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避難生活の健康危機と その予防 災害関連死から命を守るために 2016年11月27日(日)13:30~15:00 千葉科学大学防災シュミレーションセンター 千葉科学大学 看護学部 小磯 京子

避難生活の健康危機と その予防 - CIS · 出典:防災サバイバル、避難によるエコノミークラス症候群の予防と対策などから 災害関連死:地震による家屋倒壊や津波

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2016~

2010

2016年10月21日 鳥取県中部地震(M6.6)

負傷者26名

2016年4月14日 熊本地震(M7.3)

直接死50名 関連死82名負傷者 2,586名

2015年9月9日 関東・東北豪雨 死者8名

2014年9月27日 御嶽山噴火 死者50名超

2014年8月20日 広島市土砂災害 死者74名

2011年3月11日 東日本大震災(M9.0)

死者15,894名 関連死3,472人

行方不明2,561名

2009年~

2000年

2008年6月14日 岩手・宮城内陸地震(M7.2)

死者17名、行方不明6名

2007年7月16日 新潟県中越沖地震(M6.8)

死者15名

2004年10月23日 新潟中越地震(M6.8)

死者68名

日本の自然災害

出典:気象庁、日本付近で発生した主な被害地震(平成8年以降)

H28.3/31

H28.11/11

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順位 都道府県 震度1以上震度の内訳(回数)

1 2 3 4 5弱 5強 6弱 6強 7

1 熊本県 3,721回 2,237 1,006 346 110 11 4 3 2 2

2 大分県 847回 505 228 95 13 2 2 1 - -

3 鳥取県 426回 278 106 31 10 1

4 宮崎県 411回 269 103 32 5 1 1 - - -

5 福岡県 391回 272 89 21 8 - 1 - - -

6 鹿児島県 377回 241 104 25 5 2 - - - -

7 長崎県 357回 249 80 21 5 1 1 - - -

8 茨城県 242回 150 63 18 9 2 - - - -

9 岩手県 200回 123 53 17 2 - - - - -

10 北海道 194回 116 51 22 3 1 - 1 - -

11 宮城県 187回 122 48 15 2 - - - - -

12 佐賀県 179回 118 42 14 4 - 1 - - -

13 福島県 174回 99 59 13 3 - - - - -

14 岡山県 151回 99 41 9 1 - 1 - - -

15 千葉県 148回 85 42 16 5 - - - - -

2016年の都道府県別・地震回数ランキング(最大震度1以上)

1.1~.10.31

揺れ来るhttp://jisin.jpn.org/rank10Pref2016.html#area430005

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世界各国の地震頻度・年平均被災死亡者数(1980~2000年)

(注)地震頻度の対象はマグニチュード5.5以上の地震。面積当たり地震頻度は日本の面積(38万平方キロ)当たり。

(資料)国連開発計画(UNDP)「世界報告書:災害リスクの軽減へ向けて」(2004年8月)

面積は世界.World Devebpment Indcators 2004

国土面積当たり地震頻度(回/年)

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(注)2004年~13年、アメリカ地質調査所の震源データをもとに気象庁作成資料:内閣府「平成26年版災害白書」付属資料68

世界のマグニチュード6以上の震源分布とプレート境界

日本で地震が多い理由:4つのプレートに接している.多くの活断層がある.・全世界の地震の10%

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◆災害が発生し自宅に住むことができなくなると避難することになる

◆自治体は災害に備えて、学校の体育館や公民館などの公共施設を避難所に指定している

◆地域ごとに指定され、共同生活がしやすいように配慮されている

◆多くの場合、家が壊れて住むことができない人や水道、ガス、電気などが止まり生活ができない人が優先的には入ることができる

避難所

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◆被災状況により電気・水道・ガスなどの供給に影響

◆本格的な支援が始まるまで、分け合いと助け合いが必要

◆余震が続いた熊本地震では、車中泊をする避難者が多く、体調が悪化する被災者が多数発生した。

避難生活

【車中泊を続ける主な理由】

◆屋内が怖い(余震への恐怖)

◆避難所ストレス(狭い空間)

◆ペットがいる(利用を遠慮)

◆避難所がいっぱいだった

◆子どもがいる(利用を遠慮)

出典:毎日新聞アンケート調査

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◆エコノミークラス症候群

(深部静脈血栓症/肺塞栓症)

◆誤嚥性肺炎

◆生活不活発病

◆感染症

①急性呼吸器感染症

②急性胃腸炎

③破傷風

避難所生活で起こりやすい代表的な病気とは

出典:防災サバイバル、避難によるエコノミークラス症候群の予防と対策などから

災害関連死:地震による家屋倒壊や津波などによる直接的な被害(直接死)ではなく、避難生活の疲労や環境の悪化などにより病気にかかったり、持病が悪化したりするなどして死亡すること

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エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症/肺塞栓症)とは

◆長時間、体を動かさずにいると、足の深部にある静脈の血流が悪くなり、血の塊(血栓)が生じる。→深部静脈血栓症

◆この血の塊が血流に乗って肺に運ばれ、肺の血管を塞いでしまう→肺塞栓

避難所生活で起こりやすい深部静脈血栓症

肺塞栓症:命を奪う直接の原因

発生箇所は9割が足である

年齢と共に発生しやすくなる.

特に膝裏の辺りにできやすい

出典:https://welq.jp

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深部静脈血栓症のしくみ

第二の心臓といわれるふくらはぎの筋肉が伸び縮むことにより、筋肉の作用が働き、血管に圧力をかけて血流をスムーズにしている.

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•下肢の腫れ 47%

下肢の痛み 26%

下肢の変色 7%

深部静脈血栓症

呼吸困難 73%

胸の痛み 42%

冷や汗 24%

失神、ショック状態 22%

動悸、頻脈 21%

咳 11%

血の混じった痰 5%

深刻な状態にならないためには、初期の段階で発見し、急いで医療機関を受診する必要がある。

肺塞栓症

深部静脈血栓症/ 肺塞栓症の症状と頻度

血栓心臓

肺出典:blogs.yahoo.co.jp

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(1)高齢者

(2)下肢静脈瘤

(3)下肢の手術

(4)骨折等のけが

(5)悪性腫瘍(がん)

(6)過去に深部静脈血栓症、心筋梗塞、脳梗塞等に罹患

(7)肥満、

(8)経口避妊薬(ピル)を使用

(9)妊娠中または出産直後、

(10)生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症等)がある方

深部静脈血栓症になりやすい人

出典:厚生労働省,厚生労働科学研究事業「難治性疾患克服研究」から

上記の方は、特に注意が必要です!

出典:厚生労働省,エコノミークラス症候群の予防Q&A

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対策は

◆長時間同じ(特に車中等での窮屈な)姿勢でいないようにしましょう。

◆足の運動をしましょう。

・足や足の指をこまめに動かす

・1時間に1度はかかとの上下運動

(20~30回程度)する。

・歩く(3~5分程度)

◆適度な水分をこまめにとりましょう.

◆時々深呼吸をしましょう。

とにかく足の筋肉を使いましょう。

厚生労働省:エコノミークラス症候群の予防Q&A

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予防のために心掛けると良いこと

①アルコールを控える、できれば禁煙をする

②ゆったりとした服装をし、ベルトをきつく締めない

④ふくらはぎを軽くもんだりする

④眠る時はできるだけ心臓よりも足を高い位置に置く

エコノミークラス症候群予防のために

◆足にむくみ、肥大、かゆみ等を感じたら無理に立ち上がらず救急車を呼んでもらいましょう。

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予防のための足の運動(寝ながらできる)

①足首の曲げ伸ばし・回す

ゆっくりと:左右3回ずつ

②膝の抱え込み:おしり・太股の裏を伸ばす:10秒間・左右3回ずつ

③全身を伸ばす:背伸びをするように5秒伸ばし、脱力、3回、繰り返す

④座って首を回す:時計まわりと反時計まわりを交互に、3回ずつ

⑤ゆっくり起きあがる

⑥毛布や布団を畳んだり、身の回りの整理整頓をする

⑦歩ける範囲で歩く

⑧ゆっくり深呼吸する

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厚生労働省:エコノミークラス症候群の予防Q&A

予防のための足の運動

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高齢者に注意、長引く避難生活による誤嚥性肺炎

◆避難生活が長引くと、体調不良が懸念される◆おろそかになりがちな口内ケア◆細菌を多く含んだ唾液や食べ物が気管に入って起こる◆過去の震災でも肺炎が急増・阪神淡路大震災:震災関連死 922名が死亡

肺炎が223人(24%)・東日本大震災では、発生から2週間後に、高齢者の肺炎が急増:避難生活の疲労やストレスなどで体調を悪化させ死亡した震災関連死は9割が65歳以上の高齢者

災害時の口腔ケア:高齢者の肺炎による関連死を防ぐための手立てとなる

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阪神大震災後の震災関連死の状況

出典:足立了平 東日本大震災-口腔保健の重要性について(ver.2)

1995年(H7)1/ 17

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避難所肺炎の成因

出典:足立了平 東日本大震災-口腔保健の重要性について(ver.2)

◆高齢者は、食べ物や唾液を飲み込む力(嚥下力、嚥下反射)が低下するため、誤って食べ物や唾液を気管に飲み込む、「誤嚥」が生じやすくなっている.

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①唾液や飲食物などを誤嚥する

②誤嚥したものが肺に入る

③炎症を起こす

誤嚥(ごえん)とは?

口腔内:多種多様の細菌

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◆少しでも異変を感じたら、対応が必要

・発熱、せき、喀痰など通常の症状を訴えないことも多く、なんとなく元気がない、倦怠感を訴える

・食事中のむせこみ、常に喉がゴロゴロ鳴っている、唾液が飲み込めない、食事に時間がかかる、痰が汚いなども疑わしい症状

<対策>

◆入れ歯の手入れを入念に行う

◆就寝前にはうがい薬などで口の中を殺菌する

◆できるだけ歯磨きをし、難しい場合は少量の水でもできるうがいをする

誤嚥性肺炎の症状と対策

出典:厚生労働省,避難生活の健康管理のガイドライン出典:東京新聞,暮らし,備え再点検より

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◆災害時には、動くに動けない状況が生じる

「動きにくい」→「動かない」→「動けなくなる」

◆災害時、特に高齢者で「不活発」になり体調を悪化する人が増える

◆全身のあらゆる心身機能が低下する

(体も心も頭の働きも)

◆避難生活では、避難所などで、

静かにしているから目立たないが、

動き出すと生活不活発病を生じ

ていたことが明らかになる

生活不活発病

出典:生活機能低下予防マニュアル,大川弥生

→高齢者ほど早く働きかけることが必要

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厚生労働省

生活不活発病

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Ⅰ.体の一部におこるもの Ⅱ.全身に影響するもの Ⅲ.精神や神経に影響するもの

1・拘縮(関節が固まる)

2・廃用性筋委縮(筋肉が

やせる)

3・褥瘡(床ずれ)4・廃用性骨委縮(骨がもろく、折れやすくなる)

5・静脈血栓

1.心肺機能低下

2.起立性低血圧(立ちく

らみの強いもの)

3.疲れやすさ

4.消化器機能低下(便

秘、食欲不振)

5.尿量の増加(脱水)

1.周囲への無関心

2.知的活動低下

3.うつ傾向→仮性痴呆

4.自律神経不安定

5.姿勢・運動調節機能

低下

生活不活発病の主な症状(心身機能)

生活不活発病は全身のほとんどの「心身機能」が低下→こころや頭の働きも低下

起立性低血圧:避難所などで昼間横になっている生活が続くと、立った時に血圧が下がって気分が悪くなり、めまい・立ちくらみする起立性低血圧(生活不活発病の症状のひとつ)が起こりやすくなります。災害の疲れだろうと考えて、さらに臥床すると生活不活発病を一層進行することになります。気をつけましょう。

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生活不活発病の予防

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出典:大川弥生,広域災害における生活不活発病(廃用症候群)対策の重要性,2005

生活不活発病は、「悪循環」を断ち切る

◆予防・改善の鍵は「生活の活発化」

◆その人らしい、活動的で生きがいのある活発な生活を送る

避難所では

◆昼間は毛布をたたむ(日中、横にならないように)

◆歩きやすいように通路を確保する

◆何らかの役割を見つける

◆ボランティアによる必要以上の

手助け、介護をさける

出典:産経新聞(熊本地震 避難者の安眠サポート

大阪の企業、段ボールベッドやテント提供より)

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◆気持ちの大変重いストレスにさらされると、不安や心配などの反応が表れます。

◆気持の落ち込みについて

・避難所内で顔なじみ・話せる相手を見つける

・思いや悩みを1人で抱え込まない

注意!◆眠れない

◆不安、イライラ、焦り、孤独感がつのる

◆気持ちを立て直せない、何もする気がおきない、涙が出て止まらない

◆身体の不調(頭痛、胃腸の不具合、だるさなど)がとれない

◆辛い気持ちや悩みを話せない

◆避難所の環境や周囲の人間関係などで困っている

こころのケア

出典:災害からの復興に向けて-避難所での健康と生活-兵庫県立大学大学院研究科,21世紀COEプログラムより

このような時は、避難所の世話係や保健・医療スタッフに伝えてください

このような時は、避難所の世話係や保健・医療スタッフに伝えてください

できる限り「安全・安心・安眠」の確保をめざす支援活動

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防災グッズ マウスウオッシュ

口腔ケアシート

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福島県からの県外避難者の数が、原発事故に関連して圧倒的に多く、歴史的な震災により生活が一変しました。

長期にわたる避難生活による心身のストレスは計り知れません。

阪神・淡路大震災では、震度が大きいほど、ストレスが強いことが報告されています。

また、狭い仮設住宅にこもると体を動かす機会が減り、体調が悪化(生活不活発病)する被災者が相次いでいます。

研究テーマ:東日本大震災後福島県からの県外避難家庭の被災直後と3年後のストレス度差の要因分析 小磯H26年調査より

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避難指示区域区分

経済産業省HPより(2016年7月12日更新)

避難指示区域の概念図

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北海道1,982人(3,063人) 青森405人(1,424人)

千葉3,063人(3,687人)

秋田734人(1,544人)

山形3,005人(13,693人)岩手17,006人(42,771人)

1,347人(1,574人)

福島44,999人(98,221人)40,404人(62,700人)

中国1,696人(1,758人)

九州1,879人(4,316人)

沖縄405人(1,000人)

宮城29,523人(127,952人)5,643人(8,494人)

茨城3,809人(5,906人)

新潟3,339人(7,111人)

近畿2,455人(4,572人)

四国346人(645人)

東海・北陸2,160人(3,014人)

埼玉4,594人(4,575人)

東京6,446人(9,278人)

東日本大震災後の県外への避難状況 2016.10/13現在

*カッコ内は県外避難者が最も多かった平成24年3月22日

全国H24.3月 :34万4千人H28.10月:13万8千人

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基本属性 N %

性別

男性

女性

458

401

53.3

46.7

回答者の年齢区分

20歳代

30歳代

40歳代

50歳代

60歳代

70歳代

80歳以上

15

91

124

149

236

155

89

1.7

10.6

14.4

17.3

27.5

18.0

10.4

N=859

基本属性 N %

福島県内避難元

双葉町

大熊町

楢葉町

浪江町

南相馬市

いわき市

郡山市

福島市

広野町

福島市

その他福島県内

232

163

116

99

97

66

30

13

7

6

30

27.0

19.0

13.5

11.5

11.3

7.7

3.5

1.5

0.8

0.7

3.5

表1 避難者の基本属性(1/3)

55.9%

小磯H26年調査より

アンケート用紙配布:4,095名最終の解析対象:859名(有効回収率:21.0%)

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避難理由(複数選択)

原発事故による避難勧告・指示を受けた

放射線被爆を恐れて避難した

市町村より避難地として指示された

津波被害により自宅に住めないため

その他

595

194

67

37

28

69.3

22.6

7.8

4.3

3.3

避難住宅形態借り上げ住宅家族の家(実家、子どもの家)民間賃貸(有償)その他公営住宅(有償)親戚・知人の家仮設住宅給与住宅(社宅など)不明

341

185

132

59

49

42

26

23

2

39.1

21.5

15.4

6.9

5.7

4.9

3.0

2.7

0.2

N=859

表1 避難者の基本属性(2/3)

家族形態7分類

夫婦(±祖父母、他)

夫婦+子(±祖父母、他)

独居

家族形態1-5以外の同居)

母子(±祖父母、他)

父子(±祖父母、他)

祖父母+子 (±他)

267

242

213

65

58

14

0

31.1

28.2

24.8

7.6

6.8

1.6

0.0

小磯H26年調査より

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表2 震災直後と3年後のストレス度および差の基礎統計量

変 数

ストレス度(10段階)

震災

直後

震災3年後

対象者数 859 859 859

平均 7.80 6.12 -1.68

普遍分数 4.90 4.72 5.07

標準偏差 2.21 2.17 2.25

最小値 1.00 1.00 -9.00

第1四分位 6.00 5.00 -3.00

第2四分位(中央値)

8.00 6.00 -2.00

第3四分位 10.00 8.00 0.00

最大値 10.00 10.00 7.00

対応のあるt検定 t=21.86 p<0.001

人数%

対象者数: 859平均値: -1.68標準偏差: 2.25ストレス度差>=0:34.8%3年後のストレス度>=被災時ストレス度平均(7.80)31.6%

図1 避難者の被災時と3年後のストレス度差分布

0

5

10

15

20

25

30

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17-9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 +1 +2 +3 +4 +5 +6 +7ストレス差

図1 避難者の被災時と3年後のストレス度差分布

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◆自由記載の質的分析:フリーソフトウェアKH Coder(樋口、2014)

<自由記載文の質問内容>

1.震災後3年になりますが、現在どのような支援があったらよいと考えますか?どのようなことでもかまいませんので、具体的に教えてください。

2.心配なことや困っていることなど、日頃お感じになっているお気持ちや今後の あなたの展望など、ご自由にお書きください。

◆自由記載の量的分析:家族形態と自由記載における高頻度使用語(名詞)との構成比率の差と、震災直後と3年後のストレス度増減区分の構成比率の差の検定を統計R_EZRのFisher直接確率法等

自由記載文を構成する語の品詞分類避難者の生活・心理を表す名詞を類型化表の作成

(同義語、類似語、複合語、関連語)回答者単位でストレス度差とコードとの共起ネットワークを作成

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レス度増減区分

角形の図形:語群:(%)

増減区分との共起性を示す

減への、係わりの多面性(複雑性)を示す

関連語の使用頻度大「支援・援助」「不安」「住宅事情」「原発災害」「避難生活」

ストレス増減との共起性ストレス度増大「住宅事情」ストレス度減少(大):助」「不安」「住宅事情」「避難生活」

ストレス度減少(中):宅事情」「避難生活」ストレス度減少(小):情」「原発災害*「住宅事情」:増減区分と共起性が高く、住宅事情がストレス減少の要因、逆に増大の要因なる多面性を示した。

震災直後と3年後ストレス度差と、自由記載関連語群(同義語、類似語、関連語)との共起ネットワーク 小磯H26年調査より

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◆ストレス度:被災後3年余りで減少したが、3割強が高水準

◆被災直後のストレス度が高い傾向:年齢が若い群・女性◆震災3年後のストレス度が減少:年齢が若い群、女性、祖父母と同居

していない家族、非独居◆震災3年後のストレス度が高い傾向:高齢者、男性、祖父母との同居

独居者

◆ストレス度増減との共起性:「住宅事情」がストレス度減少の要因、

逆に増大の要因なる多面性を示した。

➜ストレス度の性差:震災直後は女性が高く、3年後は女性が低い

災害に対するレジリエンス(災害からの迅速な回復力、復元力)に関係する可能性を示唆、官民の支援の集中が背景にあるか今後の研究の課題である。

➜「祖父母の同居」のストレス度増:祖父母の要介護状態に関連、主介護者の健康、介護量の変化、看護の時間的余裕等により決まると考察

➜「独居」のストレス度増:老いへの不安(高齢ストレス)、1人で生きていくことへの不安(自律ストレス)、家族を含めた対人関係(対人ストレス)、身体的不調(病気ストレス)の4因子が関連

調 査 の 結 果小磯H26年調査より

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各都道府県の最大津波と原発所在地(注)マグニチュード(M)9.1の想定で最大級被害(津波満潮時)を予測(2003年の中央防災会議ではM8.8の想定)

中防(2003年):2003年の中央防災会議「東南海、南海地震等に関する専門調査会」による東南海・南海地震の津波高資料:内閣府「南海トラフの巨大地震モデル検討会」(2012.8.29)記者発表資料より

南海トラフの巨大地震による最大クラスの津波の高さ(最大想定)

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平成23年6月21日撮影

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平成23年6月21日撮影平成23年6月21日撮影

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①想定にとらわれるな!

②最善をつくせ!

③率先避難者になれ!

出典:3.11が教えてくれた防災の本④避難生活から

「つなみてんでんこ」

津波がきたら、親も子どももお互いのことは心配せず、真っ先に逃げよう

避難の3原則