 また、停止精度 に関してもステーターとローターの加工精度、組立精度、巻線の 直流抵抗のばらつき程度しかないため、±3 分(無負荷時)という高 い停止精度が得られます。 実際のステッピングモーターでは励磁 相を切り替える役目をドライバが、またその切り替えタイミング をドライバに入力されるパルス信号がおこなっています。 これは 1 相ずつ励磁した場合の例ですが、実際は巻線を有効に利用するた めに4 相または5 相同時に励磁しています。

技術資料 I-43 ステッピングモーター...I-44 オリエンタルモーター 総合カタログ 2017/2018 I-44 ステッピングモーター ステッピングモーターの基本特性

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Page 1: 技術資料 I-43 ステッピングモーター...I-44 オリエンタルモーター 総合カタログ 2017/2018 I-44 ステッピングモーター ステッピングモーターの基本特性

I-43I-43

技術資料 I-43

選定計算

モーター

電動アクチュエータ

ファン&サーマルマネジメント

寿命

AC小型標準モーター

ステッピングモーター

ACサーボモーター

ギヤヘッド

電動アクチュエータ

ファン&サーマルマネジメント

スピードコントロールモーター

ステッピングモーター■ ステッピングモーターの構造ステッピングモーターの断面図を下図に示します。ステッピングモーターは大きく分けてステーター(固定子)とローター(回転子)の2つの部品から構成されています。ローターはローター1、ローター2、永久磁石の3つから構成されています。また、ローターは軸方向に磁化されており、ローター1がN極の場合、ローター2がS極となります。

ボールベアリング

シャフト

ローター1

ローター2

マグネット

ステーター巻線

モーター構造図:シャフトと平行方向の断面図

ステーターには小歯を持つ磁極があり、それぞれに巻線されています。その巻線は向かい合った磁極でつながっており、電流を流すと同じ極性に磁化されるように巻線されています。(ある巻線に電流を流すことにより、向かい合った磁極でN極またはS極というように同極に磁化されるということです。)向かい合った2つの磁極で1つの相を形成しています。A相からE

相までの5つの相があるタイプが5相ステッピングモーター、A相とB相の2つの相があるタイプが2相ステッピングモーターと呼ばれています。ローターの外周には50枚の小歯があり、ローター1とローター2の小歯は1/2ピッチ機械的にずれて構成されています。

励磁:モーターの巻線に電流を流した状態のこと磁極:励磁することによって電磁石化するステーターの突出部のこと小歯:ローターやステーターの歯のこと

A相

B相

C相

D相

E相

ローター

ステーター

シャフト

5相モーター構造図:シャフトと垂直方向の断面図

A相

B相ローター

ステーター

シャフト

A相

B相

2相モーター構造図:シャフトと垂直方向の断面図

■ステッピングモーターの動作原理実際に磁化した場合のステーターとローターの小歯の位置関係を5相ステッピングモーターを実例として説明します。

●A相を励磁した場合A相を励磁すると磁極はS極に磁化され、N極の極性を持つローター1の小歯と引き合い、S極の極性を持つローター2の小歯とは反発し、釣り合って停止しています。このとき励磁されていないB相の磁極の小歯は、S極の極性を持っているローター2の小歯と0.72˚ずれています。これがA相を励磁したときのステーターとローターの小歯の位置関係です。

0.72˚3.6˚

7.2˚3.6˚+0.72˚

N

N

S

N N

N

S

ローター1

ずれ無し

A相 B相

C相

D相

E相電流

ずれ無し

ステーター

●B相を励磁した場合次にA相励磁からB相励磁に切り替えると、B相の磁極はN極に磁化され、S極の極性を持つローター2と引き合い、N極の極性を持つローター1とは反発します。

0.72˚ 3.6˚

0.72˚

3.6˚

S

SS

S

SS

S

S

NN

N

N

N

N

N

A相B相ステーター

ローター1

C相

D相

E相電流

つまり、A相励磁からB相励磁に励磁相を切り替えることにより0.72˚ローターが回転したことになります。これからわかるように、励磁相をA相→B相→C相→D相→E相→A相と切り替えていくことにより、ステッピングモーターは0.72˚ずつ正確に回転していきます。また、逆方向に回転させたい場合は、A相→E相→D相→C

相→B相→A相と、励磁する順番を逆にすることによりおこなえます。0.72˚という高分解能は、ステーターとローターの構造上の機械的なズレによって生み出されており、これがエンコーダなどのセンサを使用せずに正確に位置決めできる理由です。また、停止精度に関してもステーターとローターの加工精度、組立精度、巻線の直流抵抗のばらつき程度しかないため、±3分(無負荷時)という高い停止精度が得られます。実際のステッピングモーターでは励磁相を切り替える役目をドライバが、またその切り替えタイミングをドライバに入力されるパルス信号がおこなっています。これは1相ずつ励磁した場合の例ですが、実際は巻線を有効に利用するために4相または5相同時に励磁しています。

Page 2: 技術資料 I-43 ステッピングモーター...I-44 オリエンタルモーター 総合カタログ 2017/2018 I-44 ステッピングモーター ステッピングモーターの基本特性

I-44I-44オリエンタルモーター総合カタログ 2017/2018

I-44 ステッピングモーター

■ステッピングモーターの基本特性ステッピングモーターを使用するときには、モーターの特性が使用条件に適しているかどうかが重要なポイントになります。ここではステッピングモーターを使用する上で重要となる特性を説明します。ステッピングモーターの特性は大きく分けて2つに分類されます。

●動特性:ステッピングモーターの起動または回転に関する特性で、主に機器の動作やサイクルタイムに関係があります。

●静特性:ステッピングモーターが停止しているときの角度変化に関する特性で、機器の精度に関係があります。

①TH

回転速度

トルク

fs

回転速度―トルク特性

●動特性 ◇回転速度―トルク特性

ステッピングモーターを駆動したときの回転速度とトルクの関係を表した特性図です。ステッピングモーターの選定時に必ず使用する特性です。横軸はモーター出力軸の回転速度を、縦軸はトルクを表しています。回転速度―トルク特性はモーターとドライバによって決まり、使用ドライバの種類によって大きく異なります。

①励磁最大静止トルク(TH:Holding Torque)ステッピングモーターが通電状態(定格電流)で停止しているときに持っている最大の保持トルク(保持力)のことです。

②プルアウトトルク(Pullout Torque)各回転速度で出すことのできる最大トルクです。モーターを選定する場合は必要トルクがこの曲線の内側に入っていなければなりません。

③最大自起動周波数(fS)ステッピングモーターが摩擦負荷、慣性負荷が0のとき、瞬時(加減速時間なし)に起動、停止できる最大のパルス速度です。これ以上のパルス速度でモーターを駆動する場合には、徐々に加減速する必要があります。慣性負荷がモーターに付くことによってこの周波数は低下します。(慣性負荷―自起動周波数特性 参照)最大応答周波数(fr)ステッピングモーターが摩擦負荷、慣性負荷が0のとき、徐々に加減速することにより運転することのできる最大のパルス速度のことです。下図は代表的な5相ステッピングモーターユニットの回転速度―トルク特性です。

1000 2000 3000 400000

1.2

1.0

0.8

0.6

0.4

0.2

fs

0 10 20 30

0

4

8

設定電流:1.4A/相 外部負荷慣性:JL=0kg・m2 ステップ角度:0.72/̊step

AC100V入力AC200V入力

プルアウトトルク

ドライバ入力電流

パルス速度 [kHz]

回転速度 [r/min]

トルク

[N・m

]

(分割数1)

電流 [A

]

◇ 慣性負荷―自起動周波数特性自起動周波数の慣性負荷による変化を表した特性です。ステッピングモーターのローター自身や負荷には、慣性モーメントがあるため、瞬時起動時、停止時に遅れや進みがモーター軸に生じます。この値はパルス速度によって変わってきますが、ある値を超えるとモーターはパルス速度に追従できなくなり、脱調(ミスステップ)してしまいます。この脱調する寸前のパルス速度を自起動周波数といいます。

2500

2000

1500

1000

500

01000 2000 3000 4000 50000

最大自起動周波数

f[H

z]

慣性負荷 JL (×10-7 [kg・m2])

慣性負荷―自起動周波数特性

慣性負荷に対する最大自起動周波数の変化は、次式で近似することができます。

=ffS

JL

JO

[Hz]1 +

fS :モーター単体の最大自起動周波数[Hz]f :慣性負荷がある場合の最大自起動周波数[Hz]JO :ローターの慣性モーメント[kg·m2]JL :負荷の慣性モーメント[kg·m2]

◇振動特性ステッピングモーターは連続的なステップ状の動きをしながら回転しています。そのステップ状の動きのひとつを見たものが下の1ステップ応答です。

① 停止状態のステッピングモーターに1パルスを入力すると、次のステップ角度に向かって加速します。

② 加速したモーターはステップ角度を通過し、ある角度をオーバーシュートした後、逆方向に引き戻されます。

③ このように減衰振動した後、所定のステップ角度の位置で停止します。

t

θs

② ③

θs : ステップ角度 t : 立ち上がり時間

逆転方向

正転方向セットリングタイム

角度

時間1ステップ応答

Page 3: 技術資料 I-43 ステッピングモーター...I-44 オリエンタルモーター 総合カタログ 2017/2018 I-44 ステッピングモーター ステッピングモーターの基本特性

I-45I-45

技術資料 I-45

選定計算

モーター

電動アクチュエータ

ファン&サーマルマネジメント

寿命

AC小型標準モーター

スピードコントロールモーター

ステッピングモーター

ACサーボモーター

ギヤヘッド

電動アクチュエータ

ファン&サーマルマネジメント

このような減衰振動を生じるステップ状の動きが低速時の振動の原因です。ステッピングモーターの回転中の振動の大きさを表す特性が振動特性です。振動レベルが小さいほど滑らかに回転していることになります。

1000 200 300 4000

0.25

0.75

0.50

回転速度 [r/min]

振動成分電圧 V

p-p

[V]

電源電圧:AC100V

振動特性

●静特性 ◇角度―トルク特性

モーターを定格電流で励磁し、モーターシャフトに外部よりトルクを加えローターに角度変化を与えたときの角度とトルクの関係を角度―トルク特性といい、下図のような特性になります。

TH

−TH

24 43

44

変位角度

不安定点 安定点

θ

トルク T

τR τR τR τR

τR

TH:励磁最大静止トルクτR:ローターの歯のピッチ

角度―トルク特性

上の特性図の各ポイントでのステーターとローターの小歯の位置関係を下図に示します。安定点①で釣り合って停止しているとき、モーターシャフトに外力を加えると、安定点①に引き戻そうと左方向にトルクT(+)を発生し、外力と釣り合った角度で停止します。②

さらに外力をかけていくと発生トルクが最大になる角度があります。そのときの発生トルクが励磁最大静止トルクTHです。③

それを超える外力をかけると、不安定点⑤を通り、外力と同方向にトルクT(−)を発生し、次の安定点①まで移動し停止します。

① ② ③ ④

⑤ ⑥ ⑦ ⑧

ローター

ローター

ステーター

ステーター

:ステーターとローターの引き合う力:ローターの動き

安定点:ステーターとローターの小歯が完全に相対した位置で停止している場所のことです。非常に安定しており、外力を0にすると必ずこの場所で停止します。

不安定点:ステーターとローターの小歯が1/2ピッチずれた場所のことです。非常に不安定な状態で、外力が少しでも加わると右か左の安定点に移動してしまいます。

◇角度精度ステッピングモーターは無負荷状態で±3分(0.05˚)以内の角度精度を持っています。そのわずかな誤差の原因はステーターとローターの機械的精度や、ステーター巻線の微小な抵抗のばらつきによるものです。ステッピングモーターの角度精度を表すものとしては次の静止角度誤差が一般的です。

静止角度誤差:ローターの理論上の停止位置と実際の停止位置とのズレのことです。ローターの任意の停止位置を出発点とし、1ステップずつ360˚測定したときの(+)の最大値と(−)の最大値との幅を表します。

×

×× × ×

〈実際の停止位置〉

〈理論上の停止位置〉 :: 実際の停止位置理論上の停止位置

0˚ 0.72˚ 1.44˚ 2.16˚ 2.88˚ 360˚

0.745˚ 1.425˚ 2.17˚ 2.885˚

静止角度誤差は±3分以内ですが、これは無負荷条件での値です。しかし実際の用途においては必ず摩擦負荷が存在します。その際の角度精度は角度―トルク特性より、摩擦負荷に応じた角度変位を生じます。摩擦負荷が一定の場合、一方向運転のときには変位角度は一定ですが、正逆両方向から運転をおこなうときには往復で2倍の変位角度を生じます。停止精度が必要な場合には必ず一方向からの位置決めをおこなってください。

360˚ 0.72˚0˚ 1.44˚ 2.16˚ 2.88˚

+0.03

+0.02

+0.01

0

-0.01

-0.02

-0.03

静止角度誤差 0.04˚

角度誤差[

˚ ]

回転角度[ ˚ ]

●電磁ブレーキの構造と寿命電磁ブレーキ付モーターは、無励磁作動型の位置保持用電磁ブレーキを採用しています。 構造例を以下に示します。励磁コイルに電圧を印加すると、永久磁石の磁力と逆方向の起磁力が発生し、板ばねの力でアーマチュアが釈放され、ブレーキが開放した状態になりモーター軸の回転が自由になります。電圧を印加しない状態ではアーマチュアが永久磁石によりヨークを吸着し、モーター軸が固定されます。

励磁コイル(電磁石)永久磁石板ばね

ハブ

アーマチュアヨーク

◇動作と寿命モーターを励磁しない状態で位置保持用として使用が可能なブレーキです。回転中の負荷を停止させる制動用としては、使用しないでください。ブレーキライニングを装備していないため、制動を繰り返すと金属同士が擦れて摩耗や焼きつきにより、正常に動作できなくなります。動作寿命は、板ばねの疲労寿命により100万回です。ステッピングモーターは停止時に保持力があるため、装置の電源をON/OFFにしたときのみ、電磁ブレーキを動作させる使用方法を想定しています。

Page 4: 技術資料 I-43 ステッピングモーター...I-44 オリエンタルモーター 総合カタログ 2017/2018 I-44 ステッピングモーター ステッピングモーターの基本特性

I-46I-46オリエンタルモーター総合カタログ 2017/2018

I-46 ステッピングモーター

■ステッピングモーターユニットのモーター

当カタログにおいて紹介しています、5相ユニット製品はすべて新ペンタゴン結線の5本リード線モーターと、専用の励磁シーケンスを搭載したドライバによって構成されています。当社独自のこの組み合わせにより、

●簡単結線の5本リード ●低振動化の実現に成功しています。ここでは、その結線と励磁シーケンスについて説明します。

●新ペンタゴン結線4相励磁方式…フルステップ0.72˚/step

常に4相ずつ励磁する5相モーター独特の方式で、1ステップ0.72˚

(0.36˚)です。ダンピング効果が大きく、安定した運転ができます。

VCC

0V

橙緑

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

+

+

+

+

+

0

0

0

0

0−

パルス入力

A 相

B 相

C 相

D 相

E 相

新ペンタゴン結線4相励磁シーケンス

●新ペンタゴン結線4-5相励磁方式…ハーフステップ0.36˚/step

4相励磁と5相励磁を交互に繰り返す方式で、1ステップ0.36˚です。1回転を1000分割することができます。

0 01 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

+

+

+

+

+

0

0

0

0

0−

パルス入力

A 相

B 相

C 相

D 相

E 相

新ペンタゴン結線4-5相励磁シーケンス

■ステッピングモーターのドライバステッピングモーターの駆動方法には定電流駆動方式と定電圧駆動方式の2種類があります。定電圧駆動方式は回路構成が簡単ですが、高速域においてトルク特性が得にくい方式です。一方、定電流駆動方式は現在広く使用されている駆動方式で、高速領域のトルク特性に優れた特徴を持っています。当社のステッピングモータードライバはすべてこの駆動方式を採用しています。

●定電流駆動方式の概要ステッピングモーターは各巻線に流す電流を順番に切り替えることにより回転させていますが、回転速度が速くなると、この切り替えが速くなり電流の立ち上がりが追いつかず、トルクの低下が起こります。そこで、モーターの定格電圧よりもはるかに高い直流電圧をチョッピングすることにより、高速時にもモーターに定格電流を流すことができます。

VCC Tr2

Tr1

0V I

モーター巻線

電圧比較回路

基準電圧 電流検出抵抗パルス幅制御回路

電流検出抵抗でモーター巻線に流れる電流を電圧として取り出し、基準電圧と比較します。検出抵抗の電圧が基準電圧よりも低いとき(定格電流に達していないとき)は、スイッチングトランジスタTr2を引き続きONし、基準電圧より高いとき(定格電流を超えたとき)は、Tr2をOFFし、常に定格電流が流れるように電流制御しています。

t0 t1

t0 t1

Vcc

I

時間

時間

電流

電圧

定電流チョッパ駆動・電圧と電流の関係

Page 5: 技術資料 I-43 ステッピングモーター...I-44 オリエンタルモーター 総合カタログ 2017/2018 I-44 ステッピングモーター ステッピングモーターの基本特性

I-47I-47

技術資料 I-47

選定計算

モーター

電動アクチュエータ

ファン&サーマルマネジメント

寿命

AC小型標準モーター

スピードコントロールモーター

ステッピングモーター

ACサーボモーター

ギヤヘッド

電動アクチュエータ

ファン&サーマルマネジメント

● AC入力とDC入力の特性の違いステッピングモーターはドライバを介し、直流電圧を印加しモーターを駆動しています。当社ではDC24V入力ユニットの場合はDC24Vを、AC100V、AC200V入力の場合は一度直流に整流し約DC140Vをモーターに印加しています。(一部製品を除く。)このモーターへの印加電圧の差は高速域のトルク特性の差になって現れます。それは、モーター巻線に流れる電流の立ち上がりは印加電圧が高いほど速くなり、高速域でも定格電流を流すことができるからです。つまりAC入力ユニットは、低速域から高速域まで全域においてトルク特性に優れており、大きな速度比を得ることができます。ご使用の際にはまず、機器の多様な使用条件に対応できるAC入力ユニットをおすすめします。

10000 2000 3000 40000

1.2

1.0

0.8

0.6

0.4

0.2

パルス速度 [kHz]

0(0)

10(100)

20(200)

30(300)

回転速度 [r/min]

トルク

[N・m

]

(分割数1)(分割数10)

AC100VDC24V

●マイクロステップ技術5相ステッピングモーターの基本ステップ角0.72˚を機械的減速機構なしでさらに細かく分割(最大250)できます。

◇特徴ステッピングモーターはローターとステーターの凸極構造で決まるステップ角度ごとに回転・停止するため、位置制御が高精度に、しかも簡単にできるという特徴があります。しかし逆に、ステップ角度ごとに回転することでローターは速度変化を生じ、ある回転数で共振したり、振動が大きくなるという特性もあわせ持っています。マイクロステップドライブは、モーターの基本ステップ角度をモーターコイルに流す電流を制御することで細分化し、超低速・低騒音運転を実現する技術です。

●モーターの基本ステップ角度( 0 . 7 2 ˚/フルステップ)を1/1∼1/250まで細分化できますので、微小角送りによる滑らかな運転がおこなえます。 ●モーターの駆動電流を滑らかに変化させる技術により、モーターの振動を抑え低騒音運転を実現させました。

◇基本ステップ角度を最大250分割マイクロステップ駆動ドライバは、2つのステップ角度設定スイッチにそれぞれ独立したステップ角度を設定でき(16種類、最大250

分割)、外部からのステップ角度切替入力信号操作によりそれぞれのスイッチで設定したステップ角度の切り替えがおこなえます。

特性面 ●低振動マイクロステップ技術によりステップ角度を電気的に細分化。低速領域での段階的な動きを滑らかにし、振動を大幅に改善しました。通常、振動を低減するためにダンパなどを使用しますが、モーター自体が低振動設計であることに加え、マイクロステップ技術を採用することによりさらに振動を抑えます。振動対策を大幅に簡略できますので、振動をきらう用途や装置には最適です。

1000 200 300 4000

0.25

0.5

回転速度 [r/min]

振動成分電圧 V

p-p

[V]

電源電圧:DC24V 外部負荷慣性:JL=0kg・m2

分割数10 (0.072˚/step)分割数 1 (0.72˚/step)

振動特性 ●低騒音マイクロステップ技術により低速領域での振動音も改善し、低騒音化を実現しました。騒音をきらう環境下でも威力を発揮します。

●制御性の向上ダンピング特性の良い新ペンタゴン方式のマイクロステップ駆動です。ステップごとのオーバーシュート、アンダーシュートが少なく、パルスパターンに正確に追従します。(リニアリティーも向上します。)また、起動、停止の衝撃を和らげることができます。

2000 400

1/50

1/5

1/1

0

0.72゜

1.44゜

時間 [ms]

回転角度[

˚]

ステップ応答の違い

Page 6: 技術資料 I-43 ステッピングモーター...I-44 オリエンタルモーター 総合カタログ 2017/2018 I-44 ステッピングモーター ステッピングモーターの基本特性

I-48I-48オリエンタルモーター総合カタログ 2017/2018

I-48 ステッピングモーター

■クローズドループステッピングモーター

●制御方式の概要 ◇ローター位置検出センサを内蔵

モーターの反出力軸側にローター位置検出センサを内蔵しています。

ローター位置検出センサ

ローター回転位置による磁気抵抗の変化をセンサ巻線で検出します。

1.251

0.5

0 60 120 180 240 300 360

–0.5

–1

0

センサ出力信号

ローター角[˚] (電気角) A相B相

ローター位置検出センサの出力信号

◇当社独自のクローズドループ制御を採用パルス列信号の指令位置に対する、実際のローター回転位置の偏差(遅れ/進み)を偏差カウンタで演算します。偏差カウンタの演算結果から「過負荷領域」を判別し、オープンモード/クローズドモードの制御を切り替えて運転します。

●通常時は、オープンモードで運転します。 ●過負荷時は、クローズドモードで運転します。

入力カウンタ

偏差カウンタ

ローター位置カウンタ

過負荷領域判別

オープンモード選択パルス列信号

クローズドモード選択

励磁シーケンス制御部

電力回路部

モーター

センサ

: 独自の制御部ローター位置カウンタ: ローター位置に対して最大トルクを発

生する励磁シーケンスを指示します。

の制御ブロック構成図

クローズドモードでは、ローター回転位置に対して最大トルクが発生するようモーター巻線の励磁状態を制御します。この制御方式によって、角度―トルク特性に不安定点(過負荷領域)はありません。

–5.4–7.2 –3.6 –1.8 0 1.8 3.6 5.4 7.2

②クローズドモード

②クローズドモード

①オープンモード

角度[˚] (機械角)

ステッピングモーター

トルク

角度―トルク特性

● の特徴 ◇ステッピングモーターの性能が向上

●高速領域のトルク特性が使いやすいは通常のステッピングモーターのように以下の点を配

慮して運転する必要はありません。 ●起動パルス速度の制限スルー領域を活用した高速運転が簡単にできます。

●速度フィルタによる起動時/停止時の応答性を調整コントローラのデータ(起動パルス速度、加減速レート)を変更せず、起動時/停止時の応答性を16段階で調整できます。ワークへのショックを少なくしたり、低速運転時の振動を低減する目的で使用します。

0にしたときFにしたとき

時間

回転速度

速度フィルタによる効果

◇機械式多回転アブソリュートセンサ(ABZOセンサ)ABZOセンサは機械的に位置を検出し、センサ側で位置を記憶します。位置情報をセンサ側で記憶することで、電源遮断時にも位置情報を保持できるアブソリュートシステムが構築できます。また、従来、位置情報をバックアップするために必要だったバッテリが不要となり、モーターケーブルを外しても位置を喪失しません。

ABZOセンサ

センサ側で位置情報を記憶

Page 7: 技術資料 I-43 ステッピングモーター...I-44 オリエンタルモーター 総合カタログ 2017/2018 I-44 ステッピングモーター ステッピングモーターの基本特性

I-49I-49

技術資料 I-49

選定計算

モーター

電動アクチュエータ

ファン&サーマルマネジメント

寿命

AC小型標準モーター

スピードコントロールモーター

ステッピングモーター

ACサーボモーター

ギヤヘッド

電動アクチュエータ

ファン&サーマルマネジメント

■励磁タイミング信号を利用した機械原点復帰運転 ●励磁タイミング信号

励磁タイミング(TIM.)信号出力とは、ドライバがステッピングモーターを初期励磁している状態(ステップ「0」)にあるときに出力する信号です。当社の5相ステッピングモーターユニットは、電源投入されたときに初期励磁をし、パルス信号が入力されるたびに励磁シーケンスを進め、モーター軸が7.2˚回転すると1巡します。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

1 2

ONOFFONOFFONOFF

CWパルス

CCWパルス

TIM.出力

(ステップ)0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 1 0

励磁シーケンスと励磁タイミング信号の関係(5相ステッピングモーターユニット)

このタイミング信号は、再現性の高い機械原点復帰運転を必要とされる場合にご利用ください。以下に、ステッピングモーターの機械原点復帰運転と、タイミング信号の利用について説明します。

●ステッピングモーターの機械原点復帰運転自動機器を電源投入して始動するとき、あるいは停電復旧後に再始動するときは、ステッピングモーターを機械上の基準位置に復帰させる必要があり、これを機械原点復帰運転といいます。ステッピングモーターの機械原点復帰運転は、位置決め運転の対象とする機構部を原点センサで検出し、その検出信号を確認した時点でコントローラがパルス信号を止め、ステッピングモーターを停止させます。このような機械原点復帰運転は、原点センサの検出性能が機械原点の精度を決定します。原点センサの検出性能は、周囲温度や機構検出部の接近速度などによって変化するため、再現性の高い機械原点出しを必要とする用途では、これを低減する工夫が必要となります。

機械原点復帰開始位置

HOMELSセンサ

コントローラ ドライバ

モーター

−LSセンサ +LSセンサ

原点センサ信号

パルス信号

パルス信号

原点センサ信号

時間

センサによる機械原点復帰運転(3センサ方式 HOME、CW LS、CCW LS)

●励磁タイミング信号を利用した再現性の向上原点センサの検出性能が変化しても、機械原点の位置が変化しないようにする方法に、タイミング信号との論理積でパルス信号を止める方法があります。タイミング信号は初期励磁の状態で出力される信号ですから、タイミング信号が出力されたときにパルス信号を止めると、必ず初期励磁状態で機械原点出しができます。

機械原点復帰開始位置

HOMELSセンサ

−LSセンサ +LSセンサ

コントローラ ドライバ

モーター

原点センサ信号

パルス信号

パルス信号

タイミング信号

原点センサ信号

時間

タイミング信号